JP2008241307A - レール高さ検出方法、レール高さ検出機構およびレール高さ変位量測定装置 - Google Patents

レール高さ検出方法、レール高さ検出機構およびレール高さ変位量測定装置 Download PDF

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Abstract

【課題】
差動コイルを用いた電磁式の検出器を利用して検出器からのレール高さを特性グラフを参照して処理をすることで測定するレール高さ検出方法およびレール高さ検出機構を提供することにある。
【解決手段】
この発明は、隣接して配置され相互に逆方向に巻かれた第1、第2の空芯コイルを有しレールの頭部の上部に対応させて軌道検測車に設けられた電磁センサから第1、第2の空芯コイルのそれぞれの検出信号を得て第1、第2の空芯コイルの検出信号の和信号と差信号との比に基づいて電磁センサのレールに対する走行方向に直交する方向のずれ量を得て第1、第2の空芯コイルの検出信号の和信号と電磁センサのレールに対する高さとの関係を示す特性グラフを参照してずれ量に対応する特性グラフに基づいて電磁センサのレールに対する高さを得るものである。
【選択図】 図1

Description

この発明は、レール高さ検出方法、レール高さ検出機構およびレール高さ変位量測定装置に関し、詳しくは、軌道検測車に搭載され、電磁センサを用いて特性グラフを参照することで電磁センサからのレール高さを測定することを可能にしたレール高さ検出方法およびレール高さ変位量測定装置に関する。
鉄道線路を構成する軌道は、列車運転などにより左右のレールが基準位置に対して偏位する。この偏位は軌道狂いとよばれ、(1)通り狂い、(2)高低狂い、(3)軌間狂い、(4)水準狂い、(5)平面性狂いの5項目が規定されている。
多数の営業列車が運行される本線区においては、営業車両とほぼ同じ規格の車両にレール変位量測定装置を搭載して、いわば大型の軌道検測車を構成し、高速度で走行させて各軌道狂いが検測されている。しかし、列車の運行回数が少ない閑散線区や、駅構内の側線などに対しては、大型の軌道検測車は適当でないので、中型もしくは小型の軌道検測車が利用されている。さらに、簡易な検測を行うために低速度走行による手押しの簡易型軌道検測車、牽引型軌道検測車も実用化されている。
これら車両に搭載されるレール変位量測定装置としては、測定車輪やローラをレールに接触させる機械式のものと非接触型の光学的なものとがある。後者のレール変位量測定装置は、投光器と受光器を持つ光学式レール変位量検出器がレールに対峙するように設けられる(特許文献1)。この種のレール変位量検出器は、投光器と受光器の角度調整を容易にして調整の手間を低減することができる。
この光学式レール変位量検出器にあっては、同時にレールとレールとの継目を示す信号も得られるが、それは、継目そのものが検出されるものではなく、レールとレールとを結合する継目接続板が検出されるものである。その検出信号は、継目検出が一部で欠けたり、未検出領域が発生するので、単に測定位置がずれたときの位置超過を検出する参考データとされるだけである。そこで、レール継目の検出について、出願人は、巻き方を相互に逆方向にして両者の検出電圧を同時に得る差動コイルを用いた電磁式のレール継目検出器を出願している(特願2005−64275号)。
また、軌道狂いを測定する差動トランスを用い非接触型の電磁式の水平方向のレール変位量検出器も公知である(特許文献2)。
特開平11−344304号公報 特開昭60−12561号公報
機械接触式のレール変位量検出器は30km/h以下では有効であるが、それ以上の高速検測では、レール高さについての測定精度が低下する問題がある。そのため50km/h程度か、それ以上の中速検測のものでは光学式のものが用いられているが、光学式のものでは、レールの高さ方向の変位量測定の場合に、レールに油や塵埃、雨水があったり、雪などが乗っていると精度が落ちる問題がある。さらに、光学式のものは装置が大型化して高価であるので、50km/hから80km/h程度の中速走行の軌道検測車には不向きである。
