(発明の詳細な説明)
本発明は、少なくとも一部は、CDRグラフトおよび他のヒト化抗Cripto抗体の開発に基づく。さらに詳細には、これらの抗体はマウス抗体B3F6に由来する。本明細書で述べるように、ヒト化抗Cripto抗体の複数の形が開発され、腫瘍細胞モデルでの試験のためにメイタンソイドに結合された。結果は、生体内での腫瘍細胞成長の阻害のためのこれら抗体の有用性を証明する。これらのヒト化抗Cripto抗体は、ヒト被験体で使用するためのマウス抗体よりも適している。
ヒト化全長抗体およびCH2ドメインを欠失したヒト化抗体の両方が作製された。通例、細胞培養物中で産生された組換えCH2ドメイン欠失抗体は、ヒンジ異質性を引き起こし、これは溶液中での抗体の2つのフォームの存在をもたらす。未変性溶液において、これらのフォームの両方は二量体タンパク質として存在する(重鎖1個および軽鎖1個から成る各モノマー)。1つの免疫グロブリン分子は、鎖内重鎖ジスルフィド結合によって保持された、約150〜160kDaの安定な4鎖構築物(フォームA)を含み、1つはダイマーが鎖間ジスルフィド結合を介して結合されない形(フォームB)を含む。フォームBは、未変性条件下で安定なダイマーも形成するが、変性非還元条件下で識別でき、そこでは重鎖が解離して75〜80kDa分子を産生する。これらのフォームは、MAb親和性精製の後ですら分離するのがきわめて困難であった。
各種の未変性IgGアイソタイプでのBフォームの出現頻度は、これに限定されるわけではないが、MAb分子のヒンジ領域アイソタイプに関連する構造上の相違による。実際に、ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域における単一のアミノ酸置換は、Bフォームの出現を(Angal et al.1993.Molecular Immunology 30:105)ヒトIgG1ヒンジを使用して通例認められるレベルまで著しく低下させることができる。しかしながらこの同じアミノ酸置換をCH2ドメイン欠失抗体に適用することは、フォームBを調製物から除去しない。
本明細書で述べるように、ある結合ペプチドの本発明のヒト化Cripto結合分子への包含は、少なくとも1個の鎖間ジスルフィド結合を介して結合される、または少なくとも1個の鎖間ジスルフィド結合を介して結合されないポリペプチドダイマーの優先的生合成を引き起こす。
本発明のさらなる説明のために、便宜上、ある用語を次に説明する。
I.定義
本発明の結合分子は、ヒトCripto分子に特異的に結合する結合部位を含む少なくとも1個の結合ドメインを含むポリペプチド分子である。ヒトCriptoの例示的な配列は、配列番号:6(CR−1)および配列番号:7(CR−3)に示される。CR−1を未分化ヒト奇形癌細胞にて発現されたヒトCriptoタンパク質をコードする構造遺伝子に対応し、CR−3は、サイレントおよびリプレイス置換の両方を表す、コード領域内に7塩基置換を含有するmRNAの完全なコピーに相当する。CR−1は染色体3に位置し、CR−3はXq21−q22に位置する。Dono et al.1991.Am J Hum Genet.1991 49:555。
本発明の結合分子は、マウスB3F6抗体に由来する少なくとも1個のCDRを含む。マウスB3F6抗体は、Criptoのアミノ酸残基46〜62に亘るドメイン内のエピトープに結合する。マウスB3F6抗体(B3F6.17とも呼ばれる)を作製するハイブリドーマは、アクセション番号PTA−3319でATCCに寄託された)。抗体は、マウスをCHO細胞内で発現されたCripto融合タンパク質で免疫化することによって作製された。免疫化に使用される融合タンパク質は、ヒトIgG1 Fcドメイン(構成物は、CR(delC)−Fcと呼ばれる)に融合された、Criptoのアミノ酸残基1〜169[配列番号:6のアミノ酸1〜169]を含んでいた。B3F6抗体を作製する方法は、たとえばWO 02/088170にさらに詳細に述べられている。
本明細書で使用するように、指定されたタンパク質「に由来する」という用語は、ポリペプチドの起源を指す。1つの実施形態において、特定の開始ポリペプチドに由来するポリペプチドまたはアミノ酸配列は、CDR配列またはそれに関連する配列である。1つの実施形態において、特定の開始ポリペプチドに由来するアミノ酸配列は連続していない。たとえば1つの実施形態において、1個、2個、3個、4個、5個、または6個のCDRは、開始抗体に由来する。1つの実施形態において、特定の開始ポリペプチドまたはアミノ酸配列に由来するポリペプチドまたはアミノ酸配列は、開始配列のそれ、またはその部分であって、少なくとも3〜5個のアミノ酸、5〜10個のアミノ酸、少なくとも10〜20個のアミノ酸、少なくとも20〜30個のアミノ酸、または少なくとも30〜50個のアミノ酸より成るその部分と本質的に同じである、あるいはそうでなければ当業者によって開始配列にその起源を有すると認められるアミノ酸配列を有する。1つの実施形態において、開始抗体に由来する1個以上のCDR配列は、改変体CDR配列を産生するために改変され、該改変体CDR配列はCripto結合活性を維持する。
当業者によって、本発明の結合分子が、それらの由来するB3F6分子からのアミノ酸配列が異なるように修飾されることも理解されるであろう。たとえば「非必須」アミノ酸残基における保存的置換または変化につながるヌクレオチドまたはアミノ酸置換を作製できる(たとえばCDRおよび/またはフレームワーク残基において)。本発明の結合分子はCriptoに結合する能力を維持する。
ポリペプチドの非天然改変体をコードする単離核酸分子は、1個以上のアミノ酸置換、付加または欠失がコード化タンパク質内に導入されるように、1個以上のヌクレオチド置換、付加または欠失を免疫グロブリンのヌクレオチド配列内に導入することによって作製できる。変異は、標準技法、たとえば部位特異的変異誘発およびPCR仲介変異誘発によって導入できる。好ましくは保存的アミノ酸置換は、1個以上の非必須アミノ酸残基で作製される。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基によって置換えられた置換である。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリは、塩基性側鎖(たとえばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(たとえばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(たとえばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(たとえばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(たとえばトレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(たとえばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含めて、当分野で定義されている。それゆえ免疫グロブリンポリペプチド内の非必須アミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリからの別のアミノ酸残基とリプレイスすることができる。別の実施形態において、アミノ酸の鎖は、側鎖ファミリメンバの順序および/または組成が異なる構造的に同様の鎖によってリプレイスすることができる。
あるいは別の実施形態において、変異は、免疫グロブリンコード配列の全部または一部に沿ってランダムに導入できる。
1つの実施形態において、結合分子は1個の結合部位を含む。別の実施形態において、結合分子は少なくとも2個の結合部位を含む。1つの実施形態において、結合分子は2個の結合部位を含む。1つの実施形態において、結合分子は3個の結合部位を含む。別の実施形態において、結合分子は4個の結合部位を含む。
1つの実施形態において、本発明の結合分子はモノマーである。別の実施形態において、本発明の結合分子はマルチマーである。たとえば1つの実施形態において、本発明の結合分子はダイマーである。1つの実施形態において、本発明のダイマーは、2個の同一モノマーサブユニットより成るホモダイマーである。別の実施形態において、本発明のダイマーは、2個の同一でないモノマーサブユニットより成るヘテロダイマーである。ダイマーのサブユニットは、1個以上のポリペプチド鎖を含むことができる。たとえば1つの実施形態において、ダイマーは少なくとも2個のポリペプチド鎖を含む。1つの実施形態において、ダイマーは2個のポリペプチド鎖を含む。別の実施形態において、ダイマーは4個のポリペプチド鎖を含む(たとえば抗体分子の場合と同様に)。
本発明の好ましい結合分子は、ヒトアミノ酸配列に由来するフレームワークおよび定常領域アミノ酸配列を含む。しかしながら結合ポリペプチドは、別の哺乳類種に由来するフレームワークおよび/または定常領域配列を含むことができる。たとえば霊長類フレームワーク領域(たとえば非ヒト霊長類)、重鎖部分、および/またはヒンジ部分は、対象結合分子に含まれうる。1つの実施形態において、1個以上のマウスアミノ酸は、結合ポリペプチドのフレームワーク領域に存在でき、たとえばヒトまたは非ヒト霊長類フレームワークアミノ酸配列は、相当するマウスアミノ酸残基が存在する1個以上のアミノ酸復帰突然変異を含むことができる。本発明の好ましい結合分子は、開始B3F6マウス抗体よりも免疫原性が低い。
本明細書で使用するように、「重鎖部分」という用語は、免疫グロブリン重鎖に由来するアミノ酸配列を含む。重鎖部分を含むポリペプチドは:CH1ドメイン、ヒンジ(たとえば上部、中間および/または下部ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、あるいはその改変体または断片の少なくとも1つを含む。1つの実施形態において、本発明のポリペプチドは、CH1ドメインと、ヒンジドメインの少なくとも一部と、CH2ドメインとを含むポリペプチド鎖を含む。別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、CH1ドメインおよびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含む。別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、CH1ドメインと、ヒンジドメインの少なくとも一部と、CH3ドメインとを含むポリペプチド鎖を含む。別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、CH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含む。1つの実施形態において、本発明のポリペプチドは、CH2ドメインの少なくとも一部(たとえばCH2ドメインの全部または一部)を欠失している。別の実施形態において、本発明のポリペプチドは完全なIg重鎖を含む。上で述べたように、これらのドメイン(たとえば重鎖部分)を天然発生型免疫グロブリン分子とはアミノ酸配列が異なるように修飾できることが、当業者によって理解されるであろう。
1つの実施形態において、本発明の結合分子のポリペプチド鎖の少なくとも2個が抗体または免疫グロブリン分子に由来する少なくとも1個の重鎖部分を含む。1つの実施形態において、本発明のポリペプチドの少なくとも2個の重鎖部分が異なるポリペプチド鎖上に存在して、たとえば少なくとも1個のジスルフィド結合を介して(フォームA)または非共有相互作用を介して(フォームB)相互作用し、二量体ポリペプチドを形成し、該ダイマーの各モノマーは少なくとも1個の重鎖部分を含む。
1つの実施形態において、ダイマーの1個のポリペプチド鎖の重鎖部分は、ダイマーの第2のポリペプチド鎖のそれらと同じである。1つの実施形態において、本発明のダイマーのモノマー(またはハーフマー)は、相互に同一である。別の実施形態において、それらは同一でない。たとえば各モノマーは、異なる標的結合部位を含むことができる。
1つの実施形態において、本発明のダイマーは、共有相互作用、たとえばジスルフィド結合によって結合される。1つの実施形態において、本発明のダイマーは、1個以上のジスルフィド結合によって結合される。別の実施形態において、本発明のダイマーは1個以上の、好ましくは2個のジスルフィド結合によって結合される。別の実施形態において、本発明のダイマーは、1個以上の、好ましくは3個のジスルフィド結合によって結合される。別の実施形態において、本発明のダイマーは、1個以上の、好ましくは4個のジスルフィド結合によって結合される。別の実施形態において、本発明のダイマーは1個以上の、好ましくは5個のジスルフィド結合によって結合される。別の実施形態において、本発明のダイマーは、1個以上の、好ましくは6個のジスルフィド結合によって結合される。別の実施形態において、本発明のダイマーは、1個以上の、好ましくは7個のジスルフィド結合によって結合される。別の実施形態において、本発明のダイマーは、1個以上の、好ましくは8個のジスルフィド結合によって結合される。別の実施形態において、本発明のダイマーは、1個以上の、好ましくは9個のジスルフィド結合によって結合される。別の実施形態において、本発明のダイマーは、1個以上の、好ましくは10個のジスルフィド結合によって結合される。さらなる実施形態において、本発明のダイマーはジスルフィド結合によって結合されないが、たとえば非共有相互作用によって結合される。
ポリペプチドの重鎖部分は、異なる免疫グロブリン分子に由来できる。たとえばポリペプチドの重鎖部分は、IgG1分子に由来するCH1ドメインと、IgG3分子に由来するヒンジ領域とを含むことができる。別の例において、重鎖部分は、一部はIgG1分子に由来して、一部はIgG3分子に由来するヒンジ領域を含むことができる。別の例において、重鎖部分は、一部はIgG1分子に由来して、IgG4分子に由来するキメラヒンジを含むことができる。
本明細書で使用するように、「軽鎖部分」という用語は、免疫グロブリン軽鎖に由来するアミノ酸配列を含む。好ましくは、軽鎖部分はVLまたはCLドメインの少なくとも1つを含む。
1つの実施形態において、本発明のポリペプチドは、Ig分子に由来しないアミノ酸配列または1個以上の部分を含む。例示的な修飾は、以下でさらに詳細に説明する。たとえば1つの実施形態において、本発明のポリペプチドは柔軟性リンカー配列を含むことができる。別の実施形態において、ポリペプチドは1個以上の官能性部分を付加するために修飾できる(たとえばPEG、薬物、プロドラッグ、および/または検出可能な標識)。
「キメラ」タンパク質は、それが実際には自然に結合しない第2のアミノ酸配列と結合した第1のアミノ酸配列を含む。アミノ酸配列は通常、融合ポリペプチドにおいて結合される独立したタンパク質中に存在するか、またはそれらは通常、同じタンパク質中に存在するが、融合ポリペプチド中で新たな並びで配列される。キメラタンパク質は、たとえば化学合成によって、またはペプチド領域が所望の関係でコードされるポリヌクレオチドを作製および翻訳することによって作製できる。例示的なキメラポリペプチドは、融合タンパク質および本発明のキメラヒンジ結合ペプチドを含むことができる。
1つの実施形態において、本発明の結合ポリペプチドは融合タンパク質である。1つの実施形態において、本発明の融合タンパク質は、結合ドメイン(少なくとも1個の結合部位を含む)およびダイマー化ドメイン(少なくとも1個の重鎖部分を含む)を含むキメラ分子である。重鎖部分は、いずれかの免疫グロブリン、たとえばIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4サブタイプ、IgA、IgE、IgDまたはIgMからでありうる。1つの実施形態において、融合タンパク質は合成結合ペプチドをさらに含む。
本発明の別の実施形態において、結合分子は「抗体−融合タンパク質キメラ」である。そのような分子は、抗体の少なくとも1個の結合ドメインを少なくとも1個の融合タンパク質と結合させる分子を含む。好ましくは2個のポリペプチド間のインタフェースが免疫グロブリン分子のCH3ドメインである。
ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに利用されるような「異種の」という用語は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、それが比較される実体の残りのそれらから遺伝子型で識別できる実体に由来することを意味する。たとえば異種ポリヌクレオチドまたは抗原は、異なる種、異なる細胞型、または識別できる個体の同じ型の細胞に由来できる。
「リガンド結合ドメイン」または「リガンド結合部分」という用語は本明細書で使用するように、いずれかの未変性レセプタ(たとえば細胞表面レセプタ)あるいは少なくとも定性的リガンド結合能力、好ましくは相当する未変性レセプタの生物活性を保持するいずれかの領域またはその誘導体を指す。
「レセプタ結合ドメイン」または「レセプタ結合部分」という用語は本明細書で使用するように、未変性リガンドあるいはレセプタ結合能力、好ましくは相当する未変性リガンドの生物活性を保持するいずれかの領域またはその誘導体を指す。
1つの実施形態において、本発明の結合分子は、「抗体」または「免疫グロブリン」分子、たとえば天然発生型抗体または免疫グロブリン分子(またはその抗原結合断片)あるいは同様の方法で抗原を抗体分子に結合する遺伝子組換え抗体分子である。本明細書で使用するように「免疫グロブリン」という用語は、それがいずれかの関連する特異的免疫反応性を所有するかどうかにかかわらず、2個の重鎖および2個の軽鎖の組合せを有するポリペプチドを含む。「抗体」は、興味のある抗原(たとえば腫瘍関連抗原)に対して著しい既知の特異的免疫反応活性を有するそのようなアセンブリを指す。抗体および免疫グロブリンは、その間の鎖内共有結合を伴って、または伴わずに軽鎖および重鎖を含む。脊椎動物系の基本免疫グロブリン構造は比較的十分に理解されている。
以下でさらに詳細に述べるように、「免疫グロブリン」という総称は、生化学的に区別できる抗体の5つの識別可能なクラスを含む。抗体の5つのクラスはすべて本発明の範囲内であり、以下の議論は一般に、免疫グロブリン分子のIgGクラスに関する。IgGに関して、免疫グロブリンは、分子量が約23,000ダルトンの2個の同一のポリペプチド軽鎖と、分子量が53,000〜70,000の2個の同一の重鎖を含む。4個の鎖ははジスルフィド結合によって「Y」配置で結合され、そこで軽鎖は、「Y」の口にて開始し、可変領域を通じて続く重鎖を一まとめにする。
軽鎖および重鎖の両方は、構造的および機能的に相同な領域に分割される。「定常」および「可変」という用語は機能的に使用される。この点で、軽(VL)および重(VH)鎖部分の両方の可変ドメインが抗原認識および特異性を決定することが認識されるであろう。反対に軽鎖(CL)および重鎖(CH1、CH2またはCH3)の定常ドメインは、重要な生物特性、たとえば分泌、経胎盤性可動性、Fcレセプタ結合、補体結合などを与える。慣例により、定常領域ドメインの番号付けは、抗体の抗原結合部位またはアミノ末端からより遠くなるにつれて増加する。N末端は可変領域であり、C末端では定常領域である;CH3およびCLドメインは実際に、重鎖および軽鎖それぞれの炭素末端を含む。
本明細書で使用するように「可変領域CDRアミノ酸残基」という用語は、配列または構造ベースの方法を使用して識別されるようなCDR、すなわち相補性決定領域内のアミノ酸を含む。本明細書で使用するように、「CDR」または「相補性決定領域」という用語は、重鎖および軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域内に見出される非連続抗原結合部位を意味する。これらの特定の領域は、Kabatら、J.Biol. Chem.252,6609−6616(1977)およびKabatら、Sequences of protein of immunological interest.(1991)によって、Chothiaら、J.Mol.Biol.196:901−917(1987)によって、by MacCallumら、J.Mol.Biol.262:732−745(1996)によって説明されており、該定義は、相互に比較したときにアミノ酸残基の重複およびサブセットを含む。上に引用した参考文献それぞれによって定義されるCDRを含むアミノ酸残基は、比較のために説明される。好ましくは「CDR」という用語は、配列比較に基づいてKabatによって定義されるCDRである。
1残基番号付けは、Kabatら、supraの命名法に従う
2残基番号付けは、Chothiaら、supraの命名法に従う
3残基番号付けは、MacCallumら、supraの命名法に従う
本明細書で使用するように「可変領域フレームワーク(FR)アミノ酸残基」という用語は、Ig鎖のフレームワーク領域内のそのようなアミノ酸を指す。「フレームワーク領域」または「FR領域」という用語は本明細書で使用するように、可変領域の一部であるが、CDRの一部でないアミノ酸残基を含む(たとえばCDRのKabat定義を使用して)。したがって可変領域フレームワークは長さが約100〜120アミノ酸であるが、CDRの外側のアミノ酸のみ含む。重鎖可変領域の具体的な例では、そしてKabatらによって定義されたCDRでは、フレームワーク領域1は、アミノ酸1〜30を含む可変領域のドメインに相当する;フレームワーク領域2は、アミノ酸36〜49を含む可変領域のドメインに相当する;フレームワーク領域3は、アミノ酸66〜94を含む可変領域のドメインに相当し、フレームワーク領域4は、アミノ酸103から可変領域の末端までの可変領域のドメインに相当する。軽鎖のフレームワーク領域は、軽鎖可変領域CDRそれぞれによって同様に分離される。同様に、ChothiaらまたはMacCallumらによるCDRの定義を使用して、フレームワーク領域境界は上述したような各CDR末端によって分離される。好ましい実施形態において、CDRはKabatによって定義される。
天然発生型抗体では、各モノマー抗体に存在する6個のCDRは、抗体が水性環境でその3次元配置を取るときに特異的に配置されて抗原結合部位を形成する、アミノ酸の短い非連続配列である。重および軽可変ドメインの残りは、アミノ酸配列でより小さい分子間可変性を示し、フレームワーク領域と呼ばれる。フレームワーク領域は大部分はβシートコンフォメーションをを採用し、CDRはβシート構造を連結し、場合によってはその一部を形成するループを形成する。それゆえこれらのフレームワーク領域は、鎖間非共有相互作用による6個のCDRの正しい向きへの配置を与える骨格を形成するように作用する。位置決めされたCDRによって形成された抗原結合部位は、免疫反応性抗原上のエピトープに相補性である表面補体を画成する。この相補性表面は、抗体の免疫反応性抗原エピトープへの非共有結合を促進する。CDRの位置は、当業者によってただちに識別できる。
以前に示したように、各種の免疫グロブリンクラスの定常領域のサブユニット構造および3次元配置は公知である。本明細書で使用するように「VHドメイン」という用語は、免疫グロブリン重鎖のアミノ末端可変ドメインを含み、「CH1ドメイン」という用語は、免疫グロブリン重鎖の第1の(最もアミノ末端の)定常領域ドメインを含む。CH1ドメインは、VHドメインに隣接して、免疫グロブリン重鎖分子のヒンジ領域よりもアミノ末端側である。
本明細書で使用するように「CH2ドメイン」という用語は、従来の番号付けスキームを使用して、たとえば抗体のおおよそ残基244〜残基360に延在する重鎖分子の部分を含む(残基244〜360、Kabat番号付けシステム;残基231〜340、EU番号付け体系、Kabat EA et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest.ベセズダ、US Department of Health and Human Services,NIH.1991)。CH2ドメインは、別のドメインと密接に対になっていないという点でユニークである。むしろ2本のN結合分岐炭化水素鎖が無傷の未変性IgG分子2個のCH2ドメイン間に挿入される。CH3ドメインがCH2ドメインからIgG分子のC末端まで延在して、約108残基を含むことも詳細に記録されている。
本明細書で使用するように「ヒンジ領域」という用語は、CH1ドメインをCH2ドメインに結合する重鎖分子の部分を含む。このヒンジ領域は約25残基を含み、柔軟性であり、それゆえ2個のN末端抗原結合領域を独立して移動させる。ヒンジ領域は3つの識別可能なドメイン:上部、中間、および下部ヒンジドメインに再分割できる(Roux et al.J.Immunol.1998 161:4083)。
軽鎖はカッパまたはラムダのどちらかとして分類される(κ、λ)。各重鎖クラスは、カッパまたはラムダ軽鎖のどちらかと結合できる。一般に軽鎖および重鎖は相互に共有結合され、免疫グロブリンがハイブリドーマ、B細胞または遺伝子組換え宿主細胞のいずれかによって産生されるときに、2本の重鎖の「尾」部分は共有ジスルフィド結合または非共有結合によって相互に結合される。重鎖において、アミノ酸配列はY配置の分岐端におけるN末端から各鎖の底部におけるC末端まで延在する。当業者は、重鎖がガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)として、それらの間のあるサブクラス(たとえばγ1〜γ4)を用いて分類されることを認識するであろう。この鎖の性質は、抗体の「クラス」をIgG、IgM、IgA、IgG、またはIgEとしてそれぞれ決定することである。免疫グロブリンサブクラス(アイソタイプ)、たとえばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1などは特徴がはっきりしており、機能分化を付与することが公知である。これらのクラスおよびアイソタイプそれぞれの修飾バージョンは、本発明に照らして当業者にはただちに認識可能であり、本発明の範囲内である。
上で示したように、可変領域は、抗体に抗原上のエピトープを選択的に認識させて、特異的に結合させる。すなわち抗体のVLドメインおよびVHドメインは結合して、3次元抗原結合部位を画成する可変領域を形成する。この4次抗体構造は、Yの各アーム端部に存在する抗原結合部位を形成する。さらに詳細には、抗原結合部位は、VHおよびVL鎖それぞれの3つの相補性決定領域(CDR)によって画成される。
「断片」という用語は、無傷の、または完全な抗体または抗体鎖よりも少ないアミノ酸残基を含む、抗体または抗体鎖の一部または部分を指す。「抗原結合断片」という用語は、抗原に結合する、または抗原結合(すなわち特異的結合)のために無傷の抗体と(すなわちそれらが由来する無傷の抗体と)競合する免疫グロブリンまたは抗体のポリペプチド断片を指す。本明細書で使用するように、抗体分子の「断片」という用語は、抗体の抗原結合断片、たとえば抗体軽鎖(VL)、抗体重鎖(VH)、単鎖抗体(scFv)、F(ab’)2断片、Fab断片、Fd断片、Fv断片、および単ドメイン抗体断片(DAb)を含む。断片はたとえば無傷の、または完全な抗体または抗体鎖の化学または酵素処理を介して、あるいは組換え手段によって得ることができる。
本明細書で使用するように「結合部位」という用語は、興味のある標的分子(たとえば抗原、リガンド、レセプタ、基質またはインヒビタ)への選択的結合に関与するポリペプチドの領域を含む。結合ドメインは少なくとも1個の結合部位を含む。例示的な結合ドメインは、抗体可変ドメイン、リガンドのレセプタ結合ドメイン、レセプタのリガンド結合ドメインまたは酵素ドメインを含む。
本明細書で使用するように「価数」という用語は、ポリペプチド内の潜在的な標的結合部位の数を指す。各標的結合部位は1個の標的分子または標的分子の特定部位を特異的に結合する。ポリペプチドが1個を超える標的結合部位を含むとき、各標的結合部位は、同じまたは異なる分子に特異的に結合できる(たとえば異なるリガンドまたは異なる抗原、または同じ抗原上の異なるエピトープに結合できる)。本結合分子は、ヒトCripto分子に特異的な少なくとも1個の結合部位を有する。
「特異性」という用語は、所与の標的と特異的に結合する(たとえば免疫反応する)能力を指す。ポリペプチドは単一特異性であり、標的を特異的に結合する1個以上の結合部位を含有できるか、またはポリペプチドは多重特異性であり、同じまたは異なる標的を特異的に結合する2個以上の結合部位を含有できる。
1つの実施形態において、本発明の結合分子は1個を超える標的に対して特異性である。たとえば1つの実施形態において、本発明の多重特異性結合分子は、Criptoおよび腫瘍細胞で発現された第2の分子に結合する。腫瘍細胞で発現された抗原に結合する抗原結合部位を含む例示的な抗体は当分野で公知であり、そのような抗体からの1個以上のCDRを本発明の結合分子に含むことができる。例示的な抗体は:2B8、Lym 1、Lym 2、LL2、Her2、B1、MB1、BH3、B4、B72.3、5E8、および5E10を含む。好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドは、CD20に結合するC2B8抗体である。別の好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドは、TAG72を認識するCC49抗体である。
1つの実施形態において、本発明の結合分子は結合ペプチドを含む。本発明の結合ペプチドは合成である。本明細書で使用するようにポリペプチドに関する「合成」という用語は、天然発生型でないアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。たとえば天然発生型ポリペプチドの修飾形(たとえば付加、置換または欠失などの変異を含む)である、またはそれが実際には自然に連結しないアミノ酸の直線配列で第2のアミノ酸配列(天然発生型でも、そうでなくてもよい)に連結された第1のアミノ酸配列(天然発生型でも、そうでなくてもよい)を含む、非天然発生型ポリペプチド。
本発明の結合ペプチドは、本発明の結合分子の2個のドメイン(たとえば結合ドメインおよびダイマー化ドメイン)を結合する。たとえば結合ペプチドは、重鎖部分を、結合部位を含む結合ドメインに結合する。1つの実施形態において、結合ペプチドは、ポリペプチド鎖の直鎖アミノ酸配列内で、2個の重鎖定常領域ドメイン、たとえばCH1およびCH2ドメイン;CH1およびCH3ドメイン;ヒンジおよびCH1ドメイン;ヒンジおよびCH3ドメイン;VHおよびヒンジドメイン、またはCH3ドメインおよび非免疫グロブリンポリペプチド)を結合する。好ましくは、そのような結合ペプチドは、結合分子への柔軟性を提供し、ジスルフィド結合を介してダイマー化を促進する。1つの実施形態において、本発明の結合ペプチドは、1個以上の重鎖ドメイン(たとえばドメイン欠失構築物における定常領域ドメインの少なくとも一部(たとえばCH2ドメインの少なくとも一部)および/またはヒンジ領域の少なくとも一部(たとえば下部ヒンジ領域ドメインの少なくとも一部))をリプレイスするために使用する。たとえば1つの実施形態において、VHドメインは結合ペプチドを介してCH3ドメインに縮合される(結合ペプチドのC末端はCH3ドメインのN末端に接合され、結合ペプチドのN末端はVHドメインのC末端に接合される)。別の実施形態において、VLドメインは結合ペプチドを介してCH3ドメインに縮合される(結合ペプチドのC末端はCH3ドメインのN末端に接合され、結合ペプチドのN末端はVLドメインのC末端に接合される。別の実施形態において、CH1ドメインは、結合ペプチドを介してCH3ドメインに縮合される(結合ペプチドのC末端はCH3ドメインのN末端に付着され、結合ペプチドのN末端のCH1ドメインのC末端に付着される)。
1つの実施形態において、合成結合ペプチドは定常領域ドメインの部分を含む。たとえば1つの実施形態において、CH2ドメインをリプレイスする結合ペプチドは、CH2ドメインの部分を含みうる。
1つの実施形態において、結合ペプチドは、gly−serリンカーを含むか、またはgly−serリンカーより成る。本明細書で使用するように、「gly−serリンカー」という用語は、グリシンおよびセリン残基より成るペプチドを指す。例示的なgly/serリンカーは、アミノ酸配列GGGSSGGGSG(配列番号:8)を含む。1つの実施形態において、本発明の結合ペプチドは、上部ヒンジ領域の少なくとも一部(たとえばIgG1、IgG3、またはIgG4分子に由来する)、中間ヒンジ領域の少なくとも一部(たとえばIgG1、IgG3、またはIgG4分子に由来する)およびgly/serアミノ酸残基(たとえばGGGSSGGGSG(配列番号:8)などのgly/serリンカー)を含む。1つの実施形態において、結合ペプチドは、天然発生型IgG1またはIgG3ヒンジ領域と比較して1個以上のアミノ酸の置換を含む。別の実施形態において、結合ペプチドはWO 02/060955に述べるようなアミノ酸配列を含む。結合ペプチド以下でさらに詳細に述べる。
本明細書で使用するように「ジスルフィド結合」という用語は、2個の硫黄原子間に形成された共有結合を含む。アミノ酸システインは、第2のチオール基とジスルフィド結合またはブリッジを形成できるチオール基を含む。大半の天然発生型IgG分子では、CH1およびCL領域は、ジスルフィド結合によって結合され、2本の重鎖は2個のジスルフィド結合によって、Kabat番号付けシステムを使用した239および242に相当する位置で結合される(位置226または229、EU番号付け体系)。
1つの実施形態において、本発明の結合分子は抗体結合部位を含む。たとえば1つの実施形態において、本発明の結合分子は全長抗体分子である。別の実施形態において、本発明の結合分子は抗体分子の断片である。別の実施形態において、本発明の結合分子は、修飾または合成抗体分子である。
本発明の結合分子は、当分野で公知の技法を使用して作製できる。1つの実施形態において、本発明のポリペプチドは、「組換え産生」された、すなわち組換えDNA技術を使用して産生される抗体分子である。抗体分子を作製する例示的な技法は、以下でさらに詳細に述べる。
1つの実施形態において、本発明のポリペプチドは修飾抗体である。本明細書で使用するように、「修飾抗体」という用語は、天然発生型でないように改変された抗体の合成形、たとえば少なくとも2個の重鎖部分を含むが、2個の完全な重鎖は含まない抗体(ドメイン欠失抗体またはミニボディ);2つ以上の異なる抗原または単一の抗原上の異なるエピトープに結合するように改変された、抗体の多重特異性形(たとえば二重特異性、三重特異性など));scFv分子に結合された重鎖分子などを含む。scFv分子は当分野で公知であり、たとえばUS patent 5,892,019に述べられている。加えて「修飾抗体」という用語は、抗体の多価形(たとえば3価、4価など、同じ抗原の3つ以上のコピーに結合する抗体)を含む。別の実施形態において、本発明の結合分子は、CH2ドメインを欠失した少なくとも1個の重鎖部分を含み、レセプタリガンド対の1個の構成要素の連結部分を含むポリペプチドの結合ドメインを含む融合タンパク質である。
1つの実施形態において、本発明による「修飾抗体」という用語は、ほぼ同じ免疫原性の完全な未改変の抗体と比較したときに、非共有的に二量体化する能力、腫瘍部位に局在化する能力の向上、または血清半減期の短縮を提供するために定常領域ドメインの1つ以上の少なくとも一部が欠失しているか、そうでなければ改変されている、免疫グロブリン、抗体、あるいは免疫反応性断片またはその組換えを含む。好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖と似たポリペプチド鎖を含むが、1個以上の重鎖ドメインの少なくとも部分を欠失しているドメイン欠失抗体である。さらに好ましくは、修飾抗体の定常領域の1個のドメイン全体が欠失しており、なおさらに好ましくはCH2ドメインの全部および一部が欠失するであろう。
好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドはヒトにおける有害な免疫反応を誘発しないであろう。
1つの実施形態において、本発明の結合分子は、野生型定常領域と比べて修飾されている定常領域、たとえば重鎖定常領域を含む。すなわち本明細書で開示した本発明のポリペプチドは、3個の重鎖定常ドメイン(CH1、CH2またはCH3)の1個以上に対する、および/または軽鎖定常領域ドメイン(CL)に対する改変または修飾を含みうる。例示的な修飾は、1個以上のドメイン内に1個以上のアミノ酸の付加、欠失または置換を含む。
本明細書で使用するように、「悪性疾患」という用語は、非良性腫瘍または癌を指す。本明細書で使用するように、「癌」という用語は、無秩序な、または制御できない細胞成長を特徴とする悪性疾患を含む。例示的な癌は:癌腫、肉腫、白血病、およびリンパ腫を含む。「癌」という用語は、原発性悪性疾患(たとえばその細胞が元の腫瘍部位以外の、対象体内の位置へ移動していない腫瘍)および二次悪性疾患(たとえば転移から生じる腫瘍、元の腫瘍の部位とは異なる二次部位への腫瘍細胞の移動)を含む。
本明細書で使用するように「疎水性相互作用に基づいてポリペプチドを分離する培地」という用語は、マトリクスに共有結合した疎水性リガンド(たとえばアルキルまたはアリール基)を含む培地を含む。そのような培地は、ポリペプチド表面上のアクセス可能な非極性基と、培地の疎水性リガンドとの間の相互作用に基づいて、ポリペプチドを分離するために使用できる。例示的な培地は、Tosoh Bioscienceより入手できるフェニル5PW−HRである。
本明細書で使用するように、「伝導率」という用語は、マイクロシーメンス/cm(以前はマイクロオーム/cm)で測定されるような溶液の導電率を含む。溶液のイオン含有率が高くなればなるほど、溶液の伝導率が高くなる。伝導率は、当分野で公知である技法を使用してただちに測定できる(たとえば2個の電極間を通過する電流を測定することによって)。
本発明の分離方法は、酸性から中性の範囲のpH、たとえば約pH3.5〜ほぼ中性のpHを有する溶液を用いて使用できる。本明細書で使用するように「ほぼ中性のpH」という用語は、約7のpH値を含む。たとえば1つの実施形態において、本発明の分離方法は約3、約4、約5、約6、約7、または約8のpHを有する溶液(たとえば緩衝液)を使用して実施できる。好ましくは溶液のpHは、約6または約7である。1つの実施形態において、溶液のpHは、約4.0、約4.1、約4.2、約4.3、約4.4、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、約7.6、約7.7、約7.8、約7.9、または約8.0である。
