JP2008296513A - 発泡樹脂製品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】スライドコアに頼ることなく段差部のアンダーカット処理を可能にし、もって外観品質に優れた発泡樹脂製品を安定してかつコスト安に得ることができる発泡樹脂製品の製造方法を提供する。
【解決手段】射出発泡成形時にアンダーカット部となる段差部9を有する発泡樹脂製品1を製造するに際し、はじめに、段差部の段差面20aを強制的に脱型可能な高さに設定して射出発泡成形を行い、段差部の隅に余肉部22を残す。次に、前記余肉部22にシリンダ33の駆動により超音波溶着用のホーン30を押付け、振動エネルギーによって加熱しながら余肉部22を押し潰して、所定の段差部形状に仕上げる。
【選択図】図3

Description

本発明は、発泡樹脂製品の製造方法に係り、特に射出発泡成形時にアンダーカットとなる段差部を有する発泡樹脂製品を製造する方法に関する。
射出発泡成形時にアンダーカットとなる段差部を有する発泡樹脂製品としては、たとえば、自動車用のインストルメントパネル(インパネ)がある。図4、5は、インパネ1の一つの例を示したもので、L字形をなす樹脂製基材(芯材)2とこの基材2の、主に上面側に一体発泡成形された樹脂発泡体3とからなっている。このインパネ1の上面には、デフロスタ用取付部4、サイドデフロスタ用取付部5、スピーカー用取付部6、サイドスピーカー用取付部7等が設けられており、これら取付部4〜7には、デフロスタやスピーカーに付属する合せ部品8を取付けるための段差部9(図5)が形成されている。なお、樹脂発泡体3は、ここでは表面側のスキン層3aと内部側の発泡層3bとの2層構造となっているが、このような2層構造の樹脂発泡体3は、キャビティに発泡樹脂材を射出、充填した後、表面に所定厚さのスキン層3aが形成されるのを待って、一方の金型をコアバックさせて発泡させる、所謂コアバック方式を採用することで成形可能である。
ところで、上記したインパネ1において、各取付部4〜7のうちのいくつかは、その段差部9が射出発泡成形時にアンダーカット部となる。このため、従来一般には、図6に示すように金型を構成する固定型10と可動型11との何れか一方、ここでは固定型10に段差部9の成形部を有するスライドコア(入子)12を組込み、射出発泡成形完了後、まずスライドコア12を矢印F´方向へ引抜いて脱型させ、その後に固定型10に対して可動型11を矢印F方向へ後退(型開き)させるようにしていた。なお、同図中、Lは、固定型10に対する可動型11の、発泡前の型合せ位置を示しており、この型合せ位置から可動型11が実線位置までコアバックされる。
しかしながら、上記スライドコア12によるアンダーカット処理によれば、固定型10とスライドコア12との合せ面がインパネ1の意匠面に設定されるため、得られたインパネ1の意匠面(製品面)に入子分割線が転写され、外観品質の悪化が避けられない、という問題があった。
なお、たとえば、特許文献1には、端部に折り返し部を有する自動車用バンパーの射出成形において、スライドコアを複数分割して、製品面に影響を与えない箇所に移すことを行っているが、このような対策では、型構造が複雑になることに加え、スライドコアの分割要素を各独立に駆動する駆動手段が必要になり、設備コストの大幅な上昇が避けられない。また、スライドコアにより製品の端部を弾性変形させながら強制的に脱型する方式であるため、上記したインパネ1のように端部から離れた位置に段差部9が存在する場合や背面側に基材2が存在する場合には、その適用は不可能である。
実公平7−19772号公報
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、スライドコアに頼ることなく段差部のアンダーカット処理を可能にし、もって外観品質に優れた発泡樹脂製品を安定してかつコスト安に得ることができる発泡樹脂製品の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明に係る発泡樹脂製品の製造方法は、射出発泡成形時にアンダーカット部となる段差部を有する発泡樹脂製品を製造する方法であって、射出発泡成形後、超音波溶着の要領で所定の段差部形状に仕上げることを特徴とする。このように射出発泡成形後に段差部を仕上げるので、射出発泡成形に際しスライドコアによるアンダーカット処理が不要になり、結果として意匠面に入子分割線が残ることはなくなる。また、超音波溶着の要領で所定の段差部形状に仕上げるので、製造コストが特別上昇することはない。
以下、本発明の態様をいくつか例示し、それらについて項分けして説明する。
(1)射出発泡成形時にアンダーカット部となる段差部を有する発泡樹脂製品を製造する方法であって、はじめに、前記段差部の段差面を強制的に脱型可能な高さに設定して射出発泡成形を行い、次に、前記段差部の隅に残る余肉部に超音波溶着用のホーンを押付け、超音波振動エネルギーを付与しながら該余肉部を押し潰して、所定の段差部形状に仕上げることを特徴とする発泡樹脂製品の製造方法。
