JP2008248967A - 液体封入式防振装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】キャビテーションに起因する異音の発生を抑制することのできる液体封入式防振装置を提供する。
【解決手段】荷重の入力に伴って内圧が変化する受圧室15aと、可撓性膜が変形することにより容積変化が許容される平衡室15bとを連通するオリフィス通路17とを備えたエンジンマウントにおいて、受圧室15aの内圧上昇に伴い受圧室15a側から平衡室15b側に向かってオリフィス通路17を流動する液体の流速が所定流速以上になるときに、オリフィス通路17を通じた液体の流動を制限する弁20を設ける。
【選択図】図3
【解決手段】荷重の入力に伴って内圧が変化する受圧室15aと、可撓性膜が変形することにより容積変化が許容される平衡室15bとを連通するオリフィス通路17とを備えたエンジンマウントにおいて、受圧室15aの内圧上昇に伴い受圧室15a側から平衡室15b側に向かってオリフィス通路17を流動する液体の流速が所定流速以上になるときに、オリフィス通路17を通じた液体の流動を制限する弁20を設ける。
【選択図】図3
Description
本発明は、2つの液室をオリフィス通路によって接続し、液体がオリフィス通路を流動する際の流路抵抗を利用して防振効果を得る液体封入式防振装置に関し、特に自動車用のエンジンマウント等に用いられる液体封入式防振装置に関するものである。
こうした液体封入式防振装置を自動車用のエンジンマウントとして適用したものが特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されたエンジンマウントは、図9に示されるように車体、エンジンにそれぞれ取り付けられる一対の取付部1,2をゴム等の弾性材料からなる弾性部材3によって連結することにより、マウント本体4が形成されている。更に、同マウント本体4には、可撓性膜5が設けられて弾性部材3の凹部3aとこの可撓性膜5との間に液室6が形成されるとともに、区画部材7によってこの液室6が弾性部材3側の受圧室6aと可撓性膜5側の平衡室6bとに区画されている。また、区画部材7の周囲には区画部材7を囲むように延びる通路が区画形成されている。この通路は、受圧室側開口7aを介して受圧室6aに接続されるとともに、平衡室側開口7bを介して平衡室6bに接続されることにより、受圧室6aと平衡室6bとを連通するオリフィス通路8を構成している。そして、これら受圧室6a、平衡室6b及びオリフィス通路8には、エチレングリコール等の非圧縮性の液体が封入されている。
こうしたエンジンマウントによれば、振動が入力されて弾性部材3が変形するのに伴って受圧室6aの容積が変化すると、オリフィス通路8を通じて液体が流動するようになる。その結果、液体がオリフィス通路8を流動する際に生じる流路抵抗によって振動を減衰させ、弾性部材3の弾性変形だけでは得られない防振効果を得ることができるようになる。
特開2001‐50333号公報
ところで、こうした自動車用のエンジンマウントにおいては、路面の段差を乗り越えたとき等、瞬間的に大きな荷重が入力されたときに異音が発生することがある。このような異音は、瞬間的な荷重の入力に伴う受圧室6aの急速な容積変化に対し、オリフィス通路8を通じた各液室6a,6b間における液体の流動が追従できないことに起因して発生するものである。より詳細には、容積が増大する方向に受圧室6aが変形するときに、受圧室6aの単位時間あたりの容積変化量に対して、オリフィス通路8を通じて受圧室6aへと流入する液体の流入量が相対的に小さくなることに起因して発生するものである。
このように受圧室6aへの液体の単位時間あたりの流入量が容積変化量に対して相対的に小さくなると、受圧室6a内に過大な負圧が生じるようになってキャビテーションが発生するようになる。そして、そのキャビテーションによって生じた気泡が崩壊、消滅する際の衝撃によって異音が発生すると考えられている。
更にこの点について、本願発明者らは、こうしたエンジンマウントに瞬間的に大きな荷重が入力された場合、まず受圧室6aの容積が減少した後にその容積が増大し始めるようになるが、このように受圧室6aの容積が増大し始めても、オリフィス通路8内における液体の流動方向は直ぐには逆転せず、その慣性力によって受圧室6aから平衡室6bに向かって流れ続けており、これがキャビテーションを誘発する受圧室6aの負圧増大を助長していることを実験により確認した。
尚、こうした課題は自動車のエンジンマウントに限らず、区画部材で仕切られた受圧室と平衡室とをオリフィス通路によって接続した液体封入式防振装置にあっては、概ね共通するものである。
この発明は、この知見に基づいてなされたものであり、その目的は、液体封入式防振装置において、キャビテーションに起因する異音の発生を抑制することのできる液体封入式防振装置を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、振動源及び支持体に取り付けられる一対の取付部を連結する弾性部材と、同弾性部材と可撓性膜とによって区画形成され液体が封入された液室と、同液室を前記一対の取付部の相対変位により生じる前記弾性部材の変形に伴って内圧が変化する受圧室と前記可撓性膜が変形することにより容積変化が許容される平衡室とに区画する区画部材と、前記受圧室と前記平衡室とを連通するオリフィス通路とを備えた液体封入式防振装置において、前記受圧室の内圧上昇に伴い前記受圧室から前記平衡室に向かって前記オリフィス通路を流動する液体の流速が所定流速以上になるときに、同オリフィス通路を通じた液体の流動を制限する弁を備えることをその要旨とする。
請求項1に記載の発明は、振動源及び支持体に取り付けられる一対の取付部を連結する弾性部材と、同弾性部材と可撓性膜とによって区画形成され液体が封入された液室と、同液室を前記一対の取付部の相対変位により生じる前記弾性部材の変形に伴って内圧が変化する受圧室と前記可撓性膜が変形することにより容積変化が許容される平衡室とに区画する区画部材と、前記受圧室と前記平衡室とを連通するオリフィス通路とを備えた液体封入式防振装置において、前記受圧室の内圧上昇に伴い前記受圧室から前記平衡室に向かって前記オリフィス通路を流動する液体の流速が所定流速以上になるときに、同オリフィス通路を通じた液体の流動を制限する弁を備えることをその要旨とする。
