JP2008239882A - 抗菌性フッ素樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明は、優れた抗菌性を有する抗菌性フッ素樹脂組成物、及びそれから得られる抗菌部材を提供する。
【解決手段】 フッ素樹脂エマルジョンと抗菌性微粒子のコロイダル溶液とを攪拌下に混合した水性分散液を、0℃以下の温度で凍結するか、電解物質を加えて混合液のイオン強度またはpHを変化させるか、せん断力をかけることで得られる凝集体を水性の溶液から分離・乾燥して得られる抗菌性フッ素樹脂組成物であって、該抗菌性微粒子を含有しないフッ素樹脂組成物の生菌数の平均値(B)と該抗菌性微粒子を含有する抗菌性フッ素樹脂組成物の生菌数の平均値(C)の比である抗菌活性値(log(B/C))が、2.0以上である抗菌性フッ素樹脂組成物、及びそれから得られる抗菌部材。
【選択図】 なし
【解決手段】 フッ素樹脂エマルジョンと抗菌性微粒子のコロイダル溶液とを攪拌下に混合した水性分散液を、0℃以下の温度で凍結するか、電解物質を加えて混合液のイオン強度またはpHを変化させるか、せん断力をかけることで得られる凝集体を水性の溶液から分離・乾燥して得られる抗菌性フッ素樹脂組成物であって、該抗菌性微粒子を含有しないフッ素樹脂組成物の生菌数の平均値(B)と該抗菌性微粒子を含有する抗菌性フッ素樹脂組成物の生菌数の平均値(C)の比である抗菌活性値(log(B/C))が、2.0以上である抗菌性フッ素樹脂組成物、及びそれから得られる抗菌部材。
【選択図】 なし
Description
本発明は、抗菌性微粒子がフッ素樹脂中にナノレベルに均一に分散されることにより、フッ素樹脂の物性及び成形性を維持し、且つ抗菌性を有する抗菌性フッ素樹脂組成物及びその抗菌部材に関するものである。
従来、様々な分野においてより高い性能を有する樹脂組成物が必要とされており、樹脂に充填材を分散させることで機械的強度、寸法安定性、圧縮クリープ特性、溶融成型性などを改善することが行われている。
ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEという)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(以下、PFAという)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(以下、FEPという)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(以下、ETFEという)などのフッ素樹脂は、非粘着性、耐薬品性、耐熱性、耐候性に優れているため酸、アルカリなどの薬液、溶剤、塗料などの移送用の配管、薬液貯蔵容器やタンクなどの化学工業製造用品、またはフィルムやシートとしてキッチン壁パネルとガス レンジフードなどの台所用品等にも広く利用されている。
近年、医療用品、食品製造機械、調理器具、台所用品、電気製品、水回り用品、工業用品、建材用品等のように衛生面で注意を払う必要がある分野において、フッ素樹脂にも抗菌性が要求されるが、フッ素樹脂は抗菌性を有しない。
抗菌性を発現する樹脂またはフッ素樹脂組成物としては、(1)金属イオンまたは銀化合物などの抗菌物質をゼオライトなどの無機多孔質粉末に担持させた抗菌剤を樹脂と溶融混合して抗菌性樹脂組成物を作製するか樹脂水性分散液と混合して塗布して抗菌性樹脂の膜を作製する方法、(2)溶剤に可溶な樹脂と金属塩と還元剤を溶剤に溶解させて還元反応により金属超微粒子を作製し、その後溶剤を除去させたのち、金属超微粒子が分散した抗菌性樹脂を作製する方法、(3)水溶性樹脂及び/又は水中分散性樹脂を含む水系媒体中に金属微粒子及び/又は金属酸化物微粒子を均一に分散させた水性液を作製し、得られた水性液を乾燥して、塗膜や固形物にする方法、(4)抗菌剤を直接樹脂と溶融混合する方法が挙げられる。
第1の方法としては、例えば、特開平6−287504には銀イオンを担持させたゼオライトをフッ素樹脂水性分散液と一緒に攪拌した混合液をスプレー塗装して抗菌性フッ素樹脂塗膜が提案されている。しかし、この方法では、厚み数十μmの塗膜しか得られず、通常の圧縮成形、押出成形、射出成形品を得ることは出来ない。また、実施例では、銀イオンを担持させたゼオライト含量が2〜4重量%であるため、塗膜は不透明になる。更に、スプレー塗装後の乾燥工程で、フッ素樹脂水性分散液中の樹脂一次粒子との親和性に乏しいゼオライト粒子同士の凝集が起こる可能性があるが、乾燥・焼成後のゼオライトの分散状態についての記述はない。
第2の方法としては、例えば、特開平6−293611には、溶剤に可溶な樹脂と銀塩と還元剤を溶剤に溶解させて還元反応により銀微粒子を作製した後、溶剤を蒸発することで、銀微粒子が分散した抗菌性樹脂材料が記載されている。しかし、この方法では、樹脂分散液体の中で銀塩の還元反応を行い、還元反応後に未反応物や副生成物が完全に除去出来ないため、樹脂中に残って不純物になる問題がある。また、有機溶剤に可溶な一般樹脂とは異なって、フッ素樹脂、特にパーフルオロフッ素樹脂は溶剤に溶けないため、溶剤の中で銀イオンの還元反応により得られる銀微粒子をフッ素樹脂中に均一に分散させた樹脂組成物を作製することは極めて難しい。
第3の方法としては、例えば、特開平8−141388には、水溶性樹脂及び/又は水中分散性樹脂を含む水系媒体に金属化合物を加え相当する金属微粒子及び/又は金属化合物微粒子を析出させた水性液を作製し、得られた水性液を乾燥して、抗菌性途膜や固形組成物にする方法が提案されている。この方法では、水性樹脂分散液中に銀塩と還元剤を入れると、水性樹脂分散液中の樹脂の粒子表面が銀微粒子析出の核となり、多数の核の上で独立した銀微粒子の成長が進み、結果として、銀微粒子が均質に分散された抗菌性途膜や固形組成物が得られる。
