JP2006247614A - 複層塗膜形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 仕上がり外観が良好な複層塗膜の形成方法を提供すること。
【解決手段】 カチオン電着塗料組成物を被塗物に電着塗装して、未硬化の電着塗膜を形成する工程、未硬化の電着塗膜の上に中塗り塗料組成物を塗布して、未硬化の中塗り塗膜を形成する工程、および未硬化の電着塗膜および中塗り塗膜を同時に焼付け硬化させる工程、を包含する複層塗膜形成方法であって、この被塗物が、粗さ曲線の最大高さ粗さ(Rz)が3.0〜8.0μmである表面を有する鋼材である、複層塗膜形成方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、仕上がり外観が良好な複層塗膜の形成方法に関する。
自動車などの基材の表面には、種々の役割を持つ複数の塗膜を形成して、基材を保護すると同時に美しい外観を付与している。このような塗膜は一般に、各塗膜を一層ずつ焼付け硬化することにより形成される。
しかし近年、省エネルギーおよびコストダウンの要請から、焼付け硬化をせずに次の塗装を所謂ウェットオンウェットで塗装し、その後、複数層を一度に焼付け硬化させる方法も採用されつつある。このような方法の1例として、電着塗膜を硬化させた後に、中塗り塗料、上塗りベース塗料およびクリヤー塗料をウェットオンウェットで塗装し、その後3層の未硬化塗膜を一度に焼付け硬化する、スリーコート・ワンベーク塗装(スリーウェット塗装ともいう。)が、最も実現の可能性のある方法と考えられている。加えて、省エネルギーおよびコストダウンの要請を達成する他の手段として、電着塗装後に電着塗膜を硬化させることなく中塗り塗料をウェットオンウェットで塗装するツーウェット塗装も考えられている。
ところで、このような塗装においては、従来の工程と比べて焼付け工程が少ないため、鋼材の表面状態が、得られる複層塗膜の外観に大きく影響することが判明してきた。
特開2003−253494号公報(特許文献1)には、主要材料が酸化皮膜処理アルミ材もしくは酸化皮膜処理アルミ材と鋼材が組合わさった異種金属材で構成される自動車車体の外板部及び/又は内板部において、酸化皮膜処理が施されるアルミ材の表面粗度がRaで0.2μm以下であり、酸化皮膜処理が施されるアルミ材がマグネシウムとシリカを含有するJIS K―6000系アルミニウム合金であり、そして該酸化皮膜処理アルミ材が熱硬化型電着塗膜で被覆されていることを特徴とする、自動車車体の塗装方法、が記載されている。そして、これにより仕上がり外観、塗膜性能に優れた塗膜が得られると記載されている。しかしながら、ここに開示される技術においては、アルミ材の表面粗度がRaで0.2μm以下という高い平滑性が必要とされ、さらにはRaが0.2μmを超えると該酸化皮膜処理アルミ材に塗装される電着塗膜の平滑性が低下するとも記載されている。
特開2003−171775号公報(特許文献2)には、表面にりん酸亜鉛系皮膜を有する亜鉛めっき鋼板において、該りん酸亜鉛系皮膜の付着量が0.5〜3.0g/mであり、該りん酸亜鉛系皮膜が0.3〜1.5mass%のNiおよび3.0〜5.0mass%のMnを含有し、さらに、算術平均粗さRaが1.0〜2.0μm、かつ10点平均粗さRzが4.5μm以上であることを特徴とするプレス成形性、塗料密着性および塗装後耐食性に優れた亜鉛めっき鋼板が、記載されている。この亜鉛めっき鋼板は、その表面に、NiおよびMnを含むりん酸亜鉛系皮膜を有することが必要とされる。なおISO B0601−2001においては、従来「Rz」として示されていた10点平均粗さの規程は削除され、そして従来は「Ry」として示されていた粗さ曲線の最大高さ粗さが「Rz」と示されることとなっている。特許文献2における「Rz」は、10点平均粗さを表すものであり、一方、本願における「Rz」は粗さ曲線の最大高さ粗さを表すものである。
特開2003−171775号公報(特許文献2)に記載された発明と本発明とを対比すると、本発明は、特殊なめっき処理を用いる必要はなく、通常使用されるめっき処理であってよいものである点において、特許文献2に記載された発明とは大きく異なる。そして本発明は、鋼材表面の粗さ曲線の最大高さ粗さ(Rz)の数値範囲に着目するものである点において、特許文献2に記載の発明と相違する。
また特許文献2に記載される発明は、電着塗装性に優れた亜鉛めっき鋼板に関するものであることが記載されている。一方本発明は、電着塗膜/中塗り塗膜/上塗り塗膜などの複層塗膜が施される自動車分野において、エネルギー資源保全などの地球環境の観点から、塗装工程の省エネルギー化を図るべく焼付け工程が省略された塗装方法を提供するものである。特許文献2に記載される発明を、このような焼付け工程が省略された塗装方法に用いた場合に十分な塗膜外観が得られると言うことはできない。また、特許文献2は、このような焼付け工程が省略された塗装方法に用いることに対して何らの示唆も含まない。
特開2003−253494号公報 特開2003−171775号公報
本発明は上記従来技術の問題点を解決することを課題とする。より特定すれば、本発明は、仕上がり外観が良好な複層塗膜を形成することができる方法を提供することを課題とする。
本発明は、
カチオン電着塗料組成物を被塗物に電着塗装して、未硬化の電着塗膜を形成する工程、
未硬化の電着塗膜の上に中塗り塗料組成物を塗布して、未硬化の中塗り塗膜を形成する工程、および
未硬化の電着塗膜および中塗り塗膜を同時に焼付け硬化させる工程、
を包含する複層塗膜形成方法であって、
この被塗物が、粗さ曲線の最大高さ粗さ(Rz)が3.0〜8.0μmである表面を有する鋼材である、
複層塗膜形成方法、を提供するものであり、これにより上記目的が達成される。
本発明はまた、
カチオン電着塗料組成物を被塗物に電着塗装して電着塗膜を形成し、得られた電着塗膜を加熱硬化させる工程、
硬化した電着塗膜の上に中塗り塗料組成物を塗布して、未硬化の中塗り塗膜を形成する工程、
未硬化の中塗り塗膜の上に上塗りベース塗料組成物を塗布して、未硬化の上塗りベース塗膜を形成する工程、
未硬化の上塗りベース塗膜の上に上塗りクリヤー塗料組成物を塗布して、未硬化の上塗りクリヤー塗膜を形成する工程、および
未硬化の中塗り塗膜、上塗りベース塗膜および上塗りクリヤー塗膜を同時に焼付け硬化させる工程、
を包含する複層塗膜形成方法であって、
この被塗物が、粗さ曲線の最大高さ粗さ(Rz)が3.0〜8.0μmである表面を有する鋼材である、
複層塗膜形成方法、も提供する。
上記塗膜形成方法においては、カチオン電着塗料組成物が、カチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含有する電着塗料組成物であるのが好ましい。
また、上記被塗物の表面の粗さ曲線の最大高さ粗さ(Rz)の測定時の基準長さ(Ir)が2.5mmであるのが好ましい。
さらに、上記被塗物の表面の粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)が、カットオフ値(λc)2.5mmにおいて0.3〜1.5μmであるのが好ましい。
さらに本発明は、上記の複層塗膜形成方法により得られる複層塗膜を有する塗装鋼材も提供する。
本発明の方法により、鋼材の種類に関わらず、仕上がり外観が良好な複層塗膜を得ることができる。本方法を用いることにより、省エネルギーおよびコストダウンの要請に対応した、焼付け硬化が少ない塗装方法による複層塗膜を形成することができる。
鋼材
本発明の塗膜形成方法においては、粗さ曲線の最大高さ粗さ(Rz)が特定の範囲である表面を有する鋼材を使用する。本明細書で用いられる粗さ曲線の最大高さ粗さ(Rz)とは、JIS B 0601−2001において規定されるパラメーターである。
ある物体の表面性状(被測定面)を輪郭曲線方式において測定する場合、被測定面の断面曲線が測定される。この断面曲線は「Pa値」として表され、これは被測定面に垂直な平面で被測定面を切断した時、その切り口に現れる輪郭断面曲線を所定の波長ごとに算術平均した値である。こうして得られた断面曲線(Pa)は、その波長によってうねり成分(Wa)と粗さ曲線(Ra、Rz)とに分けられる。図1は、これらの断面曲線(Pa)、うねり成分(Wa)および粗さ曲線(Ra、Rz)の概略説明図である。そして粗さ曲線は、断面曲線から所定の波長より長いうねり成分(Wa値)をカットした曲線である。そしてうねり成分(Wa)は、断面曲線から所定の波長より短い粗さ曲線(Ra、Rz)をカットしたものである。この、うねり成分(Wa)と粗さ曲線(Ra、Rz)とに分ける「所定の波長」は、一般に、粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)を求める場合は「カットオフ値(λc)」といわれ、粗さ曲線の最大高さ粗さ(Rz)を求める場合は「基準長さ(Ir)」といわれる。
