JP2008244360A - 半導体発光素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】層に使用される材料の相分離の影響を少なくし、信頼性や発光効率の高い半導体発光素子を提供する。
【解決手段】窒化物系化合物半導体からなる活性層1と、前記活性層1を挟み、超格子構造を含む窒化物系化合物半導体からなる上部光閉じ込め層2bおよび下部光閉じ込め層2aと、前記上部光閉じ込め層2bの上部に配置される上部クラッド層3bと、前記下部光閉じ込め層2aの下部に配置される下部クラッド層3aとを有する半導体発光素子。
【選択図】図1

Description

本発明は、窒化物系化合物半導体を使用した半導体発光素子に関するものである。また本発明は特に、緑色領域の波長の光を発光する半導体レーザや発光ダイオードなどの半導体発光素子に関するものである。
半導体レーザや発光ダイオードにおいて、近年窒化物系化合物半導体を使用することにより、青色領域の波長の光を発光する発光素子が実現するのに至っている。そのため、従来の赤色の波長の光を発光する発光素子とあわせて、可視光領域において短波長から長波長の波長の光を発光する発光素子が得られたことになる。しかしながら、光の三原色、赤、青、緑のうち、緑色領域の波長を発光する発光ダイオードは実用化されているものの、半導体レーザについては研究途上段階である。
ここで、特に緑色領域の波長の半導体レーザは、例えば光記録の分野において、青色領域の波長の半導体レーザとともに発振波長が短いので、記録光や再生光の短波長化は高密度化、大容量化に繋がる。そのため、青色、緑色を出射する半導体レーザは光源としての用途が期待されるところである。
半導体レーザの一つの例として、AlInGaP系の半導体レーザが知られている。このAlInGaP系の半導体レーザは元来、近赤外、赤外領域の波長をカバーする半導体レーザであり、CDやDVDの光源などに広く利用されている。AlInGaP系の半導体レーザに緑色領域の波長の発振を行わせるためには、理論上Alの組成を上げればよい。
また、II−V族半導体も半導体レーザを作成する材料として注目が集められており、特にII−V族半導体としてZeSeをベースにした半導体レーザは、その組成を適切に調整することにより、緑色領域の波長の発振を行わせることができる。その他に、緑色領域の波長相当のバンドギャップを有するZeTe基板を使用した半導体レーザ、もしくは、CdSeを量子箱の材料として使用する半導体レーザも提案されている(非特許文献1,2)。
さらに、発光素子の活性層として、InGaN層を用いた窒化物系化合物半導体を用いた発光素子の開発が進められており、特にAlGaN層でInGaN活性層を挟み込んだ構造は、注入キャリアの閉じ込めや光の閉じ込めに有効であるため、高輝度あるいは短波長発光用の発光素子の構造として採用されている。
しかし、AlGaN層でInGaN活性層を挟み込んだ構造では、半導体材料としてAlが含まれるAlGaN層が存在するが、AlGaN層を成長する際に、Alの導入が困難な場合がある。すなわち、AlGaN層を成長する場合は、Alは蒸気圧が極端に低いために拡散し難く、異常成長が起こりやすい。また、CODを回避し、長寿命化を図るためには、発光素子に使用する窒化物形化合物半導体層から、Alを排除することが望ましい。
そこで例えば、特許文献1に記載されている半導体レーザのように、活性層を構成する窒化物系化合物半導体の材料としてInGaNを使用し、その他に、クラッド層を構成する窒化物系化合物半導体の材料としてGaNを使用する半導体レーザが開示されている。これにより、窒化物系化合物半導体の材料にAlを含ませる必要がなく、青、緑といった可視光の波長領域のレーザ光を室温で連続発振できるようにしている。
