JP2008253452A - 真空採血管 - Google Patents
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Abstract
【課題】長期間保存した場合であっても、内部との圧力の所望でない増加が生じ難く、従って、真空採血管から内部における血漿もしくは血清の分離を確実に行うことが可能である真空採血管を提供する。
【解決手段】内部が減圧されており、採血管本体2内に血液分離フィルタ部材5が収納されている真空採血管であって、内部に酸素を吸収する酸素吸収部材6が収納されている、真空採血管1。
【選択図】図1
【解決手段】内部が減圧されており、採血管本体2内に血液分離フィルタ部材5が収納されている真空採血管であって、内部に酸素を吸収する酸素吸収部材6が収納されている、真空採血管1。
【選択図】図1
Description
本発明は、真空採血法により、血液を採取するのに用いられる真空採血管に関し、より詳細には、内部に血液分離フィルタ部材が収納されており、それによって、血球などと血漿もしくは血清とを分離する機能を有する真空採血管に関する。
従来、血液から血球等の固形分を除去し、臨床検査に必要な血漿もしくは血清を得るために、遠心分離法が広く用いられてきている。しかしながら、遠心分離法では、大型で高価な遠心分離装置が必要であった。また、遠心分離操作に時間を必要とし、さらに分離後に上澄みの血漿もしくは血清を移しかえる作業が煩雑であった。
上記のような問題を解決するために、遠心分離操作を必要とすることなく、血液から血球成分を除去し、臨床検査に必要な血漿もしくは血清を得ることを可能とする真空採血管が種々提案されている。このような真空採血管は、例えば下記の特許文献1〜3に開示されている。特許文献1〜3に開示されている真空採血管を製造するに際しては、血液分離フィルタ部材が内部に収納された採血管本体が減圧雰囲気下に、配置される。しかる後、減圧下において、上記採血管本体の開口が栓体により密栓される。従って、得られた真空採血管は内部が減圧されているので、外部との圧力差を利用して、血液を採取できる。また、採血管本体内に収納されている血液分離フィルタの上流側と下流側の圧力差により、血球成分と血漿もしくは血清との分離が図られる。
特開2004−344874号公報
特開2007−3483号公報
特開2007−3484号公報
しかしながら、特許文献1〜3に記載のような従来の真空採血管では、真空採血管内の減圧を利用して血液の採取及び血液分離が図られるため、減圧度が大き過ぎると、分離速度が速くなり過ぎ、溶血が生じがちであった。溶血が生じると、血球内成分が血漿もしくは血清中に漏洩し、臨床検査に際し、正確な分析結果が得られなくなる。
また、減圧度が小さ過ぎると、分離中に真空採血管内が大気圧と等しくなり、分離の途中で濾過が停止することがあった。
従って、上記真空採血管に血液分離フィルタを収納した真空採血管においては、真空採血管内部の圧力は適度な範囲に維持されている必要がある。
他方、真空採血管は、通常、ガスバリア性に優れたポリエチレンテレフタレートなどを用いて形成されている。このようなガスバリア性の高いポリエチレンテレフタレートを用いた場合でも、真空採血管の減圧度は1年で約10%程度減少しがちであった。10%程度減圧度が減少した場合、減圧度が不足して内部における分離操作が停止することは生じ難いが、濾過速度が低下し、分離時間が長くなるおそれがあった。
また、1年より長く保管し、減圧度がさらに低下した場合には、上記のように、濾過が分離途中で停止するおそれがあった。
減圧度の低下による影響を小さくするには、血液分離フィルタの下流側の容積を大きくすればよいと考えられる。しかしながら、血液分離フィルタ部材の下流側の容積を大きくすると、真空採血管が大型にならざるを得ない。また、真空採血管が大きくなり過ぎると、病院や臨床検査施設で使用されている臨床検査装置にそのままセットすることができなくなる。従って、真空採血管で分離された血漿や血清をさらに別の検体容器に移しかえる必要が生じ、操作性が大幅に低下することとなる。
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、血液の採取から、遠心分離操作を必要とすることなく、内部で血漿もしくは血清を血液から分離し得る真空採血管であって、さらに、経時による内部の減圧度の低下が生じ難い、真空採血管を提供することにある。