本明細書で使用するように「親和性マトリクス」という用語は、親和性リガンドが付着するマトリクス、たとえばアガロース、制御孔ガラス、またはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンを含む。親和性リガンドは所望のポリペプチドに結合し、汚染ポリペプチドは親和性リガンドに結合されない。所望のポリペプチドは公知のプロトコルを使用して親和性マトリクスから溶離させることができる。
本明細書で使用するように「組換えた」という用語は、核酸またはポリペプチド分子の合成手段(たとえば組換え技法、試験管内ペプチド合成によって、ペプチドの酵素または化学カップリングあるいはこれらの技法のある組合せによって)による操作を含む。好ましくは、本発明の結合分子は組換えられて、たとえば本発明の結合ペプチドを発現する。
本明細書で使用するように「連結した(linked)」、「融合した(fused)」または「融合(fusion)」という用語は互換的に使用される。これらの用語は、化学結合または組換え手段を含む何らかの手段によって2個以上の要素または成分を結合することを指す。「フレーム内融合」は、元のORFの正しい読み枠を維持する方法で、2個以上の開いた読み枠(ORF)を結合して連続したより長いORFを形成することを指す。それゆえ得られた組換え融合タンパク質は、元のORFによってコードされたポリペプチドに相当する2個セグメント(そのセグメントは実際には、通常そのように結合されない)を含有する単一のタンパク質である。そのように作製された読み枠は融合セグメントを通じて連続的であるが、セグメントはたとえばフレーム内リンカー配列によって物理的または空間的に分離できる。
ポリペプチドの文脈では、「直鎖配列」または「配列」は、配列内で相互に隣接する残基がポリペプチドの一次構造において連続している、アミノからカルボキシル末端方向へのポリペプチド内でのアミノ酸の順序である。
本明細書で使用するように「結合分子の投与により恩恵を受ける被験体」という句は、たとえば結合分子によって認識される抗原の検出のための(たとえば診断手順のための)使用した結合分子の投与から、および/または結合分子によって認識される標的を削減または除去するための結合分子による処置から恩恵を受ける被験体、たとえば哺乳類被験体を含む。たとえば1つの実施形態において、被験体は循環または血清からの溶解性または粒子状分子(たとえば毒素または病原体)の削減または除去により、あるいは標的を発現する細胞(たとえば腫瘍細胞)の個体群の削減または除去により恩恵を受けることができる。本明細書でさらに詳細に述べるように、結合分子は非接合形で使用できるか、あるいはたとえば薬物、プロドラッグ、またはアイソトープに接合させることができる。
II.ヒト化
1つの実施形態において、本発明の結合分子は、少なくとも1個のヒト化B3F6抗体可変領域、たとえば軽鎖または重鎖可変領域を含むか、またはそれらに由来する。
「ヒト化抗体」という用語は、実質的にヒト抗体鎖(「アクセプタ抗体」と呼ばれる)からの可変領域フレームワーク残基を含む少なくとも1個の鎖と、実質的に非ヒト抗体(「ドナー抗体」と呼ばれる)からの少なくとも1個の相補性決定領域(「CDR」)とを含む抗体を指す。定常領域も存在する場合、実質的に、または完全にヒト免疫グロブリンからである。
マウスB3F6のCDRを次の表1に示す:
表1:B3F6 CDR配列(Kabat定義)
1つの実施形態において、本発明の抗原結合分子は、B3F6抗体分子の少なくとも1個の重鎖または軽鎖CDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗原結合分子は、B3F6抗体分子の少なくとも2個のCDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗原結合分子は、B3F6抗体分子による少なくとも3個のCDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗原結合分子は、B3F6抗体分子による少なくとも4個のCDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗原結合分子は、B3F6抗体分子による少なくとも5個のCDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗原結合分子は、B3F6抗体分子による少なくとも6個のCDRを含む。1つの実施形態において、少なくとも1個のCDR(または結合分子内に存在する1個を超えるB3F6 CDRによる少なくとも1個のCDR)を修飾して、B3F6に結合する能力をなお維持したまま、天然発生型B3F6分子のCDRとは配列を変更させる。
ヒト化抗体は組換えDNA技術を使用して産生でき、たとえばたとえばQueen et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,(1989),86:10029−10033;Jones et al,Nature,(1986),321:522−25;Riechmann et al,Nature,(1988),332:323−27;Verhoeyen et al,Science,(1988),239:1534−36;Orlandiら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,(1989),86:3833−37;US Patent Nos.US 5,225,539;5,530,101;5,585,089;5,693,761;5,693,762;6,180,370を参照。
ヒト化のために好ましい非ヒトドナー抗体が選択されると、たとえば発現ヒト抗体遺伝子の配列データベースから、複数のヒト抗体の生殖系列Ig配列またはコンセンサス配列から適切なヒトアクセプタ抗体を得ることができる。ヒト可変ドメインフレームワークがCDRが生じた非ヒト可変フレームワークに対して同じまたは同様の配座を利用する場合、非ヒトCDRのヒト可変ドメインフレームワークへの置換は、その正しい空間配向の保持をもたらしやすい。これはフレームワーク配列がCDRの由来した非ヒト可変フレームワークドメインとの高度の配列同一性を示すヒトアクセプタ抗体からヒト可変ドメインを得ることによって達成される。重鎖および軽鎖可変フレームワーク領域は、同じまたは異なるヒト抗体配列に由来できる。好ましくはヒトアクセプタ抗体は、ドナー抗体の標準およびインタフェース残基を保持する。加えてヒトアクセプタ抗体は、好ましくはCDRループの長さに実質的な類似性を有する。Kettleboroughら、Protein Engineering 4:773(1991);Kolbingerら、Protein Engineering 6:971(1993)およびCarterら、WO 92/22653を参照。
ドナー抗体および適切なヒトアクセプタ抗体のCDRを同定したら、次のステップは、得られたヒト化抗体の特性を最適化するため、これらの成分からの残基が存在する場合、そのどちらを置換すべきか決定することである。通例、抗原結合に必要な非ヒト、ドナー免疫グロブリン軽鎖または重鎖のアミノ酸の一部または全部(たとえば1個以上のCDR)が、ヒトアクセプタ抗体の軽鎖または重鎖からの相当するアミノ酸を置換するために使用される。ヒトアクセプタ抗体は、抗原結合に必要のないアミノ酸の一部または全部を保持する。概して、マウス残基の導入はヒトにおけるヒト抗マウス抗体(HAMA)反応を誘発する抗体のリスクを上昇させるため、ヒトアミノ酸残基のマウスによる置換は最小限に抑えるべきである。特定の患者における、または臨床試験中のHAMA反応を監視するために、決定免疫反応の当分野で認識された方法を実施することができる。ヒト化抗体を投与された患者に前記治療の投与の開始時に、または投与中を通して、免疫原性アセスメントを与えることができる。HAMA反応は、表面プラスモン共鳴技術(BIACORE)および/または固相ELISA分析を含む当分野で公知の方法を使用して、患者からの血液サンプル中でたとえばヒト化治療用試薬に対して抗体を検出することによって測定される。
必要な場合、ヒト化抗体の抗原への結合親和性を保存するために、ヒトフレームワーク領域内の1個以上の残基をマウス抗体内の相当する位置の残基に変更することができる。この変更は時には「復帰突然変異」と呼ばれる。ヒト可変領域フレームワーク残基からのあるアミノ酸は、CDR配座および/または抗原への結合に対するその考えられる影響に基づいて復帰突然変異のために選択される。マウスCDR領域のヒト可変フレームワーク領域による置換えは配座上の制限を引き起こし、これはあるアミノ酸残基の置換によって補正されない限り、結合親和性の消失をもたらす。
1つの実施形態において、復帰突然変異のためのアミノ酸残基の選択は、一部はコンピュータモデリングによって、当分野で認識された方法を使用して決定できる。一般に分子モデルは、その免疫グロブリン鎖またはドメインについて解明された構造から開始して作製できる。モデル化される鎖は、アミノ酸配列類似性について解明された三次元構造(たとえばX線構造)の鎖またはドメインと比較され、最大の配列類似性を示す鎖またはドメインが分子モデル構築のための開始点として選択される。解明された開始構造は、モデル化される免疫グロブリン鎖またはドメインにおける実際のアミノ酸と、開始構造におけるそれらとの違いについて修飾される。修飾された構造は次に複合免疫グロブリン内へ構築される。最後にモデルは、エネルギー最小化によって、そしてすべての原子が相互から適切な距離内にあることと、結合長および角度が化学的に許容される範囲内にあることとを確認することによって改良される。
別の実施形態において、知識ベースの手法またはデータベース解析をヒト化に使用できる。たとえばそのようなヒト化方法は、Rosok et al(Rosok MJ,et al,1996.J.Biol.Chem.271:22611−22618)で述べられている方法により、V領域配列の目視検査および解析に基づくことができる。標準決定基、表面残基、および潜在的接触残基が同定される。潜在的接触残基が注目されており、Chothia et al.(Chothia C and Lesk AM.1987.J.Mol.Biol.196:901−917)によって定義されたCDRループの構造定義に従って、Kabat et al.(Kabat EA,Wu TT,Reid−Miller M、Parry HM,およびGottesman KS.1987.Sequences of Protein of Immunological Interest,U.S.department of Health and Human Services,NIH,ベセズダ,MD)によって定義された配列超可変性に従って、そしてMacCallum et al.(MacCallum RM,Martin ACR,およびThorton JM.1996.J.Mol.Biol.262:732−745)によって定義された潜在的抗原接触残基に従って広範に分類される。Kabat番号付けおよび定義によるマウスCDRループは、その全体がアクセプタヒトフレームワーク上へグラフトされる。Padlan(Padlan EA.1991.Mol Immunol.28:489−498)によって定義されたパッキング残基が同定され、Singer et al.(Singer II et al.1993.J.Immunol.150:2844−2857)で述べられた方法に従ってパッキング残基を保存する試みが行われる。フレームワーク配列内の各残基は、Harris and Bajorath(Harris L and Bajorath J.1995.Protein Science 4:306−310)で述べられているように、抗体ヒト化に関して低、中、または高「リスク位置」が割り当てられる。
一般に低リスク位置はヒトに維持される。同一でない中および高リスクアミノ酸位置の多くについては、ヒト化抗体配列の公開または専有コレクションを参照することができる。以前のヒト化抗体配列を再検討すると、ヒトまたはマウス(復帰突然変異)アミノ酸残基の包含が機能的結合活性を引き起こしたかどうかには注目されていなかった。置換が検討されるこれらの場合では、残基の機能的互換性を確認するためにアミノ酸置換マップ(D.Bordo and P.Argos.1991.J.Mol.Biol.217:721−729)を参照することができる。
置換のためのアミノ酸残基の選択は一部は、特定の位置におけるアミノ酸の特徴の調査、あるいは特定のアミノ酸の置換または変異誘発の効果の経験的観察によっても決定できる。たとえばアミノ酸が非ヒト可変領域フレームワーク残基と選択したヒト可変領域フレームワーク残基との間で異なるとき、ヒトフレームワークアミノ酸は通常、ドナー抗体からのアミノ酸が標準残基、インタフェースパッキング残基、または結合部位に近い異常または希少な残基である場合は、非ヒトドナー抗体からの同等のフレームワークアミノ酸によって置換されるべきである。
1つの実施形態において、本発明の結合分子は、ヒトアミノ酸残基の、アミノ酸残基がインタフェースパッキング残基である相当するマウスアミノ酸残基への少なくとも1つの復帰突然変異をさらに含む。「インタフェースパッキング残基」は、たとえばNovotny and Haber,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:4592−66(1985)によって定義されるような、VLとVHとの間のインタフェースにおける残基を含む。
1つの実施形態において、本発明の結合分子は、ヒトアミノ酸残基の、標準残基である相当するマウスアミノ酸残基への少なくとも1つの復帰突然変異をさらに含む。「標準残基」は、CDR配座にとって重要であることが公知である、標準または構造クラス内の保存フレームワーク残基である(Tramontano et al,J.Mol Biol.215:175(1990)、そのすべてが参照により本明細書によって組み入れられている)。標準残基は、軽鎖の2、25、27B、28、29、30、33、48、51、52、64、71、90、94および95ならびに重鎖の残基24、26、27 29、34、54、55、71および94を含む。追加の残基(たとえばCDR構造決定残基)は、Martin and Thorton(1996)J.Mol.Biol.263:800の方法に従って同定できる。
1つの実施形態において、本発明の結合分子は、ヒトアミノ酸残基の、アミノ酸残基がCDRと相互作用できる位置にある相当するマウスアミノ酸残基への少なくとも1つの復帰突然変異をさらに含む。特に軽鎖の位置2、48、64および71ならびに重鎖の26〜30、71および94におけるアミノ酸(Kabatによる番号付け)は、多くの抗体におけるCDRと相互作用できることが公知である。軽鎖内の位置35ならびに重鎖内の93および103におけるアミノ酸もCDRと相互作用しやすい。
置換のためのフレームワーク残基の選択の例示的な技法は、たとえばUS patent 5,585,089に述べられている。その特許には、改変できるヒトフレームワークアミノ酸の複数のカテゴリが述べられている。1つの実施形態において、カテゴリ2アミノ酸は相当するマウス残基に復帰突然変異される。特にカテゴリ2アミノ酸は、珍しい(すなわち「まれ」、それは本明細書で使用するようにその位置にて、代表的なデータバンクにおいてヒト重(それぞれ軽)鎖V領域配列の約20%未満で、しかし通常は約10%未満で発生するアミノ酸を示す)ヒトアクセプタ免疫グロブリンのフレームワーク内のアミノ酸であり、その位置のドナーアミノ酸がヒト配列にとって典型的である場合(すなわち「一般的」、それは本明細書で使用するように代表的なデータバンクにおいて配列の約25%超で、通常は約50%超で発生するアミノ酸を示す)、ヒトアクセプタアミノ酸ではなく非ヒトドナーアミノ酸(たとえばマウスアミノ酸)が選択される。この基準は、ヒトフレームワーク内の異型アミノ酸が抗体構造を妨害しないようにするのを補助する。その上、異型アミノ酸をヒト抗体にとってたまたま典型的であるドナー抗体からのアミノ酸で置換することによって、ヒト化抗体をより低い免疫原性で作製できる。
すべてのヒト軽鎖および重鎖可変領域配列は、相互に対して特に相同性であり、ある決定的な位置に同じアミノ酸を有する配列の「サブグループ」にそれぞれグループ化される(Kabatら、op.cit)。ヒトアクセプタ配列内のアミノ酸がヒト配列で「まれ」または「一般的」かどうかを判定するときに、同じサブグループ内のヒト配列のみをアクセプタ配列と見なすことがしばしば好ましい。
1つの実施形態において、カテゴリ3アミノ酸は相当するマウス残基に復帰突然変異される。カテゴリ3内の残基は、ヒト化免疫グロブリン鎖の一次配列内の3CDRの1個以上に隣接しており、アクセプタアミノ酸ではなくドナーアミノ酸を選択できる。これらのアミノ酸はCDR内のアミノ酸と特に相互作用しやすく、アクセプタから選択された場合、ドナーCDRを歪ませて、親和性を低下させやすい。その上、隣接アミノ酸は抗原と直接相互作用でき(Amitら、Science,233,747−753(1986))、これらのアミノ酸をドナーから選択することは、元の抗体で親和性を提供するすべての抗原接触を維持するために望ましい。
1つの実施形態において、カテゴリ4アミノ酸は、相当するマウス残基に復帰突然変異される。カテゴリ4アミノ酸は、元のドナー抗体に特有な3次元モデルにおいて、CDR外部のあるアミノ酸がCDRに近接しており、CDR内のアミノ酸と水素結合、ファンデルワールス力、疎水性相互作用などによって相互作用する良好な可能性を有することを示すアミノ酸である。これらのアミノ酸位置では、アクセプタ免疫グロブリンアミノ酸ではなくドナー免疫グロブリンアミノ酸を選択できる。この基準によるアミノ酸は一般に、CDR内の一部の原子の約3オングストロームユニット以内の側鎖原子を有し、上に挙げたような樹立された化学的力に従ってCDR原子と相互作用できる原子を含有する必要がある。
水素結合を形成できる原子の場合、3オングストロームはその核間で測定されるが、結合を形成しない原子では、3オングストロームはそのファンデルワールス表面間で測定される。それゆえ後者の場合、核は相互作用が可能であると見なされる原子では、約6オングストローム以内でなければならない(3+ファンデルワールス半径の和)。多くの場合、核は4または5〜6Å離れるであろう。アミノ酸がCDRと相互作用できるかを判定するには、構造の観点からこれらの8アミノ酸がよりフレームワークの一部として挙動するため、重鎖CDR2の最後の8アミノ酸をCDRの一部と見なさないことが好ましい。
CDR内のアミノ酸と相互作用できる、したがってカテゴリ4に属するフレームワークのアミノ酸は、別の方法で区別できる。各フレームワークアミノ酸の表面積にアクセスできる溶媒は2つの方法で:(1)無傷の抗体において、(2)抗体と、除去されたそのCDRより成る仮説上の分子において計算される。約10平方オングストローム以上のこれらの数の間の著しい差は、フレームワークアミノ酸の溶媒へのアクセスがCDRによって少なくとも部分的に遮断されることと、したがってアミノ酸がCDRと接触を行うこととを示す。アミノ酸の溶媒がアクセス可能な表面積は、当分野で公知であるアルゴリズムを使用して、抗体の3次元モデルに基づいて計算できる(たとえばConnolly,J. Appl.Cryst.16,548(1983)およびLee and Richards,J.Mol.Biol.55,379(1971))。フレームワークアミノ酸も場合により、次にCDRと接触する別のフレームワークアミノ酸の配座に影響をア及ぼすことによってCDRと間接的に相互作用できる。
フレームワーク内の複数の位置におけるアミノ酸は、特に軽鎖の位置2、48、64および71ならびに重鎖の26−30、71および94(Kabatによる番号付け、op.cit)における多くの抗体でのCDRと相互作用できることが公知であり(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196,901(1987),Chothia et al,Nature 342,877(1989)、およびTramontanoら、J.Mol.Biol.215,175(1990)、そのすべてが参照により本明細書によって組み入れられている)、したがってこれらのアミノ酸は概してカテゴリ4にあるだろう。通例、本発明のヒト化免疫グロブリンは、これらに加えてカテゴリ4にドナーアミノ酸(異なる場合)を含むであろう。軽鎖の位置35および重鎖の93および103にあるアミノ酸も、CDRと相互作用しやすい。したがって、1つの実施形態において、アクセプタアミノ酸よりもむしろ1個以上のドナーアミノ酸(それらが異なるとき)をヒト化免疫グロブリン内に含むことができる。これに対して、軽鎖の最初の5アミノ酸などの、カテゴリ4内のある位置は場合により、ヒト化免疫グロブリンでの親和性を失うことなくアクセプタ免疫グロブリンから選択できる。
ヒト化免疫グロブリン内のアミノ酸をドナーから選ぶときを説明する上のカテゴリに加えて、ヒト化免疫グロブリン内のあるアミノ酸は、それらがカテゴリ5に含まれる場合は、ドナーからもアクセプタからも選んではいけない。ドナー免疫グロブリン内の所与の位置のアミノ酸がヒト配列にとって「まれ」であり、上述したようにアクセプタ免疫グロブリン内のその位置のアミノ酸もヒト配列にとって「まれ」である場合、ヒト化免疫グロブリン内のその位置のアミノ酸は、ヒト配列に特有のあるアミノ酸となるように選択できる。好ましい選択は、アクセプタ配列と同じサブグループに属する公知のヒト配列内のその位置で最も頻繁に発生するアミノ酸である。
1つの実施形態において、本発明の結合分子は、3個のB3F6軽鎖CDR(CDRL1、CDRL2、およびCDRL3)およびヒト軽鎖フレームワーク領域を含む。1つの実施形態において、本発明の結合分子は、2および100から成る群より選択される少なくとも1つの位置における、ヒトアミノ酸残基の相当するマウスアミノ酸残基への少なくとも1つの復帰突然変異をさらに含む。1つの実施形態において、本発明の結合分子は、2および100から成る群より選択される1つの位置における、ヒトアミノ酸残基の相当するマウスアミノ酸残基への1つの復帰突然変異をさらに含む。別の実施形態において、結合分子は、ヒト化B3F6軽鎖の位置2および100における復帰突然変異を含む。別の実施形態において、本発明の結合分子は、ヒト化B3F6軽鎖の位置2における復帰突然変異(backmuation)および少なくとも1つの追加の復帰突然変異を含む。別の実施形態において、本発明の結合分子は、ヒト化B3F6軽鎖の位置100における復帰突然変異および少なくとも1つの追加の復帰突然変異を含む。
1つの実施形態において、本発明の結合分子は、3個のB3F6重鎖CDR(CDRH1、CDRH2、およびCDRH3)ならびにヒト重鎖フレームワーク領域を含む。1つの実施形態において、本発明の結合分子は、1、48、67、71、73、81、82b、93、および112から成る群より選択される少なくとも1つの位置における、ヒトアミノ酸残基の相当するマウスアミノ酸残基への少なくとも1つの復帰突然変異を含む。1つの実施形態において、本発明の結合分子は、1、48、67、71、73、81、82b、93、および112から成る群より選択される1つの位置における、ヒトアミノ酸残基の相当するマウスアミノ酸残基への1つの復帰突然変異を含む。1つの実施形態において、本発明の結合分子は、1、48、67、71、73、81、82b、93、および112から成る群より選択される2つの位置における、ヒトアミノ酸残基の相当するマウスアミノ酸残基への2つの復帰突然変異を含む。1つの実施形態において、本発明の結合分子は、1、48、67、71、73、81、82b、93、および112から成る群より選択される3つの位置における、ヒトアミノ酸残基の相当するマウスアミノ酸残基への3つの復帰突然変異を含む。1つの実施形態において、本発明の結合分子は、1、48、67、71、73、81、82b、93、および112から成る群より選択される4つの位置における、ヒトアミノ酸残基の相当するマウスアミノ酸残基への4つの復帰突然変異を含む。1つの実施形態において、本発明の結合分子は、1、48、67、71、73、81、82b、93、および112から成る群より選択される5つの位置における、ヒトアミノ酸残基の相当するマウスアミノ酸残基への5つの復帰突然変異を含む。1つの実施形態において、本発明の結合分子は、1、48、67、71、73、81、82b、93、および112から成る群より選択される6つのthree位置における、ヒトアミノ酸残基の相当するマウスアミノ酸残基への6つの復帰突然変異を含む。1つの実施形態において、本発明の結合分子は、1、48、67、71、73、81、82b、93、および112から成る群より選択される7つの位置における、ヒトアミノ酸残基の相当するマウスアミノ酸残基への7つの復帰突然変異を含む。1つの実施形態において、本発明の結合分子は、1、48、67、71、73、81、82b、93、および112から成る群より選択される8つの位置における、ヒトアミノ酸残基の相当するマウスアミノ酸残基への復帰突然変異をさらに含む。1つの実施形態において、本発明の結合分子は、1、48、67、71、73、81、82b、93、および112から成る群より選択されるヒトアミノ酸残基の相当するマウスアミノ酸残基への9つの復帰突然変異を含む。
1つの実施形態において、本発明は、B3F6抗体のヒト化可変領域およびそのようなヒト化可変領域を含むポリペプチドに関する。
1つの実施形態において、本発明の結合分子は、配列番号:52のアミノ酸1〜112で示すCDRグラフト軽鎖可変領域配列を含む。1つの実施形態において、本発明の結合分子は、配列番号:55のアミノ酸1〜121で示すCDRグラフト軽鎖可変領域配列を含む。
1つの実施形態において、本発明の結合分子は、配列番号:47で示す軽鎖バージョン1可変領域配列を含む。1つの実施形態において、本発明の結合分子は、配列番号:48で示す重鎖バージョン1可変領域配列を示す。1つの実施形態において、本発明の結合分子は、配列番号:49で示す重鎖バージョン2可変領域配列を含む。
別の実施形態において、本発明の結合分子は配列番号:50で示す軽鎖バージョン2可変領域配列を含む。1つの実施形態において、本発明の結合分子は、配列番号:51で示す重鎖バージョン3可変領域配列を含む。
1つの実施形態において、本発明の結合分子は、配列番号:52で示すCDRグラフト軽鎖を含む。1つの実施形態において、本発明の結合分子は、配列番号:53で示すバージョン1軽鎖を含む。1つの実施形態において、本発明の結合分子は、配列番号:54で示すバージョン2軽鎖を含む。
1つの実施形態において、本発明の結合分子は、配列番号:55で示すCDRグラフト重鎖を含む。1つの実施形態において、本発明の結合分子は、配列番号:56で示すバージョン1重鎖を含む。1つの実施形態において、本発明の結合分子は、配列番号:57で示すバージョン2重鎖を含む。1つの実施形態において、本発明の結合分子は配列番号:58で示すバージョン3重鎖を含む。
1つの実施形態において、本発明の結合分子は、配列番号:59で示すCDRグラフトドメイン欠失重鎖を含む。1つの実施形態において、本発明の結合分子は、配列番号:60で示すバージョン1ドメイン欠失重鎖を含む。1つの実施形態において、本発明の結合分子は、配列番号:61で示すバージョン2ドメイン欠失重鎖を含む。1つの実施形態において、本発明の結合分子は、配列番号:62で示すバージョン3ドメイン欠失重鎖を含む。
1つの実施形態において、本発明の結合分子は、任意のシグナル配列を含む、配列番号:63で示すCDRグラフト軽鎖配列を含む。1つの実施形態において、本発明の結合分子は、任意のシグナル配列を含む、配列番号:64で示すバージョン1軽鎖配列を含む。1つの実施形態において、本発明の結合分子は、任意のシグナル配列を含む、配列番号:65で示すバージョン2軽鎖配列を含む。
1つの実施形態において、本発明の結合分子は、任意のシグナル配列を含む、配列番号:66で示すCDRグラフト重鎖配列を含む。1つの実施形態において、本発明の結合分子は、任意のシグナル配列を含む、配列番号:67で示すバージョン1重鎖配列を含む。1つの実施形態において、本発明の結合分子は、任意のシグナル配列を含む、配列番号:68で示すバージョン2重鎖配列を含む。1つの実施形態において、本発明の結合分子は、任意のシグナル配列を含む、配列番号:69で示すバージョン3重鎖配列を含む。
1つの実施形態において、マウスB3F6 CDRおよびヒトフレームワーク領域を含む軽鎖は、マウスB3F6 CDRおよびヒトフレームワーク領域を含む重鎖と組合される。1つの実施形態において、マウスB3F6 CDRおよびヒトフレームワーク領域を含む軽鎖は、ヒトフレームワークアミノ酸残基の相当するマウスアミノ酸残基への少なくとも1個の復帰突然変異を含むB3F6重鎖のヒト化バージョンと組合される。別の実施形態において、ヒトフレームワークアミノ酸残基の相当するマウスアミノ酸残基への少なくとも1個の復帰突然変異を含むB3F6軽鎖のヒト化バージョンは、ヒトフレームワークアミノ酸残基の相当するマウスアミノ酸残基の少なくとも1個の復帰突然変異を含むB3F6重鎖のヒト化バージョンと組合される。別の実施形態において、マウスB3F6 CDRおよびヒトフレームワーク領域およびヒトフレームワークアミノ酸残基の相当するマウスアミノ酸残基への少なくとも1個の復帰突然変異を含む軽鎖は、B3F6重鎖のヒト化バージョンと組合される。例示的な組合せは、本実施例でさらに詳細に述べる。たとえば1つの実施形態において、本実施例のヒト化L1軽鎖は、バージョン1ヒト化B3F6抗体を作製するために、本実施例のH1重鎖と組合される。別の実施形態において、本実施例のヒト化L1軽鎖は、バージョン2ヒト化B3F6抗体を作製するために、本実施例のH2重鎖と組合される。別の実施形態において、本実施例のヒト化L1軽鎖は、バージョン3ヒト化B3F6抗体を作製するために、本実施例のH3重鎖と組合される。別の実施形態において、本実施例のヒト化L2軽鎖は、バージョン4ヒト化B3F6抗体を作製するために、本実施例のH1重鎖と組合される。別の実施形態において、本実施例のヒト化L2軽鎖は、バージョン5ヒト化B3F6抗体を作製するために、本実施例のH2重鎖と組合される。別の実施形態において、本実施例のヒト化L2軽鎖は、バージョン6ヒト化B3F6抗体を作製するために、本実施例のH3重鎖と組合される。そのような組合せが本発明の範囲内であることは当業者に明らかになるであろう。
1つの実施形態において、本発明の結合分子は、American Type Culture Collection(ATCC)10801 University Boulevard,マナッサス、バージニア州、20110に、ブダベスト条約の条項の下でATCCアクセション番号 で寄託された細胞系によって作製された抗体である。
II.結合分子の形
A.抗体またはその部分
1つの実施形態において、本発明の結合分子は抗体分子である。たとえば1つの実施形態において、本発明の結合分子はCriptoに結合するヒト化抗体またはその部分である。別の実施形態において、本発明の結合分子はCriptoに結合するヒト化抗体の抗原結合断片および抗体の第2の抗原結合断片を含む。
当分野の認識されたプロトコルを使用すると、たとえば抗体は好ましくは、哺乳類において関連抗原(たとえば精製腫瘍関連抗原あるいはそのような抗原を含む細胞または細胞抽出物)およびアジュバントの複数回の皮下または腹腔内注射によって産生される。この免疫化は通例、活性化された脾細胞またはリンパ球からの抗原反応性抗体の産生を含む免疫反応を誘発する。得られた抗体ポリクローナル調製物を提供するために動物の血清から収集できるが、モノクローナル抗体(MAb)の同種調製物を提供するために脾臓、リンパ節または末梢血から個々のリンパ球を単離することがしばしば望ましい。好ましくはリンパ球は、脾臓から得られる。
この公知のプロセス(Kohler et al.、Nature、256:495(1975))において、抗原を注射された哺乳類からの比較的短寿命の、または致死のリンパ球は不死腫瘍細胞系(たとえば骨髄腫細胞系)と融合され、それゆえ不死であり、かつB細胞の遺伝子コードされた抗体を産生できるハイブリッド細胞、すなわち「ハイブリドーマ」を生成する。得られたハイブリッドは、単一抗体の形成のための特異的遺伝子を含む各個々の株を用いた選択、希釈、および再増殖によって、単一の遺伝子株に分離される。それらは所望の抗原に対して同種であり、その純粋な遺伝的系統に関連して「モノクローナル」と呼ばれる抗体を産生する。
そのように調製されたハイブリドーマ細胞を、好ましくは融合してない親骨髄腫細胞の増殖または生存を阻害する1つ以上の物質を含有する適切な培地に播種して、増殖させる。当業者は、ハイブリドーマの形成、選択および成長のための試薬、細胞系および培地は多数の供給源から市販されており、標準化プロトコルが十分に確立されていることを認識するであろう。概して、ハイブリドーマ細胞が成長している培地は、所望の抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降によって、または試験管内アッセイ、たとえばラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって決定される。所望の特異性、親和性および/または結合の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンは希釈手順を制限することによりサブクローニングされ、標準方法によって増殖される(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp59−103(Academic Press,1986))。サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体培地、腹水または血清から、従来の精製手順、たとえばタンパク質−A、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析または親和性クロマトグラフィーによって分離できることがさらに認識されるであろう。
別の実施形態において、所望のモノクローナル抗体をコードするDNAは、ただちに単離され、従来の手順を使用して(たとえばマウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)配列決定できる。単離およびサブクローニングしたハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい供給源として作用する。いったん単離されると、DNAは発現ベクター内に配置でき、次にそうでなければ免疫グロブリンを産生しない原核または真核宿主細胞、たとえばE.coli細胞,サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞または骨髄腫細胞に移入される。さらに詳細には、単離したDNA(本明細書で述べるように合成できる)を使用して、参照により本明細書に組み入れられている、1995年1月25日に出願されたNewman et al,U.S.Pat.No.5,658,570で述べられているように、抗体製造のために定常および可変領域配列クローニングできる。本質的に、これは選択した細胞からのRNAの抽出、cDNAへの変換、およびIg特異性プライマーを使用するPCRによる増幅を含む。この目的のために適切なプライマーは、U.S.Pat.No.5,658,570にも述べられている。以下でさらに詳細に述べるように、所望の抗体を発現する変換された細胞を比較的大量に増殖させて、免疫グロブリンの臨床用および商用供給物を提供できる。
当業者は、抗体または抗体断片(たとえば抗原結合部位)をコードするDNAも抗体ファージライブラリから、たとえばpdファージまたはFdファージミド技術を使用して得られることも認識するであろう。例示的な方法はたとえばEP 368 684 B1;U.S.patent.5,969,108,Hoogenboom,H.R.およびChames.2000.Immunol.Today 21:371;Nagy et al.2002.Nat.Med.8:801;Huie et al.2001.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:2682;Lui et al.2002.J.Mol.Biol.315:1063に述べられており、そのぞれぞれが参照により本明細書に組み入れられている。複数の刊行物(たとえばMarks et al.Bio/Technology 10:779−783(1992))が、鎖シャッフリングによる高親和性ヒト抗体の産生はもちろんのこと、大型ファージライブラリを構築するための方法としてのコンビナトリアル感染および生体内組換えについても述べている。別の実施形態において、リボソーム提示を使用して、バクテリオファージを提示プラットフォームとして使用することができる(たとえばHanes et al.2000.Nat.Biotechnol.18:1287;Wilson et al.2001.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:3750;またはIrving et al.2001 J.Immunol.Methods 248:31を参照。なお別の実施形態において、細胞表面ライブラリを抗体についてスクリーニングできる(Boder et al.2000.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:10701;Daugherty et al.2000 J Immunol.Methods 243:211。そのような手順は、モノクローナル抗体の単離および続いてのクローニングのための在来のハイブリドーマ技法の代替方法を提供する。
本発明の別の実施形態において、本発明の結合分子の結合部位は、ヒトまたは実質的にヒト抗体によって提供できる。ヒトまたは実質的にヒト抗体は、内因性免疫グロブリン産生のできないトランスジェニック動物内で作製できる(たとえばマウス)(たとえばU.S.Pat.Nos.6,075,181、5,939,598、5,591,669および5,589,369を参照、そのそれぞれが参照により本明細書に組み入れられている)。たとえばキメラおよび生殖系列ミュータントマウスにおける抗体重鎖連結領域のホモ接合型欠失は、内因性抗体産生の完全な阻害を引き起こすことが述べられている。ヒト免疫グロブリン遺伝子アレイのそのような生殖系列ミュータントマウスへの移入は、抗原チャレンジ時のヒト抗体の産生を引き起こすであろう。SCIDマウスを使用してヒト抗体を産生する別の好ましい手段は、参照により本明細書に組み入れられている、U.S.Pat.No.5,811,524に開示されている。これらのヒト抗体に関連する遺伝物質も本明細書で述べるように単離および操作できることが認識されるであろう。
