JP2008229433A - 複層塗膜形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、3C1B複層塗膜形成方法において、低固形分濃度の電着塗料組成物を用いても、自動車車体内部の塗装において電着膜厚を低下させることなく、優れた複層塗膜外観が得られる方法、仕上がり性が良好な複層塗膜を短い工程数および/または時間で形成することができる方法、電着塗装からクリヤー塗装まで総合的にかかる消費エネルギーを削減できる方法の提供を目的とする。
【解決手段】電着塗膜形成工程および3C1B塗装工程を含む複層塗膜形成方法であって、
電着塗膜形成工程において被塗物に形成された電着塗膜が、電導度制御剤、カチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を少なくとも含有するカチオン電着塗料組成物を電着塗装することによって形成された電着塗膜であり、
前記カチオン電着塗料組成物の固形分濃度が0.5〜9重量%であり、
中塗り塗膜形成工程において、水性中塗り塗料を塗布して未硬化の中塗り塗膜を形成した後に予備乾燥を行うことによって、中塗り塗膜の塗膜固形分率を70〜98重量%とし、
ベース塗膜およびクリヤー塗膜形成工程において、水性ベース塗料を塗布した後に予備乾燥を行うことによって、ベース塗膜の塗膜固形分率を65〜98重量%とする、
複層塗膜形成方法。
【選択図】なし

Description

本発明は複層塗膜形成方法に関し、特に、自動車車体に電着塗膜を形成した後、3コート1ベーク(3C1B)法によって、さらに、中塗り塗膜、ベース塗膜およびクリヤー塗膜を形成する方法に関する。
自動車車体の塗装は、基本的には電着塗膜、中塗り塗膜、及びベース塗膜とクリヤー塗膜とから成る上塗り塗膜を被塗物である鋼板の上に順次積層して行われる。従来、これらの塗膜は、それぞれ塗膜の機能に応じて組成が調整された塗料組成物を塗布し、各塗膜毎に焼き付け硬化させて形成されてきた。複数の塗料を塗り重ねる場合、下地となる層を完全に成膜及び平滑化しておかないと、隣接する塗膜層が相互に干渉し、下地層の凹凸が上層に反映されて、複層塗膜の外観が悪化するためである。
しかしながら、作業効率を上げ、特に近年要請が強い省エネルギーを実現するために、自動車車体塗装業界においても、焼き付け硬化させないで複数の塗料を塗り重ね、その後、それらを同時に硬化させる複層塗膜形成方法が次第に採用されるようになってきた。
特開平4−284881号公報(特許文献1)には、被塗物の上に電着塗膜を形成した後に、水性下塗り塗料、水性上塗り塗料及びクリヤー塗料をウェットオンウェットで塗り重ね、3層の塗膜を同時に硬化させる、3コート1ベーク複層塗膜形成方法が記載されている。しかしながら、媒体として水性塗料に含まれる水は乾燥性に劣り、乾燥炉内で急に蒸発する。そして3コート1ベーク法では、未硬化塗膜が3層塗り重ねられている。そのために、仕上がった複層塗膜には媒体の蒸発によるワキや肌あれのような外観不良が生じ易い。
他方、塗料を塗布してから乾燥炉に至るまでに十分に時間をかけて塗膜を乾燥させるとかかる問題点は解消されるが、塗装工程が遅延して作業効率が低下する。それゆえ、水性塗料を塗布した後、乾燥炉で塗膜を焼き付け硬化させる前に、塗膜を予備乾燥させて塗膜固形分率を上昇させることが行われている。その場合は、塗膜外観と作業効率を両立させるために、乾燥条件を工夫することが必要となる。
特開2002−346460号公報(特許文献2)には、自動車車体に水性塗料を塗布し、塗膜を強制乾燥させて塗膜の固形分率を80%以上にした後に焼き付け硬化させる水性塗料の塗装方法が記載されている。特開昭62−193676号公報(特許文献3)には、被塗物の上に電着塗膜及び中塗り塗膜を形成した後に、水性ベース塗料を塗布し、塗膜を強制乾燥させた後に溶剤型クリヤー塗料を塗布し、2層の塗膜を同時に硬化させる2コート1ベーク複層塗膜形成方法が記載されている。しかしながら、これらの文献に記載の乾燥条件は非常に広範囲であり、現実的には塗膜外観と作業効率を両立することは困難である。また、3コート1ベーク複層塗膜形成方法では未硬化塗膜が3層も塗り重ねられていて媒体の蒸発による外観不良が生じ易いため、より厳格な乾燥条件が要求される。
特開2002−113415号公報(特許文献4)には、被塗物の上に電着塗膜を形成した後に、水性中塗り塗料、水性メタリックベース塗料及びクリヤー塗料を塗り重ね、3層の塗膜を同時に硬化させる3コート1ベーク複層塗膜形成方法が記載されている。この方法では、水性中塗り塗料を塗布した後にエアブローを行なって中塗り塗膜の固形分が制御され、水性ベース塗料を塗布するのと同時に温度及び湿度が調節された空気を噴射してベース塗膜の固形分が制御される。
しかしながら、ここではエアブローや空気噴射の条件が明確に規定されておらず、また水性ベース塗料を塗布しながら空気を噴射するためには特殊な塗装装置及び塗布ノズルが必要となる。更に、塗膜の固形分の制御はメタリック顔料の配向を制御するためになされており、かかる予備乾燥方法では媒体の蒸発による外観不良を防止することは困難である。
また、電着塗膜に関して、電着塗膜を形成する電着塗装のなかでも特にカチオン電着塗装は、複雑な形状を有する被塗物であっても細部にまで塗装を施すことができ、自動的かつ連続的に塗装することができるので、特に自動車車体などの大型で複雑な形状を有する被塗物の下塗り塗装方法として広く実用化されている。カチオン電着塗装は、カチオン電着塗料中に被塗物を陰極として浸漬し、電圧を印加することにより行なわれる。
カチオン電着塗料は、従来は、固形分濃度約20重量%を有する水性塗料組成物であり、撹拌せずに放置すると、顔料などが沈降し電着浴中に沈降物が生じる。通常カチオン電着塗料は、ポンプで循環したりや撹拌器で撹拌を行なうことにより、沈降物が生じないようにしている。
しかしながら、カチオン電着浴は自動車車体が浸漬できるほどの大掛かりな設備であるので、循環や撹拌にかかるエネルギー、それにかかわる設備、またその設備の維持にかかる費用は膨大なものとなる。そのような循環や撹拌を減らしたり、不要にすることはカチオン電着塗装における省エネルギーに多大な貢献をする。そのためにカチオン電着塗料が沈降物を生じないか、沈降物の少ないものであること、具体的には低固形分および/または低灰分のカチオン電着塗料を使用することが有効であり、当該カチオン電着塗料が検討されはじめている。
例えば、特開2004−231989号公報(特許文献5)には、カチオン電着塗料の顔料灰分が3〜10重量%および固形分濃度が5〜12重量%であるカチオン電着塗料を用いた環境対応型電着塗装方法の開示が存在する。このカチオン電着塗料は、沈降物が少なく、撹拌や循環にかかるエネルギーコストも少なく、優れたものということができるが、実際には、塗料固形分が少なくなっていくと、電導度が小さくなって、いわゆる「つきまわり性」と呼ばれる、電着塗装において被塗物の隅々まで塗膜が形成される性能が悪くなっていく。
自動車車体の電着塗装において、このようにつきまわり性が低下してしまうと、車体の内側(ドア内板、床、シャーシーなど)に形成される電着塗膜が薄くなるか、あるいは全く被覆されない状態になるなどの不具合が生じることになる。このような電着塗膜の薄膜化は、鋼板粗度が電着塗膜の薄膜によって上層での塗膜外観に大きく影響を及し、その結果、平滑性の低下が引き起こされるなどの塗膜外観の悪化につながる。ドア内側のステップ部やドア内板部は優れた外観が要求されるため、つきまわり性の影響を強く受ける。特に下地層(電着)の影響を受け易い水性3コート1ベーク(3C1B)塗装系では大幅に塗膜外観が悪化する。
塗膜の電導度を適切な値に調整することで好適なつきまわり性を付与できることは一般的に知られている。特許文献として、塗料の電導度とつきまわり性について言及されたものは、特開2004−269627号公報(特許文献6)が存在する。このカチオン電着塗料組成物は、スルホニウム変性エポキシ樹脂を配合しており、膜抵抗のコントロールが必要である。
また、電導度に影響を与えるカチオン電着塗料の基体樹脂のアミン価について検討をしているものは、特開2005−232397号公報(特許文献7)および特開平7−150079号公報(特許文献8)などが存在する。特許文献7では、ウレタン樹脂(基体樹脂)のアミン価を20〜60mgKOH/g(換算すると、35.7〜107.0mmol/100g)が望ましいとされ、また特許文献8のカチオン電着性樹脂はアミン価3〜200mgKOH/g(換算すると、5.3〜356mmol/100g)が望ましい範囲として記載されている。これらは、従来のアミン価の値であって、基本的には低いものである。
特開平4−284881号公報 特開2002−346460号公報 特開昭62−193676号公報 特開2002−113415号公報 特開2004−231989号公報 特開2004−269627号公報 特開2005−232397号公報 特開平7−150079号公報
本発明は、被塗物の上に電着塗膜を形成した後に、水性中塗り塗料、水性ベース塗料及びクリヤー塗料を塗り重ね、3層の塗膜を同時に硬化させる3コート1ベーク複層塗膜形成方法において、低固形分濃度の電着塗料組成物を用いても、自動車車体内部の塗装においても電着膜厚を低下させることなく、優れた複層塗膜外観が得られる方法、仕上がり性が良好な複層塗膜を短い工程数および/または時間で形成することができる方法、電着塗装からクリヤー塗装まで総合的にかかる消費エネルギーを削減できる方法の提供を目的とする。
本発明者らは、上述の課題を鑑み鋭意研究した結果、電導度制御剤、カチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を少なくとも含有する低固形分濃度カチオン電着塗料組成物を用いて被塗物に電着塗膜を形成し、さらに、当該電着塗膜の上に中塗り塗膜、ベース塗膜およびクリヤー塗膜からなる複層塗膜を3コート1ベーク(3C1B)法によって形成する際、未硬化の中塗り塗膜を予備乾燥することによって、中塗り塗膜の塗膜固形分率を特定の値の範囲内とし、未硬化のベース塗膜を予備乾燥することにより、ベース塗膜の塗膜固形分率を特定の値の範囲内とすることによって、塗装工程が遅延させることなく媒体の蒸発による外観不良を抑制することができ、また、仕上がり性が良好な複層塗膜を短い工程数および/または時間で形成することができることを見出した。従って、本発明は以下を提供する。
(1)被塗物に電着塗膜を形成する、電着塗膜形成工程;
(2)電着塗膜の上に水性中塗り塗料を塗布して未硬化の中塗り塗膜を形成する、中塗り塗膜形成工程;
(3)中塗り塗膜を硬化させることなく、未硬化の中塗り塗膜の上に、水性ベース塗料およびクリヤー塗料をウェットオンウェットで順次塗布して未硬化のベース塗膜およびクリヤー塗膜を形成する、ベース塗膜およびクリヤー塗膜形成工程;および
(4)未硬化の中塗り塗膜、ベース塗膜およびクリヤー塗膜を同時に焼き付け硬化させる工程;
を含む複層塗膜形成方法であって、
電着塗膜形成工程において被塗物に形成された電着塗膜は、電導度制御剤、カチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を少なくとも含有するカチオン電着塗料組成物を電着塗装することによって形成された電着塗膜であり、
前記カチオン電着塗料組成物の固形分濃度が0.5〜9重量%であり、
中塗り塗膜形成工程において、水性中塗り塗料を塗布して未硬化の中塗り塗膜を形成した後に予備乾燥を行うことによって、中塗り塗膜の塗膜固形分率を70〜98重量%とし、
ベース塗膜およびクリヤー塗膜形成工程において、水性ベース塗料を塗布した後に予備乾燥を行うことによって、ベース塗膜の塗膜固形分率を65〜98重量%とする、
複層塗膜形成方法。
前記水性中塗り塗料が、ガラス転移温度−50〜20℃、酸価2〜60mgKOH/gおよび水酸基価10〜120mgKOH/gを有するアクリル樹脂エマルションである樹脂、および硬化剤を含有することを特徴とする、上記複層塗膜形成方法。
前記硬化剤がメラミン樹脂、イソシアネート樹脂、オキサゾリン系化合物およびカルボジイミド系化合物からなる群から選択される、上記複層塗膜形成方法。
前記中塗り塗膜形成工程において、予備乾燥を行うことによって、中塗り塗膜の粘度を1×10mPa・秒(20℃、シェアレート0.1秒−1)以上に調整する、上記複層塗膜形成方法。
被塗物の上に電着塗膜を形成した後に、水性中塗り塗料、水性ベース塗料及びクリヤー塗料を塗り重ね、3層の塗膜を同時に硬化させる本発明の3コート1ベーク複層塗膜形成方法において、電導度制御剤、カチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を少なくとも含有するカチオン電着塗料組成物から電着塗膜を形成し、さらに、水性中塗り塗料を塗布して未硬化の中塗り塗膜を形成した後に予備乾燥を行うことによって、中塗り塗膜の塗膜固形分率を70〜98重量%とし、水性ベース塗料を塗布した後に予備乾燥を行うことによって、ベース塗膜の塗膜固形分率を65〜98重量%とすることによって、低固形分濃度の電着塗料組成物を用いても、自動車車体内部の塗装において電着膜厚を低下させることなく、優れた複層塗膜外観を得ることができる。本発明によって、仕上がり外観の良好な複層塗膜を短い工程数および/または時間で形成することができ、なおかつ、電着塗装からクリヤー塗装まで総合的にかかる消費エネルギーを削減することができる。
本発明は、以下の工程(1)〜(4)を包含する複層塗膜形成方法に関する:
(1)被塗物に電着塗膜を形成する、電着塗膜形成工程;
(2)電着塗膜の上に水性中塗り塗料を塗布して未硬化の中塗り塗膜を形成する、中塗り塗膜形成工程;
