JP2008300224A - 絶縁電線及びケーブル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属導体の外周にリアクターブレンド型ポリオレフィン系熱可塑性樹脂を含む絶縁体が設けられた絶縁電線において、前記リアクターブレンド型ポリオレフィン系熱可塑性樹脂には、結晶性ポリプロピレンがモノマー単位で51〜85モル%含まれる。
【選択図】 図1
Description
熱可塑性エラストマーのブレンドの方法は、(1)単純ブレンド型、(2)動的架橋型、(3)リアクターブレンド型の3種類に大別される。
(1)の単純ブレンド型は、2種類以上のエラストマーを混合機により機械的にせん断を加えて混練するものである。(2)の動的架橋型は、マトリックス相となるエラストマーに、分散相となるエラストマーをブレンドする時に架橋を加えることで、分散相の凝集を防ぐものである。(3)のリアクターブレンド型は、多段重合法によって製造されるもので、各段階の重合で生成された樹脂成分が重合時のリアクター中でブレンドされるものである。
なお、関連する従来技術には、(3)のリアクターブレンド型を用いたオレフィン系組成物を、可撓性に優れたものとしたものがある(例えば、特許文献1)。また、可撓性、耐傷つき性、引張伸び特性のバランスに優れた電線の絶縁体に適用したものがある(例えば、特許文献2)。また、熱可塑性オレフィン系組成物を、耐熱性、引張強度に優れた電線の絶縁体に適用したものがある(例えば、特許文献3)。
しかしながら、性状の異なるポリオレフィンのブレンドは、相溶性が悪く分散相を微細
にすることは困難であった。
例えば、(1)の単純ブレンド型では、マトリックス相に分散相が大きく分散した海島構造となるために、また、(2)の動的架橋型では、架橋を加えることで、分散相の凝集を防ぎ、分散相の径を小さくしているものの、マトリックス相内に分散相が大きく分散しすぎるために、マトリックス相のポリオレフィンの性質が支配的となり分散相の特徴を生かしにくい。また、(3)のリアクターブレンド型は、多段重合法により製造されるため、(1)、(2)に比べて、例えば結晶性ポリオレフィンからなるマトリックス相内に、非晶性ポリオレフィンからなる分散相をより細かく分散させることができるものの、従来のリアクターブレンド型の熱可塑性エラストマーのブレンド物では、結晶性ポリオレフィンが有する耐油性と非晶性ポリオレフィンが有する可撓性とを充分両立させるほど微細に分散させることは難しかった。
種々の検討を行った結果、リアクターブレンド型ポリオレフィン系熱可塑性樹脂をベースにすることで、所望の熱可塑性エラストマーを得ることができることが判明した。そし
て、リアクターブレンド型ポリオレフィン系熱可塑性樹脂は、耐熱性、耐油性において優れた結晶性ポリプロピレンの含有量を一定範囲(モノマー単位で51〜85モル%)内に規定することにより、電線及びケーブルとしての耐油性及び可撓性を両立できることを見出した。
この知見を基に、以下、本発明を実施するための最良の形態を説明するが、この実施の形態は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能である。
絶縁電線・絶縁ケーブルは、図1に示すように、断面が丸形状で長尺な金属導体1の外周を、絶縁体の絶縁層2で被覆したものである。なお、絶縁電線及び絶縁ケーブルの断面形状は丸形状に限らず、板状の銅板よりスリット加工したり、丸線を圧延したりして得た平角状の金属導体に絶縁層を被覆したものでもよい。
また、絶縁電線及び絶縁ケーブルは、金属導体に絶縁体が被覆されていればよく、他の実施形態としては、金属導体1の外周を絶縁層2で被覆し、更にその外周をシース層3で被覆した構造のもの、或いは、図3に示すように、金属導体1を絶縁層2で被覆したものを複数本撚り合わせ、それらの外周をシース層3で被覆した構造のものなどが挙げられる。
上記熱可塑性エラストマーの結晶性ポリプロピレンの構成比をモノマー単位で51〜85モル%に規定したのは、85モル%を超えると、可撓性の指標となる曲げ弾性率が20MPaを超えてしまい、上記絶縁層2を有する絶縁電線・ケーブルは、軟質PVC並の可撓性が得られないからである。そのため、上記絶縁電線の曲げ弾性率は20MPa以下であることが望ましい。また、51モル%よりも少なく回ると、耐油性を満足できなくなる。
