JP2008247654A - アンモニアの分離方法、製造方法、及び気体分離膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】冷却することなくアンモニア原料をアンモニアから分離することにより、低コストでアンモニアを分離することができるアンモニアの分離方法、並びに該分離方法を用いたアンモニアの製造方法を実現する。
【解決手段】本発明のアンモニアの分離方法は、セラミック基材にシリカ含有層が積層されている気体分離膜を用いて、水素、窒素及びアンモニアの少なくとも1成分を分離する膜分離工程を含む。
【選択図】図1
【解決手段】本発明のアンモニアの分離方法は、セラミック基材にシリカ含有層が積層されている気体分離膜を用いて、水素、窒素及びアンモニアの少なくとも1成分を分離する膜分離工程を含む。
【選択図】図1
Description
本発明は、セラミック基材にシリカ含有層が積層されている気体分離膜を用いたアンモニアの分離方法、及び該分離方法を含む製造方法に関するものである。
工業レベルにおいて大規模に行われているアンモニアの合成方法として、ハーバー法が知られている。ハーバー法は、鉄系の3元系触媒を用いて、窒素と水素とからアンモニアを合成する方法である。
上記方法では、例えば、図12に示すように、450℃、14MPaの高温高圧条件下で、窒素と水素とからアンモニアを反応装置で合成し、得られる未精製アンモニアを熱交換器により冷却して、アンモニアを窒素及び水素から分離することにより精製している(例えば、非特許文献1参照)。
化学工学会編、「化学プロセス」、東京化学同人(1998)、pp56
化学工学会編、「化学プロセス」、東京化学同人(1998)、pp56
しかしながら、上記方法では、未精製アンモニアを熱交換器により冷却して、アンモニアを窒素及び水素から分離するため、アンモニアを精製するために多大なエネルギーが必要となるという問題を生じる。更には、図12に破線で示すように、分離したアンモニア原料をアンモニア合成の原料として再利用する場合、分離したアンモニア原料を再加熱しなければならず、多大なエネルギーが必要となる。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、冷却することなくアンモニア原料をアンモニアから分離することにより、低コストでアンモニアを分離することができるアンモニアの分離方法、並びに該分離方法を用いたアンモニアの製造方法、並びにこれら方法で用いられる気体分離膜を実現することにある。
本発明に係るアンモニアの分離方法は、上記課題を解決するために、セラミック基材にシリカ含有層が積層されている気体分離膜を用いて、水素、窒素及びアンモニアの少なくとも1成分を分離する膜分離工程を含むことを特徴としている。
上記方法によれば、水素、窒素及びアンモニアの少なくとも1成分を未精製アンモニアから、従来のように沸点差により分離しないため、上記膜分離工程を、未精製アンモニアを冷却することなく行うことができる。このため、アンモニアを精製するために必要な冷却操作を抑制することができる。従って、低コストでアンモニアを分離、製造することができる方法を提供することができるという効果を奏する。
本発明に係るアンモニアの分離方法では、上記膜分離工程は、気体分離膜を用いて、未精製アンモニアから水素を分離する第1分離工程と、気体分離膜を用いて、第1分離工程後の未精製アンモニアからアンモニアを分離する第2分離工程とを含むことが好ましい。
上記方法によれば、沸点差による分離を行わずに、未精製アンモニアからアンモニアを分離することができる。よって、水素及び窒素を冷却することなくアンモニアから分離することができる。このため、アンモニアを精製するために必要な冷却操作をより抑制することができる。従って、より低コストでアンモニアを製造することができるアンモニアの製造方法を提供することができる。
本発明に係るアンモニアの分離方法は、上記膜分離工程において、気体分離膜を用いて、未精製アンモニアからアンモニアを分離することが好ましい。
上記方法によれば、沸点差による分離を行わずに、未精製アンモニアからアンモニアを分離することができる。よって、水素及び窒素を冷却することなくアンモニアから分離することができる。このため、アンモニアを精製するために必要な冷却操作をより抑制することができる。従って、より低コストでアンモニアを製造することができるアンモニアの製造方法を提供することができる。
