JP4654972B2 - 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
通常の有機感光体では、電荷輸送層の表面がオゾンにより酸化したり、表面に窒素酸化物が付着したりすることにより表面が低抵抗化した結果、画像ボケや画像抜けなどの画像欠陥が発生しやすい状態になるが、現在の電子写真システムの中では、画質欠陥の原因となる電荷輸送層の表面劣化部分が研磨されることによって除去され、常に新しい電荷輸送層表面が現れ、この上に画像形成を行うことにより正常な画像を提供できると考えられている。したがって、有機感光体の耐久性を向上させて表面が磨耗しなくなると、画像ボケなどの画像欠陥が発生しやすくなることとなり、耐久性と画質とはトレードオフの関係にあるとされる。
さらに、有機感光体の劣化は画像ボケのみならず、表面摩擦の増加によるクリーニング不良やクリーニング系の劣化など電子写真システム全体の信頼性に影響するものである。
このように、電子写真感光体の長寿命化高信頼性化への課題には、表面硬度を高くして耐磨耗性を向上させると同時に画像ボケや画像ながれが発生しにくいようにすることである。同時に表面は低摩擦であることが必要である。
例えば、有機感光層上に、触媒CVD法を利用してアモルファスシリコンカーバイド表面保護層を形成する方法(例えば、特許文献2参照)、さらに耐湿性や耐刷性を改善することを目的としてアモルファス炭素中に微量のガリウム原子を含有させる技術(例えば、特許文献3参照)、ダイヤモンド結合を有するアモルファス窒化炭素を用いる技術(例えば、特許文献4参照)が提案されている。
一方、高湿時の画像ボケなどの問題を解決するため、フッ素化したダイヤモンド状炭素膜(a−C:H,F)が提案されている(例えば、特許文献5、6参照)。しかしながら、フッ素による撥水性の効果を引き出すためにフッ素化したダイヤモンド状炭素膜(a−C:H,F)膜はもとのダイヤモンド状炭素膜と比較すると大幅に柔らかくなり、クリーニングにより磨耗してしまい耐久性が不十分となってしまうものであった。
すなわち、本発明は、表面の機械的耐久性や耐酸化性に優れ、ドラムヒータなどを使用しなくとも放電生成物の付着に起因する画像欠陥も抑制できると共に、感度にも優れ、さらに、これらの特性を経時的に高いレベルで維持することが容易な電子写真用感光体及びこれを用いたプロセスカートリッジ、並びに画像形成装置を提供することを課題とする。
より具体的には、従来撥水性のみを改善するために行われていたフッ素プラズマ処理では実現できなかった、感光体表面の硬質化及び撥水性向上、さらに低摩擦化を同時に実現することを課題とする。
<1> 導電性基体上に有機感光層を含む感光層を設けた電子写真感光体であって、
前記感光層の最表面が、テトラフルオロメタンと、窒素または窒素及び希ガスと、を含む気体のプラズマにより、表面処理されてなる電子写真感光体である。
前記電子写真感光体が、<1>に記載の電子写真感光体であるプロセスカートリッジである。
前記電子写真感光体が、<1>に記載の電子写真感光体である画像形成装置である。
<電子写真感光体>
本発明の電子写真感光体(以下、「感光体」という場合がある)は、導電性基体上に有機感光層を含む感光層を設けた電子写真感光体であって、前記感光層の最表面が、テトラフルオロメタンと、窒素または窒素及び希ガスと、を含む気体のプラズマにより、表面処理されてなることを特徴とする。
また、本発明における最表面は、塗布膜や堆積膜のような明確な界面を有する層ではなく、後述の顕微鏡写真で示すように、表面から一定の範囲において元素組成が変化している部分をいう。
テトラフルオロメタンのプラズマは、エッチング作用が強く重合膜を作らないことで知られている。しかしながら、テトラフルオロメタンのプラズマのみで表面処理した場合には、撥水性の改質層が形成されるが、この改質層は耐久性や接着性に乏しく、プリント中に表面改質層は磨耗してしまう。一方、窒素のプラズマのみで表面処理した場合には、改質層ができにくいだけでなく表面が親水性となってしまい、耐久性低下や画像劣化の原因となってしまう。
具体的には、まず、プラズマ中でテトラフルオロメタンとの混合によってプラズマ重合膜を作製するものは、硬度が不十分なため混入は避けることとした。テトラフルオロメタンと水素を含む化合物との混合ガスで処理を行った場合にはフッ化炭素重合物が生成してしまい。この膜は柔らかい膜であり感光体の表面層として適さない。例えば水素、メタンなど、水素を含む化合物との混合ガスを用いたプラズマにおいてはフッ化炭素膜などを生成してしまう。また、単体でもプラズマ重合膜を作製するテトラフルオロエチレンは本発明においては不適であるとした。
したがって、窒素や希ガスをテトラフルオロメタンと共に用いることによって、感光層最表面のテトラフルオロメタンからのフッ素の取り込みと、架橋による硬質化及び低エネルギー表面化とを達成できることがわかった。
なお、最表面の厚み方向における窒素元素の濃度分布は、均一でも不均一でもよい。
具体的には、例えば、日本電子社製JPS9010MXを用い、X線ソースにはMgKαを用い、10kV,20mAで照射した。光電子の測定は1eVのステップで行い、元素量としてはフッ素元素及び窒素元素は1sスペクトルを測定し、スペトクルの面積強度と感度因子とにより元素量を求めた。なお、測定前にArイオンエッチングを500Vで10s程度行った。
そして、前記窒素元素やフッ素元素含有量の表面処理後の増加量は、表面処理した感光体と表面処理していない感光体を基板から10×10mmの小片として切り出して、表面の前記XPS分析結果を比較することによって求めることができる。
