本発明の極細繊維不織布の製造方法について、図1〜図3に沿って説明する。図1は、製造装置を上方から見た模式的平面図であり、図2は、前記製造装置を図1のAの地点から矢印の方向に見た模式的断面図であり、図3は、前記製造装置を図1のBの地点から矢印の方向に見た模式的断面図である。
図1に示す極細繊維不織布製造装置は、ポリマー溶液を蓄えることのできるポリマー溶液貯留部1;ポリマー溶液供給部群としてのノズル群21〜2n;ポリマー溶液貯留部1とポリマー溶液供給部群(ノズル群21〜2n)とを繋ぎ、ポリマー溶液をポリマー溶液供給部群へ供給することができる供給管1a;ポリマー溶液貯留部1からポリマー溶液供給部群へポリマー溶液を供給し、ポリマー溶液供給部群からポリマー溶液を開放空間へ吐出して供給できる供給吐出手段3;ポリマー溶液に電圧を印加することのできる電圧印加手段4;一定方向Dに移動しながら、ポリマー溶液が繊維化された極細繊維を直接集積して極細繊維ウエブを形成する、好ましくはアースされている捕集体5;一対の回転軸(第1スプロケット6aと第2スプロケット6bとの間)間を周回可能な長円状エンドレス軌道に沿って前記ポリマー溶液供給部群(ノズル群21〜2n)を担持し、前記長円状エンドレス軌道の長径と捕集体の幅方向(前記捕集体5の移動方向Dと直交する方向)とが一致する支持体6c;支持体6cを一定速度で前記捕集体の幅方向に移動させることにより、前記ポリマー溶液供給部群(ノズル群21〜2n)を一定速度で前記捕集体の幅方向に移動させることのできる移動手段6;前記ポリマー溶液供給部群(ノズル群21〜2n)の長円状エンドレス軌道(循環移動軌跡)よりも外側に位置し、電界を作用させることのできる電界発生手段7;バインダ溶液を蓄えることのできるバインダ溶液貯留部21;バインダ溶液供給部群としてのノズル群221〜22n;バインダ溶液貯留部21とバインダ溶液供給部群(ノズル群221〜22n)とを繋ぎ、バインダ溶液をバインダ溶液供給部群へ供給することができる供給管21a;バインダ溶液貯留部21からバインダ溶液供給部群へバインダ溶液を供給し、バインダ溶液供給部群からバインダ溶液を開放空間へ吐出して供給できる供給吐出手段23;バインダ溶液に電圧を印加することのできる電圧印加手段24;一対の回転軸(第1スプロケット26aと第2スプロケット26bとの間)間を周回可能な長円状エンドレス軌道に沿って前記バインダ溶液供給部群(ノズル群221〜22n)を担持し、前記長円状エンドレス軌道の長径と捕集体の幅方向(前記捕集体5の移動方向Dと直交する方向)とが一致する支持体26c;支持体26cを一定速度で前記捕集体の幅方向に移動させることにより、前記バインダ溶液供給部群(ノズル群221〜22n)を一定速度で前記捕集体の幅方向に移動させることのできる移動手段26;前記捕集体上に形成された極細繊維不織布を、捕集体5の端部でロール状に巻き取ることのできる巻取り装置8;前記ポリマー溶液供給部群(ノズル群21〜2n)や捕集体5等を収納した紡糸容器9;紡糸容器9へ所望気体を供給することができる気体供給装置10;及び紡糸容器9内の気体を排気することができる排気装置11;を備えている。
このような製造装置を用いて極細繊維不織布を製造する場合、まず、ポリマー溶液を用意する。このポリマー溶液は、例えば、静電紡糸可能な樹脂を溶媒に溶解させた溶液である。樹脂は静電紡糸することができる限り特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレングリコール、部分けん化ポリビニルアルコール、完全けん化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレン、或いはポリプロピレンなどを使用することができる。これら例示以外の樹脂も使用可能であり、例示以外の樹脂も含め、2種以上の樹脂を溶媒に溶解させたポリマー溶液を用いることもできる。なお、極細繊維不織布の取り扱い性を上げるために、これらのポリマー溶液に架橋剤を添加しても良い。特に、水溶性のポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、部分けん化ポリビニルアルコール、完全けん化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなど)の場合は、高湿度下や水中でも利用できるように、架橋剤を添加し、不溶化できるようにするのが好ましい。
この溶媒としては、使用する樹脂によっても変化するため、特に限定するものではないが、例えば、水、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、アセトニトリル、ギ酸、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、四塩化炭素、塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエタン、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートなどを挙げることができる。溶媒は1種類でもよいし、2種類以上の溶剤を混ぜた混合溶媒であってもよい。
本発明で用いるポリマー溶液は、上述のような樹脂を溶媒に溶解させたものであるが、その濃度は、使用する樹脂の組成、樹脂の分子量、溶媒等によって変化するため、特に限定するものではないが、静電紡糸への適用性の点から、粘度が10〜6000mPa・sの範囲となるような濃度であるのが好ましく、20〜5000mPa・sの範囲となるような濃度であるのがより好ましい。粘度が10mPa・s未満であると、粘度が低すぎて曳糸性が悪く、繊維になりにくい傾向があり、粘度が6000mPa・sを超えると、ポリマー溶液が延伸されにくくなり、繊維となりにくい傾向があるためである。なお、この「粘度」は、粘度測定装置を用い、温度25℃で測定した、シェアレート100s−1の時の値をいう。
このようなポリマー溶液はポリマー溶液貯留部1に蓄えられており、このポリマー溶液はポリマー溶液貯留部1に接続して設けられた供給吐出手段3により、供給管1aを通じて最初のノズル21へ供給され、その最初のノズル21を介してそれ以後のノズル22〜2nへ供給されて、ノズル群21〜2nからポリマー溶液が吐出される(供給吐出工程)。図1の製造装置においては、供給管1a内のポリマー溶液に対して電圧を印加することができるように、供給管1aを電源(印加手段4)と接続している。なお、前記最初のノズル21は支持体6cに担持された状態で移動するため、供給管1aとノズル21とは、例えば、ロータリージョイントによって接続されている。また、図1とは異なり、供給管1aはノズル21とノズル2nの2方向以上に分岐していても良い。
また、図1に示す態様とは異なり、ノズル群21〜2nを2系統に分割して、2種類のポリマー溶液をそれぞれの系統に供給することもできる。例えば、第1のポリマー溶液を最初のノズル21へ供給し、その最初のノズル21を介して、隣接する第2ノズル22を飛び越して第3ノズル23へ供給し、更に同様に、隣接する第4ノズル24を飛び越して第5ノズル25へと供給する態様で、第1系統のノズル群21〜2n−1へ次々に供給するとともに、第2のポリマー溶液を第2ノズル22へ供給し、その第2ノズル22を介して、隣接する第3ノズル23を飛び越して第4ノズル24へ供給し、更に同様に、隣接する第5ノズル25を飛び越して第6ノズル26へと供給する態様で、第2系統のノズル群22〜2nへ供給することができる。こうして、2種類の繊維が均一に分散して混在した極細繊維ウエブを製造することができる。同様に、全ノズル群21〜2nを3系統又はそれ以上の系統に分割して、3種類又はそれ以上のポリマー溶液をそれぞれの系統に供給して3種類以上の繊維が均一に分散して混在した極細繊維ウエブを製造することもできる。
ポリマー溶液貯留部1としては、例えば、シリンジ、ステンレスタンク、プラスチックタンク、或は塩化ビニル樹脂製、ポリエチレン樹脂製などの樹脂製バッグを挙げることができ、供給吐出手段3としては、例えば、シリンジポンプ、チューブポンプ、マグネット式マイクロギアポンプ、マイクロポンプ、ディスペンサ等を使用することができる。また、供給管1aは、ノズル21の周回循環移動に適応することができるように、例えば、柔軟性のあるプラスチックチューブ(特には、耐薬品性の高いフッ素樹脂、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂)から構成されているのが好ましい。
図1の製造装置を用いる製造方法においては、ポリマー溶液供給部群であるノズル群21〜2nが、捕集体5の幅方向と長径が一致する長円状に循環移動することができ、直線的に移動できる領域があり、しかもノズル群21〜2nの移動速度を一定とすることができるため、幅方向における繊維量が均一な極細繊維ウエブを製造することができる。また、個々のノズルの孔径が揃っていなかったとしても、個々のノズルは一定速度で捕集体5の幅方向に直線的に移動し、各々のノズルから吐出されて形成された極細繊維は極細繊維ウエブ全体に分散するため、幅方向における繊維量のバラツキのない極細繊維ウエブを製造することができる。更に、図1に示すように、支持体6cは、回転軸である第1スプロケット6aと第2スプロケット6bとの間を周回可能なエンドレス軌道を有しており、相互に逆向きの移動方向(m1方向及びm2方向)の2つの直線運動領域を含んでいる。支持体6cに担持されたノズル群21〜2nがm1方向に移動している場合には、ノズルから吐出される繊維が捕集体上で一方向に揃って配向する(図1に示す捕集体5上では、右斜め下方向へ繊維が配向する)。また、支持体6cに担持されたノズル群21〜2nがm2方向に移動している場合には、ノズルから吐出される繊維が捕集体上で別の一方向に揃って配向する(図1に示す捕集体5上では、左斜め下方向へ繊維が配向する)。従って、捕集体上の繊維は相互に交差した状態となり、様々な方向における機械的強度が均一な極細繊維不織布を製造することができるという特徴もある。
