JP2008303297A - 水性分散体およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】有機溶剤および塩素原子含有ポリマーを含まないにもかかわらず、充分な付着性、とりわけポリプロピレン成形体に対する付着性と剥離強度が高く、得られる被膜の耐水性に優れる水性分散体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の水性分散体の製造方法は、特定のカルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)100質量部に対して、5〜20質量部の特定の酸変性ポリオレフィン(B)と、1〜10質量部のアニオン系界面活性剤(C)とを溶融混練して混練物を得る工程と、該混練物に、(A)成分および(B)成分に由来する酸を中和するのに必要な量に対して1〜2倍量のアルカリ成分(D)と、(A)成分100質量部に対して5〜40質量部の水(E)を添加した後、さらに溶融混練する工程とを有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、塗料、接着剤、プライマー等に使用できる水性分散体およびその製造方法に関する。
ポリオレフィン樹脂の成形体に対して塗装や接着を行う場合には、従来は、溶剤中に塩素化ポリオレフィンを含有するものが多く用いられてきた。しかしながら、近年の環境問題への配慮から、溶剤も塩素も含有しない塗料や接着剤、あるいは、プライマーの成分として使用できる水性の分散体が求められている。
そこで、特許文献1では、結晶化度が0%で、特定の組成、分子量、針入度、密度、軟化点を有する特定のポリオレフィンの水性分散体が提案されている。
また、特許文献2では、酸変性を施したポリオレフィンを使用することも提案されている。
特開平10−273570号公報 特開平6−73250号公報
しかしながら、従来の水性分散体は、溶剤型の塗料や接着剤ほどの付着性を発揮しなかった。特に、基材がポリプロピレン成形体である場合には、付着性が不足し、さらに、従来の水性分散体は、得られる被膜の耐水性も不充分であった。そのため、付着性や剥離強度および耐水性の一層の改良が望まれていた。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、有機溶剤および塩素原子含有ポリマーを含まないにもかかわらず、充分な付着性、とりわけポリプロピレン成形体に対する付着性と剥離強度が高く、得られる被膜の耐水性に優れる水性分散体およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を包含する。
[1] カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)100質量部に対して、5〜20質量部の酸変性ポリオレフィン(B)と、1〜10質量部のアニオン系界面活性剤(C)と、(A)成分および(B)成分に由来する酸を中和するのに必要な量に対して1〜2倍量のアルカリ成分(D)と、5〜40質量部の水(E)とを含有する水性分散体であって、
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)は、プロピレン単位を40〜70質量%、1−ブテン単位を20〜40質量%、エチレン単位を5〜25質量%含有し、質量平均分子量が100,000〜300,000、結晶化度が0.1〜10%、酸価が3〜80mg/gであり、
酸変性ポリオレフィン(B)は、エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物で変性されたオレフィン系重合体であり、質量平均分子量が1,200〜35,000、酸価が3〜80mg/gであることを特徴とする水性分散体。
[2] カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)100質量部に対して、5〜20質量部の酸変性ポリオレフィン(B)と、1〜10質量部のアニオン系界面活性剤(C)とを溶融混練して混練物を得る工程と、
該混練物に、(A)成分および(B)成分に由来する酸を中和するのに必要な量に対して1〜2倍量のアルカリ成分(D)と、(A)成分100質量部に対して5〜40質量部の水(E)を添加した後、さらに溶融混練する工程とを有する水性分散体の製造方法であって、
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)が、プロピレン単位を40〜70質量%、1−ブテン単位を20〜40質量%、エチレン単位を5〜25質量%含有し、質量平均分子量が100,000〜300,000、結晶化度が0.1〜10%、酸価が3〜80mg/gであり、
酸変性ポリオレフィン(B)が、エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物で変性されたオレフィン系重合体であり、質量平均分子量が1,200〜35,000、酸価が3〜80mg/gであることを特徴とする水性分散体の製造方法。
本発明の水性分散体は、有機溶剤および塩素原子含有ポリマーを含まないにもかかわらず、充分な付着性、とりわけポリオレフィン成形体に対する付着性が高く、得られる被膜の剥離強度や耐水性に優れる。
本発明の水性分散体の製造方法によれば、有機溶剤および塩素原子含有ポリマーを含まないにもかかわらず、充分な付着性、とりわけポリオレフィン成形体に対する付着性が高く、得られる被膜の耐水性に優れる水性分散体を製造できる。
「水性分散体」
本発明の水性分散体は、カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)と酸変性ポリオレフィン(B)とアニオン系界面活性剤(C)とアルカリ成分(D)と水(E)とを含有するものである。
(カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A))
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)におけるプロピレン単位の含有量は40〜70質量%であり、50〜60質量%であることが好ましい。プロピレン単位含有量が40質量%未満であっても、70質量%を超えても、水性分散体を、ポリプロピレンの成形体に塗布した場合の付着性や剥離強度が低くなり、また、得られる被膜の耐水性が低下する。
また、カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)における1−ブテン単位の含有量は20〜40質量%であり、15〜35質量%であることが好ましい。含有する。1−ブテン単位含有量が20質量%未満であっても、40質量%を超えても、付着性、特にポリプロピレンの成形体に対する付着性が低くなり、また、得られる被膜の耐水性が低下する。
また、カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)におけるエチレン単位の含有量は5〜25質量%であり、7〜15質量%であることが好ましい。エチレン単位含有量が5質量%未満であっても、25質量%を超えても、付着性、特にポリプロピレンの成形体に対する付着性が低くなり、また、得られる被膜の耐水性が低下する。
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)の結晶化度は0.1〜10%であり、0.1〜2%であることが好ましい。カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)の結晶化度が10%を超えると、得られる水性分散体のポリオレフィン成形体、特にポリプロピレン成形体に対する付着性が低くなり、耐水性も低くなる。また、結晶化度が0.1%未満の場合には、剥離強度が低くなる。
