しかしながら、特許文献3及び4のように、除去した液体を吸引装置で吸引する方法は、吸引装置を別途設けなくてはならず、装置が大がかりになるという欠点がある。更に、特許文献3は、噴出ノズル通過後、すなわち液体除去後のシートに液滴が残存しなければ良いという技術であるので、本願発明を適用する好ましい一例のように、洗浄中にも化学反応が進行するような薬剤を洗浄する場合には、洗浄途中、即ち気体噴出ノズルを通過する前に液滴やミストが再付着すると化学反応の進行ムラが発生してしまう。また、特許文献4及び5は、不連続に搬送される板状の基板から気体の噴出で液体を除去する技術であり、基板が通過するときだけ液滴やミストが再付着しないようにしたものである。従って、不連続に搬送される板状の基板には適用できても、本願発明のように連続搬送されるウエブ状被洗浄物の場合には、液滴やミストが再付着してしまうという問題がある。
ところで、ウエブ状の被洗浄物に薬剤を塗布して化学反応を行わせ、その後に化学反応を停止するために薬剤を洗浄液で洗浄して除去する際に、均一洗浄が要求される分野は光学補償シートを製造するためのポリフイルムの鹸化に限らず、他の分野でも必要な技術である。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ウエブ状の被洗浄物に洗浄液を吹き付けて形成される液膜を、噴出ノズルから噴出する気体で除去する際に、除去した洗浄液の液滴やミストが被洗浄物に再付着することを防止できるので、洗浄中においても化学反応が進行する薬剤を洗浄する場合であっても、洗浄ムラのない均一洗浄を行うことができると共に、噴出ノズルの噴出口を液滴やミストのスケールで目詰まりさせることがないウエブ状被洗浄物の洗浄方法及び装置を提供することを目的とする。
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、搬送されるウエブ状の被洗浄物の表面に洗浄液を吹き付ける洗浄液吹き付け工程と、前記被洗浄物の搬送方向に対向する向きの噴出流が少なくとも形成されるように気体を噴出して前記被洗浄物の表面に残存する液膜を除去する洗浄液除去工程と、を有するウエブ状被洗浄物の洗浄方法において、前記気体の噴出によって誘因される誘因エアのうち、前記洗浄液の吹き付け位置側から前記気体の噴出位置側に誘因される誘因エアを遮風することを特徴とするウエブ状被洗浄物の洗浄方法を提供する。
尚、被洗浄物から除去された液滴にはミストも含むものとすると共に、被洗浄物の搬送方向は水平方向であることが好ましいが、水平に対して多少傾いている場合にも適用できる。以下同様である。
本発明の発明者は、被洗浄物から除去された洗浄液の液滴が被洗浄物や噴出ノズルに再付着する要因として、気体の噴出によって誘因される誘因エアが大きく関与しているとの知見を得た。即ち、気体の噴出によるエゼクター作用によって、噴出周辺のエアが誘因され、この誘因エアの一つとして洗浄液の吹き付け位置から気体の噴出位置に向かう誘因エアが発生する。そして、被洗浄物から除去された洗浄液の液滴が、この誘因エアに運ばれて、洗浄途中の被洗浄物表面や気体を噴出する噴出ノズルに再付着する。被洗浄物に再付着した液滴は、洗浄ムラの原因となると共に、噴出ノズルの噴出口に再付着した液滴はそのスケール(液滴中の固形分)により、噴出口を目詰まりさせる。
本発明の請求項1によれば、気体の噴出によって誘因される誘因エアの成分のうち、吹き付け位置側から噴出位置側に誘因される成分の誘因エアを少なくとも遮風するようにしたので、被洗浄物から除去された洗浄液の液滴が被洗浄物表面や噴出ノズルに再付着するのを防止することができる。これにより、洗浄中においても化学反応が進行する薬剤を洗浄する場合であっても、洗浄ムラのない均一洗浄を行うことができるので、被洗浄物の部分において化学反応ムラが発生しない。また、噴出ノズルの噴出口を付着した液滴中のスケールで目詰まりさせることがない。
請求項2は、請求項1において、前記被洗浄物の表面には、前記被洗浄物に対して化学反応を行う薬剤が塗布されており、該薬剤の化学反応を停止するために前記洗浄液で洗浄することを特徴とする。
請求項2のように、被洗浄物に対して化学反応を行う薬剤が塗布されており、該薬剤の化学反応を停止するために洗浄液で洗浄する場合において、本発明が特に有効である。尚、化学反応を洗浄して停止するとは、単に化学反応を行う薬剤を洗い落とすことに限定されず、洗浄液と化学反応を行わせることで、薬剤の化学反応を停止することも含む。
請求項3は請求項2において、前記被洗浄物はポリマーフイルムであると共に、前記薬剤は前記ポリマーフイルムをアルカリ鹸化処理するアルカリ液であることを特徴とする。
請求項3のように、光学補償フイルムを製造する際に、透明支持体としてのポリマーフイルムをアルカリ鹸化し、鹸化反応を停止させるためにアルカリ液を洗浄液で洗浄する工程では精度の良い均一洗浄が要求されるので、本発明が特に有効になる。
請求項4は請求項1〜3のいずれか1において、前記被洗浄物の搬送方向に対向する向きに形成される噴出流の外縁部を検出し、該検出結果に基づいて、前記誘因エアを遮風する遮風壁の先端を前記外縁部に位置させることを特徴とする。
請求項4は、遮風壁の好ましい配置位置を規定したものである。
本発明は、吹き付け位置から噴出位置に誘因される誘因エアを遮風壁で遮風することで、遮風壁がない場合に比べて被洗浄物から除去された液滴が被洗浄物表面や噴出ノズルに再付着しない効果を発揮することができるが、遮風壁の配置位置を適切に設定することで一層の効果を発揮できる。ここで、遮風壁とは、固体物に限定されず、例えばエアカーテンの気体による壁も含む。遮風壁の横幅は、被洗浄物の横幅と同等〜1.3倍が好ましく、遮風壁の厚みは0.1〜10mmに形成することが好ましい。
請求項4によれば、遮風壁の先端(被洗浄物側の先端)を、噴出流の外縁部に位置させるようにしたので、遮風壁を配置しても被洗浄物から洗浄液を除去する除去性能を低下させることがなく、且つ除去された液滴が被洗浄物表面や噴出ノズルに再付着しない効果を向上できる。
尚、外縁部とは、気体の噴出流が噴出位置から末広がり形状に形成される領域の直ぐ外側の領域を言い、風速が略ゼロに近い領域を言う。具体的には、風速が0m/秒を超え、ノズル噴出風速の0.5%以下の風速もしくは0.5m/秒以下の風速のいずれか小さい値までの領域をいう。従って、外縁部は、噴出流近傍の風速を何点か測定することにより特定することができる。
請求項5は請求項1〜4のいずれか1において、前記洗浄液吹き付け工程と前記洗浄液除去工程とを一組とした洗浄工程を多段で行うと共に、各洗浄工程では、前記被洗浄物の表面が均一な湿潤状態を維持した状態で次段の洗浄工程に送るための湿潤処理を行うことを特徴とする。
請求項5は、洗浄液吹き付け工程と洗浄液除去工程とを一組とした洗浄工程を多段で行うことを前提とした発明である。例えば、洗浄工程を3段で行う場合、1段目の洗浄工程で被洗浄物から洗浄液を略完全に除去して被洗浄物表面が乾き過ぎの状態にあると、2段目の洗浄工程において吹き付けた洗浄液が被洗浄物表面に均一に塗布されにくくなる。これにより、液膜の厚みムラが形成されるので、洗浄ムラが発現してしまう。洗浄ムラが発現すると、洗浄中にも反応が進む薬剤を洗浄する場合に、反応ムラが発現してしまい不良品となる。
請求項5では、被洗浄物の表面が均一な湿潤状態を維持した状態で次段の洗浄工程に送られるようにしたので、洗浄液を被洗浄物に吹き付けて均一な塗布を行うことができ、液膜の厚みムラが形成されないので、洗浄ムラが発現しにくくなる。