(3)中塗り塗膜を硬化させることなく、未硬化の中塗り塗膜の上に、水性ベース塗料およびクリヤー塗料をウェットオンウェットで順次塗布して未硬化のベース塗膜およびクリヤー塗膜を形成する、ベース塗膜およびクリヤー塗膜形成工程;および
(4)未硬化の中塗り塗膜、ベース塗膜およびクリヤー塗膜を同時に焼き付け硬化させる工程。
まず、上記複層塗膜形成方法で用いることのできる、カチオン電着塗料組成物、水性中塗り塗料、水性ベース塗料およびクリヤー塗料をそれぞれ詳細に説明し、次いで、本発明の複層塗膜形成方法を詳細に説明する。
カチオン電着塗料組成物
本方法は、まず、カチオン電着塗料組成物を用いて電着塗膜を被塗物に形成する。この被塗物は、必要に応じて、電着塗装前に化成処理されていてもよい。化成処理に用いることのできる化成処理剤としては、例えば、リン酸塩、クロム酸塩、ジルコニウム化合物(例えば、硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、硫酸ジルコニウム、硫酸ジルコニル、塩化ジルコニル、塩化ジルコニウム、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニルアンモニウム、酸化ジルコニウム等)等が挙げられる。
本発明で用いるカチオン電着塗料組成物は、電導度制御剤、カチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を少なくとも含有する。カチオン電着塗料組成物の好ましい態様としては、水性媒体、水性媒体中に分散するかまたは溶解した、カチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂、電導度制御剤、必要に応じて、他の成分や顔料および/または中和剤を含むカチオン電着塗料組成物が挙げられる。なお、本発明において使用する「電導度制御剤」は、カチオン電着塗料組成物の好ましい態様において、塗膜形成成分であるカチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂(および任意の顔料)とは別のエマルションとして存在している。そのためこの電導度制御剤は、バインダー樹脂(および任意の顔料)以外の第3成分として機能する。
電導度制御剤
本発明の方法で用いられるカチオン電着塗料組成物に含まれる電導度制御剤は、アミン価が200〜500mmol/100gを有するアミノ基含有化合物から構成される。本発明における電導度制御剤は、アミン価が上記範囲を有すれば、どのようなアミノ基含有物であってもよいが、通常はアミン変性エポキシ樹脂もしくはアミン変性アクリル樹脂が好ましい。また、本発明の電導度制御剤は必要に応じて、酸により中和されていても良い。アミン価は好ましくは250〜450mmol/100gであり、もっとも好ましくは300〜400mmol/100gである。アミン価が200mmol/100gよりも小さいと、低固形分濃度のカチオン電着塗料組成物の電気電導度を最適値に調整するための必要添加量が多くなり、耐食性を損なう恐れがある。また、500mmol/100gを超えると、析出性を低下させ、所望のつきまわり性が得られないといった欠点を有する。また亜鉛鋼板適性も低下する。
本発明における上記電導度制御剤としてのアミノ基含有化合物は、低分子のものから高分子のものまで考えられるが、通常アミン変性エポキシ樹脂やアミン変性アクリル樹脂などの高分子量のものの化合物が挙げられる。低分子量アミノ基含有化合物は、たとえばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルブチルアミンなどが挙げられる。
本発明では、高分子量のアミノ基含有化合物、特にアミン変性エポキシ樹脂およびアミン変性アクリル樹脂が好ましい。アミン変性エポキシ樹脂はエポキシ樹脂のエポキシ基をアミン化合物で変性することにより得られる。エポキシ樹脂は、一般的なものが使用できるが、ビスフェノール型エポキシ樹脂、t−ブチルカテコール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂であって、分子量が500〜20000を有するものが好適である。これらのエポキシ樹脂の中で、フェノールノボラック樹脂およびクレゾールノボラック型樹脂がもっとも望ましい。特に、これらのエポキシ樹脂は市販されている。たとえば、ダウケミカルジャパン社製フェノールノボラック樹脂DEN−438、東都化成社製クレゾールノボラック型エポキシ樹脂YDCN−703などが挙げられる。
これらのエポキシ樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、および単官能性のアルキルフェノールのような樹脂で変性しても良い。また、エポキシ樹脂はエポキシ基とジオール又はジカルボン酸との反応を利用して鎖延長することができる。
アミン変性アクリル樹脂としては、たとえばアミノ基含有モノマーであるジメチルアミノエチルメタクリレートのホモポリマーまたは他の重合性モノマーとの共重合体をそのまま用いても良いし、グリシジルメタクリレートのホモポリマーまたは他の重合性モノマーとの共重合体のグリシジル基をアミン化合物で変性することにより得ることができる。
エポキシ樹脂またはエポキシ基を含有するアクリル樹脂にアミノ基を導入する化合物としては、一級アミン、二級アミン、三級アミンなどが挙げられる。それらの具体例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ブチルアミン、ジメチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルエタノールアミン酢酸塩、ジエチルジスルフイド・酢酸混合物などの他、アミノエチルエタノールアミンのジケチミン、ジエチルヒドロアミンのジケチミンなどの一級アミンのブロックした二級アミンが挙げられる。アミン類は複数のものを使用してもよい。
前述のとおり、これらアミン変性エポキシ樹脂およびアミン変性アクリル樹脂の数平均分子量は500〜20000が好適である。数平均分子量が500よりも小さいと、耐食性を損なう恐れがあり、また理由は定かではないが、つきまわり性の低下および亜鉛鋼板適性の低下が見られる。数平均分子量が20000よりも大きいと仕上がり外観の低下を引き起こす恐れがある。
これらアミン変性エポキシ樹脂およびアミン変性アクリル樹脂は、あらかじめ中和酸により中和させて用いることもできる。中和に用いる酸は、塩酸、硝酸、リン酸、スルファミン酸、ギ酸、酢酸、乳酸のような無機酸または有機酸である。
当該カチオン電着塗料組成物は、上記電導度制御剤を含むことを特徴とする。そしてこの電導度制御剤が含まれることによって、塗料固形分濃度が0.5〜9.0重量%と低固形分型カチオン電着塗料組成物であるにも関わらず、優れたつきまわり性が確保されることとなる。この電導度制御剤を用いることによって、電導度を適正値に制御することが可能となり、その結果、十分なつきまわり性を確保することが可能となる。そしてこのカチオン電着塗料組成物は、塗料固形分濃度が0.5〜9.0重量%と低固形分型であるため、長時間静置させた場合であっても沈殿物が少ないという特徴も有している。さらに、電着塗装後に通常行われる水洗もより容易に行うことができ、これにより2次タレの発生を防止することができるという利点も有している。
カチオン性エポキシ樹脂(塗膜形成性成分としてのカチオン性エポキシ樹脂)
代表的なカチオン性エポキシ樹脂として、アミン変性エポキシ樹脂が挙げられる。アミン変性エポキシ樹脂は、電着塗料組成物において一般に使用されるアミンで変性されたエポキシ樹脂を特に制限なく用いることができる。アミン変性エポキシ樹脂として、当業者に公知のアミン変性エポキシ樹脂および市販のエポキシ樹脂をアミン変性したものなどを使用することができる。
好ましいアミン変性エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂の樹脂骨格中のオキシラン環を有機アミン化合物で変性して得られるアミン変性エポキシ樹脂である。一般に、アミン変性エポキシ樹脂は、出発原料樹脂分子内のオキシラン環を1級アミン、2級アミンあるいは3級アミンおよび/またはその酸塩等のアミン類との反応によって開環して製造される。出発原料樹脂の典型例は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等の多環式フェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応生成物であるポリフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂などである。
特開平5−306327号公報に記載される、下記式
Figure 2008229433
[式中、Rは独立してジグリシジルエポキシ化合物のグリシジルオキシ基を除いた残基、R’は独立してジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた残基、nは正の整数を意味する。]で示されるオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を、アミン変性エポキシ樹脂の調製に用いて、アミン変性オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を調製してもよい。耐熱性及び耐食性に優れた塗膜が得られるからである。エポキシ樹脂にオキサゾリドン環を導入する方法としては、例えば、メタノールのような低級アルコールでブロックされたブロックイソシアネート硬化剤とポリエポキシドとを塩基性触媒の存在下で加熱保温し、副生する低級アルコールを系内より留去する方法が挙げられる。二官能エポキシ樹脂とモノアルコールでブロックしたジイソシアネート(すなわち、ビスウレタン)とを反応させるとオキサゾリドン環を含有するエポキシ樹脂が得られることは公知である。このアミン変性オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂の具体例及び製造方法は、例えば、特開2000−128959号公報第0012〜0047段落に記載されており、公知である。
出発原料であるエポキシ樹脂は、必要に応じて、アミン類によるオキシラン環の開環反応の前に、2官能性のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ビスフェノール類、2塩基性カルボン酸等により鎖延長して用いることができる。
また、アミン類によるオキシラン環の開環反応の前に、分子量またはアミン当量の調節、熱フロー性の改良等を目的として、エポキシ樹脂の一部のオキシラン環に対して2−エチルヘキサノール、ノニルフェノール、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルなどのモノヒドロキシ化合物を付加して用いることもできる。
エポキシ樹脂のオキシラン環を開環し、アミノ基を導入する際に使用することができるアミン類の例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミンなどの1級アミン、2級アミンまたは3級アミンおよび/またはその酸塩を挙げることができる。また、アミノエチルエタノールアミンメチルイソブチルケチミンなどのケチミンブロック1級アミノ基含有2級アミン、ジエチレントリアミンジケチミンも使用することができる。これらのアミン類は、全てのオキシラン環を開環させるために、オキシラン環に対して少なくとも当量で反応させる必要がある。
上記アミン変性エポキシ樹脂の数平均分子量は1,500〜5,000の範囲であるのが好ましく、1,600〜3,000の範囲であるのがより好ましい。数平均分子量が1,500未満の場合は、硬化形成塗膜の耐溶剤性および耐食性等の物性が劣ることがある。また5,000を超える場合は、樹脂溶液の粘度制御が難しく合成が困難となるおそれがあり、さらに得られた樹脂の乳化分散等の操作上ハンドリングが困難となることがある。さらに高粘度であるがゆえに加熱、硬化時のフロー性が悪く、塗膜外観を損ねる場合がある。
上記アミン変性エポキシ樹脂は、ヒドロキシル価が50〜250mmol/100gの範囲となるように分子設計することが好ましい。ヒドロキシル価が50mmol/100g未満では塗腹の硬化不良を招き、反対に250mmol/100gを超えると硬化後に塗膜中に過剰の水酸基が残存し、その結果、耐水性が低下することがある。
また、上記アミン変性エポキシ樹脂は、アミン価が40〜150mmol/100gの範囲となるように分子設計することが好ましい。アミン価が40mmol/100g未満では下記で詳説する酸処理による水媒体中での乳化分散不良を招き、反対に150mmol/100gを超えると硬化後に塗膜中に過剰のアミノ基が残存し、その結果、耐水性が低下することがある。
ブロックイソシアネート硬化剤
カチオン電着塗料組成物には、ポリイソシアネートをブロック剤でブロックして得られるブロックイソシアネート硬化剤が含まれる。ここでポリイソシアネートとは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物をいう。ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族系、脂環式系、芳香族系および芳香族−脂肪族系等のうちのいずれのものであってもよい。