具体的には、個々のノズルはチェーン状支持体6cにそれぞれ固定されており、この支持体6cは第1スプロケット6aと第2スプロケット6bとの間に橋渡されており、更に第1スプロケット6aには移動手段6として駆動モーターが取り付けられているため、駆動モーターの作用により、第1スプロケット6aが回転し、支持体6cが第1スプロケット6a及び第2スプロケット6b間を移動することによってノズル群21〜2nが、エンドレス軌道に沿って長円状に周回(循環的に)移動する。また、別の移動手段として、個々のノズルがベルト状の支持体にそれぞれ固定されており、この支持体は第1プーリーと第2プーリーとの間に橋渡されており、更に第1又は第2プーリーに駆動モーター等の移動手段を取り付けたものを使用することもできる。この移動手段の場合も、駆動モーターの作用により、第1及び第2プーリーが回転し、支持体が第1及び第2プーリー間を移動することによってノズル群が長円状に周回(循環的に)移動する。なお、ノズル群21〜2nの移動速度は一定であるのが好ましく、捕集体の移動速度も、一定であることが好ましい。
このようにポリマー溶液供給部群が移動することによって、目付変動の小さい極細繊維不織布を製造することができる。なお、ポリマー溶液供給部群は長円状に周回移動する必要はなく、捕集体の幅方向に往復運動しても良い。
なお、図1の製造装置においては、複数のノズル(ポリマー溶液供給部)が群として存在している、つまりノズル群21〜2nとして存在しているため、ポリマー溶液の吐出量を増やすことができ、生産性良く極細繊維ウエブを製造することができる。なお、ノズル群21〜2nのノズルピッチは隣接するノズルからの電界の影響を同じにすることができるように、同じであるのが好ましく、ノズルのピッチはポリマー溶液を構成する樹脂、溶媒等によって変化するため、適宜実験を繰り返して、均一に吐出することができるとともに総吐出量の多いピッチを決めることができる。
なお、図1に示す態様とは異なり、1本のノズルを使用することができるし、2本以上のノズルを直線状に、又はランダムに配置したノズル群を使用することもできる。このようなノズル又はノズル群を使用した場合も、極細繊維ウエブの目付バラツキが小さくなるように、捕集体の幅方向に往復移動させるのが好ましい。また、図1に示す態様とは異なり、ノズル群21〜2nを円状に周回(循環的に)移動させても良い。
本発明におけるポリマー溶液のノズル群21〜2nからの吐出方向(開放空間への供給方向)は、特に限定するものではないが、図2にも示すように、重力の作用方向と同じ方向であるのが好ましい。この場合は、重力の作用方向に形成される極細繊維を受容する位置に捕集体を配置する。
ノズルの直径は得ようとする極細繊維の繊維径によって変化するため、特に限定するものではないが、例えば、繊維径を0.7μm以下とする場合には、各ノズル21〜2nの直径(内径)を0.1〜2.0mmとするのが好ましい。なお、各ノズル21〜2nの直径(内径)は全部同じであってもよいし、一部が同じであってもよいし、全部違っていてもよい。更に、各ノズル21〜2nの材質は金属であっても非金属であってもよいし、各ノズル21〜2nの材質は全部同じであってもよいし、一部が同じであってもよいし、全部違っていてもよいが、ポリマー溶液に対して同じ電界を作用させやすいように、全部同じであるのが好ましい。
なお、図1の製造装置においては、ポリマー溶液供給部としてノズルを使用しているが、ノズル以外のポリマー溶液供給部を使用することができる。
図1及び図2の極細繊維不織布製造装置においては、ノズル群21〜2nを長円状のエンドレス軌道に配置したポリマー溶液供給部群を1組のみ備えている態様を示したが、ポリマー溶液供給部群を2組以上備えていると、極細繊維ウエブの生産性が向上するため好ましい実施態様である。ポリマー溶液供給部群を2組以上備えている場合には、図1及び図2の極細繊維不織布製造装置のポリマー溶液供給部群と同様のものを使用することができ、それぞれのポリマー溶液供給部群を、相互に同一又は異なる移動速度で、捕集体の移動方向と直交する方向に移動させるのが好ましい。なお、ポリマー溶液供給部群を2組以上備えている場合、ポリマー溶液供給部群毎にノズル径及び/又はポリマー溶液の濃度を変えることによって、繊維径の異なる層を有する極細繊維ウエブを製造することができ、ポリマー溶液供給部群毎にポリマー溶液の種類(樹脂の種類)を変えることによって、樹脂組成の異なる層を有する極細繊維ウエブを製造することができる。更に、ポリマー溶液供給部群を2組以上備えている場合、隣接するポリマー溶液供給部群が互いに同じ方向となるように移動させてもよいし、互いに逆方向となるように移動させてもよい。
また、図1の製造装置においては図示しないが、供給管1a内の一部又は全部に導電性材料を配置した状態でポリマー溶液を開放空間へ供給するのが好ましい。このようにすることによって、吐出したポリマー溶液に安定して電界を作用させることができるため、幅方向における繊維量が均一な極細繊維ウエブを安定して製造することができる。つまり、供給管1a内に空気が混在してしまった場合には、ポリマー溶液を通じた印加が不安定となり、紡糸自体が不安定になる場合があるが、前記のように供給管1a内に導電性材料を配置していることによって、このような問題を回避することができる。なお、「導電性材料」とは体積抵抗率が109Ω・m以下の材料をいう。また、導電性材料は供給管1a内に配置されるため、ポリマー溶液によって侵されない耐薬品性も必要である。そのため、導電性材料として、ステンレスワイヤーを好適に使用することができる。なお、ポリマー溶液が付着しないように、導電性材料がポリマー溶液によって侵されない材料(例えば、ポリエチレン又はフッ素系樹脂等)で被覆されているのが好ましい。この場合には、導電性材料を部分的に露出させ、電圧を印加可能にする必要がある。
前記のようなノズル群21〜2nから吐出され、開放空間へ供給されたポリマー溶液は、電源(印加手段4)からの電圧印加とアースされた捕集体5とによる電界の作用を受け、延伸されて極細繊維化し、捕集体5の方向へ向かって飛翔し、この飛翔した極細繊維は直接、捕集体5上に集積し、極細繊維ウエブを形成する(繊維集積工程)。
図1及び図2においては、印加手段4により供給管内のポリマー溶液に電圧を印加するとともに、捕集体5をアースすることにより電界を形成しているが、これらの図示の態様とは逆に、ポリマー溶液をアースするとともに、捕集体5に電圧を印加して電界を形成してもよいし、ポリマー溶液と捕集体5の両方に電位差を設けるように電圧を印加してもよい。なお、この電界は、繊維径、ノズル群21〜2nと捕集体5との距離、ポリマー溶液の溶媒、ポリマー溶液の粘度などによって変化するため、特に限定するものではないが、0.2〜5kV/cmであるのが好ましい。電界強度が5kV/cmを超えると、空気の絶縁破壊が生じやすい傾向があり、0.2kV/cm未満であると、ポリマー溶液の延伸が不十分で繊維形状となりにくい傾向があるためである。
なお、電圧印加手段4である電源は特に限定されるものではないが、例えば、直流高電圧発生装置やヴァン・デ・グラフ起電機を用いることができる。また、印加電圧は前述のような電界強度とすることができれば良く、特に限定するものではないが、5〜50KV程度であるのが好ましい。
また、印加する電圧の極性はプラスとマイナスのいずれであってもよい。極細繊維の拡がりを抑制し、極細繊維が均一に分散した極細繊維ウエブを製造しやすいように、適宜、極性を確認するのが好ましい。
なお、図1及び図2に示す態様においては、電圧印加手段4により供給管1a内のポリマー溶液に対して印加しているが、ノズル群21〜2nに印加してもよい。この場合には、2つ以上の印加手段を用いることもできる。例えば、ノズル数に対応する数の印加手段を使用することができる。
捕集体5は、ポリマー溶液供給部群としてのノズル群から吐出された後に繊維化した極細繊維(一般に連続繊維)を直接集積させて極細繊維ウエブを形成することができるものであればよく、特に限定されるものではない。例えば、金属製や炭素などの導電性材料又は有機高分子などの非導電性材料からなる、不織布、織物、編物、ネット、ドラム、或いはベルトを、捕集体5として使用することができる。
捕集体5を他方の電極として使用する場合には、捕集体5は体積固有抵抗値が109Ω・cm以下の導電性材料(例えば、金属製)からなるのが好ましい。一方、ノズル群21〜2n側から見て、捕集体5よりも後方に対向電極として導電性材料を配置する場合には、捕集体5は必ずしも導電性材料からなる必要はない。後者のように、捕集体5よりも後方に対向電極を配置する場合、捕集体5と対向電極とは接触していてもよいし、離間していてもよい。
