JP2014058433A - アンモニアの分離方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】アンモニアと水素および/または窒素を含む複数の成分からなる気体混合物からアンモニアを高い透過度で透過側へ分離する性能に優れたゼオライト膜複合体を用いたアンモニアの分離方法を提供する。
【解決手段】ゼオライト膜を用いて、アンモニアと水素および/または窒素を含む複数の成分からなる気体混合物からアンモニアを分離する方法であって、該ゼオライト膜が多孔質支持体上に形成されてなるアンモニアの分離方法。ゼオライトは、酸素8員環を有し、CHA型アルミノ珪酸塩であることが好ましい。
【選択図】図3

Description

本発明は、ゼオライト膜複合体を用いて、アンモニアと水素および/または窒素を含む複数の成分からなる気体混合物からアンモニアを分離する方法に関するものである。
近年、気体(ガス)または液体の混合物の分離方法として、高分子膜やゼオライト膜などの膜を用いた膜分離、濃縮方法が提案されている。高分子膜、例えば平膜や中空糸膜などは、加工性に優れるが、耐熱性が低いという欠点がある。また高分子膜は、耐薬品性が低く、特に有機溶媒や有機酸、ガス分離の場合には、軽質炭化水素などの有機物との接触で膨潤するものが多く、また硫化物などの吸着性の成分による劣化などが起きるため、分離、濃縮対象の適用範囲に制限を受けるという欠点がある。これに対して、ゼオライト膜のような無機材料膜は、耐熱性に優れ、高分子膜よりも広い温度範囲で分離、濃縮を実施
することができ、更に有機物を含む混合物の分離にも適用することができる。なお、ゼオライト膜は、通常、無機材料よりなる支持体上に、膜状にゼオライトを形成させたゼオライト膜複合体として分離、濃縮に用いられている。
膜による気体混合物(ガス)の分離方法としては、1970年代から高分子膜を用いた方法が提案されている。しかし、高分子膜は加工性に優れる特徴をもつ一方で、耐薬品性の低さや、熱や化学物質、圧力により劣化して性能が低下することが問題であった。近年、これらの問題を解決すべく、耐薬品性、耐酸化性、耐熱安定性、耐圧性が良好な種々の無機膜が提案されてきている。その中でもゼオライトは、サブナノメートルの規則的な細孔を有しているため、分子ふるいとしての働きをもつので選択的に特定の分子を透過でき、高分離性能を示すことが期待されている。
混合ガスの膜分離の例としては、火力発電所や石油化学工業などから排出されるガスの分離で、二酸化炭素と窒素、二酸化炭素とメタン、水素と炭化水素、水素と酸素、水素と二酸化炭素、窒素と酸素、パラフィンとオレフィンの分離などがある。このようなガス分離に用い得るガス分離用ゼオライト膜としては、A型膜、FAU膜、MFI膜、SAPO−34膜、DDR膜などのゼオライト膜が知られている。
また、混合ガスの分離の例として、アンモニアの水素および窒素からの分離がある。即ち、アンモニアの生成反応は平衡反応であり、反応温度、反応圧力によって濃度は異なるが、生成ガス中には未反応の水素と窒素がアンモニアと共存している。アンモニアの製造プラントでは、通常、生成ガスを−20℃〜−5℃程度に冷却し、アンモニアを水素、窒素およびその他の成分から凝縮分離している(非特許文献1、2)。この分離方法では生成ガスを冷却するためにエネルギーを要していた。また、分離した水素、窒素は再び原料として反応器にリサイクルされるが、冷却されたガスを反応温度に昇温することとなり、この点でもエネルギーが必要となる。このため、凝縮分離法よりも高い温度でアンモニアを分離できる方法が望まれていた。
凝縮分離法よりも高い温度で分離する方法としては、膜による分離方法が報告されている(特許文献1)。特許文献1では、水素、窒素およびアンモニアの混合物である生成ガスを、セラミックス基材にシリカ含有層が積層された分離膜を用いて分離している。この特許文献1では、気体分離膜をアンモニアの製造に適用した概略フローチャートとして、気体分離膜を2段に設置し、1段目の気体分離膜で水素を透過側に分離し、1段目の気体分離膜で透過しなかった窒素とアンモニアから、2段目の気体分離膜でアンモニアを透過側に分離することが示されている。しかし、この方法では、1段目の気体分離膜で分離する水素は透過の過程で圧力が低下するため、反応器にリサイクルする際に昇圧する必要がある。また、2段目の気体分離膜の分離では、アンモニア透過度が十分に高くないか、あるいは高い場合には窒素との理想分離係数が低くなっていた。
一方、本発明者らは、水熱合成により多孔質支持体上にゼオライト膜を形成する際に、特定の組成の反応混合物を用いれば、支持体上に結晶化するゼオライトの結晶配向性が向上し、有機化合物と水の混合物の分離において、実用上十分な処理量と分離膜性能を両立する緻密なゼオライト膜が形成されることを見出し、先に提案した(特許文献2〜5)。
また、このゼオライト膜複合体を気体の分離に用いた場合、処理量、分離性能ともに高い値が得られることを見出し、ガス分離用ゼオライト膜複合体として提案している(特許文献6)が、特許文献6では、アンモニアの分離についての検討はなされていない(特許文献6)。
ところで、アンモニアはゼオライトの酸量を測定する昇温脱離法で酸点に吸着するプローブ分子として使用されており、昇温脱離温度のピークトップ温度が480℃程度の酸点も報告されている(非特許文献3)。一方、アンモニア合成では平衡定数を大きくするために、反応の低温化が検討され、例えばルテニウム触媒系を用いた反応で140℃、130atmで40%前後の高いアンモニア転化率が報告されている(非特許文献4)。
特開2008−247654号公報 国際公開第2010/098473号パンフレット 特開2011−121040号公報 特開2011−121045号公報 特開2011−121854号公報 特開2012−066242号公報
日本化学会編、第6版 化学便覧 応用化学編I、丸善株式会社(2003)、p581 社団法人化学工学協会、化学プロセス集成 第1版、東京化学同人、p153 片田直伸,丹羽幹、ゼオライト Vol.21 No2、ゼオライト学会(2004)、p45−52 足立吟也,馬場章夫,岩倉千秋、新しい工業化学−環境との調和を目指して、化学同人(2004)、p47
特許文献1の膜分離では、水素、窒素およびアンモニアの混合気体から、1段目の膜で透過側に分離した後の水素の昇圧にエネルギーを要し、また2段目の膜の窒素とアンモニアの分離ではアンモニアの透過度が十分でなく、膜面積が大きくなる恐れがあった。
ゼオライト膜をアンモニアの分離に適用できれば、高い透過性能が期待できるが、ゼオライト膜は通常酸点を有し、アンモニアが酸点に吸着して膜が閉塞する恐れがあった。即ち、前述のように、アンモニアはゼオライトの酸量を測定する昇温脱離法で酸点に吸着するプローブ分子として使用されており、非特許文献3では、昇温脱離温度のピークトップ温度が480℃程度の酸点も報告されている。一方、アンモニア合成では平衡定数を大きくするために、反応の低温化が検討され、非特許文献3のように、140℃のアンモニア生成反応も報告されているが、このような低温では、アンモニアの吸着によるゼオライト膜の閉塞が起こる可能性が高いことが予測される。
本発明は、上記従来の実状に鑑みてなされたものであって、アンモニアと水素および/または窒素を含む複数の成分からなる気体混合物からアンモニアを高い透過度で透過側へ分離する性能に優れたゼオライト膜複合体を用いたアンモニアの分離方法を提供することを課題とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、ゼオライト膜複合体を用いたアンモニアの分離について検討を行ったところ、既報のシリカ膜よりも高く、また水素、窒素よりも高いアンモニアの透過性で、アンモニアと水素および/または窒素を含む複数の成分からなる気体混合物からアンモニアを透過側に分離することができることを見出すに至った。
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、本発明の要旨は、下記の[1]〜[8]に存する。
[1] ゼオライト膜を用いて、アンモニアと水素および/または窒素を含む複数の成分からなる気体混合物からアンモニアを分離する方法であって、該ゼオライト膜が多孔質支持体上に形成されてなることを特徴とするアンモニアの分離方法。
[2] 前記ゼオライト膜が酸素8員環を有する[1]に記載のアンモニアの分離方法。
[3] 前記ゼオライトがCHA型アルミノ珪酸塩である[1]または[2]に記載のアンモニアの分離方法。
[4] 前記ゼオライトがCHA型アルミノ珪酸塩であり、前記ゼオライト膜表面にX線を照射して得たX線回折パターンにおいて、2θ=17.9°付近のピーク強度が、2θ=20.8°付近のピーク強度の0.5倍以上の値を有するものである[1]または[2]記載のアンモニアの分離方法。
[5] 前記ゼオライトがCHA型アルミノ珪酸塩であり、前記ゼオライト膜表面にX線を照射して得たX線回折パターンにおいて、2θ=9.6°付近のピーク強度が、2θ=20.8°付近のピーク強度の2.0倍以上の値を有するものである[1]または[2]に記載のアンモニアの分離方法。
[6] 前記ゼオライトのSiO/Alモル比が6以上500以下である[3]ないし[5]のいずれかに記載のアンモニアの分離方法。
[7] 前記ゼオライトが、アルカリ源として少なくともカリウム(K)を含む水熱合成用の反応混合物を用いて形成されたものである[3]ないし[6]のいずれかに記載のアンモニアの分離方法。
[8] アンモニアの分離を、反応器内でアンモニア合成と同時に行う[1]ないし[7]のいずれかに記載のアンモニアの分離方法。
