JP2008268266A - 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置 - Google Patents

電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】無機材料からなる保護層を有する感光体における、過剰な残留電位の発生を抑制し、高耐久性及び良好な電気特性を両立できる電子写真感光体及びそれを用いたプロセスカートリッジ、画像形成装置を提供することである。
【解決手段】導電性基体上に、感光層と表面層とをこの順に積層して構成され、前記表面層を構成する元素のうち、13族元素、酸素及び水素の全元素量に対する各構成比の和が0.95以上であり、かつ、前記酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が1.1以上1.5以下である電子写真感光体である。
【選択図】なし

Description

本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関するものである。
近年、電子写真法は、複写機やプリンター等の画像形成装置に幅広く利用されている。このような電子写真法を利用した画像形成装置に使用される電子写真感光体(以下、「感光体」と称す場合がある)は、装置内で様々な接触やストレスに曝されるために劣化を招くが、その一方で、画像形成装置のデジタル化やカラー化にともなって高い信頼性が求められている。
例えば、感光体の帯電プロセスに着目した場合、以下のような問題がある。まず、非接触帯電方式では、放電生成物が感光体に付着して、画像ぼけなどが発生する。従って、感光体に付着した放電生成物を除去するために、例えば、現像剤中に研磨機能を持つ粒子を混合してクリーニング部でかきとるシステムが採用されたりする。しかしこの場合、感光体表面が磨耗により劣化する。
一方、近年、接触帯電方式が広く使用されているが、この方式においても感光体の磨耗が加速される場合がある。
このような背景から、電子写真感光体にはさらなる長寿命化が求められている。電子写真感光体の長寿命化には、耐磨耗性の向上が必要であるため、感光体表面の硬度を大きくすることが求められる。しかしながら、表面の硬度が高いアモルファスシリコンからなる感光体では、放電生成物の付着などが発生し、画像ボケや画像ながれが発生し易く、この現象は特に高湿時に顕著である。
また、電子写真方式の画像形成装置の像保持体としては、近年、低コストであることから有機感光体が幅広く用いられている。しかし、有機感光体を感光体として用いた場合には、表面に当接されたクリーニングブレードとの摩擦により摩耗するため、無機感光体に比べて寿命が短いことが問題である。
上記問題を解決するために、感光体表面に、ダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)や非晶質窒化炭素(CN)、非晶質窒化珪素のような硬質な膜を表面保護層として形成することが行われている(例えば、特許文献1〜3参照)。このように、前記問題の発生を抑制するために、感光体の表面層として炭素系の材料が用いられる場合が多い。
また、このような感光体の保護層を構成する材料のひとつとして、発明者等は既に、13族元素と酸素とを含む材料を提案している。これらの材料を保護層とする電子写真感光体は、繰り返し使用において摩耗がほとんどなく、さらに電子写真用感光体として繰り返し使用したときに高い撥水性を長期にわたって維持するため、放電生成物の付着による画質低下などの問題の発生を抑制することができる(例えば、特許文献4参照)。
上記技術において、機械的強度が向上し、傷が入りにくいなど耐久性の点から、保護層(表面層)の膜厚は大きいことが好ましい。特に保護層の下層が有機感光体である場合、保護層膜厚が不十分だと下地がやわらかいために大きく変形して保護層が割れるなど、傷等が発生するおそれがあることから、膜厚を大きくすることが有効である。
一方で、保護層が絶縁性である場合は、保護層膜厚の増加が電気特性に悪影響を及ぼすことがある。すなわち、絶縁性の保護層では、露光により感光層で発生した電荷が保護層を伝導できずに保護層/感光層界面に留まり、表面の帯電電荷と再結合できない。そして、保護層/感光層界面と表面とにそれぞれ残った電荷は残留電位となる。そして保護層膜厚が大きくなると、この残留電位は大きくなるので、繰り返し使用におけるプリント画像濃度低下などの問題が発生することがある。
このような問題を抑制するには、表面の保護層が電気伝導性を有することが好ましい。しかしながら、表面保護層の電気伝導度が大き過ぎると、静電潜像の面内で流れが発生する場合がある。特に、保護層が前記酸化物材料からなる場合には、適度な電気伝導性を得ることが難しく、上記静電潜像の面内流れ等の問題が発生することがある。
以上のように、無機材料を表面層に用いた感光体では、機械的な耐久性を得るために膜厚を大きくする必要があるが、現状では、画質低下を招くことなく残留電位の上昇を抑制することが困難である。
特開平9−101625号公報 特開2003−27238号公報 特開昭58−80647号公報 特開2006−267507号公報
本発明の目的は、無機材料からなる保護層を有する感光体における、過剰な残留電位の発生を抑制し、高耐久性及び良好な電気特性を両立できる電子写真感光体及びそれを用いたプロセスカートリッジ、画像形成装置を提供することである。
上記課題は、以下の本発明により達成される。
すなわち本発明の請求項1に係る発明は、導電性基体上に、感光層と表面層とをこの順に積層して構成され、
前記表面層を構成する元素のうち、13族元素、酸素及び水素の全元素量に対する各構成比の和が0.95以上であり、かつ、前記酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が1.1以上1.5以下である電子写真感光体である。
請求項2に係る発明は、前記酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が1.1以上1.4以下である請求項1に記載の電子写真感光体である。
請求項3に係る発明は、前記表面層の膜厚が、0.2μm以上2.0μm以下である請求項1または2に記載の電子写真感光体である。
請求項4に係る発明は、前記表面層が、プラズマCVDによって形成される請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真感光体である。
請求項5に係る発明は、前記感光層が、有機感光層である請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体である。
請求項6に係る発明は、電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電する帯電手段、及び前記電子写真感光体表面に形成された静電潜像を少なくともトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段、及び前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段から選択される少なくとも1つを有し、
前記電子写真感光体が、請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真感光体であり、画像形成装置本体に対して着脱自在であるプロセスカートリッジである。
請求項6に係る発明は、電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電する帯電手段と、該帯電手段により帯電された前記電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、該静電潜像を少なくともトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、該トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、を有し、
前記電子写真感光体が、請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真感光体である画像形成装置である。
本発明の請求項1に係る発明によれば、無機材料からなる保護層を有する感光体における、過剰な残留電位の発生を抑制し、高耐久性及び良好な電気特性を両立できる電子写真感光体を提供することができる。
請求項2に係る発明によれば、表面層の導電性をより十分なものとすることができ、膜厚を大きくしても残留電位の上昇を抑制することができる。
請求項3に係る発明によれば、表面層の機械的強度を維持できるだけでなく、さらに適正な露光量で静電潜像形成が可能な電子写真感光体を得ることができる。
請求項4に係る発明によれば、高耐久性及び良好な電気特性を両立できる電子写真感光体を効率的に得ることができる。
請求項5に係る発明によれば、高耐久性及び良好な電気特性を両立できる電子写真感光体を効率的に得ることができる。
請求項6に係る発明によれば、過剰な残留電位の発生を抑制し、高耐久性及び良好な電気特性を両立できる電子写真感光体の取り扱いを容易にし、種々の構成の画像形成装置への適応性を高めることができる。
請求項7に係る発明によれば、画像濃度むらや画像濃度低下のない高画質な画像を長期にわたって安定して得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
<電子写真感光体>
本発明の電子写真感光体は、導電性基体上に、感光層と表面層とをこの順に積層して構成され、前記表面層を構成する元素のうち、13族元素、酸素及び水素の全元素量に対する各構成比の和が0.95以上であり、かつ、前記酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が1.1以上1.5以下であることを特徴とする。
前記のように、保護層として無機材料からなる表面層を感光体上に設けた場合、感光体の残留電位が上昇することがある。このような残留電位上昇の問題は、前記無機薄膜の膜厚を大きくすることにより顕著になり、場合によっては100V以上の残留電位を生じることがある。
これに対して、表面層における構成元素の組成により電気伝導度を上げることは可能である。例えば、窒化ガリウム膜の表面を酸化した(あるいは自然酸化された)最表面層は化学量論比の酸化ガリウムであるため絶縁性であるが、同じ酸化物でも、酸素と金属元素との比が化学量論比からずれた酸化インジウム、酸化ガリウム、酸化亜鉛、酸化鉛などにおいては、構造中の酸素欠損に起因して伝導電子が発生し導電性が発現することが知られている。
しかし、上記酸化物では、酸素/金属元素の元素組成比をわずかに変化させるだけで電気抵抗が大きく低下するため、微妙な抵抗値調整が難しく、前記静電潜像の面内流れなどの画像欠陥の発生を回避することが困難である。
本発明者等が検討した結果、例えば上記酸化ガリウムに水素を含ませ、さらにガリウム、酸素及び水素の元素構成比を一定以上とした構造とすることにより、電気抵抗の調整幅が広くなり、一定範囲の酸素/ガリウム元素組成比で残留電位の上昇と画質欠陥の発生を共に抑制することができることがわかった。
具体的には、13族元素、酸素及び水素を含む表面層において、該13族元素、酸素及び水素の各元素構成比の和を0.95以上とし、このときの酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)を1.1以上1.5以下とすることが、前記電気特性と画像特性との両立に有効であることが見出された。