A. Waag, T. Litz, F. Fischer, H. -J. Lugauer, R. L. Gunshor and G. Landweh, "Beryllium-containing materials for II-VI Laser Diodes," in Physics and Simulation of Optoelectronic Devices V, eds. M. Osinsk and W. W. Chow, Proceedings of SPIE Vol. 2994 (1997) 32-43. S. -B. Che, I. Nomura, W. Shinozaki, A. Kikuchi, K. Shimomura and K. Kishino, "Wide bandgap over 3 eV and high p-doping BeZnTe grown on InP substrates by molecular beam epitaxy," J. Cryst. Growth 214/215 (2000) 321-324. 特開2003−218468号公報
AlInGaP系の半導体レーザにおいて、Alの組成を上げることにより、緑色領域の波長の発振を行わせる場合、Al組成の増加により基板との格子定数差が大きくなり、結晶成長が困難になるという問題がある。ここで、結晶成長が困難となるということは、作製した半導体レーザの活性層に欠陥が入りやすく寿命などの信頼性の確保が難しくなることを意味する。
また、II−V族半導体を使用して発光素子を作製する場合、その半導体材料が本質的に柔らかい結晶であるため、特に発光素子が半導体レーザである場合は、連続発振を続けるのにしたがって、ダークライン等の欠陥が結晶中に入りやすくなる。そのため、発光素子の信頼性向上が難しいという問題がある。
さらに活性層を構成する窒化物系化合物半導体の材料としてInGaNを使用した半導体レーザにおいては、InGaNを構成するInNの結晶およびGaNの結晶では、互いに大きな格子定数の差が存在する。そのため、InGaN層を形成する場合は、InNとGaNとの熱力学的性質の相違から、特にIn組成が高い場合に、相分離が起こりやすい。相分離を防ぐために、InGaN層を低温にて成膜する方法があるが、層の構成元素成分のマイグレーションが起り難いので成膜したInGaN層の結晶品質が低下するおそれがある。そのため、信頼性や発光効率の低下を招くという問題がある。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、特に活性層の窒化物系化合物半導体として例えばInGaNを使用した半導体発光素子において、層に使用される材料の相分離の影響を少なくし、信頼性や発光効率の高い半導体発光素子を提供することを目的とする。
本発明の半導体発光素子は、窒化物系化合物半導体からなる活性層と、前記活性層を挟み、超格子構造を含む窒化物系化合物半導体からなる上部光閉じ込め層および下部光閉じ込め層と、前記上部光閉じ込め層の上部に配置される上部クラッド層と、前記下部光閉じ込め層の下部に配置される下部クラッド層とを有する。
特に、前記超格子を構成する窒化物系化合物半導体層の半導体材料には、Inが含まれる。
好ましくは、前記超格子は、InxGa1-xNからなる低ポテンシャル層と、InyGa1-yNからなる高ポテンシャル層(x>y)により構成されている。そしてまた、前記低ポテンシャル層の厚さが2nm以上10nm以下であり、前記高ポテンシャル層の厚さが0.5nm以上10nm以下である。
好適には、前記xが0.1以上0.4以下である。そして、前記光閉じ込め層の厚さが50nm以上200nm以下である。
なお好ましくは、前記活性層は、InzGa1-zNからなる井戸層とGaNからなる障壁層により構成される量子井戸構造を有する。
好適には、前記zが0.3以上1.0以下である。そして、前記井戸層の厚さが1分子層以上20分子層以下である。さらに好適には、前記量子井戸構造の量子井戸数が1以上6以下である。
本発明の半導体発光素子では層に使用される材料の相分離の影響が少なく、発光効率や信頼性が高い。そのため、特に長寿命な緑色の領域の波長の半導体レーザを実現することができる。