ポリイソシアネートの具体例には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、p−フェニレンジイソシアネート、及びナフタレンジイソシアネート等のような芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、及びリジンジイソシアネート等のような炭素数3〜12の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート、及び1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(水添XDI)、水添TDI、2,5−もしくは2,6−ビス(イソシアナートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(ノルボルナンジイソシアネートとも称される。)等のような炭素数5〜18の脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、及びテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等のような芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;これらのジイソシアネートの変性物(ウレタン化物、カーボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、ビューレット及び/又はイソシアヌレート変性物);等があげられる。これらは、単独で用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。
ポリイソシアネートをエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどの多価アルコールとNCO/OH比2以上で反応させて得られる付加体ないしプレポリマーもブロックイソシアネート硬化剤として使用してよい。
脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートの好ましい具体例には、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添TDI、水添MDI、水添XDI、IPDI、ノルボルナンジイソシアネート、それらの二量体(ビウレット)、三量体(イソシアヌレート)等が挙げられる。
ブロックイソシアネート硬化剤は、イソシアネート基末端前駆体の遊離のイソシアネート基を活性水素基含有化合物(ブロック剤)と反応させて常温では不活性としたものであり、これを加熱するとブロック剤が解離してイソシアネート基が再生されるという性質を持つものである。
ブロックイソシアネート硬化剤のブロック剤として、例えば、1−クロロ−2−プロパノール、n−プロパノール、フルフリルアルコール、アルキル基置換フルフリルアルコールなどの脂肪族または複素環式アルコール類、フェノール、m−クレゾール、p−ニトロフェノール、p−クロロフェノール、ノニルフェノールなどのフェノール類、メチルエチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、アセトンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム類、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、マロン酸エチルなどの活性メチレン化合物、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタムなどのカプロラクタム類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの脂肪族アルコール、ベンジルアルコールなどの芳香族アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテルなどを挙げることができる。なおこれらのブロック剤は、1種のみ単独で用いてもよく、また2種以上のものを併用してもよい。
顔料
電着塗料組成物は、通常用いられる顔料を含んでもよい。使用できる顔料の例としては、通常使用される無機顔料、例えば、チタンホワイト(二酸化チタン)、カーボンブラック及びベンガラのような着色顔料;カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカおよびクレーのような体質顔料;リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、シアン化亜鉛、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム及びリンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛、水酸化ビスマス、酸化ビスマス、塩基性炭酸ビスマス、硝酸ビスマス、安息香酸ビスマス、クエン酸ビスマス、ケイ酸ビスマスのような防錆顔料等が挙げられる。
本発明におけるカチオン電着塗料組成物においては、顔料は、電着塗料組成物の全固形分に対して2〜40重量%、好ましくは2〜7重量%を占める量で電着塗料組成物に含有される。
顔料分散ペースト
顔料を電着塗料組成物の成分として用いる場合、一般に顔料を顔料分散樹脂と呼ばれる樹脂と共に予め高濃度で水性媒体に分散させてペースト状にする。顔料は粉体状であるため、電着塗料組成物で用いる低濃度均一状態に一工程で分散させるのは困難だからである。一般にこのようなペーストを顔料分散ペーストという。
顔料分散ペーストは、顔料を顔料分散樹脂と共に水性媒体中に分散させて調製する。顔料分散樹脂としては、一般に、カチオン性又はノニオン性の低分子量界面活性剤や4級アンモニウム基及び/又は3級スルホニウム基を有する変性エポキシ樹脂等のようなカチオン性重合体を用いる。水性媒体としてはイオン交換水や少量のアルコール類を含む水等を用いる。一般に、顔料分散樹脂は5〜40重量部、顔料は10〜30重量部の固形分比で用いる。
上記顔料分散樹脂および顔料を、樹脂固形分100重量部に対し10〜1000重量部混合した後、その混合物中の顔料の粒径が所定の均一な粒径となるまで、ボールミルやサンドグラインドミル等の通常の分散装置を用いて分散させて、顔料分散ペーストを得る。
他の成分
上記カチオン電着塗料組成物は、上記成分の他にブロックイソシアネート硬化剤のブロック剤解離のための解離触媒を含んでもよい。このような解離触媒として、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫オキシド、ジオクチル錫オキシドなどの有機錫化合物や、N−メチルモルホリンなどのアミン類、ストロンチウム、コバルト、銅などの金属塩が使用できる。解離触媒の濃度は、カチオン電着塗料組成物中のカチオン性エポキシ樹脂とブロックイソシアネート硬化剤合計の100固形分重量部に対し0.1〜6重量部であるのが好ましい。
カチオン電着塗料組成物の調製
カチオン電着塗料組成物は、カチオン性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤および電導度制御剤、必要に応じて顔料分散ペーストを水性媒体(例えば、純水、蒸留水、イオン交換水など)中に分散または溶解することによって調製される。また、通常、水性媒体にはカチオン性エポキシ樹脂の分散性を向上させるために中和剤を含有させてもよい。中和剤は塩酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸のような無機酸または有機酸である。その量は少なくとも20%、好ましくは30〜60%の中和率を達成する量である。
ブロックイソシアネート硬化剤の量は、硬化時にカチオン性エポキシ樹脂中の1級、2級又は/及び3級アミノ基、水酸基等の活性水素含有官能基と反応して良好な硬化塗膜を与えるのに十分でなければならず、カチオン性エポキシ樹脂の硬化剤に対する固形分重量比(カチオン性エポキシ樹脂/硬化剤)で表して一般に90/10〜50/50、好ましくは80/20〜65/35の範囲である。カチオン性エポキシ樹脂とブロックイソシアネート硬化剤とを含むバインダー樹脂は、一般に、カチオン電着塗料組成物の全固形分の25〜85重量%、好ましくは40〜70重量%を占める量で電着塗料組成物に含有される。
カチオン電着塗料組成物に含まれる電導度制御剤の量は、特に限定されるものではないが、具体的には、カチオン電着塗料組成物の塗料固形分に基づいて0.5〜30重量%であるのが好ましく、1〜30重量%であるのがより好ましく、1〜15重量%であるのがさらに好ましい。電導度制御剤の量は0.5重量%より少なくてもよいが、十分な電気電導度が得られないことがある。また、電導度制御剤の量は30重量%を超えてもよいが、添加量に比例した電気電導度の増加が見られなくなる。
当該カチオン電着塗料組成物は、上記記載の成分を含むものであれば、特に限定するものではないが、当該電導度制御剤が有効に作用するカチオン電着塗料組成物は低固形分型のものである。また、当該カチオン電着塗料組成物は、低灰分型であってもよい。
低固形分型のカチオン電着塗料組成物は、固形分濃度が従来の20重量%未満の固形分濃度、特に0.5〜9重量%であり、より好ましい下限は3重量%である。0.5重量%を下回ると、下塗り塗膜としての電着塗膜が得られないおそれがある。一方、固形分濃度は9重量%を超える場合は、静置した無撹拌状態においてカチオン電着塗料組成物中に含まれる顔料成分が沈降するおそれがある。また、電導度制御剤を添加して塗料の電気電導度を調整する必要が無くなる可能性がある。
カチオン電着塗料組成物の塗料固形分濃度を減少する方法として、顔料成分を減少する方法を採る場合、塗料中の灰分(即ち、塗料を燃焼した場合に残存する固体状灰の重量を塗料の固形分重量で割って、100をかけたもの)が減少することになる。従って、当該カチオン電着塗料組成物は、低灰分型ということもできる。灰分は通常のカチオン電着塗料組成物の場合、15〜40重量%であるので、低灰分型のカチオン電着塗料組成物の灰分量は好ましくは2〜7重量%、より好ましくは3〜5重量%である。
本発明で用いるカチオン電着塗料組成物の電気電導度は、例えば、900〜2000μS/cmである。
電気電導度が、900μS/cm未満であると、所望のつきまわり性が得られないなどの問題の恐れがあり、2000μS/cmを超過すると、例えば亜鉛鋼板塗装時にガスピンと呼ばれる塗膜欠陥が生じ易いなどの問題の恐れがある。
水性中塗り塗料
本発明の方法で用いる水性中塗り塗料は、下地を隠蔽し、上塗り塗装後の表面平滑性を確保(外観向上)し、耐衝撃性等の塗膜物性を付与するために塗布されるものである。水性中塗り塗料は、水性媒体中に分散または溶解された状態で、アクリル樹脂エマルションである樹脂、硬化剤等を含有する。
アクリル樹脂エマルションは水性中塗り塗料において樹脂として機能し、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)、酸基含有エチレン性不飽和モノマー(b)、及び水酸基含有エチレン性不飽和モノマー(c)を含むモノマー混合物を乳化重合して得ることができる。尚、モノマー混合物の成分として以下に例示される化合物は、1種又は2種以上を適宜組み合わせて使用してよい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)はアクリル樹脂エマルションの主骨格を構成するために使用する。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
酸基含有エチレン性不飽和モノマー(b)は、得られるアクリル樹脂エマルションの保存安定性、機械的安定性、凍結に対する安定性等の諸安定性を向上させ、塗膜形成時におけるメラミン樹脂等の硬化剤との硬化反応を促進するために使用する。酸基は、カルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基等から選ばれることが好ましい。特に好ましい酸基は上記諸安定性向上や硬化反応促進機能の観点から、カルボキシル基である。
カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、エタクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸及びフマル酸等が挙げられる。スルホン酸基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、p−ビニルベンゼンスルホン酸、p−アクリルアミドプロパンスルホン酸、t−ブチルアクリルアミドスルホン酸等が挙げられる。リン酸基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレートのリン酸モノエステル、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートのリン酸モノエステル等のライトエステルPM(共栄社化学製)等が挙げられる。
水酸基含有エチレン性不飽和モノマー(c)は、水酸基に基づく親水性をアクリル樹脂エマルションに付与し、これを塗料として用いた場合における作業性や凍結に対する安定性を増すと共に、メラミン樹脂やイソシアネート系硬化剤との硬化反応性を付与するために使用する。
水酸基含有エチレン性不飽和モノマー(c)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド、アリルアルコール、ε−カプロラクトン変性アクリルモノマー等が挙げられる。
ε−カプロラクトン変性アクリルモノマーの具体例としては、ダイセル化学工業(株)製の「プラクセルFA−1」、「プラクセルFA−2」、「プラクセルFA−3」、「プラクセルFA−4」、「プラクセルFA−5」、「プラクセルFM−1」、「プラクセルFM−2」、「プラクセルFM−3」、「プラクセルFM−4」及び「プラクセルFM−5」等が挙げられる。
