以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
一般家庭で使用される空気調和機は、図3Bに示すように、通常冷媒配管で互いに接続された室外機1と室内機2とで構成されており、図1及び図2は、本発明にかかる空気調和機の室内機を示している。
図3Bに示されるように、空気調和装置を構成する室外機1と室内機2は、冷媒ガスが循環するように冷媒配管(図示せず)で接続されている。室外機1は、圧縮機43、熱交換器44、及びファン45を有するとともに、一室を隔してガス富化ユニット46、減圧ポンプ47等の酸素ガス富化装置の主な構成部材が設けられている。室内機2は、ファン8や熱交換器6を有するとともに、酸素ガス富化装置の吐出口42が設けられている。酸素ガス富化装置の運転動作については、詳細は後述する。
室内機は、本体2と、本体2の前面開口部2aを開閉自在の可動前面パネル(以下、単に前面パネルという)4を有しており、空気調和機停止時は、前面パネル4は本体2に密着して前面開口部2aを閉じているのに対し、空気調和機運転時は、前面パネル4は本体2から離反する方向に移動して前面開口部2aを開放する。なお、図1は前面パネル4が前面開口部2aを閉じた状態を示しており、図2は前面パネル4が前面開口部2aを開放した状態を示している。
図3Aに示されるように、本体2の内部には、熱交換器6と、前面開口部2a及び上面開口部2bから取り入れられた室内空気を熱交換器6で熱交換して室内に吹き出すためのファン8と、熱交換した空気を室内に吹き出す吹出口10を開閉するとともに空気の吹き出し方向を上下に変更する上下羽根12と、空気の吹き出し方向を左右に変更する左右羽根(図示せず)とを備えており、前面開口部2aの下方の本体2には、前面開口部2aの吹出口10側で開閉する中羽根14が中羽根駆動機構16を介して揺動自在に取り付けられている。さらに、前面パネル4上部は、その両端部に設けられた2本のアーム18,20を介して本体2上部に連結されており、アーム18に連結された駆動モータ(図示せず)を駆動制御することで、空気調和機運転時、前面パネル4は空気調和機停止時の位置(前面開口部2aの閉塞位置)から前方斜め上方に向かって移動する。また、上下羽根12は、その両端部に設けられた2本のアーム22,24を介して本体2下部に連結されているが、その駆動方法については後述する。
図1(b)及び(c)に示されるように、前面パネル4の上部には、複数(例えば、五つ)のセンサユニット26,28,30,32,34が前面パネル4の主平面から突出した状態で人体検知装置として取り付けられており、これらのセンサユニット26,28,30,32,34は、図4に示されるように、センサホルダ36に保持されている。なお、人体検知装置は、図1(a)に示されるようにカバー5で覆われており、図1(b)はカバー5を取り外した状態を示している。
各センサユニット26,28,30,32,34を前面パネル4の上部に設けたのは、図5(a)に示されるように、各センサユニット26,28,30,32,34の視野範囲(後述する人体位置判別領域)を拡大して遠方視野を最大限確保するためである。また、図5(b)に示されるように、運転開始時に前面パネル4を停止位置より前方に移動させることでより遠くまで視野範囲を確保することができるとともに、図5(c)に示されるように、前面パネル4を停止位置より斜め上方に移動させることで視野範囲をさらに拡大することができる。なお、各センサユニット26,28,30,32,34の位置は前面パネル4の上部に限定されるわけではなく、また、前面パネルが可動でない場合でも、人体検知装置を前面パネルの上部あるいは本体上部に取り付けることにより下部に取り付けた場合に比べ視野範囲を拡大することができる。
また、図5(d)に示されるように、各センサユニット26,28,30,32,34を前面パネル4の主平面から突出させて設けることで、各センサユニット26,28,30,32,34をより前方に配置することができ、図5(b)〜(d)に示されるように、室内機の構成部(例えば、上下羽根12や、前面開口部2aを開放状態の前面パネル4など)による死角発生を防止して視野範囲を拡大させることができる。
本実施の形態では、各センサユニット26,28,30,32,34は前面パネル4に設けられているので、前面パネル4が前面開口部2aを開放状態としたときには前面パネル4に付随して移動することとなり、更に前方に突出することとなる。
また、センサユニット26は、回路基板26aと、回路基板26aに取り付けられたレンズ26bと、レンズ26bの内部に実装された人体検知センサ(図示せず)とで構成されており、この構成は、他のセンサユニット28,30,32,34についても同様である。さらに、人体検知センサは、例えば人体から放射される赤外線を検知することにより人の在否を検知する赤外線センサにより構成されており、赤外線センサが検知する赤外線量の変化に応じて出力されるパルス信号に基づいて回路基板26aにより人の在否が判定される。すなわち、回路基板26aは人の在否判定を行う在否判定手段として作用する。以下、互いに対をなすセンサとレンズをセンサ・レンズ対という。
ここで、前後左右方向の検知領域を得るために、図6の側面図に示されるように任意の球Zの表面上にセンサユニット26,28,30,32,34を配置することが考えられる。この場合、各センサユニット26,28,30,32,34のセンサ・レンズ対の光軸は球Zの中心Pで交差し、ねじれの位置にない。室内機から見れば、球Zの表面上にセンサユニット26,28,30,32,34が前後方向に飛び出した配置となるため、人体検知装置の小型化は困難である。
また、上記のようなセンサユニットの飛び出しを抑制するため、図7のように任意の球Zを任意の平面Xで切り取り、平面Xと各センサユニット26,28,30,32,34の光軸(ねじれの位置でない)との交点に各センサユニット26,28,30,32,34を配置することも考えられる。この場合、センサユニット26,28,30,32,34の配置は図8の正面視に示されるように前後方向への飛び出しは少なくなるが、センサユニット26と30のように検知領域と室内機との距離の異なるセンサユニットの配置が縦横方向に分散してしまい、人体検知装置の小型化に限界がある。
そこで、本実施の形態においては、センサユニット26,28のセンサ・レンズ対の光軸は同一平面上にあり、センサユニット30,32,34のセンサ・レンズ対の光軸は別の同一平面上にあるものの、センサユニット26,28のセンサ・レンズ対の光軸と、センサユニット30,32,34のセンサ・レンズ対の光軸とは同一平面上にはなく、ねじれの位置となるようにそれぞれの回路基板26a,28a,30a,32a,34aを所定の角度に傾斜させてセンサホルダ36に取り付けている。
このように検知領域と室内機との距離の異なるセンサユニットのセンサ・レンズ対の光軸をねじれの位置とすることで、図1および図2に示されるようにセンサユニット26,28,30,32,34は横方向に略直線状に配置でき、人体検知装置の小型化が可能となる。
なお、室内機からセンサユニットの検知領域までの距離の異なるセンサユニットを横方向に略直線状に配置した例について説明したが、左右方向の異なるセンサユニットを室内機の高さ方向に略直線状に配置する場合も同様のことが言える。
以上のように本実施の形態によれば、室内機に設けられた複数のセンサユニット26,28,30,32,34のうち、該センサユニットの視野エリアと空気調和機との距離が異なるセンサユニットのセンサ・レンズ対の光軸が互いにねじれの位置となるようにしたので、センサユニット26,28,30,32,34が室内機の前面パネル4から飛び出さないように設置できるようになり、人体検知装置の小型化が可能となる。
また、センサユニット26,28,30,32,34を略直線上に配置することで、センサユニット26,28,30,32,34が縦横方向に分散することがなく、センサユニット26,28,30,32,34の小型化が可能となる。
また、このようにセンサ・レンズ対の光軸がねじれの位置にある複数のセンサユニット26,28,30,32,34を人体検知装置に設け、各センサ・レンズ対の光軸が視野方向に向くように配設したので、人体検知装置から見て距離方向に複数の検知領域と、左右方向に複数の検知領域を形成することができるとともに、集光効率が向上することでレンズの小型化が可能になる。
