JP2008228403A - 車両用電源装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】燃費を向上させつつ、電圧を精度よく管理することができる車両用電源装置を提供する。
【解決手段】エンジンによって駆動される発電機2を備え、発電機2またはバッテリから電気負荷に電力を供給する車両用電源装置において、予め複数の目標電圧候補を設定しておき、入出力電力推定手段51において、バッテリ電圧を目標電圧候補とするためにバッテリに入出力すべき推定入出力電力を目標電圧候補毎に決定する。次に、電気負荷における総消費電力を考慮して、その推定入出力電力に必要な発電電力を決定する(発電電力決定手段54)。次に、その発電電力に対する発電コストを決定し(発電コスト決定手段55)、発電コストに基づいて、目標電圧候補から一つの候補を指令値の目標値として選択する(バス電圧選択手段56)。そして、指令値と現在の電圧値との差が許容電圧変化量以下となるように、目標値を補正して発電機2へ出力する(補正手段57)。
【選択図】図2

Description

本発明は、発電機とバッテリとを備えた車両用電源装置に関する。
従来、車両には、車両に備えられている種々の電気負荷に電力を供給するとともに、バッテリへの充電を行うために発電機が搭載されている。この発電機は、主としてエンジンによって駆動されて発電を行う。エンジンは発電機を駆動するためには燃料を消費することになるので、できるだけ発電による燃料増加分が少ないことが好ましい。
発電による燃料消費量の増加を低減する目的で、エンジンや発電機の効率を考慮して単位発電電力あたりの燃料消費量を算出し、それを判断基準として発電機の発電電力やバッテリの放電量を制御する技術が提案されている(たとえば、特許文献1、2)。この特許文献1、2では、単位発電量あたりの燃料消費量に基づいて発電量を決定し、電力あるいは発電トルクを指令値として用いて電力管理を行っている。
なお、車両の減速エネルギを回生して発電機を駆動する回生制動装置を備えた車両もあるが、回生によって得られるエネルギだけでは必要な電力をまかなうことはできない。そのため、回生制動装置を備えた車両においても、エンジンによって発電機を駆動して発電することがあるので、発電による燃料消費量の増加を低減する必要がある。
特開2004−260908号公報 特開2005−12971号公報
ところで、車両に備えられている電気負荷に供給する電圧は、電気負荷の特性によって定まる一定範囲内とする必要があり、また、バッテリの電圧も一定範囲内に制御する必要がある。従って、特許文献1、2のように、指令値として電力あるいは発電トルクを用いる場合、発電電力と電圧との関係を正確に把握する必要がある。そのためには、高精度なバッテリモデルを用意するか、バッテリの入出力特性を正確に把握しなければならない。
しかしながら、高精度なバッテリモデルを用意することも、バッテリの入出力特性を正確に把握することも容易ではない。特に、現在、最も普及している鉛バッテリは、分極や電極劣化の問題があるため、これらのことが特に困難である。従って、特許文献1、2のように、指令値として電力やトルクを用いる場合、燃費を向上させることはできるものの、電圧を厳密に管理することが困難であり、電圧が電気負荷にとって好ましくない急激な変化をしてしまう可能性もあった。
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、燃費を向上させつつ、電圧を精度よく管理することができる車両用電源装置を提供することにある。
その目的を達成するための請求項1記載の発明は、エンジンによって駆動されて発電を行う発電機と、その発電機によって充電されるバッテリとを備え、それら発電機とバッテリとから車両に搭載されている種々の電気負荷に電力を供給する車両用電源装置であって、
前記発電機が発電する発電電力に対して、その発電のために前記エンジンにおいて消費する燃料の増加分を発電コストとして決定する発電コスト決定手段と、
前記電気負荷に入力されている電圧を検出し、その電圧の変化速度が予め設定された制限速度以下となるようにしつつ、前記発電機に指令する指令値を、前記発電コスト決定手段で決定した発電コストに基づいて設定する指令値設定手段とを含むことを特徴とする。
この請求項1記載の発明によれば、発電機への指令を電圧で行っており、且つ、指令値の変化速度を制限しているので、電圧が急変してしまうことがなくなる。また、指令値は発電コストに基づいて決定しているので燃費向上も可能となる。従って、燃費向上と両立が可能となる。