しかし、この方法では水性樹脂分散液に硝酸塩などの金属化合物溶液を加えることが必要であり、銀微粒子や金属化合物微粒子の分散液を水性樹脂分散液に加えても分散性が良い抗菌性樹脂組成物は得られない。また、この方法は銀塩として毒性の高い硝酸銀を使用するため人体に害を与える恐れがあり、硝酸銀の変色により製品の品質を低下させる問題がある。
更に、この方法では樹脂分散液体の中で銀塩の還元反応を行うため、還元反応後に未反応物や副生成物を完全に除去出来ず、樹脂中に残存して不純物になる問題があることに加え、厚み数十μmの塗膜しか得られず、通常の圧縮成形、押出成形、射出成形品を得ることは出来ない。また、特開平8−141388の比較例の様に、還元反応により得られた銀微粒子の分散液とフッ素樹脂エルマジョンを直接混合して、銀微粒子とフッ素樹脂との分散構造を固定しないまま乾燥した場合には、銀凝集物が局所的に存在しておりフッ素樹脂中に均一に分散されないため、得られたフッ素樹脂組成物の抗菌性が悪いと記載されている。
第4の方法では、粒径が1μm以下のナノサイズの金属微粒子は、表面積が大きく抗菌効果には優れるが、高い表面エネルギーを持ち、粒径が小さくなる程不安定になり凝集或いは微粒子同士の表面反応などが起きるため、これらの金属ナノ粒子を直接樹脂と溶融混合して均一に樹脂中に分散させることは極めて難しい。
そのため、第1の方法と同様に、銀イオン又は銀微粒子を粒径が1μm以上のゼオライトに担持させてから、溶融混合方法でゼオライトを樹脂中に分散させる必要がある。また、フッ素樹脂は疎水性が非常に強い樹脂であるため、ゼオライト担持抗菌剤を溶融混合でフッ素樹脂中に均一に分散されることは通常の樹脂に比べて更に困難である。
本発明は、従来のマイクロレベルのゼオライト等の無機系多孔体微粒子に、抗菌性の金属を担持させた抗菌性樹脂組成物とは異なり、抗菌性微粒子を使用し、抗菌性微粒子をフッ素樹脂中にナノレベルに均一に分散させ、その表面積を大幅に増大させることにより、抗菌性微粒子の微量な添加で優れた抗菌性を有する、抗菌性フッ素樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明はまた、該抗菌性フッ素樹脂組成物を用いた、フッ素樹脂の成形性及び透明性を維持しながら、抗菌性に優れた抗菌部材を提供することを目的とする。
本発明はまた、該抗菌性フッ素樹脂組成物を用いた、フッ素樹脂の成形性及び透明性を維持しながら、抗菌性に優れた抗菌部材を提供することを目的とする。
本発明は、優れた抗菌性を有する抗菌性フッ素樹脂組成物を提供することを目的とする。
フッ素樹脂エマルジョンと、金、銀、亜鉛、銅、チタンから選ばれる少なくとも1つの抗菌性微粒子のコロイダル溶液とを攪拌下に混合した水性分散液を、0℃以下の温度で凍結するか、電解物質を加えて混合液のイオン強度またはpHを変化させるか、せん断力をかけることによって得られる混合凝集体を水性の溶液から分離乾燥して得られる抗菌性フッ素樹脂組成物であって、該抗菌性微粒子を含有しないフッ素樹脂組成物の生菌数の平均値(B)と該抗菌性微粒子を含有する抗菌性フッ素樹脂組成物の生菌数の平均値(C)の比である抗菌活性値(log(B/C))が、2.0以上である抗菌性フッ素樹脂組成物は、本発明の好ましい態様である。
フッ素樹脂エマルジョンと、金、銀、亜鉛、銅、チタンから選ばれる少なくとも1つの抗菌性微粒子のコロイダル溶液とを攪拌下に混合した水性分散液を、0℃以下の温度で凍結するか、電解物質を加えて混合液のイオン強度またはpHを変化させるか、せん断力をかけることによって得られる混合凝集体を水性の溶液から分離乾燥して得られる抗菌性フッ素樹脂組成物であって、該抗菌性微粒子を含有しないフッ素樹脂組成物の生菌数の平均値(B)と該抗菌性微粒子を含有する抗菌性フッ素樹脂組成物の生菌数の平均値(C)の比である抗菌活性値(log(B/C))が、2.0以上である抗菌性フッ素樹脂組成物は、本発明の好ましい態様である。
前記フッ素樹脂エマルジョンが、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニルエ−テル)、ビニリデンフルオライド及びビニルフルオライドから選ばれるモノマーの重合体又は共重合体である抗菌性フッ素樹脂組成物は、本発明の好ましい態様である。
前記フッ素樹脂エマルジョンが、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニルエ−テル)、ビニリデンフルオライド及びビニルフルオライドから選ばれる少なくとも1つのモノマーと、エチレン又はプロピレンとの共重合体である抗菌性フッ素樹脂組成物は、本発明の好ましい態様である。
抗菌性微粒子の含有量が、抗菌性フッ素樹組成物に対し0.001〜5重量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の抗菌性フッ素樹脂組成物は、本発明の好ましい態様である。
抗菌性微粒子の平均粒径が、400nm以下である抗菌性フッ素樹脂組成物は、本発明の好ましい態様である。
抗菌性フッ素樹脂組成物の厚さ1mmのシートの全光線透過率が50%以上である、抗菌性フッ素樹脂組成物本発明の好ましい態様である。
抗菌性フッ素樹脂組成物を溶融押出しして得られるペレットは、本発明の好ましい態様である。
抗菌性フッ素樹脂組成物または該組成物からなるペレットを、圧縮成形、押出成形、トランスファー成形、ブロー成形、射出成形、回転成形またはライニング成形のいずれかで成形して得られる抗菌性部材は、本発明の好ましい態様である。
抗菌性部材が、容器、チューブ、シート、またはフィルムである抗菌部材は、本発明の好ましい態様である。
本発明により、優れた抗菌性を有する抗菌性フッ素樹脂組成物、及びフッ素樹脂の成形性及び透明性を維持しながら、優れた抗菌性を有する抗菌部材を得ることが出来る。
本発明は、優れた抗菌性を有する抗菌性フッ素樹脂組成物、及び該抗菌性フッ素樹脂組成物からなる抗菌部材を提供する。
