JP2010167878A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 3相モータの1相が通電不良となり2相通電駆動する場合に、エネルギーロスを抑えつつモータを良好に回転させる。
【解決手段】 2相通電指令部107は、電動モータ20への通電不良が1相だけ発生しているときに、通電不良が発生していない2相を使って電気角θeの変化に対して変動しない目標アシストトルクを発生するための理論上の2相通電用電流演算式と、電動モータ20の上限電流を規定する最大電流と、2相通電用電流演算式における電気角θeを進める進角量θaとに基づいて、2相通電用の指令電流を演算する。進角量設定部110は、電気角θeと操舵トルクTrとに基づいて、進角量θaを設定する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、運転者の操舵操作に基づいて3相モータを駆動制御して操舵アシストトルクを発生する電動パワーステアリング装置に関する。
従来から、電動パワーステアリング装置は、運転者が行った操舵操作に基づいて電動モータの目標アシストトルクを演算し、この目標アシストトルクが得られるように、電動モータの通電量を制御している。電動モータとして3相モータを使用した電動パワーステアリング装置も一般化されている。3相モータを使用した場合、電力供給系統の断線、モータ駆動回路のスイッチング素子の故障等により、3相のうちの1相に通電不良が発生したケースであっても、正常な2相を使ってモータを駆動することができる。電動パワーステアリング装置における電動モータの2相通電駆動技術は、例えば、特許文献1に提案されている。
特開2008−211911号公報
しかしながら、特許文献1に提案された電動パワーステアリング装置では、2相通電駆動時において、正弦波電流を通電不良が発生していない2相に流すため、モータ電気角の変化に伴ってトルクが大きく変動してしまう。これに対して、モータ電気角の変化に対して一定のトルクを発生するための2相通電用電流演算式を用いて通電を制御すれば理論的にはトルクが一定となる。この2相通電用電流演算式は、例えば、次のように表すことができる。
Figure 2010167878
この例は、W相が通電不良となったときのV相の電流演算式であり、Tは目標アシストトルク、e0はトルク定数、θeはモータ電気角を表す。また、U相は、V相を反転したもの(Iu=−Iv)となる。
この2相通電用電流演算式によれば、電流値が特定の電気角において無限大になるため、各相の電流を予め設定した最大電流値以下に制限する必要がある。従って、電流波形は、図4(a)に示すようになる。このように最大電流の制限が加わると、図4(b)に示すように、特定の電気角領域においてモータトルク不足が発生する。この結果、モータを良好に回転させることができない。
本発明の目的は、上記問題に対処するためになされたもので、3相モータの1相が通電不良となり2相通電駆動する場合であっても、モータを良好に回転させることにある。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、ステアリング機構に設けられて操舵アシストトルクを発生する3相のモータと、操舵ハンドルに入力される操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、前記操舵トルク検出手段により検出された操舵トルクに基づいて目標アシストトルクを設定し、前記目標アシストトルクが得られるように前記モータの通電を制御するモータ制御手段とを備えた電動パワーステアリング装置において、
前記モータ制御手段は、前記モータの電気角を検出する電気角検出手段と、前記モータの各相への通電不良の発生を検出する通電不良検手段と、前記モータへの通電不良が1相だけ発生しているときに、通電不良が発生していない2相を使って前記モータの電気角の変化に対して変動しない目標アシストトルクを発生させるための理論上の2相通電用電流演算式と、前記モータの上限電流を規定する最大電流と、前記2相通電用電流演算式における前記モータの電気角を進める進角量とに基づいて、2相通電用の指令電流を演算し、演算した2相通電用の指令電流にて通電不良の発生していない2相に通電して前記モータを駆動制御する2相通電制御手段と、前記電気角検出手段により検出された電気角と前記操舵トルク検出手段により検出された操舵トルクとに基づいて、前記2相通電用電流演算式における前記モータの電気角を進める進角量を設定する進角量設定手段とを備えたことにある。
本発明においては、モータ制御手段により3相モータの通電を制御することにより操舵ハンドルに入力された操舵トルクに応じた操舵アシストトルクを発生させる。3相モータとしては、3相ブラシレスモータが好適である。モータ制御手段は、3相モータへの通電不良が発生した場合でも、正常な2相を使ってモータ駆動できるように、電気角検出手段、通電不良検手段、2相通電制御手段、進角量設定手段を備えている。
通電不良検出手段によりモータへの通電不良が1相だけ発生していることが検出された場合、2相通電制御手段が正常な2相を使ってモータを駆動制御する。この場合、2相通電制御手段は、モータの電気角の変化に対して変動しない目標アシストトルクを発生させるための理論上の2相通電用電流演算式と、モータの上限電流を規定する最大電流(最大電流値)と、2相通電用電流演算式におけるモータの電気角を進める進角量とに基づいて、2相通電用の指令電流(指令電流値)を演算し、演算した2相通電用の指令電流にて通電不良の発生していない2相に通電してモータを駆動制御する。
