JP2008280523A - 感温変色性色彩記憶性組成物及びそれを内包した感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 (イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体として、下記式(1)で示される化合物の均質相溶体からなる感温変色性色彩記憶性組成物、及びそれを内包したマイクロカプセル顔料。
【化1】
〔式中、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1乃至3の整数を示し、nは1乃至20の整数を示す。〕
【選択図】 なし
Description
前記感温変色性色彩記憶性材料は、従来の可逆熱変色性材料のように変色温度を境にその前後で変色し、変色前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態はその状態が発現するのに要する熱または冷熱が適用されている間は維持され、熱または冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻るタイプと比較して、変色温度より低温側の色と高温側の色のいずれかを常温域において選択的に保持できるうえ、必要に応じて熱又は冷熱を適用することにより互変的に保持させることができ、感温記録材料、玩具類、装飾、印刷分野等多様な分野に適用されている。
本発明は、前記色彩記憶性効果を発現させる反応媒体となる化合物について、更に追求し、反応媒体の選択の自由度を高め、この種の感温変色性色彩記憶性材料の利用度を更に高めようとするものである。
本発明は、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体として、下記式(1)で示される化合物の均質相溶体からなる感温変色性色彩記憶性組成物を要件とする。
更には、前記感温変色性色彩記憶性組成物を内包してなる感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料であること、前記感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料が色濃度−温度曲線に関して8℃乃至110℃のヒステリシス幅を示して変色すること、色濃度−温度曲線に関して、完全消色温度(T4)が40℃以上であり、且つ、発色開始温度(T2)が20℃以下である、常温域で色彩記憶性を有すること等を要件とする。
更には、前記感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料と、ビヒクルとからなる感温変色性色彩記憶性液状組成物、前記感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料と、成形用樹脂とからなる感温変色性色彩記憶性成形用樹脂組成物、支持体上に、前記感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料を樹脂に分散状態に固着させた可逆熱変色層を設けてなる感温変色性色彩記憶性積層体等を要件とする。
図1において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する温度T4(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは完全発色状態を保持できる温度T3(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは完全消色状態を保持できる温度T2(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する温度T1(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
変色温度領域は前記T1とT4間の温度域であり、発色状態と消色状態の両相が共存でき、色濃度の差の大きい領域であるT2とT3間の温度域が実質変色温度域(二相保持温度域)である。
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が大きい程、変色前後の各状態の保持が容易である。
変色前後の各状態の保持できるΔH値は8℃乃至110℃の範囲である。ここで、T4とT3の差、或いは、T2とT1の差であるΔtが変色の鋭敏性を示す尺度であり、1℃乃至15℃の範囲、好ましくは1℃乃至10℃の範囲が実用的である。
更に、変色前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態のみ存在させるためには、完全消色温度(T4)が40℃以上、好ましくは45℃以上、より好ましくは50℃以上であり、且つ、発色開始温度(T2)が20℃以下、好ましくは10℃以下、より好ましくは0℃以下である。
又、各成分は各々2種以上の混合であってもよく、機能に支障のない範囲で酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、溶解助剤等を添加することができる。
本発明の(イ)成分、即ち電子供与性呈色性有機化合物としては、従来より公知のジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類等が挙げられ、以下にこれらの化合物を例示する。