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)の質量平均分子量は、100,000〜300,000であり、125,000〜250,000であることが好ましい。カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)の質量平均分子量が100,000未満であっても、300,000を超えても、付着性、剥離強度が低くなる。
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)の酸価は、3〜80mg/gであり、好ましくは10〜70mg/gである。ここでいう酸価は、カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数である。カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)の酸価が3mg/g未満であると、カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)の水性分散体での平均粒子径が大きくなり、結果として付着性、剥離強度、耐水性が低くなる。一方、カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)の酸価が80mg/gを超えると、耐水性が低くなる。
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)は、例えば、下記のプロピレン/1−ブテン/エチレン三元共重合体100質量部に対して、不飽和カルボン酸0.2〜7.0質量部と有機過酸化物0.5〜5.0質量部とを、共に溶融混練することにより得ることができる。この溶融混練としては、特許文献2に実験室的な小スケールでの例が開示されており、また、工業的には、樹脂を混練する一般的な装置が使用できる。具体的には、回分式として、バンバリーミキサーやニーダーが挙げられ、連続式として、押出機が挙げられる。
生成するカルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)のオレフィン組成は、使用するプロピレン/1−ブテン/エチレン三元共重合体の組成によって決まる。また、結晶化度および質量平均分子量についても、酸変性工程で若干の低下を生じるものの、大略は、使用するプロピレン/1−ブテン/エチレン三元共重合体によって決まる。
プロピレン/1−ブテン/エチレン三元共重合体は、メタロセン系触媒を用いることで製造できる。メタロセン系触媒の例としては、シクロペンタジエニル骨格を少なくとも1個有する周期表第4族〜第6族の遷移金属錯体を挙げることができる。例えば、特開平9−151205号公報に記載されたメタロセン触媒を用いることができる。
また、プロピレン/1−ブテン/エチレン三元共重合体の組成は、重合時のプロピレンと1−ブテンとエチレンとの供給組成を適宜変更することにより調節できる。また、その質量平均分子量は、上記単量体と同時に供給する水素ガスの供給量を制御することにより調節できる。
変性に使用する不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、無水マレイン酸、水イタコン酸、無水シトラコン酸などが挙げられる。
変性に使用する有機過酸化物としては、例えば、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクロルベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t―ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,4−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブテン,ジ−t−ブチルベルオキシイソフタレート、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルパーオキシド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン,2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、クミルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート,α−クミルパーオキシネオデカノエート,t−ブチルパーオキシネオデカノエート、ジセチルパーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート,ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジミリスチルパーオキシカーボネート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネートなどが挙げられる。
(酸変性ポリオレフィン(B))
酸変性ポリオレフィン(B)は、エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物で変性されたオレフィン系重合体である。エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸等が挙げられ、エチレン性不飽和カルボン酸の無水物としては、例えば、無水マレイン酸等が挙げられる。
酸変性ポリオレフィン(B)としては、例えば、酸価が3〜80mg/gの酸変性ポリエチレン、酸変性エチレン−プロピレン共重合体、酸変性ポリプロピレン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体などが挙げられる。
酸変性ポリオレフィン(B)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
酸変性ポリオレフィン(B)の質量平均分子量は1,200〜35,000であり、好ましくは1,800〜20,000である。酸変性ポリオレフィン(B)の質量平均分子量が1,200未満であると、水性分散体が得られず、35,000を超えると、付着性および耐水性が低下する。
酸変性ポリオレフィン(B)の酸価は3〜80mg/gであり、好ましくは10〜70mg/gである。ここでいう酸価は、変性ポリオレフィン1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数である。酸変性ポリオレフィン(B)の酸価が3mg/g未満であると、カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)を分散させることができないため、水性分散体が得られず、80mg/gを超えると、付着性および耐水性が低くなる。
酸変性ポリオレフィン(B)の量は、カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)100質量部に対して5〜20質量部であり、好ましくは8〜15質量部である。酸変性ポリオレフィン(B)の量が5質量部未満であると、カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)を分散させることができないため、水性分散体が得られず、20質量部を超えると、得られる水性分散体は粒子径の大きなものとなり、付着性および耐水性が低下する。
(アニオン系界面活性剤(C))
