JP2008254935A - 誘電体磁器組成物、複合電子部品および積層セラミックコンデンサ - Google Patents

誘電体磁器組成物、複合電子部品および積層セラミックコンデンサ Download PDF

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Abstract

【課題】薄層化に対応可能としつつ、良好な特性(比誘電率、損失Q値、絶縁抵抗)を示す低温焼結誘電体磁器組成物およびこの誘電体磁器組成物から構成されている誘電体層を有する積層型フィルタなどの複合電子部品あるいは積層セラミックコンデンサを提供すること。
【解決手段】チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムおよびチタン酸カルシウムから選ばれる少なくとも1つを含む主成分と、副成分として、Biの酸化物と、Bの酸化物と、Cuの酸化物と、を含有する誘電体磁器組成物であって、主成分100重量%に対して、Biの酸化物の含有量が、Bi換算で、0.5〜10重量%であり、Bの酸化物の含有量が、B換算で、0.5〜1.5重量%であり、Cuの酸化物の含有量が、CuO換算で、0.5〜10重量%である。
【選択図】なし

Description

本発明は、低温で焼結可能な誘電体磁器組成物と、この誘電体磁器組成物を誘電体層として有する複合電子部品および積層セラミックコンデンサに関する。
電子部品が組み込まれている電子機器に対する小型軽量化の要求に伴って、小型の積層電子部品の需要が急速に高まってきた。そして、このような電子部品が回路基板に複数配置されるのに合わせて、コイルとコンデンサを一体化した複合電子部品の一種としての積層型フィルタが、回路基板の高周波ノイズ対策の為に、用いられるようになっている。
このような積層型フィルタは、コイル部とコンデンサ部とを同時に有する電子部品であるため、その製造工程において、コイル部を構成する磁性体材料とコンデンサ部を構成する誘電体磁器組成物を同時に焼成する必要がある。一般に、コイル部を構成する磁性体材料として使用されるフェライトは、焼結温度が800〜900℃と低い。そのため、積層型フィルタのコンデンサ部に使用される誘電体磁器組成物を構成する材料は、低温焼結が可能であることが要求される。
たとえば、特許文献1では、SrTiOにCuOや必要に応じてMnOを添加して主成分とし、この主成分にガラスを特定量添加することで、Ag系の内部電極と同時焼成することができる低温焼成誘電体磁器組成物が提案されている。
一方、近年の電子機器のさらなる小型化に伴い、積層型フィルタについても小型化・低背化への要求が強くなっている。積層型フィルタを、その性能を維持しつつ、小型化・低背化するためには、特に、コンデンサ部の誘電体層を小型・薄層化することが必要となる。
しかしながら、特許文献1において、誘電体磁器組成物で構成された誘電体層の厚みは50μmであるため、薄層化した場合、信頼性を保証するものではない。また、特許文献1に開示された誘電体磁器組成物は、比較的にガラス成分の含有量が多いため、結晶粒径が大きくなりすぎたり、結晶組織が不均一となってしまい、薄層化が困難となることが考えられる。さらには、ガラス成分の含有量が多くなると、比誘電率が小さくなる傾向にあるだけでなく、外部電極形成時における素体内部(本体積層部)へめっき液が進入してしまう問題があった。また、CuOの添加量が多すぎると、偏析してしまい絶縁抵抗が低下してしまう問題もあった。
特許第3030557号公報
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、ガラス成分を含有させない、あるいは、ガラス成分等の含有量を比較的に減らすことで薄層化に対応可能としつつ、良好な特性(比誘電率、損失Q値、絶縁抵抗)を示す低温焼結誘電体磁器組成物およびこの誘電体磁器組成物から構成されている誘電体層を有する積層型フィルタなどの複合電子部品あるいは積層セラミックコンデンサを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る誘電体磁器組成物は、
チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムおよびチタン酸カルシウムから選ばれる少なくとも1つを含む主成分と、
副成分として、Biの酸化物と、Bの酸化物と、Cuの酸化物と、を含有する誘電体磁器組成物であって、
前記Biの酸化物の含有量が、前記主成分100重量%に対して、Bi換算で、0.5〜10重量%であり、
前記Bの酸化物の含有量が、前記主成分100重量%に対して、B換算で、0.5〜1.5重量%であり、
前記Cuの酸化物の含有量が、前記主成分100重量%に対して、CuO換算で、0.5〜10重量%であることを特徴とする。
本発明の第1の観点では、副成分として、Biの酸化物と、Bの酸化物と、Cuの酸化物と、を、上記の主成分に特定の範囲で含有させる。これら3種の酸化物を上記の範囲で含有させることにより、低温(たとえば、950℃以下)での焼結が可能としつつ、良好な特性(比誘電率、損失Q値、絶縁抵抗)を示す。なお、上記の3種の酸化物のうち、いずれか1つでも含有されない場合には、本発明の効果を得ることができない。
本発明の第2の観点に係る誘電体磁器組成物は、
チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムおよびチタン酸カルシウムから選ばれる少なくとも1つを含む主成分と、
