JP2008260981A - めっき液、めっき方法およびめっき皮膜が形成された物品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】めっき液が、硫酸イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、メタクリル酸イオン、スルファミン酸イオン、クエン酸イオンおよびガリウム酸イオンからなる群から選ばれる一種以上の陰イオンとガリウムイオンとを有し、塩素イオン濃度が10ppm以下であること、および/または、ガリウムイオンおよびキレート剤を有し、該キレート剤の濃度はガリウムに対するモル濃度の比率(キレート剤のモル濃度/浴中ガリウムイオンのモル濃度)として0.1〜5であって、めっき液のpHが3から10の範囲であることにより好適なガリウムめっき皮膜が得られる。また、めっき液が、ガリウムイオンとスズイオンとをガリウム/スズのモル比として0.3〜15の範囲で有し、pHが10以上14以下であることにより好適なガリウム合金めっき皮膜が得られる。
【選択図】図1
Description
J.less-Common Metal, 11(1966)63-65 "The electrodeposition of gallium"
(1)めっき液組成
i)塩素イオンフリー浴
本願発明の第一の形態に係るガリウムめっき液は塩素イオンフリーであることを特徴とする。従来技術に係るガリウムめっき液は基本的に塩化ガリウムを浴中に溶解させて建浴されている。このため、汚染を極端に嫌う電機・電子部品への適用するにあたっての障害となっていた。
なお、めっき液には必要に応じてアンモニアを添加しても良い。この場合もガリウムの溶解度が高くなり、好ましい。
本願発明の第二の形態に係るガリウムめっき液はキレート剤を有し、pHが3から10の範囲であることを特徴とする。従来のめっき液では、中性付近においてガリウムの水酸化物が生成し、めっき液のにごりや沈殿物を発生させていた。このため、電流効率が著しく低下したり、めっき皮膜にこの水酸化物が取り込まれて膜質が著しく低下したりする問題が発生し、工業レベルでの適用の障害となっていた。
本願発明に基づき添加されるキレート剤に特には制限がないが、その具体例としては、フィチン酸等のリン酸系化合物又はそれらの塩、エタン− 1 , 1− ジホスホン酸、エタン− 1 , 1 , 2− トリホスホン酸、エタン− 1− ヒドロキシ− 1 , 1− ジホスホン酸、エタンヒドロキシ− 1 , 1 , 2− トリホスホン酸、エタン− 1 , 2− ジカルボキシ− 1 , 2− ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸等のホスホン酸又はそれらの塩、2 -ホスホノブタン− 1 ,2− ジカルボン酸、1 -ホスホノブタン− 2 , 3 , 4− トリカルボン酸、α − メチルホスホノコハク酸等のホスホノカルボン酸又はそれらの塩、グリシンもしくはその誘導体、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸又はその塩、ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジエンコル酸等のアミノポリ酢酸又はそれらの塩、ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、コハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキメチル酒石酸等の有機酸又はそれらの塩、ゼオライトA 等のアルミノケイ酸塩、アミノポリ( メチレンホスホン酸) もしくはそれらの塩、又はポリエチレンポリアミンポリ( メチレンホスホン酸) もしくはそれらの塩、等が挙げられる。本願発明において、上記キレート剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。好ましいものはヒドロキシ酸またはその塩であり、特に好ましい例としてクエン酸またはその塩が挙げられる。
上記のめっき液には、必要に応じて界面活性剤や酸化防止剤を添加してもよい。また、潤滑用途の場合には、黒鉛、二硫化モリブデン、フッ素樹脂などの微粒子を分散させて潤滑性を向上させても良い。
上記界面活性剤の中で、好ましくは、陰イオン型界面活性剤、非イオン型界面活性剤、及び両性界面活性剤が挙げられる。更に、好ましい界面活性剤の具体例として、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ヤシ脂肪酸アルカノールアミド、及び脂肪酸アミドプロピルベタインが例示される。
本願発明において、ガリウムめっきは浴温を10〜30℃程度として処理することが好ましく、15〜25℃程度とすることがより好ましい。浴温が10℃未満の場合には、その温度に維持するために冷却設備が必要となる場合が多く、これは生産性の低下を招く。また、ガリウム塩としての溶解度が低下し、浴中ガリウムイオン濃度が低下してめっき速度の低下を招いてしまう。一方、30℃以上とすると、析出したガリウムが溶解して膜質の均一性が得られなるうえに、めっき液中で副反応が発生しやすくなり、浴の安定性が低下する傾向が見られるようになる。
