以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下において、微細周期マスクパターンとは、マスク上に形成された1次元の周期的なマスクパターンであって、その周期がそのマスクパターンを投影する投影光学系の解像限界程度に微細なマスクパターンをいう。
また、中密度マスクパターンとは、マスク上に形成された周期的なマスクパターンであって、その周期がマスクパターンを投影する投影光学系の解像限界の1.5倍程度以上であるマスクパターンをいう。また、ここで投影光学系の解像限界とは、使用する波長をλとしたとき、投影光学系の開口数NAによって、λ/NAと表わされる値をいう。
そして、パターンとは、マスクに照射された後の照明光、すなわち露光光の明暗分布の形状を表わすものである。また、マスクパターンとは、マスク上に形成された透過部と遮光部、あるいはさらに位相シフト透過部の一つまたはそれらの組合せの分布形状を表わすものである。そして、露光パターンとは、基板上に形成されたフォトレジスト等の感光材料に露光される露光量分布の形状を表わすものである。さらに、基板パターンとは、基板上に形成された導電部材、絶縁部材又は半導体部材の少なくとも一部分を表わすものである。
図1は、本発明の一実施形態における露光装置の概略の一例を示す斜視図である。図1において、基板ステージPSは、フラットパネルディスプレイの画面表示部を形成するためのガラス基板等の基板Pを保持する。基板ステージPSの上方(図中の+Z方向)には、基板ステージPS上の基板Pに対してパターンを露光するための複数(本実施形態においては7個)の光学ユニットOU1〜OU7が配置される。光学ユニットOU1〜OU7は、図中のY方向(走査方向Y)と略直交するX方向(非走査方向X)に沿って千鳥状に配置される。ここで、千鳥状に配置するとは、X方向に沿って、第1列側(+Y方向)と第2列側(−Y方向)とに互いに交互に配置されることである。例えば、図1においては、光学ユニットOU1〜OU4は第1光学ユニット群OUG1として第1列側に所定の間隔で配置され、光学ユニットOU5〜OU7は第2光学ユニット群OUG2として第2列側に所定の間隔で配置されている。
ここで、光学ユニットOU1〜OU7の一例について説明する。例えば、光学ユニットOU1は、パターンを基板Pに露光するための投影光学系PL1と、照明光を照射するための照明光学系IL1とを備え、さらに、投影光学系PL1と照明光学系IL1との間には、マスクステージ(不図示)に保持されるマスクM1を有する。投影光学系PL1は、マスクステージに配置されるマスクM1における視野領域内の像を基板Pにおける像野領域内に形成する光学系で構成される。また、照明光学系IL1は、光源からの照明光をマスクステージに保持されるマスクM1に対してほぼ均一に照明する光学系で構成される。また、照明光学系IL1のマスクM1上での照明領域は、マスクM1上に形成されたマスクパターンを含むマスクパターン領域の全体領域又は一部領域である。
なお、光学ユニットOU1〜OU7の数は、上記の例の7個に限られるものではなく、1個を含む任意の数であっても構わない。
ところで、第1光学ユニット群OUG1と第2光学ユニット群OUG2とは、照明光学系IL1〜IL7の大きさ、特にY方向の大きさにより生じる互いの機械的な干渉を避けるため、Y方向に所定間隔だけ離して配置されている。しかしながら、露光装置の処理能力の向上のため、不要な走査動作及び走査時間を短縮するためには、第1光学ユニット群OUG1と第2光学ユニット群OUG2とは、機械的な干渉を回避しうる限りにおいて可能な限りY方向に近接して配置されることが望ましい。
基板ステージPSは、定盤BP上をガイド溝GL、GRに沿って、基板Pの面内方向の1つである図中のY方向に移動可能である。すわなち、基板ステージPSは、光学ユニットOU1〜OU7に対して相対走査可能とする可動機構の一例である。基板ステージPSのY方向への移動及び位置制御とX方向への微動及び位置制御とは、基板ステージPSに設けられた可動子LM1、LM2と定盤BPに設けられた固定子LG1、LG2とからなるリニアモーターシステムと、不図示の位置制御システムとにより行われる。
上述の露光装置による露光中に、基板PをリニアモーターシステムによりY方向に移動することにより、露光中に光学ユニットOU1〜OU7に対して基板Pの面内方向であるY方向に相対走査することができ、即ち、走査露光をすることができる。この走査露光により、基板よりも外形の小さなマスクを使用しても、基板PのY方向のほぼ全面にパターンを露光することが可能になる。ここで、相対走査とは、光学ユニットOU1〜OU7は固定され、基板のみがY方向に移動するものである。つまり、走査露光とは、光学ユニットOU1〜OU7は固定のまま、基板のみがY方向に移動しつつパターンを基板へ露光するものである。
なお、上記説明で使用した図1のXYZ座標の座標軸は、説明の都合上便宜的に定めた方向を示す座標軸であって、露光装置における座標軸等の選択は、任意であって構わないことは言うまでもない。ただし、以降の各図における本実施形態の露光装置に対するXYZ座標軸の方向は、図1に示すXYZ座標系と同一にしてある。
ここで、本実施形態におけるマスクの概要について、図2を用いて説明する。図2に示す如く、ガラス等の透光性の基板からなるマスクM1は、クロム膜等の遮光膜からなる遮光帯DA1に囲まれた微細周期マスクパターン領域IPA及び中密度マスクパターン領域MPAの2つのパターン領域で構成される。微細周期マスクパターン領域IPA及び中密度マスクパターン領域MPAは、Y方向に隣接して配置される。微細周期マスクパターン領域IPAはマスクパターンとして透過部と遮光部とを有する。また、中密度マスクパターン領域MPAはマスクパターンとして透過部と遮光部とを有する。さらに、微細周期マスクパターン領域IPAは、その透過部の一部に位相部材(例えば誘電体膜)を有するものであってもよい。その場合、位相部材は、その位相部材を透過した照明光と位相部材の付加されていない透過部を透過した照明光との間に、(2n+1)π[rad](但し、nは整数)の位相差を与える。なお、微細周期マスクパターン領域IPA及び中密度マスクパターン領域MPAに形成されるマスクパターンの詳細については後述する。
上述の投影光学系PL1〜PL7と基板PとのXY方向の配置関係の詳細を、図3(A)、(B)を用いて説明する。図3(A)に示す如く、投影光学系PL1〜PL4は、同一のY座標上でX方向に間隔XP1をもって配置される。残る3つの投影光学系PL5〜PL7は、投影光学系PL1〜PL4とはY方向に間隔YP1だけ離れた位置で、X方向に間隔XP1をもって配置される。このとき、投影光学系PL1と投影光学系PL5とのX座標は、上記間隔XP1の半分である間隔XP2だけ、ずれている。
