各種電子機器の小型化、高機能化にともなって、電子部品の高密度実装の要求は高まっている。これに対応して、プリント配線板も、絶縁体層と配線層とを交互に積層した構成の多層プリント配線板が広く用いられている。多層プリント配線板は、配線層を多層化することにより高密度化や高機能化の要求に対応するもので、配線層と配線層との間の層間接続はスルーホールなどを用いて行われている。
このような配線層の層間接続をビアホールによって行っている多層プリント配線板は、高密度実装への対応が困難であるという問題がある。
例えば、スルーホールを設けた領域には配線を形成したり電子部品を実装することができないので、配線密度および実装密度の向上が制約されることになる。また、近年では電子部品の高密度実装に伴ってプリント配線板の配線も高密度化している。このような配線の微細化に対応するために、スルーホールの径を小さくしようとすると、層間接続の信頼性の確保が困難になるという問題がある。
また、スルーホールによる配線層間の接続の形成は、スルーホール形成工程や、メッキ工程などを伴うため冗長であり、生産性の観点からも問題がある。例えばスルーホールを形成する工程は、ドリルなどによって1個ごとに穴明けするので、穴明け作業に多くの時間を要する。特にこの工程は、スルーホールのホール径が小さくなると極端に生産性が低下する。さらに、スルーホールをあけた後は、バリ取りのための研磨工程、メッキ工程を必要とする。また、スルーホールの形成位置には高い精度が要求され、かつスルーホール内壁面のメッキ付着性等を考慮に入れる必要がある。このため、スルーホール形成の精度、形成条件の管理なども煩雑である。さらに従来のスルーホールを用いて層間接続を行う多層プリント配線板では、スルーホールの形成工程が必要となる。特に、スルーホールの径が約0.2mm以下となると、スルーホールの形成に要する時間が大きくなり、生産性が顕著に低下するという問題がある。導電性バンプにより層間接続を行う多層配線板ではこのような問題を解決することができる。
加えて、スルーホールを介して複数の配線層間の電気的接続を形成するメッキ工程では、薬液の濃度管理や温度管理などの工程管理も煩雑である。さらにスルーホールを形成する装置、メッキに必要な設備は大掛かりなものとなる。
このような、スルーホールによる多層プリント配線板の層間接続は、プリント配線板(PWB)の生産性を低下させており、低コスト化などへの要求に対応することが困難である。
多層プリント配線板の配線層間の電気的な接続を簡略化するために、配線層間の接続を導電性バンプにより行う方法も提案されている。この方法は、配線回路に形成された層間接続部であるビアランド等に導電性バンプを形成し、この導電性バンプをプリプレグなどの層間絶縁層の厚さ方向に貫挿させることにより、対向する配線層に形成されたビアランドとの接続を確立するものである。
このような導電性バンプを採用した配線回路の層間接続は、構成がシンプルであること、工程数が少なく生産性が高いこと、高密度実装に対応できることなどのメリットがある。しかしながら、導電性バンプを採用して配線回路の層間接続を行ったプリント配線板には、以下に説明するような問題が認められる。
導電性バンプは、例えばマスクなどを用いて複数回印刷することにより銅箔などの導電性箔上に形成されるが、従来はこの工程を自動的に行うことができる装置がなかった。人手による印刷では複数回の印刷の間隔を一定に保つことが困難であり、このことが導電性バンプの品質を不均一なものにする原因となっているという問題がある。また、印刷の回数により形成される導電性バンプのアスペクト比は変化するが、非常に多くの導電性箔上印刷の回数を管理するは負担が大きいという問題がある。
図19は従来の導電性バンプを用いた多層プリント配線板の製造工程を概略的に示す図であり、導電性箔上に形成した導電性バンプにより絶縁性樹脂層を貫通する工程を示している。
ここでは、略円錐形状を有する導電性バンプ51を形成した銅箔などの導電性箔52と、セミキュア状態のプリプレグなどの絶縁性樹脂層53とを積層して、平面プレス機により加熱・加圧することにより、導電性バンプ51を絶縁性樹脂層53に貫通させている。91a、91bは平面プレス機のプレス板である。なお、ここでは導電性バンプ51の形状を保持するために離型シート56を絶縁性樹脂層53に重ねてプレスしている。