被めっき物は導電性を有していれば特には制限されない。銅、真鍮などの銅合金、鉄系材料、アルミニウム系材料、ニッケル系材料、表面に導電性が付与された絶縁物(例えばセラミックス、ガラス、樹脂)などが例示される。なお、本願発明の第二の形態のように中性の場合には、被めっき物はめっき液によって腐食される可能性が特に低くなるので好ましい。
めっき皮膜が形成された物品の例としては、前述のようにガリウムめっき皮膜を電気接点とするスイッチのほかに、航空・宇宙関連機器や自動車などの輸送機器における摺動部材を挙げることができる。また、MEMSにおける微小領域の摺動部材として用いることも可能である。
(1)めっき液組成
本願発明の第三の形態に係るガリウム合金めっき液はガリウムイオンとスズイオンとをガリウム/スズの質量比として0.3〜15の範囲で有し、めっき液のpHは10以上14以下である。
また、ガリウムめっき液の場合と同様に、界面活性剤や酸化防止剤を適宜添加してもよい。それらの添加濃度の好適な範囲についてもガリウムめっきの場合と同様である。
本願発明において、ガリウム−スズめっきは浴温を10〜30℃程度として行うことが好ましく、15〜25℃程度とすることがより好ましい。浴温が10℃未満の場合には、その温度に維持するために冷却設備が必要となる場合が多く、これは生産性の低下を招く。また、ガリウム塩としての溶解度が低下し、浴中ガリウムイオン濃度が低下してめっき速度の低下を招いたり、合金組成の制御が困難となったりしてしまう。一方、30℃以上とすると、析出したガリウム−スズ合金が溶解して膜質の均一性が得られなるうえに、めっき液中で副反応が発生しやすくなり、欲の安定性が低下する傾向が見られるようになる。
被めっき物は導電性を有していれば特には制限されない。銅、真鍮などの銅合金、鉄系材料、アルミニウム系材料、ニッケル系材料、表面に導電性が付与された絶縁物(例えばセラミックス、ガラス、樹脂)などが例示される。なお、めっき液に適宜キレート剤を添加して中性浴とした場合には、被めっき物はめっき液によって腐食される可能性が特に低くなるので好ましい。
めっき皮膜が形成された物品の例としては、ガリウム合金めっき皮膜を電気接点とするスイッチのほかに、航空・宇宙関連機器や重機における摺動部材を挙げることができる。また、MEMSにおける摺動部材として用いることも可能である。特に、合金比率を調整することでめっき皮膜の軟化点を制御できるので、所定の温度以上で摺動特性が大きく変動する機構を作成することが可能である。
下記組成のガリウムめっき液を調製した。
塩化ガリウム:6g/L
pH:1.5 (塩酸により調整)
被めっき物である鋼板(25mm×20mm×厚さ0.2mm、片面マスキング)を陰極として、白金板(10mm×20mm×厚さ1mm)を陽極としてこのガリウムめっき液に浸漬させ、次の条件でめっきを行った。
温度:25℃ (簡易的なチラーを用いて±1℃の範囲で制御した。)
電流密度:5A/dm2
通電時間:10分
この条件でめっきを行った結果、灰白色で無光沢のガリウムめっき皮膜が鋼板上に一様に形成され、その表面は平滑であった。
下記組成のガリウムめっき液を調製した。
硫酸ガリウム:6g/L
pH:12.5 (苛性ソーダにより調整)
なお、このめっき液は溶媒として2S/cm以下の純水を用いており、めっき液に混入している塩素濃度を自動滴定装置により計測した結果、液中塩素濃度は5ppm以下であった。
実施例1と同形状の鋼板および白金板をそれぞれ陰極、陽極としてこのガリウムめっき液に浸漬させ、次の条件でめっきを行った。
温度:25℃ (簡易的なチラーを用いて±1℃の範囲で制御した。)
電流密度:5A/dm2
通電時間:10分
この条件でめっきを行った結果、図1に示されるように、灰白色で無光沢のガリウムめっき皮膜が鋼板上に一様に形成され、その表面は平滑であった。
続いて、めっき鋼板からめっき皮膜を機械的に剥離し、NaOHを純水で溶解して得た高濃度NaOH水溶液によって剥離させたガリウムめっき膜を溶解し、混入塩素濃度を分析した結果、1ppm以下であり、実質的に塩素フリーなめっき皮膜が得られていることが確認された。
下記組成のガリウムめっき液を調製した。
塩化ガリウム:6g/L
クエン酸:5g/L
pH:6.5 (苛性ソーダにより調整)
実施例1と同形状の鋼板および白金板をそれぞれ陰極、陽極としてこのガリウムめっき液に浸漬させ、次の条件でめっきを行った。
温度:25℃ (簡易的なチラーを用いて±1℃の範囲で制御した。)
電流密度:5A/dm2
通電時間:5分
この条件でめっきを行った結果、めっき処理中にはめっき液のにごりは観察されなかった。また、灰白色で無光沢のガリウムめっき皮膜が鋼板上には一様に形成され、その表面は平滑であった。
下記組成のガリウム−スズめっき液を調製した。
塩化ガリウム:6g/L
塩化スズ二水和物:1.9g/L
pH:12.5 (苛性ソーダにより調整)