2相通電用電流演算式は、電気角検出手段により検出されるモータの電気角に応じた2相通電用の電流を設定するが、特定の電気角に接近するとき電流の大きさ(絶対値)が急激に増加し、その特定の電気角を通過すると、符号(電流の向き)が反転して電流の大きさ(絶対値)が減少していく。最大電流は、モータおよびモータ駆動回路を保護するために設定されている。従って、特定の電気角近傍領域において、2相通電用の電流は、その大きさ(絶対値)が最大電流に制限される。この電流制限により、モータで発生できるトルクが減少する。また、ステアリング機構には、操舵方向に対してタイヤを戻そうとする反対方向の力となる反力が発生する。従って、通電方向が反転する電気角近傍領域においてモータトルクが不足し、その位置からモータを回転できなくなるおそれがある。このため、運転者の大きな操舵力が必要となる。そこで、本発明においては、2相通電用電流演算式におけるモータの電気角を進めて指令電流を演算する。つまり、2相通電用電流演算式は、モータの電気角からモータに流す電流を求める演算式であるが、2相通電制御手段は、電気角検出手段により検出した実電気角をモータ回転方向に進角量だけ進めた電気角に対する電流を2相通電用電流演算式から演算し、最大電流制限を加えて指令電流を算出する。
2相通電用電流演算式における電気角を進めた場合、モータを電気角が増加する方向に駆動させるケースを考えると、電気角に対するモータトルク特性は、指令電流の通電方向が反転する特定電気角(進角量だけ進められている)より小さい電気角の位置でトルクが増加し、特定電気角を越えると、急激にトルクが減少して逆方向のトルクが発生するようになる。そして、電気角が大きくなるにしたがって逆方向のトルクが弱まり、正方向のトルクに転じて徐々に増大していく。従って、特定電気角を挟んで、反力よりも大きな操舵アシストトルクを発生できる過アシスト領域と、操舵方向に対して反対方向にトルクを発生する逆アシスト領域とが形成される。また、逆アシスト領域よりも電気角の大きくなる領域には、電気角の増加にしたがって操舵方向にトルクを増大させて過アシスト領域に至る不足アシスト領域が形成される。
こうしたモータ特性においては、モータが不足アシスト領域で止まった場合、操舵方向に対してタイヤを戻そうとする反力によりモータが逆方向に回転する。そして、電気角が逆アシスト領域となる回転位置にまで戻されると、モータ自身の発生する逆方向のトルクにより、その回転位置をさらに過アシスト領域にまで逆回転させる。過アシスト領域にまで戻されると、モータは、反力に打ち勝つ大きな操舵方向のトルクを発生させ操舵方向に回転し、過アシスト領域で蓄えた運動エネルギーにより、逆アシスト領域と不足アシスト領域とを通過することができる。これにより、2相を使ってモータを良好に回転させることができる。
このように、2相通電駆動時においては、過アシスト領域と逆アシスト領域とを設けることによりモータトルクが不足する電気角領域が存在してもモータを回転させることができるが、できるだけエネルギーロスを小さくしたい。エネルギーロスを小さくするためには、逆アシスト領域を必要以上に設けないようにすればよい。つまり、モータがスムーズに回転できなかったときにだけ逆アシスト領域を設けるようにすればよい。
モータの電気角を進めた場合、指令電流の通電方向が反転する特定電気角を越えたところが逆アシスト領域となるため、その特定電気角近傍領域における進角量を小さくすれば逆アシスト領域を小さくする(無くすことも含む)ことができる。しかし、逆アシスト領域が小さくなった場合、モータがスムーズに回転できなくなるおそれがある。モータがスムーズに回転できない場合には、運転者が操舵ハンドルに入力する操舵トルクが増加するため、操舵トルクの増加に基づいて進角量を増大側に調整すれば、逆アシスト領域を拡大してモータをスムーズに回転させることができる。
そこで、本発明においては、進角量設定手段が、電気角検出手段により検出された電気角と操舵トルク検出手段により検出された操舵トルクとに基づいて、2相通電用電流演算式におけるモータの電気角を進める進角量を設定する。例えば、進角量設定手段は、2相通電用電流演算式の電流の通電方向が反転する特定電気角近傍領域における進角量を他の電気角領域に比べて小さく設定し、かつ、操舵トルクが増大するにしたがって前記設定された進角量を増大する側に補正するとよい。この場合、補正された進角量を予め設定された最大進角量以下に制限するとよい。尚、2相通電用電流演算式は、通電不良の相に応じた位相にて設定されるため、特定の電気角もそれに応じて異なる。
この結果、本発明によれば、3相モータの1相が通電不良となり2相通電駆動する場合であっても、エネルギーロスを少なくしつつモータを良好に回転させることができる。