副成分として、Biの酸化物を含むガラス成分と、Bの酸化物と、Cuの酸化物と、を含有する誘電体磁器組成物であって、
前記ガラス成分の含有量が、前記主成分100重量%に対して、0.6〜12重量%であり、
前記Bの酸化物の含有量が、前記主成分100重量%に対して、B換算で、0.5〜1.5重量%であり、
前記Cuの酸化物の含有量が、前記主成分100重量%に対して、CuO換算で、0.5〜10重量%であることを特徴とする。
本発明の第2の観点では、副成分として、Biの酸化物を含むガラス成分と、Bの酸化物と、Cuの酸化物と、を、上記の主成分に特定の範囲で含有させる。すなわち、第1の観点におけるBiの酸化物を、酸化物の形態としてではなく、ガラス成分として上記の範囲で含有させる。この場合であっても、第1の観点と同様の効果を得ることができる。また、第1の観点と同様に、ガラス成分、Bの酸化物、Cuの酸化物のうち、いずれか1つでも含有されない場合には、本発明の効果を得ることができない。
好ましくは、第1の観点および第2の観点において、前記誘電体磁器組成物が、副成分として、Mnの酸化物をさらに含有し、
前記Mnの酸化物の含有量が、前記主成分100重量%に対して、MnO換算で、0重量%より多く、0.6重量%以下である。
第1の観点および第2の観点における主成分および副成分に加え、Mnの酸化物を上記の範囲で含有させることで、特性(損失Q値、絶縁抵抗など)を向上させることができる。
本発明に係る複合電子部品は、
コイル導体および磁性体層で構成されるコイル部と、
内部電極層および誘電体層で構成されるコンデンサ部と、を有する複合電子部品であって、
前記内部電極層が、導電材としてAgを含んでおり、
前記誘電体層が、上記のいずれかに記載の誘電体磁器組成物で構成されている。
本発明に係る複合電子部品としては、特に限定されないが、積層型フィルタ、積層型ノイズフィルタなどが例示される。
あるいは、本発明に係る積層セラミックコンデンサは、
内部電極層と、誘電体層と、が交互に積層してある素子本体を有する積層セラミックコンデンサであって、
前記内部電極層が、導電材としてAgを含んでおり、
前記誘電体層が、上記のいずれかに記載の誘電体磁器組成物で構成されている。
本発明によると、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムおよびチタン酸カルシウムから選ばれる少なくとも1つを含む主成分に対して、Biの酸化物、Bの酸化物、Cuの酸化物を含有させることで、ガラス成分を含有させなくとも、低温(たとえば、950℃以下)での焼成が可能となる。そのため、ガラス含有量の増大に起因する誘電体粒子の結晶粒径の増大を抑制し、外部電極形成時における素体内部(本体積層部)へのめっき液の進入を効果的に防止することができる。しかも、上記の酸化物を含有させることで、良好な特性(比誘電率、損失Q値、絶縁抵抗など)を示し、高信頼性を有する誘電体磁器組成物をも得ることができる。
あるいは、上記のBiの酸化物を、酸化物の形態としてではなく、ガラス成分の構成成分として上記の範囲で含有させる。この場合、ガラス成分の含有量は、従来よりも、比較的に減らすことができるため、同様の効果を得ることができる。
このような誘電体磁器組成物を誘電体層に適用することで、結晶粒径の増大により薄層化が困難となる問題や素体へのめっき液の進入による信頼性の低下を効果的に抑制でき、かつ、良好な特性を有する複合電子部品や積層セラミックコンデンサを得ることができる。しかも、低温(たとえば、950℃以下)での焼結が可能であるため、内部電極層の導電材として、直流抵抗の低いAgを採用することができる。
また、本発明においては、好ましくは、上記の誘電体磁器組成物にMnの酸化物をさらに含有させることで、より良好な特性を得ることができる。したがって、この誘電体磁器組成物で構成された誘電体層を有する複合電子部品や積層セラミックコンデンサについても、特性が向上し、高い信頼性を得ることが可能となる。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る積層型フィルタの斜視図、
図2は図1に示すII−II線に沿う積層型フィルタの断面図、
図3は本発明の一実施形態に係る積層型フィルタの積層構造を示す分解斜視図、
図4(A)はT型の回路の回路図、図4(B)はπ型の回路の回路図、図4(C)はL型の回路の回路図、
図5は本発明のその他の実施形態に係る積層型フィルタの斜視図、
図6は本発明のその他の実施形態に係る積層型フィルタの積層構造を示す分解斜視図、
図7は本発明のその他の実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図である。
積層型フィルタ1
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層型フィルタ1は、本体積層部11を主要部とし、図示上の左側面に外部電極21,22,23、図示上の右側面に外部電極24,25,26を有している。積層型フィルタ1の形状に特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよいが、通常、(0.6〜5.6mm)×(0.3〜5.0mm)×(0.3〜1.9mm)程度である。まず、本実施形態に係る積層型フィルタの構造について説明する。
図2は、図1に示すII−II線に沿う積層型フィルタ1の断面図である。本実施形態に係る積層型フィルタ1は、下層部にコンデンサ部30を有し、上層部にコイル部40を有する。コンデンサ部30は、複数の内部電極31の間に複数の誘電体層32が形成されており、多層のコンデンサとなっている。一方、コイル部40は、磁性体層42中に所定パターンを有するコイル導体41が形成されている。
