JP2008521749A - 有機物汚染に対する保護がされる基板 - Google Patents

Abstract

本発明は外周の少なくとも一部に沿ってマスチック樹脂（３）を備えた基板（１）に関係し、前記マスチック樹脂はシリコーン型構成成分を含む。本発明は基板（１）の表面（２）に堆積したケイ素（５、７、８）の移動に対する障害物を特徴とする。
【選択図】図３

Description

本発明は基板に関係し、その基板の表面は周辺のシール部から生じる有機物汚染、特にシリコーンタイプの材料を含むマスチック樹脂、に対する保護がされる。

この基板は、金属、金属合金、セラミック、ガラス、酸化物又は本質的に無機材料（特に最後の二つにおいては、基板、特にガラス基板、上の薄膜被覆の形態である）から構成される。基板が透明であり且つ高い光学的品質を必要する場合、基板がガラス基板、又は一以上の機能性被覆層を備えたガラスでできた基板であり、特にこれらの機能性層が親水性を基板にもたらす場合に、本発明は特に重要な意義を持つようになる。

多くの技術分野で、伝統的なもの（コンクリート、ブロック、鉄又はコンクリートの梁、ガラス、等）又は現代的で、事前に組み立てられた若しくは合成されたもの（ドア、窓、パネル、プラスチック、等）である多様な材料及び多様な構成要素を組立てること及び並置することに出くわすが、これらは温度又は湿度の変動及び風、結合剤、構造物の重量、及び或る構成要素の流れの影響下での異なる動作によって決まる異なる寸法の変動を有するために、異なる材料及び構成要素間の隙間又は接合部の準備をしておくことが必要である。「接合部」という用語は従って分離ライン及びパッキング又は隙間を塞ぐもの又は二つの構成要素（同じ性質であろうと又は異なる性質であろうと）の間の隙間、又は望ましい一続きの解決策、すなわち、動作における又は行動における相違を吸収するための構造において造られた直線的な割れ目を意味する。

これらの接合部はその後隙間を塞ぐ製品で充填されなければならず、そしてこの接合部はまたこの隙間の組立及びシールするために使用される隙間を塞ぐ製品の組立も意味する。この隙間を塞ぐ製品の中から、本発明の意義の範囲内で、糊のような、展性のある、プラスチック又はエラスティック材料として、結合部に適用されこの結合内部の表面に付着することによって隙間を塞ぐものを形成する、マスチック樹脂が画定された。

多数の隙間を塞ぐもの及びシーリングマスチック樹脂はシリコーンタイプの構成要素（ポリシロキサンとしても知られる）を含む。このシリコーンマスチック樹脂は、その弾力性、耐久性及び多くの基板への付着性といった特性によって特徴づけられ、そしてそれゆえにあらゆる媒体に、そしてまた衛生的な構成要素及び壁の間に、非常に頻繁に（流し）かけるためのシーリングを提供するために使用される。シリコーンはまた多くの他のマスチック樹脂に可塑剤として組み込まれる（可塑性、さらに弾力性をこの材料に与える）。さらに、シリコーンオイル（低分子量シリコーン）をマスチック樹脂の表面に加えることがその使用を促進する。従って、シリコーンタイプの構成要素を含むマスチック樹脂は数が多く種類も多い。

シリコーンタイプの構成要素は常に、多かれ少なかれ、低分子量ポリシロキサン（しばしば「シリコーンオイル」と呼ばれる）を含み、これはマスチック樹脂の表面へ向けて移動し、その後この材料の表面に移動する特性を有し、このシリコーンによって汚染された前記表面を清浄にすることを非常に困難にする、ということが判明した。この特性は、シリコーンが最も低い既知の表面エネルギーの範囲にある表面エネルギーを有しそしてそれゆえあらゆるタイプの表面、特に高エネルギーの表面を非常に簡単に濡らすという事実に起因する。

この問題は、表面が親水性である場合、シリコーンの表面が非常に疎水性であるので、特に重要と思われる。水と接触させると、この汚染した範囲は汚染していない範囲との対比で非常に可視的となり、この水は好ましくはその親水性の表面を濡らして、水の膜を創り、一方でその疎水性表面は水に濡れずに、後者は液滴の形態で沈滞する。