上述の通り、本実施形態の露光装置では、光学ユニットOU1〜OU7に対して基板PをY方向に相対走査しながら、基板P上への露光を行う。従って、この走査露光によって、基板P上には、各投影光学系PL1〜PL7によりパターンが露光された露光領域である、X方向に所定の幅を有しY方向に伸びる複数の部分領域が形成される。図3の部分領域E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7は、それぞれ投影光学系PL1、PL2、PL3、PL4、PL5、PL6、PL7によりパターンが露光される領域である。
また、基板P上の各部分領域の間には、重複領域(オーバーラップ領域)V1、V2、V3、V4、V5、V6が存在してもよい。この場合、たとえば重複領域V1は、それに隣接する部分領域E1及びE5に対応する2つの投影光学系PL1及びPL5によりパターンが重複して露光される領域である。他の重複領域V2〜V6も同様に投影光学系PL2〜PL7のうちのX方向に隣接するいずれか2つの投影光学系によりパターンが露光される領域である。なお、重複領域V1〜V6の詳細については、後述する。
次に部分領域E1内の任意の位置への露光について説明する。はじめに、基板Pを光学ユニットOU1〜OU7に対して+Y方向に走査しつつ、パターンを基板Pに露光する場合を想定する。この場合、光学ユニットOU1に配置されるマスクM1上の微細周期マスクパターン領域IPAと中密度マスクパターン領域MPAとの配置関係により、基板P上の露光対象位置にはまず微細周期マスクパターン領域IPAにおけるパターンの露光がなされる。そして、基板Pの移動に伴い、基板P上の露光対象位置が中密度マスクパターン領域MPAの下に移動した後に、中密度マスクパターン領域MPAにおけるパターンの露光がなされる。
すなわち、部分領域E1には、微細周期マスクパターン領域IPAにおけるパターンの露光と中密度マスクパターン領域MPAにおけるパターンの露光とによる合成露光(2重露光)がなされることになる。なお、基板Pを−Y方向に走査しつつ露光する場合についても、微細周期マスクパターン領域IPAにおけるパターンと中密度マスクパターン領域MPAにおけるパターンとの露光の順序が入れ替わるだけで、合成露光(2重露光)がなされることに変わりはない。また、部分領域E1についてのみでなく他の部分領域E2〜E7についても、上述の部分領域E1と同様である。
次に、本実施形態に適用可能なマスクM1〜M7の一例について説明する。図4は、本実施形態におけるマスクパターンの一部が形成されたマスクM1の構成を表わす図である。図4に示す如く、第1領域IPA1には、所定波長の光ビーム(例えば、i線、KrFエキシマレーザ等)に対する透過部IBP11,IBP12と遮光部IDP11(クロム膜等)とによりマスクパターンが形成されている。また、第2領域MPA1には、所定波長の光ビーム(例えば、i線、KrFエキシマレーザ等)に対する透過部MBP11と遮光部MDP11(クロム膜等)とによりマスクパターンが形成されている。
ここで、第1領域IPA1に形成されるマスクパターンは、微細周期マスクパターンを含むマスクパターンであり、第2領域MPA1に形成されるマスクパターンは、中密度マスクパターンを含むマスクパターンである。
第1領域IPA1において、透過部IBP11,IBP12と遮光部IDP11とは、走査方向と略直交するX方向に沿って配置されている。第2領域MPA1において、透過部MBP11と遮光部MDP11とは、走査方向と略直交するX方向に沿って配置されている。また、第1領域IPA1に形成されたマスクパターンは、所定の透過部IBP12に、透過光の位相を、例えばπ[rad]だけ変化させる膜厚の位相部材PSP(例えば誘電体膜)を設けた透過部IBP12を有する構成である。すなわち、位相部材PSPは、その位相部材PSPを透過した照明光と位相部材PSPの付加されていない透過部IBP11を透過した照明光との間に(2n+1)π[rad](但し、nは整数)で定義される位相差を与える。
第2領域MPA1に形成されたマスクパターンは、第1領域IPA1に形成された所定の遮光部IDP11に対応する位置に、遮光部MDP11が配置された構成である。具体的には、第2領域MPA1に形成される遮光部MDP11は、第1領域IPA1に形成された特定の遮光部IDP11のX方向における幅の中心線に、第2領域の特定の遮光部MDP11のX方向における幅の中心線が重なるように形成される。
また、第2領域MPA1の遮光部MDP11は、X方向に間隔XDP1をもって配置される。さらに、第2領域MPA1の遮光部MDP11のX方向における幅W42は、第1領域IPA1の遮光部IDP11のX方向における幅W41に対して、概ね1〜2倍の幅を有するように構成される。なお、第2領域MPA1に形成される遮光部MDP11の数は、基板P上に露光する所定本のパターンに応じて設定される。
次に、本実施形態における微細周期露光及び中密度露光の概略について、図5及び図6を用いて説明する。図5は、第1領域IPA1及び第2領域MPA1を備えたマスクM1を用いた微細周期露光の概略を表わす断面図である。発光コントローラLC1により発光・停止が制御される半導体レーザ等のレーザ又は発光ダイオード等からなる光源LS1から発せられた照明光I1は、照明光学系IL1によってほぼ均一な照明光として成形され照明光I2となる。また、照明光学系IL1の下方には、照明光I2によって照明されるマスクM1が配置される。
照明光I2がマスクM1上の第1領域IPA1に照射されると、位相部材PSPを有する透過部IBP12を透過した照明光I3と位相部材の付加されていない透過部IBP11を透過した照明光I4とが発生する。そして、これら2つの照明光I3、I4は、マスクM1の近傍の面S1上に干渉縞IF1を形成する。従って、周期方向がX方向の干渉縞IF1による露光パターンが投影光学系PL1を介して基板P上に露光される。干渉縞IF1の周期方向はX方向であるから、その干渉縞の明暗パターンは、X方向に直交するY方向、すなわち上述の走査方向に平行である。
なお、本実施形態の露光装置は、光学ユニットOU1〜OU7に対して基板PをY方向に走査しつつ露光するものであるから、上述の微細周期露光により基板P上に露光される露光パターンは、上記干渉縞IF1の明暗分布がY方向に拡大されたものと等しくなる。このとき、干渉縞IF1の周期方向はX方向であるから、それと直交する方向への走査露光によって干渉縞IF1のコントラストが低下することはない。