本発明によれば、開口を有する採血管本体と、前記採血管本体の開口を閉栓し、内部を減圧状態に維持している栓体と、前記採血管本体内に収納されており、真空採血法により導かれた血液を濾過する血液分離フィルタ部材とを有する真空採血管において、前記採血管本体内に、酸素を吸収する酸素吸収部材が収納されていることを特徴とする真空採血管が提供される。
本発明に係る真空採血管では、好ましくは、上記酸素吸収部材は、放射線が照射された後に、経時的に酸素を吸収する酸素吸収材料からなる。この場合には、放射線を照射する操作を行うだけで、酸素吸収部材が酸素を吸収するように機能し、従って、真空採血管内の減圧度の低下を確実に抑制することができる。
好ましくは、上記酸素吸収材料は、高分子材料の成形体からなり、その場合には、真空採血管内の空間に容易にかつ安定に配置し得る任意の形状の酸素吸収部材を形成することができる。
好ましくは、上記酸素吸収材料としての高分子材料は、ポリプロピレン、ポリアセタール及びテトラフルオロエチレンからなる群から選択された1種の高分子材料であり、この場合、放射線の照射により、これらの高分子が酸化し、それらによって、内部の酸素が確実にかつ長期間にわたり安定に吸収される。
本発明に係る真空採血管では、好ましくは、放射線が照射された後に酸素を吸収する特性を生じる上記酸素吸収部材の酸素吸収速度は、0.1〜3mL/年の範囲とされる。0.1mL/年未満の場合には、酸素吸収速度が十分高くないため、真空採血管内部の減圧度の低下を抑制することが困難となり、場合によっては、血液分離操作中に血液の分離操作が停止するおそれがある。酸素吸収速度が3mL/年を超えると、真空採血管内の酸素が十分に吸収されるが、内部の減圧度が大きくなり過ぎ、分離に際しての圧力差により溶血が生じるおそれがある。
本発明に係る真空採血管では、内部が減圧されている真空採血管内に圧力差により血液を血球等と血漿もしくは血清とに分離する血液分離フィルタ部材が収納されている構成において、該真空採血管内に酸素を吸収する酸素吸収部材が収納されているので、内部の酸素が酸素吸収部材により吸収される。そのため、真空採血管内に、時間とともに、外部から侵入してくる酸素を上記酸素吸収部材により吸収することができるので、真空採血管内の減圧度の低下、すなわち内圧の上昇を確実に抑制することができる。
よって、本発明によれば、1年以上の長期間にわたり真空採血管を保管した場合でも、酸素吸収部材の酸素吸収能力により減圧度の低下が抑制されるので、真空採血管法により導かれた血液を血球等と血漿もしくは血清等と分離するに際しての分離操作が分離途中で停止するおそれがない。よって、長期間保管された真空採血管を用いた場合であっても、速やかに血液を採取し、かつ煩雑な遠心分離を必要とすることなく、確実に血液から血漿もしくは血清を得ることが可能となる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
図1は、本発明の一実施形態に係る真空採血管を示す正面断面図である。真空採血管1は、採血管本体2と、採血管本体2の上端に設けられた開口2aを閉栓するように取り付けられた栓体3とを有する。真空採血管1内は減圧されている。この減圧は、真空採血法により内部に血液を導き、かつ内部において、後述する血液分離操作を行うための適正な減圧範囲となるように設定されている。
採血管本体2は、本実施形態では、有底であり、上端に開口2aを有する円筒状の形状を有しているが、採血管本体2の形状については、図示の形状に限定されるものではない。例えば、筒状体の両端に開口を有し、両端の開口がそれぞれ栓体で気密封止されていてもよい。また、採血管本体2は、円筒状に限らず、角筒状であってもよく、さらに筒状部材以外の形状を有する容器により採血管本体2が形成されていてもよい。
採血管本体2を構成する材料については、合成樹脂、またはガラスなどの適宜の保形性を有する材料を用いることができる。破損し難いため、合成樹脂を用いることが望ましく、中でも、内部を目視し得るので、透明性を有する合成樹脂により採血管本体2を形成することが望ましい。このような合成樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、アクリロニトリル−スチレン共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等の熱可塑性樹脂や、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ−アクリレート樹脂等の熱硬化性樹脂、また、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、エチルセルロース、エチルキチン等の変性天然樹脂、さらにソーダ石灰ガラス、リンケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス等のケイ酸塩ガラス、石英ガラスなどのガラス及びこれらを主成分とするもの、あるいはこれらを組み合わせたものなどを挙げることができ、特に限定されるものではない。もっとも、より好ましくは、破損しにくく、比較的ガスバリア性の高い合成樹脂、例えばポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートが望ましい。