本(1)項記載の発泡樹脂製品の製造方法においては、段差部の段差面を強制的に脱型可能な高さに設定して射出発泡成形を行うので、スライドコアによるアンダーカット処理が不要になる。また、余肉部に超音波溶着用のホーンを押付け、振動エネルギーを付与することで、余肉部に摩擦熱が発生して発泡層が容易に押し潰され、簡単に所定の段差部形状とすることができる。しかも、この超音波溶着用のホーンの押付けにより内部の泡部分のみが潰れるので、意匠面側に変形やしわなどの不具合が発生することはない。
(2)段差部の段差面を強制的に脱型可能な最大高さに設定して射出発泡成形を行うことを特徴とする(1)項に記載の発泡樹脂製品の製造方法。
本(2)項記載の発泡樹脂製品の製造方法においては、段差部の段差面を強制的に脱型可能な最大高さに設定して射出発泡成形を行うことで、段差部の隅角に残る余肉部の大きさは最小となり、その分、超音波溶着用のホーンによる押し潰し量が減じて、段差部の仕上げを安全に行うことができる。
(3)強制的に脱型可能な段差面の最大高さが2.5mmであることを特徴とする(2)項に記載の発泡樹脂製品の製造方法。
スキン層付き発泡樹脂製品を射出発泡成形する場合は、アンダーカット部が2.5mm高さまでは強制的に脱型可能であるので、この場合は、本(3)項記載のように段差面の高さを2.5mmに設定して射出発泡成形を行うようにする。
(4)段差部の隅角に残る余肉部を超音波溶着用ホーンにより段差面より奥側へ押し込み、該段差部の隅角に段差面より後退する逃げ部を形成することを特徴とする(1)乃至(3)項の何れか1項に記載の発泡樹脂製品の製造方法。
本(4)項記載の発泡樹脂製品の製造方法においては、余肉部を超音波溶着用ホーンにより段差面より奥側へ押し込んで逃げ部を形成する場合は、該段差部に取付ける合せ部品に多少の寸法誤差があっても安定して取付けることができる。
(5)発泡樹脂製品が、自動車用インストルメントパネルであり、基材と一体発泡成形されることを特徴とする(1)乃至(4)項の何れか1項に記載の発泡樹脂製品の製造方法。
本(5)項記載の発泡樹脂製品の製造方法においては、基材と一体発泡成形される自動車用インストルメントパネルであっても、射出発泡成形時にアンダーカット部となる段差部を確実に成形できる。
本発明に係る発泡樹脂製品の製造方法によれば、射出発泡成形に際してスライドコアによるアンダーカット処理が不要になるので、意匠面に入子分割線が残ることがなくなり、外観品質に優れた発泡樹脂製品を安定して得ることができる。また、超音波溶着の要領で所定の段差部形状に仕上げるので、段差部の仕上げに特別の面倒さはなく、製造コストが特別上昇することはない。
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1〜図3は、本発明に係る発泡樹脂製品の製造方法を示したものである。本実施形態は、前記したインパネ1(図4)を製造するもので、未完成段差部20を有するインパネ半製品21を製造する射出発泡成形工程(図1、2)と、高周波溶着用のホーン30を利用して前記未完成段差部20を押し潰して所定形状の段差部9とする仕上加工工程(図3)とを含んでいる。
本実施形態において、射出発泡成形工程で製造されるインパネ半製品21は、未完成段差部20を除けば、前記発泡樹脂製品としてのインパネ1と同じ形状、構造を有している。すなわち、その全体はL字形をなす樹脂製基材(芯材)2とこの基材2の、主に上面側に一体発泡成形された樹脂発泡体3とからなり、また、樹脂発泡体3は、表面側のスキン層3aと内部側の発泡層3bとの2層構造となっている。
上記インパネ半製品21の未完成段差部20は、図2によく示されるように、所定の高さhを有する段差面20aと所定の角度で傾斜する傾斜面20bとを連接した形状となっている。段差面20aの高さhは、強制的に脱型可能な最大高さに設定されている。2層構造の樹脂発泡体3の場合、強制的に脱型可能な段差面の最大高さは2.5mm程度であることが経験的にわかっており、したがって、前記段差面20aの高さhは、2.5mmに設定されている。また、本射出成形工程で用いられる金型からは、従来必要としていたスライドコア12(図6)が省略されており、固定型10は、前記段差面20aおよび傾斜面20bを成形するための段差成形部10aを一体に有する構造となっている。
本実施形態において、射出発泡成形は前記したコアバック方式により行われる。すなわち、予め可動型11に樹脂製基材2をセットして、固定型10に対して可動型11を型閉じし、両型11、12の相互間に画成されるキャビティに発泡樹脂材を射出、充填する。そして、表面に所定厚さのスキン層3aが形成されるタイミングで、一方の金型(ここでは、可動型11)を初期の型合せ位置L(図1)からコアバックさせて発泡を行わせる。その後、固定型11に対して可動型12を矢印F方向へ後退(型開き)させる。すると、未完成段差部20の段差面20aがアンダーカット部となっているので、この段差面20aを含む部分が固定型10の段差成形部10aに干渉する。しかし、前記したように段差面20aの高さhが脱型可能な高さとなっているので、該段差面20aを含む部分は弾性変形しながら段差成形部10aを乗り越え、これによって上記した未完成段差部20を有するインパネ半製品21が完成する。この場合、図2に示されるように段差部20の隅には断面三角形をなす余肉部22が残ることになる。