図6は、第1領域IPA1及び第2領域MPA1を備えたマスクM1を用いた中密度露光の概略を表わす断面図である。ただし、発光コントローラLC1、光源LS1、照明光学系IL1などの構成は、図5に示した微細周期露光と同一である。図5に示した微細周期露光との相違は、マスクM1上の第1領域IPA1ではなく、第2領域MPA1を用いることである。図6に示す如く、照明光I2がマスクM1上の第2領域MPA1に照射されると、マスクM1のうち透過部MBP11に相当する部分からは照明光I2が透過し、他の部分(遮光部MDP11が形成された部分)からは照明光I2は透過しない。よって、マスクM1の近傍の面S1上には、透過部MBP11の形状に対応して照明光I5の光量分布ID1が形成される。従って基板P上に照明光I5のビームスポットを複数形成することができる。このビームスポットの数は、マスクM1上に形成する透過部MBP11又は遮光部MDP11の数によって可変である。
ところで、本実施形態における露光装置は、光学ユニットOU1〜OU7に対して基板PをY方向に走査しつつ露光するものであるから、基板Pに露光される露光パターンは、透過部MBP11が形成するビームスポットの形状がY方向に拡大されたものとなる。
また、基板PのY方向への走査中に、光学ユニットOU1〜OU7と基板Pとの相対位置に応じて、照明光学系IL1〜IL7に入射させる照明光を発する光源の発光・停止を制御することで、基板Pに露光されるパターンのY方向の形状についても可変とすることができる。そして、照明光の照射又は非照射を時分割に切換え可能とする切り替え機構は、上記のような光源の発光・停止の制御によるものだけではなく、光源と基板Pとの間の光路内に、機械的なシャッターや、電気光学素子を利用したシャッターを設けるものであってもよい。
なお、基板P上に露光すべきビームスポットの位置及び形状を変更可能にするために、本実施形態における露光装置は、異なるマスクパターンを有する複数のマスクを交換可能に装填可能とする交換機構を有することが望ましい。交換機構は、例えば、マスクM1を保持する不図示の保持機構(例えば、マスクステージ)と、その保持機構に対してマスクM1を搬送する機構からなるものを採用することができる。その場合、その保持機構にはマスクM1を位置決めするための基準ピンや位置センサーを設けることが望ましい。
本実施形態の露光装置は、上述の如く、マスクM1〜M7上に形成された第1領域IPA1の微細周期マスクパターンと第2領域MPA1の中密度マスクパターンとの双方による合成露光を行い、高精度な露光パターンの露光を可能とするものである。そこで、以下、本実施形態の露光装置を用いて最終的に基板P上に露光パターン(合成パターン)を露光する露光方法の第1の実施形態について、図7を用いて説明する。なお、一実施形態の説明において、基板P上に塗布されるレジストは、ポジ型フォトレジストを使用するものとする。
図7(A)は、図4に示したマスクM1上の位相部材PSPを有する第1領域IPA1に照明光を照射して形成されるパターンを、基板P上に露光した露光パターンの一部分を表わす図である。図中の斜線部は露光光がレジストを感光させるのに必要な露光量(以下、基準露光量という)より少ない部分(以下、暗部という)を表わし、斜線のない部分は露光量が基準露光量より多い部分(以下、明部という)を表わす。
マスクM1上の位相部材PSPを有する第1領域IPA1に照明光を照射して形成される露光パターンPI11は、線状の明部である明線部BL11と線状の暗部である暗線部DL11がX方向に中心間隔P71で並ぶ露光パターンである。なお、暗線部DL11のX方向の幅は、幅W71である。
図7(B)は、図4に示したマスクM1上の第2領域MPA1に照明光を照射して形成されるパターンを、基板P上に露光した露光パターンPM11の一部分を表わす図である。基板Pは光学ユニットOU1に対してY方向に走査しつつ露光される。このため、基板P上であって、そのX座標が各透過部MBP11のX座標と一致する部分は、走査露光により露光光が照射され、明部BL12となる。一方、そのX座標が遮光部MDP11と一致する部分には走査露光によって露光光が照射されないため、暗部DL12となる。このとき、暗部DL12のX方向の幅W72は、マスクM1上の遮光部MDP11のX方向の幅W42と概ね等しくなる。また、複数の暗部DL12のX方向の中心間隔は、遮光部MDP11のX方向の中心間隔XDP1と一致する。
次に、上述した露光パターンPI11と露光パターンPM11との合成パターンである露光パターンPS11について、図7(C)を用いて説明する。第1領域IPA1又は第2領域MPA1に照明光を照射して基板P上に形成された露光パターンで明部となる部分は、合成パターンである露光パターンPS11においても明部BL13となる。従って、露光パターンPS11中の暗部は、露光パターンPI11と露光パターンPM11との中で共に暗部となる部分に限られる。すなわち、本露光方法の第1の実施形態においては、微細周期露光による露光パターンPI11中の複数の暗線部DL11のうちの4本おき等の所定本おきの特定暗線部を、露光パターンPS11中の暗線部DL13として残存させることができる。
ところで、一実施形態において、微細周期露光により形成される干渉縞IF1の特定の暗部と中密度露光により形成される光量分布ID1の暗部とは、基板P上で重ね合わさって露光される。そして、干渉縞IF1の特定の暗部の幅の方が、光量分布ID1の暗部の幅より狭いので、暗線部DL13の幅は、干渉縞IF1の特定の暗部の幅により決定される。従って、微細周期露光時の露光量を増大し、光量分布ID1の暗部の幅を狭めることで、より微細な暗線部DL13を形成することができる。
以上の如く、本露光方法の第1の実施形態においては、微細周期露光と中密度露光とにより微細なパターンを高精度に露光すると共に、そのパターン中の所望のパターンを選択的に残存させることができる。
次に、一実施形態の露光装置を用いて最終的に基板P上に露光パターン(合成パターン)を露光する露光方法の第2の実施形態について、図8、図9及び図10を用いて説明する。第2実施形態の露光方法においては、図1に示した照明光学系IL1の例として、図8に示した照明光学系を用いる。図8に示した照明光学系は、マスクM1のマスクパターン領域を照明する3つの照明光学モジュールIM1〜IM3とリレー光学系85とで構成される。各照明光学モジュールIM1〜IM3は、図8に示す如く、Y方向に沿ってそれぞれ異なる照明領域を照明するように構成される。例えば、照明光学モジュールIM1においては、光源LS2から発する光束は、コリメートレンズ81により平行光にされ、絞り82を透過して、リレーレンズ群83に入射する。リレーレンズ群83に入射した光束は、反射ミラー84により偏向され、リレー光学系85に入射し、マスクM1の所定のマスクパターン領域を照明する。なお、照明光学モジュールIM2については、その構成に反射ミラー84が不要な点を除いて、照明光学モジュールIM1と同様なため説明は省略する。照明光学モジュールIM3についても、照明光学モジュールIM1と同様なため説明は省略する。また、図8に示した照明光学系においては、リレー光学系85はなくてもよい。