粗さ曲線の最大高さ粗さ(Rz)は、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜取り部分の山頂線と谷底線との間隔を粗さ曲線の縦倍率の方向に測定し、この値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。この粗さ曲線の最大高さ粗さ(Rz)の概略説明図を図2に示す。鋼材表面の粗さ曲線の最大高さ粗さ(Rz)は、例えば(株)ミツトヨ社製、評価型表面粗さ測定機などを用いて、JIS B 0601−2001に準拠して測定することができる。
本発明においては、鋼材表面の粗さ曲線の最大高さ粗さ(Rz)が下限3.0μm上限8.0μmである鋼材を使用するのが好ましい。鋼材の表面のRzの上限は7.0μmであるのが好ましい。なお、この粗さ曲線の最大高さ粗さ(Rz)の好ましい範囲は、測定時の基準長さ(Ir)の値によっても変化することがある。鋼材の表面のRzが3.0μm未満である場合は、より高い平滑性を有する複層塗膜外観を得ることができるが、実際のところRzが3.0μm未満の表面を有する鋼材を調製することは、現状の技術においては困難である。また、上限が8.0μmを超える場合は、得られる複層塗膜の表面の平滑性が劣ることとなる。Rz値が8.0μm以下である鋼材を得る方法として、バフ研磨、バレル回転研磨、振動バレル研磨、ベルト研磨、ブラスト研磨といった公知の研磨方法により鋼材表面を研磨する方法などが挙げられる。
また、本発明の方法においては、被塗物の表面の粗さ曲線の最大高さ粗さ(Rz)の測定時の基準長さ(Ir)が2.5mmであるのが好ましい。基準長さ(Ir)は、Rzを測定する際において、輪郭曲線の特性を求めるために用いる輪郭曲線のX軸方向長さであり、上記の通り「カットオフ値」と同様のものである。本発明者は、本発明において、被塗物の表面の粗さ曲線の最大高さ粗さ(Rz)の測定時の基準長さ(Ir)が2.5mmである場合において、この被塗物のRzが、被塗物に塗膜を設けた場合の塗膜外観(Ra)と高い相関性があることも見いだしている。なお、被塗物の表面の粗さ曲線の最大高さ粗さ(Rz)の測定時の基準長さ(Ir)が2.5mmである場合、粗さ曲線の最大高さ粗さ(Rz)は下限3.0μm上限8.0μmであるのが好ましい。基準長さ(Ir)が2.5mmである場合の鋼材の表面のRzの下限は4.0μmであるのがより好ましく、上限は7.0μmであるのが好ましい。
さらに本発明の塗膜形成方法においては、粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)が特定の範囲である表面を有する鋼材を使用するのがより好ましい。本明細書で用いられる、粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)とは、JIS B 0601−2001において規定されるパラメーターである。粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)は、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜取り部分の平均線の方向にX軸を、縦倍率の方向にY軸を取り、粗さ曲線をy=f(x)で表したときに、下記式によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)の概略説明図を図3に示す。
Figure 2006247614
鋼材表面の粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)は、例えば(株)ミツトヨ社製、評価型表面粗さ測定機などを用いて、JIS B 0601−2001に準拠して測定することができる。
本発明においては、カットオフ値(λc)2.5mmにおいて鋼材表面の粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)が下限0.3μm上限1.5μmである鋼材を使用するのが好ましい。鋼材の表面のRaの上限は1.2μmであるのがより好ましい。鋼材の表面のRaが0.3μm未満である場合は、より高い平滑性を有する複層塗膜外観を得ることができるが、実際のところ鋼材表面の粗さ曲線の算術平均粗さが0.3μm未満の表面を有する鋼材を調製することは、現状の技術においては困難である。また、上限が1.5μmを超える場合は、得られる複層塗膜の表面の平滑性が劣る恐れがある。Ra値が1.5μm以下である鋼材を得る方法として、バフ研磨、バレル回転研磨、振動バレル研磨、ベルト研磨、ブラスト研磨といった公知の研磨方法により鋼材表面を研磨する方法などが挙げられる。
塗装される鋼材の種類は特に限定されるものではない。また、鋼材の表面上にめっき処理または化成処理などが施されていてもよく、施されていない無処理の鋼材であってもよい。使用できる鋼材として例えば、冷延鋼板、熱延鋼板、ステンレス、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、亜鉛−アルミニウム合金系めっき鋼板、亜鉛−鉄合金系めっき鋼板、亜鉛−マグネシウム合金系めっき鋼板、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金系めっき鋼板、アルミニウム系めっき鋼板、アルミニウム−シリコン合金系めっき鋼板、錫系めっき鋼板、鉛−錫合金系めっき鋼板、クロム系めっき鋼板などの鋼材、さらにこれらの鋼板に化成処理を施した鋼材、などが挙げられる。鋼板に施すことができる化成処理として、リン酸塩系処理剤(リン酸亜鉛処理剤、リン酸鉄処理剤、リン酸マンガン処理剤など)、リン酸アルコール系処理剤、リン酸クロム酸系処理剤、炭酸ナトリウム系処理剤、クロメート系処理剤(クロム酸、重クロム酸塩など)、ノンクロメート系処理剤(例えば、シランカップリング剤、ジルコニウム化合物などを含むジルコニウム−シランカップリング剤含有処理剤など。特開2001−316845号などに記載されており公知の処理剤である。)、チタン系処理剤、フッ素系処理剤などによる化成処理が挙げられる。
本発明において、塗装される鋼材としてRzが8.0以下である表面を有する鋼材を使用することにより、その鋼材の種類に関わらず、仕上がり外観が良好な複層塗膜を得ることができるという特徴を見出すに至っている。当分野においては、電着塗料組成物などの成分・配合量を変更することによって仕上がり外観が良好な複層塗膜を得る方法が多く提供されている。これらの技術に加えて、本発明による特定の表面形状を有する鋼材を使用する複層塗膜形成方法を使用することによって、さらに良好な仕上がり外観を有する塗膜を形成することが可能となる。
鋼材について、仕上がり外観を向上させるという観点からは鋼材の種類は限定されないことは上記の通りである。しかし、塗膜が形成された塗装鋼材の耐久性などを考慮すると、鋼材として溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、亜鉛−アルミニウム合金系めっき鋼板、亜鉛−鉄合金系めっき鋼板、亜鉛−マグネシウム合金系めっき鋼板、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金系めっき鋼板、ステンレス、アルミニウム系めっき鋼板などを使用するのが好ましい。
カチオン電着塗料組成物
本発明において使用されるカチオン電着塗料組成物は、水性溶媒、水性溶媒中に分散するか又は溶解した、カチオン性エポキシ樹脂及びブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂、中和酸、有機溶媒を含有する。このカチオン電着塗料組成物はさらに、顔料を含んでもよい。
カチオン性エポキシ樹脂
本発明で用いるカチオン性エポキシ樹脂には、アミンで変性されたエポキシ樹脂が含まれる。カチオン性エポキシ樹脂は、典型的には、ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ環の全部をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環するか、または一部のエポキシ環を他の活性水素化合物で開環し、残りのエポキシ環をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環して製造される。
