JP2008297401A - 高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物 Download PDF

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一昭 松本
Yasushi Kakehashi
泰 掛橋
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Abstract

【課題】
電気絶縁性でかつ熱伝導性に優れた高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
熱可塑性樹脂、ジエンモノマーをトポケミカル重合してなる高結晶性高分子を少なくとも含有することにより、熱伝導率が0.8W/mK以上の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物が得られる。
ジエンモノマーをトポケミカル重合してなる高結晶性高分子は、少なくとも1つのカルボキシル基またはカルボキシル基誘導体基を有する結晶状態のジエンモノマーを、重合開始剤、重合促進剤、及び触媒を用いることなく、結晶状態を保持したまま熱重合させて得られる結晶性高分子であることが好ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、高熱伝導性と良好な成形加工性とを併せ持ち、かつ低比重、低金型磨耗性、電気絶縁性、などの良好な実用物性をも兼ね備えた、高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物に関する。
熱可塑性樹脂組成物をパソコンやディスプレーの筐体、電子デバイス材料、自動車の内外装、など種々の用途に使用する際、プラスチックは金属材料など無機物と比較して熱伝導性が低いため、発生する熱を逃がしづらいことが問題になることがある。このような課題を解決するため、高熱伝導性無機物を大量に熱可塑性樹脂中に配合することで、高熱伝導性樹脂組成物を得ようとする試みが広くなされている。
上記のように無機物を配合して高熱伝導性樹脂組成物を得る際には、通常はグラファイトや炭素繊維等の導電性かつ高熱伝導性物質を添加する方法が用いられるが、このような方法では得られた樹脂組成物が導電性を示してしまうため、電子デバイス材料等の電気絶縁性が要求される用途では利用が制限される。一方で電気絶縁性かつ高熱伝導性の無機物を添加するような方法で高熱伝導性樹脂組成物を得ようとすると、通常高熱伝導性無機物を50体積%以上もの高含有量で樹脂中に配合する必要がある。
しかしながら、これほど大量に高熱伝導性無機物を熱可塑性樹脂中に配合すると、熱可塑性樹脂の成形加工性が急激に低下してしまい、複雑な形状へ射出成形することが困難となる場合がある。また、大量の無機物が樹脂の衝撃強度などの実用物性を極端に低下させ非常に脆い材料となってしまうため、大型成形品などへの適用が困難となり、用途が限られてしまう、樹脂組成物の比重が高くなるため、軽量化が求められる用途には適用しづらい、などの問題があった。
さらにはアルミナなど高硬度の無機物を大量に添加した樹脂組成物を射出成形法によって成形加工しようとすると、溶融樹脂組成物を金型内に射出成形する際、溶融樹脂が金型を磨耗してしまう、という問題があった。
無機物を用いずに樹脂の熱伝導率を向上させる技術としては、例えば特許文献1では、ポリベンゾオキサゾール繊維などの有機高強度繊維を含浸させた熱硬化性樹脂組成物が示されている。しかしながらこのような非常に高価な高強度繊維を高配合させた組成物は、汎用品として使用するにはあまりにも高価となるうえ、高強度繊維であるが故に、熱可塑性樹脂に添加した場合には射出成形が非常に困難になるという問題点があった。
特開2000−273196号公報
本発明は上記現状に鑑み、熱可塑性樹脂組成物に対して添加される無機化合物の添加量を少なく抑えても、熱伝導性に優れた熱可塑性樹脂組成物の提供を目的とするものである。
本発明者は、熱可塑性樹脂に対して、ジエンモノマーをトポケミカル重合してなる、可逆的に相変化する高結晶性高分子(B)を添加することにより、無機物を用いることなく、あるいは無機物を少量用いるだけで、熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率を大幅に向上させることが可能であること、このような方法にて実現された高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物は、電気絶縁性などの優れた特性を併せ持っていること、等を見出し本発明にいたった。
すなわち本発明は、
熱可塑性樹脂(A)、ジエンモノマーをトポケミカル重合してなる高結晶性高分子(B)を少なくとも含有し、得られる熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率が0.8W/mK以上であることを特徴とする、高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物(請求項1)。
ジエンモノマーをトポケミカル重合してなる高結晶性高分子(B)が、少なくとも1つのカルボキシル基またはカルボキシル基誘導体基を有する結晶状態のジエンモノマーを、重合開始剤、重合促進剤、及び触媒を用いることなく、結晶状態を保持したまま熱重合させて得られる結晶性高分子であることを特徴とする、請求項1記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。(請求項2)。
ジエンモノマーをトポケミカル重合してなる結晶性高分子(B)におけるジエンモノマーは、ムコン酸、ソルビン酸、およびそれらの誘導体からなる群から選択された少なくとも一つであることを特徴とする、請求項1あるいは2いずれか1項に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物(請求項3)。