本発明によれば、アンモニアと水素および/または窒素を含む複数の成分からなる気体混合物から、アンモニアを高い透過度で効率的に透過側に分離することができる。
従来の凝縮分離法では−20℃から−5℃程度までの低温で分離を行うために、凝縮のための冷却エネルギーと、分離後の水素と窒素を反応器にリサイクルするための昇温エネルギーが必要であったが、本発明により膜分離を用いることで、従来の凝縮分離法よりも高い温度で分離ができるため、この冷却と昇温のためのエネルギーを小さくすることができる。
また、本発明の膜分離では、アンモニアを透過側に、水素および/または窒素を圧力の高い非透過側に濃縮する分離となるため、水素および窒素をリサイクルする際に、昇圧のためのエネルギーも不要となる。
また、アンモニアの透過度が高いため、分離に必要な膜面積を小さくすることができ、小規模な設備で、低コストな分離が期待できる。
実施例において、アンモニア分離試験、単成分ガス透過試験に用いた装置の構成を示す模式図である。 実施例において、単成分ガス透過試験に用いた装置の構成を示す模式図である。 実施例1で作製したCHA型ゼオライト膜のXRDパターンである。 CHA型ゼオライト粉末のXRDパターンである。
以下、本発明の実施の形態について更に詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。なお、本明細書において、「ゼオライト膜が多孔質支持体上に形成されてなる多孔質支持体−ゼオライト膜複合体」を、「ゼオライト膜複合体」、または「膜複合体」と称することがある。また、「多孔質支持体」を単に「支持体」と略称し、「アルミノ珪酸塩のゼオライト」を単に「ゼオライト」と略称することがある。
本発明のアンモニアの分離方法は、ゼオライト膜を用いて、アンモニアと水素および/または窒素を含む複数の成分からなる気体混合物から、アンモニアを高い透過度で透過側に分離を行う方法であって、該ゼオライト膜が多孔質支持体上に形成されてなることを特徴とするものである。
<ゼオライト膜複合体>
(ゼオライト膜)
本発明において、ゼオライト膜は、上記のとおり特定の性質をもつゼオライトを含むものであるが、ゼオライト膜を構成する成分としては、ゼオライト以外にシリカ、アルミナなどの無機バインダー、ポリマーなどの有機物、あるいはゼオライト膜表面を修飾するシリル化剤などを必要に応じ含んでいてもよい。
ゼオライト膜は、一部アモルファス成分などが含有されていてもよいが、好ましくは実質的にゼオライトのみで構成されるゼオライト膜である。
ゼオライト膜の厚さは特に限定されないが、通常0.1μm以上、好ましくは0.6μm以上、より好ましくは1.0μm以上である。また、通常100μm以下、好ましくは60μm以下、より好ましくは20μm以下の範囲である。ゼオライト膜の膜厚が大きすぎるとアンモニアの透過量が低下する傾向があり、小さすぎると選択性が低下したり、膜強度が低下したりする傾向がある。
ゼオライト膜を形成するゼオライトの粒子径は特に限定されないが、小さすぎると粒界が大きくなるなどして透過選択性などを低下させる傾向がある。それ故、ゼオライトの粒子径は通常30nm以上、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上であり、その上限は膜の厚さ以下である。特に、ゼオライトの粒子径がゼオライト膜の厚さと同じである場合が好ましい。ゼオライトの粒子径がゼオライト膜の厚さと同じであるとき、ゼオライトの粒界が最も小さくなる。後に述べる水熱合成で得られたゼオライト膜は、ゼオライトの粒子径と膜の厚さが同じになる場合があるので好ましい。
ゼオライト膜の形状は特に限定されず、管状、中空糸状、モノリス型、ハニカム型などあらゆる形状を採用することができる。また、ゼオライト膜の大きさも特に限定されず、例えば、後述する大きさの多孔質支持体上に形成されたゼオライト膜複合体として形成される。
(ゼオライト)
本発明において、ゼオライト膜を構成するゼオライトは好ましくは酸素8員環を有するアルミノ珪酸塩である。アルミノ珪酸塩は、SiとAlの酸化物を主成分とするものであり、本発明の効果を損なわない限り、それ以外の元素が含まれていてもよい。
本発明において、アルミノ珪酸塩のSiO/Alモル比は特に限定されないが、通常6以上、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、より好ましくは30以上、さらに好ましくは32以上、さらに好ましくは35以上、特に好ましくは40以上である。上限は、通常Alが不純物程度の量であり、SiO/Alモル比としては、通常500以下、好ましくは100以下、より好ましくは90以下、さらに好ましくは80以下、特に好ましくは70以下、最も好ましくは50以下である。SiO/Alモル比が前記下限未満ではゼオライト膜の緻密性が低下する場合があり、また耐久性が低下する傾向がある。
ゼオライトのSiO/Alモル比は、後に述べる水熱合成の反応条件により調整することができる。
なお、本発明において、SiO/Alモル比は、走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光法(SEM−EDX)により得られた数値である。この場合、膜厚数ミクロンの膜のみの情報を得るために通常はX線の加速電圧を10kVとして測定が行われる。
本発明におけるゼオライトとは、International Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライトである。その構造はX線回折データにより特徴付けられる。
アンモニアと水素および/または窒素との膜分離においては、これらの分子径に近い細孔径を有するものがよく、この観点から、本発明におけるゼオライトの構造としては酸素8員環細孔を有するものが好ましい。酸素8員環よりも大きなサイズの細孔ではアンモニアの透過度が高くなる点で好ましいが、水素および/または窒素との分離性能が低くなる傾向がある。
酸素8員環を有するゼオライト構造としては、International Zeolite Association(IZA)が規定するコードで表すと、例えば、AFX、CAS、CHA、DDR、ERI、ESV、GIS、ITE、JBW、KFI、LEV、LTA、MER、MON、MTF、PAU、PHI、RHO、RTE、RTH等が挙げられる。
その中でもフレームワーク密度が18.0T/nm以下であるゼオライトが好ましく、より好ましくはAFX、CHA、DDR、ERI、LEV、RHOであり、さらに好ましくはCHA、DDR、RHOであり、最も好ましくはCHAである。フレームワーク密度が高すぎるものは、アンモニアや、気体混合物中にその他の透過成分がある場合にはそれらの透過成分が透過する際の抵抗が大きくなり、透過量が小さくなるために好ましくない。
ここでフレームワーク密度(単位:T/nm)とは、ゼオライトの単位体積(1nm)当たりに存在するT原子(ゼオライトの骨格を構成する原子のうち、酸素以外の原子)の個数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まるものである。なお、フレームワーク密度とゼオライトとの構造の関係は、ATLAS OF ZEOLITE FRAMEWORK TYPES Sixth Revised Edition 2007 ELSEVIERに示されている。
(多孔質支持体)
本発明において、ゼオライト膜は、多孔質支持体の表面などに形成される。好ましくはゼオライトは、多孔質支持体に対して膜状に結晶化される。
ゼオライト膜複合体の多孔質支持体は、その表面などにゼオライトを膜状に結晶化できるような化学的安定性がある多孔質の物質であれば如何なるものであってもよい。具体的には、例えば、シリカ、α−アルミナ、γ−アルミナ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化珪素、炭化珪素などのセラミックス焼結体、鉄、ブロンズ、ステンレスなどの焼結金属や、ガラス、カーボン成形体などの無機材料よりなる多孔質支持体が挙げられる。
また、ポリオレフィン、フッ素系ポリマー、ポリイミド、ポリアミン、ポリエステル、ポリウレタンなども利用できる。
多孔質支持体としては、これらの中でも、高温で使用できる点で無機材料よりなる多孔質支持体(無機多孔質支持体)が好ましく用いられる。
多孔質支持体の中で、セラミックス焼結体は、その一部がゼオライト膜合成中にゼオライト化することでゼオライト膜との界面の密着性を高める効果がある。
さらに、アルミナ、シリカ、ムライトのうち少なくとも1種を含む無機多孔質支持体は、支持体の部分的なゼオライト化が容易であるため、支持体とゼオライトの結合が強固になり、緻密で分離性能の高い膜が形成されやすくなるのでより好ましい。
多孔質支持体の形状は、気体混合物を有効に分離できるものであれば特に制限されず、具体的には、例えば、平板状、円筒状等の管状のもの、円柱状や角柱状であって、孔が多数存在するハニカム状のものやモノリス(三次元ネットワーク構造)などが挙げられる。
多孔質支持体が有する平均細孔径は特に制限されないが、細孔径が制御されているものが好ましい。多孔質支持体の細孔径は、通常0.02μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上であり、通常20μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。多孔質支持体の細孔径が小さすぎると透過量が小さくなる傾向があり、大きすぎると支持体自体の強度が不十分になったり、緻密なゼオライト膜が形成されにくくなる傾向がある。