モノマー混合物は、任意成分として、スチレン系モノマー、(メタ)アクリロニトリル及び(メタ)アクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーを含んでよい。スチレン系モノマーとしては、スチレンのほかにα−メチルスチレン等が挙げられる。
また、モノマー混合物は、カルボニル基含有エチレン性不飽和モノマー、加水分解重合性シリル基含有モノマー、種々の多官能ビニルモノマー等の架橋性モノマーを含んでよい。その場合、得られるアクリル樹脂エマルションは自己架橋性となる。
カルボニル基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、アクロレイン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するアルキルビニルケトン(例えばメチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトン)等のケト基を含有するモノマーが挙げられる。これらのうちジアセトン(メタ)アクリルアミドが好適である。このようなカルボニル基含有モノマーを用いる場合には、アクリル樹脂エマルション中に架橋助剤としてヒドラジン系化合物を添加して、塗膜形成時に架橋構造が形成されるようにする。
ヒドラジン系化合物としては、例えば、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等の2〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪族カルボン酸ジヒドラジド;マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等のモノオレフィン性不飽和ジカルボン酸ジヒドラジド;フタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、ピロメリット酸のジヒドラジド、トリヒドラジド又はテトラヒドラジド;ニトリロトリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4-ベンゼントリヒドラジド、エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8-ナフトエ酸テトラヒドラジド、カルボン酸低級アルキルエステル基を有する低重合体をヒドラジン又はヒドラジン水化物(ヒドラジンヒドラード)と反応させて得られるポリヒドラジド;炭酸ジヒドラジド、ビスセミカルバジド;ヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート又はそれより誘導されるポリイソシアネート化合物にヒドラジン化合物や上記例示のジヒドラジドを過剰に反応させて得られる水系多官能セミカルバジド等が挙げられる。
加水分解重合性シリル基含有モノマーとしては、例えば、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を含有するモノマーが挙げられる。
多官能ビニル系モノマーは、分子内に2つ以上のラジカル重合可能なエチレン性不飽和基を有する化合物であり、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールジ(メタ)アクリレート等のジビニル化合物が挙げられ、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等も挙げられる。
乳化重合は、上記モノマー混合物を水性液中で、ラジカル重合開始剤及び乳化剤の存在下で、攪拌下加熱することによって実施することができる。反応温度は例えば30〜100℃程度として、反応時間は例えば1〜10時間程度が好ましく、水と乳化剤を仕込んだ反応容器にモノマー混合物又はモノマープレ乳化液の一括添加又は暫時滴下によって反応温度の調節を行うとよい。
ラジカル重合開始剤としては、通常アクリル樹脂の乳化重合で使用される公知の開始剤が使用できる。具体的には、水溶性のフリーラジカル重合開始剤として、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩が水溶液の形で使用される。また、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などの酸化剤と、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸などの還元剤とが組み合わされたいわゆるレドックス系開始剤が水溶液の形で使用される。
乳化剤としては、炭素数が6以上の炭素原子を有する炭化水素基と、カルボン酸塩、スルホン酸塩又は硫酸塩部分エステルなどの親水性部分とを同一分子中に有するミセル化合物から選ばれるアニオン系又は非イオン系(ノニオン系)の乳化剤が用いられる。このうちアニオン系の乳化剤としては、アルキルフェノール類又は高級アルコール類の硫酸半エステルのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩;アルキル又はアリルスルホナートのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアリルエーテルの硫酸半エステルのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩などが挙げられる。また非イオン系の乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアリルエーテルなどが挙げられる。またこれら一般汎用のアニオン系、ノニオン系乳化剤の他に、分子内にラジカル重合性の不飽和二重結合を有する、すなわちアクリル系、メタクリル系、プロペニル系、アリル系、アリルエーテル系、マレイン酸系などの基を有する各種アニオン系、ノニオン系反応性乳化剤なども適宜、単独又は2種以上の組み合わせで使用される。
また乳化重合の際、メルカプタン系化合物や低級アルコールなどの分子量調節のための助剤(連鎖移動剤)の併用は、乳化重合を進める観点から、また塗膜の円滑かつ均一な形成を促進し基材への接着性を向上させる観点から、好ましい場合も多く、適宜状況に応じて行われる。
また乳化重合としては、通常の一段連続モノマー均一滴下法、多段モノマーフィード法であるコア・シェル重合法や、重合中にフィードするモノマー組成を連続的に変化させるパワーフィード重合法など、いずれの重合法もとることができる。
このようにして本発明で用いられるアクリル樹脂エマルションが調製される。得られたアクリル樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、一般的に5万〜100万程度であり、例えば10万〜80万程度である。
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、−50℃〜20℃、好ましくは−40℃〜10℃、さらに好ましくは−30℃〜0℃の範囲とする。この範囲の樹脂のTgとすることにより、アクリル樹脂エマルションを含む水性中塗り塗料をウェットオンウェット方式において用いた場合に、下塗り塗料及び上塗り塗料との親和性や密着性が良好となり、ウェット状態の上側塗膜との界面でのなじみが良く反転が起こらない。また、最終的に得られる塗膜の適度な柔軟性が得られ、耐チッピング性が高められる。これらの結果、非常に高外観を有する複層塗膜が形成できる。樹脂のTgが−50℃未満では塗膜の機械的強度が不足し、耐チッピング性が弱い。一方、樹脂のTgが20℃を超えると、塗膜が硬くて脆くなるため、耐衝撃性に欠け、耐チッピング性が弱くなる。前記各モノマー成分の種類や配合量を、樹脂のTgが上記範囲となるように選択する。
アクリル樹脂の酸価は2〜60mgKOH/g、好ましくは5〜50mgKOH/gの範囲とする。この範囲の樹脂の酸価とすることにより、樹脂エマルションやそれを用いた水性中塗り塗料の保存安定性、機械的安定性、凍結に対する安定性等の諸安定性が向上し、また、塗膜形成時におけるメラミン樹脂等の硬化剤との硬化反応が十分起こり、塗膜の諸強度、耐チッピング性、耐水性が向上する。樹脂の酸価が2mgKOH/g未満では、上記諸安定性が劣り、また、メラミン樹脂等の硬化剤との硬化反応が十分行われず、塗膜の諸強度、耐チッピング性、耐水性が劣る。一方、樹脂の酸価が60mgKOH/gを超えると、樹脂の重合安定性が悪くなったり、上記諸安定性が逆に悪くなったり、得られた塗膜の耐水性が劣るものとなる。前記各モノマー成分の種類や配合量を、樹脂の酸価が上記範囲となるように選択する。前述したように、酸基含有エチレン性不飽和モノマー(b)の内でもカルボキシル基含有モノマーを用いることが重要であり、モノマー(b)の内、カルボキシル基含有モノマーが好ましくは50重量%以上、より好ましくは80重量%以上含まれる。
アクリル樹脂の水酸基価は10〜120mgKOH/g、好ましくは20〜100mgKOH/gの範囲とする。この範囲の樹脂の水酸基価とすることにより、樹脂が適度な親水性を有し、樹脂エマルションを含む塗料組成物として用いた場合における作業性や凍結に対する安定性が増すと共に、メラミン樹脂やイソシアネート系硬化剤との硬化反応性も十分である。水酸基価が10mgKOH/g未満では、前記硬化剤との硬化反応が不十分で、塗膜の機械的性質が弱く、耐チッピング性に欠け、耐水性及び耐溶剤性にも劣る。一方、水酸基価が120mgKOH/gを超えると、逆に得られた塗膜の耐水性が低下したり、前記硬化剤との相溶性が悪く、塗膜にひずみが生じ硬化反応が不均一に起こり、その結果、塗膜の諸強度、特に耐チッピング性、耐溶剤性及び耐水性が劣る。前記各モノマー成分の種類や配合量を、樹脂の水酸基価が上記範囲となるように選択する。
得られたアクリル樹脂エマルションに対し、カルボン酸の一部又は全量を中和してアクリル樹脂エマルションの安定性を保つため、塩基性化合物が添加される。これら塩基性化合物としては、通常アンモニア、各種アミン類、アルカリ金属などが用いられ、本発明においても適宜使用される。
硬化剤は、エマルションとして含まれるアクリル樹脂やウレタン樹脂と硬化反応を生じ、水性中塗り塗料中に配合することができるものであれば特に限定されず、例えば、メラミン樹脂、イソシアネート樹脂、オキサゾリン系化合物およびカルボジイミド系化合物等が挙げられる。これらの1種又は2種以上が適宜組み合わされ使用される。塗膜性能上、メラミン樹脂またはカルボジイミド系化合物を含有することが好ましい。
メラミン樹脂としては特に限定されず、硬化剤として通常用いられるものを使用することができる。但し、疎水性メラミン樹脂が好ましい。得られる複層塗膜の外観が向上するからである。
メラミン樹脂は、硬化剤として通常用いられるものを使用することができる。例えば、アルキルエーテル化したアルキルエーテル化メラミン樹脂が好ましく、メトキシ基及び/又はブトキシ基で置換されたメラミン樹脂がより好ましい。このようなメラミン樹脂としては、メトキシ基を単独で有するものとして、サイメル325、サイメル327、サイメル370、マイコート723;メトキシ基とブトキシ基との両方を有するものとして、サイメル202、サイメル204、サイメル232、サイメル235、サイメル236、サイメル238、サイメル254、サイメル266、サイメル267(何れも商品名、三井サイテック社製);ブトキシ基を単独で有するものとして、マイコート506(商品名、三井サイテック社製)、ユーバン20N60、ユーバン20SE(何れも商品名、三井化学社製)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、サイメル325、サイメル327、マイコート723がより好ましい。
イソシアネート樹脂は、ジイソシアネート化合物を適当なブロック剤でブロックしたものである。上記ジイソシアネート化合物は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)等の脂肪族ジイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂環族ジイソシアネート類;キシリレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族−脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等の芳香族ジイソシアネート類;ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、水素化されたTDI(HTDI)、水素化されたXDI(H6XDI)、水素化されたMDI(H12MDI)等の水素添加ジイソシアネート類、及び以上のジイソシアネート類のアダクト体及びヌレート体等を挙げることができる。さらに、これらの1種又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
ジイソシアネート化合物をブロックするブロック剤としては、特に限定されず、例えば、メチルエチルケトオキシム、アセトキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類;m−クレゾール、キシレノール等のフェノール類;ブタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール類;ε−カプロラクタム等のラクタム類;マロン酸ジエチル、アセト酢酸エステル等のジケトン類;チオフェノール等のメルカプタン類;チオ尿酸等の尿素類;イミダゾール類;カルバミン酸類等を挙げることができる。なかでも、オキシム類、フェノール類、アルコール類、ラクタム類、ジケトン類が好ましい。
