JP2008307913A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも操舵トルクTに基づいて、d−q軸のベクトル制御を用いて電流指令値を演算し、その電流指令値に基づいて電動モータ12を駆動制御する。このとき、ECU温度Tecuが高いほどベクトル制御におけるd軸電流指令値Idrefを小さく演算することで、ECU温度Tecuが低い場合は、通常の弱め界磁制御を実行して急操舵に対する操舵フォーリングを向上し、ECU温度Tecuが高い場合は、弱め界磁制御を通常より弱く発揮してECUハードの温度保護を実現する。
【選択図】図4
Description
このようなタイプのモータの制御においては、二相回転磁束座標系(d−q座標系)で記述されるベクトル制御が採用され、さらに、ハンドルの高速操舵時の高速回転を実現するために、d軸電流がモータの界磁を弱めるような所定値となるようにd軸電流指令値を制御する弱め界磁制御が適用されている(例えば、特許文献1参照)。
ここで、d軸電流は回転界磁の磁束方向、q軸電流は回転界磁の磁束方向と直行する方向に位相が一致しており、モータの出力トルクはq軸電流の大きさに比例し、d軸電流は上述の弱め界磁制御においてモータ磁束を弱める方向に与えられる。
一方、従来の電動パワーステアリング装置においては、モータ駆動回路の駆動素子が熱破壊するのを防止するために、モータ電流を制限して過熱保護を行う機能を備えるものがある。通常、制御装置の設計においては、据え切りあるいは駐車場等での操舵が連続して行われた場合の温度上昇を想定し、規定回数の据え切り操舵でアシスト切れをしない、つまり制御装置の過熱保護が作動しないような熱設計を行っている。
これを抑制するために、弱め界磁制御作動時の入力電流の増分を考慮した熱設計とすると、モータ駆動回路において耐熱温度の高い素子を採用する、あるいは放熱性能を大きくする等の設計が必要となり、制御装置が高価となってしまう。
前記電動モータを駆動するモータ駆動回路の素子の温度を検出又は推定する温度検出手段を有し、前記電流指令値演算手段は、前記温度検出手段で検出又は推定した温度が高いほど、前記ベクトル制御におけるd軸電流指令値を小さく演算することを特徴としている。
さらに、請求項3に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1に係る発明において、前記電流指令値演算手段は、進角制御によって前記d軸電流指令値を演算するものであって、前記温度検出手段で検出又は推定した温度が高いほど、前記進角制御における進角を小さく演算することを特徴としている。
図1は、本発明に係る電動パワーステアリング装置の一実施形態を示す全体構成図である。
図中、符号1は、ステアリングホイールであり、このステアリングホイール1に運転者から作用される操舵力が入力軸2aと出力軸2bとを有するステアリングシャフト2に伝達される。このステアリングシャフト2は、入力軸2aの一端がステアリングホイール1に連結され、他端は操舵トルク検出手段としてのトルクセンサ3を介して出力軸2bの一端に連結されている。
トルクセンサ3は、ステアリングホイール1に付与されて入力軸2aに伝達された操舵トルクを検出するもので、操舵トルクを入力軸2a及び出力軸2b間に介装した図示しないトーションバーの捩れ角変位に変換し、この捩れ角変位を例えばポテンショメータで検出するように構成されている。このトルクセンサ3から出力されるトルク検出値Tはコントローラ15に入力される。
また、本実施形態の電動モータ12は、例えば3相ブラシレスモータであり、図2に示すように、U相コイルLu、V相コイルLv及びW相コイルLwの一端が互いに接続されてスター結線とされ、各コイルLu、Lv及びLwの他端がコントローラ15に接続されて個別にモータ駆動電流Iu、Iv及びIwが供給される。また、電動モータ12は、ロータの回転位置を検出するレゾルバ、エンコーダ等で構成されるロータ位置検出回路を備え、回転角センサ13はこのロータ位置検出回路から出力されるロータ回転位置をもとにモータ回転角θを検出するようになっている。
制御演算装置23は、図3に示すように、入力されるトルク検出値T及び車速検出値Vに応じたトルク指令値Trefを算出し、算出したトルク指令値Trefをもとにd−q軸電流指令値Idref,Iqrefを算出し、さらにd−q軸電流指令値Idref,Iqrefを2相/3相変換して3相電流指令値Iuref〜Iwrefを算出する電流指令値演算部30と、この電流指令値演算部30から出力される3相電流指令値Iuref〜Iwrefと電流検出回路22u〜22wで検出したモータ電流Iu〜Iwとで電流フィードバック処理を行って駆動電圧を制御するモータ電流制御部40とを備えている。
トルク指令値演算部31は、トルクセンサ3で検出した操舵トルクT及び車速センサ16で検出した車速検出値Vを入力として、公知の手順によりトルク指令値Trefを算出し、これをq軸電流指令値演算部35及びd軸電流指令値演算部36に出力する。