本発明に係るアンモニアの分離方法では、上記気体分離膜は、加熱したセラミック基材に、シリカコロイドゾルを調製し溶媒で希釈した希釈シリカコロイドゾルを接触させてシリカコロイドゲル層を形成し、当該シリカコロイドゲル層を焼成してシリカ含有層とするシリカ含有層形成工程を含む製造方法により製造されたことが好ましい。
上記方法によれば、上記気体分離膜は、水素、窒素及びアンモニアの少なくとも1成分を未精製アンモニアから良好に分離することができる。よって、高効率で水素、窒素及びアンモニアの少なくとも1成分を未精製アンモニアから分離することができるため、より低コストでアンモニアを製造することができるアンモニアの製造方法を提供することができる。
本発明に係るアンモニアの製造方法は、上記課題を解決するために、水素及び窒素から、水素及び窒素とアンモニアとを含む未精製アンモニアを合成するアンモニア合成工程と、上記膜分離工程とを含むことを特徴としている。
上記方法によれば、水素、窒素及びアンモニアの少なくとも1成分を未精製アンモニアから、従来のように沸点差により分離しないため、上記膜分離工程を、未精製アンモニアを冷却することなく行うことができる。このため、アンモニアを精製するために必要な冷却操作を抑制することができる。従って、低コストでアンモニアを製造することができるという効果を奏する。
本発明に係るアンモニアの製造方法では、上記膜分離工程により分離した、水素及び窒素の少なくとも1成分を上記アンモニア合成工程で再利用することが好ましい。
上記方法によれば、上記膜分離工程により分離した、水素及び窒素の少なくとも1成分をリサイクル利用する際、冷却されていないため、該成分を再加熱する必要がない。よって、アンモニアをリサイクル利用するために必要な熱量を大幅に抑制することができる。従って、より低コストでアンモニアを製造することができる。
本発明に係るアンモニアの製造方法では、上記膜分離工程を、未精製アンモニアを冷却することなく行うことが好ましい。
上記方法によれば、上記膜分離工程を、未精製アンモニアを冷却することなく行うため、より低コストでアンモニアを製造することができる。
本発明に係るアンモニアの製造方法では、更に、アンモニア合成工程で用いるガスから不純物を除去するガスパージ工程と、該ガスパージ工程により取り除かれたパージガスから水素若しくはアンモニアを回収する回収工程とを含み、上記回収工程では、セラミック基材にシリカ含有層が積層されている気体分離膜を用いて、パージガスから水素若しくはアンモニアを回収することが好ましい。
上記方法によれば、より高効率で水素若しくはアンモニアを回収することができるため、より低コストでアンモニアを製造することができる。
本発明に係る水素の製造方法は、上記課題を解決するため、アンモニアを分解することにより、水素、窒素及びアンモニアを含む混合ガスを合成するアンモニア分解工程と、セラミック基材にシリカ含有層が積層されている気体分離膜を用いて、上記混合ガスから水素を分離する膜分離工程とを含むことを特徴としている。
上記方法によれば、水素、窒素及びアンモニアを含む混合ガスから、水素を従来のように沸点差により分離しないため、上記膜分離工程を、混合ガスを冷却することなく行うことができる。このため、水素を精製するために必要な冷却操作を抑制することができる。従って、低コストでアンモニアから高純度水素を製造することができるという効果を奏する。
本発明に係る水素の製造方法では、上記気体分離膜は、NH3分解触媒を含んでいることが好ましい。
上記方法によれば、アンモニア分解工程と膜分離工程とを同時に行うことができるため、製造設備のスペースを小さくすることができる。
本発明に係る気体分離膜は、上記課題を解決するために、アンモニア製造若しくはアンモニア分解による水素製造で用いられる気体分離膜であり、加熱したセラミック基材に、シリカコロイドゾルを調製し溶媒で希釈した希釈シリカコロイドゾルを接触させてシリカコロイドゲル層を形成し、当該シリカコロイドゲル層を焼成してシリカ含有層とするシリカ含有層形成工程を含む製造方法により製造されたことを特徴としている。
上記構成によれば、水素、窒素及びアンモニアの少なくとも1成分を未精製アンモニア若しくは未精製水素から良好に分離することができる。よって、高効率で水素、窒素及びアンモニアの少なくとも1成分を分離することができるため、低コストでアンモニア若しくは水素を製造することができる気体分離膜を提供することができる。
本発明に係るアンモニアの分離方法は、以上のように、セラミック基材にシリカ含有層が積層されている気体分離膜を用いて、水素、窒素及びアンモニアの少なくとも1成分を分離する膜分離工程を含むことを特徴としている。
このため、低コストでアンモニアを製造することができる製造方法を提供することができるという効果を奏する。