ここでいう他のオレフィン系ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロ
ピレン−エチレンコポリマー、エチレン−メチルアクリレートコポリマー、エチレン−エチルアクリレートコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−ブテンコポリマー、エチレン−メチルメタアクリレートコポリマー、スチレン−エチレンブチレン−スチレンコポリマーなどが挙げられる。
なお、可撓性を損なわない範囲ならば、他のオレフィン系ポリマー以外にも、難燃剤、着色剤、充填剤、滑剤等を適宜加えても勿論よい。
図4には、実施例における絶縁体(樹脂組成物)の組成と各種特性の評価試験の結果を示し、図5には、比較例における絶縁体(樹脂組成物)の組成と各種特性の評価試験の結果を示す。
評価試験に用いた試料は、図4に示す実施例の組成の樹脂組成物、及び図5に示す比較例の組成の樹脂組成物を、厚さ2mmのシート状に押出成形して作製した。これら試料に対して、初期の引張強さ及び引張伸び試験、耐熱性試験、耐油性試験、可撓性試験を行った。
また、配線性の評価試験に用いた絶縁電線は、図1に示す構造であって、7本撚りの銅線で導体外径3.6mmとした金属導体1に、図4及び図5に示す樹脂組成物を押出成形により被覆して外径を12mmの被覆層2を形成した。この絶縁電線を用いて配線性試験を行った。
TPO:ポリオレフィン系熱可塑性樹脂
リアクター型TPO−A(密度:0.87g/cm3、MI:7g/10min、結晶性ポリプロピレン単位:51モル%)
リアクター型TPO−B(密度:0.87g/cm3、MI:7g/10min、プロピレン単位:63モル%)
リアクター型TPO−C(密度:0.89g/cm3、MI:7g/10min、プロピレン単位:85モル%)
リアクター型TPO−D(密度:0.89g/cm3、MI:7g/10min、プロピレン単位:45モル%)
リアクター型TPO−E(密度:0.89g/cm3、MI:7g/10min、プロピレン単位:90モル%)
動的架橋型TPO(密度:0.97g/cm3)
直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.92g/cm3、MI:2g/10min)
エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル:32%、MI:0.2g/10min)
ランダムタイプポリプロピレン(密度:0.90g/cm3、MI:11g/10min)
難燃剤(非デカブロ型臭素系難燃剤)
酸化防止剤(フェノール系老化防止剤)
(1)初期の引張強さ及び引張伸び試験
JIS C−3005に準拠して厚さ2mmのシート状の試料を用い、500mm/minの速度で引張強さ試験を実施した。初期の引張強さは13MPa以上、引張伸び率は300%以上を目標値とした。
引張伸び率は次式(a)で算出する。
(a)引張伸び率(%)=[(引張試験後の試料長)−(引張試験前の試料長)]×100/(引張試験前の試料長)
上記初期の引張試験に用いた試料を、JIS C−3005に準拠した恒温槽内に100℃で96時間暴露処理した後、冷却した試料に対して、引張試験を行って、引張強さ残率及び引張伸び残率を測定した。引張強さ残率及び引張伸び残率は、60%以上を目標値とした。
引張強さ残率及び引張伸び残率は、次式(b)及び(c)で算出する。
(b)引張強さ残率(%)=(試験後の引張強さ)×100/(試験前の引張強さ)
(c)引張伸び残率(%)=(試験後の引張伸び)×100/(試験前の引張伸び)
上記初期の引張試験に用いた試料を、JIS C−3005に準拠して、120℃に加熱したIRM−902試験油中に4時間浸漬した後、油を拭き取り、室温で4時間冷却した試料に対して引張試験を行って、引張強さ残率及び引張伸び残率を測定した。引張強さ残率及び引張伸び残率は、80%以上を目標値とした。
上記初期の引張試験に用いた試料を、JIS K−7171に準拠して、両端支持の試験片の中央に集中加重を加え、試験片が破壊又は規定のたわみに達するまで5mm/minでたわませ、その間の試験片に付加される加重、すなわち曲げ弾性率を測定した。曲げ弾性率は、20MPa以下を目標値とした。