換算部33は、モータ角速度ωおよびモータ回転角θを入力として逆起電圧eu,ev,ewを算出する。
q軸電流指令値演算部35は、逆起電圧ed,eq、トルク指令値Tref、モータ角速度ωおよび後述するd軸電流指令値Idrefを入力として、電流指令値Iqrefを決定する。具体的には、q軸電流指令値演算部35では、Iqref=2/3(Tref×ω−ed×Idref)/eqを演算する。
そして、2相/3相変換部37は、電流指令値Iqref,Idrefおよびモータ回転角θが入力されて、電流指令値Iqref,Idrefを3相の電流基準値Iuvref,Ivvref,Iwvrefに変換し、これらをモータ電流制御部40に出力する。
減算回路41u,41v,41wは、電流検出回路22u,22v,22wで検出した各相のモータ電流Iu,Iv,Iwと、3相の電流指令値Iuvref,Ivvref,Iwvrefとの偏差をそれぞれ算出し、その偏差をPI制御部42に出力する。
そして、PWM制御部25では、これら電圧指令値Vu,Vv,Vwを入力としてインバータ回路24へのPWMのゲート信号を算出し、インバータ回路24は、そのゲート信号によってPWM制御される。これにより、各相電流Iu,Iv,Iwが電流指令値Iuvref,Ivvref,Iwvrefとなるように制御される。
このような制御を実現するために弱め界磁制御という制御方法が用いられ、通常、d軸の電流指令値Idref=0であったものが、弱め界磁制御の場合は、等価的にIdref=0ではなくなる。d軸電流指令値Idrefは界磁磁束に対応した電流成分であり、d軸電流指令値Idrefを負の方向に増加させるとd軸上の界磁磁束を弱めることと等価となる。界磁磁束が弱められると逆起電力が小さくなるため、より高速でモータを回転させることが可能となる。このような弱め界磁制御を実行して、急速なハンドル操舵においてもハンドル操舵のフィーリングを良くする工夫を施している。
まず、換算部36aにトルク指令値Trefが入力され、ベース角速度ωbが算出される。一方、機械角演算部36bでは、モータ角速度ωを入力とし、機械角度に変換した機械角速度ωmを出力する。arccos演算部36cでは、ベース角速度ωbと機械角速度ωmとを入力とし、角度Φ=arccos(ωb/ωm)が実行されて、角度Φが出力される。次に、sin演算部36dで角度Φを入力として、sinΦが出力される。
そして最後に、指令値補正部36hで、掛算部36gから出力されるd軸電流指令値(通常のd軸電流指令値)Idrefに、ECU温度Tecuに感応したゲインKを乗じたK・Idrefを、最終的なd軸電流指令値Idrefとして出力する。
ここで、上記ゲインマップは、ECU温度Tecuが温度T1以下の領域ではゲインKが“1”に固定され、温度T1より高く温度T2以下の領域では、ECU温度Tecuが高くなるほどゲインKが“1”から“0”に向かって比例的に小さくなり、温度T2より高い領域ではゲインKが“0”に固定されるように設定されている。
次に、第1の実施形態の動作及び効果について説明する。
この状態から機械角速度ωmが早くなり、ベース角速度ωbより高速になると、arccos演算部36cの出力である角度Φが0でなく、sinΦが0から1の間の値を発生するので、掛算部36gの出力値Idref=−|Iqb|・sinΦは値を発生する。
ここで、モータ駆動回路へ入力される電流は、q軸電流とd軸電流とのベクトル和に相当するため、同じ操舵トルク指令値が入力された場合、弱め界磁制御を実施しているときのモータ駆動回路への入力電流は、弱め界磁制御を実施していないときよりも多く流れることになる。
これに対して、本実施形態では、ECU温度センサでECU温度Tecuを検出し、このECU温度Tecuに応じてd軸電流指令値Idrefを制限するので、高温時のモータ駆動回路への入力電流を制限して、低コストでモータ駆動回路の過熱保護を実現することができる。
つまり、ECU温度Tecuが高いほど、モータ駆動回路への入力電流が制限されることになり、ECU温度Tecuが低い場合には、通常の弱め界磁制御を実行して操舵フィーリングを向上し、ECU温度Tecuが高い場合には、操舵フィーリングを向上するよりも、ECUハードの温度保護を重視する制御となっている。
さらに、温度検出手段で検出したECU温度が所定温度以上であるとき、当該温度が高いほどd軸電流指令値を小さく演算するので、ECU温度が低温状態であるときには通常の弱め界磁制御を実行してモータの高速回転を可能とすることができ、ハンドルの急操舵に対してもフィーリングの良いハンドル操舵を確保することができる。
この第2の実施形態は、前述した第1の実施形態において弱め界磁制御をベクトル制御のd軸電流指令値によって実現しているのに対し、ベクトル制御の進角制御によって実現するようにしたものである。
図7は、第2の実施形態における制御演算装置23の構成を示すブロック図である。ここでは、図3に示す第1の実施形態における制御演算装置23と同様の処理を行う部分には図3と同一符号を付し、処理の異なる部分を中心に説明する。