膜中に水素を含んだ酸化ガリウムでは、水素はガリウムと結合することにより、前記酸素欠損におけるガリウムの電子を電気的に不活性化し電気特性に影響を及ぼすと考えられる。また、膜中に水素を含むことにより、結合のフレキシビリティが増すといったことも考えられる。そして、このような水素を含んだ酸化ガリウムの組成と電気特性との関係は、水素を含まない酸化ガリウムのそれとは異なると考えられるが、上記組成(構造)が前記電気抵抗の制御性を向上させる理由については明らかでない。
前記各元素構成比の和が0.95に満たないと、たとえばN,P,Asなどの15族元素などが混入した場合、これらがガリウムと結合する影響などが無視できなくなり、本発明で規定する電気特性と画像特性とを両立できる酸素および13族元素組成比(酸素/13族元素)の適正範囲を見出すことができない。
前記13族元素、酸素及び水素の各元素構成比の和は、0.99以上とすることが好適である。
また、前記酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が1.1に満たないと、膜の電気抵抗値が低すぎるために、静電潜像が面内方向で流れてしまい、画像の解像度が得られなくなる。1.5を超えるものは、13族元素、酸素及び水素を構成元素とする材料として安定な状態として得ることができない。
酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)は1.1以上1.4以下であることが望ましく、1.1以上1.3以下であることがより好適である。元素組成比が1.4を超えると、膜の導電性が十分でなく、膜厚を大きくしたときに残留電位が問題となる場合がある。
ここで、本発明における前記元素組成は、最表面から深さ10nmの範囲を除いた、表面層の膜厚方向に平均化された値である。最表面から深さ10nmの範囲を含まないのは、汚染による炭素等の影響をなくすことと、自然酸化の影響を除くためである。なお、表面から10nm以内の深さで前記自然酸化により化学量論比の絶縁膜が形成されていても、感光体の電気特性に与える悪影響はほとんどない。また、元素組成は膜厚方向に傾斜されたものであってもよいが、その場合は膜厚方向に平均化された値である。
以下、まず本発明の電子写真感光体の構成を実施形態により説明する。
図1は、本実施形態の感光体の層構成の一例を示す模式断面図であり、図1中、1は導電性基体、2は感光層、2Aは電荷発生層、2Bは電荷輸送層、3は表面層を表す。図1に示す感光体は、導電性基体1上に、電荷発生層2A、電荷輸送層2B、表面層3がこの順に積層された層構成を有し、感光層2は電荷発生層2Aおよび電荷輸送層2Bの2層から構成される。
図2は、本実施形態の感光体の層構成の他の例を示す模式断面図であり、図2中、4は下引層、5は中間層を表し、他は、図1中に示したものと同様である。図2に示す感光体は、導電性基体1上に、下引層4、電荷発生層2A、電荷輸送層2B、中間層5、表面層3がこの順に積層された層構成を有する。
図3は、本実施形態の感光体の層構成の他の例を示す模式断面図であり、図3中、6は感光層を表し、他は、図1、図2中に示したものと同様である。図3に示す感光体は、導電性基体1上に、感光層6、表面層3がこの順に積層された層構成を有し、感光層6は、図1や図2に示す電荷発生層2Aおよび電荷輸送層2Bの機能が一体となった層である。
なお、本発実施形態において感光層2、6は、有機材料から形成されたものでもよいし、無機材料から形成されたものでもよい。
表面層3に含まれる13族元素としては、具体的には、Al,Ga,Inから選ばれる少なくとも一つ以上の元素を用いることができる。二つ以上の元素を含むこともできる。
また、表面層3に含まれる水素の含有量は1原子%以上30原子%以下が好ましく、5原子%以上20原子%以下がより好ましい。水素が1原子%に満たないと、酸素欠損における前記13族元素の電子を電気的に不活性化する効果が不十分となる場合がある。また30原子%を超えると、水素が13族元素と窒素原子とに2原子以上結合する確立が増加して三次元構造を保つことができず硬度や化学的安定性とくに耐水性などに不十分となる場合がある。
本実施形態における表面層3は、前記のように酸素と13族元素と水素とを主な構成元素とするが、これ以外の元素が不純物として含まれていてもよい。しかしながら、多量の不純物は電気特性に影響することがあるので、できるだけ少ない方が良い。具体的には、不純物は5原子%以下、好ましくは1原子%以下である。特に、窒素原子が含まれる場合には、窒素原子の含有量は1原子%以下とすることが望ましい。
表面層3における、13族元素や酸素等の元素の含有量は、膜厚方向の分布も含めてラザフォードバックスキャタリング(以下、「RBS」ということもある)により以下のようにして求めることができる。
RBSは、加速器としてNEC社 3SDH Pelletron、エンドステーションとしてCE&A社 RBS−400、システムとして3S−R10を用いた。解析にはCE&A社のHYPRAプログラム等を用いた。
なお、RBSの測定条件は、He++イオンビームエネルギーは2.275eV、検出角度160°、入射ビームに対してGrazing Angleは約109°である。
RBS測定は、具体的には以下のように行った。
まず、He++イオンビームを試料に対して垂直に入射し、検出器をイオンビームに対して、160°にセットし、後方散乱されたHeのシグナルを測定する。検出したHeのエネルギーと強度から組成比と膜厚を決定する。組成比及び膜厚を求める精度を向上させるために二つの検出角度でスペクトルを測定しても良い。深さ方向分解能や後方散乱力学の異なる二つの検出角度で測定しクロスチェックすることにより精度を向上できる。
ターゲット原子によって後方散乱されるHe原子の数は、1)ターゲット原子の原子番号、2)散乱前のHe原子のエネルギー、3)散乱角度の3つの要素のみにより決まる。 測定された組成から密度を計算によって仮定して、これを用いて膜厚を算出する。密度の誤差は20%以内である。
また、前記水素量はハイドロジェンフォワードスキャタリング(以下、「HFS」という場合がある)により、以下のようにして求めることができる。
HFSは、加速器としてNEC社 3SDH Pelletron、エンドステーションとしてCE&A社 RBS−400を用い、システムとして3S−R10を用いた。解析にはCE&A社のHYPRAプログラムを用いた。HFSの測定条件は、以下の通りである。
・He++イオンビームエネルギー:2.275eV
・検出角度:160°入射ビームに対してGrazing Angle30°
HFS測定は、He++イオンビームに対して検出器が30°に、試料が法線から75°になるようにセットすることにより、試料の前方に散乱する水素のシグナルを拾うことが可能である。この時検出器を薄いアルミ箔で覆い、水素とともに散乱するHe原子を取り除くことが良い。定量は参照用試料と被測定試料との水素のカウントを阻止能で規格化した後に比較することによって行う。
参照用試料としてSi中にHをイオン注入した試料と白雲母を使用した。白雲母は水素濃度が約6.5原子%であることが知られている。なお、最表面に吸着しているHは、清浄なSi表面に吸着しているH量を差し引くことによって行うことができる。また、2次イオン質量分析法(SIMS)、X線光電子分光法(XPS)、オージェ電子分光(AES)、蛍光X線元素分析(EDS)、エネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)、電子線マイクロプローブアナライザ(EPMA)、電子線エネルギー損失分光(EELS)などが挙げられるがこれらに限ったものではない。また、これらは単独、または2つ以上組み合わせて用いてもよい。
なお、深さ方向の元素組成データに関しては、表面からの深さプロファイルのデータを取得する方法、表面を真空中でスパッタリングなどによりエッチングしながら表面を測定する方法、断面サンプルを作製して、断面の組成マッピングにより測定する方法が考えられるが、それぞれの分析手法にあった方法を用いればよい。いずれにしても、本発明において求められる元素組成は、表面層の最表面ではなく最表面10nmを除いた層全体としてのものである。
本実施形態における表面層3の膜厚は、0.2μm以上2.0μm以下であることが望ましい。0.2μmに満たないと、機械強度が不足して、感光体として走行中に傷が入ったりすることがある。また、例えば通常化学量論比の酸化ガリウムは可視領域では透明であるが、O/Ga組成比が1.1以上1.5以下に制御された本実施形態の材料では、可視領域に吸収があるため、膜厚が2.0μmを超えると吸収により静電潜像形成時の感光層への露光量が不足してしまう場合がある。
表面層3の膜厚は0.2μm以上1.0μm以下とすることがより好適である。
次に、本実施形態の感光体を構成する各層について、製造方法とともにより詳細に説明する。
本実施形態の感光体は、その層構成が導電性基体上に感光層と表面層とがこの順に積層されたものである。本実施形態における感光層は、有機材料から形成されたものでもよいし、無機材料から形成されたものでもよい。また、これらの層の間に必要に応じて下引層等の中間層を設けてもよい。さらに感光層は、前記のように2層以上であってもよく、更に、機能分離型であってもよい。
感光層が有機材料から形成される場合、これに含まれる有機高分子化合物は熱可塑性であっても熱硬化性のものであっても、また2種類の分子を反応させて形成するものでも良い。また、感光層と表面層との間に、硬度や膨張係数、弾力性の調整、密着性の向上などの観点から中間層を設けても良い。中間層は、表面層の物性および感光層(機能分離型の場合は電荷輸送層)の物性の両者に対して、中間的な特性を示すものが好適である。また、中間層を設ける場合には、中間層は、電荷をトラップする層として機能しても良い。
感光層は、図1に示すように電荷発生層2Aと電荷輸送層2Bに分かれた機能分離型の感光層2でも良いし、図2に示すように機能一体型の感光層6であってもよい。機能分離型の場合には感光体の表面側に電荷発生層を設けたものでも良いし、表面側に電荷輸送層を設けたものでも良い。以下、感光層としては機能分離型の感光層2を中心に説明する。
感光層上に、後述する方法により表面層3を形成する場合、熱以外の短波長電磁波の照射により感光層2が分解したりすることを防ぐため、感光層表面には、表面層3を形成する前に紫外線などの短波長光吸収層を予め設けてもよい。
また、紫外線吸収剤を含む層(例えば、高分子樹脂に分散させた層を塗布等を利用して形成される層)を感光層表面に設けても良い。
このように、表面層3を形成する前に感光体表面に中間層を設けることで、表面層3を形成するときの紫外線や、画像形成装置内で感光体が使用された場合のコロナ放電や各種の光源からの紫外線などの短波長光による感光層への影響を防ぐことができる。
表面層3は、非晶性あるいは結晶性のいずれでもよいが、感光体表面の滑りを良くするためには、表面層3が非晶質性であることが好ましい。
(表面層の形成)
次に、表面層3の形成方法について説明する。表面層3の形成に際しては、感光層上に直接13族元素や酸素を含むように形成することができる。また感光層2の表面をプラズマでクリーニングしても良い。
表面層の形成は、一般公知の薄膜形成方法を用いることができる。なお、有機感光層に表面層を形成する場合、基板の被成膜面である有機感光体の温度が150℃以下であることが好ましい。中でもプラズマCVDは、アモルファスシリコンや有機感光層などの下地に、本実施形態の無機薄膜を接着性よく形成できること、本実施形態の組成範囲の無機薄膜を原料の供給量により制御性良く形成すること、低温での形成が可能であること、などの点で好適である。その他には、触媒CVD、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、分子線堆積法などを用いることができるが、これらに限られるものではない。