本発明の感光体は、その構成が導電性基体上に有機感光層を含む感光層が設けられてなるものであれば特に限定されず、有機感光層の上下に必要に応じて下引層や表面層を設けてもよい。また、有機感光層は、2層以上であってもよく、更に、機能分離型であってもよい。以下、本発明の感光体の層構成の具体例について、図面を用いてより詳細に説明する。
図3は、本発明の感光体の層構成の他の例を示す模式断面図であり、図3中、6は感光層を表し、他は、図1、図2中に示したものと同様である。図3に示す感光体は、導電性基体1上に、有機感光層6が設けられた層構成を有し、有機感光層6は、図1や図2に示す電荷発生層2Aおよび電荷輸送層2Bの機能が一体となった層である。
そして、本発明においては有機感光層2、6と、必要に応じて設けられる下引層4や表面層5とを併せたものを感光層という。
感光層の表面処理に際しては、直流、交流、高周波、マイクロ波プラズマ等を用いることができる。装置は平行平板型電極や円筒型電極のプラズマCVD装置やリモートプラズマ装置などを用いることができる。以下、表面処理に用いる装置の図面を示しつつ具体例を挙げて説明する。
図4は、本発明の感光体の表面処理に用いる処理装置の一例を示す概略模式図であり、図4Aは、処理装置を側面から見た場合の模式断面図を表し、図4Bは、図4Aに示す処理装置のA1−A2間における模式断面図を表す。図4中、10は処理室、11は排気口、12は基体回転部、13は基体ホルダー、14は基体(導電性基体上に感光層を設けたもの)、15はガス導入部、16はシャワーノズル、17はプラズマ拡散部、18は高周波電力供給部、19は平板電極、20はガス導入管、21は高周波放電管部である。
このプラズマ発生装置は、高周波放電管部21と、高周波放電管部21内に配置され、放電面が排気口11側に設けられた平板電極19と、高周波放電管部21外に配置され、平板電極19の放電面と反対側の面に接続された高周波電力供給部18とから構成されたものである。なお、高周波放電管部21には、高周波放電管部21内にガスを供給するためのガス導入管20が接続されており、このガス導入管20のもう一方の端は、不図示の第1のガス供給源に接続されている。
図5中、22が高周波コイル、23が石英管を表し、20は、図4中に示すものと同様である。このプラズマ発生装置は、石英管23と、石英管23の外周面に沿って設けられた高周波コイル22とからなり、石英管23の一方の端は処理室10(図5中、不図示)と接続されている。また、石英管23のもう一方の端には、石英管23内にガスを導入するためのガス導入管20が接続されている。
また、処理室10内には、基体回転部12が設けられており、円筒状の基体14が、シャワーノズルの長手方向と基体14の軸方向とが略平行に対面するように基体ホルダー13を介して基体回転部12に取りつけられるようになっている。表面処理に際しては、基体回転部12が回転することによって、基体14を軸方向に回転させることができる。なお、基体14としては、予め感光層まで積層された感光体が用いられる。
次に、テトラフルオロメタンを、100%テトラフルオロメタンあるいは希ガスで希釈して、ガス導入管15、シャワーノズル16を介して処理室10に導入することによって、テトラフルオロメタンと窒素とを含む気体のプラズマを得ることができる。
また、窒素ガスに加えて希ガスを混合して用いると、例えば全体ガス流量と処理に用いられる窒素プラズマの量との制御などの幅を広げることができる。
放電による基体温度の上昇を避けたい場合には、基体14表面に当たる高エネルギーの気体流を調節することが効果的である。この場合、ガス流量や放電出力、圧力などの条件を所要温度となるように調整する。
また、異なる2種類のプラズマ発生装置を同一の圧力下で利用する場合、例えば、マイクロ波発振装置と高周波発振装置とを用いる場合、励起種の励起エネルギーを大きく変えることができ、表面処理による改質度の制御に有効である。
また、放電は大気圧近傍で行っても良い。ここで、該大気圧近傍とは70000〜110000Paの範囲を意味する。なおこの場合には、希ガスとしてHe、Arガスを主として用い放電を行うのが放電の安定化に重要である。
このような最表面に改質層を有する感光体は、透明且つ機械的強度に優れ、表面の撥水性やすべり性が高く低摩擦である。
なお、前記表面の水接触角は、接触角計(協和界面科学(株)製:CA−X)を用い、25℃、50%RHの環境下で、純水を円筒状芯体の各部表面に約3.1μl滴下し、15秒後の接触角を求めた。なお、測定は端部で2点測定し、これらの平均値を接触角とした。
次に、本発明の電子写真感光体を構成する導電性基体および感光層の詳細や、必要に応じて設けられる下引層や表面層の詳細について、本発明の電子写真感光体が機能分離型の有機感光層を有する有機感光体である場合(図1、2の構成)について説明する。
まず、基体として純アルミ系あるいはアルミニウム合金(例えば、JIS1000番台、3000番台、6000番台のアルミニウムあるいはアルミニウム合金)を用意する。次に陽極酸化処理を行う。陽極酸化処理は、クロム酸、硫酸、蓚酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸などの酸性浴中において行うが、硫酸浴による処理がよく用いられる。陽極酸化処理は、例えば、硫酸濃度:10〜20質量%、浴温:5〜25℃、電流密度:1〜4A/dm2、電解電圧:5〜30V、処理時間:5〜60分程度の条件で行われるが、これに限定するものではない。
下引層4を構成する材料としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂;ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物のほかに、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、シリコン原子などを含有する有機金属化合物などが挙げられる。
これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。これらの中でも、ジルコニウムもしくはシリコンを含有する有機金属化合物は、残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないため好ましく使用される。また、有機金属化合物は、これを単独または2種以上を混合したり、さらに上述の結着樹脂と混合して用いることが可能である。
なお、樹脂粒子としては、シリコーン樹脂粒子、架橋型PMMA樹脂粒子等を用いることができる。また、表面粗さの調整のために下引層表面を研磨することもできる。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウェットホーニング、研削処理等を用いることができる。なお、正帯電構成の画像形成装置に用いられる感光体では、レーザ入射光は感光体の極表面近傍で吸収され、さらに感光層中で散乱されるため、下引層の表面粗さの調整は強くは必要とされない。
乾式法を用いる場合においては、まず、金属酸化物微粒子を加熱乾燥して表面吸着水を除去する。表面吸着水を除去することによって、金属酸化物微粒子表面に均一にカップリング剤を吸着させることができる。次に、金属酸化物微粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接あるいは有機溶媒または水に溶解させたカップリング剤を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって均一に処理される。カップリング剤を添下あるいは噴霧する際には、50℃以上の温度で行われることが好ましい。カップリング剤を添加あるいは噴霧した後、さらに100℃以上で焼き付けを行うことが好ましい。焼き付けの効果によりカップリング剤を硬化させ金属酸化物微粒子と堅固な化学反応を起こさせることができる。焼き付けは、所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。
中でも下引層上に形成される層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが好ましく用いられる。分散型下引層形成用塗布液中の金属酸化物微粒子と結着樹脂との比率は所望する感光体特性を得られる範囲で任意に設定できる。
この分散型下引層用塗布剤により下引層を形成する方法は、上述した下引層用塗布剤を用いて下引層4を形成する方法と同様に行うことができる。
次に、有機感光層2について、電荷輸送層2Bと電荷発生層2Aとに分けて、この順に以下説明する。
電荷輸送層2Bに用いられる電荷輸送材料としては、下記に示すものが例示できる。即ち、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリンなどのピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(p−メチル)フェニルアミン、N,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、ジベンジルアニリン、9,9−ジメチル−N,N−ジ(p−トリル)フルオレノン−2−アミンなどの芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミンなどの芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジンなどの1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、[p−(ジエチルアミノ)フェニル](1−ナフチル)フェニルヒドラゾン、1−ピレンジフェニルヒドラゾン、9−エチル−3−[(2メチル−1−インドリニルイミノ)メチル]カルバゾール、4−(2−メチル−1−インドリニルイミノメチル)トリフェニルアミン、9−メチル−3−カルバゾールジフェニルヒドラゾン、1,1−ジ−(4,4’−メトキシフェニル)アクリルアルデヒドジフェニルヒドラゾン、β,β−ビス(メトキシフェニル)ビニルジフェニルヒドラゾンなどのヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリンなどのキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)−ベンゾフランなどのベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリンなどのα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体などの正孔輸送物質が用いられる。あるいは、上記化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体などが挙げられる。これらの電荷輸送材料は、単独又は2種以上を組み合せて使用できる。
これらの中では、本発明における表面処理による硬質化、撥水性向上等の効果がより有効に得られるという点で、ポリカーボネート樹脂が好ましい。
また、前記電荷輸送材料と上記結着樹脂との配合比は10:1〜1:5の範囲内が好ましい。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン又はそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。