一方、電流検出回路22u,22v,22wで検出したモータ電流Iu,Iv,Iwは、3相/2相変換部62でモータ電流Iq,Idに変換される。この変換には、モータ回転角θが利用される。
PI制御部64は、これらの偏差ΔId,ΔIqをなくすようにPI制御を施し、電圧指令値Vd,Vqを出力する。そして、これら電流指令値Vd,Vqは、2相/3相変換部65で3相の電圧指令値Vu,Vv,Vwに変換される。この変換には、モータ回転角θ及び後述する進角演算部66で演算される進角の角度Φが利用される。具体的には、電流指令値Vd,Vqに対して次式が実行され、電圧指令値Vu,Vv,Vwが演算される。
Vv=−Vd・cos(θ+Φ−2π/3)+Vq・sin(θ+Φ−2π/3),
Vw=−Vd・cos(θ+Φ+2π/3)+Vq・sin(θ+Φ+2π/3) ………(1)
このように、角度Φだけ進角されることにより、界磁を弱めるための電流指令値(d軸電流指令値)が演算されることになる。つまり、進角制御において、界磁を弱めるための界磁電流指令値とは進角の角度Φを意味し、電圧指令値Vu,Vv,Vwにおいて、角度Φによって発生する成分が界磁を弱める作用を発生させている。
この図8に示すように、トルク指令値Trefを入力として換算部66aにおいてベース角速度ωbが算出され、一方、角速度演算部32で算出されたモータ角速度ωを入力とする機械角演算部66bにおいて機械角速度ωmが算出され、arccos演算部66cにおいて、角度Φ=arccos(ωm/ωb)に基づき、角度Φが算出される。
具体的には、角度Φを補正するためのゲインKは、ECU温度センサ26の出力であるECU温度Tecuをもとに、ゲインマップを参照して算出する。
角度Φは、Φ=arccos(ωm/ωb)の式から分かるように、モータの機械角速度ωmがベース角速度ωbより高速になったときに初めて出現する値であり、言い換えれば、モータの機械角速度ωmがベース角速度ωbより高速になったときに弱め界磁制御が実行される。
モータの機械角速度ωmがベース角速度ωbより遅い場合、arccos演算部66cの出力である角度Φが“0”となるので、進角演算部66の出力であるK・Φも“0”となって、弱め界磁制御は実行されない。
この状態から機械角速度ωmが早くなり、ベース角速度ωbより高速になると、arccos演算部66cの出力である角度Φが0でなくなる。このとき、ECU温度Tecuが温度T1以下の低温状態であるものとすると、角度補正部66dでゲインK=1として算出されるので、arccos演算部66cの出力値が補正されることなく、当該arccos演算部66cの出力値Φを最終的な角度Φとして弱め界磁制御が実行される。
また、ECU温度Tecuが温度T2より高い高温状態であるものとすると、角度値補正部66dでゲインK=0として算出されるので、最終的な角度Φ=0となり、弱め界磁制御は実行されない。
なお、上記各実施形態においては、Tecu≦T1の領域でゲインK=1に固定する場合について説明したが、Tecu=0でK=1とし、Tecu>0であるとき、高温になるほどゲインKを1より小さい値にすることもできる。
Claims (4)
- ステアリング機構に入力される操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、少なくとも前記操舵トルク検出手段で検出した操舵トルクに基づいて、d−q軸のベクトル制御を用いて電流指令値を演算する電流指令値演算手段と、前記ステアリング機構のステアリングシャフトに与える操舵補助トルクを発生する電動モータと、前記電流指令値に基づいて前記電動モータを駆動制御するモータ制御手段とを備えた電動パワーステアリング装置であって、
前記電動モータを駆動するモータ駆動回路の素子の温度を検出又は推定する温度検出手段を有し、前記電流指令値演算手段は、前記温度検出手段で検出又は推定した温度が高いほど、前記ベクトル制御におけるd軸電流指令値を小さく演算することを特徴とする電動パワーステアリング装置。 - 前記電流指令値演算手段は、通常のd軸電流指令値に対して、前記温度検出手段で検出又は推定した温度が高いほど小さくなる温度感応ゲインを乗じることで、当該温度が高いほど、前記d軸電流指令値を小さく演算することを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記電流指令値演算手段は、進角制御によって前記d軸電流指令値を演算するものであって、前記温度検出手段で検出又は推定した温度が高いほど、前記進角制御における進角を小さく演算することを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記電流指令値演算手段は、前記温度検出手段で検出又は推定した温度が所定温度以上であるとき、当該温度が高いほど、前記d軸電流指令値を小さく演算することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
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