半導体を使用した発光素子は、通常キャリアの電子と正孔が再結合することにより光を発光する活性層と、その活性層を挟む上部光閉じ込め層および下部光閉じ込め層と、上部光閉じ込め層の上部に配置される上部クラッド層と、前記下部光閉じ込め層の下部に配置される下部クラッド層とを有している。ここで、本発明における特徴は、光閉じ込め層にある。
図1は、本発明の半導体発光素子の活性層付近のバンドダイアグラムを示したものである。図1には、活性層1と、活性層1を挟む一組の閉じ込め層2a,2b(上部光閉じ込め層2bおよび下部光閉じ込め層2a)と、一組の閉じ込め層2a,2bを挟むクラッド層3a,3b(上部光閉じ込め層2bの上部に配置される上部クラッド層3bと、前記下部光閉じ込め層2aの下部に配置される下部クラッド層3a)のバンドダイアグラムが示されている。上記、活性層1、閉じ込め層2a,2b、クラッド層3a,3bを構成するための半導体材料は窒化物系化合物半導体である。
また、閉じ込め層2a,2bは、低ポテンシャル層4lと高ポテンシャル層4hの周期構造からなる超格子を含んでいる。また、その超格子を構成する窒化物系化合物半導体層の半導体材料にはInが含まれている。
具体的に、超格子の低ポテンシャル層4lを構成する半導体材料はInxGa1-xNであり、高ポテンシャル層4hを構成する半導体材料はInyGa1-yNとする。ここで、低ポテンシャル層4lのバンドギャップを高ポテンシャル層4hのバンドギャップよりも小さくするため、低ポテンシャル層4lのIn組成xは、高ポテンシャル層4hのIn組成yよりも大きい(x>y)。
低ポテンシャル層4l及び高ポテンシャル層4hの厚さは、これらの層で超格子を形成するために、量子効果が発現する程度の厚さとなることが必要である。すなわち、低ポテンシャル層4l及び高ポテンシャル層4hの厚さの上限は10nmとなる。なお、低ポテンシャル層4lと高ポテンシャル層4hの厚さの下限も同様にして量子効果が発現する程度の厚さとなることが必要である。例えば、低ポテンシャル層4l及び高ポテンシャル層4hの厚さの下限はそれぞれ、2nm及び0.5nmとすることができる。
また、低ポテンシャル層4l及び高ポテンシャル層4hの組み合わせにより形成されるミニバンドの量子準位QLにより規定されるバンドギャップを活性層1により規定されるバンドギャップとクラッド層3により規定されるバンドギャップの中間となる要件を満たすように、低ポテンシャル層4lを構成する半導体材料はInxGa1-xNのIn組成xを規定する必要がある。すなわち、ミニバンドの量子準位QLにより規定されるバンドギャップを活性層1により規定されるバンドギャップとクラッド層3により規定されるバンドギャップの中間とするためには、低ポテンシャル層4lを構成する半導体材料はInxGa1-xNのIn組成xを0.1以上0.4以下とする。
ここで、超格子により構成される光閉じ込め層2a,2bは超格子層を構成する半導体材料がInxGa1-xNであるため、光閉じ込め層2a,2bにおける光閉じ込めの程度は、 その材料の屈折率及びクラッド層3a,3bを構成する半導体材料GaNの屈折率から計算される。活性層1で発生した光を光閉じ込め層2a,2bによって効率的に閉じ込めるための光閉じ込め層2a,2bの厚さは50nm以上200nm以下と計算される。
このように、好適な光閉じ込め層2a,2bの厚さは50nm以上200nmであり比較的厚く、InGaN層単層のみで形成した場合は、その厚さのために層の形成中に格子緩和や相分離が発生しやすい。しかしながら、光閉じ込め層2a,2bは上記のように層厚の薄い低ポテンシャル層4lと高ポテンシャル層4hの組み合わせからなる超格子により構成されている。そのため、各ポテンシャル層4は上記のように原子層オーダの厚さとなるので、格子緩和や相分離が発生しにくい。