組換え抗体を産生するためのなお別の非常に効率的な手段は、Newman,Biotechnology,10:1455−1460(1992)によって開示されている。特にこの技法は、サル可変ドメインおよびヒト定常配列を含有する霊長類化抗体の産生を引き起こす。この参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている。その上、この技法は同一譲受人に譲渡されたU.S.Pat.Nos.5,658,570、5,693,780および5,756,096に述べられており、そのそれぞれが参照により本明細書に組み入れられている。
別の実施形態において、リンパ球はマイクロ操作によって選択され、可変遺伝子が単離される。たとえば末梢血単核細胞は、免疫化哺乳類から単離でき、試験管内で約7日間培養できる。培養物は基準を満足する特異性IgGについてスクリーニングできる。陽性ウェルからの細胞を単離できる。個々のIg産生B細胞は、FACSによって、または補体仲介溶血プラークアッセイでそれらを同定することによって単離できる。Ig産生B細胞は、チューブ内にマイクロ操作することができ、VHおよびVL遺伝子はたとえばRT−PCRを用いて増幅できる。VHおよびVL遺伝子は、抗体発現ベクター内にクローニングして、発現のために細胞(たとえば真核または原核細胞)内に移入できる。
その上、本発明の結合分子を産生するのに有用な遺伝子配列は、多数の供給源から入手できる。たとえば上で広範に述べたように、各種のヒト抗体遺伝子は、公的にアクセス可能な寄託株の形で利用できる。抗体および抗体コード遺伝子の多くの配列が公開されており、適切な抗体遺伝子は当分野で認識された技法を使用して、これらの配列から化学合成できる。本発明のこの態様に適合するオリゴヌクレオチド合成技法は当業者に公知であり、複数の市販の自動合成機のいずれかを使用して実施できる。加えて本明細書で述べる複数の種類の重鎖および軽鎖をコードするDNA配列は、市販のDNA合成販売者のサービスを通じて入手できる。上述の方法のいずれかを使用して得た遺伝物質は次に改変または合成されて、本発明のポリペプチドを提供する。
あるいは抗体産生細胞系は、当業者に公知の技法を使用して選択および培養できる。そのような技法は各種の実験マニュアルおよび主要刊行物に述べられている。この点で、以下で述べるような本発明での使用に適切な技法は、付録を含めてその全体が参照により本明細書に組み入れられている、Current Protocols in Immunology,Coliganら、Eds.,Green Publishing Associates and Wiley−Interscience,John Wiley and Sons,New York(1991)に述べられている。
本発明の範囲がさらに抗原結合DNA配列のすべての対立遺伝子、改変体および変異を含むことが、さらに認識されるであろう。
公知であるように、RNAは元のハイブリドーマ細胞から、または他の変換された細胞から標準技法、たとえばグアニジニウムイソチオシアナート抽出および沈降と、それに続く遠心分離またはクロマトグラフィーによって単離できる。望ましい場合、mRNAは全RNAから標準技法、たとえばオリゴdTセルロースでのクロマトグラフィーによって単離できる。適切な技法は当分野でよく知られている。
1つの実施形態において、抗体の軽鎖および重鎖をコードするcDNAは、公知の方法に従って逆転写酵素およびDNAポリメラーゼを使用して同時にまたは個別にのどちらかで作製できる。PCRは、コンセンサス定常領域プライマーによって、または公開された重鎖および軽鎖DNAならびにアミノ酸配列に基づいてより特異的なプライマーによって開始できる。上述したように、PCRは抗体軽鎖および重鎖をコードするDNAクローンを単離するためにも使用できる。この場合、ライブラリは、コンセンサスプライマーまたはより大きい相同性プローブ、たとえばマウス定常領域プローブによってスクリーニングできる。
DNA、通例プラスミドDNAは、当分野で公知の技法を使用して細胞から単離し、制限酵素マッピングをして、たとえば組換えDNA技法に関連する上述の参考文献で詳細に述べられている、標準の公知の技法に従って配列決定できる。もちろんDNAは、単離プロセスまたは次の解析中のいずれの時点にでも合成できる。本発明の結合分子で使用するための例示的な抗体またはその断片は、本明細書で述べる標的を認識する抗体を含む。
ある実施形態において、抗体の抗原結合断片は、当分野で公知の技法を使用して産生できる。
B.修飾抗体
1つの実施形態において、本発明の結合分子は、修飾抗体、すなわちおよび抗体に由来するが、野生型抗体ではない分子、たとえばミニボディ(ミニボディは当分野で述べられている方法を使用して作製できる(たとえばUS patent 5,837,821またはWO 94/09817A1を参照))などを含むか、またはそれより成る。
1.ドメイン欠失抗体
1つの実施形態において、本発明の結合分子は、1個以上のドメインが部分的にまたは完全に欠失している合成定常領域を含む(「ドメイン欠失抗体」)。特に好ましい実施形態において、適合性修飾抗体は、CH2ドメイン全体が除去されたドメイン欠失構築物または改変体を含むであろう(ΔCH2構築物)。他の好ましい実施形態では、短い結合ペプチドを欠失したドメインと置換して、可変領域の柔軟性および移動の自由を与えることができる。当業者は、抗体の異化率に対するCH2ドメインの調節特性のために、そのような構築物が特に好ましいことを認識するであろう。
別の実施形態において、本発明の修飾抗体はCH2ドメイン欠失抗体である。ドメイン欠失構築物は、IgG1ヒト定常ドメインをコードするベクター(たとえばIDEC Pharmaceuticals、サンディエゴから)を使用して得ることができる(たとえばWO 02/060955A2およびWO02/096948A2を参照)。この例示的なベクターは、CH2ドメインを欠失して、ドメイン欠失IgG1定常領域を発現する合成ベクターを提供するように組換えられる。次にC2B8抗体、5E8抗体、B3F6抗体のマウス可変領域、またはヒト化CC49抗体の可変領域をコードする遺伝子が、合成ベクターに挿入され、クローニングされた。変換された細胞内で発現されたとき、これらのベクターはC2B8.ΔCH2、5E8.ΔCH2、B3F6.ΔCH2またはhuCC49.ΔCH2またはそれぞれを提供した。これらの構築物は、それらをモノマーサブユニットの特に魅力的な候補とする多くの特性を示す。ヒト化ドメイン欠失B3F6抗体も産生され、本実施例でより詳細に述べられている。
これらの例示的な構築物が、CH3ドメインをそれぞれの本発明のポリペプチドのヒンジ領域に直接融合するように組換えられたことが注目されるであろう。他の構築物では、ヒンジ領域と合成CH2および/またはCH3ドメインとの間にペプチドスペーサを提供することが望ましい。たとえばCH2ドメインが欠失し、残りのCH3ドメイン(合成または非合成)が5〜20アミノ酸スペーサを備えたヒンジ領域に連結される適合性構築物を発現させることができる。たとえば定常ドメインの調節要素が遊離したままでアクセスできるように、またはヒンジ領域が柔軟なままであるように、そのようなスペーサを添加できる。たとえばCH2ドメインおよび下部ヒンジ領域と置換された短いアミノ酸スペーサGGSSGGGGSG(配列番号8)を有するドメイン欠失B3F6構築物(B3F6.ΔCH2[gly/ser])を使用できる。他の例示的な結合ペプチドを表2に示す。これらの結合ペプチドは、本発明のポリペプチドにいずれかと共に使用できる。好ましくは、結合ペプチドは、CH2重鎖ドメインを欠失したポリペプチドと共に使用される。好ましくは本発明と適合するいずれのリンカーも、比較的非免疫原性であり、本発明のポリペプチドの非共有結合を阻害しない。
1つの実施形態において、本発明のポリペプチドは、それがモノマーサブユニット間の所望の共有または非共有結合を許容する限り、2、3個の、またはわずか1個のアミノ酸の欠失または置換を有する免疫グロブリン重鎖を含む。たとえばCH2ドメインの選択した範囲における1個のアミノ酸の変異は、Fc結合を実質的に減少させ、それにより腫瘍局在化を増加させるのに十分である。同様に、調節されるエフェクタ機能(たとえば補体結合)を制御する1個以上の定常領域ドメインのその一部を単に欠失させることが望ましい。定常領域のそのような部分欠失は、抗体(血清半減期)の選択された特徴を改善でき、同時に対象定常領域ドメインに関連する他の望ましい機能を損なわれないままにする。その上、上で言及したように、開示した抗体の定常領域は、得られた構築物のプロフィールを向上させる1個以上のアミノ酸の変異または置換によって合成できる。この点で、実質的に修飾抗体の配置および免疫原性プロフィールを維持しながら、保存結合部位(たとえばFc結合)によって提供された結合を妨害することが可能である。なお他の好ましい実施形態は、エフェクタ機能などの望ましい特徴を向上させるための、あるいはさらなる細胞毒または炭化水素付着を与えるための、1個以上のアミノ酸の定常領域への付加を含みうる。そのような実施形態では、選択した定常領域ドメインに由来する特異性配列を挿入または複製することが望ましい。
定常領域が複数のエフェクタ機能を仲介することが当分野で公知である。たとえば補体のC1成分の抗体への結合は、補体系を活性化する。補体の活性化は、細胞病原体のオプソニン化および溶解において重要である。補体の活性化は炎症反応も刺激して、自己免疫過敏症にも関与しうる。さらに抗体はFc領域を介して細胞に結合し、抗体Fc領域のFcレセプタ部位は細胞のFcレセプタ(FcR)に結合する。IgG(ガンマレセプタ)、IgE(イプシロンレセプタ)、IgA(アルファレセプタ)およびIgM(ミューレセプタ)を含む、異なるクラスの抗体に対して特異性である多くのFcレセプタである。抗体の細胞表面上のFcレセプタへの結合は、抗体被覆粒子の貧食および破壊、免疫複合体の排除、キラー細胞による抗体被覆標的細胞の溶解(抗体依存性細胞仲介細胞毒性、またはADCCと呼ばれる)、炎症メディエータの放出、免疫グロブリン産生の胎盤通過および制御を含む、多くの重要で多様な生体反応を誘発する。
1つの実施形態において、エフェクタ機能は、標的細胞を枯渇させることができない、またはFc改変体を作製すると考えられるIgG4抗体の定常領域を使用することによって除去または低下させることができ、エフェクタ機能にとって重要なFc領域の残基は当分野で公知の技法、たとえばU.S.Pat.No.5,585,097を使用して変異される。たとえば定常領域ドメインの欠失または不活性化(点変異または他の手段によって)は、循環する修飾抗体のFcレセプタ結合を減少させ、それにより腫瘍局在化を増加させる。他の場合では、本発明と一致する定常領域修飾は、補体(compliment)結合を抑制して、それゆえ接合細胞毒の血清半減期および非特異的結合を低減させることがありうる。定常領域のなお他の修飾を使用して、抗原特異性または抗体柔軟性の上昇による局在化の向上を可能にするジスルフィド結合またはオリゴサッカライド部分を修飾できる。より一般には当業者は、本明細書で述べたように修飾した抗体がただちに認識できる、またはできない多くの微妙な効果を発揮しうることを理解するであろう。しかしながら得られた修飾の生理学的プロフィール、生物学的利用能および他の生化学効果、たとえば腫瘍局在化、体内分布および血清半減期は、過度の実験をせずに公知の免疫技法を使用して、容易に測定および定量できる。
1つの実施形態において、抗体の修飾形は、前駆体全体または親抗体から当分野で公知の技法を使用して作製できる。例示的な技法は以下でさらに詳細に述べる。
重鎖部分を含むポリペプチドは、免疫グロブリン分子に由来しない他のアミノ酸配列または部分を含んでいても、いなくてもよい。そのような修飾は以下でさらに詳細に述べる。たとえば1つの実施形態において、本発明のポリペプチドは、柔軟性リンカー配列を含むことができる。別の実施形態において、ポリペプチドは薬物またはPEGなどの機能性部分を付加するために修飾できる。
2.二重特異性結合分子
1つの実施形態において、本発明の結合分子は二重特異性である。たとえば1つの実施形態において、結合分子はCriptoおよび別の分子に結合する。1つの実施形態において、本発明の二重特異性結合分子は、1個以上の腫瘍分子または腫瘍細胞増殖に関連する分子に結合する追加の結合部位を含むことができる。1つの実施形態において、腫瘍性障害では、開示したポリペプチドの抗原結合部位(すなわち可変領域あるいはその免疫反応性断片または組換え)は、悪性疾患の部位にて選択された腫瘍関連分子と結合する。新形成腫瘍細胞増殖に関連する報告された分子の数、そして関連抗体の数を考えると、当業者は、請求された結合分子の結合部位がしたがって多数の抗体全体のいずれか1つに由来することを認識するであろう。さらに一般的には、本発明で使用する結合部位は、選択した条件に関連する標的またはマーカーと反応するいずれかの抗体(文献で以前に報告された抗体も含む)から入手または由来しうる。さらに開示したポリペプチドを産生するために使用する親または前駆体抗体、あるいはその断片は、マウス、ヒト、キメラ、ヒト化、非ヒト霊長類または霊長類化でありうる。他の好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドは、本明細書で述べるような改変された定常ドメインを有する単一の鎖抗体構築物(参照により本明細書に組み入れられているU.S.Pat.No.5,892,019に開示されているような)を含むことができる。結果として、抗体のこれらの種類のいずれを使用しても、本発明の二重特異性分子内に包含できる結合部位を得ることができる。
本明細書で使用するように、「腫瘍関連分子」は、概して腫瘍細胞と関連している、すなわち正常細胞と比較して同じまたは高い程度で発現される、いずれの抗原または標的分子も意味する。さらに一般的には、腫瘍関連分子は、非悪性細胞でのその発現の無関係に、新生細胞における免疫反応性抗体の局在化を提供するいずれの分子も含む。そのような分子は比較的、腫瘍特異性であり、その発現は悪性細胞の表面に制限される。あるいはそのような分子は悪性および非悪性細胞の両方で見出すことができる。たとえばCD20は、悪性および非悪性B細胞の両方の表面に見出されるpan B抗原であり、非ホジキンリンパ腫の処置のための免疫治療抗体にきわめて有効な標的であることが判明している。
この点で、pan T細胞抗原、たとえばCD2、CD3、CD5、CD6およびCD7も本発明の意味の中での腫瘍関連分子を含む。なお他の例示的な腫瘍関連分子は、これに限定されるわけではないが、Lewis Y、MAGE−1、MAGE−3、MUC−1、HPV 16、HPV E6 & E7、TAG−72、CEA、L6−抗原、CD 19、CD22、CD37、CD52、HLA−DR、EGFレセプタおよびHER2レセプタを含む。多くの場合、これらの抗原の各免疫反応性抗体は、文献で報告されている。当業者は、これらの抗体のそれぞれが本発明による本発明のポリペプチドの前駆体として作用できることを認識するであろう。
したがって本発明の結合部位は、腫瘍関連分子と反応する多くの抗体のいずれか1つから由来、産生または製造しうる。1つの実施形態において、結合部位は、血清半減期の短縮などの所望の生化学特徴を与えるために1個以上の定常領域ドメインの少なくとも部分が欠失または改変される、一般的な遺伝子組換え技法を使用して得られる合成またはドメイン欠失抗体である。さらに詳細には、下で例示されるように、当業者は、本発明によるモノマーサブユニットとして使用される本発明のポリペプチドを提供するために、対象抗体の可変および/または定常領域に相当する遺伝子配列をただちに単離でき、適切なヌクレオチドを欠失および改変することができる。適合する本発明のポリペプチドが、十分に確立されたプロトコルを使用して臨床または商業規模で発現および産生できることがさらに認識されるであろう。
腫瘍関連分子と反応する以前に報告された抗体を本明細書で述べるように改変して、本発明のポリペプチドに1個以上の結合部位を提供できる。対象ポリペプチドに結合部位を提供するために使用できる(または結合部位が由来しうる)例示的な抗体は、これに限定されるわけではないが、2B8およびC2B8(Zevalin(登録商標)およびRituxan(登録商標)、IDEC Pharmaceuticals Corp.、サンディエゴ)、Lym 1およびLym 2(Techniclone)、LL2(Immunomedics Corp.、ニュージャージー)、HER2(Herceptin(登録商標)、Genentech Inc.、サウスサンフランシスコ)、B1(Bexxar(登録商標)、Coulter Pharm.、サンフランシスコ)、Campath(登録商標)(Millennium Pharmaceuticals、ケンブリッジ)、MB1、BH3、B4、B72.3(Cytogen Corp.)、CC49(国立癌研究所)および5E10(アイオワ大学)を含む。好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドは、すぐ上で列挙した抗体と同じ腫瘍関連抗原に結合するであろう。特に好ましい実施形態において、ポリペプチドは、2B8、C2B8、CC49およびC5E10と同じ抗原に由来するか、それらに結合し、なおさらに好ましくはドメイン欠失抗体(すなわちΔCH2抗体)を含むであろう。
第1の好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドはRituxan(登録商標)と同じ腫瘍関連抗原に結合するであろう。Rituxan(登録商標)(リツキシマブ、IDEC−C2B8およびC2B8としても公知)は、ヒトB細胞リンパ腫の処置のための第1のFDA認可モノクローナル抗体であった(そのそれぞれが参照により本明細書に組み入れられている、U.S.Patent Nos.5,843,439;5,776,456および5,736,137を参照)。Y2B8(90Y標識2B8;Zevalin(登録商標);イブリツモマブチウキセタン)は、C2B8のマウス親である。Rituxan(登録商標)は、増殖阻害性であり、伝えられるところによれば、試験管内あるリンパ腫細胞系を化学治療剤によるアポトーシスに対して感作させるキメラ抗CD20モノクローナル抗体である。該抗体はヒト補体に効率的に結合し、強力なFcR結合を有し、補体依存性(CDC)および抗体依存性(ADCC)機構の両方を介して、試験管内でヒトリンパ球を有効に死滅させる(Reff et al,Blood 83:435−445(1994))。当業者は、本開示によるCriptoおよびCD20+に結合する二重特異性結合分子が、CD20+悪性疾患を示す患者を有効に処置するために結合形または非結合形で使用できることを認識するであろう。さらに一般的には、本明細書で開示するポリペプチドを「裸の」すなわち非結合状態で、または多くの障害のいずれか1つを有効に処置する細胞傷害性薬に結合させた状態のどちらかで使用できることを繰り返し言う必要がある。
本発明の他の好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドの二重特異性は、CC49抗体からの(またはCC49抗体に由来する)結合部位を含むことができる。以前に暗示したように、CC49は、ヒト起源、特にLS174T腫瘍細胞系のある腫瘍細胞の表面に結合されたヒト腫瘍関連抗原TAG−72に結合する。LS174T[American Type Culture Collection(本明細書ではATCC)No.CL 188]は、LS180(ATCC No.CL 187)結腸線癌系の改変体である。
TAG−72に対する結合特異性を有する多くのマウスモノクローナル抗体が開発されていることがさらに認識されるであろう。B72.3と呼ばれるこれらのモノクローナル抗体の1つは、ハイブリドーマB72.3(ATCC No.HB−8108)によって産生されたマウスIgG1である。B72.3は、ヒト乳癌抽出物を免疫原として使用して開発された第1世代モノクローナル抗体である(たとえばそのそれぞれが参照により本明細書に組み入れられている、Colcherら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),78:3199−3203(1981);ならびにU.S.Pat.Nos.4,522,918および4,612,282を参照)。TAG−72に対して作られた他のモノクローナル抗体は、「CC」(結腸癌用)と呼ばれる。Schlom et al.(参照により本明細書に組み入れられている、U.S.Pat.No.5,512,443)によって述べられたように、CCモノクローナル抗体は、B72.3で精製されたTAG−72を使用して調製された第2の世代マウスモノクローナル抗体のファミリである。TAG−72へのその比較的良好な結合親和性のために、次のCC抗体がATCCに寄託されており、アクセス制限が要求されている:CC49(ATCC No.HB 9459);CC83(ATCC No.HB 9453);CC46(ATCC No.HB 9458);CC92(ATTCC No.HB 9454);CC30(ATCC No.HB 9457);CC11(ATCC No.9455);およびCC15(ATCC No.HB 9460)。U.S.P.N.5,512,443は、当分野で公知の組換えDNA技法によって、たとえばヒト定常領域(Fc)ドメインでマウス定常領域を置換することにより、開示した抗体をそのキメラ形に改変できることをさらに教示している。マウスおよびキメラ抗TAG−72抗体を開示する以外に、Schlom et al.PCT/US99/25552で開示されたヒト化CC49抗体の改変体およびU.S.Pat.No.5,892,019で開示された単鎖構築物も産生しており、そのそれぞれが参照により本明細書に組み入れられている。当業者は、上述の抗体、構築物または組換え、およびその変形それぞれが本発明の二重特異性分子を作製するのに合成および使用できることを認識するであろう。
上述した抗TAG−72抗体に加えて、様々なグループがドメイン欠失CC49およびB72.3抗体の構成および部分キャラクタリゼーションについても報告している(たとえばCalvo et al.Cancer Biotherapy、8(l):95−109(1993)、Slavin−Chiorini et al.Int.J.Cancer 53:97−103(1993)およびSlavin−Chiorini et al.Cancer.Res.55:5957−5967(1995)。そのような構築物も本発明の二重特異性結合分子に含めることができる。
1つの実施形態において、本発明の二重特異性結合分子は、CD23に結合する(U.S.patent 6,011,138)。好ましい実施形態において、本発明の二重特異性結合分子は、5E8抗体と同じエピトープに結合する結合部位を含む。別の実施形態において、本発明の結合分子は抗CD23抗体、たとえば5E8抗体からの少なくとも1個のCDRを含む。
別の実施形態において、本発明の二重特異性分子は、C5E10抗体(またはC5E10抗体と同じ腫瘍関連抗原に結合する結合部位)に由来する結合部位を含む。同時係属出願09/104,717で述べたように、C5E10は、前立腺腫瘍細胞系(たとえばDU145、PC3、またはND1)に対して特異性であると思われる115kDaの糖タンパク質決定基を認識する抗体である。それゆえ本発明と併せて、C5E10抗体によって認識された同じ腫瘍関連抗原に特異的に結合する二重特異性ポリペプチド(たとえばCH2ドメイン欠失抗体)は、腫瘍性障害の処置のためで接合または非接合形で産生および使用できる。特に好ましい実施形態において、結合分子は、ATCCアクセションNo.PTA−865を有するハイブリドーマ細胞系から分泌されたC5E10抗体の抗原結合領域の全部または一部に由来するか、あるいはそれらを含むであろう。得られた結合分子は次に、以下で述べるように放射性核種に接合させて、本発明に従って前立腺癌に罹患した患者に投与することができる。
別の実施形態において、リガンドは、たとえば特定のレセプタへの結合を付与するために本発明の結合分子に含まれうるか、またはレセプタは循環からリガンドを除去するために結合分子に包含させることができる。対象二重特異性結合分子に含まれうる例示的なリガンドおよびそのレセプタは以下を含む:
a.サイトカインまたはサイトカインレセプタ
サイトカインはリンパ球の増殖、分化、および機能活性化に対する多面発現効果を有する。各種のサイトカイン、またはそのレセプタ連結部分は本発明の融合タンパク質で利用できる。例示的なサイトカインは、インターロイキン(たとえばIL−I、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−10、IL−Il、IL−12、IL−13、およびIL−18)、結腸刺激因子(CSF)(たとえば顆粒球CSF(G−CSF)、顆粒球−マクロファージCSF(GM−CSF)、および単球マクロファージCSF(M−CSF))、腫瘍壊死因子(TNF)アルファおよびベータおよびインターフェロン、たとえばインターフェロン−α、β、またはγ(US Patent Nos.4,925,793および4,929,554)を含む。
サイトカインレセプタは通例、リガンド特異性アルファ鎖および共通ベータ鎖より成る。例示的なサイトカインレセプタは、GM−CSF、IL−3(US Patent No.5,639,605)、IL−4(US Patent No.5,599,905)、IL−5(US Patent No.5,453,491)、IFNγ(EP0240975)のレセプタ、そしてレセプタのTNFファミリ(たとえばTNFα(たとえばTNFR−1(EP 417,563)、TNFR−2(EP 417,014)リンホトキシンベータレセプタ)を含む。
b.接着タンパク質またはそのレセプタ
接着分子は、細胞を互いに相互作用させる膜結合タンパク質である。ホーミングレセプタおよび細胞接着分子を含む、そのレセプタ連結部分の各種の接着タンパク質は、本発明の結合分子に包含させることができる。白血球ホーミングレセプタは炎症の間に白血球細胞表面で発現され、細胞外マトリクス成分への結合を仲介するβ−1インテグリン(たとえばVLA−1、2、3、4、5、および6)、および血管内皮上の細胞接着分子(CAM)を結合するβ2−インテグリン(たとえばLFA−1、LPAM−1、CR3、およびCR4)を含む。例示的なCAMは、ICAM−1、ICAM−2、VCAM−1、およびMAdCAM−1を含む。他のCAMは、E−セレクチン、L−セレクチン、およびP−セレクチンを含むセレクチンファミリのCAMも含む。
c.ケモカインまたはそのレセプタ
ケモカイン、すなわち感染部位へ向けた白血球の移動を刺激する走化性タンパク質は、本発明の結合分子に包含させることができる。例示的なケモカインは、マクロファージ炎症タンパク質(MIP−1−αおよびMIP−1−β),好中球走化性因子、およびRANTES(regulated on activation normally T−cell expressed and secreted)を含む。
d.増殖因子または増殖因子レセプタ
増殖因子またはそのレセプタ(あるいはレセプタ結合またはそのリガンド連結部分)あるいはそれらに結合する分子は、本発明の結合分子に包含させることができる。例示的な増殖因子は、アンギオポエチン、血管内皮増殖因子(VEGF)およびそのアイソフォーム(U.S.Pat.No.5,194,596);表皮増殖因子(EGF);aFGFおよびbFGFを含む繊維芽細胞増殖因子(FGF);心房性ナトリウム利尿因子(ANF);肝臓増殖因子(HGF;US Patent Nos.5,227,158および6,099,841)、神経栄養因子、たとえば骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、−4、−5、または−6(NT−3、NT−4、NT−5、またはNT−6)、あるいは神経増殖因子、たとえばNGF−β血小板由来増殖因子(PDGF)(U.S.Pat.Nos.4,889,919、4,845,075、5,910,574,および5,877,016);形質転換増殖因子(TGF)、たとえばTGF−アルファおよびTGF−ベータ(WO 90/14359)、骨形成タンパク質(BMP)を含む骨誘導因子;インスリン様増殖因子−Iおよび−II(IGF−IおよびIGF−II;US Patent Nos.6,403,764および6,506,874);エリスロポエチン(EPO);幹細胞因子(SCF)、トロンボポエチン(c−Mplリガンド)、およびWntポリペプチド(US Patent No.6,159,462)を含む。
使用できる例示的な増殖因子レセプタは、EGFレセプタ(EGFR);VEGFレセプタ(たとえばFlt1またはFlk1/KDR)、PDGFレセプタ(WO 90/14425);HGFレセプタ(US Patent Nos.5,648,273および5,686,292);IGFレセプタ(たとえばIGFR1およびIGFR2)ならびにNGF、BDNF、およびNT−3に結合する、p75NTRまたはp75とも呼ばれる低親和性レセプタ(LNGFR)と、レセプタチロシンキナーゼのtrkファミリのメンバーである高親和性レセプタ(たとえばtrkA、trkB(EP 455,460)、trkC(EP 522,530))を含む神経栄養性レセプタを含む。別の実施形態において、IGFR1およびVEGFの両方が標的化される。なお別の実施形態、VLA4およびVEGFが標的化される。
他の細胞表面レセプタおよび/またはそのリガンドも標的化できる(たとえばTNFファミリレセプタまたはそのリガンド(本明細書でさらに詳細に述べられるように)。
e.ホルモン
本発明の結合分子で標的化剤として使用するためにそれらに結合する例示的な成長ホルモンまたは分子は、レニン、ヒト成長ホルモン(HGH;US Patent No.5,834,598)、N−メチオニルヒト成長ホルモン;ウシ成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン(PTH);甲状腺刺激ホルモン(TSH);チロキシン;プロインスリンおよびインスリン(US Patent Nos.5,157,021および6,576,608);卵胞刺激ホルモン(FSH)、カルシトニン、黄体形成ホルモン(LH)、レプチン、グルカゴン;ボンベシン;ソマトロピン;ミュラー管阻害物質;リラキシンおよびプロリラキシン;ゴナドトロピン関連ペプチド;プロラクチン;胎盤ラクトゲン;OBタンパク質;またはミュラー管阻害物質を含む。
f.凝固因子
本発明の結合分子で標的化剤として使用するための例示的な血液凝固因子は、凝固因子(たとえば因子V、VII、VIII、X、LX、XI、XIIおよびXIII、フォンウィルブランド因子);組織因子(U.S. Pat.Nos.5,346,991、5,349,991、5,726,147、および6,596,84);トロンビンおよびプロトロンビン;フィブリンおよびフィブリノゲン;プラスミンおよびプラスミノーゲン;プラスミノーゲンアクチベータ、たとえばウロキナーゼまたはヒト尿素または組織型プラスミノーゲンアクチベータ(t−PA)を含む。
C.融合タンパク質
本発明は、1個以上の免疫グロブリンドメインを含む結合分子にも関する。1つの実施形態において、本発明の融合タンパク質は、結合ドメイン(少なくとも1個の結合部位を含む)およびダイマー化ドメイン(少なくとも1個の重鎖部分を含む)を含む。たとえば1つの実施形態において、本発明の結合分子は少なくとも1個のヒト化B3F6結合部位およびダイマー化ドメインを含みうる。対象融合タンパク質は二重特異性である(第1の標的のための1個の結合部位と、第2の標的のための第2の結合部位の)。1つの実施形態において、対象融合タンパク質は多価である(同じ標的に対する2個の結合部位を備えた)。
1つの実施形態において、融合タンパク質はB3F6結合部位、少なくとも1個の重鎖ドメインおよび合成結合ペプチドを含む。
文献で報告された例示的な融合タンパク質は、T細胞レセプタ(Gascoigneら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:2936−2940(1987));CD4(Caponら、Nature 337:525−531(1989);Trauneckerら、Nature 339:68−70(1989);Zettmeisslら、DNA Cell Biol.USA 9:347−353(1990);およびByrnら、Nature 344:667−670(1990));L−セレクチン(ホーミングレセプタ)(Watsonら、J.Cell.Biol.110:2221−2229(1990);およびWatsonら、Nature 349:164−167(1991));CD44(Aruffoら、Cell 61:1303−1313(1990));CD28およびB7(Linsleyら、J.Exp.Med.173:721−730(1991));CTLA−4(Lisleyら、J.Exp.Med.174:561−569(1991));CD22(Stamenkovicら、Cell 66:1133−1144(1991));TNFレセプタ(Ashkenaziら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:10535−10539(1991);Lesslauerら、Eur.J.Immunol.27:2883−2886(1991);およびPeppelら、J.Exp.Med.174:1483−1489(1991));およびIgEレセプタa(Ridgway and Gorman,J.Cell.Biol.Vol.115,Abstract No.1448(1991))の融合を含む。
1つの実施形態において、本発明の融合タンパク質を調製するときに、結合ドメイン(たとえばヒト化B3F6結合ドメイン)をコードする核酸は、免疫グロブリン定常ドメイン配列のN末端をコードする核酸にC末端側へ融合されるであろう。N末端融合も可能である。1つの実施形態において、融合タンパク質はCH2およびCH3ドメインを含む。融合は、定常ドメインのFc部分のC末端に、あるいは重鎖のCH1または軽鎖の相当する領域のすぐN末端側に行うこともできる。
1つの実施形態において、リガンドまたはレセプタドメインの配列は、免疫グロブリン分子のFcドメインのN末端に融合される。重鎖定常領域全体をリガンドまたはレセプタドメインの配列に融合させることも可能である。1つの実施形態において、IgG Fcを化学的に定義するパパイン開裂部位(すなわち重鎖定常領域の第1の残基を114と考えると、残基216)の、または他の免疫グロブリンの類似部位のすぐ上流のヒンジ領域で開始する配列が融合で使用される。融合が作製される正確な部位は重要ではない;特定の部位が公知であり、分子の生物結合、分泌、または結合特徴を最適化するために選択できる。融合タンパク質を作製する方法は当分野で公知である。
二重特異性融合タンパク質では、融合タンパク質はマルチマーとして、特にヘテロダイマーまたはヘテロテトラマーとして構築される。概して、これらの構築された免疫グロブリンは公知のユニット構造を有するであろう。基本4鎖構造ユニットは、IgG、IgD、およびIgEが存在する形である。4鎖ユニットは、高分子量免疫グロブリンにて反復される;IgMは概して、ジスルフィド結合によって結合された4個の基本ユニットのペンチマーとして存在する。IgAグロブリン、および場合によりIgGグロブリンも血清中にマルチマー形で存在できる。マルチマーの場合、4個のユニットはそれぞれ同じでも、異なっていてもよい。
融合タンパク質は、たとえばWO0069913A1およびWO0040615A2で教示される。融合タンパク質は、当分野で公知である方法を使用して調製できる(たとえばUS Patent Nos.5,116,964および5,225,538を参照)。普通、リガンドまたはレセプタドメインは、重鎖(または重鎖部分)の定常領域のN末端へC末端側に、可変領域の代わりに融合される。リガンド結合レセプタのいずれの膜貫通領域あるいは脂質またはリン脂質アンカー認識配列も好ましくは融合の前に不活性化または欠失させる。リガンドまたはレセプタドメインをコードするDNAは、所望のORFセグメントをコードするDNAの5’および3’末端における、またはそれに近接した制限酵素によって開裂される。得られたDNA断片は次に重鎖定常領域をコードするDNA内へただちに挿入される。融合が作製される正確な部位は、溶解性融合タンパク質の分泌または結合特徴を最適化するために経験的に選択できる。融合タンパク質をコードするDNAは次に、発現のために宿主細胞内に形質移入される。
III.合成結合ペプチド
1つの実施形態において、本発明のダイマーの少なくとも1個のポリペプチド鎖は、合成結合ペプチドを含む。1つの実施形態において、本発明のダイマーの少なくとも2個の鎖は結合ペプチドを含む。好ましい実施形態において、本発明のダイマーの2個の鎖は結合ペプチドを含む。
1つの実施形態において、結合ペプチドを使用して、単一のポリペプチド鎖内のフレーム内の2個の重鎖部分を結合することができる。たとえば1つの実施形態において、本発明の結合ペプチドを使用して、CH3ドメイン(または合成CH3ドメイン)をヒンジ領域(または合成ヒンジ領域)に融合させることができる。別の実施形態において、本発明の結合ペプチドを使用して、CH3ドメイン(または合成CH3ドメイン)をCH1ドメイン(または合成CH1ドメイン)に融合させることができる。なお別の実施形態において、結合ペプチドはヒンジ領域(または合成ヒンジ領域)とCH2ドメイン(または合成CH2ドメイン)との間でペプチドスペーサとして作用できる。
別の実施形態において、CH3ドメインは細胞外タンパク質ドメイン(たとえばVLドメイン(または合成ドメイン)、VHドメイン(または合成ドメイン)、CH1ドメイン(または合成ドメイン)、ヒンジドメイン(または合成ヒンジ)に、あるいはレセプタのリガンド連結部分またはリガンドのレセプタ結合)に融合できる。たとえば1つの実施形態において、VHまたはVLドメインはCH3ドメインに結合ペプチドを介して融合できる(結合ペプチドのC末端はCH3ドメインのN末端に結合され、結合ペプチドのN末端はVHまたはVLドメインのC末端に結合される)。別の実施形態において、CH1ドメインは、CH3ドメインに結合ペプチドを介して結合される(結合ペプチドのC末端はCH3ドメインのN末端に結合され、結合ペプチドのN末端はCH1ドメインのC末端に結合される)。別の実施形態において、本発明の結合ペプチドを使用して、CH3ドメイン(または合成CH3ドメイン)をヒンジ領域(または合成ヒンジ領域)またはその部分に融合することができる。なお別の実施形態において、結合ペプチドはヒンジ領域(または合成ヒンジ領域)とCH2ドメイン(または合成CH2ドメイン)との間のペプチドスペーサとして作用できる。
1つの実施形態において、結合ペプチドはgly/serスペーサを含むか、それから成ることができる。たとえばCH2ドメインおよび下部ヒンジ領域(CH2[gly/ser])を置換した、短いアミノ酸スペーサGGSSGGGGSG(配列番号:8)を有するドメイン欠失構築物を使用できる。別の実施形態において、結合ペプチドはアミノ酸配列IGKTISKKAK(配列番号:15)を含む。
