JP2008265078A - 中空成形品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】2枚の芳香族ポリカーボネート樹脂シート(A)を、それぞれの両端辺をクランプした状態で加熱軟化後、該軟化した2枚のシート(A)を、上下一対の金型の合わせ面にそれぞれ当接させて、シートと金型の間に閉鎖空間を形成後、該金型内面に開口する真空吸引孔から、該閉鎖空間内の空気を排出する予備真空引きを行い、2枚のシート(A)をそれぞれの金型内面に沿わせた後、両金型の合わせ面を接近させて型締め加圧し、両シートの被加圧部が相互に熱融着した中空体を構成させ、冷却固化が完了するまでの間、引き続き真空引きを行い、必要に応じ該中空体内に成形用圧縮空気を導入して、該中空体外面を上下金型内面に密着させ賦形してなる中空成形品(B)で、前記芳香族ポリカーボネート樹脂の構造粘性指数Nが1.2以上の中空成形品(B)。
【選択図】図1
Description
芳香族ポリカーボネート樹脂
本発明で使用する芳香族ポリカーボネート樹脂は、構造粘性指数Nが1.2以上である熱可塑性の芳香族ポリカーボネート重合体又は共重合体である。芳香族ポリカーボネート樹脂の溶融特性は、数式:Q=K・PN(式中Qは溶融樹脂の流動量(mL/sec)、Kは定数、Pは圧力(kg/cm2)、Nは構造粘性指数)により表示することが可能である。上記の数式において、N=1のときはニュートン流動性を示し、Nの値が大きくなるほど非ニュートン流動性が大きくなる。一般に、このNが1.2以上であるとは、芳香族ポリカーボネート重合体又は共重合体では分岐鎖を有することを意味する。構造粘性指数Nが1.2以上の芳香族ポリカーボネート樹脂としては、成形品の外観や熱融着部分の接合強度の点から溶融エステル交換法により芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを重合して得られた芳香族ポリカーボネート樹脂を含むものが好ましい。
溶融エステル交換法によって得られた芳香族ポリカーボネート樹脂に含まれる分岐構造には、例えば、以下の一般式(1)〜(4)の構造が挙げられる。
分岐剤の具体例としては、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニルヘプテン−3、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のポリヒドロキシ化合物の他、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(別名イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチンビスフェノール、5,7−ジクロルイサチンビスフェノール、5−ブロムイサチンビスフェノール等が挙げられる。分岐剤の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物に対し、通常0.01〜10モル%、好ましくは0.1〜3モル%である。
本発明で使用する構造粘性指数が1.2以上である芳香族ポリカーボネートは、一種類である必要はなく、例えば構造粘性指数が1.2以上である溶融法で得られた芳香族ポリカーボネートと、構造粘性指数が1.2未満である界面法で得られた芳香族ポリカーボネートを併用し、それらの樹脂組成物を上記の測定方法で構造粘性指数を求めた場合、1.2以上である場合も含む。
本発明に関わる芳香族ポリカーボネート樹脂は、必要に応じ本発明の効果を損なわない範囲で、ポリスチレン系樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体など)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂など)などの芳香族ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂や各種樹脂添加剤を含有していてもよい。各種樹脂添加剤としては、臭素化合物及びリン酸エステルや縮合リン酸エステル等の難燃剤、ベンゾトリアゾール系化合物等の紫外線吸収剤、亜燐酸エステル系化合物等の熱安定剤、ヒンダードフェノール系化合物等の酸化防止剤、コア/シェル型エラストマー等の耐衝撃性改良剤、カーボンブラック等の顔料、染料、可塑剤、帯電防止剤、摺動性改良剤、滴下防止剤、ガラス繊維、ガラスフレーク、炭素繊維、金属繊維、マイカ、タルク、カオリン、ウォラストナイト等の無機充填材を挙げることができる。
本発明において中空成形品の素材として使用する熱可塑性樹脂シート(A)は、通常公知の方法により製造可能であるが、中でも溶融押出法は工業的に有利な製法として好ましい。すなわち、芳香族ポリカーボネート樹脂を、一軸又は二軸押出機に供給し、溶融混練後、スクリュー、シリンダー、Tダイを通過して、板状に押出され、2本以上のロールによって成形、冷却され、シートに加工される。また、本発明の中空成形品の製造に使用される2枚の芳香族ポリカーボネート樹脂シートは、同種の芳香族ポリカーボネート樹脂シート、または、異種の芳香族ポリカーボネート樹脂シートの組合せ、のいずれでもよい。