ところが、このような平面プレスでは積層体の全体にわたって均一に加圧することが困難であり、加圧の不均一によって導電性箔52上に多数形成された導電性バンプ51のすべてを良好な状態で絶縁性樹脂層53に貫通させることができないという問題がある。導電性バンプ51は多層プリント配線板の配線層の層間接続に関与するものであるから、このような貫通不良は多層配線板の不良に直結してしまう。
さらに、この平面プレスによる導電性バンプ51の貫通工程では、1回のプレスごとに、導電性箔52と絶縁性樹脂層53と離型シート56とを積層しなければならず、またプレス後には解除しなければならず、特にプレスを手動で行うような場合には作業時間が長くなるなど、生産性が低いという問題がある。
導電性バンプにより層間接続を形成した多層プリント配線板には、このような問題点のために実用化が困難であるという問題がある。
さらに、導電性箔52と絶縁性樹脂層53とを積層する際に、絶縁性樹脂層を構成する樹脂の粉末により導電性箔が汚染されやすいという問題もある。
従来の導電性箔51と絶縁性樹脂層53とを積層するプリント配線板の製造装置は、図20のような構造になっている。例えば所定位置にセットされたCu箔などの導電性箔52に対して、別の所定の位置にセットされたプリプレグなどの絶縁性樹脂層53を吸着ヘッド93で吸着して移載し、導電性箔52上に重ねる。
しかしながら従来の装置では次のような問題点がある。まず、従来の吸着ヘッドは、絶縁性樹脂層を点状の領域で部分的に保持するものであるために、絶縁性樹脂層を保持するときにしわ等が生じ、絶縁性樹脂層を構成する樹脂が粉末となって飛散してしまうという問題がある。そしてこの飛散したプリプレグ等の絶縁性樹脂粉末が導電性箔表面などに付着すると、プレス後の樹脂付着による凹凸によりエッチング不良が生じたり、打痕の原因となってしまうという問題がある。
また、プリプレグの表面や端面には、プリプレグのカット工程等で発生するプリプレグ粉末が付着しており、この粉末が飛散して上述と同様の問題を生じているという問題がある。
以下、本発明の各実施形態を詳細に説明する。
まず、図1は、本発明に係る製造装置に供する前の状態のプリント配線板を製造する装置の構成を模式的に示す図である。
このプリント配線板の製造装置は、予め定められた経路に沿って導電性箔を循環させる循環手段11と、前記循環手段11の前記経路内に配設され、前記導電性箔に導電性ペーストを印刷する印刷手段12と、前記循環手段11の前記経路内に配設され、前記導電性箔上に前記導電性ペーストが印刷された回数が予め設定された回数に至ったとき前記導電性箔を前記循環手段11から排出する排出手段13とを具備したものである。
印刷手段12としては、例えばスクリーン印刷機等をあげることができる。すなわち、供給された導電性箔、またはこの印刷手段12によりすでに導電性ペーストが印刷された導電性箔の所定位置にピットなどが形成されたマスクを用いて導電性ペーストを印刷するようにしてもよい。循環手段11としては、例えば印刷手段から排出された導電性箔を搬送するコンベア、搬送の方向を転換する方向変換機、印刷手段へ導電性箔を投入する自動投入機などを適宜組み合わせて用いるようにすればよい。このとき循環手段11の一部として、印刷機への自動投入装置、自動排出装置を設けるようにすれば、循環手段11の経路を循環する導電性箔に自動的に導電性ペーストを印刷することができる。導電性ペーストが印刷された導電性箔は、循環手段11により同じ一つの印刷手段12へと循環して供給される。
一方、導電性箔上に導電性ペーストが印刷された回数が予め設定された回数に至ったときには、排出手段13により導電性箔は循環手段11から排出される。この排出手段としては例えば、印刷回数が設定されたメモリと、印刷回数をカウントするカウンタとを組み合わせて構成するようにしてもよい。例えば、カウンタのカウント値と、メモリされた設定値とを比較することにより、導電性ペーストが印刷された導電性箔を、循環経路に循環させてさらに導電性ペーストを印刷するか、循環手段から排出するかを判別することができる。また、印刷回数の設定値は装置により固定された値を用いるようにしてもよいし、入力手段を備えて操作員が入力するようにしてもよい。
図2は図1に示したプリント配線板の製造装置の制御系の処理フローの例を概略的に示す図であり、図3は図1に示したプリント配線板の製造装置の制御系の構成の例を概略的に示す図である。印刷手段により導電性ペーストが1回印刷されるたびに印刷回数Cはカウントされて、予め設定された設定値Sと比較される。印刷回数のカウント値Cが設定値Sに満たない場合には、導電性箔は再循環して繰り返し印刷手段へ導入される。印刷回数のカウント値Cと、設定値Sとが等しくなったならば、導電性箔は循環手段から排出されさらに導電性ペーストが印刷されることはない。排出された導電性箔は例えば乾燥炉に導入される。