ビスフェノール型エポキシ樹脂の典型例はビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ樹脂である。前者の市販品としてはエピコート828(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量180〜190)、エピコート1001(同、エポキシ当量450〜500)、エピコート1010(同、エポキシ当量3000〜4000)などがあり、後者の市販品としてはエピコート807、(同、エポキシ当量170)などがある。
特開平5−306327号公報に記載される、下記式
Figure 2006247614
[式中、Rはジグリシジルエポキシ化合物のグリシジルオキシ基を除いた残基、R’はジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた残基、nは正の整数を意味する。]で示されるオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂をカチオン性エポキシ樹脂に用いてもよい。耐熱性及び耐食性に優れた塗膜が得られるからである。
エポキシ樹脂にオキサゾリドン環を導入する方法としては、例えば、メタノールのような低級アルコールでブロックされたブロックイソシアネート硬化剤とポリエポキシドを塩基性触媒の存在下で加熱保温し、副生する低級アルコールを系内より留去することで得られる。
特に好ましいエポキシ樹脂はオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂である。耐熱性及び耐食性に優れ、更に耐衝撃性にも優れた塗膜が得られるからである。
二官能エポキシ樹脂とモノアルコールでブロックしたジイソシアネート(すなわち、ビスウレタン)とを反応させるとオキサゾリドン環を含有するエポキシ樹脂が得られることは公知である。このオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂の具体例及び製造方法は、例えば、特開2000−128959号公報第0012〜0047段落に記載されており、公知である。
これらのエポキシ樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、および単官能性のアルキルフェノールのような適当な樹脂で変性しても良い。また、エポキシ樹脂はエポキシ基とジオール又はジカルボン酸との反応を利用して鎖延長することができる。
これらのエポキシ樹脂は、開環後0.3〜4.0meq/gのアミン当量となるように、より好ましくはそのうちの5〜50%が1級アミノ基が占めるように活性水素化合物で開環するのが望ましい。
カチオン性基を導入し得る活性水素化合物としては1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩、スルフィド及び酸混合物がある。1級、2級又は/及び3級アミノ基含有エポキシ樹脂を調製するためには1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物として用いる。
具体例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルエタノールアミン酢酸塩、ジエチルジスルフィド・酢酸混合物などのほか、アミノエチルエタノールアミンのケチミン、ジエチレントリアミンのジケチミンなどの1級アミンをブロックした2級アミンがある。アミン類は複数の種類を併用して用いてもよい。
ブロックイソシアネート硬化剤
本発明のブロックイソシアネート硬化剤の調製に使用されるポリイソシアネートとは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物をいう。ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族系、脂環式系、芳香族系および芳香族−脂肪族系等のうちのいずれであってもよい。
ポリイソシアネートの具体例には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、p−フェニレンジイソシアネート、及びナフタレンジイソシアネート等のような芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、及びリジンジイソシアネート等のような炭素数3〜12の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート、及び1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(水添XDI)、水添TDI、2,5−もしくは2,6−ビス(イソシアナートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(ノルボルナンジイソシアネートとも称される。)等のような炭素数5〜18の脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、及びテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等のような芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;これらのジイソシアネートの変性物(ウレタン化物、カーボジイミド、ウレトジオン、ウレトンイミン、ビューレット及び/又はイソシアヌレート変性物);等があげられる。これらは、単独で、または2種以上併用することができる。
ポリイソシアネートをエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどの多価アルコールとNCO/OH比2以上で反応させて得られる付加体ないしプレポリマーもブロックイソシアネート硬化剤に使用してよい。
ブロック剤は、ポリイソシアネート基に付加し、常温では安定であるが解離温度以上に加熱すると遊離のイソシアネート基を再生し得るものである。
顔料
本発明の方法に用いられるカチオン電着塗料組成物は、通常用いられる顔料を含んでもよい。使用できる顔料の例としては、通常使用される無機顔料、例えば、チタンホワイト、カーボンブラック及びベンガラのような着色顔料;カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカおよびクレーのような体質顔料;リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、シアン化亜鉛、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム及びリンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛のような防錆顔料等、が挙げられる。
顔料を電着塗料の成分として用いる場合、一般に顔料を予め高濃度で水性溶媒に分散させてペースト状(顔料分散ペースト)にする。顔料は粉体状であるため、電着塗料組成物で用いる低濃度均一状態に一工程で分散させるのは困難だからである。一般にこのようなペーストを顔料分散ペーストという。
顔料分散ペーストは、顔料を顔料分散樹脂ワニスと共に水性溶媒中に分散させて調製する。顔料分散樹脂としては、一般に、カチオン性又はノニオン性の低分子量界面活性剤や4級アンモニウム基及び/又は3級スルホニウム基を有する変性エポキシ樹脂等のようなカチオン性重合体を用いる。水性溶媒としてはイオン交換水や少量のアルコール類を含む水等を用いる。一般に、顔料分散樹脂は、顔料100質量部に対して固形分比20〜100質量部の量で用いる。顔料分散樹脂ワニスと顔料とを混合した後、その混合物中の顔料の粒径が所定の均一な粒径となるまで、ボールミルやサンドグラインドミル等の通常の分散装置を用いて分散させて、顔料分散ペーストを得ることができる。
上記カチオン電着塗料組成物は、上記成分の他に、上記ブロックイソシアネート硬化剤のブロック剤解離のために解離触媒を含む場合は、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫オキシド、ジオクチル錫オキシドなどの有機錫化合物や、N−メチルモルホリンなどのアミン類、ストロンチウム、コバルト、銅などの金属塩が使用できる。解離触媒の濃度は、カチオン電着塗料組成物中のカチオン性エポキシ樹脂とブロックイソシアネート硬化剤合計の100固形分質量部に対し0.1〜6質量部である。
カチオン電着塗料組成物の調製