防振装置本体に瞬間的に大きな荷重が入力されたときには、急激に受圧室の容積が変化してその内圧が大きく変動するため、その内圧の変動に伴ってオリフィス通路を流れる液体の流速が非常に速くなる。そこで、上記請求項1に記載の発明にあっては、受圧室から平衡室に向かってオリフィス通路を流れる液体の流速が所定流速以上になったときに、オリフィス通路を通じた液体の流動を制限する弁を設けるようにしている。これにより、瞬間的に大きな荷重が入力されるのに伴って受圧室の容積が急激に減少するときには、受圧室から平衡室に向かって流れる液体の流動が制限されるようになる。そのため、そのあと、受圧室の容積が増大するときにオリフィス通路内の液体に作用する慣性力が小さくなり、オリフィス通路内の液体が速やかに受圧室に向かって流動するようになる。その結果、瞬間的に大きな荷重が入力されたときに受圧室内に発生する負圧を小さくすることができるようになり、キャビテーションに起因する異音の発生を抑制することができるようになる。
一方、防振装置本体に入力される荷重が比較的小さい場合、換言すれば受圧室から平衡室へと向かって流れる液体の流速が所定流速未満である場合には、こうした制限が行われないため、オリフィス通路の流路抵抗によって得られる防振装置の防振機能を極端に低下させることもない。
尚、上記所定流速、即ち液体の流動を制限する際の流速値については、受圧室内にキャビテーションが発生するような急激な圧力変動が生じるときの液体の流速に基づいてこれを設定する。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の液体封入式防振装置において、前記弁は、前記受圧室から前記平衡室に向かって前記オリフィス通路を流れる液体の流速が所定流速以上になったときに、同オリフィス通路を閉塞して液体の流動を禁止することをその要旨とする。
受圧室から平衡室に向かってオリフィス通路を流れる液体の流動を制限する具体的な態様としては、オリフィス通路の通路断面積を減少させて液体の流量を減少させるものの他、請求項2に記載の発明によるように、受圧室から平衡室に向かってオリフィス通路を流れる液体の流速が所定流速以上になったときに、オリフィス通路を閉塞、即ちオリフィス通路の通路断面積を「0」にして液体の流動を禁止するものも含まれる。因みに、受圧室に発生する負圧を極力小さくしてキャビテーションに起因する異音の発生を抑制する上では、液体の流速を極力小さくする、即ち請求項2に記載の発明によるようにその流動を禁止することが望ましい。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の液体封入式防振装置において、前記弁は、前記オリフィス通路内に突出するように形成された当接部と、同オリフィス通路内における同当接部から液体の流動方向における受圧室側に離間した部位に同オリフィス通路内に突出するように弾性材料によって形成された舌片状の弁体とからなり、同オリフィス通路を受圧室から平衡室に向かって流動する液体の流速が所定流速以上になったときに弾性変形した前記弁体が前記当接部に当接することにより、同オリフィス通路の通路断面積を減少させて液体の流動を制限することをその要旨とする。
具体的には、請求項3に記載の発明によるように、弾性材料によって形成されてオリフィス通路内に突出して設けられる舌片状の弁体と、液体の流速が大きくなるのに伴って弾性変形した同弁体が当接するようにオリフィス通路内に突出して形成される当接部とによって弁を形成するといった構成を採用することができる。こうした構成によれば、オリフィス通路内を受圧室から平衡室に向かって流動する液体の流速が大きくなるのに伴って弾性変形する弁体が当接部に当接することにより、オリフィス通路の通路断面積を減少させて液体の流動を制限することができるようになる。
請求項4に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の液体封入式防振装置において、前記弁は、前記受圧室内における前記オリフィス通路の受圧室側開口近傍に同受圧室側開口と対向するように弾性材料によって板状に形成される弁体からなり、前記受圧室の内圧上昇に伴って前記受圧室側開口を通じて前記オリフィス通路に流入する液体の流速が所定流速以上になったときに前記受圧室側開口を覆うように弾性変形することにより前記オリフィス通路の通路断面積を減少させて液体の流動を制限することをその要旨とする。
また、請求項4に記載の発明によるように、受圧室内におけるオリフィス通路の受圧室側開口近傍に同受圧室側開口と対向するように弾性部材によって板状に形成された弁体を設けるといった構成を採用することもできる。こうした構成によれば、オリフィス通路の受圧室側開口と対向するように形成された弁体は、同弁体と受圧室側開口との隙間を流れてこの受圧室側開口を通じてオリフィス通路に流入する液体の流速が速くなるのに伴って、この受圧室側開口に引き寄せられるように弾性変形する。そのため、受圧室側開口に流入する液体の流速が弁体が弾性変形し始める所定流速以上になると、オリフィス通路内の液体の流動が制限されるようになる。このように上記請求項4に記載の構成によれば、受圧室から平衡室に向かってオリフィス通路を流れる液体の流速が所定流速以上になったときに、オリフィス通路の通路断面積を減少させて液体の流動を制限することができるようになる。
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の液体封入式防振装置において、前記弁は、前記受圧室内に配設される第1の受圧部と前記オリフィス通路内に配設される第2の受圧部とを有し、前記受圧室と前記オリフィス通路とを区画する隔壁を貫通してこれら第1及び第2の受圧部を連結するとともに前記オリフィス通路内に突出するように変位して前記オリフィス通路の通路断面積を変更可能な弁体と、同弁体を同オリフィス通路の通路断面積が大きくなる方向に付勢する付勢部材とを備えてなることをその要旨とする。
