以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(空気調和機の全体構成)
空気調和機は、通常冷媒配管で互いに接続された室外機と室内機とで構成されており、図1及び図2は、本発明にかかる空気調和機の室内機を示している。
室内機は、本体2と、本体2の前面吸込口2aを開閉自在の可動前面パネル(以下、単に前面パネルという)4を有しており、空気調和機停止時は、前面パネル4は本体2に密着して前面吸込口2aを閉じているのに対し、空気調和機運転時は、前面パネル4は本体2から離反する方向に移動して前面吸込口2aを開放する。なお、図1は前面パネル4が前面吸込口2aを閉じた状態を示しており、図2は前面パネル4が前面吸込口2aを開放した状態を示している。
図3に示されるように、本体2の内部には、熱交換器6と、前面吸込口2a及び上面吸込口2bから取り入れられた室内空気を熱交換器6で熱交換して室内に吹き出すための室内ファン8と、熱交換した空気を室内に吹き出す吹出口10を開閉するとともに空気の吹き出し方向を上下に変更する上下羽根12と、空気の吹き出し方向を左右に変更する左右羽根13(図23参照)とを備えており、前面吸込口2aの下方の本体2には、前面吸込口2aの吹出口10側で開閉する中羽根14が中羽根駆動機構16を介して揺動自在に取り付けられている。さらに、前面パネル4上部は、その両端部に設けられた2本のアーム18,20を介して本体2上部に連結されており、アーム18に連結された駆動モータ(図示せず)を駆動制御することで、空気調和機運転時、前面パネル4は空気調和機停止時の位置(前面吸込口2aの閉塞位置)から前方斜め上方に向かって移動する。また、上下羽根12は、その両端部に設けられた2本のアーム22,24を介して本体2下部に連結されているが、その駆動方法については後述する。
(人体検知装置の構成)
図1(b)及び(c)に示されるように、前面パネル4の上部には、複数(例えば、五つ)のセンサユニット26,28,30,32,34が前面パネル4の主平面から突出した状態で人体検知装置として取り付けられており、これらのセンサユニット26,28,30,32,34は、図4に示されるように、センサホルダ36に保持されている。なお、人体検知装置は、図1(a)に示されるようにカバー5で覆われており、図1(b)はカバー5を取り外した状態を示している。
各センサユニット26,28,30,32,34を前面パネル4の上部に設けたのは、図5(a)に示されるように、各センサユニット26,28,30,32,34の視野範囲(後述する人体位置判別領域)を拡大して遠方視野を最大限確保するためである。また、図5(b)に示されるように、運転開始時に前面パネル4を停止位置より前方に移動させることでより遠くまで視野範囲を確保することができるとともに、図5(c)に示されるように、前面パネル4を停止位置より斜め上方に移動させることで視野範囲をさらに拡大することができる。なお、各センサユニット26,28,30,32,34の位置は前面パネル4の上部に限定されるわけではなく、また、前面パネルが可動でない場合でも、人体検知装置を前面パネルの上部あるいは本体上部に取り付けることにより下部に取り付けた場合に比べ視野範囲を拡大することができる。
また、図5(d)に示されるように、各センサユニット26,28,30,32,34を前面パネル4の主平面から突出させて設けることで、各センサユニット26,28,30,32,34をより前方に配置することができ、図5(b)〜(d)に示されるように、室内機の構成部(例えば、上下羽根12や、前面吸込口2aを開放状態の前面パネル4など)による死角発生を防止して視野範囲を拡大させることができる。
本実施の形態では、各センサユニット26,28,30,32,34は前面パネル4に設けられているので、前面パネル4が前面吸込口2aを開放状態としたときには前面パネル4に付随して移動することとなり、更に前方に突出することとなる。
また、センサユニット26は、回路基板26aと、回路基板26aに取り付けられたレンズ26bと、レンズ26bの内部に実装された人体検知センサ(図示せず)とで構成されており、この構成は、他のセンサユニット28,30,32,34についても同様である。さらに、人体検知センサは、例えば人体から放射される赤外線を検知することにより人の在否を検知する赤外線センサにより構成されており、赤外線センサが検知する赤外線量の変化に応じて出力されるパルス信号に基づいて回路基板26aにより人の在否が判定される。すなわち、回路基板26aは人の在否判定を行う在否判定手段として作用する。
(人体検知装置による人位置推定)
図6は、センサユニット26,28,30,32,34で検知される人体位置判別領域を示しており、センサユニット26,28,30,32,34は、それぞれ次の領域に人がいるかどうかを検知することができる。
センサユニット26:領域A+C+D
センサユニット28:領域B+E+F
センサユニット30:領域C+G
センサユニット32:領域D+E+H
センサユニット34:領域F+I
すなわち、本発明にかかる空気調和機の室内機においては、センサユニット26,28で検知できる領域と、センサユニット30,32,34で検知できる領域が一部重なっており、領域A〜Iの数よりも少ない数のセンサユニットを使用して各領域A〜Iにおける人の在否を検知するようにしている。
また、少なくとも三つの人体検知センサを室内機の上部に取り付けることで、室内における人体の位置を室内機に対して遠近方向と左右方向、すなわち室内フロアのどこにいるのかを二次元的に把握することができる。図7は三つの人体検知センサを設けた場合の検知される領域を示しており、図7の例では、室内機の近傍の領域における人の在否が一つの人体検知センサで検知され、室内機から遠い領域における人の在否が二つの人体検知センサで検知される。
図6に戻って本実施の形態をさらに説明するが、以下の説明ではセンサユニット26,28,30,32,34を第1のセンサ26、第2のセンサ28、第3のセンサ30、第4のセンサ32、第5のセンサ34という。また、領域C,D,E,Fは二つのセンサで検知されるので、重なり領域というのに対し、重なり領域以外の領域(領域A,B,G,H,I)は一つのセンサで検知されるので、通常領域という。また、重なり領域は、左の重なり領域C,Dと右の重なり領域E,Fに分けられる。
図8は、第1乃至第5のセンサ26,28,30,32,34を使用して、領域A〜Iの各々に後述する領域特性を設定するためのフローチャートで、図9は、第1乃至第5のセンサ26,28,30,32,34を使用して、領域A〜Iのどの領域に人がいるか否かを判定するフローチャートであり、これらのフローチャートを参照しながら人の位置判定方法について以下説明する。
ステップS1において、所定の周期T1(例えば、5秒)で左の重なり領域における人の在否がまず判定され、ステップS2において、所定の条件で所定のセンサ出力をクリアする。
表1は、左の重なり領域の判定方法を示しており、表1に示される三つの反応結果のいずれかに該当する場合は、第1のセンサ26及び第3のセンサ30の出力をクリアする。ここで、1は反応有り、0は反応無し、クリアは1→0にすることと定義する。
ステップS3では、上述した所定の周期T1で右の重なり領域における人の在否がさらに判定され、ステップS4において、所定の条件で所定のセンサ出力をクリアする。
表2は、右の重なり領域の判定方法を示しており、表2に示される三つの反応結果のいずれかに該当する場合は、第2のセンサ28及び第5のセンサ34の出力をクリアする。
また、表1及び表2に示される六つの反応結果のいずれかに該当する場合は、第4のセンサ32の出力もクリアし、ステップS5に移行する。ステップS5においては、上述した所定の周期T1で通常領域における人の在否が表3に基づいて判定され、ステップS6において、全てのセンサ出力をクリアする。
さらに、図10を参照して第1乃至第3のセンサ26,28,30からの出力のみを使用して領域A,B,Cにおける人の在否を判定する場合について説明する。
図10に示されるように、時間t1の直前の周期T1において第1乃至第3のセンサ26,28,30がいずれもOFF(パルス無し)の場合、時間t1において領域A,B,Cに人はいないと判定する(A=0,B=0,C=0)。次に、時間t1から周期T1後の時間t2までの間に第1のセンサ26のみON信号を出力し(パルス有り)、第2及び第3のセンサ28,30がOFFの場合、時間t2において領域Aに人がいて、領域B,Cには人がいないと判定する(A=1,B=0,C=0)。さらに、時間t2から周期T1後の時間t3までの間に第1及び第3のセンサ26,30がON信号を出力し、第2のセンサ28がOFFの場合、時間t3において領域Cに人がいて、領域A、Bには人がいないと判定する(A=0,B=0,C=1)。以下、同様に周期T1毎に各領域A,B,Cにおける人の在否が判定される。
実際には、第1乃至第5のセンサ26,28,30,32,34を使用して、領域A〜Iのどの領域に人が存在するかどうかの判定が行われ、表4は全てのセンサ26,28,30,32,34からの出力を使用して各領域A〜Iにおける人の在否判定結果を示している。
なお、表4において、表1乃至表3に示される位置判定以外の位置判定は、ステップS1,S3,S5におけるそれぞれの判定結果を組み合わせて行っている。
この判定結果に基づいて各領域A〜Iを、人が良くいる第1の領域(良くいる場所)、人のいる時間が短い第2の領域(人が単に通過する領域、滞在時間の短い領域等の通過領域)、人のいる時間が非常に短い第3の領域(壁、窓等人が殆ど行かない非生活領域)とに判別する。以下、第1の領域、第2の領域、第3の領域をそれぞれ、生活区分I、生活区分II、生活区分IIIといい、生活区分I、生活区分II、生活区分IIIはそれぞれ、領域特性Iの領域、領域特性IIの領域、領域特性IIIの領域ということもできる。また、生活区分I(領域特性I)、生活区分II(領域特性II)を併せて生活領域(人が生活する領域)とし、これに対し、生活区分III(領域特性III)を非生活領域(人が生活しない領域)とし、人の在否の頻度により生活の領域を大きく分類してもよい。
この判別は、図8のフローチャートにおけるステップS7以降で行われ、この判別方法について図11及び図12を参照しながら説明する。
図11は、一つの和室とLD(居間兼食事室)とキッチンとからなる1LDKのLDに本発明にかかる空気調和機の室内機を設置した場合を示しており、図11における楕円で示される領域は被験者が申告した良くいる場所を示している。
上述したように、周期T1毎に各領域A〜Iにおける人の在否が判定されるが、周期T1の反応結果(判定)として1(反応有り)あるいは0(反応無し)を出力し、これを複数回繰り返した後、ステップS7において、所定の空調機の累積運転時間が経過したかどうかを判定する。ステップS7において所定時間が経過していないと判定されると、ステップS1に戻る一方、所定時間が経過したと判定されると、各領域A〜Iにおける当該所定時間に累積した反応結果を二つの閾値と比較することにより各領域A〜Iをそれぞれ生活区分I〜IIIのいずれかに判別する。
長期累積結果を示す図12を参照して、さらに詳述すると、第1の閾値及び第1の閾値より小さい第2の閾値を設定して、ステップS8において、各領域A〜Iの長期累積結果が第1の閾値より多いかどうかを判定し、多いと判定された領域はステップS9において生活区分Iと判別する。また、ステップS8において、各領域A〜Iの長期累積結果が第1の閾値より少ないと判定されると、ステップS10において、各領域A〜Iの長期累積結果が第2の閾値より多いかどうかを判定し、多いと判定された領域は、ステップS11において生活区分IIと判別する一方、少ないと判定された領域は、ステップS12において生活区分IIIと判別する。