有機燐系酸化防止剤では、トリスノニルフェニルフォスフィート、トリフェニルフォスフィート、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−フォスフィートなどが挙げられる。
ベンゾフェノン系光安定剤として、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
ベンゾトリアゾール系光安定剤として、2−(2’−ヒドロキシ−5’メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラ−ヒドロフタルイミド−メチル)−5’−メチルフェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル 5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロ ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)−ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
その他の光安定剤としては、2,4,ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ニッケルジブチル−ジチオカルバメートなどがある。
また電荷輸送層形成用塗布液には、塗布形成される塗膜の平滑性向上のためのレベリング剤としてシリコーンオイルを微量添加することもできる。
なお、電荷輸送層2Bの膜厚は一般に5〜50μmの範囲内であることが好ましく、10〜40μmの範囲であることがより好ましい。
また、これらの有機顔料は一般に数種の結晶型を有しており、特にフタロシアニン化合物ではα型、β型などをはじめとしてさまざまな結晶型が知られているが、目的にあった感度その他の特性が得られる顔料であるならば、これらのいずれの結晶型でも用いることが可能である。
(1)電荷発生材料としてCukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも7.6°,10.0°,25.2°,28.0°の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン。
(2)電荷発生材料としてCukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも7.3°,16.5°,25.4°,28.1°の位置に回折ピークを有するクロルガリウムフタロシアニン、
(3)電荷発生材料としてCukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも9.5°,24.2°,27.3°の位置に回折ピークを有するチタニルフタロシアニン。
電荷発生層2Aを形成する為の塗布液の溶媒として公知の有機溶剤、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状あるいは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。
電荷注入阻止層の材料としては上記に列挙したようなシランカップリング剤、チタンカップリング剤、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物、その他の有機金属化合物、ポリエステル、ポリビニルブチラールなどの汎用樹脂を用いることができる。電荷注入阻止層の膜厚は0.001〜5μm程度の範囲内で成膜性及びキャリアブロッキング性を考慮して適宜設定される。
次に、必要に応じて設けられる表面層について説明する。
本発明の感光体に適用可能な表面層5としては、架橋構造を有する樹脂を含むものであることが好ましい。架橋構造を有する樹脂としてはフェノール樹脂、ウレタン樹脂、シロキサン系樹脂が利用できるが、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂が好ましく、フェノール系樹脂が最も好ましい。
一般式(I)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基、Dは2価の基、R2は水素、アルキル基、置換あるいは未置換のアリール基、Qは加水分解性基を表わし、aは1〜3の整数、bは1〜4の整数を表わす。
なお、一般式(I)中のDで示される2価の基としては、−(CH2)n−基を必ず含み、これに−COO−、−O−、−CH=CH−、−CH=N−基を組み合わせた2価の直鎖基であってもよい。なお、−(CH2)n−基のnは1〜5の整数を表す。また、Qで表される加水分解性基としては、−OR基(但し、Rはアルキル基を表す)を表す。
一般式(II)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基、R1はアルキレン基、Zは、−O−、−S−、−NH−、又は、−COO−、mは1〜4の整数を示す。Xは、−O−、又は、−S−を表し、nは0または1を示す。
一般式(I)、(II)で示される化合物のさらに好ましいものとして、有機基Fが特に下記一般式(III)で示されるものを用いたものを挙げることができる。
また、同様な目的でシリコーンオイル等のオイルを添加することもできる。シリコーンオイルとしては、たとえば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーンオイル、アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイル等をあげることができる。