コンデンサ部30を構成する誘電体層32は、本発明に係る誘電体磁器組成物を含有する。誘電体磁器組成物は、主成分としてチタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムおよびチタン酸カルシウムから選ばれる少なくとも1つを含有し、チタン酸ストロンチウムであることが特に好ましい。
主成分として含有されるチタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムおよびチタン酸カルシウムは、ペロブスカイト型構造を有し、たとえば、組成式ABO(A=Ba,Sr,Ca;B=Ti)で表わすことができる。ペロブスカイト型構造のAサイトを占める元素(Ba、Sr、Ca)と、Bサイトを占めるTiとのモル比は、上記組成式中のAとBとを用いて、A/Bと表される。本実施形態では、0.98≦A/B≦1.10であるものなどを用いることができる。
また、誘電体磁器組成物は、上記主成分以外に、副成分として、Biの酸化物、Bの酸化物およびCuの酸化物が含有される。
Biの酸化物は、比誘電率、損失Q値および絶縁抵抗を向上させる効果を有する。Biの酸化物の含有量は、主成分100重量%に対して、0.5〜10重量%、好ましくは1〜7重量%である。Biの酸化物の含有量が少なすぎる、あるいは、含有させない場合、低温(たとえば、950℃以下)での焼結が困難となる傾向にある。一方、多すぎると、損失Q値および絶縁抵抗が低下してしまい、信頼性に欠ける傾向にある。
Bの酸化物は、誘電体磁器組成物の焼結性を向上させる効果を有する。Bの酸化物の含有量は、主成分100重量%に対して、0.5〜1.5重量%、好ましくは0.7〜1.2重量%である。Bの酸化物の含有量が少なすぎる、あるいは、含有させない場合、低温(たとえば、950℃以下)での焼結が困難となる傾向にある。一方、多すぎても、低温(たとえば、950℃以下)での焼結が困難となる傾向にある。
Cuの酸化物は、誘電体磁器組成物の焼結性を向上させ、さらなる低温度での焼成を可能にする効果を有する。Cuの酸化物の含有量は、主成分100重量%に対して、0.5〜10重量%、好ましくは0.5〜4重量%である。Cuの酸化物の含有量が少なすぎる、あるいは、含有させない場合、低温(たとえば、950℃以下)での焼結が困難となる傾向にある。一方、多すぎると、損失Q値および絶縁抵抗が低下してしまい、信頼性に欠ける傾向にある。
あるいは、誘電体磁器組成物は、上述のBiの酸化物の代わりに、酸化物の形態ではなく、副成分として、Biの酸化物を含むガラス成分を含有してもよい。このガラス成分は、ガラス軟化点が900℃以下の低融点ガラスである。なお、ガラス軟化点は、JIS−R−3103により測定される。
ガラス軟化点が900℃以下である低融点ガラス成分を、Biの酸化物の代わりに、含有させた場合にも、たとえば、950℃以下での低温焼成が可能となり、内部電極31を直流抵抗の低いAgで構成した電子部品に適用することができる。
このガラス成分としては、Biの酸化物を含み、ガラス軟化点が900℃以下であれば、特に制限されないが、具体的には、Bi−B系ガラス、Bi−B−ZnO系ガラス、Bi−B−SiO系ガラス、Bi−B−SiO−LiO系ガラスなどが挙げられ、Bi−B系ガラス、Bi−B−SiO−LiO系ガラスが好ましい。
なお、ガラス成分として、Bi−B系ガラスを用いる場合、Biの含有割合が、80〜90重量%、Bの含有割合が10〜20重量%、残部が微量成分であることが好ましい。また、Bi−B系ガラスに、Bがガラス成分の一部として含有されている場合であっても、酸化物としてのBの酸化物の含有量は、上述の範囲となる。
ガラス成分の含有量は、主成分100重量%に対して、0.6〜12重量%、好ましくは1.2〜8重量%である。
ガラス成分の含有量が少なすぎると、低温(たとえば、950℃以下)において十分な焼結性が得られない傾向にある。一方、多すぎると、損失Q値および絶縁抵抗が低下する傾向にあり、その結果、電子部品の信頼性に欠ける傾向にある。
なお、副成分としてのBiの酸化物と、副成分としてのガラス成分とが、両方とも誘電体磁器組成物に含有されていてもよい。
また、本実施形態の誘電体磁器組成物は、さらに、Mnの酸化物を含有することが好ましい。Mnの酸化物を含有させることで、損失Q値や絶縁抵抗を向上させることができるため、電子部品としての信頼性を高めることができる。
Mnの酸化物の含有量は、主成分100重量%に対して、好ましくは0重量%より多く、0.6重量%以下、より好ましくは0.1〜0.4重量%である。Mnの酸化物の含有量が多すぎると、損失Q値や絶縁抵抗が低下し信頼性に欠ける傾向にある。
また、本実施形態の誘電体磁器組成物は、上記の各成分を含有することにより、その収縮率を、後述するコイル部の磁性体層42の収縮率に近づけることが可能となる。その結果、誘電体層32と磁性体層42との間で焼成時に発生する剥がれ、反り、クラック等の構造欠陥を効果的に抑制することが可能となる。
誘電体層32を構成する焼結後の誘電体結晶粒子の平均結晶粒子径は、好ましくは1.5μm以下、より好ましくは1.0μm以下である。平均結晶粒子径の下限については、特に限定されないが、通常0.5μm程度である。誘電体結晶粒子の平均結晶粒子径が、大き過ぎると絶縁抵抗が劣化する傾向にある。