図12の例では、領域E,F,Iが生活区分Iとして判別され、領域B,Hが生活区分IIとして判別され、領域A,C,D,Gが生活区分IIIとして判別される。
また、図13は別の1LDKのLDに本発明にかかる空気調和機の室内機を設置した場合を示しており、図14はこの場合の長期累積結果を元に各領域A〜Iを判別した結果を示している。図13の例では、領域C,E,Gが生活区分Iとして判別され、領域A,B,D,Hが生活区分IIとして判別され、領域F,Iが生活区分IIIとして判別される。
なお、上述した領域特性(生活区分)の判別は所定時間毎に繰り返されるが、判別すべき室内に配置されたソファー、食卓等を移動することがない限り、判別結果が変わることは殆どない。
次に、図9のフローチャートを参照しながら、各領域A〜Iにおける人の在否の最終判定について説明する。
ステップS21〜S26は、上述した図8のフローチャートにおけるステップS1〜S6と同じなので、その説明は省略する。ステップS27において、所定数M(例えば、15回)の周期T1の反応結果が得られたかどうかが判定され、周期T1は所定数Mに達していないと判定されると、ステップS21に戻る一方、周期T1が所定数Mに達したと判定されると、ステップS28において、周期T1×Mにおける反応結果の合計を累積反応期間回数として、1回分の累積反応期間回数を算出する。この累積反応期間回数の算出を複数回繰り返し、ステップS29において、所定回数分(例えば、N=4)の累積反応期間回数の算出結果が得られたかどうかが判定され、所定回数に達していないと判定されると、ステップS21に戻る一方、所定回数に達したと判定されると、ステップS30において、既に判別した領域特性と所定回数分の累積反応期間回数を元に各領域A〜Iにおける人の在否を推定する。
なお、ステップS31において累積反応期間回数の算出回数(N)から1を減算してステップS21に戻ることで、所定回数分の累積反応期間回数の算出が繰り返し行われることになる。
表5は最新の1回分(時間T1×M)の反応結果の履歴を示しており、表5中、例えばΣA0は領域Aにおける1回分の累積反応期間回数を意味している。
ここで、ΣA0の直前の1回分の累積反応期間回数をΣA1、さらにその前の1回分の累積反応期間回数をΣA2・・・とし、領域における過去の数回分の履歴(例えば、ΣA3、ΣA2、ΣA1、ΣA0の4回分)と生活区分と累積反応期間回数から人の在否を推定する。
次に、上述した人の在否判定から時間T1×M後には、同様に過去の4回分の履歴と生活区分と累積反応期間回数から人の在否の推定が行われる。
すなわち、本発明にかかる空気調和機の室内機においては、判別領域A〜Iの数よりも少ない数のセンサを使用して人の在否を推定することから、所定周期毎の推定では人の位置を誤る可能性があるので、重なり領域かどうかに関わらず単独の所定周期では人の位置推定を行うことを避け、所定周期毎の領域判定結果を長期累積した領域特性と、所定周期毎の領域判定結果をN回分累積し、求めた各領域の累積反応期間回数の過去の履歴から人の所在地を推定することで、確率の高い人の位置推定結果を得るようにしている。
表6は、このようにして人の在否を判定し、T1=5秒、M=12回に設定した場合の在推定に要する時間、不在推定に要する時間を示している。
このようにして、本発明にかかる空気調和機の室内機により空調すべき領域を第1乃至第5のセンサ26,28,30,32,34により複数の領域A〜Iに区分した後、各領域A〜Iの領域特性(生活区分I〜III)を決定し、さらに各領域A〜Iの領域特性に応じて在推定に要する時間、不在推定に要する時間を変更するようにしている。
すなわち、空調設定を変更した後、風が届くまでには1分程度要することから、短時間(例えば、数秒)で空調設定を変更しても快適性を損なうのみならず、人がすぐいなくなるような場所に対しては、省エネの観点からあまり空調を行わないほうが好ましい。そこで、各領域A〜Iにおける人の在否をまず検知し、特に人がいる領域の空調設定を最適化している。
詳述すると、生活区分IIと判別された領域の在否推定に要する時間を標準として、生活区分Iと判別された領域では、生活区分IIと判別された領域より短い時間間隔で人の存在が推定されるのに対し、その領域から人がいなくなった場合には、生活区分IIと判別された領域より長い時間間隔で人の不存在を推定することにより、在推定に要する時間を短く、不在推定に要する時間は長く設定されることになる。逆に、生活区分IIIと判別された領域では、生活区分IIと判別された領域より長い時間間隔で人の存在が推定されるのに対し、その領域から人がいなくなった場合には、生活区分IIと判別された領域より短い時間間隔で人の不存在を推定することにより、在推定に要する時間を長く、不在推定に要する時間は短く設定されることになる。さらに、前述のように長期累積結果によりそれぞれの領域の生活区分は変わり、それに応じて、在推定に要する時間や不在推定に要する時間も可変設定されることになる。
(風向制御)
また、各領域A〜Iにおける空調設定に応じて、室内ファン8の回転数制御及び上下羽根12と左右羽根13の風向制御が行われるが、これらの制御について以下説明する。
暖房時の風向制御は、人がいると判定された領域における人の足元手前に風向きを制御することで足元近傍に温風を到達させ、冷房時の風向制御は、人の頭上上方に風向きを制御することで頭上上方に冷風を到達させる。風向きは室内ファン8の回転数と、上下羽根12あるいは左右羽根13の角度により調節する。
図15は、上下羽根12の回転制御を示しており、空気調和機停止時には、図15(a)に示されるように、前面パネル4と上下羽根12と中羽根14は全て閉塞した状態にある。
冷房時は、吹き出し空気(冷風)を人の頭上上方に到達させるため(冷房天井気流)、図15(a)に示される状態から図15(b)に示される状態を経て図15(c)に示される状態に至る。まず、アーム18,20が駆動制御されて前面パネル4が前面吸込口2aから離反するとともに、アーム22,24が駆動制御されて上下羽根12が吹出口10から離反する。
図15(c)の状態では、吹出口10から吹き出される空気は、上下羽根12により水平方向に導かれるが、上下羽根12の下流側端部が上方へ湾曲しているため、部屋の遠方まで空気を送ることができる。この時、吹出口10の上方、すなわち前面パネル4の下方は中羽根14により閉塞されており、吹出口10から吹き出した空気の一部が前面吸込口2aに導かれることはない。
一方、暖房時は、吹き出し空気(温風)を人の足元近傍に到達させるため(暖房足元気流)、図15(a)に示される状態から図15(b)に示される状態を経て図15(d)に示される状態に至る。図15(d)の状態では、吹出口10から吹き出される空気は、上下羽根12により斜め下方に導かれるが、上下羽根12の下流側端部が本体側へ湾曲しているため、部屋の上方に溜まりやすい暖かい空気を部屋の下方に送ることができる。
なお、図15(e)は、安定前の冷房時に利用され、吹き出し空気は人体に向けられる(人体向け気流)。
図16は、各領域A〜Iの空調を行う場合の室内ファン8の設定回転数を示しており、A1,A2,A3は室内機からそれぞれ近距離、中距離、遠距離にある領域の基準回転数で、A4は距離が同じ場合の領域の違いによる回転数差分であり、例えばそれぞれ次のように設定される。
A1:800rpm(暖房時)、700rpm(冷房時)
A2:1000rpm(暖房時)、900rpm(冷房時)
A3:1200rpm(暖房時)、1100rpm(冷房時)
A4:100rpm(冷暖共通)
ここで、各領域における室内機からの距離、室内機正面からの角度、高低差等、室内機との位置関係を表す表現として、相対位置という表現を導入する。
また、各領域において空調がし易い、空調がし難い度合いを空調要求度という表現により表し、空調要求度が高いほど空調がよりし難い、空調要求度が低いほど空調がよりし易いとする。例えば、室内機からの距離が遠いほど吹き出し空気が届き難く空調がし難いので空調要求度が高くなる。即ち、空調要求度と室内機からの相対位置には密接な関連性があり、本実施の形態では、室内機からの相対位置に応じて空調要求度を定める。
したがって、各領域A〜Iの空調を行う場合の室内ファン8の設定回転数は、空調要求度が高いほど高く設定されることを意味している。すなわち、空調すべき領域の位置が室内機より遠いほど室内ファン8の設定回転数は高く設定されるとともに、室内機からの距離が同じ場合には室内機の正面より左右にずれた領域ほど室内ファン8の設定回転数は高く設定される。また、空調すべき領域が一つの場合、その領域の設定回転数(風量)に設定され、空調すべき領域が複数の場合、空調要求度が高い領域の設定回転数に設定される。
また、図17は、暖房時の上下羽根12と左右羽根13の設定角度を示しており、B1,B2,B3は室内機からそれぞれ近距離、中距離、遠距離にある領域の基準上下羽根角度で、B4は距離が同じ場合の領域の違いによる上下羽根の角度差分であるのに対し、C1及びC2は左右領域の基準左右羽根角度(左回りが正方向)で、C3及びC4は領域の違いによる左右羽根13の角度差分であり、例えばそれぞれ次のように設定される。なお、上下羽根12の角度とは、羽根が上に凸の状態で羽根の前後端を結んだ線が水平の場合を0°とし、この位置を基準にして反時計方向に計測した場合の角度のことである。
B1:70°
B2:55°
B3:45°
B4:10°
C1:0°
C2:15°
C3:30°
C4:45°
すなわち、室内機に近い領域AあるいはBの暖房を行う場合、上下羽根12は、第1の角度(例えば、70°)に設定されるとともに、室内ファン8の回転数は第1の回転数(例えば、800rpm)に設定され、領域AあるいはBにおける室内機側の縁部(人の足元手前)に風向を制御し、足元近傍に温風を到達させるようにしている。また、室内機から中距離にある領域C,D,EあるいはFの暖房を行う場合、上下羽根12は、第1の角度より小さい第2の角度(例えば、55°)に設定されるとともに、室内ファン8の回転数は第1の回転数より高い第2の回転数(例えば、1000rpm)に設定され、領域C,D,EあるいはFにおける室内機側の縁部(人の足元手前)に風向を制御し、足元近傍に温風を到達させるようにしている。さらに、室内機から最も遠い領域G,HあるいはIの暖房を行う場合、上下羽根12は、第2の角度より小さい第3の角度(例えば、45°)に設定されるとともに、室内ファン8の回転数は第2の回転数より高い第3の回転数(例えば、1200rpm)に設定され、領域G,HあるいはIにおける室内機側の縁部(人の足元手前)に風向を制御し、足元近傍に温風を到達させるようにしている。
図18は、立ち上がりあるいは不安定領域の冷房時の上下羽根12と左右羽根13の設定角度を示しており、E1,E2,E3は室内機からそれぞれ近距離、中距離、遠距離にある領域の基準上下羽根角度で、E4は距離が同じ場合の領域の違いによる上下羽根の角度差分であるのに対し、F1及びF2は左右領域の基準左右羽根角度(左回りが正方向)で、F3及びF4は領域の違いによる左右羽根13の角度差分であり、例えばそれぞれ次のように設定される。なお、立ち上がりとは、空気調和機の運転開始時のことで、不安定領域とは、現在の室内の空調状態が、設定した条件(例えば設定温度)になっていない状態のことである。
E1:50°
E2:35°
E3:25°
E4:10°
F1:0°
F2:15°
F3:25°
F4:35°
また、図19は、安定領域の冷房時の上下羽根12と左右羽根13の設定角度を示しており、H1は天井気流の場合の基準上下羽根角度で、H2はにがし気流の場合の基準上下羽根角度で、H3は距離の違いによる上限羽根角度差分であるのに対し、I1及びI2は左右領域の基準左右羽根角度(左回りが正方向)で、I3及びI4は領域の違いによる左右羽根13の角度差分であり、例えばそれぞれ次のように設定される。なお、安定領域とは、現在の室内の空調状態が、設定した条件(例えば設定温度)になっている状態のことである。