次に、第2の実施形態の露光方法において適用可能なマスクの構成を説明する。図9は、第2の実施形態におけるマスクパターンの一部が形成されたマスクM1の構成の一例を表わす図である。マスクM1上の第1領域IPA2と第2領域MPA2については、図4に示した露光方法の第1の実施形態におけるマスクM1上のマスクパターンと概ね同様である。マスクM1は、各々が微細周期マスクパターンと中密度マスクパターンとのうちのいずれか1つで形成され、Y方向に沿って所定の間隔で配置される3つのパターン領域(例えば、第1領域IPA2、第2領域MPA2及び第3領域MPA3)を有する。マスクM1上の第1領域IPA2には、図4に示す微細周期マスクパターンと同様なマスクパターンが形成され、マスクM1上の第2領域MPA2には、図4に示す中密度マスクパターンと同様なマスクパターンが形成されている。
マスクM1上の第3領域MPA3には、透過部MBP22と遮光部MDP22とからなるマスクパターン(中密度マスクパターン)が形成され、一例として長方形の透過部MBP22がX方向に複数個配列される。そして、複数の透過部MBP22のX方向に配列の中心間隔は、第2領域MPA2に示した遮光部MDP21の中心間隔XDP2と同一に設定する。また、透過部MBP22のX方向の幅W93は、第1領域IPA2上の遮光部IDP21の幅W91の1.5倍から2.5倍程度の範囲内に設定する。
また、例えば、上述した照明光学モジュールIM1〜IM3のうち、照明光学モジュールIM1はマスクM1の第1領域IPA2を照明する光学系、照明光学モジュールIM2はマスクM1の第2領域MPA2を照明する光学系、照明光学モジュールIM3はマスクM1の第3領域MPA3を照明する光学系である。
次に、第2の実施形態において、投影光学系PL1によって基板P上に露光される露光パターンについて説明する。ただし、その概要は、露光方法の第1の実施形態で示したものと同様である。図10(A)は、図9に示したマスクM1上の第1領域IPA2に照明光を照射して形成されるパターンを、基板P上に露光した露光パターンPI21の一部分を表わす図である。マスクM1上の第1領域IPA2のマスクパターンは、図4に示したマスクM1上の第1領域IPA1のマスクパターンと概ね同じである。よって、露光パターンPI21の概要も図7(A)で示した露光パターンPI11と概ね同様となる。すなわち、基板P上に形成される露光パターンPI21は、線状の明部である明線部BL21と線状の暗部である暗線部DL21がX方向に中心間隔P101で並ぶ露光パターンである。なお、暗線部DL21のX方向の幅は、幅W101である。
図10(B)は、図9に示したマスクM1上の第2領域MPA2に照明光を照射して形成されるパターンを、基板P上に露光した露光パターンPM21の一部分を表わす図である。マスクM1上の第2領域MPA2のマスクパターンは、図4に示したマスクM1上の第2領域MPA1のマスクパターンと概ね同じである。よって、露光パターンPM21の概要も図7(B)で示した露光パターンPM11と概ね同様となる。すなわち、基板P上であって、そのX座標が各透過部MBP21のX座標と一致する部分は、走査露光により露光光が照射され、明部BL22となる。一方、そのX座標が遮光部MDP21と一致する部分には走査露光によって露光光が照射されないため、暗部DL22となる。このとき、暗部DL22のX方向の幅W102は、マスクM1上の遮光部MDP21のX方向の幅W92と概ね等しくなる。また、複数の暗部のX方向の中心間隔は、遮光部MDP21のX方向の中心間隔XDP2と一致する。
次に、上述した露光パターンPI21と露光パターンPM21との合成パターンである露光パターンPS21について、図10(C)を用いて説明する。第1領域IPA2のマスクパターン及び第2領域MPA2のマスクパターンは、図4に示した第1領域IPA1のマスクパターン及び第2領域MPA1のマスクパターンと概ね同じである。よって、露光パターンPS21の概要も図7(C)で示した露光パターンPS11と概ね同様となる。すなわち、露光パターンPS21は、微細周期露光による露光パターンPI21中の複数の暗線部DL21のうちの4本おき等の所定本おきの特定暗線部を、露光パターンPS21中の暗線部DL23として残存させた露光パターンである。
図10(D)は、第2の実施形態において、マスクM1上の第3領域MPA3に形成された、透過部MBP22と遮光部MDP22とからなるマスクパターンの一部分を示す図である(図9中の第3領域MPA3に形成されたマスクパターンと概ね同様である)。そして、投影光学系PL1による基板Pの露光に際しては、基板Pの相対走査に連動して、例えば、第3領域MPA3を照明する照明光学モジュールIM3の光源LS4の発光及び停止を時分割に繰り返す。すなわち、基板Pへ走査露光中に、不図示の制御機構により、発光コントローラLC4(不図示)に指令を発し、光源LS4の発光及び停止動作を、所定時間毎に、あるいは所定距離走査する毎に繰り返す。これにより、照明光学モジュールIM3によるマスクの第3領域MPA3への照明光の照射又は非照射が時分割に繰り返される。ひいては、投影光学系P1による基板Pの露光光の照射又は非照射が時分割に繰り返される。
このような露光により、基板P上に露光された露光パターンPM22の一例を図10(E)に示す。基板P上であって、光源LS4が発光している際に透過部MBP22の直下に配置されていた部分である離散的な複数の長方形領域のみが明部BL24となり、それ以外の部分は暗部DL24となる。このとき、明部BL24のX方向の幅W106は、透過部MBP22のX方向の幅W104と概ね等しい。そして、明部BL24のY方向の中心間隔YDP4は、発光コントローラLC4(不図示)により光源LS4が発光停止を繰り返す時間間隔と、基板ステージPSによる基板Pの走査速度により決まる。従って、光源LS4の発光停止の間隔と基板ステージPSの走査速度を制御することにより、中心間隔YDP4を制御することができる。また、さらに光源LS4の発光時間及び停止時間のデューティー比をも制御することにより、明部BL24のY方向の間に形成される暗部DL24のY方向の幅W107を制御することもできる。
なお、マスクM1上における第3領域MPA3の透過部MBP22のY方向の幅W105は、上記の露光パターンPM22上における明部BL24のY方向の幅、すなわち明部BL24の中心間隔YDP4から、その間に形成される暗部DL24のY方向の幅W107を引いた値、よりも小さく設定しておくことが望ましい。透過部MBP22のY方向の幅W105がこれより大きいと、明部BL24を所望のY方向の幅で形成することが難しくなるからである。