図9は、センサユニット26,28,30,32,34で検知される人体位置判別領域を示しており、センサユニット26,28,30,32,34は、それぞれ次の領域に人がいるかどうかを検知することができる。
センサユニット26:領域A+C+D
センサユニット28:領域B+E+F
センサユニット30:領域C+G
センサユニット32:領域D+E+H
センサユニット34:領域F+I
すなわち、本発明にかかる空気調和機の室内機においては、センサユニット26,28で検知できる領域と、センサユニット30,32,34で検知できる領域が一部重なっており、領域A〜Iの数よりも少ない数のセンサユニットを使用して各領域A〜Iにおける人の在否を検知するようにしている。
また、少なくとも三つの人体検知センサを室内機の上部に取り付けることで、室内における人体の位置を室内機に対して遠近方向と左右方向、すなわち室内フロアのどこにいるのかを二次元的に把握することができる。図10は三つの人体検知センサを設けた場合の検知される領域を示しており、図10の例では、室内機の近傍の領域における人の在否が一つの人体検知センサで検知され、室内機から遠い領域における人の在否が二つの人体検知センサで検知される。
図9に戻って本実施の形態をさらに説明するが、以下の説明ではセンサユニット26,28,30,32,34を第1のセンサ26、第2のセンサ28、第3のセンサ30、第4のセンサ32、第5のセンサ34という。また、領域C,D,E,Fは二つのセンサで検知されるので、重なり領域というのに対し、重なり領域以外の領域(領域A,B,G,H,I)は一つのセンサで検知されるので、通常領域という。また、重なり領域は、左の重なり領域C,Dと右の重なり領域E,Fに分けられる。
図11は、第1乃至第5のセンサ26,28,30,32,34を使用して、領域A〜Iの各々に後述する領域特性を設定するためのフローチャートで、図12は、第1乃至第5のセンサ26,28,30,32,34を使用して、領域A〜Iのどの領域に人がいるか否かを判定するフローチャートであり、これらのフローチャートを参照しながら人の位置判定方法について以下説明する。
ステップS1において、所定の周期T1(例えば、5秒)で左の重なり領域における人の在否がまず判定され、ステップS2において、所定の条件で所定のセンサ出力をクリアする。
表1は、左の重なり領域の判定方法を示しており、表1に示される三つの反応結果のいずれかに該当する場合は、第1のセンサ26及び第3のセンサ30の出力をクリアする。ここで、1は反応有り、0は反応無し、クリアは1→0にすることと定義する。
ステップS3では、上述した所定の周期T1で右の重なり領域における人の在否がさらに判定され、ステップS4において、所定の条件で所定のセンサ出力をクリアする。
表2は、右の重なり領域の判定方法を示しており、表2に示される三つの反応結果のいずれかに該当する場合は、第2のセンサ28及び第5のセンサ34の出力をクリアする。
また、表1及び表2に示される六つの反応結果のいずれかに該当する場合は、第4のセンサ32の出力もクリアし、ステップS5に移行する。ステップS5においては、上述した所定の周期T1で通常領域における人の在否が表3に基づいて判定され、ステップS6において、全てのセンサ出力をクリアする。
さらに、図13を参照して第1乃至第3のセンサ26,28,30からの出力のみを使用して領域A,B,Cにおける人の在否を判定する場合について説明する。
図13に示されるように、時間t1の直前の周期T1において第1乃至第3のセンサ26,28,30がいずれもOFF(パルス無し)の場合、時間t1において領域A,B,Cに人はいないと判定する(A=0,B=0,C=0)。次に、時間t1から周期T1後の時間t2までの間に第1のセンサ26のみON信号を出力し(パルス有り)、第2及び第3のセンサ28,30がOFFの場合、時間t2において領域Aに人がいて、領域B,Cには人がいないと判定する(A=1,B=0,C=0)。さらに、時間t2から周期T1後の時間t3までの間に第1及び第3のセンサ26,30がON信号を出力し、第2のセンサ28がOFFの場合、時間t3において領域Cに人がいて、領域A、Bには人がいないと判定する(A=0,B=0,C=1)。以下、同様に周期T1毎に各領域A,B,Cにおける人の在否が判定される。
実際には、第1乃至第5のセンサ26,28,30,32,34を使用して、領域A〜Iのどの領域に人が存在するかどうかの判定が行われるが、この判定結果に基づいて各領域A〜Iを、人が良くいる第1の領域(良くいる場所)、人のいる時間が短い第2の領域(人が単に通過する領域、滞在時間の短い領域等の通過領域)、人のいる時間が非常に短い第3の領域(壁、窓等人が殆ど行かない非生活領域)とに判別する。以下、第1の領域、第2の領域、第3の領域をそれぞれ、生活区分I、生活区分II、生活区分IIIといい、生活区分I、生活区分II、生活区分IIIはそれぞれ、領域特性Iの領域、領域特性IIの領域、領域特性IIIの領域ということもできる。また、生活区分I(領域特性I)、生活区分II(領域特性II)を併せて生活領域(人が生活する領域)とし、これに対し、生活区分III(領域特性III)を非生活領域(人が生活しない領域)とし、人の在否の頻度により生活の領域を大きく分類してもよい。
この判別は、図11のフローチャートにおけるステップS7以降で行われ、この判別方法について図14及び図15を参照しながら説明する。
図14は、一つの和室とLD(居間兼食事室)と台所とからなる1LDKのLDに本発明にかかる空気調和機の室内機を設置した場合を示しており、図14における楕円で示される領域は被験者が申告した良くいる場所を示している。
上述したように、周期T1毎に各領域A〜Iにおける人の在否が判定されるが、周期T1の反応結果(判定)として1(反応有り)あるいは0(反応無し)を出力し、これを複数回繰り返した後、ステップS7において、所定の空調機の累積運転時間が経過したかどうかを判定する。ステップS7において所定時間が経過していないと判定されると、ステップS1に戻る一方、所定時間が経過したと判定されると、各領域A〜Iにおける当該所定時間に累積した反応結果を二つの閾値と比較することにより各領域A〜Iをそれぞれ生活区分I〜IIIのいずれかに判別する。
長期累積結果を示す図15を参照して、さらに詳述すると、第1の閾値及び第1の閾値より小さい第2の閾値を設定して、ステップS8において、各領域A〜Iの長期累積結果が第1の閾値より多いかどうかを判定し、多いと判定された領域はステップS9において生活区分Iと判別する。また、ステップS8において、各領域A〜Iの長期累積結果が第1の閾値より少ないと判定されると、ステップS10において、各領域A〜Iの長期累積結果が第2の閾値より多いかどうかを判定し、多いと判定された領域は、ステップS11において生活区分IIと判別する一方、少ないと判定された領域は、ステップS12において生活区分IIIと判別する。
図15の例では、領域E,F,Iが生活区分Iとして判別され、領域B,Hが生活区分IIとして判別され、領域A,C,D,Gが生活区分IIIとして判別される。
また、図16は別の1LDKのLDに本発明にかかる空気調和機の室内機を設置した場合を示しており、図17はこの場合の長期累積結果を元に各領域A〜Iを判別した結果を示している。図16の例では、領域C,E,Gが生活区分Iとして判別され、領域A,B,D,Hが生活区分IIとして判別され、領域F,Iが生活区分IIIとして判別される。
なお、上述した領域特性(生活区分)の判別は所定時間毎に繰り返されるが、判別すべき室内に配置されたソファー、食卓等を移動することがない限り、判別結果が変わることは殆どない。
次に、図12のフローチャートを参照しながら、各領域A〜Iにおける人の在否の最終判定について説明する。