本発明において用いられフッ素樹脂エマルジョンは、すでに広く知られているものであって、例えば、含フッ素樹脂エマルジョンとしては、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)、ビニリデンフルオライド(VdF)及びビニルフルオライド(VF)から選ばれるモノマーの重合体又は共重合体、あるいはこれらモノマーとエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチン、ヘキセン等の2重結合を有するモノマーやアセチレン、プロピン等の3重結合を有するモノマーとの共重合体などを挙げることができる。
具体的な例としては、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEという)、TFEPAVE共重合体(以下、PFAという)、TFE/HFP共重合体(以下、FEPという)、TFE/HFP/PAVE共重合体(EPE)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエテレン・エチレン共重合体(ECTFE)、TFE/VdF共重合体、TFE/VF共重合体、TFE/HFP/VF共重合体、HFP/VDF共重合体、VdF/CTFE共重合体、TFE/VdF/CTFE共重合体、TFE/HFP/VDF共重合体、などを挙げることができる。
この内、テトラフルオロエチレンとパ−フルオロ(アルキルビニルエーテル)との共重合体においては、パ−フルオロ(アルキルビニルエーテル)のアルキル基が炭素数1〜5、特に1〜3であることが好ましい。これら重合体及び共重合体粒子の分散液は、通常乳化重合によって製造されることが好ましい。
本発明では、樹脂一次粒子が界面活性剤に取り囲まれ溶媒中に安定に分散したフッ素樹脂エマルジョンと抗菌性微粒子のコロイダル溶液とを攪拌して、樹脂一次粒子と抗菌性微粒子を均一に混合した水性分散液を凝集することで樹脂一次粒子と抗菌性微粒子の均一混合状態を固定させた後、得られた混合凝集体を水性の溶液から分離・乾燥することで抗菌性微粒子を樹脂中にナノレベルに均一に分散させたフッ素樹脂組成物を得ることが出来る。
従って、本発明では混合溶液の凝集・乾燥によって樹脂一次粒子と抗菌性微粒子が均一に分散されている異種粒子の混合凝集体の乾燥粉末が得られるので、使用するフッ素樹脂の融点や溶融混合特性などに関係なく、乳化重合で得られるあらゆるフッ素樹脂エマルジョンを使用することができる。そのため、フッ素樹脂の溶融粘度、或は分子量には特に制限がなく、使用目的によって適宜好適な範囲を選択することができる。例えば、射出成形の目的では、メルトフローレート(MFR)で表わすと7〜40g/10分程度が好ましい。
フッ素樹脂エマルジョン中の樹脂一次粒子の粒子径としては、使用するコロイド溶液中の抗菌性微粒子の平均粒子径にもよるが、例えば50〜500nm、好ましくは70〜300nmである。
本発明の抗菌性微粒子としては、抗菌性を有する金、銀、亜鉛、銅、コバルト、チタン、タングステン、錫、ビスマス、クロム、ニッケル、タリウムから選ばれる少なくとも1種の金属または金属化合物が好ましい。
これらの抗菌性微粒子は、安定なコロイダル溶液として用いることが好ましく、金、銀、ハロゲン化銀、酸化銀、銅、亜酸化銅、酸化第一銅、亜鉛、酸化亜鉛(ZnO)、錫、ビスマス、クロム、酸化チタン(TiO2)のゾルがより好ましい。更に好ましくは、金、銀、亜鉛、銅、チタンのゾルである。また、上記ゾルは、目的に応じて単独または組み合わせで使用しても良い。
フッ素樹脂エマルジョン中の樹脂固形成分に対する、抗菌性微粒子ゾル中の抗菌性微粒子の割合は、抗菌性フッ素樹脂組成物の用途にもよるが、0.0001〜10重量%、好ましくは0.001〜5重量%、より好ましくは0.005〜1重量%である。
本発明の抗菌性微粒子のゾルは、貯蔵安定性の目的で各種電解質や有機系添加剤などによって溶液状態で安定化されたものを使用することも可能である。例えば、コロイダル銀ゾルでは、負に帯電した銀ナノ粒子を水中に分散させたコロイド溶液であり、粒子の表面には水溶性有機保護層があるので安定化されている。
一般に、樹脂中に分散されている充填材の粒子径が可視光の波長より大きくなると不透明になる傾向がある。また、粒子径が10nm以下になると無機微粒子同士の凝集が起こり、ナノレベルに均一に樹脂中に分散出来ない傾向がある。
抗菌性フッ素樹脂組成物の透明性を維持し、抗菌性微粒子をナノレベルに均一にフッ素樹脂中に分散するためには、抗菌性微粒子ゾルにおける抗菌性微粒子の平均粒子径は、10nm〜400nm、好ましくは15nm〜350nm、更に好ましくは20〜350nmである。
抗菌性フッ素樹脂組成物の透明性を維持し、抗菌性微粒子をナノレベルに均一にフッ素樹脂中に分散するためには、抗菌性微粒子ゾルにおける抗菌性微粒子の平均粒子径は、10nm〜400nm、好ましくは15nm〜350nm、更に好ましくは20〜350nmである。
本発明では、樹脂一次粒子が界面活性剤(以下、乳化剤ということがある)に取り囲まれ溶媒中に安定に分散したフッ素樹脂エマルジョン(以下、ラテックスということがある)と、抗菌性微粒子のコロイダル溶液(以下、ゾルということがある)とを攪拌下に混合し、樹脂一次粒子と抗菌性微粒子とを均一に混合した水性分散液を凝集することにより、樹脂一次粒子と抗菌性微粒子の均一混合状態を固定させ(以下、この過程を凝集ということがある)得られた混合凝集体を、水性の溶液から分離・乾燥して、抗菌性微粒子がフッ素樹脂中にナノレベルに均一に分散された抗菌性フッ素樹脂組成物を得ることが出来る。