次に、上述した露光パターンPS21と露光パターンPM22との合成パターンである露光パターンPS22について、図10(F)を用いて説明する。第2の実施形態においても、第1領域IPA2,第2領域MPA2,第3領域MPA3のいずれかのパターン領域に照明光を照射して形成された露光パターンで明部となる部分は、合成パターンである露光パターンPS22においても明部BL25となる。従って、露光パターンPS22中の暗部は、露光パターンPS21と露光パターンPM22との中で共に暗部となる部分に限られる。すなわち、本露光方法の第2の実施形態においては、最終的に基板P上に形成される暗部として、微細周期露光による露光パターンPI21中の複数の暗線部DL21のうちの4本おき等の所定本おきの特定暗線部を選択するとともに、その中のY方向の特定領域のみを暗線部DL25とすることができる。
以上の如く、本露光方法の第2の実施形態においては、微細周期露光と中密度露光とにより微細なパターンを高精度に露光すると共に、そのパターン中の所望のパターンを選択的に残存させたうえでY方向についても所望の幅を有する特定領域に限定することができる。
次に、一実施形態の露光装置を用いて最終的に基板P上に露光パターン(合成パターン)を露光する第3の実施形態について、図11〜図14を用いて説明する。本露光方法の第3の実施形態は、上述の第2の実施形態と同様な点が多いため、以下、特に本露光方法の第2の実施形態との相違点についてのみ説明する。なお、第3の実施形態も、上記の第2の実施形態と同様に、図8に示した照明光学系を用いる。
まず、第3の実施形態の露光方法において適用可能なマスクの構成を説明する。図11は、第3の実施形態におけるマスクパターンの一部が形成されたマスクM1の構成の一例を表わす図である。マスクM1上の第1領域IPA3,第2領域MPA4,第3領域MPA5については、図9に示した露光方法の第2の実施形態におけるマスクM1上のマスクパターンと概ね同様である。マスクM1上の第1領域IPA3には、透過部IBP31,IBP32と遮光部IDP31とからなるマスクパターンが形成され、図9に示した第1領域IPA2と同様に、所定の透過部に、位相部材PSPを設けた透過部IBP32を有する。図11に示す如く、上記の位相部材PSPを設けた透過部IBP32は、位相部材PSPを設けていない透過部IBP31のX方向の両側に配置される。
マスクM1上の第2領域MPA4には、透過部MBP31と遮光部MDP31とからなるマスクパターンが形成される。第2領域MPA4に形成された遮光部MDP31は、第1領域IPA3に形成された所定の複数の遮光部IDP31に対応する位置に配置される。具体的には、遮光部MDP31は、第1領域IPA3に形成された特定の透過部IBP31のX方向における幅の中心線に、第2領域MPA4の特定の遮光部MDP31のX方向における幅の中心線が重なるように形成される。また、第2領域MPA4に形成される遮光部MDP31の数は、基板P上に露光する所定本のパターンに応じて設定される。また、遮光部MDP31のX方向の幅W112は、第1領域IPA3上の遮光部IDP31の幅W111の1.5倍から2.0倍程度の範囲内に設定する。
マスクM1上の第3領域MPA5には、透過部MBP32と遮光部MDP32とからなるマスクパターンが形成され、一例として長方形の透過部MBP32がX方向に複数個配列される。そして、複数の透過部MBP32のX方向における配列の中心間隔は、第2領域MPA4に示した遮光部MDP31の中心間隔XDP3と同一に設定する。また、透過部MBP32のX方向の幅W113は、第2領域MPA4上の遮光部MDP31の幅W112と概ね同じ程度に設定する。
次に、第3の実施形態において、投影光学系PL1によって基板P上に露光される露光パターンについて説明する。ただし、その概要は、露光方法の第2の実施形態で示したものとほぼ同様である。図12(A)は、図11に示したマスクM1上の第1領域IPA3に照明光を照射して形成されるパターンを、基板P上に露光した露光パターンPI31の一部分を表わす図である。基板P上に形成される露光パターンPI31は、線状の明部である明線部BL31と線状の暗部である暗線部DL31がX方向に中心間隔P121で並ぶ露光パターンである。なお、暗線部DL31のX方向の幅は、幅W121である。
図12(B)は、図11に示したマスクM1上の第2領域MPA4に照明光を照射して形成されるパターンを、基板P上に露光した露光パターンPM31の一部分を表わす図である。基板PはマスクM1に対してY方向に走査しつつ露光される。このため、基板P上であって、そのX座標が各透過部MBP31のX座標と一致する部分は、走査露光により露光光が照射され、明部BL32となる。一方、そのX座標が遮光部MDP31と一致する部分には走査露光によって露光光が照射されないため、暗部DL32となる。このとき、暗部DL32のX方向の幅W123は、マスクM1上の遮光部MDP31のX方向の幅W112と概ね等しくなる。また、複数の暗部のX方向の中心間隔は、マスクM1上の遮光部MDP31のX方向の中心間隔XDP3と一致する。すなわち、暗部DL32は、微細周期露光による露光パターンPI31における特定の明部BL31のX方向における幅の中心線に、暗部DL32のX方向における幅の中心線が重なるように露光される。
次に、上述した露光パターンPI31と露光パターンPM31との合成パターンである露光パターンPS31について、図12(C)を用いて説明する。第1領域IPA3又は第2領域MPA4のいずれかのパターン領域に照明光を照射して基板P上に形成された露光パターンで明部となる部分は、合成パターンである露光パターンPS31においても明部BL33となる。従って、露光パターンPS31中の暗部は、露光パターンPI31と露光パターンPM31との中で共に暗部となる部分に限られる。すなわち、本露光方法の第3の実施形態においては、微細周期露光による露光パターンPI31中の複数の暗線部DL31のうちの4本おき等の所定本おきに隣接する2本の特定暗線部を、露光パターンPS31中の暗線部DL33として残存させることができる。
図12(D)は、第3の実施形態において、マスクM1上の第3領域MPA5に形成された、透過部MBP32と遮光部MDP32とからなるマスクパターンの一部分を示す図である(図11中の第3領域MPA5に形成されたマスクパターンと概ね同様である)。そして、露光方法の第2の実施形態と同様に、投影光学系PL1による基板Pの露光に際しては、基板Pの相対走査に連動して、例えば、第3領域MPA5を照明する照明光学モジュールIM3の光源LS4の発光及び停止を時分割に繰り返す。すなわち、基板Pへ走査露光中に、不図示の制御機構により、発光コントローラLC4(不図示)に指令を発し、光源LS4の発光及び停止動作を、所定時間毎に、あるいは所定距離走査する毎に繰り返す。これにより、照明光学モジュールIM3によるマスクの第3領域MPA5への照明光の照射又は非照射が時分割に繰り返される。ひいては、投影光学系PL1による基板Pの露光光の照射又は非照射が時分割に繰り返される。