多孔質支持体の表面は必要に応じて表面をやすり等で研磨してもよい。なお、多孔質支持体の表面とはゼオライト膜を形成させる支持体の表面部分を意味し、表面であればそれぞれの形状のどこの表面であってもよく、複数の面であっても良い。例えば円筒管の支持体の場合には外側の表面でも内側の表面でもよく、場合によっては外側と内側の両方の表面であってよい。
多孔質支持体の気孔率は特に制限されず、また特に制御する必要は無いが、気孔率は、通常20%以上60%以下であることが好ましい。多孔質支持体の気孔率は、気体を分離する際の透過流量を左右し、前記下限未満では透過物の拡散を阻害する傾向があり、前記上限超過では支持体の強度が低下する傾向がある。
多孔質支持体の寸法については、ゼオライト膜複合体の用途、使用形態、多孔質支持体の材質、形状によって異なり、一概に規定できないが、平均厚さ(肉厚)は、通常0.1mm以上、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上であり、通常7mm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。多孔質支持体はゼオライト膜複合体に機械的強度を与える目的で使用されるが、多孔質支持体の平均厚さが薄すぎると、ゼオライト膜複合体が十分な強度を持たず、衝撃や振動等に対して弱くなる傾向がある。多孔質支持体の平均厚さが厚すぎると、透過量が低くなる傾向がある。
管状の多孔質支持体の場合は、通常長さ2cm以上200cm以下、内径0.5cm以上2cm以下、厚さ0.5mm以上4mm以下が実用的で好ましい。
(ゼオライト膜複合体)
本発明において、ゼオライト膜複合体とは、上述の多孔質支持体の表面などにゼオライトが膜状に、好ましくは結晶化して固着しているものであり、場合によっては、ゼオライトの一部が、支持体の内部にまで固着している状態のものが好ましい。
ゼオライト膜複合体としては、例えば、多孔質支持体の表面などにゼオライトを水熱合成により膜状に結晶化させたものが好ましい。
ゼオライト膜の多孔質支持体上の位置は特に限定されず、管状の支持体を用いる場合、外表面にゼオライト膜を形成してもよいし、内表面に形成してもよく、さらに適用する系によっては両面に形成してもよい。また、支持体の表面に積層させて形成してもよいし、支持体の表面層の細孔内を埋めるように結晶化させてもよい。この場合、結晶化した膜層の内部に亀裂や連続した微細孔が無いことが重要であり、いわゆる緻密な膜を形成させることが、分離性の向上の面で好ましい。
(CHA型ゼオライト膜複合体)
本発明において、ゼオライト膜複合体のゼオライトがCHA型ゼオライトからなる場合には、膜表面にX線を照射して得たX線回折のパターンにおいて、2θ=17.9°付近のピークの強度が、2θ=20.8°付近のピークの強度の0.5倍以上であることが好ましい。即ち、(2θ=17.9°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)で表されるピーク強度比(以下これを「ピーク強度比A」ということがある。)が0.5以上であることが好ましい。ピーク強度比Aは、好ましくは0.6以上である。ピーク強度比Aの上限は特に限定されないが、通常20未満である。
また、本発明において、ゼオライト膜複合体のゼオライトがCHA型ゼオライトからなる場合には、膜表面にX線を照射して得たX線回折のパターンにおいて、2θ=9.6°付近のピークの強度が、2θ=20.8°付近のピークの強度の2.0倍以上の大きさであることが好ましい。即ち、(2θ=9.6°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)で表されるピーク強度比(以下これを「ピーク強度比B」ということがある。)が2.0以上であることが好ましい。このピーク強度比Bは、好ましくは2.1以上、より好ましくは2.3以上、より好ましくは2.5以上、ピーク強度比Bの上限は特に限定されないが、通常20未満である。
ここで、ピークの強度とは、測定値からバックグラウンドの値を引いたものをさす。
また、X線回折パターンとは、ゼオライトが主として付着している側の表面にCuKαを線源とするX線を照射して、走査軸をθ/2θとして得るものである。測定するサンプルの形状としては、ゼオライト膜複合体のゼオライト膜側の表面にX線が照射できるような形状であればどのようなものであってもよく、ゼオライト膜複合体の特徴をよく表すものとして、作製したゼオライト膜複合体そのままのもの、あるいはゼオライト膜複合体を装置によって制約される適切な大きさに切断したものが好ましい。
X線回折パターンは、ゼオライト膜複合体の表面が曲面である場合には自動可変スリットを用いて照射幅を固定して測定してもかまわない。自動可変スリットを用いた場合のX線回折パターンとは、可変→固定スリット補正を実施したパターンを指す。
ここで、2θ=17.9°付近のピークとは、多孔質支持体に由来しないピークのうち17.9°±0.6°の範囲に存在するピークのうち最大のものを指す。
2θ=20.8°付近のピークとは、多孔質支持体に由来しないピークのうち20.8°±0.6°の範囲に存在するピークで最大のものを指す。
2θ=9.6°付近のピークとは、多孔質支持体に由来しないピークのうち9.6°±0.6°の範囲に存在するピークのうち最大のものを指す。
X線回折パターンで2θ=9.6°付近のピーク、2θ=17.9°付近のピーク、2θ=20.8°付近のピーク、は、COLLECTION OF SIMULATED XRD POWDER PATTERNS FOR ZEOLITE Third Revised Edition 1996 ELSEVIER(以下これを、「非特許文献5」ということがある。)によれば、rhombohedral settingで空間群を
Figure 2014058433
(No.166)とした時に、CHA構造において、それぞれ、指数が(1,0,0)の面に由来するピーク、(1,1,1)の面に由来するピーク、(2,0,−1)の面に由来するピーク、である。
即ち、2θ=17.9°付近のピークは(1,1,1)面に由来するピーク、2θ=20.8°付近のピークは、(2,0,−1)面に由来するピーク、2θ=9.6°付近のピークは、(1,0,0)面に由来するピークである。
CHA型アルミノ珪酸塩のゼオライト膜における(1,0,0)面由来のピークの強度の(2,0,−1)面に由来のピーク強度の典型的な比(ピーク強度比B)は、Halil Kalipcilar et al., "Synthesis and Separation Performance of SSZ-13 Zeolite Membranes on Tubular Supports", Chem. Mater. 2002, 14, 3458-3464(以下これを、「非特許文献6」ということがある。)よれば2未満である。
そのため、この比が2.0以上であるということは、例えば、CHA構造をrhombohedral settingとした場合の(1,0,0)面が膜複合体の表面と平行に近い向きになるように、ゼオライト結晶が配向して成長していることを意味すると考えられる。ゼオライト膜複合体においてゼオライト結晶が配向して成長することは分離性能の高い緻密な膜が出来るという点で有利である。
ここでいうゼオライト結晶が配向して成長するとは、(1,0,0)面がゼオライト膜複合体の表面と平行に近い向きに向いた結晶子が全体の結晶子に対して高い割合で存在するということであり、この割合は粉末のCHA型アルミノ珪酸塩のような結晶子の向きがランダムなものよりも大きいということである。
また、CHA型アルミノ珪酸塩のゼオライト膜における(1,1,1)面由来のピークの強度と(2,0,−1)面由来のピーク強度の典型的な比(ピーク強度比A)は、非特許文献6によれば0.5未満である。
この比が0.5以上であるということは、例えば、CHA構造をrhombohedral settingとした場合の(1,1,1)面が膜複合体の表面と平行に近い向きになるようにゼオライト結晶が配向して成長している程度が高いことを意味すると考えられる。
ここでいうゼオライト結晶が配向して成長しているとは、(1,1,1)面が膜複合体の表面と平行に近い向きに向いたゼオライト結晶子が全体の結晶子に対して高い割合で存在するということであり、この割合は粉末のCHA型アルミノ珪酸塩のような結晶子の向きがランダムなものよりも大きいということである。
このように、ピーク強度比A、Bが、上記した特定の範囲の値であるということは、ゼオライト結晶が配向して成長し、分離性能の高い緻密な膜が形成されていることを示すものである。
CHA型ゼオライト結晶が配向して成長している緻密なゼオライト膜は、後述の通り、ゼオライト膜を水熱合成法により形成する際に、例えば、特定の有機テンプレートを用い、水性反応混合物中にKイオンを共存させることにより達成することができる。
本発明で用いるゼオライト膜複合体の空気透過量は、通常1L/(m・h)以上、好ましくは2L/(m・h)以上、さらに好ましくは5L/(m・h)以上である。空気透過量の上限は特に限定されないが、好ましくは1000L/(m・h)以下、より好ましくは800L/(m・h)以下、さらに好ましくは700L/(m・h)以下である。
ここで、空気透過量とは、実施例の項で詳述するとおり、ゼオライト膜複合体を大気圧下におき、ゼオライト膜複合体の内側を5kPaの真空ラインに接続した時の空気の透過量[L/(m・h)]である。
空気透過量はガス透過量に繋がる数値であり、空気透過量が多いものはガス透過量も多くなるが、空気透過量が多すぎるものは選択分離性が低くなる傾向にある。