図4は印刷手段により導電性箔上に導電性ペーストを印刷する様子を模式的に示す図である。
導電性バンプ14の形成は、導電性バンプ14を形成する位置にピット15が形成されたメタルマスク16を用いて、導電性箔17上に導電性ペースト18をスクリーン印刷することにより行うことができる。導電性ペースト18をスキージ19で掃引してピット15に導電性ペースト18を充填した後、メタルマスク16を引き上げることによって、導電性箔17上に略円錐形状の導電性バンプ14が形成される(図4(a)、図4(b)参照)。 導電性バンプ14のアスペクト比、すなわち導電性バンプ14の底面の直径と高さとの比を大きくするには、導電性ペースト18を複数回印刷して、印刷した導電性ペースト18上にさらに導電性ペーストを印刷するようにすればよい。
図5は、導電性箔17上に導電性ペースト18を複数回印刷したときに形成される導電性バンプの様子を概略的に示す図である。図5(a)は導電性ペーストを1回印刷したとき、図5(b)は2回印刷したとき、図5(c)は3回印刷したときに形成される導電性バンプの様子をそれぞれ示している。
このとき、導電性ペーストの複数回の印刷は同一のマスクを用いることが、位置ずれを防止し、すべての導電性バンプを均一に形成するためには好適である。また、印刷した導電性ペーストを予備的に乾燥してから、さらに重ねて印刷するようにしてもよい。
このプリント配線板の製造装置においては、循環手段により導電性箔を同一の印刷手段に回流させながら複数回の印刷を行う構成を採用しているため、同一のマスクにより導電性ペーストを印刷することができる。このため、印刷位置のずれを最小限に抑制し、導電性箔上に多数の導電性バンプを均一に形成することができる。
上述したように、このプリント配線板の製造装置は導電性箔上に導電性ペーストを同一マスクを用いて複数回印刷して導電性バンプを形成するために、印刷手段から排出された導電性箔を同一の印刷手段へ再供給するような循環手段を備えている。この印刷手段を含む循環手段の所定の経路の中には、印刷手段だけでなく、例えば印刷した導電性ペーストを予備的に乾燥する乾燥炉などの乾燥手段を備えるようにしてもよい。
図6は循環手段の循環系路上に乾燥手段を備えたプリント配線板の製造装置の構成の例を示す図である。この装置では、循環手段11の循環系路上に印刷手段12と排出手段13と導電性ペーストの予備的な乾燥を行う乾燥手段20とが設けられており、導電性ペーストの印刷回数が設定値に至るまで印刷と乾燥とが繰り返される。図6に例示した構成では、排出手段13が印刷手段の下流側かつ乾燥手段の上流側に配置されているので、最後の印刷が終了した導電性箔は乾燥手段20を通過することなく循環手段から排出される。排出された導電性箔は、例えば本乾燥炉などに導入されて、予備乾燥よりも強固に乾燥される。
このように予備的な乾燥手段により導電性箔上に印刷された導電性ペーストの乾燥を行い、これを所定回数繰り返すことによりアスペクト比(導電性バンプの底面の直径と高さとの比)の高い導電性バンプを形成することができる。このときこのプリント配線板の製造装置では、印刷回数、予備乾燥の時間、搬送時間など、導電性バンプの品質に影響を及ぼす要因を所定の条件に管理することができる。したがって、特性が均一で信頼性の高いプリント配線板を製造することができる。また工程と工程との間隔を一定に保つことにより、導電性バンプの品質を均一にすることができる。
また、このプリント配線板の製造装置では、例えば複数の印刷手段を並べて、これらの印刷手段により導電性箔上に導電性ペーストを印刷するというような手法は採用せず、同一の印刷手段へ導電性箔を循環させることにより、装置のコストを低減するだけでなく、同じマスクを用いて複数回の印刷を行うことができる。導電性バンプの形成に必要な複数回の印刷を同一のマスクを用いて行うことにより、位置ずれの少ない、高品質な導電性バンプを形成することができる。したがって、多層プリント配線板の層間接続の信頼性を向上することができる。
次に、図7は、本発明に係る製造装置に供する前の状態のプリント配線板を製造する別の装置の構成を概略的に示す図である。
このプリント配線板の製造装置は、対称に並列配置された2つの循環手段11a、11bを有しており、それぞれの循環手段11a、11bには1つずつの印刷手段12a、12bが配設されているものである。