上記栓体3は、採血管本体2の開口2aを気密封止し得る適宜の材料からなる。このような材料としては、天然ゴム、合成ゴムまたはエラストマーなどの弾性性を有する適宜の材料を好適に用いることができる。
また、本実施形態では、上記採血管本体2内に、内管4が挿入されており、内管4内に血液分離フィルタ部材5が収納されている。内管4は、採血管本体2内に開口2a側から挿入されている筒状部材からなり、該内管4の上端に設けられた開口4aが、栓体3により気密封止されている。また、内管4の底面には、下方に血漿もしくは血清を流下させる内部流路が設けられた突出部4bが設けられている。
上記内管4は、適宜の材料から形成され、例えば採血管本体2と同様の材料で形成され得るが内管4内に、血液分離フィルタ部材5が収納されている。上記血液分離フィルタ部材5を構成するフィルタ材料については、血球成分よりも血漿もしくは血清を速く移動させ得る孔径と、実用可能な濾過時間を確保し得る空隙すなわち空隙率と、濾過の過程で血漿もしくは血清の移動を物理的または化学的に阻害しない形状であれば特に限定されるものではない。
このような要求を満たす材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ウレタン、アクリル、レーヨン、ガラス等が挙げられる。
血液分離フィルタ部材5としては、例えば、上記素材を成形した繊維を不織布状に集積させたもの、上記素材を用いて連続孔が形成された連続気泡発泡体などの成形体、上記素材を成形した略球形の微粒子を細密充填構造となるように集積したもの、あるいは、この集積したものを焼結することにより一体成形したもの、上記素材を成形したフィルタに貫通孔を形成させたもの、あるいはフィルムの片面ないし両面にコロナ放電やプレス加工により親水加工したシートを多数枚積層したもの等が挙げられる。
血液分離フィルタ部材5の平均孔径としては、移動速度差により血球成分と血漿若しくは血清との分離を可能とし、血球成分への阻害すなわち赤血球の破壊を防止するためには、2〜10μmの範囲が好ましく、より好ましくは3〜8μmの範囲である。平均孔径が2μmよりも小さいと、血液分離フィルタ部材5に血球が目詰まりして濾過が阻害されたり、濾過時に血球成分への抵抗が大きくなり赤血球が破壊され易くなる。平均孔径が10μmを超えると、血球成分と、血漿若しくは血清との移動速度差が小さくなり、血球成分が短時間で流路閉塞部材に至り易くなる。平均孔径は、バブルポイント試験法(JIS K 3832)や電子顕微鏡による拡大画像を用いた実測法などにより計測される。
血液分離フィルタ部材5の空隙率としては、実用可能な濾過時間を確保し得るためには、20〜97%の範囲にあることが好ましく、より好ましくは30〜95%の範囲である。空隙率が20%よりも低いと、濾過に長時間を要し、赤血球の破壊が生じ易くなる。空隙率が97%よりも高いと、血液分離フィルタ部材5の保形性が低下し、濾過時の圧力で血液分離フィルタが変形して孔径が変化することがあり、血液の分離が安定に行われないことがある。
また、上記血液分離フィルタ部材5は血液中の測定成分を吸着し難いことが望ましい。従って、血液分離フィルタ部材5の表面は、測定成分の吸着を抑制し得るように表面処理が施されていてもよい。このような表面処理剤としては、潤滑剤、親水性高分子類、高分子界面活性剤などを挙げることができる。このような潤滑剤としてはポリエーテル系もしくはシリコン系潤滑剤を挙げることができ、親水性高分子類としてはポリビニルアルコールもしくはポリビニルピロリドンのような親水性合成高分子あるいは天然の親水性高分子を挙げることができる。
また、上記血液分離フィルタ部材5の表面は、酸化剤により化学処理が施されていてもよく、あるいはプラズマ処理などにより、表面が親水化処理されていてもよい。