そこで、50km/hから80km/h程度の中速走行の軌道検測車のレール変位量測定については非接触型の検出器を採用することが考えられる。しかし、特許文献2の技術は、軌道狂いの測定だけであって、レール高さの測定には向いていない。一方、前記のレール継目検出器ではレール継目を検出する信号を得ているだけである。その理由は、継目以外の場所では検出波形に十分に特徴ある信号が得られないからである。
この発明の目的は、このような従来技術の問題点を解決するものであり、差動コイルを用いた電磁式の検出器を利用して特性グラフを参照することで電磁センサからのレール高さを測定するレール高さ検出方法およびレール高さ検出機構を提供することにある。
この発明の他の目的は、前記のレール高さ検出方法あるいはレール高さ検出機構を用いて検出器からのレール高さを得ることでレール高さ変位量を測定することができるレール高さ変位量測定装置を提供することにある。
この発明は、上記の目的を達成するレール高さ検出方法、レール高さ検出機構あるいはレール高さ測定装置であって、その構成は、隣接して配置され相互に逆方向に巻かれた第1、第2の空芯コイルを有しレールの頭部の上部に対応させて軌道検測車に設けられた電磁センサから第1、第2の空芯コイルのそれぞれの検出信号を得て第1、第2の空芯コイルの検出信号の和信号と差信号との比に基づいて電磁センサのレールに対する走行方向に直交する方向のずれ量を得て第1、第2の空芯コイルの検出信号の和信号と電磁センサのレールに対する高さとの関係を示す特性グラフを参照してずれ量に対応する特性グラフに基づいて電磁センサのレールに対する高さを得るものである。
巻き方を相互に逆方向にして両者の検出電圧を同時に得る差動コイルを用いた電磁式のレール継目検出器(電磁センサ)の検出信号を検討したところ、図5(a)に示す波形部分Dは、レールと電磁センサとの距離に応じて変化する信号部分である。しかし、電磁センサは、上下方向ばかりでなく、軌道検測車の走行状態に応じて走行方向に対して左右の方向にシフトするので、波形部分Dは、レール継目と次のレール継目との間では同じような波形状態にはならない。
なお、図5(a)におけるBLa,BLbは、第1、第2の空芯コイルのそれぞれから得られる検出電圧信号である。
この波形部分Dは、レールと電磁センサとの距離に応じて変化する信号部分であるので、測定データの和(BLa+BLb)の演算すると、レールとの距離に応じて相互に逆方向に増減するので、それらが打ち消し合ってレール継目から次のレール継目までの波形は、レールと電磁センサとの距離に応じて振幅基準レベルが上下に変化する直線的な波形が得られるはずである。
その理由は、測定データの和(BLa+BLb)は、レールとの距離の関係で決定される、あるレール高さでの2個の差動コイルをトータルした信号となるからである。実際には、図5(c)に示すように、多少の凹凸状態の信号が和(BLa+BLb)の振幅基準レベルの信号の上に乗り、各測定区間では上下に多少の変動差がある。
この凹凸状態の変動差は、軌道検測車の走行状態においてレールに対して電磁センサが左右の方向にシフトことで発生すると考え、各左右方向の変位量を固定してレールと電磁センサ距離、すなわちレールの高さを測定したところ図6のような特性グラフを得ることができた。これにより、電磁センサの信号からレールの走行方向に対して左右方向変位量が判れば、レールと電磁センサ距離を測定することができる。
ここで、レール中心からの電磁センサの左右方向変位量について考えてみると、図3に示すような逆方向に向いた差動の三角形のコイルにおける差信号(BLa−BLb)は、レール中心に対する水平方向の位置ずれに応じて一方の検出信号のレベルが増加すると、他方の検出信号のレベルが減少し、しかもレール高さに応じてその差が増減する関係になる。
そのため、左右方向のレール中心からのずれ量xは、基本的には差動電磁センサの差信号(BLa−BLb)と和信号(BLa+BLb)との比=(BLa−BLb)/(BLa+BLb)で決定されると考えられる。
そこで、検討を重ねたところ、レール中心からの左右方向のずれ量xが次の式により算出できることが判った。
x={(BLa−BLb−k1)/((BLa+BLb−k2)}×k3+k4……(1)