本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の概略構成図である。 アシストECUのマイクロコンピュータの処理を表す機能ブロック図である。 3相電流波形と、1相断線時のモータトルク特性を表すグラフである。 2相通電用電流演算式を用いた電流波形と、モータトルク特性を表すグラフである。 2相通電用電流演算式を用いた電流波形を、進角を与えた場合と進角を与えない場合とで比較するグラフである。 2相通電用電流演算式に進角を与えた場合のモータトルク特性を表すグラフである。 加速区間と減速区間とを説明するためのグラフである。 トルクフィードバックにより減少するモータトルク特性の変化を表すグラフである。 逆アシスト領域を使って過アシスト領域に逆回転させる動作を説明するグラフである。 基本進角量設定マップを表すグラフである。 基本進角量設定マップで設定された進角量を与えたときのモータトルク特性を表すグラフである。 進角量ゲイン設定マップを表すグラフである。 操舵トルクTrが基準トルクT1以上となる場合の、進角量特性を表すグラフである。 進角量ゲインKが1未満となる場合の、進角量特性を表すグラフである。 進角量ゲインKがゼロとなる場合の、進角量特性を表すグラフである。
以下、本発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置について図面を用いて説明する。図1は、同実施形態に係る車両の電動パワーステアリング装置の概略構成を表している。
この電動パワーステアリング装置は、操舵ハンドル11の操舵操作により転舵輪を転舵するステアリング機構10と、ステアリング機構10に組み付けられ操舵アシストトルクを発生する電動モータ20と、電動モータ20を駆動するためのモータ駆動回路30と、電動モータ20の作動を制御する電子制御装置100とを主要部として備えている。以下、電子制御装置100をアシストECU100と呼ぶ。
ステアリング機構10は、操舵ハンドル11の回転操作により左右前輪FWL,FWRを転舵するための機構で、操舵ハンドル11を上端に一体回転するように接続したステアリングシャフト12を備える。このステアリングシャフト12の下端には、ピニオンギヤ13が一体回転するように接続されている。ピニオンギヤ13は、ラックバー14に形成されたラック歯と噛み合って、ラックバー14とともにラックアンドピニオン機構を構成する。ラックバー14の両端には、タイロッド15L,15Rを介して左右前輪FWL,FWRのナックル(図示略)が操舵可能に接続されている。左右前輪FWL,FWRは、ステアリングシャフト12の軸線回りの回転に伴うラックバー14の軸線方向の変位に応じて左右に操舵される。
ラックバー14には、電動モータ20が組み付けられている。電動モータ20は、3相ブラシレスモータが用いられる。電動モータ20の回転軸は、ボールねじ機構16を介してラックバー14に動力伝達可能に接続されていて、その回転により左右前輪FWL,FWRに転舵力を付与して操舵操作をアシストする。ボールねじ機構16は、減速機および回転−直線変換器として機能するもので、電動モータ20の回転を減速するとともに直線運動に変換してラックバー14に伝達する。
ステアリングシャフト12には、操舵トルクセンサ21が設けられる。操舵トルクセンサ21は、例えば、ステアリングシャフト12の中間部に介装されたトーションバー(図示略)の上端部および下端部にそれぞれ組み付けられたレゾルバ(図示略)を備え、上下のレゾルバの検出角度差を使ってトーションバーのねじれ角度を表す検出信号を出力する。これにより操舵ハンドル11の回動操作によってステアリングシャフト12に作用する操舵トルクが検出される。この操舵トルクセンサ21から出力される信号により検出される操舵トルクの値を、以下、操舵トルクTrと呼ぶ。操舵トルクTrは、正負の値により操舵ハンドル11の操作方向が識別される。本実施形態においては、操舵ハンドル11の右方向への操舵時における操舵トルクTrを正の値で、操舵ハンドル11の左方向への操舵時における操舵トルクTrを負の値で示す。従って、操舵トルクTrの大きさは、その絶対値の大きさとなる。
また、ステアリングシャフト12には、操舵ハンドル11の回転角度を検出する操舵角センサ23が設けられる。この操舵角センサ23から出力される信号により検出される操舵角値を、以下、操舵角θhと呼ぶ。操舵角θhは、正負の値により操舵ハンドル11の操作方向が識別される。本実施形態においては、操舵ハンドル11の中立位置から右方向の操舵角θhを正の値で、左方向の操舵角θhを負の値で示す。従って、操舵角θhの大きさは、その絶対値の大きさとなる。また、操舵角θhを時間微分した値は、操舵ハンドル11の操舵速度ωとして利用される。
電動モータ20には、回転角センサ22が設けられる。この回転角センサ22は、電動モータ20内に組み込まれ、電動モータ20の回転子の回転角度位置に応じた検出信号を出力する。この回転角センサ22により検出される回転角値を、以下、モータ回転角θmと呼ぶ。モータ回転角θmは、電動モータ20の電気角θeの計算に利用される。
モータ駆動回路30は、MOS−FET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)からなる6個のスイッチング素子31〜36により3相インバータ回路を構成したものである。具体的には、第1スイッチング素子31と第2スイッチング素子32とを直列接続した回路と、第3スイッチング素子33と第4スイッチング素子34とを直列接続した回路と、第5スイッチング素子35と第6スイッチング素子36とを直列接続した回路とを並列接続し、各直列回路における2つのスイッチング素子間(31−32,33−34,35−36)から電動モータ20への電力供給ライン37を引き出した構成を採用している。