血液分離フィルタ部材5が繊維からなる場合には、血球成分より血漿または血清を速く移動させるために、平均繊維径は、0.5〜3.0μmであることが好ましい。平均繊維径が0.5μmよりも小さい場合には、赤血球への負荷が大きくなって、溶血を起こしやすくなる。また平均繊維径が3.0μmより大きい場合は、血球成分と血漿または血清とを分離するために高密度に形成される必要があり、また使用する繊維の量も多くなるためコストが高くなる。血液の分離効果を高めるために、平均繊維径は、0.5〜2.5μmであることがより好ましい。
また、血液分離フィルタ部材5の流路形成部材中へ設置した後の平均密度は、0.1〜0.5g/cm3であることが好ましい。平均密度が0.1g/cm2より低い場合には血液の分離が効率的でないために得られる血清または血漿の量が少なくなりがちであり、0.5g/cm3より高い場合には赤血球への負荷が大きくなって、溶血を起こしやすくなる。血液を効率的に分離するためには、平均密度は0.15〜0.40/cm3であることがより好ましい。
本実施形態の真空採血管1の特徴は、上記採血管本体2内に、酸素吸収部材6が収納されていることにある。酸素吸収部材6は、本実施形態では、リング状の形状を有し、血液分離フィルタ部材5の上方に載置されている。酸素吸収部材6は、真空採血管1内の酸素を吸収する作用を果たす。酸素の吸収により、内部の減圧度の低下すなわち内圧の上昇を抑制することが可能とされている。従って、酸素吸収部材6としては、長期間にわたり、酸素を吸収する作用を有する適宜の材料を用いることができる。
酸素吸収部材6を構成する材料については、長期間にわたり、すなわち0.5〜2年程度の期間にわたり、酸素を吸収し得る材料を用いることが望ましい。酸素吸収部材6を構成する材料としては、酸化により酸素を吸収する酸化性材料を好適に用いることができ、このような酸化性材料としては、放射線の照射により経時的に酸化し、酸素を吸収する高分子材料を好適に用いることができる。このような高分子材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリアセタールまたはポリテトラフルオロエチレンを好適に用いることができる。また、上記高分子材料は、ポリプロピレン、ポリアセタールまたはポリテトラフルオロエチレンと他の材料の複合材料であってもよい。さらに、ポリプロピレン、ポリアセタールまたはポリテトラフルオロエチレンは、モノマー以外の他のモノマーとの共重合体であってもよい。また、上記酸素吸収部材は、これらの高分子と、他の高分子とを混合してなる混合物であってもよい。
さらに、好ましくは、透明性に優れていることが望ましいため、ポリプロピレンがより一層好適に用いられる。
また、上記酸素吸収性高分子材料の形態は特に限定されないが、上記ポリプロピレン、ポリアセタールまたはポリテトラフルオロエチレンなどの高分子材料の場合、射出成形などの適宜の成形方法により得られた成形体であることが望ましい。成形体の場合には、真空採血管1の構造や、要求される酸素の吸収速度に応じて適宜の形状の酸素吸収部材6を容易に提供することができる。
上記酸素吸収部材6における酸素吸収速度は、真空採血管1内の減圧度を血液分離中に分離操作が停止しない程度の大きさとし得る限り、特に限定されるものではないが、好ましくは、0.1〜3.0mL/年の範囲とされる。これは、真空採血管の内容積は、一般に2〜15mLであり、経時により、0.2〜1.5mL/年程度の気体か透過することが知られている。従って、上記酸素吸収部材の酸素吸収速度は、0.2〜1.5mL/年程度の気体が外部から透過してくるため、より好ましくは、酸素吸収部材による酸素吸収速度は0.2〜1.5mL/年とすることが望ましい。もっとも、0.1〜3.0mL/年の範囲の場合においても、上記のように、酸素の吸収により内部の減圧度の低下を好適に抑制することができる。
酸素吸収速度が0.1mL/年未満では、酸素の吸収速度が低く、真空採血管内の圧力が高くなり、長期間保存した場合には血液分離操作中に分離操作が停止するおそれがある。3.0mL/年を超えると、減圧度が高くなり過ぎ、真空採血法により血液を採取するに際し、あるいは血液分離に際し、圧力差により溶血が生じるおそれがある。
本実施形態では、リング状部材により、酸素吸収部材6が形成されている。上記酸素吸収部材6の形状については、特に限定されず、特に、前述したように、成形体からなる場合には、適宜の形状の酸素吸収部材6を容易に提供することができる。
もっとも、図2に示す第2の実施形態のように、上記内管4自体を酸素吸収性材料により形成し、内管4を酸素吸収部材6を兼ねるように構成してもよい。この場合には、図1に示した血液分離フィルタ部材5を配置するための構成として必要な内管4を用いて酸素吸収部材を構成し得るので、部品点数の増加を招くことなく、内部の減圧度を適正な値に維持することができる。