本発明に係るアンモニアの製造方法は、以上のように、水素及び窒素から、水素及び窒素とアンモニアとを含む未精製アンモニアを合成するアンモニア合成工程と、上記膜分離工程とを含むことを特徴としている。
このため、低コストでアンモニアを製造することができる製造方法を提供することができるという効果を奏する。
本発明に係る水素の製造方法は、以上のように、アンモニアを分解することにより、水素及び窒素とアンモニアとを含む混合ガスを合成するアンモニア分解工程と、セラミック基材にシリカ含有層が積層されている気体分離膜を用いて、上記混合ガスから水素を分離する膜分離工程とを含むことを特徴としている。
このため、低コストで水素を製造することができる製造方法を提供することができるという効果を奏する。
本発明に係る気体分離膜は、以上のように、アンモニア製造若しくはアンモニア分解による水素製造で用いられる気体分離膜であり、加熱したセラミック基材に、シリカコロイドゾルを調製し溶媒で希釈した希釈シリカコロイドゾルを接触させてシリカコロイドゲル層を形成し、当該シリカコロイドゲル層を焼成してシリカ含有層とするシリカ含有層形成工程を含む製造方法により製造されたことを特徴としている。
このため、低コストでアンモニア若しくは水素を製造することができる気体分離膜を提供することができる。
以下、本発明について詳しく説明する。尚、「重量」は「質量」と同義語として扱い、「重量%」は「質量%」と同義語として扱う。また、範囲を示す「A〜B」は、A以上B以下であることを示す。
図1に、本実施の形態に係るアンモニアの製造方法の概略構成を示すフローチャートを示す。図1に示すように、本実施の形態に係るアンモニアの製造方法は、水素及び窒素から、水素及び窒素とアンモニアとを含む未精製アンモニアを合成するアンモニア合成工程と、セラミック基材にシリカ含有層が積層されている気体分離膜を用いて、水素、窒素及びアンモニアの少なくとも1成分を未精製アンモニアから分離する膜分離工程とを含む方法である。
〔アンモニア合成工程〕
図1に示すように、上記アンモニア合成工程では、反応装置により、窒素(N2)と水素(H2)とを高温高圧(例えば、450℃、14MPa)条件下で反応させ、未精製アンモニアを合成する。尚、上記「未精製アンモニア」とは、水素及び窒素を反応させて得られるアンモニア、水素及び窒素を含む混合物のことである。
図1に示すように、上記アンモニア合成工程では、反応装置により、窒素(N2)と水素(H2)とを高温高圧(例えば、450℃、14MPa)条件下で反応させ、未精製アンモニアを合成する。尚、上記「未精製アンモニア」とは、水素及び窒素を反応させて得られるアンモニア、水素及び窒素を含む混合物のことである。
上記反応条件については、上述した条件には限定されず、従来公知のアンモニア合成の条件の範囲内で行うことができる。また、アンモニア合成に用いられる触媒を適宜用いることができる。
〔膜分離工程〕
上記膜分離工程における「水素、窒素及びアンモニアの何れか1成分を分離」とは、気体分離膜を透過させることにより上記1成分を分離する形態であってもよいし、気体分離膜を透過させないことにより上記1成分を分離する形態であってもよい。
上記膜分離工程における「水素、窒素及びアンモニアの何れか1成分を分離」とは、気体分離膜を透過させることにより上記1成分を分離する形態であってもよいし、気体分離膜を透過させないことにより上記1成分を分離する形態であってもよい。
本実施の形態で用いられる、セラミック基材にシリカ含有層が積層されている気体分離膜は、NH3/N2の比が大きく、また、H2/N2の比も大きい。このため、図1に示すように、本実施の形態に係るアンモニアの分離方法では、上記膜分離工程は、気体分離膜を用いて未精製アンモニアから水素を分離する第1分離工程と、別の気体分離膜を用いて、第1分離工程後の未精製アンモニアからアンモニアを分離する第2分離工程とを含むことが好ましい。この場合、第1分離工程で用いる気体分離膜と第2分離工程で用いる気体分離膜とは、種類が同じであってもよいし、異なっていてもよい。
本実施の形態に係るアンモニアの製造方法では、上記膜分離工程により分離した、水素及び窒素の少なくとも1成分(以下、「アンモニア原料」と記する場合がある)を上記アンモニア合成工程で再利用するため、再度、反応装置へと導入される(図1の破線参照)。本実施の形態では、アンモニア合成工程と膜分離工程における温度が同じであるため、分離したアンモニア原料を再度加熱することなくアンモニア合成工程で再利用することができる。これにより、大幅にエネルギーコストを抑制することができる。