次に、活性層1は発光効率の向上のため、井戸層と障壁層により構成される量子井戸構造とすることが望ましい。この場合、井戸層を構成する半導体材料はInzGa1-zNとし、障壁層を構成する半導体材料はGaNとすることができる。特に、発光素子が発光する波長を緑色領域とするためには、井戸層を構成する半導体材料InzGa1-zNの組成zを0.3以上1.0以下とすればよい。
活性層1を量子井戸構造とした場合の井戸層の厚さは上記のポテンシャル層の厚さの場合と同様に量子効果が発現する1分子層以上20分子層以下の厚さ以下とする。
図1のようなバンドダイアグラムを有する活性層1,光閉じ込め層2,クラッド層3を有する発光素子の一例の概念的な断面図を図2に示す。
図2に示された半導体発光素子5は基板6上に、下部クラッド層3a、下部光閉じ込め層2a、活性層1、上部光閉じ込め層2b、上部クラッド層3bを積層した半導体積層構造を有している。そして、下部クラッド層3aの一部の面が露出するようにしてその露出箇所に電極7aを形成し、また、上部クラッド層3bの露出箇所に電極7bを形成する。
以上の構成からなる半導体発光素子5は光閉じ込め層2a,2bを構成する層に相分離しやすいInGaNを使用しているにもかかわらず、光閉じ込め層2a,2bが薄いInGaN層を組み合わせた超格子を有した構造となっているので、InGaN層の相分離が発生しにくく発光効率や信頼性が高い。
(実施例1)
図2は、本発明の実施例の1つにおける、半導体発光素子5としての半導体レーザの断面図を示したものである。
図2に示した半導体発光素子5は、サファイア(0001)基板6上に、図示しないAlNバッファ層を挟んだn−GaNからなる厚さ3μmの下部クラッド層3a、低ポテンシャル層をIn0.2Ga0.8Nとし高ポテンシャル層をGaNとする超格子からなる下部光閉じ込め層2a、井戸層をInzGa1-zNとし障壁層をGaNとする量子井戸構造を有する活性層1、低ポテンシャル層をIn0.2Ga0.8Nとし高ポテンシャル層をGaNとする超格子からなる上部光閉じ込め層2b、p−GaNからなる厚さ1μmの上部クラッド層3bを順次積層した半導体積層構造を有している。なお、この半導体レーザは共振器長1mmのメサを有するリッジ型のレーザであり、リッジ幅は2μmとしている。
そして、下部クラッド層3aの一部の面が露出するようにしてその露出箇所にTi/Pt/Auからなる電極7aが形成され、また、上部クラッド層3bの露出箇所にPd/Pt/Auからなる電極7bが形成されている。
下部クラッド層3a(clad)、下部光閉じ込め層2a(OCL)、活性層1(Act)、上部光閉じ込め層2b(OCL)、上部クラッド層3b(clad)を構成する半導体層の構成について以下の表1に示した。
Figure 2008244360
まず、表1のように、クラッド層3a,3bはともにGaNからなっており、バンドギャップエネルギーEは3.42eVである。そして、活性層1は、1分子層分(1ML)の厚さ0.5nmのInNからなる一つの井戸層と、井戸層を挟みGaNからなる一組の障壁層により構成されている。ここで、1分子層分(1ML)の厚さ0.5nmの井戸層の量子準位間エネルギー(E)を緑色領域に相当する波長のエネルギー(2.23eV)と一致させるため、井戸層を構成する半導体材料をInzGa1-zNのIn組成zを図3の通りz=1とする。
次に、低ポテンシャル層をIn0.2Ga0.8Nとし高ポテンシャル層をGaNとする超格子からなる光閉じ込め層2a,2bのミニバンドの量子準位QL間エネルギー(E)を、GaNからなるクラッド層3a,3bのバンドギャップエネルギーEの3.42eVと井戸層の量子準位間エネルギー(E)の2.23eV(波長555nm相当)の中間とする必要がある。そのため、超格子の低ポテンシャル層を構成するIn0.2Ga0.8Nの厚さを変化させる。図4に示したように、超格子の高ポテンシャル層を構成するGaN層の厚さによらず、低ポテンシャル層を構成するIn0.2Ga0.8Nの厚さを5nm程度にすればよいことがわかる。このとき、高ポテンシャル層を構成するGaN層の厚さを5nmとすると、光閉じ込め層2a,2bのミニバンドの量子準位QL間エネルギー(E)は2.83eVとなる。
