JP2008244322A - 複合磁石、その製造装置及び製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 磁気特性の向上が図られた複合磁石、その製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係る押出成形機10は、複合磁石の材料となる成形材料の押出成形を磁場配向させた状態でおこなう押出成形機であって、内部を流通する成形材料22に所定の磁場を印加すると共に、成形材料22との接触面の少なくとも一部にフッ素コート層26が形成されている磁場配向金型18を備えるため、発明者らは、磁場配向金型18に形成されたフッ素コート層26により、磁場配向金型18とその内部を流通する成形材料22との間の摩擦係数が有意に低減することを見出した。すなわち、この押出成形機10によれば、磁場配向金型18における成形材料22の摩擦抵抗が低減され、磁気特性の高い磁石を作製することができる。
【選択図】 図3
【解決手段】 本発明に係る押出成形機10は、複合磁石の材料となる成形材料の押出成形を磁場配向させた状態でおこなう押出成形機であって、内部を流通する成形材料22に所定の磁場を印加すると共に、成形材料22との接触面の少なくとも一部にフッ素コート層26が形成されている磁場配向金型18を備えるため、発明者らは、磁場配向金型18に形成されたフッ素コート層26により、磁場配向金型18とその内部を流通する成形材料22との間の摩擦係数が有意に低減することを見出した。すなわち、この押出成形機10によれば、磁場配向金型18における成形材料22の摩擦抵抗が低減され、磁気特性の高い磁石を作製することができる。
【選択図】 図3
Description
本発明は、押出成形を利用して作製する複合磁石、その製造装置及び製造方法に関するものである。
従来、この技術の分野における複合磁石の製造装置は、例えば、下記特許文献1に開示されている。この公報には、押出成形を利用して複合磁石を作製する技術が開示されている。この押出成形による長尺磁石の製造方法は、磁石の延在方向における磁気特性のズレを小さくすることができる点で、射出成形による製造方法よりも優れている。
特開平3−272105号公報
特開平3−3215号公報
特開平10−270235号公報
特開平10−104950号公報
特開平11−176623号公報
特開平10−106830号公報
発明者らは、押出成形に用いる製造装置においては、その磁場配向金型(配向ダイ)における成形材料(磁石材料)の摩擦抵抗が、作製される磁石の磁気特性に多大な影響を与える点に着目し、鋭意研究の末、磁場配向金型における摩擦抵抗を効果的に低減することができる技術を新たに見出した。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、磁気特性の向上が図られた複合磁石、その製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る複合磁石の製造装置は、複合磁石の材料となる成形材料の押出成形を磁場配向させた状態でおこなう複合磁石の製造装置であって、内部を流通する成形材料に所定の磁場を印加すると共に、成形材料との接触面の少なくとも一部にフッ素コート層が形成されている磁場配向金型を備える。
この複合磁石の製造装置においては、磁場配向金型にフッ素コート層が形成されており、複合磁石の材料となる成形材料は、磁場配向金型の内部を流通する際にこのフッ素コート層に接する。発明者らは、磁場配向金型に形成されたフッ素コート層により、磁場配向金型とその内部を流通する成形材料との間の摩擦係数が有意に低減することを見出した。すなわち、この複合磁石の製造装置によれば、磁場配向金型における成形材料の摩擦抵抗が低減され、磁気特性の高い磁石を作製することができる。
また、磁場配向金型の接触面と成形材料との間の摩擦係数が0.15〜0.20である態様でもよい。この場合、磁場配向金型における成形材料の摩擦抵抗の十分な低減が実現されるため、磁気特性の高い磁石を作製することができる。
本発明に係る複合磁石の製造方法は、複合磁石の材料となる成形材料の押出成形を磁場配向させた状態でおこなう複合磁石の製造方法であって、内部を流通する成形材料に所定の磁場を印加すると共に、成形材料との接触面の少なくとも一部にフッ素コート層が形成されている磁場配向金型によって、成形材料の成形をおこなう。