〔気体分離膜〕
上記気体分離膜は、加熱したセラミック基材に、シリカコロイドゾルを調製し溶媒で希釈した希釈シリカコロイドゾルを接触させてシリカコロイドゲル層を形成し、当該シリカコロイドゲル層を焼成してシリカ含有層とするシリカ含有層形成工程を含む製造方法により製造されたものであることが好ましい。これにより、厚みの非常に薄いシリカコロイドゲル層をコーティングすることができる。
上記気体分離膜は、加熱したセラミック基材に、シリカコロイドゾルを調製し溶媒で希釈した希釈シリカコロイドゾルを接触させてシリカコロイドゲル層を形成し、当該シリカコロイドゲル層を焼成してシリカ含有層とするシリカ含有層形成工程を含む製造方法により製造されたものであることが好ましい。これにより、厚みの非常に薄いシリカコロイドゲル層をコーティングすることができる。
上記シリカ含有層とは、シリカのみから構成される層であってもかまわないし、ニッケルのようなシリカ以外の成分を含む層であってもかまわない。
上記セラミック基材としては、例えば、多孔性セラミック基材にシリカ−ジルコニア層が積層されてなるものを用いることができる。この場合、上記シリカ含有層はシリカ−ジルコニア層上に積層される。上記多孔性セラミック基材は、多孔性のセラミックであれば特に限定されないが、例えば、α−アルミナ、ムライト、γ−アルミナ、ジルコニア、チタニア等が挙げられる。
予め加熱された被コーティング物質にコーティング溶液を接触させ、当該溶液の溶媒を瞬間的に蒸発させることによって、被コーティング物質をコーティングする方法をホットコーティング法というが、このホットコーティング法によれば、極めて薄い膜を容易に形成することができる。セラミック基材等の被コーティング物質は、コーティング物質であるシリカコロイドゾルと接触する時の温度が約170℃〜190℃程度となるよう予め加熱しておけばよい。
セラミック基材のシリカ−ジルコニア層と希釈シリカコロイドゾルとを接触させる方法は、例えば、希釈シリカコロイドゾルを含んで濡れている布とセラミック基材とを接触させることや、希釈シリカコロイドゾルをシリカ−ジルコニア層に噴霧すること等により行うことができる。
上記ホットコーティングに用いるシリカコロイドゾルは、例えば、ケイ酸エチルを硝酸等の硝酸の水溶液中において、加水分解・縮重合させた後、多量の水及び所定の硝酸を加えて、シリカの濃度を所望の範囲、溶液のpHを1〜3付近にそれぞれ調製した後、この溶液を5〜20時間煮沸することによって得ることができる。
本実施の形態では、所定の粒径となるように、所定の濃度で調製されたシリカコロイドゾルを希釈した希釈シリカコロイドゾルを用いて、ホットコーティング法により、シリカコロイドゲル層を形成している。
希釈前のシリカコロイドゾルの調製濃度は、その下限値を0.1重量%以上とすることが好ましく、0.3重量%以上とすることがより好ましい、また、その上限値を4.0重量%以下とすることが好ましく、2.0重量%以下とすることがより好ましい。シリカコロイドゾルの調製濃度を上記範囲とすることにより、シリカ含有層の形成に適した平均粒径のシリカコロイドゾルを調製することができる。水素選択性を示す気体分離膜を製造する場合では、シリカコロイドゾルの調製濃度が0.3重量%以上であることがより好ましく、アンモニア選択性の気体分離膜を製造する場合では、シリカコロイドゾルの調製濃度が0.5重量%以上であることがより好ましい。
希釈シリカコロイドゾルの濃度は、その下限値を0.01重量%以上とすることが好ましく、0.05重量%以上とすることがより好ましい、また、その上限値を0.5重量%以下とすることが好ましく、0.4重量%以下とすることがより好ましい。希釈シリカコロイドゾルの濃度を上記範囲とすることにより、ホットコーティング法によりシリカコロイドゲル層を形成する際に、当該シリカコロイドゲル層にひび割れが生じることを防止できる。したがって、シリカコロイドゲル層が焼成されたシリカ含有層に隙間(ピンホール)が生じることを防ぐことができ、気体分離膜の気体選択性を高めることができる。尚、コロイドゾルの濃度とはテトラエトキシシラン(TEOS)を溶質として換算した濃度のことをいう。
例えば、上記のようにして調製した希釈シリカコロイドゾルを、ホットコーティング法によって、シリカ−ジルコニア層等のコーティング対象物質にコーティングして、焼成することによりシリカ含有層を形成することができる。この焼成は、例えば、400〜550℃の炉中にて10〜15分間程度行われる。