次に、活性層1の井戸層における光閉じ込め係数の最適化を行うために、上記光閉じ込め層2a,2bの厚さの決定を行う。図5は光閉じ込め層の厚さに対する光閉じ込め係数の依存性を示したグラフであるが、閉じ込め係数は、光閉じ込め層2a,2bの厚さが88nmのときに最大となることが読み取れる。そのため、厚さがそれぞれ5nmの低ポテンシャル層を構成するIn0.2Ga0.8N層と高ポテンシャル層を構成するGaN層からなるペアが10組の超格子からなる光閉じ込め層2a,2bとすればよいことがわかる。
以上のように、活性層1の井戸層における光閉じ込め係数の最適化を行った後、しきい値電流密度の低減のために、活性層1の井戸層数の最適化を行う。しきい値電流密度Jthは以下の式で計算することができる。
Figure 2008244360
上記(数1)において、qは素電荷、dは井戸幅、Nwは井戸数、Nthはしきい値キャリア密度、τsはキャリア再結合時間である。緩和時間を0.1psとして、この(数1)に基づいて量子井戸数に対するしきい値電流密度の依存性を示したグラフを図6に示した。
この計算において、格子ひずみに伴うピエゾ電解の効果や、価電子帯のLH,HHの縮退などは考慮していない。そのため、ピエゾ分極、自発分極、正孔の有効質量の低下の影響は無視している。さらに、計算に使用したパラメータは文献(例えば、「半導体レーザ」伊賀健一著 オーム社)値である。
図6からわかるように井戸数が2のときにしきい値電流密度Jthが最小となるが、井戸数が1〜6であってもおおむね低しきい値電流密度を示すことを判読できる。
以上の構造からなる図2に示した半導体発光素子5としての半導体レーザの製造方法を以下に説明する。
まず、サファイア基板6上にMOCVD法(有機金属気相成長)により、成長温度1030℃で図示しないAlNバッファ層を堆積する。その上にn型不純物としてSi(ドーピングガスはSiH4)を1×1018cm-3に同時にドーピングしながらn−GaNからなる厚さ3μmの下部クラッド層3aを成長する。なお、基板6はサファイア基板に変えて、SiC基板、GaN基板、ZrB2基板、Si基板などであっても良い。
次に、下部光閉じ込め層2aの成長を行う。すなわち、低ポテンシャル層として厚さ5nmのIn0.2Ga0.8N層、及び、高ポテンシャル層として厚さ5nmのGaN層からなる超格子を9ペア分成長する。
下部光閉じ込め層2aの成長が終了後、量子井戸構造を構成する、障壁層として厚さ0.5nmのGaN層、井戸層として厚さ0.5nm(1分子層)のInN層、障壁層として厚さ0.5nmのGaN層を順次成長する。
量子井戸構造を構成する層の成長が終了後、上部光閉じ込め層2bの成長を行う。すなわち、低ポテンシャル層として厚さ5nmのIn0.2Ga0.8N層、及び、高ポテンシャル層として厚さ5nmのGaN層からなる超格子を9ペア分成長する。
上部光閉じ込め層2bの成長が終了後、p型不純物としてMg(ビスシクロペンタジエニルマグネシウムを使用)を1×1019cm-3に同時にドーピングしながらp−GaNからなる厚さ1μmの上部クラッド層3bを成長する。
以上のようにして、半導体発光素子5を構成するための半導体積層構造が完成する。その後、成長装置から基板6を取り出し、RTA(Rapid Thermal Annealing)装置を用いて、800℃で30分間のアニーリングを行い、半導体積層構造中におけるMgを活性化させる。
半導体積層構造の表面にパターニングを行い、ドライエッチング装置で、リッジ幅2μmの半導体レーザのメサを形成する。さらに、半導体積層構造の表面側からn型電極7aをn−GaNからなる下部クラッド層3aに形成するためのエッチングを行う。すなわち、n型電極を下部クラッド層3aの表面に直接形成するため、上記半導体積層構造の表面の一部箇所を下部クラッド層3aが露出するまでエッチングする。