別の実施形態において、結合ペプチドは免疫グロブリンヒンジ領域の少なくとも部分を含むことができる。たとえば異なる抗体アイソタイプに由来するヒンジ要素を組合せるキメラヒンジドメインを構築できる。1つの実施形態において、結合ペプチドはIgG1ヒンジ領域の少なくとも部分を含む。別の実施形態において、結合ペプチドはIgG3ヒンジ領域の少なくとも部分を含むことができる。別の実施形態において、結合ペプチドはIgG1ヒンジ領域の少なくとも部分およびIgG3ヒンジ領域の少なくとも部分を含むことができる。1つの実施形態において、結合ペプチドはIgG1上部および中間ヒンジならびに単一のIgG3中間ヒンジ反復モチーフを含むことができる。
免疫グロブリンヒンジ領域に由来するアミノ酸配列を含むそのような結合ペプチドにおける個々のアミノ酸の番号付けは、結合ペプチドの長さによって変わることがあり、これらの分子のアミノ酸位置の番号付けは、Kabat番号付けを使用して与えられる、たとえば表2)、表3はIgG1、IgG3、およびIgG4分子の天然発生型ヒンジ配列を示す。表2はこれらのヒンジ分子の部分のKabat番号付けを示し、その表に示す結合ペプチドアミノ酸残基のKabat番号付けも示す。
1つの実施形態において、本発明の結合ペプチドは非天然発生型免疫グロブリンヒンジ領域ドメイン、たとえばヒンジ領域ドメインを含むポリペプチドには天然には見出されないヒンジ領域ドメインおよび/または天然発生型免疫グロブリンヒンジ領域ドメインとアミノ酸配列が異なるように改変されたヒンジ領域ドメインを含む。1つの実施形態において、ヒンジ領域ドメインに対して変異を行って、本発明の結合ペプチドを作製することができる。1つの実施形態において、本発明の結合ペプチドはシステインの天然発生数を含まないヒンジドメインを含み、すなわち結合ペプチドは天然発生型ヒンジ分子よりも少ないシステインか、またはより多い数のシステインを含む。好ましい実施形態において、結合ペプチドのポリペプチドへの包含は、2個の重鎖部分が少なくとも1個の鎖間ジスルフィド結合を介して結合された形に存在する二量体分子の50%、60%、70%、80%または90%を超える組成物を生じさせる。
本発明の1つの実施形態において、結合ペプチドは、Kabat番号付けシステムのアミノ酸位置243(位置230、EU番号付け体系)に相当するアミノ酸位置にプロリン残基を含むヒンジ領域ドメインを含む。1つの実施形態において、結合ペプチドはKabat番号付けシステムの位置244(位置246、EU番号付け体系)に相当するアミノ酸位置にアラニン残基を含む。別の実施形態において、本発明の結合ペプチドは、位置245(Kabat番号付けシステム;位置247、EU番号付け体系))に相当するアミノ酸位置にプロリン残基を含む。1つの実施形態において、結合ペプチドは、Kabat番号付けシステムの位置239(位置226、EU番号付け体系)に相当するアミノ酸位置にシステイン残基を含む。1つの実施形態において、結合ペプチドは、Kabat番号付けシステムの位置239(位置226、EU番号付け体系)に相当するアミノ酸位置にセリン残基を含む。1つの実施形態において、結合ペプチドは、Kabat番号付けシステムの位置242(位置229、EU番号付け体系)に相当するアミノ酸位置にシステイン残基を含む。1つの実施形態において、結合ペプチドは、Kabat番号付けシステムの位置242(位置229、EU番号付け体系)に相当するアミノ酸位置にセリン残基を含む。
1つの実施形態において、結合ペプチドは、たとえば2個の重鎖部分がジスルフィド結合を介して結合される、またはジスルフィド結合を介して結合されない、ポリペプチドの特定のアイソフォームの優先的合成を引き起こすように選択できる。たとえば本実施例、G1/G3/Pro243+[gly/ser]リンカー(配列番号:26)、G1/G3/Pro243Ala244Pro245+[gly/ser]リンカー(配列番号:5)、Pro243+[gly/ser]リンカー(配列番号:33)、およびPro243Ala244Pro245+[gly/ser]リンカ(配列番号:32)で述べるように、結合ペプチドが検出可能なフォームBを含まないフォームA CH2ドメイン欠失抗体のみの産生を引き起こした。これに対して、CH2ドメイン欠失Cys242Ser:Pro243(配列番号:31)、およびCH2ドメイン欠失Cys242Ser:Pro243Ala244Pro245(配列番号:32)はどちらもフォームBアイソフォームへの優先を引き起こした。これらの合成ヒンジ領域結合ペプチドはそれゆえ、フォームAまたはBアイソフォームの有利な合成に有用である。このことは4つすべてのヒトアイソタイプのCH3ドメインに対する高度の相同性に基づく抗体のいずれのアイソタイプ(たとえばIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)にも当てはまる(同一および保存アミノ酸残基を含めて、IgG1 CH3ドメインはIgG2 CH3に対して98.13%相同であり、IgG3 CH3に対して97.20%相同であり、IgG4 CH3に対して96.26%相同である)。本発明の結合ペプチドおよび各種の結合分子を指す挿入句は、別途指摘しない限り同等の用語を表す。
1つの実施形態において、本発明の結合ペプチドは、柔軟性gly/serリンカーが続くヒンジ領域ドメインを含む。例示的な結合ペプチドを表2および配列番号:5、25〜34に示す。1個以上のアミノ酸置換、付加または欠失が結合ペプチド内に導入されるように、これらの例示的な結合ペプチドの改変体形が、結合ペプチドをコードするヌクレオチド配列内に1個以上のヌクレオチド置換、付加または欠失を導入することによって作製できることが理解されるであろう。たとえば変異は標準技法、たとえば部位特異的変異誘発およびPCR仲介変異誘発によって導入できる。好ましくは保存的アミノ酸置換は、結合ペプチドのフォームAまたはフォームBの合成を優先的に向上させる能力が改変されないように、1個以上の非必須アミノ酸残基にて作製される。それゆえ免疫グロブリンポリペプチドの非必須アミノ酸残基は、好ましくは同じ側鎖ファミリからの別のアミノ酸残基によって置換される。別の実施形態において、アミノ酸の列は、側鎖ファミリメンバの順序および/組成が異なる構造的に同様な列と置換できる。
本発明の結合ペプチドは、可変長でありうる。1つの実施形態において、本発明の結合ペプチドは、長さが約15〜約50アミノ酸である。別の実施形態において、本発明の結合ペプチドは、長さが約20〜約45アミノ酸である。別の実施形態において、本発明の結合ペプチドは、長さが約25〜約40アミノ酸である。別の実施形態において、本発明の結合ペプチドは、長さが約30〜約35アミノ酸である。別の実施形態において、本発明の結合ペプチドは、長さが約24〜約27アミノ酸である。別の実施形態において、本発明の結合ペプチドは、長さが約40〜約42アミノ酸である。
結合ペプチドは、当分野で公知の技法を使用してポリペプチド配列に導入できる。たとえば1つの実施形態において、Splicing by Overlap Extension(重複伸長によるスプライシング、SOE)法(Horton,R.M.1993 Methods in Molecular Biology,Vol 15:PCR Protocols:Current Methods and applications.Ed.B.A.White)を使用できる。修飾はDNA配列解析によって確認できる。プラスミドDNAを使用して、産生されたポリペプチドの安定産生のために宿主細胞を形質転換することができる。
1つの実施形態において、対象結合ペプチドの1つのポリペプチドへの包含は、少なくとも2個の結合部位および少なくとも2個のポリペプチド鎖を有する結合分子を含む組成物を生じ、ポリペプチド鎖の少なくとも2個が合成結合ペプチドを含み、分子の50%超は、2個の重鎖部分が少なくとも1個の鎖間ジスルフィド結合を介して結合する形で存在する。別の実施形態において、分子の60%超は、2個の重鎖部分が少なくとも1個の鎖間ジスルフィド結合を介して結合する形で存在する。別の実施形態において、分子の70%超は、2個の重鎖部分が少なくとも1個の鎖間ジスルフィド結合を介して結合する形で存在する。別の実施形態において、分子の80%超は、2個の重鎖部分が少なくとも1個の鎖間ジスルフィド結合を介して結合する形で存在する。別の実施形態において、分子の90%超は、2個の重鎖部分が少なくとも1個の鎖間ジスルフィド結合を介して結合する形で存在する。
IV.結合分子の発現
上述のような本発明のポリペプチドを提供するための単離された遺伝物質の操作後に、遺伝子は、請求された結合分子を次に提供するポリペプチドの所望の量を産生するために使用できる宿主細胞内への導入のために、通例、発現ベクターに挿入される。
「ベクター」または「発現ベクター」という用語は、本明細書では明細書および請求項の解釈上、細胞内の所望の遺伝子内に導入して、遺伝子を発現させるためのビヒクルとして、本発明に従って使用されるベクターを意味するために使用される。当業者に公知であるように、そのようなベクターはプラスミド、ファージ、ウィルスおよびレトロウィルスから成る群より容易に選択できる。一般に、本発明に適合するベクターは、選択マーカー、所望の遺伝子のクローニングを促進するための適切な制限部位ならびに真核または原核細胞に入る、および/または真核または原核細胞で複製する能力を含むであろう。
本発明の解釈上、多数の発現ベクター系を利用できる。たとえばベクターの1つのクラスは、ウシパピローマウィルス、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、ワクシーナウィルス、バキュロウィルス、レトロウィルス(RSV、MMTVまたはMOMLV)またはSV40ウィルスなどの動物ウィルスに由来するDNA要素を利用する。他のベクターは、内部リボソーム結合部位を備えたポリシストロニック系の使用を含む。加えて、DNAをその染色体内に組み込んだ細胞は、形質移入された宿主細胞の選択を可能にする1個以上のマーカーを導入することによって選択できる。マーカーは栄養要求性宿主に対する原栄養性、耐殺生物剤性(たとえば抗生物質)または銅などの重金属への耐性を供給できる。選択可能なマーカー遺伝子は、発現されるDNA配列に直接結合できるか、または同時形質転換によって同じ細胞内に導入できるかのどちらかである。mRNAの最適な合成には追加の要素が必要なことがある。これらの要素は、シグナル配列、スプライスシグナルはもちろんのこと、転写プロモータ、エンハンサ、および終止シグナルを含みうる。特に好ましい実施形態において、クローニングされた可変領域遺伝子は発現ベクター内に、上述のような重鎖および軽鎖定常領域遺伝子(好ましくはヒト)合成物と共に挿入される。好ましくはこれは、NEOSPLAと呼ばれるIDEC,Inc.の専売発現ベクターを使用して実施される(U.S.patent 6,159,730)。このベクターは、サイトメガロウィルスプロモータ/エンハンサ、マウスベータグロビン主要プロモータ、SV40複製開始点、ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼエクソン1およびエクソン2、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子およびリーダー配列を含有する。下の実施例で見られるように、このベクターは、可変および定常領域遺伝子の包含時の抗体の非常に高レベルの発現、CHO細胞への形質移入と、それに続くG418含有培地での選択およびメトトレキサート増幅を引き起こすことが見出されている。ベクター系はU.S.Pat.Nos.5,736,137および5,658,570でも教示され、そのそれぞれはその全体が参照により本明細書に組み入れられている。この系は高い発現レベル、たとえば>30pg/細胞/日を提供する。他の例示的なベクター系はたとえばU.S.patent 6,413,777に開示されている。
他の好ましい実施形態において、本発明の本発明のポリペプチドは、2001年11月16日に出願され、その全体が本明細書に組み入れられている同時係属United States provisional application No.60/331,481で開示されたようなポリシストロニック構築物を使用して発現させることができる。これらの新規な発現系において、抗体の重鎖および軽鎖などの興味のある複数の遺伝子生成物は、単一のポリシストロニック構築物から産生できる。これらの系は、真核宿主細胞内に比較的高レベルの本発明のポリペプチドを提供するために配列内リボソーム進入部位(IRES)を好都合に使用することができる。適合するIRES配列は、本明細書にまた組み入れられているU.S.Pat.No.6,193,980に開示されている。当業者は、そのような発現系を使用して本出願に開示された全範囲のポリペプチドを有効に産生できることを認識するであろう。
さらに一般的には、ポリペプチドのモノマーサブユニット(たとえば修飾抗体)をコードするベクターまたはDNA配列が調製されると、発現ベクターは適切な宿主細胞内に導入できる。すなわち宿主細胞は形質転換できる。プラスミドの宿主細胞への導入は、当業者に公知の各種の技法によって達成できる。これらは、これに限定されるわけではないが、形質移入(電気泳動および電気穿孔を含む)、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、エンブロープDNAとの細胞融合、微量注入、および無傷のウィルスによる感染を含む。Ridgway,A.A.G.”Mammalian Expression Vectors”Chapter 24.2,pp.470−472 Vectors,Rodriguez and Denhardt,Eds.(Butterworths、Boston,Mass.1988)を参照。最も好ましくは、宿主へのプラスミド導入は電気穿孔による。形質転換させた細胞は、軽鎖および重鎖の産生に適切な条件化で増殖させて、重鎖および/または軽鎖タンパク質合成に関してアッセイする。例示的なアッセイ技法は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、または蛍光活性化セルソーター解析(FACS)、免疫組織化学的検査などを含む。
本明細書で使用するように「形質転換」は、広い意味で遺伝子型を変化させ、結果としてレシピエント細胞の変化を引き起こすレシピエント宿主細胞へのDNAの導入を指すために使用するものとする。
これらの同じ系統ともに「宿主細胞」は、組換えDNA技法を使用して構築され、少なくとも1個の非相同遺伝子をコードするベクターをによって変換された細胞を指す。組換え宿主からの抗体の単離のためのプロセスの説明では、「細胞」および「細胞培養物」という用語は、それが明確に別途規定されない限り、抗体源を示すために互換的に使用される。言い換えれば、「細胞」からのポリペプチドの回収は、全細胞の遠心沈殿から、あるいは培地および懸濁細胞の両方を含有する細胞培養物からのどちらかを意味しうる。
タンパク質発現に使用される宿主細胞系は、好ましくは哺乳類起源のものである;当業者は、所望の遺伝子生成物をその中で発現させるのに最も適した特定の宿主細胞系を優先的に決定する能力を備えていると見なされる。例示的な宿主細胞系は、これに限定されるわけではないが、DG44およびDUXB11(チャイニーズハムスター卵巣系、DHFRマイナス)、HELA(ヒト子宮頸癌)、CVI(サル腎臓系)、COS(CVIのSV40 T抗原による誘導体)、R1610(チャイニーズハムスター線維芽細胞)BALBC/3T3(マウス線維芽細胞)、HAK(ハムスター腎臓系)、SP2/O(マウス骨髄腫)、P3.times.63−Ag3.653(マウス骨髄腫)、BFA−1c1BPT(ウシ内皮細胞)、RAJI(ヒトリンパ球)および293(ヒト腎臓)を含む。CHO細胞は特に好ましい。宿主細胞系は通例、商用サービス、American Tissue Culture Collectionから、または公開された文献から入手できる。
試験管内産生は、大量の所望のポリペプチドを与えるためにスケールアップを可能にする。組織培養条件下での哺乳類細胞培養の技法は当分野で公知であり、たとえばエアリフトリアクタ内または連続スターラーリアクタ内の均質懸濁培養物、あるいはたとえば中空ファイバ、マイクロカプセル内の、アガロースマイクロビーズまたはセラミックカートリッジ上の固定化または捕捉細胞培養物を含む。必要ならばおよび/または所望ならば、ポリペプチドの溶液を慣習的なクロマトグラフィー法、たとえばゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、DEAE−セルロースによるクロマトグラフィーまたは(免疫)親和性クロマトグラフィーによって、たとえば合成ヒンジ領域ポリペプチドの優先的な生合成の後に、あるいは本明細書で述べたHICクロマトグラフィーステップの前に、またはそれに続いて精製できる。
本発明のポリペプチドをコードする遺伝子は、細菌または酵母または植物細胞などの、発現された非哺乳類細胞でもありうる。この点で、細菌などの各種の単細胞非哺乳類微生物;すなわち培養物または発酵中で増殖させることができる微生物も形質転換できることが認識されるであろう。形質転換を受けやすい細菌は、腸内細菌科のメンバー、たとえば大腸菌またはサルモネラの菌株;バチルス科、たとえば枯草菌;肺炎球菌;ストレプトコッカス、およびインフルエンザ菌を含む。細菌中で発現されるとき、ポリペプチドは通例、封入体の一部となることがさらに認識されるであろう。ポリペプチドは単離、精製、そして次に機能分子内へ構築する必要がある。抗体の4価形が所望である場合、サブユニットは次に4価抗体内へ自己構築されるであろう(WO02/096948A2)。
prokaryatesに加えて、真核微生物も使用できる。出芽酵母、または普通のパン酵母は真核微生物の中で最も普通に使用されているが、多くの他の菌株も普通に入手できる。酵母での発現では、たとえばプラスミドYRp7(Stinchcombら、Nature,282:39(1979);Kingsmanら、Gene,7:141(1979);Tschemperら、Gene,10:157(1980))が普通に使用される。このプラスミドは、トリプトファン中で増殖する能力の欠如した酵母のミュータント菌株、たとえばATCC No.44076またはPEP4−1への選択マーカーを提供するTRP1遺伝子をすでに含有している(Jones,Genetics,85:12(1977))。酵母宿主細胞ゲノムの特徴としてのtrp1損傷の存在はトリプトファンの非存在下での増殖による形質転換を検出するために有効な環境を提供する。
V.鎖間ジスルフィド結合の欠如した結合分子からの、少なくとも1個の鎖間ジスルフィド結合を含む結合分子の分離
1つの態様において、本発明は2個の重鎖部分を有する分子の混合物からの、疎水性相互作用クロマトグラフィーによる分離に関し、そこでは分子の一部が、少なくとも1個の鎖間ジスルフィド結合を介して2個の重鎖部分が結合される形で存在し、分子の一部が少なくとも1個のジスルフィド結合を介して結合されていない重鎖部分を含む。
疎水性相互作用クロマトグラフィーは、炭化水素スペーサアームを含むが、親和性リガンドが欠如した親和性ゲルにタンパク質を保持できるという観察の後に最初に開発された。HIC支持体からの溶離は、溶媒、pH、イオン強度の変更によって、またはカオトロピック剤または有機改質剤、たとえばエチレンまたはプロピレングリコールの添加によって実施できる。疎水性相互作用クロマトグラフィーの一般原理の説明は、たとえばU.S.Patent 3,917,527およびU.S.Patent 4,000,098に見出される。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の文脈でのHICは、重鎖部分が欠如した抗体断片(たとえばF(ab’)2)を無傷の抗体分子から1ステッププロトコルで分離するために使用されてきた(Morimoto,K.et al,L Biochem.Biophvs.Meth.24:107(1992))。
本発明の分離方法は、ポリペプチドの未精製個体群(たとえば培養物上澄みまたは調製物または原核封入体から単離したポリペプチドの調製物)に対して実施できる。あるいは本分離方法は、1つ以上の初期精製ステップの後に、たとえばフォームAおよびBを含む調製物が親和性マトリクスから溶離された後に、ポリペプチド混合物に対して使用できる。
1つの実施形態において、HICクロマトグラフィーを受ける結合分子は本発明の結合ペプチドを含む。
好ましい実施形態において、HICは、他のタンパク質精製手順によって部分的に精製された混合物に利用できる。「部分的に精製された」という用語は、本明細書で使用するように、興味のあるタンパク質が少なくとも5重量%、さらに好ましくは少なくとも10%、最も好ましくは少なくとも45%で存在するタンパク質調製物を含む。初期または続いての精製ステップを使用して、たとえば免疫グロブリン凝集体、ミスフォールド種、宿主細胞タンパク質、前のクロマトグラフィーステップからの残留物質(利用したときにはタンパク質Aなど)を除去することができる。1つの実施形態において、HICは本発明の結合ペプチドを含むポリペプチドに対して実施できる。したがってHICの利用は、全体的な精製プロトコルの文脈においても認識される。HICの前後に使用できる例示的な精製ステップは:親和性クロマトグラフィー(たとえば制御孔ガラスに共有結合されたタンパク質Aより成るPROSEP−A(登録商標)(BioProcessing Ltd.,英国)またはタンパク質A SEPHAROSE(登録商標) Fast Flow(Pharmacia)またはTOYOPEARL 650Mタンパク質A(TosoHaas))を含む。タンパク質Aはヒトγ1、γ2、またはγ4重鎖にとって、タンパク質Gはアイソタイプにとって好ましい。分子がCH3ドメインを含む場合は、Bakerbond ABXtm樹脂を使用できる。加えて、または代わりにイオン交換クロマトグラフィーを利用できる。この点で、クロマトグラフィー用のアニオン性またはカチオン性支持体を形成するために、各種のアニオン性またはカチオン性置換基をマトリクスに結合できる。アニオン性交換置換基は、ジエチルアミノエチル(DEAE)、四級アミノエチル(QAE)および四級アミン(Q)基を含む。カチオン性交換置換基は、カルボキシメチル(CM)、スルホエチル(SE)、スルホプロピル(SP)、ホスフェート(P)およびスルホナート(S)を含む。DE23、DE32、DE52、CM−23、CM−32およびCM−52などのセルロースイオン交換樹脂はWhatman Ltd.メイドストーン、ケント、英国から入手できる。SEPHADEX(登録商標)ベースおよびlocross−linkedイオン交換機も公知である。たとえばDEAE−、QAE−、CM−、およびSP−SEPHADEX(登録商標)ならびにDEAE−、Q−、CM−およびS−SEPHAROSE(登録商標)ならびSEPHAROSE(登録商標) Fast FlowはすべてPharmacia ABから入手できる。さらに両方のDEAEおよびCM誘導体化エチレングリコール−メタクリレートコポリマー、たとえばTOYOPEARL DEAE−650SまたはMおよびTOYOPEARL CM−650SまたはMは、Toso Haas Co.,フィラデルフィア、ペンシルベニア州から入手できる。イオン交換支持体からの溶離は、通常は塩の添加を含むため、そしてHICは上昇した塩濃度の下で向上するため、イオン交換クロマトグラフィーステップまたは他の塩媒介精製ステップ後のHICステップの導入が好ましい。必ずしもこれに限定されるわけではないが:さらなるイオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ウィルス不活性化、濃縮および凍結乾燥、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカゲルによるクロマトグラフィー、ヘパリンSEQHAROSETMによるクロマトグラフィー、等電点電気泳動、または硫酸アンモニウム沈殿を含む、追加の精製プロトコルを加えることができる。
本方法を使用する精製の前に、分離されるポリペプチドの混合物を含む組成物は、好ましくは酸性またはほぼ中性pHの緩衝液中に置かれる。これはたとえば、濃縮緩衝液に添加して、緩衝液にサンプルを再懸濁させて、緩衝液を交換する(たとえば透析または限界濾過を使用して)ことによって行うことができる。あるいはサンプル緩衝液のpHは、所望の範囲内で簡単に調節することができる。
疎水性相互作用は高いイオン強度にて最強であり、したがって分離のこの形式は、塩沈殿またはイオン交換手順の後に好都合に実施される。タンパク質のHICカラムへの吸収は高塩濃度によって好都合であるが、実際の濃度は、選択したタンパク質および特定のHICリガンドの性質に応じて広い範囲に渡って変化できる。各種のイオンは、疎水性相互作用(塩析効果)を促進するか、または水の構造を妨害して(カオトロピック効果)、疎水性相互作用の減弱をもたらすかどうかに応じて、いわゆる疎溶媒性系列に配置することができる。カチオンは上昇する塩析効果によって、Ba++<;Ca++<;Mg++<;Li+<;Cs+<;Na+<;K+<;Rb+<;NH4 +として格付けされるのに対して、アニオンは上昇するカオトロピック効果によって、PO−<;SO4 −<;CH3COOO−<;Cl−<;Br−<;NO3 −<;ClO4 −<;I−<;SCN−として格付けすることができる。
一般にNa、KまたはNH4サルフェートは、HICにおけるリガンド−タンパク質相互作用を効果的に促進する。次の関係によって与えられる、相互作用の強度に影響を及ぼす塩を調合できる:(NH4)2SO4>;Na2SO4>;NaCl>;NH4Cl>;NaBr>;NaSCN。一般に約0.75〜約2M硫酸アンモニウムまたは約1〜4M NaClの塩濃度が有用である。
HICカラムの調製には多くのクロマトグラフ支持体を利用でき、最も広範に使用されるのは、アガロース、シリカおよび有機ポリマーまたはコポリマー樹脂である。疎水性相互作用材料は概して、疎水性リガンド(たとえばアルキルまたはアリール基)が結合されるベースマトリクス(たとえば親水性炭水化物(たとえば架橋アガロース)または合成コポリマー材料)である。好ましいHIC材料は、フェニル基によって置換されたアガロース樹脂を含む。例示的なHIC材料は:フェニルSEPHAROSETM、低または高置換のFAST FLOW(Pharmacia LKB Biotechnology、AB、スウェーデン);フェニルSEPHAROSETM高性能カラム;フェニルまたはブチル−SEPHAROSE(登録商標)CL−4B、ブチル−SEPHAROSE(登録商標)FF、オクチル−SEPHAROSE(登録商標)FFおよびフェニル−SEPHAROSE(登録商標)FF(Pharmacia LKB Biotechnology AB、スウェーデン);FractogelTM EMDプロピルまたはFRACTOGELTMEMCフェニルカラム(E.Merck,ドイツ);MACROPREPTMメチルまたはMACRO−PREPTMt−ブチル支持体(Bio−Rad,カリフォルニア);WP HI−Propyl(C3)TMカラム(J.T.Baker,ニュージャージー)を含む。例示的なHIC材料は、Tosoh Corporation,東京、日本から製品名TOYOPEARLエーテル650、フェニル650、ブチル650(Fractogel)、エーテル−5PW−HR、またはフェニル−5PW−HRで;Miles−Yeda,レホヴォト、イスラエルから、アルキル基が2〜10個の炭素原子を含有する製品名アルキル−アガロースで、J.T.Baker,フィリップバーグ、ニュージャージー州から製品名Bakerbond WP−HI−プロピルで入手できる。従来の化学作用を使用して所望のHICカラムを調製することも可能である(Sa:たとえばEr−el.Z.gl all,Biochem.Biophys.Res.Comm.49:383(1972)またはUlbrich,V.rd gL Coll.Czech.Chem.Commum.9:1466(1964))。
特定のゲルの選択は、当業者によって決定できる。概して、タンパク質およびHICリガンドの相互作用の強度は、アルキルリガンドの鎖長を増大させるが、約4〜約8個の炭素原子を有するリガンドが大半の調製物に有用である。フェニル基は、ペンチル基とほぼ同じ疎水性を有するが、選択性はタンパク質の芳香族基とのπ−π軌道相互作用の可能性によって異なることがある。選択性(selectively)は、支持樹脂の化学作用によっても影響されることがある。
リガンド密度は、相互作用の強度だけでなく、カラムの容量のにも影響するという点で重要である。市販のフェニルまたはオクチルフェニルゲルのリガンド密度は、約40pmoles/mlゲル床である。ゲル容量は、pH、温度および塩の種類ならびに濃度と同様に、問題の特定のタンパク質の関数であるが、概して3〜20mg/mlゲルの範囲に含まれることが予想できる。
一般に温度の低下は、HIC材料との相互作用を低下させる。しかしながら温度を上昇させることによって発生するいずれの恩恵も、そのような上昇がタンパク質の安定性に対して有する悪影響に対して重み付けをする必要がある。
1つの実施形態において、本発明のポリペプチドは定組成で溶離させることができる。定組成溶離では、すべての化合物が開始時にカラムを通じて移動を開始する。しかしながらそれぞれが異なる速度で移動して、より速いまたはより遅い溶離速度を引き起こす。たとえば本実施例で述べるように、フォームAはカラムの貫流によって溶離させることができる。
別の実施形態において、本発明のポリペプチドの1つ以上をカラムに結合させて、段階的溶離または勾配溶離を使用して溶離させることができる。溶離は段階的または勾配の形のどちらでも各種の方法:(a)塩濃度を変更することによって、(b)溶媒の極性を変更することによって、または(c)洗剤を添加することによって達成できる。塩濃度を低下させることによって、吸収されたタンパク質は疎水性の高い順に溶離される。極性の変化は、エチレンまたはプロピレングリコールあるいは(イソ)プロパノールなどの溶媒の添加によって影響を受け、それにより疎水性相互作用の強度を低下させる。洗剤はタンパク質の置換剤として機能して、主に膜タンパク質の精製と関連して使用されてきた。
分離を実施する際に、ポリペプチド混合物はたとえばバッチ精製技法を使用して、またはカラムを使用して、HIC材料と接触させることができる。HIC精製の前に、たとえば混合物をプレカラムに通過させることによって、いずれのカオトロピック剤または非常に疎水性物質も除去することが望ましい。
たとえばバッチ精製では、HIC材料は所望の開始緩衝液中で作製または所望の開始緩衝液まで平衡にさせる。HIC材料のスラリが得られる。ポリペプチド溶液をスラリに接触させて、分離されるポリペプチドの少なくとも1つをHIC材料に吸収させる。たとえばスラリを沈降させて、上澄みを除去することによって、HIC材料に結合しないポリペプチドを含有する溶液がスラリから分離される。スラリに1つ以上の洗浄ステップを受けさせることができる。所望ならばスラリを低い伝導率の溶液に接触させて、HIC材料に結合したポリペプチドを脱着させることができる。結合したポリペプチドを溶離させるために、塩濃度を低下させることができる。
1つの実施形態において、HIC材料をカラムに充填することができる。分離されるポリペプチドを含む混合物は、分離されるポリペプチドの少なくとも1つをカラムに吸着させるために施用することができる。カラムに吸着しないポリペプチドは通過して、収集することができる。結合したポリペプチドを溶離させるために、たとえば段階的方式で、または塩勾配を使用して塩濃度を低下させることができる。
フォームBはフォームAよりも疎水性であるため、それは約0.7M(たとえば0.73M)硫酸アンモニウム/20mMリン酸ナトリウム、pH4.0〜pH8.0を移動相として使用して、固定相に不可逆的に吸着する。フォームAはこれらの条件下ではより低い程度で固定相に結合し、したがって定組成で溶離して、すなわちそれはカラムに貫流画分を残す。フォームAの定組成溶離に続いて、移動相から硫酸アンモニウムを除去すると、フォームBが脱着される。
例示的な精製スキームでは、HIC材料を約160〜約110mS/cmの、好ましくは約140〜約115mS/cmの、さらになお好ましくは約130または約120〜約117mS/cmの伝導率を生じる塩濃度を含む緩衝液中で平衡にする。たとえばan例示的な開始溶液は、約1M〜0.7Mの塩濃度、たとえば1M〜0.7M硫酸アンモニウムを含む。好ましい実施形態において、分離されるポリペプチドの混合物を含む溶液も同じまたはほぼ同じ伝導率にされる(たとえば塩の濃縮原液を使用して)。これらの条件下ではフォームAはカラムから約120mS/cmの伝導率にて溶離される。フォームBを溶離させるために、硫酸アンモニウム含有率を低下させる段階的または線形勾配をカラムに適用できる。フォームBは約115〜約100mS/cmの伝導率にて溶離する。
1つの実施形態において、本精製方法は、少なくとも2個の結合部位および2個の重鎖部分を有する結合分子を含む組成物を生じ、重鎖部分はCH2ドメインが欠如しており、分子の50%超が、2個の重鎖部分が少なくとも1個の鎖間ジスルフィド結合を介して結合する形で存在する。別の実施形態において、分子の60%超は、2個の重鎖部分が少なくとも1個の鎖間ジスルフィド結合を介して結合する形で存在する。別の実施形態において、分子の70%超は、2個の重鎖部分が少なくとも1個の鎖間ジスルフィド結合を介して結合する形で存在する。別の実施形態において、分子の80%超は、2個の重鎖部分が少なくとも1個の鎖間ジスルフィド結合を介して結合する形で存在する。別の実施形態において、分子の90%超は、2個の重鎖部分が少なくとも1個の鎖間ジスルフィド結合を介して結合する形で存在する。
1つの実施形態において、本精製方法は、少なくとも2個の結合部位および2個の重鎖部分を有する組換え結合分子を含む組成物を生じ、分子の99%超が、2個の重鎖部分が少なくとも1個の鎖間ジスルフィド結合を介して結合する形で存在する。
1つの実施形態において、本精製方法は、少なくとも2個の結合部位および2個の重鎖部分を有する結合分子を含む組成物を生じ、分子の95%超が、2個の重鎖部分が少なくとも1個の鎖間ジスルフィド結合を介して結合される形で存在し、ポリペプチドの重鎖部分がIgG4アイソタイプの抗体に由来する。
1つの実施形態において、本精製方法は、2個の軽鎖部分および2個の重鎖部分を有する結合分子を含む組成物を生じ、重鎖部分はCH2ドメインが欠如しており、分子の80%超が、2個の重鎖部分が少なくとも1個の鎖間ジスルフィド結合を介して結合しない形で存在する。
別の態様において、本発明は、組成物中のフォームAおよびフォームBの相対量を測定することを含む、精製および/または優先的生合成の結果を監視する方法も提供する。フォームAおよびフォームBはたとえば本明細書で述べるように、非還元SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動または質量分析法を使用して測定できる。
VI.結合分子の標識および接合
本発明の結合分子は、たとえば標的検出を促進するために、あるいは患者の撮像または治療のために非接合形で使用できるか、または各種のエフェクタ、すなわち官能性部分の少なくとも1つに接合できる。本発明のポリペプチドは、精製が好ましいときに精製の前後のどちらかに標識付けまたは接合できる。特に本発明のポリペプチドは、細胞毒(たとえば放射性同位体、細胞毒性薬、または毒素)治療剤、細胞分裂阻害剤、生物毒素、プロドラッグ、ペプチド、ペプチド、タンパク質、酵素、ウィルス、脂質、生物反応修飾物質、医薬品、免疫活性リガンド(たとえばリンホカインまたは生じた分子が新生細胞およびエフェクタ細胞、たとえばT細胞の両方に結合する他の抗体)、PEG、または撮像に有用である検出可能な部分に接合させることができる。別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、腫瘍の血管新生を減少させる分子に接合させることができる。他の実施形態において、開示した組成物は、薬物またはプロドラッグに結合した本発明のポリペプチドを含みうる。本発明のなお他の実施形態は、特異的生物毒素またはその細胞毒性断片、たとえばリシン、ゲロニン、緑膿菌外毒素またはジフテリア毒素に接合した本発明のポリペプチドの使用を含む。使用する接合または非接合ポリペプチドの選択は、癌の種類および段階、補助処置の使用(たとえば化学療法または外部放射線)および患者の状態によって変化するであろう。当業者が本明細書の教示を考慮してそのような選択をただちにできることが認識される。
以前の研究では、同位体によって標識された抗腫瘍抗体を使用して、動物モデル、そしてヒトの一部の症例で、固形腫瘍はもちろんのこと、リンパ腫/白血病の細胞をうまく破壊したことが認識されるであろう。例示的な放射性同位体は:90Y、125I、131I、123I、111In、105Rh、153Sm、67Cu、67Ga、166Ho、177Lu、186Reおよび188Reを含む。放射性核種は、核DNAでの複数の鎖切断を引き起こす電離放射線を生成することによって作用して、細胞死をもたらす。治療接合体を産生するのに使用される同位体は通例、短いパス長を有するαまたはβ粒子を産生する。そのような放射性核種は、それらが近接している細胞、たとえば接合体が付着または進入した新生物細胞を死滅させる。それらは非局在化細胞にはほとんど、または全く効果を持たない。放射性核種は本質的に非免疫原性である。
本発明と併せた放射性標識接合の使用に関して、本発明のポリペプチドは直接標識できる(ヨウ素化によってなど)か、またはキレート剤の使用によって間接的に標識できる。本明細書で使用するように「間接標識」および「間接標識手法」という句はどちらも、キレート剤が結合分子に共有結合して、少なくとも1個の放射性核種がキレート剤に結合していることを意味する。そのようなキレート剤は、ポリペプチドおよび放射性同位体の両方に結合するため、通例、2官能性キレート剤と呼ばれる。特に好ましいキレート剤は、1−イソチオシクマトベンジル−3−メチルジオテレン(methyldiothelene)トリアミンペンタ酢酸(「MX−DTPA」)およびシクロヘキシルジエチレントリアミンペンタ酢酸(「CHX−DTPA」)誘導体を含む。他のキレート剤は、P−DOTAおよびEDTA誘導体を含む。間接標識に特に好ましい放射性核種は、111Inおよび90Yを含む。
