JP2008267128A - 壁掛け便器 - Google Patents

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Abstract

【課題】便器下方とトイレ床面間の清掃性に優れた壁掛け便器を提供する。
【解決手段】壁掛け便器本体と、壁掛け便器本体の底部をトイレ床面と所定間隔隔てて便器底部とトイレ床面との間に清掃用空間を形成するための便器取付け部を備えた固定フレームと、固定フレームを略垂直に支持するベース板と、を有し、ベース板は、固定フレームに対して前記壁掛け便器本体の先端方向に向かって延出し、かつトイレ床面の少なくとも一部をなしている。
【選択図】図1

Description

本発明は、壁掛け便器に関する。
トイレ内に壁掛け便器を設置することで便器とトイレ床面との間の空間を確保し、従前の床へ便器を設置するトイレに比べ清掃性を向上させることが従来から行われている(例えば、特許文献1参照)。ここで、特許文献1に開示された壁掛け便器は、トイレ壁において室内壁面と外壁面間に空間が形成されてその空間内に洗浄水を溜める洗浄タンクが隠蔽された状態で内蔵されている。そして、この洗浄タンクは、その下部に設けられた配管フレームの上面フレーム上に設置されている。また、配管フレームは、縦フレームの下端に建物の床の躯体に接する長さの短い固定用の補強フレームを備えている。
特開2003−96885号公報(2頁、図1)
上述した特許文献1に記載の壁掛け便器では、躯体に接する補強用フレームの長さが便器の先端まで達しない短い構造となっている。そのため、使用者が便座に座ったときにフレームに生じる曲げモーメントによるフレームの躯体からの乖離を防止するために、補強用フレームを躯体にボルト等でしっかりと固定する必要がある。
しかしながら、このようなボルト締めを必要とする構成では、そもそも上述のような長さの短い補強用フレームを躯体にボルト締めして固定した場合、使用者が便器に着座する際に生ずる曲げモーメントによるフレームの躯体からの乖離を防止するために便器使用時に補強用フレームに作用する曲げモーメントに対して躯体が有するボルトの引き抜き強度で耐えなければならない。
また、このような長さの短い補強用フレームを躯体にボルト締めする場合、トイレ床面の見栄え上、このボルトを完全に隠すためにトイレ床面をその分だけ高くしなければならない。そのため、トイレ出入り口に不要な段差が生じてしまい、住宅内のバリアフリー化の要請に反する。
一方、このようなトイレ出入り口の段差を極力小さくしようとすると、この従来例における壁掛け便器の場合、トイレ床面の便器下方にボルトの頭が突出してしまい、トイレ床面の見栄えが悪くなるばかりか、便器とトイレ床面との間の清掃性を低下させてしまう。また、このようなボルトの頭をキャップ等で隠す特別な措置を施さなければならない。
本発明の目的は、施工性に優れると共に便器下方とトイレ床面間の清掃性に優れた壁掛け便器を提供することにある。
上述した課題を解決するために、本発明に係る壁掛け便器は、
壁掛け便器本体と、
前記壁掛け便器本体の底部をトイレ床面と所定間隔隔てて当該便器底部とトイレ床面との間に清掃用空間を形成するための便器取付け部を備えた固定フレームと、
前記固定フレームを略垂直に支持するベース板と、を有し、
前記ベース板は、前記固定フレームに対して前記壁掛け便器本体の先端方向に向かって延出し、かつトイレ床面の少なくとも一部をなしていることを特徴としている。
従来例のように壁掛け便器が便器を支持する垂直フレームとこの垂直フレームの下端に床に沿って延在する僅かな長さの補強用フレームを備え、この補強用フレームを介して便器の前倒れを防止するような壁掛け便器では、使用者が便器に着座する際に生ずる曲げモーメントによるフレームの躯体からの乖離を防止するためにこの僅かな長さの補強用フレームをボルトなどの締結具で躯体にしっかりと取付ける必要がある。
そして、便器使用時にはこのボルトが抜ける方向に取付け用フレームに曲げモーメントが発生する。そのため、このような長さの短い補強用フレームを躯体にボルト締めして固定した場合、使用者が便器に着座する際に生ずる曲げモーメントによるフレームの躯体からの乖離を防止するために便器使用時に補強用フレームに作用する曲げモーメントに対して躯体が有するボルトの引き抜き強度で耐えなければならない。
一方、補強用フレームを躯体にボルト締めして取り付けた場合、トイレ床面を低くするとボルトの頭がトイレ床面に突出してしまい、トイレ床面の見栄えが悪くなったりトイレの便器と床面との間の清掃性が低下したりする。また、キャップ等によりボルトの頭を隠す特別な処置を施す必要もある。
また、このようなボルトをトイレ床面から突出させないようにするためにはその分トイレ床面を高くしなければならず、結果的にトイレ出入り口の段差が大きくなってしまい、住宅内のバリアフリー化の要請に反して好ましくない。
ところが、本発明のような壁掛け便器とすることにより、固定フレームを支持するベース板がトイレ床面の少なくとも一部をなすようになるので、上述したような補強フレームをボルトで躯体にしっかりと固定する必要が無くなり、便器使用時に補強用フレームに作用する曲げモーメントに対して躯体が有するボルトの引き抜き強度で耐える必要はなく、この壁掛け便器をトイレに容易に設置することができる。
また、この壁掛け便器を設置したときにトイレ床面を高くすることなくボルトの頭の突出していないトイレ床面とすることができる。その結果、トイレ出入り口の段差をなくすか最小限に抑え、かつ壁掛け便器が本来有する便器下側とトイレ床面との清掃作業の容易性を十分発揮することができる。
また、本発明の請求項2に記載の壁掛け便器は、請求項1に記載の壁掛け便器において、
前記ベース板は、前記壁掛け便器をトイレに設置した状態で前記固定フレームの基端部からトイレ室内側の方がトイレ後壁側よりも長く延在した長板状のベース板からなることを特徴としている。