誘電体結晶粒子の平均結晶粒子径は、たとえば、誘電体層32を切断し、切断面をSEM観察して、所定数の誘電体結晶粒子の結晶粒子径を測定し、その測定結果を基に算出することができる。なお、各誘電体結晶粒子の結晶粒子径は、たとえば、各結晶粒子を球と仮定したコード法により求めることができる。また、平均結晶粒子径の算出の際に、結晶粒子径の測定を行う粒子の数は、通常100個以上とする。
一対の内部電極31に挟まれている部分における誘電体層32の厚み(g)は、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下である。本発明の誘電体磁器組成物で誘電体層を構成することにより、誘電体層32の厚み(g)を上記の範囲とし、薄層化を実現することができる。
コンデンサ部30を構成する内部電極31に含有される導電材は特に限定されないが、本発明の誘電体磁器組成物は、低温(たとえば、950℃以下)での焼成が可能なので、本実施形態では、導電材として直流抵抗の低い銀を用いる。
内部電極31の厚みは、特に限定されず、誘電体層32の厚みに応じて適宜決定すればよいが、誘電体層の厚みに対する比が、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下である。このように、内部電極31の厚みを誘電体層32の厚みの35%以下、さらに30%以下とすることにより、デラミネーションと称されている層間剥離現象を有効に防止することが可能となる。特に、30%以下とすることにより、デラミネーションの発生率をほぼ0%とすることができる。
コイル部40を構成する磁性体層42は、磁性体材料を含有する。磁性体材料としては、特に限定はされないが、主成分として、Niの酸化物、Cuの酸化物、Znの酸化物またはMnの酸化物などを含有するフェライトであることが好ましい。このようなフェライトとしては、たとえばNi−Cu−Zn系フェライト、Cu−Zn系フェライト、Ni−Cu系フェライト、Ni−Cu−Zn−Mg系フェライトなどが挙げられる。これらのなかでも、Ni−Cu−Zn系フェライトまたはCu−Zn系フェライトを使用することが好ましい。なお、磁性体層42は、上記主成分以外に、必要に応じて、副成分を含有してもよい。
コイル部40を構成するコイル導体41に含有される導電材としては、内部電極31と同じものが使用できる。
外部電極21〜26は特に限定されないが、銀電極が使用でき、この銀電極は、Cu−Ni−Sn、Ni−Sn、Ni−Au、Ni−Ag等でめっきされていることが好ましい。
積層型フィルタ1の製造方法
本実施形態の積層型フィルタは、従来の積層型フィルタと同様に、誘電体グリーンシートおよび磁性体グリーンシートを作製し、これらのグリーンシートを積層し、グリーン状態の本体積層部11を形成し、これを焼成した後、外部電極21〜26を形成することにより製造される。以下、製造方法について具体的に説明する。
誘電体グリーンシートの製造
まず、誘電体磁器組成物原料を構成する各主成分原料および、必要に応じて、その他の副成分原料を準備する。
主成分原料としては、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムおよびチタン酸カルシウムやその混合物、複合酸化物を用いることができるが、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物、例えば、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることもできる。
また、副成分は、添加する副成分の種類に応じて適宜準備すれば良いが、たとえば、Bi、B、Cuの酸化物や、焼成によりBi、B、Cuの酸化物となる化合物を使用することが好ましい。
Biの酸化物の代わりに、Biの酸化物を含むガラス成分を副成分として用いる場合、その原料としては、該ガラス成分を構成する酸化物やその混合物、複合酸化物、その他、焼成により該ガラス成分を構成する酸化物や複合酸化物となる各種化合物を用いることができる。
ガラス成分は、該ガラス成分を構成する酸化物等の原料を混合して、焼成し、その後急冷し、ガラス化させることで得られる。
次に、各主成分原料および副成分原料を混合し、混合粉体を調整する。各主成分原料および副成分原料の混合を行う方法としては、特に限定されないが、たとえば、原料粉末を粉体状態で乾式混合により行っても良いし、原料粉末に水や有機溶媒などを添加し、ボールミル等を使用し、湿式混合により行っても良い。
次に、上記にて得られた混合粉体について、予備焼成を行い副成分との反応を促進させた粉体を作製する。予備焼成は、保持温度を好ましくは500〜850℃、さらに好ましくは600〜850℃、温度保持時間を好ましくは1〜15時間とする。この予備焼成は、大気中で行っても良く、また大気中よりも酸素分圧が高い雰囲気または純酸素雰囲気で行っても良い。
次に、予備焼成にて得られた粉体の粉砕を行い焼成前粉体を調整する。粉体の粉砕の方法としては、特に限定されないが、たとえば、粉体に水や有機溶媒などを添加し、ボールミル等を使用し、湿式混合により行うことができる。そして、得られた焼成前粉体を塗料化して、誘電体層用ペーストを調整する。
誘電体層用ペーストは、焼成前粉体と有機ビヒクルとを混練した有機系の塗料であってもよく、水系の塗料であってもよい。
内部電極用ペーストは、導電材としての銀と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。