図4は、本実施形態の感光体の表面層の形成に用いる成膜装置の一例を示す概略模式図である。
成膜装置30は、真空排気される真空チャンバー32を含んで構成されている。真空チャンバー32の内部には、成膜が未だなされていない状態の電子写真感光体(以下、ノンコート感光体と称する)50を、ノンコート感光体50の長尺方向を回転軸方向として回転可能に支持する支持部材46が設けられている。支持部材46は、支持部材46を支持するための支持軸52を介してモータ48に接続されており、モータ48の駆動力を、支持軸52を介して支持部材46へ伝達可能に構成されている。
支持部材46に、ノンコート感光体50が保持された後に、モータ48が駆動することにより、モータ48の駆動力が支持軸52及び支持部材46を介してノンコート感光体50に伝達されると、ノンコート感光体50は、長尺方向を回転軸方向として回転する。
真空チャンバー32の一端には、真空チャンバー32内のガスを排気するための排気管42が設けられている。排気管42の一端は、真空チャンバー32の開口42Aを介して真空チャンバー32の内部に連通して設けられ、他端は、真空排気装置44に接続されている。真空排気装置44は、1つ、または複数の真空ポンプからなるが、必要に応じてコンダクタンスバルブなどの排気速度を調整する機構を備えていてもよい。
真空排気装置44の駆動によって、排気管42を介して真空チャンバー32内の空気が排気されると、真空チャンバー32の内部は所定の圧力(到達真空度)まで減圧される。なお、この到達真空度とは、1Pa以下であることが好ましく、0.1Pa以下であることがさらに好ましい。後述するように本発明では、ガリウム原料と酸素の供給速度の比によって元素組成比(酸素/13族)を制御するが、この到達真空度が高いと、残存した空気中の酸素や水の影響で反応雰囲気の酸素量が供給した量よりも多くなり、組成制御性が悪くなる。
真空チャンバー32の内部に設置されたノンコート感光体50の近傍には、放電電極54が設けられている。放電電極54は、マッチングボックス56を介して高周波電源58に電気的に接続されている。高周波電源58としては、直流電源または交流電源を用いることができるが、効率的にガスを励起できることから交流の高周波電源を用いることが好ましい。
放電電極54は、板状であって、放電電極54の長尺方向は、ノンコート感光体50の回転軸方向(長尺方向)と同一となるように設けられ、且つノンコート感光体50の外周面から所定距離離間されて設けられている。放電電極54は、中空状(空洞構造)で放電面にプラズマを生成するガスを供給するための1つまたは複数の開口34Aを有するものである。放電電極54が空洞構造でなく放電面に開口34Aが無いものである場合、プラズマを生成するガスは別に設けられたガス供給口から供給され、ノンコート感光体50と放電電極54との間を通過するようにした構成でもよい。また、放電電極54と真空チャンバー32との間で放電が起こらないように、ノンコート感光体50と対向している面以外の電極面が約3mm以下程度のクリアランスを有してアースされた部材により覆われていることが好適である。
高周波電源58からマッチングボックス56を介して放電電極54へ高周波電力が供給されると、放電電極54による放電が行われる。
真空チャンバー32内の、放電電極54を介してノンコート感光体50に対向する領域には、中空構造の放電電極54内部を介して真空チャンバー32内のノンコート感光体50に向かってガスを供給するためのガス供給管34が設けられている。
ガス供給管34の一端は、放電電極54内に連通(すなわち、放電電極54及び開口34Aを介して真空チャンバー32内に連通)しており、他端は、ガス供給装置41A、ガス供給装置41B、ガス供給装置41C各々に接続されている。
ガス供給装置41A、ガス供給装置41B、及びガス供給装置41C各々は、ガス供給量を調整するためのMFC(マスフローコントローラー)36、圧力調整器38、及びガス供給源40を含んで構成されている。各ガス供給装置41A、ガス供給装置41B、及びガス供給装置41C各々のガス供給源40は、ガス供給管34の上記他端に、圧力調整器38及びMFC36を介して接続されている。
ガス供給源40内のガスは、圧力調整器38によって供給圧を調整され、且つMFC36によってガス供給量を調整されつつ、ガス供給管34、放電電極54、及び開口34Aを介して、真空チャンバー32内のノンコート感光体50へ向かって供給される。
なお、上記ガス供給装置41A、ガス供給装置41B、及びガス供給装置41C各々に含まれるガス供給源40に充填されているガスの種類は、同一種類であってもよいが、複数のガスを用いて処理を行う場合には、互いに異なる種類のガスを充填したガス供給源40を用いても良い。この場合には、互いに異なる種類のガスが、ガス供給装置41A、ガス供給装置41B、及びガス供給装置41C各々のガス供給源40からガス供給管34に供給されて合流された混合ガスを、放電電極54及び開口34Aを介して真空チャンバー32内のノンコート感光体50へ向かって供給することができる。
また、真空チャンバー32内のノンコート感光体50には、13族元素を含む原料ガスも供給される。原料ガスは、原料ガス供給源62から先端部がシャワーノズル64Aであるガス導入管64によって、真空チャンバー32に導入される。原料ガスとしては、例えば13族元素がガリウムの場合には、トリメチルガリウム、トリエチルガリウムなどのガリウムを含む化合物ガスや金属ガリウムなどを用いることができる。また、酸素源として、Oをはじめ酸素を含む物質を用いることもできる。
なお、図4に示す一例では、放電電極54による放電方式は、容量型である場合を説明するが、誘導型であってもよい。
成膜は、例えば、以下のように実施することができる。まず、真空排気装置44によって真空チャンバー32内が所定の圧力まで減圧された状態で、マッチングボックス56を介して高周波電源58から放電電極54に高周波電力を供給すると共に、プラズマを生成するガスをガス供給管34から真空チャンバー32内へと導入する。このとき、放電電極54の放電面側から排気管42による開口42A側へと放射状に広がるように、プラズマが形成される。
なお、上記プラズマ形成時の真空チャンバー32内の圧力は、1Pa以上500Pa以下であることが好ましい。
本実施形態においては、プラズマを形成するガスは酸素を含んでいる。そして、そのほかにHeやArなどの不活性ガスやHなどの非成膜性ガスを含んだ混合ガスであってもよい。このような非成膜性ガスや不活性ガスは反応容器内の圧力などの反応雰囲気を制御するのに用いることができる。特に水素は、後述するように低温での反応において重要である。
次に、キャリアガス供給源60からの水素を原料ガス供給源62に通して、水素をキャリアガスとして用いて水素希釈したトリメチルガリウム(13族元素を含む有機金属化合物)ガスをガス導入管64、シャワーノズル64Aを介して真空チャンバー32に導入することによって、活性化した酸素とトリメチルガリウムとを活性水素を含む雰囲気で反応させ、ノンコート感光体50表面に水素と酸素とガリウムとを含む膜を成膜することができる。
本実施形態においては、上記のようにOガスとHガスとを混合して放電電極54内に導入して、同時に活性種をつくることによってトリメチルガリウムガスを分解し、ノンコート感光体50上に水素を含んだ13族元素と酸素との化合物を成膜することが好ましい。
水素ガスと酸素ガスとを同時にプラズマ内で活性化し、13族元素を含む有機金属化合物を反応させることで、プラズマ放電により生成した活性水素により有機金属ガスに含まれるメチル基やエチル基等の炭化水素基のエッチング効果を得ることができ、これにより低温でも高温成長時と同等の膜質の13族元素及び酸素を含む化合物の膜を、有機物(有機感光層)の表面にも該有機物にダメージを与えることなく良好に形成することができる。
具体的には、活性化のために供給される前記プラズマを生成するガス中の水素ガス濃度は、10体積%以上とすることが好ましい。水素ガス濃度が10体積%未満では低温でも十分なエッチング反応が行われず、水素含有量が多い13族元素の酸化物化合物が生成され、耐水性が不足し、大気中で不安定な膜となる場合がある。
また、プラズマCVDにより表面層3を形成する場合、例えばガリウム原料と酸素原料との供給量により、O/Ga元素組成比を制御することが可能である。この場合、酸素ガスとトリメチルガリウム(TMGa)ガスのガス供給モル比[O]/[TMGa]は、0.1以上10以下とすることが好ましい
その他の方法による場合においても、ガス供給量を変えることによって成長雰囲気を制御したり、スパッタリングなどにおいてはターゲットに含まれるガリウムと酸素との割合によって制御したりすることが可能である。
成膜時のノンコート感光体50表面の温度は特に限定されないが、アモルファスシリコン感光体の場合には50℃以上350℃以下で形成することが好ましく、有機感光体の場合には0℃以上150℃以下で処理を行うことが好ましい。特に有機感光体上に成膜を行う場合において、ノンコート感光体50表面の温度は、100℃以下とすることがより好ましい。さらに、ノンコート感光体50表面の温度が150℃以下であっても、プラズマの影響で表面が150℃より高くなる場合には有機感光層が熱で損傷を受ける場合があるため、このような影響を考慮してノンコート感光体50表面の温度を設定することが好ましい。
なお、ノンコート感光体50の表面温度は図示していない方法で制御しても良いし、放電時の自然な温度の上昇に任せてもよい。ノンコート感光体50を加熱する場合にはヒータをノンコート感光体50の外側や内側に設置しても良い。ノンコート感光体50を冷却する場合にはノンコート感光体50の内側に冷却用の気体または液体を循環させても良い。
放電によるノンコート感光体50の温度上昇を避けたい場合には、ノンコート感光体50表面に当たる高エネルギーの気体流を調節することが効果的である。この場合、ガス流量や放電出力、圧力などの条件を所要温度となるように調整すればよい。
図4に示す成膜装置30のプラズマ発生方法は、高周波発振装置を用いたものであるが、これに限定されるものではなく、例えば、マイクロ波発振装置を用いたり、エレクトロサイクロトロン共鳴方式やヘリコンプラズマ方式の装置を用いてもよい。また、高周波発振装置の場合は、誘導型でも容量型でも良い。
本実施形態においては、放電電極54、高周波電源58、マッチングボックス56、ガス供給管34、MFC36、圧力調整器38、及びガス供給源40をプラズマ発生装置として、このプラズマ発生装置を1組用いているが、このプラズマ発生装置を2種類以上組み合わせて用いてもよく、あるいは、同種の装置を2つ以上用いてもよい。さらに、円筒型のノンコート感光体50を取り囲むようにした円筒型電極を有する容量結合型のプラズマCVD装置を用いても良いし、平行平板電極とノンコート感光体50との間で放電を起こすものでも良い。
2種類以上の異なるプラズマ発生装置を用いる場合には、同じ圧力で同時に放電が生起できるようにする必要がある。また、放電する領域と、成膜する領域(ノンコート感光体50が設置された部分)とに圧力差を設けても良い。これらの装置は、処理装置内をガスが導入される部分から排出される部分へと形成されるガス流に対して直列に配置してもよいし、いずれの装置もノンコート感光体50の成膜面に対向するように配置してもよい。
また、放電は大気圧近傍で行っても良い。ここで、該大気圧近傍とは70000Pa以上110000Pa以下を意味する。なおこの場合には、希ガスとしてHe、Arガスを水素と混合して用い放電を行うと、放電の安定化が得易くなる。