モータ駆動回路30には、電動モータ20に流れる電流を検出する電流センサ38が設けられる。この電流センサ38は、各相(U相,V相,W相)ごとに流れる電流をそれぞれ検出し、その検出した電流値に対応した検出信号をアシストECU100に出力する。以下、この測定された3相の電流値をモータ電流Iuvwと総称し、それぞれの相電流値をIu,Iv,Iwにて表す。
モータ駆動回路30の各スイッチング素子31〜36は、それぞれゲートがアシストECU100に接続され、アシストECU100から出力されるPWM制御信号によりデューティ比が制御される。これにより電動モータ20の駆動電圧が目標電圧に調整される。尚、図中に回路記号で示すように、スイッチング素子31〜36を構成するMOSFETには、構造上ダイオードが寄生している。
また、モータ駆動回路30から電動モータ20への電力供給ライン37には、各相毎に独立して開閉可能なスイッチを備えた遮断回路39が設けられる。この遮断回路39は、アシストECU100からの信号により、各相ごとに設けられたスイッチが独立して開閉制御される。
アシストECU100は、CPU,ROM,RAM等からなるマイクロコンピュータを主要部として構成される。アシストECU100は、操舵トルクセンサ21、操舵角センサ23、回転角センサ22、電流センサ38、および、車速を検出する車速センサ25を接続し、操舵トルクTr、操舵角θh、モータ回転角θm、モータ電流Iuvw、車速vを表す検出信号を入力する。そして、入力した検出信号に基づいて、運転者の操舵操作に応じた最適な操舵アシストトルクが得られるように電動モータ20に流す指令電流(目標電流)を演算し、その指令電流が流れるようにモータ駆動回路30の各スイッチング素子31〜36のデューティ比を制御する。
また、アシストECU100は、電動モータ20へ電力供給する通電路における不良(通電不良)を各相ごとに区別して検出し、1相だけの通電不良を検出したとき、正常な2相を使って電動モータ20を駆動する2相通電制御を行う機能を備えている。アシストECU100の機能については後述する。
次に、電動パワーステアリング装置の電源供給系統について説明する。電動パワーステアリング装置は、車載電源装置80から電源供給される。車載電源装置80は、定格出力電圧12Vの一般的な車載バッテリである主バッテリ81と、エンジンの回転により発電する定格出力電圧14Vのオルタネータ82とを並列接続して構成される。車載電源装置80には、電源供給元ライン83と接地ライン84が接続される。電源供給元ライン83は、制御系電源ライン85と駆動系電源ライン86とに分岐する。制御系電源ライン85は、アシストECU100に電源供給するための電源ラインとして機能する。駆動系電源ライン86は、モータ駆動回路30とアシストECU100との両方に電源供給する電源ラインとして機能する。
制御系電源ライン85には、イグニッションスイッチ87が接続される。駆動系電源ライン86には、主電源リレー88が接続される。この主電源リレー88は、アシストECU100からの制御信号によりオンして電動モータ20への電力供給回路を形成するものである。制御系電源ライン85と駆動系電源ライン86とは、連結ライン90により連結されるが、ダイオード89、91により、連結ライン91を介して駆動系電源ライン86から制御系電源ライン85には電源供給できるが、制御系電源ライン85から駆動系電源ライン86には電源供給できないような回路構成となっている。駆動系電源ライン86および接地ライン84は、モータ駆動回路30の電源入力部に接続される。また、接地ライン84は、アシストECU100の接地端子にも接続される。
次に、アシストECU100の機能について図2を用いて説明する。図2は、アシストECU100のマイクロコンピュータのプログラム制御により処理される機能を表す機能ブロック図である。アシストECU100は、電動モータ20の各相への通電不良が検出されているか否かに応じてモータ制御形態を切り替える。電動モータ20への通電が3相すべて正常であれば3相を使ったモータ制御(以下、3相通電制御と呼ぶ)を行い、1相の通電不良が検出されているときに通電不良が検出されていない2相を使ったモータ制御(以下、2相通電制御と呼ぶ)を行うように切り替える。また、2相以上の通電不良が検出されているときにはモータ駆動不能であるためモータ制御を停止する。
図2に示すように、アシストECU100は、アシスト電流指令部101を備えている。アシスト電流指令部101は、操舵トルクセンサ21から出力される操舵トルクTr及び車速センサ25から出力される車速vを入力して、基本アシストマップを参照することにより基本アシストトルクTasを計算する。基本アシストマップは、操舵トルクTrの増加にしたがって増加するとともに車速vの増加にしたがって減少する基本アシストトルクTasを設定記憶したものである。また、アシスト電流指令部101は、操舵角センサ23により検出される操舵角θhを入力し、基本アシストトルクTasに対する補償値Trtを計算する。補償値Trtは、例えば、操舵角θhに比例して大きくなるステアリングシャフト12の基本位置への復帰力と、操舵角θhを時間微分した操舵速度ωに比例して大きくなるステアリングシャフト12の回転に対する抵抗力に対応した戻しトルクとの和として計算される。アシスト電流指令部101は、計算した基本アシストトルクTasと補償値Trtの和を目標アシストトルクT*として設定し、この目標アシストトルクT*をトルク定数で除算することにより、d−q座標系におけるq軸指令電流Iq*を算出する。