樹脂一次粒子と抗菌性微粒子を均一に混合した水性分散液の凝集法としては、攪拌装置による強いせん断力で樹脂エマルジョンと抗菌性微粒子ゾル混合液を攪拌してフッ素樹脂エマルジョンの中の界面活性剤のミセル構造を破壊して凝集する方法(物理的凝集)、樹脂エマルジョンと抗菌性微粒子ゾル混合液に電解物質を入れてイオン強度またはpHを変化させることで樹脂エマルジョンまたは抗菌性微粒子コロイドの安定性を急に低下させて凝集する方法(化学的凝集)、樹脂エマルジョンと抗菌性微粒子ゾル混合液を凍結して発生する氷晶の成長によって氷晶間でコロイド粒子を圧着させて凝集する方法(凍結凝集)などを挙げることが出来る。
中でも、フッ素樹脂エマルジョンと抗菌性微粒子ゾルの混合液に電解物質または無機塩などを入れて樹脂エマルジョンまたは抗菌性微粒子コロイド溶液の安定性を急に低下させて、一気に樹脂一次粒子と抗菌性微粒子の均一混合状態を固定して異種粒子が均一に分散された混合凝集体を得る化学的凝集方法が好ましい。
フッ素樹脂エマルジョンのフッ素樹脂一次粒子を化学的に凝集させる目的として使用される電解物質としては、化学的に凝集する前の混合液中の樹脂一次粒子または抗菌性微粒子の種類及びその割合にもよるが、例えば、水に可溶なHCl,H2SO4,HNO3,H3PO4,Na2SO4,MgCl2,CaCl2,ギ酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸アンモニウムなどの無機または有機の化合物を例示することが出来る。これらの中では、後の混合凝集体の乾燥工程で除去可能な化合物、例えばHCl,HNO3,(NH4)2CO3などを使用するのが好ましい。
また、上記電解物質以外にもハロゲン水素酸、燐酸、硫酸、モリブデン酸、硝酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウムの塩など、好ましくは、臭化カリウム、硝酸カリウム、ヨウ化カリウム(KI)、モリブデン酸アンモニウム、リン酸ニ水素ナトリウム、臭化アンモニウム(NH4Br)、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化第2銅、硝酸カルシウムなどの無機塩を単独または組み合わせで使用することもできる。
これらの電解物質は、電解物質の種類、フッ素樹脂エマルジョンと抗菌性微粒子ゾルの固形分濃度にもよるが、フッ素樹脂の重量に対して0.001〜5重量%、特に0.05〜1重量%の割合で使用することが好ましい。また、これらの電解物質は、水溶液の形でフッ素樹脂エマルジョンと抗菌性微粒子ゾル混合液に添加するのが好ましい。電解物質の使用量が少なすぎる場合には、部分的にゆっくり凝集が起こるため、全体的に一気に樹脂一次粒子と抗菌性微粒子の均一混合状態を固定することが出来ず、抗菌性微粒子が樹脂中に均一に分散された樹脂組成物を得ることが出来ない場合がある。
また、フッ素樹脂エマルジョンと抗菌性微粒子ゾルを攪拌して均一な混合液を得る目的で、フッ素樹脂エマルジョンまたは抗菌性微粒子ゾルを予め純水などで希釈し固形分濃度を調整してから、これらを攪拌・混合することも可能である。
フッ素樹脂エマルジョンと抗菌性微粒子ゾルとを攪拌下に混合した水性分散液を物理的または化学的に凝集させる装置は、特に制限されるものではないが、攪拌速度が制御できる攪拌手段、例えばプロペラ翼、タービン翼、パドル翼、かい型翼、馬蹄形型翼、螺旋翼などと排水手段を備えた装置であることが好ましい。このような装置中にフッ素樹脂エマルジョン、抗菌性微粒子ゾル及び電解物質または無機塩を入れ攪拌することにより、樹脂のコロイド粒子及び/または抗菌性微粒子が凝集して異種粒子の混合凝集体となり、水性媒体から分離する。
水性媒体から混合凝集体を分離する凝集工程の攪拌速度は、フッ素樹脂エマルジョンと抗菌性微粒子ゾルの混合工程の攪拌速度より1.5倍以上早い方が好ましい。
水性媒体を排出し、必要に応じて異種粒子の混合凝集体を水洗した後、樹脂の融点または熱分解開始温度以下の温度で乾燥することにより、抗菌性フッ素樹脂組成物を得ることが出来る。乾燥する温度は、フッ素樹脂の熱劣化や分解が起こる温度以下で、電解物質や界面活性剤などを除去できる温度が好ましい。
水性媒体を排出し、必要に応じて異種粒子の混合凝集体を水洗した後、樹脂の融点または熱分解開始温度以下の温度で乾燥することにより、抗菌性フッ素樹脂組成物を得ることが出来る。乾燥する温度は、フッ素樹脂の熱劣化や分解が起こる温度以下で、電解物質や界面活性剤などを除去できる温度が好ましい。
本発明においては、上記乾燥工程で得られる抗菌性微粒子がフッ素樹脂中に均一に分散されている異種粒子の混合凝集体の乾燥粉末を、押出成型、射出成型、ブロー成形、回転成形、トランスファー成型などの溶融成型、及び圧縮成形、ラム押出成形、ペースト押出成形、アイソスタティック成形などの粉末成形、或いは静電粉体塗装,スプレーコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、ローラーコーテイングなどの任意の膜形成方法に用いることができる。
また、成型機ホッパーでの混合凝集体粉末の食い込みをよくするため、該混合凝集体をコンパクターで乾燥し固めて粉体としたもの、該混合凝集体を造粒したもの、該混合凝集体をペレット化したものなども用いることもできる。いずれの場合においても、フッ素樹脂中の抗菌性微粒子の分散状態は、ほぼ同様である(図1、図2参照)。
或いは、高濃度の抗菌性微粒子が分散された抗菌性フッ素樹脂組成物をマスターバッチとして、目的に合わせ最終的な濃度の製品を作製することも可能である。
或いは、高濃度の抗菌性微粒子が分散された抗菌性フッ素樹脂組成物をマスターバッチとして、目的に合わせ最終的な濃度の製品を作製することも可能である。
溶融押出し機を通してペレット化する場合には、せん断応力の面から2軸押出機を用いることが好ましい。溶融混合はペレット化するのが主目的であり、帯電防止微粒子の均一分散又は物性向上のために必要であるということではない。