アニオン系界面活性剤(C)としては、例えば、第1級高級脂肪酸塩、第2級高級脂肪酸塩、第1級高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、第1級高級アルキルスルホン酸塩、第2級高級アルキルスルホン酸塩、高級アルキルジスルホン酸塩、スルホン化高級脂肪酸塩、高級脂肪酸硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩、高級アルコールエーテルのスルホン酸塩、高級脂肪酸アミドのアルキロール化硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェノールスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸塩、アルキルベンゾイルイミダゾールスルホン酸塩などが挙げられる。
上記のアニオン系界面活性剤を構成する高級脂肪酸としては、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキン酸等の飽和脂肪酸、リンデル酸、ツズ酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸と、これらの混合物が挙げられる。
高級脂肪酸と塩を形成するための元素としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属が挙げられる。
アニオン系界面活性剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
アニオン系界面活性剤(C)の量は、カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)100質量部に対して1〜10質量部であり、好ましくは2.5〜5質量部である。アニオン系界面活性剤(C)の量が1質量部未満であると、水性分散体の分散安定性が低くなり、10質量部を超えると、付着性および耐水性が低くなる。
なお、アニオン系界面活性剤(C)に代えて、同量のノニオン型界面活性剤を使用した場合には、平均粒子径の大きなものとなり、付着性と耐水性が劣る。
(アルカリ成分(D)
アルカリ成分(D)は、(A)成分および(B)成分に由来する酸を中和するのに必要な量に対してアルカリ量の1〜2倍量を添加する。アルカリ成分(D)が、(A)成分および(B)成分に由来する酸を中和するのに必要な量に対して1倍量未満では、水性分散体の安定性が低下し、2倍量を超えると、得られる被膜の耐水性が低下する。
アルカリ成分(D)の具体例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムや各種有機アミンを挙げることができる。
(水(E))
水性分散体中の水(E)は転相時に必要な水であり、カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)100質量部に対して、5〜40質量部である。
なお、水(E)の量が前記範囲である場合には、生成する水性分散体の固形分濃度は73質量%以上になり、実質的に固体である。そのため、この水性分散体を既存の塗工方法を適用するため、あるいは、他の薬剤を混合しやすくするためには、粘度を適切な範囲にする目的で、水性分散体に66質量部以上の希釈水を添加し、希釈して、固形分濃度が10〜60質量%の水性分散体とすることが好ましく、20〜50質量%の水性分散体とすることがより好ましい。
(副資材)
水性分散体には、必要に応じて、各種副資材が含まれてもよい。副資材としては、例えば、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等の分散剤、乳化剤、安定化剤、湿潤剤、増粘剤、起泡剤、消泡剤、ゲル化剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、着色剤、付香剤、粘着防止剤、離型剤、造膜助剤、レベリング剤等が挙げられる。
以上説明した水性分散体では、酸変性ポリオレフィン(B)を使用することで、1〜10質量部と比較的に少ないアニオン系界面活性剤(C)の含有量でも、1μm未満の平均粒子径で、カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)を水に分散させることができる。
このような水性分散体によれば、有機溶剤および塩素原子含有ポリマーを含まないにもかかわらず、基材に対する水性分散体の付着性と剥離強度を向上させることができる。また、得られる被膜の耐水性を向上させることができる。
また、上記水性分散体は、分散媒として水を使用しているので、環境上の問題が少なく、取り扱い性に優れる。
(使用方法)
水性分散体は各種基材に塗布されて使用される。基材としては、例えば、紙、繊維織物、プラスチック成形品、木材、金属などが挙げられる。これらの中でも、プラスチック成形品、とりわけポリエチレン成形品やポリプロピレン成形品に対しては、水性分散体の高い付着性が顕著に発揮される。該ポリエチレン成形品やポリプロピレン成形品に、他のポリオレフィン(例えば、エチレン・プロピレン共重合体ゴム等)、無機フィラー(例えば、タルク、ガラス繊維、炭酸カルシウム等)、安定剤、着色剤などの各種添加剤が含まれている場合も、発揮される効果は同等である。
水性分散体の塗布方法としては、例えば、各種塗工機を用いる方法、スプレーを用いる方法、刷毛塗りなどを採ることができる。
「水性分散体の製造方法」
本発明の水性分散体の製造方法は、カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)と酸変性ポリオレフィン(B)とアニオン系界面活性剤(C)とを含む混合物を溶融混練して混練物を得る工程(以下、第1の工程という。)と、該混練物に、(A)成分および(B)成分に由来する酸を中和するアルカリ成分(D)と水(E)添加した後、さらに溶融混練する工程(以下、第2の工程という。)とを有する。
(第1の工程)
第1の工程における酸変性ポリオレフィン(B)の配合量は、水性分散体における酸変性ポリオレフィン(B)の含有量と同様に、カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)100質量部に対して5〜20質量部であり、好ましくは8〜15質量部である。
アニオン系界面活性剤(C)の配合量は、水性分散体におけるアニオン系界面活性剤(C)の含有量と同様に、カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)100質量部に対して1〜10質量部であり、好ましくは2〜5質量部である。
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)と酸変性ポリオレフィン(B)とアニオン系界面活性剤(C)とを溶融混練する際には、例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、多軸スクリュー押出機を適用することができる。
溶融混練条件は、カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)の物性により適宜選択されるが、溶融混練温度は160℃〜250℃とすることが好ましい。溶融混練温度が160℃以上であれば、溶融粘度が充分に低くなるため容易に混練でき、250℃以下であれば、必要以上に加熱しないから、カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)の劣化や熱分解を抑制し、且つ、エネルギー使用量を削減できる。
(第2の工程)
第1の工程に引続く第2の工程では、第1の工程で得た混練物に、アルカリ成分(D)を溶解した水(E)を注入して、カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)および酸変性ポリオレフィン(B)を含む樹脂固形分に水を添加する。