上記した各ペースト中の有機ビヒクルの含有量に特に制限はなく、通常の含有量、例えば、焼成前粉体100重量%に対して、バインダは5〜15重量%程度、溶剤は50〜150重量%程度とすればよい。また、各ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤等から選択される添加物が含有されていてもよい。これらの総含有量は、10重量%以下とすることが好ましい。
次に、誘電体層用ペーストをドクターブレード法などによりシート化し、誘電体グリーンシートを形成する。
次に、誘電体グリーンシート上に、内部電極を形成する。内部電極の形成は、内部電極用ペーストをスクリーン印刷等の方法によって、誘電体グリーンシート上に形成する。なお、内部電極の形成パターンは、製造する積層型フィルタの回路構成等に応じて適宜選択すればよいが、本実施形態においては、後述する各パターンとする。
磁性体グリーンシートの製造
まず、磁性体層用ペーストに含まれる磁性体材料を準備し、これを塗料化して、磁性体層用ペーストを調整する。
磁性体層用ペーストは、磁性体材料と有機ビヒクルとを混練した有機系の塗料であってもよく、水系の塗料であってもよい。
磁性体材料としては、主成分の出発原料として、Fe、Ni、Cu、Zn、Mgの各酸化物あるいは焼成後にこれらの各酸化物となる各種化合物、例えば、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることもできる。また、磁性体材料には、上記主成分以外にも必要に応じて副成分の出発原料を含有してもよい。
なお、磁性体材料は、磁性体層用ペーストとする前に、磁性体材料を構成する各出発原料を仮焼合成等により、あらかじめ反応させておいてもよい。
コイル導体用ペーストは、たとえば銀などの導電材と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。
次に、磁性体層用ペーストをドクターブレード法などによりシート化し、磁性体グリーンシートを形成する。
次に、上記にて作製した磁性体グリーンシート上に、コイル導体を形成する。コイル導体の形成は、コイル導体用ペーストをスクリーン印刷等の方法によって、磁性体グリーンシート上に形成する。なお、コイル導体の形成パターンは、製造する積層型フィルタの回路構成等に応じて適宜選択すればよいが、本実施形態においては、後述する各パターンとする。
次に、磁性体グリーンシート上のコイル導体にスルーホールを形成する。スルーホールの形成方法としては、特に限定されないが、たとえばレーザー加工などにより行うことができる。なお、スルーホールの形成位置は、コイル導体上であれば特に限定されないが、コイル導体の端部に形成することが好ましく、本実施形態においては、後述する各位置とする。
グリーンシートの積層
次に、上記にて作製した各誘電体グリーンシートおよび磁性体グリーンシートを、順に積層し、グリーン状態の本体積層部11を形成する。
本実施形態においては、グリーン状態の本体積層部11は、図3に示すように、コンデンサ部を構成する内部電極が形成された誘電体グリーンシートを複数枚積層し、その上に、コイル部を構成するコイル導体が形成された磁性体グリーンシートを複数枚積層して製造される。
以下、グリーンシートの積層工程を詳述する。
まず、最下層に内部電極を形成していない誘電体グリーンシート32cを配置する。内部電極を形成していない誘電体グリーンシート32cは、コンデンサ部を保護するために使用され、その厚みは、適宜調整すれば良い。
次に、内部電極を形成していない誘電体グリーンシート32c上に、誘電体グリーンシートの短手方向Xの奥側の側部から誘電体グリーンシートの端部に突出する一対の導出部24aおよび26aを有する内部電極31aが形成された誘電体グリーンシート32aを積層する。
次に、内部電極31aが形成された誘電体グリーンシート32aの上に、誘電体グリーンシートの短手方向Xの手前側および奥側からそれぞれ誘電体グリーンシートの端部に突出する一対の導出部22aおよび25aを有する内部電極31bが形成された誘電体グリーンシート32bを積層する。
そして、このように内部電極31aが形成された誘電体グリーンシート32aと、内部電極31bが形成された誘電体グリーンシート32bとを積層することにより、内部電極31a、31bと誘電体グリーンシート32bとで構成されるグリーン状態の単層のコンデンサ30bが形成される。
次に、内部電極31bが形成された誘電体グリーンシート32bの上に、内部電極31aが形成された誘電体グリーンシート32aを積層し、同様に、内部電極31a、31bと誘電体グリーンシート32aとで構成されるグリーン状態の単層のコンデンサ30aが形成される。
同様に、内部電極31aが形成された誘電体グリーンシート32aと、内部電極31bが形成された誘電体グリーンシート32bとを交互に積層することにより、複数のグリーン状態の単層のコンデンサ30aおよび30bとが交互に形成されたコンデンサ部を得ることができる。なお、本実施形態においては、単層のコンデンサ30a、30bが合計で6層となるように積層する態様を例示したが、その積層数については特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
次に、上記にて形成されたグリーン状態のコンデンサ部の上に、グリーン状態のコイル部を形成する。
まず、コンデンサ部の上に、コイル導体が形成されていない磁性体グリーンシート42eを積層する。コンデンサ部の上に積層するコイル導体が形成されていない磁性体グリーンシート42eは、コンデンサ部とコイル部とを分離する目的で使用され、その厚みは、適宜調整すれば良い。なお、本実施形態では、コンデンサ部とコイル部とを分離するために磁性体グリーンシート42eを使用する態様を例示したが、磁性体グリーンシート42eの代わりに誘電体グリーンシートを使用することも可能である。