ベース板の形状がこのようにトイレ室内側に長くなっていることで、便器に使用者が着座した際、使用者の重さをベース板全面で受けることができ、ベース板を取り付けるボルトを無理に引き抜こうとする大きな曲げモーメントがベース板に発生しなくなる。その結果、どのようなトイレにも施工可能な壁掛け便器とすることができる。
また、本発明の請求項3に記載の壁掛け便器は、請求項1に記載の壁掛け便器において、
前記ベース板は、前記壁掛け便器が設置されるトイレ室内の床面全体とほぼ同等の大きさを有する補強層からなることを特徴としている。
トイレ床面の床基礎部をなす躯体にこの補強層を載せるだけでベース板全体がトイレ床面を構成するようになるので、この躯体と補強層との間の段差を埋める余分な施工を必要としない。
また、本発明の請求項4に記載の壁掛け便器は、請求項2に記載の壁掛け便器において、
前記ベース板は、その一端が前記固定フレームの基端部から前記便器の前方近傍まで延びていることを特徴としている。
ベース板をこのような床面の一部とすることで、トイレ床面の基礎をなす躯体の状態の影響を殆ど受けることなくベース板の水平度を出し易くなり、これによって便器の姿勢を適正に保つことができる。
また、本発明の請求項5に記載の壁掛け便器は、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の壁掛け便器において、
壁掛け便器本体と、
前記壁掛け便器本体の底部をトイレ床面と所定間隔隔てて当該便器底部とトイレ床面との間に清掃用空間を形成するための便器取付け部を備えた固定フレームと、
前記固定フレームを略垂直に支持するベース板と、を有し、
前記固定フレームは、前記ベース板上に配設される左右の固定フレームと、前記左右の固定フレームをトイレ床面の排水用開口部をはさんだ状態で室内側で接合配置することを特徴としている。
このような壁掛け便器によると、2本の固定フレームのベース板側端部を接続する固定用連結部のベース板間の連結部分が壁掛け便器の設置状態で床側排水管よりも便器本体の先端側に位置するので、床側排水管がトイレ床面の排水用開口部からベース板よりも上方に立ち上がっていても、固定フレーム下端部の取付け用連結部をベース板上でスライドさせて固定フレームをベース板上の適所に配置して固定することができる。そのため、トイレルームへの壁掛け便器の施工性が格段に向上する。
本発明によると、施工性に優れると共に便器下方とトイレ床面間の清掃性に優れた壁掛け便器を提供することができる。
より具体的には、従来例のように壁掛け便器が便器を支持する垂直フレームとこの垂直フレームの下端に床に沿って延在する僅かな長さの補強用フレームを備え、この補強用フレームを介して便器の前倒れを防止するような壁掛け便器では、使用者が便器に着座する際に生ずる曲げモーメントによるフレームの躯体からの乖離を防止するためにこの僅かな長さの補強用フレームをボルトなどの締結具で躯体にしっかりと取付ける必要がある。
そして、便器使用時にはこのボルトが抜ける方向に取付け用フレームに曲げモーメントが発生する。そのため、このような長さの短い補強用フレームを躯体にボルト締めして固定した場合、使用者が便器に着座する際に生ずる曲げモーメントによるフレームの躯体からの乖離を防止するために便器使用時に補強用フレームに作用する曲げモーメントに対して躯体が有するボルトの引き抜き強度で耐えなければならない。
一方、補強用フレームを躯体にボルト締めして取り付けた場合、トイレ床面を低くするとボルトの頭がトイレ床面に突出してしまい、トイレ床面の見栄えが悪くなったりトイレの便器と床面との間の清掃性が低下したりする。また、キャップ等によりボルトの頭を隠す特別な処置を施す必要もある。
また、このようなボルトをトイレ床面から突出させないようにするためにはその分トイレ床面を高くしなければならず、結果的にトイレ出入り口の段差が大きくなってしまい、住宅内のバリアフリー化の要請に反して好ましくない。
ところが、本発明のような壁掛け便器とすることにより、固定フレームを支持するベース板がトイレ床面の少なくとも一部をなすようになるので、上述したような補強フレームをボルトで躯体にしっかりと固定する必要が無くなり、便器使用時に補強用フレームに作用する曲げモーメントに対して躯体が有するボルトの引き抜き強度で耐える必要はなく、この壁掛け便器をトイレに容易に設置することができる。
また、この壁掛け便器を設置したときにトイレ床面を高くすることなくボルトの頭の突出していないトイレ床面とすることができる。その結果、トイレ出入り口の段差をなくすか最小限に抑え、かつ壁掛け便器が本来有する便器下側とトイレ床面との清掃作業の容易性を十分発揮することができる。
以下、本発明の一実施形態に係る壁掛け便器について図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る壁掛け便器を示す全体斜視図であり、図2は図1に示した壁掛け便器が適用されるトイレの床基礎部の構造を示す斜視図であり、図3は図1に示した壁掛け便器のトイレの床への取付け状態をトイレブースと共に示す側面図である。
なお、以下の一実施形態においてトイレ床面は、例えば木造住宅の場合、2本の平行な大引きとこの大引きの上に所定間隔隔てて大引きと直交して設けられた根太とこの上に取付けられた耐水合板とからなる床基礎部の上に載せられる部分をいい、耐水合板の上面全体に載せられるベース板と、ベース板の上面全体に貼られる化粧板から構成されている。
また、以下の一実施形態の各変形例においてトイレ床面は、例えば木造住宅の場合、2本の平行な大引きとこの大引き上に所定間隔隔てて大引きと直交して設けられた根太とこの上に取付けられた耐水合板とからなる床基礎部の上に載せられる部分をいい、耐水合板上に載せられるベース板と、耐水合板上であって上面がベース板の上面と面一となるようにベース板の周囲に配置されるパネルと、ベース板とパネルの上面に貼られる化粧板から構成されている。