さらに単体での熱伝導率が1.5W/m・K以上でかつ電気絶縁性を示す高熱伝導性無機化合物(C)を含有することを特徴とする、請求項1〜3いずれか1項に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物(請求項4)。
(C)が、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化ベリリウム、ダイヤモンド、から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1〜4いずれか1項に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物(請求項5)。
請求項1〜5いずれか1項に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物を射出成形して作成された、高熱伝導性成形体。(請求項6)。
である。
本発明の方法を用いることにより、従来では大量の高熱伝導性無機化合物が必要であった高熱伝導樹脂組成物分野で、無機化合物の使用量を大幅に低減できるため、良成形性でかつ樹脂が本来持つ特性をほとんど犠牲にすることなく、安価に高熱伝導性樹脂組成物を得ることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物で用いられる熱可塑性樹脂(A)としては特に限定されず、各種熱可塑性高分子化合物を用いることができる。熱可塑性樹脂(A)は合成樹脂であっても自然界に存在する樹脂であっても良い。
熱可塑性樹脂(A)としては、ポリスチレンなどの芳香族ビニル系樹脂、ポリアクリロニトリルなどのシアン化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニルなどの塩素系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のポリメタアクリル酸エステル系樹脂やポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンや環状ポリオレフィン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニルなどのポリビニルエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂及びこれらの誘導体樹脂、ポリメタクリル酸系樹脂やポリアクリル酸系樹脂及びこれらの金属塩系樹脂、ポリ共役ジエン系樹脂、マレイン酸やフマル酸及びこれらの誘導体を重合して得られるポリマー、マレイミド系化合物を重合して得られるポリマー、非晶性半芳香族ポリエステルや非晶性全芳香族ポリエステルなどの非晶性ポリエステル系樹脂、結晶性半芳香族ポリエステルや結晶性全芳香族ポリエステルなどの結晶性ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリアミドや脂肪族−芳香族ポリアミドや全芳香族ポリアミドなどのポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアルキレンオキシド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、フェノキシ系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、液晶ポリマー、及びこれら例示されたポリマーのランダム・ブロック・グラフト共重合体、などが挙げられる。これら熱可塑性樹脂(A)は、それぞれ単独で、あるいは2種以上の複数を組み合わせて用いることができる。2種以上の樹脂を組み合わせて用いる場合には、必要に応じて相溶化剤などを添加して用いることもできる。これら熱可塑性樹脂(A)は、目的に応じて適宜使い分ければよい。
これら熱可塑性樹脂(A)の中でも、樹脂の一部あるいは全部が結晶性あるいは液晶性を有する熱可塑性樹脂(A)であることが、得られた樹脂組成物の熱伝導率が高くなる傾向がある点や、有機短繊維(B)を樹脂中に含有させることが容易である点から好ましい。これら結晶性あるいは液晶性を有する熱可塑性樹脂は、樹脂全体が結晶性であっても、ブロックあるいはグラフト共重合体樹脂の分子中における特定ブロックのみが結晶性や液晶性であるなど樹脂の一部のみが結晶性あるいは液晶性であっても良い。樹脂の結晶化度には特に制限はない。また熱可塑性樹脂(A)として、非晶性樹脂と結晶性あるいは液晶性樹脂とのポリマーアロイを用いることもできる。樹脂の結晶化度には特に制限はない。
樹脂の一部あるいは全部が結晶性あるいは液晶性を有する熱可塑性樹脂(A)の中には、結晶化させることが可能であっても、単独で用いたり特性の成形加工条件で成形したりすることにより場合によっては非晶性を示す樹脂もある。このような樹脂を用いる場合には、有機短繊維(B)の添加量や添加方法を調整したり、延伸処理や後結晶化処理をするなど成形加工方法を工夫したりすることにより、樹脂の一部あるいは全体を結晶化させることができる場合もある。
結晶性あるいは液晶性を有する熱可塑性樹脂の中でも好ましい樹脂として、結晶性ポリエステル系樹脂、結晶性ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、液晶ポリマー、結晶性ポリオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系ブロック共重合体、等を例示することができるが、これらに限らず各種の結晶性樹脂や液晶性樹脂を用いることができる。
結晶性ポリエステルの具体例としてはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートおよびポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどのほか、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレートおよびポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート/イソフタレートなどの結晶性共重合ポリエステル等が挙げられる。