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,6−ジフェニルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、2−N,N−ジベンジルアミノ−6−ジエチルアミノフルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−i−アミルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−フェニル、3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド等を挙げることができる。
更には、蛍光性の黄色〜赤色の発色を発現させるのに有効な、ピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物等を挙げることができる。
活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂等が挙げられる。又、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩であってもよい。
フェノール、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン等がある。
前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3−トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物等であってもよい。
本発明に用いられるエステル化合物は、式(1)で示される化合物であって、式中のXは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示すが、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1乃至4のアルキル基であり、より好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1乃至2のアルキル基である。
mは1乃至3の整数を示すが、好ましくは1乃至2である。
nは1乃至20の整数を示すが、好ましくは3乃至10である。
前記式(1)で示されるエステル化合物は、ジカルボン酸と、2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノール又は2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノール誘導体とから構成されるエステル化合物であって、具体的には、下記式(2)で示されるジカルボン酸と、下記式(3)で示される2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノール又は置換2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとからエステル化反応により得られる。
前記したヒステリシス幅を有することにより、変色温度より低温側の色と高温側の色のいずれかを選択的に保持できる機能に優れ、様々な用途への応用性に優れる。
更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
前記マイクロカプセルは、平均粒子径0.5〜50μm、好ましくは1〜30μm、より好ましくは、1〜20μmの範囲が実用性を満たす。
前記マイクロカプセルは、最大外径の平均値が、50μmを越える系では、インキ、塗料、或いは熱可塑性樹脂中へのブレンドに際して、分散安定性や加工適性に欠ける。
一方、最大外径の平均値が0.5μm以下の系では、高濃度の発色性を示し難い。
また、カプセルを微小粒子化することにより、ΔH値は必須3成分の組成物の均質相溶体のΔHと比較し、更にΔHを拡大することができる。
前記マイクロカプセルは、内包物/壁膜=7/1〜1/1(質量比)の範囲が有効であり、壁膜の比率が前記範囲より大になると発色時の色濃度及び鮮明性の低下を免れず、好適には、内包物/壁膜=6/1〜1/1(質量比)である。
前記マイクロカプセル化は、従来より公知のイソシアネート系の界面重合法、メラミン−ホルマリン系等のin Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。
なお、マイクロカプセル顔料には、一般の染顔料(非熱変色性)を配合し、有色(1)から有色(2)への変色挙動を呈することもできる。
前記液状組成物には各種添加剤を添加することができ、樹脂、架橋剤、硬化剤、乾燥剤、可塑剤、粘度調整剤、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、沈降防止剤、平滑剤、ゲル化剤、消泡剤、つや消し剤、浸透剤、pH調整剤、発泡剤、カップリング剤、保湿剤、防かび剤、防腐剤、防錆剤等が挙げられる。
前記した液状組成物を用いて各種材質及び形状の支持体上に可逆熱変色層を設けて感温変色性色彩記憶性積層体が形成される。
なお、前記可逆熱変色層は、液状組成物中の溶剤が揮発してそれ以外の成分(添加剤)により形成される層であり、前記マイクロカプセル顔料は樹脂に分散状態に固着されてなる。
前記液状組成物を塗布する支持体の材質は特定されず、総て有効であり、紙、合成紙、糸、繊維、布帛、不織布、合成皮革、レザー、プラスチック、ガラス、陶磁器、金属、木材、石材等を例示でき、平面状に限らず、凹凸状であってもよい。
前記支持体上に非熱変色性着色層(像を含む)が予め形成されているものにあっては、温度変化により前記着色層を隠顕させることができ、変化の様相を更に多様化させることができる。
更に、前記液状組成物を用いて支持体上に可逆熱変色層を設ける他、予め可逆熱変色層を設けた転写シートを用いて支持体上に可逆熱変色層を形成することもできる。