ステップS21〜S26は、上述した図11のフローチャートにおけるステップS1〜S6と同じなので、その説明は省略する。ステップS27において、所定数M(例えば、15回)の周期T1の反応結果が得られたかどうかが判定され、周期T1は所定数Mに達していないと判定されると、ステップS21に戻る一方、周期T1が所定数Mに達したと判定されると、ステップS28において、周期T1×Mにおける反応結果の合計を累積反応期間回数として、1回分の累積反応期間回数を算出する。この累積反応期間回数の算出を複数回繰り返し、ステップS29において、所定回数分(例えば、N=4)の累積反応期間回数の算出結果が得られたかどうかが判定され、所定回数に達していないと判定されると、ステップS21に戻る一方、所定回数に達したと判定されると、ステップS30において、既に判別した領域特性と所定回数分の累積反応期間回数を元に各領域A〜Iにおける人の在否を推定する。
なお、ステップS31において累積反応期間回数の算出回数(N)から1を減算してステップS21に戻ることで、所定回数分の累積反応期間回数の算出が繰り返し行われることになる。
表4は最新の1回分(時間T1×M)の反応結果の履歴を示しており、表4中、例えばΣA0は領域Aにおける1回分の累積反応期間回数を意味している。
ここで、ΣA0の直前の1回分の累積反応期間回数をΣA1、さらにその前の1回分の累積反応期間回数をΣA2・・・とし、領域における過去の数回分の履歴(例えば、4回分)と生活区分と累積反応期間回数から人の在否を推定する。
次に、上述した人の在否判定から時間T1×M後には、同様に過去の4回分の履歴と生活区分と累積反応期間回数から人の在否の推定が行われる。
すなわち、本発明にかかる空気調和機の室内機においては、判別領域A〜Iの数よりも少ない数のセンサを使用して人の在否を推定することから、所定周期毎の推定では人の位置を誤る可能性があるので、重なり領域かどうかに関わらず単独の所定周期では人の位置推定を行うことを避け、所定周期毎の領域判定結果を長期累積した領域特性と、所定周期毎の領域判定結果をN回分累積し、求めた各領域の累積反応期間回数の過去の履歴から人の所在地を推定することで、確率の高い人の位置推定結果を得るようにしている。
表5は、このようにして人の在否を判定し、T1=5秒、M=12回に設定した場合の在推定に要する時間、不在推定に要する時間を示している。
このようにして、本発明にかかる空気調和機の室内機により空調すべき領域を第1乃至第5のセンサ26,28,30,32,34により複数の領域A〜Iに区分した後、各領域A〜Iの領域特性(生活区分I〜III)を決定し、さらに各領域A〜Iの領域特性に応じて在推定に要する時間、不在推定に要する時間を変更するようにしている。
すなわち、空調設定を変更した後、風が届くまでには1分程度要することから、短時間(例えば、数秒)で空調設定を変更しても快適性を損なうのみならず、人がすぐいなくなるような場所に対しては、省エネの観点からあまり空調を行わないほうが好ましい。そこで、各領域A〜Iにおける人の在否をまず検知し、特に人がいる領域の空調設定を最適化している。
詳述すると、生活区分IIと判別された領域の在否推定に要する時間を標準として、生活区分Iと判別された領域では、生活区分IIと判別された領域より短い時間間隔で人の存在が推定されるのに対し、その領域から人がいなくなった場合には、生活区分IIと判別された領域より長い時間間隔で人の不存在を推定することにより、在推定に要する時間を短く、不在推定に要する時間は長く設定されることになる。逆に、生活区分IIIと判別された領域では、生活区分IIと判別された領域より長い時間間隔で人の存在が推定されるのに対し、その領域から人がいなくなった場合には、生活区分IIと判別された領域より短い時間間隔で人の不存在を推定することにより、在推定に要する時間を長く、不在推定に要する時間は短く設定されることになる。さらに、前述のように長期累積結果によりそれぞれの領域の生活区分は変わり、それに応じて、在推定に要する時間や不在推定に要する時間も可変設定されることになる。
また、各領域A〜Iにおける空調設定に応じて、ファン8の回転数制御及び上下羽根12と左右羽根の風向制御が行われるが、これらの制御について以下説明する。
暖房時の風向制御は、人がいると判定された領域における人の足元手前に風向きを制御することで足元近傍に温風を到達させ、冷房時の風向制御は、人の頭上上方に風向きを制御することで頭上上方に冷風を到達させる。風向きはファン8の回転数と、上下羽根12あるいは左右羽根の角度により調節する。
図18は、上下羽根12の回転制御を示しており、空気調和機停止時には、図18(a)に示されるように、前面パネル4と上下羽根12と中羽根14は全て閉塞した状態にある。なお、図18においては、上下羽根12の回転制御を説明することを目的とするため、一部の構成の記載を省略している。
冷房時は、吹き出し空気(冷風)を人の頭上上方に到達させるため(冷房天井気流)、図18(a)に示される状態から図18(b)に示される状態を経て図18(c)に示される状態に至る。まず、アーム18,20が駆動制御されて前面パネル4が前面開口部2aから離反するとともに、アーム22,24が駆動制御されて上下羽根12が吹出口10から離反する。
図18(c)の状態では、吹出口10から吹き出される空気は、上下羽根12により水平方向に導かれるが、上下羽根12の下流側端部が上方へ湾曲しているため、部屋の遠方まで空気を送ることができる。この時、吹出口10の上方、すなわち前面パネル4の下方は中羽根14により閉塞されており、吹出口10から吹き出した空気の一部が前面開口部2aに導かれることはない。
一方、暖房時は、吹き出し空気(温風)を人の足元近傍に到達させるため(暖房足元気流)、図18(a)に示される状態から図18(b)に示される状態を経て図18(d)に示される状態に至る。図18(d)の状態では、吹出口10から吹き出される空気は、上下羽根12により斜め下方に導かれるが、上下羽根12の下流側端部が本体側へ湾曲しているため、部屋の上方に溜まりやすい暖かい空気を部屋の下方に送ることができる。
なお、図18(e)は、安定前の冷房時に利用され、吹き出し空気は人体に向けられる(人体向け気流)。
図19は、各領域A〜Iの空調を行う場合のファン8の設定回転数を示しており、A1,A2,A3は室内機からそれぞれ近距離、中距離、長距離にある領域の基準回転数で、A4は距離が同じ場合の領域の違いによる回転数差分であり、例えばそれぞれ次のように設定される。
A1:800rpm(暖房時)、700rpm(冷房時)
A2:1000rpm(暖房時)、900rpm(冷房時)
A3:1200rpm(暖房時)、1100rpm(冷房時)
A4:100rpm(冷暖共通)
ここで、各領域における室内機からの距離、室内機正面からの角度、高低差等、室内機との位置関係を表す表現として、相対位置という表現を導入する。
また、各領域において空調がし易い、空調がし難い度合いを空調要求度という表現により表し、空調要求度が高いほど空調がよりし難い、空調要求度が低いほど空調がよりし易いとする。例えば、室内機からの距離が遠いほど吹き出し空気が届き難く空調がし難いので空調要求度が高くなる。即ち、空調要求度と室内機からの相対位置には密接な関連性があり、本実施の形態では、室内機からの相対位置に応じて空調要求度を定める。
したがって、各領域A〜Iの空調を行う場合のファン8の設定回転数は、空調要求度が高いほど高く設定されることを意味している。すなわち、空調すべき領域の位置が室内機より遠いほどファン8の設定回転数は高く設定されるとともに、室内機からの距離が同じ場合には室内機の正面より左右にずれた領域ほどファン8の設定回転数は高く設定される。また、空調すべき領域が一つの場合、その領域の設定回転数(風量)に設定され、空調すべき領域が複数の場合、空調要求度が高い領域の設定回転数に設定される。
また、図20は、暖房時の上下羽根12と左右羽根の設定角度を示しており、B1,B2,B3は室内機からそれぞれ近距離、中距離、長距離にある領域の基準上下羽根角度で、B4は距離が同じ場合の領域の違いによる上下羽根の角度差分であるのに対し、C1及びC2は左右領域の基準左右羽根角度(左回りが正方向)で、C3及びC4は領域の違いによる左右羽根の角度差分であり、例えばそれぞれ次のように設定される。なお、上下羽根12の角度とは、羽根が上に凸の状態で羽根の前後端を結んだ線が水平の場合を0°とし、この位置を基準にして反時計方向に計測した場合の角度のことである。
B1:70°
B2:55°
B3:45°
B4:10°
C1:0°
C2:15°
C3:30°
C4:45°