本発明の中空成形品(B)は、前記溶融押出法のような方法により製造された2枚の芳香族ポリカーボネート樹脂シート(A)から、ツインコンポジット成形法によって製造される。すなわち、相互に熱融着可能な2枚の芳香族ポリカーボネート樹脂シート(A)を、それぞれの両端辺をクランプした状態で加熱軟化させた後、該軟化した2枚の芳香族ポリカーボネート樹脂シート(A)を、上下一対の金型の合わせ面にそれぞれ当接させて、シートと金型の間に閉鎖空間を形成させ、次いで、該金型内面に開口する真空吸引孔から、該閉鎖空間内の空気を排出する予備真空引きを行い、2枚の芳香族ポリカーボネート樹脂シート(A)をそれぞれの金型内面に沿わせた後、両金型の合わせ面を接近させて型締め加圧し、両シートの被加圧部が相互に熱融着した中空体を構成させ、さらに、冷却固化が完了するまでの間、引き続き真空引きを行い、必要に応じ該中空体内に成形用圧縮空気を導入して、該中空体外面を上下金型内面に密着させ賦形して、中空成形品(B)を得る。
1 シートセット
2 シート加熱
3 加熱終了
4 上型締め
5 予備真空引き完
6 下型締め
7 予備真空引き完
8 金型締め(高圧)
9 真空・圧空
10 金型開
11 取出し、バリ取
「2 シート加熱」では、両シートをそれぞれの両端辺をクランプした状態で、遠赤外線ヒータ等の加熱手段によって、加熱し、軟化させる。
「3 加熱終了」すると、加熱手段は、クランプしたシートから速やかに遠ざけられ、以後の賦形の各段階で必要なシートの軟化状態を確保する。
「4 上型締め」では、上型を、クランプしたシートに近づけ、上型の合わせ面を2枚のシートのうち上シートの表面に当接させて、上型と上シートとの間に閉鎖空間を形成させる。該閉鎖空間内の空気を、上型内面に開口する真空吸引孔から排出させるべく、予備真空引きを行う。真空引きを上型内面の全域にわたってムラなく迅速に行うためには、真空吸引孔は多数個設けるのがよい。
「5 予備真空引き完」では、上シートが下シートと接触しないよう真空引きを行う。この段階でシートが金型内面に密着して賦形を完了させなくともよい。
「6 下型締め」では、下型を、クランプしたシートに近づけ、下型の合わせ面を下シートの表面に当接させて、下型と下シートとの間に閉鎖空間を形成させる。該閉鎖空間内の空気を、下型内面に開口する真空吸引孔から排出させるべく、予備真空引きを行う。真空引きを下型内面の全域にわたってムラなく迅速に行うためには、真空吸引孔は多数個設けるのがよい。
「7 予備真空引き完」では、下シートがたるまないように真空引きを行う。なお、図中、「4 上型締め」及び「5 予備真空引き完」の後に行われている、「6 下型締め」及び「7 予備真空引き完」は、それぞれ、「4 上型締め」及び「5 予備真空引き完」と並行して行うことにより、成形時間の短縮を図ることもできる。
「8 金型締め」は、上下両金型における予備真空引きを完えた後、両シートがまだ融着可能な軟化状態にあるうちに、両金型の合わせ面を接近させ、型締め圧(例えば98MPa)の高圧に加圧して行う。その際、両シートの被加圧部が相互に熱融着されて、所定の中空体が構成される。被加圧部の位置は、通常、図示のように、クランプ部より内側が選ばれる。
「9 真空・圧空」では、上記中空体の冷却固化が完了するまでの間、引き続き上記上下両金型の内面に開口する真空吸引孔からの排気を行い、必要に応じて、例えば下型から下シートを貫通するノズルを差し込み、中空体内部の空間に成形用圧縮空気及び/又は冷却用空気を導入して、該中空体外面を隙間を残すことなく上下両金型内面に密着させ賦形して、所定の形状を有し、賦形不良のない中空成形品とする。
「10 金型開」では、中空体が冷却固化するのを待ち、固化後、圧縮空気導入用ノズルを後退させ、金型を開く。
「11 取出し、バリ取」では、金型を開いて成形された中空成形品を取り出す。このとき、上記金型締めに際し、金型の合わせ面より外側に在った部分は、バリ取りをして所望の製品を得る。
芳香族ポリカーボネート樹脂(1):溶融エステル交換法で製造されたビスフェノールA型芳香族ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製「ノバレックスM7027B」、構造粘性指数N:1.6、粘度平均分子量27,000)
芳香族ポリカーボネート樹脂(2):界面重合法で製造されたビスフェノールA型芳香族ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製「ユーピロンE−2000」、構造粘性指数N:1.1、粘度平均分子量28,000)
芳香族ポリカーボネート樹脂(3):前記芳香族ポリカーボネート樹脂(1)70重量部と芳香族ポリカーボネート樹脂(2)30重量部とをタンブラーミキサーで均一に混合した後、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、「TEX44」、L/D=42、バレル数12)を用いて、シリンダー温度290℃、スクリュー回転数200rpmにてバレル1より押出機にフィードし溶融混練させ、芳香族ポリカーボネート樹脂(3)のペレットを調製した。得られた芳香族ポリカーボネート樹脂(3)の構造粘性指数Nは1.5、粘度平均分子量は27,200であった。
前記芳香族ポリカーボネート樹脂のペレットを、ベント付単軸押出機(東芝機械社製、シート押出機、シリンダー内径120mmφ、シリンダー温度290℃)に供給し、Tダイから板状に押出し、4本のロールによって成形、冷却して、1800mm×1500mm×3mmtのシート2枚を得た。