請求項2記載の発明は、請求項1において、予め設定された複数の目標電圧候補と、現在のバッテリの電圧値と、予め設定されたバッテリモデルとに基づいて、前記目標電圧候補にするために前記バッテリに対して入出力すべき電力を推定した推定入出力電力を前記目標電圧候補毎に決定する入出力電力推定手段と、前記発電機またはバッテリから電力供給を受けて動作する複数の電気負荷の現時点での総消費電力を算出する消費電力算出手段と、前記目標電圧候補毎に決定した前記推定入出力電力と前記総消費電力とに基づいて、前記目標電圧候補毎に前記発電機の発電電力を決定する発電電力決定手段とを備え、
前記発電コスト決定手段は、発電電力と発電コストとの間の予め設定された関係と、前記発電電力決定手段で前記目標電圧候補毎に決定した発電電力とに基づいて、前記目標電圧候補毎に前記発電コストを決定するものであり、
前記指令値設定手段は、前記発電コスト決定手段が前記目標電圧候補毎に決定した発電コストに基づいて、複数の前記目標電圧候補のうちの一つの目標電圧候補を前記指令値の目標値に設定する目標値設定手段と、前記指令値と現在の電圧値との差が予め設定した許容電圧変化量以下となるように、前記目標値設定手段が設定した目標値を補正した値を前記指令値に設定する補正手段とを含むことを特徴とする。
この請求項2記載の発明は、複数の目標電圧候補を設定しておき、各目標電圧候補に対する発電コストに基づいて、最適な指令値を設定している。従って、燃費の向上が可能となる。また、補正手段により、現在の電圧値との差が許容電圧変化量以下となるように指令値を補正しているので、電圧が急変してしまうこともない。
請求項3記載の発明は、請求項1において、前記発電機の発電電力を示す発電電力関連値の最大可能値を決定する最大可能値決定手段と、前記バッテリの充電率を示す充電率関連値に基づいて、前記発電コストの目標値となる目標コストを設定する目標コスト設定手段とを備え、
前記発電コスト決定手段は、前記最大可能値決定手段で算出した前記発電電力関連値の最大可能値を候補の最大値とし、その最大可能値以下において前記発電電力関連値の候補を複数設定し、それら複数の発電電力関連値の候補に対してそれぞれ発電コストを決定するものであり、
その発電コスト決定手段で設定した複数の発電電力候補のうち、発電コストが前記目標コスト設定手段で設定した目標コスト以下であって且つ発電電力が最大の候補を目標発電電力に決定する目標発電電力決定手段をさらに備え、
前記指令値設定手段は、その目標発電電力と前記発電機の実際の発電電力とを比較し、前記指令値を、前記発電機の実際の発電電力が前記目標発電電力に近づく方向に、予め設定された許容電圧変化量以下で変化させるものであることを特徴とする。なお、発電電力関連値としては、たとえば発電電力そのものおよび発電トルクがあり、充電率関連値としては、たとえば、充電率そのものおよび残存容量がある。
この請求項3記載の発明は、発電機が発電可能な範囲で、複数の発電電力関連値の候補を設定しており、各発電電力関連値の候補に対する発電コストに基づいて、最適な目標発電電力を決定している。そして、その目標発電電力に基づいて指令値を設定しているので、燃費の向上が可能となる。また、指令値を許容電圧変化量以下で変化させているので、電圧が急変してしまうこともない。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明が適用された車両用電源装置を備えた車両の電気系を示すブロック図である。
エンジン1は、ベルト7により発電機2に連結されている。発電機2は、ICレギュレータを備えた周知のオルタネータである。そのICレギュレータは、バッテリ3の電圧を検出してバッテリ充電に対し適正な電圧となるようにロータの電流量を増減させる。
この発電機2のロータは、エンジン1のクランク軸の回転がベルト7によって伝達されることにより回転駆動し、ロータに流れる励磁電流によって発電機2の起電力は制御される。この発電機2は、電源線8を通じてバッテリ3および負荷制御装置10a〜110eに接続されている。上記バッテリ3は鉛蓄電池である。
また、発電機2と電気負荷11との間、および、バッテリ3と電気負荷11との間には、入力電圧に関わらず出力電圧を一定に維持する装置(たとえば、DC/DCコンバータなど)が設けられていない。そのため、バッテリ3の電圧変動および発電機2から出力される電圧の変動の影響を直接受けて、電気負荷11に入力される電圧は変化する。
