JP2008274407A - 建材用極薄冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

建材用極薄冷延鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】建物の内壁、外壁や屋根等のフラットな部材に供して好適な、板厚が0.2mm以下で強度および平坦度に優れる安価な建材用極薄冷延鋼板を提供する。
【解決手段】鋼板の成分組成を、質量%でC:0.01%以上 0.10%以下、Si:0.03%以下、Mn:0.005%以上 0.5%以下、P:0.01%以上 0.20%以下、S:0.03%以下、Al:0.01%以上 0.1%以下、N:0.010%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物にすると共に、板厚:0.2mm以下まで冷間圧延後の鋼板の平均硬さ(HR30T)が68以上 83以下で、かつ板幅方向にわたる硬さ変動量が平均硬さの±2以内となる割合が鋼板全体の90%以上とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、建材用極薄冷延鋼板およびその製造方法に関し、特に板厚が0.2mm以下の極薄冷延鋼板に対して、建材用として必要とされる強度および平坦度を併せて付与したものである。
近年、極薄冷延鋼板の建材用途への需要が増大している。
すなわち、極薄冷延鋼板を、用途によっては溶融めっき、電気めっき、塗装などの表面処理を施した後、例えば木製あるいは樹脂製などの基板に貼り合わせて、建物の内壁や外壁および屋根等の用途に供している。
基板との貼り合わせに際し、鋼板に耳伸びや中伸びが発生していると、基板との貼り合わせ後、基板と鋼板の間にすき間が生じやすく、外観不良や腐食等の問題が発生するため、鋼板は極力耳伸びや中伸びの発生がなく平坦であることが望まれる。
上記のような用途では、冷延鋼板は、ほとんど加工することなしに使用される。
また、かような用途においては、延性やr値などの成形性よりも、むしろ板厚精度や強度、形状(平坦度)が重要視される。すなわち、極薄で、高い強度を有し、耳伸びや中伸びで評価される平坦度に優れることが必要とされる。
さらに、かかる用途に用いる場合、汎用材として安価であることも要求される。
ここで、極薄冷延鋼板の製造方法としては、例えば特許文献1に、C≦0.010%でかつC+N≦0.012%、Si≦0.01%、Mn≦0.15、P≦0.02%、S≦0.020%、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼の熱間圧延後のコイルを、中間焼鈍なしに冷延率:80〜99%にて板厚:0.5mm以下まで冷間圧延することが、開示されている。この技術は、鋼中のC含有量およびN含有量を低減することで、冷間圧延における加工硬化を低減し、高い圧延率での冷間圧延を可能として、極薄鋼板を製造しようとするものである。
しかしながら、上記したような建材用の用途においては、高い強度、具体的には、降伏強度YS:700 MPa以上が要求されているが、特許文献1の技術では、冷間圧延後の高強度を達成するのが困難であった。また、上記の技術では、CおよびNをともに低減する必要があることから、製造コストが高くなるという不利があった。
特開平3−79726号公報
本発明は、上記の現状に鑑み開発されたもので、建物の内壁、外壁や屋根等のフラットな部材に供して好適な、板厚が0.2mm以下で強度および平坦度に優れる安価な建材用極薄冷延鋼板を、その有利な製造方法と共に提案することを目的とする。
以下、本発明の解明経緯について説明する。
なお、素材としては、安価な一般軟鋼をベースとした。
さて、板厚が0.2mm以下の極薄冷延鋼板を建材用途に用いる場合、その使用に際して平坦度が損なわれないようにある程度の強度(降伏強度YS:700 MPa以上)が必要になる。
単に強度を高めるためには、C量を増大してやればよい。しかしながら、この場合には鋼板が硬くなり、圧延ままでは形状(平坦度)の劣化が避けられない。
その他、強度を高める手段としては、強圧下圧延を施すことが考えられるが、この場合も鋼板が硬化して、やはり圧延ままでは形状(平坦度)の劣化が避けられない。
従って、冷間圧延後、形状矯正処理、好適にはレベラー処理を施して鋼板形状を矯正する必要が生じる。