防振装置本体に瞬間的に大きな荷重が作用して受圧室の容積が減少する方向に変形すると、受圧室の内圧は急激に上昇する。またこのとき、受圧室の圧力上昇に伴ってオリフィス通路内を流れる液体の流速は速くなる。オリフィス通路内の圧力はこの流速が速くなるほど小さくなるため、弁体の第2の受圧部に作用する圧力はこの流速が速くなるほど小さくなる。これにより、受圧室の圧力上昇に伴って、この圧力と、受圧室の内圧によって弁体の第1の受圧部に作用する圧力との圧力差は大きくなる。そして、この圧力差によって弁体に作用する力が付勢部材の付勢力よりも大きくなると、弁体はオリフィス通路側に変位してオリフィス通路の通路断面積を減少させるようになる。このため上記請求項5に記載の発明によれば、受圧室の内圧上昇に伴ってオリフィス通路内を流動する液体の流速が所定流速以上になるときに、その流動を制限することができるようになる。従って、こうした構成を採用することにより、受圧室の容積が増大し始めたときにオリフィス通路内の液体に作用する慣性力を小さくして受圧室内に発生する負圧を小さくすることができ、キャビテーションに起因する異音の発生を抑制することができるようになる。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体封入式防振装置であって、エンジンを車体に支持する自動車用のエンジンマウントとして適用されることをその要旨とする。
自動車用のエンジンマウントにあっては、路面の段差を乗り越えたとき等のように瞬間的に大きな荷重が入力されたときに異音が発生することがある。また、特に静粛性を要求される自動車にあっては、こうした異音の発生を抑制することが要求される。そこで、請求項6に記載の発明によるように、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体封入式防振装置をエンジンを車体に支持する自動車用エンジンマウントとして適用することにより、こうした異音の発生を好適に抑制することができる。
(第1の実施形態)
以下、この発明にかかる液体封入式防振装置を、エンジンを車体に支持する自動車用エンジンマウントに具体化した第1の実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。
以下、この発明にかかる液体封入式防振装置を、エンジンを車体に支持する自動車用エンジンマウントに具体化した第1の実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。
図1は、本実施形態にかかるエンジンマウントの断面構造を示している。図1に示されるように、このエンジンマウントのマウント本体10は車体に固定される車体側取付部材11と、エンジンに連結されるエンジン側取付部材12とを弾性部材13を介して連結することにより形成されている。
車体側取付部材11は、ボルト50によって車体と連結される底部材11aと、円筒部材11bとからなり、図1に示されるようにこれら底部材11aと円筒部材11bとをかしめ加工によって一体に連結することにより有底円筒状に形成されている。円筒部材11bの内周面は、ゴム等の弾性材料によって形成された有底円筒状の弾性部材13の外周面と加硫接着されている。そして、弾性部材13の上端部には、エンジンを連結するボルト51及び位置決め用のピン52が取り付けられた円盤状のエンジン側取付部材12が加硫接着されている。
こうして形成されたマウント本体10は、図1に示されるようにその内部に弾性部材13の内周面と車体側取付部材11の内周面とによって区画された空間を有している。また、底部材11aと円筒部材11bとの間には、この空間を仕切る可撓性膜14及び区画部材16が挟持されている。可撓性膜14は、ゴム等の変形容易な素材によって形成されており、十分に撓んだ状態で底部材11aと円筒部材11bとの間に挟み込まれている。この可撓性膜14と弾性部材13の内周面とによって区画された空間には、エチレングリコール等の非圧縮性の液体が封入され、液室15が形成されている。そして、この液室15は、図1に示されるように区画部材16によって弾性部材13側の受圧室15aと可撓性膜14側の平衡室15bとに区画されている。
尚、区画部材16は、受圧室15a側に突出したハット形状をなす外周側ハット部材16aと、外周側ハット部材16aよりも小径の内周側ハット部材16bとを重ね合わせることにより形成されている。そして、図1に示されるように外周側ハット部材16aと内周側ハット部材16bとの間には、区画部材16の周方向に延びるオリフィス通路17が形成されている。このオリフィス通路17は、外周側ハット部材16aに形成された受圧室側開口16cを通じて受圧室15aに接続されるとともに、内周側ハット部材16bに形成された平衡室側開口16dを通じて平衡室15bに接続されている。こうして受圧室15aと平衡室15bは、このオリフィス通路17を通じて互いに接続されている。
このようにオリフィス通路17によって受圧室15aと平衡室15bとを互いに接続したこのエンジンマウントにあっては、荷重の入力に伴って車体側取付部材11とエンジン側取付部材12との間に相対変位が生じ、受圧室15aの容積Cが変化すると、オリフィス通路17を通じて液体が流動するようになる。そのため、オリフィス通路17の流路抵抗によって振動を減衰させることができるようになり、弾性部材13の弾性変形のみでは得られない防振効果を得ることができる。
ところで、こうしたエンジンマウントにおいては、路面の段差を乗り越えたとき等、瞬間的に大きな荷重が入力されたときに異音が発生することがある。このような異音は、瞬間的な荷重の入力に伴って容積Cが増大する方向に受圧室15aが変形するときに、受圧室15aの単位時間あたりの容積変化量に対して、オリフィス通路17を通じて受圧室15aへと流入する液体の流入量が相対的に小さくなることに起因して発生するものである。このように受圧室15aへの液体の単位時間あたりの流入量が容積変化量に対して相対的に小さくなると、受圧室15a内に過大な負圧が生じてキャビテーションが発生するようになる。そして、そのキャビテーションによって生じた気泡が崩壊、消滅する際の衝撃によって異音が発生する。
更に本願発明者らは、こうしたエンジンマウントに瞬間的に大きな荷重が入力された場合には、まず受圧室15aの容積Cが減少した後に、その容積Cが増大し始めるようになるが、受圧室15aの容積Cが増大し始めても、オリフィス通路17内における液体の流動方向は直ぐには逆転せず、その慣性力によって受圧室15aから平衡室15bに向かって流れ続けていることを実験により確認した。
以下、こうした受圧室15aの容積Cの変化に対するオリフィス通路17内の液体変位dの遅れについて図2(a),(b)を参照して詳しく説明する。ここで、図2(a),(b)は受圧室15aの容積Cの変化とオリフィス通路17内の液体変位dとの関係を示すタイムチャートであり、図2(a)は比較的振幅の小さな振動が入力された場合、図2(b)は比較的振幅の大きな振動が入力された場合におけるこれらの関係を示している。尚、図2(a),(b)では、オリフィス通路17内の液体変位dについて、平衡室15bから受圧室15aに向かって液体が流れる方向を「+」方向、受圧室15aから平衡室15bに向かって液体が流れる方向を「−」方向として示している。