負荷制御装置10aは電気負荷11a1〜11a3の給電制御を、負荷制御装置10bは電気負荷11b1〜11b3の給電制御を、負荷制御装置10eは電気負荷11e1〜11e3の給電制御を行う。これら負荷制御装置10a〜10eは、上記制御を行うのに必要な操作スイッチ( 図示せず)やこの制御のための各種センサ(図示せず)を含んでおり、外部入力信号やこれらセンサの出力に応じて自己に属する電気負荷11の出力制御又は断続を行う。
電源制御装置5は、発電機2やバッテリ3や電源線8などの状態を監視し、発電機2を制御する発電機制御装置12を通じて発電機2を制御する。
発電機制御装置12は、発電機2の現在の発電電力や発電機2の回転速度などの発電機情報を電源制御装置5に送信する。電源制御装置5にはバッテリ電流センサ14、負荷電流センサ9、バッテリ温度センサ13が接続されており、バッテリの入出力電流、負荷電流、バッテリ温度を受け取る。また、電源制御装置5には、バッテリ電圧および電源線8の電圧(以下、バス電圧という)も入力される。
電源制御装置5は、多重信号伝送線路6を通じて負荷制御装置10a〜10bに接続されており、これら負荷制御装置10a〜110bと多重通信により双方向に情報を授受する。また、発電機制御装置12は、図示しない車両コントローラから入力される車両制動情報を受け取り、車両制動情報により認識した車両制動量に相当する値に発電機2の発電電力を制御するため、発電機2の界磁電流を増加させて回生制動を行い、必要な車両制動量(回生制動量)を発生させる。
なお、上記車両コントローラは、たとえば図示しないブレーキ踏み量センサなどの制動操作手段の操作量に相当する車両制動量を演算し、この車両制動量から上記回生制動量を差し引いた制動量を発生させるべく、図示しない油圧ブレーキ装置の制御部に指令する。
次に、電源制御装置5による発電機2の制御内容を図2を用いて説明する。電源制御装置5は、内部にCPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータであり、RAMの一次記憶機能を利用しつつ、CPUがROMに記憶されているプログラムを実行することにより、図2に示す種々の手段を実行する。
入出力電力推定手段51は、予め設定された複数の目標電圧候補とバッテリ3の現在の電圧値すなわちバッテリ電圧とを、予め設定したある簡易バッテリモデルに入力することにより、バッテリ3の電圧を目標電圧候補とするためにバッテリ3に対して入出力すべき電力を、推定入出力電力として目標電圧候補毎にそれぞれ決定する。
上記目標電圧候補の上下限は、電気負荷11が正常に作動するための正常電圧範囲に基づいて予め設定されており、その他の目標電圧候補は、その上下限の目標電圧候補間を所定数あるいは所定間隔に分割するように設定されている。
図3は、上記簡易バッテリモデルの一例を示す図である。図3に示す簡易バッテリモデルは、起電力成分Eと内部抵抗成分rとから構成される。ここで、例として、目標電圧候補を14V、起電力を12V、内部抵抗を1Ωとすると、内部抵抗成分rの両端間に加わる電圧が2Aであれば、バッテリ電圧は14Vとなる。従って、2A×14V=28Wをバッテリ3に入力すればよいことになる。
なお、バッテリ3の起電力および内部抵抗は、バッテリ3の使用(充放電)や経時劣化によって変化するので、所定周期で逐次更新する。それら起電力および内部抵抗を更新するためには、バッテリ電圧およびバッテリ電流を監視する。そして、バッテリ電圧に対するバッテリ電流の変化を直線近似して、その直線の切片を起電力、その直線の傾きを内部抵抗とする。
最大発電電力決定手段52は、実際のエンジン回転速度(以下、実エンジン回転速度という)Neを取得して、その実エンジン回転速度Neからエンジントルクを演算し、且つ、アクセル開度と車速とに基づいて、予め設定した走行トルク演算式から、現在の走行トルクTを演算する。そして、エンジントルクから走行トルクTを引いた値を、エンジン1から発電機2に供給可能な供給可能トルクとして算出する。さらに、その算出した供給可能トルクを発電機2に供給した場合の発電機2の発電電力を演算し、演算結果を現時点における発電機2の最大発電可能電力とする。