本発明で用いられるカチオン電着塗料組成物は、上に述べた触媒、カチオン性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤、及び顔料分散ペーストを水性溶媒中に分散することによって調製される。また、通常、水性溶媒にはカチオン性エポキシ樹脂を中和して、バインダー樹脂エマルションの分散性を向上させるために中和酸を含有させる。中和酸は塩酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸のような無機酸または有機酸である。
使用される中和酸の量は、カチオン性エポキシ樹脂及びブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂固形分100gに対して、下限10mg当量、上限25mg当量の範囲であるのが好ましい。上記下限は15mg当量であるのがより好ましく、上記上限は20mg当量であるのがより好ましい。中和酸の量が10mg当量未満であると水への親和性が十分でなく水への分散ができないか、著しく安定性に欠ける状態となり、25mg当量を越えると析出に要する電気量が増加し、塗料固形分の析出性が低下し、つきまわり性が劣る状態となる。
カチオン電着塗料組成物は、カチオン性エポキシ樹脂、及びブロックイソシアネート硬化剤を、水性溶媒に分散させることにより、調製することができる。ブロックイソシアネート硬化剤の量は、硬化時にカチオン性エポキシ樹脂中の1級、2級アミノ基、水酸基、等の活性水素含有官能基と反応して良好な硬化塗膜を与えるのに十分な量が必要とされる。好ましいブロックイソシアネート硬化剤の量は、カチオン性エポキシ樹脂とブロックイソシアネート硬化剤との固形分重量比(カチオン性エポキシ樹脂/硬化剤)で表して90/10〜50/50、より好ましくは80/20〜65/35の範囲である。カチオン性エポキシ樹脂とブロックイソシアネート硬化剤との固形分量比の調整により、造膜時の塗膜(析出膜)の流動性および硬化速度が改良され、塗膜の平滑性が向上する。
有機溶媒は、カチオン性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤、顔料分散樹脂等の樹脂成分を合成する際に溶媒として必要であり、完全に除去するには煩雑な操作を必要とする。また、バインダー樹脂に有機溶媒が含まれていると造膜時の塗膜の流動性が改良され、塗膜の平滑性が向上する。
カチオン電着塗料組成物に通常含まれる有機溶媒としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等が挙げられる。
カチオン電着塗料組成物は、上記のほかに、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤などの常用の塗料用添加剤を含むことができる。アミノ基含有アクリル樹脂、アミノ基含有ポリエステル樹脂等を含んでもよい。
電着塗膜の形成
電着塗装は、被塗物を陰極として陽極との間に、通常、50〜450Vの電圧を印加して行う。印加電圧が50V未満であると電着が不充分となり、450Vを超えると、塗膜が破壊され異常外観となる。電着塗装時、塗料組成物の浴液温度は、通常10〜45℃に調節される。
電着塗装工程は、カチオン電着塗料組成物に被塗物を浸漬する過程、及び、上記被塗物を陰極として陽極との間に電圧を印加し、被膜を析出させる過程、から構成される。また、電圧を印加する時間は、電着条件によって異なるが、一般には、2〜4分とすることができる。
電着塗膜の膜厚は、好ましくは5〜25μm、より好ましくは20μmとする。膜厚が5μm未満であると、防錆性が不充分であり、25μmを超えると、塗料の浪費につながる。
上述のようにして得られる電着塗膜を、電着過程の終了後、そのまま又は水洗した後、120〜260℃、好ましくは140〜220℃で、10〜30分間焼付けることによって硬化電着塗膜が形成される。
複層塗膜形成方法
本発明の複層塗膜形成方法の一例として、加熱硬化された硬化電着塗膜上に、中塗り塗料組成物、上塗りベース塗料組成物、上塗りクリヤー塗料組成物を順次塗布し、次いで未硬化の中塗り塗膜、上塗りベース塗膜、上塗りクリヤー塗膜を同時に加熱硬化させる方法が挙げられる。この方法は一般にスリーコート・ワンベーク塗装(3C1B)といわれる。本発明の複層塗膜形成方法の他の一例として、未硬化の電着塗膜上に、中塗り塗料組成物を塗布し、次いで未硬化の電着塗膜および中塗り塗膜を同時に加熱硬化させる方法が挙げられる。この方法は一般にツーウェット塗装といわれる。
スリーコート・ワンベーク塗装による複層塗膜の形成方法
複層塗膜を得る塗装方法の1つである、省エネルギーなどの点において有用なスリーコート・ワンベーク塗装(3C1B)による塗膜形成方法は、具体的には下記工程を包含する方法である:カチオン電着塗料組成物を被塗物に電着塗装して電着塗膜を形成し、得られた電着塗膜を加熱硬化させる工程;硬化した電着塗膜の上に中塗り塗料組成物を塗布して、未硬化の中塗り塗膜を形成する工程;未硬化の中塗り塗膜の上に上塗りベース塗料組成物を塗布して、未硬化の上塗りベース塗膜を形成する工程;未硬化の上塗りベース塗膜の上に上塗りクリヤー塗料組成物を塗布して、未硬化の上塗りクリヤー塗膜を形成する工程、及び;未硬化の中塗り塗膜、上塗りベース塗膜および上塗りクリヤー塗膜を同時に焼付け硬化させる工程。この塗装方法において、被塗物として、粗さ曲線の最大高さ粗さ(Rz)が3.0〜8.0μmである表面を有する鋼材を用いることによって、仕上がり外観が良好な複層塗膜を得ることができる。
このようなスリーコート・ワンベーク塗装(3C1B)による複層塗膜形成方法において、カチオン電着塗料組成物として上記記載のカチオン電着塗料組成物を用いることができる。そして、中塗り塗料組成物としては、水性塗料組成物であってもよく、また溶剤型塗料組成物であってもよい。これらの塗料組成物の成分としては、中塗り樹脂成分、顔料、そして水性溶媒および/または有機溶媒が挙げられる。中塗り樹脂成分は、中塗り塗料樹脂および、必要に応じて中塗り硬化剤、から構成される。水性溶媒、有機溶媒は、上記カチオン電着塗料組成物において例示したものを、同様に使用することができる。
中塗り塗料樹脂として、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキッド樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂などが挙げられる。これらの樹脂のうち、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましく使用される。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中塗り塗料樹脂には一般に、硬化可能なタイプとラッカータイプとがあるが、硬化可能なタイプのものが好ましく使用される。硬化可能なタイプを使用する場合は、中塗り塗料樹脂と併せて、メラミン樹脂、ブロックイソシアネート化合物、オキサゾリン化合物およびカルボジイミド化合物などの中塗り塗料硬化剤を使用する。この中塗り塗料硬化剤を、中塗り樹脂成分中に含めて、後に加熱下または常温下において硬化反応を進行させることができる。また、硬化可能なタイプの中塗り塗料樹脂と、硬化可能ではないタイプのものとを併用することもできる。
中塗り塗料硬化剤が含まれる場合、塗料固形分中における中塗り塗料樹脂と中塗り塗料硬化剤との好ましい重量割合は、90/10〜50/50、より好ましくは85/15〜60/40である。中塗り塗料樹脂と中塗り塗料硬化剤との重量割合が90/10から外れる程、中塗り塗料硬化剤の量が少ない場合は、塗膜中の十分な架橋が得られないことがある。一方、この割合が50/50から外れる程、中塗り塗料硬化剤の量が多い場合は、塗料組成物組成物の貯蔵安定性が低下するとともに硬化速度が大きくなり、塗膜外観が悪くなる恐れがある。
中塗り塗料組成物に含まれる顔料として、バリタ粉、沈殿性硫酸バリウム、炭酸バリウム、石膏、クレー、シリカ、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイトなどの体質顔料、および着色顔料などが挙げられる。着色顔料として、例えば、アゾレーキ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジコ系顔料、ベリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料、カーボンブラック等の有機顔料、あるいは黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、二酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。顔料の量は、所望の性能および色相を発現するのに合わせて任意に設定できる。これら顔料は、1種のみ単独で用いてもよく、また2種以上を併用して用いてもよい。