例えば、アンバーライト15、アンバーライト200C、アンバーリスト15E(以上、ローム・アンド・ハース社製);ダウエックスMWC−1−H、ダウエックス88、ダウエックスHCR−W2(以上、ダウ・ケミカル社製);レバチットSPC−108、レバチットSPC−118(以上、バイエル社製);ダイヤイオンRCP−150H(三菱化成社製);スミカイオンKC−470、デュオライトC26−C、デュオライトC−433、デュオライト−464(以上、住友化学工業社製);ナフィオン−H(デュポン社製)などの陽イオン交換樹脂;アンバーライトIRA−400、アンバーライトIRA−45(以上、ロ−ム・アンド・ハ−ス社製)などの陰イオン交換樹脂;Zr(O3PCH2CH2 SO3H)2 ,Th(O3PCH2CH2COOH)2などのプロトン酸基を含有する基が表面に結合されている無機固体;スルホン酸基を有するポリオルガノシロキサンなどのプロトン酸基を含有するポリオルガノシロキサン;コバルトタングステン酸、リンモリブデン酸などのヘテロポリ酸;ニオブ酸、タンタル酸、モリブデン酸などのイソポリ酸;シリカゲル、アルミナ、クロミア、ジルコニア、CaO、MgOなどの単元系金属酸化物;シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、ゼオライト類など複合系金属酸化物;酸性白土、活性白土、モンモリロナイト、カオリナイトなどの粘土鉱物;LiSO4 ,MgSO4などの金属硫酸塩;リン酸ジルコニア、リン酸ランタンなどの金属リン酸塩;LiNO3 ,Mn(NO3)2などの金属硝酸塩;シリカゲル上にアミノプロピルトリエトキシシランを反応させて得られた固体などのアミノ基を含有する基が表面に結合されている無機固体;アミノ変性シリコーン樹脂などのアミノ基を含有するポリオルガノシロキサンなどが挙げられる。
また、フェノール誘導体は、メチロール基を含むものも利用でき、例えば、モノメチロールフェノール類、ジメチロールフェノール類若しくはトリメチロールフェノール類のモノマー、それらの混合物、それらがオリゴマー化されたもの、又はそれらモノマーとオリゴマーとの混合物が挙げられる。
なお、本明細書においては、分子の構造単位の繰り返しが2〜20程度の比較的大きな分子をオリゴマーといい、それ以下のものをモノマーという。
アミン系触媒としては、アンモニア、ヘキサメチレンテトラミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
塩基性触媒を使用した場合には、残留する触媒によりキャリアが著しくトラップされ、電子写真特性を悪化させる場合がある。このため、塩基性触媒を利用した場合は、触媒を利用した反応終了後に、酸で中和するか、シリカゲル等の吸着剤や、イオン交換樹脂等と接触させることにより不活性化又は除去することが好ましい。
本発明に用いられる架橋構造を有するフェノール系樹脂としては、上述したような公知のフェノール系樹脂を更に架橋反応させたものであってもよく、ノボラック型のようにフェノール系樹脂自体が架橋構造を有しているものであってもよい。なお、前者の場合は、レゾール型フェノール樹脂を用いることがより好ましい。
表面層5の膜厚は、1〜10μmの範囲が好ましく、1〜6μmの範囲がより好ましい。
次に、本発明の感光体を用いたプロセスカートリッジおよび画像形成装置について説明する。
本発明のプロセスカートリッジは、本発明の感光体を用いたものであれば特に限定されないが、具体的には、本発明の感光体と、帯電手段、現像手段、クリーニング手段および除電手段からなる群より選択される少なくとも一つとを一体に有し、画像形成装置本体に脱着自在である構成を有するものであることが好ましい。
また、本発明の画像形成装置は、本発明の感光体を用いたものであれば特に限定されないが、具体的には、本発明の感光体と、この感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電手段により帯電される感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を記録媒体に転写する転写手段とを備えた構成を有するものであることが好ましい。なお、本発明の画像形成装置は、各色のトナーに対応した感光体を複数有するいわゆるタンデム機であってもよく、この場合、全ての感光体が本発明の感光体であることが好ましい。また、トナー像の転写は、中間転写体を利用した中間転写方式であってもよい。
<実施例1>
(電子写真感光体の作製)
まず、以下に説明する手順により、Al基体上に、下引層と電荷発生層と電荷輸送層とをこの順に積層形成した有機感光体を作製した。
−下引層の形成−
ジルコニウム化合物(商品名:マツモト製薬社製オルガノチックスZC540)20質量部、シラン化合物(商品名:日本ユニカー社製A1100)2.5質量部、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:積水化学社製エスレックBM−S)10質量部およびブタノール45質量部を攪拌混合して得た溶液を、外径84mmのAl製基体表面に塗布し、150℃10分間加熱乾燥することにより、膜厚1.0μmの下引層を形成した。
次に、電荷発生材料としてクロロガリウムフタロシアニン1質量部を、ポリビニルブチラール(商品名:積水化学社製エスレックBM−S)1質量部および酢酸n−ブチル100質量部と混合して得られた混合物をガラスビーズとともにペイントシェーカーで1時間分散し、電荷発生層形成用分散液を得た。
この分散液を浸漬法により下引層の上に塗布した後、100℃で10分間乾燥させ、膜厚0.15μmの電荷発生層を形成した。
次に、下記構造式(1)で表される化合物を2質量部、および、下記構造式(2)で表される高分子化合物(粘度平均分子量:39000)3質量部をクロロベンゼン20質量部に溶解させて電荷輸送層形成用塗布液を得た。