もっとも、酸素吸収部材6は、成形体で形成される必要は必ずしもなく、さらに様々な他の形状とされ得る。例えば、粒子状の酸素吸収部材を真空採血管1内に配置してもよい。酸素吸収部材の設置場所は特に限定されないが、得られた血清もしくは血漿と酸素吸収部材6とが接触しないことが望ましい。そのため、酸素吸収部材は、真空採血管1の採血管本体2の血漿もしくは血清が貯留される部分よりも上流側に固定されていることが望ましい。
なお、真空採血管においては、真空採血管を製造した後に、γ線などの放射線を照射して滅菌することが多い。この場合、前述した酸素吸収部材6として、真空採血管を構成するのに必要な部材の一部を放射線の照射により酸素を吸収する高分子材料で形成しておけば、酸素吸収部材を部品点数を増加させることなく、真空採血管内に構成することができる。また、γ線などの放射線を照射して、滅菌を施す場合、高分子によっては、放射線照射直後にラジカルを発生し、酸素を長期間にわたり徐々に吸収することがある。この場合には、γ線照射による酸素吸収速度があまり速くなく、すなわちγ線照射後に、真空採血管内の減圧が好ましい下限値以上に保たれているように構成されることが望ましい。この内圧の下限値とは、それ以上内圧が低くなると、溶血が生じる限界となる内圧値である。
なお、上記実施形態では、血液分離フィルタ部材5により、血漿もしくは血清の分離が行われていたが、血液分離フィルタ部材5の下流側に、血球停止フィルタをさらに設けてもよい。このような血球停止フィルタとしては、赤血球の通過を防止し得る適宜のフィルタ材料を用いることができる。このような材料としては、例えば、ポリビニリデンジフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ガラスファイバー、ボロシリケート、塩化ビニルまたは銀等を挙げることができる。
血球停止フィルタが多孔質物質からなる場合には、血漿または血清の通過が可能であり、赤血球の通過を防止できる範囲の孔径を有するものであれば、特に限定されるものではない。
赤血球の通過を防止するために、孔径は2μm以下であることが好ましい。孔径が小さい場合は、血液中のタンパク成分などが目づまりを起こす可能性があるため、孔径を0.05μm以上とすることが好ましい。赤血球の通過を防止する効果をより高めるためには、孔径は0.1〜1.5μmとすることがより好ましい。
濾過の流速を高めるために、血球停止フィルタの表面が親水処理されていてもよい。親水処理の方法として、プラズマ処理、親水性高分子のコーティング等が挙げられるが、これらに限定されず、他の方法を用いてもよい。
次に、具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明をより明らかにする。
(実施例1)
図2に示した真空採血管12を作製した。ポリエチレンテレフタレート製の繊維を集積してなる厚み0.39mm、幅13mm及び長さ240mmのシート状フィルタ部材を4枚用意し、2枚ずつ積層し、かつ渦巻き状に巻き取ることにより、血液分離フィルタ材料を2個作製した。次に、ポリプロピレンを射出成形することにより、図2に示した酸素吸収部材を兼ねる内管4を得た。この内管4内に、上記血液分離フィルタ材料を2個充填することにより、内管4内に血液分離フィルタ部材5を配置した構造を得た。
図2に示した真空採血管12を作製した。ポリエチレンテレフタレート製の繊維を集積してなる厚み0.39mm、幅13mm及び長さ240mmのシート状フィルタ部材を4枚用意し、2枚ずつ積層し、かつ渦巻き状に巻き取ることにより、血液分離フィルタ材料を2個作製した。次に、ポリプロピレンを射出成形することにより、図2に示した酸素吸収部材を兼ねる内管4を得た。この内管4内に、上記血液分離フィルタ材料を2個充填することにより、内管4内に血液分離フィルタ部材5を配置した構造を得た。
次に、ポリエチレンテレフタレートなどからなる長さ100mm、内径16mmの採血管本体2内に、上記内管4に血液分離フィルタ部材5が収納された構造を挿入し、45kPaの減圧下で合成ゴムからなる栓体3により密栓し、複数の真空採血管を製造した。
次に、上記真空採血管に、15.6kGyのγ線を照射した。
(実施例2)
γ線照射量27.5kGyとしたことを除いては、実施例1と同様にして、真空採血管を得た。
γ線照射量27.5kGyとしたことを除いては、実施例1と同様にして、真空採血管を得た。
(比較例)
γ線を照射せずに、実施例1で作製した真空採血管をそのまま用いた。
γ線を照射せずに、実施例1で作製した真空採血管をそのまま用いた。
(実施例及び比較例の評価)