アルカリ成分(D)の添加量は、(A)成分と(B)成分に由来する酸を中和するのに必要な量に対して1〜2倍量である。アルカリ成分(D)の添加量が、1倍量未満では、水性分散体の安定性が低下し、2倍量を超えると塗膜の耐水性が低下する。
水(E)の添加量は、カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)100質量部に対して5〜40質量部であり、5〜10質量部であることが好ましい。水(E)の添加量が5質量部未満であると、水性分散体は得られず、40質量部を超えると、水性分散体の樹脂固形分の平均粒子径が大きくなって、付着性および耐水性が低くなる。
第2の工程における溶融混練では、樹脂固形分に水が含まれる状態から、水に樹脂固形分が分散する状態に転相させる。
第2の工程における溶融混練においても、第1の工程と同様に、ニーダー、バンバリーミキサー、多軸スクリュー押出機を適用することができる。
第2の工程における溶融混練温度は、第1の工程と同様に160〜250℃とすることが好ましい。溶融混練温度が160℃以上であれば、容易に転相させることができ、250℃以下であれば、必要以上に加熱しないから、樹脂の劣化や熱分解を抑制し、且つ、エネルギー使用量を削減できる。
第2の工程終了後、得られた水性分散体にさらに水を添加し、希釈した水性分散体とすることが好ましい。水をさらに添加すれば、水性分散体の粘度が下がり、流動性が高くなる。さらに添加する水の量は水性分散体の使用目的および使用方法により適宜選択されるが、水性分散体の固形分濃度が10〜60質量%になる量が好ましく、20〜50質量%になる量がより好ましい。
本発明以外の他の製造方法では、界面活性剤量を1〜10質量部という少ない量とすると、0.1〜1μm程度の小さな平均粒子径の水性分散体を得ることは困難である。しかし、上記水性分散体の製造方法によれば、1〜10質量部という少ない界面活性剤量であっても0.1〜1μm程度の小さな平均粒子径の水性分散体を得ることができる。これは、本製造方法で使用する酸変性ポリオレフィン(B)が、転相前のカルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)が連続相である段階で、界面活性剤をミクロ分散させる効果を発揮するためであると推定される。したがって、酸変性ポリオレフィン(B)は本製造方法における必須の成分である。これに対し、他の分散方法では僅かな粘度の低減効果しか見られず、必須ではない。
また、上記製造方法により得られた水性分散体から形成される塗膜は、付着性、耐水性が優れたものとなる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
また、以下の例におけるカルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体および酸変性ポリオレフィンの特性は、下記のようにして測定した。
・単量体単位の定量:日本電子(株)製、高分解能フーリエ変換核磁気共鳴装置JNM−AL400型により測定した(単位;質量%)。
・質量平均分子量:ウォーターズ社製、アライアンスGPC V2000型により測定した。
・結晶化度:理学電機(株)製、広角X線回折装置RAD−RX型により求めた。
・平均粒子径:マウンテック(Mountech)社製のマイクロトラックUPAにて測定した。
下記に示すように調製した水性分散体は、以下のようにして、その付着性と剥離強度と耐水性を評価した。
[試験片の作製]
ホモPPであるプライムポリマー社製の「J106G」と、ブロックPPの「J715M」について、それぞれ、100×100mm、厚さ2mmの平板を射出成形により成形して、基材に用いた。
これらプロピレン系基材に対して、この平板の表面を脱脂処理した後、塗布量が8〜12g/mになるように、スプレーガンにて塗布した。そして、70℃で20分間乾燥した後、日本ビーケミカル(株)製ウレタン塗料(R−271)を50〜60g/mになるように塗布した後、さらに、70℃で20分間乾燥して、室温で24時間静置して被膜を形成した。このようにして得た平板を、以下の付着性試験と剥離強度試験と耐水性試験の試験片として用いた。
[付着性試験]
カッターにより、被膜に1mm間隔で100個のマス目が形成されるように、基材に達する切れ目入れた。このマス目にセロハンテープ(登録商標、ニチバン社製)を密着させた後、引き剥がし、残存したマス目の数を記録した。残存したマス目の数が多い程、付着性に優れる。
[剥離強度]
上記試験片に1cm幅で基材に達する切れ目を入れた後、端部を一部剥離させて、その剥離した端部を180度方向に、50mm/分の速度で引っ張り、完全に剥離した際の引張強度を剥離強度とした。剥離強度はN/cmの単位で表わした。
[耐水性試験]
金属製のカゴの中に入れた試験片を、40℃の温水中に完全に浸漬させ、10日間放置した。その後、温水中から取出し、上記付着性試験と同様の試験を行った。残存したマス目の数が多い程、耐水性に優れる。
以下の実施例、比較例において、カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)成分として、下記のA−1〜A−25を用いた。
(カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A−1)の調製)
攪拌機、冷却管及び滴下ロートを備えた四つ口フラスコ中に、プロピレン単位を42質量%、1−ブテン単位を38質量%、エチレン単位を20質量%含有するプロピレン/1−ブテン/エチレン三元共重合体300gを仕込んで加熱溶融させた。次いで、フラスコ内の温度を180℃に保って、無水マレイン酸15g及びジクミルパーオキサイド5gを攪拌しながら各々3時間かけて滴下し、その後更に3時間反応させた。
反応終了後、得られた反応生成物を多量のアセトン中に投入し、精製して、酸価が40mg/gの、カルボキシ基を含有する変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A−1)を得た。この共重合体(A−1)のX線回折による結晶度は1.9%であり、GPCによる、質量平均分子量は150,000であった。
(カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A−2)〜(A−25)の調製
表1〜3に示す条件に変更した他は、(A−1)と同様にして、(A−2)〜(A−25)を調製した。
生成したカルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A−1)〜(A−25)の結晶化度、質量平均分子量、酸価を、表1〜3に示す。
Figure 2008303297
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上記カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体を用いて、以下のように、水性分散体を調製し、その付着性、剥離強度、耐水性を評価した。実施例についての評価結果を表4,5に、比較例についての評価結果を表6〜8に、それぞれ示す。
なお、表4〜8における「質量部」は、(A)成分100質量部に対する値であり、アルカリ量は、(A)成分と(B)成分に含まれる酸を中和するのに必要な量に対する倍数であり、注入水量は純水量である。
(実施例1)
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A−1)100質量部と、酸価30mg/gで質量平均分子量が3,000であるクラリアント(株)製の酸変性ポリプロピレン「リコセン PPMA 6252」(B−1)12質量部とオレイン酸カリウム3質量部とを、二軸押出機(スクリュー径;30mm、L/D;40、バレル温度;200℃)に、その投入口から供給して溶融混練した。