負荷制御手段53は、消費電力算出手段としても機能しており、車両に搭載されている電気負荷11のスイッチ情報などの動作状況情報を取得し、その動作状況情報に基づいて、電気負荷11の現時点での総消費電力を算出する。そして、現時点のバッテリ3の電圧に基づいてバッテリ3から電気負荷11に供給可能な最大供給電力を算出し、さらに、そのバッテリ3からの最大供給電力と最大発電電力決定手段52で決定した発電機2の最大発電可能電力との和を、電力供給源から電気負荷11へ供給可能な最大電力として算出する。そして、総消費電力が電力供給源から供給可能な最大電力以下となるように、発電電力および総消費電力のいずれか少なくとも一方を制御する。
発電電力決定手段54は、入出力電力推定手段51で目標電圧候補毎にそれぞれ決定したバッテリ3への推定入出力電力と、負荷制御手段53で算出した電気負荷11の総消費電力とから、発電機2が発電する必要がある発電電力を目標電圧候補毎に決定する。ここで、推定入出力電力を、バッテリ3へ電力を入力する側を正、バッテリ3から電力を放出する側を負とすると、発電電力は、推定入出力電力と総消費電力の和となる。
発電コスト決定手段55は、発電電力と発電コストとの間の予め設定された関係を用いて、発電電力決定手段54で決定した目標電圧候補毎の発電電力に対して、発電コストを決定する。この発電コストとは、発電電力に対する、その電力を発電するために増加する燃料消費量の比である。そのため、発電コストが小さいほど、同じ電力をより少ない燃料増加量で発電することができ、効率よく燃料消費量を低減できることになる。
図4は上記関係を例示する図である。図4に示すように、発電コストは発電電力をパラメータとして変化する。これは、発電電力によって、エンジンの動作点や発電効率が変化するからである。なお、発電コストは、エンジン回転速度および走行トルクによっても変化することから、上記関係はエンジン回転速度および走行トルクの一定範囲毎に複数設定されており、実エンジン回転速度Neおよび実際の走行トルクTを取得乃至演算して、発電コストを決定するための関係を選択する。
バス電圧選択手段56は目標値設定手段として機能するものであり、予め設定した最適候補選択条件に基づいて、目標電圧候補のうちで最適なものを電圧指令値として選択する。上記最適候補選択条件には発電コストの条件が含まれており、この条件に基づいて、たとえば、発電コスト決定手段55が目標電圧候補毎に決定した発電コストの最小値に対応する目標電圧候補を電圧指令値として選択する。ただし、バッテリ3の最低残存容量を確保するために、残存容量が所定容量以下となった場合には、バッテリ3への入力電力が増加するように条件を設定するなど、発電コスト以外の条件を加えてもよい。
補正手段57は、現時点でのバス電圧を逐次取得しつつ、そのバス電圧とバス電圧選択手段56で選択した電圧指令値との差を絶対値で算出し、算出した差が予め設定した許容電圧変化量以下であるか否かを判断する。そして、算出した差が許容電圧変化量以下の場合には、バス電圧選択手段56で選択した電圧指令値をそのまま発電機2へ出力する。一方、算出した差が許容電圧変化量以下ではない場合には、現時点でのバス電圧をバス電圧選択手段56で選択した電圧指令値側へ上記許容電圧変化量だけ近づけた値を電圧指令値として発電機2へ出力する。
発電機2は、前述のICレギュレータの作用により、できるだけ速くバス電圧が電圧指令値となるように、発電機2の能力範囲内で発電電力を制御する。そのため、実際のバス電圧と電圧指令値との差が大きいほどバス電圧の変化速度は速くなる。しかし、上述のように、発電機2に入力される電圧指令値は、現時点のバス電圧との差が許容電圧変化量いいかに制限されている。従って、バス電圧の最高変化速度が制限されることになる。
このように、バス電圧の最高変化速度は許容電圧変化量の大きさによって制御できることになり、許容電圧変化量を小さくするほど、最高変化速度を遅くすることができる。本実施形態では、その最高変化速度が、電気負荷11にとって許容可能な電圧変化速度となるように、上記許容電圧変化量を決定している。そのため、たとえば、電気負荷11の一例としてランプを考えた場合に、ランプの明るさが急激に変化してしまい、それによって乗員に違和感を与えてしまうといった不都合が抑制されることになる。
さらに、本実施形態では、複数の目標電圧候補から発電コストに基づいて選択した一つの候補を電圧指令値としている。すなわち、電圧指令値を発電コストに基づいて決定している。従って、燃費向上も可能となる。
また、推定入出力電力の決定に用いているバッテリモデル(図3)は、実際のバッテリ3を厳密にモデル化したものに比べて簡略化されていることから、計算量を少なくすることができる利点もある。