中塗り塗料組成物の塗料固形分に対する顔料の濃度(PWC)は、下限10重量%上限50重量%の範囲であるのが好ましい。上記上限は30重量%であることがより好ましい。また、中塗り塗料組成物の固形分濃度は、下限35重量%上限65重量%の範囲が好ましい。
中塗り塗料組成物は、上記成分の他に、脂肪族アミドの潤滑分散体であるポリアミドワックスや酸化ポリエチレンを主体としたコロイド状分散体であるポリエチレンワックス、硬化触媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、シリコンや有機高分子等の表面調整剤、タレ止め剤、増粘剤、消泡剤、滑剤、架橋性重合体粒子(ミクロゲル)等を適宜添加することができる。これらの添加剤を、中塗り樹脂成分100質量部(固形分基準)に対して15質量部以下の割合で配合することにより、塗料組成物や塗膜の性能を改善することができる。
このような中塗り塗料組成物は、例えば特開2002−224613号公報記載の公知の方法によって調製することができる。
上塗りベース塗料組成物として、上塗りベース樹脂成分、光輝性顔料および/または着色顔料、体質顔料および溶媒を含有する、光輝性塗料組成物またはソリッド塗料組成物を用いることができる。この上塗りベース塗料組成物は、水分散系または有機溶媒分散系を含む、水系または有機溶媒系のものである。
これらの上塗りベース塗料組成物に含まれる上塗りベース樹脂成分は、上塗りベース塗料樹脂と必要に応じて上塗りベース塗料硬化剤とから構成される。上記上塗りベース塗料組成物に含まれる上塗りベース樹脂成分(上塗りベース塗料樹脂、上塗りベース塗料硬化剤)、着色顔料、体質顔料、各種添加剤および溶媒としては、上記中塗り塗料組成物に関して記載したもの、および上記カチオン電着塗料組成物に関して記載したものを、いずれも使用できる。上塗りベース樹脂成分を使用して、光輝性上塗りベース塗料組成物では光輝性顔料と必要に応じて着色顔料が、ソリッド上塗りベース塗料組成物では着色顔料が、分散される。
上塗りベース塗料樹脂として、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂およびこれらの変性樹脂から選ばれた少なくとも1種の塗膜形成性樹脂が使用できる。上塗りベース塗料硬化剤として、上記の中塗り塗料硬化剤およびエーテル化メラミン樹脂を使用することができる。エーテル化メラミン樹脂は、メラミンをメタノールやブタノール等のアルコールでエーテル化することにより得られる。上塗りベース樹脂成分である上塗りベース塗料樹脂および上塗りベース塗料硬化剤の好ましい組合せとして、アクリル樹脂・メラミン樹脂系が挙げられる。この場合アクリル樹脂としては、酸価10〜200、水酸基価30〜200、および数平均分子量2000〜50000のものが好ましい。このような上塗りベース塗料組成物は、例えば特開2002−224613号公報記載の公知の方法によって調製することができる。
上塗りクリヤー塗料組成物は、上塗りクリヤー樹脂成分、各種添加剤および溶媒を含有するクリヤー塗料組成物から形成される。上記上塗りクリヤー塗料組成物は、水分散系および有機溶媒分散系を含む、水系または有機溶媒系のものである。
これらの上塗りクリヤー塗料組成物に含まれる上塗りクリヤー樹脂成分は、上塗りクリヤー塗料樹脂と必要に応じて上塗りクリヤー塗料硬化剤とから構成される。上記上塗りクリヤー塗料組成物に含まれる上塗りクリヤー樹脂成分(上塗りクリヤー塗料樹脂、上塗りクリヤー塗料硬化剤)、各種添加剤および有機溶媒としては、上記中塗り塗料組成物に関して記載したものがいずれも使用できる。
上塗りクリヤー樹脂成分である上塗りクリヤー塗料樹脂および上塗りクリヤー塗料硬化剤の好ましい組合せとして、アクリル樹脂・メラミン樹脂系が挙げられる。この場合アクリル樹脂としては、酸価10〜200、水酸基価30〜200、および数平均分子量2000〜50000のものが好ましい。このような上塗りクリヤー塗料組成物は、例えば特開2002−224613号公報記載の公知の方法によって調製することができる。
スリーコート・ワンベーク塗装(3C1B)による複層塗膜形成方法において、カチオン電着塗料組成物を電着塗装する方法および得られた電着塗膜を加熱硬化させる方法は、上記の電着塗装方法を用いることができる。得られた硬化電着塗膜の上に未硬化の中塗り塗膜を形成する方法として、スプレー法、ロールコーター法などを用いて中塗り塗料組成物を塗装する方法が挙げられる。塗装方法として具体的には、「リアクトガン」といわれるエアー静電スプレーを用いたり、「マイクロ・マイクロ(μμ)ベル」、「マイクロ(μ)ベル」、「メタベル」などといわれる回転霧化式の静電塗装機を用いたりして塗装するのが好ましい。この中で、回転霧化式の静電塗装機を用いて塗装するのが、特に好ましい。
中塗り塗膜の好ましい乾燥膜厚は5〜80μmであり、10〜50μmがより好ましい。このスリーコート・ワンベーク塗装においては、中塗り塗膜の形成後、加熱硬化させることなく次工程の上塗りベース塗膜の形成工程に移る。この場合においては、上塗りベース塗膜を形成する前に、加熱硬化(焼付け)処理で用いられる温度より低い温度でプレヒートを行なってもよい。
上塗りベース塗膜は、中塗り塗膜上に、上塗りベース塗料組成物を塗装することによって得られる。スリーコート・ワンベーク塗装においては、この上塗りベース塗料組成物は、ウェットオンウェット方式で未硬化の中塗り塗膜上に塗装される。上塗りベース塗料組成物の塗装方法は特に限定されないが、上記中塗り塗料組成物の塗装方法として例示した方法を挙げることができる。上塗りベース塗料組成物を自動車車体等に対して塗装する場合の具体的な塗装方法として、エアー静電スプレーによる多ステージ塗装、好ましくは2ステージ塗装を行なうことによって、意匠性を高めることができる。または、エアー静電スプレーと上記の回転式霧化式の静電塗装機とを組合せた塗装方法により、塗装してもよい。
この上塗りベース塗膜を形成することにより、意匠性が付与され、そして前工程で形成された中塗り塗膜との密着性確保および次工程で塗り重ねられる上塗りクリヤー塗膜との密着性が確保される。上塗りベース塗膜の乾燥膜厚は、1コートにつき5〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。上塗りベース塗膜の形成後は、加熱硬化させることなく次工程の上塗りクリヤー塗膜の形成工程に移る。上塗りクリヤー塗膜を形成する前に、加熱硬化(焼付け)処理で用いられる温度より低い温度でプレヒートを行なってもよい。
上塗りクリヤー塗膜は、上塗りベース塗膜上に、上塗りクリヤー塗料組成物を塗装することによって得られる。この上塗りクリヤー塗料組成物は、ウェットオンウェット方式で、未硬化の上塗りベース塗膜上に塗装される。
上記上塗りクリヤー塗膜を形成する方法は特に限定されないが、スプレー法、ロールコーター法等が好ましい。上記上塗りクリヤー塗膜の乾燥膜厚は、1コートにつき20〜50μmが好ましく、25〜40μmがより好ましい。上塗りクリヤー塗膜を形成することにより、上塗りベース塗膜が保護され、および得られる複層塗膜に深み感を付与することができる。
本発明の1態様であるスリーコート・ワンベーク塗装においては、上塗りクリヤー塗膜を形成した後に、未硬化の中塗り塗膜、上塗りベース塗膜および上塗りクリヤー塗膜の3層の塗膜を、120〜160℃で所定時間焼付けて硬化させて、複層塗膜を得ることができる。本発明の方法では、中塗り塗料組成物、上塗りベース塗料組成物および上塗りクリヤー塗料組成物は、この順番に、それぞれウェットオンウェットで塗装される。つまり未硬化の塗膜が順次形成される。本発明において「未硬化」とは、完全に硬化していない状態をいい、プレヒートが行なわれた塗膜の状態も含むものである。「プレヒート」は、加熱硬化(焼付け)処理で用いられる温度より低い温度である室温〜100℃で、1〜10分間放置または加熱することにより、行なうことができる。中塗り塗膜を形成した後および上塗りベース塗膜を形成した後にそれぞれプレヒートを行なうことによって、より良好な仕上り外観を有する塗膜を得ることができる。
ツーウェット塗装による複層塗膜の形成方法
複層塗膜を得る他の方法である、省エネルギーなどの点において有用なツーウェット塗装は、上述のようにして得られる電着塗膜を硬化させることなく、未硬化の電着塗膜上に中塗り塗料組成物を塗装し、次いで加熱して両塗膜を一緒に架橋硬化させる方法である。このツーウェット塗装は具体的には、下記工程:カチオン電着塗料組成物を被塗物に電着塗装して、未硬化の電着塗膜を形成する工程;未硬化の電着塗膜の上に中塗り塗料組成物を塗布して、未硬化の中塗り塗膜を形成する工程、及び;未硬化の電着塗膜および中塗り塗膜を同時に焼付け硬化させる工程;を包含する。この塗装方法において、被塗物として、粗さ曲線の最大高さ粗さ(Rz)が3.0〜8.0μmである表面を有する鋼材を用いることによって、仕上がり外観が良好な複層塗膜を得ることができる。