図7に示したこの例では、乾燥手段(乾燥炉)20は2つの循環手段11a、11bにより共用されている。予備乾燥に要するタクトタイムは比較的短いため共用したほうが生産性が向上する。
図8は、図7に示したプリント配線板の製造装置のより具体的な構成の例を概略的に示す図である。銅箔などの導電性箔は、まず振分式投入方向変換機31により第1の循環系11aと第2の循環系11bとに分配される。
分配された導電性箔は、ストックコンベア32a、32bにより搬送され、導電性箔投入機33a、33bに導入される。
導電性箔投入機33a、33bは、導電性箔を印刷機12a、12bに投入する。印刷機12a、12bは投入された導電性箔に、前述したようなメタルマスクを用いたスクリーン印刷により、所定の位置に導電性ペーストを印刷する。
印刷機12a、12bから排出された導電性箔は排出搬送機34a、34bにより搬送され、方向変換機35a、35bにより搬送方向が変換されてコンベア36a、36bにより排出手段13に導入される。排出手段としては例えば振分式方向変換機などを用いるようにしてもよい。
排出手段13は、前述のように、印刷回数、すなわち導電性箔が第1の循環系11a、第2の循環系11bを周回した回数と、予め設定された印刷回数とを比較することにより、導電性箔を循環系にとどまらせるか、循環系から排出するかを判別する。
印刷がなされた回数は、例えば印刷機12a、12bにカウンタを設けて計数するようにしてもよいし、また例えば搬送路中にカウンタを設けて計数するようにしてもよい。また、1枚の導電性箔に導電性ペーストを何回印刷するかについては、予め設定しておくようにしてもよいし、印刷回数の設定値を入力する手段を設けるようにしてもよい。導電性ペーストを何回導電性箔上に印刷して導電性バンプを形成するかについては、導電性ペーストの粘性、チキソトロピーなどの物性およびプロセス温度等のプロセス条件と、形成したい導電性バンプの形状とにより定めるようにすればよい。
いま、1度に20枚の導電性箔が振分式投入方向変換機31に投入されたとする。また、導電性ペーストの印刷回数は3回であるとする。振分式投入方向変換機31は、供給された20枚の導電性箔を10枚ずつに分配して第1の循環系11aと、第2の循環系11bとに導入する。1回目の印刷を終えた10枚ずつの導電性箔は、排出手段により排出されることなく乾燥炉20へ導入され、約80〜150℃程度の温度で約30秒程度の間乾燥される。このとき、乾燥炉20の温度と、乾燥炉20内を通過する時間により加熱条件を調節するようにしてもよい。前述したように本発明のプリント配線板の製造装置においては、印刷した導電性ペーストのそのタクトタイムが比較的短いため、乾燥炉20については2つの循環系11a、11bで共用して用いる構成を採用している。したがって、乾燥炉の設置面積を低減したり、設置に要するコストを低減できるだけでなく、乾燥炉の体積と表面積の比を低減することができ、安定した加熱を効率よく行うことができる。3回目の印刷を終えた導電性箔は、排出手段により循環経路から排出される。この構成では排出された導電性箔は本乾燥炉へ導入され、予備加熱炉よりも高い温度で乾燥される。
図7、図8に示したプリント配線板の製造装置では、複数の循環系を備えている。このためスループットが向上する。また、両面銅張板などでは、1枚の絶縁性樹脂層(プリプレグ)を導電性バンプを形成した2枚の導電性箔により挟持して形成するが、このプリント配線板の製造装置によればこのような1層の絶縁性樹脂層を挟持する複数の導電性箔を同時に製造することもできる。 このように、高密度実装に適した導電性バンプにより層間接続を形成したプリント配線板を容易に、安定して製造することができる。また、各印刷工程、予備乾燥工程、搬送に要する時間を一定に保ちながら行うことができる。したがって、1枚の導電性箔上に多数形成される導電性バンプを均一に形成することができる。したがって信頼性の高いプリント配線板を形成することができる。