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態の車両用電源装置は、電源制御装置5が、図2に示す手段に代えて図5に示す種々の手段を実行する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成である。
図5において、請求項の最大可能値決定手段に相当する最大発電電力決定手段61は、第1実施形態の最大発電電力決定手段52と同様にして、現時点における発電機2の最大発電可能電力を決定する。なお、図6は、エンジン回転速度と最大発電可能電力との間の関係の一例であり、エンジン回転速度の増加に伴い最大発電可能電力は増加する。
発電コスト決定手段62は、最大発電電力決定手段61で決定した最大発電可能電力を候補の最大値とし、その最大発電可能電力以下において発電電力候補を複数設定する。そして、それら複数の発電電力候補に対してそれぞれ発電コストを決定する。上記発電電力候補は、たとえば、最大発電可能電力以下で、予め設定された数の発電電力候補を互いの間隔が等間隔となるように設定する。または、予め設定した間隔(たとえば、10Wまたは20Wなど)で発電電力候補を設定してもよい。
次に、各発電電力候補に対する発電コストを決定する方法を説明する。まず、無発電時のエンジン回転速度Neおよび走行トルクTを取得乃至演算する。そして、その走行トルクTを前提として、各発電電力候補を発電するために増加させる必要があるエンジントルクの増加分を算出するとともに、その増加分に対応する燃料増加量を算出する。この燃料増加量をそれに対応する発電電力候補で割ることによって、発電電力候補毎に発電コストを算出する。図7は、このようにして求めた発電コストとそれに対応する発電電力候補との関係をグラフ化して示した図である。発電コスト決定手段62では、図7に示す各点を決定することになる。
なお、このようにして各発電電力候補に対して発電コストを決定することに代えて、第1実施形態の発電コスト決定手段55のように、発電電力と発電コストとの関係を、エンジン回転速度および走行トルクの一定範囲毎に設定しておき、実エンジン回転速度Neと走行トルクTとに基づいて一つの関係を選択してもよい。この場合、選択した関係の発電電力軸の最大値を最大発電電力決定手段61で決定した最大発電可能電力とすることになる。
SOC算出手段63は、バッテリ3の充放電量を積分し、満充電容量から積分した値を差し引いた値を満充電容量で割ることにより、バッテリ3の充電率(以下、SOCという)を逐次算出する。なお、満充電容量には定格容量を用いる。
目標コスト設定手段64は、SOCと目標コストとの間の予め設定した関係を用いて、SOC算出手段63で算出したSOCに基づいて、発電コストの目標値となる目標コストを決定する。図8は上記関係の一例を示す図である。図8の関係は、SOCが高いほど目標コストが低下している。換言すれば、SOCが低いほど目標コストは増加している。これは、SOCが低いほど充電を行う必要性が高いからである。
なお、この目標コスト設定手段64で用いる関係は、車両の状態に無関係に同じ関係としてもよいが、車両の状態、たとえば、電気負荷11における消費電力に応じて、異なる関係を用いてもよい。たとえば、電気負荷11における消費電力が大きいときには、電気負荷11における消費電力が小さいときに比較して、同じSOCでも目標コストが高く決定されるようにしてもよい。このようにすると、次に説明する目標発電電力決定手段65で決定する目標発電電力Power_SVがより大きい値となることから、消費電力が大きい場合におけるSOCの低下を一層抑制できる。また、図8に示す関係は、SOCが高いほど目標コストが低下する単調減少の曲線であったが、上記関係が直線であってもよい。
目標発電電力決定手段65は、まず、発電コスト決定手段62で設定した複数の発電電力候補のうち、発電コストが目標発電コスト決定手段64で決定した目標発電コスト以下のものを決定する。図9は、図7に示したグラフに、図8の関係を用いて決定した目標コストを加えた図である。この図9の例では、目標コストを示す線よりも下側の点が該当する。次いで、その中で発電電力が最大の候補を目標発電電力Power_SVに決定する。図9の例では、目標コストを示す線よりも下側に位置する点の中で最も右側の点が示す発電電力を目標発電電力Power_SVに決定することになる。