実施例1,2及び比較例で用意した各真空採血管の内圧を製造直後に測定した。また、実施例1,2及び比較例の各真空採血管を複数本用意しておき、経時による内圧の変化を真空度測定装置(自社製、圧力センサAP−44(キーエンス社製)を使用)により測定した。結果を図3に示す。
実施例1,2及び比較例で用意した各真空採血管の内圧を製造直後に測定した。また、実施例1,2及び比較例の各真空採血管を複数本用意しておき、経時による内圧の変化を真空度測定装置(自社製、圧力センサAP−44(キーエンス社製)を使用)により測定した。結果を図3に示す。
図3から明らかなように、γ線を照射していない比較例では、日数が経過するに従って、真空採血管の内圧が高くなっていることがわかる。図3において、38.0kPaは、真空採血及び血液分離に際して溶血が生じない内圧下限値を示し、46.0kPaは、血液分離に際しての分離操作が途中で停止しない内圧上限値を示す。従って、真空採血管内は、この内圧上限値及び内圧下限値の間の内圧に維持されていることが必要である。
比較例では、360日経過後に、内圧が上限値に達し、それ以上保存すると、真空採血管内の減圧度が低下し、分離操作が途中で停止するおそれがあることがわかる。
これに対し、実施例1,2では、数十日程度まで内圧が低下するが、それ以後、内圧がほぼ一定となり、かつ720日経過後でも、内圧は上記上限値以下であることがわかる。すなわち、γ線照射後から720日の間の長期間にわたり、真空採血管内の減圧度が、上記下限値と上限値との間に保たれていることがわかる。
なお、実施例1,2の真空採血管において、γ線照射直後から数十日にわたる期間においては、真空採血管内の内圧が一旦低下している。これは、γ線の照射により、酸素吸収性部材6がラジカルを発生し、それが真空採血管内の酸素を消費するためである。もっとも、このγ線照射により、酸素が消費されたとしても、真空採血管内の圧力は、上記下限値以上に保たれている。
また、上記実施例1,2では、γ線の照射されたポリプロピレンからなる酸素吸収部材6により数十日以降は緩やかに酸素が吸収され、真空採血管内に侵入してくる空気量と平衡状態になるため、長期間にわたり、真空採血管内の内圧が上限値以下に保たれていることがわかる。
また、上記実施例1,2では、γ線の照射されたポリプロピレンからなる酸素吸収部材6により数十日以降は緩やかに酸素が吸収され、真空採血管内に侵入してくる空気量と平衡状態になるため、長期間にわたり、真空採血管内の内圧が上限値以下に保たれていることがわかる。
次に、実施例1,2及び比較例の真空採血管について、実際に真空採血法により血液を採取し、血清の分離を行った。実施例1,2及び比較例の各真空採血管において、製造直後から下記の表1に示す経過日数を経た段階で採血及び血清分離を行った。
表1から明らかなように、分離に要した時間が、実施例1,2では、720日経過後でも、180秒以内、すなわち3分以内に血液分離が完了していた。これに対して、比較例では、540日後には、分離途中で血液の流れが停止し、血清が全く得られなかった。
1…真空採血管
2a…開口
2…採血管本体
3…栓体
4…内管
4a…開口
4b…突出部
5…血液分離フィルタ部材
6…酸素吸収部材
11…真空採血管
12…酸素吸収部材
2a…開口
2…採血管本体
3…栓体
4…内管
4a…開口
4b…突出部
5…血液分離フィルタ部材
6…酸素吸収部材
11…真空採血管
12…酸素吸収部材
Claims (5)
- 開口を有する採血管本体と、
前記採血管本体の開口を閉栓し、内部を減圧状態に維持している栓体と、
前記採血管本体内に収納されており、真空採血法により導かれた血液を濾過する血液分離フィルタ部材とを有する真空採血管において、
前記採血管本体内に、酸素を吸収する酸素吸収部材が収納されていることを特徴とする、真空採血管。 - 前記酸素吸収部材が、放射線の照射により、酸化反応が進行して酸素を吸収する酸素吸収材料からなる、請求項1に記載の真空採血管。
- 前記酸素吸収材料が、放射線が照射された後に経時的に酸化する高分子材料からなる成形体である、請求項2に記載の真空採血管。
- 前記高分子材料が、ポリプロピレン、ポリアセタール、及びポリテトラフルオロエチレンからなる群から選択された高分子材料である、請求項3に記載の真空採血管。
- 前記酸素吸収部材の酸素吸収速度が0.1〜3mL/年である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の真空採血管。
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