アシストECU100は、3相通電制御を行う場合には、電動モータ20の回転方向をq軸とするとともに回転方向と直交する方向をd軸とするd−q座標系で記述されるベクトル制御によって電動モータ20の回転を制御する。d軸電流は、電動モータ20のトルクを発生させるように働かず、弱め界磁制御に使用される。本実施形態においては、アシスト電流指令部101は、d軸指令電流Id*をゼロ(Id*=0)に設定する。
このように計算されたq軸指令電流Iq*とd軸指令電流Id*は、フィードバック制御部102に出力される。フィードバック制御部102は、q軸指令電流Iq*からq軸実電流Iqを減算した偏差ΔIqを算出し、この偏差ΔIqを使った比例積分制御によりq軸実電流Iqがq軸指令電流Iq*に追従するようにq軸指令電圧Vq*を計算する。同様に、d軸指令電流Id*からd軸実電流Idを減算した偏差ΔIdを算出し、この偏差ΔIdを使った比例積分制御によりd軸実電流Idがd軸指令電流Id*に追従するようにd軸指令電圧Vd*を計算する。
q軸実電流Iqおよびd軸実電流Idは、電動モータ20のコイルに実際に流れた3相電流の検出値Iu,Iv,Iwをd−q座標系の2相電流に変換したものである。この3相電流Iu,Iv,Iwからd−q座標系の2相電流Id,Iqへの変換は、3相/2相変換部103によって行われる。3相/2相変換部103は、回転角変換部104から出力されるモータ電気角θeを入力し、そのモータ電気角θeに基づいて、電流センサ38から出力される3相電流Iu,Iv,Iwをd−q座標系の2相電流Id,Iqに変換する。回転角変換部104は、回転角センサ22から出力される回転角θmに基づいて、モータ電気角θeを算出する電気角検出手段である。以下、モータ電気角θeを、単に、電気角θeと呼ぶ。
フィードバック制御部102により算出されたq軸指令電圧Vq*とd軸指令電圧Vd*は、2相/3相座標変換部105に出力される。2相/3相座標変換部105は、回転角変換部104から出力される電気角θeに基づいて、q軸指令電圧Vq*とd軸指令電圧Vd*を3相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*に変換して、その変換した3相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*をPWM信号発生部106に出力する。PWM信号発生部106は、3相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*に対応したPWM制御信号をモータ駆動回路30のスイッチング素子31〜36に出力する。これにより電動モータ20が駆動され、目標アシストトルクT*に追従した操舵アシストトルクがステアリング機構10に付与される。
次に、2相通電制御について説明する。電動モータ20は、通常、図3(a)に示すように、電気角で120deg位相をずらした正弦波状の電流を3相に通電する。この場合には、電気角の変化に対して一定のモータトルクが得られる。しかし、3相のうちの1相が断線等により通電不良を生じると、図3(b)に示すように、モータトルクは電気角に応じて大きく変動する。このため、操舵操作に引っ掛かりが発生する。
そこで、2相通電時には、モータ電気角の変化に対してモータトルクが一定となる2相通電用電流演算式を用いて指令電流を演算し、演算された指令電流で2相に通電すれば、理論的には一定のモータトルクが得られる。この2相通電用電流演算式は、次のように表すことができる。
Figure 2010167878
この例は、W相が通電不良となったときのV相の電流演算式であり、e0はトルク定数を表す。また、U相は、V相を反転したもの(Iu=−Iv)となる。
この2相通電用電流演算式によれば、電気角θeが90degあるいは270degとなる回転位置において2相通電用の電流が無限大となるが、電動モータ20やモータ駆動回路30を過電流から保護するために、アシストECU100には、電動モータ20に流すことのできる最大電流が予め設定されている。従って、2相通電時における指令電流の電流波形は、図4(a)に示すようになる。図中、破線で囲んだ部分が電流制限の働いた領域である。尚、図4(a)は、1相の電流波形を表したもので、もう一方の相の電流波形は、この波形の符号を反転したものとなる。
このような電流を電動モータ20に通電した場合、電動モータ20で発生するトルクは図4(b)に示すように、電流制限が働いた領域において減少してしまう。従って、その電気角近傍領域においてモータトルクが不足し、その位置から電動モータ20を回転できなくなるおそれがある。このため、操舵操作に引っ掛かりが発生する。
そこで、本実施形態においては、電気角θeを後述する進角量設定部110にて設定した進角量θaだけモータ回転方向に進めて指令電流を演算する。つまり、2相通電用の電流を電気角θeに対して進角量θaだけ前だしするように2相通電用電流演算式の電気角θeを補正して演算し、この演算して得られた電流に最大電流制限を付加して指令電流を算出する。電気角を進めた指令電流は、図5に実線にて示すような波形となる。この例は、進角量θaを約20degに設定している。