図2(a)に示されるように比較的振幅の小さな振動が入力された場合には、オリフィス通路17内の液体は受圧室15aの容積Cの変化に追従してあまり遅れずに変位する。そのため、減少していた受圧室15aの容積Cが時刻t1において増大し始めると、時刻t2においてオリフィス通路17内の液体変位dが「−」方向から「+」方向へと変化する。即ち、受圧室15aの容積Cが増大し始めると直ぐにオリフィス通路17内の液体の流動方向は逆転し、平衡室15bから受圧室15aに向かって流動するようになる。
一方、図2(b)に示されるように比較的振幅の大きな振動が入力された場合、即ち瞬間的に大きな荷重が入力された場合には、オリフィス通路17の流路抵抗の影響により、オリフィス通路17内の液体は、受圧室15aの容積Cの変化に対して大きく遅れて変位する。そのため、荷重の入力に伴って減少していた受圧室15aの容積Cが時刻t1において増大し始めた後も、オリフィス通路17内の液体は時刻t3まで「−」方向に変位している。即ち、受圧室15aの容積Cが増大し始めた後も、時刻t1から時刻t3までの間はオリフィス通路17内の液体の流動方向が逆転せずに、受圧室15aから平衡室15bに向かって流動している。
このように受圧室15aの容積Cが増大しているときに、オリフィス通路17内の液体が受圧室15aから平衡室15bに向かって流動していると、受圧室15a内に過大な負圧が生じやすくなり、それに伴ってキャビテーションが発生しやすくなる。その結果、キャビテーションに起因する異音の発生が助長されるようになる。
本実施形態にかかるエンジンマウントにあっては、キャビテーションに起因する異音の発生を抑制すべく、オリフィス通路17内を受圧室15aから平衡室15bに向かって流れる液体の流速が所定流速以上となったときに、その流動を制限する弁20を設けるようにしている。
以下、図3を参照して、この弁20の構成について詳しく説明する。尚、図3(a)は弁20近傍のオリフィス通路17を拡大して示す断面図、図3(b)は図3(a)におけるb‐b線断面図である。
図3(a)に示されるように、この弁20は、オリフィス通路17内に突出する当接部21及び弁体22によって構成されている。図3(b)に示されるように当接部21は内周側ハット部材16bからオリフィス通路17内に突出するように延びる板状に形成されている。そして、その先端21aと外周側ハット部材16aとの間には、液体が流動する隙間が形成されている。一方、ゴム等の弾性材料によって形成される弁体22は、オリフィス通路17内において、この当接部21から液体の流動方向における受圧室側(図3(b)における右側)に離間した部位に設けられている。オリフィス通路17内に突出するように舌片状に形成された弁体22は、その基端22bが外周側ハット部材16aに加硫接着されている。そして、その先端22aと内周側ハット部材16bとの間には、液体が流動する隙間が形成されている。
図3(a)に示されるように当接部21及び弁体22は、オリフィス通路17の略全幅に亘って形成されており、当接部21と弁体22とを合わせた投影面がオリフィス通路17の通路断面のほとんどを覆うようになっている。
このようにオリフィス通路17内に設けられる当接部21と弁体22とによって構成される弁20の作用について、図4を併せ参照して説明する。図4はマウント本体10に瞬間的に大きな荷重が入力された場合、即ち受圧室15aの容積Cの変化に伴ってオリフィス通路17内を流動する液体の流速が所定流速以上の場合における弁20の動作態様を示す断面図である。尚、図4(a)は液体が受圧室15aから平衡室15bに向かって流れるときの様子を示す断面図、図4(b)は液体が平衡室15bから受圧室15aに向かって流れるときの様子を示す断面図である。
荷重の入力に伴い、まず容積Cが減少するように受圧室15aが変形し、図4(a)に矢印で示されるように液体が受圧室15aから平衡室15bに向かってオリフィス通路17内を流れる場合には、弁体22が弾性変形してその先端22a側の部分が当接部21と当接するようになる。その結果、オリフィス通路17が略閉塞された状態となり、オリフィス通路17を通じた液体の流動が実質的に禁止されるようになる。
そのあと、受圧室15aの容積Cが増大し始め、それに伴ってオリフィス通路17内の液体が受圧室15a内に吸引されるようになると、図4(b)に示されるように弁体22が当接部21から離間するように弾性変形する。そのため、当接部21と弁体22との隙間を通じて液体が流動するようになり、オリフィス通路17を通じて平衡室15bから受圧室15aに液体が供給されるようになる。
一方、マウント本体10に入力される荷重が比較的小さい場合、換言すれば受圧室15aから平衡室15bに向かって流れる液体の流速が所定流速未満の場合には、弁体22の剛性により図3(b)に示されるように当接部21と弁体22とが離間した状態が維持される。そのため、矢印及び破線矢印で示されるように平衡室15b側、受圧室15a側双方への液体の流動が許容され、こうした流動の制限は行われない。
尚、上記所定流速、即ち液体の流動を制限する流速値については、受圧室15a内にキャビテーションが発生するような急激な圧力変動が生じるときの液体の流速値に基づいてこれを設定するようにしている。また本実施形態では、弁体22と当接部21との距離を調節するとともに、弁体22の厚さや素材等を変更してその剛性を調節することによりオリフィス通路17内を受圧室15aから平衡室15bに向かって流れる液体の流速が所定流速以上となったときに弁体22が当接部21に当接して弁20が閉塞状態となるようにしている。
以上説明した第1の実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)マウント本体10に瞬間的に大きな荷重が入力されたときには、急激に受圧室15aの容積Cが変化してその内圧が大きく変動するため、この内圧の変動に伴ってオリフィス通路17を流れる液体の流速が非常に速くなる。そこで、上記第1の実施形態では、受圧室15aから平衡室15bに向かってオリフィス通路17を流れる液体の流速が所定流速以上になったときに、オリフィス通路17を通じた液体の流動を制限する弁20を設けるようにしている。これにより、瞬間的に大きな荷重が入力されるのに伴って受圧室15aの容積が急激に減少するときには、受圧室15aから平衡室15bに向かって流れる液体の流動が制限されるようになる。そのため、そのあと、受圧室15aの容積が増大するときにオリフィス通路17内の液体に作用する慣性力が小さくなり、オリフィス通路17内の液体が速やかに受圧室15aに向かって流動するようになる。その結果、瞬間的に大きな荷重が入力されたときに受圧室15a内に発生する負圧を小さくすることができるようになり、キャビテーションに起因する異音の発生を抑制することができるようになる。