その後、半導体レーザのパッシベーション膜として、上記半導体積層構造の表面にPECVD法(プラズマ化学気相成長)によりSiNx膜を120nm堆積する。そして、n型電極7a及びp型電極7bの形状に合わせた開口をSiNx膜上に形成する。
開口に対して形成後EB蒸着法により、上部クラッド層3bの露出箇所にPd/Pt/Auからなる電極7bを形成する。そして、下部クラッド層3aの露出箇所にTi/Pt/Auからなる電極7aを形成する、なお、蒸着の方法として、抵抗加熱蒸着法やスパッタ法などにより蒸着しても良い。
その後、半導体レーザの共振器を形成するため、基板6をメサと垂直方向にへき開を行う。ここで、共振器長が1mmとなるように、へき開を行う。さらに、個々の半導体レーザ素子に分離するため、メサを挟んだ箇所を単位としてメサと平行方向にダイシングを行う。必要に応じて、へき開面に誘電体反射膜を形成することにより、緑色半導体レーザが完成する。
(実施例2)
図2は、本発明の実施例の別の1つにおける、半導体発光素子5としての半導体レーザの断面図を示したものである。
図2に示した半導体発光素子5は、サファイア(0001)基板6上に、図示しないAlNバッファ層を挟んだn−GaNからなる厚さ3μmの下部クラッド層3a、低ポテンシャル層をIn0.35Ga0.65Nとし高ポテンシャル層をGaNとする超格子からなる下部光閉じ込め層2a、井戸層をInzGa1-zNとし障壁層をGaNとする量子井戸構造を有する活性層1、低ポテンシャル層をIn0.35Ga0.65Nとし高ポテンシャル層をGaNとする超格子からなる上部光閉じ込め層2b、p−GaNからなる厚さ1μmの上部クラッド層3bを順次積層した半導体積層構造を有している。なお、この半導体レーザは共振器長1mmのメサを有するリッジ型のレーザであり、リッジ幅は2μmとしている。
また、下部クラッド層3aの一部の面が露出するようにしてその露出箇所にTi/Pt/Auからなる電極7aが形成され、また、上部クラッド層3bの露出箇所にPd/Pt/Auからなる電極7bが形成されている。
下部クラッド層3a(clad)、下部光閉じ込め層2a(OCL)、活性層1(Act)、上部光閉じ込め層2b(OCL)、上部クラッド層3b(clad)を構成する半導体層の構成について以下の表2に示した。
Figure 2008244360
まず、表2のように、クラッド層3a,3bはともにGaNからなっており、バンドギャップエネルギーEは3.42eVである。そして、活性層1は、5分子層分(5ML)の厚さ5nmのInzGa1-zNからなる一つの井戸層と、井戸層を挟み厚さ5nmのGaNからなる一組の障壁層により構成されている。ここで、5分子層分(5ML)の厚さ5nmの井戸層の量子準位間エネルギー(E)を緑色領域に相当する波長のエネルギー(2.34eV)と一致させるため、井戸層を構成する半導体材料をInzGa1-zNのIn組成zは0.35としている(図3参照)。
次に、低ポテンシャル層をIn0.35Ga0.65Nとし高ポテンシャル層をGaNとする超格子からなる光閉じ込め層2a,2bのミニバンドの量子準位QL間エネルギー(E)を、GaNからなるクラッド層3a,3bのバンドギャップエネルギーEの3.42eVと井戸層の量子準位間エネルギー(E)の2.34eV(波長530nm相当)の中間とする必要がある。そのため、超格子の低ポテンシャル層を構成するIn0.35Ga0.65Nの厚さを変化させる。図7に示したように、超格子の高ポテンシャル層を構成するGaN層の厚さによらず、低ポテンシャル層を構成するIn0.35Ga0.65Nの厚さを1nm程度にすればよいことがわかる。ここで、高ポテンシャル層を構成するGaN層の厚さを1nmとすると、光閉じ込め層2a,2bのミニバンドの量子準位間エネルギー(E)は2.81eVとなる。
次に、活性層1の井戸層における光閉じ込め係数の最適化を行うために、上記光閉じ込め層2a,2bの厚さの決定を行う。図5は光閉じ込め層の厚さに対する光閉じ込め係数の依存性を示したグラフであるが、閉じ込め係数は、光閉じ込め層2a,2bの厚さが110nmのときに最大となることが読み取れる。そのため、厚さがそれぞれ1nmの低ポテンシャル層を構成するIn0.35Ga0.65N層と高ポテンシャル層を構成するGaN層からなるペアが55組の超格子からなる光閉じ込め層2a,2bとすればよいことがわかる。