このように電気角を進めて指令電流を設定すると、モータトルクは、図6に示すような特性となる。図中において、T0は、予め設定した走行条件下における、操舵方向とは反対方向にタイヤを戻そうとする反力を表している。従って、モータトルクが反力T0を越えれば、運転者の操舵力なしでも操舵可能であり、モータトルクが反力T0に満たなければ、その不足分だけ運転者の操舵力が必要となる。この図からわかるように、モータトルクが反力T0を越える電気角領域と、反力T0に満たない電気角領域とが存在する。以下、モータトルクが反力T0を越える電気角領域を過アシスト領域Aと呼び、反力T0に満たない電気角領域を不足アシスト領域Bと呼ぶ。
また、不足アシスト領域B内には、モータトルクが操舵方向と逆方向に働く電気角領域も存在する。以下、不足アシスト領域Bを、モータトルクが操舵方向と同じ方向に働く電気角領域と、逆方向に働く電気角領域とに分けて説明する場合には、前者の電気角領域を不足アシスト正領域B1と呼び、後者の電気角領域を逆アシスト領域B2と呼ぶ。過アシスト領域Aから逆アシスト領域B2に切り替わるポイントは、電動モータ20の相電流の符号が反転する回転位置(電気角)となる。この例では、(90deg−θa)および(270deg−θa)の電気角において過アシスト領域Aから逆アシスト領域B2に切り替わる。
本実施形態においては、モータトルク特性に、過アシスト領域Aと逆アシスト領域B2とを設けることにより、これらの領域A,B2を利用して引っ掛かりなく電動モータ20を回転できるようにしている。以下、その理由を説明する。
電動モータ20は、図7に示す回転方向に回転している場合、過アシスト領域Aにおいて加速していき運動エネルギーを蓄える。そして、不足アシスト領域Bに入ると、今度は反力により減速していく。つまり、過アシスト領域Aが加速区間となり、不足アシスト領域Bが減速区間となる。この場合、過アシスト領域Aにおいて蓄えた運動エネルギーが、不足アシスト領域Bで失う運動エネルギーよりも大きければ、電動モータ20は、引っ掛かりなく回転することができる。
ただし、操舵速度(モータの回転速度)が遅い場合などでトルクフィードバックが応答してしまった場合には、図8に示すように、モータトルクが減少する。このため、過アシスト領域Aが減少し、過アシスト領域Aで十分に加速することができなくなる。十分な加速が得られないと、不足アシスト領域Bにおいてモータトルクと操舵力(運転者が操舵ハンドルに加えた操舵力)との合計が反力T0より小さい場合には、不足アシスト領域Bを通過しきれなくなり、反力により電動モータ20が途中で逆回転する。例えば、図9に示す不足アシスト正領域B1の電気角θsで停止し、その位置から矢印方向に逆戻りする。
この場合、電動モータ20は、必ず逆アシスト領域B2にまで戻り、そこで操舵方向とは逆方向となるトルクを発生させ、そのトルクと反力との合力により、そのまま過アシスト領域A内にまで一気に戻る。これにより、電動モータ20は、過アシスト領域Aにおいて正回転方向にトルクを発生させて加速を開始する。つまり、逆アシスト領域B2を使って電動モータ20の回転位置(電気角θe)を過アシスト領域Aにまで戻し、過アシスト領域Aにおいて再度加速させる。そして、過アシスト領域Aを通過中に蓄えた運動エネルギーを使って不足アシスト領域Bを通過する。これにより、引っ掛かりを発生させることなく電動モータ20を操舵方向に回転させることができる。尚、過アシスト領域Aに戻って再加速させても不足アシスト領域Bを通過できなかったときには、再度、逆アシスト領域B2を介して過アシスト領域Aに戻るため、上述した動作を繰り返すことにより不足アシスト領域Bを通過できるようになる。また、電動モータ20が正逆回転を繰り返しても、電動モータ20とステアリング機構10とはボールねじ機構16により連結されており電動モータ20の回転した角度に対してステアリングシャフト12の回転する角度が非常に小さく、また、その微少回転がステアリングシャフト12に設けられたトーションバーにより吸収されるため、ハンドル操作に与える影響は殆どない。
ところで、電動モータ20の2相通電時においては、上述したように電気角を進めることにより過アシスト領域Aと逆アシスト領域B2とを設けて電動モータ20を回転させることができるが、できるだけエネルギーロスを小さくしたい。エネルギーロスを小さくするためには、逆アシスト領域B2を必要以上に設けないようにすればよい。そこで、本実施形態においては、電動モータ20がスムーズに回転できなかったときにだけ逆アシスト領域を設けるようにするために進角量θaを設定する進角量設定部110を備えている。
進角量設定部110は、図2に示すように、回転角変換部104から出力される電気角θeに基づいて基本進角量θa0を設定する基本進角量設定部111と、操舵トルクセンサ21により検出される操舵トルクTrに基づいて進角量ゲインKを設定する進角量ゲイン設定部112と、基本進角量θa0に進角量ゲインKを乗じて進角量θaを設定する乗算部113とを備え、後述する通電不良検出部108から通電不良検出信号を入力したときに作動を開始する。
基本進角量設定部111は、図10に示すような基本進角量設定マップを記憶している。基本進角量設定マップは、電気角θeに対する基本進角量θa0を設定したもので、2相通電用電流演算式の電流の通電方向(符号)が反転する特定電気角近傍領域における進角量を他の電気角領域に比べて小さく設定するものである。2相通電用電流演算式の電流の通電方向(符号)が反転する特定電気角を越えると過アシスト領域から逆アシスト領域に入る。従って、この特定電気角近傍領域での進角量を小さくすることで、図11のトルク特性に示すように、過アシスト領域を存在させたまま逆アシスト領域を小さくすることができる。尚、基本進角量設定マップは、通電不良の相ごとに、その位相をずらして設定される。