また、上記の焼成条件の他にも、例えば、550〜650℃水蒸気雰囲気下で30分間程度焼成してもよい。特に、この条件下で焼成することにより、水蒸気存在下の高温環境(500℃)といった過酷な状況でも安定した気体分離性能を維持する、高温安定性に優れた気体分離膜を製造することができる。
このように、希釈シリカコロイドゾルをホットコーティングに使用することにより、ピンホールの非常に少ない超薄膜の気体分離膜を製造することができるため、気体透過速度を大幅に改善することができる。
上記セラミック基材として、シリカ−ジルコニア層が積層された多孔性セラミック基材を用いる場合、シリカ−ジルコニア層としては、その厚さが10μm未満、好ましくは5μm未満で、その細孔径が10nm以下、好ましくは7nm以下のものが用いられる。例えば、ホットコーティング法を用いれば、数ミクロンの細孔径を有する多孔性セラミック基材表面近傍に、上記のようなシリカ−ジルコニア層(シリカ−ジルコニア薄膜)を、容易に担持させることができる。
気体分離膜の細孔径の測定法として、気体透過率の動的分子径依存性から推定する気体透過法が知られているが、本実施の形態に係る水素選択性を示す気体分離膜においては2〜4Å、より好ましくは2.5〜3.5Åの細孔径が好ましく、アンモニア選択性を示す気体分離膜においては3.5〜10Å、より好ましくは3.5〜5Åが好ましい。
尚、本実施形態において、細孔径とは、特開2005−305425号公報の実施例1に記載されているように、ケルヴィンの毛管凝縮径でその細孔分布を評価したときに、無次元空気流速が0.01以下になる上限値をいう。また、「平均粒径」とは、シリカコロイドゾルを無作為に所定数(例えば10)選び出し、当該選び出されたものの粒径の測定結果の平均値をいう。
尚、上述の説明では、上記膜分離工程が、気体分離膜を用いて未精製アンモニアから水素を分離する第1分離工程と、別の気体分離膜を用いて、第1分離工程後の未精製アンモニアからアンモニアを分離する第2分離工程とを含む場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、第1分離工程により、未精製アンモニアから水素を分離した後に、熱交換器によりアンモニアを分離する形態であってもよい。気体分離膜を用いて、水素、窒素及びアンモニアの少なくとも1成分を未精製アンモニアから分離する膜分離工程を含んでいれば、冷却する未精製アンモニアの量を減らすことができるため、本実施形態とほぼ同様の効果が得られる。
但し、本実施形態のように、上記膜分離工程が、第1分離工程と第2の膜分離工程とを含む場合は、より低コストでアンモニアを製造することができるので、特に効果が大きい。また、当然のことながら、気体分離膜を用いて未精製アンモニアからアンモニアを1段階で分離する形態であってもかまわない。
また、上述の説明では、上記膜分離工程により分離した、水素及び窒素の少なくとも1成分を上記アンモニア合成工程で再利用する場合について説明したが、これに限るものではない。水素及び窒素の少なくとも1成分を上記アンモニア合成工程で再利用しなくてもかまわない。
但し、本実施形態のように、上記膜分離工程により分離した、水素及び窒素の少なくとも1成分を上記アンモニア合成工程で再利用する場合には、より低コストでアンモニアを製造することができるので、特に効果が大きい。
また、上述の説明では、アンモニア合成工程と膜分離工程とにおける温度が同じである場合について説明したが、これに限るものではない。温度が異なっていてもかまわない。
但し、本実施形態のように、アンモニア合成工程と膜分離工程とにおける温度が同じである場合には、より低コストでアンモニアを製造することができるので、特に効果が大きい。
また、上述の説明では、上記膜分離工程が、未精製アンモニアから水素を分離する第1分離工程と、第1分離工程後の未精製アンモニアからアンモニアを分離する第2分離工程とを含む場合について説明したが、これに限るものではない。上記膜分離工程が、未精製アンモニアから窒素を分離する第1分離工程と、第1分離工程後の未精製アンモニアからアンモニアを分離する第2分離工程とを含む場合であってもかまわない。
また、上述の説明では、アンモニアを製造する場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、図2に示すように、上記アンモニア合成工程を、アンモニアを分解することにより、水素及び窒素とアンモニアとを含む混合ガスを合成するアンモニア分解工程に替え、膜分離工程を、本実施の形態に係る気体分離膜を用いて、上記混合ガスから水素を分離する工程にすることにより、水素を製造する形態にも同様に適用することができる。また、この場合、図3に示すように、NH3分解触媒を含む気体分離膜を用いることにより、アンモニアの分解と水素の分離とを同時に行うことができる。