図1及び図2の製造装置においては、ノズル群21〜2nの長円状のエンドレス軌道(循環移動軌跡)よりも外側の部位に、そのエンドレス軌道を取り囲むように、電界発生手段7である長方形状(図1参照)のワイヤーを備えていることができ、このワイヤーは電圧印加手段4である電源に接続されている。そのため、ワイヤーによって、ノズル群21〜2nから吐出され、繊維化した極細繊維に対して電界を作用させることにより、ノズル群21〜2nから吐出され、形成した極細繊維の捕集体への集積位置を制御することができるため、幅方向における繊維量が均一な極細繊維ウエブを安定して製造することができる。なお、図1においては、ワイヤーはポリマー溶液に対して印加する電源と同じ電源に接続されているが、別の電源に接続されていてもよい。また、図1に示すように、本発明の製造装置を上方から見た場合には、ノズル群21〜2nの周囲を取り囲むようにワイヤーを設ける。また、図2に示すように、本発明の製造装置を横から見た場合には、ノズル群21〜2nの供給部の直下に電界を発生させることのできる位置にワイヤーを設ける。図1及び図2に示す本発明製造装置におけるワイヤーとノズル群21〜2nとの水平方向配置や高さ方向における距離は、ノズル群21〜2nと捕集体5との間の電界強度、ワイヤーの形、紡糸条件(例えば、ポリマー溶液の種類、吐出量、印加電圧など)等によって変化するため、実験によって適宜設定することができる。
図1、図2に示す製造装置を用いて極細繊維不織布を製造する場合、次に前述のようにして形成された極細繊維ウエブを接着する工程を実施する。そのためのバインダ溶液を用意する。このバインダ溶液は電界の作用により粒子状となり、極細繊維と接触した際に接着作用を奏するものであれば良く、特に限定するものではないが、例えば、前述のポリマー溶液を構成するポリマーと同様のポリマーを溶媒に溶解させた溶液である。なお、溶媒は使用する樹脂によって変化し、前述のポリマー溶液を構成する溶媒と同様の溶媒を使用することができる。また、バインダ溶液は前述のポリマー溶液を構成するポリマーと同じポリマーを溶解させたものであっても良いし、異なるポリマーを溶解させたものであっても良い。
本発明で用いるバインダ溶液は、ポリマー溶液と同様の樹脂を同様の溶媒に溶解させたものであるが、ポリマー溶液は電界の作用により繊維化し、バインダ溶液は電界の作用により粒子化する。その違いは、例えば、乾燥時に固体であるオリゴマーのような低分子量物質を使用したり、低分子量のポリマーを使用したり、高分子量のポリマーであっても濃度を低くしたり、ポリマーとして分岐の多い曳糸性の悪いものを使用したり、エマルジョン状のものをバインダ溶液として使用したり、或いはこれらを併用することによって、電界の作用によって粒子化できるバインダ溶液とすることができる。
このようなバインダ溶液はバインダ溶液貯留部21に蓄えられており、このバインダ溶液はバインダ溶液貯留部21に接続して設けられた供給吐出手段23により、供給管21aを通じて最初のノズル221へ供給され、その最初のノズル221を介してそれ以後のノズル222〜22nへ供給されて、ノズル群221〜22n(バインダ溶液供給部群)からバインダ溶液が吐出される。図1の製造装置においては、供給管21a内のバインダ溶液に対して電圧を印加することができるように、供給管21aを電源(印加手段24)と接続している。なお、前記の最初のノズル221は支持体26cに担持された状態で移動するため、供給管21aとノズル221とは、例えば、ロータリージョイントによって接続されている。また、図1とは異なり、供給管21aはノズル221とノズル22nの2方向以上に分岐していても良い。
また、図1に示す態様とは異なり、ノズル群221〜22nを2系統に分割して、2種類のバインダ溶液をそれぞれの系統に供給することもできる。具体的には、例えば、第1のバインダ溶液を最初のノズル221へ供給し、その最初のノズル221を介して、隣接する第2ノズル222を飛び越して第3ノズル223へ供給し、更に同様に、隣接する第4ノズル224を飛び越して第5ノズル225へと供給する態様で、第1系統のノズル群221〜22n−1へ次々に供給するとともに、第2のバインダ溶液を第2ノズル222へ供給し、その第2ノズル222を介して、隣接する第3ノズル223を飛び越して第4ノズル224へ供給し、更に同様に、隣接する第5ノズル225を飛び越して第6ノズル226へと供給する態様で、第2系統のノズル群222〜22nへ供給することができる。こうして、2種類のバインダ粒子を前述の極細繊維ウエブに付与することができる。同様に、全ノズル群221〜22nを3系統又はそれ以上の系統に分割して、3種類又はそれ以上のバインダ溶液をそれぞれの系統に供給して3種類以上のバインダ粒子を前述の極細繊維ウエブに付与することができる。
このように、図1の製造装置においては、バインダ溶液供給部群は前記ポリマー溶液供給部群と同じではなく、異なっているため、ポリマー溶液供給部群と独立して電位を制御することが可能であるため、バインダ粒子を安定して均一に極細繊維ウエブに付与し、極細繊維同士を接着することができる。また、バインダ粒子の粒径を小さくすることができるため、極細繊維ウエブの嵩高で均一な構造を保つことができ、また、極細繊維ウエブの通気性を損なわず、更には、バインダ粒子量が同じであれば接着個所を増やすことができるため機械的強度を高めることができる。例えば、ポリマー溶液供給部群とバインダ溶液供給部群が同じ、つまり、ポリマー溶液供給部群から繊維化しないポリマー溶液が滴下し、この滴下したポリマー溶液がバインダ粒子として作用する場合、滴下するポリマー溶液の制御が難しく、また、繊維化しないポリマー溶液は粒子径が大きくなるため、本願発明の製造方法によって得られるような極細繊維不織布を製造することが困難である。
なお、バインダ溶液貯留部21、供給吐出手段23、及び供給管21aは、それぞれ前述のポリマー溶液貯留部1、供給吐出手段3、供給管1aと同様のものから構成することができる。
図1の製造装置を用いる製造方法においては、バインダ溶液供給部群であるノズル群221〜22nが、捕集体5の幅方向と長径が一致する長円状に循環移動することができ、直線的に移動することができる領域があり、しかもそれらノズル群221〜22nの移動速度を一定とすることができるため、幅方向におけるバインダ量が均一で、幅方向における目付変動の小さい極細繊維不織布を製造することができる。また、個々のノズルの孔径が揃っていなかったとしても、個々のノズルは一定速度で捕集体5の幅方向に直線的に移動し、各々のノズルから吐出されて形成したバインダ粒子は極細繊維不織布全体に分散するため、幅方向におけるバインダ量のバラツキのない極細繊維不織布を製造することができる。なお、図1においては、バインダ溶液供給部群であるノズル群221〜22nがポリマー溶液供給部群であるノズル群21〜2nと同様に、長円状にエンドレス軌道を描いて同じ方向に移動しているが、図1とは異なり、ポリマー溶液供給部群とは反対方向に、長円状にエンドレス軌道を描いて移動しても良い。
このバインダ溶液供給部群であるノズル群221〜22nは、ポリマー溶液供給部群であるノズル群21〜2nと同様に長円状にエンドレス軌道を描いて移動する。つまり、個々のノズルはチェーン状支持体26cにそれぞれ固定されており、この支持体26cは第1スプロケット26aと第2スプロケット26bとの間に橋渡されており、更に第1スプロケット26aには移動手段26として駆動モーターが取り付けられているため、駆動モーターの作用により、第1スプロケット26aが回転し、支持体26cが第1スプロケット26a及び第2スプロケット26b間を移動することによってノズル群221〜22nが、エンドレス軌道に沿って長円状に周回(循環的に)移動する。また、別の移動手段として、個々のノズルがベルト状の支持体にそれぞれ固定されており、この支持体は第1プーリーと第2プーリーとの間に橋渡されており、更に第1又は第2プーリーに駆動モーター等の移動手段を取り付けたものを使用することもできる。この移動手段の場合も、駆動モーターの作用により、第1及び第2プーリーが回転し、支持体が第1及び第2プーリー間を移動することによってノズル群が長円状に周回(循環的に)移動する。
このようにバインダ溶液供給部群が移動することによって、バインダ粒子が均一に分散し、形態保持性に優れる極細繊維不織布を製造することができる。なお、バインダ溶液供給部群は長円状に周回移動する必要はなく、捕集体の幅方向に往復運動しても良い。
なお、図1の製造装置においては、複数のノズル(バインダ溶液供給部)が群221〜22nとして存在しているため、バインダ溶液の吐出量を増やすことができ、生産性良く極細繊維不織布を製造することができる。なお、ノズル群221〜22nのノズルピッチは隣接するノズルからの電界の影響を同じにすることができるように、同じであるのが好ましく、ノズルのピッチはバインダ溶液を構成する樹脂、溶媒等によって変化するため、適宜実験を繰り返して、均一に吐出することができるとともに総吐出量の多いピッチを決めることができる。
なお、図1に示す態様とは異なり、1本のノズルを使用することができるし、2本以上のノズルを直線状に、又はランダムに配置したノズル群を使用することもできる。このようなノズル又はノズル群を使用した場合も、極細繊維不織布の目付バラツキが小さくなるように、捕集体の幅方向に往復移動させるのが好ましい。また、図1に示す態様とは異なり、ノズル群221〜22nを円状に周回(循環的に)移動させても良い。
本発明におけるバインダ溶液のノズル群221〜22nからの吐出方向(開放空間への供給方向)は、特に限定するものではないが、図3にも示すように、重力の作用方向と同じ方向であるのが好ましい。
ノズル群221〜22nの直径は得ようとするバインダ粒子の粒子径によって変化するため、特に限定するものではないが、例えば、粒子径を5μm未満にする場合には、各ノズル221〜22nの直径(内径)を0.05〜1mmとするのが好ましい。なお、各ノズル221〜22nの直径(内径)は全部同じであってもよいし、一部が同じであってもよいし、全部違っていてもよい。更に、各ノズル221〜22nの材質は金属であっても非金属であってもよいし、各ノズル221〜22nの材質は全部同じであってもよいし、一部が同じであってもよいし、全部違っていてもよいが、バインダ溶液に対して同じ電界を作用させやすいように、全部同じであるのが好ましい。