このようなツーウェット塗装による複層塗膜形成方法において、カチオン電着塗料組成物として上記記載のカチオン電着塗料組成物を用いることができる。そして、中塗り塗料組成物として、上記した、中塗り樹脂成分、顔料、そして水性溶媒および/または有機溶媒を含む中塗り塗料組成物を用いることができる。このツーウェット塗装に用いるのに適した中塗り塗料組成物は、例えば特開2003−266013号公報により公知の方法によって製造することができる。
ツーウェット塗装による複層塗膜形成方法において、カチオン電着塗料組成物を電着塗装する方法は、上記の電着塗装方法を用いることができる。ツーウェット塗装においては、こうして得られた未硬化の電着塗膜を、加熱硬化工程を行うことなく中塗り塗料による塗装を行う。しかし、中塗り塗料による塗装を行う前に、プレヒートを行うことが好ましい。プレヒートを行うことによって未硬化塗膜中の水分が除去され、同時に電着時に生じる未硬化塗膜表面の孔が塞がれるため、得られる複層塗膜の仕上がり外観が良好なものとなる点で好ましい。このプレヒートは、下限室温、上限100℃の温度範囲の条件で、1〜10分間行われることが好ましい。
未硬化の電着塗膜に中塗り塗料組成物を塗装する方法としては、上記の中塗り塗料組成物を塗装する方法を用いることができる。こうして得られた未硬化の電着塗膜および中塗り塗膜を、100〜250℃の温度、より好ましくは130〜180℃の温度で、5〜60分、より好ましくは10〜40分加熱することによって、これらの塗膜を同時に焼付け硬化させることができる。こうして得られた硬化複層塗膜上に、必要に応じて、上塗りベース塗料組成物、および上塗りクリヤー塗料組成物などを塗装することができる。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、特に断らない限り、「部」は重量部を表わす。
製造例1 カチオン電着塗料組成物の調製
製造例1−1 アミン変性エポキシ樹脂の製造
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計および滴下漏斗を装備したフラスコに、2,4−/2,6−トリレンジイソシアネート(重量比=8/2)92部、メチルイソブチルケトン(以下、MIBKと略す)95部およびジブチル錫ジラウレート0.5部を仕込んだ。反応混合物を攪拌下、メタノール21部を滴下した。反応は、室温から始め、発熱により60℃まで昇温した。その後、30分間反応を継続した後、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル50部を滴下漏斗より滴下した。更に、反応混合物に、ビスフェノールA−プロピレンオキシド5モル付加体53部を添加した。反応は主に、60〜65℃の範囲で行い、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失するまで継続した。
次に、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンから既知の方法で合成したエポキシ当量188のエポキシ樹脂365部を反応混合物に加えて、125℃まで昇温した。その後、ベンジルジメチルアミン1.0部を添加し、エポキシ当量410になるまで130℃で反応させた。
続いて、ビスフェノールA61部およびオクチル酸33部を加えて120℃で反応させたところ、エポキシ当量は1190となった。その後、反応混合物を冷却し、ジエタノールアミン11部、N−エチルエタノールアミン24部およびアミノエチルエタノールアミンのケチミン化物の79重量%MIBK溶液25部を加え、110℃で2時間反応させた。その後、MIBKで不揮発分80%となるまで希釈し、ガラス転移温度が2℃のアミン変性エポキシ樹脂(樹脂固形分80%)を得た。
製造例1−2 ブロックイソシアネート硬化剤の製造
ジフェニルメタンジイソシアナート1250部およびMIBK266.4部を反応容器に仕込み、これを80℃まで加熱した後、ジブチル錫ジラウレート2.5部を加えた。ここに、ε−カプロラクタム226部をブチルセロソルブ944部に溶解させたものを80℃で2時間かけて滴下した。さらに100℃で4時間加熱した後、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失したことを確認し、放冷後、MIBK336.1部を加えてガラス転移温度が0℃のブロックイソシアネート硬化剤を得た。
製造例1−3 顔料分散樹脂の製造
まず、攪拌装置、冷却管、窒素導入管および温度計を装備した反応容器に、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略す)222.0部を入れ、MIBK39.1部で希釈した後、ここヘジブチル錫ジラウレート0.2部を加えた。その後、これを50℃に昇温した後、2−エチルヘキサノール131.5部を攪拌下、乾燥窒素雰囲気中で2時間かけて滴下した。適宜、冷却することにより、反応温度を50℃に維持した。その結果、2−エチルヘキサノールハーフブロック化IPDI(樹脂固形分90.0%)が得られた。
次いで、適当な反応容器に、ジメチルエタノールアミン87.2部、75%乳酸水溶液117.6部およびエチレングリコールモノブチルエーテル39.2部を順に加え、65℃で約半時間攪拌して、4級化剤を調製した。
次に、エポン(EPON)829(シェル・ケミカル・カンパニー社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量193〜203)710.0部とビスフェノールA289.6部とを適当な反応容器に仕込み、窒素雰囲気下、150〜160℃に加熱したところ、初期発熱反応が生じた。反応混合物を150〜160℃で約1時間反応させ、次いで、120℃に冷却した後、先に調製した2−エチルヘキサノールハーフブロック化IPDI(MIBK溶液)498.8部を加えた。
反応混合物を110〜120℃に約1時間保ち、次いで、エチレングリコールモノブチルエーテル463.4部を加え、混合物を85〜95℃に冷却し、均一化した後、先に調製した4級化剤196.7部を添加した。酸価が1となるまで反応混合物を85〜95℃に保持した後、脱イオン水964部を加えて、エポキシ−ビスフェノールA樹脂において4級化を終了させ、4級アンモニウム塩部分を有する顔料分散用樹脂を得た(樹脂Tg=5℃、樹脂固形分50%)。
製造例1−4 顔料分散ペーストの製造
サンドグラインドミルに製造例1−4で得た顔料分散用樹脂を120部、カーボンブラック2.0部、カオリン100.0部、二酸化チタン80.0部、リンモリブデン酸アルミニウム18.0部およびイオン交換水221.7部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た(固形分48%)。
製造例1−5 カチオン電着塗料組成物の調製
製造例1−1で得られたアミン変性エポキシ樹脂と製造例1−2で得られたブロックイソシアネート硬化剤とを固形分比で80/20で均一になるよう混合した。これに樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量(MEQ(A))が30になるよう氷酢酸を添加し、さらにイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が36%のエマルションを得た。
このエマルション1500部および製造例1−4で得られた顔料分散ペースト540部と、イオン交換水1920部と10%酢酸セリウム水溶液40部およびジブチル錫オキサイド10部とを混合して、固形分20重量%のカチオン電着塗料組成物を得た。
製造例2 ツーウェット塗装用水性中塗り塗料組成物の調製
製造例2−1 アクリル樹脂溶液の調製
反応容器にジプロビレングリコールメチルエーテル40.0部を加え、窒素気流中で混合攪拌しながら130℃に昇温した。次いで、モノマー混合物(メタクリル酸、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、スチレン、αーメチルスチレンダイマー(三井化学社製 MSD−100))100部及びジプロピレングリコールメチルエーテル10.0部及びターシャルブチルパーオキシ2−エチルへキサノエート13部からなる開始剤溶液を3時間にわたり並行して反応容器に滴下した。滴下終了後、0.5時間同温度で熟成を行った。更に、ジプロピレングリコールメチルエーテル5.0部及びターシャルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.3部からなる開始剤溶液を0.5時間にわたり反応容器に滴下した。滴下終了後、2時間同温度で熟成を行った。