次に、コイル導体が形成されていない磁性体グリーンシート42eの上に、一端が磁性体グリーンシートの短手方向Xの手前側の端部に突出する導出部21aおよび23aをそれぞれ有する一対のコイル導体41aが形成された磁性体グリーンシート42aを積層する。
そして、その上に、略C字形の一対のコイル導体41bが形成された磁性体グリーンシート42bを積層する。なお、略C字形のコイル導体41bは、曲部が磁性体グリーンシートの長手方向Yの手前側となるように配置され、さらに、磁性体グリーンシートの短手方向Xの手前側の一端にスルーホール51bが形成されている。
また、略C字形の一対のコイル導体41bが形成された磁性体グリーンシート42bを積層する際には、導体ペーストを使用し、磁性体グリーンシート42bに形成されている一対のスルーホール51bを介して、コイル導体41aとコイル導体41bとを電気的に接合する。なお、スルーホールを接合する際に使用する導体ペーストは、特に限定されないが、銀ペーストが好ましく用いられる。
次いで、磁性体グリーンシート42bの上に、コイル導体41bと逆のパターンの一対のコイル導体41cが形成された磁性体グリーンシート42cを積層する。すなわち、磁性体グリーンシート42cには、コイル導体41cが、その曲部が磁性体グリーンシート42cの長手方向Yの奥側となるように配置されており、また、このコイル導体41c上には、磁性体グリーンシートの短手方向Xの奥側の一端に一対のスルーホール51cが形成されている。そして、同様に、導体ペーストを使用して、このスルーホール51cを介し、コイル導体41bとコイル導体41cとを電気的に接合する。
同様にして、コイル導体41bが形成された磁性体グリーンシート42bと、コイル導体41cが形成された磁性体グリーンシート42cと、を交互に複数枚積層する。次いで、コイル導体41bが形成された磁性体グリーンシート42bの上に、磁性体グリーンシート42dを積層する。この磁性体グリーンシート42dは、一端が磁性体グリーンシート42dの短手方向Xの奥側の端部に突出する導出部24bおよび26bをそれぞれ有する一対のコイル導体41dが形成された磁性体グリーンシートである。なお、磁性体グリーンシート42dを積層する際には、コイル導体41d上の短手方向Xの手前側の一端に形成された一対のスルーホール51dを介して、導体ペーストを使用して、コイル導体41bとコイル導体41dとを電気的に接合する。
最後に、コイル導体41dが形成された磁性体グリーンシート42dの上に、コイル導体が形成されていない磁性体グリーンシート42fを積層する。この磁性体グリーンシート42fは、コイル部を保護するため、および積層型フィルタの厚み寸法を調整するために使用され、その厚みは、積層型フィルタの厚みが所望の厚みになるように、適宜調整すれば良い。
上記のように、各スルーホールを介して、各磁性体グリーンシート上のコイル導体を接合することにより、磁性体グリーンシート2枚で1巻きとなるコイルが形成される。
本体積層部の焼成および外部電極の形成
次に、誘電体グリーンシートおよび磁性体グリーンシートを順次積層することにより作製したグリーン状態の本体積層部を焼成する。焼成条件としては、昇温速度を好ましくは50〜500℃/時間、さらに好ましくは200〜300℃/時間、保持温度を好ましくは840〜900℃、温度保持時間を好ましくは0.5〜8時間、さらに好ましくは1〜3時間、冷却速度を好ましくは50〜500℃/時間、さらに好ましくは200〜300℃/時間とする。
次に、焼成を行った本体積層部に、たとえばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、本体積層部の両側面に外部電極用ペーストを塗布・乾燥した後、焼き付けすることにより図1に示すような外部電極21〜26を形成する。外部電極用ペーストは、たとえば銀などの導電材と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製することができる。なお、このようにして形成した外部電極21〜26上には、Cu−Ni−Sn、Ni−Sn、Ni−Au、Ni−Ag等で電気めっきを行うことが好ましい。
外部電極を形成する際に、外部電極21および23は、図3に示すコイル部の導出部21aおよび23aと接続することにより、入出力端子とする。また、外部電極24は、コンデンサ部の各導出部24aおよびコイル部の導出部24bに接続することにより、コンデンサ部とコイル部を接続する入出力端子とする。そして、外部電極26も同様に、コンデンサ部の各導出部26aおよびコイル部の導出部26bに接続することにより、コンデンサ部とコイル部を接続する入出力端子とする。外部電極22および25は、それぞれコンデンサ部の各導出部22aおよび25aに接続し、接地端子とする。
上記のように、本体積層部11に各外部電極21〜26を形成することにより、本実施形態の積層型フィルタは、図4(A)に示すT型の回路を構成することとなる。
このようにして製造された本実施形態の積層型フィルタは、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