13族元素を含むガスとしては、トリメチルガリウムガスの代わりにトリエチルガリウムを使用することができるし、ガリウムの代わりにインジウム、アルミニウムを含む有機金属化合物を用いることもでき、これらを2種類以上混合して用いてもよい。
以上のような方法により、活性化された水素、酸素及び13族元素が感光体上に存在し、さらに、活性化された水素が、有機金属化合物を構成するメチル基やエチル基等の炭化水素基の水素を分子として脱離させる効果を有する。それゆえ、感光体表面には、水素、酸素及び13族元素が三次元的な結合を構成する硬質膜からなる表面層3が形成される。
(導電性基体及び感光層)
本実施形態の感光体は、導電性基体上に形成された無機感光層または有機感光層のいずれかと、表面層と、を有する。感光層は、電荷発生層と電荷輸送層とが分離された機能分離型であってもよい。機能分離型である場合の構成としては、電荷発生層及び電荷輸送層は、電荷発生層が表面側であってもよいし、電荷輸送層が表面側であってもよい。無機感光層としては、アモルファスシリコンやアモルファスセレンなどが例として挙げられる。必要に応じて導電性基体と感光層との間に下引層を設けてもよい。また、前記のように表面層と感光層との間に、緩衝層などの中間層を設けてもよい。
導電性基体としては、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス、亜鉛、ニッケル等の金属ドラム;シート、紙、プラスチック、ガラス等の基材上にアルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケル−クロム、ステンレス鋼、銅−インジウム等の金属を蒸着したもの;酸化インジウム、酸化スズ等の導電性金属化合物を上記基材に蒸着したもの;金属箔を上記基材にラミネートしたもの;カーボンブラック、酸化インジウム、酸化スズ−酸化アンチモン粉、金属粉、ヨウ化銅等を結着樹脂に分散し、上記基材に塗布することによって導電処理したもの等が挙げられる。また、導電性基体の形状は、ドラム状、シート状、プレート状のいずれであってもよい。
また、導電性基体として金属製パイプ基体を用いる場合、該金属製パイプ基体の表面は素管のままのものであってもよいが、予め表面処理により基体表面を粗面化しておくことも可能である。かかる粗面化により、露光光源としてレーザービーム等の可干渉光源を用いた場合に、感光体内部で発生し得る干渉光による木目状の濃度ムラを防止することができる。表面処理の方法としては、鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウェットホーニング等が挙げられる。
特に、感光層との密着性向上や成膜性向上の点で、以下のようにアルミニウム基体の表面に陽極酸化処理を施したものを導電性基体として用いることが好ましい。
以下、表面に陽極酸化処理を施した導電性基体の製造方法について説明する。
まず、基体として純アルミ系あるいはアルミニウム合金(例えば、JIS1000番台、3000番台、6000番台のアルミニウムあるいはアルミニウム合金)を用意する。次に陽極酸化処理を行う。陽極酸化処理は、クロム酸、硫酸、蓚酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸などの酸性浴中において行うが、硫酸浴による処理がよく用いられる。陽極酸化処理は、例えば、硫酸濃度:10質量%以上20質量%以下、浴温:5℃以上25℃以下、電流密度:1A/dm以上4A/dm以下、電解電圧:5V以上30V以下、処理時間:5分以上60分以下程度の条件で行われるが、これに限定するものではない。
このようにしてアルミニウム基体上に成膜された陽極酸化皮膜は、多孔質であり、又絶縁性が高く、表面が非常に不安定であるため、皮膜形成後にその物性値が経時的に変化しやすくなっている。この物性値の変化を防止するため、陽極酸化皮膜を更に封孔処理することが行われる。封孔処理の方法には、フッ化ニッケルや酢酸ニッケルを含有する水溶液に陽極酸化皮膜を浸漬する方法、陽極酸化皮膜を沸騰水に浸漬する方法、加圧水蒸気により処理する方法などがある。これらの方法のうち、酢酸ニッケルを含有する水溶液に浸漬する方法が最もよく用いられる。
このようにして封孔処理が行われた陽極酸化皮膜の表面には、封孔処理により付着した金属塩等が過剰に残留している。このような金属塩等が基体の陽極酸化皮膜上に過剰に残存すると、陽極酸化皮膜上に形成する塗膜の品質に悪影響を与えるだけでなく、一般的に低抵抗成分が残ってしまう傾向にあるため、この基体を感光体に用いて画像を形成した場合に地汚れの発生原因になる。
そこで、封孔処理に引き続き、封孔処理により付着した金属塩等を除去するために陽極酸化皮膜の洗浄処理が行われる。洗浄処理は純水により基体の洗浄を1回行うことでも構わないが、多段階の洗浄工程により基体の洗浄を行うのが好ましい。この際、最終の洗浄工程における洗浄液としては、可能な限りきれいな(脱イオンされた)洗浄液が用いられる。また、多段階の洗浄工程のうち、いずれか1工程において、ブラシ等の接触部材を用いた物理的なこすり洗浄を施すことがよりさらに好ましい。
以上のようにして形成される導電性基体表面の陽極酸化皮膜の膜厚は、3μm以上15μm以下程度の範囲内であることが好ましい。陽極酸化皮膜上には多孔質陽極酸化膜のポーラスな形状の極表面に沿ってバリア層といわれる層が存在する。バリア層の膜厚は、本発明の感光体においては1nm以上100nm以下であることが好ましい。以上のようにして、陽極酸化処理された導電性基体1を得ることができる。
このように得られた導電性基体は、陽極酸化処理により基体上に成膜された陽極酸化皮膜が高いキャリアブロッキング性を有している。そのため、この導電性基体を用いた感光体を画像形成装置に装着して反転現像(ネガ・ポジ現像)を行う場合に発生する点欠陥(黒ポチ、地汚れ)を防止することができるとともに、接触帯電時に生じやすい接触帯電器からの電流リーク現象を防止することができる。また、陽極酸化皮膜に封孔処理を施すことにより、陽極酸化皮膜の作製後における物性値の経時変化を防止することができる。また、封孔処理後に導電性基体の洗浄を行うことにより、封孔処理により導電性基体表面に付着した金属塩等を除去することができ、この導電性基体を用いて作製した感光体を備えた画像形成装置により画像を形成した場合に地汚れの発生を十分に防止することができる。
次に、導電性基体上に設けられる感光層について、まず、感光層がアモルファスシリコン感光体である場合の好ましい構成について、その概要を説明する。
アモルファスシリコン感光体は、正帯電用でも負帯電用の感光体でも良い。導電性基板の上に電荷注入阻止や接着性向上のための下引き層を形成し、ついで光導電層と表面層を設けたものが使用できる。表面層は中間層として、感光層の表面に中間層設けた下引層を設け、さらにその表面に表面層を設けても良いし、感光層の表面に直に表面層を設けても良い。
また、感光層の最上層(表面層側の層)は、p型アモルファスシリコンであってもよくn型アモルファスシリコンであってもよく、感光層と表面層との間に中間層(電荷注入阻止層)として、例えば、Si(1−X):H,Si(1−X):H,Si(1−X):H(0≦X≦0.99)、アモルファスカーボン層が形成されていてもよい。
一方、前記感光層が有機感光体である場合について以下に詳細に説明する。この場合の構成としては、主として電荷発生層及び電荷輸送層であるが、前記のように必要に応じて下引層や中間層が設けられる。
まず下引層を構成する材料としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂;ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物のほかに、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、シリコン原子などを含有する有機金属化合物などが挙げられる。
これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。これらの中でも、ジルコニウムもしくはシリコンを含有する有機金属化合物は、残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないため好ましく使用される。また、有機金属化合物は、これを単独または2種以上を混合したり、さらに上述の結着樹脂と混合して用いることが可能である。
有機シリコン化合物(シリコン原子を含有する有機金属化合物)としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらの中でも、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が好ましく使用される。
有機ジルコニウム化合物(ジルコニウムを含有する有機金属化合物)としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシドなどが挙げられる。
有機チタン化合物(チタンを含有する有機金属化合物)としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどが挙げられる。
有機アルミニウム化合物(アルミニウムを含有する有機金属化合物)としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
また、下引層を形成するための下引層形成用塗布液に用いる溶媒としては、公知の有機溶剤、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状あるいは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。また、これらの溶剤は単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。なお2種以上の溶媒を混合する場合に使用できる溶媒としては、混合溶媒として結着樹脂を溶かす事ができる溶媒であれば、いかなるものでも使用することができる。
下引層の形成は、まず、下引層用塗布剤および溶媒を分散及び混合して調合された下引層形成用塗布液を用意し、導電性基体表面に塗布することにより行う。下引層形成用塗布液の塗布方法としては、浸漬塗布法、リング塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いることができる。下引層を形成する場合には、その膜厚は0.1μm以上3μm以下となるように形成することが好ましい。下引層の膜厚をこのような膜厚範囲内とすることにより、電気的な障壁を過剰に強くすることなく減感及び繰り返しによる電位の上昇を防止することができる。
このようにして導電性基体上に下引層を形成することにより、下引層上に形成される層を塗布形成する際の濡れ性の改善を図ることができるとともに、電気的なブロッキング層としての機能を十分に果たすことができる。
上記により形成された下引層の表面粗さは、使用される露光用レーザ波長λの1/(4n)倍(但し、nは下引層よりも外周側に設けられる層の屈折率)以上1倍以下程度の範囲内の粗度を有するように調整することが可能である。表面粗さの調整は、下引層形成用塗布液中に樹脂粒子を添加することにより行われる。これにより下引層の表面粗さを調整して作製した感光体を画像形成装置に用いた場合に、レーザ光源による干渉縞像をより十分に防止することができる。