H1:180°
H2:190°
H3:5°
I1:0°
I2:15°
I3:25°
I4:35°
ここで、天井気流とは、図15(c)に示されるように、上下羽根12を吹出口10の下部に位置させて吹き出し風を全て羽根の凹面で受けて風を送り出した場合の気流のことであり、にがし気流とは、上下羽根12を天井気流時より多少上部に位置させて、吹き出し風の一部(微量)を羽根の凸面側(羽根の下方)にも流し羽根凸面に結露が発生しにくい状態にして風を送り出した場合の気流のことである。
室内機に近い領域AあるいはBの冷房を行う場合、上下羽根12は、水平より所定角度(例えば、5°)だけ下方に設定され、室内ファン8の回転数は第1の回転数(暖房時の第1の回転数より少ない回転数で、例えば、700rpm)に設定され、領域AあるいはBの頭上上方に冷風を到達させ、冷気がシャワー状に落ちてくるように設定されている。また、室内機から中距離にある領域C,D,EあるいはFの冷房を行う場合、上下羽根12は、略水平に設定され、室内ファン8の回転数は第1の回転数より高い第2の回転数(暖房時の第2の回転数より少ない回転数で、例えば、900rpm)に設定され、領域C,D,EあるいはFの頭上上方に冷風を到達させるように設定されている。さらに、室内機から最も遠い領域G,HあるいはIの冷房を行う場合、上下羽根12は、水平より所定角度(例えば、5°)だけ上方に設定され、室内ファン8の回転数は第2の回転数より高い第3の回転数(暖房時の第3の回転数より少ない回転数で、例えば、1100rpm)に設定され、領域G,HあるいはIの頭上上方に冷風を到達させるように設定されている。
次に、空調すべき領域の数に応じて行われる風向制御について図20のフローチャートを参照しながら説明する。
空気調和機の運転開始後、ステップS41において、領域A〜Iにおける人の在否判定がまず行われ、ステップS42において、人がいると判定された領域が一つ、すなわち空調すべき領域が一つの場合、ステップS43において、その領域に応じて設定された風量、風向に基づいて空調が行われる。ステップS42において、空調すべき領域が一つではないと判定されると、ステップS44において、空調すべき領域が二つかどうかを判定し、空調すべき領域が二つの場合、ステップS45に移行する。
ステップS45においては、風量は空調要求度の高い領域の設定風量に設定され、二つの領域の配置モードを図21に示されるように五つのモードのいずれかに識別し、次のステップS46において、識別されたモードに応じて表7のように制御する。
ここで、モード1は中距離であり、かつ室内機正面をはさんで隣接する2領域の場合を表し、モード2は室内機との角度が略一致し、前後関係に隣接する2領域の場合を表している。また、モード3は室内機との角度が略一致し、前後関係に離間する2領域の場合を表し、モード4は室内機との距離が略一致し、角度が異なる2領域の場合を表し、モード5は離間する2領域、換言すれば室内機との距離も角度も異なる2領域の場合を表している。
モード1〜4の上下風向は、暖房時は要求度の低い領域に固定される一方、冷房時は要求度の高い領域に固定される。また、モード5の上下風向は、上下羽根12の動作を制御して、二つの領域(第1及び第2の領域)のうち、第1の領域に所定時間停留(角度固定)した後、第2の領域に向かって風向を変え、第2の領域に所定時間停留した後、第1の領域向かって風向を変える動作を繰り返す。なお、各領域の停留時間は、例えば室内機からの距離に応じてそれぞれ設定され、室内機からの距離が遠いほど停留時間を長くするのが好ましい。
また、モード1の左右風向は、隣接した二つの領域の中央に固定され、モード2及び3の場合、二つの領域が室内機から見て距離の異なる略同一方向にあると見なして、その左右風向は、要求度の高い領域に固定される。さらに、モード4及び離間する二つの領域の配置からなるモード5の左右風向は、上下羽根12の制御と同様に左右羽根13の動作を制御して、第1の領域に所定時間停留した後、第2の領域に向かって風向を変え、第2の領域に所定時間停留した後、第1の領域に向かって風向を変える動作を繰り返す。なお、各領域の停留時間は、各領域に対する室内機からの相対位置、例えば室内機正面からの角度に応じてそれぞれ設定され、室内機正面からの角度が大きいほど停留時間を長くするのが好ましい。
また、ステップS44において空調すべき領域が二つではないと判定されると、ステップS47において、空調すべき三つ以上の領域をその配置に応じて通常モードと特殊モードの二つのモードのいずれかに判定する。ここで、特殊モードは、中距離であり、かつ室内機正面をはさんで隣接する2領域と、遠距離であり、かつ室内機正面に位置する1領域、計3領域の場合を表し、それを除く三つ以上の領域の場合を通常モードと表す。空調すべき領域が三つ以上の場合、風量は空調要求度の最も高い領域の設定風量に設定され、ステップS47において、図22(a)に示される特殊モード(中央隣接)と判定されると、ステップS48において、風向は図21のモード1と同様に設定される。
一方、ステップS47において、特殊モードではないと判定されると、ステップS49において、図22(b)あるいは(c)に示される通常モードの制御が行われ、上下風向は、室内機に最も近い領域の上下羽根12の設定角度と、室内機に最も遠い領域の上下羽根12の設定角度との間で上下羽根12の角度を変更する。
また、通常モードの場合の左右風向は、両端の領域(図22(b)では領域CとI、図22(c)では領域CとH)における左右羽根13の設定角度を左端角度及び右端角度に設定して、左端角度に所定時間停留した後、右端側の領域に向かって風向を変え(スイング)、右端角度に所定時間停留した後、左端側の領域に向かって風向を変える動作(スイング)を繰り返す。なお、スイング時の左右羽根13の作動速度は、上述したモード4及び5における左右羽根13の作動速度より遅く設定される。また、左端角度あるいは右端角度における停留時間は、例えば室内機正面からの角度に応じてそれぞれ設定され、室内機正面からの角度が大きいほど停留時間を長くするのが好ましい。
なお、ステップS43,S46,S48あるいはS49においてそれぞれの空調制御が行われた後、ステップS41に戻る。
(静電霧化装置の構成)
静電霧化装置は室内機の送風路に設けられ、静電霧化装置により発生した粒子径がナノメートルサイズの静電ミストを空気とともに室内に吹き出すことで、室内空気に含まれる臭気成分や、カーテンや壁面等に付着した臭気成分を除去したり、かびや菌等を除菌したり、アレルギーを引き起こす花粉、ダニ(糞、死骸等を含む)等のアレルゲン物質を抑制したり、静電ミストが持つ肌水分量増加等の肌質改善作用により居住者の肌にうるおい効果を与えたりするためのものである。
図23及び図24は静電ミストを発生する静電霧化装置を備えた室内機を示しており、室内機の一方の端部(室内機正面から見て左側端部)には、室内空気を換気するための換気ファンユニット38が設けられており、換気ファンユニット38の後方には、静電ミストを発生させる静電霧化装置40が設けられている。
なお、図23は前面パネル4及び本体2を覆う本体カバー(図示せず)を取り除いた状態を示しており、図24は室内機本体2と静電霧化装置40との接続位置を明確にするために本体2の内部に収容されている静電霧化装置40を本体2とは分離した状態を示している。静電霧化装置40は実際には図25に示される形状を呈し、図23あるいは図26に示されるように、本体2の左側部に取り付けられている。
図24乃至図26に示されるように、静電霧化装置40は、前面吸込口2a及び上面吸込口2bから熱交換器6、室内ファン8等を経由して吹出口10に連通する主流路42において、熱交換器6と室内ファン8とをバイパスするバイパス流路44の途中に設けられており、バイパス流路44の上流側に高電圧電源となる高電圧トランス46とバイパス送風ファン48が設けられ、バイパス流路44の下流側に静電霧化ユニット52の放熱を促進する放熱部50を有する静電霧化ユニット52とサイレンサ54が設けられている。したがって、上流側から順に高電圧トランス46、バイパス送風ファン48、放熱部50、静電霧化ユニット52、及びサイレンサ54が配置された状態で、バイパス流路44の一部を構成するケーシング56に収容されている。このようにケーシング56に収容することにより、組み立て性が向上し、ケーシング56で流路を形成するので、省スペース化を図るとともに、バイパス送風ファン48による空気の流れを、発熱部である高電圧トランス46や放熱部50に確実に当てて冷却することができるとともに、静電霧化ユニット52から発生した静電ミストを確実に空気調和機の吹出口10に導入することができ、発生した静電ミストを被空調室内に放出させることができる。
また、ケーシング56は、ケーシング56の内部を流れる空気流の方向が、主流路42を流れる空気流の方向に対して、室内機本体2の正面から見て平行にとなるように縦方向に配置されており、これにより室内機本体2の正面から見て換気ファンユニット38と重なる位置に隣接配置することができ、さらに省スペース化を達成している。
なお、高電圧トランス46は必ずしもケーシング56内に収容する必要はないが、バイパス流路の通風により冷却されるため、温度上昇の抑制あるいは省スペース化の点で、ケーシング56内に収容するのが好ましい。
ここで、従来公知の静電霧化ユニット52について図27及び図28を参照しながら説明する。
図27に示されるように、静電霧化ユニット52は、放熱面58aと冷却面58bとを有する複数のペルチェ素子58と、放熱面58aに熱的に密着して接続された上述した放熱部(例えば、放熱フィン)50と、冷却面58bに電気絶縁材(図示せず)を介して熱的に密着して立設された放電電極60と、この放電電極60に対し所定距離だけ離隔して配置された対向電極62とで構成されている。
また、図28に示されるように、換気ファンユニット38の近傍に配置された制御部64(図23参照)に、ペルチェ駆動電源66と高電圧トランス46は電気的に接続されており、ペルチェ素子58及び放電電極60はペルチェ駆動電源66及び高電圧トランス46にそれぞれ電気的に接続されている。
なお、静電霧化ユニット30として放電電極38から高電圧放電させて静電ミストを発生させるためには、対向電極40を設けなくても可能である。例えば、放電電極38に高電圧電源の一方の端子を接続し、他方の端子をフレーム接続するようにしておけば、フレーム接続された構造体の放電電極38に近接した部分と放電電極38との間で放電することとなる。そのような構成の場合には、そのフレーム接続された構造体を対向電極40と見なすことができる。
上記構成の静電霧化ユニット52において、制御部64によりペルチェ駆動電源66を制御してペルチェ素子58に電流を流すと、冷却面58bから放熱面58aに向かって熱が移動し、放電電極60の温度が低下することで放電電極60に結露する。さらに、制御部64により高電圧トランス46を制御して、結露水が付着した放電電極60に高電圧を印可すると、結露水に放電現象が発生して粒子径がナノメートルサイズの静電ミストが発生する。なお、本実施の形態においては、高電圧トランス46としてマイナス高電圧電源を用いているので、静電ミストは負に帯電している。