請求項6は請求項5において、前記湿潤処理は、前記噴出流の流速及び/又は風量を制御する処理であることを特徴とする。
請求項6は湿潤処理の好ましい一態様を示すものであり、噴出流の流速及び/又は風量を制御する方法である。噴出流の流速及び/又は風量を制御することで、被洗浄物から除去される洗浄液量が変わるので、湿潤状態を維持できる流速及び/又は風量に制御すればよい。
請求項7は請求項5において、前記湿潤処理は、前記噴出流を形成する気体中に、前記洗浄液の蒸気を含有させる処理であることを特徴とする。
請求項7は湿潤処理の好ましい別の態様を示すものであり、噴出流を形成する気体中に、前記洗浄液の蒸気を含有させる方法である。尚、噴出流の流速及び/又は風量の制御を併用してもよい。
請求項8は請求項5において、前記湿潤処理は、前記被洗浄物の表面から洗浄液を除去する噴出流の他に、前記被洗浄物の表面を加湿する加湿用気体を別途噴出させる処理であることを特徴とする。
請求項8は湿潤処理の好ましい更に別の態様を示すものであり、洗浄液を除去する噴出流とは別に、被洗浄物の表面を加湿する加湿用気体を噴出させる方法である。尚、噴出流の流速及び/又は風量の制御と併用するようにしてもよい。
請求項9は請求項1〜8のいずれか1において、前記搬送される被洗浄物の洗浄対象である前記表面は、上面と下面のうちの下面であることを特徴とする。
被洗浄物の表面、即ち洗浄対象面が下面である方が、被洗浄物から除去された洗浄液の液滴が落下するので、好ましい。
本発明の請求項10は前記目的を達成するために、搬送されるウエブ状の被洗浄物の表面に洗浄液を吹き付ける洗浄液吹き付けノズルと、前記被洗浄物の搬送方向に対向する向きの噴出流が少なくとも形成されるように気体を噴出して前記被洗浄物の表面に残存する液膜を除去する気体噴出ノズルと、を有するウエブ状被洗浄物の洗浄装置において、前記洗浄液吹き付けノズルと前記気体噴出ノズルとの間に、前記被洗浄物の搬送方向に直交する向きを有して遮風壁を設けたことを特徴とするウエブ状被洗浄物の洗浄装置を提供する。
請求項10は、本発明を装置として構成したものであり、洗浄液吹き付けノズルと気体噴出ノズルとの間に、被洗浄物の搬送方向に直交する向きの遮風壁を設けたので、吹き付け位置側から噴出位置側に誘因される誘因エアを遮風することができる。遮風壁の横幅は、被洗浄物の横幅と同等〜1.3倍程度が好ましく、遮風壁の厚みは0.1〜10mmに形成することが好ましい。
請求項11は請求項10において、前記遮風壁により、前記気体の噴出によって誘因される誘因エアのうち、前記洗浄液の吹き付け位置側から前記気体の噴出位置側に誘因される誘因エアを遮風することを特徴とする。
請求項11は、遮風壁により吹き付け位置側から噴出位置側に誘因される誘因エアを遮風するので、被洗浄物から除去された洗浄液の液滴が、この誘因エアに運ばれて、洗浄途中の被洗浄物表面や気体噴出ノズルに再付着するのを防止できる。
請求項12は請求項10又は11において、前記遮風壁は板状の遮風板であることを特徴とする。
請求項12は遮風壁の好ましい一態様を示したものであり、遮風壁として板状の遮風板を用いたものである。
請求項13は請求項10又は11において、前記遮風壁はエアカーテンであることを特徴とする。
請求項13は遮風壁の好ましい別態様を示したものであり、遮風壁としてエアカーテンを用いたものである。
請求項14は請求項10又は11において、前記遮風壁は多孔質板で形成された遮風箱であると共に、前記遮風箱から微弱なエアが吹き出されることを特徴とする。
請求項14は遮風壁の好ましい更に別態様を示したものであり、遮風壁として多孔質板で形成された遮風箱を用い、遮風箱から微弱なエアが吹き出されるようにしたものである。この微弱なエアの吹き出しにより、遮風箱に付着した液滴を排除できる。この場合、エアの吹き出し力が大きいと、遮風箱に付着した液滴が再び飛散して被洗浄物に付着するので、エアの吹き出し力は、遮風箱に付着した液滴を遮風箱から離脱できる程度の微弱なエアであることが必要である。
請求項15は請求項10〜14の少なくとも1において、前記被洗浄物の表面には、前記被洗浄物に対して化学反応を行う薬剤が塗布されており、該薬剤の化学反応を停止するために前記洗浄液で洗浄することを特徴とする。
請求項16は請求項15において、前記被洗浄物はポリマーフイルムであると共に、前記薬剤は前記ポリマーフイルムをアルカリ鹸化処理するアルカリ液であることを特徴とする。
請求項17は請求項10〜16のいずれか1において、前記遮風壁の配置位置を調整する位置調整手段を備えていることを特徴とする。
請求項17によれば、遮風壁の配置位置を調整する位置調整手段を備えたので、洗浄液を除去したり、再付着を防止したりする上で適切な位置に遮風壁を移動することができる。
この場合、遮風壁を横方向(気体噴出ノズルに対して接近・離間する方向)や、縦方向(被洗浄物に対して接近・離間する方向)の両方に移動して配置位置を調整できることが好ましい。
請求項18は請求項17において、前記被洗浄物の搬送方向に対向する向きに形成される噴出流の外縁部を検出する検出手段を設け、前記位置調整手段は検出結果に基づいて、前記遮風壁の先端を前記外縁部に位置させることを特徴とする。
請求項18は、洗浄液を除去したり、再付着を防止したりする上で、遮風壁の好ましい配置位置を規定したもので、遮風壁の先端を気体の噴出流の外縁部に配置することが好ましい。尚、外縁部とは、上述の通りである。
請求項19は、10〜18のいずれか1において、前記洗浄液噴出ノズルと前記気体噴出ノズルとを一組とした洗浄ユニットを多段に設けると共に、各洗浄ユニットには、前記被洗浄物の表面が均一な湿潤状態を維持した状態で次段の洗浄ユニットに送るための湿潤手段を設けたことを特徴とする。
請求項19は、洗浄液吹き付けノズルと気体噴出ノズルとを一組とした洗浄ユニットを多段に設けることを前提とした発明であり、各洗浄ユニットには、被洗浄物の表面が均一な湿潤状態を維持した状態で次段の洗浄ユニットに送るための湿潤手段を設けたので、洗浄液の塗布が不均一になるのを防止でき、均一洗浄を行うことができる。
請求項20〜22は好ましい湿潤手段を示したものであり、請求項20は噴出流の流速及び/又は風量を制御する手段であり、請求項21は噴出ノズルから噴出される気体中に、洗浄液の蒸気(ミストも含む)を含有させる手段であり、請求項22は被洗浄物の表面を加湿する加湿手段である。
請求項23は、被洗浄物の洗浄対象面を下面とするようにしたものである。
本発明のウエブ状被洗浄物の洗浄方法及び装置によれば、ウエブ状の被洗浄物に洗浄液を吹き付けて形成される液膜を、噴出ノズルから噴出する気体で除去する際に、除去した洗浄液の液滴やミストが被洗浄物に再付着することを防止できる。
これにより、洗浄中においても化学反応が進行する薬剤を洗浄する場合であっても、洗浄ムラのない均一洗浄を行うことができると共に、噴出ノズルの噴出口を液滴やミストのスケールで目詰まりさせることがない。
以下、添付図面に従って、本発明に係るウエブ状被洗浄物の洗浄方法及び装置の好ましい実施の形態について詳説する。
図1は、本発明に係るウエブ状被洗浄物の洗浄装置を、ポリマーフイルムのアルカリ鹸化処理ライン10に組み込んだ一例を示す全体構成図である。しかし、本発明は、ポリマーフイルムのアルカリ鹸化処理ライン10に組み込むことに限定されるものではなく、ウエブ状の被洗浄物に薬剤を塗布して化学反応を行わせ、その後に化学反応を停止するために薬剤を洗浄液で洗浄して除去する際に、均一洗浄が要求される全ての分野に好ましく適用できる。