また、該二軸押出機のベント部に設けた供給口より水酸化カリウム水溶液の形態で、6.3質量部の水酸化カリウムと8質量部の純水を注入した。このときの6.3質量部の水酸化カリウムの量は、(A−1)と(B−1)に含まれる酸を中和するのに必要な量4.5質量部の1.4倍量に相当する。
そして、二軸押出機先端より押し出された固形状の水性分散体を、174質量部の温水中で分散させて、固形分濃度が40質量%で、平均粒子径0.22μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(実施例2)
酸変性ポリプロピレン(B−1)の量を6質量部に減らした他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.21μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(実施例3)
酸変性ポリプロピレン(B−1)の量を18質量部に増やした他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.20μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(実施例4)
オレイン酸カリウムの量を2質量部に減らした他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.23μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(実施例5)
オレイン酸カリウムを9質量部に増やした他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.22μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(実施例6)
水酸化カリウムの量を、(A−1)と(B−1)に含まれる酸を中和するに必要な4.48質量部の1.1倍量である4.93質量部に減らした他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.25μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(実施例7)
水酸化カリウムの量を(A−1)と(B−1)に含まれる酸を中和するに必要な4.48質量部の1.9倍量である8.51質量部に増やした他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.23μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(実施例8)
注入する純水を5.5質量部に減らした他は、実施例6と同様にして、平均粒子径0.30μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(実施例9)
注入する純水を38質量部に増やした他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.40μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(実施例10)
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体として、プロピレン含量が68質量%の(A−3)を使用した他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.20μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(実施例11)
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体として、ブテン含量が22質量%の(A−6)を使用した他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.23μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(実施例12)
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体として、ブテン含量が38質量%の(A−7)を使用した他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.22μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(実施例13)
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体として、エチレン含量が6質量%の(A−10)を使用した他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.20μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(実施例14)
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体として、エチレン含量が24質量%の(A−11)を使用した他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.23μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(実施例15)
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体として、質量平均分子量が120,000の(A−14)を使用した他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.25μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(実施例16)
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体として、質量平均分子量が280,000の(A−15)を使用した他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.29μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(実施例17)
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体として、結晶化度が1質量%の(A−18)を使用した他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.20μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(実施例18)
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体として、結晶化度が2質量%の(A−19)を使用した他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.23μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(実施例19)
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体として、結晶化度が9質量%の(A−20)を使用した他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.22μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(実施例20)