本明細書で使用するように、「直接標識」および「直接標識手法」という句はどちらも、ポリペプチドに直接共有結合する(通例、アミノ酸残基を介して)放射性核種を意味する。さらに詳細には、これらの接合技術は、ランダム標識および部位特異的標識を含む。後者の場合では、標識はポリペプチドの特異的部位、たとえば接合体のFc部分のみに存在するN結合糖残基に向けられる。さらに各種の直接標識技法およびプロトコルは、本発明に適合する。たとえばテクネチウム−99m標識ポリペプチドは、pertechnate(TcO4 −)をスズイオン溶液で還元して、還元テクネチウムをセファデックスカラム上にキレート化し、ポリペプチドをこのカラムに施用することによるリガンド交換プロセスによって、またはたとえばSnCl2などの還元剤、ナトリウム−カリウムフタレート溶液などの緩衝溶液、および抗体をインキュベートすることによるバッチ標識技法によって調製できる。いずれにしても、抗体を直接標識するために好ましい放射性核種は当分野で公知であり、直接結合に特に好ましい放射性核種は、チロシン残基を介して共有付着された131Iである。本発明によるポリペプチドは、たとえば放射性ヨウ化ナトリウムまたはカリウムおよび化学酸化剤、たとえば次亜塩素酸ナトリウム、クロラミンTなど、あるいは酵素酸化剤、たとえばラクトペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼおよびグルコースを用いて得ることができる。しかしながら本発明の解釈上、直接標識手法が特に好ましい。キレート剤およびキレート剤接合体に関する特許は、当分野で公知である。たとえばGansowのU.S.Patent No.4,831,175は、多置換ジエチレントリアミンペンタ酢酸キレートおよびそれを含有するタンパク質接合体、ならびにその調製の方法に関する。GansowのU.S.Patent Nos.5,099,069、5,246,692、5,286,850、5,434,287および5,124,471も、多置換DTPAキレートに関する。これらの特許は、本明細書にその全体が組み入れられている。適合する金属キレート剤の他の例は、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、1,4,8,11−テトラアザテトラデカン、1,4,8,11−テトラアザテトラデカン−1,4,8,11−テトラ酢酸、1−オキサ−4,7,12,15−テトラアザヘプタデカン−4,7,12,15−テトラ酢酸などである。シクロヘキシル−DTPAまたはCHX−DTPAは特に好ましく、下に広範に例示される。なお他の適合するキレート剤は、なお発見されていないものを含めて、当業者が容易に認識でき、明らかに本発明の範囲内である。
適合するキレート剤は、同時継続出願Serial Nos.08/475,813、08/475,815および08/478,967においてキレート化を促進するために使用される特異性2官能性キレート剤を含めて、好ましくは3価金属に高い親和性を提供するように選択され、腫瘍対非腫瘍比の向上および骨吸収の低下はもちろんのこと、標的部位、すなわちB細胞リンパ腫腫瘍部位における放射性核種の生体内保持の向上も示す。しかしながら、これらの特徴のすべてを持つ、または持たない他の2官能性キレート剤は当分野で公知であり、腫瘍治療にも有益である。本明細書の教示に従って、ポリペプチドは診断および治療目的で各種の放射性標識に接合できることも認識されるであろう。このために、参照により本明細書に組み入れられている上述の同時継続出願は、治療用抗体投与前の腫瘍の診断「撮像」のための放射性標識治療接合体を開示している。「In2B8」接合体は、ヒトCD20抗原に特異性であるマウスモノクローナル抗体、2B8を含み、これは111Inに、1−イソチオシアナートベンジル−3−メチル−DTPAおよび1−メチル−3−イソチオシアナートベンジル−DTPAの1:1混合物を含む2官能性キレート剤、すなわちMX−DTPA(ジエチレントリアミンペンタ酢酸)を介して結合される。111Inは、検出可能な毒性を伴わずに安全に投与できるため、診断用放射性核種として特に好ましい;そして撮像データは概して、次の90Y標識抗体分布を予測する。大半の撮像試験が5mCi111In標識抗体を利用するのは、この用量が安全であり、同時により低い用量と比較して向上した撮像効率を有するからであり、抗体投与の3〜6日後に最適な撮像が行われる。たとえばMurray,J.Nuc.Med.26:3328(1985)およびCarraguillo et al,J.Nuc.Med.26:67(1985)を参照。
上で示したように、各種の放射性核種が本発明に利用でき、当業者は、各種の条件下でどの放射性核種が最も適切であるかを容易に決定できる。たとえば131Iは、標的免疫療法に使用される公知の放射性核種である。しかしながら131Iの臨床有用性は:8日間の物理的半減期;血液および腫瘍部位の両方におけるヨウ化抗体の脱ハロゲン化;および腫瘍での局在化用量沈積にとって次善でありうる放出特徴(たとえば大型ガンマ成分)を含む複数の因子によって制限されうる。優れたキレート剤の出現により、金属キレート基をタンパク質に付着する機会は、他の放射性核種、たとえば111Inおよび90Yを利用する機会を増加させた。90Yは放射免疫療法用途での利用に関して複数の利点を提供する;90Yの64時間の半減期は抗体の腫瘍に蓄積を可能にするために十分長く、たとえば131Iとは異なり、90Yは、100〜1,000細胞直径の組織における範囲で、その崩壊時にγ照射を伴わない高エネルギーの純粋なβ放射体である。さらに透過性放射線の最少量は、90Y標識抗体の外来患者への投与を可能にする。加えて標識抗体の内部移行は細胞死滅に必要なく、イオン化放射線の局所放出は、標的分子が欠如した隣接腫瘍細胞にとって致死性であるはずである。
当業者は、接合される選択された薬剤に応じて各種の技法を使用して、これらの非放射性接合体を構築できることも認識するであろう。たとえばビオチンとの接合体は、たとえばポリペプチドをビオチンの活性化エステル、たとえばビオチンN−ヒドロキシスクシンイミドエステルと反応させることによって調製される。同様に蛍光マーカーとの接合体は、たとえば上に挙げたようなカップリング剤の存在下で、またはイソチオシアナート、好ましくはフルオレセイン−イソチオシアナートとの反応によって調製できる。本発明のポリペプチドの細胞分裂停止/細胞毒性物質および金属キレートとの接合体は、類似の方式で調製される。
多くのエフェクタ部分は、抗体が結合できる適切な官能基が欠如している。1つの実施形態において、エフェクタ部分、たとえば薬物またはプロドラッグは、連結部分を通じて抗体に結合される。1つの実施形態において、連結部分は特定の部位における細胞毒性の活性化を可能にする化学結合を含有する。適切な化学結合は当分野で公知であり、ジスルフィド結合、酸不安定結合、光不安定結合、ペプチダーゼ不安定結合、スルフヒドリルおよびマレイミド基との間に形成されたチオエーテル結合、エステラーゼ不安定結合を含む。最も好ましくは、連結部分は、ジスルフィド結合またはチオエーテル結合を含む。本発明により、連結部分好ましくは反応性化学基を含む。特に好ましい反応性化学基は、N−スクシンイミジルエステルおよびN−スルホスクシンイミジルエステルである。好ましい実施形態において、反応性化学基は、チオール基間のジスルフィド結合を介して、エフェクタに共有結合できる。1つの実施形態において、エフェクタ分子はチオール基を含むように修飾される。当業者は、チオール基が水素原子に結合された硫黄原子を含有して、通例当分野で、「−SH」または「RSH」として示されるスルフヒドリル基と呼ばれることを認識するであろう。
1つの実施形態において、連結部分は、エフェクタ部分を結合分子と結合するために使用できる。本発明の連結部分は開裂性でも、非開裂性でもよい。1つの実施形態において、開裂可能な連結部分は、遊離スルフヒドリル基を持つ分子がより高濃度の細胞質および他の領域などの、連結部分がより低い酸化還元電位の環境で開裂できるように、酸化還元開裂性連結部分である。酸化還元電位の変化のために開裂できる連結部分の例は、ジスルフィを含有する連結部分を含む。本発明の結合タンパク質の細胞内摂取時に開裂刺激を与えることができ、そこでは細胞質のより低い酸化還元電位が連結部分の開裂を促進する。別の実施形態において、pHの低下がメイタンシノイドカーゴの標的細胞内への放出を誘発する。pHの低下は、多くの生理学的および病理学的プロセス、たとえばエンドソーム輸送、腫瘍成長、炎症、および心筋虚血に結び付けられる。pHは、生理学的な7.4からエンドソームで5〜6またはリソソームで4〜5へ降下する。癌細胞のリソソームまたはエンドソームを標的化するのに使用できる酸感受性連結部分の例は、アセタール、ケタール、オルトエステル、ヒドラゾン、トリチル、シスアコニチル、またはチオカルバモイルで見られるような酸開裂性結合を含む(たとえばWillner et al,(1993),Bioconj.Chem.,4:521−7;US Pat.Nos.4,569,789,4,631,190,5,306,809,および5,665,358を参照)。他の例示的な酸感受性連結部分は、ジペプチド配列Phe−LysおよびVal−Lysを含む(King et al,(2002),J.Med.Chem.,45:4336−43)。開裂刺激は、低pHエンドソームコンパートメント(たとえばリソソーム)への細胞内摂取輸送時に与えることができる。他の例示的な酸開裂性連結部分は、2個以上のメイタンシノイドの付着のために2個以上の酸開裂性結合を含有する部分である(King et al,(1999),Bioconj.Chem.,10:279−88;WO 98/19705)。
開裂性連結部分は、特定の標的細胞、たとえばリソソームまたは腫瘍関連酵素と結合する生物供給の開裂剤に対して感受性でありうる。酵素によって開裂できる連結部分の例は、これに限定されるわけではないが、ペプチドおよびエステルを含む。例示的な酵素開裂性連結部分は、腫瘍関連プロテアーゼに対して感受性である連結部分、たとえばカテプシンBまたはプラスミンを含む(Dubowchik et al,(1999),Pharm.Ther.,83:67−123;Dubowchik et al,(1998),Bioorg.Med.Chem.Lett,8:3341−52;de Groot et al,(2000),J.Med.Chem.,43:3093−102;de Groot et al,(1999)m 42:5277−83)。カテプシンB開裂性部位は、ジペプチド配列バリン−シトルリンおよびフェニルアラニン−リジンを含む(Doronina et al,(2003),Nat.Biotech.,21(7):778−84);Dubowchik et al,(2002),Bioconjug.Chem.,13:855−69)。他の例示的な酵素開裂性部位は、trouseプロテアーゼ、たとえばThimetオリゴペプチダーゼ(TOP)、好中球、マクロファージ、および他の顆粒球によって優先的に放出される酵素によって認識される、4〜16アミノ酸のオリゴペプチド配列によって形成された部位を含む(たとえばSuc−β−Ala−Leu−Ala−Leu)。
さらなる実施形態において、連結部分は本発明の連結分子を式:
X−Y−Z
の分子と反応させることによって形成され、
式中:
Xは、付着部分であり;
Yは、スペーサ部分であり;
Zは、エフェクタ付着部分である。
「結合分子付着部分」という用語は、リンカーの本発明の結合分子への共有付着を可能にする部分を含む。
付着部分は、水素原子および結合分子にその所期の機能を実施させる他の置換基と場合により置換された、たとえば1〜60個の炭素、酸素、窒素、硫黄原子の共有鎖を含むことができる。付着部分はペプチド、エステル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテルなど、官能基を含みうる。好ましくは付着部分は、本発明の結合分子を形成するために、少なくとも1個の抗原結合部位を含むポリペプチドの反応性官能基と反応できるように選択される。付着部分の例は、たとえばアミノ、カルボキシラート、およびチオール付着部分を含む。
アミノ付着部分は、本発明の結合分子が形成されるように、ポリペプチドのアミノ基と反応する部分を含む。アミノ付着部分は当分野で公知である。アミノ付着部分の例は、活性化カルバミド(たとえば結合分子のアミノ基と反応して、尿素基を含む連結部分を形成できる)、アルデヒド(たとえば結合分子のアミノ基と反応できる)、および活性化イソシアナート(結合分子のアミノ基と反応して、尿素基を含む連結部分を形成できる)を含む。アミノ付着部分の例は、これに限定されるわけではないが、N−スクシンイミジル、N−スルホスクシンイミジル、N−フタルイミジル、N−スルホフタリミジル、2−ニトロフェニル、4−ニトロフェニル、2,4−ジニトロフェニル、3−スルホニル−4−ニトロフェニル、または3−カルボキシ−4−ニトロフェニル部分を含む。
カルボキシラート付着部分は、本発明の結合分子が形成されるようにはポリペプチドのカルボキシラート基と反応する部分を含む。カルボキシラート付着部分は当分野で公知である。カルボキシラート付着部分の例は、これに限定されるわけではないが、結合分子のCOOH基と反応して、エステル、チオエステル、またはアミド基を含む連結部分を形成しできる活性化エステル中間体および活性化カルボニル中間体を含む。
チオール付着部分は、本発明の結合分子が形成されるようにポリペプチドに存在するチオール基と反応する部分を含む。チオール付着部分は当分野で公知である。チオール付着部分の例は、活性化アシル基(結合分子のスルフヒドリルと反応して、チオエステルを含む連結部分を形成できる)、活性化アルキル基(結合分子のスルフヒドリルと反応して、チオエステルを含む連結部分を形成できる)、マレイミドまたはアクリル基などのMichaelアクセプタ(結合分子のスルフヒドリルと反応して、Michael型添加生成物を形成できる)、酸化還元反応を介してスルフヒドリル基と反応する基、活性化ジスルフィド基(結合分子のスルフヒドリル基と反応して、たとえばジスルフィド部分を含む連結部分を形成できる)を含む。他のチオール付着部分は、アクリルアミド、アルファ−ヨードアセトアミド、およびシクロプロパン−1,1−ジカルボニル化合物を含む。加えて、チオール付着部分は、結合分子のチオールを修飾して、連結分子が結合して本発明の結合分子を形成できる別の反応性種を形成する部分を含みうる。
スペーサ部分Yは、1個以上のアミノ酸残基を含有できる原子の共有結合または共有鎖である。それは水素原子および結合分子にその所期の機能を実施させる他の置換基と場合により置換された、たとえば0〜60個の炭素、酸素、窒素、硫黄原子の共有鎖を含むこともできる。1つの実施形態において、Yはアルキル、アルケニル、アルキニル、エステル、エーテル、カルボニル、またはアミド部分を含む。
別の実施形態において、結合分子のチオール基は、反応性基、たとえば反応性カルボニル基、たとえばケトンまたはアルデヒドに変換される。付着部分は次にケトンまたはアルデヒドと反応させて、本発明の所望の化合物を形成する。カルボニル反応性付着部分の例は、これに限定されるわけではないが、ヒドラジン、ヒドラジド、O−置換ヒドロキシルアミン、アルファ−ベータ−不飽和ケトン、およびH2C=CH−CO−NH−NH2を含む。付着部分の他の例および本発明の結合分子を形成するために使用できるチオール部分を修飾するための方法は、Pratt,M.L.et al.J Am Chem Soc.2003 May 21;125(20):6149−59;およびSaxon,E.Science.2000 Mar 17;287(5460):2007−10に述べられている。
連結分子は、エフェクタ部分またはその誘導体と反応して、本発明の結合分子を形成できるいずれの分子でもよい。たとえばエフェクタ部分は、分子の残りの部分にジスルフィド結合を通じて連結できる。そのような場合、連結部分は、適切なエフェクタ部分誘導体と結合して、エフェクタ部分が本発明の結合分子と結合するように選択される。上述したように、連結部分および/またはリンカーは全体として、リンカーが適切な環境で開裂するように選択できる。
特に好ましいリンカー分子は、たとえばN−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)(たとえばCarlssonら、Biochem.J.,173,723−737(1978)を参照)、N−スクシンイミジル4−(2−ピリジルジチオ)ブタノアート(SPDB)(たとえばU.S.Pat.No.4,563,304を参照)、N−スクシンイミジル4−(2−ピリジルジチオ)ペンタノアート(SPP)(たとえばCAS Registry number 341498−08−6を参照)、N−スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシラート(SMCC)(たとえばYoshitakeら、Eur.J.Biochem.,101,395−399(1979)を参照)、およびN−スクシンイミジル4−メチル−4−[2−(5−ニトロ−ピリジル)−ジチオ]ペンタノアート(SMNP)を含む(たとえばU.S.Pat.No.4,563,304を参照)。本発明の組成物で使用するために最も好ましいリンカー分子は、SPP、SMCC、およびSPDBである。好ましい実施形態において、SPDBは、エフェクタ部分を本発明の結合分子に連結するために使用される。
本発明で使用するための好ましい細胞毒性エフェクタ部分は、癌治療に使用される細胞毒性薬である。本明細書で使用するように、「細胞毒または細胞傷害性薬」は、細胞の成長および増殖に有害であり、細胞または悪性疾患を減少、阻害または破壊するように作用できるいずれかの薬剤を意味する。例示的な細胞毒は、これに限定されるわけではないが、放射性核種、生物毒素、酵素活性毒素、細胞分裂停止または細胞毒性治療剤、プロドラッグ、免疫活性リガンドおよび生物反応修飾物質、たとえばサイトカインを含む。免疫反応性細胞または悪性細胞の成長を遅延または低速化するように作用するいずれの細胞毒も、本発明の範囲内である。
例示的な細胞毒は、一般に細胞分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗物質、抗増殖剤、チューブリン結合剤、ホルモンおよびホルモンアンタゴニストなどを含む。本発明と適合する例示的な細胞分裂停止剤は、アルキル化物質、たとえばメクロレタミン、トリエチレンホスホラミン、シクロホスファミド、イフォスファミド、クロランブシル、ブスルファン、メルファランまたはtriaziquone、またはニトロソ尿素化合物、たとえばカルムスチン、ロムスチン、またはセムスチンを含む。
接合に特に好ましい部分は、メイタンシノイドである。メイタンシノイドは、ハリツルマサキ属に属する東アフリカシュラブから最初に単離されたが、土壌細菌、たとえばActinosynnema pretiosumの代謝産物であることも見出された(たとえばU.S.Pat.No.3,896,111を参照)。メイタンシノイドは、メイタンシン、メイタンシノール、メイタンシノールのC−3エステル、および他のメイタンシノール類似体および誘導体を含むことが当分野で公知である(たとえばU.S. Pat.Nos.5,208,020および6,441,163を参照)。メイタンシノールのC−3エステルは天然発生型であるか、または合成により得られる。その上、天然発生型および合成C−3メイタンシノールエステルのどちらも、単純カルボン酸とのC−3エステル、またはN−メチル−L−アラニンの誘導体とのC−3エステルとして分類でき、後者は前者よりも細胞毒性である。合成メイタンシノイド類似体も当分野で公知であり、たとえばKupchanら、J.Med.Chem.,21,31−37(1978)に述べられている。メイタンシノールならびにその類似体および誘導体を産生する方法は、たとえばU.S.Pat.No.4,151,042に述べられている。
抗体接合体として使用するために適切なメイタンシノイドは、当分野で公知の方法を使用して、天然源から単離、合成的に産生、または半合成により産生できる。その上、メイタンシノイドは、十分な細胞毒性が最終的な接合分子中に保存される限り、いずれかの適切な方法で修飾できる。
反応性化学基を含有する連結部分を含む特に好ましいメイタンシノイドは、連結部分がジスルフィド結合を含有し、付着部分がN−スクシンイミジルまたはN−スルホスクシンイミジルエステルを含有する、メイタンシノールのC−3エステルおよびその類似体である。メイタンシノイドの多くの位置は、たとえばエフェクタ付着部分を通じて連結部分を化学的に連結する位置として作用する。たとえばヒドロキシル基を有するC−3位置、ヒドロキシメチルによって修飾されたC−14位置、ヒドロキシによって修飾されたC−15位置およびヒドロキシ基を有するC−20位置は、すべて有用である。連結部分は最も好ましくはメイタンシノールのC−3位置に連結される。最も好ましくは、本発明の組成物と関連して使用されるメイタンシノイドは、N.sup.2’−deacetyl−N.sup.2’−(−3−メルカプト−1−オキソプロピル)−メイタンシン(DM1)またはN.sup.2’−デアセチル−N.sup.2’−(4−メルカプト−4−メチル−1−オキソペンチル)−メイタンシン(DM4)である。
他の化学結合との連結部分も、他のメイタンシノイドが可能なように、本発明の文脈で使用することが可能である。連結部分に包含できる他の化学結合の具体的な例は、たとえば酸不安定結合、チオエーテル結合、光不安定結合、ペプチダーゼ不安定結合およびエステラーゼ不安定結合などの上述の結合を含む。連結部分および/またはエフェクタ付着部分を備えたメイタンシノイドを産生する方法は、たとえばU.S.Pat.Nos.5,208,020、5,416,064、および6,333,410に述べられている。
メイタンシノイドの連結部分(および/またはエフェクタ付着部分)は通例、そして好ましくは、抗体をメイタンシノイドに結合するために使用されるより大型のリンカー分子の一部である。いずれの適切なリンカー分子も、メイタンシノイドおよび抗体の細胞毒性および標的化特徴それぞれの保持を提供する限り、本発明に関連して使用できる。連結分子は、メイタンシノイドおよび抗体が相互に化学的にカップリングされる(たとえば共有結合)ように、化学結合を通じて(上述したように)メイタンシノイドを抗体に結合する。望ましくは、連結分子はジスルフィド結合またはチオエーテル結合を通じて、メイタンシノイドを抗体に化学的にカップリングする。最も好ましくは、抗体はメイタンシノイドにジスルフィド結合を介して化学的にカップリングされる。
細胞傷害性薬の他の好ましいクラスはたとえば薬物のアントラサイクリンファミリ、ビンカ薬、マイトマイシン、ブレオマイシン、細胞毒性ヌクレオシド、薬物のプテリジンファミリ、ジイネン、およびポドフィロトキシンを含む。これらのクラスの特に有用なメンバーは、たとえばアドリアマイシン、カルミノマイシン、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ドキソルビシン、アミノプテリン、メトトレキサート、メトプテリン、ミトラマイシン、ストレプトニグリン、ジクロロメトトレキサート、マイトマイシンC、アクチノマイシン−D、ポルフィロマイシン、5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、フトラフール、6−メルカプトプリン、シタラビン、シトシンアラビノシド、ポドフィロトキシン、またはポドフィロトキシン誘導体、たとえばエトポシドまたはエトポシドホスフェート、メルファラン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ロイロシジン、ビンデシン、ロイロシンなどを含む。本明細書の教示と適合するなお他の細胞毒は、タキソール、タキサン、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロミド、エメチン、テノポシド、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ならびにピューロマイシンおよびその類似体またはホモログを含む。ホルモンおよびホルモンアンタゴニスト、たとえばコルチコステロイド、たとえばプレドニゾン、プロゲスチン、たとえばヒドロキシプロゲステロンまたはメドロプロゲステロン、エストロゲン、たとえばジエチルスチルベストロール、アンチエストロゲン、たとえばタモキシフェン、アンドロゲン、たとえばテストステロン、およびアロマターゼインヒビタ、たとえばアミノグルテチミドも本明細書の教示と適合する。上述したように、当業者は、所望の化合物への化学修飾を行って、本発明の接合体を調製する目的のためにその化合物の反応をより好都合にすることができる。
特に好ましい細胞毒の1つの例は、カリケアマイシン、エスペラマイシンまたはネマイシンを含む、抗腫瘍抗生物質のエネジインファミリのメンバーまたは誘導体を含む。これらの毒素はきわめて強力であり、核DNAを開裂させることによって作用して、細胞死をもたらす。生体内で開裂して多くの不活性であるが、免疫原性のポリペプチド断片を与えることができるタンパク質とは異なり、カリケアマイシン、エスペラマイシンおよび他のエネジインなどの毒素は、本質的に非免疫原性である小型分子である。これらの非ペプチド毒素はダイマーまたはテトラマーに、モノクローナル抗体および他の分子を標識するために以前に使用されていた技法によって化学的に連結される。これらの連結技術は、構成物のFc部分のみに存在するN−連結糖残基を介して部位特異性連結を含む。そのような部位特異的連結方法は、構成物の結合特性に対する連結の考えられる効果を低下させる利点を有する。
他の細胞毒の中で、ポリペプチドがリシンサブユニットA、アブリン、ジフテリア毒素、ボツリヌス、シアンジノシン、サキシトキシン、志賀毒素、破傷風、テトロドトキシン、トリコテシン、verrucologenまたは毒性酵素などの生体毒素とも結合できることが認識されるであろう。好ましくはそのような構築物は、抗体−毒性構築物の直接発現を可能にする遺伝子組換え技法を使用して作製されるであろう。本発明の本発明のポリペプチドに結合できる他の生物反応修飾物質は、リンホカインおよびインターフェロンなどのサイトカインを含む。本開示を考慮すると、当業者が通常の技法を使用してそのような構築物をただちに形成できることが提起される。
開示したポリペプチドと併せて使用できる適合する細胞毒の別のクラスは、腫瘍または免疫反応性細胞へ有効に向けることができる放射線増感薬である。そのような薬物は、電離放射線への感受性を向上させ、それにより放射線療法の有効性を上昇させる。腫瘍細胞によって内部移行された抗体接合体は、放射線増感剤を核により近づけて、そこでは放射線増感が最大となる。本発明の未結合放射線増感剤が連結されたポリペプチドは、血液から迅速に排除されて、残りの放射性増感剤を標的腫瘍に局在化させて、正常組織には最小限の摂取を与える。血液からの迅速な排除の後、補助の放射線療法が3つの方法:1.)腫瘍に特異的に向けられた外部ビーム放射、2.)腫瘍に直接インプラントされた放射能、または3.)同じ標的化抗体を用いた全身放射免疫療法の1つで投与される。この手法の潜在的に魅力的な変形は、治療用放射性同位体の放射線感作免疫接合体への付着であり、それにより患者に単一の薬物を投与するという便利さがもたらされる。
1つの実施形態において、ポリペプチドの安定性または有効性を向上させる部分は接合でありうる。たとえば1つの実施形態において、PEGは本発明のポリペプチドに接合して、その半減期を生体内で延長させることができる。Leong,S.R.,et al.2001.Cytokine 16:106;2002;Adv.in Drug Deliv.Rev.54:531;またはWeir et al.2002.Biochem.Soc.Transactions 30:512。
以前に暗示したように、適合する細胞毒はプロドラッグを含みうる。本明細書で使用するように「プロドラッグ」という用語は、親薬物と比較して腫瘍細胞に対する細胞毒性が低く、酵素によって活性化またはより活性な親形に変換できる製薬活性物質の前駆体または誘導体形を指す。本発明に適合するプロドラッグは、これに限定されるわけではないが、より活性の細胞毒性を含まない薬物に変換することができる、ホスフェート含有プロドラッグ、チオホスフェート含有プロドラッグ、サルフェート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、β−ラクタム含有プロドラッグ、場合により置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグまたは場合により置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、5−フルオロシトシンおよび他の5−フルオロウリジンプロドラッグを含む。1つの実施形態において、細胞傷害性薬、たとえばメイタンシノイドは、ジスルフィド結合の加水分解によって放出されるプロドラッグとして投与される。本発明で使用するためのプロドラッグ形に誘導体化できる細胞毒性薬のさらなる例は、上述したこれらの化学治療剤を含む。
V.ポリペプチドの投与
本発明のポリペプチドを調製して、被験体に投与する方法は、当業者に公知であり、当業者によってただちに決定される。本発明のポリペプチドの投与経路は、経口、非経口、吸入または局所的でありうる。非経口という用語は、本明細書で使用するように静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、経直腸または経膣投与を含む。非経口投与の静脈内、動脈内、皮下および筋肉内形が概して好ましい。これらすべての投与形は、本発明の範囲内であることが明らかに考えられるが、投与形は、注射用、特に静脈内または動脈内注射あるいは点滴用の溶液でありうる。通例、注射に適切な製薬組成物は、緩衝液(たとえば酢酸、リン酸、クエン酸緩衝液)、界面活性剤(たとえばポリソルベート)、場合により安定剤(たとえばヒトアルブミン)などを含む。しかしながら本明細書の教示と適合する他の方法において、ポリペプチドは有害細胞個体群の部位へ直接送達されて、それにより罹患組織の治療剤への露出を増大させることができる。
非経口投与のための調製物は、滅菌水溶液または非水溶液、懸濁剤、および乳剤を含む。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルを含む。水性担体は、食塩水および緩衝溶媒を含む、水、アルコール性/水性溶液、乳剤または懸濁剤を含む。本発明において、製薬的に許容される担体はこれに限定されるわけではないが、0.01〜0.1Mおよび好ましくは0.05Mリン酸緩衝液または0.8%食塩水を含む。他の一般的な非経口ビヒクルは、リン酸ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル、または固定油を含む。静脈内ビヒクルは、流体および栄養補充剤、電解質補充剤、たとえばリンゲルデキストロースをベースとするようなものなどを含む。保存料および他の添加剤、たとえば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなども存在しうる。さらに詳細には、注射用途に適した製薬組成物は、滅菌水溶液(水溶性の場合)あるいは滅菌注射用液剤または分散剤の即席調製物用の分散剤および滅菌粉剤を含む。そのような場合には、組成物を滅菌する必要があり、容易な注射性が存在する程度まで流体であるべきである。それは製造および貯蔵条件下で安定であるべきであり、好ましくは微生物、たとえば細菌および真菌の汚染作用から保護されるであろう。担体は、たとえば水、エタノール、ポリオール(たとえばグリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびその適切な混合物を含む溶媒または分散溶媒でありうる。適正な流動性は、たとえばレシチンなどのコーティングの使用によって、分散剤の場合には要求された粒径の維持によって、そして界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、各種の抗菌剤および抗真菌剤、たとえばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成できる。多くの場合、組成物に等張剤、たとえば糖、ポリアルコール、たとえばマンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射用組成物の長期吸収は、組成物に吸収を遅延させる薬剤、たとえばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含めることによって引き起こすことができる。
いずれの場合にも、滅菌注射用液剤は、活性化合物(たとえばポリペプチド単独、または他の活性剤と組合せて)の必要量を、本明細書で列挙した成分の1つまたは組合せを含む適切な溶媒に包含させることによって調製でき、必要ならば濾過滅菌を続ける。概して、分散剤は活性化合物を、塩基性分散媒および上に列挙した必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクルに包含させることによって調製できる。滅菌注射用液剤の調製のための滅菌粉剤の場合、調製の好ましい方法は真空乾燥および凍結乾燥であり、それにより活性成分およびその以前に滅菌濾過した溶液からのいずれかの追加の所望の成分の粉末を生じる。注射用調製物は当分野で公知の方法に従って、処理され、アンプル、袋、ボトル、注射器またはバイアルなどの容器に充填されて、無菌条件下で密封される。さらに調製物は包装され、そのそれぞれが参照により本明細書に組み入れられている同時係属U.S.S.N.09/259,337およびU.S.S.N.09/259,338で述べられているようなキットの形で販売される。そのような製造品は好ましくは、関連組成物が自己免疫または腫瘍性障害に罹患している、またはかかりやすい被験体を処置するために有用であることを示すラベルまたはパッケージ挿入物を有する。
上述の状態の処置のための、本発明の組成物の有効用量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトまたは動物であるか、投与される他の薬物、そして処置が予防的か治療的かを含む、多くの各種因子に応じて変化する。通例、患者はヒトであるが、トランスジェニック哺乳類を含む非ヒト哺乳類も処置できる。処置投薬量は、安全性および有効性を最適化するために、当業者に公知の通常の方法を使用して滴定できる。
抗体による受動免疫のために、投薬量はたとえば宿主体重の約0.0001〜100mg/kg、さらに通常は0.01〜5mg/kg(たとえば0.02mg/kg、0.25mg/kg、0.5mg/kg、0.75mg/kg、1mg/kg、2mg/kgなど)の範囲で変化しうる。たとえば投薬量は、1mg/kg体重または10mg/kg体重、あるいは1〜10mg/kgの範囲内、好ましくは少なくとも1mg/kgである。上の範囲の中間の用量も、本発明の範囲内にあるものである。
被験体にはそのような用量を毎日、または1日おきに、毎週または実証的分析によって決定された他のいずれかのスケジュールに従って投与することができる。例示的な処置はたとえば少なくとも6ヶ月の長期間に亘って、複数回の用量量での投与を必要とする。追加の例示的な処置計画は、隔週に1回または毎月1回または3〜6ヶ月ごとに1回の投与を必要とする。例示的な投薬スケジュールは、毎日1〜10mg/kgまたは15mg/kg、隔日30mg/kgまたは毎週60mg/kgを含む。一部の方法では、異なる結合特異性を備えた2つ以上のモノクローナル抗体が同時に投与され、その場合、投与された各抗体の投薬量は、示した範囲内に含まれる。
本発明の結合分子は、複数の機会に投与できる。1回の用量の間隔はたとえば毎日、毎週、毎月、または毎年でありうる。間隔は、患者のポリペプチドまたは標的分子の血液レベルを測定することによって示されるように、不規則でもよい。一部の方法では、投薬量はある血漿結合分子または毒素濃度、たとえば1〜1000μg/mlまたは25〜300μg/mlを達成するために調整できる。あるいは結合分子は持続放出製剤として投与でき、その場合、より頻繁でない投与が必要とされる。投薬量および頻度は、患者内での抗体の半減期に応じて変化する。一般にヒト化抗体は最長半減期を示し、キメラ抗体および非ヒト抗体がそれに続く。1つの実施形態において、本発明の結合分子は非接合形で投与できる。別の実施形態において、本発明のポリペプチドは接合形で複数回投与できる。なお別の実施形態において、本発明の結合分子は非接合形で、次に接合形で、あるいはその逆で投与することができる。
投与の投薬量および頻度は、処置が予防的または治療的であるかに応じて変化しうる。予防用途において、本抗体またはそのカクテルを含有する組成物は、患者の抵抗力を向上させるためにすでに疾患状態にない患者に投与される。そのような量は、「予防的有効用量」と定義される。この用途では、正確な量は再度、患者の健康および全身免疫の状態に応じて代わるが、概して0.1〜25mg/用量、特に0.5〜2.5mg/用量の範囲で変化する。比較的少ない投薬量が比較的まれな間隔で長期間に亘って投与される。一部の患者は、その生涯の残りに亘って処置を受け続ける。
治療用途では、疾患の進行が減速または終止するまで、好ましくは患者が疾患症状の部分的または完全な回復を示すまで、比較的多い投薬量(たとえば用量当り約1〜400mg/kgの結合分子、たとえば抗体、放射性免疫接合体では5〜25mgの投薬量がより普通に使用され、細胞毒−薬物接合分子ではより多い用量である)が比較的短い間隔に時折要求される。その後、患者には予防計画を投与できる。
1つの実施形態において、被験体は、(たとえばベクター内で)本発明のポリペプチドをコードする核酸分子によって処置できる。ポリペプチドをコードする核酸の用量は、患者当りDNA約10ng〜1g、100ng〜100mg、1μg〜10mg、または30〜300μgの範囲で変化する。感染ウィルス性ベクターの用量は、用量当り10〜100ビリオン、またはそれ以上で変化する。
治療剤は、非経口、局所的、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、腹腔内、鼻腔内または筋肉内手段で、予防および/または治療処置のために投与できる。抗体の投与には、筋肉内注射または静脈内輸液が好ましい。一部の方法では、特定の治療用抗体を頭蓋に直接注射する。一部の方法では、抗体は持続放出組成物またはデバイス、たとえばMedipadTMデバイスとして投与される。
本発明の薬剤は場合により、処置の必要がある障害または状態を処置するのに有効である(たとえば予防的または治療的)他の薬剤と組合せて投与することができる。好ましい追加の薬剤は、当分野で認識され、特定の疾患に標準的に投与される薬剤である。
本発明の90Y標識ポリペプチドの有効な1回処置投薬量(すなわち治療的有効量)は、約5〜約75mCiの、さらに好ましくは約10〜約40mCiの範囲で変化する。131I標識抗体の有効な1回処置非骨髄除去投薬量は、約5〜約70mCiの、さらに好ましくは約5〜約40mCiの範囲で変化する。131I標識抗体の有効1回処置除去投薬量(すなわち自家骨髄移植を必要とする)は、約30〜約600mCiの、さらに好ましくは約50〜約500mCi未満の範囲で変化する。キメラ抗体と併せて、マウス抗体に対してより長い循環半減期のために、ヨウ素131標識キメラ抗体の有効な1回処置非骨髄除去投薬量は、約5〜約40mCi、さらに好ましくは約30mCiの範囲で変化する。たとえば111In標識の撮像基準は通例、約5mCi未満である。