図1に示されるように、アルカリ鹸化処理ライン10は、主に、送り出し気体噴出ノズル32と、ポリマーフイルム(以下、ウエブWと記す)にアルカリ溶液を塗布するアルカリ溶液塗布装置14と、アルカリ溶液を塗布したウエブWの温度を室温以上に維持する温度維持装置16と、温度が維持されたウエブWに希釈溶媒又は酸性溶液を塗布して反応を停止させる反応停止装置18と、ウエブWからアルカリ溶液を洗い落とす本発明の洗浄装置22と、洗浄後のウエブWを乾燥させる乾燥装置24と、巻き取り機26とから構成される。
アルカリ溶液塗布装置14は、送り出し機12より送り出され、ガイドローラ28によりガイドされるウエブWの下面に、アルカリ溶液を塗布する塗布手段14Aを備えている。本実施形態に使用されるウエブW、及びアルカリ液の詳細については、後述する。
上記塗布手段14Aとしては、ダイコーター(エクストルージョンコーター、スライドコーター)、ロールコーター(順転ロールコーター、逆転ロールコーター、グラビアコーター)、ロッドコーター(細い金属線を巻いたロッド)等、が好ましく使用されるが、少ない塗布量域でも安定に操作できるロッドコーター、グラビアコーター、ブレードコーター、ダイコーターが特に好ましく使用される。
アルカリ溶液の塗布量は、その後、水洗除去するため廃液処理を考慮して、極力抑制することが望ましく、1〜100cc/m2が好ましく、1〜50cc/m2がより好ましい。また、塗布量の変動をウエブWの幅方向および塗布時間に対して30%未満に抑制することが好ましい。
アルカリ鹸化反応に必要なアルカリ塗布量は、ウエブWの単位面積当りの鹸化反応サイト数に配向膜との密着を発現させるために必要な鹸化深さを乗じた総鹸化サイト数(=理論アルカリ塗布量)が目安となる。鹸化反応の進行にともなってアルカリが消費され反応速度が低下するため、実際には上述の理論アルカリ塗布量の数倍を塗布することが好ましい。具体的には、理論アルカリ塗布量の2〜20倍であることが好ましく、2〜5倍であることがさらに好ましい。
アルカリ溶液の温度は、反応温度(=ウエブWの温度)に等しいことが望ましい。安定な塗布を行うためには、アルカリ溶液の沸点よりも低い温度であることが好ましく、沸点よりも5℃低い温度であることがさらに好ましく、沸点よりも10℃低い温度であることが最も好ましい。
温度維持装置16は、アルカリ溶液を塗布した後、鹸化反応が終了するまで、ウエブWの温度を室温(約15℃)以上に保つ加熱手段16Aを備えている。加熱手段16Aとしては、塗布の反対面への熱風の衝突、加熱ロールによる接触伝熱、マイクロ波による誘導加熱、赤外線ヒータによる輻射熱加熱等が好ましく利用できる。赤外線ヒータは、非接触、かつ空気の流れを伴わずに加熱できるため、アルカリ溶液塗布面への影響を最小にできるため好ましい。赤外線ヒータは、電気式、ガス式、オイル式あるいはスチーム式の遠赤外セラミックヒーターが利用できる。市販の赤外線ヒータ(例えば(株)ノリタケカンパニーリミテド製)を用いてもよい。熱媒体が、オイルまたはスチームを用いるオイル式またはスチーム式の赤外ヒータは、有機溶剤が共存する雰囲気における防爆の観点で好ましい。
ウエブWの温度は、15℃〜150℃、好ましくは25℃〜100℃、さらに好ましくは30℃〜80℃に設定される。また、ウエブWの温度は、アルカリ溶液塗布前に加熱した温度と同じでも異なっていてもよい。ウエブWの温度の検出には、一般に市販されている非接触の赤外線温度計が利用でき、上記温度範囲に制御するために、加熱手段16Aに対してフィードバック制御を行ってもよい。
アルカリ溶液を塗布して、洗い落とすまでに上記温度範囲に保持する時間は、後述する搬送速度にもよるが、1秒〜5分に保つことが好ましく、2〜100秒間保つことがより好ましく、3〜50秒間保つことが特に好ましい。
ウエブWの搬送速度は、上記アルカリ溶液の組成と塗布方式の組み合わせによって決定される。ウエブWの搬送速度は、一般的に、10〜500m/分が好ましく、20〜300m/分がさらに好ましい。
また、ウエブWを、酸素濃度が0〜18%の範囲にある雰囲気下において鹸化処理することが好ましい。酸素濃度は0〜15%がさらに好ましく、0〜10%が最も好ましい。このように、低酸素濃度下で鹸化塗布液を(アルカリ溶液)を塗布することで、ウエブWの表面特性を制御でき、密着性の高い表面を得ることができる。雰囲気中の酸素以外の気体成分は、不活性ガス(例、窒素、ヘリウム、アルゴン)であることが好ましく、窒素であることが特に好ましい。
反応停止装置18は、アルカリ溶液とウエブWとの鹸化反応を停止させるために、アルカリ濃度を下げるための希釈溶媒を塗布するバー塗布機18Aを備えている。尚、希釈溶媒の塗布方法については、アルカリ溶液の塗布方法と同様である。
希釈溶媒は、アルカリ溶液中のアルカリ剤を溶解する溶媒であり、水または有機溶剤と水との混合液が好ましく、水がより好ましい。その他、前述したアルカリ鹸化溶液に用いた有機溶剤が優位に用いることができる。なお、二種類以上の有機溶媒を混合して使用してもよい。
希釈溶媒の塗布量は、アルカリ溶液の濃度に応じて決定される。バー塗布機18Aのバーがフラットバーの場合は、塗布ビード内の流動が一様でないため、アルカリ溶液と希釈溶媒との混合が発生し、この混合した液が再塗布される。したがって、この場合は希釈溶媒の塗布量によって希釈率を特定することが困難であるため、希釈溶媒塗布後のアルカリ濃度を測定する必要がある。希釈溶媒の塗布量は、元のアルカリ濃度を1.5〜10倍に希釈することが好ましく、2〜5倍に希釈することがさらに好ましい。
また、上記希釈溶媒の他に、アルカリによる鹸化反応を迅速に停止するため、酸を用いることもできる。この場合、少ない量でアルカリを中和するため、強酸を用いることが好ましい。また、水洗の容易さを考慮すると、アルカリと中和反応後に生成する塩が水に対する溶解度が高い酸を選定することが好ましく、たとえば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、メタンスルホン酸、クエン酸が好適に使用される。
酸溶液の塗布量は、アルカリの種類とアルカリ溶液の濃度に応じて決定され、酸溶液塗布後のpHが4〜9になる様に酸溶液の塗布量が決定されることが好ましく、6〜8になる様に決定されることがより好ましい。
洗浄装置22では、例えば光学補償フイルムを製造する際に、後工程で塗布される配向膜並びに液晶性分子層の塗膜形成や液晶分子の配向に影響を及ぼすことを防止するため、ウエブWの表面に残存するアルカリ溶液を完全に且つ均一に洗浄除去することが必要である。洗浄装置22については後で詳細に説明する。
乾燥装置24は、洗浄装置22でアルカリ液が洗い落とされ、ウエブWに最終的に残った洗浄液Lを乾燥する装置であり、ウエブWをロール状に巻き取る前に、ウエブWを好ましい含水率に調整するために加熱乾燥する。また、これとは逆に、乾燥装置24は、設定された湿度を有する風で調湿することもできる。乾燥装置24としては、クリーン度が高く、ヒータ等で加熱された清浄エアが給気される公知の加熱乾燥手段が使用される。乾燥風の温度は30〜200℃が好ましく、40〜150℃がより好ましく、50〜120℃が特に好ましい。尚、乾燥装置24の前段におけるエアナイフ等の気体噴出ノズル32で充分に洗浄液Lが除去される場合は、特に乾燥装置24は設けなくても良い。