しかしながら、このレベラー処理によって鋼板形状を矯正するには、冷延圧延後の鋼板の表面硬さが適正な範囲におさまっていることと、硬さのバラツキ、特に板幅方向の硬さのバラツキが少ないことが必要となる。
そこで、発明者らは、一般軟鋼を素材として、冷間圧延後のレベラー処理に適した表面硬さを有する冷延鋼板とするため、成分組成ならびにその製造方法について種々検討を重ねた。
その結果、熱延条件、特に仕上圧延温度および巻取り温度を適正化することによって、所期した目的が有利に達成されることの知見を得た。
本発明は上記の知見に立脚するものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.質量%で、C:0.01%以上 0.10%以下、Si:0.03%以下、Mn:0.005%以上 0.5%以下、P:0.01%以上 0.20%以下、S:0.03%以下、Al:0.01%以上 0.1%以下、N:0.010%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、板厚:0.2mm以下まで冷間圧延された鋼板であって、該冷間圧延後の鋼板の平均硬さ(HR30T)が68以上 83以下で、かつ板幅方向にわたる硬さ変動量が平均硬さの±2以内となる割合が鋼板全体の90%以上であることを特徴とする建材用極薄冷延鋼板。
2.上記1に記載の鋼板に形状矯正処理を施して得た極薄冷延鋼板であって、該鋼板の平坦度が2mm以下で、かつ降伏強度(YS)が700 MPa以上であることを特徴とする建材用極薄冷延鋼板。
3.質量%で、C:0.01%以上 0.10%以下、Si:0.03%以下、Mn:0.005%以上 0.5%以下、P:0.01%以上 0.20%以下、S:0.03%以下、Al:0.01%以上 0.1%以下、N:0.010%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、加熱温度:1150℃以上に加熱後、仕上圧延温度:700℃以上 Ar3点以下の条件で熱間圧延を施したのち、巻取り温度:500℃以上750℃以下でコイルに巻き取って熱延板とし、ついで該熱延板を酸洗後、冷延圧下率:85%以上 99%以下にて板厚:0.2mm以下まで冷間圧延することを特徴とする建材用極薄冷延鋼板の製造方法。
4.質量%で、C:0.01%以上 0.10%以下、Si:0.03%以下、Mn:0.005%以上 0.5%以下、P:0.01%以上 0.20%以下、S:0.03%以下、Al:0.01%以上 0.1%以下、N:0.010%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、加熱温度:1150℃以上に加熱後、仕上圧延温度:700℃以上 Ar3点以下の条件で熱間圧延を施したのち、巻取り温度:500℃以上750℃以下でコイルに巻き取って熱延板とし、ついで該熱延板を酸洗後、冷延圧下率:85%以上 99%以下にて板厚:0.2mm以下まで冷間圧延し、さらに形状矯正処理を施すことを特徴とする建材用極薄冷延鋼板の製造方法。
本発明によれば、板厚が0.2mm以下の建材用極薄冷延鋼板について、冷延圧延ままで、建材用として必要な強度および平坦度を併せて付与することができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において鋼板の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。なお、各元素の含有量の単位はいずれも「質量%」であるが、以下、特に断らない限り、単に「%」で示す。
C:0.01%以上 0.10%以下
Cは、鋼に固溶して素材の強度を上昇させる効果があるが、含有量が0.10%を超えると炭化物を形成し、冷間圧延時の負荷が極めて大きくなり、板厚:0.2mm以下の冷延鋼板を得ることが難しくなる。そこで、本発明では、冷間圧延性の観点からC量の上限を0.10%とした。また、C量は、冷間圧延性の点からは低減することが望ましいが、著しい低減は鋼板の強度低下につながり、また製鋼時のC低減のためのコストを増大させ、素材を安価に提供することが難しくなる。そこで、強度確保およびコストの面からC量の下限を0.01%とした。冷間圧延性およびコスト両者の観点から好適なC量は0.02%以上 0.07%以下である。