なお、図1の製造装置においては、バインダ溶液供給部としてノズルを使用しているが、ノズル以外のバインダ溶液供給部を使用することができる。
図1及び図3の極細繊維不織布製造装置においては、ノズル群221〜22nを長円状のエンドレス軌道に配置したバインダ溶液供給部群を1組のみ備えている態様を示したが、バインダ溶液供給部群を2組以上備えていると、極細繊維不織布の生産性が向上するため好ましい実施態様である。バインダ溶液供給部群を2組以上備えている場合には、図1及び図3の極細繊維不織布製造装置のバインダ溶液供給部群と同様のものを使用することができ、それぞれのバインダ溶液供給部群を、相互に同一又は異なる移動速度で、捕集体の移動方向と直交する方向に移動させるのが好ましい。なお、バインダ溶液供給部群を2組以上備えている場合、バインダ溶液供給部群毎にノズル径及び/又はバインダ溶液を変えることによって、バインダの粒子径とバインダの種類を変えることができる。また、バインダ溶液供給部群を2組以上備えている場合、バインダ溶液供給部群が互いに同じ方向となるように移動させてもよいし、互いに逆方向となるように移動させてもよい。更に、バインダ溶液供給部群を2組以上備えている場合、バインダ溶液供給部群間にポリマー溶液供給部群が存在するように配置しても良いし、バインダ溶液供給部群が隣接するように配置しても良い。
また、図1の製造装置においては図示しないが、供給管21a内の一部又は全部に導電性材料を配置した状態でバインダ溶液を開放空間へ供給するのが好ましい。このようにすることによって、吐出したバインダ溶液に安定して電界を作用させることができる。つまり、供給管21a内に空気が混在してしまった場合には、バインダ溶液を通じた印加が不安定となり、バインダ粒子の形成が不安定になる場合があるが、前記のように供給管21a内に導電性材料を配置していることによって、このような問題を回避することができる。この導電性材料は前述のものと同様のものから構成することができる。
前記のようなノズル群221〜22nから吐出され、開放空間へ供給されたバインダ溶液は、電源(印加手段24)からの電圧印加とアースされた捕集体5とによる電界の作用を受け、バインダ粒子化し、捕集体5の方向へ向かって飛翔し、この飛翔したバインダ粒子は捕集体5上に集積した極細繊維ウエブを構成する極細繊維と接触する。このバインダ粒子が極細繊維と接触する段階では、未だバインダ粒子は完全に固化しておらず、形状が安定していないため、バインダ粒子が極細繊維と接触することによって、バインダ粒子は変形し、極細繊維と密着する。そのため、バインダ粒子が2ヶ所以上で極細繊維と接触すれば、その極細繊維間をバインダ粒子が接着することになる。
図1及び図3においては、印加手段24により供給管内のバインダ溶液に電圧を印加するとともに、捕集体5をアースすることにより電界を形成しているが、これらの図示の態様とは逆に、バインダ溶液をアースするとともに、捕集体5に電圧を印加して電界を形成してもよいし、バインダ溶液と捕集体5の両方に電位差を設けるように電圧を印加してもよい。なお、この電界は、粒子径、ノズル群221〜22nと捕集体5との距離、バインダ溶液の溶媒、バインダ溶液の粘度などによって変化するため、特に限定するものではないが、0.2〜5kV/cmであるのが好ましい。電界強度が5kV/cmを超えると、空気の絶縁破壊が生じやすい傾向があり、0.2kV/cm未満であると、バインダ粒子を十分に小さくすることが困難になる傾向があるためである。
なお、電圧印加手段24である電源は前述の電圧印加手段4と同様のものを使用することができ、印加電圧は前述のような電界強度とすることができれば良く、特に限定するものではない。また、印加する電圧の極性はプラスとマイナスのいずれであってもよい。
なお、図1及び図3に示す態様においては、電圧印加手段24により供給管21a内のバインダ溶液に対して印加しているが、ノズル群221〜22nに印加してもよい。この場合には、2つ以上の印加手段を用いることもできる。例えば、ノズル数に対応する数の印加手段を使用することができる。
図1に示す製造装置においては、捕集体5の端部に巻取り装置8を備えているため、極細繊維不織布を巻き取ることができる。そのため、連続して極細繊維不織布を製造することができる。
なお、図1に示す製造装置においては、バインダ粒子を極細繊維ウエブ上に散布し、極細繊維と接触させた後に巻き取っているが、バインダ粒子による極細繊維間の接着を確実にするために、巻き取り装置8の前に、乾燥手段を設置することができる。この乾燥手段としては、例えば、赤外線を照射する方法、熱風を吹き付ける方法、サクションドラム式乾燥機に接触させる方法、加熱ロールに接触させる方法、或いはこれらを併用することによって実施することができる。
図1〜図3に示す本発明の製造装置においては、上述のようなノズル群21〜2n、221〜22n、捕集体5、電界発生手段7、及び巻取り装置8は紡糸容器9に収容されており、この紡糸容器9には気体供給装置10及び排気装置11が接続されている。そのため、紡糸容器内の紡糸環境及び粒子化環境を維持することが容易である。例えば、気体供給装置10から所定の相対湿度の気体を供給することによって、紡糸容器9内の環境を所定の相対湿度とし、維持することができる。このように所定の相対湿度とし、その相対湿度を維持することによって、ポリマー溶液及びバインダ溶液に与える相対湿度の影響を一定とすることができるため、繊維径及び粒子径の揃った極細繊維不織布を製造することができる。なお、気体供給装置10としては、例えば、プロペラファン、シロッコファン、エアコンプレッサー、或いは送風機などを挙げることができる。なお、図1及び図2に示す態様とは異なり、気体供給装置10からの気体供給口を紡糸容器9の側壁面ではなく、上壁面に設けることもできる。また、図2に示すように、気体供給口よりも下流側に多孔性材料10a(例えば、金属又は樹脂製のパンチングプレート、織物、不織布など)を設置し、気体供給装置10から紡糸容器9への気体供給量を一定とするのが好ましい。
図1の製造装置においては、紡糸容器9内の気体を、排気装置11を用いて排出することができる。ポリマー溶液から極細繊維を形成、及びバインダ溶液からバインダ粒子の形成を行っていると、紡糸容器9内における溶媒の蒸気濃度が次第に高くなり、溶媒の蒸発が抑制され、繊維径やバインダ粒子径が小さくなり、繊維径や粒子径のバラツキが発生しやすい傾向があり、最悪の場合には、溶媒の蒸気濃度が飽和に達してしまい、極細繊維及びバインダ粒子の形成が困難になるが、気体を排出することによって紡糸容器9内における溶媒の蒸気濃度を一定として、繊維径及び粒子径の揃った極細繊維不織布を製造することができる。なお、排気装置11は特に限定するものではないが、例えば、排気口に設置されたファンであることができる。図1に示すように、気体供給装置10によって紡糸容器9へ気体を供給する場合には、単に排気口を設けるだけで供給量と同量の気体を排出することができるため、排気装置11は必ずしも必要はない。なお、図1のように排気装置11によって排気する場合、排気量は供給量と同じであるのが好ましい。供給量と排気量とが異なると、紡糸容器9内における圧力が変わることによって、溶媒の蒸発速度が変わり、繊維径や粒子径のバラツキが生じやすいためである。また、図1に示す態様とは異なり、排気装置11への排気口は紡糸容器9の側壁面ではなく、下壁面に設けることもできる。更に、排気口よりも上流側に多孔性材料11a(例えば、金属又は樹脂製のパンチングプレート、織物、不織布など)を設置し、紡糸容器9の上方から下方への均一な気体の流れを形成して、紡糸容器9内の環境を一定とするのが好ましい。
なお、図1の製造装置においては、ポリマー溶液を開放空間へ供給できるノズル群21〜2nと、バインダ溶液を開放空間へ供給できるノズル群221〜22nの両方が紡糸容器9に収納されているが、どちらか一方のみが紡糸容器に収納されていても良いし、別々に紡糸容器に収納されていても良い。
また、図1の製造装置においては、気体供給装置10から気体を供給して紡糸容器全体を同じ環境としているが、ポリマー溶液供給部群周辺及び/又はバインダ溶液供給部群周辺のみに、所望気体を供給し、ポリマー溶液供給部群周辺及び/又はバインダ溶液供給部群周辺のみを所望環境とすることができるように、ポリマー溶液供給部群周辺及び/又はバインダ溶液供給部群周辺のみを囲む仕切り板を設置し、その仕切り板によって囲まれた領域に所望気体を供給しても良い。この場合であっても、図1の製造装置と同様に、繊維径及びバインダ粒子径の揃った極細繊維不織布を製造することができる。また、局所的に所望気体を供給していることによって、ポリマー溶液又はバインダ溶液から揮発した溶媒を速やかに除去し、ポリマー溶液供給部群周辺及び/又はバインダ溶液供給部群周辺が飽和蒸気圧に達することを防ぐことができるため、連続して極細繊維不織布を製造することができる。
なお、図1〜図3に示す製造装置によって製造した極細繊維不織布においては、ポリマー溶液供給部群及びバインダ溶液供給部群が直線的に移動できる領域において、極細繊維量及びバインダ粒子量が均一になるため、第1スプロケット6aの中心から外側の領域及び第2スプロケット6bの中心から外側の領域は耳部として除去し、第1スプロケット6aの中心と第2スプロケット6bの中心との間の領域を極細繊維不織布として使用するのが好ましい。
また、ポリマー溶液及び/又はバインダ溶液を構成するポリマーが架橋剤を含んでいる場合には、極細繊維ウエブを形成した後、又は極細繊維ウエブにバインダ粒子を付与した後に、架橋処理を実施する。この架橋処理は架橋剤の種類によって異なり、例えば、加熱処理、光照射処理を実施する。