なお、図1においては本発明の理解の容易化を図るために、便器を一部破断して示すと共に、便器に載置された便座、ロータンクや、伸縮自在な排水管、及びこの排水管を覆う蛇腹管を省略して示している。
本発明の一実施形態に係る壁掛け便器1は、木造住宅に設置されるタイプのもので、図1に示すように、便器10と、トイレ床面Fをなす補強層からなるベース板20と、ベース板20に垂設された便器取付けフレーム30とを有している。
本発明の一実施形態に係る壁掛け便器1は、昇降式壁掛け便器であるが、このような昇降式壁掛け便器ではなくフレームの所定の高さに便器が固定設置され、便器底部と床面との間に一定の清掃用空間が確保された固定式壁掛け便器であっても良い。
一方、便器10を支持する便器取付けフレーム30は、本実施形態では便器10がトイレの床面全体をなすベース板20に対して所定間隔を保って対向配置させるように便器10を支持している。この便器取付けフレーム30は、互いに所定間隔隔ててベース板20から垂直に立設した2本の固定フレーム31と、この2本の固定フレーム31に沿って上下にスライド可能な可動フレーム32を備えている。可動フレーム32は固定フレーム31に沿ってスライドする2本のスライド部32aとこの2本のスライド部32aを連結する2本の連結部32bからなり、それぞれの連結部32bに上述した便器10のスタッドボルト14が挿通されて図示しないネジ等で可動フレーム32に便器10がしっかりと固定されている。即ち、可動フレーム32は便器取付け部としての役目を果たしている。そして、便器10とベース板20との間で所定の清掃用空間が形成されている。
便器10は便器底部11がトイレ床面Fに接しない構造の一般的な陶器からなる壁掛け便器であり、便器上面12には図3に示すような局所洗浄便座40が取付けられてこの部分が着座部を形成している。また、便器背面13には可動フレーム32に取付けられるためのスタッドボルト14が本実施形態では便器背面13の後方に3本延在し、ここでは詳細には示さないナット等の締結具で便器取付けフレーム30の可動フレーム32に取付けられている。
また、便器背面13には汚物排出孔15が形成され、図1では詳細に示さない伸縮自在なテレスコタイプの排水管が接続され、この排水管は、トイレ床面の排水用開口部を通ってトイレ下方の排水管に接続されている。
また、便器10は、図3に示すロータンク50を介して便器自体の洗浄を行うようになっている。なお、図1の便器10は一部が切り欠かれて便器内部が見える状態で示されており、図3における便器10は便器上面に局所洗浄便座40を乗せた状態を示している。
可動フレーム32の上端にはロータンク(図3参照)50を載せる載置部32cが設けられ、図1では図示しない便器洗浄用のロータンク50がこの上に載置されるようになっている。
固定フレーム31の下方部分には、DCモータなどのモータ61が配置され、可動フレーム32の一部にはこのモータ61で駆動され伸縮自在に延在する例えばボールネジからなる伸縮シャフト62の端部が結合されている。そして、トイレの使用者や清掃者がトイレに備わった昇降スイッチ80(図3参照)を操作することでモータ61の駆動力を介して可動フレーム32を固定フレーム31に対して所定量だけ昇降させるようになっている。
固定フレーム31の上端には、図3に示すように便器取付けフレーム30をトイレ壁面に固定するためのブラケット35が便器後方に向かって延在しており、ネジ等の締結具でこれらブラケット35の端面35aをトイレの壁面に押し当て、便器取付けフレーム30の上端をトイレの壁面にしっかりと固定するようになっている。
固定フレーム31の下端は、図1に示すように、底部が平坦な鋼板からなり両側部に折れ曲がった立ち上げ部を有する取付け板36を介してベース板20に固定されている。なお、この固定に際しては、図示しないボルト等の締結具を用いても良く、溶接によって固定しても良い。
これらの取付け板36は、トイレの床基礎部をなす耐水合板230に取付けたベース板上で該取付け板の底部をスライドさせながら所定の取付け位置まで案内してボルト等の締結具を介して固定フレーム31をベース板20に固定するようになっている。このようなベース板20及び取付け板36が鋼板でできておりかつベース板20の上面と取付け板36の下面が平坦面として形成されていることで摩擦抵抗が少なくスライドが容易で位置決めがし易いというメリットがある。
また、便器10の汚物排出孔15に一端が接続した伸縮自在なテレスコタイプの排水管(図5における排水管70に相当)は例えばゴムでできた蛇腹管(図5における蛇腹管71に相当)で覆われてその排水管の伸縮時に排水管から漏れ出る臭気がトイレ内に拡散するのを防止している。
なお、図1は可動フレーム32及びこれに取付けられた便器10が固定フレーム31の上端に位置するようにモータ61を駆動制御した状態を示し、図3は可動フレーム32及びこれに取付けられた便器10が固定フレーム31の下端に位置するようにモータ61を駆動制御した状態を示している。
固定フレーム31を支持するベース板20は、厚さ9mmの鋼板でできており、トイレ床面全体を覆うように形成すれば補強層としての役割を果たすことも可能になる。この場合は、ベース板20の全体寸法は図3に示すようにトイレブースに合致する寸法を有している。そして、ベース板20は、トイレブース内の後述する床基礎部200と一体となってトイレブースの床面の全部をなすようになっている。
本実施形態における木造住宅の床側の躯体をなす床基礎部200は、図2に示すようにトイレ室内の長手方向に両端に延在する例えば90mm角以上でピッチ900mm以内の縦長の大引き210及びこの大引き上に交差して所定間隔隔てて載った45mm角以上でピッチ300mm以内の根太220とその上を全体的に覆った例えば厚さ12mm以上の耐水合板230からできている。