(1)マウント本体10に瞬間的に大きな荷重が入力されたときには、急激に受圧室15aの容積Cが変化してその内圧が大きく変動するため、この内圧の変動に伴ってオリフィス通路17を流れる液体の流速が非常に速くなる。そこで、上記第1の実施形態では、受圧室15aから平衡室15bに向かってオリフィス通路17を流れる液体の流速が所定流速以上になったときに、オリフィス通路17を通じた液体の流動を制限する弁20を設けるようにしている。これにより、瞬間的に大きな荷重が入力されるのに伴って受圧室15aの容積が急激に減少するときには、受圧室15aから平衡室15bに向かって流れる液体の流動が制限されるようになる。そのため、そのあと、受圧室15aの容積が増大するときにオリフィス通路17内の液体に作用する慣性力が小さくなり、オリフィス通路17内の液体が速やかに受圧室15aに向かって流動するようになる。その結果、瞬間的に大きな荷重が入力されたときに受圧室15a内に発生する負圧を小さくすることができるようになり、キャビテーションに起因する異音の発生を抑制することができるようになる。
一方、マウント本体10に入力される荷重が比較的小さい場合、換言すれば受圧室15aから平衡室15bに向かって流れる液体の流速が所定流速未満である場合には、こうした制限が行われないため、オリフィス通路17の流路抵抗によって得られる防振機能を極端に低下させることもない。
(2)上記第1の実施形態では、受圧室15aから平衡室15bに向かってオリフィス通路17を流れる液体の流速が所定流速以上になったときにオリフィス通路17を閉塞し、液体の流動を実質的に禁止するようにしている。そのため、受圧室15aに発生する負圧を極力小さくしてキャビテーションに起因する異音の発生を好適に抑制することができる。
尚、上記第1の実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・内周側ハット部材16bに当接部21を設け、外周側ハット部材16aに弁体22を設ける構成を示したが、外周側ハット部材16aに当接部21を設け、内周側ハット部材16bに弁体を設ける構成を採用することもできる。
・内周側ハット部材16bに当接部21を設け、外周側ハット部材16aに弁体22を設ける構成を示したが、外周側ハット部材16aに当接部21を設け、内周側ハット部材16bに弁体を設ける構成を採用することもできる。
・また内周側ハット部材16bから突出し、その先端21aと外周側ハット部材16aとの間に流体の流動する隙間を形成する板状の当接部21を示したが、当接部21の形状はこうした構成に限定されるものではない。弁体22が当接部21から離間した状態にあるときには液体の流動を許容する一方、弁体22と当接部21が当接しているときにはオリフィス通路17を閉塞して液体の流動を禁止することのできる構成であればよい。例えば、オリフィス通路17を閉塞する仕切板を設け、この仕切板に液体の流動を許容する貫通孔を形成してこの仕切板を当接部とし、弁体22がこの当接部に当接したときに貫通孔を閉塞することによって液体の流動を禁止するといった構成を採用することもできる。
・上記第1の実施形態では、オリフィス通路17内を流動する液体の流速が所定流速以上となったときにオリフィス通路17を閉塞して、液体の流動を実質的に禁止する構成を示した。これに対して、オリフィス通路17内を受圧室15aから平衡室15bに向かって流れる液体の流動を抑制することができれば、そのあと受圧室15aの容積Cが増大するときに作用する慣性力を小さくし、キャビテーションの発生を抑制することができるようになる。そこで、液体の流動を完全に遮断するものの他、液体の流動を一部制限する構成を採用することもできる。例えば、弁体が弾性変形して当接部に当接した場合であっても液体が流動する隙間が生じるようにオリフィス通路17の通路断面積よりも小さな弁体及び当接部を形成するといった構成を採用することもできる。
(第2の実施形態)
以下、図5及び図6を参照して第2の実施形態について説明する。本実施形態は第1の実施形態に対してオリフィス通路17内の液体の流動を制限する弁の構成が異なるものであるため、同様の部材については同一の符号を付すのみとしてその説明を割愛し、両者の相違点である弁の構成を中心に説明する。
(第2の実施形態)
以下、図5及び図6を参照して第2の実施形態について説明する。本実施形態は第1の実施形態に対してオリフィス通路17内の液体の流動を制限する弁の構成が異なるものであるため、同様の部材については同一の符号を付すのみとしてその説明を割愛し、両者の相違点である弁の構成を中心に説明する。
図5は第2の実施形態にかかるエンジンマウントの断面構造を示している。図5に示されるように本実施形態のエンジンマウントでは、第1の実施形態においてオリフィス通路17内に形成されていた弁20に替えて、受圧室15a内に弁120を設けるようにしている。弾性材料によって形成された弁120は、オリフィス通路17の受圧室側開口16c近傍に板状に形成された弁体121と、弁体121と区画部材16との間に柱状に形成された支持部122とによって構成されている。
以下、図6を併せ参照して弁120の構成をより詳細に説明する。尚、図6(a),(b)は、受圧室15a内における弁120近傍を拡大して示す斜視図であり、図6(a)は開弁状態における弁120を、図6(b)は閉弁状態における弁120をそれぞれ拡大して示すものである。
図6(a)に示されるように、弁体121は区画部材16に形成された受圧室側開口16cと対向するように延び、受圧室側開口16cを覆うように庇状に形成されている。また支持部122は、この弁体121を区画部材16から所定の距離だけ離間させるように一対の柱状に形成されており、それぞれ一端が区画部材16に、他端が弁体121に加硫接着されている。そのため、弁体121と区画部材16との間には、液体が流動する隙間が形成されている。
このように形成された弁120にあっては、図6(a)に矢印で示されるように容積Cが減少するように受圧室15aが変形する際に弁体121と区画部材16との間の隙間を通じて液体が流動し、受圧室側開口16cからオリフィス通路17に液体が流入する。