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体として、酸価が4mg/gの(A−23)を使用した他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.28μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(実施例21)
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体として、酸価が77mg/gの(A−24)を使用した他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.29μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(実施例22)
酸変性ポリプロピレンに酸価30mg/g、質量平均分子量2,000の酸変性ポリエチレンワックスである三井化学製「ハイワックス 2203A」(B−3)を使用した他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.21μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(実施例23)
酸変性ポリプロピレンに酸価52mg/g、質量平均分子量30,000の酸変性ポリプロピレンである三洋化成工業製「ユーメックス1010」(B−4)を使用した他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.20μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(実施例24)
酸変性ポリプロピレンに酸価3.5mg/g、質量平均分子量10,000の酸変性ポリプロピレンである三洋化成工業製「ユーメックス100TS」(B−2)を使用した他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.23μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
Figure 2008303297
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(比較例1)
攪拌機を備えた内容積2リットルのオートクレーブ内に、カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A−1)100部に対して、トルエン500部を仕込み、125℃で1時間攪拌して溶解した後、90℃に冷却した。
また、これとは別に、攪拌機を備えた内容積2リットルのオートクレーブ内で、オレイン酸カリウム3部と(A−1)の中和に必要な水酸化カリウムの1.4倍量である5.6部を溶解した水600部を90℃に加熱し、その中に、前記ポリオレフィンのトルエン溶液を攪拌継続下で添加した。2時間攪拌して分散した後、エスエムテー社製(HG−92型)高速ホモジナイザーで、10,000rpmで10分間、分散した。
次いで、攪拌翼による攪拌を継続したまま、凝縮水を還流させながら、2時間水蒸気蒸留してトルエンを留去したが、トルエンを留去するにつれて凝集物が発生し、トルエンの全量を留去する前に凝集物が98質量部に達し、水性分散体を得ることができなかった。
(比較例2)
オレイン酸カリウムの量を10質量部に変更した以外は比較例1と同様にして水性分散体を得ようとしたが、91部の凝集物が生成し、水性分散体を得ることができなかった。
(比較例3)
オレイン酸カリウムの量を12質量部に変更した以外は比較例1と同様にしたところ、10質量部の凝集物は副生したが、平均粒子径2.0μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(比較例4)
酸変性ポリオレフィン(B−1)12質量部を、カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A−1)ともにトルエンに溶解し、(A−1)と(B−1)に含まれる酸を中和するのに必要な1.4倍量である7.3質量部の水酸化カリウムを使用した他は、比較例3と同様にして平均粒子径1.9μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(比較例5)
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A−1)に代えて、酸変性ポリオレフィン(B−1)を100質量部とした以外は、比較例1と同様にして、平均粒子径0.30μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(比較例6)
酸変性ポリオレフィン(B−1)の量を4質量部に変更した以外は実施例1と同様にして水性分散体を得ようとしたが、温水に希釈されず、97質量部の凝集物が生成して、水性分散体は得られなかった。
(比較例7)
酸変性ポリオレフィン(B−1)の量を22質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、平均粒子径0.90μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(比較例8)
オレイン酸カリウムの量を0.5質量部に変更した以外は実施例1と同様にして水性分散体を得ようとしたが、温水に希釈されず、98質量部の凝集物が生成して、水性分散体は得られなかった。
(比較例9)
オレイン酸カリウムの量を12質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、平均粒子径85μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(比較例10)
アニオン系界面活性剤(C)を、ノニオン型界面活性剤であるエマルゲン430(花王(株)製)に変更した以外は実施例1と同様にして、平均粒子径3.9μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(比較例11)
水酸化カリウムの量を、(A−1)と(B−1)に含まれる酸を中和するに必要な4.48質量部の0.9倍量の4.03質量部に減らした他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.50μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(比較例12)
水酸化カリウムの量を、(A−1)と(B−1)に含まれる酸を中和するに必要な4.48質量部の2.2倍量の9.86質量部に増やした他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.40μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(比較例13)
注入する純水を4.5質量部に減らした他は、実施例1と同様にして、水性分散体を得ようとしたが、温水に希釈されず、98部の凝集物が生成して、水性分散体は得られなかった。
(比較例14)
注入する純水を42質量部に増やした他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.65μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(比較例15)