ここで、k1,k2は、差動電磁センサの配置と構造上から決定されるオフセット補正値、k3は、アンプの増幅率等で決定される検出回路構成による係数、k4は、差動電磁センサの取付状態等により決定される補正値である。
これにより、レール中心からの電磁センサの左右方向変位量、すなわち、レール中心からのずれ量xを求めて図6のような和信号電圧値(BLa+BLb)に対するセンサ高さの特性グラフからずれ量xに応じた特性グラフを選択してそのときの和信号電圧値(BLa+BLb)からセンサ高さ、言い換えれば、レールと電磁センサの距離を求めることができる。
なお、図6は、縦軸がレールと電磁センサとの距離、すなわち、レールに対するセンサ高さ[mm]であり、横軸が和信号電圧値(BLa+BLb)である。
図6では、ずれ量xの値に対応して代表的なもの、5本のグラフを示してある。レールの中心(変位量0mm)から変位量±18mmと変位量±36mm個のグラフは実質的に重なり、同様な波形となっている。変位量0mmと変位量±18mmとの間、そして変位量±18mmと変位量±36mmとの間にはさらに多数のグラフがあるが、図では割愛してある。
その結果、この発明は、ずれ量xと特性グラフとにより、レールと電磁センサの距離、すなわちレール高さを求めることができる。さらに、レール高さが検出できると、非対称に3個所にこのレール高さを検出する電磁センサを設けて、両端の電磁センサの位置を測定弦として間にある電磁センサの位置でレール高さ変位量測定をすることが可能になる。
図1は、この発明を適用した一実施例の電磁センサを利用したレール高さ測定装置の検出原理の説明図、図2は、センサ高さの測定原理についての説明図、図3は、電磁センサの内部構成のブロック図、図4は、電磁センサの検出回路とデータ処理装置の説明図、図5は、電磁センサの検出波形の説明図、そして図6は、電磁センサのレール高さ検出信号からレール高さ量を算出する特性グラフの説明図である。
図1において、10は、50km/hから80km/h程度の中速検測用の軌道検測車であり、1は、その車体(台車フレーム)であって、左右の各レール11に対応して2つの車輪2,3が前後に設けられている。各車輪2,3の車軸2a,3aは、軸箱・板バネ支持機構4,5を介して直接車体1に結合され、車体1を支持している。
アーム2bは、その片側が車軸2a(その軸受部)に回動可能に軸支され、先端側の端部には補助輪2cが設けられている。車軸2aから補助輪2cまでの長さはLである。アーム3b,アーム3cは、それぞれその片側が車軸3a(その軸受部)にそれぞれ回動可能に軸支され、走行方向の前後に配置されたそれぞれ設けられている。それぞれのアーム3b,アーム3cの先端側の端部には補助輪3d,3eが取付けられている。アーム3b,アーム3cの各補助輪3c,3dまでの長さはLで、アーム2bと等しい。
アーム2b,アーム3b,アーム3cには、それぞれ途中にレール11に対峙するように電磁センサ6a,6b,6cが直接あるいはブラケット(図示せず)を介して固定されている。
なお、図1では、説明の都合上、アームに直接電磁センサ6a,6b,6cが取付られているように図示しているが、実際には各アームと電磁センサとの間にブラケットが設けられ、電磁センサ6a,6b,6cは、このブラケットを介して図示する以上にレール11の頭部に接近して各アームに支持されるようにそれぞれ取付けられる。
車軸2a,3aは、それぞれ軸箱・板バネ支持機構4,5の軸箱に設けられた軸受で支持され、板バネを介して車体1側に固定される。そこで、それぞれのアーム2b,アーム3b,アーム3cの軸支は、車軸2a,2bそのものではなく、軸箱・板バネ支持機構4,5の軸箱あるいは軸受部を介してそれぞれ軸支されることになる。これにより、アーム2b,アーム3b,アーム3cは、レール横断方向には車輪2,3とともに移動するように車軸2a,3aにより拘束され、車体1に対して上下に移動する走行車輪、すなわち車輪2,3を基準にしてレールの高さに応じて電磁センサ6a,6b,6cを上下移動させる回動をする。
車体1には、電磁センサ6a,6b,6cに対応して車体1の裏面に下向きにそれぞれ変位センサ(距離センサ)7a,7b,7cが設けられている。さらに、車体1にはデータ処理装置8が搭載されている。