なお、ベース板20の上には、ここでは詳細に示さない例えば厚さ1.8mmの仕上げ材としての化粧板が全面に貼られており、トイレ床面としての美観を確保すると共に、清掃性を向上させている。
このように本実施形態では補強層としてのベース板20がトイレブースの床基礎部200と同一の大きさを有することで、ベース板20とトイレの床基礎部をなす耐水合板230との段差を埋める特別な処理が不要となる。
続いて、上述した実施形態の作用を壁掛け便器のトイレへ施工した場合の作用を説明する。本実施形態では、壁掛け便器がこのような構造になっていることで施工性に優れている。この理由は、固定フレーム31を支持するベース板20がトイレ床面をなしているので、従来のような長さの短い補強フレームをボルトで躯体にしっかりと固定する必要が無くなり、便器使用時に補強用フレームに作用する曲げモーメントに対して躯体が有するボルトの引き抜き強度で耐える必要はなく、この壁掛け便器をトイレに容易に設置することができる。
即ち、本実施形態の壁掛け便器は、従来の壁掛け便器に必要とされる特別な要件がいらず、簡単な施工で設置できる。
また、施工性の更なる優位な点として、ベース板20及び取付け板36が鋼板でできておりかつベース板20の上面及び取付け板36の下面が平坦面として形成されていることでこれらの間の摩擦抵抗が少なくなり、取付け板36のベース板上におけるスライドが容易で固定フレーム31をベース板上に位置決めし易い点が挙げられる。
即ち、ベース板20が平板の鋼板であることと、ベース板20と取付け板36間の摩擦抵抗が少ないことなどから、施工の際に固定フレーム31がベース板上を室内側からトイレの後壁側に向かって移動容易で施工性に優位となる。
続いて、この壁掛け便器の実際の使用方法をその作用と共に説明する。使用者は、図3に示す昇降スイッチ80の上昇ボタン81を押して便器10を便器取付けフレーム30の上方まで上昇させる。これによって、使用者は、局所洗浄便座40に座る際に極端に屈むことなく腰掛ける感じで楽に座ることができる。そして、使用者は、昇降スイッチ80の下降ボタン82を押して便器10を図3に示す便器取付けフレーム30の下方まで下げ、用を足した後、再び上昇ボタン81を押して便器10を上昇させて便座40から腰をあまり屈めることなく楽に立ち上がって用足しを終えることができる。このような使用者の一連の動作中、使用者が局所洗浄便座40に座る際に便器取付けフレーム30に生じる曲げモーメントに対して床面Fの全面をなすベース板20で受け持つことができるので、局所洗浄便座40が傾くことなく使用者がトイレを快適に使用することができる。
一方、清掃者がトイレを清掃する際は、便器10が図1に示すように便器取付けフレーム30の上方に上昇した状態で便器下方と本実施形態でいう床面Fの全部をなすベース板20との間の清掃を行う。この清掃を行うに際して本実施形態の構造によると、トイレの床面Fをなすベース板20にボルト等の無用な突起物が無いので、便器10とこの下方のトイレ床面Fを楽にかつ素早く清掃することができる。
本実施形態のような壁掛け便器とすることにより、固定フレーム31を支持するベース板20がトイレ床面をなすようになるので、壁掛け便器を設置したときにトイレ床面を高くすることなくボルトの頭の突出していない床面とすることができる。その結果、トイレ出入り口の段差をなくすか最小限に抑え、かつ壁掛け便器が本来有する清掃作業の容易性を十分発揮することができる。
なお、上述のベース板の大きさは上述したように必ずしも壁掛け便器が設置されるトイレ室内の床面全体とほぼ同等の大きさを有する必要はなく、床面の一部をなす大きさであっても良い。
続いて、本発明の上述した実施形態の第1変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同等の構成については、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。この第1変形例に係る壁掛け便器では、便器10及び便器を固定する便器取付けフレーム30の構造については上述した実施形態と同様であるが、ベース板が上述した実施形態とは異なっている。
具体的には、この第1変形例に係る壁掛け便器は、図4に示すように、ベース板91,92が便器取付けフレーム30の2本の固定フレーム31の下端から便器10の前方に向かってそれぞれ便器10の若干先まで延在している。このベース板91,92は例えば厚さ9mmの鋼板からなり、ベース板91,92が嵌り合う細長の切り欠きを有した例えば厚さ9mmのパネル93と組み合わさってトイレ床面を形成するようになっている。
便器取付けフレーム30は、図6に示すように、ベース板91,92からそれぞれ垂直に立設した2本の固定フレーム31と、この2本の固定フレーム31に沿って上下にスライド可能な可動フレーム32を備えている。可動フレーム32は、固定フレーム31に沿ってスライドする2本のスライド部32aとこの2本のスライド部32aを連結する2本の連結部32bからなる。
また、図5に示すように、固定フレーム31の下方部分には上述した実施形態と同様のDCモータなどのモータ61が配置され、可動フレーム32の一部にはこのモータで駆動され伸縮自在に延在する例えばボールネジからなる伸縮シャフト62の端部が結合されている。そして、トイレの使用者や清掃者がトイレに備わった昇降スイッチを操作することでモータ61の駆動力を介して可動フレーム32を固定フレーム31に対して所定量だけ昇降させるようになっている。
また、固定フレーム31の上端には、便器取付けフレーム30をトイレ壁面に固定するためのブラケット35が便器後方に向かって延在しており、ネジ等の締結具でこれらブラケット35の端面35aをトイレの壁面に押し当て、便器取付けフレーム30の上端をトイレの壁面にしっかりと固定するようになっている。