この親水性表面が、基板の表面状態に関連づけられることがある。清浄なガラス又は金属表面は、例えば、高い表面エネルギーを有しそしてそれゆえに親水性特性を有し、１５°未満の水接触角によって表現される。この表面親水性は、特にこの特性を付与するのに適している被覆によるものであってもよい。セラミック又はガラスのような基板において、少なくとも部分的に結晶性のチタン酸化物を、特にアナターゼ形態で、含む被覆が、前記基板に「超親水性」特性を与え、５°未満、又はさらには１°未満の接触角で特徴づけられる。さらに光触媒特性を有する、このような被覆が、例えば欧州特許出願ＥＰ−Ａ−０ ８５０ ２０４に記載されている。親水性を有する他のタイプの被覆も知られている。例えば、ＳｉＯ_２及び／又はＳｉＯＣに基づく被覆についての言及がなされ、特にこれが織り込まれるときに、その織り方は約１０〜２００ｎｍの寸法のパターンを有し、特に小塊（nodules)形態である。

本発明の目的は従って基板の表面をシリコーンタイプの構成要素を含むマスチック樹脂に起因する汚染から保護することである。

その趣旨で、本発明の対象は、基板の周辺の少なくとも一部に、シリコーンタイプの化合物を含むマスチック樹脂を有する基板であり、そのシリコーンの移動に対するバリアが前記基板の表面に置かれていることを特徴とする。

この基板は、金属、金属合金、セラミック、ガラス、酸化物又は本質的に無機材料（特に最後の二つにおいては、基板、特にガラス基板、上の薄膜被覆の形態である）から出来ていても良い。本発明による基板は、好ましくはガラスベース又はセラミックベースの基板で、その面の一つの少なくとも一部に、少なくとも一つの薄膜（この場合、この基板の表面は、外側の薄膜の表面として扱われるものであり、そのシリコーンの移動によって汚染されることが可能なものだけである）、特に顕著な親水性を与える被覆、例えば少なくとも部分的に結晶性のチタン酸化物、特にアナターゼ形態のもの、を有する（前述の欧州特許出願第ＥＰ−Ａ−０ ８５０ ２０４号による）。このような被覆した基板は光触媒性及び超親水性の特性を有し、水の流れ、特に雨、及び可視光及び／又は紫外線、例えば太陽光線の効果の組合せの下で、有機的及び無機的な汚染を除去することによる、自己清浄を可能とする。後者の場合では、シリコーン系の汚染は、実際には、その被覆の自己清浄活性に対して有害なものを構成することがある。

本発明の範囲内で、「バリア」という用語はこのシリコーンの移動を制限すること又はさらには止めさせることを可能にする任意の手段を意味すると理解される。

本発明の第一の実施態様によると、このシリコーンの移動に対するバリアはポリマー、好ましくはシリコーン系の可塑剤を全く含まないエラストマー系マスチック樹脂、に基づく。

このバリアとして働くポリマーは、好ましくは保護されるべき基板の表面にビーズの形態で、シリコーンタイプの化合物を含むマスチック樹脂と直接接触するか、又は前記マスチック樹脂の向かい側で且つ数ミリメートルの距離を隔てて、堆積される。この第二の選択肢は最大の利点を有するものである。

このシリコーンの移動に対するバリアとして働くエラストマー系マスチック樹脂は、好ましくはＭＳポリマーに基づく。ＭＳポリマーはシリルを末端基とするポリエーテルである。このようなＭＳポリマーの非限定的な例は、ジメトキシシリル基を末端基とするポリオキシプロピレン鎖で構成されたポリマーである。それらの主鎖において結合力のあるユニットが存在しないために、これらのポリマーは高い柔軟性を有しそして多くの場合可塑剤の添加を必要としない（そしてそれゆえにシリコーン系の可塑剤が含まれていない）、又はさらには溶媒の添加も必要としない。

驚くべき事に且つ差し当たっては説明できないが、このようなバリアはこの基板の表面を効果的に保護するようである。シリコーンオイルはあらゆるタイプの材料を濡らす能力を有しているので、このようなバリアが、それがどのような性質であったとしても、現実の効果を有し得ることは想像されていない。任意の科学的理論に結びつけられることは望まないが、このＭＳポリマーのファミリーのポリマーの非常に高い効果の源は、シリコーンオイルとこのＭＳポリマーのシリル末端基の間の強い相互作用から生じ得る。