尚、上述したアンモニアの製造方法においては、原料中に含まれるアルゴンガス等がリサイクル反応ループ内に蓄積すること防ぐために、連続的にガスパージを行なうことがより好ましく、該パージガスから水素を回収することが更に好ましい。
また、上記水素回収に、本実施の形態に係る水素透過性の気体分離膜を用いることにより、パージガスを冷却することなく水素回収を行うことが可能である。更には、アンモニア選択透過性の気体分離膜を用いることにより、生成物であるアンモニアの回収率を向上させることが可能となる。これにより、アンモニアをより高効率で製造することができる。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
〔無機多孔質膜の作製〕
<シリカコロイドゾルの調製>
珪酸エチル10gを、61重量%の硝酸水溶液1gを含む水溶液100mLに加え、室温にて0.5時間攪拌し、珪酸エチルの加水分解を行った。その後、61重量%の硝酸水溶液2gを加え、更に水を加えて500mLとした後、12時間煮沸攪拌することにより、シリカコロイドゾルを調製した。
<シリカコロイドゾルの調製>
珪酸エチル10gを、61重量%の硝酸水溶液1gを含む水溶液100mLに加え、室温にて0.5時間攪拌し、珪酸エチルの加水分解を行った。その後、61重量%の硝酸水溶液2gを加え、更に水を加えて500mLとした後、12時間煮沸攪拌することにより、シリカコロイドゾルを調製した。
上記シリカコロイドゾルを、水で希釈することにより、2.0重量%、1.0重量%、及び0.5重量%の濃度のシリカコロイドゾルをそれぞれ作製した。
得られた3種類のシリカコロイドゾルを、水で0.4〜0.05重量%に希釈し、希釈シリカコロイドゾルとした。具体的には、2.0重量%のシリカコロイドゾルを5倍に希釈して0.4重量%とし、1.0重量%及び0.5重量%のシリカコロイドゾルを10倍に希釈して、それぞれ0.1重量%及び0.05重量%とした。
<シリカジルコニアゾルの調製>
エタノール100gに、珪酸エチル3.55g、ジルコニウムテトラブトキシド7.2g、35重量%塩酸1.0gを加え、0.5時間攪拌し、珪酸エチル及びジルコニウムテトラブトキシドの加水分解を行った。その後、更に水を加えて500mLとした後、12時間煮沸攪拌することにより、シリカジルコニアコロイドゾル(Zr/Si=1)を調製した。
エタノール100gに、珪酸エチル3.55g、ジルコニウムテトラブトキシド7.2g、35重量%塩酸1.0gを加え、0.5時間攪拌し、珪酸エチル及びジルコニウムテトラブトキシドの加水分解を行った。その後、更に水を加えて500mLとした後、12時間煮沸攪拌することにより、シリカジルコニアコロイドゾル(Zr/Si=1)を調製した。
尚、コロイド粒径は、特開2005−305425号公報の段落〔0009〕に記載のようにコロイド調製濃度で調整することができ、調製したコロイドを任意の濃度に希釈することにより気体透過性と分離性とを制御することができる。
<製膜>
シリカ−ジルコニア膜を担持した多孔性α−アルミナ管を、特開2005−305425号公報の実施例1に記載の方法により調製した。具体的には、α−アルミナ多孔質管(空孔率:50%、細孔径:1μm、外径10mm、内径8mm(厚み1mm)、長さ10cm;三井研削砥石社製、商品名:マルチポアロン)の外表面を平滑化するため、α−アルミナ微粒子の担持、空気中焼成(550℃)を数回繰り返した。その後、2重量%シリカ−ジルコニア(Zr/Si=1)コロイドゾルによるホットコーティング(180℃)、及び空気中焼成(550℃)を数回繰り返し、細孔径が数nmのシリカジルコニア中間層を作製した。
シリカ−ジルコニア膜を担持した多孔性α−アルミナ管を、特開2005−305425号公報の実施例1に記載の方法により調製した。具体的には、α−アルミナ多孔質管(空孔率:50%、細孔径:1μm、外径10mm、内径8mm(厚み1mm)、長さ10cm;三井研削砥石社製、商品名:マルチポアロン)の外表面を平滑化するため、α−アルミナ微粒子の担持、空気中焼成(550℃)を数回繰り返した。その後、2重量%シリカ−ジルコニア(Zr/Si=1)コロイドゾルによるホットコーティング(180℃)、及び空気中焼成(550℃)を数回繰り返し、細孔径が数nmのシリカジルコニア中間層を作製した。
Si−1膜及びSi−2膜は、2.0重量%のシリカコロイドを5倍希釈した上記0.4重量%のシリカコロイドゾルを、数回ホットコーティング(180℃)及び空気中焼成(550℃)する操作を繰り返した後に、0.5重量%シリカコロイドゾルを10倍希釈した上記0.05重量%のシリカコロイドゾルを数回ホットコーティング(180℃)及び空気中焼成(550℃)する操作を繰り返すことにより作製した。