オキサゾリン系化合物は、2個以上の2−オキサゾリン基を有する化合物であることが好ましく、例えば、下記のオキサゾリン類やオキサゾリン基含有重合体等を挙げることができる。これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。オキサゾリン系化合物は、アミドアルコールを触媒の存在下で加熱して脱水環化する方法、アルカノールアミンとニトリルとから合成する方法、或いはアルカノールアミンとカルボン酸とから合成する方法等を用いることによって得られる。
オキサゾリン類としては、例えば、2,2’−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2、2’−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
オキサゾリン基含有重合体は、付加重合性オキサゾリン及び必要に応じて少なくとも1種の他の重合性単量体を重合したものである。付加重合性オキサゾリンとしては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等を挙げることができる。これらの1種又は2種以上が適宜組み合わされて使用される。中でも、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。
付加重合性オキサゾリンの使用量は特に限定されるものではないが、オキサゾリン基含有重合体中、1重量%以上であることが好ましい。1重量%未満の量では硬化の程度が不充分となる傾向にあり、耐久性、耐水性等が損なわれる傾向にある。
他の重合性単量体としては、付加重合性オキサゾリンと共重合可能で、かつ、オキサゾリン基と反応しない単量体であれば特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等のハロゲン化α,β−不飽和単量体類;スチレン、α−メチルスチレン等のα,β−不飽和芳香族単量体類等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
オキサゾリン基含有重合体は付加重合性オキサゾリン及び必要に応じて少なくとも1種の他の重合性単量体を、従来公知の重合法、例えば懸濁重合、溶液重合、乳化重合等により製造できる。上記オキサゾリン基含有化合物の供給形態は、有機溶剤溶液、水溶液、非水ディスパーション、エマルション等が挙げられるが、特にこれらの形態に限定されない。
カルボジイミド系化合物としては、種々の方法で製造したものを使用することができるが、基本的には有機ジイソシアネートの脱二酸化炭素を伴う縮合反応によりイソシアネート末端ポリカルボジイミドを合成して得られたものを挙げることができる。より具体的には、ポリカルボジイミド系化合物の製造において、(a)1分子中にイソシアネート基を少なくとも2個含有するポリカルボジイミド化合物と、(b)分子末端に水酸基を有するポリオールとを、上記(a)ポリカルボジイミド化合物のイソシアネート基のモル量が上記(b)ポリオールの水酸基のモル量を上回る比率で反応させる工程と、上記工程で得られた反応生成物に、活性水素および親水性部分を有する親水化剤(c)を反応させる工程とにより得られた親水化変性カルボジイミド化合物が好ましいものとして挙げることができる。
1分子中にイソシアネート基を少なくとも2個含有するカルボジイミド化合物(a)としては、特に限定されないが、反応性の観点から、両末端にイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物であることが好ましい。両末端にイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物の製造方法は当業者によく知られており、例えば、有機ジイソシアネートの脱二酸化炭素を伴う縮合反応を利用することができる。
本発明に用いられる水性中塗り塗料に含有される親水化変性カルボジイミド化合物は、カルボジイミドユニットとポリオールユニットとがウレタン結合を介して交互に繰り返し連続して存在しており、分子両末端において、ウレタン結合を介してモノアルコキシポリアルキレンオキサイドユニットがカルボジイミドユニットに結合しているものである。
上記カルボジイミドユニットとは、1分子中にイソシアネート基を少なくとも2個含有するポリカルボジイミド化合物(a)からイソシアネート基を除いたものであり、−(−N=C=N−R7−)n−(R7は飽和であっても不飽和であっても、また、窒素原子および/または酸素原子を含んでいてもよい炭化水素基、nは重合度であり、2〜20の自然数)で表される単位をいう。
上記ポリカルボジイミド化合物(a)は、上記親水化変性カルボジイミド化合物の製造方法のところで述べたものと同一である。
上記ポリオールユニットとは、1分子中に水酸基を少なくとも2個含有するポリオール(b)から活性水素を除いたものである単位をいう。
上記ポリオール(b)は、上記親水化変性カルボジイミド化合物の製造方法のところで述べたものと同一である。
親水化変性カルボジイミド化合物における上記カルボジイミドユニットおよび上記ポリオールユニットは、−NHCO−で表されるウレタン結合を介して交互に繰り返し連続して存在している。上記繰り返し回数としては、特に限定されないが、反応効率の観点から、1〜10であることが好ましい。
本発明の親水化変性カルボジイミド化合物は、その分子両末端がモノアルコキシポリアルキレンオキサイドユニットであって、上記モノアルコキシポリアルキレンオキサイドユニットが上記ウレタン結合を介して上記カルボジイミドユニットに結合している。
上記モノアルコキシポリアルキレンオキサイドユニットとしては、上記モノアルコキシポリアルキレングリコールから活性水素を除いたものであり、R5−O−(CH2−CHR6−O−)m−(但し、式中R5、R6、mは上記と同一)で表される単位をいう。
上記モノアルコキシポリアルキレングリコールとしては、具体的には、上記親水化変性カルボジイミド化合物の製造方法のところで述べたものと同一である。
本発明で用いる水性中塗り塗料は、さらに以下の成分を含むことができる。例えば、追加の樹脂成分、顔料分散ペースト、増粘剤、その他の添加剤成分等である。
上記追加の樹脂成分としては特に限定されないが、例えば、ウレタン樹脂エマルション、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、カーボネート樹脂及びエポキシ樹脂等を挙げることができる。
顔料分散ペーストは、顔料と顔料分散剤とを少量の水性媒体に予め分散して得られる。顔料分散剤の固形分中には、揮発性の塩基性物質が全く含まれていないか、又は3重量%以下の割合で含まれている。本発明で用いる水性中塗り塗料においては、このような顔料分散剤を用いることによって、水性中塗り塗料から形成される塗膜中の揮発性塩基性物質の量が少なくなり、得られる複層塗膜の黄変を抑えることができる。従って、顔料分散剤の固形分中に揮発性の塩基性物質が3重量%を超えて含まれていると、得られる複層塗膜が黄変し、仕上がり外観が悪くなる傾向にあるため好ましくない。
揮発性の塩基性物質とは、沸点が300℃以下の塩基性物質を意味するものであり、無機及び有機の窒素含有塩基性物質を挙げることができる。無機の塩基性物質としては、例えば、アンモニア等が挙げられる。有機の塩基性物質としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジメチルドデシルアミン等の炭素数1〜20の直鎖状又は分枝状のアルキル基含有1〜3級アミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール等の炭素数1〜20の直鎖状又は分枝状ヒドロキシアルキル基含有1〜3級アミン;ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の炭素数1〜20の直鎖状又は分枝状のアルキル基及び炭素数1〜20の直鎖状又は分枝状のヒドロキシアルキル基を含有する1〜3級アミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の炭素数1〜20の置換又は非置換鎖状ポリアミン;モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等の炭素数1〜20の置換又は非置換環状モノアミン;ピペラジン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、N,N−ジメチルピペラジン等の炭素数1〜20の置換又は非置換環状ポリアミン等のアミン類を挙げることができる。
本発明で用いる水性中塗り塗料には、上記顔料分散剤以外の成分にも、揮発性の塩基性物質が含まれる場合がある。従って、上記顔料分散剤に含まれる揮発性の塩基性物重量は、より少なく抑える程、より好ましい。すなわち、揮発性の塩基性物質を実質的に含まない顔料分散剤を用いて分散することが好ましい。また、従来一般的に使用されているアミン中和型の顔料分散樹脂を使用しないことが更に好ましい。そして、複層塗膜形成時に、単位面積1mm2あたりの揮発性の塩基性物質が7×10-6mmol以下になるように顔料分散剤を用いることが好ましい。
顔料分散剤は、顔料親和部分及び親水性部分を含む構造を有する樹脂である。顔料親和部分及び親水性部分としては、例えば、ノニオン性、カチオン性及びアニオン性の官能基を挙げることができる。顔料分散剤は、1分子中に上記官能基を2種類以上有していてもよい。
ノニオン性官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、アミド基、ポリオキシアルキレン基等が挙げられる。カチオン性官能基としては、例えば、アミノ基、イミノ基、ヒドラジノ基等が挙げられる。また、アニオン性官能基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。このような顔料分散剤は、当業者にとってよく知られた方法によって製造することができる。
顔料分散剤としては、その固形分中に揮発性の塩基性物質を含まないか、又は3重量%以下の含有量であるものであれば特に限定されないが、少量の顔料分散剤によって効率的に顔料を分散することができるものが好ましい。例えば、市販されているもの(以下いずれも商品名)を使用することもでき、具体的には、ビックケミー社製のアニオン・ノニオン系分散剤であるDisperbyk 190、Disperbyk 181、Disperbyk 182(高分子共重合物)、Disperbyk 184(高分子共重合物)、EFKA社製のアニオン・ノニオン系分散剤であるEFKAPOLYMER4550、アビシア社製のノニオン系分散剤であるソルスパース27000、アニオン系分散剤であるソルスパース41000、ソルスパース53095等を挙げることができる。
顔料顔料分散剤の数平均分子量は、下限1000、上限10万であることが好ましい。1000未満であると、分散安定性が充分ではない場合があり、10万を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となる場合がある。より好ましくは、下限2000、上限5万であり、更に好ましくは、下限4000、上限5万である。
前記顔料分散ペーストは、顔料分散剤と顔料とを公知の方法に従って混合分散することにより得られる。顔料分散ペースト製造時の顔料分散剤の割合は、顔料分散ペーストの固形分に対して、下限1重量%、上限20重量%であることが好ましい。1重量%未満であると、顔料を安定に分散しにくく、20重量%を超えると、塗膜の物性に劣る場合がある。好ましくは、下限5重量%、上限15重量%である。
顔料としては、通常の水性塗料に使用される顔料であれば特に限定されないが、耐候性を向上させ、かつ隠蔽性を確保する点から、着色顔料であることが好ましい。特に二酸化チタンは着色隠蔽性に優れ、しかも安価であることから、より好ましい。
二酸化チタン以外の顔料としては、例えば、アゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、金属錯体顔料等の有機系着色顔料; 黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック等の無機系着色顔料等が挙げられる。これら顔料に、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク等の体質顔料を併用しても良い。
また顔料として、カーボンブラックと二酸化チタンとを主要顔料とした標準的なグレーの塗料を用いることもできる。他にも、上塗り塗料と明度又は色相等を合わせた塗料や各種の着色顔料を組み合わせた塗料を用いることもできる。
増粘剤としては特に限定されないが、例えば、ビスコース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、市販されているものとしては、チローゼMH及びチローゼH(いずれもヘキスト社製、商品名)等のセルロース系のもの;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、市販されているもの(以下いずれも商品名)としては、プライマルASE−60、プライマルTT−615、プライマルRM−5(いずれもローム&ハース社製)、ユーカーポリフォーブ(ユニオンカーバイト社製)等のアルカリ増粘型のもの;ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、市販されているもの(以下いずれも商品名)としては、アデカノールUH−420、アデカノールUH−462、アデカノールUH−472、UH−540、アデカノールUH−814N(旭電化工業社製)、プライマルRH−1020(ローム&ハース社製)、クラレポバール(クラレ社製)等の会合型のものを挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