ところで、最近、上記したような、木製や樹脂製等の基板に貼り合わせて使用される極薄冷延鋼板については、軽量化の観点から、さらなる薄肉化が求められており、例えば板厚:0.12mm程度の極薄材が要求される場合がある。鋼板を薄肉化した場合、それに伴ってレベラー処理時の破断が問題となることがあり、特に板厚を0.12mm程度まで薄肉化した場合には、この問題が顕著となる。レベラー処理時の破断を防止する上では、レベラー加工に供する鋼板の軟質化が有効である。
そこで、この点について、発明者らが検討したところ、C含有量を厳密に調整することにより、レベラー加工前の鋼板を軟質化することができ、その結果、板厚が0.12mm程度の薄肉材についても、レベラー処理時における破断を有利に回避できることが見出された。
図1に、Si:0.01%、Mn:0.16%、P:0.015%、S:0.017%、Al:0.020%、N:0.0021%を基本組成とし、Cを0.010〜0.052%の範囲で変更させた、板厚が0.120mmの極薄冷延鋼板について、C含有量とレベラー加工前の降伏強度YS(MPa)との関係について調べた結果を示す。
同図に示したとおり、C量の増加に伴って降伏強度は増大する。
次に、これらの鋼板について、伸び率:0.30%でレベラー加工を施したところ、C量が0.045%までは所望の平坦度を得ることができたが、C量が0.045%を超える鋼材では、所望の平坦度を得るべくレベラー加工を行った場合、鋼板の破断を余儀なくされた。
すなわち、板厚を0.12mm程度まで薄肉化する場合には、C量を0.045%以下とすることが有利であることが見出された。
また、本発明では、レベラー加工後の鋼板の降伏強度YSを700 MPa以上、好ましくは 710 MPa以上とすることを目標としているが、図1に示したように、C量を0.015%以上とすることにより、レベラー加工前の段階でもYSを700 MPa以上とすることができる。ここに、レベラー加工前の段階でYSが690 MPa以上であれば、伸び率:0.2%以上のレベラー加工後には700 MPa以上のYSを得ることができる。
従って、板厚が0.12mm程度の薄肉材において、レベラー加工後に所望の強度(YS≧700 MPa以上)を確保するためには、C量は0.015%以上とすることが有利である。
Si:0.03%以下
Siは、鋼の強度を上昇させる元素として有効であるが、多量の含有は冷間圧延性のみならず、表面処理性、化成処理性、耐食性を低下させることになるので、この観点からSi量は0.03%以下に限定した。
Mn:0.005%以上 0.5%以下
Mnは、Sによる熱間割れを抑制する働きがあるので、この効果を得るために0.005%以上含有させる。より好ましくは0.01%以上、さらに好ましくは0.05%以上である。しかしながら、Mnの多量添加は鋼板素材を硬質化させ、冷間圧延性を低下させるだけでなく、溶接性および溶接後の溶接部成形性を低下させるので、Mnの上限は0.5%とした。なお、より良好な形状および耐食性が要求される場合には、Mn量は0.30%以下とすることが望ましい。
P:0.01%以上 0.20%以下
Pは、鋼板素材の強度を上昇させる効果があるので、0.01%以上含有させるものとした。しかしながら、多量添加は冷間圧延性を低下させる。またPは、鋼中で偏析する傾向が強く、溶接部の脆化を招く。このため、本発明では、P:0.20%を上限とした。なお、より望ましくは0.10%以下である。
S:0.03%以下
Sは、鋼中で主として介在物として存在し、耐食性を低下させるため、極力低減することが望ましいが、0.03%までであれば許容できる。このため、本発明では、S量の上限は0.03%とした。なお、S量の下限は、特に限定する必要はなく、上記したように極力低減することが好ましいが、製鋼能力およびコストの点からは0.005%程度とするのが好ましい。
Al:0.01%以上 0.1%以下
Alは、脱酸剤として添加され、鋼の清浄度を向上させる元素であるので、積極的に添加する。しかしながら、Al量が0.01%未満では脱酸の効果が小さく、介在物が残存して成形性を低下させる。とはいえ、0.1 %を超えると鋼板の表面清浄度が低下するので、本発明では0.01%以上 0.1%以下に限定した。なお、材質安定性の観点からは、Al:0.02%以上 0.080%以下とすることが望ましい。
N:0.010%以下
Nは、鋼板に固溶し、含有量が0.010%を超えると鋼板を著しく硬質化させるため、0.010%以下とした。なお、N量の下限は、特に限定されるものではないが、製鋼能力やコストを考慮すると0.0010%程度とすることが好ましい。
残部はFeおよび不可避的不純物からなる。