これら結晶性ポリエステルの中でも、成形加工性や機械的特性などの観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、等を用いることが好ましい。
結晶性ポリアミド系樹脂の具体例としては、例えば環状ラクタムの開環重合物、アミノカルボン酸の重縮合物、ジカルボン酸とジアミンとの重縮合物などが挙げられ、具体的にはナイロン6、ナイロン4・6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン6・12、ナイロン11、ナイロン12などの脂肪族ポリアミド、ポリ(メタキシレンアジパミド)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリノナンメチレンテレフタルアミド、ポリ(テトラメチレンイソフタルアミド)、ポリ(メチルペンタメチレンテレフタルアミド)などの脂肪族−芳香族ポリアミド、およびこれらの共重合体が挙げられ、共重合体として例えばナイロン6/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン66/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6/ナイロン6・6/ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6/ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン12/ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド)、ポリ(メチルペンタメチレンテレフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)などを挙げることができる。なお、共重合の形態としてはランダム、ブロックいずれでもよいが、成形加工性の点からランダム共重合体であることが好ましい。
結晶性ポリアミド系樹脂の中でも、成形加工性や機械的特性などの観点から、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン12、ナイロン4・6、ポリノナンメチレンテレフタルアミド、ナイロン6/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン66/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6/ナイロン6・6/ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6/ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン12/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6/ナイロン6・6/ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(メチルペンタメチレンテレフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)などのポリアミド、等を用いることが好ましい。
液晶ポリマーとは異方性溶融相を形成し得る樹脂であり、エステル結合を有するものが好ましい。具体的には芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位、アルキレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位からなり、かつ異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステル、あるいは、上記構造単位と芳香族イミノカルボニル単位、芳香族ジイミノ単位、芳香族イミノオキシ単位などから選ばれた構造単位からなり、かつ異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステルアミドなどが挙げられ、具体的には、p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物および/または脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸およびイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボンから生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステルなど、また液晶性ポリエステルアミドとしては、芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位、アルキレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位以外にさらにp−アミノフェノールから生成したp−イミノフェノキシ単位を含有した異方性溶融相を形成するポリエステルアミドである。
上記液晶ポリマーのうち、好ましい構造の具体例としては、−O−Ph−CO−構造単位(I)、−O−R−O−構造単位(II)、−O−CHCH−O−構造単位(III)および−CO−R−CO−構造単位(IV)の構造単位からなる液晶性ポリエステルが挙げられる。
(ただし式中のR
Figure 2008297401
から選ばれた1種以上の基を示し、R
Figure 2008297401
から選ばれた1種以上の基を示す。ただし式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)。