(実施形態1)図9は本発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造装置の構成の例を概略的に示す斜視図であり、図10は図9に示したプリント配線板の製造装置を概略的に示す横面図(図10(a))と上面図(図10(b))である。このプリント配線板の製造装置は、2本のロールの間隙に導電性バンプを形成した導電性箔と、プリプレグなどの絶縁性樹脂層とを積層して通過させ、導電性バンプを絶縁性樹脂層に貫通させるものである。すなわち、このプリント配線板の製造装置は、第1の面に略円錐形状の導電性バンプ51が形成された導電性箔52と、セミキュア状態の絶縁性樹脂層53とを積層し、導電性バンプ51により絶縁性樹脂層53を貫通させるプリント配線板の製造装置であって、第1のロール54と、この第1のロール54と回転軸を平行に所定の間隙を保って配設された第2のロール55と、導電性箔52と、絶縁性樹脂層53と、離型シート56とを、絶縁性樹脂層53が導電性箔52の導電性バンプ51が形成された面と離型シート56との間に挟持されて第1のロール54と第2のロール55との間隙を通過するように供給する手段と、第1のロール54と第2のロール55との回転速度と、これらのロールの間隙を通るように供給される導電性箔52、絶縁性樹脂層53、および離型シート56の供給速度とが同期するように第1のロール54および第2のロールを駆動する駆動手段と、導電性バンプ51が絶縁性樹脂層53を貫通するように第1のロール54と第2のロール55との間隙の大きさを調節する調節手段とを具備したものである。また第1のロール54および第2のロール55は、内部に例えば電熱ヒータなどの加熱手段を備えており、導電性バンプによる絶縁性樹脂層の貫通が容易になるように積層体を加熱する。63は、導電性箔52、絶縁性樹脂層53を搬送する搬送ロールである。離型シート56は、貫通した導電性バンプ51が潰れないように保持するために用いられる。この離型シート56は、離型シート供給ロール57により供給され、第1のロール54と第2のロール55との間隙を通過したあとに、導電性箔と絶縁性樹脂層との積層体から剥離されて離型シート巻き取りロール58により巻き取られる。2本のロール54、55の間隙には常時離型シート56が供給されるようになっている。また離型シート56は、ガイドロール59により供給角度を調節されて第1のロール54と第2のロール55との間隙に供給される。このガイドロール59は可変式にして、第1のロール54と第2のロール55との間隙に供給される離型シートの張力が一定になるように調節するようにしてもよい。またガイドロール60は、離型シート56を導電性箔52と絶縁性樹脂層53との積層体から引きはがす際に必要となる所定の張力を与えるものである。
第1のロール54と第2のロール55とは、回転軸を平行に保持するとともに、これらのロールの間隙に供給される導電性箔52、絶縁性樹脂層53、離型シート56の積層体の供給速度と同期して回転するように駆動される。ここで同期して回転するように駆動するとは、積層体が、第1のロール54と第2のロール55との間隙を通過する速度と、回転する第1のロール54および第2のロール55の表面の接線方向の速度とが実質的に等しくなるように駆動することである。 第1のロール54と第2のロール55との間隙に導入された、導電性バンプ51が形成された導電性箔52と、絶縁性樹脂層53と、離型シート56との積層体は、1対のロールにより加圧されるとともに加熱されて、導電性バンプ51が絶縁性樹脂層53を貫通する。加圧力の大きさは2本のロールの間隙の大きさにより調節するようにすればよい。本発明の多層プリント配線板の製造装置においては離型シート56を積層して加圧しているから、絶縁性樹脂層53を貫通した導電性バンプ51はその形状を損なうことなく保持することができる。
前述のように、従来のような平面プレス方法では、図19(a)のように導電性バンプを形成した導電性箔上に絶縁性樹脂層、貫通用補助材である離型シートをプレス機の平面熱板上にセットしプレスする。しかし、すべての部分に圧力が均一に加わるようにプレスすることは困難で、図19(b)のように押しムラが発生して多数の導電性バンプをすべて貫通させることが困難であった。
この多層プリント配線板の製造装置においては第1のロール54と第2のロール55の間隙に形成される線状の加圧領域により導電性箔52と絶縁性樹脂層53とを離型シート56を介して加圧しているため、従来の平面プレス機とくらべてより均一な加圧を行うことができる。したがって、多数の導電性バンプ51を均一な状態で絶縁性樹脂層に貫通することができる。また、複数の積層体のプレスを連続して行うことができる構成であるため、導電性バンプ51による絶縁性樹脂層53の貫通工程の生産性を大きく向上することができる。また、貫通用補助材として用いる離型シート56も、自動的にはがすことができるため、確実なバンプ貫通とリードタイムの大幅な短縮を行うことができ、生産性を大きく向上することができる。