Si−3膜及びSi−4膜では、2.0重量%のシリカコロイドゾルを5倍希釈した上記0.4重量%シリカコロイドゾルをホットコーティング(180℃)及び空気中焼成(550℃)した後に、1.0重量%のシリカコロイドゾルを10倍希釈した上記0.1重量%のシリカコロイドゾルを数回ホットコーティング(180℃)及び空気中焼成(550℃)する操作を繰り返すことにより作製した。
得られたSi−1〜Si−4膜の細孔径は、その作製に用いたシリカコロイドゾルの濃度により制御することができた。具体的には、Si−1膜及びSi−2膜の細孔径は約3Åであり、ヘリウムや水素(動的分子径2.6,2.9Å)に対してのみ高い選択透過性、並びに高い水素/窒素選択性を示す。一方、Si−3膜及びSi−4膜は4〜5Åの細孔径を有し、ヘリウムや水素だけでなく、分子径の比較的大きな窒素(動的分子径3.6Å)に対しても、比較的高い透過性を有する。
尚、Si−1膜、Si−2膜、Si−3膜及びSi−4膜はシリカジルコニア中間層に100〜500nmの厚みで製膜されている。
〔ガス透過実験〕
多孔性シリカ膜のガス透過性特性の測定は、図4に示す装置を用いて行った。図4中、1はガスボンベ、2は乾燥管、3は圧力調整弁、4は圧力計、5は質量流量コントローラ、6は三方コック、7は膜、8は背圧弁、9は四方コック、10はガスサンプラー、11はアンモニア吸収液(HCl水溶液)、12はガスクロマトグラフ、13はソープフィルムメータ、14は温度コントローラを示す。
多孔性シリカ膜のガス透過性特性の測定は、図4に示す装置を用いて行った。図4中、1はガスボンベ、2は乾燥管、3は圧力調整弁、4は圧力計、5は質量流量コントローラ、6は三方コック、7は膜、8は背圧弁、9は四方コック、10はガスサンプラー、11はアンモニア吸収液(HCl水溶液)、12はガスクロマトグラフ、13はソープフィルムメータ、14は温度コントローラを示す。
測定は、上流側から純ガス(He、H2、N2)を供給し、下流側と差圧(上流側圧力0.13〜0.3MPa、下流側圧力0.1MPa)をつけて測定する方法(加圧法)、並びに、上流側から純ガス(He、H2、N2)を供給し、下流側にスイープガス(Ar)を流し、ガスクロマトグラフ12で成分を測定する方法(スイープ法)により行った。
尚、NH3については、透過ガスを塩酸で中和し、非溶解性ガスのみをソープフィルムメータ13で流量を測定し、透過率を求めた。尚、以下の結果において、NH3についてはスイープ法で測定を行い、NH3以外のガスについては加圧法で測定した。
図5に、200℃における多孔性シリカ膜の透過率の分子径依存性のグラフを示し、表1に400℃における多孔性シリカ膜の透過率及び透過率比を示す。
その結果、例えば、表1に示すようにSi−1膜のH2/N2の透過率比は250、H2/NH3の透過率比は23であり、Si−2膜のH2/N2の透過率比は980、H2/NH3の透過率比は147であり、Si−1膜及びSi−2膜は特に高い分離性を有する水素分離膜であることが確認できた。一方、Si−3膜及びSi−4膜は、Si−1膜及びSi−2膜と比べて高い透過性を示した。更には、H2/NH3の透過率比はそれぞれ11及び37と比較的小さな値であるが、分子径5.5ÅのSF6に対しては高い選択性を示し、H2/SF6透過率比はそれぞれ100及び1000倍程度を示した。このことから、Si−3膜及びSi−4膜の細孔径はSi−1膜及びSi−2膜よりも大きく、4Å程度と推測される。
また、図6及び図7に、透過率の経時変化(400℃)の測定結果を示す。図6はSi−2膜における透過率の経時変化(400℃)を示すグラフであり、図7はSi−4膜における透過率の経時変化(400℃)を示すグラフである。この測定は、400℃においてN2、H2を透過させた後、NH3を透過させることにより行った。
図6に示すように、Si−2膜では、NH3の透過率は安定しており、NH3透過前後のN2、H2の透過率はほぼ一致していた。このことから、Si−2膜はNH3に耐性を有していることが確認できた。
一方、図7に示すように、Si−4膜では、NH3の透過率は安定しているが、NH3透過後のN2、H2の透過率は減少していた。このため、Si−4膜では、NH3の吸着が起こっており、シラノール基と反応していることが考えられる。
次に、図8及び図9に、透過率の温度依存性の測定結果を示す。図8はSi−2膜における透過率の温度依存性を示すグラフであり、図9はSi−3膜における透過率の温度依存性を示すグラフである。
