JP2008293851A - 誘導加熱コイル体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ワーク20を焼き入れするための加熱コイル6と、絶縁部材8を介して加熱コイル6を支持する支持部材2とを備え、ワーク20を焼き入れする際に加熱コイル6に高周波電流が流れる誘導加熱コイル体1において、支持部材2は、金属で構成されており、支持部材2に生じる誘導電流の経路上にスリット11A〜11F,13及び/又は孔10を設けた。ワーク20の焼き入れ部位の断面が円柱形状であり、前記ワーク20の周囲を焼き入れする。
【選択図】図2
Description
ワーク20を焼き入れする際には、ワーク20と加熱コイル6との距離を一定に保つ必要があり、従来は、誘導加熱コイル体にスペーサ7A,7B,7Cを設け、このスペーサ7A,7B,7Cにワーク20を押し付けた状態を維持することにより、両者間の距離を一定に保っていた。ちなみに、特許文献1の発明においても、このような手法が採用されている。
例えば、クランクシャフトのピン部を焼き入れする際には、ピン部はクランクシャフトの回転軸の周囲を周回移動するため、ピン部の移動と共に加熱コイル6(誘導加熱コイル体)も移動させなければならない。ピン部の周囲を一様に焼き入れするためには、加熱コイル6からピン部までの距離を一定に保つ必要がある。そのためには、スペーサ7A,7B,7Cにピン部を押し付け、スペーサ7A,7B,7Cがピン部から離れないようにしなければならず、誘導加熱コイル体はスペーサ7A,7B,7Cを介してピン部(ワーク20)から荷重を受ける。そのため、誘導加熱コイル体は剛性を有する部材を備えて、ワーク20から受ける荷重に耐えられるように構成する必要がある。
また、ピン部の周回位置によって誘導加熱コイル体に掛かる荷重の向きは変化するので、少なくとも二箇所(特許文献1の発明では三箇所)にスペーサ7A,7B,7Cを配置し、ワーク20を同時に二箇所以上のスペーサ(7Aと、7B又は7Cのいずれか)と接触させることが望ましい。
一方、全てのスペーサ7A,7B,7Cを金属製の支持部材2A,2Bに固定すると、ワーク20の焼き入れに寄与する誘導電流の一部が、誘導加熱コイル体(スペーサを含む)側に流れることがあり、ワーク20とスペーサ(7B又は7C)の間に隙間が生じた際に、ワーク20とスペーサ(7B又は7C)の間にスパークが発生することがあった。
しかしピン部は、クランクシャフトの回転軸から離れた位置に配置されているため、クランクシャフトの回転軸を回転させると、ピン部は回転軸の周囲を周回移動するため、ピン部を焼き入れする際には、誘導加熱コイル体もピン部と共に移動させる必要がある。その際、ピン部と誘導加熱コイル体との距離を一定に保つために、ピン部は誘導加熱コイル体(スペーサ)に押し付けた状態を維持しながらクランクシャフトの回転軸の周りを周回移動させなければならない。
しかし、誘導加熱コイル体は、支持部材を備えているので、スペーサを介してピン部から荷重を受けても耐えることができる。
以下、これらの構成を順に説明する。
支持部材2は、正面板2Aと裏面板2B(図3)とが図示しないボルトで所定の間隔だけ離間して固定された構造を有しており、支持部材2の内部には正面板2Aと裏面板2Bとで挟まれた空間16が形成されている。支持部材2は、黄銅等の非磁性体の金属合金で構成されている。
加熱コイル6は、一本の導体4によって構成されている。この導体4の両端が、支持部材2の上部に配置された電極に接続されており、導体4には高周波電流が供給可能になっている。また、導体4の途中の部分が、加熱コイル6を形成し、加熱コイル6に高周波電流を供給することによってワーク20上に誘導電流を生じさせ、ワーク20を焼き入れする。
また、正面板2Aの凹部12には、スリット13が設けられている。
この孔10,スリット11A〜11Fと、スリット13とが本発明の特徴的な構成である。以下では、まず、正面板2Aの迂回部6eと対向する部位(孔10等)について説明し、続いて凹部12(スリット13)について説明する。
また、図5に示すように、孔10を設けず、スリット21a,21bを設けることもできる。図5は、本発明の図1とは別の実施形態の誘導加熱コイル体25の斜視図である。この場合には、少なくとも正面板2A(裏面板2B)上に生じる熱によって正面板2A自身(裏面板2B自身)が焼け付かない程度に、誘導電流が迂回(又は分散)するようにスリット(21a,21b)の長さ,向き,及び数を設定する。
前述したように、凹部12にはスリット13が設けられている。
加熱コイル6に流れる高周波電流によって、ワーク20上には誘導電流16が生じ、この誘導電流16による発熱によってワーク20は焼き入れ処理される。
ところで、加熱コイル6からワーク20までの距離を一定に保つために、金属製のスペーサ7Aと7B,又はスペーサ7Aと7Cとが同時にワーク20に接している。図2では、ワーク20とスペーサ7Bの間にごく僅かな隙間があり、ワーク20がスペーサ7Aと7Cに接している場合を示している。