上記の如くアルカリ鹸化処理されたウエブWは、一旦巻き取り機26で巻き取られてもよいし、又は上述した鹸化処理工程の後に連続して光学補償フィルムの機能層の塗設が行われてもよい。
次に、本発明の洗浄装置22の構成について詳細に説明する。図2は、洗浄装置22の構成を説明する概念図である。
図2に示されるように、洗浄装置22は、主に、ウエブの表面(洗浄対象面)に洗浄液L(水が一般的に使用される)を吹き付ける洗浄液吹き付けノズル30と、ウエブWの搬送方向に対向する向きの噴出流が少なくとも形成されるように気体(エアが一般的に使用される)を噴出してウエブWの表面に残存する液膜L1を除去する気体噴出ノズル32と、洗浄液吹き付けノズル30と気体噴出ノズル32との間に設けられた遮風壁34と、で構成される。
洗浄液吹き付けノズル30には、洗浄液供給配管31が接続され、洗浄液供給配管31から洗浄液吹き付けノズル30に圧送された洗浄液Lが、ウエブWの下面に吹き付けられる。洗浄液吹き付けノズル30としては、市販のスプレーノズル(例えば、(株)いけうち製、スプレーイングシステムズ社製)を用いてもよい。これにより、ウエブWを連続搬送しながら洗浄できる上、噴流によってウエブW上の洗浄液Lとアルカリ性塗布液との乱流混合が得られ、洗浄効果が向上する。また、洗浄液吹き付けノズル30としては、上述の例に限らず、塗布ヘッド(例、ファウンテンコーター、フロッグマウスコーター)を用いる方法等も使用できる。
洗浄液吹き付けノズル30における洗浄液Lの吹き付け速度は、高い乱流混合が得られ、且つウエブWの搬送安定性を損なわない速度の範囲であり、50〜1000cm/秒が好ましく、100〜700cm/秒がより好ましく、100〜500cm/秒がさらに好ましい。
洗浄に使用する洗浄液Lの量は、下記に定義される理論希釈率を上回る量である。
理論希釈倍率=洗浄液Lの使用量[cc/m2]÷アルカリ鹸化溶液の塗布量[cc/m2]
即ち、洗浄に使用される洗浄液Lの全てがアルカリ性塗布液の希釈混合に寄与したという仮定の理論希釈率を定義する。実際には、完全混合は起こらないので、理論希釈率を上回る洗浄液量を使用することとなる。用いたアルカリ性塗布液のアルカリ濃度や副次添加物、溶媒の種類にもよるが、少なくとも100〜1000倍、好ましくは500〜1万倍、さらに好ましくは1000〜十万倍の理論希釈が得られる洗浄液を使用する。
洗浄で一定量の洗浄液Lを用いる場合、一度に全量適用するよりも、洗浄装置22を多段に設けて、複数回に分割して適用する多段式洗浄方法が好ましい。即ち、一つの洗浄液吹き付けノズル30と次の洗浄液吹き付けノズル30との間には適当な時間(距離)を設けて、拡散によるアルカリ性塗布液の希釈を進行させる。尚、多段式洗浄装置については後で、詳細に説明する。
洗浄液Lとしては、純水であることが好ましい。本実施形態に使用される純水とは、比電気抵抗が少なくとも0.1MΩ以上であり、特にナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどの金属イオンは1ppm未満、クロル、硝酸などのアニオンは0.1ppm未満であることが好ましい。
本発明において、洗浄能力の観点から、洗浄液Lの温度は室温以上に維持されることが重要である。洗浄液Lの温度は、高いほど汚れ成分(アルカリ溶液等)を洗浄、及び除去しやすい。したがって、洗浄液Lの温度は、5〜90℃の範囲であることが好ましく、25℃〜80℃の範囲であることがより好ましく、25℃〜60℃の範囲であることがさらに好ましく、37℃に設定されることが最も好ましい。
なお、洗浄液Lの温度を調節する温度調節手段(図示せず)は、洗浄液吹き付けノズル30、及び洗浄液Lを送液する洗浄液供給配管31等に設けられることが好ましい。温度調節手段としては、各種ヒータ、各種断熱材、保温材、又は洗浄部の全体の雰囲気温度を所定温度に保つ方法等が使用されるが、温度を所定レベルに維持することができれば、他の手段でもよい。
気体噴出ノズル32には、エア配管33が接続されると共にエア配管33にはブロア35が設けられる。そして、ブロア35からエア配管33を介して気体噴出ノズル32に圧送された気体がウエブWの下面に向けて噴出され、ウエブWに当たった気体の一部が、ウエブWの搬送方向に対向する噴出流となって流れる。この場合、気体噴出ノズル32の噴出流を効率的に形成するには、図3に示すように、ウエブWに対する気体噴出ノズル32の角度θを30〜90°、好ましくは50〜80°、特に好ましくは65〜70°にするとよい。
気体噴出ノズル32としては、エアナイフが好ましく使用される。但し、エアの噴出量が大きすぎると、ばたつきや寄りなど、ウエブWの搬送安定性に影響を及ぼすことがあるので、好ましい範囲が存在する。ウエブW上の元の水膜厚み、ウエブWの搬送速度にもよるが、通常は10〜500m/秒、好ましくは20〜300m/秒、より好ましくは30〜200m/秒の風速を使用する。また、均一に液膜除去を行うためには、ウエブWの幅方向の風速分布を、通常は10%以内、好ましくは5%以内になる様、気体噴出ノズル32の吹出し口やエアナイフへの給気方法を調整する。搬送するウエブ表面と気体噴出ノズル32の噴出口の間隙は、狭い方が液切り性能が増すが、ウエブWと接触して傷付ける可能性が高くなるため、適当な範囲がある。通常は、10μm〜10cm、好ましくは100μm〜5cm、さらに好ましくは500μm〜1cmの間隙をもって設置する。更に、気体噴出ノズル32と対向する様に、ウエブWの洗浄対象面と反対側にバックアップロール(図示せず)を設置してもよい。これにより、間隙の設定が安定するとともに、ウエブWのバタツキやシワ、変形などの影響を緩和させることができる。
遮風壁34は、図2に示すように、気体噴出ノズル32からの気体の噴出によって誘因される誘因エアEの成分のうち、洗浄液Lの吹き付け位置側から気体の噴出位置側に誘因される成分の誘因エアEを少なくとも遮風することにより、ウエブWから除去された洗浄液Lの液滴L2がウエブWの下面(洗浄対象面)や気体噴出ノズル32に再付着するのを防止するものである。遮風壁34は、ウエブWの搬送方向に直交する向きに配置される。遮風壁34の横幅は、ウエブWの横幅の1倍〜1.3倍に形成されると共に、遮風壁34の厚みは0.1mm〜10mmに形成される。また、遮風壁34の高さH1は気体噴出ノズル32の高さH2の1.5倍〜2倍に形成されることが好ましい。
遮風壁34としては、例えば図2に示す板状の遮風板34A、図4に示すエアカーテン形成装置34B、図5に示す遮風箱34Cを好適に使用できるが、これらには限定されない。
エアカーテン形成装置34Bは、ウエブ幅方向に長い噴出口を有するノズルaにエア配管bを接続して形成され、ノズルaからウエブWの下面に向けてカーテン状のエアcを吹き出す。この場合、カーテン状のエアcを形成する吹出速度は、ウエブWがバタつかなく、且つ気体噴出ノズル32からウエブWに沿って形成される噴出流の流れを阻害しない程度の速度に制御することが好ましい。
図5の遮風箱34Cは、上面と洗浄液吹き付けノズル側の面が多孔質材料で形成された箱体dにエア配管eが接続して形成され、エア配管eから箱体d内に微弱なエアが供給される。供給されたエアは多孔質材料で形成された上面と洗浄液吹き付けノズル側の面から流れでる。これにより、箱体dに付着する液滴L2を排除する。
図2に示すように、遮風壁34は、遮風壁34の配置位置を調整する位置調整手段37を備えている。そして、位置調整手段37は、遮風壁34を、横方向(X−X方向)及び縦方向(Z−Z方向)に移動させて、ウエブWに残存する液膜L1の除去性能や液滴付着防止性能の両方が十分に発揮される位置に移動する。尚、図3、図4では示さなかったが、エアカーテン34B、遮風箱34Cについても位置調整手段37が設けられる。