また、本実施の形態においては、図29に示されるように、主流路42は、本体2を構成する台枠68の後部壁68aと、この後部壁68aの両端部より前方に延びる両側壁(図29では左側壁のみ示す)68bと、台枠68の下方に形成されたリヤガイダ(送風ガイド)70の後部壁70aと、この後部壁70aの両端部より前方に延びる両側壁(図29では左側壁のみ示す)70bとで形成されており、台枠68の一方の側壁(左側壁)68bとリヤガイダ70の一方の側壁(左側壁)70bとでバイパス流路44を主流路42から分離する隔壁68cを構成している。さらに、台枠68の一方の側壁68bにバイパス流路44のバイパス吸入口44aが形成される一方、リヤガイダ70の一方の側壁70bにバイパス流路44のバイパス吹出口44bが形成されている。
空気調和機の場合、冷房時においては、室内機の熱交換器6を通過した低温の空気は相対湿度が高く、静電霧化装置40において、水分を補給するためにペルチェ素子58を備えた場合に、ペルチェ素子58のピン状の放電電極60のみならずペルチェ素子58全体に結露が発生しやすくなる。一方、暖房時においては、熱交換器6を通過した高温の空気は相対湿度が低いため、ペルチェ素子58の放電電極60に結露しない可能性が極めて高い。
そこで上記構成のように、主流路42とバイパス流路44を隔壁68cで分離し、静電ミストを発生させる静電霧化装置40をバイパス流路44に設けたことにより、熱交換器6を通過せず温湿度調整がなされていない空気が静電霧化装置40に供給される。これにより、冷房時においては静電霧化ユニット52のペルチェ素子58全体に結露が発生することを有効に防止することで安全性が向上する。また、暖房時においては静電ミストを確実に発生させることができる。
バイパス流路44は、バイパス吸入管44cとケーシング56とバイパス吹出管44dから構成されており、台枠側壁68bに形成されたバイパス吸入口44aに一端が接続されたバイパス吸入管44cは左方(左側壁68bに略直交し、前面パネル4に略平行な方向)に延びて、その他端はケーシング56の一端に接続され、さらにケーシング56の他端に一端が接続されたバイパス吹出管44dは下方に延びて右方に折曲され、その他端はリヤガイダ70の一方の側壁70bのバイパス流路22のバイパス吹出口44bに接続されている。このようにバイパス流路44の一部をケーシング56で構成することで、省スペース化を達成することができるとともに、これらを一連に構成することでバイパス吹出管44dを介して静電霧化ユニット52から静電ミストを主流路42に向けて確実に誘引することができ、静電ミストを被空調室内に放出させることができる。
バイパス吸入口44aはプレフィルタ72と熱交換器6との間、すなわちプレフィルタ72の下流側で熱交換器6の上流側に位置しており、前面吸込口2a及び上面吸込口2bより吸い込まれた空気に含まれる塵埃はプレフィルタ72により有効に除去されるので、静電霧化装置40に塵埃が侵入することを抑制できる。これにより、静電霧化ユニット52に塵埃が堆積することを有効に防止でき、静電ミストを安定的に放出することができる。
このように本実施の形態においては、プレフィルタ72で静電霧化装置40と主流路42のプレフィルタを兼ねる構成となっているが、これによりメンテナンスはプレフィルタ72のみを清掃すればよく、それぞれ別に手入れをする必要がないので、手入れを簡略化することができる。さらには、後述するようなプレフィルタ自動清掃装置を備えた空気調和機においては、プレフィルタ72に特別の手入れは必要なく、メンテンナンスフリー化を実現することができる。
一方、バイパス吹出口44bは熱交換器6及び室内ファン8の下流側で吹出口10の近傍に位置しており、バイパス吹出口44bから吐出された静電ミストが主流路42の空気流に乗って拡散し部屋全体に充満するように構成されている。このようにバイパス吹出口44bを熱交換器6の下流側に配置したのは、熱交換器6の上流側に配置すると、熱交換器6は金属製のため、荷電粒子である静電ミストは熱交換器6にその大部分(約8〜9割以上)が吸収されるからである。また、バイパス吹出口44bを室内ファン8の下流側に配置したのは、室内ファン8の上流側に配置すると、室内ファン8の内部には乱流が存在し、室内ファン8の内部を通過する空気が室内ファン8の様々な部位に衝突する過程で静電ミストの一部(約5割程度)が吸収されるからである。
また、バイパス吹出口44bを設けたリヤガイダ70の一方の側壁70bの主流路42側は、室内ファン8により空気流に所定の速度が付与されることで、側壁70bの主流路42側とバイパス流路44側において圧力差が生じ、バイパス流路44に対し主流路42側が相対的に低圧となる負圧部となっており、バイパス流路44から主流路42に向かって空気が誘引される。したがって、バイパス送風ファン48は小容量のもので済み、場合によってはバイパス送風ファン48を設けなくてもよい。
さらに、バイパス吹出管44dは、主流路42との合流点(バイパス吹出口44b)において主流路42内の空気流に対し略直交する方向に指向するように隔壁68c(リヤガイダ70の側壁70b)に接続されている。これは、静電霧化ユニット52は、上述したように放電現象を利用して静電ミストを発生させていることから、必然的に放電音を伴い、放電音には指向性があるからである。したがって、バイパス流路44と主流路42の合流点(バイパス吹出口44b)において、バイパス流路44を前面パネル4に略平行に接続することで、室内機の前方あるいは斜め前方にいる人に対して、放電音が極力指向しないように構成して騒音を低減することができる。
また、図30に示されるように、バイパス吹出管44dを主流路42との合流点において隔壁68cに対し傾斜させ、主流路42内の空気流に対し上流側に指向するように接続すると、より一層放電音による騒音の低減に効果がある。
なお、バイパス吹出管44dの指向する方向が主流路42内の空気流の下流方向に指向して接続した場合においても、その延長線が吹出口10から外部に出ないようにしておけば、発生する放電音が吹出口10から直接外部に出る量が少なく、直接的に使用者の耳に入射することも少ないため、騒音低減効果を奏することができる。
以上説明したように、主流路42とバイパス流路44を隔壁68cで分離し、静電ミストを発生させる静電霧化装置40を熱交換器6をバイパスして主流路42に連通するバイパス流路44に設けたので、熱交換器6を通過せず温湿度調整がなされていない空気が静電霧化装置40に供給されるので、冷房時においては静電霧化ユニット52のペルチェ素子58全体に結露が発生することを有効に防止することで安全性が向上するとともに、暖房時においては静電ミストを確実に発生させることができ、空気調和機の運転モードに関わらず、すなわち、季節に関係なく静電ミストを安定的に発生させることができる。
次に、プレフィルタ72に付着した塵埃を吸引して除去する吸引装置を有するプレフィルタ自動清掃装置をさらに設けた空気調和機について説明する。図31を参照しながら換気ファンユニット38を説明すると、換気ファンユニット38は換気専用であっても、プレフィルタ自動清掃装置を有する室内機に設けられた吸引装置の給気用を兼ねるものであってもよい。図31に示される換気ファンユニット38は、隔壁68cのバイパス流路44側でプレフィルタ自動清掃装置の吸引装置82に組み込まれているが、プレフィルタ自動清掃装置は既に公知なので、図32を参照しながら簡単に説明する。プレフィルタ自動清掃装置の詳細な構造や運転方法については、特に限定されるものではない。
図32に示されるように、プレフィルタ自動清掃装置74は、プレフィルタ72の表面に沿って摺動自在の吸引ノズル76を備えており、吸引ノズル76はプレフィルタ72の上下端に設置された一対のガイドレール78により、プレフィルタ72と極めて狭い間隙を保って円滑に左右に移動することができ、プレフィルタ72に付着した塵埃は吸引ノズル76より吸引して除去される。また、吸引ノズル76には屈曲自在の吸引ダクト80の一端が連結され、吸引ダクト80の他端は吸引量可変の吸引装置82に連結されている。さらに、吸引装置82には排気ダクト84が連結され、室外へ導出されている。
また、吸引ノズル76の上下方向の周囲には吸引ノズル76に沿って摺動自在のベルト(図示せず)が巻回されており、吸引ノズル76のプレフィルタ72と対向する面には、プレフィルタ72の縦長さに略等しい長さのスリット状のノズル開口部が形成される一方、ベルトには、プレフィルタ72の縦長さの例えば1/4の長さのスリット状の吸引孔が形成されている。
上記構成のプレフィルタ自動清掃装置74は、必要に応じてプレフィルタ72の清掃範囲A,B,C,Dを順次清掃するが、範囲Aを吸引清掃する場合、ベルトを駆動してその吸引孔を範囲Aの位置に固定した状態で、吸引しながら吸引ノズル76をプレフィルタ72の右端から左端まで駆動することでプレフィルタ72の水平方向の範囲Aが吸引清掃される。
次に、ベルトを駆動してその吸引孔を範囲Bの位置に固定し、この状態で吸引しながら吸引ノズル76をプレフィルタ72の左端から右端まで駆動することで今度はプレフィルタ72の水平方向の範囲Bが吸引清掃される。同様に、プレフィルタ72の範囲C、Dも吸引清掃される。
プレフィルタ72に付着し、吸引ノズル76により吸引された塵埃は吸引ダクト80、吸引装置82、排気ダクト84を経由して室外へ排出される。
図31をさらに参照すると、吸引装置82の吸入路には開口部86が形成されるとともに、この開口部86を開閉するためのダンパ88が設けられており、換気ファンユニット38は、ダンパ88が開口部86を開いた時は換気用として、吸引清掃を行う場合はダンパ88により開口部86を閉じてベルトの吸引孔から塵埃を吸引する吸引用として使用される。すなわち、同じ吸引装置82を使用して吸引清掃機能と換気機能を実現させている。
なお、図31には排気ダクト84は図示されていないが、排気ダクト84は吸引装置82の排気口82aに接続されている。
図33はケーシング56を持たない静電霧化装置40Aを示しており、この静電霧化装置40Aは図34に示されるように室内機本体2に組み込まれる。あるいは、図34に示される破線領域40B(図31に示される静電霧化装置40においてバイパス流路44の下流側に設けられた静電霧化ユニット52とサイレンサ54と略同じ位置)に組み込まれる。これらは、静電霧化装置40Aを室内機の正面又は上面から見て換気ファンユニット38と重なる位置に配設するとともに、静電霧化装置40Aを換気ファンユニット38の開口部86及びダンパ88の近傍で、換気ファンユニット38による吸引空気が流れる部分に配置するものである。
さらに詳述すると、図33の静電霧化装置40Aは、放熱部50を有する静電霧化ユニット52とサイレンサ54が一体的に取り付けられ、放熱部50を除く静電霧化ユニット52部分とサイレンサ54はそれぞれのハウジング(ユニットハウジング90とサイレンサハウジング92)に収容され、サイレンサハウジング92にバイパス吹出管44dの一方が接続されて連通し、バイパス吹出管44dの他方が主流路42に接続されて連通している。この場合、隔壁68cにより主流路42から分離され、図示しない本体カバーの左側面との間に形成されて、換気ファンユニット38、静電霧化装置40A等が配設された収容部44eが前述したバイパス吸入管44cとケーシング56との代わりとなるとともに、バイパス吹出管44dまでも収容してバイパス流路44として構成することになる。
なお、バイパス吹出管44dは、主流路42の空気流に対して指向する向きで騒音低減が図れることは上述したとおりであるが、必ずしも必要というものではなく、サイレンサハウジング92を直接的にバイパス吹出口44bに接続してもよい。これにより、静電霧化装置40Aの構成をより簡素化することができる。ただし、騒音低減のために向きの配慮が必要なことはバイパス吹出管44dと同様である。