固定フレーム31の下端は、図6に示すように、底部が平坦な鋼板からなり両側部に折れ曲がった立ち上げ部を有する取付け板36を介してベース板91,92にそれぞれに固定されている。
また、図5に示すように、便器10の汚物排出孔に一端が接続した伸縮自在なテレスコタイプの排水管70は例えばゴムでできた蛇腹管71で覆われてその排水管70の伸縮時に排水管70から漏れ出る臭気がトイレ内に拡散するのを防止している。
なお、ベース板91,92と便器取付けフレーム30の相互の関係は以下の通りである。ベース板91,92は、便器取付けフレーム30の一部をなす固定フレーム31の下端に取付け板36を介してそれぞれ固定されている。この固定にあたっては、図6及び図7に示すようにベース板91,92から上向きに突出した図示しないスタットボルトと螺合されるナット365〜369で、ベース板91,92と固定フレーム31とをしっかり固定するようになっている。ボルト361〜364は固定フレーム31及びベース板91,92をトイレの躯体に取り付けるボルトで、固定フレーム31及びベース板91,92を貫通して耐水合板230あるいは耐水合板230と根太220に固定されている。
なお、ベース板91,92は、上述したように便器10の若干前方まで延在している。また、便器10は、便器背面に突設したスタットボルト(図4乃至図6では図示せず)を便器取付けフレーム30の可動フレーム32に形成された便器固定穴32dに挿入してナットなどの適当な締結具で固定されるようになっている。
ベース板91,92の全長は、ベース板91のトイレ壁側とベース板92のトイレ壁側間の距離よりも長くなっている。また、ベース板91,92の長さは、ベース板91,92から可動フレーム32の便器固定穴32dまでの高さよりも長くなっている。即ち、便器10が上昇して可動フレーム32の便器固定穴32dが上限位置にある場合のこの便器固定穴32dのベース板91,92からの高さよりもベース板91,92の全長が長くなっている。また、便器取付けフレーム30がトイレ壁面に取付けられる部分の高さ、即ちベース板91,92からブラケット35の端面35aまでの高さはベース板91,92の長さとほぼ同等となっている。
上述したように、トイレ床に延出してトイレ床面の一部をなすベース板91,92の長さが固定フレーム31の、便器10を固定している便器上昇時、下降時、一般時全て位置の高さ寸法より長くなっているので、上述した実施形態と同様の作用効果を生じる。具体的には、固定フレーム31を支持するベース板91,92がトイレ床面の少なくとも一部をなすようになるので、従来のような長さの短い補強フレームをボルトで躯体にしっかりと固定する必要が無くなり、便器使用時に本第1変形例において固定フレーム31を介してベース板91,92に作用する曲げモーメントに対して躯体が有するボルトの引き抜き強度で耐える必要はなく、この壁掛け便器をトイレに容易に設置することができるようになる。
このようなベース板91,92がトイレ床面の一部をなすので、従来例の補強フレームをトイレの床に取り付ける場合のような大きいサイズのボルト(締結具)を用いることなく、小さなサイズのボルトを用いて床基礎部に対してずれないように固定すれば良いので、突出部を従来例に比べてかなり小さくすることができる。
図7はこのボルトサイズの小型化を視覚的に理解し易いように示した図面である。同図でボルト361〜364は固定フレーム31及びベース板91,92をトイレの躯体に取り付けるボルトで、固定フレーム31及びベース板91,92を貫通して耐水合板230あるいは耐水合板230と根太220に固定されている。また、ナット365〜369は、ベース板91,92から上向きに突出したスタットボルトに螺合されるナットで、ベース板91,92と固定フレーム31とをしっかり固定するようになっている。この図からも明らかなように、本発明における壁掛け便器をトイレの躯体に取り付けるボルト361〜364が小さなサイズのボルトで済むことが明らかである。
これによって、ベース板91,92はトイレ床面の一部をなし、ベース板91,92とパネル93とが相補的に組み合わさることで略フラットなトイレ床面Fを形成し、便器10とトイレ床面Fとの間の空間の清掃性を上述した実施形態と同様に向上させることができる。このようにベース板91,92をトイレ床面Fの一部とすることでトイレ床面の補強層を分割することができ、補強層の精度を向上させることができる。具体的には、ベース板91,92をこのような床面の一部をなす補強層とすることで、躯体の影響を受けることなくベース板91,92の水平度を出し易くなり、これによって便器10の姿勢を適正に保つことができる。また、トイレ床面の補強層を分割することで補強層一枚あたりの重量が小さくなり、施工が容易になる。
このように、木造住宅や鉄筋コンクリート住宅のトイレに本第1変形例に係る壁掛け便器を設置する場合であっても、ベース板91,92がトイレ床面の一部をなすことで、上述の実施形態と同様の作用効果に加えてトイレ床面や壁面の基礎をなす躯体の影響を受けずに便器10を正しい姿勢でトイレに設置できる。
なお、本変形例においても上述の実施形態と同等の施工上のメリットがある。具体的には、ベース板91,92及び取付け板36が鋼板でかつベース板91,92の上面と取付け板36の底面が平坦面として形成されていることで、ベース板91,92と取付け板36間の摩擦抵抗が少なくなり、取付け板36のベース板91,92上でのスライドが容易で固定フレーム31のベース板91,92上における位置決めがし易くなる。
即ち、ベース板91,92が平板の鋼板であることと、ベース板91,92と取付け板36間の摩擦抵抗が少ないことなどから、施工の際に固定フレーム31がベース板上を室内側からトイレの後壁側に向かって移動容易で施工性に優位となる。