上記構造単位(I)はp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位であり、構造単位(II)は4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた一種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位を、構造単位(III)はエチレングリコールから生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸および4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸から選ばれた一種以上の芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位を各々示す。
これらのなかでも、p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位の液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位の液晶性ポリエステルを特に好ましく用いることができる。
結晶性ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン、これら樹脂と各種オレフィン系化合物との共重合体、等が挙げられる。また結晶性ポリオレフィン系樹脂として、結晶性樹脂と非晶性樹脂とのブロックあるいはグラフトコポリマーを用いることもできる。このような樹脂のうち、ブロックコポリマーの具体例としては、SEPS樹脂、SIS樹脂、SEBS樹脂、SIBS樹脂、等が挙げられる。またグラフトコポリマーの具体例としては、特開2003−147032号公報記載の樹脂等が例示される。
本発明のジエンモノマーをトポケミカル重合してなる高結晶性高分子(B)におけるトポケミカル重合とは、高分子の高次構造を制御する一手法であり、特定の分子配列を持つ結晶格子を重合反応の反応場として用いる手法である。すなわち、モノマー分子が結晶状態であることにより、モノマー分子が自ら重合反応の反応場を提供し、かつ、重合反応中にモノマー分子単位の重心の位置や結晶の対称性が変化することなく、最小限の原子や置換基の動きで重合反応を進行させて立体規則性高分子を生成する手法である。
トポケミカル重合は、モノマー分子の集合体である結晶の構造によって反応経路や反応速度が支配され、結晶中の分子配列によって生成物であるポリマーの構造が決定される。さらに、このトポケミカル重合によってポリマーを取得すれば、分離や精製を必要とすることなくポリマーを得ることができ、また、有機溶媒を用いることがないため、環境への負荷を低減することができる。従って、結晶格子の支配下でトポケミカル重合が進行するので、立体規則性ポリマーを容易に得ることができる。これらトポケミカル重合の方法については、J. Am. Chem. Soc. 2001, (123), 12176-12181、Macromolecules 2004,(37), 8538-8547、Angew. Chem. Int. Ed. 2004, (43), 3811-3814などに示されている。
またトポケミカル重合においては、ほぼ100%結晶化された高分子結晶を得ることが可能である。これにより、高分子結晶方向における熱伝導率が有機化合物の中では非常に高い値を示すこととなり、高熱伝導性樹脂組成物を得ることが可能となる。
ジエンモノマーをトポケミカル重合してなる高結晶性高分子(B)におけるジエンモノマーは、反応が容易でかつ単量体の入手が容易であるという点から、少なくとも1つのカルボキシル基またはカルボキシル基誘導体基を有する結晶状態のジエンモノマーであることが好ましい。中でも反応が容易であること、モノマーが工業的に生産されており安価に入手可能であること、などから、ムコン酸、ソルビン酸、およびそれらの誘導体からなる群から選択された少なくとも一つであることが望ましい。
上記トポケミカル重合においては、結晶状態の共役ジエン系モノマーを、結晶状態を保持したまま、重合開始剤、重合促進剤、及び触媒を用いることなく熱重合させる方法により高結晶性高分子を合成する方法が好ましい。このような重合方法を用いることにより、より結晶性が高く、高熱伝導率の高分子結晶が得られる。
上記モノマーは、規則正しく配列して結晶を形成するものである。また、上記モノマーは、共役ジエンを有するものが好ましい。また、上記共役ジエンは、少なくとも1つのカルボキシル基またはカルボキシル基誘導体基を有することが好ましい。なお、上記カルボキシル基誘導体基とは、例えば、カルボキシル基と、アルコール、アミンあるいはアンモニウムから選択される少なくとも1種の化合物とを反応させることにより得られる、エステル、アミド、アンモニウム塩等の誘導体である。言い換えれば、上記モノマーのエステル誘導体、アミド誘導体、アンモニウム塩である。
上記モノマーは、以下の一般式
X−CH=CH−CH=CH−Y
で表すことができる。ここで、XとYとは互いに独立であり、Xはカルボキシル基、あるいはエステル、アミド、アンモニウム塩等のカルボキシル基誘導体基から選択され、YはXと同様のカルボキシル基、あるいはエステル、アミド、アンモニウム塩等のカルボキシル基誘導体基、水素、または官能基を有してもよい炭化水素基から選択される。また、エステル、アミド、アンモニウム塩等のカルボキシル基誘導体基は、COOR、CONH、CONHR、CONR、COONH、COONHとして表すことができる。ここで、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立して、官能基を有してもよい炭化水素基であり、結晶状態においてカラム構造を作り易い分子構造を持つ基(例えば、ベンゼン環を有する基、ナフタレン環を有する基、長鎖アルキル(特に、炭素数8以上であることが好ましい)を有する基等)を有することが好ましい。また、上記モノマーは、熱重合を行うため、重合温度においてほぼ分解または融解しない化合物であることが好ましい。さらに、共役ジエン部分の炭素に直接結合している水素は、その一部が炭化水素基であってもよい。
上記モノマーは、Xがエステルまたはアミドである場合、少なくとも1つのカルボキシル基を有する共役ジエンと、アルコールまたはアミンとを混合し、従来公知の方法で縮合することにより得ることができる。この場合、加熱を伴うことなく縮合することが好ましく、例えば、縮合剤等を用いることができる。