脱溶剤装置により、減圧下(70torr)130℃で溶剤を16.11部留去した後、脱イオン水194.24部及びジメチルアミノエタノール8.82部を加えてアクリル樹脂溶液を得た。得られたアクリル樹脂溶液の不揮発分は30.0%であり、粘度は1000センチポイズ(E型粘度計一回転測定)、数平均分子量=3000、重量平均分子量=9000、固形分酸価=56、固形分水酸基価=70、中和率100%であった。
製造例2−2 水性樹脂用水性ポリエステル樹脂溶液の調製
窒素導入管、攪拌機、温度調節器、冷却管及びデカンターを備えた反応容器に無水フタル酸176部、イソフタル酸197部、アジピン酸87部、トリメチロールプロパン102部、ネオペンチルグリコール272部及びジブチルチンオキサイド0.8部、キシレン17部を仕込み、キシレンの還流が始まってから2時間かけて温度を200℃まで昇温した。その間、反応により生成する水をキシレンと共沸させて除去した。カルボン酸の酸価が8になったところで150℃まで冷却し、無水トリメリット酸49部を加えた後、更に温度が60℃になるまで冷却し、ジメチルエタノールアミン46部を加え混合したものにイオン交換水1137部を加え、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ測定による数平均分子量2000、固形分40%、固形分酸価40、水酸基価100の水性型ポリエステル樹脂溶液を得た
製造例2−3 ツーウェット用水性中塗り塗料組成物の調製
製造例2−1で得られたアクリル樹脂溶液を44.0部、CR−97(商品名、石原産業社製二酸化チタン)24.5部、B−34(商品名、堺化学社製沈降性硫酸バリウム)12部、MA−100(商品名、三菱化学社製カーボンブラック)0.5部及びLMR−100(商品名、富士タルク社製タルク)0.3部を、ペイントコンディショナー中でガラスビーズ媒体を加えて、室温で1時間混合分散し、粒度10μm以下の顔料分散体組成物を得た。この顔料分散体組成物84.0部に対して、製造例2−2で得られた水性ポリエステル樹脂溶液72.0部、マーコート723(商品名、三井サイテック社製メラミン樹脂、固形分100質量%)18部及びサーフィノール104E(商品名、エアプロダクツジャパン社製表面調整剤)0.5部を、混合して10分間ディスパーにて攪拌混合し、水性中塗り塗料組成物を得た。ツーウェット塗装用水性中塗り塗料組成物をフォードカップNo.4によって、20℃で30秒となるように希釈した。
参考実施例
13枚の溶融亜鉛めっき鋼板(JIS G3302規格品、150×70×0.8mm)の表面を、トルエンを染み込ませた布で拭い、脱脂した。この溶融亜鉛めっき鋼板について、塗装する表面の粗さ曲線の平均高さ Rz値を、基準長さ(Ir)=2.5mm、0.8mmおよび0.25mmとして測定すること以外は、以下の実施例1と同様にして測定した。ついで、各鋼板に、上記製造例1により調製されたカチオン電着塗料を乾燥膜厚15μmになるように電着し、水洗後、160℃で10分間焼付け硬化した。
得られた硬化電着塗膜の、粗さ曲線の算術平均粗さ Raを、以下の実施例1と同様にして測定した。こうして得られた鋼板のRz値をx軸、そして硬化電着塗膜のRa値をy軸にプロットし、グラフにした。基準長さ(Ir)=2.5mmのプロットを図4、基準長さ(Ir)=0.8mmのプロットを図5、および基準長さ(Ir)=0.25mmのプロットを図6に示す。こうして得られたプロットについて、最小二乗線形近似曲線を求めたところ、基準長さ(Ir)=2.5mmのプロットのR値が最も1に近かった。これは、鋼板を、基準長さ(Ir)=2.5mmで測定した場合の粗さ曲線の最大高さ粗さ(Rz)が、得られる電着塗膜の粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)と、最も相関性があることを示している。
実施例1
下記組成のリン酸亜鉛処理剤を調製した。
Figure 2006247614
溶融亜鉛めっき鋼板(JIS G3302規格品、150×70×0.8mm)の表面を、アルカリクリーナー(サーフクリーナーSD250;日本ペイント社製)で拭って脱脂し、次いで水洗して乾燥させた。この鋼板を、上記で得られたリン酸亜鉛処理剤中に50〜54℃で90秒間浸漬し、化成処理を行った。次いで室温で15秒間水洗した。得られた鋼板を100℃の熱風で10分間乾燥させて、鋼材を得た。
鋼材の粗さ曲線の平均高さ(Rz)および粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)の測定
得られた鋼板について、下記測定方法を用いて、塗装する表面のRz値およびRa値を測定したところ、Rz5.00μm、Ra0.79μmであった。得られた結果を表2に示す。
Rz値の測定方法
塗装前の鋼材のRz値を、JIS−B0601−2001に準拠し、評価型表面粗さ測定機(Mitsutoyo社製、SURFTEST SJ−201P)を用いて測定した。測定時の基準長さ(Ir)=2.5mm(評価長さ:12.5mm、区画数5)として7回測定し、上下消去平均によりRz値を得た。なお、これらのRz値は、値が小さいほど表面上の凹凸が少なく、塗膜外観が良好であることを示す。
Ra値の測定方法
塗装前の鋼材のRa値を、JIS−B0601−2001に準拠し、評価型表面粗さ測定機(Mitsutoyo社製、SURFTEST SJ−201P)を用いて測定した。2.5mm幅カットオフ(区画数5)として7回測定し、上下消去平均によりRa値を得た。なお、これらのRa値は、値が小さいほど表面上の凹凸が少なく、塗膜外観が良好であることを示す。
評価1
ツーウェット塗装による複層塗膜の形成、およびツーウェット塗装により得られた複層塗膜の表面状態の評価
溶融亜鉛めっき鋼板(JIS G3302規格品、150×70×0.8mm)に、上記製造例1により調製されたカチオン電着塗料を乾燥膜厚15μmになるように電着し、水洗後、80℃で10分間プレヒートした。この未硬化電着塗面上に、上記の製造例2により調製された水性中塗り塗料を乾燥膜厚30μmになるようにエアスプレー塗装し、該2層塗膜を150℃で30分間加熱して同時に硬化させた。
得られた複層塗膜の仕上がり外観について、Wave Scan(BYK−Gardner社製)を用いて、LW(長波長領域)、SW(短波長領域)を測定することにより評価を行った。得られた結果を表2に示す。これらの数値は、数値が小さい程外観が良好であることを示す。
評価2
スリーコート・ワンベーク(3C1B)塗装による複層塗膜の形成、およびそれにより得られた複層塗膜の表面状態の評価
溶融亜鉛めっき鋼板(JIS G3302規格品、150×70×0.8mm)に、上記製造例1により調製されたカチオン電着塗料を乾燥膜厚15μmになるように電着し、水洗後、160℃で10分間焼付けた。次いで、溶剤型中塗り塗料(「H880」、日本ペイント社製、メラミン硬化型ポリエステル樹脂系塗料)をエアスプレー塗装にて乾燥膜厚20μmになるように塗装し、80℃で5分プレヒートを行った後、溶剤型ベース塗料(「H600」、日本ペイント社製、アクリル樹脂/メラミン樹脂系塗料)をエアスプレー塗装にて乾燥膜厚13μmになるように塗装し、80℃で3分プレヒートを行った。更に、その塗板に溶剤型クリヤー塗料(「マックフロー O−1600」、日本ペイント社製、カルボン酸エポキシ基硬化系を有するアクリル樹脂/ポリエステル樹脂系塗料)をエアスプレー塗装にて乾燥膜厚40μmになるように塗装し、該3層塗膜を140℃で30分間加熱して同時に硬化させた。
得られた複層塗膜の仕上がり外観について、Wave Scan(BYK−Gardner社製)を用いて、LW(長波長領域)、SW(短波長領域)を測定することにより評価を行った。得られた結果を表2に示す。これらの数値は、数値が小さい程外観が良好である事を示す。
実施例2
塗装に用いる溶融亜鉛めっき鋼板に、実施例1と同様に化成処理を行った。鋼板の塗装表面のRz値およびRa値を実施例1と同様に測定したところ、Rz6.55μm、Ra0.79μmであった。この鋼板に、実施例1と同様に塗装を行い、実施例1と同様に評価を行った。得られた結果を表2に示す。
実施例3
塗装に用いる溶融亜鉛めっき鋼板に、実施例1と同様に化成処理を行った。鋼板のRz値およびRa値を実施例1と同様に測定したところ、Rz5.64μm、Ra0.67μmであった。この鋼板に、実施例1と同様に塗装を行い、実施例1と同様に評価を行った。得られた結果を表2に示す。
実施例4