ここで、マウント本体10に大きな荷重が入力され、それに伴う受圧室15aの容積Cが急速に減少する場合、即ち受圧室側開口16cを通じてオリフィス通路17に流入する液体の流速が所定流速以上になる場合には、図6(b)に示されるように弁体121が受圧室側開口16cに引き寄せられて弁体121及び支持部122が弾性変形し、弁体121が区画部材16の受圧室側開口16cの周縁部と密接するようになる。その結果、オリフィス通路17が閉塞されるようになり、オリフィス通路17内の液体の流動が禁止されるようになる。尚、一旦弁体121が密接して受圧室側開口16cが閉塞されると、容積Cが減少するように荷重が作用している間は、受圧室15a内の液体の圧力によって弁体121が区画部材16に押し付けられるため、オリフィス通路17が閉塞された状態が継続する。
そして、そのあと受圧室15aの容積Cが増大し始めると、受圧室15aの内圧が低下するため、弁体121及び支持部122の弾性力により弁体121は区画部材16から剥離するようになり、オリフィス通路17が開放される。その結果、オリフィス通路17を通じて平衡室15bから受圧室15aに向かって液体が流動するようになる。
一方、マウント本体10に入力される荷重が比較的小さい場合、換言すれば受圧室15aの容積Cが比較的ゆっくりと減少し、受圧室側開口16cを通じてオリフィス通路17に流入する液体の流速が所定流速未満である場合には、図6(a)に示されるように弁体121及び支持部122の剛性により、弁体121は区画部材16から離間した状態に維持される。そのため、オリフィス通路17を通じた平衡室15b側、受圧室15a側双方への液体の流動が許容され、上記のような流動の制限は行われない。
尚、上記所定流速、即ち液体の流動を制限する流速値については、受圧室15a内にキャビテーションが発生するような急激な圧力変動が生じるときの液体の流速値に基づいてこれを設定するようにしている。本実施形態では、弁体121と区画部材16との距離を調節するとともに、弁体121及び支持部122の厚さや素材等を変更してその剛性を調節することにより受圧室側開口16cを通じてオリフィス通路17に流入する液体の流速が所定流速以上となったときに受圧室側開口16cを閉塞してオリフィス通路17内の液体の流動を禁止するようにしている。
以上説明した第2の実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(3)受圧室15a内における受圧室側開口16c近傍に同受圧室側開口16cと対向するように弾性材料によって板状に形成された弁体121を設けるようにしている。そのため、弁体121と区画部材16との隙間を流れ、受圧室側開口16cを通じてオリフィス通路17に流入する液体の流速が速くなるのに伴って、弁体121は受圧室側開口16cに引き寄せられるように弾性変形する。これにより受圧室側開口16cに流入する液体の流速が所定流速以上になると、オリフィス通路17内の液体の流動が制限されるようになる。その結果、受圧室15aから平衡室15bに向かってオリフィス通路17を流れる液体の流速が所定流速以上になったときに、オリフィス通路17内の液体の流動を制限することができるようになる。従って、そのあと受圧室15aの容積が増大するときにオリフィス通路17内の液体に作用する慣性力が小さくなり、オリフィス通路17内の液体が速やかに受圧室15aに向かって流動するようになる。その結果、瞬間的に大きな荷重が入力されたときに受圧室15a内に発生する負圧を小さくすることができるようになり、キャビテーションに起因する異音の発生を抑制することができるようになる。
(3)受圧室15a内における受圧室側開口16c近傍に同受圧室側開口16cと対向するように弾性材料によって板状に形成された弁体121を設けるようにしている。そのため、弁体121と区画部材16との隙間を流れ、受圧室側開口16cを通じてオリフィス通路17に流入する液体の流速が速くなるのに伴って、弁体121は受圧室側開口16cに引き寄せられるように弾性変形する。これにより受圧室側開口16cに流入する液体の流速が所定流速以上になると、オリフィス通路17内の液体の流動が制限されるようになる。その結果、受圧室15aから平衡室15bに向かってオリフィス通路17を流れる液体の流速が所定流速以上になったときに、オリフィス通路17内の液体の流動を制限することができるようになる。従って、そのあと受圧室15aの容積が増大するときにオリフィス通路17内の液体に作用する慣性力が小さくなり、オリフィス通路17内の液体が速やかに受圧室15aに向かって流動するようになる。その結果、瞬間的に大きな荷重が入力されたときに受圧室15a内に発生する負圧を小さくすることができるようになり、キャビテーションに起因する異音の発生を抑制することができるようになる。
(4)受圧室側開口16cを通じてオリフィス通路17に流入する液体の流速が所定流速以上になったときに、オリフィス通路17を閉塞して液体の流動を禁止するようにしているため、受圧室15aに発生する負圧を極力小さくしてキャビテーションに起因する異音の発生を好適に抑制することができる。
(5)第1の実施形態では、オリフィス通路17内に弁20を設けるため弁体22の他に当接部21を別途設ける必要があったが、本実施形態では区画部材16の受圧室側開口16cの周縁部に弁体121を当接させる構成としたことにより、当接部を別途設ける必要がない。そのため、弁の構成の簡素化を図ることができる。
尚、上記第2の実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記第2の実施形態では、弁体121と区画部材16との間の隙間を流れ、受圧室側開口16cを通じてオリフィス通路17に流入する液体の流速が所定流速以上となったときにオリフィス通路17を閉塞して、液体の流動を禁止する構成を示した。これに対して、オリフィス通路17内を受圧室15aから平衡室15bに向かって流れる液体の流動を抑制することができれば、そのあと受圧室15aの容積Cが増大するときに作用する慣性力を小さくし、キャビテーションの発生を抑制することができるようになる。そこで、液体の流動を完全に遮断するものの他、液体の流動を一部制限する構成を採用することもできる。例えば、弁体121が弾性変形して区画部材16の受圧室側開口16cの周縁部に当接した場合であっても液体が流動する隙間が生じるように弁体121を小さくして受圧室側開口16cの少なくとも一部を覆うようにするといった構成や、弁体121に受圧室側開口16cよりも開口面積の小さな制限通路としての貫通孔を設けるといった構成を採用することもできる。また、弁体121が受圧室側開口16cの周縁部に完全に当接しないように弁体121と区画部材16との間にスペーサを設けるといった構成を採用することもできる。