上記共役ジエンとしては、例えば、ムコン酸、ソルビン酸、ブタジエンカルボン酸、アルキル置換ブタジエンカルボン酸等が挙げられる。
Xがエステルの場合、アルコールが用いられ、上記アルコールとしては、特に限定されるものではなく、メタノール、エタノール、クロロエタノール、ブロモエタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、ベンジルアルコール、クロロベンジルアルコール、ブロモベンジルアルコール、メチルベンジルアルコール、エチルベンジルアルコール、メトキシベンジルアルコール、エトキシベンジルアルコール、フェノキシベンジルアルコール、ナフチルメチルアルコール、ドデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコール等の第1級アルコール;第2級アルコール;第3級アルコール等が挙げられ、第1級アルコールがより好ましい。これらのうち、結晶状態においてカラム構造を作り易い分子構造を持つアルコール、具体的には、ベンジルアルコール、クロロベンジルアルコール、ブロモベンジルアルコール、メチルベンジルアルコール、エチルベンジルアルコール、メトキシベンジルアルコール、エトキシベンジルアルコール、フェノキシベンジルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましく、クロロベンジルアルコール、ブロモベンジルアルコール、メトキシベンジルアルコールが特に好ましい。これらの中でも、特にメトキシベンジルアルコールが好ましい。
Xがアミドの場合、アミンが用いられ、上記アミンとしては、特に限定されるものではなく(常温で固体でも液体でも気体でもよい)、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、オクチルアミン、シクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ベンジルアミン、ドデシルアミン、1−ナフチルメチルアミン等の第1級アミン;第2級アミン;アンモニア等が挙げられる。これらのうち、アミンとして、カラム構造を作り易い分子構造(例えば、ベンゼン環を有する基、ナフタレン環を有する基、長鎖アルキル(特に、炭素数8以上であることが好ましい)を有する基等)を持つアミン、具体的には、ベンジルアミン、ドデシルアミン、および1−ナフチルメチルアミンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましく、1−ナフチルメチルアミンが特に好ましい。
また、上記モノマーは、Xがアンモニウム塩である場合、少なくとも1つのカルボキシル基を有する共役ジエンと、アミンから得られるアンモニウムとを、例えば溶液中でイオン結合させることにより得ることができる。
上記アミンとしては、特に限定されるものではなく(常温で固体でも液体でも気体でもよい)、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、オクチルアミン、シクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ベンジルアミン、ドデシルアミン、1−ナフチルメチルアミン等の第1級アミン;第2級アミン;アンモニア等が挙げられる。また、p−キシリレンジアミン等の1分子内に2つ以上のアミノ基を有する化合物も使用できる。これらのうち、アミンとして、カラム構造を作り易い分子構造(例えば、ベンゼン環を有する基、ナフタレン環を有する基、長鎖アルキル(特に、炭素数8以上であることが好ましい)を有する基等)を持つアミン、具体的には、ベンジルアミン、ドデシルアミン、および1−ナフチルメチルアミンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましく、1−ナフチルメチルアミンが特に好ましい。
上記のようにして得られたモノマーは結晶状態であることが必要である。上記モノマーを、結晶状態を保持したまま熱重合させる。この熱重合では、結晶状態を保持したままトポケミカル重合が進行する。結晶性に優れた高分子が得られると言う点からは、この熱重合では、光による重合を防ぐため暗所(遮光条件)で行うことが好ましい。また、熱重合の温度は、得られたモノマーが重合を開始する温度であればよく、上記モノマーの融点あるいは分解温度より低い温度、つまり、モノマーの結晶構造が変化しない温度であることが好ましい。ここで、融点より低い温度は、モノマーが融解を開始する温度より低い温度であることが好ましい。また、分解温度より低い温度は、モノマーの重合の速度が速く、かつ上記重合の速度と分解の速度と差が大きい温度であることが好ましい。
また、上記熱重合の際、モノマーに紫外線等の光を照射しても構わない。このとき、光をモノマーに照射することにより、モノマーの光重合が開始する。このように、熱重合と光重合とを併用すると、重合の速度を顕著に加速することができる。
以上のように、本発明の結晶性高分子の製造方法は、少なくとも1つのカルボキシル基を有する共役ジエンと、アルコール、アミンまたはアンモニウムより選択される少なくとも1種の化合物とを反応させて結晶性モノマーを得る工程、ならびに上記結晶性モノマーをその結晶状態を保ちながら熱重合させる工程を含む結晶性高分子の製造方法である。