131Iおよび90Yでは多くの臨床経験が得られているが、他の放射性標識が当分野で公知であり、同様の目的に使用されている。なお他の放射性同位体が撮像に使用される。たとえば本発明の範囲に適合する追加の放射性同位体は、これに限定されるわけではないが、123I、125I、32P、57Co、64Cu、67Cu、77Br、81Rb、81Kr、87Sr、113In、127Cs、129Cs、132I、197Hg、203Pb、206Bi、177Lu、186Re、212Pb、212Bi、47Sc、105Rh、109Pd、153Sm、188Re、199Au、225Ac、211At、および213Biを含む。この点でアルファ、ガンマおよびベータ放射体は本発明にすべて適合する。さらに本開示を考慮して、当業者が過度の実験をせずに選択した処置コースと適合する放射性核種をただちに決定できることが提示される。このために、すでに臨床診断に使用されている追加の放射性核種は、125I、123I、99Tc、43K、52Fe、67Ga、68Gaはもちろんのこと、111Inも含む。抗体は標的化免疫療法での潜在的使用のために各種の放射性核種によって標識もされている(Peirersz et al.Immunol.Cell Biol.65:111−125(1987))。これらの放射性核種は、188Reおよび186Reはもちろんのこと、199Auおよび67Cuもより少ない程度で含む。U.S.Patent No.5,460,785は、そのような放射性同位体に関する追加のデータを提供し、参照により本明細書に組み入れられている。
本発明のポリペプチドが接合形または非接合形で使用されるかどうかにかかわらず、本発明の主な利点は、骨髄抑制患者、特に放射線療法または化学療法などの補助療法を受けている、または受けた患者でこれらのポリペプチドを使用する能力であることが認識されるであろう。他の好ましい実施形態において、ポリペプチド(再度、接合または非接合形)は、化学治療剤を用いた複合治療計画で使用できる。当業者は、そのような治療計画が開示した抗体および1つ以上の化学治療剤の連続、同時、並行または同一空間投与を含むことを認識するであろう。本発明の本態様の特に好ましい実施形態は、たとえばD4メイタンシノイドなどのメイタンシノイドに接合した毒素接合結合分子の投与を含むであろう。
ポリペプチドはすぐ上で述べたように投与できるが、他の実施形態において、接合および非接合ポリペプチドは、そうでなければ健康な患者に第1選択治療剤として投与できることを強調する必要がある。そのような実施形態において、ポリペプチドは正常または平均赤色骨髄予備を有する患者に、および/または外部ビーム照射または化学療法などの補助療法を受けなかった、受けていない患者に投与することができる。
しかしながら上述したように、本発明の選択した実施形態は、骨髄抑制患者への、あるいは放射線療法または化学療法などの1つ以上の補助療法と組合せたまたは併用した、ポリペプチドの投与を含む(すなわち複合治療計画)。本明細書で使用するように、補助療法と併用したまたは組合せたポリペプチドの投与は、治療および開示したポリペプチドの連続、同時、同一空間、並行、付随または同時発生投与または利用を意味する。当業者は、複合治療計画の各種の成分の投与または利用は、処置の全体的な有効性を向上させるために時間調節できることを認識するであろう。たとえば化学治療剤は、本発明の放射性免疫接合体に続いて2〜3週間以内に、標準の公知の処置コースで投与できる。反対に、細胞毒結合ポリペプチドは、腫瘍局在化外部ビーム照射に続いて静脈内投与できる。なお他の実施形態において、ポリペプチドは、1つ以上の選択された化学治療剤を1回の外来診療で並行投与できる。当業者(たとえば熟練腫瘍医)は、選択した補助療法および本明細書の教示に基づいて、過度の実験をせずに有効な複合治療計画をただちに識別できるであろう。
この点で、ポリペプチド(接合または非接合のどちらか)および化学療法剤の組合せをいずれかの順序で、患者に治療上の恩恵をもたらすいずれかの時間枠で投与できることが認識されるであろう。すなわち化学療法剤およびポリペプチドはいずれかの順序で、または並行に投与できる。選択した実施形態において、本発明のポリペプチドは、前に化学療法を受けた患者に投与されるであろう。なお他の実施形態において、ポリペプチドおよび化学療法処置は、実質的に同時または並行に投与されるであろう。たとえば患者には、一連の化学療法を受けながら結合分子を与えることができる。好ましい実施形態において、結合分子はいずれかの化学療法剤または処置の1年以内で投与されるであろう。他の好ましい実施形態において、ポリペプチドはいずれかの化学療法剤または処置の10、8、6、4、または2ヶ月間以内で投与されるであろう。なお他の好ましい実施形態において、ポリペプチドはいずれかの化学療法剤または処置の4、3、2または1週間以内で投与されるであろう。なお他の実施形態において、ポリペプチドは選択した化学療法剤または処置の5、4、3、2または1日以内で投与されるであろう。2つの薬剤または処置が患者にほんの数時間または数分以内に(すなわち実質的に同時に)投与できることがさらに認識されるであろう。
その上、本発明により、骨髄抑制患者は、血球数の低下を示すいずれの患者も意味すると見なされるものとする。当業者は、骨髄抑制の臨床指標として慣習的に使用される複数の血球数パラメータがあり、患者において骨髄抑制が発生している程度を容易に測定できることを認識するであろう。当分野で受け入れられている骨髄抑制測定の例は、絶対好中球数(ANC)または血小板数である。そのような骨髄抑制または部分骨髄除去は、おそらく各種の生化学障害または疾患の結果、あるいはどちらかと言えば従来の化学療法または放射線療法である。この点で当業者は、在来の化学療法を受けた患者が通例、赤色骨髄予備の低下を示すことを認識するであろう。上述したように、そのような被験体は、死亡率または罹患率の上昇を引き起こす貧血または免疫抑制などの許容できない副作用のために、細胞毒(すなわち放射性核種)の最適レベルを使用して処置できないことが多い。
さらに詳細には、本発明の接合または非接合ポリペプチドを使用すると、約2000/mm3より低いANCおよび約150,000/mm3より低い血小板数を有する患者を有効に処置できる。さらに好ましくは、本発明のポリペプチドを使用して、約1500/mm3未満の、約1000/mm3未満の、なおさらに好ましくは約500/mm3未満のANCを有する患者を処置できる。同様に本発明のポリペプチドを使用して、約75,000/mm3未満の、約50,000/mm3未満の、なお約10,000/mm3未満の血小板数を有する患者を処置することができる。さらに一般的な意味で当業者は、患者に政府実施指針および手順を使用して骨髄抑制するときを容易に決定できるであろう。
上で示したように、多くの骨髄抑制患者が化学療法、インプラント放射線療法または外部ビーム放射線療法を含む処置コースを受けている。後者の場合、外部放射線源は悪性疾患の局所照射用である。放射線療法インプランテーション方法は、放射性試薬を悪性疾患内に外科的に配置して、それにより疾患部位に選択的に照射する。いずれの場合にも、開示したポリペプチドを使用して、原因とは無関係に、骨髄抑制を示す患者の障害を処置することができる。
この点で本発明のポリペプチドは、生体内での新生物細胞の増殖を消滅、減少、阻害または制御するいずれかの化学療法剤または薬剤と併用して、または組合せて(たとえば複合治療計画を提供するために)使用できることがさらに認識されるであろう。上述したように、そのような薬剤は赤色骨髄予備の減少を引き起こすことが多い。この減少は全部または一部を、そのような患者における新形成の積極的な処置を好都合に可能にする本発明の化合物の骨髄毒性の低下によって停止させることができる。他の好ましい実施形態において、本明細書で開示する放射性標識免疫接合体は、新生物細胞の放射性核種に対する感受性を向上させる放射線増感剤と共に有効に使用できる。たとえば放射線増感化合物は、放射性標識化結合分子が血流から大部分排除されたが、1つまたは複数の腫瘍の部位に治療的に有効なレベルでなお残存している後に、投与できる。
本発明のこれらの態様に関して、本発明に適合する例示的な化学治療剤は、アルキル化剤、ビンカアルカロイド(たとえばビンクリスチンおよびビンブラスチン)、プロカルバジン、メトトレキサートおよびプレドニゾンを含む。4薬物の組合せであるMOPP(mechlethamine(ナイトロジェンマスタード)、ビンクリスチン(オンコビン)、プロカルバジンおよびプレドニゾン)は、各種のリンパ腫を処置するに非常に有効であり、本発明の好ましい実施形態を構成する。MOPP耐性患者では、ABVD(たとえばアドリアマイシン、ブレオマイシン、ビンブラスチンおよびダカルバジン)、Ch1VPP(クロランブシル、ビンブラスチン、プロカルバジンおよびプレドニゾン)、CABS(ロムスチン、ドキソルビシン、ブレオマイシンおよびストレプトゾシン)、MOPPおよびABVD、MOPPおよびABV(ドキソルビシン、ブレオマイシンおよびビンブラスチン)またはBCVPP(カルムスチン、シクロホスファミド、ビンブラスチン、プロカルバジンおよびプレドニゾン)組合せを使用することができる。Arnold S.Freedman and Lee M.Nadler,Malignant Lymphomas,in HARRISON’S PRINCIPLES OF INTERNAL MEDICINE 1774−1788(Kurt J.Isselbacher et al,eds.,13th ed.1994)およびV.T.DeVita et al,(1997)ならびに標準投薬およびスケジューリングのためにそこで引用された参考文献。これらの治療は変更せずに使用できるか、または特定の患者のために必要に応じて、本明細書で述べるような1つ以上の本発明のポリペプチドと組合せて改変できる。
本発明の文脈で有用である追加の計画は、単一のアルキル化剤、たとえばシクロホスファミドまたはクロランブシル、あるいは組合せ、たとえばCVP(シクロホスファミド、ビンクリスチンおよびプレドニゾン)、CHOP(CVPおよびドキソルビシン)、C−MOPP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾンおよびプロカルバジン)、CAP−BOP(CHOPおよびプロカルバジンならびにブレオマイシン)、m−BACOD(CHOPおよびメトトレキサート、ならびにブレオマイシンならびにロイコボリン)、ProMACE−MOPP(プレドニゾン、メトトレキサート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エトポシドならびにロイコボリンおよび標準MOPP)、ProMACE−CytaBOM(プレドニゾン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エトポシド、シタラビン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、メトトレキサートおよびロイコボリン)ならびにMACOP−B(メトトレキサート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、固定用量プレドニゾン、ブレオマイシンおよびロイコボリン)の使用を含む。当業者は、これらの計画それぞれの標準投薬量およびスケジューリングをただちに決定することができるであろう。CHOPは、ブレオマイシン、メトトレキサート、プロカルバジン、ナイトロジェンマスタード、シトシンアラビノシドおよびエトポシドとも組合されている。他の適合する化学治療剤は、これに限定されるわけではないが、2−クロロデオキシアデノシン(2−CDA)、2’−デオキシコフォルマイシンおよびフルダラビンを含む。
寛解または再発を達成できなかった中間および高悪性度NHLを有する患者は、救済療法が使用される。救済療法は、単独または組合せで投与されるシトシンアラビノシド、シスプラチン、エトポシドおよびイフォスファミドなどの薬物を利用する。ある腫瘍性障害の再発または高悪性度形において、次のプロトコル:IMVP−16(イフォスファミド、メトトレキサートおよびエトポシド)、MIME(メチル−gag、イフォスファミド、メトトレキサートおよびエトポシド)、DHAP(デキサメタゾン、高用量シタラビンおよびシスプラチン)、ESHAP(エトポシド、メチルプレジソロン、HDシタラビン、シスプラチン)、CEPP(B)(シクロホスファミド,エトポシド、プロカルバジン、プレドニゾンおよびブレオマイシン)およびCAMP(ロムスチン、ミトキサントロン、シタラビンおよびプレドニゾン)が、それぞれ周知の投与速度およびスケジュールを用いてしばしば使用される。
本発明のポリペプチドと併せて使用される化学療法剤の量は、被験体によって変化するか、または当分野で公知のことに従って投与される。たとえばBruce A Chabner et al,Antineoplastic Agents,in GOODMAN & GlLMAN’S THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS 1233−1287((Joel G.Hardman et al,eds.,9th ed.1996)を参照。
1つの実施形態において、本発明の結合分子は、たとえば予防治療として原発性腫瘍、転移あるいは前癌増殖または組織を除去するために、外科処置を受けた、受けている、または受けるであろう被験体に投与できる。
別の実施形態において、本発明の結合分子は生物薬と併せて投与できる。癌の処置に有用な生物薬は当分野で公知であり、本発明の結合分子はたとえばそのような既知の生物薬と併せて用途できる。
たとえばFDAは、乳癌の処置のために次の生物薬を認可している:Herceptin(登録商標)(トラスツズマブ、Genentech Inc.,サウスカリフォルニア,カリフォルニア州;HER2陽性乳癌で抗腫瘍結合を有するヒト化モノクローナル抗体);Faslodex(登録商標)(フルベストラント、AstraZeneca Pharmaceuticals,LP,ウィルミントン、デラウェア州;乳癌を処置するために使用されるエストロゲンレセプタアンタゴニスト);Arimidex(登録商標)(アナストロゾール、AstraZeneca Pharmaceuticals,LP;アロマターゼを遮断する非ステロイド性アロマターゼインヒビタ、エストロゲンを作製するために必要な酵素);Aromasin(登録商標)(エキセメスタン、,Pfizer Inc.,ニューヨーク、ニューヨーク州;乳癌の処置で使用される不可逆性ステロイド性アロマターゼインアクチベータ);Femara(登録商標)(レトロゾール、Novartis Pharmaceuticals,イーストハノーバー,ニュージャージー州;FDAにより認可された乳癌を処置するための非ステロイド性アロマターゼインヒビタ);およびNolvadex(登録商標)(タモキシフェン、AstraZeneca Pharmaceuticals,LP;FDAにより認可された乳癌を処置するための非ステロイド性抗エストロゲン)。本発明の結合分子が組合される他の生物薬は:AvastinTM(ベバシズマブ,Genentech Inc.;血管新生を阻害するように設計された最初のFDA認可治療);およびZevalin(登録商標)(イブリツモマブチウキセタン、Biogen Idee,ケンブリッジ、マサチューセッツ州;B細胞リンパ腫の処置のために現在認可されている放射性標識化モノクローナル抗体)を含む。
加えてFDAは、結腸直腸癌の処置のために次の生物薬を認可している:AvastinTM;ErbituxTM(セツキシマブ、ImClone Systems Inc.,ニューヨーク、ニューヨーク州、およびBristol−Myers Squibb,ニューヨーク、ニューヨーク州;は、表皮増殖因子レセプタ(EGFR)に対して作られたモノクローナル抗体である);Gleevec(登録商標)(メシル酸イマチニブ;タンパク質キナーゼインヒビタ);およびErgamisol(登録商標)(塩酸レバミゾール,Janssen Pharmaceutica Products,LP,ティテュスビル、ニュージャージー州;Dukes’StageC結腸癌の患者での外科切除後に、5−フルオロウラシルと組合されたアジュバント処置としての1990年にFDAによって認可された免疫調節物質)。
非ホジキンリンパ腫の処置で使用するための、現在認可されている療法は:Bexxar(登録商標)(トシツモマブおよびヨウ素I−131トシツモマブ、GlaxoSmithKline,Research Triangle Park,NC;放射性分子(ヨウ素I−131)に連結されたマウスモノクローナル抗体(トシツモマブ)を含む多段階処置);Intron(登録商標)A(インターフェロンアルファ−2b、Schering Corporation,ケニルワース,ニュージャージー州;アントラサイクリン含有複合化学療法と併せた、濾胞性非ホジキンリンパ腫の処置のために認可されたインターフェロンの種類(たとえばシクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾン[CHOP]));Rituxan(登録商標)(リツキシマブ,Genentech Inc.,サウスカリフォルニア,カリフォルニア州、およびBiogen Idee,ケンブリッジ、マサチューセッツ州;非ホジキンリンパ腫の処置のために認可されたモノクローナル抗体;Ontak(登録商標)(デニロイキンディフチトクス、Ligand Pharmaceuticals Inc.,サンディエゴ、カリフォルニア州;インターロイキン−2に遺伝子融合されたジフテリア毒素の断片より成る融合タンパク質);およびZevalin(登録商標)(イブリツモマブチウキセタン、Biogen Idee;B細胞非ホジキンリンパ腫の処置のためにFDAによって認可された放射性標識モノクローナル抗体)を含む。
白血病の処置では、本発明の結合分子と併せて使用できる例示的な生物薬は、Gleevec(登録商標);Campath(登録商標)−1H(アレムツズマブ、Berlex Laboratories,リッチモンド、カリフォルニア州;慢性リンパ球性白血病の処置で使用されるモノクローナル抗体の種類)を含む。加えてGenasense(オブリマーセン、Genta Corporation,バークレーハイツ、ニュージャージー州;白血病を処置するために開発中のBCL−2アンチセンス療法を使用できる(たとえば単独で、または1つ以上の化学療法薬、たとえばフルダラビンおよびシクロホスファミドと組合せて)は、請求される結合分子と共に投与できる。
肺癌の処置では、例示的な生物薬は、TarcevaTM(エルロチニブHCL、OSI Pharmaceuticals Inc.,メルビル、ニューヨーク州;ヒト表皮増殖因子レセプタ1(HER1)経路を標的化するように設計された小型分子)を含む。
多発性骨髄腫の処置では、例示的な生物薬は、Velcade(登録商標)Velcade(ボルテゾミブ、Millennium Pharmaceuticals,ケンブリッジ、マサチューセッツ州;プロテアソームインヒビタ)を含む。追加の生物薬は、Thalidomid(登録商標)(サリドマイド、Clegene Corporation,ウォレン、ニュージャージー州;免疫調節剤で、骨髄腫細胞の増殖および生存ならびに抗血管新生を阻害する能力を含む、複数の作用を有すると考えられる)。
他の例示的な生物薬は、ImClone Systems,Inc.,ニューヨーク、ニューヨーク州によって開発されたMOAB IMC−C225を含む。
加えて請求された結合分子は、抗癌免疫反応を調節するために、ワクチンまたは他の薬剤(たとえばサイトカイン)と併せて投与できる。たとえばMelacine(登録商標)(Corixa Corporation,シアトル、ワシントン州)は、T3N0M0切除メラノーマの処置に有望な結果を有することが報告されている同種腫瘍ワクチンである。GMK(登録商標)(Progenies Pharmaceutical,Inc.,タリータウン、ニューヨーク州)は、アジュバント第III相薬剤としてメラノーマ再発のリスクが高い患者に投与されるガングリオシド抗原である。抗ガストリン治療ワクチン(登録商標)(Aphton Corporation,マイアミ、フロリダ州)は、ホルモンG17およびGly伸長を中和して、結腸直腸、膵臓、および胃癌の患者への第III相臨床試験中である。CeaVac(登録商標)(Titan Pharmaceuticals,Inc.,サウスカリフォルニア、カリフォルニア州)は、結腸直腸癌で研究されている抗イディオタイプ抗体ワクチンである。最後にTheratope(登録商標)(Biomira Inc.,エドモントン、アルバータ州、カナダ)は、転移性乳癌患者で第III相薬剤として調査されている合成炭化水素治療ワクチンである(Pharmaceutical Research and Manufacturers of America,2000)。
別の実施形態において、本発明の結合分子は、抗血管新生剤、たとえばエンドスタチン(微小血管内皮細胞産生を停止させる内因性腫瘍由来内皮特異性インヒビタ);抗VEGF抗体;サリドマイドと併せて投与できる;またはマトリクスメタロプロテイナーゼインヒビタは、血管の基底膜の合成および分解を阻害する)。
上述したように、本発明のポリペプチド、その免疫反応性断片または組換えは哺乳類障害の生体内処置に対して製薬的有効量で投与できる。この点で、開示した抗体は活性剤の投与を容易にして、安定性を促進するために調合されることが認識されるであろう。好ましくは本発明による製薬組成物は製薬的に許容される非毒性滅菌担体、たとえば生理的食塩水、非毒性緩衝液、保存料などを含む。本出願の解釈上、治療剤へ接合された、または非接合のポリペプチド、その免疫反応性断片または組換えの製薬的有効量は、標的への有効な結合を達成するのに、そしてたとえば疾患または障害の症状を回復させるために、あるいは物質または細胞を検出するために恩恵を達成するのに十分な量を意味すると見なされる。腫瘍細胞の場合、ポリペプチドは好ましくは腫瘍性または免疫反応性細胞の選択した免疫反応性抗原と相互作用可能であり、これらの細胞死の増加をもたらすであろう。もちろん本発明の製薬組成物は、ポリペプチドの製薬的有効量を供給するために1回用量または複数回用量で投与できる。
本開示の範囲を維持しながら、本発明のポリペプチドは、上述の処置方法に従ってヒトまたは他の動物に治療または予防効果を生じるのに十分な量で投与できる。本発明のポリペプチドはそのようなヒトまたは他の動物に、公知の方法に従って本発明の抗体を従来の製薬的に許容される担体または希釈剤と組合せることによって調製された従来の投薬形で投与できる。当業者によって、製薬的に許容される担体または希釈剤の形および特徴はそれが組合される活性成分の量、投与経路および他の公知の変形によって指示されることが認識されるであろう。当業者は、本発明によるポリペプチドの1つ以上の種を含むカクテルが特に有効であると判明することをさらに認識するであろう。
VI.使用方法
本発明の分子は、診断または治療目的で使用できる。本発明の好ましい実施形態は、そのような処置が必要な哺乳類被験体に障害、たとえば腫瘍性障害の診断および/または処置のための化合物、組成物、キットおよび方法を提供することである。好ましくは、被験体はヒトである。
本発明のポリペプチドは、多くの異なる用途で有用であろう。たとえば1つの実施形態において、対象結合分子は、ELISAアッセイを使用して試験管内でCriptoを検出するためのアッセイで使用できる。例示的なアッセイは当分野で公知であり、たとえばUnited States Application Number 20040077025を参照。
別の実施形態において、対象結合分子は撮像技術を使用してCripto保持細胞の存在を検出するために有用である。そのような用途では、結合分子を検出可能な部分、たとえば放射性標識に下でさらに述べるように接合させることが望ましい。
別の実施形態において、対象結合分子は、本発明の結合分子に認識された細胞保持標的(たとえばCriptoのエピトープ)を減少または除去するために有用である。別の実施形態において、対象結合分子は、循環中の溶解性標的分子の濃度低下、またはその除去に有効である。
1つの実施形態において、本発明の結合分子は腫瘍サイズを縮小して、腫瘍成長を阻害し、および/または腫瘍保持被験体の生存時間を延長する。したがって本発明は、ヒトまたは他の動物の腫瘍を、そのようなヒトまたは動物にポリペプチドの有効な非毒性量を投与することによって処置する方法にも関する。当業者は、通常の実験によって、悪性疾患を処置する目的のためのポリペプチドの有効な非毒性量を決定することができる。たとえばポリペプチドの治療活性量は、被験体の疾患ステージ(たとえばステージI対ステージIV)、年齢、性別、内科的合併症(たとえば免疫抑制状態または疾患)および体重、ならびに被験体において所望の反応を誘発する抗体の能力などの因子に従って変化しうる。投薬計画は、最適治療反応を提供するために調整できる。たとえば複数の分割用量を毎日投与することができ、または用量を治療状況の緊急性によって示されるように比例的に減少させることができる。概してしかしながら、有効な投薬量は、約0.05〜100ミリグラム/キログラム体重/日およびさらに好ましくは約0.5〜10ミリグラム/キログラム体重/日の範囲にあると予想される。
解明する目的で「哺乳類」は、ヒト、家畜(domestic and farm animal)、および動物園の動物、競技用動物、ペット動物、たとえばイヌ、ウマ、ネコ、メウシなどを含む、哺乳類として分類されるいずれの動物も指す。好ましくは哺乳類はヒトである。「処置」は、治療処置および予防または防止措置の療法を指す。処置が必要な哺乳類は、すでに疾患または障害を持つ哺乳類はもちろんのこと、疾患または障害が防止される哺乳類も含む。それゆえ該哺乳類は、疾患または障害を有すると診断されているか、または疾患の素因がある、または疾患にかかりやすいことがある。
概して開示した発明を使用して、癌性細胞の結合分子による標的化を可能にするマーカーを含むいずれの新生物も予防的にまたは治療的に処置できる。好ましい実施形態において、本発明の結合分子は固形腫瘍を処置するために使用される。処置できる例示的な癌は、これに限定されるわけではないが、前立腺癌、胃癌、たとえば結腸癌、皮膚癌、乳癌、卵巣癌、肺癌および膵臓癌を含む。別の実施形態において、本発明の抗体を使用して、カポジ肉腫、CNS新形成(毛細血管細胞芽腫、髄膜腫および脳転移)、メラノーマ、胃腸および腎肉腫、横紋筋肉腫、神経膠芽腫(好ましくは多形神経膠芽腫)、平滑筋肉腫、網膜芽細胞腫、卵巣の乳頭状嚢胞腺癌、ウィルムス腫瘍または小細胞肺癌を処置できる。本開示を考慮すると、過度の実験なしに、上述の新形成それぞれに関連した腫瘍関連分子のために適切なポリペプチドを得られることが認識されるであろう。
開示した発明による処置に従う例示的な血液悪性疾患は、ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫はもちろんのこと、ALL−L3(バーキット型白血病)、慢性リンパ球性白血病(CLL)および単球細胞白血病を含む白血病も含む。本発明の化合物および方法は、低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、細胞リンパ腫(FCC)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、びまん性大細胞リンパ腫(DLCL)、小リンパ球性(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小非切れ込み細胞NHL、巨大病変NHLおよびワルデンストロームマクログロブリン血症を含む、各種のB細胞リンパ腫を処置するのに特に有効であることが認識されるであろう。これらのリンパ腫が分類系の変更のために異なる名称をしばしば有する多いことと、異なる名称で分類されたリンパ腫を有する患者も本発明の複合治療計画から恩恵を得ることが、当業者に明らかになるはずである。上述の腫瘍性障害に加えて、開示した発明を好都合に使用して、適合性の腫瘍関連分子を持つ追加の悪性疾患を処置できることが認識されるであろう。
本発明の1つの実施形態において、Criptoに特異的に結合することができ、腫瘍成長がアクチビンBシグナリングの消失または低下によって仲介される場合に患者の腫瘍細胞の成長を阻害する分子が提供される。ある実施形態において、腫瘍細胞は、脳、頭部、頸部、前立腺、乳房、精巣、結腸、肺、卵巣、膀胱、子宮、子宮頸部、膵臓および胃の腫瘍細胞である。他の実施形態において、本発明の結合分子はCriptoに特異的に結合して、Criptoを過剰発現する腫瘍細胞の成長を阻害する。1つの実施形態において、腫瘍細胞はCriptoを過剰発現する細胞系、たとえば脳、乳房、精巣、結腸、肺、卵巣、膀胱、子宮、子宮頸部、膵臓および胃の癌に由来する細胞系である。
本発明は、制限するものとして解釈すべきでない次の実施例によってさらに説明される。本出願を通じて引用されたすべての参考文献、特許および公開特許出願の内容は、参照により本明細書に組み入れられている。
(実施例1)
AおよびBアイソフォームの識別
抗体分子の溶液は、2つの異なるアイソフォームを含む。一方の形のフォームAは、少なくとも1個のジスルフィド結合を介して連結される重鎖分子を含む。他方の形のフォームBは、少なくとも1個のジスルフィド結合を介して連結されない重鎖分子を含む。フォームBは出現しないか、または無傷のガンマ1MAb、たとえばRituxan(登録商標)と共に非常に低い頻度で出現する。しかしながら、同様のヒンジを有するドメイン欠失(dd)構築物を用いると、フォームBの頻度ははるかに高くなる。これらの形は、変性非還元SDS pageを使用して区別することができる。ドメイン欠失抗体調製物では、フォームAは120kDaダイマーとして出現するのに対して、フォームBは60kDaモノマーとして出現する。
(実施例2)
CH2ドメイン欠失MAb断片におけるヒンジ領域異種性の識別
ヒンジドメインは、3つの識別可能な領域:上部、中間、および下部ヒンジ領域に再分割できる(Roux et al.J.Immunol.1998 161:4083)。IgG1およびIgG3ヒンジのこれらの領域を含むポリペプチド配列を表3に示す。IgG3ヒンジ中間領域は、2つの保存システイン残基に加えて、3回反復する15アミノ酸モチーフを含有する。これらの領域からのアミノ酸配列は、合成IgG1/IgG3結合ペプチドを設計するために使用される。これらは位置226〜238に相当するIgG1上部ヒンジ残基、位置239〜241に相当するIgG1中間ヒンジおよび位置243の付加プロリンまたは位置243、244、および245それぞれの付加プロリン、アラニン、プロリンのどちらかと組合された位置241EE〜242に相当する単一のIgG3中間ヒンジ反復モチーフ(Kabat番号付けシステム)より構成され、柔軟性Gly/Serスペーサが続いた(表2)。加えて、位置243の付加プロリンまたは位置243、244、および245それぞれの付加プロリン、アラニン、プロリンのどちらかと組合された、位置239または242のシステインを置換したセリンアミノ酸残基より成る、新規な結合ペプチドが設計された(Kabat番号付けシステム)。Pro243Ala244Pro245およびPro243結合ペプチドも作製された。IgG1ヒンジの第1の残基(位置226、Kabat番号付けシステム)から開始し、ヒンジ/GlySer結合ペプチドの最後の残基までの親CH2ドメイン欠失ヒト化CC49結合ペプチドのアミノ酸配列を表2に示す。Kabat番号付けシステムで示したシステイン残基の位置を用いたCC49への配列比較による、各種の結合ペプチド設計も示す。
表2:ヒンジ領域結合ペプチド配列
(実施例3)
結合ポリペプチドの構築およびアイソフォームの優先的合成
表2に示すヒンジ領域結合ペプチドをコードする核酸配列は、CH2ドメイン欠失huCC49遺伝子配列内にSplicing by Overlap Extension(SOE)法を使用して導入した(Horton,R.M.1993 Methods in Molecular Biology,Vol 15:PCR Protocols:Current Methods and applications.Ed.B.A.White)。ヒンジ領域への正確な修飾はDNA配列解析によって確認した。プラスミドDNAを使用して、抗体タンパク質の安定産生のためにCHO DG44細胞を形質転換した。
表2に示した8つの設計された合成結合ペプチドを含有するCH2ドメイン欠失huCC49抗体を構築して、CHO DG44細胞内で抗体を産生した。上澄みを単離細胞系から回収して、培養物上澄み中の抗体濃度はイムノアッセイによって決定した。各細胞系からの全抗体タンパク質0〜30ngの範囲の抗体を含有する上澄みは、非還元SDS−PAGE電気泳動と、それに続く抗ヒトカッパHRP接合抗体を用いたウェスタンブロットによって解析して、CH2ドメイン欠失huCC49フォームAおよびフォームBアイソフォームを検出した。これらの条件下では、フォームAは単一の120kDaホモダイマーとして、フォームBは60kDa二重項として移動する。カッパ鎖モノマーおよびダイマーも見られる。配列番号:5、26、32、および33で示す結合ペプチドは、産生されたフォームAの割合を上昇させることがすべて見出された。これらの結果は、フォームA CH2ドメイン欠失huCC49抗体の産生において、フォームBがわずかに検出されるか、検出されずに、G1/G3/Pro243Ala244Pro245+[Gly/Ser](配列番号:5)およびG1/G3/Pro243+[Gly/Ser](配列番号:26)ヒンジの両方が、完全でないにしても、主として生じたことを示した。対照的に、CH2ドメイン欠失huCC49Cys242Ser:Pro243(配列番号:30)およびCH2ドメイン欠失huCC49Cys242Ser:Pro243Ala244Pro245(配列番号:32)はそれぞれ、フォームBアイソフォームの中程度からかなりの優先度をもたらした。
huCC49抗体配列に導入されたPro243Ala244Pro245+[Gly/Ser](配列番号:32)およびG1/G3/Pro243Ala244Pro245+[Gly/Ser](配列番号:5)結合ペプチドを含有する細胞系を抗体産生に使用した。Pro243Ala244Pro245+[Gly/Ser]およびG1/G3/Pro243Ala244Pro245+[Gly/Ser]結合ペプチドは、huCC49 V2抗体配列にも導入され、細胞系が産生された(ヒト化CC49バージョン2配列は当分野で公知である)。抗体はCHO DG44細胞から産生して、下の実施例4で述べる方法を使用して精製した。タンパク質GおよびHICステップ後のフォームAアイソフォームの収率を表4で報告する。これらの結果から、CH2ドメイン欠失抗体内のヒンジ領域に導入された修飾は、Aアイソフォームの優先的合成をもたらすことが明らかである。実施例4で述べたHIC精製技法の後に、精製huCC49 Pro230Ala231Pro232およびhuCC49 V2 Pro230Ala231Pro232フォームA物質は、98%を超える値で達成された。huCC49 G1/G3/Pro243Ala244Pro245およびhuCC49 V2 G1/G3/Pro243Ala244Pro245フォームA物質は、タンパク質Gカラムのみを使用して精製され、どちらもさらなるHIC精製をせずに純度>96%にて本質的に単一ピークとして溶離した。すべての抗体をサイズ排除クロマトグラフィーによって検査すると、単一ピークとして溶離することが見出され、抗体生成物の著しい凝集または分解がないことが示された。
ペプチドマッピングを使用して、CH2ドメイン欠失huCC49、huCC49 PAP、およびhuCC49 G1/G3/ PAP抗体の重鎖ヒンジ領域におけるジスルフィド結合形成の完全性を判定した。CH2ドメイン欠失CC49抗体のサンプルは、次のように変性、還元およびトリプシンによって消化した:150ugの分割量をHPLC水で100mlまで希釈して、6M塩酸グアニジン、50mM Tris pH8.0中で変性させた。20mM DTTの添加によってサンプルを還元して、37℃にて30分間インキュベートした。還元したサンプルを50mMヨード酢酸によって37℃にて30分間アルキル化した。アルキル化反応は、過剰なDTTの添加によって停止させた。還元およびアルキル化されたサンプルは、25mM TRIS、20mM CaCl2、pH7.5中へ、PD−10カラムを使用して緩衝液交換した。トリプシンを各サンプルに1:15(w/w)の比で添加して、37℃にて4時間インキュベートした。0.1%の最終濃度までのトリフルオロ酢酸(TFA)の添加によって、消化を停止させた。トリプシン消化サンプル(15ug)を次に、下で述べるクロマトグラフィー条件に従って解析した。
CH2ドメイン欠失CC49抗体のサンプルは、エンドプロテイナーゼLys−C消化によって解析した。変性および還元されたサンプルは、4MグアニジンHClおよび25mM DTTの最終濃度をサンプルの1.5mg/mLまで添加することによって調製した。非還元サンプルは、4MグアジニンHClの最終濃度をサンプルの1.5mg/mLまで添加することによって調製した。サンプルは37℃にて2時間インキュベートした。消化緩衝液(50mM Tris、pH7.0および0.062AU/mlエンドプロテイナーゼLys−C)を次にサンプルに1:1(v/v)で添加して、サンプルを37℃にて15時間インキュベートした。15時間後、酵素の第2の分割量(0.29mAU:ug抗体)を添加して、サンプルを37℃にてさらに6時間インキュベートした。TFAを0.1%最終濃度で添加した。非還元および還元エンドプロテイナーゼLys−C消化サンプル(12ug)は次に、下で述べる手順に従って解析した。
HPLC/質量分析法解析。サンプルはAgilent MSDシングル四重極質量分析計に接続されたAgilent 1100 HPLCシステムで解析した。逆相C18カラム(Vydac catalog number 218TP52)を水/0.1% TFA(v/v)(緩衝液A)およびアセトニトリル/0.1% TFA(v/v)(緩衝液B)の溶離液系によって0.2mL/分の流速にて使用した。イオン化を向上させるために、アセトニトリルおよび酢酸(1:1 v/v)のポストカラム「TFA fixative」溶液を0.1mL/分にて添加した。カラム温度を45℃に制御して、溶離プロフィールを215および280nmにて監視した。全イオンクロマトグラムを陽イオンモードで監視した。サンプルをカラムに注入して、勾配を0%緩衝液Bにて5分間維持した。溶離は0〜50%緩衝液Bの線形勾配を用いて125分間に亘って達成され、10分間に亘る75%緩衝液Bの洗浄および30分間に亘る0%緩衝液Bの再平衡が続いた。