なお、樹脂粒子としては、シリコーン樹脂粒子、架橋型PMMA樹脂粒子等を用いることができる。また、表面粗さの調整のために下引層表面を研磨することもできる。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウェットホーニング、研削処理等を用いることができる。なお、正帯電構成の画像形成装置に用いられる感光体では、レーザ入射光は感光体の極表面近傍で吸収され、さらに感光層中で散乱されるため、下引層の表面粗さの調整は強くは必要とされない。
また、下引層形成用塗布液に、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加物を加えることも好ましい。添加物としては、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物などの電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。
ここで用いられるシランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ジルコニウムキレート化合物の具体例としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシドなどが挙げられる。
チタニウムキレート化合物の具体例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどが挙げられる。
アルミニウムキレート化合物の具体例としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
これらの添加物は、単独で用いることもできるが、複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることもできる。
また、上述した下引層形成用塗布液には、少なくとも1種の電子受容性物質を含有させておくことが好ましい。電子受容性物質の具体例としては、無水琥珀酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸などが挙げられる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系や、Cl,CN,NO等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体がより好ましく用いられる。これにより、感光層における光感度の向上や残留電位の低減を図るとともに、繰り返し使用した場合の光感度の劣化を低減することができ、下引層に電子受容性物質を含む感光体を備えた画像形成装置により形成したトナー像の濃度ムラを十分に防止することができる。
また、上述した下引層用塗布剤の代わりに下記のような分散型下引層用塗布剤を用いることも好ましい。これにより、適度に下引層の抵抗値を調整することにより残留電荷の蓄積を防ぐことができるとともに、下引層の膜厚をより厚くすることが可能となるため感光体の耐リーク性、特に接触帯電時のリークの防止を図ることができる。
この分散型下引層用塗布剤としては、アルミニウム、銅、ニッケル、銀などの金属粉体や、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛などの導電性金属酸化物や、カーボンファイバ、カーボンブラック、グラファイト粉末などの導電性物質等を結着樹脂に分散したものが挙げられる。導電性金属酸化物としては、平均1次粒径0.5μm以下の金属酸化物微粒子が好ましく用いられる。平均1次粒径が大きすぎる場合には局部的な導電路形成を起こしやすく、電流のリークが発生しやすく、その結果かぶりの発生や帯電器からの大電流のリークが生じる場合がある。下引層はリーク耐性の向上のために適切な抵抗値に調整されることが必要である。そのため、上述の金属酸化物微粒子は、10Ω・cm以上1011Ω・cm以下程度の粉体抵抗を有することが好ましい。
なお、上記範囲の下限よりも金属酸化物微粒子の抵抗値が低いと十分なリーク耐性が得られず、この範囲の上限よりも高いと残留電位上昇を引き起こす場合ある。従って、中でも上記の範囲内の抵抗値を有する酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物微粒子がより好ましく用いられる。また、金属酸化物微粒子は2種以上混合して用いることもできる。さらに、金属酸化物微粒子にカップリング剤による表面処理を行うことで、粉体の抵抗を制御することができる。この際使用可能なカップリング剤としては上述の下引層形成用塗布液と同様の材料を用いることができる。また、これらのカップリング剤は2種以上を混合して用いることもできる。
この金属酸化物微粒子の表面処理においては、公知の方法であればいかなる方法でも使用可能であるが、乾式法あるいは湿式法を用いることができる。
乾式法を用いる場合においては、まず、金属酸化物微粒子を加熱乾燥して表面吸着水を除去する。表面吸着水を除去することによって、金属酸化物微粒子表面に均一にカップリング剤を吸着させることができる。次に、金属酸化物微粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接あるいは有機溶媒または水に溶解させたカップリング剤を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって均一に処理される。カップリング剤を添下あるいは噴霧する際には、50℃以上の温度で行われることが好ましい。カップリング剤を添加あるいは噴霧した後、さらに100℃以上で焼き付けを行うことが好ましい。焼き付けの効果によりカップリング剤を硬化させ金属酸化物微粒子と堅固な化学反応を起こさせることができる。焼き付けは、所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。
湿式法を用いる場合においては、乾式法と同様に、まず、金属酸化物微粒子の表面吸着水を除去する。この表面吸着水を除去する方法として、乾式法と同様の加熱乾燥の他に、表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法等が実施できる。次に、金属酸化物微粒子を溶剤中に攪拌、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミルなどを用いて分散し、カップリング剤溶液を添加し攪拌あるいは分散したのち、溶剤除去することで均一に処理される。溶剤除去した後、さらに100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。
金属酸化物微粒子に対する表面処理剤の量は所望の電子写真特性が得られる量であることが必須である。電子写真特性は表面処理後に金属酸化物微粒子に表面処理剤が付着している量によって影響される。シランカップリング剤の場合、その付着量は蛍光X線分析により測定される(シランカップリング剤に起因する)Si強度と、使用されている金属酸化物の主たる金属元素強度とから求められる。この蛍光X線分析により測定されるSi強度は用いられる金属酸化物の主たる金属元素強度の1.0×10−5倍以上1.0×10−3倍以下であることが好ましい。この範囲を下回った場合、かぶりなどの画質欠陥が発生しやすく、この範囲を上回った場合、残留電位の上昇による濃度低下が発生しやすくなる場合がある。
分散型下引層用塗布剤に含まれる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などの公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂などが挙げられる。
中でも下引層上に形成される層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが好ましく用いられる。分散型下引層形成用塗布液中の金属酸化物微粒子と結着樹脂との比率は所望する感光体特性を得られる範囲で任意に設定できる。
上述した方法により表面処理された金属酸化物微粒子を結着樹脂に分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が用いた方法が挙げられる。さらに、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
この分散型下引層用塗布剤により下引層を形成する方法は、上述した下引層用塗布剤を用いて下引層を形成する方法と同様に行うことができる。
次に、感光層について、電荷輸送層と電荷発生層とに分けてこの順に以下に説明する。
電荷輸送層に用いられる電荷輸送材料としては、下記に示すものが例示できる。即ち、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリンなどのピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(p−メチル)フェニルアミン、N,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、ジベンジルアニリン、9,9−ジメチル−N,N−ジ(p−トリル)フルオレノン−2−アミンなどの芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミンなどの芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジンなどの1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、[p−(ジエチルアミノ)フェニル](1−ナフチル)フェニルヒドラゾン、1−ピレンジフェニルヒドラゾン、9−エチル−3−[(2メチル−1−インドリニルイミノ)メチル]カルバゾール、4−(2−メチル−1−インドリニルイミノメチル)トリフェニルアミン、9−メチル−3−カルバゾールジフェニルヒドラゾン、1,1−ジ−(4,4’−メトキシフェニル)アクリルアルデヒドジフェニルヒドラゾン、β,β−ビス(メトキシフェニル)ビニルジフェニルヒドラゾンなどのヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリンなどのキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)−ベンゾフランなどのベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリンなどのα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体などの正孔輸送物質が用いられる。あるいは、上記化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体などが挙げられる。これらの電荷輸送材料は、単独又は2種以上を組み合せて使用できる。
電荷輸送層に用いられる結着樹脂には任意のものを用いることができるが、結着樹脂は、特に電荷輸送材料と相溶性を有し適当な強度を有するものであることが望ましい。
この結着樹脂の例として、ビスフェノールAやビスフェノールZ,ビスフェノールC,ビスフェノールTPなどからなる各種のポリカーボネート樹脂やその共重合体、ポリアリレート樹脂やその共重合体、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は単独あるいは2種以上の混合物として使用することができる。
電荷輸送層に用いられる結着樹脂の分子量は、感光層の膜厚や溶剤などの成膜条件によって適宜選択されるが、通常は粘度平均分子量で3000以上30万以下が好ましく、2万以上20万以下がより好ましい。
また、前記電荷輸送材料と上記結着樹脂との配合比は10:1〜1:5の範囲内が好ましい。
