JP2008234917A - 銅線の製造方法および銅線被膜剥離装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】銅よりなる線材の外周を被膜で被覆した状態の銅線3に対し、被膜および線材である銅に対しての吸収率を一定値以上持つグリーンレーザ(レーザ光1)を、銅線3の被膜剥離部分に対して照射し、レーザ熱によって被膜を昇華させ、レーザ照射部分に相当する被膜剥離部分において、被膜の残存なく、また線材の損傷なく、線材を露出させるように構成する。
【選択図】図1
Description
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、部分的に絶縁被膜が剥離された銅線を得る銅線の製造方法、コストが安価でメンテナンスが容易な銅線被膜剥離装置を得ることを目的としている。
銅線に対してレーザ光を照射し、その外周を覆う絶縁被膜(または単に被膜とする。)を部分的に剥離する場合、被膜へ照射されたレーザ光の一部は、被膜表面で反射し、残りが被膜内部に入射する。その被膜内部に入射したレーザ光の一部が被膜に吸収され、被膜を加熱、昇華させ、一部が更に奥まで透過する。被膜への吸収率が高いほど透過率が低くなるため、レーザ光が芯線(線材)に達さず、被膜のみを効率よく加熱できるので、芯線の損傷無く被膜を剥離できるが、被膜の表面にしかレーザ光が吸収されないため、剥離速度が遅くなる。逆に、被膜への吸収率が低いほど、被膜に吸収されずにレーザ光が芯線に達するため、芯線が溶融してしまう。芯線の損傷なく被膜を早く剥離するためには、被膜厚さ10μmに対して吸収率が20%〜80%であるのが良い。被膜厚さ10μmにおける、レーザ光の波長とポリイミド(被膜)への吸収率との関係を図1に示す。
比較として、CO2レーザ、エキシマレーザ、YAGレーザで剥離を行ってみたが、CO2レーザでは、1μm程度の被膜が残存し、エキシマレーザでは、剥離するまでに10分程度時間がかかり、YAGレーザでは剥離時間はグリーンレーザと同程度であるが、芯線の溶融が確認された。
なお、発明に用いられるグリーンレーザ光であるが、銅線被膜剥離のために適用することができる波長範囲は、0.4〜0.6μm、レーザ強度範囲は、1〜100kJ/m2である。また、グリーンレーザ光は、YAGレーザ(波長1.064μm)、YLFレーザ(波長1.054μm)などに波長変換素子を用いて、第二高調波を取り出したもので、波長0.532μm、0.527μmとして発振させることができる。
図4は本発明の実施の形態2によるグリーンレーザ光による銅線被膜剥離の様子を示す模式図である。図4において、レーザ光(グリーンレーザ光)1を照射する構成は実施の形態1とほぼ同じで、本実施の形態2では、アシストガス(不活性ガス、もしくは還元ガス)を吹きつけるためのノズル5を設けていることのみ異なる。本構成によれば、レーザ光1の照射位置に対し、銅線3を、長さ方向に送りながら、一方向に絶縁被膜の剥離を行う場合、不活性ガスまたは還元ガスは、銅線3のレーザ光を照射済みの部分から、未照射の部分へ向うように吹き付けられるものであり、アシストガスを吹き付けながら被膜をレーザで剥離するので、剥離部のレーザ熱による酸化を抑制でき、また、レーザの進行方向と同方向に吹き付けており、溶融した被膜カスの剥離部へ付着することを抑制できるのでなお良い。
不活性ガスとしてはN2、Ar、He、Xeなど、還元ガスは、H2、COなどを用いることができ、ガス流量としては、10L/min程度あれば、十分に剥離部の酸化を抑制することが可能である。
図5は本発明の実施の形態3によるグリーンレーザ光による銅線被膜剥離の様子を示す模式図である。図5において、構成は実施の形態1とほぼ同じで、水槽60に水6を入れ、その水6中で銅線被膜の剥離を行うことのみが異なる。水槽60は、レーザ光1を透過する材質のもの、例えばガラス、アクリルなどよりなるものを用いることができる。本方法によれば、レーザ光1は水6を透過できるので、被膜の剥離が可能で、更に水中で被膜を剥離することで、溶融した被膜はすぐに凝固するため、剥離部への付着を抑制できる。
また、レーザ光1の照射位置に対し、銅線3を、長さ方向に送りながら一方向に絶縁被膜の剥離を行うように構成すること、すなわち、ヘッド2の位置は固定し、固定した水槽60内で、図示しないローラ等を用いて銅線3を一方向に送りながら、レーザ光1の入/切で、剥離部分と剥離しない部分とを区別して処理することが可能であり、被膜を残した銅線3の長さ、剥離部分の長さを調整することができる。
水6は、蒸留水、水道水等を用いることが可能である。