本発明で用いるゼオライト膜複合体は、上記のとおり空気透過量が適度に多く、従って、適度にガス透過量が多く、かつ良好な分離性能をもつものであることが好ましい。
<ゼオライト膜複合体の製造方法>
本発明において、ゼオライト膜の形成方法は、上記したゼオライト膜を多孔質支持体上に形成可能な方法であれば特に制限されず、例えば、(1)支持体上にゼオライトを膜状に結晶化させる方法、(2)支持体にゼオライトを無機バインダーあるいは有機バインダーなどで固着させる方法、(3)ゼオライトを分散させたポリマーを支持体に固着させる方法、(4)ゼオライトのスラリーを支持体に含浸させ、場合によっては吸引することによりゼオライトを支持体に固着させる方法、などの何れの方法も用いることができる。
これらの中で、多孔質支持体にゼオライトを膜状に結晶化させる方法が特に好ましい。結晶化の方法に特に制限はないが、支持体を、ゼオライト製造に用いる水熱合成用の反応混合物(以下これを「水性反応混合物」ということがある。)中に入れて、直接水熱合成することで支持体表面などにゼオライトを結晶化させる方法が好ましい。
この場合、ゼオライト膜複合体は、例えば、組成を調整して均一化した水性反応混合物を、内部に多孔質支持体を入れたオートクレーブなどの耐熱耐圧容器に入れて密閉し、一定時間加熱することにより製造することができる。
水性反応混合物は、Si元素源、Al元素源、アルカリ源および水を含み、さらに必要に応じて有機テンプレート(構造規定剤)を含むものである。
水性反応混合物に用いるSi元素源としては、例えば、無定形シリカ、コロイダルシリカ、シリカゲル、珪酸ナトリウム、無定形アルミノシリケートゲル、テトラエトキシシラン(TEOS)、トリメチルエトキシシラン等の1種または2種以上を用いることができる。
Al元素源としては、例えば、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、酸化アルミニウム、無定形アルミノシリケートゲル等の1種または2種以上を用いることができる。
なお、水性反応混合物には、Si元素源、Al元素源以外に他の元素源、例えばGa、Fe、B、Ti、Zr、Sn、Znなどの元素源を含んでいてもよい。
アルカリ源として用いるアルカリの種類は特に限定されずアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物を用いることができる。
これら金属水酸化物の金属種は通常Na、K、Li、Rb、Cs、Ca、Mg、Sr、Ba、好ましくはNa、K、より好ましくはKである。また、金属酸化物の金属種は2種類以上を併用してもよく、具体的には、NaとK、あるいはLiとKを併用するのが好ましい。
金属水酸化物としては、具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物等を用いることができる。
また、水性反応混合物に用いるアルカリ源として、次に述べる有機テンプレートのカウンターアニオンの水酸化物イオンを用いることができる。
なお、本発明に係るゼオライトの結晶化において、有機テンプレートは、必ずしも必要とされるものではないが、各構造に応じた種類の有機テンプレート(構造規定剤)を用いることにより、結晶化したゼオライトのアルミニウム原子に対するケイ素原子の割合が高くなり、結晶性が向上することから、有機テンプレートを用いることが好ましい。
有機テンプレートとしては、所望のゼオライト膜を形成しうるものであれば種類は問わず、如何なるものであってもよい。また、テンプレートは1種類でも、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
反応に適する有機テンプレートの種類は合成するゼオライト構造によって異なり、有機テンプレートは所望のゼオライト構造が得られるものを使用すればよい。具体的には、例えば、CHA構造であればN,N,N−トリアルキル−1−アダマンタンアンモニウムカチオン等、DDR構造であれば1−アダマンタンアミン等、RHO構造であれば18−クラウン−6エーテル等が使用できる。
有機テンプレートがカチオンの場合には、ゼオライトの形成に害を及ぼさないアニオンを伴う。このようなアニオンを代表するものには、Cl、Br、Iなどのハロゲンイオンや水酸化物イオン、酢酸塩、硫酸塩、およびカルボン酸塩が含まれる。これらの中で、水酸化物イオンが特に好適に用いられ、水酸化物イオンの場合には上記のようにアルカリ源として機能する。
水性反応混合物中のSi元素源とAl元素源の比は、通常、それぞれの元素の酸化物のモル比、すなわちSiO/Alモル比として表す。
水性反応混合物のSiO/Al比は、上記したSiO/Al比をもつゼオライトが形成可能な比であれば特に限定されないが、通常5以上、好ましくは20以上、より好ましくは30以上、さらに好ましくは40以上、特に好ましくは50以上である。また上限は、通常500以下、好ましくは200以下、より好ましくは150以下、さらに好ましくは100以下である。SiO/Al比がこの範囲にあるとき、緻密な膜を形成しうるアルミノ珪酸塩のゼオライトを結晶化させることができる。
上記の好ましい範囲のうち、他の原料組成、合成条件にもよるが、SiO/Al比が5以上150以下では、前述のピーク強度比Aが0.5以上、ピーク強度比Bが2.0以上の値を有するものが生成しやすい傾向にあり、SiO/Al比が50以上500以下ではピーク強度比Bが2.0以上であり、かつピーク強度比Aが0.5未満の値を有するものが生成しやすい傾向にある。
水性反応混合物中のSi元素源と有機テンプレートの比は、SiOに対する有機テンプレートのモル比(有機テンプレート/SiO比)で、通常0.005以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上であり、通常1以下、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.2以下である。水性反応混合物の有機テンプレート/SiO比がこの範囲にあるとき、緻密なゼオライト膜が生成し得ることに加えて、耐酸性に優れ、Alが脱離しにくいゼオライトが得られる。また、この条件において、特に緻密で耐酸性に優れたCHA型アルミノ珪酸塩のゼオライトを形成させることができる。
水性反応混合物中のSi元素源と金属水酸化物の比は、M(2/n)O/SiO(ここで、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示し、nはその価数1または2を示す。)モル比で、通常0.02以上、好ましくは0.04以上、より好ましくは0.05以上であり、通常0.5以下、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下である。
CHA型アルミノ珪酸塩のゼオライト膜を形成する際、アルカリ金属の中でもカリウム(K)が含まれる場合がより緻密で結晶性の高い膜を生成させるという点で好ましい。その場合のKと、Kを含むすべてのアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属とのモル比は、通常0.01以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上であり、上限は通常1以下である。
また、水性反応混合物中へのKの添加は、前述のピーク強度比A、Bを大きくする傾向があり、好ましい。
水性反応混合物中のSi元素源と水の比は、SiOに対する水のモル比(HO/SiOモル比)で、通常10以上、好ましくは30以上、より好ましくは40以上、特に好ましくは50以上であり、通常1000以下、好ましくは500以下、より好ましくは200以下、特に好ましくは150以下である。
水性反応混合物中のHO/SiOモル比がこの範囲にあるとき、緻密なゼオライト膜が生成しうる。水の量は緻密なゼオライト膜の生成において特に重要であり、粉末合成法の一般的な条件よりも水がシリカに対して多い条件のほうが緻密な膜ができやすい傾向にある。
一般的に、粉末のアルミノ珪酸塩のゼオライトを合成する際の水の量は、HO/SiOモル比で15〜50程度である。これに対して、HO/SiOモル比が高い(50を超え1000以下)、すなわち水が多い条件にすることにより、多孔質支持体上にアルミノ珪酸塩のゼオライトが緻密な膜状に結晶化した分離性能の高いゼオライト膜複合体を得ることができる。
水熱合成に際して、必ずしも反応系内に種結晶を存在させる必要は無いが、種結晶を存在させることで、多孔質支持体上でのゼオライトの結晶化を促進できる。反応系内に種結晶を存在させる方法としては特に限定されず、粉末のゼオライトの合成時のように、水性反応混合物中に種結晶を加える方法や、支持体上に種結晶を付着させておく方法などを用いることができるが、本発明では、支持体上に種結晶を付着させておくことが好ましい。支持体上に予め種結晶を付着させておくことで緻密で分離性能の高いゼオライト膜が生成しやすくなる。
使用する種結晶としては、結晶化を促進するゼオライトであれば種類は問わないが、効率よく結晶化させるためには、形成するゼオライト膜と同じ結晶型であることが好ましい。例えば、CHA型アルミノ珪酸塩のゼオライト膜を形成する場合は、CHA型ゼオライトの種結晶を用いることが好ましい。
種結晶の粒子径は小さいほうが望ましく、必要に応じて粉砕して用いても良い。種結晶の粒径は、通常0.5nm以上、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上であり、通常5μm以下、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下である。