また、前記感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ワックス類等に溶融ブレンドしてペレット、粉末、又はペースト形態として感温変色性色彩記憶性成形用樹脂組成物として利用できる。
前記成形用樹脂を用いて、汎用の射出成形、押出成形、ブロー成形、又は注型成形等の手段により、任意形象の立体造形物、フィルム、シート、板、フィラメント、棒状物、パイプ等の形態の成形体が得られる。
なお、前記液状組成物や成形用樹脂組成物中に一般の染顔料(非熱変色性)を配合し、有色(1)から有色(2)への変色挙動を呈することもできる。
前記積層体、或いは、樹脂組成物を用いて成形した成形体上には、光安定剤及び/又は透明性金属光沢顔料を含む層を積層することによって耐光性を向上させたり、或いは、トップコート層を設けて耐久性を向上させることもできる。
前記光安定剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、一重項酸素消光剤、スーパーオキシドアニオン消光剤、オゾン消光剤を例示できる。
前記透明性金属光沢顔料としては、芯物質として天然雲母、合成雲母、ガラス片、アルミナ、透明性フィルム片の表面を酸化チタン等の金属酸化物で被覆した顔料を例示できる。
各実施例における感温変色性色彩記憶性組成物及びそれを内包したマイクロカプセル顔料の製造方法と、感温変色性色彩記憶性組成物及びマイクロカプセル顔料の温度変化によるヒステリシス特性の測定方法について説明する。
なお、実施例中の部は質量部を表す。
感温変色性色彩記憶性組成物の調製方法
(イ)成分として3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド1部、(ロ)成分として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン2部、(ハ)成分としてマロン酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル化合物(化合物29)50部を混合し、加温して均質に溶解して感温変色性色彩記憶性組成物を得た。
前記感温変色性色彩記憶性組成物は青色から無色に変色するものであった。
前記感温変色性色彩記憶性組成物を内径1mm、長さ78mmの透明ガラス製毛細管に、毛細管底部から約10mmの高さまで封入し、測定試料を得た。
前記測定試料の感温変色性色彩記憶性組成物を封入した部分全体を透明熱媒体液の中に浸漬し、透明熱媒体液の温度を変化させながら、感温変色性色彩記憶性組成物の変色状態を目視で観察して、T1(完全発色温度)、T2(発色開始温度)、T3(消色開始温度)、T4(完全消色温度)を測定し、TH〔T1とT2の中間の温度(T1+T2)/2〕、TG〔T3とT4の中間の温度(T3+T4)/2〕、ΔH(ヒステリシス幅TG−TH)を求めた。
前記感温変色性色彩記憶性組成物はT1:33℃、T2:42℃、T3:91℃、T4:98℃、TH:37.5℃、TG:94.5℃、ΔH:57℃のヒステリシス特性を示した。
感温変色性色彩記憶性組成物の(イ)成分、(ロ)成分、(ハ)成分を以下の表3に記載した化合物に変更した以外は実施例1と同一配合量、同一方法で、実施例2〜20の感温変色性色彩記憶性組成物を調製し、実施例1と同様にしてヒステリシス特性を測定した。
感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料の調製方法
(イ)成分として3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド1部、(ロ)成分として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5部、(ハ)成分としてアジピン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル化合物(化合物3)50部からなる感温変色性色彩記憶性組成物を混合し、均一に加温溶解し、さらに壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー20部、酢酸エチル40部を混合した溶液を15%ゼラチン水溶液100部中に投入し、微小滴になるように乳化分散した。前記分散液を70℃で約1時間攪拌を続けた後、水溶性アミン化合物〔ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名:jERキュアU、エポキシ樹脂のアミン付加物〕2部を水23部に溶解させた水溶液を攪拌しながら徐々に添加し、さらに液温を90℃に保って約3時間攪拌を続けて感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料の懸濁液を得た。
前記マイクロカプセル顔料の懸濁液から、遠心分離により感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料を単離し、青色から無色に変色する感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料を得た(平均粒子径:6μm)。
前記感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料40部を、エチレン−酢酸ビニル樹脂エマルジョン50.0部、レベリング剤1.0部、消泡剤1.0部、粘度調整剤0.5部、水7.5部からなる水性インキビヒクルに均一に分散させて感温変色性色彩記憶性インキを調製した。前記インキを用いて白色合成紙にベタ柄をスクリーン印刷し、さらに裏面に粘着剤層を有する透明ポリエステルフィルム(厚み:16μm)を印刷面上にラミネートして測定試料を得た。