すなわち、室内機に近い領域AあるいはBの暖房を行う場合、上下羽根12は、第1の角度(例えば、70°)に設定されるとともに、ファン8の回転数は第1の回転数(例えば、800rpm)に設定され、領域AあるいはBにおける室内機側の縁部(人の足元手前)に風向を制御し、足元近傍に温風を到達させるようにしている。また、室内機から中距離にある領域C,D,EあるいはFの暖房を行う場合、上下羽根12は、第1の角度より小さい第2の角度(例えば、55°)に設定されるとともに、ファン8の回転数は第1の回転数より高い第2の回転数(例えば、1000rpm)に設定され、領域C,D,EあるいはFにおける室内機側の縁部(人の足元手前)に風向を制御し、足元近傍に温風を到達させるようにしている。さらに、室内機から最も遠い領域G,HあるいはIの暖房を行う場合、上下羽根12は、第2の角度より小さい第3の角度(例えば、45°)に設定されるとともに、ファン8の回転数は第2の回転数より高い第3の回転数(例えば、1200rpm)に設定され、領域G,HあるいはIにおける室内機側の縁部(人の足元手前)に風向を制御し、足元近傍に温風を到達させるようにしている。
図21は、立ち上がりあるいは不安定領域の冷房時の上下羽根12と左右羽根の設定角度を示しており、E1,E2,E3は室内機からそれぞれ近距離、中距離、長距離にある領域の基準上下羽根角度で、E4は距離が同じ場合の領域の違いによる上下羽根の角度差分であるのに対し、F1及びF2は左右領域の基準左右羽根角度(左回りが正方向)で、F3及びF4は領域の違いによる左右羽根の角度差分であり、例えばそれぞれ次のように設定される。なお、立ち上がりとは、空気調和機の運転開始時のことで、不安定領域とは、現在の室内の空調状態が、設定した条件(例えば設定温度)になっていない状態のことである。
E1:50°
E2:35°
E3:25°
E4:10°
F1:0°
F2:15°
F3:25°
F4:35°
また、図22は、安定領域の冷房時の上下羽根12と左右羽根の設定角度を示しており、H1は天井気流の場合の基準上下羽根角度で、H2はにがし気流の場合の基準上下羽根角度で、H3は距離の違いによる上限羽根角度差分であるのに対し、I1及びI2は左右領域の基準左右羽根角度(左回りが正方向)で、I3及びI4は領域の違いによる左右羽根の角度差分であり、例えばそれぞれ次のように設定される。なお、安定領域とは、現在の室内の空調状態が、設定した条件(例えば設定温度)になっている状態のことである。
H1:180°
H2:190°
H3:5°
I1:0°
I2:15°
I3:25°
I4:35°
ここで、天井気流とは、図18(c)に示されるように、上下羽根12を吹出口10の下部に位置させて吹き出し風を全て羽根の凹面で受けて風を送り出した場合の気流のことであり、にがし気流とは、上下羽根12を天井気流時より多少上部に位置させて、吹き出し風の一部(微量)を羽根の凸面側(羽根の下方)にも流し羽根凸面に結露が発生しにくい状態にして風を送り出した場合の気流のことである。
室内機に近い領域AあるいはBの冷房を行う場合、上下羽根12は、水平より所定角度(例えば、5°)だけ下方に設定され、ファン8の回転数は第1の回転数(暖房時の第1の回転数より少ない回転数で、例えば、700rpm)に設定され、領域AあるいはBの頭上上方に冷風を到達させ、冷気がシャワー状に落ちてくるように設定されている。また、室内機から中距離にある領域C,D,EあるいはFの冷房を行う場合、上下羽根12は、略水平に設定され、ファン8の回転数は第1の回転数より高い第2の回転数(暖房時の第2の回転数より少ない回転数で、例えば、900rpm)に設定され、領域C,D,EあるいはFの頭上上方に冷風を到達させるように設定されている。さらに、室内機から最も遠い領域G,HあるいはIの冷房を行う場合、上下羽根12は、水平より所定角度(例えば、5°)だけ上方に設定され、ファン8の回転数は第2の回転数より高い第3の回転数(暖房時の第3の回転数より少ない回転数で、例えば、1100rpm)に設定され、領域G,HあるいはIの頭上上方に冷風を到達させるように設定されている。
次に、空調すべき領域の数に応じて行われる風向制御について図23のフローチャートを参照しながら説明する。
空気調和機の運転開始後、ステップS41において、領域A〜Iにおける人の在否判定がまず行われ、ステップS42において、人がいると判定された領域が一つ、すなわち空調すべき領域が一つの場合、ステップS43において、その領域に応じて設定された風量、風向に基づいて空調が行われる。ステップS42において、空調すべき領域が一つではないと判定されると、ステップS44において、空調すべき領域が二つかどうかを判定し、空調すべき領域が二つの場合、ステップS45に移行する。
ステップS45においては、風量は空調要求度の高い領域の設定風量に設定され、二つの領域の配置モードを図24に示されるように五つのモードのいずれかに識別し、次のステップS46において、識別されたモードに応じて表6のように制御する。
ここで、モード1は中距離であり、かつ室内機正面をはさんで隣接する2領域の場合を表し、モード2は室内機との角度が略一致し、前後関係に隣接する2領域の場合を表している。また、モード3は室内機との角度が略一致し、前後関係に離間する2領域の場合を表し、モード4は室内機との距離が略一致し、角度が異なる2領域の場合を表し、モード5は離間する2領域、換言すれば室内機との距離も角度も異なる2領域の場合を表している。
モード1〜4の上下風向は、暖房時は要求度の低い領域に固定される一方、冷房時は要求度の高い領域に固定される。また、モード5の上下風向は、上下羽根12の動作を制御して、二つの領域(第1及び第2の領域)のうち、第1の領域に所定時間停留(角度固定)した後、第2の領域に向かって風向を変え、第2の領域に所定時間停留した後、第1の領域向かって風向を変える動作を繰り返す。なお、各領域の停留時間は、例えば室内機からの距離に応じてそれぞれ設定され、室内機からの距離が遠いほど停留時間を長くするのが好ましい。
また、モード1の左右風向は、隣接した二つの領域の中央に固定され、モード2及び3の場合、二つの領域が室内機から見て距離の異なる略同一方向にあると見なして、その左右風向は、要求度の高い領域に固定される。さらに、モード4及び離間する二つの領域の配置からなるモード5の左右風向は、上下羽根12の制御と同様に左右羽根の動作を制御して、第1の領域に所定時間停留した後、第2の領域に向かって風向を変え、第2の領域に所定時間停留した後、第1の領域に向かって風向を変える動作を繰り返す。なお、各領域の停留時間は、各領域に対する室内機からの相対位置、例えば室内機正面からの角度に応じてそれぞれ設定され、室内機正面からの角度が大きいほど停留時間を長くするのが好ましい。
また、ステップS44において空調すべき領域が二つではないと判定されると、ステップS47において、空調すべき三つ以上の領域をその配置に応じて通常モードと特殊モードの二つのモードのいずれかに判定する。ここで、特殊モードは、中距離であり、かつ室内機正面をはさんで隣接する2領域と、遠距離であり、かつ室内機正面に位置する1領域、計3領域の場合を表し、それを除く三つ以上の領域の場合を通常モードと表す。空調すべき領域が三つ以上の場合、風量は空調要求度の最も高い領域の設定風量に設定され、ステップS47において、図21(a)に示される特殊モード(中央隣接)と判定されると、ステップS48において、風向は図20のモード1と同様に設定される。
一方、ステップS47において、特殊モードではないと判定されると、ステップS49において、図25(b)あるいは(c)に示される通常モードの制御が行われ、上下風向は、室内機に最も近い領域の上下羽根12の設定角度と、室内機に最も遠い領域の上下羽根12の設定角度との間で上下羽根12の角度を変更する。
また、通常モードの場合の左右風向は、両端の領域(図25(b)では領域CとI、図25(c)では領域CとH)における左右羽根の設定角度を左端角度及び右端角度に設定して、左端角度に所定時間停留した後、右端側の領域に向かって風向を変え(スイング)、右端角度に所定時間停留した後、左端側の領域に向かって風向を変える動作(スイング)を繰り返す。なお、スイング時の左右羽根の作動速度は、上述したモード4及び5における左右羽根の作動速度より遅く設定される。また、左端角度あるいは右端角度における停留時間は、例えば室内機正面からの角度に応じてそれぞれ設定され、室内機正面からの角度が大きいほど停留時間を長くするのが好ましい。