以上のように、図1〜図3の製造装置によれば、捕集体の移動速度が遅い場合には、複数のポリマー溶液供給部が群として存在していることによって、極細繊維の層が形成され、しかも複数のバインダ溶液供給部が群として存在していることによって、前記極細繊維の層を接着することができる。この態様によると、バインダ粒子は極細繊維ウエブが形成された後に極細繊維と接触するため、片面により多くのバインダ粒子が存在する極細繊維不織布となる。なお、ポリマー溶液供給部群を2組以上と、バインダ溶液供給部群を2組以上備えている場合には、極細繊維層間をバインダ粒子が接着した積層構造となる。他方、捕集体の移動速度が速い場合には、複数のポリマー溶液供給部及び複数のバインダ溶液供給部が群として存在していたとしても、極細繊維ウエブの形成とバインダ粒子との接触との間に時間差が無視できるほどに短いため、極細繊維とバインダ粒子とがほぼ均一に混在した極細繊維不織布となる。
本発明の製造方法によって製造される極細繊維不織布は、極細繊維間がバインダ粒子によって接着され、形態保持性に優れるため、取り扱い性及び所望性能を発揮できる。例えば、この極細繊維不織布を濾過材として使用した場合には、バインダ粒子が接着作用及びスペーサとしての作用を奏することにより、粒子の捕集量が多くなっても、気体や液体の通過抵抗があまり高くならず、極細繊維不織布が押し潰されにくいことによって圧力損失が上昇しにくいため、結果として濾過寿命の長いものであることができる。
本発明の極細繊維不織布の別の製造方法について、図4〜図5に沿って説明する。図4は、製造装置を上方から見た模式的平面図であり、図5は、前記製造装置を図4のAの地点から矢印の方向に見た模式的断面図である。
図4に示す極細繊維不織布製造装置は、ポリマー溶液を蓄えることのできるポリマー溶液貯留部31;ポリマー溶液供給部群としてのノズル群421〜42n−1;ポリマー溶液貯留部31とポリマー溶液供給部群(ノズル群421〜42n−1)とを繋ぎ、ポリマー溶液をポリマー溶液供給部群へ供給することができる供給管31a;ポリマー溶液貯留部31からポリマー溶液供給部群へポリマー溶液を供給し、ポリマー溶液供給部群からポリマー溶液を開放空間へ吐出して供給できる供給吐出手段33;ポリマー溶液に電圧を印加することのできる電圧印加手段34;バインダ溶液を蓄えることのできるバインダ溶液貯留部41;バインダ溶液供給部群としてのノズル群422〜42n;バインダ溶液貯留部41とバインダ溶液供給部群(ノズル群422〜42n)とを繋ぎ、バインダ溶液をバインダ溶液供給部群へ供給することができる供給管41a;バインダ溶液貯留部41からバインダ溶液供給部群へバインダ溶液を供給し、バインダ溶液供給部群からバインダ溶液を開放空間へ吐出して供給できる供給吐出手段43;バインダ溶液に電圧を印加することのできる電圧印加手段44;一定方向Dに移動しながら、ポリマー溶液が繊維化された極細繊維、及びバインダ溶液が粒子化されたバインダ粒子を直接集積して極細繊維不織布を形成する、好ましくはアースされている捕集体5;一対の回転軸(第1スプロケット6aと第2スプロケット6bとの間)間を周回可能な長円状エンドレス軌道に沿って前記ポリマー溶液供給部群(ノズル群421〜42n−1)及び前記バインダ溶液供給部群(ノズル群422〜42n)を担持し、前記長円状エンドレス軌道の長径と捕集体の幅方向(前記捕集体5の移動方向Dと直交する方向)とが一致する支持体6c;支持体6cを一定速度で前記捕集体の幅方向に移動させることにより、前記ポリマー溶液供給部群(ノズル群421〜42n−1)及び前記バインダ溶液供給部群(ノズル群422〜42n)を一定速度で前記捕集体の幅方向に移動させることのできる移動手段6;前記ポリマー溶液供給部群(ノズル群421〜42n−1)及び前記バインダ溶液供給部群(ノズル群422〜42n)の長円状エンドレス軌道(循環移動軌跡)よりも外側に位置し、電界を作用させることのできる電界発生手段7;前記捕集体上に形成された極細繊維不織布を、捕集体5の端部でロール状に巻き取ることのできる巻取り装置8;前記ポリマー溶液供給部群(ノズル群421〜42n−1)、バインダ溶液供給部群(ノズル群422〜42n)、捕集体5等を収納した紡糸容器9;紡糸容器9へ所望気体を供給することができる気体供給装置10;及び紡糸容器9内の気体を排気することができる排気装置11;を備えている。
このような製造装置を用いて極細繊維不織布を製造する場合、前述と同様のポリマー溶液及びバインダ溶液を準備する。
ポリマー溶液はポリマー溶液貯留部31に蓄えられており、このポリマー溶液はポリマー溶液貯留部31に接続して設けられた供給吐出手段33により、供給管31aを通じて最初のノズル421へ供給され、その最初のノズル421を介して隣接するノズル422を飛び越してノズル423へ供給され、同様に隣接するノズル424を飛び越してノズル425へ供給され、最終的にノズル42n−1へ供給され、ポリマー溶液が吐出される。他方、バインダ溶液はバインダ溶液貯留部41に蓄えられており、このバインダ溶液はバインダ溶液貯留部41に接続して設けられた供給吐出手段43により、供給管41aを通じて最初のノズル422へ供給され、その最初のノズル422を介して隣接するノズル423を飛び越してノズル424へ供給され、同様に隣接するノズル425を飛び越してノズル426へ供給され、最終的にノズル42nへ供給され、バインダ溶液が吐出される。図4の製造装置においては、供給管31a内のポリマー溶液に対して電圧を印加することができるように、供給管31aを電源(印加手段34)と接続するとともに、供給管41a内のバインダ溶液に対して電圧を印加することができるように、供給管41aを電源(印加手段44)と接続している。なお、前記の最初のノズル421及び422は支持体6cに担持された状態で移動するため、供給管31aとノズル21、供給管41aとノズル22とは、例えば、ロータリージョイントによって接続されている。また、図4とは異なり、供給管31a、供給管41aは2方向以上に分岐していても良い。
また、図4に示す態様とは異なり、ポリマー溶液を開放空間へ供給するノズル群421〜42n−1を2系統以上に分割して、2種類以上のポリマー溶液をそれぞれの系統に供給することもできる。同様に、バインダ溶液を開放空間へ供給するノズル群422〜42nを2系統以上に分割して、2種類以上のバインダ溶液をそれぞれの系統に供給することもできる。このようにすることによって、異なる極細繊維及び/又は異なるバインダ粒子が混在した極細繊維不織布を製造することができる。
ポリマー溶液貯留部31、バインダ溶液貯留部41、供給吐出手段33、43、供給管31a、41aは、前述の製造装置と同様のものから構成することができる。
図4の製造装置を用いる製造方法においては、ポリマー溶液供給部群であるノズル群421〜42n−1及びバインダ溶液供給部群であるノズル群422〜42nが、捕集体5の幅方向と長径が一致する長円状に循環移動することができ、直線的に移動できる領域があり、しかもそれらノズル群421〜42nの移動速度を一定とすることができるため、幅方向における繊維量及びバインダ粒子量が均一な極細繊維不織布を製造することができる。また、個々のノズルの孔径が揃っていなかったとしても、個々のノズルは一定速度で捕集体5の幅方向に直線的に移動し、各々のノズルから吐出されて形成された極細繊維及びバインダ粒子は極細繊維不織布全体に分散するため、幅方向における繊維量及びバインダ粒子量のバラツキのない極細繊維不織布を製造することができる。更に、図4に示すように、支持体6cは、回転軸である第1スプロケット6aと第2スプロケット6bとの間を周回可能なエンドレス軌道を有しており、相互に逆向きの移動方向(m1方向及びm2方向)の2つの直線運動領域を含んでいる。支持体6cに担持されたポリマー溶液供給部群であるノズル群421〜42n−1がm1方向に移動している場合には、ノズルから吐出される繊維が捕集体上で一方向に揃って配向する(図4に示す捕集体5上では、右斜め下方向へ繊維が配向する)。また、支持体6cに担持されたポリマー溶液供給部群であるノズル群421〜42n−1がm2方向に移動している場合には、ノズルから吐出される繊維が捕集体上で別の一方向に揃って配向する(図4に示す捕集体5上では、左斜め下方向へ繊維が配向する)。従って、捕集体上の繊維は相互に交差した状態となり、様々な方向における機械的強度が均一な極細繊維不織布を製造することができるという特徴もある。
具体的には、個々のノズルはチェーン状支持体6cにそれぞれ固定されており、この支持体6cは第1スプロケット6aと第2スプロケット6bとの間に橋渡されており、更に第1スプロケット6aには移動手段6として駆動モーターが取り付けられているため、駆動モーターの作用により、第1スプロケット6aが回転し、支持体6cが第1スプロケット6a及び第2スプロケット6b間を移動することによってノズル群421〜42nが、エンドレス軌道に沿って長円状に周回(循環的に)移動する。また、別の移動手段として、個々のノズルがベルト状の支持体にそれぞれ固定されており、この支持体は第1プーリーと第2プーリーとの間に橋渡されており、更に第1又は第2プーリーに駆動モーター等の移動手段を取り付けたものを使用することもできる。この移動手段の場合も、駆動モーターの作用により、第1及び第2プーリーが回転し、支持体が第1及び第2プーリー間を移動することによってノズル群が長円状に周回(循環的に)移動する。
このようにポリマー溶液供給部群及びバインダ溶液供給部群が移動することによって、目付変動の小さい極細繊維不織布を製造することができる。なお、ポリマー溶液供給部群及びバインダ溶液供給部群は長円状に周回移動する必要はなく、捕集体の幅方向に往復運動しても良い。