・上記第2の実施形態では、弁体121と区画部材16との間の隙間を流れ、受圧室側開口16cを通じてオリフィス通路17に流入する液体の流速が所定流速以上となったときにオリフィス通路17を閉塞して、液体の流動を禁止する構成を示した。これに対して、オリフィス通路17内を受圧室15aから平衡室15bに向かって流れる液体の流動を抑制することができれば、そのあと受圧室15aの容積Cが増大するときに作用する慣性力を小さくし、キャビテーションの発生を抑制することができるようになる。そこで、液体の流動を完全に遮断するものの他、液体の流動を一部制限する構成を採用することもできる。例えば、弁体121が弾性変形して区画部材16の受圧室側開口16cの周縁部に当接した場合であっても液体が流動する隙間が生じるように弁体121を小さくして受圧室側開口16cの少なくとも一部を覆うようにするといった構成や、弁体121に受圧室側開口16cよりも開口面積の小さな制限通路としての貫通孔を設けるといった構成を採用することもできる。また、弁体121が受圧室側開口16cの周縁部に完全に当接しないように弁体121と区画部材16との間にスペーサを設けるといった構成を採用することもできる。
・弁体121の剛性を調整し、支持部122を省略することもできる。即ち受圧室15aの容積Cが比較的ゆっくりと減少し、受圧室側開口16cを通じてオリフィス通路17に流入する液体の流速が所定流速未満である場合には、弁体121がその剛性のみによって区画部材16から離間した状態を維持するといった構成を採用することもできる。
(第3の実施形態)
以下、図7及び図8を参照して第3の実施形態について説明する。本実施形態は第1の実施形態に対してオリフィス通路17内の液体の流動を制限する弁の構成が異なるものであるため、同様の部材については同一の符号を付すのみとしてその説明を割愛し、両者の相違点である弁の構成を中心に説明する。
(第3の実施形態)
以下、図7及び図8を参照して第3の実施形態について説明する。本実施形態は第1の実施形態に対してオリフィス通路17内の液体の流動を制限する弁の構成が異なるものであるため、同様の部材については同一の符号を付すのみとしてその説明を割愛し、両者の相違点である弁の構成を中心に説明する。
図7(a)はこの弁220近傍のオリフィス通路17を拡大して示す断面図、図7(b)は図(a)におけるb‐b線断面図である。図7(b)に示されるように本実施形態にかかる弁220は、受圧室15aとオリフィス通路17とを区画する外周側ハット部材16aに形成された貫通孔16eに挿通されオリフィス通路17内に変位可能な弁体221と、この弁体221を受圧室15a内に変位させる方向、即ちオリフィス通路17の通路断面積Sが大きくなる方向に付勢するスプリング222とを備えて構成されている。
図7(a)及び(b)に示されるように弁体221は、受圧室15a内に配設された板状の第1の受圧部221aと、オリフィス通路17内に配設された板状の第2の受圧部221bとを有している。そして、この弁220は、第1の受圧部221aに作用する圧力と第2の受圧部221bに作用する圧力との圧力差によって生じる力と、スプリング222の付勢力との関係により開閉される。
具体的には、図8に示されるように、マウント本体10に瞬間的に大きな荷重が作用して容積Cが減少する方向に受圧室15aが急激に変形する場合には、受圧室15aの内圧が急激に上昇し、破線矢印で示されるように第1の受圧部221aに作用する圧力が増大する。またこのとき、受圧室15aの圧力上昇に伴ってオリフィス通路17内を流れる液体の流速は速くなる。オリフィス通路17内の圧力はこの流速が速くなるほど小さくなるため、第2の受圧部221bに作用する圧力はこの流速が速くなるほど小さくなる。これにより、第2の受圧部221bに作用する圧力と、受圧室15aの内圧により第1の受圧部221aに作用する圧力との差によって弁体221には、オリフィス通路17内に向かって変位する方向、即ちオリフィス通路17の通路断面積Sを減少させる方向の力が作用する。そして、この力がスプリング222の付勢力よりも大きくなると、図8に示されるように弁体221は、オリフィス通路17内に向かって変位し、オリフィス通路17の通路断面積Sを減少させるようになる。
一方、マウント本体10に入力される荷重が比較的小さい場合には、図7(b)に示されるようにオリフィス通路17内を流れる液体の流速は比較的遅いため、第1の受圧部221aに作用する受圧室15aの内圧と、第2の受圧部221bに作用する圧力との差はそれほど大きくならない。そのため、スプリング222の付勢力により弁体221は受圧室15a側に保持された状態に維持されてオリフィス通路17の通路断面積Sが制限されることはない。
尚、上記所定流速、即ち液体の流動を制限する流速値については、受圧室15a内にキャビテーションが発生するような急激な圧力変動が生じるときの液体の流速値に基づいてこれを設定するようにしている。本実施形態では、スプリング222のばね定数を調節することにより受圧室側開口16cを通じてオリフィス通路17に流入する液体の流速が所定流速以上となったときに弁体221がオリフィス通路17内に向かって変位し、液体の流動を制限するようにしている。
以上説明した第3の実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(6)第1の受圧部221aと第2の受圧部221bに作用する圧力の差によって弁体221に作用する力がスプリング222の付勢力よりも大きくなると、弁体221はオリフィス通路17側に変位してオリフィス通路17の通路断面積Sを減少させるようになる。これにより、受圧室15aの内圧上昇に伴ってオリフィス通路17内を流動する液体の流速が所定流速以上になるときに、その流動を制限することができるようになる。従って、受圧室15aの容積が増大し始めたときにオリフィス通路17内の液体に作用する慣性力を小さくして受圧室15a内に発生する負圧を小さくすることができ、キャビテーションに起因する異音の発生を抑制することができるようになる。