以上のように、活性層1の井戸層における光閉じ込め係数の最適化を行った後、しきい値電流密度の低減のために、活性層1の井戸層数の最適化を行うことができる。しきい値電流密度Jthは上記の(数1)により計算できる。この(数1)に基づいて量子井戸数に対するしきい値電流密度の依存性を示したグラフを図6に示した。図6からわかるように井戸数が4のときにしきい値電流密度Jthが最小となることがわかる。
本実施例2の半導体レーザの構造は、活性層1を構成するInGaN層及び光閉じ込め層2を構成するInGaN層のIn組成、及び、活性層1の厚さと光閉じ込め層2の厚さが実施例1の半導体レーザの構造と異なるのみであり、他は共通している。したがって、製造方法は実施例1の半導体レーザの製造方法とまったく共通する。よって、実施例2の半導体レーザを製造する説明は省略する。
本発明の半導体発光素子の活性層近傍のバンドダイアグラムである。 本発明の半導体発光素子の断面図である。 InGaN/GaN量子井戸構造におけるIn組成による量子準位エネルギーを示したグラフである。 In0.2Ga0.8N/GaN超格子においてIn0.2Ga0.8N層の厚さによるミニバンドの量子準位間エネルギーの依存性を示したグラフである。 光閉じ込め層の厚さに対する光閉じ込め係数の依存性を示したグラフである。 半導体発光素子としての半導体レーザにおける量子井戸数に対するしきい値電流密度の依存性を示したグラフである。 In0.35Ga0.65N/GaN超格子においてIn0.2Ga0.8N層の厚さによるミニバンドの量子準位間エネルギーの依存性を示したグラフである。
符号の説明
1…活性層, 2…光閉じ込め層, 3…クラッド層, 4…ポテンシャル層, 5…半導体発光素子, 6…基板, 7…電極

Claims (10)

  1. 窒化物系化合物半導体からなる活性層と、
    前記活性層を挟み、超格子構造を含む窒化物系化合物半導体からなる上部光閉じ込め層および下部光閉じ込め層と、
    前記上部光閉じ込め層の上部に配置される上部クラッド層と、
    前記下部光閉じ込め層の下部に配置される下部クラッド層と
    を有する半導体発光素子。
  2. 前記超格子を構成する窒化物系化合物半導体層の半導体材料には、Inが含まれる、請求項1に記載の半導体発光素子。
  3. 前記超格子は、InxGa1-xNからなる低ポテンシャル層と、InyGa1-yNからなる高ポテンシャル層(x>y)により構成されている、請求項2に記載の半導体発光素子。
  4. 前記低ポテンシャル層の厚さが2nm以上10nm以下であり、前記高ポテンシャル層の厚さが0.5nm以上10nm以下である、請求項3に記載の半導体発光素子。
  5. 前記xが0.1以上0.4以下である請求項3または請求項4に記載の半導体発光素子。
  6. 前記光閉じ込め層の厚さが50nm以上200nm以下である請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
  7. 前記活性層は、InzGa1-zNからなる井戸層とGaNからなる障壁層により構成される量子井戸構造を有する請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
  8. 前記zが0.3以上1.0以下である請求項7に記載の半導体発光素子。
  9. 前記井戸層の厚さが1分子層以上20分子層以下である請求項8に記載の半導体発光素子。
  10. 前記量子井戸構造の量子井戸数が1以上6以下である請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
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