なお、ステップS43,S46,S48あるいはS49においてそれぞれの空調制御が行われた後、ステップS41に戻る。
また、室内機が図14に示されるように配置された場合、第1乃至第5のセンサ26,28,30,32,34を使用して室内機が左側壁の近傍に設置されたと判定し、左側壁より右側に位置する領域のみ左右羽根の作動制御を行うこともできる。この場合、第1乃至第5のセンサ26,28,30,32,34で構成される人体検知装置は室内機の設置位置自動認識手段として作用する。
なお、室内機の設置位置自動認識手段としてのセンサは少なくとも二つ設ければよく、図4において光軸が同一平面上にある第1及び第2のセンサ26,28を設けた場合を例に取り、さらに説明する。
二つのセンサ26,28を設けた場合、二つのセンサ26,28からの周期T1毎の出力を所定時間(例えば、3〜4時間)累積し、この累積した反応結果を一つの閾値と比較することにより二つの領域は生活領域と非生活領域あるいは二つの生活領域に区分される。なお、比較される閾値は、例えば上述した第2の閾値であってもよい。
室内機を左側壁の近傍(例えば1m以内)に設置した図26の例では、領域Aは非生活領域と判定され、領域Bは生活領域と判定されるのに対し、室内機を右側壁の近傍(例えば1m以内)に設置した場合には、室内機の正面から左側の領域が生活領域と判定され、室内機の正面から右側の領域が非生活領域と判定される。また、室内機を壁の中央に設置した場合には、室内機の正面から左側及び右側の領域は両方とも生活領域と判定される。
このように室内機の設置位置を自動的に認識することで、生活領域のみの空調を行うことができるように空気調和機の上下方向の風向制御手段や左右方向の風向制御手段の作動制御を行えばよい。本実施の形態の壁掛け型室内機では、風向制御手段である上下羽根や左右羽根の作動制御を行う。
また、室内機が側壁近くに設置されている場合、吹出口10から吹き出される風によりカーテンが揺れると、人体検知センサがカーテンを人と誤検知して人がいる方向に風が流れなかったり、人がいないのに人がいると誤判定する等の問題がある。
しかしながら、第1及び第2のセンサ26,28により構成される人体検知装置は、図26に示されるように、第1のセンサ26が領域Aにおける人の在否を検知する一方、第2のセンサ28が領域Aとは重ならないように分離された領域Bにおける人の在否を検知する。したがって、領域A及びBは、第1のセンサ26の光軸と第2のセンサ28の光軸との間に位置する中心線を境に近接して分離されており、この人体検知装置を室内機に設けた場合、領域A及び領域Bは室内機の正面より左右に分離しており、互いに重なることがない領域A及び領域Bにおけるセンサの検知反応を所定時間それぞれ累積した結果を基に生活領域と非生活領域の区別を確実に行うことができる。ここで、生活領域と非生活領域の区別を行うことにより、非生活領域でセンサの検知反応が有った場合に、非生活領域に対して風向制御を行わない。換言すれば、この場合、生活領域のみの風向制御となる。これによって、生活領域に人がいる場合に、もし非生活領域でカーテンの揺れ等のイレギュラーな反応を検知しても人以外の反応と判定し、非生活領域に風が流れないように風向を制御することで、人がいる生活領域の快適性が損なわれるのを防止することができる。また、室内から人がいなくなった場合においても、もし非生活領域でカーテンの揺れ等のイレギュラーな反応を検知しても人以外の反応と判定し、人がいると誤判定するのを防止することができる。
また、図4に示される第3のセンサ32を人体検知装置に設けて、図27に示されるように、第1のセンサ26の光軸と第2のセンサ28の光軸との間に位置する中心線の両側にまたがる領域Cにおける人の在否を検知することができ、領域Cに人がいると判定した場合、室内機の正面から見て右側の領域C2に人がいると推定でき、一つのセンサ32を追加するだけで、左右にまたがる領域の左右のいずれの位置に人がいるかを判定できる。
図28は、六つのセンサからなる人体検知装置を室内機に設けて人体位置判別領域を複数の領域に区分し、室内機の正面から見て近接して左右に分離された二つの領域を二組配置した場合を示している。
図28に示される例では、領域AとBあるいは領域DとEが左右に近接して分離された領域を示しており、互いに重なることがない領域A及びBあるいは領域D及びEにおけるセンサの検知反応を所定時間それぞれ累積した結果を基に生活領域と非生活領域の区別をより確実に行うことができる。
(不在検知時の運転制御)
また、室内機にはタイマーが設けられており、このタイマーを使用して不在検知省エネ制御、切り忘れ防止制御及び各種の運転動作制御が行われる。この不在検知時の運転制御について以下説明する。
まず、省エネ制御及び切り忘れ防止制御について、表7及び図29を参照しながら、暖房時の制御について説明する。
図29は温度シフトの一例を示しており、ここでは設定温度Tsetを28℃とし、目標温度(限界値)を20℃とした場合について説明する。なお、ΔTは設定温度Tsetと目標温度との差温である。
第1乃至第5のセンサ26,28,30,32,34により全ての領域A〜Iに人がいないことが検知されると、タイマーがカウントを開始し、タイマーによるカウント開始後、時間t1(例えば、10分)において人の不在が確認されると、2℃(1/4ΔT)だけ設定温度Tsetを自動的に低減する。さらに、時間t2(例えば、カウント開始後30分)において人の不在が確認されると、2℃(1/4ΔT)だけ設定温度Tsetを自動的にさらに低減する。以下、同様に時間t3(例えば、カウント開始後1時間)及び時間t4(例えば、カウント開始後2時間)において人の不在が確認されると、それぞれ2℃(1/4ΔT)だけ設定温度Tsetを自動的に低減する。
時間t4においては、設定温度Tsetより合計8℃低減されて目標温度に等しい20℃になっているので、時間t5(例えば、カウント開始後4時間)までは設定温度Tsetを目標温度のまま維持するが、時間t5においても依然として人の不在が確認されると、空気調和機の運転を停止して、空気調和機の切り忘れを防止する。
なお、時間t1から時間t5までの間に人の存在が検知されると、時間t1以前の設定温度Tsetに復帰させる。
また、温度シフト幅(低減温度)は設定温度Tsetと目標温度との差温ΔTに応じて表7のように設定され、差温ΔTが小さいほど温度シフト幅も小さい。また、設定温度Tsetが目標温度より低い場合は、現状温度に維持されるが、時間t5において人の不在が確認されると、空気調和機の運転を停止するのは図29の例と同じである。
次に、表8及び図30を参照しながら、冷房時の制御について説明する。
図30は温度シフトの一例を示しており、ここでは設定温度Tsetを20℃とし、目標温度(限界値)を28℃とした場合について説明する。なお、ΔTは設定温度Tsetと目標温度との差温である。
第1乃至第5のセンサ26,28,30,32,34により全ての領域A〜Iに人がいないことが検知されると、タイマーがカウントを開始し、タイマーによるカウント開始後、時間t1(例えば、10分)において人の不在が確認されると、2℃(1/4ΔT)だけ設定温度Tsetを自動的に増大する。さらに、時間t2(例えば、カウント開始後30分)において人の不在が確認されると、2℃(1/4ΔT)だけ設定温度Tsetを自動的にさらに増大する。以下、同様に時間t3(例えば、カウント開始後1時間)及び時間t4(例えば、カウント開始後2時間)において人の不在が確認されると、それぞれ2℃(1/4ΔT)だけ設定温度Tsetを自動的に増大する。
時間t4においては、設定温度Tsetより合計8℃増大されて目標温度に等しい28℃になっているので、時間t5(例えば、カウント開始後4時間)までは設定温度Tsetを目標温度のまま維持するが、時間t5においても依然として人の不在が確認されると、空気調和機の運転を停止して、空気調和機の切り忘れを防止する。
なお、時間t1から時間t5までの間に人の存在が検知されると、時間t1以前の設定温度Tsetに復帰させる。