多孔質支持体上に種結晶を付着させる方法は特に限定されず、例えば、種結晶を水などの溶媒に分散させて分散液とし、その分散液に支持体を浸漬して表面に種結晶を付着させるディップ法や、種結晶を水などの溶媒と混合してスラリー状にしたものを支持体上に塗りこむ方法などを用いることができ、このようにして支持体に種結晶を付着させた後、乾燥を行った後にゼオライト膜の形成を行うことが望ましい。これらの種結晶の付着方法のうち、種結晶の付着量を制御し、再現性良くゼオライト膜複合体を製造するには、ディップ法が望ましい。
種結晶を分散させる溶媒は特に限定されないが、特に水、アルカリ性水溶液が好ましい。アルカリ性水溶液の種類は特に限定されないが、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液が好ましい。またこれらのアルカリ種は混合されていてもよい。アルカリ性水溶液のアルカリ濃度は特に限定されず、通常0.0001mol%以上、好ましくは0.0002mol%以上、より好ましくは0.001mol%以上、さらに好ましくは0.002mol%以上である。また、通常1mol%以下、好ましくは0.8mol%以下、より好ましくは0.5mol%以下、さらに好ましくは0.2mol%以下である。
分散させる種結晶の量は特に限定されないが、通常、分散液の全質量に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。また、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
分散させる種結晶の量が少なすぎると、支持体上に付着する種結晶の量が少ないため、水熱合成時に支持体上に部分的にゼオライトが生成しない箇所ができ、欠陥のある膜となる可能性がある。一方で、例えば、ディップ法によって多孔質支持体上に付着する種結晶の量は分散液中の種結晶の量がある程度以上でほぼ一定となるため、分散液中の種結晶の量が多すぎると、種結晶の無駄が多くなりコスト面で不利である。
多孔質支持体上に予め付着させておく種結晶の量は特に限定されず、多孔質支持体の膜形成面1mあたりの質量で、通常0.01g以上、好ましくは0.05g以上、より好ましくは0.1g以上であり、通常100g以下、好ましくは50g以下、より好ましくは10g以下、更に好ましくは8g以下である。
種結晶の付着量が上記下限未満の場合には、結晶が形成されにくくなり、膜の成長が不十分になったり、膜の成長が不均一になったりする傾向がある。また、種結晶の量が上記上限を超える場合には、表面の凹凸が種結晶によって増長されたり、支持体から落ちた種結晶によって自発核が成長しやすくなって支持体上の膜成長が阻害されたりする場合がある。何れの場合も、緻密なゼオライト膜が生成しにくくなる傾向となる。
水熱合成により多孔質支持体上にゼオライト膜を形成する場合、支持体の固定化方法に特に制限はなく、縦置き、横置きなどあらゆる形態をとることができる。この場合、静置法でゼオライト膜を形成させてもよいし、水性反応混合物の攪拌下にゼオライト膜を形成させてもよい。
水熱合成によりゼオライト膜を形成させる際の反応温度は特に限定されず、目的のゼオライト構造の膜を得るために適した温度であればよいが、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、更に好ましくは150℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは190℃以下、さらに好ましくは180℃以下である。反応温度が低すぎると、ゼオライトが結晶化し難くなることがある。また、反応温度が高すぎると、目的とするゼオライトとは異なるタイプのゼオライトが生成し易くなることがある。
水熱合成によりゼオライト膜を形成させる際の加熱(反応)時間は特に限定れず、目的のゼオライト構造の膜を得るために適した時間であればよいが、通常1時間以上、好ましくは5時間以上、更に好ましくは10時間以上であり、通常10日間以下、好ましくは5日以下、より好ましくは3日以下、さらに好ましくは2日以下である。反応時間が短すぎるとゼオライトが結晶化し難くなることがある。反応時間が長すぎると、目的とするゼオライトとは異なるタイプのゼオライトが生成し易くなることがある。
水熱合成時の圧力は特に限定されず、密閉容器中に入れた水性反応混合物を、上記の温度範囲に加熱したときに生じる自生圧力で十分である。さらに必要に応じて、窒素などの不活性ガスを加えても差し支えない。
水熱合成により得られたゼオライト膜複合体は、水洗した後に、加熱処理して、乾燥させる。ここで、加熱処理とは、熱をかけてゼオライト膜複合体を乾燥させ、また、有機テンプレートを使用した場合に該有機テンプレートを焼成して除去することを意味する。
加熱処理の温度は、乾燥を目的とする場合は、通常50℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、通常200℃以下、好ましくは150℃以下である。加熱処理の温度は、有機テンプレートの焼成除去を目的とする場合は、通常350℃以上、好ましくは400℃以上、より好ましくは430℃以上、更に好ましくは450℃以上であり、通常900℃以下、好ましくは850℃以下、さらに好ましくは800℃以下、特に好ましくは750℃以下である。
有機テンプレートの焼成除去を目的とする場合には、加熱処理の温度が低すぎると有機テンプレートの残留割合が多くなる傾向があり、ゼオライトの細孔が少なくなって、そのためにアンモニアの分離に使用した際の透過量が減少する可能性がある。加熱処理温度が高すぎると支持体とゼオライトの熱膨張率の差が大きくなるため、ゼオライト膜に亀裂が生じやすくなる可能性があり、ゼオライト膜の緻密性が失われて分離性能が低くなることがある。
加熱処理の時間は、ゼオライト膜が十分に乾燥され、また有機テンプレートが焼成除去される時間であれば特に限定されず、乾燥を目的とする場合は、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上であり、有機テンプレートの焼成除去を目的とする場合は、昇温速度や降温速度によっても変動するが、好ましくは1時間以上、より好ましくは5時間以上である。加熱時間の上限は特に限定されず、通常200時間以下、好ましくは150時間以下、より好ましくは100時間以下である。
テンプレートの焼成を目的とする場合の加熱処理は空気雰囲気で行えばよいが、窒素などの不活性ガスや酸素を付加した雰囲気で行ってもよい。
水熱合成を有機テンプレートの存在下で行った場合、得られたゼオライト膜複合体を、水洗した後に、例えば、加熱処理や抽出などにより、好ましくは上記の加熱処理、すなわち焼成により有機テンプレートを取り除くことが適当である。
有機テンプレートの焼成除去を目的とする加熱処理の際の昇温速度は、多孔質支持体とゼオライトの熱膨張率の差に起因してゼオライト膜に亀裂を生じさせることを防止するために、なるべく遅くすることが望ましい。昇温速度は、通常5℃/分以下、好ましくは2℃/分以下、より好ましくは1℃/分以下、特に好ましくは0.5℃/分以下である。昇温速度の下限は、通常、作業性を考慮して0.1℃/分以上である。
また、有機テンプレートの焼成除去を目的とする加熱処理においては、加熱処理後の降温速度もゼオライト膜に亀裂が生じることを避けるためにコントロールする必要があり、降温速度も昇温速度と同様、遅ければ遅いほど望ましい。降温速度は、通常5℃/分以下、好ましくは2℃/分以下、より好ましくは1℃/分以下、特に好ましくは0.5℃/分以下である。降温速度の下限は、通常、作業性を考慮して0.1℃/分以上である。
合成されたゼオライト膜は、必要に応じてイオン交換しても良いし、シリル化処理を施しても良い。
イオン交換は、有機テンプレートを用いてゼオライト膜を合成した場合は、通常、有機テンプレートを除去した後に行う。イオン交換するイオンとしては、プロトン、Na、K、Liなどのアルカリ金属イオン、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+などのアルカリ土類金属イオン、Fe、Cu、Zn、Al、Ga、Laなどの遷移金属のイオンなどが挙げられる。これらの中で、プロトン、Na、Mg2+およびFe、Al、Ga、Laイオンが好ましい。
イオン交換は、焼成後(有機テンプレートを使用した場合など)のゼオライト膜を、NHNO、NaNOなどのアンモニウム塩あるいは交換するイオンを含む塩の水溶液、場合によっては塩酸などの酸で、通常、室温から100℃の温度で処理後、水洗する方法などにより行えばよい。さらに、必要に応じて200〜500℃で焼成してもよい。
シリル化処理は、ゼオライト膜複合体を、例えばSi化合物を含む溶液に浸漬して行う。これにより、ゼオライト膜表面がSi化合物により修飾されて、特定の物理化学的性質を有するものとすることができる。例えば、ゼオライト膜表面にSi−OHを多く含む層を確実に形成することで膜表面の極性が向上し、極性分子の分離性能を向上させることができると考えられる。またゼオライト膜表面をSi化合物により修飾することで膜表面に存在する微細な欠陥をふさぐ効果が副次的に得られることがある。
シリル化処理に用いる溶媒は、水であっても有機溶媒であってもよい。また溶液は酸性、塩基性であってもよく、この場合には酸、塩基によってシリル化反応が触媒される。用いるシリル化剤に制限はないが、アルコキシシランが好ましい。処理温度は通常、室温から150℃以下であり、処理は10分から30時間程度行えばよく、これらの処理条件は、用いるシリル化剤、溶媒種に応じて適宜設定すればよい。