このような露光により、基板P上に露光された露光パターンPM32の一例を図12(E)に示す。基板P上であって、光源LS4が発光している際に透過部MBP32の直下に配置されていた部分である離散的な複数の長方形領域のみが明部BL34となり、それ以外の部分は暗部DL34となる。このとき、明部BL34のX方向の幅W127は、透過部MBP32のX方向の幅W125と概ね等しい。そして、明部BL34のY方向の中心間隔YDP6は、発光コントローラLC4(不図示)により光源LS4が発光停止を繰り返す時間間隔と、基板ステージPSによる基板Pの走査速度により決まる。従って、光源LS4の発光停止の間隔と基板ステージPSの走査速度を制御することにより、中心間隔YDP6を制御することができる。また、さらに光源LS4の発光時間及び停止時間のデューティー比をも制御することにより、明部BL34のY方向の間に形成される暗部DL34のY方向の幅W128を制御することもできる。
次に、上述した露光パターンPS31と露光パターンPM32との合成パターンである露光パターンPS32について、図12(F)を用いて説明する。第3の実施形態においても、第1領域IPA3,第2領域MPA4,第3領域MPA5のいずれかのパターン領域に照明光を照射して基板P上に形成された露光パターンで明部となる部分は、合成パターンである露光パターンPS32においても明部BL35となる。従って、露光パターンPS32中の暗部は、露光パターンPS31と露光パターンPM32との中で共に暗部となる部分に限られる。すなわち、第3の実施形態においては、最終的に基板P上に形成される暗部として、微細周期露光による露光パターンPI31中の複数の暗線部DL31のうちの4本おき等の所定本おきに隣接する2本の特定暗線部を選択するとともに、その中のY方向の特定領域のみを暗線部DL35とすることができる。
次に、第4の実施形態の露光方法において適用可能なマスクの構成を説明する。なお、このマスクは、図11に示すマスクM1の変形例である。図13は、第4の実施形態におけるマスクパターンの一部が形成されたマスクM1の構成の一例を表わす図である。マスクM1上の第1領域IPA4及び第2領域MPA6については、図11に示した露光方法の第3の実施形態におけるマスクM1上のマスクパターンと同様である。従って、第1領域IPA4及び第2領域MPA6については、説明を省略する。マスクM1上の第3領域MPA7には、透過部MBP42と遮光部MDP42とからなるマスクパターンが形成されている。そして、複数の透過部MBP42のX方向における配列の中心間隔は、第2領域MPA6に示した遮光部MDP41の中心間隔XDP4と同一に設定する。また、透過部MBP42のX方向の幅W133は、第2領域MPA6上の遮光部MDP41の幅W132と概ね同じ程度に設定する。さらに、透過部MBP42の形状は、図11の第3領域MPA5の透過部MBP32とは異なり、+Y方向及び−Y方向に突出部を有する形状である。また、上述の突出部の一方は+Y方向に所定の幅W134を有し、他方は−Y方向に所定の幅W135を有する。
次に、図13に示したマスクM1を用いて基板P上に露光される露光パターンについて、図14を参照して説明する。ただし、その概要は、図12で示したものとほぼ同様である。つまり、図13のマスクM1上における第1領域IPA4及び第2領域MPA6のマスクパターンについては、図11の第1領域IPA3及び第2領域MPA4のマスクパターンと概ね同様である。よって、図14(A)の露光パターンPI41、図14(B)の露光パターンPM41及び図14(C)の露光パターンPS41については、説明を省略する。
図14(D)は、マスクM1上の第3領域MPA7に形成された、透過部MBP42と遮光部MDP42とからなるマスクパターンの一部分を示す図である(図13中の第3領域MPA7に形成されたマスクパターンと概ね同様である)。そして、露光方法の第2の実施形態と同様に、投影光学系PL1による基板Pの露光に際しては、基板Pの相対走査に連動して、例えば、第3領域MPA7を照明する照明光学モジュールIM3の光源LS4の発光及び停止を時分割に繰り返す。すなわち、基板Pへ走査露光中に、不図示の制御機構により、発光コントローラLC4(不図示)に指令を発し、光源LS4の発光及び停止動作を、所定時間毎に、あるいは所定距離走査する毎に繰り返す。これにより、照明光学モジュールIM3によるマスクの第3領域MPA7への照明光の照射又は非照射が時分割に繰り返される。ひいては、投影光学系PL1による基板Pの露光光の照射又は非照射が時分割に繰り返される。
このような露光により、基板P上に露光された露光パターンPM42の一例を図14(E)に示す。基板P上であって、光源LS4が発光している際に透過部MBP42の直下に配置されていた部分である離散的な複数の長方形領域のみが明部BL44となり、それ以外の部分は暗部DL44となる。このとき、明部BL44のX方向の幅W142は、透過部MBP42のX方向の幅W140と概ね等しい。そして、明部BL44のY方向の中心間隔YDP8は、発光コントローラLC4により光源LS4が発光停止を繰り返す時間間隔と、基板ステージPSによる基板Pの走査速度により決まる。従って、光源LS4の発光停止の間隔と基板ステージPSの走査速度を制御することにより、中心間隔YDP8を制御することができる。また、さらに光源LS4の発光時間及び停止時間のデューティー比をも制御することにより、明部BL44のY方向の間に形成される暗部DL44のY方向の幅W143を制御することもできる。
次に、露光パターンPS41と露光パターンPM42との合成パターンである露光パターンPS42について、図14(F)を用いて説明する。第4の実施形態においても、第1領域IPA4,第2領域MPA6,第3領域MPA7のいずれかのパターン領域に照明光を照射して基板P上に形成された露光パターンで明部となる部分は、合成パターンである露光パターンPS42においても明部BL45となる。従って、露光パターンPS42中の暗部は、露光パターンPS41と露光パターンPM42との中で共に暗部となる部分に限られる。すなわち、第4の実施形態においては、最終的に基板P上に形成される暗部として、微細周期露光による露光パターンPI41中の複数の暗線部DL41のうちの4本おき等の所定本おきに隣接する2本の特定暗線部を選択するとともに、その中のY方向の特定領域のみを暗線部DL45とすることができ、さらに、隣接する2本の暗線部DL45をY方向に互いに所定の幅(W145,W146)ずらして形成することができる。