上述した絶縁電線を、90度に曲げたガス管内に電線を押し込んで、電線の通過性を軟質PVC被覆の絶縁電線と比較し、軟質PVC被覆の絶縁電線と同等以上なら“○(合格)”、そうでないなら“×(不合格)”とした。
図4に示したように、実施例1〜7における組成物には、オレフィン系ポリマー100重量部に対して、難燃剤20重量部と酸化防止剤1重量部が加えられている。
実施例1〜3は、結晶性ポリプロピレンがモノマー単位で51〜85モル%含むリアクター型ポリオレフィン熱可塑性樹脂のみが用いられている。
実施例4、5は、結晶性ポリプロピレンをモノマー単位で51〜85モル%含むリアクター型ポリオレフィン熱可塑性樹脂を2種ブレンドして用いている。例えば、実施例4では50重量部のリアクター型TPO−Aと50重量部のリアクター型TPO−Bとが配合されている。
実施例6、7は、結晶性ポリプロピレンをモノマー単位で51〜85モル%含むリアクター型ポリオレフィン系熱可塑性樹脂と他のオレフィン系ポリマーとのブレンド物が用いられている。
図5に示したように、比較例1〜9における組成物にも、オレフィン系ポリマー100重量部に対して、難燃剤20重量部と酸化防止剤1重量部が加えられている。
比較例1〜3は、リアクター型以外のポリオレフィン熱可塑性樹脂、又はプロピレンをモノマー単位で51〜85モル%の範囲で含んでいないリアクター型ポリオレフィン熱可塑性樹脂のみが用いられている。
しかしながら、比較例1〜9では、結晶性ポリプロピレンを51〜85モル%含んだリアクター型TPOを用いておらず、目標とする特性を満足できなかった。
比較例1の動的架橋型TPOのみを用いたものは、耐油性における引張強さ残率が80%未満であり耐油性を満足しなかった。また、曲げ弾性率が20MPaを超え、可撓性及び配線性を満足できなかった。
比較例2の結晶性ポリプロピレンを51モル%未満しか含んでいないリアクター型TPOを用いたものは、耐油性における引張強さ残率が80%未満であり、耐油性を満足しなかった。
比較例3の結晶性ポリプロピレンを85モル%超えて含んだリアクター型TPOを用いたものは、曲げ弾性率が20MPaを超え、可撓性及び配線性を満足できなかった。
比較例4〜9のように直鎖状低密度ポリエチレンとランダムタイプポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体とランダムタイプポリプロピレンを各々単純ブレンドしたものは、いずれも曲げ弾性率が20MPaを超え、可撓性及び配線性を満足できなかった。
加えて、比較例4〜6においては、耐油性における引張強さ残率が低いうえに試料表面が著しく歪んだため引張伸び残率は測定不可であった。また、比較例7においては、耐油性における引張強さ残率が低かった。
2 絶縁層
3 シース層
Claims (6)
- 金属導体の外周にリアクターブレンド型ポリオレフィン系熱可塑性樹脂を含む絶縁体が被覆された絶縁電線において、前記リアクターブレンド型ポリオレフィン系熱可塑性樹脂には、結晶性ポリプロピレンがモノマー単位で51〜85モル%含まれていることを特徴とする絶縁電線。
- 前記絶縁体の曲げ弾性率は、20MPa以下であることを特徴とする請求項1に記載の絶縁電線。
- 前記絶縁体は、前記リアクターブレンド型ポリオレフィン系熱可塑性樹脂と他のオレフィン系ポリマーとのブレンド物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の絶縁電線。
- 金属導体の外周にリアクターブレンド型ポリオレフィン系熱可塑性樹脂を含む絶縁体が被覆された絶縁電線において、前記リアクターブレンド型ポリオレフィン系熱可塑性樹脂には、結晶性ポリプロピレンがモノマー単位で51〜85モル%含まれていることを特徴とする絶縁ケーブル。
- 前記絶縁体の曲げ弾性率は、20MPa以下であることを特徴とする請求項4に記載の絶縁ケーブル。
- 前記絶縁体は、前記リアクターブレンド型ポリオレフィン系熱可塑性樹脂と他のオレフィン系ポリマーとのブレンド物であることを特徴とする請求項4又は5に記載の絶縁ケーブル。
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