このようにして製造されるゼオライト膜複合体は、優れた特性をもつものであり、本発明における気体混合物からのアンモニアの膜分離手段として好適に用いることができる。
<アンモニアの分離方法>
本発明のアンモニアの分離方法は、上記のゼオライト膜複合体に、アンモニアと水素および/または窒素を含む複数の成分からなる気体混合物を接触させ、該気体混合物から、アンモニアを選択的に透過させて分離することを特徴とするものである。
本発明におけるゼオライト膜の分離機能の一つは、分子ふるいとしての分離であり、用いるゼオライトの有効細孔径以上の大きさを有する気体分子とそれ以下の気体分子とを好適に分離することができる。
膜分離に用いるゼオライトの有効細孔径は、ゼオライトに導入する金属種やイオン交換、酸処理、シリル化処理などによって制御することが可能である。有効細孔径を制御することによって、分離性能を向上させることも可能である。
例えば、ゼオライト骨格に導入する金属種の原子径によって、ゼオライトの細孔径はわずかに影響を受ける。ケイ素よりも原子径が小さな金属、具体的には、例えばホウ素(B)等を導入した場合には細孔径は小さくなり、ケイ素よりも大きな原子径の金属、具体的には、例えばスズ(Sn)等を導入した場合には細孔径は大きくなる。また、酸処理によって、ゼオライト骨格に導入されている金属を脱離させることによって、細孔径が影響される場合がある。
イオン交換により、ゼオライト中のイオンをイオン半径の大きな1価のイオンで交換した場合には、有効細孔径は小さくなる方向となり、一方イオン半径の小さな1価のイオンでイオン交換した場合には有効細孔径は、CHA構造がもつ細孔径に近い値となる。またカルシウムのような2価のイオンの場合にも交換サイトの位置によっては、有効細孔径が、CHA構造がもつ細孔径に近い値となる。
シリル化処理によっても、ゼオライトの有効細孔径を小さくすることが可能である。例えば、ゼオライト膜の外表面の末端シラノールをシリル化し、さらに、シリル化層を積層することによって、ゼオライトの外表面に面した細孔の有効細孔径は小さくなる。
また、本発明で用いるゼオライト膜複合体のもうひとつの分離機能は、ゼオライトの表面物性の制御により、気体分子のゼオライト膜への吸着性を制御することである。すなわち、ゼオライトの極性を制御することによりアンモニアのゼオライトへの吸着性を制御して、透過させやすくすることもできる。
また、ゼオライト骨格のSiをAlで置換することにより極性を大きくすることが可能であり、これにより、極性の大きい気体分子を積極的にゼオライト細孔に吸着、透過させることができる。また、Alの置換量が減少すると極性の小さいゼオライト膜となり、極性の小さい気体分子を透過させるのに有利となる。また、Ga、Fe、B、Ti、Zr、Sn、ZnなどのAl元素源以外の他の元素源を水熱合成の水性反応混合物に添加して、得られるゼオライトの極性を制御することも可能である。
このほか、イオン交換によって、ゼオライトの細孔径だけでなく、分子の吸着性能を制御して、透過性能をコントロールすることもできる。
本発明では、アンモニアと水素および/または窒素を含む複数の成分からなる気体混合物からアンモニアをゼオライト膜を透過させて分離するが、ゼオライト膜を透過する成分がアンモニア以外に存在していてもよい。
ガス分離の条件は、分離対象とするガス種や気体混合物の組成、膜の性能により異なるが、温度は、アンモニア合成における生成ガスを分離する場合には、通常、アンモニアの合成温度と同じかそれ以下の温度である。アンモニアの合成温度と同じ温度で分離を行うと反応器にリサイクルする水素、窒素の昇温が不要となるため好ましい。このため好ましい温度は反応温度にもよるが、通常500℃以下、好ましくは480℃以下、さらに好ましくは450℃以下である。また下限は通常0℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは130℃以上である。
供給ガス(気体混合物)の圧力は、分離対象のガスが高圧であればそのままの圧力でもよく、適宜圧力を減圧調整して所望の圧力にして用いても良い。分離対象のガスが、分離に用いる圧力より低い場合は、圧縮機などで増圧して用いることができる。
供給ガスの圧力は特に制限されないが、通常大気圧若しくは大気圧より大きく、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.11MPa以上である。また上限値は、通常20MPa以下、好ましくは10MPa以下、より好ましくは1MPa以下である。
透過側の圧力は特に限定されないが、通常10MPa以下、好ましくは5MPa以下、より好ましくは1MPa以下、さらに好ましくは0.5MPa以下である。アンモニアの濃度が低い値となるまで分離する場合には、透過側は低い圧力であることが好ましく、大気圧以下の圧力まで低下させるとより低い濃度となるまでアンモニアを分離することが可能である。
供給側のガスと透過側のガスの差圧は特に制限されないが、通常20MPa以下、好ましくは10MPa以下、より好ましくは5MPa以下、さらに好ましくは1MPa以下である。また、通常0.001MPa以上、好ましくは0.01MPa以上、より好ましくは0.02MPa以上である。
ここで、差圧とは、当該ガスの供給側の分圧と透過側の分圧の差をいう。また、圧力[Pa]は、特に断りのない限り、絶対圧を指す。
供給ガスの流速は、透過するガスの減少を補うことが可能な程度の流速で、また供給ガスにおいて透過性の小さなガスの膜のごく近傍における濃度とガス全体における濃度が一致するように、供給ガスを混合できるだけの流速であればよく、分離ユニットの管径、膜の分離性能にもよるが、通常0.5mm/sec以上、好ましくは1mm/sec以上であり、上限は特に制限なく、通常1m/sec以下、好ましくは0.5m/sec以下である。
本発明の気体混合物からのアンモニアの分離方法においては、スイープガスを用いてもよい。スイープガスを用いた方法とは、透過側に供給ガスとは異なる種類のガスを流し、膜を透過したガスを回収するものである。
スイープガスの圧力は通常大気圧であるが、特に大気圧に制限されるものではなく、好ましくは20MPa以下、より好ましくは10MPa以下、さらに好ましくは1MPa以下であり、下限は、好ましくは0.09MPa以上、より好ましくは、0.1MPa以上である。場合によっては、減圧して用いても良い。
スイープガスの流速は、特に制限はないが、通常0.5mm/sec以上、好ましくは1mm/sec以上であり、上限は特に制限なく、通常1m/sec以下、好ましくは0.5m/sec以下である。
スイープガスの種類は特に限定されないが、アンモニアとの分離が容易なものが好ましく、沸点が30℃以上のものが好ましい。
ガス分離に用いる装置は、特に限定されないが、通常はゼオライト膜複合体を膜モジュールにして用いる。膜モジュールは、例えば、図1及び2に模式的に示したような装置でもよいし、例えば「ガス分離・精製技術」(株)東レリサーチセンター2007年発行22頁等に例示されている膜モジュールを用いてもよい。
図1及び2の装置における気体混合物の分離操作については、実施例の項において説明する。
気体混合物からのアンモニアの膜分離を行う際には膜モジュールを多段にして用いてもよい。この場合、1段目の膜モジュールに分離を行うガスを供給して、膜を透過しなかった非透過側のガスをさらに2段目の膜モジュールに供給してもよいし、透過したガスを2段目の膜モジュールに供給してもよい。前者の方法では、非透過側の透過性の低い成分の濃度をさらに上げることができ、後者の方法では透過したガス中の透過性の高い成分の濃度をさらに上げることができる。
多段に設けた膜モジュールで分離する場合には、後段の膜モジュールにガスを供給する際に、必要に応じて供給ガスの圧力を昇圧器などで調整してもよい。
また、膜モジュールを多段で使用する場合には、各段に性能が異なる膜を設置してもよい。通常、膜の性能として、透過性能が高い膜では分離性能が低く、一方、分離性能が高い膜では透過性能が低い傾向がある。このため、分離あるいは濃縮したい気体成分が所定の濃度になるまで処理する際に、透過性が高い膜では、必要膜面積は小さくなる一方、非透過側に濃縮したい透過性の低い成分が透過側へ透過しやすく、このため、透過側ガス中の透過性の高い成分の濃度が低くなる傾向がある。逆に、分離性能が高い膜では、非透過側に濃縮したい透過性の低い成分の透過側への透過は起こりにくく、このため、透過側ガス中の透過性の高い成分の濃度は高いが、必要膜面積が大きくなる傾向がある。1種類の膜による分離では、必要膜面積と濃縮または分離目的ガスの透過、非透過量の関係は制御しにくいが、異なる性能の膜を使用することで、制御が容易になる。膜コストと分離・回収するガスの価格によって、最適な膜面積と濃縮、分離目的ガスの透過、非透過量の関係になるよう膜を設置し、全体としてのメリットを最大化できる。
例えば、1段の膜分離で、アンモニアが十分分離できない場合には、非透過側のガスをさらに数段の膜で分離することができる。また1段の膜分離で、膜のアンモニア/水素の分離が十分でなく、透過側にアンモニアと共に水素が多く含まれる場合には、透過ガスをアンモニアと水素の分離性能が高い膜で分離することもできる。
本発明で用いるゼオライト膜複合体は、耐薬品性、耐酸化性、耐熱安定性、耐圧性に優れ、かつ、高い透過性能、分離性能を発揮し、耐久性に優れた性能を持つ。