増粘剤を含有することにより、水性中塗り塗料の粘度を高くすることができ、水性中塗り塗料を塗装する際に、タレが発生することを抑制することができる。また、中塗り塗膜とベース塗膜との間での混層をより抑制することができる。その結果、増粘剤を含まない場合に比べて、塗装時の塗装作業性が向上し、得られる塗膜の仕上がり外観を優れたものとすることができる。
その他の添加剤としては、上記成分の他に通常添加される添加剤、例えば、紫外線吸収剤;酸化防止剤;消泡剤;表面調整剤;ピンホール防止剤等が挙げられる。これらの配合量は当業者の公知の範囲である。
本発明で使用する水性中塗り塗料は、上述のアクリル樹脂エマルション、硬化剤、及び顔料分散ペースト等を混合して調製される。
硬化剤は、硬化剤およびアクリル樹脂エマルションの固形分に対して下限2重量%、上限50重量%、好ましくは下限4重量%、上限40重量%、より好ましくは下限5重量%、上限30重量%となるように使用する。2重量%より少ないと、得られる塗膜の耐水性が低下する傾向がある。また、50重量%を超えると、得られる塗膜のピーリング性が低下する傾向がある。
追加の樹脂成分、顔料分散ペーストやその他の添加剤は、適量混合すれば良い。但し、追加の樹脂成分は、水性中塗り塗料用組成物中に含まれる全ての樹脂の固形分を基準として、50重量%以下の割合で配合することが好ましい。50重量%を越えて配合した場合は、塗料中の固形分濃度を高くすることが困難になるため、好ましくない。
顔料は、水性中塗り塗料中に含まれる全ての樹脂の固形分及び顔料の合計重量に対する顔料濃度(PWC;pigment weight content)が、10〜60重量%であることが好ましい。10重量%未満では、隠蔽性が低下するおそれがある。60重量%を超えると、硬化時の粘性増大を招き、フロー性が低下して塗膜外観が低下することがある。
増粘剤の含有量は、上記水性中塗り塗料の樹脂固形分(水性中塗り塗料に含まれる全ての樹脂の固形分)100重量部に対して、下限0.01重量部、上限20重量部であることが好ましく、下限0.1重量部、上限10重量部であることがより好ましい。0.01重量部未満であると、増粘効果が得られず、塗装時のタレが発生するおそれがあり、20重量部を超えると、外観及び得られる塗膜の諸性能が低下するおそれがある。
これら成分を加える順番は、エマルションに硬化剤を加える前でもよいし、後でも良い。水性中塗り塗料は、水性であれば形態は特に限定されず、例えば、水溶性、水分散型、水性エマルション等の形態であればよい。
水性ベース塗料
本発明の方法で用いる水性ベース塗料は自動車車体用水性ベース塗料として通常使用される塗料組成物であればよい。例えば、水性媒体中に分散または溶解された状態で、塗膜形成樹脂、硬化剤、光輝性顔料、着色顔料や体質顔料等の顔料、各種添加剤等を含むものを挙げることができる。塗膜形成樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、カーボネート樹脂及びエポキシ樹脂等を使用することができる。顔料分散性や作業性の点から、アクリル樹脂及び/又はポリエステル樹脂とメラミン樹脂との組み合わせが好ましい。硬化剤(上記水性中塗り塗料に含まれる硬化剤を使用することができる)、顔料、各種添加剤も、通常用いられるものを使用することができる。
水性ベース塗料中に含まれる顔料濃度(PWC)は、一般的には、下限0.1重量%、上限50重量%であり、より好ましくは、下限0.5重量%、上限40重量%であり、更に好ましくは、下限1重量%、上限30重量%である。上記顔料濃度が0.1重量%未満であると、顔料による効果が得られず、50重量%を超えると、得られる塗膜の外観が低下するおそれがある。
水性ベース塗料は、中塗り塗料と同様の方法によって調製することができる。また、水性ベース塗料は、水性であれば形態は特に限定されず、例えば、水溶性、水分散型、水性エマルション等の形態であればよい。
クリヤー塗料
本発明の方法で用いるクリヤー塗料は自動車車体用クリヤー塗料として通常使用される塗料組成物であればよい。例えば、媒体中に分散または溶解された状態で、塗膜形成性樹脂、硬化剤及びその他の添加剤を含むものを挙げることができる。塗膜形成性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。これらはアミノ樹脂及び/又はイソシアネート樹脂等の硬化剤と組み合わせて用いると良い。透明性又は耐酸エッチング性等の点から、アクリル樹脂及び/若しくはポリエステル樹脂とアミノ樹脂との組み合わせ、又は、カルボン酸・エポキシ硬化系を有するアクリル樹脂及び/若しくはポリエステル樹脂等を用いることが好ましい。
クリヤー塗料の塗料形態としては、有機溶剤型、水性型(水溶性、水分散性、エマルション)、非水分散型、粉体型のいずれでもよく、また必要により、硬化触媒、表面調整剤等、透明性を阻害しない程度にソリッドカラー顔料及び/又はメタリック顔料を含有させることができ、さらに体質顔料、紫外線吸収剤などを適宜含有させてもよい。
複層塗膜形成方法
本発明の複層塗膜の形成方法では、まず、被塗物に電着塗膜を形成する。電着塗膜は被塗物に対して前記カチオン電着塗料組成物を塗装し、焼き付け硬化して形成する。電着塗装及び焼き付け硬化は、自動車車体を電着塗装するのに通常用いられる方法及び条件で行なえばよい。被塗物は、電着塗装可能な金属製品であれば特に制限されない。例えば、鉄、鋼、銅、アルミニウム、マグネシウム、スズ、亜鉛及びこれらの金属を含む合金、並びに、これらの金属によるメッキ又は蒸着製品等を挙げることができる。被塗物は、必要に応じて、リン酸塩、クロム酸塩、ジルコニウム化合物(例えば、硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、硫酸ジルコニウム、硫酸ジルコニル、塩化ジルコニル、塩化ジルコニウム、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニルアンモニウム、酸化ジルコニウム等)等で化成処理されていてもよい。
電着塗膜形成工程
一般的な電着塗装工程は、電着塗料組成物に被塗物を浸漬する工程、及び、上記被塗物を陰極として陽極との間に電圧を印加し、被膜を析出させる工程から構成される。通電時間は、電着条件によって異なるが、一般には、2〜4分とすることができる。印加電圧は、被塗物を陰極として陽極との間に、通常50〜450Vの電圧が印加される。印加電圧が50V未満であると電着が不充分となる恐れがあり、450Vを超えると、塗膜が破壊され異常外観となる恐れがある。電着塗装時における電着槽中の塗料組成物の液温度は、通常10〜45℃に調節される。電着塗膜の膜厚は10〜20μmとすることが好ましい。膜厚が10μm未満であると、防錆性が不充分であり、20μmを超えると、塗料の浪費につながる。
次いで、電着塗膜の上に水性中塗り塗料を塗布して未硬化の中塗り塗膜を形成する(中塗り塗膜形成工程)。水性中塗り塗料は、例えば、エアレススプレー、あるいは、通称「リアクトガン」と言われるエアー静電スプレー、通称「マイクロ・マイクロベル(μμベル)」、「マイクロベル(μベル)」、「メタリックベル(メタベル)」等と言われる回転霧化式の静電塗装機等を用いてスプレーして塗布することができる。
塗布量は、硬化後の塗膜の膜厚が、10〜100μm、好ましくは10〜40μm、より好ましくは10〜35μm、さらに好ましくは15〜30μmになるように調節する。膜厚が10μm未満であると得られる塗膜の外観及び耐ピーリング性が低下する恐れがあり、100μmを越えると塗装時のタレや焼付け硬化時のピンホール等の不具合が起こることがある。
この中塗り塗膜は、水性ベース塗料を塗布する前に予備乾燥してもよい。この予備乾燥の方法としては、プレヒート、エアブローなどの方法がある。乾燥炉内で急に蒸発する媒体の量をできるだけ減らしておくためである。予備乾燥は中塗り塗膜の塗膜固形分率が70〜98重量%、好ましくは75〜98重量%、より好ましくは80〜98重量%、さらにより好ましくは少なくとも85重量%(すなわち、85〜98重量%)、特に90〜95重量%になるまで行う。予備乾燥後の中塗り塗膜の塗膜固形分率が70重量%未満であると乾燥炉内で蒸発する媒体の量が多くなり複層塗膜の外観不良が生じる。
塗膜固形分率は、式:
Figure 2008229433
により算出される。
また、予備乾燥はできるだけ短時間で行うことが好ましい。長時間を要する条件では予備乾燥設備が長くなり好ましくない。予備乾燥は、好ましくはプレヒート、エアブローなどにより行う。
上記プレヒートは、通常、塗装された被塗物を乾燥炉内で好ましくは約60〜約120℃、より好ましくは約70〜約110℃の温度で1〜60分間程度、直接的又は間接的に加熱することにより行うことができ、また、エアブローは、通常、被塗物の塗装面に常温又は約25℃〜約100℃の温度に加熱された空気を吹き付けることにより行うことができる。
上記エアブローにおいては、塗膜表面に空気を吹き付けて行うものであるが、空気の流速、温度、湿度等の乾燥条件は、従来は塗装方法や塗装ラインに応じて試行錯誤を行なって最適値が定められてきた。乾燥条件を単に厳しくしたのでは、媒体の蒸発が急激に生じるために塗膜の均一性が損なわれる怖れがあるからである。本発明では、3コート1ベーク法を行うためにより最適化された水性塗膜の乾燥条件を提供する。
すなわち、上記のエアブローにおいては、中塗り塗膜について好ましい乾燥条件は、塗膜表面の温風が、温度25〜100℃、好ましくは60〜80℃、風速1〜5m/秒、好ましくは2〜4m/秒、時間1〜8分間、好ましくは2〜5分間、及び絶対湿度10〜18g/kg、好ましくは12〜16g/kgである。温風の温度が25℃未満では乾燥時間が長く、乾燥ラインが長くなって工程が非経済的となり、100℃を超えると塗板温度が上昇して塗膜の外観が低下するおそれがある。
風速が1m/秒未満では乾燥時間が長く乾燥ラインが長くなって工程が非経済的となり、5m/秒を越えて風速を高めても効果は得られず、風速を高めすぎると経済性に劣り、また急激な乾燥によって塗膜の外観が低下するおそれがある。乾燥時間が1分未満では均一に乾燥することができず、8分を越えると乾燥ラインが長くなって非経済的となる。絶対湿度が10g/kg未満になっても問題はないが、除湿を過剰に行うのはエネルギーの無駄になり、18g/kgを越えると乾燥時間が長く乾燥ラインが長くなって工程が非経済的となる。
そして、好ましい乾燥条件は、更に、式:
(温度−湿度)×(風速)^0.8×(時間)≧50 (i)
で規定される関係をも満足する必要がある。好ましくは、式(i)の値は150以上(≧150)である。かかる条件で中塗り塗膜の予備乾燥を行なえば、複層塗膜の塗膜外観と作業効率を両立させることができる。なお、式(i)中、湿度とは上記絶対湿度を意味する。以下、同様に表記する。
ここで、塗膜表面の空気の温度、湿度及び風速は基材表面から45mm離れた位置にある基材表面と平行な面が、空気吹き出しノズルの軸と交わる点で測定した値を用いる。尚、風速については、プローブの方向を動かして最も高い測定値が得られた方向の風速を、その点での風速とする。
なお、水性中塗り塗料は、フォードカップNo.4、20℃で約40秒間の粘度が得られる塗膜固形分率が20〜60重量%、好ましくは35〜60重量%の範囲内となるように調整して塗装に供してもよい。
一方、塗装された水性中塗り塗料の塗膜は、好ましくは、中塗り塗膜の粘度を1×10mPa・秒(20℃、シェアレート0.1秒−1)以上、より好ましくは2×10mPa・秒(20℃、シェアレート0.1秒−1)以上に調整してもよい。
本明細書において、水性中塗り塗料の「塗膜の粘度」は、被塗物上に水性中塗り塗料を塗装し、形成された塗膜の粘度を、市販の粘度計(HAAKE RheoStress RS150、ドイツ HAAKE社製、商品名)を用いて、シェアを0.0001秒−1 〜10000秒−1の間で変化させて測定した値である。
次いで、中塗り塗膜を硬化させることなく、未硬化の中塗り塗膜の上に、水性ベース塗料をウェットオンウェットで上記と同様の手段で塗布して未硬化のベース塗膜を形成する。ここで、ウェットオンウェット塗布とは、複数の塗膜を硬化させることなく塗り重ねることをいう。
水性ベース塗料は、通常、塗膜の硬化後の膜厚が5〜40μm、好ましくは10〜30μmとなるように塗布量が調節される。硬化後の膜厚が5μm未満である場合、下地の隠蔽が不充分になったり、色ムラが発生する恐れがあり、また、40μmを超える場合、塗装時にタレや、加熱硬化時にピンホールが発生したりする恐れがある。
このベース塗膜もクリヤー塗料を塗布する前に予備乾燥してもよい。予備乾燥はベース塗膜の塗膜固形分率が65〜98重量%、好ましくは75〜98重量%、より好ましくは85〜98重量%になるまで行う。予備乾燥後のベース塗膜の塗膜固形分率が65重量%未満であると乾燥炉内で蒸発する媒体の量が多くなり複層塗膜の外観不良が生じる。
予備乾燥としては、プレヒート、エアブローなどが挙げられ、エアブローにおいては、塗膜表面の温風が、温度50〜100℃、好ましくは60〜80℃、風速1〜5m/秒、好ましくは2〜4m/秒、時間1〜8分間、好ましくは2〜5分間、絶対湿度10〜18g/kg、好ましくは12〜16g/kgである。
さらに、式:
(温度−湿度)×(風速)^0.8×(時間)≧170 (ii)
で規定される関係をも満足する必要がある。好ましくは、式(ii)の値は220以上(≧220)である。かかる条件でベース塗膜の予備乾燥を行なえば、複層塗膜の塗膜外観と作業効率を両立させることができる。