本発明は、洗浄液Lの吹き付け位置側から気体Gの噴出位置側に誘因される誘因エアEを遮風壁34で遮風することで、遮風壁34がない従来に比べてウエブWから除去された液滴L2がウエブ表面や気体噴出ノズル32に再付着しない効果を発揮することができる。しかし、遮風壁34の配置位置を適切に設定することで一層の効果を発揮させることができる。
次に、遮風壁34の好ましい配置位置について説明する。
ウエブWに残存する液膜L1の除去性能や液滴付着防止性能の両方が十分に発揮される位置に遮風壁34を配置するには、遮風壁34の先端(上端)を基準として配置すればよい。
図6に示すように、遮風壁34の先端から気体噴出ノズル32(噴出口位置まで)の距離をSとし、遮風壁34の先端とウエブWの下面までのクリアランスをTとし、位置調整手段37で、距離SとクリアランスTとを変えたときに、ウエブWに残存する液膜L1の除去性能や液滴付着防止性能にどのように影響するかを調べた。
図7は、気体噴出ノズル32からの気体の噴出速度を150m/秒、ウエブWの搬送速度を80m/分として洗浄を行った場合であり、図8は気体の噴出速度を150m/秒、ウエブWの搬送速度を80m/分として洗浄を行った場合である。図7及び図8ともに、横軸に距離Sをとり、縦軸にクリアランスTをとった。また、○は液膜L1の除去性能及び液滴付着防止性能の両方が良好であることを示し、×は除去性能及び液滴付着防止性能の少なくとも一方において悪い結果であることを示す。
図7から分かるように、○の集合領域は、距離Sが40mmを超えて80mm未満であり、クリアランスTが10mmを超えて30mm未満で囲まれる領域である。また、図8の場合は、○の集合領域は、距離Sが50mmを超えて70mm未満であり、クリアランスTが15mmを超えて25mm未満で囲まれる領域である。
図7と図8の比較から分かるように、ウエブWの搬送速度が速くなると、点線A、点線B、点線C、及び点線Dで囲まれた○の集合領域が小さくなる。図示しなかったが、ウエブWの搬送速度を80m/分よりも小さくすると、○の集合領域が大きくなる。同様に、気体噴出ノズル32からの噴出速度やウエブWに残存する液膜L1の厚みを変えた場合にも、○の集合領域は変動する。しかし、ウエブWに残存する液膜L1の除去性能や液滴付着防止性能の両方を十分に得るためには、搬送速度、噴出速度、液膜L1の厚み等の各種の要因に関係なく、遮風壁34の先端を○の集合領域に位置させることが必要になる。
従って、各種の要因に影響されずに、位置調整手段37で遮風壁34の先端を○の集合領域に配置するには、○の集合領域を簡単に特定できることが必要になる。
そこで、発明者は、点線A、点線B、点線C、及び点線Dで囲まれた○の集合領域を特定する方法を鋭意研究した。その結果、図9に示すように、気体噴出ノズル32の噴出位置から末広がり形状に形成される噴出流の領域36(ウエブWと点線Bとで挟まれた領域)の直ぐ外側の領域である外縁部38(点線Aと点線Bとで挟まれた領域)のうち、気体の噴出によって発生するエゼクタ作用を邪魔しないエゼクタ作用限界線(点線C)と、噴出流の領域36のうちウエブW表面の液膜L1を液切りできる風速の限界位置から外縁部に延ばされた風速限界線(点線D)とで囲まれた最適領域40(斜線部分)が、図7及び図8における○の集合領域に略一致することを見つけた。このことは、図7及び図8の上下を逆にした図と、図9とを対比すると分かり易く、図7及び図8の横軸が、図9のウエブWに相当する。
そして、最適領域40を特定するには、先ず、ウエブ下方領域の複数点の風速を風速計(図示せず)で測定することにより、噴出流の領域36の直ぐ外側(線Bで境界される直ぐ外側)の風速が略ゼロである外縁部38を特定する。外縁部38を特定したら、位置調整手段37により遮風壁34を縦方向に移動させて遮風壁34の先端34a(上端)を外縁部38に位置させる。これにより、遮風壁34の先端34aが噴出流の領域36の外側に位置するので、ウエブWの下面に沿って流れる噴出流の流れを遮風壁34によって邪魔することがない。この結果、ウエブWに残存する液膜L1の除去性能を良好に維持することができる。
次に、位置調整手段37により、遮風壁34を横方向に移動させて、エゼクタ作用限界線(点線C)を探す。エゼクタ作用限界線よりも遮風壁34が気体噴出ノズル32側に近づき過ぎると、エゼクタ作用が邪魔されることに起因して噴出流の風速が低下し、液切り点Pが気体噴出ノズル側にシフトする。液切り点Pが気体噴出ノズル側にシフトすると、液膜L1から除去された液滴L2が遮風壁34の気体噴出ノズル側に落下してしまい、液滴L2が液膜L1除去後のウエブ部分や気体噴出ノズル32に再付着する恐れがある。従って、遮風壁34を気体噴出ノズル側に移動していったときに、液切り点Pが気体噴出ノズル側にシフトする手前で止める。これにより、遮風壁34の先端が液切り点Pよりも気体噴出ノズル32側に位置させることができるので、液膜L1から除去された液滴L2が遮風壁34の気体噴出ノズル側に落下してしまうことを防止できる。
上記の如く遮風壁34を配置することで、遮風壁34の先端34aを最適領域40、即ち除去性能及び液滴付着防止性能の両方を満足する○の集合領域に位置させることができる。
次に、図9〜図13を使用して、遮風壁34の先端34aが最適領域40に位置する場合と、位置しない場合との違いを詳細に説明する。
図9は、遮風壁34の先端34aを最適領域40に配置した場合であり、図10は線Aよりも下側に配置した場合(クリアランスTが大きすぎる場合)であり、図11は線Bよりも上側に配置した場合(クリアランスTが小さすぎる場合)である。また、図12は点線Dの外側に配置した場合(距離Sが大きすぎる場合)であり、図13は点線Cの外側に配置した場合(距離Sが小さすぎる場合)である。
これらの図から分かるように、図9の場合には、気体噴出ノズル32からの噴出流によって液切りされる液膜L1の液切り点Pは、遮風壁34よりも洗浄液吹き付けノズル側に位置すると共に、エゼクタ作用によって誘因される誘因エアEは遮風壁34で遮風されるので、液膜L1から除去されて落下した液滴L2は、遮風壁34には付着するが、ウエブWや気体噴出ノズル32に付着することを防止できる。
図10は、遮風壁34の先端34aがA線よりも下側に位置する場合であり、液膜L1から除去されて落下した液滴L2は誘因エアEに乗って気体噴出ノズル側に運ばれる。これにより、液滴L2が気体噴出ノズル32や、液膜L1が除去されたウエブ部分に再付着する。
図11は、遮風壁34の先端34aがB線よりも上側に位置する場合であり、遮風壁34の先端34aが噴出流の領域36に入り込んでいる。これにより、噴出流の流れが邪魔されることに起因して噴出流の風速が弱くなり、液切り点Pが遮風壁34よりも気体噴出ノズル側にシフトする。この結果、液膜L1から除去されて落下した液滴L2が誘因エアEに運ばれて、気体噴出ノズル32や液膜L1が除去されたウエブ部分に再付着する。
図12は、遮風壁34の先端34aがD線よりも左側(洗浄液吹き付けノズル側)に位置する場合であり、遮風壁34が気体噴出ノズル32から遠すぎるので、液切り点Pが遮風壁34よりも気体噴出ノズル側に形成される。これにより、液膜L1から除去されて落下した液滴L2が、遮風壁34の気体噴出ノズル側に落下し、誘因エアEに運ばれて、気体噴出ノズル32や液膜L1が除去されたウエブ部分に再付着する。