電荷輸送層及び/または後述する電荷発生層は、画像形成装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは光、熱による感光体の劣化を防止する目的で、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤などの添加剤を含んでもよい。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン又はそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。
酸化防止剤の具体的な化合物例として、フェノール系酸化防止剤では、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチル−フェノール)、4,4’−チオ−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート]−メタン、3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチル エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、3−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリルなどが挙げられる。
ヒンダードアミン系化合物では、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,3,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6,−ペンタメチル−4ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物などが挙げられる。
有機イオウ系酸化防止剤では、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンズイミダゾールなどが挙げられる。
有機燐系酸化防止剤では、トリスノニルフェニルフォスフィート、トリフェニルフォスフィート、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−フォスフィートなどが挙げられる。
なお、有機硫黄系および有機燐系酸化防止剤は2次酸化防止剤と言われるもので、フェノール系あるいはアミン系などの1次酸化防止剤と併用することにより酸化防止効果を相乗的により高めることができる。
光安定剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ジチオカルバメート系、テトラメチルピペリジン系などの誘導体が挙げられる。
ベンゾフェノン系光安定剤として、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
ベンゾトリアゾール系光安定剤として、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラ−ヒドロフタルイミド−メチル)−5’−メチルフェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)−ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
その他の光安定剤としては、2,4,ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ニッケルジブチル−ジチオカルバメートなどがある。
電荷輸送層は、上記に示した電荷輸送材料及び結着樹脂を適当な溶媒に溶解させた溶液を塗布し、乾燥させることによって形成することができる。電荷輸送層形成用塗布液の調整に用いられる溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素系、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状あるいは直鎖状エーテル等、またはこれ等の混合溶媒を用いることができる。
また電荷輸送層形成用塗布液には、塗布形成される塗膜の平滑性向上のためのレベリング剤としてシリコーンオイルを微量添加することもできる。
電荷輸送層形成用塗布液の塗布は、感光体の形状や用途に応じて、浸漬塗布法、リング塗布法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、ローラー塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法などの塗布法を用いて行うことが出来る。乾燥は、室温での指触乾燥の後に加熱乾燥することが好ましい。加熱乾燥は、30℃以上200℃以下の温度域で5分以上2時間以下の範囲の時間で行うことが望ましい。
なお、電荷輸送層の膜厚は一般に5μm以上50μm以下であることが好ましく、10μm以上40μm以下であることがより好ましい。
電荷発生層は、電荷発生材料を真空蒸着法により蒸着させて形成するか、有機溶剤及び結着樹脂を含む溶液を塗布することにより形成される。
電荷発生材料としては、非晶質セレン、結晶性セレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、その他のセレン化合物;セレン合金、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機系光導電体;又はこれらを色素増感したもの、無金属フタロシアニン,チタニルフタロシアニン,銅フタロシアニン,錫フタロシアニン,ガリウムフタロシアニンなどの各種フタロシアニン化合物;スクエアリウム系、アントアントロン系、ペリレン系、アゾ系、アントラキノン系、ピレン系、ピリリウム塩、チアピリリウム塩等の各種有機顔料;又は染料が用いられる。
また、これらの有機顔料は一般に数種の結晶型を有しており、特にフタロシアニン化合物ではα型、β型などをはじめとしてさまざまな結晶型が知られているが、目的にあった感度その他の特性が得られる顔料であるならば、これらのいずれの結晶型でも用いることが可能である。
なお、上述した電荷発生材料の中でも、フタロシアニン化合物が好ましい。この場合、感光層に光が照射されると、感光層に含まれるフタロシアニン化合物がフォトンを吸収してキャリアを発生させる。このとき、フタロシアニン化合物は、高い量子効率を有するため、吸収したフォトンを効率よく吸収してキャリアを発生させることができる。
更にフタロシアニン化合物の中でも、下記(1)〜(3)に示すようなフタロシアニンがより好ましい。すなわち、
(1)電荷発生材料としてCuKα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも7.6°,10.0°,25.2°,28.0°の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン。
(2)電荷発生材料としてCuKα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも7.3°,16.5°,25.4°,28.1°の位置に回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン、
(3)電荷発生材料としてCuKα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも9.5°,24.2°,27.3°の位置に回折ピークを有するチタニルフタロシアニン。
これらのフタロシアニン化合物は、特に、光感度が高いだけでなく、その光感度の安定性も高いため、これらフタロシアニン化合物を含む感光層を有する感光体は、高速な画像形成及び繰り返し再現性が要求されるカラー画像形成装置の感光体として好適である。
なお、結晶の形状や測定方法によりこれらのピーク強度や位置が微妙にこれらの値から外れることも有るが、X線回折パターンが基本的に一致しているものであれば同じ結晶型であると判断できる。
電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、以下のものを例示することができる。即ちビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプなどのポリカーボネート樹脂およびその共重合体、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾールなどである。
これらの結着樹脂は、単独であるいは2種以上混合して用いることが可能である。電荷発生材料と結着樹脂との配合比(電荷発生材料:結着樹脂)は、質量比で、10:1乃至1:10の範囲が望ましい。また電荷発生層の厚みは、一般には0.01μm以上5μm以下であることが好ましく0.05μm以上2.0μm以下であることがより好ましい。
また電荷発生層は、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として少なくとも1種の電子受容性物質を含有してもよい。電荷発生層に用いられる電子受容性物質としては、例えば無水琥珀酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸などを挙げることができる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系や、Cl,CN,NO等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特によい。
電荷発生材料を樹脂中に分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、ダイノーミル、サンドミル、コロイドミルなどの方法を用いることができる。
電荷発生層を形成する為の塗布液の溶媒として公知の有機溶剤、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状あるいは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。
また、これらの溶媒は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。2種類以上の溶媒を混合して用いる場合には、混合溶媒として結着樹脂を溶かす事ができる溶媒であれば使用することができる。但し、感光層が、導電性基体側から、電荷輸送層2Bと電荷発生層とをこの順に形成した層構成を有する場合に、浸漬塗布のように下層を溶解しやすい塗布方法を利用して電荷発生層を形成する際には、電荷輸送層等の下層を溶解しないような溶媒を用いることが望ましい。また、比較的下層の侵食性の少ないスプレー塗布法やリング塗布法を利用して電荷発生層を形成する場合には溶媒の選択範囲を広げることができる。
前記中間層としては、例えば、帯電器により感光体表面を帯電させる際に、帯電電荷が感光体表面から対抗電極である感光体の導電性基体にまで注入して帯電電位が得られなくなることを防止するために必要に応じて表面層と電荷発生層との間に電荷注入阻止層を形成することができる。
電荷注入阻止層の材料としては上記に列挙したようなシランカップリング剤、チタンカップリング剤、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物、その他の有機金属化合物、ポリエステル、ポリビニルブチラールなどの汎用樹脂を用いることができる。電荷注入阻止層の膜厚は0.001μm以上5μm以下程度で成膜性及びキャリアブロッキング性を考慮して適宜設定される。
<プロセスカートリッジ及び画像形成装置>