なお、図4の製造装置においては、ポリマー溶液供給部及びバインダ溶液供給部が混在する群として存在しているため、捕集体の移動速度に関係なく、極細繊維とバインダ粒子が混在する極細繊維不織布を製造することができ、また、ポリマー溶液及びバインダ溶液の吐出量を増やすことができるため、生産性良く極細繊維ウエブを製造することができる。なお、ノズル群421〜42nのノズルピッチは隣接するノズルからの電界の影響を同じにすることができるように、同じであるのが好ましく、ノズルのピッチはポリマー溶液を構成する樹脂、溶媒、バインダ溶液を構成する樹脂、溶媒等によって変化するため、適宜実験を繰り返して、均一に吐出することができるとともに総吐出量の多いピッチを決めることができる。
本発明におけるポリマー溶液及びバインダ溶液のノズル群421〜42nからの吐出方向(開放空間への供給方向)は、特に限定するものではないが、図5にも示すように、重力の作用方向と同じ方向であるのが好ましい。この場合は、重力の作用方向に形成される極細繊維及びバインダ粒子を受容する位置に捕集体を配置する。
ノズル群421〜42nの直径は得ようとする極細繊維の繊維径、バインダ粒子の粒径によって変化するため、特に限定するものではないが、例えば、ポリマー溶液供給部の直径(内径)は、繊維径を0.7μm以下とする場合には、0.1〜2.0mmとするのが好ましく、バインダ溶液供給部の直径(内径)は、バインダの粒径を5μm以下とする場合には、0.05〜1mmとするのが好ましい。なお、各ノズル421〜42nの直径(内径)は全部同じであってもよいし、ポリマー溶液供給部とバインダ溶液供給部ごとに同じであっても良いし、全部違っていてもよい。更に、各ノズル421〜42nの材質は金属であっても非金属であってもよいし、各ノズル421〜42nの材質は全部同じであってもよいし、ポリマー溶液供給部とバインダ溶液供給部ごとに同じであっても良いし、全部違っていてもよいが、同じ電界を作用させやすいように、全部同じであるのが好ましい。
なお、図4の製造装置においては、ポリマー溶液供給部及びバインダ溶液供給部としてノズルを使用しているが、ノズル以外のポリマー溶液供給部を使用することができる。
また、図4に示す態様とは異なり、2本のノズルを使用し、1本のノズルにポリマー溶液を供給し、もう1本のノズルにバインダ溶液を供給することもできる。更に、3本以上のノズルを直線状に、又はランダムに配置したノズル群を使用し、1本以上のノズルにポリマー溶液を供給し、1本以上のノズルにバインダ溶液を供給することもできる。このようなノズル群を使用した場合も、極細繊維不織布の目付バラツキが小さくなるように、捕集体の幅方向に往復移動させるのが好ましい。また、図4に示す態様とは異なり、ノズル群421〜42nを円状に周回(循環的に)移動させても良い。
図4及び図5の極細繊維不織布製造装置においては、ノズル群421〜42nを長円状のエンドレス軌道に配置した、ポリマー溶液供給部とバインダ溶液供給部とが混在する群を1組のみ備えている態様を示したが、このような混在する群を2組以上備えていると、極細繊維ウエブの生産性が向上するため好ましい実施態様である。このような混在する群を2組以上備えている場合には、図4及び図5と同様の混在する群を使用することができる。それぞれの混在する群を、相互に同一又は異なる移動速度で、捕集体の移動方向と直交する方向に移動させるのが好ましい。なお、群ごとにポリマー溶液及び/又はバインダ溶液の種類が異なっていても良い。更に、混在する群を2組以上備えている場合、隣接する群が互いに同じ方向となるように移動させてもよいし、互いに逆方向となるように移動させてもよい。
また、図4の製造装置においては図示しないが、供給管31a、41a内の一部又は全部に導電性材料を配置した状態でポリマー溶液、バインダ溶液を開放空間へ供給するのが好ましい。このようにすることによって、吐出したポリマー溶液及びバインダ溶液に安定して電界を作用させることができるため、幅方向における繊維量及びバインダ量が均一な極細繊維不織布を安定して製造することができる。導電性材料は前述の製造装置と同様の材料から構成することができる。
前記のようなノズル群421〜42n−1から吐出され、開放空間へ供給されたポリマー溶液は、電源(印加手段34)からの電圧印加とアースされた捕集体5とによる電界の作用を受け、延伸されて極細繊維化し、捕集体5の方向へ向かって飛翔し、この飛翔した極細繊維は直接、捕集体5上に集積する。一方、ノズル群422〜42nから吐出され、開放空間へ供給されたバインダ溶液は、電源(印加手段44)からの電圧印加とアースされた捕集体5とによる電界の作用を受け、バインダ粒子化し、捕集体5の方向へ向かって飛翔し、この飛翔したバインダ粒子は直接、捕集体5上に集積する。そのため、捕集体5上には、極細繊維とバインダ粒子とが均一に混在した状態で集積する。なお、極細繊維、バインダ粒子ともに、完全に固化しておらず、形状が安定していないため、極細繊維とバインダ粒子とが接触することによって、極細繊維及び/又はバインダ粒子は変形し、互いに密着する。そのため、バインダ粒子が2ヶ所以上で極細繊維と接触すれば、その極細繊維間をバインダ粒子が接着することになる。
図4及び図5においては、印加手段34、44により供給管内のポリマー溶液及びバインダ溶液に電圧を印加するとともに、捕集体5をアースすることにより電界を形成しているが、これらの図示の態様とは逆に、ポリマー溶液及びバインダ溶液をアースするとともに、捕集体5に電圧を印加して電界を形成してもよいし、ポリマー溶液及びバインダ溶液と捕集体5の両方に電位差を設けるように電圧を印加してもよい。なお、この電界は、繊維径、バインダ粒径、ノズル群421〜42nと捕集体5との距離、ポリマー溶液及びバインダ溶液の溶媒、ポリマー溶液及びバインダ溶液の粘度などによって変化するため、特に限定するものではないが、0.2〜5kV/cmであるのが好ましい。電界強度が5kV/cmを超えると、空気の絶縁破壊が生じやすい傾向があり、0.2kV/cm未満であると、ポリマー溶液が繊維形状となりにくい傾向があり、またバインダ溶液を十分に小さいバインダ粒子とすることが困難になる傾向があるためである。
なお、電圧印加手段34、44である電源は特に限定されるものではないが、例えば、直流高電圧発生装置やヴァン・デ・グラフ起電機を用いることができる。また、印加電圧は前述のような電界強度とすることができれば良く、特に限定するものではないが、5〜50KV程度であるのが好ましい。また、印加する電圧の極性はプラスとマイナスのいずれであってもよい。
なお、図4及び図5に示す態様においては、電圧印加手段34により供給管31a内のポリマー溶液に対して、また電圧印加手段44により供給管41a内のバインダ溶液に対して印加しているが、ノズル群421〜42nに印加してもよい。この場合には、2つ以上の印加手段を用いることもできる。例えば、ノズル数に対応する数の印加手段を使用することができる。
捕集体5は、ポリマー溶液供給部群としてのノズル群から吐出された後に繊維化した極細繊維(一般に連続繊維)と、バインダ溶液供給部群としてのノズル群から吐出されたバインダ粒子を直接集積させて極細繊維不織布を形成することができるものであればよく、前述の製造装置と同様の捕集体を使用することができる。
図4及び図5の製造装置においては、ノズル群421〜42nの長円状のエンドレス軌道(循環移動軌跡)よりも外側の部位に、そのエンドレス軌道を取り囲むように、電界発生手段7である長方形状(図4参照)のワイヤーを備えていることができ、このワイヤーは電圧印加手段34である電源に接続されている。そのため、ワイヤーによって、ノズル群421〜42n−1から吐出され、繊維化した極細繊維、及びノズル群422〜42nから吐出されたバインダ粒子に対して電界を作用させることにより、極細繊維及びバインダ粒子の捕集体への集積位置を制御することができるため、幅方向における繊維量及びバインダ量が均一な極細繊維ウエブを安定して製造することができる。なお、図4においては、ワイヤーはポリマー溶液に対して印加する電源と同じ電源に接続されているが、バインダ溶液に対して印加する電源と同じ電源に接続されていても良いし、全く別の電源に接続されていてもよい。また、図4に示すように、本発明の製造装置を上方から見た場合には、ノズル群421〜42nの周囲を取り囲むようにワイヤーを設ける。また、図5に示すように、本発明の製造装置を横から見た場合には、ノズル群421〜42nの供給部の直下に電界を発生させることのできる位置にワイヤー7を設ける。図4及び図5に示す製造装置におけるワイヤーとノズル群421〜42nとの水平方向配置や高さ方向における距離は、ノズル群421〜42nと捕集体5との間の電界強度、ワイヤーの形、紡糸条件(例えば、ポリマー溶液及びバインダ溶液の種類、吐出量、印加電圧など)等によって変化するため、実験によって適宜設定する。
図4に示す製造装置においては、捕集体5の端部に巻取り装置8を備えているため、極細繊維不織布を巻き取ることができる。そのため、連続して極細繊維不織布を製造することができる。
なお、図4に示す製造装置においては、極細繊維とバインダ粒子を同時に形成し、極細繊維とバインダ粒子とを混在させた後に巻き取っているが、バインダ粒子による極細繊維間の接着を確実にするために、巻き取り装置8の前に、乾燥手段を設置することができる。この乾燥手段としては、例えば、赤外線を照射する方法、熱風を吹き付ける方法、サクションドラム式乾燥機に接触させる方法、加熱ロールに接触させる方法、或いはこれらを併用することによって実施することができる。
また、ポリマー溶液及び/又はバインダ溶液を構成するポリマーが架橋剤を含んでいる場合には、極細繊維不織布を形成した後に架橋処理を実施する。この架橋処理は架橋剤の種類によって異なり、例えば、加熱処理、光照射処理を実施する。