図13は、遮風壁34の先端34aがC線よりも右側(気体噴出ノズル側)に位置する場合であり、遮風壁34が気体噴出ノズル32から近過ぎるので、遮風壁34によってエゼクタ作用が邪魔される。これにより、誘因エアEは発現し難くなる反面、噴出流の風速が弱くなる。この結果、液切り点Pが遮風壁34よりも気体噴出ノズル側にシフトするので、液膜L1から除去されて落下した液滴L2が、遮風壁34の気体噴出ノズル側に落下し、弱いながらも生じている誘因エアEに運ばれて、気体噴出ノズル32や液膜L1が除去されたウエブ部分に再付着する。
上記説明した遮風壁34の先端34aを○の集合領域に配置する方法は、外縁部38の概念を利用して、搬送速度、噴出速度、液膜L1の厚み等の各種の要因に関係なく、適切な位置に配置することができる。
しかし、搬送速度、噴出速度、液膜L1の厚み等の各種の要因の影響を多少受けることを考慮するならば、距離SとクリアランスTとが次の範囲を満足するように、遮風壁34の先端34aを位置決めしてもよい。
即ち、距離Sを5〜200mmの範囲、より好ましくは20〜150mmの範囲、特に好ましくは40〜100mmの範囲にする。また、クリアランスTを5〜70mmの範囲、より好ましくは8〜50mmの範囲、特に好ましくは10〜30mmの範囲にする。
また、遮風壁34の幅方向における距離S及びクリアランスTの精度は、ウエブWの均一洗浄にとって重要であり、距離Sの精度は±10mm、より好ましくは±5mm、特に好ましくは±1mmである。また、クリアランスTの精度は±5mm、より好ましくは±2mm、特に好ましくは±1mmである。尚、この距離S及びクリアランスTの精度は、外縁部38を利用して遮風壁34の先端34aを位置決めする場合にも同様に重要である。
次に、本発明の洗浄装置22を多段に設けた態様を説明する。尚、本実施の形態では、3段に設けた一例で説明する。
図14に示すように、多段式洗浄装置42は、洗浄液吹き付けノズル30、気体噴出ノズル32、及び遮風壁34を1組にした洗浄ユニット44を3段直列に設けて構成される。更に、多段式洗浄装置42の各洗浄ユニット44には、ウエブWの表面(洗浄対象面)が均一な湿潤状態を維持した状態で次段の洗浄ユニット44に送るための湿潤手段46が設けられている。本実施の形態では、湿潤手段46として、加湿ノズル48を備えた一例で説明する。湿潤手段46は、一対の加湿ノズル48、48が気体噴出ノズル32の両側(ウエブWの搬送方向の前後)に配設されると共に、一対の加湿ノズル48は加湿配管50に接続される。加湿配管50にはブロア52が設けられると共に、加湿配管52の途中には加湿器54が設けられる。これにより、加湿された気体(一般的にはエアを使用)が加湿ノズル48からウエブWに向けて噴出される。加湿気体は、直接ウエブWを加湿すると共に、気体噴出ノズル32からの噴出流に乗ってウエブWの搬送方向上流側や下流側に運ばれてウエブWを加湿する。
このように、1段目の洗浄ユニット44でウエブWから洗浄液Lを完全に除去しないで均一な湿潤状態で2段目の洗浄ユニット44に送ることにより、2段目の洗浄液吹き付けノズル30からウエブWに吹き付けられた洗浄液LをウエブWの表面に均一に塗布することができる。これにより、均一洗浄を行うことができる。2段目の洗浄ユニット44から3段目の洗浄ユニット44に送る場合も同様である。
尚、本実施の形態では加湿ノズル48を一対設けたが、1つだけ設けるようにしてもよい。また、本実施の形態では、湿潤手段46として加湿ノズル48の例で説明したが、気体噴出ノズル32からの噴出流の流速及び/又は風量を制御する制御手段(図示せず)を設けて、液膜L1から除去される洗浄液Lの除去量を制御するようにしてもよい。更には、気体噴出ノズル32から噴出される気体G中に、洗浄液Lの蒸気(ミストも含む)を含有させる蒸気含有手段(図示せず)を設けるようにしてもよい。
[ポリマーフイルム(ウエブW)]
本実施形態に使用されるポリマーフイルム(ウエブW)は、光透過率が80%以上であることが好ましい。ウエブWとしては、外力により複屈折が発現しにくいものが好ましい。ウエブWは、エステル結合あるいはアミド結合のような加水分解できる結合(鹸化処理の対象となる結合)を含む。エステル結合が好ましく、エステル結合がポリマーの側鎖に存在していることがさらに好ましい。エステル結合が側鎖に存在しているポリマーとしては、セルロースエステルが代表的である。セルロースの低級脂肪酸エステルがより好ましく、セルロースアセテートがさらに好ましく、酢化度が59.0〜61.5%であるセルロースアセテートが最も好ましい。酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。
セルロースエステルの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることがさらに好ましい。また、本発明に使用するセルロースエステルは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜1.7であることが好ましい。
ウエブWを光学補償フィルムに用いる場合、ウエブWは、高いレターデーション値を有することが好ましい。ウエブWのReレターデーション値およびRthレターデーション値は、それぞれ、下記式(I)および(II)で定義される。
(I) Re=|nx−ny|×d(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d式(I)および(II)において、nxは、ウエブW面内の遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率、nyは、ウエブW面内の進相軸方向(屈折率が最小となる方向)の屈折率、nzは、ウエブWの厚み方向の屈折率、dは、単位をnmとするウエブWの厚みである。ウエブWのReレターデーション値は1〜200nmであり、そして、Rthレターデーション値は70〜400nmであることが好ましい。具体的な値は、測定光の入射方向をウエブW膜面の鉛直方向に対して傾斜させた測定結果より外挿して求める。測定は、エリプソメーター(例えば、M−150、日本分光(株)製)を用いて実施できる。測定波長としては、632.8nm(He−Neレーザー)を採用する。
ウエブWのレターデーションを調整するためには延伸のような外力を与える方法が一般的であるが、また光学異方性を調節するためのレターデーション上昇剤が、場合により添加される。セルロースアシレートフイルムのレターデーションを調整するには、芳香族環を少なくとも二つ有する芳香族化合物をレターデーション上昇剤として使用することが好ましい。芳香族化合物は、セルロースアシレート100質量部に対して、0.01〜20質量部の範囲で使用することが好ましい。また、二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