逆アシスト領域を小さくすると電動モータ20がスムーズに回転できないときがある。そうした場合には、運転者の操舵操作力の負担が増大し、操舵トルクセンサ21により検出される操舵トルクTrが増大する。そこで、進角量設定部110は、進角量ゲイン設定部112にて操舵トルクTrに応じた進角量ゲインKを設定し、乗算部113にて進角量ゲインKを基本進角量θa0に乗算することにより進角量θaを求める。進角量ゲイン設定部112は、図12に示すようなゲイン設定マップを記憶している。ゲイン設定マップは、操舵トルクTrが基準トルクT1より小さいときには操舵トルクTrの増加にしたがってゼロから増加する進角量ゲインKを設定し、操舵トルクTrが基準トルクT1以上となるときには一定の進角量ゲインK(=Kmax)を設定する。従って、進角量設定部110は、2相通電用電流演算式の電流の通電方向(符号)が反転する特定電気角近傍領域における進角量を他の電気角領域に比べて小さく設定し、かつ、操舵トルクTrが増加するにしたがって進角量θaが増加するように補正するものである。
この場合、乗算部113は、進角量θaが最大進角量θamaxを越えないように制限する。本実施形態においては、この最大進角量θamaxを基本進角量設定マップにおける進角量θa0の最大値と同じ値に設定している。
例えば、操舵トルクTrが基準トルクT1以上である場合には、最大の進角量ゲインKmax(>1)が基本進角量θa0に乗算されるため、図13に示すように、進角量θaは電気角θeに関わらず一定値θamaxに設定される。また、操舵トルクTrが基準トルクT1より小さく、かつ、進角量ゲインKが1未満の場合には、図14に示すように、電気角θeに対する進角量θaの特性が進角量θaが小さくなる側に設定される。また、操舵トルクTrがゼロの場合には、進角量ゲインKがゼロであるため、図15に示すように、進角量θaは電気角θeに関わらずゼロに設定される。
尚、進角量θaは、操舵トルクTrが負の方向(左方向)に働く場合には、進角量θaも負の値となる。つまり、電気角が増加する側に電動モータ20を回転させるときには、正の進角量θaを設定し、電気角が減少する側に電動モータ20を回転させるときには、負の進角量θaを設定する。これにより、電動モータ20を回転させる方向に電気角を進めることができる。
次に、2相通電制御を行うアシストECU100の機能について、図2を用いて説明する。アシストECU100は、2相通電指令部107、通電不良検出部108を備えている。2相通電指令部107は、通電不良検出部108から1相の通電不良検出信号を入力したときに作動を開始する。
通電不良検出部108は、PWM信号発生部106の出力するPWM制御信号と、操舵角センサ23の出力する操舵角θhと、電流センサ38の出力する3相電流Iu,Iv,Iwとを入力して、電動モータ20への通電不良を相別に区別して検出する。電動モータ20への通電不良とは、電動モータ20に良好に電力供給できない不良を意味し、例えば、モータ駆動回路30内の不良(特に、スイッチング素子31〜36の接点不良)、モータ駆動回路30から電動モータ20への電力供給ライン37の断線等に起因して発生する不良である。
通電不良検出部108は、例えば、電流センサ38により検出される相電流が予め設定した基準電流より小さいときに、操舵角θhを時間微分して得られる操舵速度ωの大きさ(絶対値)が基準速度よりも小さく、かつ、PWM制御信号により特定されるデューティ比(オンデューティ比)が基準デューティ比よりも大きいか否かを判断する。そして、操舵速度|ω|が基準速度よりも小さく、かつ、デューティ比が基準デューティ比よりも大きい場合には、その相に通電不良が発生していると判定する。つまり、操舵速度|ω|が小さく逆起電力の発生が少ない状態で、モータ駆動回路30に出力したPWM制御信号により本来流れるはずの相電流が流れない場合に通電不良と判定する。
通電不良検出部108は、こうした通電不良判定を各相毎に周期的に行い、通電不良が検出されていないあいだは通電正常信号を出力する。そして、通電不良を検出した場合には、通常正常信号に代えて通電不良相を特定する通電不良検出信号を出力する。また、通電不良検出部108は、通電不良を検出した場合、電動モータ20の電力供給ライン37に設けた遮断回路39の通電不良相に対応するスイッチにオフ信号を出力して、通電不良相の通電を遮断する。以下、通電不良検出部108の出力する信号(通電正常信号および通電不良相を特定する通電不良検出信号)を通電判定信号と呼ぶ。
2相通電指令部107は、通電不良検出部108から1相の通電不良検出信号を入力すると、2相通電用電流演算式と、予め設定された最大電流と、進角量設定部110により設定された進角量θaとに基づいて、2相通電用の指令電流Iu*,Iv*,Iw*を計算する。この場合、通電不良相の指令電流は計算しない。2相通電用電流演算式は、アシスト電流指令部101が出力するq軸指令電流q*と、回転角変換部104が出力する電気角θeとを使って次式のように表される。
Figure 2010167878
この例は、W相が通電不良となったときのV相の2相通電用電流演算式である。U相は、V相を反転したもの(Iu=−Iv)となる。また、2相通電用電流演算式は、通電不良相に応じて位相が120degずれたものとなる。