図4〜図5に示す製造装置においては、上述のようなノズル群421〜42n、捕集体5、電界発生手段7、及び巻取り装置8は紡糸容器9に収容されており、この紡糸容器9には気体供給装置10及び排気装置11が接続されている。そのため、紡糸容器内の紡糸環境及び粒子化環境を維持することが容易である。例えば、気体供給装置10から所定の相対湿度の気体を供給することによって、紡糸容器9内の環境を所定の相対湿度とし、維持することができる。このように所定の相対湿度とし、その相対湿度を維持することによって、ポリマー溶液及びバインダー溶液に与える相対湿度の影響を一定とすることができるため、繊維径及び粒子径の揃った極細繊維不織布を製造することができる。なお、気体供給装置10としては、例えば、プロペラファン、シロッコファン、エアコンプレッサー、或いは送風機などを挙げることができる。なお、図4及び図5に示す態様とは異なり、気体供給装置10からの気体供給口を紡糸容器9の側壁面ではなく、上壁面に設けることもできる。また、図5に示すように、気体供給口よりも下流側に多孔性材料10a(例えば、金属又は樹脂製のパンチングプレート、織物、不織布など)を設置し、気体供給装置10から紡糸容器9への気体供給量を一定とするのが好ましい。
図5の製造装置においては、紡糸容器9内の気体を、排気装置11を用いて排出することができる。ポリマー溶液から極細繊維を形成、及びバインダ溶液からバインダ粒子の形成を行っていると、紡糸容器9内における溶媒の蒸気濃度が次第に高くなり、溶媒の蒸発が抑制され、繊維径やバインダ粒子径が小さくなり、繊維径や粒子径のバラツキが発生しやすい傾向があり、最悪の場合には、溶媒の蒸気濃度が飽和に達してしまい、極細繊維及びバインダ粒子の形成が困難になるが、気体を排出することによって紡糸容器9内における溶媒の蒸気濃度を一定として、繊維径及び粒子径の揃った極細繊維不織布を製造することができる。なお、排気装置11は特に限定するものではないが、例えば、排気口に設置されたファンであることができる。図5に示すように、気体供給装置10によって紡糸容器9へ気体を供給する場合には、単に排気口を設けるだけで供給量と同量の気体を排出することができるため、排気装置11は必ずしも必要はない。なお、図5のように排気装置11によって排気する場合、排気量は供給量と同じであるのが好ましい。供給量と排気量とが異なると、紡糸容器9内における圧力が変わることによって、溶媒の蒸発速度が変わり、繊維径や粒子径のバラツキが生じやすいためである。また、図5に示す態様とは異なり、排気装置11への排気口は紡糸容器9の側壁面ではなく、下壁面に設けることもできる。更に、排気口よりも上流側に多孔性材料11a(例えば、金属又は樹脂製のパンチングプレート、織物、不織布など)を設置し、紡糸容器9の上方から下方への均一な気体の流れを形成して、紡糸容器9内の環境を一定とするのが好ましい。
また、図4の製造装置においては、気体供給装置10から気体を供給して紡糸容器全体を同じ環境としているが、ポリマー溶液供給部とバインダ溶液供給部が混在する群(つまりノズル群421〜42n)の周辺のみに、所望気体を供給し、ポリマー溶液供給部とバインダ溶液供給部の群の周辺のみを所望環境とすることができるように、ポリマー溶液供給部とバインダ溶液供給部が混在する群の周辺のみを囲む仕切り板を設置し、その仕切り板によって囲まれた領域に所望気体を供給しても良い。この場合であっても、図4の製造装置と同様に、繊維径及びバインダ粒子径の揃った極細繊維不織布を製造することができる。また、局所的に所望気体を供給していることによって、ポリマー溶液又はバインダ溶液から揮発した溶媒を速やかに除去し、ポリマー溶液供給部とバインダ溶液供給部の群の周辺が飽和蒸気圧に達することを防ぐことができるため、連続して極細繊維不織布を製造することができる。
なお、図4〜図5に示す製造装置によって製造した極細繊維不織布においては、ポリマー溶液供給部群及びバインダ溶液供給部群が直線的に移動できる領域において、極細繊維量及びバインダ粒子量が均一になるため、第1スプロケット6aの中心から外側の領域及び第2スプロケット6bの中心から外側の領域は耳部として除去し、第1スプロケット6aの中心と第2スプロケット6bの中心との間の領域を極細繊維不織布として使用するのが好ましい。
以上のように、図4〜図5の製造装置によれば、ポリマー溶液供給部とバインダ溶液供給部とが混在し、群として存在していることによって、極細繊維とバインダ粒子が均一に混在し、バインダ粒子によって極細繊維を接着することができる。この態様によると、極細繊維の形成とバインダ粒子の形成が同時に起こるため、極細繊維の層を形成することなく、極細繊維とバインダ粒子が均一に分散した極細繊維不織布を製造できる。
この製造方法によれば、極細繊維間がバインダ粒子によって接着され、形態保持性に優れるため、取り扱い性及び所望性能を発揮できる極細繊維不織布を製造することができる。例えば、この極細繊維不織布を濾過材として使用した場合には、バインダ粒子が接着作用及びスペーサとしての作用を奏することにより、粒子の捕集量が多くなっても、気体や液体の通過抵抗があまり高くならず、極細繊維不織布が押し潰されにくいことによって圧力損失が上昇しにくいため、結果として濾過寿命の長いものであることができる。
図1〜図3に示す製造装置又は図4〜図5に示す製造装置により製造した極細繊維不織布は、引張り強度の向上した、各種形状への加工性や作業時の取り扱い性に優れるものである。一般的に繊維形成過程で粒子状物を極細繊維不織布に内在させると、引張り強度を向上させることはおろか、繊維間接着の減少により引張り強度の低下をきたす。ところが本発明方法によれば、バインダ粒子が完全に固化しない状態で極細繊維と接触するため、バインダ粒子による極細繊維間の接着が促進され、嵩高であるにもかかわらず引張り強度に優れていることを見出した。具体的には、バインダ粒子を繊維に対して50体積%以上含んでいることによって、バインダ粒子を含まない、静電紡糸法により製造した繊維量の同じ極細繊維不織布よりも20%以上、場合によっては50%以上も引張り強度を高めることができる。なお、「引張り強度」はインストロン型引っ張り試験機を用い、幅50mmに切断した極細繊維不織布をチャック間距離50mm、引張り速度50mm/minの条件下で測定した値である。
また、バインダ粒子による極細繊維間の接着が促進されることによって、モジュラス強度も向上する。なお、「モジュラス強度」は前述の「引張り強度」と同様の条件下で測定し、極細繊維不織布が一定量伸長した時の強度をいうが、特に2%から10%伸長時の強度が向上する。例えば、極細繊維不織布が2%、5%、又は10%伸長時の強度をそれぞれ2%モジュラス強度、5%モジュラス強度、10%モジュラス強度といい、これらモジュラス強度が向上する。より具体的には、バインダ粒子を繊維に対して50体積%以上含んでいることによって、バインダ粒子を含まない、静電紡糸法により製造した繊維量の同じ極細繊維不織布よりも200%以上も2%モジュラス強度が向上する。
更に、図1〜図3に示す製造装置又は図4〜図5に示す製造装置により製造した極細繊維不織布は、微細なバインダ粒子が極細繊維と均一に接触し、接着するためか、孔径の揃ったものである。例えば、平均流量孔径(Pave)の最大孔径(Pmax)に対する比が3以下、より好ましくは2以下の孔径の揃ったものである。この「平均流量孔径」はポロメータ(Polometer、コールター(Coulter)社製)を用いて、ミーンフローポイント法により測定される値をいい、「最大孔径」はポロメータ(Polometer、コールター(Coulter)社製)を用いてバブルポイント法により測定される値をいう。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
(実施例1)
(1)ポリマー溶液の調製
重量平均分子量40万のポリアクリロニトリルを、N,N−ジメチルホルムアミドに濃度12mass%となるように溶解させたポリマー溶液(粘度:2600mP・s)を用意した。
(2)バインダ溶液の調製
重量平均分子量4000のポリエチレングリコールを、水に濃度50mass%となるように溶解させたバインダ溶液(粘度:60mP・s)を用意した。
(3)製造装置の準備
図1〜図3に類似する製造装置を用意した。つまり、14本のノズル群21〜214(それぞれ内径が0.4mmのステンレススチール製針状ノズル)をピッチ60mmで、チェーン状支持体6cにそれぞれ固定し、この支持体6cを第1スプロケット6aと第2スプロケット6bとの間に橋渡し、ノズル群21〜214を長円状(長径:480mm、短径:140mm)に配置した。更に、第1スプロケット6aに駆動モーター(移動手段6)を取り付けた。
次いで、ポリエチレン製フレキシブルバッグ(ポリマー溶液貯留部1)にマイクロポンプ(マイクロポンプ社製;マイクロポンプFC−513 ポンプヘッド:188 1rpm=0.017mLタイプ;コントローラ部=株式会社中央理化製)(供給吐出手段3)を接続するとともに、パーフルオロアルコキシ樹脂製チューブ(供給管1a)を接続し、このチューブをノズル21にロータリージョイントを介して接続した。次いで、このノズル21を隣接するノズル22と前記と同様のチューブ(供給管1a)で接続し、ポリマー溶液がノズル21を介してノズル22へ供給することができるようにした。同様に、ノズル22とノズル23、ノズル23とノズル24と順番にチューブ(供給管1a)で接続して、ノズル214までポリマー溶液を供給することができるようにした。なお、供給管1a内には直径が0.1mmのステンレススチールワイヤー(導電性材料)を挿入した。