なお、図では、電磁センサ6a,6b,6cに厚さがあるが、変位センサ7a,7b,7cにより測定される車体1と電磁センサとの距離a,b,cは、電磁センサ6a,6b,6cの厚さが加算されて、実質的に電磁センサ6a,6b,6cの測定値a’,b’,c’に距離a,b,cをそれぞれ加算して車体1とレール11との距離が検出されるようにそれぞれ設定されている。さらに、図では1本のレール11だけを示しているが、これら電磁センサ6a,6b,6cと変位センサ7a,7b,7cとは、それぞれ左右の2本のレール11に対応して設けられている。
図2は、レールに対する電磁センサの距離、すなわち、センサ高さを測定する測定原理を説明するものである。それを車輪3を例に説明すると、その車軸3aとアーム3bと補助輪3d、そしてレール11との間に車輪3の半径Rを底辺とする細長い三角形が形成される。
そこで、補助輪3dがレール11の高さに応じて上下に移動すると、電磁センサ6bのレール11に対する高さが微少量変化する。この変化量をセンサ高さb’として電磁センサ6bが検出する。変位センサ7bによる車体1と電磁センサ6bとの距離をbとすると、車体1からレール11までの距離d2は、d2≒b+b’で算出することができる。
図3に示すように、電磁センサ6(電磁センサ6a,6b,6cを代表して)は、ケース62に内蔵された電磁センサ部61とその検出回路20とからなる。電磁センサ部61は、相互に逆方向に巻かれ、一辺が隣接して配置された巻き形が三角形の2つの空芯コイル61a、61bからなる。これを内蔵するケース62は、合成樹脂等の非磁性材料で構成され、空芯コイル61a、61bの中心Oa,Obをずらせて樹脂充填された完全密閉状態で固定するものである。
検出回路20は、ケース62に電磁センサ部61とともに固定されてもよく、また、データ処理装置8と電磁センサ部61との間に配置されていてもよい。ケース62に樹脂充填固定されるものでは、検出回路20からデータ処理装置8への配線ライン(図示せず)は、車軸2a、3aの軸支されたアーム2b,3b,アーム3c、軸箱・板バネ支持機構4,5を経て車体1に至り、データ処理装置8に接続されている。
空芯コイル61a、61bとは巻き方は、相互に逆方向になっているので、検出信号も相互に逆位相になる。そのため、信号にノイズが乗っても相殺される。さらに、レール11の頭部の幅は、通常、65mm程度であるが、図3に示すように、ケース62により固定される電磁センサ部61の空芯コイル61aの中心Oaは、レール11の頭部の中心線Oに対応して配置され、空芯コイル61bの中心Obは、レール11の頭部の中心線Oより10mm程度外側にずれてレール11に対応するように設置されている。
空芯コイル61bの中心Obを中心線Oから外側にずらせる理由は、レールにはカーブがあるので、このときに軌道検測車10が内側にシフトしたときに中心Obが必要以上に内側にずれることで空芯コイル61a、61bが共に外れて電磁センサ部61の検出信号が得られなくなることを防止したものである。なお、軌道検測車10の外側へのずれは、車輪のフランジで阻止され、大きくずれることはない。
前記したように、レール11の中心Oからの電磁センサ部6の左右方向変位量について考えてみると、図3に示すような逆方向に向いた差動の三角形の空芯コイル61a,空芯コイル61bにおける差信号(BLa−BLb)は、レール中心に対する水平方向の位置ずれに応じて一方の検出信号のレベルが増加すると、他方の検出信号のレベルが減少し、しかもレール高さに応じてその差が増減する関係にある。
なお、巻き方を相互に逆方向にして両者の検出電圧を同時に得て、特に、これらの検出信号の差を採ることで差動動作における差電圧(図5(a)の(BLa−BLb)参照)を得ることができる。
図4は、電磁センサの検出回路とデータ処理装置の説明図であって、検出回路20は、逆方向に巻かれた空芯コイル61a、61bをそれぞれ受ける差動増幅器21a,21bと、空芯コイル61a、61bにバイアス電流を流すバイアス回路22、差動増幅器21a,21bの信号を所定の距離パルスPLに応じてA/D変換をするA/D変換回路(A/D)23a,23bとからなり、A/D23a,23bを介して検出信号をデジタル値に変換してデータ処理装置8に送出するものである。