上述したようにスペーサ7A,7B,7Cは、支持部材2(正面板2A,裏面板2B)に固定され、加熱コイル6とワーク20とを焼き入れに適した所定距離に隔てる機能を有している。
スペーサ7A,7B,7Cは、ワーク20よりも硬い素材(超硬,セラミックス等)で構成されているが、焼入作業が長時間(長期間)に渡って実施されると、回転するワーク20が接触することによって徐々に摩耗する。特にスペーサ7Aは、他のスペーサ7B及び7Cと比べて摩耗し易く、スペーサ7Aの摩耗が進むとワーク20と加熱コイル6の間隔が狭くなり、放置するとやがて両者は接触(コイルタッチ)してしまう恐れがある。また、ワーク20と加熱コイル6の間隔が狭くなると、ワーク20の焼入の品質が悪化してしまう。そこで、誘導加熱コイル体を以下で説明するように構成すると、スペーサ7Aの使用可能期間を延ばし、長期間に渡って良好に焼入作業を実施することができるようになる。
図7は、本発明を実施した誘導加熱コイル体27の正面図である。また、図8(a)〜図8(c)は、各々誘導加熱コイル体27の部分断面図である。
図7の誘導加熱コイル体27の正面板2A(裏面板2B)には、図5に示す誘導加熱コイル体25と同様にスリット21a,21b,及び加えてスリット21cが設けられている。スリット21a,21b,21cは、正面板2A(裏面板2B)上に生じる無用の誘導電流9A,9Bを広域に分散させる機能を有している。図7では正面板2A(裏面板2B)にスリット21a〜21cを設けた例を示したが、図5に示すようにスリット21aと21bのみでもよい。
今、スペーサ7Aの出代が寸法L1であればスペーサ7Aの下部に当接するワーク20から加熱コイル6までの距離が適正距離L2(所定距離)になるとすると、そのときのストッパ14aの下端及び/又はスリット21cの上端(上縁)と、スペーサ7Aの上部7a(頭部)の間にシム23aを配置する。シム23aは、ストッパ14aの下端及び/又はスリット21cの上端からスペーサ7Aの上部7aまでの空隙を埋める厚みを有しており、シム23aを配置し、シム23aにスペーサ7Aの上部7aを当接させることによって、スペーサ7Aの高さ方向の位置決めを行う。同様に、裏面板2B側のスペーサ7Aの上端も裏面板2Bの内側に固定したストッパ14bの下端に当接させ、位置調整(位置決め)を行う。
2A 正面板(支持部材)
2B 裏面板(支持部材)
3 冷却ジャケット
4 導線
5 電極
6 加熱コイル
7A〜7C スペーサ
8 絶縁部材
9A,9B,9C 誘導電流
10 孔
11A〜11F スリット
12 凹部
13 スリット
16 誘導電流
20 ワーク
Claims (7)
- ワークを焼き入れするための加熱コイルと、絶縁部材を介して前記加熱コイルを支持する支持部材とを備え、前記ワークを焼き入れする際に前記加熱コイルに高周波電流が流れる誘導加熱コイル体において、前記支持部材は、金属で構成されており、前記支持部材に生じる誘導電流の経路上にスリット及び/又は孔を設けたことを特徴とする誘導加熱コイル体。
- ワークを焼き入れするための加熱コイルと、絶縁部材を介して前記加熱コイルを支持する支持部材とを備え、前記ワークを焼き入れする際に前記加熱コイルに高周波電流が流れる誘導加熱コイル体において、前記支持部材は金属で構成されており、前記支持部材の、加熱コイルに高周波電流を導く導体に近接する部分の近傍、又は導体が密集する部分の近傍のいずれかにスリット及び/又は孔を設けたことを特徴とする誘導加熱コイル体。
- ワークを焼き入れするための加熱コイルと、絶縁部材を介して前記加熱コイルを挟持する支持部材とを備え、前記支持部材には、ワークが当接して前記加熱コイルとワークの距離を一定に保つスペーサが設けてあり、前記ワークを焼き入れする際に前記加熱コイルに高周波電流が流れる誘導加熱コイル体において、前記支持部材は、金属で構成されており、前記支持部材と,スペーサと,ワークとを循環する誘導電流の経路上の支持部材部分に、スリットを設けたことを特徴とする誘導加熱コイル体。
- いずれかのスペーサが非導通性の素材で構成されていることを特徴とする請求項3に記載の誘導加熱コイル体。
- 前記支持部材は、隣接するスペーサの間で分割されており、各分割片が剛性を有する絶縁部材で連結固定されていることを特徴とする請求項3に記載の誘導加熱コイル体。
- 前記ワークの焼き入れ部位の断面が円柱形状であり、前記ワークの周囲を焼き入れすることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちのいずれかに記載の誘導加熱コイル体。
- 前記ワークは、クランクシャフトであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のうちのいずれかに記載の誘導加熱コイル体。
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