ここでいう高い透過性能とは、十分な処理量を示し、例えば、膜を透過する気体成分のパーミエンス(Permeance)[mol/(m・s・Pa)]が、例えばアンモニアを、温度140℃、差圧0.1MPaで透過させた場合、通常3×10−8以上、好ましくは5×10−8以上、より好ましくは7×10−8以上、さらに好ましくは1×10−7以上、特に好ましくは1.2×10−7以上である。上限は特に限定されず、通常3×10−4以下である。
また、本発明で用いるゼオライト膜複合体のパーミエンス[mol/(m・s・Pa)]は、例えば窒素を同様の条件で透過させた場合、通常5×10−8以下、好ましくは3×10−8以下、より好ましくは1×10−8以下であり、理想的にはパーミエンスは0であるが、実用上10−10〜10−14程度のオーダーとなる場合がある。
ここで、パーミエンス(Permeance、「透過度」ともいう)とは、透過する物質量を、膜面積と時間と透過する物質の供給側と透過側の分圧差の積で割ったものであり、単位は、[mol/(m・s・Pa)]であり、実施例の項において述べる方法により算出される値である。
また、ゼオライト膜の選択性は理想分離係数、分離係数により表される。理想分離係数、分離係数は膜分離で一般的に用いられる選択性を表す指標であり、理想分離係数は実施例の項において述べる方法により、分離係数は下記の算出される値である。
分離係数αを求める場合は下記式により算出する。
α=(Q’/Q’)/(P’/P’
〔上記式中、Q’およびQ’は、それぞれ、透過性の高いガスおよび透過性の低いガスの透過量[mol/(m・s・Pa)]を示し、P’およびP’は、それぞれ、供給ガス中の透過性の高いガスおよび透過性の低いガスの分圧[Pa]を示す。〕
分離係数αは次のように求めることもできる。
α=(C’/C’)/(C/C
〔上記式中、C’およびC’は、それぞれ、透過ガス中の透過性の高いガスおよび透過性の低いガスの濃度[mol%]を示し、CおよびCは、それぞれ、供給ガス中の透過性の高いガスおよび透過性の低いガスの濃度[mol%]を示す。〕
理想分離係数は、例えば、アンモニアと窒素を温度140℃、差圧0.1MPaで透過させた場合、通常2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上である。理想分離係数の上限は完全にアンモニアしか透過しない場合でありその場合は無限大となるが、実用上、分離係数は10万程度以下となる場合がある。
本発明で用いるゼオライト膜の分離係数は、例えば、アンモニアと窒素の体積比1:1の混合ガスを、温度50℃、差圧0.1MPaで透過させた場合、通常2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上である。分離係数の上限は完全にアンモニアしか透過しない場合でありその場合は無限大となるが、実用上、分離係数は10万程度以下となる場合がある。
本発明で用いるゼオライト膜複合体は、上記のとおり、耐薬品性、耐酸化性、耐熱安定性、耐圧性に優れ、かつ高い透過性能、分離性能を発揮し、耐久性に優れるものであり、このようなゼオライト膜複合体を用いる本発明のアンモニアの分離方法は、アンモニア合成の生成物からのアンモニアの分離に適用することができる。また、本発明のアンモニアの分離方法は、アンモニア合成反応器内にゼオライト膜複合体を設け、反応器内で、アンモニアを選択的に、透過分離し、反応系内の水素および窒素とアンモニアとの平衡をずらし、効率的にアンモニアを合成する膜反応器としても利用できる。
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限または下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は、前記上限または下限の値と下記実施例の値または実施例同士の値との組合せで規定される範囲であってもよい。
なお、以下において、「CHA型珪酸塩のゼオライト」を単に「CHA型ゼオライト」と呼ぶ。
[物性および分離性能の測定]
以下において、ゼオライト膜複合体の物性や分離性能等の測定は次のとおり行った。
(1)X線回折(XRD)測定
ゼオライト膜のXRD測定を、以下の条件で行った。
・装置名:オランダPANalytical社製X’PertPro MPD
・光学系仕様 入射側:封入式X線管球(CuKα)
Soller Slit (0.04rad)
Divergence Slit (Valiable Slit)
試料台:XYZステージ
受光側:半導体アレイ検出器(X’ Celerator)
Ni−filter
Soller Slit (0.04rad)
ゴニオメーター半径:240mm
・測定条件 X線出力(CuKα):45kV、40mA
走査軸:θ/2θ
走査範囲(2θ):5.0−70.0°
測定モード:Continuous
読込幅:0.05°
計数時間:99.7sec
自動可変スリット(Automatic−DS):1mm(照射幅)
横発散マスク:10mm(照射幅)
なお、X線は円筒管の軸方向に対して垂直な方向に照射した。またX線は、できるだけノイズ等がはいらないように、試料台においた円筒管状の膜複合体と、試料台表面に平行な面とが接する2つのラインのうち、試料台表面に接するラインではなく、試料台表面より上部にあるもう一方のライン上に主にあたるようにした。
また、照射幅を自動可変スリットによって1mmに固定して測定し、Materials Data, Inc.のXRD解析ソフトJADE7.5.2(日本語版)を用いて可変スリット→固定スリット変換を行ってXRDパターンを得た。
(2)空気透過量
大気圧下で、ゼオライト膜複合体の一端を封止し、他端を、気密性を保持した状態で5kPaの真空ラインに接続して、真空ラインとゼオライト膜複合体の間に設置したマスフローメーターでゼオライト膜複合体を透過した空気の流量を測定し、空気透過量[L/(m・h)]とした。マスフローメーターとしてはLintec社製MM−2100M、Airガス用、最大流量20ml/min(0℃、1気圧換算)を用いて測定した。
(3)単成分ガス透過試験
単成分ガス透過試験は、図1または2に模式的に示す装置を用いて、以下のとおり行った。用いた試料ガスは、二酸化炭素(純度99.9%、高圧ガス工業社製)、メタン(純度99.999%、ジャパンファインプロダクツ製)、水素(純度99.99%以上、HORIBASTEC社製水素発生器OPGU−2200より発生)、窒素(純度99.99%、東邦酸素工業社製)、ヘリウム(純度99.99、ジャパンヘリウムセンター社製)である。
図1において、円筒形のゼオライト膜複合体1は、ステンレス製の耐圧容器2に格納された状態で、恒温槽(図示せず)に設置されている。恒温槽には、供給ガスの温度調整が可能なように、温度制御装置が付設されている。
円筒形のゼオライト膜複合体1の一端は、断面T字形のエンドピン3で密封されている。ゼオライト膜複合体1の他端は接続部4を介して透過ガス8の排出配管10と接続されており、配管10は、耐圧容器2の外側に延出している。さらに、耐圧容器2からのガス排出配管13には、供給配管12からの供給ガス7の供給圧力を測る圧力計5と供給圧力を調整するための背圧弁6が接続されている。各接続部は気密性よく接続されている。
図1の装置において、単成分ガス透過試験を行う場合は、供給ガス(試料ガス)7を一定の流量で耐圧容器2とゼオライト膜複合体1の間に供給し、背圧弁6により供給側の圧力を一定とし、ゼオライト膜複合体1を透過した透過ガス8を、配管10に接続されている流量計(図示せず)にて測定した。
図2において、円筒形のゼオライト膜複合体1は、ステンレス製の耐圧容器2に格納された状態で恒温槽(図示せず)に設置されている。恒温槽には、供給ガスの温度調整が可能なように、温度制御装置が付設されている。
円筒形のゼオライト膜複合体1の一端は、断面T字形のエンドピン3で密封されている。ゼオライト膜複合体1の他端は接続部4を介して透過ガス8の排出配管11と接続されており、配管11は、耐圧容器2の外側に延出している。耐圧容器2への供給ガス(試料ガス)7の供給配管12には、供給ガス7の供給側の圧力を測る圧力計5が接続されている。各接続部は気密性よく接続されている。
図2の装置において、単成分ガス透過試験を行う場合は、供給ガス(試料ガス)7を、一定の圧力で耐圧容器2とゼオライト膜複合体1との間に供給し、ゼオライト膜複合体1を透過した透過ガス8を、配管11に接続されている流量計(図示せず)にて測定した。
(4) アンモニア分離試験
図1に模式的に示す装置において、以下のとおりアンモニア分離試験を行った。図1の装置において、供給ガス7として10%アンモニア/90%窒素の混合ガスを、200SCCM(82mm/sec)の流量で耐圧容器2とゼオライト膜複合体1との間に供給し、背圧弁6により供給側のガスの圧力を0.3MPaで一定とし、配管10から排出される排出ガスにマスフローコントローラーで流量を制御したヘリウムを標準物質として混合し、マイクロガスクロマトグラフで分析し、濃度、流量を算出した。
なお、(3)単成分ガス透過試験及び(4)アンモニア分離試験においては、耐圧容器2から、水分や空気などの成分を除去するため、測定温度以上での乾燥及び排気のために、使用する試料ガスによるパージ処理をした後、試料ガス温度及びゼオライト膜複合体1の供給ガス7側と透過ガス8側の差圧を一定として、透過ガス流量が安定した後に、ゼオライト膜複合体1を透過した試料ガス(透過ガス8)の流量を測定し、ガスのパーミエンス[mol/(m・s・Pa)]を算出した。パーミエンスを計算する際の圧力は、供給ガスの供給側と透過側の圧力差(差圧)を用いた。混合ガスの場合には分圧差を用いた。
また、この測定結果に基づいて、下記式(1)により理想分離係数α’を算出した。
α’=(Q/Q)/(P/P) (1)