なお、バイアス回路22は、抵抗R1〜R4と定電圧電源回路22aとからなり、空芯コイル61a、61bにそれぞれバイアス電流を流す回路である。
レールの継目の部分では、継目板とレールとレールの間隙とに応じて空芯コイル61a、61bのインダクタンスが変化し、それに応じた電圧が空芯コイル61a、61bの端子に発生するので差動増幅器21a,21bにそれに応じた検出信号を得ることができる。
距離パルスPLは、車輪3の回転に応じて発生するパルスであって、距離パルス発生回路9により生成され、45mm走行に1個発生する45mm/Pの波長(周期)のパルス信号である。この距離パルス発生回路9は、軸箱・板バネ支持機構5に搭載されている。
データ処理装置8は、MPU81とメモリ82、インタフェース83、そしてこれらを接続するバス84等とを有し、距離パルスPLと、これに対応してA/D変換された差動増幅器21a,21bの信号をインタフェース83を介して測定データとして受けて空芯コイル61a、61bの検出信号の差と和の算出処理算等をする。
図5(a)は、差動増幅器21a,21bのデジタル値をそれぞれグラフ化したものであって、データ処理装置8における測定データである。
BLaが差動増幅器21aの測定データ、BLbが差動増幅器21bの測定データである。長丸で示す部分がレール継目位置の検出信号であり、その前後で波形に大きなピークを持つ凹凸の波があるのは、継目板によるものである。
なお、横軸は、距離パルスPLによるサンプル数、縦軸は電圧[mV]である。BLbの波形が小さいのは、空芯コイル61bがレール中心Oより10mmずれているからである。また、横軸の距離パルスPLによるサンプル数は、軌道検測車10の走行距離に対応している。
データ処理装置8において、これら測定データの差信号電圧(BLa−BLb)の演算した結果が図5(b)のグラフBLa−BLbである。これにより、レール継目位置の検出信号DLは、大きな波形の検出信号として得ることができる。しかし、軌道検測車2は、上下左右に揺れて走行するので、それによる検出波形の変動も大きい。
DLがレール継目位置検出信号であるが、ここでは、レール継目位置検出信号DLではなく、それ以外の波形部分Dに注目する。
図5(a)の波形部分Dは、レール11と電磁センサ部6(空芯コイル61a、61b)との距離に応じて変化する信号部分である。空芯コイル61a、61bは、レールとの距離に応じて相互に逆方向に増減するので、測定データの和(BLa+BLb)の演算すると、空芯コイル61a、61bのトータル信号が得られ、前記したように、軌道検測車が走行すると、レールに対する電磁センサの左右の方向にシフトするので、図5(c)に示すように、多少の凹凸状態の信号が和(BLa+BLb)の振幅基準レベルの信号の上に乗り、各測定区間では上下に多少の変動差がある。
そこで、あるサンプルレールに対してレール中心からの各左右方向のずれ量xを変数として軌道検測車10と同じ配置と同じ条件で電磁センサ部6を高さ方向に移動して、レール中心から左右方向に移動位置に対応してサンプルレールと電磁センサ部6との距離、すなわちレールの高さとの関係を測定したところ、図6のような特性グラフを得ることができた。
ここでのレール中心からの左右方向のずれ量xは、基本的には差動電磁センサ部6の差信号(BLa−BLb)と和信号(BLa+BLb)との比=(BLa−BLb)/(BLa+BLb)で決定されるはずであるが、前記したように、変数であるずれ量xと測定値比=(BLa−BLb)/(BLa+BLb)とを利用してこれらの間を整合させたところ、前記した式(1)が得られた。
x={(BLa−BLb−k1)/((BLa+BLb−k2)}×k3+k4……(1)
ここで、k1,k2は、差動電磁センサの配置と構造上から決定されるオフセット補正値、k3は、アンプの増幅率等で決定される検出回路構成による係数、k4は、差動電磁センサの取付状態等により決定される補正値である。
そこで、式(1)と図6の特性グラフを利用することで、差動電磁センサ部6からの検出信号によりレール11に対するセンサ高さ[mm]を測定することが可能になる。
なお、差動電磁センサ部6の構造と検出回路20の構成により前記の補正値k1〜k4は、実測データとの関係あるいはサンプルレールの測定によりそれぞれに適宜決定することができる。