以上の如く、本露光方法の第3及び第4の実施形態においては、微細周期露光と中密度露光とにより微細なパターンを高精度に露光すると共に、そのパターン中の所望の隣接する複数本のパターンを選択的に残存させたうえでY方向についても所望の幅を有する特定領域に限定することができる。
なお、上記の各実施形態において、各図に示したマスクパターン及び露光パターンは、マスクM1等又は部分領域E1等の中の一部分のパターンを示したものである。従って、実際には、上記各実施形態の露光方法によって、部分領域E1等の全面に渡って多数の露光パターンを形成可能であることは言うまでもない。また、複数のマスクM1〜M7を用いることで、基板P上のほぼ全面に渡って、多数の露光パターンを形成可能であることも言うまでもない。さらに、各実施形態の露光方法で用いたマスクは一実施形態の露光装置に適用可能なマスクの一例であって、マスクM1〜M7の構成は各図の例に限定されるものではない。
ところで、各実施形態においては、照明光学系の光源LS1〜LS3は、走査露光に際して常時発光するものとしたが、基板P上に露光すべき露光パターンの形状によっては、照明光学系の光源LS4と同様に走査露光中に、発光及び停止を繰り返しても構わないことは言うまでもない。
なお、上記の各実施形態の露光方法は、ポジ型フォトレジスト又はネガ型フォトレジストのいずれのタイプのフォトレジストとも組み合わせて使用することができることは言うまでもない。
また、一実施形態の露光装置においては、複数の投影光学系PL1〜PL7を備え、基板Pの全面を部分領域E1〜E7に分割し、それぞれの部分領域E1〜E7を、それに対応するそれぞれの投影光学系PL1〜PL7が露光するものとしている。従って、投影光学系PL1〜PL7のぞれぞれは、X方向に、それぞれが露光すべき部分領域E1〜E7を包括する露光視野を有し、かつその露光視野の形状は、X方向とY方向に平行な2組の辺により規定される長方形であることが望ましい。ただし、一実施形態の露光装置においては、基板P上の各部分領域E1〜E7の間に、重複領域V1〜V6を配置させることもできる。上述のように、例えば図3中の重複領域V1には、それに隣接する2つの部分領域E1、E5に対応する2つの投影光学系PL1及びPL5によって重複して露光される領域である。このような重複領域V1〜V6を設ける場合には、投影光学系PL1〜PL7のそれぞれの露光視野の形状は、X方向に平行な2辺を有する台形状であることが望ましい。
なお、一実施形態の説明において、一例として光学ユニットOU1を用いて説明しているが、光学ユニットOU2〜OU7は光学ユニットOU1と同様であるため説明は省略している。
ところで、一実施形態の露光装置による露光に際しては、基板P上に既に以前の工程で何らかの基板パターンが形成されており、その基板パターンに対して所定の位置関係を維持し、新規なパターンを露光する場合もある。そこで、一実施形態の露光装置には、図1に示した如く、位置検出光学系ALR1、ALR2が配置されている。そして、上述の各実施形態における露光に先立って、基板P上に既存の基板パターンの位置を位置検出光学系ALR1、ALR2により検出し、検出した位置情報に基づいて、既存の基板パターンと所定の位置関係を保って、新たな露光パターンを基板P上に露光することが可能である。さらには、上述の各実施形態における走査露光を、基板P上に形成された基板パターンの位置を検出しつつ行うこともできる。この場合、位置検出光学系ALR1、ALR2により検出された基板パターンの位置情報は、不図示の位置制御システムに伝達される。そして位置制御システムは、この位置情報に基づいて基板ステージPSの目標制御位置を算出し、可動子LM1、LM2と定盤BPに設けられた固定子LG1、LG2からなるリニアモーターシステムへ制御信号を伝達し、基板ステージPSの位置制御を行う。
また、位置検出光学系ALR1、ALR2が検出した、基板P上の基板パターンのY方向位置に基づいて、照明光学系IL1等の発光コントローラを制御し、光源の発光を制御することもできる。すなわち、マスクM1の第3領域MPA3等と基板パターン中の所定のパターンが所定の関係になった際に第3領域MPA3等の露光を行い、それ以外の場合には第3領域MPA3等の露光を停止させることもできる。
ところで、一実施形態におけるマスクは、露光対象の基板よりも相当小さなマスクでよい。マスクの具体的なサイズは、例えば、高精度なマスクが容易に入手可能なサイズでよく、即ち、LSI用のリソグラフィー工程で一般的に使用される150mm角のマスク基板に収まるような、1辺が100mm以下のパターン領域を有するマスクが使用できる。
なお、一実施形態におけるマスクは、一例として透過型マスクを使用しているが、反射型マスクを使用してもよい。また、反射型マスクとして、例えば可動式のマイクロミラーアレイで構成されるようなマスク(可変成形マスクなど)を使用してもよい。
さらに、一実施形態におけるマスクは、一例として、マスクの第1領域に微細周期マスクパターンと第2領域に中密度マスクパターンとを配置しているが、マスクの第1領域に中密度マスクパターンと第2領域に微細周期マスクパターンとを配置するようにしてもよいことは言うまでもない。
ところで、一実施形態におけるマスク上の第1領域、第2領域及び第3領域を照明する照明光は、それぞれ異なる照明条件(例えば、コヒーレンスファクター(照明光学系の射出側開口数/投影光学系の入射側開口数)、変形照明など)を有するようにしてもよい。具体的には、例えば、第1領域に対しては小さいコヒーレンスファクター(例えば、照明光の入射角度範囲が±1°以下)を有する照明光で照明し、第2領域又は第3領域に対しては通常のコヒーレンスファクターを有する照明光で照明する照明光学系を用いることができる。
さらに、例えば、第1領域、第2領域及び第3領域に対して、そのマスクパターンの周期方向(又は所定の1方向)にのみ小さいコヒーレンスファクターを有し、その周期方向と直交する方向には大きなコヒーレンスファクターを有する照明光で照明するような照明光学系を用いることもできる。このような照明光学系としては、例えば、国際公開(WO)第2006/075720号に開示される(特に、図6、図7、図8、図9)照明光学系を用いることができる。
次に、一実施形態の露光装置及び露光方法を用いたフラットパネルディスプレイ用基板の製造方法の一例について、図15及び図16を用いて説明する。図15は、フラットパネルディスプレイの1つである液晶ディスプレイを構成するガラス基板上に形成された表示画素部(例えば、TFT部)を表わす拡大図である。以下、図15に示した複数の表示画素のうち、透明電極PE1と、トランジスタを構成するアクティブエリアTR1と、ソース電極TS1と、ドレイン電極TD1とからなる表示画素について説明する。なお、この表示画素には、表示信号を伝達するための信号線SL1とこの表示画素を選択するための選択線GL1が接続されている。