未処理感光体表面への表面処理は、図4に示す構成を有する処理装置を用いて行った。
まず、未処理感光体を、処理装置の処理室10内の基体ホルダー13に載せ、排気口11を介して処理室10内を、圧力が0.1Pa程度になるまで真空排気した。次に、窒素ガス250sccmとテトラフロロメタンガス80sccmとを混合したガスを、ガス導入管20から、直径50mmの平板電極19が設けられた高周波放電管部21内に導入し、高周波電力供給部18およびマッチング回路(図1中不図示)により、13.56MHzのラジオ波を出力200Wにセットしチューナでマッチングを取り平板電極19から放電を行った。この時の反射波は0Wであった。またこの時、バラトロン真空計で測定した処理室10内の反応圧力は20Paであった。
・最表面の元素組成分析、接触角
前記未処理感光体への表面処理と同時に、10mm×10mmのAl板上に電荷輸送層のみを形成した試料にも同様な方法で表面処理を行った。この試料の表面の元素組成をXPS(X線光電子分光法)により測定し、表面処理を行っていない電荷輸送層についても同様にXPSにより表面の元素組成分析を行った、その結果、表面処理前に比べ表面処理後では、窒素元素が5原子%、フッ素元素が10原子%各々増加していることがわかった。
また、表面処理前の感光体表面の水との接触角は80度であったが、表面処理後の表面の接触角は92度となった。
次に、表面処理後の感光体上にPt−Pdの薄膜を蒸着して界面を明確にしたのち高分子樹脂で表面を覆い埋め込んだ後に、表面と垂直方向にミクロトームにより切断し、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子社製、JSM6340F、倍率:2万倍)で観察したところ、図6の写真に示すように、表面から深さ約0.2μmの範囲にプラズマで改質されたと思われる部分(最表面)が元の電荷輸送層とは異なる形態構造で存在することが確認された。
次に、この表面処理を行った電子写真感光体の電子写真特性を評価した。
まず、前述の表面処理前の未処理感光体と、表面処理を行った感光体とに対して、スコロトロン帯電器により−700Vに負帯電させた後、露光用の光(光源:半導体レーザー、波長:780nm、出力:5mW)を用いて、40rpmで回転させながら感光体の表面を走査し、照射した後の表面の残留電位を測定した。その結果、未処理感光体が−20Vであるの対し、表面処理を行った電子写真感光体は−20V以下であり誤差の範囲で一致した。
さらに、表面処理を行った感光体の表面に対して、貼りつけた粘着テープを剥がす剥離試験を行ったが、表面からの剥離物は全くなく、前記断面写真で観察された改質部分の接着性は良好であることがわかった。
以上の結果から、表面処理を行った感光体は、耐久性が向上すると共に、感度や画像ボケのように画質の点では実用上問題ないレベルであることがわかった。
(電子写真感光体の作製)
実施例1と同様にして作製した未処理感光体に対して、実施例1と同様の図4に示す構成を有する処理装置を用いて、以下に示す手順にて表面処理を行った。
まず、未処理感光体を、処理装置の真空槽10内の基体ホルダー13に載せ、排気口11を介して処理室10内を、圧力が0.1Pa程度になるまで真空排気した。次に、窒素ガス70sccmとテトラフロロメタンガス20sccmとを混合したガスを、ガス導入管20から直径50mmの平板電極19が設けられた高周波放電管部21内に導入し、高周波電力供給部18およびマッチング回路(図1中不図示)により、13.56MHzのラジオ波を出力200Wにセットしチューナでマッチングを取り平板電極19から放電を行った。この時の反射波は0Wであった。またこの時、バラトロン真空計で測定した処理室10内の反応圧力は10Paであった。
その後、表面処理を行った感光体を処理室10から取り出した。表面処理を行った感光体表面は、光沢に富み、少し黄色に着色していた。
前記未処理感光体への表面処理と同時に、10mm×10mmのAl板上に電荷輸送層のみを形成した試料にも同様な方法で表面処理を行った。この試料の表面の元素組成をXPS(X線光電子分光法)により測定し、表面処理を行っていない電荷輸送層表面についても同様にXPSにより表面の元素組成分析を行った、その結果、表面処理前に比べ表面処理後では、窒素元素が7原子%、フッ素元素が12原子%各々増加していることがわかった。
また、表面処理後の表面の水との接触角は95度であった。なお、SEMによる断面観察では、表面から深さ約0.2μmの範囲に実施例1と同様の改質部分が見られた。
次に、この表面処理を行った電子写真感光体の電子写真特性を評価した。
まず、実施例1における評価と同様にして、帯電、露光後の残留電位を測定したところ、未処理感光体が−20Vであるの対し、表面処理を行った電子写真感光体は−20V以下であり誤差レベルで一致した。
さらに、表面処理を行った感光体の表面に対して、貼りつけた粘着テープを剥がす剥離試験を行ったが、表面からの剥離物は全くなく、前記断面写真で観察された改質部分の接着性は良好であることがわかった。
その結果、プリントテスト初期およびプリントテスト終了後のいずれにおいても未処理感光体を用いて形成されたプリントテスト初期の画像と同様の、鮮明で網点部での画像ボケがない画像で10本/mmの解像度を得ることができた。また、プリントテスト後の感光体表面を目視により観察したところ、傷の発生はなく、プリントテスト実施の感光体と参照用の感光体の感光層をSEM断面測定した結果を比較することによる磨耗量は0μmであった。さらに、放電生成物の付着も確認されなかった。これに対し、未処理感光体では、プリントテスト後の感光体表面に傷が発生し、磨耗量は0.3μmであった。