前記測定試料を透明熱媒体液の中に浸漬し、透明熱媒体液の温度を変化させながら、感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料印刷部分の変色状態を目視で観察して、T1、T2、T3、T4を測定し、TH〔T1とT2の中間の温度(T1+T2)/2〕、TG〔T3とT4の中間の温度(T3+T4)/2〕、ΔH(ヒステリシス幅TG−TH)を求めた。
前記感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料はT1:4℃、T2:14℃、T3:77℃、T4:85℃、TH:9℃、TG:81℃、ΔH:72℃のヒステリシス特性を示した。
マイクロカプセルに内包させる感温変色性色彩記憶性組成物の(イ)成分、(ロ)成分、(ハ)成分を以下の表5に記載した化合物に変更した以外は実施例21と同一配合量、同一方法で、実施例22〜29の感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料を調製し、実施例21と同様にしてヒステリシス特性を測定した。
実施例21で調製した感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料2.5部及び非熱変色性蛍光ピンク色顔料1.5部を、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂12.5部、キシレン38.3部、酢酸ブチル45部、粘度調整剤0.2部からなる油性インキビヒクルに均一に分散させて感温変色性色彩記憶性インキを調製した。
前記インキを4℃以下の温度に冷却して紫色に変色させた後、家庭用電気コードのプラグ部分(白色)にスプレー塗装して感温変色層を設け、感温変色性色彩記憶性プラグを得た。
前記プラグは室温(25℃)で紫色を呈しているが、加温により77℃以上の温度で変色を開始し、85℃以上の温度でピンク色となった。この変色状態から冷却すると、14℃以下の温度から変色を開始し、4℃以下の温度で再び紫色となった。
前記感温変色性色彩記憶性プラグは、紫色の変色状態は77℃未満の温度でこの状態を保持することができ、85℃以上の温度でピンク色になると14℃以下の温度に冷却されない限りピンク色の変色状態を保持することができるため、プラグが異常過熱状態となり、85℃以上の高温域に達した場合の温度履歴を目視により検知できた。
実施例24で調製した感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料27部(予め−10℃以下に冷却して青色に発色させたもの)を、キサンタンガム(剪断減粘性付与剤)0.33部、尿素10.0部、グリセリン10部、ノニオン系界面活性剤0.6部、変性シリコーン系消泡剤0.1部、防黴剤0.2部、水51.77部からなる水性インキビヒクルに均一に分散させて感温変色性色彩記憶性インキを調製した。
前記インキ0.97gを内径4.4mmのポリプロピレン製パイプに吸引充填し、樹脂製ホルダーを介して0.7mmステンレス鋼ボールを先端に抱持したボールペンチップと連結させた。
次いで、前記ポリプロピレン製パイプの後端より、ポリブテンを主成分とする粘弾性を有するインキ逆流防止体(液栓)を充填し、更に尾栓をパイプの後部に嵌合させ、先軸筒、後軸筒を組み付け、キャップを嵌めた後、遠心分離により脱気処理を行い、感温変色性色彩記憶性ボールペンを得た。
なお、前記後軸筒後部には摩擦体としてSEBS製ゴムを装着してなる。
前記筆跡は、室温(25℃)では青色を呈しており、摩擦体を用いて文字を擦過すると、該文字は消色して無色となり、この状態は1℃以下に冷却しない限り維持することができた。
なお、消色後の前記紙面を冷凍庫に入れて−10℃以下の温度に冷却すると、再び文字が青色になる変色挙動を示し、前記挙動は繰り返し再現することができた。
実施例25で調製した感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料40部を、エチレン−酢酸ビニル樹脂エマルジョン50部、レベリング剤1部、消泡剤1部、粘度調整剤0.5部、水7.5部からなる水性インキビヒクルに均一に分散させて感温変色性色彩記憶性インキを調製した。
前記インキを用いて、裏面に粘着剤層を有する白色ポリエステルフィルム(厚み25μm)上にスクリーン印刷を行ない、感温変色層を設けた後、さらに粘着剤層を有する透明ポリエステルフィルム(厚み:16μm)を感温変色層上に貼着して感温変色性色彩記憶性シールを得た。
前記シールは12℃以下の温度に冷却して青色に発色させた後、加温すると84℃以上の温度で変色を開始し、97℃以上の温度で白色となった。この変色状態から冷却すると、17℃以下の温度で発色し始め、12℃以下の温度で再び青色となる変色挙動を示し、前記挙動は繰り返し再現することができた。
青色に発色した状態のシールをプラスチック製弁当箱の外面に貼り付け、熱水噴流式殺菌装置内で110℃、5分間の加熱殺菌処理を行なったところ、前記シールは室温(25℃)に取出した後でも白色状態を維持しており、前記弁当箱が97℃以上の温度に加熱されたことを目視で確認することが可能であり、加熱殺菌処理の有無の温度履歴を目視により検知できた。
マイクロカプセル粒子の調製