本発明の低帯電性フッ素樹脂組成物には、必要に応じて任意の添加剤が配合されていてもよい。このような添加剤の例として、酸化防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、着色剤を配合することができる。また、本発明の目的を損なわない範囲であれば、他の樹脂が配合されていてもよい。
また、溶融押出し機を通してペレット化する過程で、任意の添加剤を配合する或いは他の樹脂とブレンドすることもできる。添加剤の配合は、溶融押出し工程では勿論、前記フッ素樹脂エマルジョンと抗菌性微粒子ゾルの混合工程で行うことも出来る。このような添加剤としては、マイカ、クレイの様な層状ケイ素化合物のナノ粒子などを例示することが出来る。
本発明の抗菌部材を得るための成型方法及び条件に関しては特に制限がなく、従来から熱溶融性フッ素樹脂について適用されているチューブ類、シート類、フィルム類、棒類、繊維類、電線被覆などについての押出し条件や容器類などについてのブロー成型条件、トレイ類などについての射出成型条件をそのまま利用することが出来る。また、粉末成型品や粉末コーティング成型品、回転成型品を得ることもできる。
本発明の抗菌性フッ素樹脂組成物は、抗菌性が必要な医療用品、食品製造機械、調理器具、台所用品、電気製品、水周り用品、建材用品などのための成型材料として、或いは配管やライニング材料、抗菌フィルム、抗菌チューブ、抗菌電子材料として種々の用途に使用できる。
水や薬液の移送または貯蔵容器などのための配管やライニング材料として使用する場合は、本発明の抗菌性フッ素樹脂組成物からなる層(A)と抗菌性微粒子を含まないフッ素樹脂層(B)との積層構造にしても良い。積層構造としては、A/B、 B/A、 A/B/Aなどの構造が可能である。
特に、粒子径400nm以下の抗菌性微粒子を用いた本発明の抗菌性フッ素樹脂組成物は、透明性を維持することが可能なため、透明性と抗菌性が要求される水周り用品、水や薬液が流れる状況が目視で確認できる配管などの用途に有用であり、積層構造にしても水や薬液が流れる状況を確認することが出来る
純度の高い抗菌性微粒子ゾルと、金属イオンなどの不純物が少ないフッ素樹脂エマルジョンとを使用した場合には、極めて純度の高い抗菌性フッ素樹脂組成物を得ることができる。純度の高い抗菌性微粒子ゾルとしては、例えば、高純度コロイダル銀ゾル(ABCナノテク株式会社のSarupu−50KWシリーズなど)が市販されている。この様にして得られる極めて純度が高い抗菌性フッ素樹脂組成物からなる抗菌部材は、医療用品、半導体製造装置など純粋性が要求される部材として好適に用いることができる。
本発明の抗菌性微粒子がフッ素樹脂中にナノレベルで均一に分散された抗菌性フッ素樹脂組成物は、充填材がミクロンレベルで分散された従来の樹脂複合体混合物に比べ、ナノ粒子と樹脂マトリックス間の界面面積が大幅に増えるため、少量の抗菌性微粒子の添加で抗菌性の改善が期待できる利点がある。また、可視光の波長より粒径が小さい抗菌性微粒子がフッ素樹脂中にナノレベルに均一に分散された場合には、得られる抗菌部材が透明になる。
以下に実施例によって、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。
本発明において、物性の測定は下記の方法によって行った。
本発明において、物性の測定は下記の方法によって行った。
(A.物性の測定)
(1)融点(融解ピーク温度)
示差走査熱量計(Pyris1型DSC、パーキンエルマー社製)を用いた。試料約10mgを秤量して専用のアルミパンに入れ、専用のクリンパーによってクリンプした後、DSC本体に収納し、150℃から360℃まで10℃/分で昇温をする。この時得られる融解曲線から融解ピーク温度(Tm)を求めた。
(1)融点(融解ピーク温度)
示差走査熱量計(Pyris1型DSC、パーキンエルマー社製)を用いた。試料約10mgを秤量して専用のアルミパンに入れ、専用のクリンパーによってクリンプした後、DSC本体に収納し、150℃から360℃まで10℃/分で昇温をする。この時得られる融解曲線から融解ピーク温度(Tm)を求めた。
(2)メルトフローレート(MFR)
ASTM D−1238−95に準拠した耐食性のシリンダー、ダイ、ピストンを備えたメルトインデクサー(東洋精機製)を用いて、5gの試料粉末を372±1℃に保持されたシリンダーに充填して5分間保持した後、5kgの荷重(ピストン及び重り)下でダイオリフィスを通して押出し、この時の押出速度(g/10分)をMFRとして求めた。
ASTM D−1238−95に準拠した耐食性のシリンダー、ダイ、ピストンを備えたメルトインデクサー(東洋精機製)を用いて、5gの試料粉末を372±1℃に保持されたシリンダーに充填して5分間保持した後、5kgの荷重(ピストン及び重り)下でダイオリフィスを通して押出し、この時の押出速度(g/10分)をMFRとして求めた。
(4)抗菌性微粒子分散状態
抗菌性フッ素樹脂組成物試料を350℃で溶融圧縮成形することによって作製された厚み約2mmの試料より、10mm×10mmの試片を3ヶ所切り取り、光学顕微鏡(NIKON製、OPTIPHOT2−POL)を使用して、大きさが1000nm以上の銀ナノ粒子からなる混合凝集体の有無で分散状態を評価した。
抗菌性フッ素樹脂組成物試料を350℃で溶融圧縮成形することによって作製された厚み約2mmの試料より、10mm×10mmの試片を3ヶ所切り取り、光学顕微鏡(NIKON製、OPTIPHOT2−POL)を使用して、大きさが1000nm以上の銀ナノ粒子からなる混合凝集体の有無で分散状態を評価した。
1000nm以上の銀ナノ粒子からなる混合凝集体が観察されない試料のみ、液体窒素に入れ脆くした後折って作製した破断面を電子顕微鏡で各試料につき3ヶ所観察し、銀の分散状態を評価した。電子顕微鏡観察で、殆どの銀が1次粒子まで分散されている場合を◎印で示し、銀ナノ粒子からなる混合凝集体が僅かに残っているある場合を○印で示し、光学顕微鏡で1000nm以上の銀ナノ粒子からなる混合凝集体が数多く残っている場合を×印で示した。