また、上記ジエンモノマーをトポケミカル重合してなる高結晶性高分子(B)は、上記結晶状態のモノマーを熱重合させるだけで得ることができるため、従来行われていた紫外線、X線、γ線等による光重合と比べはるかに簡単な装置で製造することができる。また、上記の結晶性高分子の製造方法を用いれば、温度を制御するだけで結晶性高分子を容易に製造することができる。例えば、紫外線による光重合では、モノマー表面での光吸収により均質に重合反応を進行させることが困難であったが、上記の結晶性高分子の製造方法を用いれば、結晶状態のモノマーを一定温度に保持することができるので、重合を結晶全体で重合させることができ、均質な(歪の少ない高品質の)結晶性高分子を得ることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるジエンモノマーをトポケミカル重合してなる高結晶性高分子(B)の使用量は、熱可塑性樹脂(A)に対して、(A)/(B)体積比が30/70〜99/1の範囲であることが好ましい。体積比が30/70より少ないと、得られる成形品の耐衝撃性、表面性、成形加工性が低下するうえ、溶融混練時の樹脂との混練が困難となる傾向がある。体積比の下限は好ましくは35/65以上、より好ましくは40/60以上、最も好ましくは50/50以上である。また体積比が99/1より多いと、熱伝導率が不十分となる傾向がある。好ましくは97/3以下、より好ましくは95/5以下である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に配合する、単体での熱伝導率が1.5W/m・K以上かつ電気絶縁性を示す高熱伝導性無機化合物(C)は、単体での熱伝導率が1.5W/m・K以上のものを用いることができる。1.5W/m・K未満では、組成物の熱伝導率を向上させる効果に劣るため好ましくない。単体での熱伝導率は、好ましくは4W/m・K以上、さらに好ましくは9W/m・K以上、最も好ましくは20W/m・K以上、特に好ましくは30W/m・K以上のものが用いられる。
高熱伝導性無機化合物(C)単体での熱伝導率の上限は特に制限されず、高ければ高いほど好ましいが、一般的には3000W/m・K以下、さらには2500W/m・K以下、のものが好ましく用いられる。
また高熱伝導性無機化合物(C)としては電気絶縁性を示す化合物が用いられる。電気絶縁性とは具体的には、電気抵抗率1Ω・cm以上のものを示すこととするが、好ましくは10Ω・cm以上、より好ましくは10Ω・cm以上、さらに好ましくは1010Ω・cm以上、最も好ましくは1013Ω・cm以上のものを用いるのが好ましい。電気抵抗率の上限には特に制限は無いが、一般的には1018Ω・cm以下である。本発明の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体の電気絶縁性も上記範囲にあることが好ましい。
高熱伝導性無機化合物(C)としては具体的には、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化ベリリウム、酸化銅、亜酸化銅、等の金属酸化物、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、等の金属窒化物、炭化ケイ素等の金属炭化物、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩、ダイヤモンド、等の絶縁性炭素材料、を例示することができる。これら無機化合物は天然物であってもよいし、合成されたものであってもよい。天然物の場合、産地等には特に限定はなく、適宜選択することができる。
中でも電気絶縁性に優れることから、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化銅、亜酸化銅、等の金属酸化物、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、等の金属窒化物、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩、ダイヤモンド、等の絶縁性炭素材料、をより好ましく用いることができ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化ベリリウム、ダイヤモンドを特に好ましく用いることができる。これらは単独あるいは複数種類を組み合わせて用いることができる。なおこれら金属酸化物や金属窒化物の中でも金属の種類によっては半導体としての特性を示す場合があるが、その場合でもできるだけ電気伝導度の低いものを選択するのが好ましい。
高熱伝導性無機化合物(C)の形状については、種々の形状のものを適応可能である。例えば粒子状、微粒子状、ナノ粒子、凝集粒子状、チューブ状、ナノチューブ状、ワイヤ状、ロッド状、針状、板状、不定形、ラグビーボール状、六面体状、大粒子と微小粒子とが複合化した複合粒子状、液体、など種々の形状を例示することができる。
これら高熱伝導性無機化合物(C)を添加する際には、樹脂と無機化合物との界面の接着性を高めたり、作業性を容易にしたりするため、シラン処理剤等の各種表面処理剤で表面処理がなされたものであってもよい。表面処理剤としては特に限定されず、例えばシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、等従来公知のものを使用することができる。中でもエポキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤、及び、アミノシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤、ポリオキシエチレンシラン、等が樹脂の物性を低下させることが少ないため好ましい。無機化合物の表面処理方法としては特に限定されず、通常の処理方法を利用できる。