図8に示すように、Si−2膜では、温度に対するNH3の透過率は安定しており、また、50℃〜400℃の温度範囲において、NH3、N2、H2の透過率の大きさの順番は変化がなかった。また、Si−3膜では、温度に対するNH3、H2、N2の透過率は安定していた。
次に、図10及び図11に、透過率のNH3濃度依存性の測定結果を示す。図10はSi−3膜における400℃での透過率のNH3濃度依存性を示すグラフであり、図11はSi−3膜における50℃での透過率のNH3濃度依存性を示すグラフである。
図10に示すように、Si−3膜は、400℃においてはH2、NH3の透過率はNH3のモル分率に依存せず、一定であった。一方、50℃では、NH3のモル分率が高くなるに従って、H2の透過率が減少した。これは、定温では、NH3が膜に吸着し、H2をブロッキングしていることが考えられる。ブロッキングによってアンモニアを水素よりも選択的に透過させたことから、アンモニア合成工程においてアンモニア選択分離への応用が可能であることが確認できた。
以上のことから、本発明に係るアンモニアの分離方法は、広い温度範囲で用いることができ、広い範囲の組成の未精製アンモニアに対して用いることができることが確認できた。
本発明のアンモニアの分離方法は、水素、窒素及びアンモニアの少なくとも1成分を未精製アンモニアから、従来のように沸点差により分離しない。よって、上記膜分離工程を、未精製アンモニアを冷却することなく行うことができる。このため、アンモニア製造プロセスに好適に用いることができる。
Claims (11)
- セラミック基材にシリカ含有層が積層されている気体分離膜を用いて、水素、窒素及びアンモニアの少なくとも1成分を分離する膜分離工程を含むことを特徴とするアンモニアの分離方法。
- 上記膜分離工程は、
気体分離膜を用いて、未精製アンモニアから水素を分離する第1分離工程と、
気体分離膜を用いて、第1分離工程後の未精製アンモニアからアンモニアを分離する第2分離工程とを含むことを特徴とする請求項1に記載のアンモニアの分離方法。 - 上記膜分離工程では、気体分離膜を用いて、未精製アンモニアからアンモニアを分離することを特徴とする請求項1に記載のアンモニアの分離方法。
- 上記気体分離膜は、加熱したセラミック基材に、シリカコロイドゾルを調製し溶媒で希釈した希釈シリカコロイドゾルを接触させてシリカコロイドゲル層を形成し、当該シリカコロイドゲル層を焼成してシリカ含有層とするシリカ含有層形成工程を含む製造方法により製造されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のアンモニアの分離方法。
- 水素及び窒素から、水素及び窒素とアンモニアとを含む未精製アンモニアを合成するアンモニア合成工程と、
請求項1〜4の何れか1項に記載の膜分離工程とを含むことを特徴とするアンモニアの製造方法。 - 上記膜分離工程により分離した、水素及び窒素の少なくとも1成分を上記アンモニア合成工程で再利用することを特徴とする請求項5に記載のアンモニアの製造方法。
- 上記膜分離工程を、未精製アンモニアを冷却することなく行うことを特徴とする請求項5又は6に記載のアンモニアの製造方法。
- 更に、アンモニア合成工程で用いるガスから不純物を除去するガスパージ工程と、
該ガスパージ工程により取り除かれたパージガスから水素若しくはアンモニアを回収する回収工程とを含み、
上記回収工程では、セラミック基材にシリカ含有層が積層されている気体分離膜を用いて、パージガスから水素若しくはアンモニアを回収することを特徴とする請求項5〜7の何れか1項に記載のアンモニアの製造方法。 - アンモニアを分解することにより、水素、窒素及びアンモニアを含む混合ガスを合成するアンモニア分解工程と、
セラミック基材にシリカ含有層が積層されている気体分離膜を用いて、上記混合ガスから水素を分離する膜分離工程とを含むことを特徴とする水素の製造方法。 - 上記気体分離膜は、NH3分解触媒を含んでいることを特徴とする請求項9に記載の水素の製造方法。
- アンモニア製造若しくはアンモニア分解による水素製造で用いられる気体分離膜であり、
加熱したセラミック基材に、シリカコロイドゾルを調製し溶媒で希釈した希釈シリカコロイドゾルを接触させてシリカコロイドゲル層を形成し、当該シリカコロイドゲル層を焼成してシリカ含有層とするシリカ含有層形成工程を含む製造方法により製造されたことを特徴とする気体分離膜。
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