たとえば、上述した実施形態では、T型の回路が形成された積層型フィルタを例示したが、他の集中定数回路が形成された積層型フィルタとすることも可能である。たとえば、他の集中定数回路としては、図4(B)に示すπ型や、図4(C)に示すL型や、二つのπ型の回路により形成されるダブルπ型としても良く、また、図5、図6に示すL型の回路が4つ形成された積層型フィルタ101としても良い。
図5、図6に示すL型の回路が4つ形成された積層型フィルタ101においては、上述した実施形態と誘電体層や磁性体層を構成する材料は同じものが使用でき、また、誘電体グリーンシートおよび磁性体グリーンシートは、上述した実施形態と同様に作製すればよい。
図5、図6に示す積層型フィルタにおいては、図5に示す外部電極121〜124が、図6に示すコイル部の各導出部121a〜124aと接続され、入出力端子を形成することとなる。また、同様に、外部電極125〜128は、コンデンサ部の各導出部125a〜128aおよびコイル部の各導出部125b〜128bに接続され、コンデンサ部とコイル部とを接続する入出力端子を形成することとなる。さらに、外部電極120,129は、それぞれコンデンサ部の各導出部120a,129aに接続され、接地端子を形成することとなる。
そして、図5、図6に示す積層型フィルタ101は、図4(C)に示すL型の回路が4つ形成された構成となる。
また、上述した実施形態では、本発明に係る複合電子部品として積層型フィルタを例示したが、本発明に係る複合電子部品としては、積層型フィルタに限定されず、上述の誘電体磁器組成物から構成される誘電体層を有するものであれば何でも良い。
たとえば、図7に示すように、誘電体層202と、内部電極層203と、が交互に積層された素子本体210を有し、その両端部に外部電極204が形成された積層セラミックコンデンサ201としてもよい。この場合にも、内部電極層はAgを導電体とすることが好ましい。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例1
まず、誘電体磁器組成物原料を構成する主成分原料として、SrTiOと、副成分原料として、Bi、B、CuO、MnCOとを準備した。なお、SrTiOのA/B比、すなわち、Sr/Ti比は1.00とした。また、MnCOは、焼成後に、MnOとして誘電体磁器組成物中に含有されることとなる。
これらの原料を、焼結後に表1に示す組成比となるように秤量配合し、ボールミルにより16時間湿式混合した。湿式混合後、得られたスラリーを乾燥機にて、150℃−24hの条件で乾燥させ、さらに、乾燥させた混合粉体をバッチ炉にて800℃で仮焼きして、仮焼き粉を得た。この仮焼き粉を、ボールミルにより湿式混合し、得られたスラリーを乾燥機にて、150℃−24hの条件で乾燥させ、誘電体磁器組成物原料とした。
次いで、この誘電体磁器組成物原料に、溶剤で希釈したアクリル樹脂を有機バインダとして加え、顆粒とした後、加圧成形し、直径12mm、厚み3mmの円板状成形体を得た。この成形体を、空気中で900℃−2hの条件で焼成して、焼結体を得た。
得られた焼結体について、焼成前の成形体の寸法と、焼成後の焼結体の寸法とから収縮率を算出した。結果を表1に示す。また、焼成後の焼結体の寸法および重量から、焼結体密度を算出し、理論密度に対する焼結体密度を相対密度として算出した。相対密度は90%以上を良好とした。結果を表1に示す。
さらに、得られた焼結体の両面にIn−Gaを塗布して電極とし、比誘電率、損失Q値および絶縁抵抗の評価を行った。
比誘電率
電極を形成した焼結体に対し、基準温度20℃において、デジタルLCRメータ(YHP社製4274A)にて、周波数1MHz,入力信号レベル(測定電圧)1Vrms/μmの条件下で、静電容量Cを測定した。そして、得られた静電容量と、焼結体の電極面積および電極間距離とから、比誘電率(単位なし)を算出した。評価基準は、250以上を良好とした。結果を表1に示す。
損失Q値
比誘電率の測定条件と同条件下で、誘電損失(tanδ)を測定し、得られた誘電損失(tanδ)に基づいて、損失Q値(=1/tanδ)を算出した。損失Q値は、高い方が好ましい。評価基準は、100以上を良好とした。結果を表1に示す。
絶縁抵抗(ρ)
電極を形成した焼結体に対し、絶縁抵抗計(HEWLETT PACKARD社製E2377Aマルチメーター)を使用して、25℃においてDC10Vを30秒間印加した後の抵抗値を測定し、この測定値と、焼結体の電極面積および厚みとから、絶縁抵抗ρを算出した。本実施例では、20個の試料について測定を行い、その平均を求めることにより評価した。評価基準は、1.0×10Ω・m以上を良好とした。結果を表1に示す。
Figure 2008254935
表1より、副成分としてのBi、B、CuOのうち、いずれか1つ、あるいは、2つが含有されている場合には(試料1〜12)、焼結しないか、あるいは、900℃における焼結が不十分となり、所望の特性が得られないことが確認できる。
これに対して、Bi、B、CuOが3種とも含有され、その含有量が本発明の範囲内である場合には(試料13〜17、20〜22、24〜26)、十分に焼結し、かつ、良好な特性を示していることが確認できる。
なお、Bi、B、CuOが3種とも含有されていても、その含有量が本発明の範囲外である場合には(試料18、19、23、27)、焼結性に劣るか、あるいは、良好な特性を得られないことが確認できる。
実施例2
Bi、B、CuOおよびMnOの含有量を、表2に示す量とした以外は、試料13と同様にして、誘電体磁器組成物を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 2008254935