(6)引っ張り物性(引っ張り強度、伸び率、引っ張り弾性率)
抗菌性フッ素樹脂組成物を350℃で溶融圧縮成形することによって作成した厚み約1mm試料を用い、JIS K 7127に準じて、引っ張り速度50mm/分で測定した。
抗菌性フッ素樹脂組成物を350℃で溶融圧縮成形することによって作成した厚み約1mm試料を用い、JIS K 7127に準じて、引っ張り速度50mm/分で測定した。
(5)抗菌活性値
抗菌性フッ素樹脂組成物を350℃で溶融圧縮成形することによって作製された厚み約0.3mmの試料より40mm x 40mmの試験片を作り、JIS Z 2801:2000「抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果」5.2 プラスチック製品などの試験方法により試料の大腸菌(Escherichia coli NBRC 3972)と黄色ブドウ球菌(staphylococcus aureus subsp. aureus NBRC 12732)に対する抗菌性評価を行った。
抗菌性フッ素樹脂組成物を350℃で溶融圧縮成形することによって作製された厚み約0.3mmの試料より40mm x 40mmの試験片を作り、JIS Z 2801:2000「抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果」5.2 プラスチック製品などの試験方法により試料の大腸菌(Escherichia coli NBRC 3972)と黄色ブドウ球菌(staphylococcus aureus subsp. aureus NBRC 12732)に対する抗菌性評価を行った。
試験菌液を接種した試験片の入ったシャーレを温度35±1℃、相対湿度90%以上で24±1時間培養した後の生菌数から抗菌性を評価した。抗菌性評価方法としては、3つの試料の抗菌力試験結果から下記式より抗菌活性値を計算した。
抗菌活性値=log(B/C)
B:抗菌性微粒子を含有しないフッ素樹脂組成物試験の24時間後の生菌数の平均値
C:抗菌性微粒子を含有した抗菌性フッ素樹脂組成物試験の24時間後の生菌数の平均値
抗菌活性値=log(B/C)
B:抗菌性微粒子を含有しないフッ素樹脂組成物試験の24時間後の生菌数の平均値
C:抗菌性微粒子を含有した抗菌性フッ素樹脂組成物試験の24時間後の生菌数の平均値
(6)光線透過率
抗菌性フッ素樹脂組成物を350℃で溶融圧縮成形することにより得られた厚み約1mmの試料より50mm x 50mmの試験片を作り、日本電色工業(株)製、ヘイズメーターNDH2000(光源は、ハロゲンランプ D65)を使用して測定し、3つの試料の平均値から光線透過率を計算した。
抗菌性フッ素樹脂組成物を350℃で溶融圧縮成形することにより得られた厚み約1mmの試料より50mm x 50mmの試験片を作り、日本電色工業(株)製、ヘイズメーターNDH2000(光源は、ハロゲンランプ D65)を使用して測定し、3つの試料の平均値から光線透過率を計算した。
(B.原料)
本発明の実施例、及び比較例で用いた原料は下記の通りである。
(1)PFAエマルジョン
乳化重合で得られたPFA水性分散液
(固形分:29重量%、一次粒子の平均粒子径:200nm、pH:9、
融点:309℃、メルトフローレート:2g/10分)
本発明の実施例、及び比較例で用いた原料は下記の通りである。
(1)PFAエマルジョン
乳化重合で得られたPFA水性分散液
(固形分:29重量%、一次粒子の平均粒子径:200nm、pH:9、
融点:309℃、メルトフローレート:2g/10分)
(2)銀ゾル
(高純度コロイダル銀、ABCナノテク株式会社製、Sarpu−50K
(銀:5.0重量%、銀1次粒径:25nm、pH:7.0))
(高純度コロイダル銀、ABCナノテク株式会社製、Sarpu−50K
(銀:5.0重量%、銀1次粒径:25nm、pH:7.0))
(実施例1)
銀ゾル1032gをビーカー(10L)に入れ、ダウンフロータイププロペラ型4枚羽根付き攪拌を使用して140rpmで15分間攪拌した後、銀含量がPFA固形分に対して5重量%になるように、乳化重合で得られたPFA水性分散液3380gを入れ、300rpmで30分間攪拌し、60%硝酸22gを加えて、ゲル化が進み流動しなくなるまで攪拌してフッ素樹脂一次粒子と銀ナノ粒子を一気に凝集させた。
銀ゾル1032gをビーカー(10L)に入れ、ダウンフロータイププロペラ型4枚羽根付き攪拌を使用して140rpmで15分間攪拌した後、銀含量がPFA固形分に対して5重量%になるように、乳化重合で得られたPFA水性分散液3380gを入れ、300rpmで30分間攪拌し、60%硝酸22gを加えて、ゲル化が進み流動しなくなるまで攪拌してフッ素樹脂一次粒子と銀ナノ粒子を一気に凝集させた。
得られたゲル状の混合凝集体を、450rpmで10分攪拌し混合凝集体を水性媒体から分離させ余分な水を除去し、残った混合凝集体を170℃で10時間乾燥し、混合凝集体の乾燥粉末を得た。混合凝集体の乾燥粉末を、溶融混合装置(東洋精機製作所製KF−70V小型セグメントミキサー)を用いて、340℃、240rpmで100秒間溶融混合し、抗菌性フッ素樹脂組成物を得た。
得られた抗菌性フッ素樹脂組成物の引っ張り物性、MFR測定、光学・電子顕微鏡観察、光線透過率、及び抗菌力試験を行った。結果を表1、表2、及び表3に示す。
(実施例2)
銀ゾル198gをビーカー(10L)に入れ、ダウンフロータイププロペラ型4枚羽根付き攪拌を使用して140rpmで15分間攪拌した後、銀含量がPFA固形分に対して1.0重量%になるように、乳化重合で得られたPFA水性分散液3380gを入れ、実施例1と同様にして、混合凝集体の乾燥粉末、及び抗菌性フッ素樹脂組成物を得た。