指令値設定手段として機能する指令電圧算出手段66は、発電機2へ指令する電圧指令値を所定周期で逐次更新するものである。上記電圧指令値の更新においては、まず、目標発電電力決定手段65で決定した目標発電電力Power_SVと発電機2の実際の発電電力(以下、発電機実発電電力Power_Altという)とを比較する。そして、発電機実発電電力Power_Altが目標発電電力Power_SVに近づく方向に、予め設定された指令電圧変化速度制限値Vss以下で電圧指令値を変化させる。
図10はこの指令電圧算出手段66の処理を詳しく示すフローチャートである。図10において、まず、ステップS1001では、発電機実発電電力Power_Altを取得する。この発電機実発電電力Power_Altは、発電機2の励磁電流および発電機2の回転速度から発電機実発電電力を決定することができる予め設定された関係に、実際に検出した発電機2の励磁電流および回転速度を入れることにより取得する。なお、電源線8の電圧と電流とを取得してそれらの積を発電機実発電電力Power_Altとしてもよい。
続くステップS1002では、目標発電電力決定手段65で決定した目標発電電力Power_SVを取得する。続くステップS1003では、前回電圧指令値Volt_Preを取得する。
そして、ステップS1004では、ステップS1001で取得した発電機実発電電力Power_Altが、ステップS1002で取得した目標発電電力Power_SVよりも小さいか否かを判断する。この判断が肯定判断である場合、すなわち、発電機実発電電力Power_Altがまだ目標発電電力Power_SVよりも小さい場合には、ステップS1005へ進んで、ステップS1003で取得した前回電圧指令値Volt_Preに、指令電圧変化速度制限値Vssを加えた値を電圧指令値とする。この指令電圧変化速度制限値Vssは許容電圧変化量に相当するものであり、電気負荷11が正常に動作するために許容できる電圧変化速度に基づいて予め設定されている一定値である。
一方、ステップS1004が否定判断である場合、すなわち、発電機実発電電力Power_Altが目標発電電力Power_SVを超えてしまっている場合には、ステップS1006へ進んで、ステップS1003で取得した前回電圧指令値Volt_Preから指令電圧変化速度制限値Vssを引いた値を電圧指令値とする。
ステップS1005またはステップS1006で電圧指令値を設定した後は、ステップS1007へ進んで、電圧指令値が予め設定した上限電圧よりも小さいか否かを判断する。この上限電圧は、電気負荷11が正常に作動するための正常電圧範囲の上限値である。
このステップS1007が否定判断である場合には、ステップS1008へ進んで、電圧指令値を上記上限電圧に設定する。そして、その後、ステップS1011へ進む。一方、肯定判断である場合にはステップS1009へ進む。ステップS1009では、電圧指令値が予め設定した下限電圧よりも大きいか否かを判断する。この下限電圧は、電気負荷11が正常に作動するための正常電圧範囲の下限値である。
ステップS1009が肯定判断である場合には、ステップS1005またはステップS1006で設定した電圧指令値が上限電圧と下限電圧とで設定される範囲内であることになる。この場合にはステップS1011へ直接進む。一方、ステップS1009が否定判断である場合には、ステップS1010へ進んで、電圧指令値を下限電圧に設定した後、ステップS1011へ進む。ステップS1011では、設定されている電圧指令値を発電機2へ出力する。
以上、説明した第2実施形態では、発電機2が発電可能な範囲で複数の発電電力候補を設定しており、各発電電力候補に対する発電コストに基づいて目標発電電力Power_SVを決定している。そして、その目標発電電力Power_SVに基づいて電圧指令値を設定しているので、燃費の向上が可能となる。また、電圧指令値の変化量を、電気負荷11が正常に動作するために許容できる電圧変化速度に基づいて設定した指令電圧変化速度制限値Vssとしているので、電圧が急変してしまうこともない。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