図4に戻り、メモリ82には、電磁センサの差信号・和信号算出プログラム82aと、電磁センサのレールずれ量算出プログラム82b、電磁センサのレール高さ算出プログラム82c、レール高さ変位量算出プログラム82d等が格納され、図6の各特性グラフをテーブルとして記憶したレール高さ算出テーブル(特性グラフテーブル)82e、パラメータ領域82f、作業領域82gとが設けられている。
なお、パラメータ領域82fには、式(1)のx={(BLa−BLb−k1)/((BLa+BLb−k2)}×k3+k4が記憶され、さらに各係数k1〜k4が記憶されている。
電磁センサの差信号・和信号算出プログラム82aは、これがコールされたときにMPU81に実行され、MPU81は、電磁センサ部6の各コイルの差信号(BLa−BLb)と和信号(BLa+BLb)とをそれぞれに算出してメモリ82の作業領域82gに記憶し、電磁センサのレールずれ量算出プログラム82bをコールする。
電磁センサのレールずれ量算出プログラム82bは、これがコールされたときにMPU81に実行され、MPU81は、前記により算出された差信号(BLa−BLb)と和信号(BLa+BLb)を参照して前記式(1)に従ってレール11の中心Oからのずれ量xを求め、電磁センサのレール高さ算出プログラム82cをコールする。
電磁センサのレール高さ算出プログラム82cは、これがコールされたときにMPU81に実行され、ずれ量xからxに対応するか、図6における一番近い特性グラフをレール高さ算出テーブル82eにおいて参照して和信号(BLa+BLb)の電圧値からセンサ高さh[mm]を得る。なお、縦軸の高さh=0は、車体1が上下移動していないときのレール11に対する基準高さである。
レール高さ変位量算出プログラム82dは、これがコールされたときにMPU81に実行され、MPU81は、図1の電磁センサ部6a,6b,6cと変位センサ7a,7b,7cとについて左右のレール対応にメモリ82の作業領域82gに測定データBLa,BLbと車体1と電磁センサ部6との距離a,b,cを記憶する。
次に、電磁センサ部6aの測定データを選択して電磁センサの差信号・和信号算出プログラム82aをコールして実行し、電磁センサ部6aに対応してセンサ高さa’を得て作業領域82gに記憶し、次に電磁センサ部6bの測定データを選択して同様にして電磁センサ部6bに対応してセンサ高さb’を得て作業領域82gに記憶し、同様にして電磁センサ部6cに対応してセンサ高さc’を得て作業領域82gに記憶する。
そして、レール高さ変位量Vを算出する。これは、図1の電磁センサ部6a,6b,6cと変位センサ7a,7b,7cとにより得た前記の検出値a,a’,b,b’,c,c’により、電磁センサ部6a,6b,6cの位置、3点における車体1からレール11までの距離(a+a’),(c+c’),(b+b)を算出し、中間位置の電磁センサ部6bの位置におけるレール高さの相対的変位量Vを次の(2)式より演算して算出して、メモリの所定の領域に現在の走行距離に対応して記録する。
なお、ここで算出されたレール高さ変位量V(相対的変位量)は他の軌道測定にも利用される。
V=K1(a+a’)+K2(c+c’)−(b+b’)……(2)
ただし、K1,K2は、弦nに対する比率であり、K1=n1/n,K2=n2/nである。
図1において、n[m]がレール11に対する測定弦の長さであり、電磁センサ部6aと電磁センサ部6cとの距離,n1[m]が電磁センサ部6aと電磁センサ部6b間の距離、n2[m]が電磁センサ部6bと電磁センサ部6c間の距離である。
以上説明してきたが、実施例では、図3に示すように、電磁センサ部6のコイル形状は、相互に逆方向に巻かれ、一辺が隣接して配置された巻き形が三角形の2つの空芯コイルとしているが、差信号(BLa−BLb)がレール中心に対する水平方向の位置ずれに応じて一方の検出信号のレベルが増加すると、他方の検出信号のレベルが減少し、しかもレール高さに応じてその差が増減する関係になるコイルの形状と配置は種々のものが考えられるので、三角形の形状に限定されるものではない。このような差動形コイルは、過去に各種のものが考えられている。