このとき、めっき液中のガリウム/スズのモル濃度比は4.0であった。このガリウム−スズめっき液に実施例1と同形状の鋼板および白金板をそれぞれ陰極、陽極として浸漬させ、次の条件でめっきを行った。
温度:25℃ (簡易的なチラーを用いて±1℃の範囲で制御した。)
電流密度:5A/dm2
通電時間:5分
この条件でめっきを行った結果、図2に示されるように、灰白色の無光沢のガリウムめっき皮膜が鋼板上に一様に形成され、その表面は平滑であった。また、めっき膜について実施例2の場合と同様の手法で元素分析を行い、共析率を計測した結果、Ga:Sn=90:10であった。
下記組成のガリウム−スズめっき液を調製した。
塩化ガリウム:6g/L
塩化スズ二水和物:0.95g/L
pH:12.5 (苛性ソーダにより調整)
このとき、めっき液中のガリウム/スズのモル濃度比は8.0であった。
このガリウム−スズめっき液について、実施例4と条件でめっきを行って得られためっき膜について実施例4の場合と同様の手法で共析率を計測した結果、Ga:Sn=98:2であった。
下記組成のガリウム−スズめっき液を調製した。
塩化ガリウム:3g/L
塩化スズ二水和物:9.5g/L
pH:12.5 (苛性ソーダにより調整)
このとき、めっき液中のガリウム/スズのモル濃度比は0.4であった。
このガリウム−スズめっき液について、実施例4と条件でめっきを行って得られためっき膜について実施例4の場合と同様の手法で共析率を計測した結果、Ga:Sn=10:90であった。
実施例4から6の結果を図示すると図3のようになり、ガリウム/スズの浴中濃度比は、皮膜中のガリウム/スズの共析比に対して2乗で寄与することが明らかになった。すなわち、ガリウムのほうがスズよりもめっき液中の濃度の影響を受けやすいことが確認された。
実施例1と同様の条件であるが、電流密度のみ実施例1の条件から代えて80A/dm2としてガリウムめっきを行った。その結果、図4に示されるように、ガリウム金属は均一にめっきされず、鋼板上に液滴状に蓄積し、一部は鋼板から脱落して浴槽の底部に落下した。
実施例3と同様の条件であるが、クエン酸を添加せずにpH3でガリウムめっきを行った。その結果、図5に示されるように、一部金属の析出も見られるが、白色の固体が析出し、めっき品質は劣悪であった。また、めっき開始後数分でめっき液の白濁が認められ、継続的な使用は困難であった。
Claims (13)
- 硫酸イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、メタクリル酸イオン、スルファミン酸イオン、クエン酸イオンおよびガリウム酸イオンからなる群から選ばれる一種以上の陰イオンとガリウムイオンとを有し、塩素イオン濃度が10ppm以下であって、被めっき物上にガリウムめっき皮膜を形成させるためのものであることを特徴とするめっき液。
- ガリウムイオンおよびキレート剤を有し、該キレート剤の濃度は液中ガリウムイオンに対するモル濃度の比率(キレート剤のモル濃度/液中ガリウムイオンのモル濃度)として0.1〜5であって、pHが3から10の範囲であることを特徴とするめっき液。
- キレート剤がクエン酸および/またはその塩である請求項2記載のめっき液。
- ガリウムイオンとスズイオンとをガリウム/スズのモル比として0.3〜15の範囲で有し、pHが10以上14以下であって、被めっき物上にガリウムを含む合金めっき皮膜を形成するためのものであることを特徴とするめっき液。
- ガリウムイオンとスズイオンとをガリウム/スズのモル比として0.8〜9の範囲で有し、pHが12以上14以下である請求項4記載のめっき液。
- 塩化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、メタクリル酸イオン、スルファミン酸イオン、クエン酸イオンおよびガリウム酸イオンからなる群から選ばれる一種以上の陰イオンを有する請求項4または5記載のめっき液。
- 請求項1から3のいずれかに記載されためっき液中での被めっき物を陰極として電解して、該被めっき物上にガリウムめっき皮膜を形成することを特徴とするめっき方法。
- 電流密度を0.1〜50A/dm2とし、液温を10〜30℃の範囲で電解する請求項7記載のめっき方法。
- ガリウムイオンを含むめっき液中での被めっき物を陰極として、電流密度0.1〜50A/dm2、および液温10〜30℃の範囲で電解して、該被めっき物上にガリウムめっき皮膜を形成することを特徴とするめっき方法。
- 請求項7から9のいずれかに記載された方法によってめっき皮膜が形成された物品。
- 請求項4から6のいずれかに記載されためっき液中での被めっき物を陰極として電解して、該被めっき物上にガリウムを含む合金めっき皮膜を形成することを特徴とするめっき方法。
- 電流密度0.1〜50A/dm2、および液温10〜30℃の範囲で電解する請求項11記載のめっき方法。
- 請求項11または12に記載された方法によってめっき皮膜が形成された物品。
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