また、温度シフト幅(増大温度)は設定温度Tsetと目標温度との差温ΔTに応じて表8のように設定され、差温ΔTが小さいほど温度シフト幅も小さい。また、設定温度Tsetが目標温度より高い場合は、現状温度に維持されるが、時間t5において人の不在が確認されると、空気調和機の運転を停止するのは図30の例と同じである。
図31は、ファン8の風量(回転数)と室外機に設けられた圧縮機の能力を制御することにより省電力運転を達成する例を示している。
すなわち、ファン8の風量を増大すると熱交換器6の熱交換効率が向上し、圧縮機の周波数が同じ場合には冷房あるいは暖房能力が増大するので、室内温度を同じ設定温度に保持するためには、圧縮機の周波数を低減することが可能となり、必要な消費電力は減少する。また、不在時にファン8の風量を増大しても気流が強すぎることによる不快感や、ファン8の騒音増大による快適性の問題が生じることはない。
図31(a)に示されるように、第1乃至第5のセンサ26,28,30,32,34により全ての領域A〜Iに人がいないことが検知されると、タイマーがカウントを開始し、タイマーによるカウント開始後、時間t1(例えば、10分)において人の不在が確認されると、図31(b)に示されるように、ファン8の風量を増大させるとともに、図31(c)に示されるように、圧縮機の周波数を段階的に時間t2(例えば、カウント開始後30分)まで減少させる。時間t1経過後はファン8の風量は一定(限界値)に保持され、時間t2経過後は圧縮機の周波数は一定(限界値)に保持されるが、時間t2、時間t3(例えば、カウント開始後1時間)、時間t4(例えば、カウント開始後2時間)、時間t5(例えば、カウント開始後4時間)において人の不在が継続して確認されると、時間t5において空気調和機の運転を停止して、空気調和機の切り忘れを防止する。
なお、時間t1から時間t5までの間に人の存在が検知されると、時間t1以前の設定風量及び設定周波数に復帰させる。
また、上述した図29乃至図31の例はいずれも、通常運転中、所定時間人がいない場合には、通常運転時より消費電力が少ない省電力運転を行うものであり、その後さらに所定時間人がいない場合には、空気調和機の運転を停止して省エネを達成している(「通常運転」とは、「使用者が指示した運転」)。
さらに、不在が長時間継続しているにもかかわらず、温度変化を惹起するおそれのあるカーテン等の人以外の外乱を人体検知センサが誤検知した場合、不在(無人)状態で通常運転をいつまでも継続することも考えられるので、時間t5より長い所定時間t6(例えば、24時間)経過すると運転を停止することで確実に切り忘れを防止することができる。また、時間t5あるいは時間t5より長い所定時間t6経過後の運転停止直前には本体やリモコンに音声やLEDランプ等で聴覚的あるいは視覚的に報知したり、画面に文字を表示するのが好ましい。さらに、時間t5あるいは時間t5より長い所定時間t6経過後の自動運転停止を行うか否かを選択できる自動停止選択手段をリモコン等に設けると使い勝手が向上する。
上述した不在検知省エネ制御及び切り忘れ防止制御は、室内機に少なくとも一つの人体検知センサを備えた空気調和機であれば、一つの人体検知センサからの出力に応じて不在検知省エネ制御及び切り忘れ防止制御を行うことができる。
(各種の機能運転動作制御)
次に、室内機に設けられたタイマーにより、全ての領域に人間が存在しないということが検知された場合、次の各種機能運転動作制御を行う。本実施形態に係る空気調和機において、各種機能運転制御とは、フィルタ清掃、室内熱交換器の乾燥運転、通常運転時より能力向上させた換気運転、通常運転時より能力向上させた空気清浄運転、通常運転時より能力向上させた酸素富化運転の各制御をいう。
これらの各種機能運転制御は、上記の省エネ制御及び切り忘れ制御と組み合わせて実行されてもよい。例えば、人の不在が検知された所定時間が検知されると、上記の省エネ制御が実行され、さらに時間(例えば、カウント開始後5分程度)において人の不在が確認されると、上記の各機能運転制御を行う。そして、さらに所定時間(例えば、カウント開始後30分程度)において人の不在が確認されると、既述の省エネ制御及び切り忘れ制御を実行するようにしてもよい。
また、上記各種機能運転制御は、上記の省エネ制御と組み合わされることなくそれぞれ独立して行われてもよい。上記の各種機能運転制御は、いずれも運転時の騒音が大きかったり、人がいる状態では運転することができない動作を伴うものであり、人間の非検知時に行うことが好ましい。すなわち、上記各機能運転は音の発生が大きく、人の不在時に運転や能力向上運転を実施することで、使用者に騒音を聞かせることがない。また特に、フィルタ清掃、室内熱交換器の乾燥運転は空気調和機の通常運転を停止して行うため、人の不在時に運転を実施することで、使用者に不快感を感じさせないという効果を有する。
具体的には、人の不在が検知された所定時間が検知されると、通常運転時より能力向上させた換気運転、通常運転時より能力向上させた空気清浄運転、通常運転時より能力向上させた酸素富化運転が実行され、さらに時間(例えば、カウント開始後15分程度)において人の不在が確認されると、上記の各運転制御のうち少なくとも1つの運転を行う。もちろんこの際、同時に運転可能な運転制御は同時に行ってもよいし、それぞれ所定時間経過もしくは1つの動作が終了するごとに、順次切り替えて運転制御してもよい。このときの運転制御の順序は特に限定されるものではない。
なお、人非検知時に行う機能運転を選択する基準として、例えば、図示しない汚れセンサと酸素濃度検出センサを用いてもよい。例えば、汚れセンサで検知した汚れセンサ値と汚れ検知継続時間などから算出された室内の汚れ具合に応じて空気清浄運転を行うように制御し、所定時間経過又は汚れセンサ値から算出された室内の汚れ具外が所定範囲内になると空気清浄運転を停止する。
また、例えば、酸素濃度検出センサより検出された酸素濃度が予め設定された酸素富化領域内になると、酸素富化運転又は換気運転を行う一方、前記センサにより検出された酸素濃度が前記酸素富化領域外になると、前記酸素富化運転を停止するように制御する。なお、酸素濃度検出センサを用いる代わりに二酸化炭素濃度検出センサを用い、検出された二酸化炭素濃度に基づいて、酸素濃度の指標とすることもできる。
なお、これらの各種機能運転制御を実行している間に、人間の存在を検知した場合は、これらの運転を中止し、通常運転に戻る。
そして、さらに所定時間(例えば、カウント開始後30分程度)において人の不在が確認されると、空気調和機の通常運転を停止し、フィルタ清掃、室内熱交換器の乾燥運転を実行する。これらのフィルタ清掃、室内熱交換器の乾燥運転を終了させた後、通常運転を停止するようにしてもよい。
以下、各機能運転制御を行うための具体的な構成及び動作について説明する。
(フィルタ清掃運転)
図32は、図1の空気調和機のフィルタ装置の構成を示す図である。図32に示されるように、熱交換器6を通過する空気の塵埃を除去するフィルタ装置40は、フィルタ枠54と、フィルタ枠54を保持するフィルタ網55と、フィルタ網55の表面に沿って摺動自在の吸引ノズル56とを備えている。また、フィルタ枠54、フィルタ網55等は、折り曲げ形状となっており、上部は水平方向、下部は垂直方向に構成される。吸引ノズル56はフィルタ枠54の上下端に設置された一対のガイドレール54aにより、フィルタ網55と極めて狭い間隙を保って円滑に左右に移動することができ、フィルタ網55上に付着した塵埃は吸引ノズル56より吸引される。さらに、吸引ノズル56には吸引ダクト57の一端が連結され、吸引ダクト57の他端は吸引装置58に連結される。吸引装置58は、吸引量を可変できるように、回転数の調整が可能なファンモータを用いた装置とする。吸引ダクト57は吸引ノズル56の移動に差し支えないように折り曲げ可能なダクトで形成される。さらに、吸引装置58には排気ダクト59が連結され、室外へ引き回される。フィルタ網55に付着し、吸引ノズル56により吸引された塵埃は吸引ダクト57、吸引装置58、排気ダクト59を経由して室外へ排出される。
次に、図33乃至図35を参照しながら吸引ノズル56について説明する。