図6は本発明の実施の形態4によるグリーンレーザ光を用いた被膜剥離装置を示す斜視図で、図7はレーザ光の透過経路を示した構成概略図である。本発明による被膜剥離装置は互いに偏光方向が直行するレーザ光1a、1bを照射し、銅線3に対し対面に位置するように設置されたヘッド2a、2b、レーザを集光するための集光レンズ4a(第一の集光レンズ)、4b(第二の集光レンズ)、ヘッド2aから照射されるレーザ光1aは透過し、ヘッド2bから照射されるレーザ光1bは反射する(第一の)偏光ビームスプリッタ7a、ヘッド2bから照射されるレーザ光1bは透過し、ヘッド2aから照射されるレーザ光1aは反射する(第二の)偏光ビームスプリッタ7bにより構成されている。
図8は、本発明の実施の形態5によるグリーンレーザ光による被膜剥離装置を示す斜視図である。本発明による剥離装置の構成は実施の形態4とほぼ同じで、アシストガス(不活性ガス、もしくは還元ガス)を吹き付けるためのノズル5を設けていることのみが異なる。本構成の被膜剥離装置によれば、アシストガスを吹き付けながら被膜をレーザ光照射により剥離するので、剥離部のレーザ熱による酸化を抑制できる。また、アシストガスをレーザの進行方向と同方向に吹き付けることで(レーザ照射位置が固定され、銅線3を送る構成の場合は、送り方向と逆方向に吹き付けることで)、溶融した被膜の剥離部への付着を抑制できるのでなお良い。
図9は、本発明の実施の形態6によるグリーンレーザを用いた被膜剥離装置を示す構成概略図であり、銅線3の断面方向から見たレーザ光の透過経路を示している。図10は、レーザ照射側から見た銅線3周辺の断面図である。図9の構成は、実施の形態4とほぼ同じで、銅線3の剥離したい箇所をローラ8により水6に案内して送ることのみ異なる。本実施の形態によれば、グリーンレーザ光は水6をして水中の銅線3に照射され、被膜の剥離が可能となるもので、更に水中で被膜剥離を行うため、溶融した被膜はすぐに凝固し、剥離部への付着を抑制できる。
また、水槽60内において、ローラ8により銅線3を送りながら、銅線3を水中に保持し、レーザ光1aおよび1bを、入/切させることで、銅線3の被膜を全周にわたって剥離する部分、剥離せずに残す部分を区別し、一巻き分の銅線の被膜剥離処理を連続して行うことができるという効果がある。
このような銅線3を送る構成と、水槽60内の清浄化機能は、グリーンレーザ以外のレーザ光を用いた被膜剥離装置にも適用することができる。
3 銅線、 4、4a、4b 集光レンズ、
5 ノズル、 6 水、
7、7a、7b 偏光ビームスプリッタ、 8 ローラ
60 水槽。
Claims (9)
- 銅よりなる線材の外周が絶縁被膜で被覆された銅線に対し、上記絶縁被膜の一部を剥離するためにグリーンレーザを照射し、上記レーザ照射部分の上記線材を露出させることを特徴とする銅線の製造方法。
- 上記絶縁被膜は、ポリイミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエステルイミド、ポリアミドイミドのいずれかによって構成されたことを特徴とする請求項1記載の銅線の製造方法。
- 上記銅線の、上記線材が露出した部分に、不活性ガスまたは還元ガスを吹き付けることを特徴とする請求項1記載の銅線の製造方法。
- 上記グリーンレーザの照射位置に対し、上記銅線を、長さ方向に送りながら一方向に上記絶縁被膜の剥離を行う場合、上記不活性ガスまたは上記還元ガスは、上記銅線の、上記グリーンレーザを照射済みの部分から、未照射の部分へ向かうように吹き付けられることを特徴とする請求項3記載の銅線の製造方法。
- 上記銅線を水中に配置し、上記グリーンレーザの照射による上記銅線の上記絶縁被膜の剥離を水中において行うことを特徴とする請求項1記載の銅線の製造方法。
- 上記グリーンレーザの照射位置に対し、上記銅線を、長さ方向に送りながら一方向に上記絶縁被膜の剥離を行うことを特徴とする請求項5記載の銅線の製造方法。
- 上記導線の周囲の水を、上記銅線を送る方向と逆向きに流すことを特徴とする請求項6記載の銅線の製造方法。
- 照射対象に向ってグリーンレーザを発し、上記グリーンレーザの照射方向が互いに対向する第一の発振器と第二の発振器、上記第一の発振器から発した上記グリーンレーザを集光する第一の集光レンズ、上記第一の集光レンズによって集光された上記グリーンレーザを裏面から表面へ透過させる第一の偏光ビームスプリッタ、上記第二の発振器から発した上記グリーンレーザを集光する第二の集光レンズ、上記第二の集光レンズによって集光された上記グリーンレーザを裏面から表面へ透過させる第二の偏光ビームスプリッタを備え、上記照射対象を通過した上記グリーンレーザが上記第一の偏光ビームスプリッタまたは上記第二の偏光ビームスプリッタの表面において反射する構成とし、上記照射対象となる、銅よりなる線材の外周を絶縁被膜で被覆した銅線に、上記グリーンレーザを照射することで、上記絶縁被膜の一部を剥離することを特徴とする銅線被膜剥離装置。
- 上記照射対象となる上記銅線を、水中に保持するための、透明な水槽を備え、上記水槽の外側から、上記水槽内の上記銅線に上記グリーンレーザを照射することを特徴とする請求項8記載の銅線被膜剥離装置。
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