これにより、プレフィルタ72を介して本体2内に吸い込まれる空気は、プレフィルタ72の下流側のバイパス吸入口44aより収容部44eに吸い込まれ、その空気流の方向は、主流路42を流れる空気流の方向に対して、室内機本体2を正面から見て平行に収容部44e内を流れることになる。このように収容部44e内を流れた空気により放熱部50は冷却されるとともに、ユニットハウジング90に形成された開口部(図示せず)より静電霧化ユニット52に取り込まれる。
このように構成することで、室内機の正面又は上面から見て換気ファンユニット38と重なる換気ファンユニット38の周囲空間がバイパス流路44となり、換気ファンユニット38、静電霧化装置40A等の収容部44eを有効に活用して省スペース化を達成することができる。なお、この構成では、高電圧トランス46は換気ファンユニット38、静電霧化装置40A等の収容部44eにおける任意の部位に配置され、バイパス送風ファン48は設けられない。
また、このようにバイパス流路44を、主流路42を通過する空気流に対して、室内機本体2を正面から見て平行に空気流が流れるように構成することにより、上で詳述したように隔壁68cという簡略な構成で主流路42とバイパス流路44を分岐することができるため、容易にバイパス流路44が形成でき、部品点数を削減することができる。
さらに、本構成とすることで、静電霧化装置40Aのプレフィルタと主流路42のプレフィルタをプレフィルタ72で共有化することができる。共有化の効果については、先述の通りであるので、ここでは詳細は省略する。
なお、換気ファンユニット38の後部にあたる台枠68の下部近傍において、室内機と室外機とを接続する配管(図示せず)を引き出せるように開口68dを形成してもよい。上述したバイパス吸入口44aは、収容部44eに空気を吸い込むために隔壁68c(台枠側壁68b)に形成された収容部44eにおける1つの開口であり、室内機の外部とはプレフィルタ72を通して連通していたが、台枠68の下部に形成された開口68dにおいては、収容部44eが室内機の外部と直接連通して周囲の空気を吸い込む開口となる。このような場合には、収容部44eはプレフィルタ72をもバイパスするバイパス流路となる。したがって、静電霧化装置40Aに吸い込まれる空気は開口68dから流入したものとなってプレフィルタ72を通過しないことになるので、必要に応じて別途静電霧化装置40A用のプレフィルタを設ければよい。また、開口68dを形成した構成でも室内機の正面又は上面から見て換気ファンユニット38と重なる位置に静電霧化装置40Aが配設されていることは変わらず、収容部44eを有効に活用して省スペース化を達成することができるのは同様である。
上述したように、バイパス吹出口44bの主流路42側は、室内ファン8により空気流に所定の速度が付与されることで圧力差が発生して誘引される負圧部となっているので、バイパス送風ファン48は設けなくても、バイパス吹出管44dを介してバイパス流路である収容部44eから主流路42に向かって誘引される空気により放熱部50は冷却され、静電霧化ユニット52により発生した静電ミストが主流路42に誘引され、被空調室内に放出させることができる。また、放熱部50は、破線領域40Bのように開口部86及びダンパ88の近傍で、開口部86に吸い込まれる空気が流れる部分に配置したことから換気ファンユニット38による吸引空気によっても冷却される。
なお、図34に示されるように、静電霧化装置40Aの放熱部50を吸引装置82に設けられた開口部86に近接して配置することで、開口部86に吸い込まれる空気により放熱部50がより冷却され、静電霧化ユニット52からの放熱が促進される。また、換気ファンユニット38として換気専用のファンを使用した場合、ダンパ88は設けられることがないので、換気ファンユニット38の吸込口に放熱部50を近接配置することで、放熱部50は効率よく冷却される。
(静電霧化装置の制御方法)
次に、上記構成の静電霧化装置40,40Aを汚れ検知手段の出力に応じて制御するための方法について説明する。
空気調和機運転中には被空調室内を脱臭、浄化するため静電霧化装置40,40Aをできるだけ運転するのが好ましいが、室内空気が塵埃などの各種の粒子状物質で汚れていると、帯電した塵埃などの一部が対向電極62に付着することで対向電極62が汚れて静電霧化装置40,40Aの能力が低下し、最悪の場合には、静電霧化装置40,40Aが使用不能になってしまう可能性がある。そのような事態を避け、長期間にわたり脱臭、浄化性能を維持継続するために上記制御は行われる。
汚れ検知手段としては、室内空気の汚れ度を直接検知するガスセンサ、光学式ホコリセンサ等の汚れセンサや、室内空気の汚れ度を間接的に検知する活動量センサ等が使用される。ガスセンサは臭気ガス、CO2、水蒸気などの各種のガス成分を直接検知することができるものである。例えば、被空調室内の在室者が喫煙をおこなった際は臭気ガスと同時にタバコ煙、ヤニなどの粒子状物質が放出され、また在室者が調理をおこなった際は臭気ガス、水蒸気などと同時に調理に伴う油煙など各種の粒子状物質が放出されるため、ガスセンサの出力と被空調室内空気中の粒子状物質濃度の相関は極めて高い。このため、通常の生活環境においては、ガスセンサにより直接的に粒子状物質の有無を精度良く検出することができる。このようなガスセンサは、例えば室内機の電源基板に実装してもよく、あるいは室内機のリモコン(遠隔制御装置)受光部の近傍に取り付けられる。
まず初めに、汚れ検知手段として、室内の汚れを直接検知するガスセンサを使用した場合について、図35のブロック図及び図36のフローチャートを参照しながら説明する。
図35に示されるように、ガスセンサ(以下、汚れセンサという)100は室内機に設けられた制御部102に駆動回路104を介して接続され、制御部102にはさらに表示部106が接続されている。制御部102は記憶部108を有し、記憶部108には汚れ度の第1の閾値及び第2の閾値が設定されている。また、表示部106には空気の汚れ度を表示し、例えばLED表示を用いて空気の汚れ度が大きい方から順に赤(大)、橙(中)、緑(清浄)のような複数色で表示したり、LEDの点灯数によって表示したりされるので、ユーザはこの表示部106を確認して空気の汚れ度の状態を容易に知ることができる。
汚れセンサ100により検知された室内の汚れ度は駆動回路104を介して制御部102に入力され、記憶部108に設定された第1の閾値あるいは第2の閾値と比較され、比較結果に応じて静電霧化装置40,40Aの能力が制御される。
図36のフローチャートを参照しながらさらに詳述すると、ステップS51において空気調和機が運転中の場合には、ステップS52において、汚れセンサ100により室内の汚れ度が検知される。次のステップS53において、検知された室内空気の汚れ度が第1の閾値と比較され、第1の閾値より小さい場合には、室内空気は「清浄」と判定して、ステップS54において、静電霧化装置40,40Aが運転(連続運転)されるとともに、表示部106に「緑」が点灯する。
一方、ステップS53において、検知された室内空気の汚れ度が第1の閾値以上と判定されると、ステップS55に移行し、検知された室内空気の汚れ度が第1の閾値より大きい第2の閾値と比較される。第2の閾値より小さい場合には、室内空気の汚れ度は「中(普通)」と判定して、ステップS56において、静電霧化装置40,40Aが間欠運転されるとともに、表示部106に「橙」が点灯する。この場合、静電霧化装置40,40Aの能力は、例えば運転率50%に設定され、約1秒間の運転と約1秒間の停止を繰り返すことになり、静電霧化装置40,40Aが発生した静電ミストの効果(室内脱臭浄化)と静電霧化装置40,40Aの汚れ防止効果を両立させている。
一方、ステップS55において、検知された室内空気の汚れ度が第2の閾値以上と判定されると、ステップS57において静電霧化装置40,40Aの運転を停止し、空気がかなり汚れている場合には静電霧化装置40,40Aを保護するようにしている。
そして、ステップS54,ステップS56あるいはステップS57において、静電霧化装置40,40Aの連続運転、間欠運転あるいは停止を所定時間継続して能力を制御した後、ステップS52に戻り、汚れセンサ100により室内空気の汚れ度が再度検知される。
このように、2つの閾値を用いてきめ細かく静電霧化装置40,40Aの能力を制御することにより、静電霧化装置40,40Aが発生した静電ミストの効果(室内脱臭浄化)と静電霧化装置40,40Aの汚れ防止効果を両立させながら、帯電した各種の粒子状物質が対向電極62に付着することが防止でき、長期間にわたり安定的に静電霧化装置40,40Aを動作させることができる。
なお、ステップS57において静電霧化装置40,40Aの運転を停止した場合には、室内空気が汚れている状態が放置されることになる。そのままでは、自然換気などによる汚れの低下を待つことになり時間が掛かる可能性があるので、図23に示すような換気ファンユニット38などの換気機能を室内機本体2に設けたり、家屋に備え付けの換気扇が連動するような機能を備えたりして動作させることが望ましい。これにより、静電霧化装置40,40Aが運転される汚れ度まで室内空気の浄化を迅速に行なうことができる。同様に、ステップS56において静電霧化装置40,40Aの能力を制御して運転率を低下させたときも、換気ファンユニット38などによる換気が行われれば室内空気の浄化を促進することができる。
また、静電霧化装置40,40Aの能力を制御する方法として、上記説明では運転と停止の運転率の変更により行ったが、これに限るものではなく、静電霧化装置40,40Aの放電電圧の変更などによって行っても良い。
次に、汚れ検知手段として、室内空気の汚れを間接的に検知する活動量センサを使用し、例えば人体検知センサを活動量センサとして使用した場合について説明する。室内空気の汚れ度を間接的に検知する方法は直接的に検知する方法と比較して精度は低下するが、人体検知センサを人がいる位置を検知して冷暖房の温度と風向の制御に用いている場合には、そのまま活動量センサとして兼用することは極めて容易であり、コストの上昇を抑制して静電霧化装置40,40Aを長期間にわたり安定的に動作させるために使用することができる。
ここで、上述した「活動量」について説明する。
人の活動量とは人の動きの大きさの度合いを示す概念で、複数の活動量に分類され、例えば「安静」、「活動量大」、「活動量中」、「活動量小」に分類される。
「安静」とは、ソファで寛いでいる、テレビを視聴している、パソコンを操作している等、同じ場所に人が継続している状態が持続している場合のことで、安静状態が持続した場合、塵埃発生量は極めて少ない。活動量「大」とは、室内の清掃等広域で活動している場合のことで、塵埃発生量は極めて多い。活動量「中」とは、炊事等狭域で活動している場合のことで、塵埃はある程度発生するが、極めて多いとは言えない。活動量「小」とは、食事等同じ場所で多少活動している場合のことで、塵埃発生量は少ない。
本実施の形態では、人の活動量レベルを複数の領域を含むブロック毎に判定しているので、このブロックについてまず説明する。
各領域A〜Iは、室内機から見て左側、中央、右側にそれぞれ位置する次の三つのブロックに区分される。
第1ブロック:領域A,C,G
第2ブロック:領域D,E,H
第3ブロック:領域B,F,I
次に、人の活動量の分類方法について図37のフローチャートを参照しながら詳述する。
まずステップS61において、所定時間T1毎に各センサユニット26,28,30,32,34の反応頻度(出力パルス有り)を計測し、ステップS62において、計測回数が所定回数に達したかどうかを判定する。なお、所定時間T1は、上述した人の在否判定における所定の周期と同じであるが、ここでは、例えば2秒に設定され、計測回数の所定回数は、例えば15回に設定されるものと仮定し、15回の計測を総称して1ユニット計測(30秒間の計測)という。また、ここでいう「計測回数」とは、領域A〜Iのいずれかの領域における計測回数のことで、全ての領域A〜Iに対し同様の計測が行われる。