前記にて成形したシートを用いて、ツインコンポジット成形法に従い、図2に示す大型パネル中空成形品を成形した。図2は、該成形品の内表面(該成形品をパネル部品として装着する場合、外側には現れない面)の形状を示す平面図である。同図中、表面形状が縦長又は横長の、角を丸めた長方形は、表面に対して垂直な断面が半円形状の凹部を示し、該長方形の中心線上において対向シート(図示せず)と内面どうしが融着して補強リブを構成し、また、表面形状が円形の部分も、断面半円形状の凹部を示し、円の中心において対向シートと内面どうしが融着して補強柱を構成する。また、破線の方形は対向シートとの距離が他の部分より小さい、言い換えれば該成形品の外表面(該成形品をパネル部品として装着する場合、外側に現れる面)が当該方形の凹部を有することを示す。これら成形品の両表面に設けられる凹部は、後記の上下の金型内面に設けられた凸部に密着させることよって形成される。
a) 上下のシートを、各々、上下の金型の合わせ面に当接させ(低圧で型締め)、金型内面とシートの間に閉鎖空間を形成させ、上下金型内面に設けられた真空吸引孔からそれぞれ真空引きを行い、両シートが空気の排出により上下それぞれの金型内面に沿って密着するように賦形する。真空引きの時間は、上記低圧の型締めから後記圧空の終了まで170秒。
b) 前記クランプ部の内側の合わせ面の位置で、上下1対の金型間を100tの高圧(98MPa)に加圧して締め付け、上下のシートをその被加圧部において相互に熱融着する。
c) 該賦形・熱融着によって構成された中空体内の閉鎖空間に、下型から下シートを貫通して挿入される導入管ノズルを介して、0.4MPa圧縮空気を導入して圧空を行い、真空引きによる賦形不足を補う。該圧空時間は、ノズルの挿入から90秒である。
d) 内圧を保持しながら、中空体成形品から金型への熱伝導により成形品が冷却する。
芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量、構造粘性指数N及び中空成形品の外観、熱融着部分の接合強度の評価方法は以下の通りである。
(1)粘度平均分子量
ウベローデ粘度計を使用し、メチレンクロライドを溶液とする溶液の、温度20℃における極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式(η=1.23×10−4M0.83)から算出した。
(2)構造粘性指数N
高化式フローテスター(島津製作所社製)シリンダー;ノズル径1mmノズル長10mm)に芳香族ポリカーボネート樹脂のペレットを仕込み、温度280℃に一定にし、加えた圧力P(100〜200kg/cm2)と、それに対する溶融樹脂の留出量Q(mL/sec)を測定し、それぞれの値を両対数グラフにプロットして得られる回帰直線の勾配から求めた。
中空成形品の外観を目視観察で、しわや賦形不良が認められなかったものは「○」、しわや賦形不良が発生していると認められたものは「×」と2段階評価し、表示した。
(4)熱融着部分の接合強度(落球試験)
中空成形品の熱融着部分に剛球(重量1kg、φ63.5mm)を高さ30cmから自由落下させ、熱融着部分が接合しているものは「○」、熱融着部分が剥れたものは「×」と2段階評価し、表示した。
表1の芳香族ポリカーボネート樹脂シートを用いて得られた中空成形品について、外観、熱融着部分の接合強度を評価した結果を表1に示す。
(1)実施例1及び2に記載の中空成形品は、優れた外観を有し、熱融着部分の接合強度が高い。
(2)比較例1に記載の中空成形品は、しわが発生し外観に劣り、比較例2に記載の中空成形品は、外観は良好なるもシート加熱温度が低く熱融着部分の接合強度に劣るものであった。
Claims (3)
- 相互に熱融着可能な2枚の芳香族ポリカーボネート樹脂シート(A)を、それぞれの両端辺をクランプした状態で加熱軟化させた後、該軟化した2枚のシート(A)を、上下一対の金型の合わせ面にそれぞれ当接させて、シートと金型の間に閉鎖空間を形成させ、次いで、該金型内面に開口する真空吸引孔から、該閉鎖空間内の空気を排出する予備真空引きを行い、2枚のシート(A)をそれぞれの金型内面に沿わせた後、両金型の合わせ面を接近させて型締め加圧し、両シートの被加圧部が相互に熱融着した中空体を構成させ、さらに、冷却固化が完了するまでの間、引き続き真空引きを行い、必要に応じ該中空体内に成形用圧縮空気を導入して、該中空体外面を上下金型内面に密着させ賦形してなる中空成形品(B)において、前記芳香族ポリカーボネート樹脂の構造粘性指数Nが1.2以上であることを特徴とする中空成形品(B)。
- 芳香族ポリカーボネート樹脂が、溶融エステル交換法により芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを重合して得られた芳香族ポリカーボネート樹脂を含むものである請求項1に記載の中空成形品(B)。
- 芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が、20,000〜40,000であることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の中空成形品(B)。
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