このように計算された2相通電用の指令電流Iu*,Iv*,Iw*(3相のうち正常相となる2相に流す指令電流)は、2相通電用フィードバック制御部109に出力される。2相通電用フィードバック制御部109は、通電不良検出部108から1相の通電不良検出信号を入力すると作動を開始する。このとき通電不良検出信号は、フィードバック制御部102にも出力される。フィードバック制御部102は、通電不良検出信号を入力すると、その作動を停止する。従って、1相の通電不良が検出された場合には、d−q座標系による電流フィードバック制御に代わって、2相通電用の電流フィードバック制御が開始される。
2相通電用フィードバック制御部109は、電流センサ38から出力される3相電流Iu,Iv,Iw(3相のうち正常相となる2相に流れる実電流)を入力し、2相通電用の指令電流Iu*,Iv*,Iw*(3相のうち正常相となる2相分の指令電流)との偏差ΔIu,ΔIv,ΔIwを算出し、この偏差ΔIu,ΔIv,ΔIwを使った比例積分制御により3相電流Iu,Iv,Iwが2相通電用の指令電流Iu*,Iv*,Iw*に追従するように2相通電用の指令電圧Vu*,Vv*,Vw*(3相のうち正常相となる2相分の指令電圧)を算出する。
2相通電用フィードバック制御部109は、算出した2相通電用の指令電圧Vu*,Vv*,Vw*をPWM信号発生部106に出力する。PWM信号発生部106は、2相通電用の指令電圧Vu*,Vv*,Vw*に対応したPWM制御信号をモータ駆動回路30のスイッチング素子31〜36に出力する。これにより電動モータ20が駆動され、目標アシストトルクT*に追従した操舵アシストトルクがステアリング機構10に付与される。この場合、2相通電用電流演算式の電気角θeを進角量θaだけ進めているため、電動モータ20の回転が引っかからず、良好な操舵アシストを行うことができる。
以上説明した本実施形態の電動パワーステアリング装置によれば、3相の電動モータ20の1相の通電不良が発生した場合であっても、進角量θaを与えた2相通電制御を行うことにより、電動モータ20を良好に回転させることができる。これにより、2相通電制御時における操舵操作フィーリングの低下を抑制することができる。また、2相通電用電流演算式の電流の通電方向が反転する特定電気角近傍領域における進角量を他の電気角領域に比べて小さく設定し、かつ、操舵トルクTrが増大するにしたがって進角量を増大する側に補正することにより逆アシスト領域を必要以上に設けないようにしているため、エネルギーロスを低減することができる。
以上、本実施形態の電動パワーステアリング装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態においては、電動モータ20の発生するトルクをラックバー14に付与するラックアシスト式の電動パワーステアリング装置について説明したが、電動モータの発生するトルクをステアリングシャフト12に付与するコラムアシスト式の電動パワーステアリング装置であってもよい。
10…ステアリング機構、11…操舵ハンドル、12…ステアリングシャフト、20…電動モータ、21…操舵トルクセンサ、22…回転角センサ、23…操舵角センサ、25…車速センサ、30…モータ駆動回路、37…電力供給ライン、38…電流センサ、39…遮断回路、100…電子制御装置(アシストECU)、101…アシスト電流指令部、102…フィードバック制御部、103…3相/2相変換部、104…回転角変換部、105…2相/3相座標変換部、106…PWM制御信号発生部、107…2相通電指令部、108…通電不良検出部、109…2相通電用フィードバック制御部、110…進角量設定部、111…基本進角量設定部、112…進角量ゲイン設定部、113…乗算部。

Claims (1)

  1. ステアリング機構に設けられて操舵アシストトルクを発生する3相のモータと、
    操舵ハンドルに入力される操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、
    前記操舵トルク検出手段により検出された操舵トルクに基づいて目標アシストトルクを設定し、前記目標アシストトルクが得られるように前記モータの通電を制御するモータ制御手段と
    を備えた電動パワーステアリング装置において、
    前記モータ制御手段は、
    前記モータの電気角を検出する電気角検出手段と、
    前記モータの各相への通電不良の発生を検出する通電不良検手段と、
    前記モータへの通電不良が1相だけ発生しているときに、通電不良が発生していない2相を使って前記モータの電気角の変化に対して変動しない目標アシストトルクを発生させるための理論上の2相通電用電流演算式と、前記モータの上限電流を規定する最大電流と、前記2相通電用電流演算式における前記モータの電気角を進める進角量とに基づいて、2相通電用の指令電流を演算し、演算した2相通電用の指令電流にて通電不良の発生していない2相に通電して前記モータを駆動制御する2相通電制御手段と、
    前記電気角検出手段により検出された電気角と前記操舵トルク検出手段により検出された操舵トルクとに基づいて、前記2相通電用電流演算式における前記モータの電気角を進める進角量を設定する進角量設定手段と
    を備えたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
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