ここに、不可避的不純物としては、Cu,Ni,Cr,Mo,Nb,TiおよびBなどが考えられるが、それぞれCu:0.20%以下、Ni:0.20%以下、Cr:0.20%以下、Mo:0.20%以下、Nb:0.02%以下、Ti:0.02%以下、B:0.0010%以下の範囲に制限することが望ましい。
以上、本発明の好適成分組成について説明したが、これだけでは不十分で、冷間圧延後および形状矯正処理後にそれぞれ以下の要件を満足することが重要である。なお、以下、形状矯正処理としてレベラー処理を例示し、説明する。
すなわち、冷間圧延後は、鋼板の平均硬さを、ロックウェル硬さ(HR30T)で68以上 83以下の範囲に調整することが重要である。
冷間圧延後の鋼板の硬さ(硬質度)は、製品形状に大きく影響するので、本発明において硬質度は極めて重要である。本発明では、製品板厚が0.2mm以下と極薄であるため、硬質度は板表面を測定し、板表面硬さを求めるものとする。 試験方法はJIS Z 2245「ロックウエル硬さ試験方法」に準拠する。
この平均硬さ(HR30T)が68未満では、レベラー処理後にYS≧700 MPaを確保することが困難であり、製品に腰折れが発生しやすく、一方83より大きいとレベラー処理による形状矯正が困難となり、製品形状の悪化が著しくなるので、鋼板の平均硬さ(HR30T)は68以上 83以下の範囲に限定する。
また、上記した冷間圧延後の鋼板では、板幅方向にわたる硬さ変動量が鋼板の平均硬さの±2以内となる割合が鋼板全体の90%以上とすることも重要である。
板幅方向にわたる硬さ変動量が、鋼板の平均硬さ(HR30T)の±2を超えると、その後にレベラー処理を施した場合に形状が劣化するので、板幅方向にわたる硬さ変動量は平均硬さの±2以内とする必要がある。
また、上記した板幅方向にわたる硬さ変動量の規定は、必ずしも鋼板全体に対して満足させる必要はなく、少なくとも90%以上が上記の要件を満足していればよい。
なお、鋼板の平均硬さおよび板幅方向にわたる硬さ変動量が平均硬さの±2以内となる割合は、次のようにして求めることができる。
冷延鋼板の先端から長手方向:200mピッチで、板幅方向:両端から5mm部およびその内側については等間隔で例えば7ヶ所(従って合計9ヶ所)を測定し、これら長手・板幅方向の測定値の平均値を平均硬さとする。また、板幅方向にわたる硬さ変動量が平均硬さの±2以内となる割合は、全測定数における平均硬さの±2以内となる測定数の割合で算出する。
また、鋼板の平均硬さおよび板幅方向にわたる硬さ変動量が平均硬さの±2以内となる割合は、冷延鋼板長手方向の硬度のばらつきが小さいことから、簡便には以下のようにして求めても良い。
すなわち、製品幅を有する任意長さの鋼板(切板)について、上記と同様の板幅方向での測定を、測定数の合計が100以上となるように長手方向に繰り返して測定し、これら測定値の平均値を平均硬さとする。また、板幅方向にわたる硬さ変動量が平均硬さの±2以内となる割合は、このようにして求めた任意長さの鋼板での全測定数における平均硬さの±2以内となる測定数で算出する。
また、レベラー処理後は、鋼板の平坦度および引張強さが、以下の範囲を満足することが重要である。
平坦度:2mm以下
平坦度は、JIS G 3141「冷間圧延鋼板及び鋼帯」に記載の方法に準拠して求めるものとする。ここで、平坦度は、耳伸びおよび中伸びのうち、最大のひずみを示すもので評価する。
この平坦度が2mmを超えると、すなわち耳伸びあるいは中伸びが2mmを超えると、製品としての使用に支障をきたすので、平坦度は2mm以下に制限する。
降伏強度(YS):700 MPa以上
降伏強度が700 MPaに満たないと、基板に貼り合わせるまでの取り扱いの際に変形しやすく、平坦度の確保が困難となるので、降伏強度は700 MPa以上に限定する。より好ましくは710 MPa以上である。
次に、本発明の製造方法について説明する。
前記した好適成分組成になる溶鋼を、転炉や電気炉等の公知の炉を用いて溶製した後、連続鋳造法や造塊−分塊法、薄スラブ鋳造法等の公知の方法でスラブとし、鋼素材とする。これら公知の方法の中でも、マクロ偏析を防止する上では連続鋳造法がより好ましい。
ついで、鋼素材を、加熱し、熱間圧延を施す。この際、素材の加熱温度が、1150℃未満では、熱間圧延時の変形抵抗が高くなり、圧延荷重が増加して熱間圧延が困難となるので、加熱温度は1150℃以上とする。また、材質均一化のためにも1150℃以上が好適である。但し、1300℃を超えて加熱すると、結晶粒が粗大化し、延性が低下するので、加熱温度の上限は1300℃程度とすることが好ましい。