これら高熱伝導性無機化合物(C)は、1種類のみを単独で用いてもよいし、形状、平均粒子径、種類、表面処理剤等が異なる2種以上を併用してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物における高熱伝導性無機化合物(C)の使用量は、熱可塑性樹脂(A)に対して、(A)/(C)体積比が5/95〜100/0となるよう含有することが好ましい。体積比が5/95より少ないと、得られる成形品の耐衝撃性、表面性、成形加工性が低下するうえ、溶融混練時の樹脂との混練が困難となる傾向がある。体積比の下限は好ましくは10/90以上、より好ましくは15/85以上、最も好ましくは20/80以上である。また体積比の上限は特に無いが、(C)化合物が多いほど熱伝導率が向上する傾向があり好ましい。好ましくは80/20以下、より好ましくは75/25以下、さらに好ましくは70/30以下、最も好ましくは65/35以下である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、樹脂組成物の耐熱性や機械的強度をより高めるため、本発明の特徴を損なわない範囲で(B)(C)以外の無機化合物を更に添加することができる。このような無機化合物としては特に限定ない。但しこれら無機化合物を添加すると、熱伝導率や絶縁性に影響をおよぼす場合があるため、添加量などには注意が必要である。 これら無機化合物も表面処理がなされていてもよい。これらを使用する場合、その添加量は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、100重量以下であることが好ましい。添加量が100重量部を超えると、耐衝撃性が低下するうえ、成形加工性が低下する場合もある。好ましくは50重量部以下であり、より好ましくは10重量部以下である。また、これら無機化合物の添加量が増加するとともに、成形品の表面性や寸法安定性が悪化する傾向が見られるため、これらの特性が重視される場合には、無機化合物の添加量をできるだけ少なくすることが好ましい。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物をより高性能なものにするため、フェノール系安定剤、イオウ系安定剤、リン系安定剤等の熱安定剤等を、単独又は2種類以上を組み合わせて添加することが好ましい。更に必要に応じて、一般に良く知られている、安定剤、滑剤、離型剤、可塑剤、リン系以外の難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、染料、帯電防止剤、導電性付与剤、分散剤、相溶化剤、抗菌剤等を、単独又は2種類以上を組み合わせて添加してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては特に限定されるものではない。例えば、上述した成分や添加剤等を乾燥させた後、単軸、2軸等の押出機のような溶融混練機にて溶融混練することにより製造することができる。また、配合成分が液体である場合は、液体供給ポンプ等を用いて溶融混練機に途中添加して製造することもできる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の成形加工法としては特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂について一般に用いられている成形法、例えば、射出成形、ブロー成形、押出成形、真空成形、プレス成形、カレンダー成形等が利用できる。これらの中でも成形サイクルが短く生産効率に優れることから、射出成形法により射出成形することが好ましい。
本願発明の組成物は、実施例でも示すとおり良好な熱伝導性を示し、0.8W/m・K以上、好ましくは1W/m・K以上、さらに好ましくは1.3W/m・K以上の成形体を得ることが可能である。また本発明で得られる樹脂組成物は、高熱伝導性でありまた絶縁性も有している。これまでの高熱伝導性材料は導電性を有するので電子材料用途では使用範囲が限定されていたが、本発明ではこのような課題をも同時に解決することに成功した。
本発明の高熱伝導性樹脂組成物は、樹脂フィルム、樹脂成形品、樹脂発泡体、塗料やコーティング剤、などさまざまな形態で、電子材料、磁性材料、触媒材料、構造体材料、光学材料、医療材料、自動車材料、建築材料、等の各種の用途に幅広く用いることが可能である。本発明で得られた高分子材料は、現在広く用いられている射出成形機や押出成形機等の一般的なプラスチック用成形機が使用可能であるため、複雑な形状を有する製品への成形も容易である。家電、OA機器部品、AV機器部品、自動車内外装部品、等の射出成形品等に好適に使用することができる。特に多くの熱を発する家電製品やOA機器において、外装材料として好適に用いることができる。
さらには成形加工性、耐衝撃性、耐薬品性、熱伝導性、などの重要な諸特性のバランスに優れていることから、発熱源を内部に有するがファン等による強制冷却が困難な電子機器において、内部で発生する熱を外部へ放熱するために、これらの機器の外装材として好適に用いられる。これらの中でも好ましい装置として、ノートパソコンなどの携帯型コンピューター、PDA、携帯電話、携帯ゲーム機、携帯型音楽プレーヤー、携帯型TV/ビデオ機器、携帯型ビデオカメラ、等の小型あるいは携帯型電子機器類の筐体、ハウジング、外装材用樹脂として非常に有用である。
また絶縁性と熱伝導性とを併せ持った樹脂の特性を生かし、自動車や電車等におけるバッテリー周辺用樹脂、家電機器の携帯バッテリー用樹脂、ブレーカー等の配電部品用樹脂、モーター等の封止用材料、としても非常に有用に用いることができる。
また、本発明の高熱伝導性樹脂組成物は従来の無機物配合組成物に比べて、成形加工性、耐衝撃性、さらには得られる成形体の表面性が良好であり、上記の用途における部品あるいは筐体用として有用な特性を有するものである。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(製造例1)
高結晶性高分子(B)の製造
ソルビン酸(和光製試薬)2018.3gに30Lのメタノールを加え、室温で攪拌して溶解させた。次にp−キシリレンジアミン(昭和電工(株)製ショウアミンP)1225.7gを36Lのメタノールを加え、室温で攪拌して溶解させた。調整したソルビン酸のメタノール溶液を、p−キシリレンジアミンのメタノール溶液に室温、攪拌下に滴下した。4〜5割滴下した頃に、系に沈殿物が生成し、最終的にスラリー状の溶液が得られた。
スラリーを桐山ロートでろ過して得られた白色粉末を120℃に設定した真空乾燥機に入れ、減圧下18時間放置して得られた高結晶性高分子をメタノールで洗浄することにより、ポリジソルビン酸p−キシリレンジアンモニウム塩である高結晶性高分子(B)を得た。(TOP−1)
また、ほぼ同様の製造方法にて、用いる単量体を種々変更することにより、下記の高結晶性高分子を得た。