仕上加工工程においては、上記のようにして得られたインパネ半製品21の未完成段差部20を高周波溶着用ホーン30を用いて所定の形状に仕上加工する。高周波溶着用ホーン30は、図3に示されるように超音波振動子31から下方へ延ばしたコーン32の先端部に取付けられている。超音波振動子31の後端(上端)はシリンダ33のピストンロッド33aに支持されており、ホーン30は、シリンダ33の駆動により超音波振動子31と一体に上下動する。本実施形態において、前記インパネ半製品21は、その段差部20の段差面20aが前記ホーン30の移動方向に対して所定角度θだけ傾斜するように位置決めされる。また、ホーン30の先端は、前記角度θと同じ角度だけ傾斜する傾斜面30aとなっている。
仕上加工に際しては、上記したごとく所定の角度でインパネ半製品21を位置決めした後、超音波振動子31を作動させながらシリンダ33の駆動によりホーン30を下動させ、インパネ半製品21の段差部20(図1、2)の隅に残る余肉部22に該ホーン30を押付ける。ホーン30には超音波振動子31からコーン32を介して振動エネルギーが付与されており、この振動エネルギーによってホーン30と余肉部22との接触界面に摩擦熱が発生する。そして、この摩擦熱によって余肉部22が軟化し、ホーン30の下動に応じて該余肉部22は次第に押し潰され、遂には、図3に示されるようにホーン30が下降端に達し、仕上加工は終了する。
上記仕上加工の終了により、段差部9が所定の形状に仕上がってインパネ1は完成するが、この段差部9の仕上加工は、上記したように超音波溶着の要領で余肉部22を加熱しながら押し潰すので、該段差部9に割れなどの不具合が発生することはない。しかも、内部の泡部分のみが潰れるので、意匠面側に変形やしわなどの不具合が発生することはなく、インパネ1は高品質に仕上がる。本実施形態においては特に、段差面20aに対して所定の角度θだけ傾斜する方向からホーン30を押付けるので、仕上加工後の段差部9には、段差面20aより後退する逃げ部9aが形成される。これにより、完成後のインパネ1の段差部9に対して合せ部品8(図5)を組付ける際、段差部9の隅角と合せ部品8との干渉が回避され、この結果、合せ部品8に多少の寸法誤差があっても安定して取付けることができるようになる。
なお、上記実施形態においては、インストルメントパネルの製造に適用した例を示したが、本発明は、射出発泡成形時にアンダーカット部となる段差部を有する種々の発泡樹脂製品の製造に適用可能である。この場合、射出発泡成形は、上記コアバック方式に限定されないことはもちろんである。
本発明に係る発泡樹脂製品の製造方法における射出発泡成形工程の一つの実施形態を示す断面図である。 射出発泡成形工程による成形後の段差部の状態を拡大して示す断面図である。 本発泡樹脂製品の製造方法における仕上加工工程の一つの実施形態を示す断面図である。 本発明で製造される発泡樹脂製品の1つであるインストルメントパネルの外嵌形状を示す斜視図である。 図4のA−A矢視線に沿う断面図である。 インストルメントパネルを製造するための従来の射出発泡成形工程と金型構造とを示す断面図である。
符号の説明
1 インストルメントパネル(樹脂発泡製品)
2 基材
3 樹脂発泡体
3a スキン層
3b 発泡層
9 段差部
9a 逃げ部
10 固定型
11 可動型
20 未完成段差部
20a 段差面
21 インパネ半製品
22 余肉部
30 超音波溶着用ホーン
33 シリンダ

Claims (5)

  1. 射出発泡成形時にアンダーカット部となる段差部を有する発泡樹脂製品を製造する方法であって、はじめに、前記段差部の段差面を強制的に脱型可能な高さに設定して射出発泡成形を行い、次に、前記段差部の隅に残る余肉部に超音波溶着用のホーンを押付け、振動エネルギーを付与しながら該余肉部を押し潰して、所定の段差部形状に仕上げることを特徴とする発泡樹脂製品の製造方法。
  2. 段差部の段差面を強制的に脱型可能な最大高さに設定して射出発泡成形を行うことを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂製品の製造方法。
  3. 強制的に脱型可能な段差面の最大高さが2.5mmであることを特徴とする請求項2に記載の発泡樹脂製品の製造方法。
  4. 段差部の隅角に残る余肉部を、超音波溶着用ホーンにより段差面より奥側へ押し込み、該段差部の隅角に段差面より後退する逃げ部を形成することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の発泡樹脂製品の製造方法。
  5. 発泡樹脂製品が、自動車用インストルメントパネルであり、基材と一体発泡成形されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の発泡樹脂製品の製造方法。
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