次いで、14本のノズル群221〜2214(それぞれ内径が0.25mmのステンレススチール製針状ノズル)をピッチ60mmで、チェーン状支持体26cにそれぞれ固定し、この支持体26cを第1スプロケット26aと第2スプロケット26bとの間に橋渡し、ノズル群221〜2214を長円状(長径:480mm、短径:140mm)に配置した。更に、第1スプロケット26aに駆動モーター(移動手段26)を取り付けた。
次いで、ポリエチレン製フレキシブルバッグ(バインダ溶液貯留部21)にマイクロポンプ(マイクロポンプ社製;マイクロポンプFC−513 ポンプヘッド:188 1rpm=0.017mLタイプ;コントローラ部=株式会社中央理化製)(供給吐出手段23)を接続するとともに、パーフルオロアルコキシ樹脂製チューブ(供給管21a)を接続し、このチューブをノズル221にロータリージョイントを介して接続した。次いで、このノズル221を隣接するノズル222と前記と同様のチューブ(供給管21a)で接続し、バインダ溶液がノズル221を介してノズル222へ供給することができるようにした。同様に、ノズル222とノズル223、ノズル223とノズル224と順番にチューブ(供給管21a)で接続して、ノズル2214までバインダ溶液を供給することができるようにした。なお、供給管21a内には直径が0.1mmのステンレススチールワイヤー(導電性材料)を挿入した。
次いで、導電性シリコーンゴムをコーティングしたスチールベルトからなるベルト状捕集体5(幅:500mm、周長2.5m)をアースして、前記ノズル群21〜214及びノズル群221〜2214の下方に設置した。
次いで、前記ステンレススチールワイヤーに高電圧電源4を接続するとともに、前記ノズル群21〜214の先端が、上方から下方に向かってベルト状捕集体5の方向に向いており、しかもノズル群21〜214のエンドレス軌道の長径方向がベルト状捕集体5の幅方向(移動方向に対する直交方向)と一致するように、ノズル群21〜214を配置した。なお、ノズル群21〜214の先端とベルト状捕集体5の捕集表面との距離は100mmとした。
同様に、前記ステンレススチールワイヤーに高電圧電源24を接続するとともに、前記ノズル群221〜2214の先端が、上方から下方に向かってベルト状捕集体5の方向に向いており、しかもノズル群221〜2214のエンドレス軌道の長径方向がベルト状捕集体5の幅方向(移動方向に対する直交方向)と一致するように、ノズル群221〜2214を、前記ノズル群21〜214の下流に配置した。なお、ノズル群221〜2214の先端とベルト状捕集体5の捕集表面との距離は100mmとした。
次に、前記ノズル群21〜214、ノズル群221〜2214、ベルト状捕集体5を塩化ビニル製直方体紡糸容器9(幅:800mm、高さ:1300mm、奥行き:1800mm)の中央部に配置した。なお、直方体紡糸容器9の内側には、上壁面から500mm下方側の位置に塩化ビニル製パンチングプレート(多孔性材料10a)を上壁面と平行に配置し、下壁面から100mm上方側の位置に塩化ビニル製パンチングプレート(多孔性材料11a)を下壁面と平行に配置した。
そして、直方体紡糸容器9の上壁面に温湿度調整機能を備えた送風機(PAU−1400HDR、(株)アピステ、気体供給装置10)を接続するとともに、更に、直方体紡糸容器9の下壁面に排気ファン(排気装置11)を接続した。
(4)極細繊維不織布の製造
前記ポリマー溶液を前記ポリマー溶液貯留部1に入れ、前記マイクロポンプを用いてポリマー溶液を、ノズル21を介してノズル群21〜214へ供給し、ノズル群21〜214を125mm/sec.の一定速度で、長円状エンドレス軌道の長径が前記捕集体の幅方向(前記捕集体の移動方向Dと直交する方向)と一致するように右回転で移動させながら、各ノズルからポリマー溶液を吐出(1本あたりの吐出量:1g/時間)し、また、前記バインダ溶液を前記バインダ溶液貯留部21に入れ、前記マイクロポンプを用いてバインダ溶液を、ノズル221を介してノズル群221〜2214へ供給し、ノズル群221〜2214を125mm/sec.の一定速度で、長円状エンドレス軌道の長径が前記捕集体の幅方向(前記捕集体の移動方向Dと直交する方向)と一致するように右回転で移動させながら、各ノズルからバインダ溶液を吐出(1本あたりの吐出量:0.25g/時間)し、更には、前記ベルト状捕集体5を一定速度(表面速度:600cm/分)で移動させながら、前記高電圧電源4からポリマー溶液に11kVの電圧を印加して、吐出したポリマー溶液に電界を作用させて極細繊維化し、前記ベルト状捕集体5上に8.3時間、エンドレスで集積させて、平均繊維径0.4μmの極細連続繊維を集積するとともに、前記高電圧電源24からバインダ溶液に20kVの電圧を印加して、吐出したバインダ溶液に電界を作用させてバインダ粒子(平均粒子径:1μm)を形成し、捕集体5上に集積して、前記ベルト状捕集体5上の極細連続繊維と接触させて、極細繊維ウエブを形成した。なお、極細繊維ウエブを製造する際には、気体供給装置10から温度25℃、相対湿度25%の調湿エアを5m3/分で供給するとともに、排気口から出てくる気体を排気ファン11で排気した。
そして、極細繊維ウエブを常温で乾燥して極細繊維不織布(目付:26g/m2、厚さ:100μm)とし、エンドレスの極細繊維不織布を幅方向に切断した後、紙管で巻き取った。この極細繊維不織布は高速で捕集体を回転させたため、極細繊維とバインダ粒子がほぼ均一に混在し、極細繊維がバインダ粒子によって接着された状態にあった。
(実施例2)
(1)ポリマー溶液の調製
重合度1000の完全けん化ポリビニルアルコールを水に15mass%となるように溶解させたポリマー溶液(粘度:1000mPa・s)を用意した。
(2)バインダ溶液の調製
重合度300の完全けん化ポリビニルアルコールを水に20mass%となるように溶解させたポリマー溶液(粘度:180mPa・s)を用意した。
(3)製造装置の準備
実施例1と同じ製造装置を用意した。
(4)極細繊維不織布の製造
前記ポリマー溶液の1本あたりの吐出量を0.5g/時間としたこと、前記バインダ溶液の1本あたりの吐出量を0.15g/時間としたこと、高圧電源4からポリマー溶液に対する印加電圧を20kVとしたこと、高圧電源24からバインダ溶液に対する印加電圧を22kVとしたこと、及び極細繊維ウエブを温度80℃で乾燥した後、温度180℃に設定したオーブンで10分間の熱処理を行い、ポリビニルアルコールの不溶化を実施して極細繊維不織布としたこと以外は、実施例1と同じ条件で極細繊維不織布(目付:14.8g/m2、厚さ:90μm)を製造した。この極細繊維不織布は高速で捕集体を回転させたため、極細繊維(平均繊維径:0.22μm)とバインダ粒子(平均粒径:2μm)がほぼ均一に混在し、極細繊維がバインダ粒子によって接着された状態にあった。
(比較例1)
(1)紡糸原液の調製
重量平均分子量40万のポリアクリロニトリルを、N,N−ジメチルホルムアミドに濃度12mass%となるように溶解させたポリマー溶液(粘度:2600mP・s)を用意した。
(2)製造装置の準備
実施例1と同じ製造装置を用意した。
(3)極細繊維不織布の製造
バインダ溶液を供給しなかったこと以外は、実施例1と同じ条件で、極細繊維(平均繊維径:0.49μm)が分散した極細繊維不織布(目付:12g/m2、厚さ:45μm)を製造した。
(比較例2)
(1)紡糸原液の調整
重合度1000の完全けん化ポリビニルアルコールを水に15mass%となるように溶解させたポリマー溶液(粘度:1000mPa・s)を用意した。
(2)製造装置の準備
実施例1と同じ製造装置を用意した。
(3)極細繊維不織布の製造
バインダ溶液を供給しなかったこと以外は、実施例2と同じ条件で、極細繊維(平均繊維径:0.22μm)が分散した極細繊維不織布(目付:9.6g/m2、厚さ:40μm)を製造した。
(物性評価)
(1)引張り強度
実施例及び比較例の極細繊維不織布の引張り強度を、インストロン型引っ張り試験機を用い、幅50mmに切断した極細繊維不織布をチャック間距離50mm、引張り速度50mm/minの条件下で測定した。これらの結果は表1、2に示す通りであった。
(2)2%モジュラス強度
実施例及び比較例の極細繊維不織布の2%モジュラス強度を、インストロン型引っ張り試験機を用い、幅50mmに切断した極細繊維不織布をチャック間距離50mm、引張り速度50mm/minの条件下で測定した。これらの結果は表1、2に示す通りであった。
(3)最大孔径及び平均流量孔径
実施例及び比較例の極細繊維不織布の最大孔径及び平均流量孔径を、ポロメータ(Polometer、コールター(Coulter)社製)を用いて測定した。なお、最大孔径はバブルポイント法により測定し、平均流量孔径はミーンフローポイント法により測定した。これらの結果は表1、2に示す通りであった。
(4)フィルタ性能
試験塵埃として0.3ミクロンのDOPを用い、線速2cm/秒、ろ過面積100cm2の条件で、初期捕集効率と所定吸気抵抗値までの粉塵捕集量を測定した。これらの結果は表1、2に示す通りであった。
表1、表2の結果から明らかなように、本発明の製造方法により製造した極細繊維不織布は、同じ繊維質量の極細繊維不織布と比較して、引張り強度が50%以上向上するとともに、2%モジュラス強度が5倍以上向上したものであるため、形態安定性に優れ、加工性及び取り扱い性に優れたものであった。また、最大孔径が平均流量孔径の2倍以下の孔径の揃った極細繊維不織布であった。更に、バインダ粒子の存在によって嵩高性が維持されるためか、初期捕集効率はもちろん、粉塵捕集量の多い、吸気抵抗値の小さいフィルタ性能の優れるものであった。