次いで、未硬化のベース塗膜の上にさらにクリヤー塗料をウェットオンウェットで上記と同様の手段によって塗布し、未硬化のクリヤー塗膜を形成する。クリヤー塗料は、通常、塗膜の乾燥硬化後の膜厚が10〜70μm、好ましくは10〜60μm、より好ましくは25〜50μmとなるように塗布量が調節される。硬化後の膜厚が10μm未満であると複層塗膜のつや感などの外観が低下し、70μmを越えると鮮映性が低下したり、塗装時にムラ、流れ等の不具合が起こったりする。
次いで、未硬化の中塗り塗膜、ベース塗膜およびクリヤー塗膜を同時に焼き付け硬化させる(所謂、3コート1ベーク(3C1B)方式)。焼き付けは、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等により、通常80〜180℃、好ましくは110〜180℃、より好ましくは120〜160℃の温度に加熱して行われる。これにより、高い架橋度の硬化塗膜を得ることができる。加熱温度が80℃未満であると、硬化が不充分になる傾向があり、180℃を超えると、得られる塗膜が固く脆くなる恐れがある。加熱する時間は、上記温度に応じて適宜設定することができるが、例えば、温度が120〜160℃である場合、10〜60分間、より好ましくは20〜40分間である。
本発明の複層塗膜形成方法において、電着塗装が施された被塗物上に、水性中塗り塗料、水性ベース塗料およびクリヤー塗料を用い、3コート1ベーク方式により塗装して複層塗膜を形成する際、水性中塗り塗料を塗布し、その未硬化塗膜を予備乾燥して中塗り塗膜の粘度を1×10mPa・秒(20℃、シェアレート0.1秒−1)以上に調整することが好ましく、上記予備乾燥工程によって、仕上がり性の良好な複層塗膜を安定して形成することができ、しかも工程数及び/又は時間の短縮を図ることができ、省エネルギーを達成することができる。
また、本発明の方法で用いられるカチオン電着塗料組成物は、長時間静置させた場合であっても沈殿物が少ないという特徴を有し、かつ、優れたつきまわり性をも有している。
本発明の複層塗膜形成方法は、上記利点に加えて、カチオン電着塗料組成物の貯蔵における常時撹拌、および電着塗装における電着槽の常時撹拌を必要とせず、撹拌を省略したり断続的に撹拌させたりすることができるという利点をも有している。このような本発明の方法を用いることによって、塗装における塗装コストを大幅に削減することができる。
上記カチオン電着塗料組成物から形成された電着塗膜上に、3コート1ベーク法によって、中塗り塗膜、ベース塗膜およびクリヤー塗膜からなる複層塗膜を形成することで塗装工程を遅延させることなく媒体の蒸発による外観不良を抑制することができる。また、本発明の3コート1ベーク複層塗膜形成方法において、仕上がり性が良好な複層塗膜を短い工程数および/または時間で形成することができる。
また、電導度制御剤、カチオン性エボキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を少なくとも含有する低固形分濃度カチオン電着塗料組成物の使用と、予備乾燥を含む3コート1ベーク法による複層塗膜の形成方法とを組み合わせることによって、従来、低固形分濃度域ではつきまわり難い内板部でも十分な膜厚が確保され、優れた複層塗膜外観を得ることができる。また、電着塗装からクリヤー塗装までの工程を大幅に短縮することができ、省エネルギー化に対しても有効である。さらには、電着水洗工程における排水処理量の低減や3コート1ベーク法による二酸化炭素排出量の低減など、環境に対しても、この組み合わせは優位である。
以下、本発明について実施例を挙げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また、実施例中、「部」は、特に断りのない限り、「重量部」を意味する。
I.電着塗料組成物に含まれる各成分の調製
製造例I−1:電導度制御剤(A)の調製
還流冷却器、撹拌機を備えたフラスコに、メチルイソブチルケトン(以下「MIBK」と略す。)295部、メチルエタノールアミン37.5部、ジエタノールアミン52.5部を仕込み、撹拌しながら100℃に保持した。これにクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成社製、商品名YDCN−703)205部を徐々に加え、全量加え終えた後、3時間反応させた。分子量を測定したところ、2100であった。得られたアミン変性エポキシ樹脂のアミン価(MEQ(B))を測定したところ、340mmol/100gであった。
得られたアミン変性エポキシ樹脂溶液140部に、ギ酸5.5部と脱イオン水1254.5部を加えて80℃に保持しながら30分間撹拌した。減圧下において有機溶剤を除去し、固形分7.0%の電導度制御剤(A)を得た。
製造例I−2:電導度制御剤(B)の調製
還流冷却器、撹拌機を備えたフラスコに、MIBK255部およびメチルエタノールアミン75部を仕込み、撹拌しながら100℃に保持した。これにフェノールノボラック型エポキシ樹脂(ダウケミカルジャパン社製、商品名DEN−438)180部を徐々に加え、全量加え終えた後、3時間反応させた。分子量を測定したところ、1000であった。得られたアミン変性エポキシ樹脂のアミン価(MEQ(B))を測定したところ、390mmol/100gであった。
得られたアミン変性エポキシ樹脂溶液140部に、スルファミン酸14部と脱イオン水1247部を加えて80℃に保持しながら30分間撹拌した。減圧下において有機溶剤を除去し、固形分7.0%の電導度制御剤(B)を得た。
製造例I−3:カチオン性エポキシ樹脂(アミン変性エポキシ樹脂)の調製
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計および滴下漏斗を装備したフラスコに、2,4−/2,6−トリレンジイソシアネート(重量比=8/2)92部、メチルイソブチルケトン(以下、MIBKと略す)95部およびジブチル錫ジラウレート0.5部を仕込んだ。反応混合物を攪拌下、メタノール21部を滴下した。反応は、室温から始め、発熱により60℃まで昇温した。その後、30分間反応を継続した後、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル50部を滴下漏斗より滴下した。更に、反応混合物に、ビスフェノールA−プロピレンオキシド5モル付加体53部を添加した。反応は主に、60〜65℃の範囲で行い、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失するまで継続した。
次に、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンから既知の方法で合成したエポキシ当量188のエポキシ樹脂365部を反応混合物に加えて、125℃まで昇温した。その後、ベンジルジメチルアミン1.0部を添加し、エポキシ当量410になるまで130℃で反応させた。
続いて、ビスフェノールA 61部およびオクチル酸33部を加えて120℃で反応させたところ、エポキシ当量は1190となった。その後、反応混合物を冷却し、ジエタノールアミン11部、N−エチルエタノールアミン24部およびアミノエチルエタノールアミンのケチミン化物の79重量%MIBK溶液25部を加え、110℃で2時間反応させた。その後、MIBKで不揮発分80%となるまで希釈し、アミン変性エポキシ樹脂(樹脂固形分80%)を得た。
製造例I−4:ブロックイソシアネート硬化剤の調製
ジフェニルメタンジイソシアナート1250部およびMIBK266.4部を反応容器に仕込み、これを80℃まで加熱した後、ジブチル錫ジラウレート2.5部を加えた。ここにε−カプロラクタム226部をブチルセロソルブ944部に溶解させたものを80℃で2時間かけて滴下した。さらに100℃で4時間加熱した後、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失したことを確認し、放冷後、MIBK336.1部を加えてブロックイソシアネート硬化剤を得た。
製造例I−5:顔料分散樹脂の調製
まず、攪拌装置、冷却管、窒素導入管および温度計を装備した反応容器に、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略す)222.0部を入れ、MIBK39.1部で希釈した後、ここヘジブチル錫ジラウレート0.2部を加えた。その後、これを50℃に昇温した後、2−エチルヘキサノール131.5部を攪拌下、乾燥窒素雰囲気中で2時間かけて滴下した。適宜、冷却することにより、反応温度を50℃に維持した。その結果、2−エチルヘキサノールハーフブロック化IPDI(樹脂固形分90.0%)が得られた。
次いで、適当な反応容器に、ジメチルエタノールアミン87.2部、75%乳酸水溶液117.6部およびエチレングリコールモノブチルエーテル39.2部を順に加え、65℃で約半時間攪拌して、4級化剤を調製した。
次に、エポン(EPON)829(シェル・ケミカル・カンパニー社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量193〜203)710.0部とビスフェノールA 289.6部とを適当な反応容器に仕込み、窒素雰囲気下、150〜160℃に加熱したところ、初期発熱反応が生じた。反応混合物を150〜160℃で約1時間反応させ、次いで、120℃に冷却した後、先に調製した2−エチルヘキサノールハーフブロック化IPDI(MIBK溶液)498.8部を加えた。
反応混合物を110〜120℃に約1時間保ち、次いで、エチレングリコールモノブチルエーテル463.4部を加え、混合物を85〜95℃に冷却し、均一化した後、先に調製した4級化剤196.7部を添加した。酸価が1となるまで反応混合物を85〜95℃に保持した後、脱イオン水964部を加えて、エポキシ−ビスフェノールA樹脂において4級化を終了させ、4級アンモニウム塩部分を有する顔料分散樹脂を得た(樹脂固形分50%)。
製造例I−6:顔料分散ペーストの調製
サンドグラインドミルに製造例I−5で得られた顔料分散樹脂を100部、二酸化チタン100.0部およびイオン交換水100.0部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た(固形分50%)。
製造例I−7:バインダー樹脂エマルションの調製
製造例I−3で得られた上記カチオン性エポキシ樹脂(アミン変性エポキシ樹脂)と製造例I−4で得られたブロックイソシアネート硬化剤とを固形分比で80/20で均一になるよう混合した。これに樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量(MEQ(A))が30になるよう氷酢酸を添加し、さらにイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が36%のバインダー樹脂エマルションを得た。
II.水性中塗り塗料
製造例II−1:顔料分散ペーストの調製
市販分散剤「Disperbyk 190」(ビックケミー社製ノニオン・アニオン系分散剤、商品名)9.4部、イオン交換水36.8部、ルチル型二酸化チタン34.5部、硫酸バリウム34.4部及びタルク6部を予備混合した後、ペイントコンディショナー中でガラスビーズ媒体を加え、室温で粒度5μm以下となるまで混合分散し、顔料分散ペーストを得た。
製造例II−2:アクリル樹脂エマルションの調製
攪拌機、温度計、滴下ロート、還流冷却器及び窒素導入管などを備えた通常のアクリル樹脂エマルション製造用の反応容器に、水445部及びニューコール293(日本乳化剤(株)製)5部を仕込み、攪拌しながら75℃に昇温した。下記表1のモノマー混合物(樹脂の酸価:18mgKOH/g、水酸基価:85mgKOH/g、Tg:−22℃)、水240部及びニューコール293(日本乳化剤(株)製)30部の混合物をホモジナイザーを用いて乳化し、そのモノマープレ乳化液を上記反応容器中に3時間にわたって攪拌しながら滴下した。モノマープレ乳化液の滴下と併行して、重合開始剤としてAPS(過硫酸アンモニウム)1部を水50部に溶解した水溶液を、上記反応容器中に上記モノマープレ乳化液の滴下終了時まで均等に滴下した。モノマープレ乳化液の滴下終了後、さらに80℃で1時間反応を継続し、その後、冷却した。冷却後、ジメチルアミノエタノール2部を水20部に溶解した水溶液を投入し、不揮発分40.6重量%の水性アクリル樹脂エマルションを得た。
Figure 2008229433
得られたアクリル樹脂エマルションは、30%ジメチルアミノエタノール水溶液を用いてpHを7.2に調整した。
製造例II−3:水性中塗り塗料の調製
製造例II−1で得られた顔料分散ペースト60.3部、製造例II−2で得られたアクリル樹脂エマルション109.7部に、硬化剤としてサイメル327(三井サイテック社製イミノ型メラミン樹脂、商品名)20.9部を混合した後、アデカノールUH−814N(ウレタン会合型増粘剤、有効成分30%、旭電化工業社製、商品名)1.0部を混合攪拌し、水性中塗り塗料を得た。
III.複層塗膜の形成方法
図1に示すように、化成処理剤(リン酸亜鉛)で処理した4枚の冷延鋼鈑(JIS G3141 SPCC−SD)11〜14を、立てた状態で間隔20mmで平行に配置し、両側面下部および底面を布粘着テープ等の絶縁体で密閉したボックス10を作製した。なお、鋼鈑14以外の鋼鈑11〜13には下部に8mmφの貫通孔15が設けられている。
カチオン電着塗料組成物4リットルを塩ビ製容器に移した。図2に示すように、上記ボックス10を、被塗装物として、電着塗料21を入れた電着塗装容器20内に浸漬した。この場合、各貫通孔15からのみ塗料21がボックス10内に侵入する。