次に、本発明の感光体を用いたプロセスカートリッジおよび画像形成装置について実施形態により説明する。
図5に示すように、本実施形態の画像形成装置82は、所定方向(図5中、矢印D方向)に回転する電子写真感光体80を備えている。電子写真感光体80の近傍には、電子写真感光体80の回転方向に沿って、帯電装置(帯電手段)84、露光装置(露光手段)86、現像装置(現像手段)88、転写装置(転写手段)89、除電装置81、及びクリーニング部材87が設けられている。
帯電装置84は、電子写真感光体80の表面を所定電位に帯電する。露光装置86は、帯電装置84によって帯電された電子写真感光体80の表面を露光することにより、画像データに応じた静電潜像を形成する。現像装置88は、静電潜像を現像するためのトナーを含む現像剤を予め貯留すると共に、貯留された現像剤を電子写真感光体80表面に供給することにより静電潜像を現像してトナー像を形成する。
転写装置89は、電子写真感光体80上に形成されたトナー像を、電子写真感光体80との間で記録媒体83を挟持搬送することにより、記録媒体83に転写する。記録媒体83に転写されたトナー像は、図示を省略する定着装置によって記録媒体83表面に定着される。
除電装置81は、電子写真感光体80表面に付着した帯電されている付着物を除電する。クリーニング部材87は、電子写真感光体80の表面に接触するように設けられ、電子写真感光体80表面との摩擦力によって、表面の付着物を除去する。
なお、本実施形態の画像形成装置82は、各色のトナーに対応して電子写真感光体80を複数有するいわゆるタンデム機であってもよい。また、トナー像の記録媒体83転写は、電子写真感光体80表面に形成されたトナー像を中間転写体に転写した後に記録媒体に転写する、中間転写方式であってもよい。
本実施形態のプロセスカートリッジは、画像形成装置82本体に対して着脱可能に設けられ、少なくとも帯電装置84と、現像装置88と、クリーニング部材87と、除電装置81からなる群より選択される少なくとも一つとを一体に有して構成されている。
本実施形態において、クリーニング手段としては特に限定されるものではないが、クリーニングブレードであることが好ましい。クリーニングブレードは、他のクリーニング手段と比べると感光体表面を傷つけ、また、磨耗を促進しやすいものである。
しかし、本実施形態のプロセスカートリッジや、本実施形態の画像形成装置82においては、電子写真プロセスにおいて繰り返し使用したときの残留電位上昇を抑制し、耐磨耗性を向上させるに十分な硬度とその膜厚を有する表面層を有する本発明の電子写真感光体を用いているため、長期に渡る使用においても、電子写真感光体表面の傷の発生や磨耗を抑制し、良好な画像を得ることができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
<実施例1>
(電子写真感光体の作製)
−下引層の形成−
酸化亜鉛(平均粒子径:70nm、テイカ社製試作品)100質量部をトルエン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(商品名:KBM603、信越化学社製)1.5質量部を添加して2時間攪拌した。その後、減圧蒸留によりトルエンを留去し、150℃で2時間焼き付けを行った。
このようにして表面処理を施した酸化亜鉛60質量部、硬化剤(ブロック化イソシアネート、商品名:スミジュールBL3175、住友バイエルンウレタン社製)15質量部及びブチラール樹脂(商品名:BM−1、積水化学社製)15質量部をメチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液38質量部に、メチルエチルケトン25質量部を混合して被処理液を得た。
次に、水平型メディアミル分散機(KDL−PILOT型、ダイノーミル、シンマルエンタープライゼス社製)を用いて以下の手順で分散処理を行った。分散機のシリンダー及び撹拌ミルはジルコニアを主成分としたセラミックスで構成されている。このシリンダーに直径1mmのガラスビーズ(ハイビーD20、株式会社オハラ製)をかさ充填率80%で投入し、攪拌ミルの周速を8m/分、被処理液の流量を1000mL/分として、循環方式により分散処理を行った。被処理液の送液にはマグネットギヤポンプを用いた。
上記分散処理において、所定時間経過後に被処理液の一部をサンプリングし、成膜時の透過率を測定した。すなわち、被処理液をガラスプレート上に膜厚20μmとなるように塗布し、150℃で2時間の硬化処理を行って塗膜を形成させた後、分光光度計(U−2000、日立社製)を用いて波長950nmの透過率を求めた。そして、この透過率(膜厚20nmに対する値)が70%を超えた時点で分散処理を終了した。
このようにして得られた分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質量部及びシリコーンオイル(商品名:SH29PA、東レダウコーニングシリコーン社製)0.01質量部を添加し、下引層用塗布液を調製した。この塗布液を浸漬塗布法にて直径84mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基体上に塗布し、160℃、100分の乾燥硬化を行い、膜厚20μmの下引層を形成させた。
−感光層の形成−
次に、下引層上に感光層を形成した。まず、電荷発生物質として、CuKα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.4゜,16.6゜,25.5゜,28.3゜の位置に回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン15質量部、結着樹脂として塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(商品名:VMCH、日本ユニカー社製)10質量部、及びn−ブチルアルコール300質量部からなる混合物を、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散処理し、電荷発生層用塗布液を得た。得られた分散液を下引層上に浸漬塗布し、乾燥させて、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成させた。
さらに、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン4質量部及びビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:40000)6質量部をクロルベンゼン80質量部に加えて溶解して電荷輸送層用塗布液を得た。この塗布液を電荷発生層上に塗布し、130℃、40分の乾燥を行うことにより膜厚25μmの電荷輸送層を形成させ、有機感光体(ノンコート感光体)を得た。
−表面層の形成−
続いて、ノンコート感光体上にプラズマCVDにより表面層の形成を行った。ノンコート感光体に参照試料作製のためのSi基板(5mm×10mm)を粘着テープで貼り付け、図4に示すプラズマCVD装置に導入し、真空チャンバー32内を、圧力が1×10−2Paとなるまで真空排気した。次に、ガス供給管から、マスフローコントローラー36を介して真空チャンバー32に、水素ガス200sccm、He希釈酸素(4%)5sccm、及び水素希釈トリメチルガリウム(約10%)5sccmを供給すると共にコンダクタンスバルブを調整することにより、真空チャンバー32内の圧力を20Paとし、高周波電源58及びマッチングボックス56により、13.56MHzのラジオ波を出力80Wにセットし、チューナーでマッチングを取り放電電極54から放電を行った。このときの反射波は0Wであった。この状態で、73分間、20rpmの速度で回転させながら成膜し表面層付きの感光体を得た。なお、この水素希釈トリメチルガリウムガスの供給は、0℃に保たれたトリメチルガリウムに、水素をキャリアガスとしてバブリングすることによって行った。貼り付けていたサーモテープの色から成膜時の温度は約40℃以下であることがわかった。得られた感光体を温度20℃の環境で24時間放置した。
−表面層の分析、評価−
前記Si参照試料を癖開した断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、膜厚は0.31μmであった。
また、Si参照試料に形成された膜の組成分析を、ラザフォードバックスキャッタリング(RBS)とハイドロジェンフォワードスキャッタリング(HFS)により行ったところ、Ga:36原子%、O:44原子%、H:20原子%であり(3元素の構成比の和:1.0)、酸素とガリウムの元素組成比(O/Ga)は1.22であった。
(電子写真感光体の評価)
−電位特性−
次に、この保護層を設けた電子写真感光体の電位特性を評価した。まず、上述の表面層形成前のノンコート感光体と、表面層を設けた感光体とに対して、露光用の光(光源:半導体レーザー、波長:780nm、出力:5mW)を、スコロトロン帯電器により−700Vに帯電させた状態で40rpmで回転させている感光体の表面に走査しながら照射した。
その後、感光体の電位を表面電位計(モデル344、トレック・ジャパン社製)を使用し、プローブとしては測定領域幅10mmのプローブ(モデル555P−1、トレック・ジャパン社製)を用い、このプローブを感光体との距離2mmに設定し、ドラム軸方向及び回転方向に走査しながら測定することによってマッピングし、感光体における電位状態(残留電位)を調べた。その結果、前記ノンコート感光体については電位が−20Vであるのに対し、表面層を設けた感光体では−27Vで良好なレベルであることがわかった。
さらに、前記条件での帯電、露光を100回繰り返し、同様にノンコート感光体及び表面層を設けた感光体について残留電位を測定した。その結果、ノンコート感光体で−22Vであるのに対し、表面層を設けた感光体では−30Vであった。
−画像特性−
次に、この表面層を形成した電子写真感光体を、富士ゼロックス社製DocuCenter Colar 500用のプロセスカートリッジに感光体として搭載し、これをDocuCenter Colar 500に取り付けて、300dpi、面積被覆率30%の画像を、A4サイズの用紙(富士ゼロックスオフィスサプライ社製、商品名P紙)に形成するプリントテストを実施した。
上記条件で10000枚出力し、10000枚目の出力画像サンプルについてその画質を以下の基準により評価した。
○:画像濃度、ドット再現とも異常が見られない。
△:画像濃度低下あるいは一部でドットの欠け、縦スジが見られるが、問題とならないレベル。
×:かなりの画像濃度低下あるいは縦すじが見られ、問題となるレベル。
結果をまとめて表1に示す。
<実施例2>
実施例1の電子写真感光体の作製において、表面層の形成時の酸素供給量を8.5sccmとし、成膜時間を65分とした以外は実施例1と同様にして、表面層付きの電子写真感光体を得た。
この感光体について、実施例1と同様にして断面のSEM観察を行ったところ、膜厚は0.29μmであった。また、同様にして元素分析を行ったところ、元素組成は、Ga:35原子%、O:48原子%、H:17原子%であり(3元素の構成比の和:1.0)、酸素とガリウムの元素組成比(O/Ga)は1.37であった。
上記感光体を用いて、実施例1と同様にして電子写真特性の評価を行った。結果をまとめて表1に示す。
<実施例3>
実施例1の電子写真感光体の作製において、表面層の形成時の酸素供給量を20sccmとし、成膜時間を60分とした以外は実施例1と同様にして、表面層付きの電子写真感光体を得た。