図33は吸引ノズル56を斜め上方向から見た図であり、図33に示されるように、吸引ノズル56は、吸引した風の流通路となるノズル本体62と、ノズル本体62を囲むように設けられた幅20mmのベルト63から構成される。ノズル本体62のフィルタ網55側の面には、320mmの長さ(フィルタ網55の縦長さに相当)で、幅は3mmのスリット状のノズル開口部62aが形成されている。一方、ベルト63はループ状に形成され、ノズル開口部62aを覆うようにノズル本体62の外周に巻き付けられる。ベルト63には長さ80mm(フィルタ網55の縦長さの1/4)で幅2mmの吸引孔63aが設けてあり、吸引孔63aの位置はノズル開口部62aの真上にくるようにベルト63は取り付けられる。吸引孔63a側面には、その位置を検知するために指示部67が設けられる。吸引ノズル56の内部には、吸引孔センサ28が、指示部67と接触するように設けられ、常に指示部67の位置を検知して吸引孔63aの位置を検知することができるようになっている。ベルト63の両端には映画フィルムのように等間隔の駆動穴64が設けられており、ノズル本体62上に固定されたステッピング・モータ65に取り付けられた歯車66が、この駆動穴64にかみ合うことによってベルト63は上下方向のいずれにも自由に駆動できるようになっている。
図34は図33におけるノズル本体62とベルト63を別々にして示した図であり、図5は吸引ノズル56の断面図である(図33における線V−Vに沿った断面図)。
こうした構成の吸引ノズル56において、ベルトを駆動する別な構成としては、歯車66を用いずゴムローラなどでベルト63を駆動する方法も考えられる。また、本発明の実施の形態では、装置の小型化を図るためベルト63はループ状に形成しているが、リールなどを設けてベルトを巻き取らせる方法などもある。
本実施の形態においては、上記構成の吸引ノズル56によりフィルタ網55の全面の吸引清掃を行うので、その具体的動作について、図32、図36乃至図38を用いて説明する。
図36は図32に図示したフィルタ網55の清掃範囲A,B,C,Dに応じた吸引孔63aの位置を示した図(吸引ノズル56を背面から見た図)である。なお、実際の吸引ノズル56は図32に示されるように、フィルタ網55に沿って折れ曲がった構造をとるが、図36においては見やすくするため吸引ノズル56を真直に伸ばした状態で記載している。
まず、図32におけるフィルタ網55のAの範囲を吸引清掃する場合、ベルト63を駆動して吸引孔63aを図36(a)に示されるようにAの位置に固定する。図37に示すように、この状態で吸引しながら吸引ノズル56をフィルタ網55の右端から左端まで駆動することでフィルタ網55のAの水平方向の範囲が吸引清掃できる。
次に、図32におけるフィルタ網55のBの範囲の吸引清掃に移行するため、ベルト63を駆動して吸引孔63aを図6(b)に示されるBの位置に固定する。同様に、この状態で吸引しながら吸引ノズル56をフィルタ網55の左端から右端まで駆動することで今度は図32におけるフィルタ網55のBの水平方向の範囲が吸引清掃できる。同様にして図32におけるフィルタ網55のC、Dの範囲も吸引清掃できる。図32におけるフィルタ網55のC、Dの範囲は、水平方向に設けられているので、A,Bの範囲より塵埃の付着量が多くなり、より多くの吸引量が必要となる。図37、図38は、この吸引清掃の順序を矢印で示した図であるが、図32におけるフィルタ網55のA,Bの範囲は、図37に示されるように水平方向の1列を吸引ノズル56を1方向にのみ水平移動させて清掃を行い、図32におけるフィルタ網55のC、Dの範囲は、図38に示されるように水平方向の1列を吸引ノズル56を両方向に水平移動(往復移動)させて清掃を行う。このような横スイープの吸引動作を行うことでフィルタ網55の全面を略均一に清掃することができる。
なお、図32に示されるように、フィルタ枠54の両側にはリミットスイッチ60,61が設けられており、これらのリミットスイッチ60,61に吸引ノズル56が当接することで、吸引ノズル56は水平方向に往復移動を行う。
本実施の形態により、吸引孔63aの位置を検知することが可能となり、吸引孔63aの位置がフィルタ網55の上部にある場合は、吸引ノズル56を往復駆動させ、吸引回数を増やすことにより塵埃の残存を防止することができる。すなわち、位置検知手段としての吸引孔センサ28により検知された吸引孔63aの位置に応じて吸引ノズル56の清掃能力を変更することで、フィルタ網55の全面を略均一に清掃することができる。
また、吸引孔63aの位置がフィルタ網55の上部にある場合は、吸引装置58の出力を上げ、吸引量を増加することにより塵埃の残存を防止することもできる。この場合、吸引ノズル56は、図37に示されるような動作を行って清掃を行う。
さらに、吸引孔63aの位置がフィルタ網55の上部にある場合は、吸引ノズル56の水平方向の駆動速度を低下させ、吸引時間を長くすることにより塵埃の残存を防止することもできる。
なお、図39に示されるように、ノズル本体62にフィルタ網55表面の塵埃付着量を検知する塵埃センサ40を設け、塵埃センサ40により検知された塵埃の付着量が多い部分は、吸引孔センサ28により検知した吸引孔63aを当該部分に位置合わせした後、局所的に吸引装置58の出力を上げ、吸引量を増加したり、局所的に吸引ノズルの水平方向の駆動速度を低下させて吸引時間を長くすることにより塵埃の残存を防止することもできる。すなわち、塵埃検知手段としての塵埃センサ40により検知された塵埃の付着量に応じて吸引ノズル56の清掃能力を変更することで、フィルタ網55の全面を略均一に清掃することができる。
(換気運転)
図39は空気調和機のフィルタ装置40に設けられた吸引装置58の構造を示している。この吸引装置58は後述する構成を有することにより、換気運転のための換気ユニットとしても機能する。なお、換気運転は、シロッコファン101の回転数を調整することで、換気風量を異ならせて能力の調整を行うことができ、例えば、通常時よりも能力を向上(例えば、20%)させて換気を行うことができる。また、通常の換気運転は、開口部102を通して行う必要はなく、例えば、吸引ノズル56のノズル開口部62aを通じて行うようにしてもよい。
図39に示すように、吸引装置本体58はシロッコファン101を内蔵し、シロッコファン101をモーターで高速回転させることで吸引力を発揮する。吸引装置本体58の吸引側には吸引ダクト60が連結され、排気側には排気ダクト59が連結される。さらに、吸引装置本体58の吸引側には開口部102が形成されており、開口部102の片側にはステッピング・モータ103に連結された開閉板104が揺動自在に取り付けられている。ステッピング・モータ103により開閉板104を駆動すると、開口部102が開閉する。開閉板104の開口部102側の表面にはシール材105が貼付されており、開口部102が開閉板104のより閉止されると、開閉板104は開口部102の周縁と密着する。
以上のように構成されたフィルタ装置の動作、作用を図32及び図40を参照しながら以下説明する。
吸引装置58で吸引できる風量は吸引から排気に至る各経路の通風抵抗の合計で決まってくるため、通風抵抗の合計が小さい方が吸引風量が大きくなる。この観点から排気ダクト59の通風抵抗をより小さくすること、つまり、排気ダクト59の通風路断面積をより大きくとることが吸引清掃時及び換気運転時の吸引力を高めることにつながる。しかし、排気ダクト59の通風路断面積をあまりに大きくすると、吸引清掃後に吸引ノズル56と吸引ダクト59の内部に堆積した塵埃が排気ダクト59内で再び堆積する可能性がある。また、吸引装置本体58のケーシングへの塵埃堆積や、シロッコファン101のブレード(羽根)への塵埃の付着も発生する。
そこで、吸引装置58に開口部102及び開閉板104を設け、開口部102を開放すると、吸引の風はほとんど全てが開口部102から吸引されることになる。開口部102の面積は、吸引ノズル56のノズル開口部62aの開口面積よりずっと大きくできるので(吸引装置58の方が吸引ノズル56より大きいため)、吸引孔63aから吸引される風の風速は遅く、吸引装置58の通風抵抗は非常に低いものとなる。さらに、吸引ノズル56と吸引ダクト57には風は流れないので、吸引孔通風抵抗と吸引ノズル通風抵抗と吸引ダクト通風抵抗は0である。したがって、通風抵抗の合計は排気ダクト59の通風抵抗だけに近い値となり、非常に低くできる。この結果、シロッコファン101の回転数は吸引清掃時と同じであっても、吸引装置56と排気ダクト59を流れる風量を著しく増大させることができる。この時の風量は、通常の家屋において換気を行えるほどの風量にもなるので、室内の空気を室外へ排出するすなわち通常時よりも能力を向上させた換気運転をすることができる。この時、吸引装置56と排気ダクト59を流れる風量を著しく増大させることができるため、シロッコファン101のブレードに付着した塵埃も吹き飛ばすことができ、シロッコファン101が塵埃で詰まることもない。