ステップS62において、計測回数が所定回数に達していないと判定されるとステップS61に戻り、計測回数が所定回数に達し1ユニット計測が終了したと判定されると、ステップS63において、4ユニット計測(2分間の計測)が終了したかどうかを判定する。ステップS63において、4ユニット計測が終了していない場合にはステップS61に戻り、4ユニット計測が終了している場合にはステップS64に移行する。
ステップS64においては、4ユニット計測(現在の1ユニット計測を含め過去4回のユニット計測)のセンサユニット26,28,30,32,34の合計反応頻度が所定数(例えば、5回)に達したかどうかを判定し、所定数に達していれば、ステップS65において、「活動量小」と判定された後の合計ユニット計測数(p、詳しくは後述)がクリアされた後、ステップS66に移行する。
ステップS66においては、全領域A〜Iにおけるセンサユニット26,28,30,32,34の合計反応頻度が所定数(例えば、40回)に達したかどうかを判定し、所定数に達している場合には、ステップS67において、「安静」と判定されたブロックを除き在判定された全てのブロックが「活動量大」と判定される一方、所定数に達していない場合には、ステップS68において、4ユニット計測のセンサユニット26,28,30,32,34の合計反応頻度が所定数に達した領域の属するブロックが「活動量中」と判定される。ステップS67あるいはステップS68における活動量判定後、ステップS69において、ユニット計測数(q)から1を減算してステップS61に戻る。すなわち、連続する4ユニット計測で各センサユニット26,28,30,32,34の合計反応頻度が所定数を超え「活動量大」あるいは「活動量中」と判定された領域の属するブロックは、さらに次回の1ユニット計測後、その時点における4ユニット計測の合計反応頻度が所定数を超えた場合には、引き続き「活動量大」あるいは「活動量中」と判定される。
また、ステップS64において、4ユニット計測でセンサユニット26,28,30,32,34の合計反応頻度が所定数未満と判定されると、ステップS70において、その領域の属するブロックが「安静」かどうかが判定され、「安静」でなければ、ステップ71において「活動量小」と判定される。次のステップS72において、「活動量小」と判定された後の合計ユニット計測数(p)がカウントされ、ステップS73において、「活動量小」と判定された後60ユニット計測(30分間の計測)が終了したかどうかを判定する。
ステップS73において、60ユニット計測が終了していないと判定されると、ステップS69に移行する一方、60ユニット計測が終了したと判定されると、その領域だけが当該領域の属するブロックにある場合に限り、ステップS74において「安静」と判定された後、ステップS69に移行する。すなわち、ステップS69に移行することで、次の1ユニット計測を含む過去4回のユニット計測で各センサユニット26,28,30,32,34の合計反応頻度に応じて、各ブロックは「活動量大」、「活動量中」、「活動量小」あるいは「安静」と新たに判定されることになる。
空気調和機の電源をONした後の活動量計測当初は、どの領域の活動量も不明であるが、このフローチャートによれば、計測開始から4ユニット計測が終了して初めて、各領域A〜Iの属するブロックにおいて「活動量大」、「活動量中」あるいは「活動量小」の判定が行われ、60ユニット計測が終了して初めて、「安静」の判定が行われることになる。したがって、計測開始後しばらくは「安静」のブロックは存在しないので、ステップS70においてNOと判定され、ステップS71において「活動量小」と判定される。その後、「活動量小」と継続して判定されたブロックは、60ユニット計測終了後、ステップS74において「安静」と判定され、その後4ユニット計測のセンサユニット26,28,30,32,34の合計反応頻度が所定数未満であれば、引き続き「安静」と判定される。
なお、ステップS65において、「活動量小」と判定された後の合計ユニット計測数(p)をクリアするのは、「安静」との判定は、「活動量小」の判定が起点となるからである。
要約すると、各センサユニット26,28,30,32,34は、人体検知手段としての機能に加え、活動量検知手段としても機能し、図37のフローチャートにより、各領域A〜Iの属するブロックは、例えば次のように判定される。
(1)安静
センサ反応頻度が5回未満/2分が30分以上継続した領域のみあるブロック
(2)活動量大
全領域A〜Iのセンサ反応頻度の総和が40回以上/2分で、少なくとも一つの領域でセンサ反応頻度が2分間で5回以上継続した場合において、「安静」と判定されたブロックを除く全てのブロック
(3)活動量中
全領域A〜Iのセンサ反応頻度の総和が40回未満/2分の場合に、センサ反応頻度が2分間で5回以上継続した領域の属するブロック
(4)活動量小
安静、活動量大、活動量中と判定されなかった領域の属するブロック
以上、複数の人体検知センサを使用して、各領域A〜Iにおける人の活動量の分類方法について説明したが、各領域A〜Iをこのように分類して、図36のフローチャートと略同様に静電霧化装置40,40Aを制御することもできる。
すなわち、図36のフローチャートにおけるステップS53において、領域A〜Iのいずれかの領域に活動量「大」及び「中」の領域があるかどうかを判定し、活動量「大」及び「中」の領域がない場合に、ステップS54に移行する一方、領域A〜Iのいずれかの領域に活動量「大」あるいは「中」の領域がある場合に、ステップS55において、領域A〜Iのいずれかの領域に活動量「大」の領域があるかどうかを判定し、活動量「大」の領域がない場合に、ステップS56に移行し、活動量「大」の領域がある場合に、ステップS57に移行すればよい。
また、本発明においては、室内機が設置された部屋を一つのブロックとして、一つの人体検知センサを使用して当該ブロックにいる人の活動量を分類し、図36のフローチャートと略同様に、静電霧化装置40,40Aを制御することもできる。
さらに詳述すると、一つの人体検知センサの反応頻度に第1及び第2の閾値を設定し、反応頻度に応じて室内機が設置された部屋の活動量を「大」「中」「安静(活動量小を含む)」に分類することができる。人体検知センサの反応頻度としては、所定時間内のセンサ反応頻度の総和であってもよく、所定時間内のセンサ反応頻度の継続時間であってもよい。
さらに、汚れセンサ及び活動量センサにそれぞれ汚れ指数Ng,Naを設定して、この汚れ指数Ng,Naに応じて静電霧化装置40,40Aを制御することもでき、汚れ指数Ng,Naは、例えば次のように設定される。
(i)汚れセンサの場合
汚れ度「大」: 汚れ指数Ng=2
汚れ度「中」: 汚れ指数Ng=1
汚れ度「清浄」:汚れ指数Ng=0
(ii)活動量センサの場合
活動量「大」: 汚れ指数Na=2
活動量「中」: 汚れ指数Na=1
活動量「小」あるいは「安静」:汚れ指数Na=0
次に、汚れ指数Ng,Naに応じた静電霧化装置40,40Aの制御方法につき、図38のフローチャートを参照しながら説明する。
まず、ステップS81において空気調和機が運転中の場合には、ステップS82において、汚れセンサ100により室内空気の汚れ度が検知され、検知された汚れ度に応じて汚れ指数Ngが設定される。次のステップS83において、活動量センサにより室内の活動量が検知され、検知された活動量に応じて汚れ指数Naが設定される。
ステップS84において、設定された二つの汚れ指数Ng,Naが合算されて汚れ指数N(N=Ng+Na)が求められ、ステップS85において、N=0かどうかを判定する。N=0と判定されると、汚れセンサにより検知された汚れ度は「清浄」で、かつ活動量センサにより検知された活動量は「小」あるいは「安静」なので、ステップS86において、静電霧化装置40,40Aが運転(連続運転)されるとともに、表示部106に「緑」が点灯する。
一方、ステップS85において、N=0ではないと判定されると、ステップS87に移行し、N=1かどうかを判定する。N=1と判定されると、汚れセンサにより検知された汚れ度は「清浄」でも、活動量センサにより検知された活動量は「中」か、あるいは、活動量センサにより検知された活動量は「小」あるいは「安静」でも、汚れセンサにより検知された汚れ度は「中」なので、室内空気は多少なりとも汚れていると判定し、ステップS88において、静電霧化装置40,40Aが間欠運転されるとともに、表示部106に「橙」が点灯する。この場合、静電霧化装置40,40Aの能力は、例えば運転率50%に設定され、約1秒間の運転と約1秒間の停止を繰り返すことになり、静電霧化装置40,40Aが発生した静電ミストの効果(室内脱臭浄化)と静電霧化装置40,40Aの汚れ防止効果を両立させている。
一方、ステップS87において、N=1ではないと判定されると、N≧2となるので、汚れセンサにより検知された汚れ度は「大」か、活動量センサにより検知された活動量は「大」か、あるいは、汚れセンサにより検知された汚れ度は「中」で、かつ活動量センサにより検知された活動量は「中」なので、室内空気はかなり汚れていると判定し、ステップS89において静電霧化装置40,40Aの運転を停止し、静電霧化装置40,40Aを保護するようにしている。
このように、汚れセンサ及び活動量センサにより静電霧化装置40,40Aの能力をきめ細かく制御することにより、静電霧化装置40,40Aが発生した静電ミストの効果(室内脱臭浄化)と静電霧化装置40,40Aの汚れ防止効果を両立させながら、帯電した各種の粒子状物質が対向電極62に付着することが防止でき、長期間にわたり安定的に静電霧化装置40,40Aを動作させることができる。
なお、ステップS86,ステップS88あるいはステップS89において、静電霧化装置40,40Aの連続運転、間欠運転あるいは停止を所定時間継続して能力制御した後、ステップS82に戻り、汚れセンサ100により室内空気の汚れ度が再度検知されるとともに、ステップS83において、活動量センサにより室内にいる人の活動量が再度検知される。
また、汚れセンサ100は煙草の煙等の汚れ、調理による油煙の汚れを直接検知するため精度が高いのに対し、活動量センサは人の活動量を検知して活動量が大きいほど室内の汚れ度は大きいと推定することで室内の汚れ度を間接的に検知しており、比較的精度が低い。また、日常生活でも、一時的な活動量の変化が散見されることがあることから、活動量センサの出力は参考にするが、制御にすぐ反映しない方が好ましい。
そこで、汚れセンサ100を主検知手段とし、活動量センサを汚れ検知のアシスト検知手段として、次のようにセンサに重み付けを行い、活動量センサが検知した活動量に比べ汚れセンサが検知した汚れ度をより静電霧化装置40,40Aの制御に反映することもできる。
(i)汚れセンサの場合
汚れ度「大」: 汚れ指数Ng=4
汚れ度「中」: 汚れ指数Ng=2
汚れ度「清浄」:汚れ指数Ng=0
(ii)活動量センサの場合
活動量「大」: 汚れ指数Na=2
活動量「中」: 汚れ指数Na=1
活動量「小」あるいは「安静」:汚れ指数Na=0
このようにセンサに重み付けした場合、図38のフローチャートのステップS85においてN=0あるいは1と判定されると、ステップS86に移行し、ステップS87においてN=2と判定されると、ステップS88に移行し、ステップS87においてN=2ではない(N≧3)と判定されると、ステップS89に移行して、汚れ指数Nに応じた静電霧化装置40,40Aの制御が行われる。
このように、精度の高い汚れセンサ100を主検知手段とし、活動量センサを汚れ検知のアシスト検知手段として重み付けを行った制御とすることで誤検知の可能性をより低減することが可能となり、静電霧化装置40,40Aが発生した静電ミストの効果(室内脱臭浄化)と静電霧化装置40,40Aの汚れ防止効果とをさらに両立させている。