マグネチックスターラー(非表示)で塗料21を攪拌した。そして、各鋼鈑11〜14を電気的に接続し、最も近い鋼鈑11との距離が150mmとなるように対極22を配置した。各鋼鈑11〜14を陰極、対極22を陽極として電圧(200V)を印加して、化成処理を行った冷延鋼板11〜14にカチオン電着塗装を行なった。塗装は、印加開始から30秒間で鋼鈑11のA面に形成される塗膜の膜厚が15μmに達する電圧まで昇圧し、その後、通常電着では150秒間その電圧を維持することにより行った。
電着塗装後の各鋼板は、水洗した後、170℃で25分間焼き付けして、鋼板基板(G面)を準備した。
得られた基板(G面)に、上記水性中塗り塗料を室温25℃、相対湿度70%の環境下においてエアースプレー塗装にて20μm塗布した。プレヒート(80℃、2分間)後の塗膜固形分率(乾燥後NV)は93.2%であり、塗膜粘度は、2.5×10mPa・秒(20℃、シェアレート0.1秒−1)であった。
予備乾燥終了後、塗板を室温25℃、相対湿度70%の環境下に放置し、室温まで冷却した後、中塗り塗膜の上に、同環境下においてアクアレックスAR−2000シルバーメタリック(日本ペイント社製水性メタリックベース塗料、商品名)をエアースプレー塗装にて13μm塗布し、これを80℃、3分間プレヒートを行った。プレヒート後の塗膜固形分率は76.5%であった。
予備乾燥後のベース塗膜の上にクリヤー塗料として、マックフロー O−1800W−2クリヤー(日本ペイント社製酸エポキシ硬化型クリヤー塗料、商品名)をエアースプレー塗装にて35μm塗装した後、140℃で30分間の焼き付け硬化を行い、複層塗膜を得た。
尚、各塗装の前に、各塗料の粘度を以下の表2に示す通り調整した。
Figure 2008229433
実施例1
製造例I−7で得られたバインダー樹脂エマルション153部および製造例I−6で得られた顔料分散ペースト8部と、イオン交換水827部と10%酢酸セリウム水溶液2部およびジブチル錫オキサイド1部とを混合して、固形分濃度7重量%のカチオン電着塗料組成物を得た。このカチオン電着塗料組成物の顔料濃度は5重量%であり、電気電導度は900μS/cmであった。なお、カチオン電着塗料組成物の電気電導度の測定には、電導率計(東亜電波工業(株)社製CM−305)を用いて、液温25℃の条件にて測定した。また、塗料固形分は180℃で30分間加熱した後の重量の、元の重量に対する百分率として求めることができる(JIS K5601に準拠)。
さらに、上記カチオン電着塗料組成物1000部に対して、製造例I−1で得られた電導度制御剤(A)を6部加えることにより、電気電導度を1300μS/cmに調整した(固形分濃度7重量%)。上記複層塗膜の形成方法に従い、上記カチオン電着塗料組成物、上記水性中塗り塗料、水性ベース塗料[アクアレックスAR−2000シルバーメタリック(日本ペイント社製水性メタリックベース塗料、商品名)]およびクリヤー塗料[マックフロー O−1800W−2クリヤー(日本ペイント社製酸エポキシ硬化型クリヤー塗料、商品名)]を用いて複層塗膜を形成した。
実施例2
製造例I−7で得られたバインダー樹脂エマルション153部および製造例I−6で得られた顔料分散ペースト8部と、イオン交換水827部と10%酢酸セリウム水溶液2部およびジブチル錫オキサイド1部とを混合して、固形分濃度7重量%のカチオン電着塗料組成物を得た。このカチオン電着塗料組成物の顔料濃度は5重量%であり、電気電導度は900μS/cmであった。カチオン電着塗料組成物の電気電導度の測定には、電導率計(東亜電波工業(株)社製CM−305)を用いて、液温25℃の条件にて測定した。また、塗料固形分は180℃で30分間加熱した後の重量の、元の重量に対する百分率として求めることができる(JIS K5601に準拠)。
さらに、上記カチオン電着塗料組成物1000部に対して、製造例I−2で得られた電導度制御剤(B)を8部加えることにより、電気電導度を1400μS/cmに調整した(固形分濃度7重量%)。実施例1に従って、上記カチオン電着塗料組成物、上記水性中塗り塗料、水性ベース塗料[アクアレックスAR−2000シルバーメタリック(日本ペイント社製水性メタリックベース塗料、商品名)]およびクリヤー塗料[マックフロー O−1800W−2クリヤー(日本ペイント社製酸エポキシ硬化型クリヤー塗料、商品名)]を用いて複層塗膜を形成した。
比較例1
製造例I−7で得られたバインダー樹脂エマルション436部および製造例I−6で得られた顔料分散ペースト23部と、イオン交換水515部と10%酢酸セリウム水溶液2部およびジブチル錫オキサイド3部とを混合して、固形分濃度20重量%のカチオン電着塗料組成物を得た。このカチオン電着塗料組成物の顔料濃度は5重量%であり、電気電導度は1400μS/cmであった。カチオン電着塗料組成物の電気電導度の測定には、電導率計(東亜電波工業(株)社製CM−305)を用いて、液温25℃の条件にて測定した。また、塗料固形分は180℃で30分間加熱した後の重量の、元の重量に対する百分率として求めることができる(JIS K5601に準拠)。実施例1に従って、上記カチオン電着塗料組成物、上記水性中塗り塗料、水性ベース塗料[アクアレックスAR−2000シルバーメタリック(日本ペイント社製水性メタリックベース塗料、商品名)]およびクリヤー塗料[マックフロー O−1800W−2クリヤー(日本ペイント社製酸エポキシ硬化型クリヤー塗料、商品名)]を用いて複層塗膜を形成した。
比較例2
比較例1で得られたカチオン電着塗料組成物1000部に対して、製造例I−1で得られた電導度制御剤(A)を6部加えることにより、電気電導度を1750μS/cmに調整したカチオン電着塗料組成物を得た(固形分濃度20重量%)。なお、カチオン電着塗料組成物の電気電導度の測定には、電導率計(東亜電波工業(株)社製CM−305)を用いて、液温25℃の条件にて測定した。また、塗料固形分は180℃で30分間加熱した後の重量の、元の重量に対する百分率として求めることができる(JIS K5601に準拠)。
比較例1に従って、上記カチオン電着塗料組成物、上記水性中塗り塗料、水性ベース塗料[アクアレックスAR−2000シルバーメタリック(日本ペイント社製水性メタリックベース塗料、商品名)]およびクリヤー塗料[マックフロー O−1800W−2クリヤー(日本ペイント社製酸エポキシ硬化型クリヤー塗料、商品名)]を用いて複層塗膜を形成した。
比較例3
製造例I−7で得られたバインダー樹脂エマルション153部および製造例I−6で得られた顔料分散ペースト8部と、イオン交換水827部と10%酢酸セリウム水溶液2部およびジブチル錫オキサイド1部とを混合して、固形分濃度7重量%のカチオン電着塗料組成物を得た。このカチオン電着塗料組成物の顔料濃度は5重量%であり、電気電導度は900μS/cmであった。カチオン電着塗料組成物の電気電導度の測定には、電導率計(東亜電波工業(株)社製CM−305)を用いて、液温25℃の条件にて測定した。また、塗料固形分は180℃で30分間加熱した後の重量の、元の重量に対する百分率として求めることができる(JIS K5601に準拠)。
比較例1に従って、上記カチオン電着塗料組成物、上記水性中塗り塗料、水性ベース塗料[アクアレックスAR−2000シルバーメタリック(日本ペイント社製水性メタリックベース塗料、商品名)]およびクリヤー塗料[マックフロー O−1800W−2クリヤー(日本ペイント社製酸エポキシ硬化型クリヤー塗料、商品名)]を用いて複層塗膜を形成した。
実施例および比較例で得られた複層塗膜について、以下の方法により評価を行った。
沈降性の評価
実施例および比較例で調製したカチオン電着塗料組成物85gを100mL試験管に入れ、24時間静置した。その後、上澄み液を静かに取り除き、沈殿物の重量を測定した。沈降性(%)の値を、下記式によって算出した。
沈降物の重量(g)/カチオン電着塗料組成物に含まれる顔料の重量(g)×100
つきまわり性の評価
つきまわり性は、いわゆる4枚ボックス法により評価した。すなわち、図1に示すように、化成処理剤(リン酸亜鉛)で処理した4枚の冷延鋼鈑(JIS G3141 SPCC−SD)11〜14を立てた状態で間隔20mmで平行に配置し、両側面下部および底面を布粘着テープ等の絶縁体で密閉したボックス10を作製した。なお、鋼鈑14以外の鋼鈑11〜13には下部に8mmφの貫通孔15が設けられている。
カチオン電着塗料組成物4リットルを塩ビ製容器に移した。図2に示すように、上記ボックス10を、被塗装物として、電着塗料21を入れた電着塗装容器20内に浸漬した。この場合、各貫通孔15からのみ塗料21がボックス10内に侵入する。
マグネチックスターラー(非表示)で塗料21を攪拌した。そして、各鋼鈑11〜14を電気的に接続し、最も近い鋼鈑11との距離が150mmとなるように対極22を配置した。各鋼鈑11〜14を陰極、対極22を陽極として電圧(200V)を印加して、化成処理を行った冷延鋼板11〜14にカチオン電着塗装を行なった。塗装は、印加開始から30秒間で鋼鈑11のA面に形成される塗膜の膜厚が15μmに達する電圧まで昇圧し、その後、通常電着では150秒間その電圧を維持することにより行った。
電着塗装後の各鋼鈑は、水洗した後、170℃で25分間焼き付けし、空冷後、対極22から最も近い鋼鈑11のA面に形成された塗膜の膜厚と、対極22から最も遠い鋼鈑14のG面に形成された塗膜の膜厚とを測定し、膜厚(G面)/膜厚(A面)の比(G/A値)によりつきまわり性を評価した。一般に、この値が50%を超えた場合は良好(○)であり、この値が50%以下の場合を不良(×)と判断できる。
電着塗膜の外観評価
つきまわり性の評価で得られたG面を表面粗さ計SJ−201P(Mitutoyo社製)でカットオフ2.5mmおよび区間数5の基準で表面粗度(Ra)を測定した。このRa値は、値が低いほど外観が良好であることを示している。
複層塗膜の外観評価
複層塗膜の仕上がり外観について、Wave Scan(BYK−Gardner社製)を用いて、LW(測定波長:1300〜12000μm)、SW(測定波長:300〜1200μm)を測定することにより評価を行った。これらの数値は、数値が小さい程外観が良好であることを示す。
目視による塗膜外観の評価
得られた複層塗膜の表面状態を、下記基準で目視評価した。
○ :表面状態に凹凸が確認されず、光沢も良好である。
○△:表面状態に凹凸は確認されないが、ツヤは引けた状態である。
× :表面状態に凹凸があり、ツヤが引けた状態である。
Figure 2008229433
1)4枚ボックスのG面の外観(表面粗度(Ra))
2)4枚ボックスのG面上に形成した複層塗膜(水性3コート1ベーク塗装系)の外観
本発明の方法によれば、低固形分濃度の電着塗料を用いて電着塗装して、その上に3コート1ベーク複層塗膜形成する方法において、塗装工程を遅延させることなく媒体の蒸発による外観不良を抑制することができる。また、3コート1ベーク複層塗膜形成方法において、電着塗料がつきまわりにくい自動車車体の内部(ドア内板部およびステップ部など)においても仕上がり性が良好な複層塗膜を短い工程数および/または時間で形成することができる。
本発明の方法はまた、塗装における塗装コストを大幅に削減することができ、さらに、電着塗装からクリヤー塗装までの塗装系全体としてエネルギーを削減できる。以上より本発明の方法は、産業上において非常に有用な方法である。
つきまわり性を評価する際に用いる4枚ボックスの一例を示す斜視図である。 つきまわり性の評価方法を模式的に示す断面図である。
符号の説明
10:ボックス
11〜14:化成処理鋼板
15:貫通孔
20:電着塗装容器
21:電着塗料
22:対極

Claims (4)

  1. (1)被塗物に電着塗膜を形成する、電着塗膜形成工程;
    (2)電着塗膜の上に水性中塗り塗料を塗布して未硬化の中塗り塗膜を形成する、中塗り塗膜形成工程;
    (3)中塗り塗膜を硬化させることなく、未硬化の中塗り塗膜の上に、水性ベース塗料およびクリヤー塗料をウェットオンウェットで順次塗布して未硬化のベース塗膜およびクリヤー塗膜を形成する、ベース塗膜およびクリヤー塗膜形成工程;および
    (4)未硬化の中塗り塗膜、ベース塗膜およびクリヤー塗膜を同時に焼き付け硬化させる工程;
    を含む複層塗膜形成方法であって、
    電着塗膜形成工程において被塗物に形成された電着塗膜は、電導度制御剤、カチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を少なくとも含有するカチオン電着塗料組成物を電着塗装することによって形成された電着塗膜であり、
    前記カチオン電着塗料組成物の固形分濃度が0.5〜9重量%であり、
    中塗り塗膜形成工程において、水性中塗り塗料を塗布して未硬化の中塗り塗膜を形成した後に予備乾燥を行うことによって、中塗り塗膜の塗膜固形分率を70〜98重量%とし、
    ベース塗膜およびクリヤー塗膜形成工程において、水性ベース塗料を塗布した後に予備乾燥を行うことによって、ベース塗膜の塗膜固形分率を65〜98重量%とする、
    複層塗膜形成方法。
  2. 前記水性中塗り塗料が、ガラス転移温度−50〜20℃、酸価2〜60mgKOH/gおよび水酸基価10〜120mgKOH/gを有するアクリル樹脂エマルションである樹脂、および硬化剤を含有することを特徴とする、請求項1記載の複層塗膜形成方法。
  3. 前記硬化剤がメラミン樹脂、イソシアネート樹脂、オキサゾリン系化合物およびカルボジイミド系化合物からなる群から選択される、請求項2記載の複層塗膜形成方法。
  4. 前記中塗り塗膜形成工程において、予備乾燥を行うことによって、中塗り塗膜の粘度を1×10mPa・秒(20℃、シェアレート0.1秒−1)以上に調整する、請求項1記載の複層塗膜形成方法。
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