ついで、熱間圧延を施すが、本発明では、この熱間圧延における仕上温度が重要である。
すなわち、仕上圧延温度を700℃以上 Ar3点以下とすることにより、軟質な熱延鋼板が得られ、冷間圧延時の負荷が軽減するため、所望の板厚:0.2mm以下の冷延材を板厚精度よく得ることができる。この点、仕上温度が700℃未満では、熱延板が軟質となりすぎるために、冷間圧延時の負荷は低減されるものの、製品で腰折れが発生し、製品形状が悪くなる。また、仕上温度が700℃より低くなると熱間圧延時の負荷が大きくなる。このため熱延板の仕上温度は700℃以上とする。一方、仕上圧延温度がAr3変態点温度より高いと、熱延板が硬質となり、冷間圧延での負荷が大きくなり、冷間圧延性が低下する。なお、材質の均一性、表面性状の観点から仕上圧延温度は750℃以上 830℃以下とすることが望ましい。
なお、Ar3変態点は、次式で求めることができる。
Ar3変態点=901−325〔%C〕−92〔%Mn〕+33〔%Si〕+287〔%P〕
但し、〔 〕内は、各元素の含有量(mass%)
巻取り温度:500℃以上 750℃以下
巻取り温度を500℃以上とすることにより、熱延終了後の結晶粒が成長、粗大化し、さらに炭化物が凝集粗大化する。これにより、軟質な熱延板を得ることができ、冷間圧延時の負荷が低くなって冷間圧延性が向上する。しかしながら、巻取り温度が750℃を超えて高すぎると、表面スケールの発生が多くなり、熱延板の表面性状ひいては冷間圧延後の表面性状が悪化するおそれがある。このため、巻取り温度は500℃以上 750℃以下とする。なお、巻取り温度の好適上限値は700℃である。
ついで、酸洗後、冷間圧延により冷延板とする。
熱延板の酸洗条件は特に規定する必要はなく、表面スケールを除去できれば良い。そのためには、公知の方法、例えば、塩酸、硫酸等の酸で表面スケールを除去すればよい。
冷間圧延は、圧下率:85%以上 99%以下の条件で、板厚:0.2mm以下まで圧延する。ここに、冷間圧延における圧下率が85%未満になると、熱延板の板厚を1.3mm以下とする必要が生じ、所定の温度以上の仕上げ温度を確保するのが困難となり、圧延時の負荷が増加したり、コイル内での温度バラツキが大きくなって、所望の材質が得られなくなり、一方99%を超える圧延は実施困難なので、冷間圧下率は85〜99%の範囲に限定した。
なお、C含有量にもよるが、冷間圧延における圧下率が96%を超えると形状が悪化する場合があるので、冷間圧延における圧下率は96%未満、より好ましくは95%以下とすることが望ましい。
上記の冷間圧延により、板厚が0.2mm以下で、平均硬さ(HR30T)が68以上 83以下で、かつ板幅方向にわたる硬さ変動量が平均硬さの±2以内となる割合が鋼板全体の90%以上の極薄冷延鋼板を得ることができる。
しかしながら、この冷間圧延ままでは、平坦度が所望の要件を満たしているとは限らない。
そこで、かような場合には、冷間圧延後にテンションレベラーなどのレベラー処理を施し、平坦度を改善すると共に、強度を調製する。
ここで、所望する平坦度は2mm以下である。また、所望強度は降伏強度(YS)で700 MPa以上である。
上記した平坦度および強度とするには、伸び率:0.3%以下の条件でレベラー処理を施すことが好ましい。ここに、伸び率が0.3%を超えると鋼板が硬質化し、レベラー加工中に鋼板が破断するおそれが生じる。
なお、板表面硬さは、例えば伸び率が0.3%以下の条件下では、レベラー処理後においてもほとんど変動せず、HR30Tで1〜2ポイント程度である。
なお、上記では、形状矯正処理としてレベラー処理を例示して説明したが、本発明はこれだけに限定されるものではなく、レベラー処理と同様の効果を有する形状矯正処理であれば、いずれもが適合する。
形状矯正処理後の鋼板は、必要に応じて表面処理を施しても良い。
施される表面処理としては、脱脂、乾燥後、溶融亜鉛めっき、その後クロメート処理を施す、あるいは脱脂、乾燥、電気めっき後、カラーコーティングを施す、あるいは乾燥後、カラーコーティングを施す等の方法が挙げられる。さらには、錫めっき、ニッケルめっき等のめっきや、各種合金めっき、化成処理など、通常の冷延鋼板に適用される表面処理いずれもが適合する。