ソルベントキャスト法によりポリマーフイルムを製造することが好ましい。ソルベントキャスト法では、ポリマー材料を有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフイルムを製造する。有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステルおよび炭素原子数が1〜6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが含まれる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが含まれる。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが含まれる。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが含まれる。ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1または2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25〜75モル%であることが好ましく、30〜70モル%であることがより好ましく、35〜65モル%であることがさらに好ましく、40〜60モル%であることが最も好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。さらに2種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
一般的な方法でポリマー溶液を調製できる。一般的な方法とは、0℃以上の温度(常温または高温)で、処理することを意味する。溶液の調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法および装置を用いて実施することができる。なお、一般的な方法の場合は、有機溶媒としてハロゲン化炭化水素(特にメチレンクロリド)を用いることが好ましい。ポリマーの量は、得られる溶液中に10〜40質量%含まれるように調整する。ポリマーの量は、10〜30質量%であることがさらに好ましい。有機溶媒(主溶媒)中には、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。溶液は、常温(0〜40℃)でポリマーと有機溶媒とを攪拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧および加熱条件下で攪拌してもよい。具体的には、ポリマーと有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌する。加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60〜200℃であり、さらに好ましくは80〜110℃である。
各成分は予め粗混合してから容器に入れてもよい。また、順次容器に投入してもよい。容器は攪拌できるように構成されている必要がある。窒素ガス等の不活性気体を注入して容器を加圧することができる。また、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇を利用してもよい。あるいは、容器を密閉後、各成分を圧力下で添加してもよい。加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケット構造の加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶剤中に溶解する。調製したドープは冷却後、容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
冷却溶解法により、溶液を調製することもできる。冷却溶解法では、通常の溶解方法では溶解させることが困難な有機溶媒中にもポリマーを溶解させることができる。なお、通常の溶解方法でポリマーを溶解できる溶媒であっても、冷却溶解法によると迅速に均一な溶液が得られる効果がある。冷却溶解法では最初に、室温で有機溶媒中にポリマーを撹拌しながら徐々に添加する。ポリマーの量は、この混合物中に10〜40質量%含まれるように調整することが好ましい。ポリマーの量は、10〜30質量%であることがさらに好ましい。さらに、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
次に、混合物を−100〜−10℃、好ましくは−80〜−10℃、さらに好ましくは−50〜−20℃、最も好ましくは−50〜−30℃に冷却する。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30〜−20℃)中で実施できる。このように冷却すると、ポリマーと有機溶媒の混合物は固化する。冷却速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。なお、冷却速度とは、冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差を冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。
さらに、これを0〜200℃、好ましくは0〜150℃、さらに好ましくは0〜120℃、最も好ましくは0〜50℃に加温すると、有機溶媒中にポリマーが溶解する。昇温は、室温中に放置するだけでもよいし、温浴中で加温してもよい。加温速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。なお、加温速度とは、加温を開始する時の温度と最終的な加温温度との差を加温を開始してから最終的な加温温度に達するまでの時間で割った値である。以上のようにして、均一な溶液が得られる。なお、溶解が不充分である場合は冷却、加温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断することができる。
冷却溶解法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時に減圧すると、溶解時間を短縮することができる。加圧および減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。なお、セルロースアセテート(酢化度:60.9%、粘度平均重合度:299)を冷却溶解法によりメチルアセテート中に溶解した20質量%の溶液は、示差走査熱量測定(DSC)によると、33℃近傍にゾル状態とゲル状態との疑似相転移点が存在し、この温度以下では均一なゲル状態となる。従って、この溶液は疑似相転移温度以上、好ましくはゲル相転移温度プラス10℃程度の温度で保温する必要がある。ただし、この疑似相転移温度は、セルロースアセテートの酢化度、粘度平均重合度、溶液濃度や使用する有機溶媒により異なる。
調製したポリマー溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりポリマーフイルムを製膜する。ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフイルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に加工しておくことが好ましい。ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフイルムをドラムまたはバンドから剥ぎ取り、さらに100から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。これにより、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムまたはバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