開閉板104を駆動して開口部102を開いた時は換気ファンとして吸引装置58を用い、吸引清掃を行う場合は開口部102を閉じて吸引ノズル14の吸引孔30から塵埃を吸引する吸引ファンとして吸引装置58を用いることができる。すなわち、同じ吸引装置58で吸引清掃機能と換気機能を実現できることになる。
ところで、開口部102の周縁に若干の塵埃が付着して完全に閉まらないようになり吸引漏れを起こし、吸引清掃性能が低下することも考えられるので、開閉板104の表面には柔軟に変形し、なおかつ永久変形の少ないシール材103を貼付して、吸引漏れを防止している。シール材103としては、EPT(エチレンプロピレンゴム)等の柔軟な発泡材を用いることができるが、圧縮変形に強い耐性のあるゲル材等を用いても良い。
図39及び図40は開口部102の開状態と閉状態をそれぞれ示しており、図39における白矢印は吸引される風を表し、図40における白矢印も同様に吸引される風を表している。
なお、吸引装置58に用いるファンはシロッコファンの他、ターボファン等を用いることもできるが、換気機能を必要とする場合、風量が大きいシロッコファンを用いるのが好ましい。換気機能を必要としない場合、ターボファンの方が強い吸引力が得られる場合もある。
(空気清浄運転)
なお、図32に示すフィルタ装置40には、高圧導電線が全面に引き回されて配置されており、当該伝染に印加する電圧を調整することで、通常時及び通常時より能力を向上させた空気清浄運転を行うことができる。本実施の形態では、通常時においては高圧導電線に+3kVの電圧を印加すると共に、能力を向上させた空気清浄運転時には、+6kVの電圧を印加する。すなわち、フィルタ装置40は、吸着用のフィルタを帯電させて吸着部の能力を向上させることにより集塵効率を向上させることができ、高圧導電線に印加される電圧を調整することにより、空気清浄運転の能力を調整することができる。
また、ファン8の回転数を調整することにより空気清浄運転の能力を調整することができる。例えば、室内に吹き出す風量を増加すること、例えば、ファン8の回転数を大きくすることで、通常時より能力を向上させた空気清浄運転を行うことができる。本実施の形態では、通常時においては、ファン回転数を900から1200rpmとすると共に、能力を向上させた空気清浄機の運転時は、ファン回転数を例えば、1500rpmとすればよい。
(酸素ガス富化運転)
上記のように本実施形態にかかる空気調和機は、酸素ガス富化運転を行うための構成として、選択性ガス透過膜である酸素富化膜を備えたガス富化ユニット46と、ガス富化ユニット46の二次側を減圧する減圧ポンプ47と、ガス富化ユニット46と減圧ポンプ47とを通気可能に連結する酸素供給主管48と、減圧ポンプ47の吐出側に連結された吐出主管49を備えている。
送風管40は、吐出主管49と吐出口42とを接続する配管であり、室外機1から導出し室内機2内に導入されている。また送風管53の一部はトラップ構成53aを有している。なお、ガス富化ユニット46の1次側(大気側)には、滞留する窒素富化空気を掃気するためのファン(図示せず)を配置しておき、酸素ガス富化装置の運転及び運転能力に連動して動作させるとよい。
なお、ガス富化ユニット46を、室外機1のファン45を有する送風回路内に配置し、ファン45の送風によってガス富化ユニット46の1次側の窒素富化空気を掃気するようにしてもよい。またガス富化ユニット46、減圧ポンプ47、酸素供給主管48及び吐出主管49は、独立したユニットとして構成して、室外機1の枠体に装着する構成としてもよい。
吐出口42は、室内機2の筐体内部またはその付近に配置され、室内機2内の送風回路中に配置される場合には、ファン8の動作により吹き出される送風に酸素富化空気が添加されて吹き出し口より室内空間に送出される。また吐出口42は、その近傍に拡管部を有することが好ましく、本実施例では吐出口42を拡管部とした構成を示している。このように拡管部を設けることで、押し出された氷結や結露水を吐出口42からまき散らすことなく、拡管部で一旦受けることで融解・蒸発を促すことができる。なお本実施例に示すように、熱交換器6の風回路の上流側で、熱交換器6の上方に吐出口42を設けることでも結露水などの飛散を防止することができる。
酸素ガス富化運転では、減圧ポンプ47が運転されると、ガス富化ユニット46内で酸素富化膜を通過した空気は、酸素供給主管48を通過して減圧ポンプ47に吸い込まれ、酸素富化された空気が吐出主管49、送風管40を順次通過して吐出口42から室内機2内に送出される。この減圧ポンプ47の能力を調整することで、酸素ガス富化運転の能力を調整することができる。具体的には、能力を向上させる場合、当該減圧ポンプ47の能力を20%程度向上させればよい。また、滞留する窒素富化空気を掃気するためのファン(図示せず)の能力についても、酸素ガス富化の運転能力に連動して動作させることもできる。
(乾燥運転)
図42は、本実施形態の空気調和装置の冷凍サイクル図である。同図に示すように、圧縮機C、四方弁69、室外熱交換器80A、絞り装置93、室内熱交換器80Bをそれぞれ配管を介して環状に接続している。ここで、圧縮機C、四方弁69、室外熱交換器80A、絞り装置93は室外機1に設けられ、室内熱交換器80Bは室内機2に設けられている。室外機1と室内機2とは、液側接続配管90とガス側接続配管81とで接続されている。液側接続配管90は、液側室外バルブ81と液側室内バルブ82によって接続され、ガス側接続配管81は、ガス側室外バルブ88とガス側室内バルブ89によって接続されている。なお、冷凍サイクルを構成する配管は、圧縮機Cと四方弁69とを接続する配管71、四方弁69と室外側熱交換器80Aを接続する配管72、室外側熱交換器80Aと絞り装置93を接続する配管91、絞り装置93と液側室外バルブ81を接続する配管92、液側室内バルブ82と室内熱交換器80Bを接続する配管93、室内熱交換器80Bとガス側室内バルブ89を接続する配管73、ガス側室外バルブ88と四方弁69を接続する配管85、四方弁69と圧縮機Cを接続する配管86とより構成される。ここで、液状態の占める割合の多い配管91、92、93を液側配管とし、ガス状態の占める割合の多い配管82、83、84、85、86をガス側配管とする。冷房運転と暖房運転との選択的な切り替えは、四方弁69を切り替えて冷媒の流れを変化させることにより行われる。図中、実線で示す矢印は冷房運転時の冷媒の流れ方向を示し、破線で示す矢印は暖房運転時の冷媒の流れ方向を示す。
乾燥運転は、空気調和機の冷房運転によって結露等が生じた熱交換器6を乾かすために暖房運転を行うものであり、乾燥運転時に四方弁69を切り換えることによって実行される。すなわち、一旦、圧縮機Cを停止した後、四方弁69を切り替え暖房運転のサイクルで運転し、室内熱交換器6の温度を上昇させ冷房、冷房運転又は除湿運転時に室内熱交換器6に保水した水分を蒸発させる。また、例えば、まず送風、次にサイクル除湿、さらに暖房運転と、順次運転を切り替えて室内熱交換器乾燥するなど、送風、サイクル除湿、暖房運転を組合わせることで、蒸気の発生や熱交換器以外の部位での結露を抑制しながら行うようにしてもよい。
本実施形態にかかる空気調和機は、上記の各運転制御をセンサによる人の非検知時に行うことができるので、音の発生が大きくなる能力を向上させた運転を人の不在時に実施することで、使用者に騒音を聞かせない。また特に、フィルタ清掃、室内熱交換器の乾燥運転は空気調和機の通常運転を停止して行うため、人の不在時に運転を実施することで、使用者に不快感を感じさせることがない。
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。例えば、人の存在を検知するためのセンサユニットは、1つのセンサを有するものであってもよい。