また、実施例の図2では、電磁センサを設けたアームは、車軸あるいはその軸受に結合して補助輪が上下動する構造を採ることで走行方向に直交する方向の移動に対してアームは、車輪とともに移動するように拘束され、走行車輪を基準にしてレールの高さに応じて上下に回動するようになっているが、走行車輪を基準としてレールに対して電磁センサを上下動させるアームと補助輪との構造は、アームを軸箱に回動可能に枢支してもよく、軸支あるいは枢支の形態は、各種のものが考えられ、特に、図2のものに限定されるものではない。
図1は、この発明を適用した一実施例の電磁センサを利用したレール高さ測定装置の検出原理の説明図である。 図2は、センサ高さの測定原理についての説明図である。 図3は、電磁センサの内部構成のブロック図である。 図4は、電磁センサの検出回路とデータ処理装置の説明図である。 図5は、電磁センサの検出波形の説明図である。 図6は、電磁センサのレール高さ検出信号からレール高さ量を算出する特性グラフの説明図である。
符号の説明
1…車体(台車フレーム)、2,3…車輪、
2a,3a…車軸、2b,3b,3c…アーム、
2c,3d,3e…補助輪、4,5…軸箱・板バネ支持機構、
6a,6b,6c…電磁センサ、
7a,7b,7c…変位センサ、
8…データ処理装置、81…MPU、
82…メモリ、83…インタフェース、84…バス、
9…距離パルス発生回路、10…軌道検測車、
11…レール、
82a…電磁センサの差信号・和信号算出プログラム、
82b…電磁センサのレールずれ量算出プログラム、
82c…電磁センサのレール高さ算出プログラム、
82d…レール高さ変位量算出プログラム、
82e…レール高さ算出テーブル、
82f…パラメータ領域、82g…作業領域。

Claims (10)

  1. 軌道検測車を走行させてその走行状態でレール高さを検出するレール高さ検出方法において、
    隣接して配置され相互に逆方向に巻かれた第1、第2の空芯コイルを有し前記レールの頭部の上部に対応させて前記軌道検測車に設けられた電磁センサから前記第1、第2の空芯コイルのそれぞれの検出信号を得て前記第1、第2の空芯コイルの検出信号の和信号と差信号との比に基づいて前記電磁センサのレールに対する走行方向に直交する方向のずれ量を得て前記第1、第2の空芯コイルの検出信号の和信号と前記電磁センサのレールに対する高さとの関係を示す特性グラフを参照して前記ずれ量に対応する前記特性グラフに基づいて前記電磁センサのレールに対する高さを得るレール高さ検出方法。
  2. 前記第1、第2の空芯コイルは、前記レールの中心に対する水平方向の位置ずれに応じて前記第1、第2の空芯コイルの一方の検出信号のレベルが増加すると、他方の検出信号のレベルが減少し、しかもレール高さに応じてその差が増減するコイル形状で前記電磁センサに配置されている請求項1記載のレール高さ検出方法。
  3. 前記ずれ量は、次の(1)式よりxとして得る請求項1記載のレール高さ検出方法。
    x={(BLa−BLb−k1)/((BLa+BLb−k2)}×k3+k4……(1)
    ただし、BLaは第1の空芯コイルの検出信号の電圧値、BLbは第2の空芯コイルの検出信号の電圧値、(BLa−BLb−k1)は前記差信号、(BLa+BLb−k2)は前記和信号であり、k1,k2,k3,k4は、それぞれ補正値である。
  4. 軌道検測車を走行させてその走行状態でレール高さを検出するレール高さ検出機構において、
    前記軌道検測車の車軸に回動可能に軸支され先端側にレールに乗る補助輪を有するアームと、
    相互に逆方向に巻かれた第1、第2の空芯コイルを有し前記アームの所定の位置に固定されあるいは支持され前記レールの頭部の上部に対応させて配置された電磁センサとを備え、
    前記第1、第2の空芯コイルのそれぞれの検出信号を得て前記第1、第2の空芯コイルの検出信号の和信号と差信号との比に基づいて前記電磁センサの前記レールに対する走行方向に直交する方向のずれ量を得て前記第1、第2の空芯コイルの検出信号の和信号と前記電磁センサの前記レールに対する高さとの関係を示す特性グラフを参照して前記ずれ量に対応する前記特性グラフに基づいて前記電磁センサの前記レールに対する高さを検出するレール高さ検出機構。