(実施形態2)図11は本発明の別の実施形態に係るプリント配線板の製造装置において、積層体の加圧を行う1対のロールの構造を概略的に示す図である。
第1のロール54および第2のロール55は、積層体の加圧と同時に加熱も行うものである。積層体の加熱は約100〜160℃程度の絶縁性樹脂層が軟化するけれども硬化しないような温度で行われる。ロールの構造が内部がつまった構造になっていると(図11(a))、ヒーターなどによる加熱によって、ロールの中心部分が大きく膨脹し、偏心が生ずる。第1のロール54と第2のロール55の間隙に狭い部分と広い部分ができてしまうため、積層体の積層体の両端の部分が十分に加圧されず、貫通状態に不具合が多発しやすい。そこで加熱されても偏心を防止するため、このプリント配線板の製造装置では、第1のロールおよび第2のロールとして中空構造のロールを採用することが好適である。
図11(b)はこのような中空構造の第1のロール54および第2のロール55の構造を概略的に示す図である。この例では、第1のロール54と第2のロール55による導電性箔52と、絶縁性樹脂層53と、剥離シート56との積層体を均等にかつ精度よく加圧するとともに加熱することができるように、ロールの内部をくり抜いた中空構造としている。ロールは鉄、ステンレスなどからなっており、ロールの幅は約400〜500mm程度であり、直径は約80〜100mm程度である。また、ロールの肉厚dは約10mm程度、回転軸の直径は約30mm程度である。なお、第1のロールと第2のロールとの間隙はロールを回転駆動する駆動手段と一体的に形成された調節手段61により調節できるようになっている。このため、第1のロール54、第2のロール55は全体的に均一に膨脹、収縮が起こるため、ロール全体にわたって、間隙の大きさを均等に保つことができる。このため第1のロール54と第2のロール55との間隙の大きさを微調整することだけで100%の導電性バンプを貫通することができた。
またこのプリント配線板の製造装置では、第1のロール54、第2のロール55を加熱する加熱手段として赤外線ヒータをロールの内部に備えている。そして、ロールの中心部の温度Tcと端部の温度Teとの差が小さくなるように、赤外線ヒータを構成するコイル62の巻線密度が中心部では小さく、端部では大きくなるように調節して配設している。
図12は、回転ロール内のコイル62の巻線密度を一定にした場合(図12(a))と、中心部では小さく端部では大きくした場合(図12(b))のロールの表面温度の分布の様子を示す図である。コイルの巻線密度を一定にした場合では、ロールの表面温度は中心部の温度Tcが端部の温度Teよりも高くなってしまうが、コイル62の巻線密度を調節することによりロールの表面温度が均一に分布し、ほぼTcとTeとが等しくなっていることがわかる。
このように第1のロール54および第2のロールを加熱する加熱手段の配置を最適化することによって、ロールの偏心を防止することができる。さらに、第1のロール54、第2のロール55の表面温度がより均一になり、導電性バンプの絶縁性樹脂層への貫通をより均一に行うことができる。したがって特性が均一で信頼性の高いプリント配線板を製造することができる。
(実施形態3)本発明者らは、離型シートを張る張力がすべての導電性バンプを良好に貫通させるための条件として非常に重要であることを見出だした。製造するプリント配線板の種類に応じて、備える導電性バンプの高さ、直径には様々なバリエーションがあるから、導電性バンプの形状に応じて、用いる離型シートの厚さや材質も変更する必要がある。さらに用いる離型シートに応じて、その離型シートを張る張力の大きさも調節する必要がある。離型シート56にしわがよったりすると、導電性箔52と絶縁性樹脂層との均一な加圧を行うことができなくなるからである。
図13は、本発明の別の実施形態に係るプリント配線板の製造装置が備える離型シートの供給ロール57の構造の一例を概略的に示す図である。図9に示したプリント配線板の製造装置では、離型シート56の供給ロール57よりも巻き取りロール58の方を速く回転させる必要がある。また、ロール径の変化による張力の変化を緩衝するようにする必要がある。図13に例示した供給ロール57では、スプリング71とネジ72とによって回転軸の左右両側から供給ロール57加圧できるようになっている。そして、摩擦の小さなポリフッ化ビニリデン等からなる滑り板73をかませることにより離型シート56を連続的に滑らかに供給することができるようにしている。