ウエブWには、機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。
さらに、本実施形態におけるウエブWには、機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。可塑剤の添加量は、セルロースエステルの量の0.1〜25質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがさらに好ましく、3〜15質量%であることが最も好ましい。
さらに、本実施形態におけるウエブWには、用途に応じた種々の添加剤(例えば、紫外線防止剤、微粒子、剥離剤、帯電防止剤、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)、赤外吸収剤を等)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。また、ウエブWが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。これらの添加剤の使用量は、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されないが、ウエブW全組成物中、0.001〜20質量%の範囲で適宜用いられることが好ましい。
ウエブWは、さらに延伸処理によりレターデーションを調整することができる。延伸倍率は、3〜100%であることが好ましい。ポリマーフイルムの厚さは、30〜200μmであることが好ましく、40〜120μmであることがさらに好ましい。
[アルカリ溶液]
本実施形態に使用されるアルカリ溶液は、水または有機溶剤と水との混合液にアルカリを溶解して調製できる。好ましい有機溶媒は、炭素原子数8以下のアルコール、炭素原子数が6以下のケトン、炭素原子数が6以下のエステル、炭素原子数が6以下の多価アルコールから選ばれる1種または2種以上の有機溶媒である。
上記有機溶剤としては、一価アルコール(例、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フッ素化アルコールなど)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、多価アルコール(例、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなど)、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)およびエーテル(例、メチルセルソルブ、エチレングリコールジエチルエーテル)が挙げられる。特に好ましいものは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンである。
有機溶剤は、ウエブWを溶解したり膨潤したりしないことが必要である。また、アルカリ鹸化溶液の塗布が容易になるように、アルカリ溶液の液物性の項で記載されるように、表面張力が適度に低い有機溶剤を選択することも望ましい。また、有機溶媒の溶媒中の使用割合は、溶媒の種類、水との混和性(溶解性)、反応温度および反応時間に応じて決定する。短い時間で鹸化反応を完了するためには、高い濃度に溶液を調製することが好ましい。ただし、溶媒濃度が高すぎるとウエブW中の成分(可塑剤など)が抽出され、ウエブWの過度の膨潤が起こる場合があり、適切に選択する。水と有機溶媒の混合比は、3/97〜85/15質量比が好ましい。より好ましくは5/95〜60/40質量比であり、さらに好ましくは15/85〜40/60質量比である。この範囲において、ウエブWの光学特性を損なうことなく容易にウエブW全面が均一に鹸化処理される。
アルカリ溶液のアルカリ剤は、無機塩基および有機塩基のいずれも使用できる。低い濃度で鹸化反応をおこすためには強塩基が好ましい。アルカリ金属の水酸化物(例、NaOH、KOH、LiOH)、アミン(例、パーフルオロトリブチルアミン、トリエチルアミン、ジアザビシクロノネン、ジアザビシクロウンデセン等)、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド(アルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)、および錯塩の遊離塩基(例、[Pt(NH3)6](OH)4)が好ましく、アルカリ金属の水酸化物がさらに好ましく、NaOHおよびKOHが最も好ましい。
アルカリ溶液の濃度は、使用するアルカリの種類、反応温度および反応時間に応じて決定する。短い時間で鹸化反応を完了するためには、高い濃度に溶液を調製することが好ましい。ただし、アルカリ濃度が高すぎるとアルカリ溶液の安定性が損なわれ、長時間塗布において析出する場合もある。アルカリ溶液の濃度は0.1〜5規定(N)であることが好ましく、0.5〜5Nであることがさらに好ましく、0.5〜3Nであることが最も好ましい。
本実施形態に使用されるアルカリ溶液は、界面活性剤を含有することもできる。界面活性剤を添加することによって、たとえ有機溶媒がウエブW含有物質を抽出したとしてもアルカリ溶液中に安定に存在させ、後の水洗工程においても抽出物質が析出、固体化しない。
上記界面活性剤については、本発明のアルカリ鹸化液に溶解または分散可能なものであれば特に制限はない。ノニオン界面活性剤、イオン性界面活性剤(アニオン、カチオン、両性界面活性剤)等のいずれをも好適に用いることができるが、特にノニオン界面活性剤とアニオン界面活性剤が溶解性と鹸化性能の観点から好ましく用いられる(特開2003−313326参照)。
また、上記アルカリ溶液には、アルカリ溶液への界面活性剤、消泡剤の溶解助剤として、上述した有機溶剤以外の有機溶媒、防黴剤、防菌剤、その他添加剤(たとえば、アルカリ液安定化剤(酸化防止剤等)、水溶性化合物(ポリアルキレングリコール類、天然水溶性樹脂等))が添加されてもよい。
本実施形態に使用されるアルカリ溶液に用いる水としては、日本国水道法(昭和32年法律第177号)及びそれに基づく水質基準に関する省令(昭和53年8月31日厚生省令第56号)、同国温泉法(昭和23年7月10日法律第125号及びその別表)、及び、WHO規定水道水基準によって規定される水中の混入の状態に於ける各元素やミネラル等への影響、等に基づくものが好ましい。
本実施形態に使用されるアルカリ溶液の液物性は、上記で説明の組成物から構成されるが、その表面張力が45mN/m以下であり、且つ粘度が0.8〜20mPa・sであることが好ましい。また、アルカリ溶液の密度は、0.65〜1.05g/cm3であることが好ましい。これにより、アルカリ溶液の塗布が搬送速度に応じて安定な塗布操作が容易に行える様になり、且つウエブW表面への液の濡れ性、ウエブW表面に塗布した溶液の保持性、鹸化処理後のウエブW表面からのアルカリ液の除去性が充分に行われる。
10…アルカリ鹸化処理ライン、12…送り出し機、14…アルカリ溶液塗布装置、16…温度維持装置、18…反応停止装置、22…洗浄装置、24…乾燥装置、26…巻き取り機、30…洗浄液吹き付けノズル、32…気体噴出ノズル、34…遮風壁、34a…遮風壁の先端、36…噴出流の領域、37…位置調整手段、38…外縁部、40…最適領域、42…多段式洗浄装置、44…洗浄ユニット、46…湿潤手段、48…加湿ノズル、W…ウエブ、L…洗浄液、L1…液膜、L2…液滴、G…気体噴出ノズルから噴出される気体、E…誘因エア、P…液切り点