この感光体について、実施例1と同様にして断面のSEM観察を行ったところ、膜厚は0.30μmであった。また、同様にして元素分析を行ったところ、元素組成は、Ga:35原子%、O:50原子%、H:15原子%であり(3元素の構成比の和:1.0)、酸素とガリウムの元素組成比(O/Ga)は1.43であった。
上記感光体を用いて、実施例1と同様にして電子写真特性の評価を行った。結果をまとめて表1に示す。
<実施例4>
実施例3の電子写真感光体の作製において、成膜時間を30分とした以外は実施例3と同様にして、表面層付きの電子写真感光体を得た。
この感光体について、実施例1と同様にして断面のSEM観察を行ったところ、膜厚は0.16μmであった。また、同様にして元素分析を行ったところ、元素組成は、Ga:35原子%、O:50原子%、H:15原子%であり(3元素の構成比の和:1.0)、酸素とガリウムの元素組成比(O/Ga)は1.43であった。
上記感光体を用いて、実施例1と同様にして電子写真特性の評価を行った。結果をまとめて表1に示す。
<実施例5>
実施例1の電子写真感光体の作製において、表面層の形成時の成膜時間を40分とした以外は実施例1と同様にして、表面層付きの電子写真感光体を得た。
この感光体について、実施例1と同様にして断面のSEM観察を行ったところ、膜厚は0.18μmであった。また、同様にして元素分析を行ったところ、元素組成は、Ga:36原子%、O:44原子%、H:20原子%であり(3元素の構成比の和:1.0)、酸素とガリウムの元素組成比(O/Ga)は1.22であった。
上記感光体を用いて、実施例1と同様にして電子写真特性の評価を行った。結果をまとめて表1に示す。
<実施例6>
実施例1の電子写真感光体の作製において、表面層の形成時の成膜時間を480分とした以外は実施例1と同様にして、表面層付きの電子写真感光体を得た。
この感光体について、実施例1と同様にして断面のSEM観察を行ったところ、膜厚は2.1μmであった。また、同様にして元素分析を行ったところ、元素組成は、Ga:36原子%、O:44原子%、H:20原子%であり(3元素の構成比の和:1.0)、酸素とガリウムの元素組成比(O/Ga)は1.22であった。
上記感光体を用いて、実施例1と同様にして画像特性の評価を行ったところ、ハーフトーン画像が出力できなかった。そこでDocuCenter Colar 500の露光用レーザーの光量を5倍にしたところ、正常なハーフトーン画像が得られた。そこで、露光用レーザーの光量5倍で画像特性評価を行った。また、電位特性における露光用の光も5倍(25mW)として評価を行った。
結果をまとめて表1に示す。
<実施例7>
厚さ1mmのAlからなる円筒基体を、円筒基板用プラズマCVD装置に設置して、n型のSiN0.5からなる膜厚3μmの電荷注入阻止層と、膜厚20μmのi型のアモルファスシリコン感光層と、p型のSiCからなる膜厚0.5μmの電荷注入阻止表面層とをこの順に積層形成した負帯電型のアモルファスシリコン感光体を得た。この表面に、実施例1と同様の図4に示す構成を有する成膜装置を用い、実施例1と同一の条件で表面層を形成し、表面層を有するアモルファスシリコン感光体を得た。
また実施例1の評価において、感光体として上記表面層を有するアモルファスシリコン感光体を用い、表面電位を−400Vとし、波長650nmのレーザーを用いて露光量を調整した以外は、同様にして評価を行った。
表面層等の分析を含めて結果を表1に示す。
<比較例1>
実施例1の電子写真感光体の作製において、表面層の形成時の酸素供給量を3sccmとし、成膜時間を85分とした以外は実施例1と同様にして、表面層付きの電子写真感光体を得た。
この感光体について、実施例1と同様にして断面のSEM観察を行ったところ、膜厚は0.32μmであった。また、同様にして元素分析を行ったところ、元素組成は、Ga:38原子%、O:41原子%、H:21原子%であり(3元素の構成比の和:1.0)、酸素とガリウムの元素組成比(O/Ga)は1.08であった。
上記感光体を用いて、実施例1と同様にして電子写真特性の評価を行ったが、画像特性の評価において、ぼけた画像しか得られなかった。この感光体では静電潜像を維持できないため、電位特性と画像特性の評価結果は得られなかった。
結果をまとめて表1に示す。
<比較例2>
実施例1の電子写真感光体の作製において、表面層の形成時の真空チャンバーへの供給ガスを、水素ガス200sccm、He希釈酸素(4%)10sccm、窒素ガス50sccm,及び水素希釈トリメチルガリウム(約10%)5sccmとし、成膜時間を60分とした以外は実施例1と同様にして、表面層付きの電子写真感光体を得た。
この感光体について、実施例1と同様にして断面のSEM観察を行ったところ、膜厚は0.32μmであった。また、同様にして元素分析を行ったところ、元素組成は、Ga:33原子%、O:41原子%、H:20原子%であり(3元素の構成比の和:0.94)、酸素とガリウムの元素組成比(O/Ga)は1.24であった。
上記感光体を用いて、実施例1と同様にして電子写真特性の評価を行った。結果をまとめて表1に示す。
<比較例3>
実施例1の電子写真感光体の作製において、表面層の形成を以下のように行った。
ノンコート感光体を図4に示すプラズマCVD装置に導入し、真空チャンバー32内を、圧力が1×10−2Paとなるまで真空排気した。次に、ガス供給管から、マスフローコントローラー36を介して真空チャンバー32に、水素ガス500sccm及び窒素ガス500sccmを供給すると共にコンダクタンスバルブを調整することにより、真空チャンバー32内の圧力を40Paとし、高周波電源58及びマッチングボックス56により、13.56MHzのラジオ波を出力100Wにセットし、チューナーでマッチングを取り放電電極54から放電を行った。このときの反射波は0Wであった。
次に、ガス導入管64からシャワーノズル64Aを介して水素希釈トリメチルガリウムガスを、トリメチルガリウムガスが0.3sccmとなるように導入した。この状態で、20rpmの速度で回転させながら成膜し、膜厚が0.32μmの表面層付きの感光体を得た。なお、この水素希釈トリメチルガリウムガスの供給は、0℃に保たれたトリメチルガリウムに、水素をキャリアガスとしてバブリングすることによって行った。貼り付けていたサーモテープの色から成膜時の温度は約35℃であることがわかった。
得られた感光体を、温度25℃、相対湿度50%RHの環境で24時間放置して、自然酸化による酸化処理を実施した。
ノンコート感光体表面への成膜に際し、同時にSi基板に成膜し前記酸化処理した膜の赤外線吸収スペクトル測定を実施したところ、Ga−H結合、Ga−N結合およびN−H結合に起因するピークが確認され、表面層中には、ガリウムと窒素と水素とが含まれていることがわかった。
また、Si基板上に形成され酸化された膜の表面について、XPS(X線光電子分光法)により測定したところ、酸素が60原子%,Gaが40原子%であり、窒素は認められなかった。この結果に加えて、XPS測定による深さ方向の分解能は最表面数nm程度であることや、表面層全体が測定対象となる赤外線吸収スペクトルの結果から、少なくとも表面層の最表面は、酸素リッチ、窒素プアーな状態になっており、表面層膜厚方向に対する酸素原子の濃度が、電荷輸送層側に向かって減少(窒素原子の濃度が電荷輸送層側に向かって増加)していることがわかった。
上記感光体を用いて、実施例1と同様にして電子写真特性の評価を行った。結果をまとめて表1に示す。
Figure 2008268266
表1に示すように、表面層におけるガリウム、酸素及び水素の構成比を0.95以上とし、O/Ga比を1.1以上1.5以下の範囲とした実施例では、表面層を厚膜にしたにもかかわらず残留電位の上昇を抑制することができた。一方、表面層における酸素及び水素の構成比、O/Ga比の少なくともいずれかにおいて上記範囲を外れる比較例では、画質を維持しつつ残留電位上昇を抑えることはできなかった。
本発明の感光体の層構成の一例を示す模式断面図である。 本発明の感光体の層構成の他の一例を示す模式断面図である。 本発明の感光体の層構成の他の一例を示す模式断面図である。 本発明に用いる成膜装置の一例を示す概略模式図である。 本発明のプロセスカートリッジ及び画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
符号の説明
1 導電性基体
2、6 感光層
2A 電荷発生層
2B 電荷輸送層
3 表面層
4 下引層
5 中間層
30 成膜装置
32 真空チャンバー
34 ガス供給管
36 マスフローコントローラー
38 圧力調整器
40 ガス供給源
42 排気管
48 モータ
50 ノンコート感光体
54 放電電極
56 マッチングボックス
58 高周波電源
60 キャリアガス供給源
62 原料ガス供給源
64 ガス導入管
82 画像形成装置
84 帯電装置
86 露光装置
88 現像装置
89 転写装置

Claims (7)

  1. 導電性基体上に、感光層と表面層とをこの順に積層して構成され、
    前記表面層を構成する元素のうち、13族元素、酸素及び水素の全元素量に対する各構成比の和が0.95以上であり、かつ、前記酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が1.1以上1.5以下であることを特徴とする電子写真感光体。
  2. 前記酸素及び13族元素の元素組成比(酸素/13族元素)が、1.1以上1.4以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 前記表面層の膜厚が、0.2μm以上2.0μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体。
  4. 前記表面層が、プラズマCVDによって形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  5. 前記感光層が、有機感光層であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  6. 電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電する帯電手段、及び前記電子写真感光体表面に形成された静電潜像を少なくともトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段、及び前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段から選択される少なくとも1つを有し、
    前記電子写真感光体が、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子写真感光体であり、画像形成装置本体に対して着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
  7. 電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電する帯電手段と、該帯電手段により帯電された前記電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、該静電潜像を少なくともトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、該トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、を有し、
    前記電子写真感光体が、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
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