  5. 前記第1、第2の空芯コイルは、前記レールの中心に対する水平方向の位置ずれに応じて前記第1、第2の空芯コイルの一方の検出信号のレベルが増加すると、他方の検出信号のレベルが減少し、しかもレール高さに応じてその差が増減するコイル形状で前記電磁センサに配置されている請求項4記載のレール高さ検出機構。
  6. 前記ずれ量は、次の(1)式よりxとして得る請求項4記載のレール高さ検出機構。
    x={(BLa−BLb−k1)/((BLa+BLb−k2)}×k3+k4……(1)
    ただし、BLaは第1の空芯コイルの検出信号の電圧値、BLbは第2の空芯コイルの検出信号の電圧値、(BLa−BLb−k1)は前記差信号、(BLa+BLb−k2)は前記和信号であり、k1,k2,k3,k4は、それぞれ補正値である。
  7. 請求項4乃至6のうちのいずれか1項記載のレール高さ検出機構を有するレール高さ変位量測定装置。
  8. 軌道検測車を走行させてその走行状態でレール高さ変位量を測定するレール高さ変位量測定装置において、
    前記軌道検測車の車軸に回動可能に軸支され先端側にレールに乗る補助輪を有する第1,第2および第3のアームと、
    相互に逆方向に巻かれた第1、第2の空芯コイルを有し前記第1,第2および第3のアームの所定の位置にそれぞれ固定され前記レールの頭部の上部に対応させてそれぞれ配置された第1,第2および第3の電磁センサと、
    前記第1,第2および第3の電磁センサにそれぞれ対応させて前記軌道検測車の車体に設けられ前記車体と前記電磁センサとの距離を測定する第1,第2および第3の距離センサと、
    前記第1,第2および第3の電磁センサからそれぞれの前記第1、第2の空芯コイルのそれぞれの検出信号と前記第1,第2および第3の距離センサのそれぞれの距離測定値の信号とを受けるデータ処理装置とを備え、
    前記データ処理装置は、前記第1、第2の空芯コイルのそれぞれの検出信号を得て前記第1、第2の空芯コイルの検出信号の和信号と差信号との比に基づいて前記第1,第2および第3の電磁センサのそれぞれにおいて前記レールに対する走行方向に直交する方向のずれ量をそれぞれ得て前記第1、第2の空芯コイルの検出信号の和信号と前記電磁センサの前記レールに対する高さとの関係を示す特性グラフを参照して前記ずれ量に対応する前記特性グラフに基づいて前記第1,第2および第3の電磁センサの前記レールに対する高さをそれぞれに検出し、これらと前記第1,第2および第3の距離センサのそれぞれの前記距離測定値とに基づいて前記第1,第2および第3の電磁センサの位置の3点における前記車体から前記レールまでので距離を求めてレール高さ変位量を算出するレール高さ変位量測定装置。
  9. 前記第1、第2の空芯コイルは、前記レールの中心に対する水平方向の位置ずれに応じて前記第1、第2の空芯コイルの一方の検出信号のレベルが増加すると、他方の検出信号のレベルが減少し、しかもレール高さに応じてその差が増減するコイル形状で前記電磁センサに配置されている請求項8記載のレール高さ変位測定装置。
  10. 前記ずれ量は、次の(1)式よりxとして得、前記レール高さ変位量は、次の(2)式よりVとして得る請求項8記載のレール高さ変位量測定装置。
    x={(BLa−BLb−k1)/((BLa+BLb−k2)}×k3+k4……(1)
    V=K1(a+a’)+K2(c+c’)−(b+b)……(2)
    ただし、(1)式におけるBLaは第1の空芯コイルの検出信号の電圧値、BLbは第2の空芯コイルの検出信号の電圧値、(BLa−BLb−k1)は前記差信号、(BLa+BLb−k2)は前記和信号であり、k1,k2,k3,k4は、それぞれ補正値である。
    (2)式におけるK1=n1/n,K2=n2/n、nは前記第1,第2および第3の電磁センサのうち両端に前記第1の電磁センサと前記第3の電磁センサが配置されているとすると、前記第1の電磁センサと前記第3の電磁センサとの距離、n1が第1の電磁センサと第2の電磁センサとの距離、n2が前記第2の電磁センサと前記第3の電磁センサとの距離である。
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