銀ゾル198gをビーカー(10L)に入れ、ダウンフロータイププロペラ型4枚羽根付き攪拌を使用して140rpmで15分間攪拌した後、銀含量がPFA固形分に対して1.0重量%になるように、乳化重合で得られたPFA水性分散液3380gを入れ、実施例1と同様にして、混合凝集体の乾燥粉末、及び抗菌性フッ素樹脂組成物を得た。
得られた抗菌性フッ素樹脂組成物の引っ張り物性、MFR測定、光学・電子顕微鏡観察、光線透過率、及び抗菌力試験を行った。結果を表1、表2、及び表3に示す。
また、得られた抗菌性フッ素樹脂組成物を350℃で圧縮成形し、厚み約1.0mmの試料を得た。得られた厚み約1mmの試料の電子顕微鏡観察を、図1及び図2に示す。
また、得られた抗菌性フッ素樹脂組成物を350℃で圧縮成形し、厚み約1.0mmの試料を得た。得られた厚み約1mmの試料の電子顕微鏡観察を、図1及び図2に示す。
(実施例3)
銀ゾル9.8gをビーカー(10L)に入れ、ダウンフロータイププロペラ型4枚羽根付き攪拌を使用して140rpmで15分間攪拌した後、銀含量がPFA固形分に対して0.05重量%になるように、乳化重合で得られたPFA水性分散液3380gを入れ、実施例1と同様にして、混合凝集体の乾燥粉末、及び抗菌性フッ素樹脂組成物を得た。
銀ゾル9.8gをビーカー(10L)に入れ、ダウンフロータイププロペラ型4枚羽根付き攪拌を使用して140rpmで15分間攪拌した後、銀含量がPFA固形分に対して0.05重量%になるように、乳化重合で得られたPFA水性分散液3380gを入れ、実施例1と同様にして、混合凝集体の乾燥粉末、及び抗菌性フッ素樹脂組成物を得た。
得られた抗菌性フッ素樹脂組成物の引っ張り物性、MFR測定、光学・電子顕微鏡観察、光線透過率、及び抗菌力試験を行った。結果を表1、表2、及び表3に示す。
(実施例4)
銀ゾル1.96gをビーカー(10L)に入れ、ダウンフロータイププロペラ型4枚羽根付き攪拌を使用して140rpmで15分間攪拌した後、銀含量がPFA固形分に対して0.01重量%になるように、乳化重合で得られたPFA水性分散液3380gを入れ、実施例1と同様にして、混合凝集体の乾燥粉末、及び抗菌性フッ素樹脂組成物を得た。
銀ゾル1.96gをビーカー(10L)に入れ、ダウンフロータイププロペラ型4枚羽根付き攪拌を使用して140rpmで15分間攪拌した後、銀含量がPFA固形分に対して0.01重量%になるように、乳化重合で得られたPFA水性分散液3380gを入れ、実施例1と同様にして、混合凝集体の乾燥粉末、及び抗菌性フッ素樹脂組成物を得た。
得られた抗菌性フッ素樹脂組成物の引っ張り物性、MFR測定、光学・電子顕微鏡観察、光線透過率、及び抗菌力試験を行った。結果を表1、表2、及び表3に示す。
(実施例5)
銀ゾル0.98gをビーカー(10L)に入れ、ダウンフロータイププロペラ型4枚羽根付き攪拌を使用して140rpmで15分間攪拌した後、銀含量がPFA固形分に対して0.005重量%になるように、乳化重合で得られたPFA水性分散液3380gを入れ、実施例1と同様にして、混合凝集体の乾燥粉末、及び抗菌性フッ素樹脂組成物を得た。
銀ゾル0.98gをビーカー(10L)に入れ、ダウンフロータイププロペラ型4枚羽根付き攪拌を使用して140rpmで15分間攪拌した後、銀含量がPFA固形分に対して0.005重量%になるように、乳化重合で得られたPFA水性分散液3380gを入れ、実施例1と同様にして、混合凝集体の乾燥粉末、及び抗菌性フッ素樹脂組成物を得た。
得られた抗菌性フッ素樹脂組成物の引っ張り物性、MFR測定、光学・電子顕微鏡観察、光線透過率、及び抗菌力試験を行った。結果を表1、表2、及び表3に示す。
(比較例1)
銀含量がPFA固形分に対して0.05重量%の平均粒子径20000nmの高純度化学製還元銀粉と、PFAペレットとを溶融混合装置(東洋精機製作所製KF−70V小型セグメントミキサー)を用いて、340℃、240rpmで1分40秒間溶融混合し、平均粒子径が20000nmの銀がフッ素樹脂中に分散されている抗菌性フッ素樹脂組成物を得た。
銀含量がPFA固形分に対して0.05重量%の平均粒子径20000nmの高純度化学製還元銀粉と、PFAペレットとを溶融混合装置(東洋精機製作所製KF−70V小型セグメントミキサー)を用いて、340℃、240rpmで1分40秒間溶融混合し、平均粒子径が20000nmの銀がフッ素樹脂中に分散されている抗菌性フッ素樹脂組成物を得た。
得られた試料を350℃で圧縮成形し、厚み約1.0mmの試料を得た。
得られた抗菌性フッ素樹脂組成物の引っ張り物性、MFR測定、光学・電子顕微鏡観察、光線透過率の測定を行った。結果を表1、表2及び表3に示す。
(参考例1)
銀を使用しないフッ素樹脂のみ試料の引っ張り物性、MFR測定、光学・電子顕微鏡観察、光線透過率、及び抗菌力試験を行った。結果を表1、表2、及び表3に示す。
銀を使用しないフッ素樹脂のみ試料の引っ張り物性、MFR測定、光学・電子顕微鏡観察、光線透過率、及び抗菌力試験を行った。結果を表1、表2、及び表3に示す。
表1に示された結果では、本発明による抗菌性フッ素樹脂組成物(実施例1〜実施例5)は銀がナノ分散されていた。また、銀含量が0.05%の場合、銀がナノ分散されるとMFRと伸び率は低下せず、フッ素樹脂単体(参考例1)とほぼ同じであった。しかし、銀がナノ分散されてない場合は(比較例1)、銀含量が0.05%でも、従来のマイクロコンポジットと同様にMFRと伸び率がフッ素樹脂単体より低くなった。
銀の1次粒径が一定の場合、銀含量が0.005%、0.01%、0.05%、1%及び5%に増えると、MFRと伸び率を維持しながら光線透過率は、抗菌性微粒子を含有しないフッ素樹脂組成物の少なくとも50%以上になった。これは、可視光の波長(400nm〜700nm)より粒径の小さな25nmの銀がフッ素樹脂中に均一にナノ分散されているためであると思われる。