endo Lys−C還元解析において、断片(L52〜109)はすべてのサンプルで検出されなかった。この断片は非常に疎水性であり、強力な相互作用のためにカラムマトリクスから溶離されなかったのだろう。相当するトリプシン断片(L68〜109)もすべてのサンプルで検出されなかった。これらの断片は多数のアミノ酸を含有するため、アミノ酸同一性のパーセントは〜89%同一性まで低下した。加えた断片(L68〜1119)はG1/G3/PAPのendo Lys−C解析で検出されず、同一性を〜79%に下げた。
endo Lys−C非還元解析はより優れた結果を与えた。断片(L52〜109)はすべてのサンプルで断片(L1〜24)を備えたジスルフィド結合として検出された。他のすべてのジスルフィド結合が検出され、全アミノ酸同一性%はすべてのサンプルで〜99%であった。G1/G3/PAPサンプルは、元の(H224〜227)CPPCヒンジ領域の下の、断片(H232〜275)内に追加の重鎖−重鎖ジスルフィド結合を示した。組換えヒンジ領域ペプチドの理論質量値および実測質量値を測定した。huCC49ΔCH2ヒンジendo Lys−C非還元ペプチド(残基H221〜257)は、7419.4の実測MWを有し、2個の鎖内ジスルフィドブリッジを含有する連結ヒンジの7419.4g/molの計算質量とうまく一致した。huCC49ΔCH2 PAPヒンジendo Lys−C非還元ペプチド(残基H221〜260)は7949.7の実測MWを有し、2個の鎖内ジスルフィドブリッジを含有する連結ヒンジの7949.8g/molの計算質量と良好に一致した。2個のヒンジ非還元ペプチド断片は、15アミノ酸γ3モチーフ内のKabat位置241IIにおけるリジン残基の存在のために、endo Lys−CによるhuCC49ΔCH2 G1/G3/PAPの消化から生じた。残基H221〜231およびH232〜275のペプチド断片は2414.3および8782.6実測MWを有し、2413.0および8782.0g/molの計算質量にそれぞれ非常に良好に一致した。質量データは、huCC49ΔCH2 G1/G3/PAPに由来するTHTCPPCPEPKペプチド(残基H221〜231)が2個の鎖内ジスルフィドブリッジを含有するという主張を裏付けている。重要なことに、残基H232〜275を含むペプチドが少なくとも1個の鎖内ジスルフィドブリッジを含有しており、キメラG1/G3/PAPヒンジが2個を超えるジスルフィドブリッジの形成に関与しているという考えと一致している。これらの解析は、huCC49ΔCH2 PAP ヒンジが2個の重鎖鎖間ジスルフィド結合を形成することを示す。huCC49ΔCH2 G1/G3/PAPヒンジが少なくとも3個の重鎖鎖間ジスルフィド結合を形成するが、おそらく5個を形成する。断片huCC49ΔCH2 G1/G3/PAP残基のH232〜275が最小限で1個の鎖間ジスルフィド結合を含有することは確実であるが、しかしながら3個の鎖間ジスルフィド結合を含有するヒンジ領域の、1個の鎖内および2個の鎖間ジスルフィド結合を含有するヒンジ領域からの質量差を区別することは不可能である。
表4.親和性クロマトグラフィー(タンパク質G)後およびHIC精製後のフォームA抗体のパーセンテージ
これらのデータは、新規な組換え合成ヒンジ領域結合ペプチドが、AまたはBアイソフォームの形成を優先的に支持するために使用できることを示す。これらの試験は、CH2ドメイン欠失抗体フォームAアイソフォームを合成するときの、位置242(Kabat番号付けシステム)のシステイン残基の重要性も明らかにする。したがって1つの実施形態において、本発明の結合ペプチドは、位置239または242の少なくとも1つにシステインを含む。位置239または242のどちらかでシステインをセリンで置換すると(たとえば配列番号:28、29、30、または31で示す結合ペプチドを使用して)、CH2ドメイン欠失抗体生合成をフォームBアイソフォームに変化させる。産生されたフォームAの割合を上昇させる結合ペプチドの使用は、プロセスに有益な改善、収率および/または安定性をもたらすであろう。これらの合成ヒンジ領域結合ペプチドは、4つすべてのヒトアイソタイプのCH3ドメイン間でのきわめて高い相同性度に基づく、いずれかの抗体アイソタイプ、たとえばIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のCH2ドメイン欠失抗体フォームAアイソフォームの好都合な合成に有用である。同一および保存アミノ酸残基を含めて、IgG1 CH3ドメインは、IgG2 CH3に対して98.13%相同であり、IgG3 CH3に対して97.20%相同であり、IgG4 CH3に対して96.26%相同である。
(実施例4)
両方のアイソフォームを含有するモノクローナル抗体混合物からフォームAおよびフォームBの精製
ddCC49上澄み10mLを1M Tris pH9.0によって最終pH7.5まで滴定した。この物質を一連のSol−Vac 0.8μおよび0.4μ膜で濾過した。100mL XK50タンパク質Gカラムを流速80ml/分にて1xPBSによって予備平衡させた。滴定して、濾過した上澄みをカラムに80ml/分にて添加した。結合タンパク質を2カラム体積分の平衡緩衝液によって洗浄して、次にpH3.0の100mMグリシンによって溶離させた。ddCC49ピークを含有する画分を収集して、1M Tris pH9.0で最終pH7.0までただちに滴定した。
Toso Biosep Phenyl 5PW−HRカラムを20mMホスフェートpH7.2;1M硫酸アンモニウムによって予備平衡させた。タンパク質G溶離物は3.5M硫酸アンモニウムpH7.2ストックを使用して1M硫酸アンモニウムまで滴定し、ゲル床2mg/mlの濃度まで添加した。結合タンパク質を20mMホスフェートpH4または7.2硫酸アンモニウムによって洗浄して、伝導率を116.4mS/cmに調整した。この条件から溶離した物質は、非還元SDS−PAGEで見かけの分子量約120kD(フォームA)を有していた。残りの結合抗体は、ホスフェート緩衝液中の減少する硫酸アンモニウム含有率の線形勾配によってさらに溶離させた。後者の溶離抗体は重鎖のジスルフィド結合を明らかに欠いており、その分子量は約60kDaである(フォームB)。
上の精製物質はどちらも硫酸アンモニウム濃度を1Mにして、それを清掃したPhenyl 5PW−HRカラムに再添加することによって再捕捉できる。結合タンパク質は、20mMホスフェートpH7.2で溶離させて、1xPBS中へ透析させる。
(実施例5)
フォームAおよびフォームBの安定性の比較
フォームAおよびBの生物活性(たとえば直接結合または競合試験を使用して、予備実験で測定されたような)は、フォームAおよびBが同様の生物活性を有することを明らかにした。
フォームAおよびBの安定性も比較した。精製したddCC49分子をYM30膜(Millipore)を装着したAmicon濃縮器によって約5mg/mlに濃縮した。濃縮物質は各アイソフォームについて4つの部分に等しく分割され、各画分を次の緩衝液:1)10mMリン酸ナトリウム、pH3;2)10mM酢酸ナトリウム、pH5;3)10mMリン酸ナトリウム、pH7;および4)10mMホウ酸ナトリウム、pH9中の、16時間透析用の1OK透析カセット(Pierce,cat#66410)に入れた。透析後、各溶液のタンパク質濃度を3mg/mlに調整した。純粋なAおよびBアイソフォーム溶液に加えて、各pHからのAおよびB溶液の一部を混合して、50%各のアイソフォームを含有する混合物を作製する。合計12個の調合物を作製した(4つのpHレベルx3つの抗体溶液)。溶液を濾過して、灰色ブチルストッパの付いた3mlタイプ1ガラス血清バイアルに充填した(West Pharmaceuticals)。
3つの温度2〜8℃、20〜25℃、および38〜42℃を選択して、タンパク質溶液を安定性試験のために貯蔵した。貯蔵の前に、サンプル500μlを物理および化学分析のために各調合物から採取して、これらのゼロ時点データを対照と呼んだ。いったん貯蔵したら、サンプルを次のスケジュール、2週間、1ヶ月、2ヶ月および3ヶ月で採取して、試験のためにただちに提出した。
2つのアイソフォームの物理および化学安定性を評価するために、次の方法を使用した:OD320にて測定した濁度、非還元SDS−PAGE、およびサイズ排除クロマトグラフィー。
非還元SDS−PAGEは、2〜8℃、20〜25℃および38〜42℃にて貯蔵したサンプルに各種の時点で実施した。AおよびBフォームは2〜8℃で貯蔵したときにはpH5にてどちらも比較的安定であった。しかしながらpH7および9で調合したとき、AおよびBフォームはどちらも元の主要バンド(フォームAは120kDa、フォームBは60kDa)よりも少ないバンドの数を増加させることによって示されるように、分解を示した。特に低温および中間温度で貯蔵されたpH7および9サンプルでは、55kDa未満であったバンドの強度および数は、AよりもBアイソフォームで高いことが認められた。このことは、これらの条件下でAアイソフォームがBアイソフォームよりも安定であることを示した。しかしながらこれはpH5で20〜25℃にて貯蔵されたAアイソフォームの場合ではないと思われる。このサンプルは、Bアイソフォームよりも多くの断片を有すると思われる。微生物汚染による人為現象であったと思われる(以下でさらに詳細に述べる)。高い貯蔵温度ではpH9にてどちらのフォームも著しく分解され、サンプル間のゲルパターンにはほとんど相違がない。この条件下で、微量のスメアバンドがゲルの上部に現れ、これは凝集体の形成を示していた。凝集体はSDSによって溶解できるため、次の節で述べる方法を使用して凝集を調査できる。
表5A〜表5Cは、3つの異なる温度で貯蔵されたddCC49の濁度データを示す。濁度は溶解性および不溶性凝集体の両方を測定し、それはこれらの粒子によって散乱された光の量に基づいている。存在する場合、凝集体は光を散乱して、A320の増加を生じさせる。表5A〜Cに示すように、2〜8℃で貯蔵されたddCC49分子の濁度は、AおよびBアイソフォームの両方でpHが上昇すると上昇し、前者が後者よりも濁度が低い。この傾向はより高温(20〜25℃および38〜40℃)にて1ヶ月未満貯蔵されたサンプルに当てはまった。貯蔵時間が3ヶ月に達すると、pHおよび温度のサンプルでは濁度が著しく上昇して、AおよびBフォーム間の相違は縮小する。これらの結果はSDS−PAGEの結果と一致しており、両方のアイソフォームはpH3〜5にて比較的安定である(凝集体を形成しないという点で)ことと、AアイソフォームがBアイソフォームよりも凝集を受けにくいことを示している。
表5A.2〜8℃で貯蔵したddCC49サンプルのA320にて測定した濁度
表5B.20〜25℃で貯蔵したddCC49サンプルのA
320にて測定した濁度濁度
表5C.38〜42℃で貯蔵したddCC49サンプルのA
320にて測定した濁度濁度
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、無傷の分子および分解生成物(断片および溶解性凝集体の両方)のパーセントを明らかにする強力な方法であり、非常に再現性である。表5A〜Cには、異なる温度で貯蔵したAアイソフォーム、Bアイソフォームおよび混合物の無傷のモノマーのパーセントを挙げる。2〜8℃で貯蔵したサンプルでは、フォームAはフォームBと比較してモノマーのより高いパーセンテージを有することが明らかであり、フォームAおよびフォームBの混合物はおおよそその間である。この貯蔵温度では、どちらのフォームもpH3、5および7(pH5が最も安定な条件であった)において、約3ヶ月間に亘って比較的安定であった。しかしながらpH9では、フォームBのモノマーのパーセンテージには著しい低下があったが、フォームAではわずかな低下のみであった。高温において、貯蔵時間が長くなるにつれて、すべてのサンプルがモノマーのパーセントの著しい低下を示した;AアイソフォームはBアイソフォームより性能が優れていた。しかしながら例外があり、室温にて貯蔵したpH5のAアイソフォームのサンプルは、同様の貯蔵条件下のBアイソフォームまたは混合物よりもはるかに多くの分解を示した。この特定のAアイソフォームバイアルを綿密に調査すると、サンプルのSDS−PAGE、およびSECによるデータは、微生物汚染がこの予想外の結果を引き起こしたかもしれないことを示唆した。第1にSECおよびSDS−PAGEの結果がどちらも、このサンプルの分解が主として、おそらく微生物消化から生じる断片化の増加によって説明される、そうでなければある程度の凝集の増加が予想されることを示した。第2に、AおよびBアイソフォームそれぞれを50%含有した混合物サンプルが、Bアイソフォームよりも良好な安定性プロフィールを示したという事実は、より安定なAアイソフォームがモノマーのより高いパーセントに寄与したに違いないことを示している。最後に、2〜8℃および38〜42℃の両方で貯蔵されたpH5のAアイソフォームは、同様の条件下でBアイソフォームよりもモノマーの高いパーセントを示した。したがって中間貯蔵温度は、同様の結果を生じたはずである。サンプル量の制限のために、微生物汚染に関するアッセイは実施できなかった。
高いpH(9)および40℃で貯蔵されたIDEC−159のアイソフォームの両方について、モノマーのパーセントが約30%に低下したことにも注目した。このような厳しい条件下で、2つのアイソフォーム間の安定性の相違は消滅した。このSEC結果は、SDS−PAGEを使用して見出された結果を反映している。どちらの結果も、一部の化学的および物理的特徴が2つのアイソフォーム間で異なっているが、両方のアイソフォームの分解機構および副生成物は同一でないにしても同様であることを示した。
要約すれば、SEC結果は、AおよびBアイソフォームの両方が約5の最適pHを有することと、Aアイソフォームが、同様の貯蔵条件下で無傷のモノマーをより高いパーセントで維持するという点でBアイソフォームよりも安定であることを示す。
表6A.2〜8℃で貯蔵されたddCC49サンプルのモノマーのパーセンテージ
表6B.20〜25℃で貯蔵されたddCC49サンプルのモノマーのパーセンテージ
表6C.38〜42℃で貯蔵されたddCC49サンプルのモノマーのパーセンテージ
(実施例6)
フォームAおよびBの分取精製
IDEC−159(ddCC49)は、腫瘍表面に発現されるTAG−72抗原に対して作られたCH2ドメイン欠失モノクローナル抗体である。IDEC−159は、フォームAおよびフォームBと呼ばれる抗体の2つのアイソフォームを含有する。IDEC−159の現在の細胞培養プロセスは、フォームAのフォームBに対する約50:50の比を生じる。フォームAアイソフォームは、重鎖のFc部分における欠失CH2領域のある抗体である。欠失CH2領域を有することに加えて、フォームBはFc領域でのジスルフィド結合リンケージも欠いており、疎水性相互作用および塩ブリッジによってのみ結合される。
IDEC−159精製プロセスにおける第3および最後のクロマトグラフィープロセスは、IDEC−159の2つのアイソフォームを分離するために開発された。分離は疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によって、Phenyl TSKgel 5PW−HR吸着剤を使用して達成する。フォームBはフォームAよりも疎水性であるため、それは約0.73M硫酸アンモニウム/20mMリン酸ナトリウム、pH4.0〜pH7.0を移動相として使用して、固定相に不可逆的に吸着する。フォームAはこれらの条件下ではより低い程度で固定相に結合し、したがって定組成で溶離して、すなわちそれはカラムに貫流画分を残す。フォームAの定組成溶離に続いて、移動相から硫酸アンモニウムを除去すると、フォームBが脱着される。次の方法はIDEC−159の2つのアイソフォームを分離するために使用した:
・カラムは、≦150cm/時にて、≧3CVの0.5N NaOHを使用して消毒した。
・カラムは、≦150cm/時にて、≧5CVの0.73M硫酸アンモニウム/20mMリン酸ナトリウム、pH4.0を使用して平衡にした。
・カラムに、0.43体積の2.5M硫酸アンモニウム/20mMリン酸ナトリウム、pH4.0の液体原液を含むように調整された室温TMAE貫流を、5mg/樹脂mlで添加した。抗体は、≦100cm/時でpH4.0にてカラムに添加した。280nmの出口O.D.が10mAUに達するときに抗体の収集を開始した。
・カラムは、15CVの0.73M硫酸アンモニウム/20mMリン酸ナトリウム、pH4.0を≦100cm/時で使用して洗浄した。15CV洗浄の間、抗体収集を継続して、次に出口を再度廃棄に方向転換した。
・カラムは、5CVの20mMリン酸ナトリウム、pH4.0を≦100cm/時で使用してストリッピングした。6.カラムを≧3CVの0.5N NaOHによって≦150cm/時にて洗浄した。
・カラムを≧3CVの0.73M硫酸アンモニウム/20mMリン酸ナトリウム、pH4.0で≦150cm/時で平衡にした。
・カラムは、>3CVの20%エタノール中に≧150cm/時で貯蔵した。
分取スケール(5Lカラム体積、全IDEC−159添加量約20g)での2つのフォームの分離を実施した。第1の2つのピークはフォームAの定組成溶離を含み、第2のピークは溶離したフォームBを示すのに対して、第3のピークは不純物を含有しており、不純物は洗浄の間に固定相から除去される。
この方法がフォームAおよびBを分取スケールで分離する能力も、SDS PAGEによって証明された。0.73M硫酸アンモニウム/20mMリン酸ナトリウム、pH4.0を使用して定組成で溶離された画分(レーン6〜8)は、フォームAを優先的に含有していた(純度>90%)。
(実施例7)
モノクローナル抗体CC49のヒト化
ヒト化CC49バージョン2(huCC49 V2)を作製するために、CC49抗体に複数の変更を行った。ヒト化CC49MAbの潜在的な免疫原性をさらに低下させるために、抗体内に存在するマウス残基を、軽鎖置換用のヒトアクセプタ配列LENおよび重鎖置換用の21/28’CLに由来するヒトフレームワーク残基との置換えについて調査および検討した(Singer IIら、1993.Optimal Humanization of 1B4,an Anti−CD18 Murine Monoclonal Antibody,is Achieved by Correct Choice of Human V−Region Framework Sequences.J.Immunol.150:2844−2857.Padlan E A,1991.Possible Procedure For Reducing the Immunogenicity of Antibody Variable Domains While Preserving Their Ligand−Binding Properties.Molecular Immunol.28:489−498)。
組合せ部位の特異性および親和性を保存するために重要であると見なされるフレームワーク残基は、わずかな相違を明らかにしただけであった。重鎖配列では、位置69(ロイシン)および93(トレオニン)における予測された埋没残基はどちらも、ヒト残基イソロイシンおよびアラニンによってそれぞれ置換された。軽鎖配列では、位置43(セリン)にほぼ埋没されることが予測される1個の残基がヒト残基プロリンによって置換される。
V2 CC49抗体のドメイン欠失形が作製され、結合ペプチドはhuCC49 V2配列に挿入される。G1/G3/Pro243Ala244Pro245+[Gly/Ser]ヒンジ結合ペプチドを含有するCH2ドメイン欠失huCC49 V2は、CH2ドメイン欠失huCC49 V2と同様に作製された。
(実施例8)
新規な結合ペプチドを含む抗体の向上した体内分布プロフィール
ドメイン欠失抗体の各種の形(結合ペプチドを含む、そして含まない)を、時間分解蛍光分光イムノアッセイによって、Wallac 1420 Multilabel Counter Victor V(PerkinElmer)を使用して、TAG−72抗原の供給源であるウシ顎下ムチンに結合するその能力に関する競合的結合アッセイで試験した。huCC49 PAP(配列番号:32で示す結合ペプチドを含有)、huCC49 V2 PAP(配列番号:32で示す結合ペプチドを含有)、huCC49 G1/G3:PAP(配列番号:5で示す結合ペプチドを含有)、huCC49 V2 G1/G3/PAP(配列番号:5で示す結合ペプチドを含有)、および対照親HuCC49抗体を評価した。3つすべてのヒンジ組換え抗体の相対結合活性は区別ができないか、または対照親CC49抗体の2〜3倍以内であった。
90Y−2−(p−イソチオシアナートベンジル)(p−SCN−Bz)−シクロヘキシルジエチレントリアミンペンタ酢酸リガンド(CHx−DTPA)接合huCC49 V2 PAP(配列番号:32で示す結合ペプチドを含有)および対照親HuCC49抗体の体内分布をLS−174Tヒト腫瘍異種移植片を持つ胸腺欠損マウスで評価および比較した。腫瘍または正常組織1グラム当たりの90Y放射性標識化抗体の注射用量のパーセンテージ(%ID)を3および24時間後に決定し、表7に示す。
表7.
データは平均値+/−標準偏差を表す。
*腫瘍中の24時間時点huCC49と比較した、p<0.05対応のないt検定
**腎臓中の24時間時点huCC49と比較した、p<0.001対応のないt検定
驚くべきことに、24時間時点huCC49 V2 PAP摂取量は腫瘍において著しく高く(p<0.05対応のないt検定)、反対に腎臓では(p<0.01)対照huCC49抗体よりも低かった。これらの抗体の腫瘍対臓器比を比較したときに、huCC49 V2 PAPは、血液を除くすべての臓器でより高い腫瘍対臓器比を生じた。
これらの結果は、これらの新規なヒンジが腫瘍局在化にプラスに影響して、腎臓などの正常臓器による摂取量を減少させる、固体に対する構造的変化を付与することを示唆している。それゆえこれらの新規なヒンジは、治療用抗体に組み込まれたときに特に有用である。
(実施例9)
新規な結合ペプチドを含む抗体の向上した体内分布プロフィール:詳細な時間経過
本実施例は、実施例8に示した結果を確認および拡張する。抗体ヒトCC49 V2 G1/G3/Pro243Ala244Pro245+[Gly/Ser](配列番号:5)およびhuCC49(gly/ser)をダイアフィルトレーションし、低金属5mM酢酸ナトリウム緩衝液、pH5(LMB)中に予備すすぎ済みのAmicon Centricon 30を使用して濃縮した。Centriconの遠心分離は、2〜8℃の温度で保持した固定角ロータで5000xgにて実施した。LMB 50μlをサンプルリザーバに添加して、短時間ボルテックスにかけ、1000xgで10分間バックスピンすることによって、各抗体を回収した。タンパク質濃度はUV Spec解析を280nmにて、1.48の吸光係数を使用して決定した。次にLMBを使用して、各抗体を10.5mg/mlに調整した。
1.0Mホウ酸(pH8.6、Chelex処理および0.2μm濾過)を使用して、抗体をpH8.6に調整した。CHx−DTPA(1.0Mホウ酸に溶解)を次に3キレート対抗体1モルのモル比で添加した。添加したホウ酸の量は、抗体体積の10分の1であった。この混合物を次にボルテックスにかけて、室温にて16〜18時間インキュベートした。混合物を新しい予備すすぎ済みCentricon 30に添加して反応を停止させ、前のダイアフィルトレーションに従って低金属5mM酢酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウム、pH5中でダイアフィルトレーションした。各抗体の濃度を3μg/mLに調整した。
メスヌードマウスにHBSS(Biowhittaker,Cat# 10−547F)に懸濁させたLS174T細胞を右大腿部内側に皮下接種した。試験開始の1日前に腫瘍サイズを測定した。腫瘍体積は長さに幅の2乗をかけることによって計算した[Lx((W2)/2)]。平均腫瘍体積〜200mm3を与えるようにマウスをグループ分けした。
ヌードマウス42匹に111In標識CH2ドメイン欠失抗体を時間0にて注射した。試験は、7つの時点の経過での抗体の分布を追跡し、各時点はマウス6匹で構成された。尿は各マウスから、風袋を差し引いた紙の上でマウスを保持して、膀胱を圧搾して収集した。血液は「目出血」によって採取した(マウス当り約200ul)。個々のマウスで、血液および尿サンプリング中に排泄された便は収集した。血液収集の後、マウスを頸椎脱臼により殺処分した。マウス6匹それぞれが殺処分されたら、他のサンプルを解剖によって収集した。各サンプル(皮膚を除く)を3%ホルマリンですすぎ、ペーパータオルで吸い取って、次に秤量した。すべてのサンプルは風袋を差し引いた紙を使用して秤量した。
サンプル収集の後、サンプルをホウケイ酸塩試験管に入れて、標識抗体の1:10希釈より成る減衰対照と共にガンマカウンタでカウントした。各臓器または組織に関連する放射能の減衰対照に対するパーセント(%注射した用量/組織または臓器g)を計算した。該実施例は、この新規の結合ペプチドを含む抗体分子が腎臓で蓄積の低下を、血液では著しい蓄積の上昇を、腫瘍では著しい蓄積の上昇を示すことを明らかにしている。このプロフィールは、生体内での安定性の上昇ならびに有効性および安全性を有するこれらの分子と一致している。
(実施例10)
結合ペプチドを含む抗体が、還元剤に対する感受性を低下させた
該実施例は、ドメイン欠失CC49 G1/G3/Pro243Ala244Pro245+[Gly/Ser](配列番号:5)が親CC49と同様に、Gly−Serヒンジリンカを持つドメイン欠失CC49よりも、グルタチオン(GSH)還元に対してより安定であると思われることを証明する。
簡潔には、ddCC49(Gly−Ser)、ddCC49 G1/G3/Pro243Ala244Pro245+[Gly/Ser](配列番号:5)または親CC49 50ugを0、1、5または10mM GSHと共に室温にて1時間インキュベートした。使用した反応緩衝液は、100mM PBS、pH7.2または100mM酢酸ナトリウム、100mM NaCl、pH4.5を含む。GSH処理抗体をSDSと共に加熱して、4〜20%勾配SDS−PAGE、非還元ゲルに添加した。添加されたサンプルは、定圧120ボルトで90分間、室温にてゲル内を移動させた。タンパク質をクマシー染色して、ゲルを乾燥させた。
ドメイン欠失CC49 G1/G3/Pro243Ala244Pro245+[Gly/Ser](配列番号:5)は親CC49と同様に、Gly−Serヒンジリンカを持つドメイン欠失CC49よりも、グルタチオン(GSH)還元に対してより安定であると思われる。加えてpH4.5の100mM酢酸ナトリウムがドメイン欠失CC49 G1/G3/Pro243Ala244Pro245+[Gly/Ser](配列番号:5)をGSH還元から、pH7.2の100mM PBSと比較してさらに保護する。還元剤に対する感受性低下のこの予測外の観察は、G1/G3/Pro243Ala244Pro245+[Gly/Ser](配列番号:5)ヒンジ設計が、抗体の物理的完全性を維持しながら、薬物接合体を調製するために使用されるもの(たとえばSPDPリンカー)のような還元剤または放射性同位体を抗体に結合するための技法(たとえば99MTc)を使用する化学作用の使用を可能にすることを示唆する。T還元剤感受性に関するこの利点は、CH2ドメイン欠失構築物の薬物動態学的利点を変化させないように思われる(実施例9のマウス体内分布データを参照)。還元剤に対する感受性の低下も生体内安定性の向上を予測しうる。
(実施例11)
結合ペプチドを含む抗CD20抗体
ヒンジ領域結合ペプチドG1/G3/Pro243Ala244Pro245+[Gly/Ser](配列番号:5)をCH2ドメイン欠失C2B8抗体内に実施例3で述べたように導入した。C2B8は、ヒト重鎖および軽鎖定常ドメインにそれぞれ融合されたマウス重鎖および軽鎖可変ドメインより成るキメラ抗CD20モノクローナル抗体である。ヒンジ領域への正確な修飾は、DNA配列解析によって確認した。プラスミドDNAを使用して、抗体タンパク質の一過性産生のためにCHO DG44細胞を形質転換した。
G1/G3/Pro243Ala244Pro245+[Gly/Ser]結合ペプチドを含有するCH2ドメイン欠失C2B8抗体を産生する細胞から上澄みを収集して、培養物上澄み中の抗体の濃度をイムノアッセイによって決定した。一過性細胞培養物からの全抗体タンパク質約3ngを非還元SDS−PAGE電気泳動によって、続いて抗ヒトIgG HRP接合抗体を用いたウェスタンブロットによってCH2ドメイン欠失huCC49 MAbと比較して、CH2ドメイン欠失huCC49フォームAおよびフォームBアイソフォームを検出した。これらの条件下では、フォームAは単一の120kDaホモダイマーとして、フォームBは60kDa二重項として移動する。配列番号:5で示す結合ペプチドの包含は、産生されたフォームAの割合を実質的に上昇させることが見出された。結果は、G1/G3/Pro243Ala244Pro245+[Gly/Ser]ヒンジ(配列番号:5)が、フォームBがわずかに検出されるか、検出されずに、本質的にすべてのフォームACH2ドメイン欠失C2B8抗体の産生を引き起こしたことを証明し、フォームAアイソフォームを産生するためのこのヒンジの有用性が概して各種の特異性の抗体に利用できることを証明した。
(実施例12)
結合ペプチドを含む抗CD23抗体
ヒンジ領域結合ペプチドG1/G3/Pro243Ala244Pro245+[Gly/Ser](配列番号:5)を使用して、本質的に実施例3で述べたように、CH2ドメイン欠失5E8(5E8ΔCH2)抗体を構築した。5E8は、ヒト重鎖および軽鎖定常ドメインにそれぞれ融合された霊長類重鎖および軽鎖可変ドメインより成るキメラ抗CD23モノクローナル抗体である。ヒンジ領域への正確な修飾は、DNA配列解析によって確認した。5E8軽鎖および重鎖の核酸およびアミノ酸配列は、当分野で公知である。プラスミドDNAを使用して、抗体タンパク質の産生のためにCHO DG44細胞を形質転換した。
5E8ΔCH2抗体配列内に導入されたG1/G3/Pro243Ala244Pro245+[Gly/Ser](配列番号:5)結合ペプチドを含有する細胞系(IA7)を抗体産生に使用した。抗体は上の実施例4で述べた方法を使用して産生および精製した。5E8ΔCH2 G1/G3/Pro243Ala244Pro245抗体はタンパク質Gカラムのみを使用して精製し、≧97%純度で本質的に単一ピークとしてさらなるHIC精製なしで溶離した。還元および非還元精製タンパク質サンプルをSDS−PAGE電気泳動によって解析した。非還元条件下で、フォームAは単一の120kDaホモダイマーとして、フォームBは60kDa二重項として移動すると予測される。配列番号:5で示す結合ペプチドは、産生されたフォームAの割合を実質的に上昇させることが見出された。この結果は、G1/G3/Pro243Ala244Pro245+[Gly/Ser]ヒンジ(配列番号:5)が、フォームBがわずかに検出されるか、検出されずに、本質的にすべてのフォームA 5E8ΔCH2抗体の産生を引き起こしたことを示し(レーン2を参照)、フォームAアイソフォームを産生するためのこのヒンジの有用性が概して各種の特異性の抗体に利用できることを証明する。5E8ΔCH2 G1/G3/Pro243Ala244Pro245抗体をサイズ排除クロマトグラフィーによって検査して、抗体生成物の著しい凝集または分解がないことを示す単一ピークとして溶離することが見出された。5E8ΔCH2 G1/G3/Pro243Ala244Pro245抗体をEu標識5E8 IgGへのCy5標識溶解性CD23結合に関するFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)競合的結合アッセイで、Delphia蛍光光度計(Wallac 1420 Multilabel Counter Victor V,PerkinElmer)を使用してさらに試験した。5E8ΔCH2 G1/G3/Pro243Ala244Pro245(配列番号:5で示した結合ペプチドを含有)、および対照親5E8 IgG抗体を競合的結合アッセイで評価した。ヒンジ組換え抗体の相対結合結合は、対照親5E8 IgG抗体から区別できなかった。これらの結果から、5E8ΔCH2抗体へのヒンジ領域(配列番号:5で示した結合ペプチドを含有)の導入が完全な結合活性を保持しながらAアイソフォームの優先的合成をもたらし、組換えヒンジの全体的な有用性を支持することが明らかである。
(実施例13)
結合ペプチドを含むchB3F6抗体
ヒンジ領域結合ペプチドG1/G3/Pro243Ala244Pro245+[Gly/Ser](配列番号:5)を使用して、本質的に実施例3で述べたようにCH2ドメイン欠失キメラB3F6(chB3F6ΔCH2)抗体を構築した。「chB3F6」は、ヒト重鎖および軽鎖定常ドメインにそれぞれ融合されたマウス重鎖および軽鎖可変ドメインより成るキメラ抗CRIPTOモノクローナル抗体である。ヒンジ領域への正確な修飾は、DNA配列解析によって確認した。chB3F6軽鎖および重鎖の核酸およびアミノ酸配列は、図1および2にそれぞれ示す。プラスミドDNAを使用して、抗体タンパク質の産生のためにCHO DG44細胞を形質転換した。
chB3F6ΔCH2抗体配列に導入されたG1/G3/Pro243Ala244Pro245+[Gly/Ser](配列番号:5)結合ペプチドを含有する細胞系(3C7)を抗体産生に使用した。抗体は上の実施例4で述べた方法を使用して産生および精製した。ChB3F6ΔCH2 G1/G3/Pro243Ala244Pro245抗体はタンパク質Gカラムのみを使用して精製し、≧97%純度で本質的に単一ピークとしてさらなるHIC精製なしで溶離した。還元および非還元精製タンパク質サンプルをSDS−PAGE電気泳動によって解析した。これらの条件下で、フォームAは単一の120kDaホモダイマーとして、フォームBは60kDa二重項として移動すると予測される。配列番号:5で示す結合ペプチドは、産生されたフォームAの割合を実質的に上昇させることが見出された。この結果は、G1/G3/Pro243Ala244Pro245+[Gly/Ser]ヒンジ(配列番号:5)が、フォームBがわずかに検出されるか、検出されずに、本質的にすべてのフォームA chB3F6ΔCH2抗体の産生を引き起こしたことを示し、フォームAアイソフォームを産生するためのこのヒンジの有用性が概して各種の特異性の抗体に利用できることを証明する。ChB3F6ΔCH2 G1/G3/Pro243Ala244Pro245抗体をサイズ排除クロマトグラフィーによって検査して、抗体生成物のわずかなまたは顕著ではない凝集または分解を示す、本質的に93〜98%モノマーの範囲の単一ピークとして溶離することが見出された。ChB3F6ΔCH2 G1/G3/Pro243Ala244Pro245抗体をフローサイトメトリー競合的結合アッセイで、CRIPTO抗原の供給源であるGEO腫瘍細胞へのFITC標識B3F6IgG結合を用いてさらに試験した。ChB3F6ΔCH2 G1/G3/Pro243Ala244Pro245(配列番号:5で示した結合ペプチドを含有)競合的結合、およびchB3F6IgG抗体の2個の対照サンプルを評価した。ヒンジ組換え抗体の相対結合結合は、対照親chB3F6IgG抗体から区別できなかった。これらの結果から、chB3F6ΔCH2抗体へのヒンジ領域(配列番号:5で示した結合ペプチドを含有)の導入が完全な結合活性を保持しながらAアイソフォームの優先的合成をもたらし、組換えヒンジの全体的な有用性をさらに支持することが明らかである。
(実施例14)
B3F6抗Cripto抗体のヒト化形の調製
B3F6抗体の可変領域を配列決定した。マウスB3F6抗体の軽鎖可変領域の配列を下に与える:
マウスB3F6抗体の重鎖可変領域の配列を下に与える:
これらの配列のそれぞれについて、CDR残基に下線を付け、標準残基を小文字で示し、異常な標準残基を小文字、イタリック体および太字で示す。
相補性決定領域(CDR)を標準クラスに分類した。CDRは抗原に最も結合しやすい残基を含有し、再形成された抗体内に保持されねばならない。CDRは、Kabat et al(Kabat,E.A.,Wu,T.T.,Perry,H.M.,Gottesman,K.S.and Foeller,C.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest.5th Edition,U.S.Dept.Health and Human Services.U.S.Govt.Printing Office)による配列によって定義される。CDRは、主要な残基がCDRループの構造配座を大幅に決定する場合、標準クラスに分類される(Chothia,C,Lesk,A.M.,Tramontano,A.,Levitt,M.,Smith−Gill,SJ.,Air,G.,Sheriff,S.,Padlan,E.A.,Davies,D.,Tulip,W.R.,Colman,P.M.,Spinelli,S.,Alzari,P.M.and Poljak,RJ.(1989)Nature 342:877−883)。これらの残基は、再形成された抗体内にほとんどの場合保持される。重鎖および軽鎖のCDRは、次のように標準クラスに分類される:
これらのクラスに重要な標準残基を表8に示す。ループL1は位置2にFを有するのに対して、標準残基はV/Iである。ループH2は位置71にVを有するのに対して、標準残基はA/T/Lである(VはH2クラス1で標準であるが)。
表8
可変軽鎖および重鎖をプログラムFASTAおよびコンセンサス配列のデータベースを使用してマウスおよびヒトサブグループのコンセンサス配列(Kabat et al.1991)と比較した。可変軽鎖は113 aa重複に92.9%同一性を持つマウスサブグループKappa 2のメンバーであることが見出された。配列比較を下に示す:
マウスサブグループKappa 2コンセンサスに対するB3F6軽鎖の配列比較
>>moukv2 長さ:113 8月6日、1992 15:04 タイプ: P C(113 aa)initn:654 initl:654 opt:700 z−score:83.4 E( ):0.24 スミス−ウォーターマンスコア:700;113 aa重複に92.920%同一性
可変重鎖は、128 aa重複に80.5%同一性を持つマウスサブグループ2Bのメンバーであることが見出された。配列比較を下に示す:
マウスサブグループ2Bコンセンサスに対するB3F6重鎖の配列比較
>>mouhv2b 長さ:127 8月6日、1992 15:04 タイプ:P(127 aa)initn:664 initl:592 opt:653 z−score:96.8 E( ):0.043 スミス−ウォーターマンスコア:653;128 aa重複に80.469%同一性