ポリ(4−クロロベンジル ZZムコネート) (TOP−2)
ポリ(4−メトキシベンジル EE−ムコネート) (TOP−3)
ポリ(1−ナフチルメチルアンモニウム ZZ−ムコネート) (TOP−4)
ポリ(ドデシルアンモニウム ZZ−ムコネート) (TOP−5)
ポリ(ベンジルアンモニウム ZZ−ムコネート) (TOP−6)
ポリムコン酸 (TOP−7)
ポリ(4−メチルベンジルアンモニウム ソルベート) (TOP−8)
(実施例1)
熱可塑性樹脂(A)として、エチレン・エチルアクリレート共重合体エバフレックスEEA−A713(三井デュポンポリケミカル(株)社製)(RES―1)100重量部に対して、安定剤としてアデカスタブAO−60(旭電化製商品名)0.2重量部をスーパーフローターにて混合した(原料1)。
別途ジエンモノマーをトポケミカル重合してなる高結晶性高分子(B)として、製造例1で製造された(TOP−1)を用いた(原料2)。
別途高熱伝導性無機化合物(C)としてアルミナ粉末(電気化学工業(株)製DAW−03、単体での熱伝導率35W/m・K、体積平均粒子径3μm、電気絶縁性、体積固有抵抗1016Ω・cm)(FIL−1)100重量部、信越化学製エポキシシランであるKBM−303を1重量部、エタノール5重量部、をスーパーフローターにて混合し、5分間撹拌した後、80℃にて4時間乾燥した(原料3)。
原料1、原料2、原料3、を、テクノベル製KZW15−45同方向噛み合い型二軸押出機のスクリュー根本付近に設けられた第一供給口であるホッパーより投入した。熱可塑性樹脂(A)、高結晶性高分子(B)、高熱伝導性無機化合物(C)、を体積比で(A)/(B)/(C)=40/10/50となるよう設定した。設定温度は供給口近傍が100℃で、順次設定温度を上昇させ、スクリュー先端部を150℃に設定した。本条件にて評価用サンプルペレットを得た。
(実施例2〜11、比較例1〜2)
配合原料の種類や量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、評価用サンプルペレットを得た。実施例及び比較例に用いた原料は、下記の通りである。
熱可塑性樹脂(A)
(RES―2):低密度ポリエチレンである、ミラソン401(プライムポリマー(株)社製)
高熱伝導性無機化合物(C)
(FIL−2):窒化ホウ素粉末(水島合金鉄(株)製HP−40、単体での熱伝導率60W/m・K、体積平均粒子径7.0μm、電気絶縁性、体積固有抵抗1014Ω・cm)
[射出成形]
得られた各サンプルペレットを乾燥した後、射出成形機にて120mm×120mm×厚み3.2mmの平板を成形した。
[熱伝導率]
厚み3.2mm平板にて、京都電子工業製ホットディスク法熱伝導率測定装置で4φのセンサーを用い、熱伝導率を算出した。
[密度]
厚み3.2mm平板を3cm×3cm角に切り出し、水中置換法にて密度を測定した。
[電気絶縁性]
厚み3.2mmの平板を用いて、ASTM D−257に従い体積固有抵抗値を測定した。
それぞれの配合および結果を表1に示す。表1より、本特許の範囲外の組成物と比べ、本特許の組成物は電気絶縁性を維持したまま高熱伝導率の樹脂組成物が得られることがわかる。
Figure 2008297401
以上から本発明の熱可塑性樹脂組成物は、電気絶縁性と高熱伝導率とを両立した組成物が得られることが分かる。また、高結晶性高分子(B)を用いていない比較例と比べて、高熱伝導性でかつ低密度の組成物が得られる。このような組成物は電気・電子工業分野、自動車分野、などさまざまな状況で熱対策素材として用いることが可能で、かつ低密度であるため携帯機器の軽量化にも貢献できることから、工業的に有用である。

Claims (6)

  1. 熱可塑性樹脂(A)、ジエンモノマーをトポケミカル重合してなる高結晶性高分子(B)を少なくとも含有し、得られる熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率が0.8W/mK以上であることを特徴とする、高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
  2. ジエンモノマーをトポケミカル重合してなる高結晶性高分子(B)が、少なくとも1つのカルボキシル基またはカルボキシル基誘導体基を有する結晶状態のジエンモノマーを、重合開始剤、重合促進剤、及び触媒を用いることなく、結晶状態を保持したまま熱重合させて得られる結晶性高分子であることを特徴とする、請求項1記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
  3. ジエンモノマーをトポケミカル重合してなる結晶性高分子(B)におけるジエンモノマーが、ムコン酸、ソルビン酸、およびそれらの誘導体からなる群から選択された少なくとも一つであることを特徴とする、請求項1あるいは2いずれか1項に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
  4. さらに単体での熱伝導率が1.5W/m・K以上でかつ電気絶縁性を示す高熱伝導性無機化合物(C)を含有することを特徴とする、請求項1〜3いずれか1項に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
  5. (C)が、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化ベリリウム、ダイヤモンド、から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項4に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5いずれか1項に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物を射出成形して作成された、高熱伝導性成形体。
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