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、パルミチン酸ブチル50部を均一に加温溶解し、さらに壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー20部、酢酸エチル40部を混合した溶液を15%ゼラチン水溶液100部中に投入し、微小滴になるように乳化分散した。前記分散液を70℃で約1時間攪拌を続けた後、水溶性アミン化合物〔ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名:jERキュアU、エポキシ樹脂のアミン付加物〕2部を水23部に溶解させた水溶液を攪拌しながら徐々に添加し、さらに液温を90℃に保って約3時間攪拌を続けてマイクロカプセル粒子の懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル粒子を単離した(平均粒子径:6μm)。
実施例26で調製した感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料(予め13℃以下に冷却して青色に発色させたもの)13部及び前記マイクロカプセル粒子7部をヒドロキシエチルセルロース0.5部、グリセリン15部、消泡剤0.2部、防腐剤1部、水63.3部からなる水性インキビヒクルに均一に分散して感温変色性色彩記憶性インキを調製した。
前記インキと攪拌球(フェライト系ステンレス鋼球、直径3mm)を軸筒内に内蔵し、弁機構を介在させて先端部にマーキングペン体〔チゼル型繊維ペン体(気孔率53%)〕を取り付け、直液式筆記具(マーキングペン)を得た。
尚、前記弁機構は、弁体と、前記弁体を弁座に圧接するように付勢する金属製スプリングからなり、筆記時のペン体への筆圧で弁が開く構造である。
前記直液式筆記具には着脱自在のキャップを備えてなり、前記キャップには頂部に擦過部材としてSEBS樹脂を装着してなる。
前記筆記具を用いて紙面に筆記して、青色の文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は、室温(25℃)では青色を呈しており、キャップに装着した擦過部材を用いて文字を擦過すると、該文字は消色して無色となり、この状態は室温下で保持されており、13℃以下の温度に冷却することにより、元の青色に復色し、前記変色挙動は繰り返し再現された。
実施例24で調製した感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料40部(予め−10℃以下に冷却して青色に発色させたもの)を、ウレタン樹脂エマルジョン50部、消泡剤1部、粘度調整剤1部、水8部からなる水性インキビヒクルに均一に分散させて感温変色性色彩記憶性インキを調製した。
A4サイズの白色合成紙(厚み200μm)上に、前記水性インキをコーティング加工して厚み20μmの感温変色層を設け、感温変色性色彩記憶性記録材を得た。
前記記録材にサーマルプリンター(昭和情報機器株式会社製、品番:S4870)を用いて文字を印字し、案内板として実用に供した。
前記案内板は青色の背景に白色の文字が明瞭に視認され、この変色状態を1℃〜70℃の温度域で保持することができ、室温下で前記文字を保持できた。
前記案内板は−10℃以下に冷却することにより、文字部分の感温変色層を再び着色させて文字部分を消去し、サーマルプリンターにより繰り返し異なる文字を形成することができた。
実施例29で調製した感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料5部、分散剤1部、非熱変色性ピンク色顔料0.1部、ポリプロピレンホモポリマー93.9部をエクストルーダーにて180℃で溶融混合して感温変色性色彩記憶性ペレットを得た。前記ペレットを用いて、射出成形機にてシリンダー温度180℃でプラスチックカップを成形した。前記プラスチックカップは室温(25℃)では紫色を呈しているが、加温により56℃以上の温度で変色を開始し、69℃以上の温度でピンク色となった。この状態から降温すると49℃以下の温度から変色を開始し、44℃以下の温度で再び紫色となった。
前記プラスチックカップに飲料を入れ、電子レンジで加熱したところ、紫色からピンク色へ変色し、内部の飲料が69℃以上の温度となったことを容易に確認することができた。加熱によりピンク色へ変色した前記プラスチックカップを電子レンジから取出して室温に放置すると、ピンク色から再び紫色に変色し、カップ内の飲料が44℃以下の温度になったことを容易に確認することができた。
実施例24で調製した感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料20部(予め−10℃以下に冷却して青色に発色させたもの)を、アクリル系樹脂エマルジョン(固形分40%)78.0部、消泡剤2.0部からなる水性インキビヒクルに均一に分散させて感温変色性色彩記憶性インキを調製した。
上質紙上に黒色非熱変色性インキを用いて印刷された商品券に、前記感温変色性色彩記憶性インキを用いてグラビア印刷により偽造判別マークを印刷した。前記偽造判別マークは室温(25℃)では青色を呈しており、体温や環境温度では色変化しないが、79℃以上に加熱すると無色となり、−10℃以下に冷却すると再び青色となった。
前記商品券の偽造判別マークは室温温度域では青色を呈して色変化しないため、偽造判別マークであることを識別できないが、79℃以上に加熱すると無色となることから、偽造防止機能を有していた。
実施例24で調製した感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料5部、塩化ビニル樹脂46.5部、塩化ビニル樹脂用可塑剤46.4部、安定剤1部、分散剤1部、非熱変色性ピンク色顔料0.1部をエクストルーダーにて溶融混合して感温変色性色彩記憶性ペレットを得た。