なお、汚れセンサ100として、ガスセンサに代えて光学式ホコリセンサを用いると、室内の塵埃を直接検知できるので、活動量センサを設ける必要はない。
上記実施の形態において、室内空気の汚れ度に二つの閾値を設け、室内空気の汚れ度に応じて静電霧化装置40,40Aが連続運転、間欠運転あるいは停止を繰り返すように制御したが、室内空気の汚れ度に一つの閾値を設け、室内空気の汚れ度に応じて静電霧化装置40,40AをON/OFF制御することもできる。この場合、表示部106には室内空気の汚れ度が2色で表示される。また、三つ以上の閾値を設け、静電霧化装置40,40Aの間欠運転(運転率)をさらに細かく制御するようにしてもよく、この場合、表示部106には室内空気の汚れ度が4色以上で表示される。
このように閾値の数は任意に設定できるが、数が少ないほど静電霧化装置40,40Aによる空気清浄のきめ細かい制御は低下するが簡易な構成でコストの上昇を抑制することが可能となり、数が多いほど構成が複雑になるが静電霧化装置40,40Aによる空気清浄のきめ細かい制御が可能となる。
また、室内空気の汚れ度に応じて換気ファンユニット38に設けられた換気ファンの回転数制御を行い、汚れ度が大きい場合は換気ファンの回転数を増大すると、室内空気をより迅速に浄化することができるとともに、静電霧化装置40,40Aの運転率が増大し、静電ミストによる室内浄化作用も増大する。
以上、いくつかの構成を説明したように、汚れ検知手段が検知した室内空気の粒子状物質の多寡、すなわち汚れ度に応じて静電霧化装置40,40Aの能力を制御し、例えば汚れ度が小さい場合は静電霧化装置40,40Aを通常通り運転する一方、汚れ度が大きい場合は静電霧化装置40,40Aの能力を制限して運転するようにしたので、長期に渡り静電霧化装置40,40Aを正常運転することができ、静電ミストによる脱臭などの空気浄化機能を維持継続することができる。
(静電霧化装置の電極の自己浄化制御)
上述したように、室内空気が汚れていると、帯電した塵埃の一部が対向電極62に付着して対向電極62が汚れ、静電霧化装置40,40Aの機能が低下するので、空気調和機の運転が停止している時、室内ファン8及びバイパス送風ファン48を停止させた状態で、静電霧化装置40,40Aだけが所定時間運転されるように制御される。すなわち、空気調和機の運転が停止している時に静電霧化装置40,40Aの放電電極60と対向電極62とに所定の高電圧を印加する制御を行うものである。
このような制御を行うことで、静電霧化ユニット52で発生する静電ミストが室内機本体2の吹出口10にほとんど流出することなく、ユニットハウジング90(図33)に加えてケーシング56(図25)、又は隔壁68cと本体カバー(図示せず)との間に形成された収容部44e(図31)に充満し、放電電極60と対向電極62の周囲が静電ミストの雰囲気となる。これにより、放電電極60と特に対向電極62の汚れ成分を静電ミストによる親水性作用で浮かび上がらせて分解することにより、静電ミストを発生する放電電極60と対向電極62をきれいな状態に回復することで経時的な放電の悪化を防止することができる。すなわち、このような電極の自己浄化制御により静電霧化装置40,40Aの性能低下を防止することができる。
このような電極の自己浄化制御を行うのは、空気調和機の運転が停止している時、すなわち、空気調和機の運転停止直後から次回運転を開始するまでのうちいつでも可能である。
しかしながら、空気調和機の運転が停止している時に行う中でも、特に静電霧化装置を動作させながらの空気調和機の運転(送風を含む一連の空調運転)の停止直後に行うことが、静電霧化装置が動作していればそのまま電極の自己浄化制御として継続して動作することもできることから都合が良い。そして、この運転停止直後に行うことについても、毎回行っても良いし、選択的に行っても良い。そのうち、停止直後に毎回行う場合には、静電霧化装置を動作して電極の自己浄化制御を所定時間(例えば、1〜3分)行えば、電極60,62を常にきれいな状態に保持することができ、静電霧化装置40,40Aの性能低下を最小限に抑えることができる。
また、電極の自己浄化制御を運転停止直後に選択的に行う場合には、例えば空調運転(静電霧化装置運転)の積算時間や室内空気の汚れ度を考慮することで可能であり、静電霧化装置40,40Aの不要な動作を抑制した効率的な運転を行うことができる。以下、この選択的に行う制御を図39のフローチャートを参照しながら説明する。
まずステップS91において、空気調和機の運転が開始し、静電霧化装置40,40Aの運転が開始すると、ステップS92において、制御部102に設けられた運転時間積算手段により空気調和機の運転時間を積算して積算運転時間Thとし、次のステップS93において、汚れ検知手段により室内空気の汚れ度Dsを検知する。なお、積算運転時間Thは基本的には静電霧化装置40,40Aの運転の積算時間であるが、本発明の実施の形態では空気調和機の運転中は静電霧化装置40,40Aが常に動作しているとして、便宜上空気調和機の運転時間の積算として説明する。
ステップS94において、検知された汚れ度Dsを閾値D0(例えば、上述した第1の閾値)と比較し、汚れ度Dsが閾値D0より小さい場合には、ステップS93に戻る一方、汚れ度Dsが閾値D0以上の場合には、ステップS95において、制御部102に設けられた汚れ超過積算手段により汚れ超過積算時間TDsを算出する。
ステップS96において、空調運転の停止信号が制御部102に入力されたどうかを判定し、入力されていない場合には、ステップS92に戻る一方、入力された場合には、ステップS97において、空気調和機の積算運転時間Thを閾値T0(例えば、100時間)と比較し、積算運転時間Thが閾値T0以上の場合には、ステップS98において、積算運転時間Thをリセットした後、ステップS99において空気調和機の運転を停止し、室内ファン8を停止させ、前面吸込口2aを前面パネル4で閉止するとともに上下羽根12で吹出口10を閉止した状態で、静電霧化装置40,40Aを所定時間(例えば、3〜5分)運転した後、停止させる。なお、ここで前面吸込口2aと吹出口10とを閉止した状態としたのは、室内機本体2から静電ミストが流出せずに内部に充満しやすく、より効率的に自己浄化できるようにするものであり、これらを開放した状態とするより望ましいものである。
一方、ステップS97において、積算運転時間Thが閾値T0より短いと判定されると、ステップS100において、汚れ超過積算時間TDsを閾値TD0(例えば、50時間)と比較し、汚れ超過積算時間TDsが閾値TD0以上の場合には、ステップS101において、汚れ超過積算時間TDsをリセットした後、ステップS99に移行する。
ステップS100において、汚れ超過積算時間TDsが閾値TD0より短いと判定されると、ステップS102において、空気調和機の運転停止と同時に静電霧化装置40,40Aも停止させる。
すなわち、空気調和機の積算運転時間Thが短く、かつ室内空気が汚れた状態での汚れ超過積算時間TDsが短い場合には、空気調和機の運転停止直後に電極60,62の浄化を行わないことで、不要な浄化動作を抑制する一方、空気調和機の積算運転時間Thが長かったり、室内空気が汚れた状態での汚れ超過積算時間TDsが長かったりする場合には、空気調和機の運転停止直後に電極60,62の浄化を行うことで、静電霧化装置40,40Aの性能低下を防止している。
なお、図39のフローチャートにおいては、汚れ超過積算時間TDsを算出し、汚れ超過積算時間TDsが所定時間(閾値TD0)以上の場合に、空調運転停止直後に、静電霧化装置40,40Aを所定時間継続して運転した後、停止させるようにしたが、汚れ超過積算時間TDsを算出することなく、汚れ検知手段により検知した室内空気の汚れ度Dsが閾値D0以上の場合に、空調運転停止直後に、静電霧化装置40,40Aを所定時間継続して運転した後、停止させるようにしてもよい。静電霧化装置40,40Aをこのように制御すると、室内空気の汚れが一時的に大きくなったことに起因する想定外の電極60,62の汚れを浄化して性能低下を防止することができるとともに、室内空気の汚れ度Dsが小さい場合には、不要な動作をしなくて済む。
また、空気調和機の積算運転時間Thが長かったり、室内空気が汚れているときの汚れ超過積算時間TDsが長かったりした場合の静電霧化装置40,40Aの運転時間を、空気調和機の運転が停止する毎に静電霧化装置40,40Aを運転する場合の運転時間より長く設定したのは、前者の方が、電極60,62の汚れが大きいと予想されるからである。
さらに、空気調和機の運転停止直後に静電霧化装置40,40Aを所定時間運転して電極60,62の浄化を行うことを、運転時間積算手段による積算運転時間Thのみで判断するようにしても良く、このような制御を行うことで、空気がそれほど汚れていなくても長時間運転した場合の相応の汚れによる静電霧化装置40,40Aの性能低下を防止することができ、積算運転時間Thが短い場合には不要な動作をしなくて済む。
なお、空気調和機が運転中の静電霧化装置の動作は、先にも説明した室内空気の汚れ度や、温湿度条件によっては停止していることもあり、必ずしも空気調和機を停止する時に動作しているとは限らないので、その時にはあらためて静電霧化装置を動作させれば良い。室内空気の汚れ検知手段としては、上述した室内空気の汚れ度を直接検知する汚れセンサでもよく、室内空気の汚れ度を間接的に検知する活動量センサでもよい。
また、上述した電極60,62の自己浄化制御において、前面パネル4は固定式であってもよく、この場合、静電霧化装置40,40Aの所定時間の運転は上下羽根12で吹出口10を閉止した状態で行えばより効率的に浄化できる。
(熱交換器を含む本体内部の防かび・除菌制御)
空気調和機の暖房運転中は、本体2内部は乾燥しているが、冷房あるいは除湿運転中は、熱交換器6は濡れており、本体2内部の湿度が高く、かびや菌が発生しやすい。そこで、冷房あるいは除湿運転停止後、一旦冷凍サイクルを送風運転と除湿運転と暖房運転とのうちいずれか一つ以上に切り替え、乾燥運転として所定時間運転して本体内部を乾燥させた後、静電霧化装置40,40Aにより静電ミストを発生させることで、防かび・除菌を行う。
以下、この制御を図40のフローチャートを参照しながら説明する。
まずステップS111において、空調運転を開始すると、ステップS112において、空調運転が冷房あるいは除湿運転かどうかを判定する。冷房あるいは除湿運転の場合にはステップS113に移行する一方、冷房あるいは除湿運転でない場合にはステップS114に移行する。
ステップS113においては、空調運転の停止信号が制御部102に入力されたどうかを判定し、入力された場合にはステップS115において、室外機に設けられた四方弁を切り替えることにより冷凍サイクルを暖房運転に切り替えて熱交換器6を含む本体2内部の乾燥運転を行う一方、空調運転の停止信号が制御部102に入力されていない場合には、ステップS113に戻る。
ステップS115における本体2内部の乾燥運転が終了すると、ステップS116において室内ファン8を低速(例えば、約500rpm)で運転させ、前面吸込口2aを前面パネル4で閉止するとともに上下羽根12で吹出口10を閉止した状態、又は前面パネル4及び上下羽根12は後述する乾燥位置の状態で、静電霧化装置40,40Aが所定時間(例えば、約3分)運転されるように制御される。
このような制御を行うことで、室内機本体2の内部に静電ミストが撹拌されながら充満又は循環し、熱交換器6、室内ファン8等を含む本体2内部におけるかびや菌の発生を抑制することができる。特に、内部を乾燥してから静電ミストを充満させることで、静電ミストが水分により消滅してしまうことを防止して、少しでも長時間にわたって負の帯電を維持しながら隅々まで効果を行き渡らせることができる。