〔式(1)中、QおよびQは、それぞれ、透過性の高いガスおよび透過性の低いガスの透過量[mol・(m・s)−1]を示し、PおよびPは、それぞれ、透過性の高いガスおよび透過性の低いガスの、供給側と透過側の圧力差[Pa]を示す。〕
これは、各ガスのパーミエンスの比率を示しており、従って、各ガスのパーミエンスを算出し、その比率から求めることができる。従来、単成分ガスの透過試験から求めたパーミエンスの比率とするが、今回は、アンモニアとメタンの理想分離係数として、窒素/アンモニアの混合ガスを用いた透過試験から算出したアンモニアのパーミエンスと、メタン単成分ガスを用いた透過試験から算出したメタンのパーミエンスの比率から求めた値を示した。
(5)SEM−EDX測定
ゼオライト膜のSEM−EDX測定は、以下の条件で行った。
・装置名:SEM:FE−SEM Hitachi:S−4800
EDX:EDAX Genesis
・加速電圧:10kV
倍率5000倍での視野全面(25μm×18μm)を走査してX線定量分析を行った。
[実施例1]
<CHA型ゼオライト膜複合体の作製>
セラミックス支持体上にCHA型ゼオライトを直接水熱合成することによりセラミックス支持体−CHA型ゼオライト膜複合体を作製した。
水熱合成用の反応混合物は次のとおり調製した。
1mol/L−NaOH水溶液3.5g、1mol/L−KOH水溶液7g、水107.4gを混合したものに水酸化アルミニウム(Al53.5質量%含有、アルドリッチ社製)0.44gを加えて撹拌し溶解させ、透明溶液とした。これに有機テンプレートとして、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムヒドロキシド(以下これを「TMADAOH」と称する。)2.37gを加え、さらにコロイダルシリカ(日産化学社製 スノーテック−40)10.5gを加えて2時間撹拌し、水性反応混合物とした。
この反応混合物の組成(モル比)は、SiO/Al/NaOH/KOH/HO/TMADAOH=1/0.033/0.05/0.1/100/0.04、SiO/Al=30である。
多孔質支持体としては、ニッカトー社製のムライトチューブPM(外径12mm、内径9mm)を80mmの長さに切断した後、超音波洗浄機で洗浄し、その後乾燥させたものを用いた。
種結晶として、SiO/Al/NaOH/KOH/HO/TMADAOH=1/0.033/0.1/0.06/40/0.07のゲル組成(モル比)で、160℃、2日間水熱合成して結晶化させたものを、濾過、水洗、乾燥して得られたCHA型ゼオライトを用いた。種結晶の粒径は0.3〜3μm程度であった。
この種結晶を約1質量%の濃度に水中に分散させたものに、上記支持体を所定時間浸した後、100℃で5時間以上乾燥させて種結晶を付着させた。付着した種結晶の質量は約0.9g/mであった。
種結晶を付着させた支持体3本を、上記水性反応混合物の入ったテフロン(登録商標)製内筒(200ml)に垂直方向に浸漬して、オートクレーブを密閉し、160℃で48時間、静置状態で、自生圧力下で加熱した。所定時間経過後、放冷した後に支持体−ゼオライト膜複合体を反応混合物から取り出し、洗浄後、100℃で5時間以上乾燥させた。
乾燥後の膜複合体を、空気中、電気炉で、550℃にて10時間焼成した。このときの昇温速度と降温速度はともに0.5℃/分とした。焼成後の膜複合体の質量と支持体の質量の差から求めた、支持体上に結晶化したCHA型ゼオライトの質量は159g/mであった。また、焼成後の膜複合体の空気透過量は34L/(m・h)であった。
同バッチで合成したゼオライト膜のXRDパターンを図3に示す。図中の*は支持体由来のピークである。このXRDパターンからCHA型ゼオライトが生成していることが確認された。また、ピーク強度比B=4.4、ピーク強度比A=1.2であった。図4に示す粉末のCHA型ゼオライトのXRDパターンと比べて、得られたゼオライト膜のXRDパターンは、ピーク強度比A,Bは高く、rhombohedral settingにおける(1,1,1)、(1,0,0)面への配向が推測された。
また、SEM−EDXにより測定した、ゼオライト膜のSiO/Alモル比は22であった。
以下、製造されたCHA型ゼオライト膜複合体を「CHA型ゼオライト膜複合体1」と称す。
<膜分離性能の評価>
CHA型ゼオライト膜複合体1を用いて、単成分ガス透過試験を図1の装置を用いて評価した。
前処理として、140℃で、供給ガス7としてHeを、耐圧容器2とゼオライト膜複合体1との間に導入して、圧力を約0.4MPaに保ち、ゼオライト膜複合体1の円筒の内側を0.098MPa(大気圧)として、約120分間乾燥した。
その後、供給ガスを各評価ガスに変更した。このとき、供給側の圧力は0.2MPaで、供給ガス7側と透過ガス8側の差圧は、0.1MPaであった。温度は140℃であった。
このようにして得られた各評価ガスのパーミエンスを表1に示す。CHAの細孔サイズの3.8Åと同じサイズのkinetic diameterを有するメタンのパーミエンスが非常に小さいことから、欠陥の少ない膜であると考えられる。
Figure 2014058433
続いてCHA型ゼオライト膜複合体1を用いて、アンモニア/窒素の混合ガスからのアンモニア分離試験を図1の装置を用いて行った。
前処理として、140℃で、供給ガス7としてCOを、耐圧容器2とゼオライト膜複合体1との間に導入して、圧力を約0.2MPaに保ち、ゼオライト膜複合体1の円筒の内側を0.098MPa(大気圧)として、約60分間乾燥した。
その後、10%アンモニア/90%窒素の混合ガス(140℃)を200SCCM(27mm/sec)で流通させ、背圧を0.3MPaに設定した。この時、ゼオライト膜複合体1の供給ガス7側と透過ガス8側の差圧は、0.2MPaであった。
得られた透過ガスのアンモニアの濃度は25%であった。またパーミエンスを算出すると、アンモニアのパーミエンスは1.2×10-7[mol/(m・s・Pa)]、窒素のパーミエンスは8.7×10-7[mol/(m・s・Pa)]であり、アンモニアと窒素のパーミエンス比(理想分離係数)は14であった。高いアンモニアのパーミエンスで窒素との分離も十分に行われていることが確認された。
さらに、このアンモニア分離試験後のゼオライト膜複合体1を用いて、単成分ガス透過試験を図2の装置を用いて行った。前処理はアンモニア分離試験と同様に行った。その後、供給ガスを各評価ガスに変更した。このとき、供給側の圧力は0.2MPaで、供給ガス7側と透過ガス8側の差圧は0.1MPa、温度は140℃であった。
測定された各評価ガスのパーミエンスを表2に示す。
Figure 2014058433
表1のアンモニア分離試験前の単成分ガス透過試験時のパーミエンスと比較して、アンモニア分離試験後の各ガスのパーミエンスは低下していないことから、アンモニアによるゼオライトの細孔の閉塞はないと考えられる。
表2の単成分ガス透過試験の窒素のパーミエンスと、アンモニア分離試験での窒素のパーミエンスを比較すると、(単成分ガス透過試験時窒素パーミエンス)/(アンモニア分離試験時窒素パーミエンス)=3.1であった。アンモニア分離試験時にはアンモニアが優先的に透過し、窒素の透過が阻害されるため、単成分ガス透過試験時に比べてパーミエンスが低下するものと考えられる。
他のガス種においても窒素と同様に、アンモニアとの分離試験の際にはパーミエンスが低下すると考えられる。
表2に単成分ガス透過試験時の窒素のパーミエンスに対する各ガスのパーミエンスの比を示したが、これらはアンモニア/窒素の混合ガスについてのアンモニア分離試験時のアンモニア/窒素のパーミエンス比の13.8よりも小さいことから、各ガスを混合したガスを分離した試験ではアンモニアのパーミエンスが最も高くなると考えられる。
1 ゼオライト膜複合体
2 耐圧容器
5 圧力計
6 背圧弁
7 供給ガス(試料ガス)
8 透過ガス

Claims (8)

  1. ゼオライト膜を用いて、アンモニアと水素および/または窒素を含む複数の成分からなる気体混合物からアンモニアを分離する方法であって、該ゼオライト膜が多孔質支持体上に形成されてなることを特徴とするアンモニアの分離方法。
  2. 前記ゼオライト膜が酸素8員環を有する請求項1に記載のアンモニアの分離方法。
  3. 前記ゼオライトがCHA型アルミノ珪酸塩である請求項1または2に記載のアンモニアの分離方法。
  4. 前記ゼオライトがCHA型アルミノ珪酸塩であり、前記ゼオライト膜表面にX線を照射して得たX線回折パターンにおいて、2θ=17.9°付近のピーク強度が、2θ=20.8°付近のピーク強度の0.5倍以上の値を有するものである請求項1または2記載のアンモニアの分離方法。
  5. 前記ゼオライトがCHA型アルミノ珪酸塩であり、前記ゼオライト膜表面にX線を照射して得たX線回折パターンにおいて、2θ=9.6°付近のピーク強度が、2θ=20.8°付近のピーク強度の2.0倍以上の値を有するものである請求項1または2に記載のアンモニアの分離方法。
  6. 前記ゼオライトのSiO/Alモル比が6以上500以下である請求項3ないし5のいずれか1項に記載のアンモニアの分離方法。
  7. 前記ゼオライトが、アルカリ源として少なくともカリウム(K)を含む水熱合成用の反応混合物を用いて形成されたものである請求項3ないし6のいずれか1項に記載のアンモニアの分離方法。
  8. アンモニアの分離を、反応器内でアンモニア合成と同時に行う請求項1ないし7のいずれか1項に記載のアンモニアの分離方法。
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