可変軽鎖は、114 aa重複に76.3%同一性を持つヒトサブグループKappa 2に相当する。配列比較を下に示す:
ヒトサブグループKappa 2コンセンサスに対するB3F6軽鎖の配列比較
>>humkv2 長さ:114 8月6日、1992 15:04 タイプ:P C(114 aa)initn:566 initl:383 opt:571 z−score:73.2 E( ):0.88 スミス−ウォーターマンスコア:571;114 aa重複に76.316%同一性
可変重鎖は、129 aa重複に65.1%同一性を持つヒトサブグループ1に相当する。配列比較を下に示す:
ヒトサブグループ1コンセンサスに対するB3F6重鎖の配列比較
>>humhv1 長さ:129 8月6日、1992 15:04 タイプ:P C(129 aa)intin:348 initl: 274 opt:532 Z−score:85.5 E( ):0.18 スミス−ウォーターマンスコア:532;129 aa重複に65.116%同一性
1つのヒト化設計において、抗原からの結合ペプチドと複合体形成させたB3F6 Fabのxray構造を使用した。最も類似したヒト発現抗体配列を抗体フレームワークとして使用するために選択した。最も近い発現配列を見出すために、最も相同的に発現したヒトフレームワークをNCBI NRデータベースおよびKabatデータベースで検索した。重鎖および軽鎖配列について、2回の検索(CDRマスクおよびアンマスクによって)を実施した。最も適切な発現配列の選択は、標準およびインタフェース残基の配列同一性について点検することはもちろん、CDRループ長の類似性について点検することを含む。抗体の供給源も決定因子である。以前にヒト化された抗体は除外する。NCBI NRデータベースでは我々はBLASTを使用し、Kabatデータベース検索にはFASTAを使用した。
最も適切な発現軽鎖は、組織、扁桃腺、臍帯、末梢血および骨髄の混合物から単離された抗体から生じたnrデータベースに見出された(gi−21669417(BAC01733);Akahori et al.(未発表、NCBIウェブサイトを参照))。配列比較を下に示す:
B3F6軽鎖とヒトgi−21669417(BAC01733)との配列比較
>>BAC01733
(112 aa)initn :447 initl:447 opt:447
スミス−ウォーターマンスコア:447;112 aa重複に61.607%同一性
最も適切な重鎖は、良性リンパ球増殖のBリンパ球のポリクローナルセットから生じたnrデータベースに見出された(gi−14289106(AAK57792);Salcedo et al.(2002))。配列比較を下に示す:
B3F6重鎖とヒトgi−14289106との配列比較
免疫グロブリン重鎖(120 aa)initn:395 initl:395 opt:397
スミス−ウォーターマンスコア:397;119 aa重複に53.782%同一性
両方のヒト発現配列をNCBIの生殖系列配列データベースで検索して、これは次の選択された生殖系列:軽鎖のA3*/A19*(BAC01733)、および重鎖VH1−2*(AAK57792)を生じさせた。
選択したヒトフレームワーク残基を相当するマウス残基への復帰突然変異のために選択した。結合部位に近い、標準残基、インタフェースパッキング残基、および異常なマウス残基を保持することが優先された。加えてCDR残基のいずれかの6Å以内の残基をCDRの配座に対する潜在的な効果に関して詳細に解析した。
ヒト化B3F6軽鎖の1つのバージョンでは、位置2のVがFに変更された。この位置のアミノ酸は、L93(CDR−L3)と相互作用するために重要であると見なされた。このCDRは、抗原に由来するペプチドを結合することに関与する。
この方法を使用して、軽鎖の1つのバージョンを作製した:
軽鎖バージョンL1(1復帰突然変異)
次のアミノ酸残基をヒトB3F6重鎖における潜在的な復帰突然変異のために選択した:位置48のM、位置67のV、位置71のR、位置73のT、位置93のAおよび位置112のC。
位置48のMは、CDR−H2に近接しているが、ペプチド抗原には近接していないことが決定された。それはヒト化重鎖の1つのバージョン内に保持され、別のバージョンのIへ復帰突然変異される。
位置67のVは、CDR−H2に近接しているが、ペプチド抗原には近接していないことが決定された。それはヒト化重鎖の1つのバージョン内に保持され、別のバージョンのAへ復帰突然変異される。
位置71のRは、標準であることが決定された。それは両方のバージョンでVに復帰突然変異される。
位置73のTは、CDR−H2に近接しているが、ペプチド抗原には近接していないことが決定された。それはヒト化重鎖の1つのバージョン内に保持され、別のバージョンのKへ復帰突然変異される。
位置93のAは、明らかな側基接触のないインタフェース残基であることが決定された。それはヒト化重鎖の1つのバージョン内に保持され、別のバージョンのSへ復帰突然変異される。
位置112のCは、異常なヒト残基であることが決定された。それは両方のバージョンでSに復帰突然変異される。
この方法を使用して、重鎖の2つのバージョンを作製した:
重鎖バージョンH1(6復帰突然変異)
(実施例15)
B3F6抗Cripto抗体の追加のヒト化形の調製
知識ベース方法(許容される配列変化を決定するための、他のヒト化抗体のデータベースの検索)を使用して、復帰突然変異を位置2および位置100に含む軽鎖の別のバージョンを作製した。
ヒト化方法は、Rosok et al(Rosok MJ,et al.,1996.J.Biol.Chem.271:22611−22618)に述べた方法によるV領域配列の目視検査および解析に基づいていた。標準決定基、表面残基、および潜在的接触残基を同定した。潜在的接触残基が認められ、Chothia et al.によって定義されたCDRループの構造定義(Chothia C and Lesk AM.1987.J.Mol.Biol.196:901−917)、Kabat et al.によって定義された配列超可変性(Kabat EA,Wu TT,Reid−Miller M,Parry HM,and Gottesman KS.1987.Sequences of Protein of Immunological Interest,U.S.department of Health and Human Services,NIH、ベセズダ、メリーランド州)、MacCallum et al.によって定義された潜在的抗原接触残基(MacCallum RM,Martin ACR,and Thorton JM.1996.J.Mol.Biol.262:732−745)に従って広範に分類される。Kabat番号付けおよび定義によるマウスCDRループはその全体をアクセプタヒトフレームワーク上にグラフトした。Padlanによって定義されたパッキング残基(Padlan EA.1991.Mol Immunol.28:489−498)を同定して、パッキング残基をSinger et al.(Singer II et al.1993.J.Immunol.150:2844−2857)に述べられた方法に従って保存する試みを行う。フレームワーク配列内の各残基に、HarrisおよびBajorath(Harris L and Bajorath J. 1995. Protein Science 4:306−310)で述べられたように抗体ヒト化について低、中、または高「リスク位置」を割り当てた。
一般に低リスク位置はヒトに維持された。同一でない中および高リスクアミノ酸位置の多くでは、ヒト化抗体のコレクションへの参照が行われ、ヒトまたはマウス(復帰突然変異)アミノ酸残基の包含が機能結合活性をもたらすかどうかが考慮された。置換が検討されるこのような場合では、残基の機能互換性を確認するためのアミノ酸置換マップ(D.Bordo and P.Argos.1991.J.Mol.Biol.217:721−729)、
この方法を使用して、軽鎖の1つのバージョンを作製した。軽鎖の配列を下に示す:
軽鎖バージョンL2:
復帰突然変異を位置1、48、71、81、82b、および112に含む重鎖の別のバージョンも作製した:
この方法を使用して、重鎖の1つのバージョンを作製した。重鎖の配列を下に示す:
重鎖バージョンH3:
CDRグラフトヒト化B3F6配列および復帰突然変異を含む配列の注釈付きバージョンを軽鎖については図5に、重鎖については図6に示す。復帰突然変異が作製された位置のKabat番号付けも示す。
(実施例16)
全長ヒト化B3F6抗Cripto抗体の調製
次のヒト化重鎖および軽鎖の組合せを有する、6つのヒト化全長B3F6抗体および6つのヒト化ドメイン欠失B3F6抗体を作製した:
全長バージョン1−ヒト化(hu)B3F6軽鎖バージョンL1/重鎖バージョンH1(L1/H1)
全長バージョン2−huB3F6 L1/H2
全長バージョン3−huB3F6 L1/H3
全長バージョン4−huB3F6 L2/H1
全長バージョン5−huB3F6 L2/H2
全長バージョン6−huB3F6 L2/H3
全長抗体分子を作製するのに使用したIgG1重鎖定常領域のアミノ酸配列を図7に示す。
CDRグラフトB3F6軽鎖ならびにバージョンL1およびL2の完全なアミノ酸配列を下に示す:
CDRグラフトB3F6軽鎖
作製された全長抗体のCDRグラフトB3F6重鎖ならびにバージョンH1、H2、およびH3の完全なアミノ酸配列を下に示す:
CDRグラフト全長B3F6重鎖
安定なバルク培養物から、全長バージョン2ヒト化抗体(バージョン1軽鎖およびバージョン2重鎖を含む)は、最大量の抗体を産生し、親マウス抗体に匹敵する対する結合親和性を有していた。
(実施例17)
ドメイン欠失ヒト化B3F6抗Cripto抗体の調製
次のヒト化重鎖および軽鎖の組合せを有する6つのヒト化CH2ドメイン欠失B3F6抗体を作製した:
ドメイン欠失(dd)バージョン1−ヒト化ドメイン欠失B3F6軽鎖バージョン1/重鎖バージョン1(L1/H1)
ddバージョン2−huddB3F6L1/H2
ddバージョン3−huddB3F6L1/H3
ddバージョン4−huddB3F6L2/H1
ddバージョン5−huddB3F6L2/H2
ddバージョン6−huddB3F6L2/H3
ドメイン欠失抗体分子を作製するために使用した重鎖定常領域のアミノ酸配列を図7に示す。
ドメイン欠失抗体を作製するために使用したCDRグラフトB3F6軽鎖ならびに軽鎖バージョンL1およびL2の完全なアミノ酸配列を下に示す:
CDRグラフトB3F6軽鎖
ドメイン欠失抗体を作製するために使用したCDRグラフトB3F6重鎖ならびにバージョンH1、H2、およびH3の完全なアミノ酸配列を下に示す:
CDRグラフトCH2ドメイン欠失B3F6重鎖
ドメイン欠失抗体の6つのバージョンの結合活性(CDRグラフト抗体は含まない)を試験した。簡潔にはGEOヒト結腸腺癌細胞を2mMグルタミン、0.5mMピルビン酸ナトリウム、ペニシリン/ストレプトマイシン、および非必須アミノ酸を含むDMEM、10% FBS中で培養した。PBS、20mM EDTAを用いて細胞をフラスコから取り出して、1200rpmで3分間遠心分離し、PBS、0.02%アジド、0.1% BSAに懸濁させた。各種の濃度のヒト化またはキメラ抗体を最終濃度5nMマウスB3F6とポリプロピレンV底プレート内で混合した。100万個のGEO細胞を各プレートに添加して、細胞を抗体と共に4℃にて2時間インキュベートした。細胞をFACS緩衝液で3回洗浄して、抗マウスIgGフィコエリトリン接合体の1:500希釈物で4℃にて1時間インキュベートした。細胞をもう1回洗浄して、3%ホルムアルデヒド中で固定し、FACScalibur装置にかけた。平均蛍光強度(MFI)をヒト化またはキメラ抗体濃度に対してプロットした。IC
50を4パラメータ適合によって決定した。各実験では、各ヒト化抗体のIC
50をその実験のキメラ抗体と比較した。結果を下の表9に示す。
表9
(実施例18)
毒素へのヒト化B3F6抗体接合は、生体内モデルでヒト乳癌細胞の増殖を阻害するのに有効である
本実施例では次の物質および方法を使用した:
マウス
10週齢のメス胸腺欠損ヌードマウス140匹(Harlan Sprague Dawley,マジソン、ウィスコンシン州)で試験を開始した。腫瘍移植前の少なくとも5日間に亘って、動物を実験室に順化させた。通風ケージラックに収容して、食餌および水は自由に与えた。
腫瘍モデル
BT−474腫瘍は、Biogen Ideeで樹立された連続継代生体内ドナー系による凍結保存固形腫瘍断片から得た(cryo reg #0141、American Tissue Type Collection(マナッサス、バージニア州)から得た細胞から最初に樹立)。本試験の移植前に、腫瘍断片を凍結保存から取り出して、メス胸腺欠損ヌードマウスで3世代に亘って生体内で皮下連続継代した。マウスに移植される腫瘍組織のサンプルで細菌培養を実施した。細菌培養は移植後24時間および48時間後の両方で、細菌汚染について陰性であった。
第1日に、BioMedics animal ID chips(Model IMI−1000;シーフォード、デラウェア州)をマウスの左側腹部に皮下移植した。第0日に、8匹のドナー動物からの腫瘍を収穫して、壊死組織を除去して、刻み、BT−474腫瘍の3mm3断片を各マウスの右側腹部に皮下移植した。腫瘍サイズおよび体重測定値は第5日から開始して週に2回記録した。最低100mgの腫瘍が測定されたときに(第15日)、腫瘍サイズに基づき、非進行性成長の腫瘍を除いて、マウスを処置および対照グループにランダムに分けた(表10を参照)。
表10: 対照および試験処置グループ
試験品および正の化学治療剤
メイタンシンDM4接合(2000−67 3.5 D/A、6mg/mlおよび2000−79、3.3 D/A、5.5mg/ml)は、ImmunoGen,Inc(ケンブリッジ、マサチューセッツ州)でImmunoGen腫瘍活性化プロドラッグ(TAP)技術によって調製した。すべての実験において、B3F6抗体を抗体当り平均3〜4個のDM4分子を接合させた。送達されたDM4の量の一例として、平均3DM4/mAbを持つB3F6−DM4接合抗体の用量23mg/kgがDM4約350ug/kgに相当する。臨床グレードのタキソールTM(パクリタキセル注射、NDC 0015−3476−30)はBristol−Myers Squibb(Lot No 4L83460、使用期限2007年11月)から入手した。
試験グループおよび処置計画
試験グループおよび処置計画を表10に示す。ビヒクル対照(10mMクエン酸緩衝液、pH5.5、135mM塩化ナトリウム)は週1回、3回の用量(q7dx3)で静脈内投与し、タキソールTMは4日ごと、3回の用量(q4dx3)を腹腔内投与した。15mg/kgのB3F6.1−DM4は、q7dx3および第43日の追加投与またはq7dx3および第43日の25mg/kgの用量で静脈内投与した。35mg/kgのB3F6.1−DM4はq7dx3または第15、22、33、および36日に静脈内投与した。すべての処置は第15日に開始した。
抗癌活性の評価
腫瘍測定値はデジタルカリパスを使用して決定した。体重および腫瘍サイズ測定値は第0日に記録して、試験終了まで週2回継続した。長楕円の体積を計算する式を使用して、2次元腫瘍測定値から腫瘍体積(mm3)を概算した:腫瘍体積(mm3)=(長さx幅2)÷2。単位密度を仮定して、体積を重量に変換した(すなわち1mm3=1mg)。
第58日にビヒクル対照、タキソール、および15mg/kg/注射のB3F6.1−DM4で処置したグループを安楽死させた。腫瘍重量および体重は残りのグループから毎週、引き続き得た。35mg/kg/注射、q7dx3のB3F6.1−DM4で処置したグループは第76日に安楽死させた。第15、22、33、および36日に35mg/kg/注射のB3F6.1−DM4で処置したグループは、試験が終了する第83日に安楽死させた。
統計解析
各処置グループおよびビヒクル対照グループ間に何らかの統計的有意差があるかどうかを判定するために、各試験終了時の平均腫瘍重量に対してStudentのt検定を実施した。
移植後には98%の腫瘍生着率があり、厳しいサイズ範囲内のマウスを選択して処置を開始した。ビヒクル対照グループの腫瘍成長は十分に、このモデルで見られる代表的な範囲内であった。タキソールはこのモデルと一致する反応を生じて、第26日〜第50日に腫瘍成長の有意な(P<0.05)阻害を引き起こした。第58日にビヒクル対照、タキソール、および15mg/kg/注射のB3F6.1−DM4で処置したグループを安楽死させた。腫瘍重量および体重は残りのグループから毎週、引き続き得た。35mg/kg/注射、q7dx3のB3F6.1−DM4で処置したグループは第76日に安楽死させた。第15、22、33、および36日に35mg/kg/注射のB3F6.1−DM4で処置したグループは、試験が終了する第83日に安楽死させた。
図10〜13は、各種の計画で静脈内投薬されたB3F6.1−DM4の2つの用量(15および35mg/kg/注射)の、樹立BT−474異種移植腫瘍を持つ胸腺欠損ヌードマウスにおける腫瘍重量、%試験/対照(%T/C)、および体重の変化に対する影響を示す。q7dx3よび第43日の追加投薬で静脈内投薬されたB3F6.1−DM4は、第33日から第47日まで腫瘍成長を有意に(p<0.05)阻害したが、第58日にこのグループを終了させときにはもはや有意な阻害は示さなかった。15mg/kg/注射のB3F6.1−DM4によって処置して、q7dx3および第43日には25mg/kg/注射を静脈投薬した他のコホートは、試験を通じて腫瘍成長の有意な阻害を示さなかった。35mg/kg/注射でのB3F6.1−DM4の投薬計画はどちらも、第29日からビヒクル対照グループを終了させた第58日まで腫瘍成長の有意(P<0.001)な阻害を引き起こした。
35mg/kg/注射のB3F6.1−DM4によって処置された両方のコホートの%T/Cは、第29日までに活性のNCI基準の42%以下に低下して、試験の間、このレベル以下で維持された。15mg/kgのB3F6.1−DM4で処置したコホートの%T/Cは、42%以下になることはなかった。
臨床所見
B3F6.1−DM4で処置した複数のマウスが、皮膚に軽度のcoryneoform細菌感染を経験した。この細菌は皮膚に存在して、動物がストレスを受けた場合に発生しうる日和見感染と見なされる。35mg/kg/注射のB3F6.1−DM4によって処置したマウスの大半は第29日までに感染を発症して、すべての感染は第43日までに回復した(No.33を除く)。
タキソールで処置したマウス1匹は、タキソール投与中の技術的失敗のために体重減少を経験した。タキソールはGI毒性を引き起こすことが公知であり、この細胞傷害性薬を腹腔内投与するときは注意する必要がある。皮下液の投与はマウスの状態を改善しなかったが、体重減少に関するIACUCガイドライン(体重減少が20%を超えたときに安楽死)によって、それがタキソールのその最終用量を投与された3日後の第26日に安楽死させた。この動物のデータは、グラフおよび統計解析から除外した。
B3F6.1−DM4、35mg/kg/注射、q7dx3で処置したマウス1匹は、第26日から開始する体重減少を経験した。体重減少は継続したため、マウスはB3F6.1−DM4のその最後の投薬を受けてから14日後の第43日に、IACUCガイドラインによって安楽死させねばならなかった。検死は、胸内の透明な皮下液を明らかにした。このグループで他のマウス1匹のみがわずかな体重減少を経験したため、体重減少が処置に関連したかどうかは不明である。しかしながらNo.35もcoryneoform細菌感染を経験しており、これがわずかな体重減少を引き起こしたかもしれない。
第50日にビヒクル対照グループのマウス1匹を、その腫瘍がその体重の20%を超える重量に達したときに、IACUCガイドラインに従って安楽死させた。腫瘍の重篤な潰瘍形成および体重減少のために、ビヒクル対照グループの別のマウスを第50日に安楽死させた。これらのマウスの腫瘍重量は、試験の残りのデータに繰り越した。
(実施例19)
毒素へのヒト化ドメイン欠失B3F6抗体の接合は、生体内モデルで乳癌細胞の増殖を阻害するのに有効である
本実施例では次の物質および方法を使用した。
動物:
Harlan Sprague Dawley(マジソン、ウィスコンシン州)による、6〜7週齢の胸腺欠損メスヌードマウス135匹で試験を開始した。腫瘍移植前の少なくとも5日間に亘って、動物を実験室に順化させた。腫瘍の移植前に、動物には動物IDチップを個別に移植した。8匹の動物を試験グループに含め、20匹の動物をビヒクル対照グループに含めた。
腫瘍:
BT−474試験管内細胞系はNCI Tumor Repositoryから最初に入手した。連続移植生体内ドナー系(Biogen Idee cryo reg #0141より(エストロゲン添加なし)をBiogen Ideeで樹立して、本試験の移植前に、メス胸腺欠損ヌードマウスで4世代に亘って移植した。動物には3mm3組織断片/マウスを右側腹部に皮下移植した
腫瘍が100mgsの最低サイズに達したときに処置を開始した。動物を次の試験および対照グループにランダムに分けた。
表11
注記:**用量は、動物にメイタンシン350ug/kgを与える、23mg/kg用量=3つの薬物/mAbに基づく(MTD)。
試験スケジュールは:
第−1日:動物IDチップを移植して、初期体重を記録した。
第0日:腫瘍を採取して、インプラントして、マウスをランダムに分けた。腫瘍での細胞培養を行った。
第4日:腫瘍をステージングするために腫瘍サイズ測定値を記録して、ステージング日まで毎日または1日おきのどちらかで継続する。
であった。
最小サイズ100mgsが測定された腫瘍のあるマウスを選択した。マウスをランダムに分けて、体重を記録した。処置を1回静脈内投薬として投与した。正の対照薬剤をq4dx3スケジュールで腹腔内投与した。
体重および腫瘍測定値をステージング日に記録して、試験終了まで週2回継続した。
図14〜17のデータは、ドメイン欠失B3F6が、ある濃度のドメイン欠失分子で処置したマウスにおいて腫瘍重量を減少させるのに有効であったことを示している。
(実施例20)
毒素へのヒト化B3F6抗体の接合は、生体内モデルでヒト精巣癌細胞の増殖を阻害するのに有効である
次の実施例では、抗Criptoヒト化IgG1モノクローナル抗体(mAb)B3F6(B3F6.1とも呼ばれる)を、細胞傷害性薬メイタンシンの誘導体であるDM4と接合させた(B3F6.1−DM4)。この接合体をNCCITヒト精巣癌の樹立された皮下(SC)移植異種移植片を持つオス胸腺欠損ヌードマウスで、抗癌活性の証拠について評価した。動物のコホートは、B3F6.1−DM4 mAbで、6、10、15および25mg/kg/注射(それぞれ100、178、266および444ug/kgメイタンシンに相当)にて週1回、3回の用量(q7dx3)または腫瘍の再成長に応じて第15日および後日の25および10mg/kg/注射、ビヒクル対照IV q7dx3、または2mg/kg/皮下注射のシスプラチナム(正の化学治療対照)、週3回、6回の用量(3x/wkx6)で、静脈内(IV)処置した。処置は、腫瘍100mgのサイズの最小変化に達する第15日に開始した。
結果は、ビヒクル対照グループの腫瘍成長が十分にこのモデルの許容範囲内であったことを示す。シスプラチナムは、第20日から第66日までこのモデルと一致する腫瘍成長の有意(p<0.05)な阻害を生じた。q7dx3で投薬されたB3F6.1−DM4は、10(P<0.001)、15(P<0.001)および25mg/kg/注射(P<0.001)にて第20日に開始する腫瘍の退行を生じ、第107日に試験が終了するまで退行を維持した。6mg/kg/注射、q7dx3のB3F6.1−DM4は第20日から第44日まで腫瘍を退行させて、第70日に該グループが終了するまで腫瘍の増殖を有意に(p<0.001)阻害した。第15日に25mg/kgで投薬したB3F6.1−DM4は、試験を通じて腫瘍の退行を生じた(P<0.001)。第15日に1回、10mg/kgで投薬されたB3F6.1−DM4は、腫瘍の初期退行を引き起こした(P<0.001)。第37日および第44日に与えた10mg/kgの追加の投薬は、再び成長を開始した腫瘍の退行を引き起こした(P<0.01)。結論として、試験投薬計画でのB3F6.1−DM4は、NCCIT精巣癌の樹立異種移植片に対して非常に有効であった。
本実施例では次の物質および方法を使用した:
マウス
7〜8週齢のオス胸腺欠損ヌードマウス150匹(Harlan Sprague Dawley,マジソン、ウィスコンシン州)で試験を開始した。腫瘍移植前の少なくとも5日間に亘って、動物を実験室に順化させた。通風ケージラックに収容して、食餌および水は自由に与えた。
腫瘍モデル
NCCIT細胞は、American Tissue Type Collection(マナッサス、バージニア州)から得た。移植前に、細胞系を試験管内で4回継代した。細胞は試験管内で、抗生物質を含まないRPMI−1640+10%ウシ胎児血清(FBS)培地(5% CO2)中で培養した。細菌培養は、マウスに移植される細胞ホモジネート調製物の分割量に対して実施した。細菌培養は移植後24時間および48時間後の両方で、細菌汚染について陰性であった。
第−1日に、BioMedics animal ID chips(Model IMI−1000;シーフォード、デラウェア州)をマウスの左側腹部に皮下移植した。第0日に、血清(25%)を含まず、マトリゲル(75%)を加えたRPMI−1640 200L中のNCCIT細胞5x106個の接種材料を右側腹部に皮下移植した。腫瘍サイズおよび体重測定値を第6日から開始して週に2回記録した。第15日に非進行性成長を持つ腫瘍を除外して、腫瘍重量の最小増加100mgおよび最大増加244mgの腫瘍を持つマウスを処置および対照グループにランダムに分けた(表12を参照)。最初の腫瘍測定(第6日)からの腫瘍重量の変化を使用して、接種材料中のマトリゲルの体積を説明するために、実際の腫瘍重量ではなく腫瘍成長を評価した。
試験品および正の化学治療剤
DM4接合(2000−67、6.0mg/ml)は、ImmunoGen,Inc(ケンブリッジ、マサチューセッツ州)でImmunoGen腫瘍活性化プロドラッグ(TAP)技術によって調製した。ビヒクル対照およびB3F6.1−DM4 mAb投薬溶液(Lot No 11155−104、調合物、ノートブック:LC 11155−104)は、Biogen IdeeのLing Ling Chenから提供された。臨床グレードPlatinol−AQ(シスプラチン注射、NDC0015−3221−22)をBristol−Myers Squibb(Lot No 2C65556,使用期限2003年3月)から入手した。
試験グループおよび処置計画
試験グループおよび処置計画を表12に示す。B3F6.1−DM4は、胸腺欠損ヌードマウスにおいて3.9日の半減期を有する。B3F6.1−DM4 mAbは、週1回、3回の用量(q7dx3)で、または腫瘍の再成長に応じて第15日および後日に静脈投与した。ビヒクル対照(10mMクエン酸緩衝液、pH5.5、135mM塩化ナトリウム)はq7dx3で静脈内投与して、シスプラチナムは週3回、6回の用量(3x/wkx6)で皮下投与した。すべての処置は第15日に開始した。
表12は、対照および試験処置グループを示す。
対照および試験処置グループ
すべての処置は第15日に開始した
a静脈内
b皮下。
抗癌活性の評価
腫瘍測定値はデジタルカリパスを使用して決定した。体重および腫瘍サイズ測定値は第6日に記録して、試験終了まで週2回継続した。長楕円の体積を計算する式を使用して、2次元腫瘍測定値から腫瘍体積(mm3)を概算した:腫瘍体積(mm3)=(長さx幅2)÷2。単位密度を仮定して、体積を重量に変換した(すなわち1mm3=1mg)。最初の測定(第6日)からの腫瘍重量の変化を使用して、接種材料中のマトリゲルの体積を説明するために、実際の腫瘍重量ではなく腫瘍成長を評価した。
第70日に、ビヒクル対照、シスプラチナム、および6mg/kg/注射のB3F6.1−DM4で処置したグループを安楽死させた。残りのグループは試験が終了する第107日まで追跡を続けた。
統計解析
各処置グループおよびビヒクル対照グループ間に何らかの統計的有意差があるかどうかを判定するために、各試験終了時の平均腫瘍重量に対してStudentのt検定を実施した。
試験の終わり近くに、ビヒクル対照群の一部のマウスを、その腫瘍がその体重の20%を超える重量に達したときにIACUCガイドラインに従って安楽死させたこれらのマウスからの最終腫瘍重量は、試験終了まで繰り越した。
移植後には95%の腫瘍生着率があり、第15日に腫瘍重量変化の厳しい範囲内にある腫瘍を持つマウスを選択して処置を開始した。ビヒクル対照グループの腫瘍成長は十分に、このモデルで見られる代表的な範囲内であった。シスプラチナムは、第20日から第66日まで腫瘍成長の有意な阻害(p<0.05)を引き起こすモデルと一致する反応を生じた。第70日に、ビヒクル対照,シスプラチナム、および6mg/kg/注射のB3F6.1−DM4で処置したグループを安楽死させた。残りのグループは試験が終了する第107日まで追跡を続けた。
図18〜21は、q7dx3で投薬されたB3F6.1−DM4の4つの用量(6、10、15および25mg/kg/注射)または3x/wkx6で投薬されたシスプラチナムの、樹立NCCIT異種移植腫瘍を持つ胸腺欠損ヌードマウスにおける腫瘍重量、%試験/対照、および体重の変化に対する影響を示す。q7dx3で投薬されたB3F6.1−DM4は、10(P<0.01)、15(P<0.001)および25mg/kg(P<0.001)にて、第20日から第70日(ビヒクル対照グループが終了した日)までの腫瘍の退行を生じた。これらのグループの腫瘍は、第107日の試験終了まで退行を維持した。q7dx3で投与された6mg/kg/注射のB3F6.1−DM4は、第20日から第44日まで腫瘍を退行させた。第44日の後、このグループの多くの腫瘍は再成長を開始したが、腫瘍成長は該グループが終了した第70日まで有意に(p<0.01)阻害された。
6および10mg/kg/注射のB3F6.1−DM4の%T/Cは、第23日に活性のNCI基準の42%以下に低下して、試験の間、このレベル以下で維持された。25mg/kg/注射グループの%T/Cは、第20日までに42%以下に低下して、第23日から試験の間、10%未満を維持した。
図22〜25は、第15日に1回用量された、25mg/kg/注射のB3F6.1−DM4、腫瘍再成長に応じて第15日およびその後(第37および44日)に投薬された10mg/kg/注射のB3F6,1、または3x/wkx6で投薬されたシスプラチナムの、樹立NCCIT異種移植腫瘍を持つ胸腺欠損ヌードマウスにおける腫瘍サイズ、%試験/対照、および体重の変化に対する効果を示す。第15日に1回用量された25mg/kg/注射のB3F6.1−DM4は、第20日から第70日(ビヒクル対照グループが終了した日)まで腫瘍の退行(P<0.001)を生じた。このグループの腫瘍は、第107日の試験終了まで退行を維持した。10mg/kgで第15日に1回用量されたB3F6.1−DM4は、腫瘍の初期退行を引き起こした(P<0.001)。第37日および第44日に与えた10mg/kgの追加の投薬は、再び成長を開始した腫瘍の退行を引き起こした(P<0.01)。
10および25mg/kg/注射のB3F6.1−DM4の%T/Cは、第20日までに活性のNCI基準の42%以下に低下して、試験の間、このレベル以下を維持した。
B3F6.1−DM4で処置した複数のマウスが、軽度から中程度の皮膚のcoryneoform細菌感染を経験したが、開始から2、3日で回復した。この細菌皮膚に存在して、動物がストレスを受けた場合に発生しうる日和見感染と見なされる。25mg/kg/注射のB3F6.1−DM4によってq7dx3で処置した2匹のマウス、25mg/kg/注射で第15日のみに処置した2匹のマウス、そして15mg/kg/注射によってq7dx3で処置した1匹のマウスは、第20〜23日に感染の徴候を示した。25mg/kg/注射によってq7dx3で処置した1匹のマウスは、軽度の感染の徴候を第30日に示した。
第52日に、25mg/kg/注射のB3F6.1−M4で第15日に1回処置した1匹のマウスが腹部膨張を示し、膀胱を圧搾できなかった。該マウスを安楽死させると、検死によって膀胱結石が明らかにされた。
(実施例21)
ヒト化B3F6が生体内モデルでCLAU−6ヒト肺癌細胞の増殖を阻害する
本試験の目的は、樹立された予備形成腫瘍塊に処置を開始したときに、Calu−6異種移植腫瘍の成長に対するB3F6.1−DM4接合mAbの有効性を判定した。
本実施例では次の物質および方法を使用した:
マウス
8〜9週齢のメス胸腺欠損ヌードマウス160匹(Harlan Sprague Dawley,マジソン、ウィスコンシン州)で試験を開始した。腫瘍移植前の少なくとも5日間に亘って、動物を実験室に順化させた。通風ケージラックに収容して、食餌および水は自由に与えた。
腫瘍モデル
Calu−6細胞は、American Tissue Type Collection(マナッサス、バージニア州)から得た。移植前に、細胞系を試験管内で11回継代した。細胞は試験管内で、抗生物質を含まないRPMI−1640+10%ウシ胎児血清(FBS)培地(5% CO2)中で培養した。細菌培養は、マウスに移植される細胞ホモジネート調製物の分割量に対して実施した。細菌培養は移植後24時間および48時間後の両方で、細菌汚染について陰性であった。
第−1日に、BioMedics animal ID chips(Model IMI−1000;シーフォード、デラウェア州)をマウスの左側腹部に皮下移植した。第0日に、血清を含まない200μL RPMI−1640中のCalu−6細胞5x106の接種材料を右側腹部に皮下移植した。腫瘍サイズおよび体重第6日から開始して週に4回記録した。最低100mgの腫瘍が測定されたときに、を処置および対照グループにランダムに分けた(表13を参照)。
試験品および正の化学治療剤
DM4接合(2000−79 3.3 D/A、5.5mg/ml)は、ImmunoGen,Inc(ケンブリッジ、マサチューセッツ州)でImmunoGen腫瘍活性化プロドラッグ(TAP)技術によって調製した。ビヒクル対照およびB3F6.1−DM4 mAb投薬溶液(Lot# 10878−49、調合物、ノートブック:AC 10878−49)は、Biogen IdeeのAnne Cheungから提供された。臨床グレードのカンプトサールTM(イリノテカン注射、NDC 0009−7529−01)はPharmacia and Upjohn(最初の7回の用量にはLot No.76KDP、使用期限2006年7月、最後の3回の用量にはLot No.46MFH、使用期限2007年8月)から入手した。
試験グループおよび処置計画
試験グループおよび処置計画を表13に示す。B3F6.1−DM4は胸腺欠損ヌードマウスにおいて3.9日の半減期を有し、すべてのB3F6.1−DM4 mAbは第13、17、および21日に、または週1回のどちらかに3回の用量(q7dx3)を静脈内投与した。ビヒクル対照(10mMクエン酸緩衝液、pH5.5、135mM塩化ナトリウム)はq7dx3で投与して、イリノテカンは第13〜14日、第17〜21日、および第24〜26日に腹腔内投与した。ビヒクル対照グループの投薬計画は本報告には関連のない処置グループの投薬と類似しており、第1の処置は第14日に与えた。B3F6.1−DM4およびイリノテカンの処置は第13日に開始した。
表13:対照および試験処置グループ
抗癌活性の評価
腫瘍測定値はデジタルカリパスを使用して決定した。体重および腫瘍サイズ測定値は第4日に記録して、試験終了まで週2回継続した。長楕円の体積を計算する式を使用して、2次元腫瘍測定値から腫瘍体積(mm3)を概算した:腫瘍体積(mm3)=(長さx幅2)÷2。単位密度を仮定して、体積を重量に変換した(すなわち1mm3=1mg)。
統計解析
各処置グループおよびビヒクル対照グループ間に何らかの統計的有意差があるかどうかを判定するために、各試験終了時の平均腫瘍重量に対してStudentのt検定を実施した。
抗腫瘍活性
移植後には90%の腫瘍生着率があり、厳しいサイズ範囲内にあるマウスを選択して処置を開始した。イリノテカンは第20日から該グループが終了した第45日まで、このモデルと一致する腫瘍成長の有意な(P<0.001)阻害を生じた。
図26〜29は、第13、17、および21日に静脈内投薬されたB3F6.1−DM4の2つの用量(10および20mg/kg/注射)または第13〜14日、第17〜21日、および第24〜26日に投薬されたイリノテカンの、樹立Calu−6異種移植腫瘍を持つ胸腺欠損ヌードマウスの腫瘍重量、最終腫瘍重量、%試験/対照、および体重の変化に対する影響を示す。B3F6.1−DM4は、次の期間に亘って両方の用量で腫瘍成長の有意な阻害を生じた:
・第24〜45日に10mg/kg(P<0.01 第24、35〜38および45日;P<0.001 第27〜32および41日)
・第24〜45日に20mg/kg(P<0.001)
%T/Cは、第32〜45日に20mg/kg/注射で活性のNCI基準の42%以下に達した。
図30〜33は、q7dx3で静脈内投与されたB3F6.1−DM4の2つの用量(15および30mg/kg/注射)または第13〜14日、第17〜21日、および第24〜26日に投薬されたイリノテカンの、樹立Calu−6異種移植腫瘍を持つ胸腺欠損ヌードマウスの腫瘍重量、最終腫瘍重量、%試験/対照、および体重の変化に対する影響を示す。B3F6.1−DM4は、次の期間に亘って両方の用量で腫瘍成長の有意な阻害を生じた:
・第32〜45日に15mg/kg(p<0.01 第32〜35および45日;P<0.001 第38〜41)
・第24〜45日に30mg/kg(p<0.01 第24日、P<0.01 第27〜45日)
%T/Cは、第32〜45日に30mg/kgで活性のNCI基準の42%以下に達した。
10mg/kg/注射のB3F6.1−DM4の1匹のマウスが移植第32日後、B3F6.1−DM4のその最終投薬を受けた11日後に死亡して発見された。動物は投薬後の毒性の徴候を示さず、該グループの他の動物のいずれも健康障害を示さなかった。
グループB3F6.1−DM4、30mg/kg/注射グループのすべてのマウスは、皮膚にcoryneoform細菌感染を経験したが、B3F6.1−DM1の最終用量を投薬した数日後に回復した。この細菌は皮膚に存在して、動物がストレスを受けた場合に発生しうる日和見感染と見なされる。このグループの動物は投薬中のに5〜15%の体重減少を経験したが、体重減少および感染はどちらも投薬を中止したら回復した。このグループの1匹のマウスは、右耳耳介に二次ブドウ球菌感染を経験したが、数日以内に回復した。
均等物
当業者は、日常的な実験のみを使用して、本明細書で述べた本発明の具体的な実施形態の多くの均等物を認識、または確認できるであろう。そのような均等物は、上記の請求項に含まれるものとする。