この複合磁石の製造方法においては、磁場配向金型の内部を複合磁石の材料となる成形材料が流通して成形される際に、その成形材料が磁場配向金型に形成されたフッ素コート層に接する。発明者らは、磁場配向金型に形成されたフッ素コート層により、磁場配向金型とその内部を流通する成形材料との間の摩擦係数が有意に低減することを見出した。すなわち、この複合磁石の製造方法によれば、磁場配向金型における成形材料の摩擦抵抗が低減され、磁気特性の高い磁石を作製することができる。
また、磁場配向金型の接触面と成形材料との間の摩擦係数が0.15〜0.20である態様でもよい。この場合、磁場配向金型における成形材料の摩擦抵抗の十分な低減が実現されるため、磁気特性の高い磁石を作製することができる。
本発明に係る複合磁石は、複合磁石の材料となる成形材料の押出成形を磁場配向させた状態でおこなった複合磁石であって、配向度が98%以上である。
また、複合磁石の材料となる成形材料が、強磁性磁石粉と熱可塑性エラストマーの混練物である態様でもよい。
本発明によれば、磁気特性の向上が図られた複合磁石、その製造装置及び製造方法が提供される。
以下、添付図面を参照して本発明を実施するにあたり最良と思われる形態について詳細に説明する。なお、同一又は同等の要素については同一の符号を付し、説明が重複する場合にはその説明を省略する。
本発明の実施形態として、以下、押出磁場成形により複合磁石を作製する製造装置について、図1及び図2を参照しつつ説明する。ここで、図1は、本発明の実施形態に係る複合磁石の押出成形機(製造装置)10を示した概略構成図であり、図2は、図1の押出成形機の端面図である。
図1に示すように、押出成形機10は、内部にスクリュー12が配置されたシリンダ14と、磁場発生コイル16が取り付けられた磁場配向金型18と、シリンダ14と磁場配向金型18とを連結し、所定形状に絞り込む連結部20とを備えている。
シリンダ14には、複合磁石の材料となる成形材料が供給される。この成形材料は、強磁性磁石粉と熱可塑性エラストマーとを含むものである。そして、シリンダ14内のスクリュー12が回転すると、シリンダ14内の成形材料が、シリンダ14に連通された連結部20を介して、磁場配向金型18に供給される。
磁場配向金型18は、図2に示すように、断面が四角環状である筒体であって、2つのヨーク部19aと2つのスペーサ19bによって構成されている。各ヨーク部19aは、磁場配向金型18の内周面18aの四角形断面の各辺から、外周面18bの四角形断面の各辺まで延びている。また、各スペーサ19bは、非磁性体で構成されており、ヨーク部19aの間に位置してヨーク部19aそれぞれを磁気的に分離している。
そして、磁場配向金型18の周囲には、ヨーク部19aそれぞれと磁気的に接続された2つの磁場発生コイル16が配置されている。この磁場発生コイル16により磁場が発生すると、磁場配向金型18のヨーク部19aを通じて、磁場配向金型18内部の流路に所定の磁場が生じる。それにより、図3に示すように、磁場配向金型18内部を成形材料22が流通する際に、その成形材料22に磁場配向をおこなうことができる。
上述の押出成形機10を用いて複合磁石を押出成形するには、磁場発生コイル16により磁場配向金型18に磁場を印加した状態で、スクリュー12を回転させて、成形材料22を磁場配向金型18の内部を流通させる。それにより、磁場配向金型18内を流通する成形材料22が磁場配向されつつ角柱状の長尺成形体24に成形される。そして、配向を保持するために成形体24を冷却ダイを通過させて冷却固化させ、複合磁石が完成する。
ここで、磁場配向金型18の内周面18aの全面には、図3に示すようにフッ素コート層26が形成されている。フッ素コート層26は、PTFEやFEPなどのフッ素樹脂を成膜(例えば、塗布成膜)して形成される。なお、フッ素樹脂膜は、その他の樹脂膜(二硫化モリブデン膜、グラファイト膜)に比べて、耐久性及び耐摩耗性の点において優れている。
発明者らは、鋭意研究の末、このようにフッ素コート層26を、成形材料22との接触面である磁場配向金型18の内周面18aに形成することで、磁場配向金型18と成形材料22との間の摩擦抵抗が有意に低減されて、押出成形機10によって作製される複合磁石の磁気特性の向上が図られるとの知見を得た。
ここで、上記磁場配向金型18にフッ素コート層26を形成した場合と、フッ素コート層を形成しない場合について、以下のようにして比較実験をおこなった。