なお、便器取付けフレーム30の下方で左右の固定フレーム31をつなぐ固定用連結部Aの底面が床側排水管上端よりも上方に位置するように固定用連結部Aを配置してもよい。固定用連結部Aの底面が床側排水管上端よりも上方に位置することで、床側排水管が耐水合板上面よりも上方に立ち上がって配設されている場合においても、便器取付けフレーム30全体を持ち上げて連結部Aに床側排水管を越えさせ、床側排水管とトイレ後壁との間に下ろす必要がなく、便器取付けフレーム30をベース板上でスライドさせるだけで便器取付けフレーム30をベース板上の適所に配置して固定することができ、トイレルームへの壁掛け便器の施工性が格段に向上する。
続いて、上述した壁掛け便器の第2変形例について説明する。この第2変形例は、第1変形例とベース板及び固定フレームの下端のベース板への取付け用連結部の形状が異なっているが、それ以外の同一の構成を有している。従って、同等の構成については説明を省略し、異なる構成について詳細に説明する。
図8は、この第2変形例に係る壁掛け便器を耐水合板の下部に備わった根太と共に便器を斜め前方から示す斜視図である。また、図9は、図8に示した壁掛け便器を斜め後方から示す斜視図である。また、図10は、図8に示した壁掛け便器の2枚のベース板を耐水合板上に配置し、固定ガイド部を介してこれら両者を固定した状態を示す斜視図である。また、図11は、図8に示した壁掛け便器の便器取付けフレームを示す斜視図である。また、図12は、図8に示した壁掛け便器をトイレ後壁側から示す背面図である。
この第2変形例に係る壁掛け便器においては、固定フレーム131,132の各下端にこれらをベース板191,192にそれぞれ対応して取付ける取付け用連結部150が備わっている。なお、取付け用連結部150は、一部に大きな切欠き151(図11参照)を有した厚さ約4.5mmの鋼板からなる。
切欠き151の開口部151aは壁掛け便器の設置状態でトイレ後壁側に向き、耐水合板230に形成されたトイレ床面の排水用開口部231を囲むようになっている。すなわち、取付け用連結部150の各ベース板間の連結部分152は、壁掛け便器の設置状態でトイレ床面の排水用開口部231より便器先端側に位置するようになっている。
取付け用連結部150から立設した各側板160には、ある程度の高さを有するフレーム位置決め固定部161,162が壁掛け便器の設置状態でトイレ後ろ壁側に向かって延出している。
ベース板191,192は、上述した第1変形例と同様に厚さ約9mmの細長い矩形状をなす2枚の鋼板からなる。そして、一方のベース板191には、上述した第1変形例に係るベース板と異なり、固定フレームの一方のフレーム位置決め固定部161をガイドして固定する端面視L型のガイド固定部181が備わっている。
また、他方のベース板192にも上述した第1変形例に係るベース板と異なり、他方のフレーム位置決め固定部162をガイドして固定するガイド固定部182が備わっているが、このガイド固定部182は、上述した一方のベース板191に備わるガイド固定部181と異なり端面視角型U字状をなしている。
これらのガイド固定部181,182は、各ベース板191,192をトイレの床基礎部をなす耐水合板230の適所に位置決め固定した後、固定フレーム下端の取付け用連結部150をベース板上でスライドさせながら所定の取付け位置まで案内してボルト等の締結具を介して固定フレーム131,132をベース板191,192に固定する役目を果たしている。
なお、本変形例においても上述の実施形態と同等の施工上のメリットがある。具体的には、ベース板191,192及び取付け用連結部150が鋼板でかつベース板191,192の上面と取付け用連結部150の底面が平坦面として形成されていることで、摩擦抵抗が少なく取付け用連結部150のベース板191,192上でのスライドが容易で位置決めがし易くなる。
即ち、ベース板191,192が平板の鋼板であることと、ベース板191,192と取付け用連結部150の摩擦抵抗が少ないことなどから、施工の際に固定フレーム131,132がベース板上を室内側からトイレの後壁側に向かって移動容易で施工性が優位となる。
続いて、上述した第2変形例に係る壁掛け式便器の特徴的な作用を十分に発揮することができるこの壁掛け式便器の施工方法について説明する。
最初に、根太の上に厚さ12mmの耐水合板230をひく。これによって、耐水ベース板191,192を面で支える。即ち、便器取付けフレーム130にかかる回転モーメントをベース板191,192の面全体で支えることができる。
次いで、耐水合板230の排水管70が通る部分を切りとる。これによって、排水管70を耐水合板230に挿通させることができる。次いで、排水管70及び蛇腹管71を設置する。
次いで、ベース板191,192を耐水合板230の上に設置し、ガイド固定部181,182とともにベース板191,192を、耐水合板230あるいは耐水合板230と根太220にボルトでとめる。この際、2枚のベース板191,192のトイレ後壁側が耐水合板230に形成されたトイレ床面の排水用開口部231をはさむような形で配置する。
便器使用時にボルトを引き抜く方向にかかる回転モーメントはベース板191,192で支えるため、使用するボルトはベース板191,192が水平方向にずれるのを防ぐためのボルトとなり、小さなボルトですむ。
なお、ガイド固定部181はベース板191に溶接されると共に、ガイド固定部182はベース板192に溶接されている。このように溶接する理由は、ベース板191(192)とガイド固定部181(182)を一体化して強度を増すためである。即ち、便器使用時にかかる回転モーメントをガイド固定部181,182で受けずにベース板191,192で受けるようにするためである。