軸の両側から所定の力が加わると、回転軸の回転に追従して供給ロールが回転し、離型シートが所定の張力を維持して供給されるようになっている。したがって、瞬間的に大きな力が加わったような場合でも、供給ロール57と、第1のロール54および第2のロール55との間の離型シー56の張力の大きさを一定に保つことができる。図14は、図13に例示したような張力を調節することができる供給ロールを用いた場合と用いない場合の、供給ロールと第1および第2のロールの間に張られる離型シートの張力の変動を模式的に示すグラフである。このように図13に例示したような張力調節手段を備えることにより離型シートの張力の変動を小さくすることができる。
また、離型シートの張力の調節は、ガイドロール59を可変式にして、このガイドロール59の位置により行うようにしてもよい。
このような構成を採用することにより、離型シート56はバンプの形状や大きさなどに応じて予め定められた張力を保って安定して供給することができる。したがってサイズの小さな導電性バンプや厚みの小さな絶縁性樹脂層についても導電性バンプの貫通を安定的に行うことができる。
(実施形態4)図15は本発明のさらに別の実施形態に係るプリント配線板の製造装置の構成を概略的に示す図である。図16は図15に示したプリント配線板の製造装置の第1のロールと第2のロールの部分を拡大して概略的に示す図である。
このプリント配線板の製造装置は、導電性バンプ51が形成された導電性箔52と、セミキュア状態のプリプレグなどの絶縁性樹脂層53との積層体の第1のロール54と第2のロール55との間隙への供給角度を、第2のロール55に添うようにシフトさせたものである。導電性箔52と絶縁性樹脂層53との積層体の、第1のロール54と第2のロール55との間隙への供給角度は、ガイドロール64a、64bにより調節するようにすればよい。このとき、導電性箔52に形成された導電性バンプへ加わる力の方向が、できるかぎり導電性バンプの軸方向、すなわち導電性箔の方線方向と等しくなるように調節しながら供給することが好適である。このようにすることにより、例えば略円錐形状の導電性バンプのアスペクト比が大きいような場合に、導電性バンプが導電性箔から剥がれたり、変形したりするのを防止することができる。
さらに、ガイドロール64a、64bを可変式にして2本のロールの間隙への侵入角度を調節することにより、導電性バンプ51のサイズが相違するような複数種のプリント配線板を製造する場合においても対応することができるようになるとともに、導電性バンプ51の大きさ、形状によらず絶縁性樹脂層53へ均一な貫通を行うことができる。
さらに、積層体の供給角度を、第2のロール55に添うようにシフトさせることにより、積層体と第2のロール55との接触面積を大きくすることができる。したがって、第1のロールと第2のロールとの間隙を通過する以前に、第2のロールにより導電性箔52と絶縁性樹脂層53との積層体の予備的な加熱を行うことができ、導電性バンプによる絶縁性樹脂層53の貫通をより均一にかつ滑らかに行うことができ、形成するプリント配線板の品質を向上し、生産性も向上することができる。
(参考例)図17は、参考例に係るプリント配線板の製造装置の構成を概略的に示す図である。
このプリント配線板の製造装置は、導電性箔とプリプレグ等の絶縁性樹脂シートとを積層するための装置であって、絶縁性樹脂シート53を保持する平面状の吸着面81を有する保持手段82と、導電性箔52を収容するとともに、側面を有する収容室84と、前記絶縁性樹脂シート53を保持した前記保持手段82を、前記開口部83を通じて前記収容室84内に導入するとともに、前記導電性箔52上に前記絶縁性樹脂シート53を積層するように移動する手段(不図示)と、前記収容室84内の圧力を収容室外の圧力よりも高くなるように調節する圧力調節手段(不図示)と、前記収容室84の前記開口部83の外側に配設され、前記絶縁性樹脂シート53の前記保持手段82に吸着された面と反対側の面を清浄化する清浄化手段87とを具備したものである。
図18は、平面状の吸着面81を有する保持手段82の構造の例を概略的に示す図である。吸着面81には多数の吸着孔89が形成され、吸着面81と反対側の面は減圧されている。吸着面81の形成する孔は、プリプレグなどの絶縁性樹脂シート53をできるだけフラットに保持することができるように形成する必要がある。絶縁性樹脂シート53にしわがよると、その部分から樹脂粉末が飛散し、周囲を汚染してしまうからである。吸着面81は、例えばステンレス板に微小な孔を多数形成するようにしてもよいし、また例えば吸着面を多孔質材料により形成するようにしてもよい。