溶融亜鉛めっき鋼板の代わりに、冷却鋼板(JIS G3141規格品、150×70×0.8mm)を用いた。実施例1と同様に化成処理を行い、鋼材の塗装表面のRz値およびRa値を実施例1と同様に測定したところ、Rz5.72μm、Ra0.98μmであった。この鋼板に、実施例1と同様に塗装を行い、実施例1と同様に評価を行った。得られた結果を表2に示す。
実施例5
溶融亜鉛めっき鋼板の代わりに、冷却鋼板(JIS G3141規格品、150×70×0.8mm)を用いた。実施例1と同様に化成処理を行い、鋼材の塗装表面のRz値およびRa値を実施例1と同様に測定したところ、Rz5.75μm、Ra0.99μmであった。この鋼板に、実施例1と同様に塗装を行い、実施例1と同様に評価を行った。得られた結果を表2に示す。
実施例6
溶融亜鉛めっき鋼板の代わりに、冷却鋼板(JIS G3141規格品、150×70×0.8mm)を用いた。実施例1と同様に化成処理を行い、鋼材の塗装表面のRz値およびRa値を実施例1と同様に測定したところ、Rz7.47μm、Ra0.90μmであった。この鋼板に、実施例1と同様に塗装を行い、実施例1と同様に評価を行った。得られた結果を表2に示す。
比較例1
塗装に用いる溶融亜鉛めっき鋼板に、実施例1と同様に化成処理を行った。鋼板の塗装表面のRz値およびRa値を実施例1と同様に測定したところ、Rz8.14μm、Ra0.99μmであった。この鋼板に、実施例1と同様に塗装を行い、実施例1と同様に評価を行った。得られた結果を表3に示す。
比較例2
塗装に用いる溶融亜鉛めっき鋼板に、実施例1と同様に化成処理を行った。鋼板の塗装表面のRz値およびRa値を実施例1と同様に測定したところ、Rz9.90μm、Ra1.40μmであった。この鋼板に、実施例1と同様に塗装を行い、実施例1と同様に評価を行った。得られた結果を表3に示す。
比較例3
塗装に用いる溶融亜鉛めっき鋼板に、実施例1と同様に化成処理を行った。鋼板の塗装表面のRz値およびRa値を実施例1と同様に測定したところ、Rz9.30μm、Ra1.38μmであった。この鋼板に、実施例1と同様に塗装を行い、実施例1と同様に評価を行った。得られた結果を表3に示す。
比較例4
溶融亜鉛めっき鋼板の代わりに、冷却鋼板(JIS G3141規格品、150×70×0.8mm)を用いた。実施例1と同様に化成処理を行い、鋼材の塗装表面のRz値およびRa値を実施例1と同様に測定したところ、Rz8.36μm、Ra1.39μmであった。この鋼板に、実施例1と同様に塗装を行い、実施例1と同様に評価を行った。得られた結果を表3に示す。
比較例5
溶融亜鉛めっき鋼板の代わりに、冷却鋼板(JIS G3141規格品、150×70×0.8mm)を用いた。実施例1と同様に化成処理を行い、鋼材の塗装表面のRz値およびRa値を実施例1と同様に測定したところ、Rz8.86μm、Ra1.36μmであった。この鋼板に、実施例1と同様に塗装を行い、実施例1と同様に評価を行った。得られた結果を表3に示す。
比較例6
溶融亜鉛めっき鋼板の代わりに、冷却鋼板(JIS G3141規格品、150×70×0.8mm)を用いた。実施例1と同様に化成処理を行い、鋼材の塗装表面のRz値およびRa値を実施例1と同様に測定したところ、Rz8.89μm、Ra1.63μmであった。この鋼板に、実施例1と同様に塗装を行い、実施例1と同様に評価を行った。得られた結果を表3に示す。
Figure 2006247614
Figure 2006247614
表2および表3中、
鋼材の種類について
SGC:溶融亜鉛めっき鋼板
SPC:冷延鋼板
を示す。
表2および表3に示される評価1(ツーウェット塗装により得られた複層塗膜の表面状態の評価)について、図7にグラフとして示す。図7のグラフ中、x軸は鋼材表面のRz(μm)の数値軸であり、y軸は複層塗膜のLwおよびSwの数値軸である。なお、図7の「系列1」は長波長領域(LW)を示し、「系列2」は短波長領域(SW)を示す。グラフからも明らかであるように、塗装前の鋼材表面のRz値が8.0μmを超えると、得られる複層塗膜の表面状態が急激に悪化したことがわかる。
表2および表3に示される評価2(スリーコート・ワンベーク(3C1B)塗装により得られた複層塗膜の表面状態の評価)について、図8にグラフとして示す。図8のグラフ中、x軸は鋼材表面のRz(μm)の数値軸であり、y軸は複層塗膜のLwおよびSwの数値軸である。なお、図8の「系列1」は長波長領域(LW)を示し、「系列2」は短波長領域(SW)を示す。グラフからも明らかであるように、塗装前の鋼材表面のRz値が8.0μmを超えると、得られる複層塗膜の表面状態が急激に悪化したことがわかる。
本発明の方法により、鋼材の種類に関わらず、仕上がり外観が良好な複層塗膜を得ることができる。本発明による、特定の表面形状を有する鋼材を使用する塗膜形成方法を用い、これとあわせて塗膜の仕上がり外観を向上させることができる電着塗料組成物などを用いることによって、さらに良好な仕上がり外観を有する塗膜を形成することが可能となる。
断面曲線(Pa)、うねり成分(Wa)および粗さ曲線(Ra、Rz)の概略説明図である。 粗さ曲線の最大高さ粗さ(Rz)の概略説明図である。 粗さ曲線の最大高さ粗さ(Rz)の概略説明図である。 鋼板のRz測定時の基準長さ(Ir)=2.5mmにおける鋼板のRzと、得られた硬化電着塗膜のRaとの相関関係を示すグラフである。 鋼板のRz測定時の基準長さ(Ir)=0.8mmにおける鋼板のRzと、得られた硬化電着塗膜のRaとの相関関係を示すグラフである。 鋼板のRz測定時の基準長さ(Ir)=0.25mmにおける鋼板のRzと、得られた硬化電着塗膜のRaとの相関関係を示すグラフである。 実施例および比較例の評価1の結果を示すグラフである。「系列1」は長波長領域(LW)を示し、「系列2」は短波長領域(SW)を示す。 実施例および比較例の評価2の結果を示すグラフである。「系列1」は長波長領域(LW)を示し、「系列2」は短波長領域(SW)を示す。

Claims (6)

  1. カチオン電着塗料組成物を被塗物に電着塗装して、未硬化の電着塗膜を形成する工程、
    未硬化の電着塗膜の上に中塗り塗料組成物を塗布して、未硬化の中塗り塗膜を形成する工程、および
    未硬化の電着塗膜および中塗り塗膜を同時に焼付け硬化させる工程、
    を包含する複層塗膜形成方法であって、
    該被塗物が、粗さ曲線の最大高さ粗さ(Rz)が3.0〜8.0μmである表面を有する鋼材である、
    複層塗膜形成方法。
  2. カチオン電着塗料組成物を被塗物に電着塗装して電着塗膜を形成し、得られた電着塗膜を加熱硬化させる工程、
    硬化した電着塗膜の上に中塗り塗料組成物を塗布して、未硬化の中塗り塗膜を形成する工程、
    未硬化の中塗り塗膜の上に上塗りベース塗料組成物を塗布して、未硬化の上塗りベース塗膜を形成する工程、
    未硬化の上塗りベース塗膜の上に上塗りクリヤー塗料組成物を塗布して、未硬化の上塗りクリヤー塗膜を形成する工程、および
    未硬化の中塗り塗膜、上塗りベース塗膜および上塗りクリヤー塗膜を同時に焼付け硬化させる工程、
    を包含する複層塗膜形成方法であって、
    該被塗物が、粗さ曲線の最大高さ粗さ(Rz)が3.0〜8.0μmである表面を有する鋼材である、
    複層塗膜形成方法。
  3. 前記カチオン電着塗料組成物が、カチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含有する電着塗料組成物である、請求項1または2記載の複層塗膜形成方法。
  4. 前記被塗物の表面の粗さ曲線の最大高さ粗さ(Rz)の測定時の基準長さ(Ir)が2.5mmである、請求項1〜3いずれかに記載の複層塗膜形成方法。
  5. 前記被塗物の表面の粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)が、カットオフ値(λc)2.5mmにおいて0.3〜1.5μmである、請求項1〜4いずれかに記載の複層塗膜形成方法。
  6. 請求項1〜5いずれかに記載の複層塗膜形成方法により得られる複層塗膜を有する塗装鋼材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009114468A (ja) * 2007-11-01 2009-05-28 Nippon Paint Co Ltd 電着塗膜形成方法および複層塗膜形成方法
JP5935949B2 (ja) * 2014-02-28 2016-06-15 新日鐵住金株式会社 プレコート金属板、プレコート金属板の製造方法

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