なお、固定に用いるボルトはスクリューボルトでも、ハンガーボルトとナットの組み合わせでもよい。ハンガーボルトを用いる場合には、ベース板191,192,ガイド固定部181,182を耐水合板230の上に設置し、ベース板191,192とガイド固定部181,182を貫通した状態でハンガーボルトを耐水合板230に、あるいは耐水合板230と根太220にとめる。次いで、ガイド固定部181より突出したハンガーボルトにナットを螺合させ、工具で締めつけてベース板191,192およびガイド固定部181,182を耐水合板230に固定する。
次いで、パネル193(図12参照)をベース板191,192のまわりに敷く。これによって、ベース板191,192とパネル193を面一にし、トイレブース内の段差をなくすことができる。
このようにベース板191,192とパネル193を面一にする理由は、以下の通りである。
施工時に電線の誤接続等を防ぐ為、また、施工の手間を少なくする為、施工業者に可動部を固定部に取付けさせたり、モータとコントローラボックス(図示せず)の配線等をさせることは避けたい。そのためには、可動部やモータやハーネス、図示しないコントローラボックス等を便器取付けフレーム130に設置して配線を済ませた状態で出荷する必要がある為、便器取付けフレーム130の重量が40〜50kgとなってしまう。
狭いトイレブースの中で重い便器取付けフレーム130を持ち上げて設置するのは困難であるが、ベース板191,192とパネル193を面一にすることで(つまり、ベース板191,192をトイレ床面の一部とすることで)便器取付けフレーム130をトイレブース入り口から設置位置までスライドさせることができ、容易に施工できる。また、この変形例では、設置位置までスライドさせる際、住宅側排水管が立ち上がっている場合でも固定フレーム下端の取付け用連結部150が住宅側排水管を乗り越える必要がなく、重い便器取付フレーム130を持ち上げずにすみ、容易に施工できる。
また、パネル193を敷いてトイレブース内を面一にしておくことで、トイレブース内で、パネル193とベース板191,192の上に置いたまま便器取付けフレーム130を方向転換させることも容易である。その為、便器取付けフレーム130をトイレブースに搬入する際の向きを壁掛け便器の製造メーカーが指定する必要がなく、また、施工業者も前記搬入時の向きを考えずに済み、施工が容易となる。
次いで、便器取付けフレーム130を設置する。便器取付けフレーム130とガイド固定部181,182を側面からボルトで留める。
便器取付けフレーム130を所定の位置に配置した時、トイレブースの横壁と側板160の間が狭くなる。そのため、固定フレーム131,132をガイド固定部181,182に取り付けるボルトを垂直に取り付けた場合、ボルトを締めるべく水平方向にレンチ等の工具を動かすことが困難である。その為、垂直方向に工具を動かしてボルトを締められるよう、固定フレーム131,132をガイド固定部181,182に取り付けるボルトは水平方向に取り付けられている。
次いで、化粧板を便器取付けフレーム130の手前まで敷く。便器取付けフレーム130を設置後に化粧板を敷くことで、便器取付けフレーム130をスライドさせたときでも化粧板(に傷を付けずに済む。また、キャビネットを置く前に化粧板を敷くことで、化粧板がキャビネットの内側(便器取付けフレームの手前)まで敷くことができるため、化粧板の端が便器側から見えることがなく、外観に優れる。
次いで、キャビネットを置くと共に便器10を設置することで、壁掛け便器のトイレ内への施工を完了する。
なお、便器10を可動フレーム32へ固定する方法は上述した実施形態の第1変形例と同じ方法でもよいし、図15のように便器取付けフレーム30の可動フレーム32に突設したスタットボルト32sを、図16のように便器10の後方に形成された固定穴10hに挿入してナットなどの適当な締結具で固定する方法でもよい。
以上説明したように、上述した実施形態の第1変形例における壁掛け便器の場合、床側排水管がベース板の上面よりも上方に立ち上がっていると、便器取付けフレーム全体を持ち上げて固定フレーム下端に備わった固定用連結部を浮かせて床側排水管を越えさせ、床側排水管とトイレ後壁との間に下ろす必要があるが、便器取付けフレームが重いためこれを持ち上げて床側排水管を越えさせるのはかなりきつい作業となる。
しかしながら、本変形例に係る壁掛け便器によると、固定フレーム下端に備わった固定用連結部の切欠きが壁掛け便器の設置状態で床側排水管を囲いかつトイレ後壁側に向かって開口しているので、壁掛け便器のトイレの設置状態において固定用連結部のベース板間の連結部分がトイレ床面の排水用開口部よりも便器前方側に位置するようになる。そのため、上述したように床側排水管が上面よりも上方に立ち上がっていても便器取付けフレーム自体を持ち上げて固定用連結部のベース部間の連結部分が床側排水管を越える作業を行うことなく固定フレーム下端の固定用連結部をベース板上にスライドさせるだけで固定フレームをベース板上の適所に配置して固定することができる。そのため、トイレルームへの壁掛け便器の施工性が格段に向上する。
以上説明した実施形態及び第1、第2変形例に係る壁掛け便器においては、昇降式壁掛け便器を用いて紹介したが、このような昇降式壁掛け便器ではなくフレームの所定の高さに便器が固定設置され、便器底部と床面との間に一定の清掃用空間が確保された固定式壁掛け便器であっても本発明の上述した作用を十分発揮することは言うまでもない。
しかしながら、昇降式壁掛け便器の場合、ベース板が床面の一部又は全部をなすので、ベース板を基準としてフレーム及び便器が正しい姿勢でトイレ床面に設置されるようになり、便器を昇降させた時の最適な状態で昇降を行うことができ、トイレ使用者に快適な使用感を与えることができる。
以上の説明から明らかなように、ベース板はその上面全体に仕上げ面をなす化粧板等が貼られていれば上述した実施形態のようにトイレ床面の全体をなしていても良く、また上述した第1及び第2変形例のようにトイレ床面の一部をなしていても良い。