表2より、Bi、B、CuOの含有量が本発明の範囲内であれば、MnOを含有させない場合であっても(試料28)、良好な特性が得られることが確認できる。また、MnOを本発明の好ましい範囲内で含有させることにより(試料29および30)、比誘電率や損失Q値を向上させることができる。なお、MnOの含有量が本発明の好ましい範囲よりも多くなる場合には(試料31)、絶縁抵抗が悪化する傾向にあることが確認できる。
実施例3
酸化物としてのBiの代わりに、Bi−B系ガラスを含有させ、その含有量を、表3に示す量とした以外は、試料13と同様にして、誘電体磁器組成物を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表3に示す。なお、Bi−B系ガラスのガラス軟化点は、440℃であった。
また、Bi−B系ガラスは、市販のガラスを用いた。
なお、Bi−B系ガラスの組成は、Bi:85重量%、B:15重量%であった。
Figure 2008254935
表3より、Biの代わりに、Bi−B系ガラスを含有させ、その含有量を本発明の範囲内とした場合には(試料33〜36)、十分に焼結し、良好な特性を示していることが確認できる。
一方、Bi−B系ガラス、B、CuOのうち、CuOが含有されていない場合には(試料32)、900℃では焼結しない結果となった。また、Bi−B系ガラスの含有量が本発明の範囲外である場合には(試料37)、損失Q値および絶縁抵抗が悪化する傾向にあることが確認できる。
以上説明してきたように、本発明によれば、比誘電率、損失Q値および絶縁抵抗のいずれもが良好である誘電体磁器組成物が得られる。しかも、900℃での焼成であっても、十分に焼結し、かつ、収縮率を適度なものとすることができる。
したがって、本発明に係る誘電体磁器組成物を、LC複合電子部品に適用した場合であっても、コイル部を構成する磁性体層と同時焼成が可能となり、上記した良好な特性を示す誘電体層を有する複合電子部品を提供することができる。
また、本発明の誘電体磁器組成物は、内部電極層がAgで構成された積層セラミックコンデンサの誘電体層としても好適である。
図1は本発明の一実施形態に係る積層型フィルタの斜視図である。 図2は図1に示すII−II線に沿う積層型フィルタの断面図である。 図3は本発明の一実施形態に係る積層型フィルタの積層構造を示す分解斜視図である。 図4(A)はT型の回路の回路図、図4(B)はπ型の回路の回路図、図4(C)はL型の回路の回路図である。 図5は本発明のその他の実施形態に係る積層型フィルタの斜視図である。 図6は本発明のその他の実施形態に係る積層型フィルタの積層構造を示す分解斜視図である。 図7は本発明のその他の実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図である。
符号の説明
1… 積層型フィルタ
11… 本体積層部
21〜26… 外部電極
30… コンデンサ部
31… 内部電極
32… 誘電体層
40… コイル部
41… コイル導体
42… 磁性体層

Claims (5)

  1. チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムおよびチタン酸カルシウムから選ばれる少なくとも1つを含む主成分と、
    副成分として、Biの酸化物と、Bの酸化物と、Cuの酸化物と、を含有する誘電体磁器組成物であって、
    前記Biの酸化物の含有量が、前記主成分100重量%に対して、Bi換算で、0.5〜10重量%であり、
    前記Bの酸化物の含有量が、前記主成分100重量%に対して、B換算で、0.5〜1.5重量%であり、
    前記Cuの酸化物の含有量が、前記主成分100重量%に対して、CuO換算で、0.5〜10重量%であることを特徴とする誘電体磁器組成物。
  2. チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムおよびチタン酸カルシウムから選ばれる少なくとも1つを含む主成分と、
    副成分として、Biの酸化物を含むガラス成分と、Bの酸化物と、Cuの酸化物と、を含有する誘電体磁器組成物であって、
    前記ガラス成分の含有量が、前記主成分100重量%に対して、0.6〜12重量%であり、
    前記Bの酸化物の含有量が、前記主成分100重量%に対して、B換算で、0.5〜1.5重量%であり、
    前記Cuの酸化物の含有量が、前記主成分100重量%に対して、CuO換算で、0.5〜10重量%であることを特徴とする誘電体磁器組成物。
  3. 前記誘電体磁器組成物が、副成分として、Mnの酸化物をさらに含有し、
    前記Mnの酸化物の含有量が、前記主成分100重量%に対して、MnO換算で、0重量%より多く、0.6重量%以下である請求項1または2に記載の誘電体磁器組成物。
  4. コイル導体および磁性体層で構成されるコイル部と、
    内部電極層および誘電体層で構成されるコンデンサ部と、を有する複合電子部品であって、
    前記内部電極層が、導電材としてAgを含んでおり、
    前記誘電体層が、請求項1〜3のいずれかに記載の誘電体磁器組成物で構成されている複合電子部品。
  5. 内部電極層と、誘電体層と、が交互に積層してある素子本体を有する積層セラミックコンデンサであって、
    前記内部電極層が、導電材としてAgを含んでおり、
    前記誘電体層が、請求項1〜3のいずれかに記載の誘電体磁器組成物で構成されている積層セラミックコンデンサ。
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