以上の結果から、この表面処理を行った感光体も、耐久性が向上すると共に、感度や画像ボケのように画質の点では実用上問題ないレベルであることがわかった。
(電子写真感光体の作製)
実施例1と同様にして作製した未処理感光体に対して、実施例1と同様の図4に示す構成を有する処理装置を用いて、以下に示す手順にて表面処理を行った。
まず、未処理感光体を、処理装置の真空槽10内の基体ホルダー13に載せ、排気口11を介して処理室10内を、圧力が0.1Pa程度になるまで真空排気した。次に、窒素ガス50sccm及びヘリウムガス50sccmとテトラフロロメタンガス20sccmとを混合したガスを、ガス導入管20から直径50mmの平板電極19が設けられた高周波放電管部21内に導入し、高周波電力供給部18およびマッチング回路(図1中不図示)により、13.56MHzのラジオ波を出力200Wにセットしチューナでマッチングを取り電極19から放電を行った。この時の反射波は0Wであった。またこの時、バラトロン真空計で測定した処理室10内の反応圧力は10Paであった。
その後、表面処理を行った感光体を処理室10から取り出した。表面処理を行った感光体表面は、光沢に富み、少し黄色に着色していた。
前記未処理感光体への表面処理と同時に、10mm×10mmのAl板上に電荷輸送層のみを形成した試料にも同様な方法で表面処理を行った。この試料の表面の元素組成をXPS(X線光電子分光法)により測定し、表面処理を行っていない電荷輸送層表面についても同様にXPSにより表面の元素組成分析を行った、その結果、表面処理前に比べ表面処理後では、窒素元素が5原子%、フッ素元素が13原子%各々増加していることがわかった。
また、表面処理後の表面の水との接触角は90度であった。なお、SEMによる断面観察では、表面から深さ約0.2μmの範囲に実施例1と同様の改質部分が見られた。
次に、この表面処理を行った電子写真感光体の電子写真特性を評価した。
まず、実施例1の評価と同様にして、帯電、露光後の残留電位を測定したところ、未処理感光体が−20Vであるの対し、表面処理を行った電子写真感光体は−20V以下であり誤差レベルで一致した。
さらに、表面処理を行った感光体の表面に対して、貼りつけた粘着テープを剥がす剥離試験を行ったが、表面からの剥離物は全くなく、前記断面写真で観察された改質部分の接着性は良好であることがわかった。
その結果、プリントテスト初期およびプリントテスト終了後のいずれにおいても未処理感光体を用いて形成されたプリントテスト初期の画像と同様の、鮮明で網点部での画像ボケがない画像で10本/mmの解像度を得ることができた。また、プリントテスト後の感光体表面を目視により観察したところ、傷の発生はなく、感光体の外径測定による磨耗量は0μmであった。さらに、放電生成物の付着も確認されなかった。これに対し、未処理感光体では、プリントテスト後の感光体表面に傷が発生し、磨耗量は0.3μmであった。
以上の結果から、この表面処理を行った感光体も、耐久性が向上すると共に、感度や画像ボケのように画質の点では実用上問題ないレベルであることがわかった。
(電子写真感光体の作製)
実施例1と同様にして作製した未処理感光体に対して、まず表面層の形成を行った。
下記構造式(3)に示す化合物を5質量部、レゾール型フェノール樹脂(PL−4852、群栄化学社製)を7質量部、メチルフェニルポリシロキサンを0.03質量部、及びイソプロパノールを20質量部を混合して溶解し、表面層形成用塗布液を得た。この塗布液を、浸漬コーティング法で前記未処理感光体の電荷輸送層上に塗布し、130℃で40分乾燥させ、膜厚3μmのフェノール樹脂からなる表面層を形成した表面コート感光体を得た。
まず、前記表面コート感光体を、処理装置の真空槽10内の基体ホルダー13に載せ、排気口11を介して処理室10内を、圧力が0.1Pa程度になるまで真空排気した。次に、窒素ガス250sccmとテトラフロロメタンガス80sccmとを混合したガスを、ガス導入管20から直径50mmの平板電極19が設けられた高周波放電管部21内に導入し、高周波電力供給部18およびマッチング回路(図1中不図示)により、13.56MHzのラジオ波を出力200Wにセットしチューナでマッチングを取り平板電極19から放電を行った。この時の反射波は0Wであった。またこの時、バラトロン真空計で測定した処理室10内の反応圧力は20Paであった。
その後、表面処理を行った感光体を処理室10から取り出した。表面処理を行った感光体表面は、光沢に富み、少し黄色に着色していた。
前記表面コート感光体への表面処理と同時に、10mm×10mmのAl板上にフェノール樹脂の表面層のみを形成した試料にも同様な方法で表面処理を行った。この試料の表面の元素組成をXPS(X線光電子分光法)により測定し、表面処理を行っていない表面層についても同様にXPSにより表面の元素組成分析を行った、その結果、表面処理前に比べ表面処理後では、窒素元素が10原子%、フッ素元素が10原子%各々増加していることがわかった。
また、表面処理前の感光体表面の水との接触角は85度であったが、表面処理後の表面の水との接触角は95度となった。なお、SEMによる断面観察では、表面から深さ約0.2μmの範囲に実施例1と同様の改質部分が見られた。
次に、この表面処理を行った電子写真感光体の電子写真特性を評価した。
まず、実施例1の評価と同様にして、帯電、露光後の残留電位を測定したところ、表面コート感光体が−50Vであるの対し、表面処理を行った電子写真感光体は−55V以下であり、実用上問題ないレベルであった。
さらに、表面処理を行った感光体の表面に対して、貼りつけた粘着テープを剥がす剥離試験を行ったが、表面からの剥離物は全くなく、前記断面写真で観察された改質部分及び表面層の接着性は良好であることがわかった。