また、ベース板と便器取付けフレームを分けることで、ベース板単体、便器取付けフレーム単体で持ち運びができるので施工性が向上する。また、流通過程において運送し易くなる。
また、ベース板を2枚に分割することで、重量を軽くすることができ、施工し易くなる。
また、フレーム位置決め固定部を有することで、フレーム位置決め固定部の一端がフレームを引っ掛ける形状になっているため、ベース板とフレームが別体であっても、使用時に便器にかかる回転モーメントが、便器、フレーム、フレーム位置決め固定部、ベース板の順に伝わり、ベース板の面前体で回転モーメントを受けることができる。
なお、上述の各実施形態と異なり、ベース板195は図13に示すように1枚板であっても良い。ベース板2枚と比較して部材が少ないため施工が簡単になる。
また、図14に示すようにベース板196と固定フレーム131,132が一体であっても良い。これによって、部材が少ないため施工が簡単になる。
また、上述したいずれのベース板の一部が垂直方向に曲げられ、垂直部分がトイレブースの幅木を成していてもよい。このようにベース板が垂直部分をもつことで、ベース板の強度が向上し、トイレ使用時に局所洗浄装置が傾くことがなく、使用者がトイレを快適に使用することができ、なおかつ垂直部分を幅木とすることで、使用者にベース板の存在を感じさせず、すっきりとしたトイレ空間を提供することができる。また、ベース板の強度が向上するため、ベース板の厚みを低減でき、ベース板の軽量化による施工性の向上やコストダウンが可能である。なお、ベース板に対して垂直方向になるよう板金部材を溶接あるいはねじ止めし、幅木としても同様の効果がある。
本発明の一実施形態に係る壁掛け便器を示す全体斜視図である。 図1に示した壁掛け便器が適用されるトイレの床面の構造を一部示す斜視図である。 図1に示した壁掛け便器をトイレブース全体と共に示す側面図である。 図1に示した壁掛け便器における第1変形例を示す斜視図である。 図4に示した第1変形例を斜め後方から見た斜視図である。である。 図4に示した第1変形例のベース板とフレームの関係の一例を示す斜視図である。 図4に示した第1変形例のフレームとベース板のトイレ躯体への取付け構造を示す部分的斜視図である。 本実施形態の第2変形例に係る壁掛け便器を耐水合板の下部に備わった根太と共に便器を斜め前方から示す斜視図である。 図8に示した壁掛け便器を斜め後方から示す斜視図である。 図8に示した壁掛け便器の2枚のベース板を耐水合板上に配置し、固定ガイド部を介してこれら両者を固定した状態を示す斜視図である。 図8に示した壁掛け便器の便器取付けフレームを示す斜視図である。 図8に示した壁掛け便器をトイレ後壁側から示す背面図である。 本発明の別の変形例に係る壁掛け便器を示す全体斜視図である。 本発明の更に別の変形例に係る壁掛け便器を示す全体斜視図である。 本発明の更に別の変形例に係る便器取付けフレームを示す斜視図である。 本発明の更に別の変形例に係る便器を示す斜視図である。
符号の説明
1 壁掛け便器
10 便器
10h 固定穴
11 便器底部
12 便器上面
13 便器背面
14 スタッドボルト
15 汚物排出孔
20 ベース板
30 便器取付けフレーム
31 固定フレーム
32 可動フレーム
32a スライド部
32b 連結部
32c 載置部
32d 便器固定穴
32s スタットボルト
35 ブラケット
35a 端面
36 取付け板
40 (局所洗浄)便座
50 ロータンク
61 モータ
62 伸縮シャフト
70 排水管
71 蛇腹管
80 昇降スイッチ
81 上昇ボタン
82 下降ボタン
91,92 ベース板
93 パネル
130 便器取付けフレーム
131,132 固定フレーム
150 取付け用連結部
151 切欠き
151a 開口部
152 連結部分
160 側板
161,162 フレーム位置決め固定部
181,182 ガイド固定部
191,192 ベース板
193 パネル
195,196 ベース板
200 床基礎部
210 大引き
220 根太
230 耐水合板
231 トイレ床面の排水用開口部
361〜364 ボルト
365〜369 ナット
F トイレ床面

Claims (5)

  1. 壁掛け便器本体と、
    前記壁掛け便器本体の底部をトイレ床面と所定間隔隔てて当該便器底部とトイレ床面との間に清掃用空間を形成するための便器取付け部を備えた固定フレームと、
    前記固定フレームを略垂直に支持するベース板と、を有し、
    前記ベース板は、前記固定フレームに対して前記壁掛け便器本体の先端方向に向かって延出し、かつトイレ床面の少なくとも一部をなしていることを特徴とする壁掛け便器。
  2. 前記ベース板は、前記壁掛け便器をトイレに設置した状態で前記固定フレームの基端部からトイレ室内側の方がトイレ後壁側よりも長く延在した長板状のベース板からなることを特徴とする、請求項1に記載の壁掛け便器。
  3. 前記ベース板は、前記壁掛け便器が設置されるトイレ室内の床面全体とほぼ同等の大きさを有することを特徴とする、請求項1に記載の壁掛け便器。
  4. 前記ベース板は、その一端が前記固定フレームの基端部から前記便器の前方近傍まで延びていることを特徴とする、請求項2に記載の壁掛け便器。
  5. 壁掛け便器本体と、
    前記壁掛け便器本体の底部をトイレ床面と所定間隔隔てて当該便器底部とトイレ床面との間に清掃用空間を形成するための便器取付け部を備えた固定フレームと、
    前記固定フレームを略垂直に支持するベース板と、を有し、
    前記固定フレームは、前記ベース板上に配設される左右の固定フレームと、前記左右の固定フレームをトイレ床面の排水用開口部をはさんだ状態で室内側で接合配置することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の壁掛け便器。
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