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体として、プロピレン含量が38質量%の(A−2)を使用した他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.31μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(比較例16)
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体として、プロピレン含量が72質量%の(A−4)を使用した他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.33μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(比較例17)
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体として、ブテン含量が18質量%の(A−5)を使用した他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.32μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(比較例18)
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体として、ブテン含量が42質量%の(A−8)を使用した他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.34μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(比較例19)
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体として、エチレン含量が3質量%の(A−9)を使用した他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.33μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(比較例20)
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体として、エチレン含量が28質量%の(A−12)を使用した他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.35μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(比較例21)
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体として、質量平均分子量が80,000の(A−13)を使用した他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.37μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(比較例22)
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体として、質量平均分子量が310,000の(A−16)を使用した他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.39μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(比較例23)
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体として、結晶化度が0%の(A−17)を使用した他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.32μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(比較例24)
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体として、結晶化度が11%の(A−21)を使用した他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.35μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(比較例25)
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体として、酸価が2mg/gの(A−22)を使用した他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.50μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(比較例26)
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体として、酸価が83mg/gの(A−25)を使用した他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.39μmの水性分散体を得た。この水性分散体の付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
(比較例27)
酸変性ポリオレフィンとして、酸価60mg/g、質量平均分子量1,100の酸変性ポリエチレンである三井化学製「ハイワックス1105A」(B−6)を使用した以外は、実施例1と同様にして水性分散体を得ようとしたが、温水に希釈されず、97質量部の凝集物が生成して、水性分散体は得られなかった。
(比較例28)
酸変性ポリオレフィンとして、酸価26mg/g、質量平均分子量40,000の酸変性ポリプロピレンである三洋化成工業製「ユーメックス1001」(B−5)を使用した以外は、実施例1と同様にして水性分散体を得ようとしたが、温水に希釈されず、98質量部の凝集物が生成して、水性分散体は得られなかった。
(比較例29)
酸変性ポリオレフィンとして、酸変性されておらず、質量平均分子量7,000のポリプロピレンワックスである三井化学製「ハイワックスNP055」(B−7)を使用した以外は、実施例1と同様にして水性分散体を得ようとしたが、温水に希釈されず、99質量部の凝集物が生成して、水性分散体は得られなかった。
(比較例30)
酸変性ポリオレフィンとして、酸価110mg/g、質量平均分子量10,000のα−オレフィン/無水マレイン酸共重合物である三菱化学製「ダイヤカルナ30」(B−8)を使用した他は、実施例1と同様にして、平均粒子径0.60μmの水性分散体を得て、付着性、剥離強度、耐水性を評価した。
Figure 2008303297
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特定のカルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)と酸変性ポリオレフィン(B)とアニオン系界面活性剤(C)とを溶融混練して混練物を得る工程と、該混練物にアルカリ成分(D)及び水(E)を注入した後、さらに溶融混練する工程とを有する実施例1〜24の製造方法では、ポリプロピレンに対する付着性、剥離強度が高かった。また、水性分散体より得られる被膜の耐水性に優れていた。
これに対し、高速攪拌により特定のカルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)とアニオン系界面活性剤(C)とを混合した比較例1〜3の製造方法では、水性分散体が得られないか、付着性、被膜の剥離強度及び耐水性が低かった。