その結果、プリントテスト初期およびプリントテスト終了後のいずれにおいても未処理感光体を用いて形成されたプリントテスト初期の画像と同様の、鮮明で網点部での画像ボケがない画像で10本/mmの解像度を得ることができた。また、プリントテスト後の感光体表面を目視により観察したところ、傷の発生はなく、プリントテスト実施の感光体と参照用の感光体の感光層をSEM断面測定した結果を比較することによる磨耗量は0μmであった。さらに、放電生成物の付着も確認されなかった。これに対し、未処理の表面コート感光体では、プリントテスト後の感光体表面にわずかに傷が発生し、磨耗量は0.1μmであった。
以上の結果から、この表面処理を行った感光体も、耐久性が向上すると共に、感度や画像ボケのように画質の点では実用上問題ないレベルであることがわかった。
(感光体の作製)
実施例1と同様にして作製した未処理感光体に対して、実施例1と同様の図4に示す構成を有する装置を用いて、以下に示す手順にて表面処理を行った。
まず、未処理感光体を、処理装置の真空槽10内の基体ホルダー13に載せ、排気口11を介して処理室10内を、圧力が0.1Pa程度になるまで真空排気した。次に、テトラフロロメタンガス20sccmを、ガス導入管20から直径50mmの平板電極19が設けられた高周波放電管部21内に導入し、高周波電力供給部18およびマッチング回路(図1中不図示)により、13.56MHzのラジオ波を出力200Wにセットしチューナでマッチングを取り電極19から放電を行った。この時の反射波は0Wであった。またこの時、バラトロン真空計で測定した処理室10内の反応圧力は7.0Paであった。
その後、表面処理を行った感光体を処理室10から取り出した。表面処理を行った感光体表面は、光沢に富み、少し黄色に着色していた。
前記未処理感光体への表面処理と同時に、10mm×10mmのAl板上に電荷輸送層のみを形成した試料にも同様な方法で表面処理を行った。この試料の表面の元素組成をXPS(X線光電子分光法)により測定し、表面処理を行っていない電荷輸送層についても同様にXPSにより表面の元素組成分析を行った、その結果、表面処理前に比べ表面処理後では、フッ素元素が10原子%増加しているのみであった。
また、表面処理前の感光体表面の水との接触角は80度であったが、表面処理後の表面の接触角は95度となった。
次に、この表面処理を行った感光体の電子写真特性を評価した。
まず、実施例1における評価と同様にして、帯電、露光後の残留電位を測定したところ、未処理感光体が−20Vであるの対し、表面処理を行った感光体は−20V以下であり、同等レベルであった。
さらに、表面処理を行った感光体の表面に対して、貼りつけた粘着テープを剥がす剥離試験を行ったが、表面からの剥離物は全くなかった。
その結果、プリントテスト初期は未処理感光体を用いて形成されたプリントテスト初期の画像と同様の、鮮明で10本/mmの解像度であり、画像ボケの無い画像を得ることができた。しかしながら、1000枚のプリントテスト後に感光体表面には多くの傷の発生が見られた。また、2000枚目には前記表面処理後の光沢に富み黄色に着色した表面部分は完全に磨耗して無くなっていることが目視でわかった。なお、この時点での磨耗量は0.1μmであった。
以上の結果から、テトラフロロメタンのみのプラズマで表面処理した感光体は、表面の撥水性は向上するものの耐刷性が不十分であることがわかった。
2、6 有機感光層
2A 電荷発生層
2B 電荷輸送層
3 改質層(最表面)
4 下引層
5 表面層
10 処理室
11 排気口
12 基体回転部
13 基体ホルダー
14 基体
15 ガス導入部
16 シャワーノズル
17 プラズマ拡散部
18 高周波電力供給部
19 平板電極
20 ガス導入管
21 高周波放電管部
22 高周波コイル
23 石英管
Claims (5)
- 導電性基体上に有機感光層を含む感光層を設けた電子写真感光体であって、
前記感光層の最表面が、テトラフルオロメタンと、窒素または窒素及び希ガスと、を含む気体のプラズマにより、表面処理されてなることを特徴とする電子写真感光体。 - X線光電子分光法による分析において、前記表面処理前に対する表面処理後の最表面の窒素元素含有量の増加量が0.1原子%以上20原子%以下の範囲であり、フッ素元素含有量の増加量が0.01原子%以上30原子%以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
- 前記感光層が、前記有機感光層上にさらに表面層を有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
- 電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、クリーニング手段及び除電手段から選択される少なくとも一つとを一体に有し、画像形成装置に脱着自在であるプロセスカートリッジであって、
前記電子写真感光体が、請求項1に記載の電子写真感光体であることを特徴とするプロセスカートリッジ。 - 電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、該帯電手段により帯電された前記電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、該静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、を有する画像形成装置であって、
前記電子写真感光体が、請求項1に記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
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