(6)第1の受圧部221aと第2の受圧部221bに作用する圧力の差によって弁体221に作用する力がスプリング222の付勢力よりも大きくなると、弁体221はオリフィス通路17側に変位してオリフィス通路17の通路断面積Sを減少させるようになる。これにより、受圧室15aの内圧上昇に伴ってオリフィス通路17内を流動する液体の流速が所定流速以上になるときに、その流動を制限することができるようになる。従って、受圧室15aの容積が増大し始めたときにオリフィス通路17内の液体に作用する慣性力を小さくして受圧室15a内に発生する負圧を小さくすることができ、キャビテーションに起因する異音の発生を抑制することができるようになる。
尚、上記第3の実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・弁体221を付勢する付勢部材として上記第3の実施形態ではスプリング222を採用する構成を示したが、この発明は、こうした構成に限定されるものではない。即ち、付勢部材は、弁体221をオリフィス通路17の通路断面積Sが大きくなる方向に付勢するものであればよく、スプリングの他、例えば、ゴム等の弾性部材を採用することもできる。
・弁体221を付勢する付勢部材として上記第3の実施形態ではスプリング222を採用する構成を示したが、この発明は、こうした構成に限定されるものではない。即ち、付勢部材は、弁体221をオリフィス通路17の通路断面積Sが大きくなる方向に付勢するものであればよく、スプリングの他、例えば、ゴム等の弾性部材を採用することもできる。
また、上記第1〜3の実施形態は、これを適宜変更した以下の実施形態にて実施することもできる。
・オリフィス通路内を受圧室15aから平衡室15bに向かって流動する液体の流速が所定流速以上になったときに、その流動を制限することのできるものであれば、弁の構成は適宜変更することができる。例えば、オリフィス通路17内を流動する液体の流速を検出するセンサと、センサによって検出される流速が所定流速以上であることに基づいて電気的に駆動されてオリフィス通路17を閉塞する電磁弁とを設けるといった構成を採用することもできる。
・オリフィス通路内を受圧室15aから平衡室15bに向かって流動する液体の流速が所定流速以上になったときに、その流動を制限することのできるものであれば、弁の構成は適宜変更することができる。例えば、オリフィス通路17内を流動する液体の流速を検出するセンサと、センサによって検出される流速が所定流速以上であることに基づいて電気的に駆動されてオリフィス通路17を閉塞する電磁弁とを設けるといった構成を採用することもできる。
・上記第1〜3の実施形態では、本発明にかかる液体封入式防振装置を自動車用のエンジンマウントに具体化した例を示したが、この発明は、トランスミッションを車体に連結する防振装置等にも適用することができる。また、その他、自動車用の防振装置に限らず、区画部材で仕切られた受圧室と平衡室とをオリフィス通路によって接続した液体封入式防振装置に広く適用することができる。
10…マウント本体、11…車体側取付部材、12…エンジン側取付部材、13…弾性部材、14…可撓性膜、15…液室、15a…受圧室、15b…平衡室、16…区画部材、16c…受圧室側開口、16d…平衡室側開口、17…オリフィス通路、20…弁、21…当接部、22…弁体、120…弁、121…弁体、220…弁、221…弁体、221a…第1の受圧部、221b…第2の受圧部、222…スプリング。
Claims (6)
- 振動源及び支持体に取り付けられる一対の取付部を連結する弾性部材と、同弾性部材と可撓性膜とによって区画形成され液体が封入された液室と、同液室を前記一対の取付部の相対変位により生じる前記弾性部材の変形に伴って内圧が変化する受圧室と前記可撓性膜が変形することにより容積変化が許容される平衡室とに区画する区画部材と、前記受圧室と前記平衡室とを連通するオリフィス通路とを備えた液体封入式防振装置において、
前記受圧室の内圧上昇に伴い前記受圧室から前記平衡室に向かって前記オリフィス通路を流動する液体の流速が所定流速以上になるときに、同オリフィス通路を通じた液体の流動を制限する弁を備える
ことを特徴とする液体封入式防振装置。 - 請求項1に記載の液体封入式防振装置において、
前記弁は、前記受圧室から前記平衡室に向かって前記オリフィス通路を流れる液体の流速が所定流速以上になったときに、同オリフィス通路を閉塞して液体の流動を禁止する
ことを特徴とする液体封入式防振装置。 - 請求項1又は請求項2に記載の液体封入式防振装置において、
前記弁は、前記オリフィス通路内に突出するように形成された当接部と、同オリフィス通路内における同当接部から液体の流動方向における受圧室側に離間した部位に同オリフィス通路内に突出するように弾性材料によって形成された舌片状の弁体とからなり、同オリフィス通路を受圧室から平衡室に向かって流動する液体の流速が所定流速以上になったときに弾性変形した前記弁体が前記当接部に当接することにより、同オリフィス通路の通路断面積を減少させて液体の流動を制限する
ことを特徴とする液体封入式防振装置。 - 請求項1又は請求項2に記載の液体封入式防振装置において、
前記弁は、前記受圧室内における前記オリフィス通路の受圧室側開口近傍に同受圧室側開口と対向するように弾性材料によって板状に形成される弁体からなり、前記受圧室の内圧上昇に伴って前記受圧室側開口を通じて前記オリフィス通路に流入する液体の流速が所定流速以上になったときに前記受圧室側開口を覆うように弾性変形することにより前記オリフィス通路の通路断面積を減少させて液体の流動を制限する
ことを特徴とする液体封入式防振装置。 - 請求項1に記載の液体封入式防振装置において、
前記弁は、前記受圧室内に配設される第1の受圧部と前記オリフィス通路内に配設される第2の受圧部とを有し、前記受圧室と前記オリフィス通路とを区画する隔壁を貫通してこれら第1及び第2の受圧部を連結するとともに前記オリフィス通路内に突出するように変位して前記オリフィス通路の通路断面積を変更可能な弁体と、同弁体を同オリフィス通路の通路断面積が大きくなる方向に付勢する付勢部材とを備えてなる
ことを特徴とする液体封入式防振装置。 - エンジンを車体に支持する自動車用のエンジンマウントとして適用される
請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体封入式防振装置。
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
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A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20100601 |