本発明が適用された車両用電源装置を備えた車両の電気系を示すブロック図である。 第1実施形態において、電源制御装置5が発電機2を制御するために実行する制御内容を示すブロック図である。 図2の入出力推定手段51で用いる簡易バッテリモデルの一例を示す図である。 発電電力と発電コストとの間の予め設定された関係を示す図である。 第2実施形態において、電源制御装置5が発電機2を制御するために実行する制御内容を示すブロック図である。 エンジン回転速度と最大発電可能電力との間の関係の一例を示す図である。 発電コストとそれに対応する発電電力候補との関係の一例をグラフ化して示した図である。 SOCと目標コストとの間の予め設定した関係を例示する図である。 図7に示したグラフに、図8の関係を用いて決定した目標コストを加えた図である。 指令電圧算出手段66の処理を詳しく示すフローチャートである。
符号の説明
1:エンジン、 2:発電機、 3:バッテリ、 5:電源制御装置、 11:電気負荷、 51:入出力電力推定手段、 52:最大発電電力決定手段、 53:負荷制御手段(消費電力算出手段)、 54:発電電力決定手段、 55:発電コスト決定手段、 56:バス電圧選択手段(目標値決定手段)、 57:補正手段、 61:最大発電電力決定手段(最大可能値決定手段)、 62:発電コスト決定手段、 63:SOC算出手段、 64:目標コスト設定手段、 65:目標発電電力決定手段、 66:指令電圧算出手段(指令値設定手段)

Claims (3)

  1. エンジンによって駆動されて発電を行う発電機と、その発電機によって充電されるバッテリとを備え、それら発電機とバッテリとから車両に搭載されている種々の電気負荷に電力を供給する車両用電源装置であって、
    前記発電機が発電する発電電力に対して、その発電のために前記エンジンにおいて消費する燃料の増加分を発電コストとして決定する発電コスト決定手段と、
    前記電気負荷に入力されている電圧を検出し、その電圧の変化速度が予め設定された制限速度以下となるようにしつつ、前記発電機に指令する指令値を、前記発電コスト決定手段で決定した発電コストに基づいて設定する指令値設定手段と
    を含むことを特徴とする車両用電源装置。
  2. 請求項1において、
    予め設定された複数の目標電圧候補と、現在のバッテリの電圧値と、予め設定されたバッテリモデルとに基づいて、前記目標電圧候補にするために前記バッテリに対して入出力すべき電力を推定した推定入出力電力を前記目標電圧候補毎に決定する入出力電力推定手段と、
    前記発電機またはバッテリから電力供給を受けて動作する複数の電気負荷の現時点での総消費電力を算出する消費電力算出手段と、
    前記目標電圧候補毎に決定した前記推定入出力電力と前記総消費電力とに基づいて、前記目標電圧候補毎に前記発電機の発電電力を決定する発電電力決定手段とを備え、
    前記発電コスト決定手段は、発電電力と発電コストとの間の予め設定された関係と、前記発電電力決定手段で前記目標電圧候補毎に決定した発電電力とに基づいて、前記目標電圧候補毎に前記発電コストを決定するものであり、
    前記指令値設定手段は、
    前記発電コスト決定手段が前記目標電圧候補毎に決定した発電コストに基づいて、複数の前記目標電圧候補のうちの一つの目標電圧候補を前記指令値の目標値に設定する目標値設定手段と、
    前記指令値と現在の電圧値との差が予め設定した許容電圧変化量以下となるように、前記目標値設定手段が設定した目標値を補正した値を前記指令値に設定する補正手段とを含むことを特徴とする車両用電源装置。
  3. 請求項1において、
    前記発電機の発電電力を示す発電電力関連値の最大可能値を決定する最大可能値決定手段と、
    前記バッテリの充電率を示す充電率関連値に基づいて、前記発電コストの目標値となる目標コストを設定する目標コスト設定手段とを備え、
    前記発電コスト決定手段は、前記最大可能値決定手段で算出した前記発電電力関連値の最大可能値を候補の最大値とし、その最大可能値以下において前記発電電力関連値の候補を複数設定し、それら複数の発電電力関連値の候補に対してそれぞれ発電コストを決定するものであり、
    その発電コスト決定手段で設定した複数の発電電力候補のうち、発電コストが前記目標コスト設定手段で設定した目標コスト以下であって且つ発電電力が最大の候補を目標発電電力に決定する目標発電電力決定手段をさらに備え、
    前記指令値設定手段は、その目標発電電力と前記発電機の実際の発電電力とを比較し、前記指令値を、前記発電機の実際の発電電力が前記目標発電電力に近づく方向に、予め設定された許容電圧変化量以下で変化させるものであることを特徴とする車両用電源装置。
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