前記ペレットを銅線に押し出し被覆成形した後、−10℃以下に冷却してピンク色から紫色に変色させて感温変色性色彩記憶性電線を得た。前記電線は室温(25℃)では紫色を呈しており、体温や環境温度では色変化しないが、79℃以上に加熱するとピンク色となり、−10℃以下に冷却すると再び紫色となった。
前記電線に過電流による発熱異常試験を行ったところ、断線による異常発熱部分のみがピンク色に変色し、変色部分が通電停止後も室温温度域でピンク色の状態を維持しているため、断線部分を目視で容易に特定することができた。
実施例24で調製した感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料5部を塩化ビニル樹脂62部、塩化ビニル樹脂用可塑剤31部、分散剤1.9部、非熱変色性ピンク色顔料0.1部と混合した後、カレンダー押し出し成形機によりフィルム成形を行い、厚み200μmの感温変色性色彩記憶性フィルムを得た。前記フィルムの片面に粘着剤をバーコーターにより塗工してロール状に巻き取った後、−10℃以下に冷却してピンク色から紫色に変色させ、感温変色性色彩記憶性粘着テープを得た。
前記粘着テープは室温(25℃)では紫色を呈しており、体温や環境温度では色変化しないが、79℃以上に加熱するとピンク色となるため、電線の接続部分に巻き付けて、電線の接続不良による異常発熱を目視で容易に確認することができた。
実施例24で調製した感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料(予め−10℃以下に冷却して青色に発色させたもの)30部をアクリル系樹脂エマルジョン(固形分45%)60部、粘度調整剤1部、消泡剤0.2部、水8.8部からなる水性インキビヒクルに均一に分散させて感温変色性色彩記憶性インキを調製した。前記インキを用いて白地のTシャツ(綿製)に、100メッシュのスクリーン版で多数の星のパターンをスクリーン印刷し、50℃で乾燥して感温変色性色彩記憶性Tシャツを得た。
前記Tシャツは室温(25℃)では多数の青色の星柄が視認され、体温や環境温度では変化しないが、79℃以上に加熱すると星柄部分が無色となり、−10℃以下に冷却すると再び青色の星柄が視認された。
前記Tシャツの星柄の一部をアイロン等による加温で消色させて、任意の星のみを消色させた白抜きパターンや、星の部分で文字やパターンを形成し、Tシャツの柄を任意に変化させることができた。また、その変色状態を室温温度域で保持させることができ、全体を79℃以上に加温して星柄部分を全面消色させた後、−10℃以下に冷却して星柄全面を発色させ、再び前記のように任意の柄を形成することができた。
平均粒子径を2.5μmに調整した以外は実施例24と同様の感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料(予め−10℃以下に冷却して青色に発色させたもの)20部を、スチレンアクリル共重合樹脂エマルジョン(固形分45%)5部、グリセリン10部、防黴剤0.2部、消泡剤0.1部、水64.7部からなる水性インキビヒクルに均一に分散させて感温変色性色彩記憶性インキを調製した。
前記インキをインクジェット記録装置にセットして記録用紙に印字を行い、感温変色像を形成し、感温変色性印刷物を得た。
前記印刷物は室温(25℃)で青色の感温変色像が視認され、体温や環境温度では変化しないが、79℃以上に加熱することにより感温変色像が消色し、室温温度域で使用前の状態(何も印刷していない記録用紙)に戻った。
再び、インクジェット記録装置に前記記録用紙をセットして印字を行うことにより、感温変色像を形成して印刷物を得ることができ、繰返し記録用紙を使用することができた。
また、前記感温変色像が形成された印刷物上に、応用例2で得た感温変色性色彩記憶性ボールペンを用いて文字等を加筆することも可能であり、79℃以上に加熱することにより感温変色像及び加筆部分を消色させて使用前の状態(何も印刷していない記録用紙)に戻し、インクジェット記録装置で繰り返し記録用紙を再利用することができた。
T2 発色開始温度
T3 消色開始温度
T4 完全消色温度
ΔH ヒステリシス幅
Claims (7)
- 請求項1の感温変色性色彩記憶性組成物を内包してなる感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料。
- 色濃度−温度曲線に関して8℃乃至110℃のヒステリシス幅を示して変色する請求項2記載の感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料。
- 色濃度−温度曲線に関して、完全消色温度(T4)が40℃以上であり、且つ、発色開始温度(T2)が20℃以下である、常温域で色彩記憶性を有する請求項2又は3記載の感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料。
- 請求項2乃至4のいずれか一項に記載の感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料と、ビヒクルとからなる感温変色性色彩記憶性液状組成物。
- 請求項2乃至4のいずれか一項に記載の感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料と、成形用樹脂とからなる感温変色性色彩記憶性成形用樹脂組成物。
- 支持体上に、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料を樹脂に分散状態に固着させた可逆熱変色層を設けてなる感温変色性色彩記憶性積層体。
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