本実験では、成形材料として、ストロンチウムフェライト磁石粉と、熱可塑性エラストマー(三井デュポンケミカル社製のEVAFLEX−A710)の混練物(磁石粉含有率:70vol%、92wt%)を用いた。この成形材料の流量をフローテスターを用いて測定したところ、200℃、400kgf/cm2(約39MPa)の条件下において、2597(g/10min)であった。また、その粘度は1352(Pa・s)であった。
そして、実施例の試料(複合磁石)を、上記成形材料を用いて、フッ素コート層としてフッ素樹脂塗膜(S6000、東洋ドライルーブ社製)を磁場配向金型の内周面に形成した上述の押出成形機により作製した。このとき、成形材料と磁場配向金型との摩擦係数(μ)は0.17であった。一方、比較例の試料を、実施例と同様の成形材料を用いて、コーティング処理をしていない従来の磁場配向金型の押出成形機により作製した。このとき、成形材料と磁場配向金型との摩擦係数(μ)は0.21であった。これらから、成形材料と磁場配向金型との摩擦係数(μ)は、0.20より小さいことが好ましいと推定される。
ここで、図4は、横軸:成型圧、縦軸:残留磁束密度として比較実験の結果を示したグラフであり、図5は、横軸:成型圧、縦軸:配向度として比較実験の結果を示したグラフである。なお、図4及び図5のグラフにおいて、実施例のデータは「◇」で示しており、比較例のデータは「◆」で示している。
表1及び図4のグラフから明らかなように、実施例においては、270mT以上の高い残留磁束密度を有する複合磁石が得られたのに対し、比較例においては、それよりも低い残留磁束密度を有する複合磁石しか得られなかった。
また、表1及び図5のグラフから明らかなように、実施例においては、98%以上の高い配向度を有する複合磁石が得られたのに対し、比較例においては、それよりも低い配向度を有する複合磁石しか得られなかった。
以上の結果から、実施例と比較例とではフッ素コート層の有無のみが異なるため、実施例では磁場配向金型にフッ素コート層を形成したことにより、作製される複合磁石の残留磁束密度及び配向度が向上したものと考えられる。これは、成形材料と磁場配向金型と間の摩擦抵抗(及び成型圧)が、フッ素コート層によって効果的に低減され、その結果、磁場配向金型との界面付近の成形材料と中央付近の成形材料との流速差が緩和されたためであると考えられる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、成形材料に含まれる強磁性磁石粉は、フェライト磁石粉に限らず金属磁石粉であってもよい。また、成形材料に含まれる樹脂は、熱可塑性エラストマーに限らず、押出成形に利用可能なその他の樹脂を利用することができる。磁場配向金型の断面形状は、多角形状に限らず、必要に応じて円形や扇形等に変更することができる。
さらに、フッ素コート層は、磁場配向金型の内周面の全面に形成する必要はなく、少なくとも一部に形成するだけでもよい。
10…押出成形機、16…磁場発生コイル、18…磁場配向金型、18a…内周面、26…フッ素コート層、22…成形材料。
Claims (6)
- 複合磁石の材料となる成形材料の押出成形を磁場配向させた状態でおこなう複合磁石の製造装置であって、
内部を流通する前記成形材料に所定の磁場を印加すると共に、前記成形材料との接触面の少なくとも一部にフッ素コート層が形成されている磁場配向金型を備える、複合磁石の製造装置。 - 前記磁場配向金型の前記接触面と前記成形材料との間の摩擦係数が0.15〜0.20である、請求項1に記載の複合磁石の製造装置。
- 複合磁石の材料となる成形材料の押出成形を磁場配向させた状態でおこなう複合磁石の製造方法であって、
内部を流通する前記成形材料に所定の磁場を印加すると共に、前記成形材料との接触面の少なくとも一部にフッ素コート層が形成されている磁場配向金型によって、前記成形材料の成形をおこなう、複合磁石の製造方法。 - 前記磁場配向金型の前記接触面と前記成形材料との間の摩擦係数が0.15〜0.20である、請求項3に記載の複合磁石の製造方法。
- 複合磁石の材料となる成形材料の押出成形を磁場配向させた状態でおこなった複合磁石であって、配向度が98%以上である、複合磁石。
- 前記複合磁石の材料となる成形材料が、強磁性磁石粉と熱可塑性エラストマーの混練物である、請求項5に記載の複合磁石。
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