高速攪拌により特定のカルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)と酸変性ポリオレフィン(B)とアニオン系界面活性剤(C)とを混合した比較例4の製造方法では、付着性、被膜の剥離強度及び耐水性が低かった。
酸変性ポリオレフィン(B)とアニオン系界面活性剤(C)とを混合し、カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)を混合しなかった比較例5の製造方法では、付着性、被膜の剥離強度及び耐水性が低かった。
酸変性ポリオレフィン(B)の添加量を5質量部未満とした比較例6の製造方法では、水性分散体が得られなかった。
酸変性ポリオレフィン(B)の添加量を20質量部より多くした比較例7の製造方法では、付着性、被膜の剥離強度及び耐水性が低かった。
オレイン酸カリウムの添加量が1質量部未満であった比較例8の製造方法では、水性分散体が得られなかった。
オレイン酸カリウムの添加量が10質量部を超えていた比較例9の製造方法では、付着性、被膜の剥離強度及び耐水性が低かった。
アニオン系界面活性剤の代わりにノニオン系界面活性剤を添加した比較例10の製造方法では、付着性、被膜の剥離強度及び耐水性が低かった。
アルカリ添加量が中和に必要な量の1倍未満であった比較例11の製造方法では、付着性、被膜の剥離強度及び耐水性が低かった。
アルカリ添加量が中和に必要な量の2倍を超えた比較例12の製造方法では、付着性、被膜の剥離強度及び耐水性が低かった。
水の添加量が5質量部未満であった比較例13の製造方法では、水性分散体が得られなかった。
水の添加量が40質量部を超えていた比較例14の製造方法では、付着性、被膜の剥離強度及び耐水性が低かった。
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体のプロピレン単位の量が40質量%未満であった比較例15の製造方法では、付着性、被膜の剥離強度及び耐水性が低かった。
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体のプロピレン単位の量が70質量%を超えていた比較例16の製造方法では、付着性、被膜の剥離強度及び耐水性が低かった。
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体の1−ブテン単位の量が20質量%未満であった比較例17の製造方法では、付着性、被膜の剥離強度及び耐水性が低かった。
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体の1−ブテン単位の量が40質量%を超えていた比較例18の製造方法では、付着性、被膜の剥離強度及び耐水性が低かった。
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体のエチレン単位の量が5質量%未満であった比較例19の製造方法では、付着性、被膜の剥離強度及び耐水性が低かった。
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体のエチレン単位の量が25質量%を超えていた比較例20の製造方法では、付着性、被膜の剥離強度及び耐水性が低かった。
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体の質量平均分子量が100,000未満であった比較例21の製造方法では、付着性、被膜の剥離強度及び耐水性が低かった。
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体の質量平均分子量が300,000を超えていた比較例22の製造方法では、付着性、被膜の剥離強度及び耐水性が低かった。
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体の結晶化度が0.1%未満であった比較例23の製造方法では、付着性、被膜の剥離強度及び耐水性が低かった。
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体の結晶化度が10%を超えていた比較例24の製造方法では、付着性、被膜の剥離強度及び耐水性が低かった。
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体の酸価が3mg/g未満であった比較例25の製造方法では、付着性、被膜の剥離強度及び耐水性が低かった。
カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体の酸価が80mg/gを超えていた比較例26の製造方法では、付着性、被膜の剥離強度及び耐水性が低かった。
酸変性ポリオレフィンの質量平均分子量が1,200未満であった比較例27の製造方法では、水性分散体が得られなかった。
酸変性ポリオレフィンの質量平均分子量が35,000を超えていた比較例28の製造方法では、付着性、被膜の剥離強度及び耐水性が低かった。
酸変性ポリオレフィンの酸価が3mg/g未満であった比較例29の製造方法では、水性分散体が得られなかった。
酸変性ポリオレフィンの酸価が80mg/gを超えていた比較例30の製造方法では、付着性、被膜の剥離強度及び耐水性が低かった。

Claims (2)

  1. カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)100質量部に対して、5〜20質量部の酸変性ポリオレフィン(B)と、1〜10質量部のアニオン系界面活性剤(C)と、(A)成分および(B)成分に由来する酸を中和するのに必要な量に対して1〜2倍量のアルカリ成分(D)と、5〜40質量部の水(E)とを含有する水性分散体であって、
    カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)は、プロピレン単位を40〜70質量%、1−ブテン単位を20〜40質量%、エチレン単位を5〜25質量%含有し、質量平均分子量が100,000〜300,000、結晶化度が0.1〜10%、酸価が3〜80mg/gであり、
    酸変性ポリオレフィン(B)は、エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物で変性されたオレフィン系重合体であり、質量平均分子量が1,200〜35,000、酸価が3〜80mg/gであることを特徴とする水性分散体。
  2. カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)100質量部に対して、5〜20質量部の酸変性ポリオレフィン(B)と、1〜10質量部のアニオン系界面活性剤(C)とを溶融混練して混練物を得る工程と、
    該混練物に、(A)成分および(B)成分に由来する酸を中和するのに必要な量に対して1〜2倍量のアルカリ成分(D)と、(A)成分100質量部に対して5〜40質量部の水(E)を添加した後、さらに溶融混練する工程とを有する水性分散体の製造方法であって、
    カルボキシ基含有変性プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体(A)が、プロピレン単位を40〜70質量%、1−ブテン単位を20〜40質量%、エチレン単位を5〜25質量%含有し、質量平均分子量が100,000〜300,000、結晶化度が0.1〜10%、酸価が3〜80mg/gであり、
    酸変性ポリオレフィン(B)が、エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物で変性されたオレフィン系重合体であり、質量平均分子量が1,200〜35,000、酸価が3〜80mg/gであることを特徴とする水性分散体の製造方法。
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