このバリアはまた厚い層で構成されてもよく、その層の厚みは好ましくは１００ｎｍ〜２マイクロメートルの間であって、少なくとも部分的に結晶性のチタン酸化物を含み、そして好ましくはさらにアナターゼ形態のほぼ完全に結晶性のチタン酸化物を含む。この層は好ましくは大きな比表面積を有し：それは例えば保護されるべき表面の周辺にゾルゲルタイプのプロセスによって堆積されたシリカの層であってもよく、前記シリカの層はチタン酸化物粒子を含む（例えば国際特許出願ＷＯ−Ａ−０３／０８７００２で、記載されているとおりである）。このようなバリアの効果はおそらくその非常に高い光触媒活性にあり、そのような層は可視光又は紫外線の下でシリコーン分子を分解することが可能であり、分解の速度は前記分子の移動の速度よりも急速である。

第二の実施態様によると、このシリコーンの移動に対するバリアは、基板の表面に置かれたノッチ（切り込み）又はグルーブ（溝）から形成されてもよく、そしてシリコーンの源であるマスチック樹脂の向かい側にあってもよい。このグルーブ又はノッチは都合良く１０〜２００マイクロメートルの範囲の深さを有し、そして１００マイクロメートル〜２ミリメートルの範囲の幅を有する。

このグルーブは、シリコーンオイルに対するトラップとして働くようである。このグルーブの寸法は、移動し得るシリコーンの量に応じて、適応し、そして基板が脆い材料例えばガラス又はセラミックから出来ている場合は考え得る脆化効果も考慮される。

少なくとも一つの薄膜で被覆したガラスベース又はセラミックベースの基板から基板が構成されている場合に、本発明の第三の実施態様は前記薄膜を縁（ふち）取ることに存し、すなわち機械的及び／又は化学的プロセスによって前記基板の周辺にある薄膜を除去することに存する。このシリコーンの移動に対するバリアはこのようにしてこの薄膜の周辺の縁取りから形成される。特にこの薄膜がチタン酸化物に基づいているときに、このシリコーンはこの膜の表面よりもガラスの表面でより移動が困難であるということが、実際に、証明されている。このシリコーンのケイ素原子及びこのガラス表面の間のより強い相互作用は、場合によってはこのような現象の原因となる。効果的なバリアを形成するために、このマスチック樹脂によって被覆されていない縁取りした領域が存在するように縁取りがされていることが不可欠であり、前記被覆されていない領域の幅は都合良く０．５ｃｍ、又はさらには１又は２ｃｍ以上である。薄膜が光触媒活性を有するときに、その薄膜でこのマスチック樹脂を分解するのを防ぐために、このマスチック樹脂によって被覆した領域を縁取ることのみが知られている、しかしこれはこのマスチック樹脂からのシリコーンが薄膜の表面へ移動することは防がない。このような周辺の縁取りは、斜めになった端部（面取りした端部とも呼ばれる）の製作と同時に生じる。

本発明は、非限定的で典型的な実施態様についての以下の詳細な説明及び添付図によってより一層理解される。

図１はソーダ−ライム−シリケートガラス１で出来た平坦な基板の斜視図であり、この基板はその周辺の一部にシリコーンタイプの構成要素を含むマスチック樹脂３を有する。このシリコーンオイルは前記基板１の表面２へ移動し、そして汚染した表面４を生じ、この汚染した表面は非常に疎水性であり且つ清浄にすることが困難である。

図２の基板１は、ここで断面図で示されているが、シリコーンの移動に対するバリア５を使用することによって他方に清浄な表面２を保持しており、このバリア５はＭＳポリマー、特にはジメトキシシリル基を末端とするポリオキシプロピレン鎖で構成されたＭＳポリマーに基づく。ＭＳポリマー５のビーズはここではマスチック樹脂３と直接接触して堆積している。

図３は異なる実施態様を示しており、シリコーンの移動に対するバリアとして働くポリマー５のビーズがマスチック樹脂３から約５ミリメートル離れて堆積しており、さらに高い効果を有する配置である。本図で表されているケースでは、基板１はまたその表面の一つに薄膜６も有し、前記基板１の表面２は、この表面２だけがシリコーンによって汚染される可能性があるときに、ひいては前記薄膜６の表面として扱われる。この薄膜６はここでは約１５〜２０ナノメートルの被覆であり、結晶アナターゼ形態で大部分が結晶性のチタン酸化物に基づき、化学気相堆積（ＣＶＤ）技術によって堆積する。この薄膜６は表面２に光触媒特性及び顕著な親水性を与える。基板１はこの特定のケースにおいてソーダ−ライム−シリケートガラスで出来ているので、この薄膜は、都合の良いように基板１に直接は置かれておらず、アルカリの移動に対するバリアである副次層の上に置かれている（図示はされていない）。