一実施形態による表示画素部の製造は、以下の各工程により行われる。まず、第1工程として、ガラス基板上に、図16(A)に示す如く、選択線GL1を形成する。選択線GL1は、図15に示した如く、1方向に伸びる線状パターンが、それと直交する方向に比較的大きな周期で複数配列された基板パターンGL1、GL2、GL3の一部であるので、図7に示した上述の露光方法の第1の実施形態による露光で形成することができる。従って、ガラス基板上に選択線GLの材料となるアルミニウムやタンタル等の金属薄膜を形成し、その上にポジ型フォトレジストを塗布し、上述の第1の実施形態による露光を行う。そして、フォトレジストを現像して、得られたレジストパターンをエッチングマスクとして上記金属薄膜をエッチングすることにより、選択線GL1、GL2、GL3を形成する。
次に、第2工程として、図16(B)に示す如く、薄膜トランジスタを構成するアクティブエリアTR1からなる基板パターンを選択線GL1に交差させて形成する。アクティブエリアTR1は、所定の長さを有する線状パターンであって、各表示画素の配列周期に応じて2次元に周期的に配列される基板パターンTR1、TR2、TR3、TR4、TR5、TR6の一部である。よって、アクティブエリアTR1についても、図10に示した上述の露光方法の第2の実施形態による露光で形成することができる。従って、ガラス基板上にアクティブエリアTR1の材料となるアモルファスシリコンやポリシリコン等の半導体薄膜を形成し、その上にポジ型フォトレジストを塗布して、上述の第2の実施形態による露光を行う。そして、フォトレジストを現像して、得られたレジストパターンをエッチングマスクとして上記半導体薄膜をエッチングすることにより、アクティブエリアTR1を形成できる。ただし、露光に際しては、選択線GLの露光時に対して、ガラス基板を90度回転して一実施形態の露光装置に装填する必要がある。選択線GLとアクティブエリアTR1とで、基板パターンの長手方向が90度異なるからである。
次に、第3工程として、図16(C)に示す如く、薄膜トランジスタの電極であるソース電極TS1とドレイン電極TD1を、アクティブエリアTR1の両端部に形成する。ソース電極TS1とドレイン電極TD1は、選択線GL1と平行な方向に所定の長さを有し、選択線GL1と平行な方向に所定の長さ分ずれて隣接して配置された2本の線状パターンである。そして、この2本の線状パターンの対が、各表示画素の配列周期に応じて2次元に周期的に配列される基板パターンTS1、TD1、TS2、TD2、TS3、TD3、TS4、TD4、TS5、TD5、TS6、TD6の一部である。よって、ソース電極TS1とドレイン電極TD1は、図11〜図14に示した上述の露光方法の第3の実施形態(特に、図13及び図14に示す第4の実施形態)による露光で形成することができる。従って、ガラス基板上にソース電極TS1とドレイン電極TD1の材料となるアルミニウム等の金属薄膜又はアモスファスシリコン等の半導体薄膜を形成し、その上にポジ型フォトレジストを塗布して、上述の第3の実施形態による露光を行う。そして、フォトレジストを現像して、得られたレジストパターンをエッチングマスクとして上記薄膜をエッチングすることにより、ソース電極TS1とドレイン電極TD1が得られる。
次に、第4工程として、図16(D)に示す如く、信号線SL1を、ソース電極に位置整合させて形成する。信号線SL1は、選択線GL1と直交する方向に伸びる線状パターンであり、各表示画素の配列周期に応じて1次元に周期的に配列される基板パターンSL1、SL2の一部である。よって、信号線SL1は、図7に示した上述の露光方法の第1の実施形態による露光で形成することができる。従って、ガラス基板上に信号線SL1の材料となるアルミニウム等の金属薄膜又はアモルファスシリコン等の半導体薄膜を形成し、その上にポジ型フォトレジストを塗布して、上述の第1の実施形態による露光を行う。そして、フォトレジストを現像して、得られたレジストパターンをエッチングマスクとして上記薄膜をエッチングすることにより、信号線SL1を形成することができる。ただし、露光に際しては、選択線GLでの露光時に対して、ガラス基板を90度回転して一実施形態の露光装置に装填する必要がある。選択線GLと信号線SL1とで、基板パターンの長手方向が90度異なるからである。
次に、第5工程として、透明電極PE1、PE2、PE3、PE4、PE5、PE6の各々を、その一部が対応するドレイン電極に位置整合するように形成する。ただし、透明電極PE1〜PE6のそれぞれの幅は、ソース電極、ドレイン電極等の他の要素と比較して微細ではない。よって、透明電極PE1〜PE6の形成に際しては、本発明の露光方法の各実施形態による露光を用いずに、従来のプロキシミティ露光や投影露光による方法を用いて形成すればよい。
以上で、液晶ディスプレイに用いられる基板上の表示画素部の製造が完了する。なお、上記の第1から第5工程における露光においても、形成すべき基板パターンがそれほど微細でない場合には、各実施形態の露光方法を適用せずに、例えば従来のプロキシミティ露光や投影露光による方法を適用しても良いことは言うまでもない。また、上記の表示画素部の製造方法の説明に際し、各種の公知技術を組み合わせることにより、フラットパネル用基板の製造を行うことができることは言うまでもない。
なお、上記のフラットパネルディスプレイ用基板の製造方法は、上記の実施形態に限定されるものではなく、上記基板の製造工程の中の少なくとも1つの工程で、各実施形態による露光方法を用いて任意の露光パターンを形成するものであってもよい。
また、上述した実施形態において、隣接とは、例えば、図2に示すようにマスクの微細周期マスクパターン領域と中密度マスクパターン領域とが必ずしも接している必要はなく、所定距離離れていてもよい。なお、一実施形態において、例えば、マスクの微細周期マスクパターン領域と中密度マスクパターン領域とは、微細周期マスクパターン領域のY方向の幅以上で、その幅の5倍以下の範囲内の距離を離して配置されていることが望ましい。
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱しない範囲にてその構成要素の種々の変更や変形を行うことができる。また、上述の実施形態で説明した構成要素は、本発明の実施に際して任意の組み合わせでアセンブル可能である。例えば、上述した実施形態の構成要素のうちのいくつかを省略してもよい。さらに、異なる実施形態における構成要素を適切に組み合わせてもよい。
IL・・・照明光学系、IM1〜IM3・・・照明光学モジュール、M1〜M7・・・マスク、PL・・・投影光学系、P・・・基板、PS・・・基板ステージ、LM1〜LM2・・・リニアモーター可動子、LG1〜LG2・・・リニアモーター固定子、BP・・・定盤。