収容室84は保持手段82に保持されて供給される絶縁性樹脂シート53と積層される導電性箔52を保持するための空間である。この収容室84は、内部の気圧が外部の気圧よりも高くなるように調節されており、収容室84内部への収容室84の外部からのプリプレグ粉末などの侵入を防ぐ構造になっている。
収容室84には、絶縁性樹脂シート53を保持した保持手段82を導入するための開口部83を有している。開口部83は保持手段82の大きさ、形状にあわせて形成するようにすればよい。
また収容室の底面近傍の互いに対向する側面には開口部88a、88bが形成されている。開口部88aは導電性箔を収容室内に導入するためのものであり、もう一方の開口部88bは導電性箔と絶縁性樹脂シートの積層体を排出するためのものである。開口部88bから排出された積層体は、例えば図9、図15に示したプリント配線板の製造装置へ導入するようにしてもよい。
収容室84の開口部83の外側に隣接して、絶縁性樹脂シート53の保持手段82に吸着された面と反対側の面を清浄化する清浄化手段87が設けられている。この清浄化手段87の形態としては例えば真空吸引機等をあげることができる。この場合、清浄化手段87の吸引力は、保持手段82により吸着力よりも小さくしなくてはならない。
なお、図18に示したプリント配線板の製造装置においては保持手段82、吸着面81、収容室84、清浄化手段87等は、摩擦その他により帯電して、プリプレグ粉末などを吸着してしまうのを防止するために接地電位に保持されている。
このような構成を有するプリント配線板の製造装置の動作について説明する。
まず保持手段82により、所定の場所にストックされた絶縁性樹脂シート53を吸着して保持する。
一方、周囲よりも高気圧に保たれた収容室84内には、開口部88aを通じて、例えば導電性バンプ51が形成された導電性箔52が導入されている。
図示しない移動手段により、絶縁性樹脂シート53をその平面状の吸着面81に保持した保持手段82を、収容室84の開口部83を通じて収容室84の内部に導入する。このとき絶縁性樹脂シート53の吸着面81に保持された面とは反対側の面は、収容室84の開口部83の外側に沿設された例えば減圧吸引などの清浄化手段87により樹脂粉末などの汚染が除去されて清浄化される。このとき、保持手段82、吸着面81、収容室84、清浄化手段87等は接地電位に保持されているために、効果的に樹脂粉末などの汚染を取り除くことができる。
収容室84の内部に導入された絶縁性樹脂シートは、導電性箔52と位置合わせされた上で導電性箔52と積層される。積層後は、保持手段による吸着は解除され、導電性箔52と絶縁性樹脂シート53との積層体は開口部88bから排出され、例えば図9、図15に示したプリント配線板の製造装置へ導入されて、導電性箔52に形成された導電性バンプ51により絶縁性樹脂シート53の貫通が行われる。
また、絶縁性樹脂シートがストックされている場所についても、絶縁性樹脂シートを構成する樹脂の粉末などが周囲に飛散するのを防止するために、収容室84のような空間を設けてその内部に保持するようにしてもよい。
このような構成を採用することにより、このプリント配線板の製造装置は、例えば銅箔などの導電性箔表面に例えばプリプレグなどの絶縁性樹脂の粉末の付着を大幅に減少することができる。したがって、このような樹脂粉末の付着によるエッチング不良や、打痕の発生などを抑制することができ、プリント配線板の品質を向上するとともに、生産性も向上することができる。
11…循環手段、12…印刷手段、13…排出手段、14…導電性バンプ、15…ピット、16…メタルマスク、17…導電性箔、18…導電性ペースト、19…スキージ、20…乾燥手段、31…振分式投入方向変換機、32a,32b…ストックコンベア、33a,33b…導電性箔投入機、34a,34b…排出搬送機、35a,35b…方向変換機、36a,36b…コンベア、51…導電性バンプ、52…導電性箔、53…絶縁性樹脂層、54…第1の回転ロール、55…第2の回転ロール、56…離型シート、57…離型シート供給ロール、58…離型シート巻き取りロール、59,60…ガイドロール(離型シート)、61…調節手段、62…コイル、63…搬送ロール、64a,64b…ガイドロール、81…吸着面、82…保持手段、83…開口部、84…収容室、87…清浄化手段、88a…開口部(導入)、88b…開口部(排出)、89…吸着孔。