図４では同じタイプの基板が表されているが、本発明の実施態様においては、シリコーンの移動に対するバリアが薄膜６の周辺の縁取り７から形成される。この周辺の縁取り７は基板の周辺で薄膜６を除去するという結果をもたらし、従って薄膜６を有さず且つマスチック樹脂３によって被覆されていない縁取り領域７を生じる。

図５は本発明による別の実施態様を表し、すなわち本発明によりシリコーン移動に対するバリアがノッチ８である。この薄膜６は図３で表されたものと同じタイプのものである。

この実施態様の効果が図６の写真に表されており：マスチック樹脂３は図の左に黒色部を形成し、グルーブ８は図のほぼ中心に垂直に位置している。水を散布した後では、グルーブ８の左側に位置する表面２の部分は、強い疎水性を有し、これは高い水接触角で表され及びシリコーンオイルによって汚染される。逆に、このグルーブの右側に位置する表面２の部分は、完全に親水性であり、それゆえにシリコーンオイルによって汚染されない。

本発明は、例を用いた前述において説明されている。当業者はこの特許請求の範囲で定義される特許の範囲を大きく逸脱することなく本発明の多様な改良をすることができることが理解される。

平坦な基板の斜視図を示し、その基板の周辺の一部にはシリコーンタイプの構成要素を含むマスチック樹脂を有する。 基板の断面図を示し、その基板の表面にシリコーンの移動に対するバリアが置かれており、このバリアはシリコーンタイプの構成要素を含むマスチック樹脂と接触して堆積したポリマーに基づく。 基板の断面図を示し、この基板はその面の一つに薄膜を有し、その薄膜の表面にシリコーンの移動に対するバリアが置かれており、このバリアはシリコーンタイプの構成要素を含むマスチック樹脂から数ミリメートルの距離を隔てて堆積したポリマーに基づく。 基板の断面図を示し、この基板はその面の一つに薄膜を有し、この薄膜はその薄膜の周辺で除去がされている。 基板の断面図を示し、ここではシリコーンの移動に対するバリアがノッチから形成されている。 図５で概略的に表した基板の表面の写真を示す。

Claims (9)

1. シリコーンタイプの成分を含むマスチック樹脂（３）を周辺の少なくとも一部に有する基板（１）であって、該シリコーンの移動に対するバリア（５、７、８）が基板（１）の表面（２）に置かれていることを特徴とする基板（１）。
2. 該基板は、ガラス又はセラミックに基づき且つ面の一つの少なくとも一部に、少なくとも一つの薄膜（６）を有することを特徴とする、請求項１に記載の基板（１）。
3. 薄膜（６）が、顕著な親水性を与える被覆、例えば少なくとも部分的に結晶性のチタン酸化物、特にアナターゼ形態のもの、を含むことを特徴とする請求項２に記載の基板（１）。
4. シリコーンの移動に対するバリア（５）が、ポリマー、好ましくはシリコーン系可塑剤を全く含まないエラストマー系マスチック樹脂、に基づくことを特徴とする請求項１〜３の１項に記載の基板（１）。
5. バリア（５）として働くポリマーが、ビーズの形態で基板（１）の表面（２）に、シリコーンタイプの化合物を含むマスチック樹脂（３）と直接接触して、堆積されることを特徴とする請求項４に記載の基板（１）。
6. バリア（５）として働くポリマーが、ビーズの形態で基板（１）の表面（２）に、前記マスチック樹脂（３）の向かい側で且つ数ミリメートルの距離を隔てて、堆積されることを特徴とする請求項４に記載の基板（１）。
7. シリコーンの移動に対するバリア（５）として働くエラストマー系マスチック樹脂は、ＭＳポリマー（シリルを末端基とするポリエーテル）に基づくことを特徴とする請求項１〜６の１項に記載の基板（１）。
8. シリコーンの移動に対するバリア（８）が、基板（１）の表面（２）に置かれたノッチ（切り込み）又はグルーブ（溝）から形成され且つシリコーン（３）の源であるマスチック樹脂の向かい側にあることを特徴とする請求項１〜３の１項に記載の基板（１）。
9. シリコーンの移動に対するバリア（８）が、薄膜（６）の周辺の縁取り（７）から形成され、前記縁取りはマスチック樹脂（３）で被覆されていない縁取りした領域（７）が存在するようにされていることを特徴とする請求項２に記載の基板（１）。

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