しかし、銀の粒径が20000nmの場合は(比較例1)、光線透過率が35%になり、不透明になった。従来のマイクロコンポジットでは、充填材の含量が増えるとMFRと伸び率と光線透過率が著しく減少することから、銀含量を増やしてもMFRと伸び率及び光線透過率をある程度維持できるのは銀1次粒子のナノ分散のため現れるいわゆる高分子ナノコンポジットによる結果であると思われる。
また、混合凝集体の乾燥粉末状態の抗菌性フッ素樹脂組成物(図1)と乾燥粉末を更に溶融混合した抗菌性フッ素樹脂組成物(図2)の電子顕微鏡観察結果からは、両方とも銀のナノ分散状態には差は見られなかった。従って、混合凝集体は乾燥粉末状態でも銀はフッ素樹脂中にナノ分散されている。
表2の大腸菌による抗菌性評価結果では、銀がナノ分散され試料の抗菌活性値は6.1以上になり、高い抗菌効果が現れた。特に、銀の粒径が25nmの場合は、銀含量が0.01%でも抗菌活性値は約6.1を示した(実施例4)。
しかし、銀含量が0.005%の場合には、平均活性値は約3.2を示したが、3種類の検体の内、一つは大腸菌が多数存在し測定結果にバラツキがあった。これは、銀の含量が少なすぎるため、試料表面にある銀の濃度に不均質性が生じたためだと思われる。また、銀の粒径が20000nmの場合は(比較例1)、銀粒子がフッ素樹脂中に不均一に分布されたため、表2に示す通り、抗菌活性値が約1.8となり抗菌性がないと判断した。
表3の黄色ブドウ球菌による試験の場合、銀がナノ分散された試料の抗菌活性値は4.5以上になり、優れた抗菌性を有していた。特に、銀の粒径が25nmの場合は、銀含量が0.01%の微量でも抗菌活性値は約4.5を示した(実施例4)。しかし、銀含量が0.005%の場合には、平均活性値は約2.3を示したが、黄色ブドウ球菌が多数存在し、測定結果にバラツキがあった。
また、銀の粒径が20000nmの場合は(比較例1)、抗菌活性値が約0.4になり、抗菌性がないと判断した。
また、銀の粒径が20000nmの場合は(比較例1)、抗菌活性値が約0.4になり、抗菌性がないと判断した。
本発明では、フッ素樹脂エマルジョンと、金、銀、亜鉛、銅、チタンから選ばれる少なくとも1つの抗菌性微粒子のコロイダル溶液とを攪拌下に混合した水性分散液を、0℃以下の温度で凍結するか、電解物質を加えて混合液のイオン強度またはpHを変化させるか、せん断力をかけることによって得られる混合凝集体を水性の溶液から分離乾燥して得られる抗菌性フッ素樹脂組成物であって、該抗菌性微粒子を含有しないフッ素樹脂組成物の生菌数の平均値(B)と該抗菌性微粒子を含有する抗菌性フッ素樹脂組成物の生菌数の平均値(C)の比である抗菌活性値(log(B/C))が、2.0以上である抗菌性フッ素樹脂組成物を得ることが出来る。従って、抗菌性微粒子がナノレベルに均一に分散されことで期待できるあらゆる分野に応用することが出来る。
更に、最終的に得られる抗菌部材は、フッ素樹脂中に抗菌性微粒子がナノレベルに均一に分散されることで期待できるあらゆる分野に応用することが出来、特に本発明で限定するようなことはない。例えば、医療用品、食品製造機械、調理器具、台所用品、電気製品、水周り用品、建材用品などのための成型材料として、或いは配管やライニング材料、抗菌フィルム、抗菌チューブ、抗菌電子材料として種々の用途に使用できる。
Claims (9)
- フッ素樹脂エマルジョンと、金、銀、亜鉛、銅、チタンから選ばれる少なくとも1つの抗菌性微粒子のコロイダル溶液とを攪拌下に混合した水性分散液を、0℃以下の温度で凍結するか、電解物質を加えて混合液のイオン強度またはpHを変化させるか、せん断力をかけることによって得られる凝集体を水性の溶液から分離乾燥して得られる抗菌性フッ素樹脂組成物であって、該抗菌性微粒子を含有しないフッ素樹脂組成物の生菌数の平均値(B)と該抗菌性微粒子を含有する抗菌性フッ素樹脂組成物の生菌数の平均値(C)の比である抗菌活性値(log(B/C))が、2.0以上である抗菌性フッ素樹脂組成物。
- 前記フッ素樹脂エマルジョンが、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニルエ−テル)、ビニリデンフルオライド及びビニルフルオライドから選ばれるモノマーの重合体又は共重合体である請求項1記載の抗菌性フッ素樹脂組成物。
- 前記フッ素樹脂エマルジョンが、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニルエ−テル)、ビニリデンフルオライド及びビニルフルオライドから選ばれる少なくとも1つのモノマーと、エチレン又はプロピレンとの共重合体であることを特徴とする請求項1及び2記載の抗菌性フッ素樹脂組成物。
- 抗菌性微粒子の含有量が、抗菌性フッ素樹組成物に対し0.001〜5重量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の抗菌性フッ素樹脂組成物。
- 抗菌性微粒子の平均粒径が、400nm以下である請求項1〜4のいずれかに記載の抗菌性フッ素樹脂組成物。
- 抗菌性フッ素樹脂組成物の厚さ1mmのシートの全光線透過率が50%以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の抗菌性フッ素樹脂組成物。
- 請求項1〜6記載の抗菌性フッ素樹脂組成物を溶融押出しして得られるペレット。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の抗菌性フッ素樹脂組成物またはペレットを、圧縮成形、押出成形、トランスファー成形、ブロー成形、射出成形、回転成形またはライニング成形のいずれかで成形して得られる抗菌性部材。
- 抗菌性部材が、容器、チューブ、シート、またはフィルムである、請求項8に記載の抗菌性部材。
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