表1に示す成分組成の鋼を転炉で溶製し、連続鋳造法で260mm厚のスラブとした。ついで、これらのスラブを表2に示す条件で熱間圧延、冷間圧延し、最終板厚を0.2mm以下の冷延鋼板とした。なお、板幅は1000mmとした。さらに、得られた冷延鋼板に表2に示す伸び率でレベラー処理を施した。
冷間圧延後、レベラー処理前の冷延鋼板の板表面硬さ(HR30T)および板幅方向にわたる硬さ変動量について調査した。結果を表3に示す。
また、表3には、前述の方法で求めた鋼板の平均硬さおよび硬さ変動量≦±2の割合(%)について調べた結果と共に、長手方向の中央で測定した板幅5mm位置および板幅中央位置の硬度についての測定結果も示す。なお、鋼板の平均硬さおよび硬さ変動量の割合は、長手方向の中央から採取した1500mm長さの鋼板(切板)についても求めたが、表3の結果と一致する結果を示した。
さらに、レベラー処理後の鋼板については、平坦度および強度(YS)を調べた。
得られた結果を表3に併記する。なお、平坦度は前述の方法で求めたものであり、試験材としては板幅:1000mm、長さ:1500mmの鋼板を用いた。また、降伏強度(YS)は引張り方向を圧延方向とするJIS 5 号試験片を用いて求めたものである。
Figure 2008274407
Figure 2008274407
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表3から明らかなように、本発明に従い製造された冷延鋼板はいずれも、冷間圧延後の板表面硬さが本発明の適正範囲を満足しており、またレベラー処理前に板表面硬さが本発明の要件を満足している鋼板はいずれも、適正なレベラー処理後には、耳伸び、中伸びとも2mm以下であり、本発明で所期した平坦度および強度の両者が併せて得られている。
板厚が0.120mmの極薄冷延鋼板における、C含有量とレベラー加工前の降伏強度YS(MPa)との関係を示した図である。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.01%以上 0.10%以下、Si:0.03%以下、Mn:0.005%以上 0.5%以下、P:0.01%以上 0.20%以下、S:0.03%以下、Al:0.01%以上 0.1%以下、N:0.010%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、板厚:0.2mm以下まで冷間圧延された鋼板であって、該冷間圧延後の鋼板の平均硬さ(HR30T)が68以上 83以下で、かつ板幅方向にわたる硬さ変動量が平均硬さの±2以内となる割合が鋼板全体の90%以上であることを特徴とする建材用極薄冷延鋼板。
  2. 請求項1に記載の鋼板に形状矯正処理を施して得た極薄冷延鋼板であって、該鋼板の平坦度が2mm以下で、かつ降伏強度(YS)が700 MPa以上であることを特徴とする建材用極薄冷延鋼板。
  3. 質量%で、C:0.01%以上 0.10%以下、Si:0.03%以下、Mn:0.005%以上 0.5%以下、P:0.01%以上 0.20%以下、S:0.03%以下、Al:0.01%以上 0.1%以下、N:0.010%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、加熱温度:1150℃以上に加熱後、仕上圧延温度:700℃以上 Ar3点以下の条件で熱間圧延を施したのち、巻取り温度:500℃以上750℃以下でコイルに巻き取って熱延板とし、ついで該熱延板を酸洗後、冷延圧下率:85%以上 99%以下にて板厚:0.2mm以下まで冷間圧延することを特徴とする建材用極薄冷延鋼板の製造方法。
  4. 質量%で、C:0.01%以上 0.10%以下、Si:0.03%以下、Mn:0.005%以上 0.5%以下、P:0.01%以上 0.20%以下、S:0.03%以下、Al:0.01%以上 0.1%以下、N:0.010%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、加熱温度:1150℃以上に加熱後、仕上圧延温度:700℃以上 Ar3点以下の条件で熱間圧延を施したのち、巻取り温度:500℃以上750℃以下でコイルに巻き取って熱延板とし、ついで該熱延板を酸洗後、冷延圧下率:85%以上 99%以下にて板厚:0.2mm以下まで冷間圧延し、さらに形状矯正処理を施すことを特徴とする建材用極薄冷延鋼板の製造方法。
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