静電霧化装置40,40Aを所定時間運転した後、ステップS117において、静電霧化装置40,40Aを停止させる(室内機の完全停止)。
また、ステップS114においては、空調運転の停止信号が制御部102に入力されたどうかを判定し、入力された場合にはステップS117において、室内機を完全に停止させる一方、空調運転の停止信号が制御部102に入力されていない場合には、ステップS114に戻る。
次に、ステップS115において行う本体2内部の乾燥運転について図41のタイミングチャートを参照しながら説明する。
図41に示されるように、本体2内部の乾燥運転を行う場合、時間t1において、室外機に設けられた圧縮機及び室外ファンが停止して冷房あるいは除湿運転は停止する。また、時間t1までの運転モードやリモコンの設定風量に応じて回転速度が決定されていた室内ファン8は第1の速度(例えば、約900rpm)に設定され、1回目の送風運転を行う。このとき、室外機に設けられた膨張弁は、冷房あるいは除湿運転時の圧縮機周波数に対応して決定される目標吐出温度になるように開度制御が行われており(吐出温制御)、四方弁はOFFで冷房運転時の冷凍サイクルが維持されている。
また、前面パネル4及び上下羽根12は開状態から乾燥位置に移動するが、この乾燥位置について図42を参照しながら説明する。
図42に示される乾燥位置においては、前面パネル4は前面吸込口2aから僅かに離反する(例えば、A=20mm)一方、上下羽根12の後縁部は吹出口10の下縁部に当接するとともに、その前縁部は吹出口10の上縁部より僅かに離反している(例えば、B=10mm)。
したがって、本体2内部の乾燥運転時は、室内ファン8から吹出口10に向かって送風された空気は、室内に送風されることなく上下羽根12により前面吸込口2aに導かれ、吹出口10から送風された空気が直接吸込口に吸い込まれて室内機内を循環する所謂「ショートサーキット」状態となる。
図41のタイミングチャートに戻って、本体2内部の乾燥運転をさらに説明すると、時間t1から時間t2まで(例えば、約3分)は送風運転を行い、時間t2において、圧縮機は周波数を抑えた第1の運転周波数(例えば、約16Hz)で運転を再開するとともに、室外ファンも低速度(例えば、約150rpm)で運転を再開し、除湿(本格除湿)運転を行う。除湿運転中、膨張弁は最大パルス(例えば、約480パルス)に設定されて全開し、室内ファン8は第1の速度より低い第2の速度(例えば、約500rpm)で運転を行う。ちなみに本格除湿とは、室内熱交換器の一部を加温に使用するなど工夫して、通常の除湿運転では室内温度が僅かずつではあるが低下してしまう問題点を解決した除湿方法である。
所定時間(例えば、約55分)の除湿運転終了後、時間t3において、2回目の送風運転に入り、圧縮機及び室外ファンは停止するとともに、室内ファン8は第2の速度から第1の速度に変更される。なお、膨張弁のパルス数は最大パルスに引き続き維持されている。
時間t3から所定時間(例えば、約3分)経過後の時間t4において、四方弁を切り替えて暖房運転に入り、本体2内部を乾燥させて冷房あるいは除湿運転中に生じた水分を塵埃とともに除去する。暖房運転中は、圧縮機は第1の運転周波数より高い第2の運転周波数(例えば、約30Hz)に維持され、室外ファンは除湿運転時と同じ速度で運転される。また、膨張弁は最大パルスより少ない所定のパルス(例えば、約400パルス)に設定され、室内ファン8は、再び第2の速度に設定される。
所定時間(例えば、約30分)の暖房運転終了後、時間t5において、四方弁をOFFにして冷房運転時の冷凍サイクルに戻し、圧縮機及び室外ファンを停止するとともに、室内ファン8を第2の速度から第1の速度に変更して3回目の送風運転を行う。このとき、膨張弁のパルス数は前記所定のパルスより最大パルスに再設定される。
3回目の送風運転を所定時間(例えば、約3分)行った後、時間t6において、全ての運転を停止する。なお、時間t1から時間t6までの間、前面パネル4及び上下羽根12は、図42に示される乾燥位置に保持される。
ここで、本体2内部の乾燥運転に際し、暖房運転の前に除湿(本格除湿)運転あるいは送風運転の組み合わせ運転を行っているが、これは、暖房運転で本体2内部の乾燥運転を行うと、それ以前の運転で熱交換器6に付着していた結露水が急激に蒸発して室内空間に流出し、部屋の湿度が上昇してユーザに不快感をあたえる虞があるが、本格除湿を行うことで湿気を室内空間に流出させることなく熱交換器6の結露水の一部を回収しながら洗浄することができるので、ユーザに不快感を与えることなく本体2内部の乾燥運転に移行できるからである。また、本体2内部の乾燥運転中、除湿運転と暖房運転の前後に合計3回の送風運転を行っているが、これは圧縮機の吸入圧力と吐出圧力との圧力差が大きいと起動に失敗する可能性があり、吸入圧力と吐出圧力を均一化するためである(圧縮機の起動保護)が、送風運転でも時間は掛かるが熱交換器6を乾燥させることができ、圧縮機の起動保護の間にも乾燥の促進としている。
上述した本体内部の防かび・除菌制御の効果を検証するため、静電ミストの有無による室内機各部の生残菌数をJIS Z 2801に準拠したテスト方法で調べたところ、表8及び表9のような結果が得られた。表8は黄色ブドウ球菌に対する静電ミストの効果を示しており、表9は大腸菌に対する静電ミストの効果を示している。また、図43及び図44のグラフは表8及び表9にそれぞれ対応している。
なお、「アルミフィン」は熱交換器6を構成するフィンを、「台枠材」は本体2の枠体を、「CFF材」は室内ファン(クロスフローファン)8をそれぞれ意味している。また、生残菌数の単位における「cfu」は「集落形成単位(colony forming unit)」のことであり、「抗菌活性値」はJIS Z 2801の抗菌性試験方法で規定されており、無加工品の24時間培養後の菌数を抗菌加工品の24時間培養後の菌数で除した数の対数値で表され、抗菌活性値=2.0は99%の死滅率に相当し、抗菌活性値2.0以上(99%以上の死滅率)で効果があると定義されている。
表8及び表9あるいは図43及び図44のグラフから分かるように、静電ミストにより生残菌数が激減しており、静電ミストの防かび・除菌効果は明らかである。
なお、静電霧化運転は、通常は空調運転中にも行われているものであり、室内機の乾燥運転の送風運転、本格除湿運転及び暖房運転中にも運転していても良く、この場合にはショートサーキット状態で室内機の内部を循環することで、静電ミストは熱交換器の金属や水分、室内ファンなどに衝突して多くが消滅するとはいえ、その分より長時間にわたって静電ミストを室内機本体の内部に循環させて隅々まで到達させることで防かびと除菌のより大きな効果を得ることができる。
また、乾燥運転は図41で説明した方法に限るものではなく、運転時間を変更したり、送風運転と暖房運転だけの組み合わせにしたりするなど、種々の方法が可能である。
また、上述した本体内部の防かび・除菌制御において、前面パネル4は固定式であってもよく、この場合、静電霧化装置40,40Aの所定時間の運転は上下羽根12で吹出口10を閉止した状態で行われる。
(前面パネルの汚れ防止制御)
この制御は静電ミストの汚れ成分を親水性作用で浮かび上がらせて分解する機能による汚れ防止効果を利用したものであり、空気調和機の運転を停止している時に、室内ファン8を運転し、吹出口10から送風された空気が直接吸込口(前面吸込口2a、上面吸込口2b)に吸い込まれて室内機内を循環する「ショートサーキット」状態で、前面パネル4の表面(前面)を静電ミストを含んだ空気が通過するように前面パネル4及び上下羽根12を位置制御した上で、静電霧化装置40,40Aを所定時間(例えば、約3分)運転することにより行われる。
図45乃至図47は、前面パネル4の汚れ防止制御を行う場合の前面パネル4と上下羽根12との位置関係を示しており、いずれの場合も、上下羽根12を上向きにして吹出口10から送風された空気が直接吸込口(前面吸込口2a、上面吸込口2b)に吸い込まれて室内機内を循環する「ショートサーキット」状態となるように設定されている。本発明の実施の形態における前面パネル4の汚れ防止制御においては、前面パネル4及び上下羽根12は図45乃至図47のうちのいずれかの状態になるように位置制御される。
(i)図45の状態
前面パネル4:上部「開」、下部「閉」
上下羽根12:吹出口10の上部「開」、下部「ほぼ閉」、風向は前方上向き
(ii)図46の状態
前面パネル4:上部「開」、下部「わずかに開」(下縁部は上下羽根12の前縁部より後方に位置する)
上下羽根12:吹出口10の上部「開」、下部「ほぼ閉」、風向は前方上向き
(iii)図47の状態
前面パネル4:上部「開」、下部「開」(下縁部は上下羽根12の前縁部より前方に位置する)
上下羽根12:吹出口10の上部「開」、下部「ほぼ閉」、風向は前方上向き
前面パネル4の表面を流れる風量は、図45の状態>図46の状態>図47の状態となる。図45の状態は、吹出口10から前方上方に吹き出した空気はすべて前面パネル4の表面に沿って流れるので、前面パネル4の表面の汚れ防止作用が最も効率よく行われる。また、前面パネル4が片支持となり、停止位置等の制御が容易である。
図46の状態は、吹出口10から吹き出した空気の大部分は前面パネル4の表面に沿って流れるが、空気の一部は前面パネル4の裏面に沿って流れたり、前面吸込口2aより本体2内部に流入したりするので、図45の状態より前面パネル4の表面の汚れ防止作用は低下するが、前面パネル4の裏面の汚れ防止作用や本体2内部の浄化作用もある程度達成することができる。
さらに、図47の状態は、吹出口10から吹き出した空気の約半分は前面パネル4の表面に沿って流れるが、空気の残りの約半分は前面パネル4の裏面に沿って流れたり、前面吸込口2aより本体2内部に流入したりするので、図46の状態より前面パネル4の表面の汚れ防止作用はさらに低下するが、前面パネル4の裏面の汚れ防止作用や本体2内部の浄化作用が向上する。
なお、前面パネル4は固定式であってもよく、図48は固定式前面パネルを有する室内機の汚れ防止制御を示している。この場合、上下羽根12は、図45乃至図47と同様に設定され、吹出口10から吹き出した空気はすべて前面パネル4の表面に沿って流れることになる。
また、図45と図46の状態のように、前面パネル4の下縁部が上下羽根12の前縁部より後方に位置するように構成すれば、吹出口10から吹き出した空気がよりスムーズに前面パネル4の表面に沿って流れるショートサーキットの状態を作ることができる。
前面パネル4の汚れ防止効果を検証するため、32リットルの箱に煙草30本の煙を30分で注入して、前面パネル4の表面に図45の状態で静電ミストを流した場合と流さない場合の表面の変色状態を比較した。煙の量は、容積換算すると、8畳の部屋で15本/日の煙草を10年間吸った場合に相当する。
色差計(ミノルタ製CR−200)を使用して変色前(使用前)と変色後の色差(耐煙草汚染性)を測定したところ、次のような結果が得られた。
静電ミストあり:ΔE=22.87
静電ミストなし:ΔE=34.28
この結果は、前面パネル4の表面に静電ミストを流すことで、前面パネル4の汚れが防止されることを示している。すなわち、前面パネルのメンテナンスの煩わしさを低減することができる。
なお、上述した静電霧化装置40,40Aの運転制御、電極60,62の自己浄化制御、本体内部の防かび・除菌制御、及び前面パネル4の汚れ防止制御は組み合わせて行うことも勿論可能で、空気調和機の運転中に静電霧化装置40,40Aの運転制御を行い、空気調和機の停止後に、電極60,62の自己浄化制御、本体内部の防かび・除菌制御、及び/又は、前面パネル4の汚れ防止制御を行えばよい。
(肌ケア及び部屋ケア制御)
ここでは、これまで説明した人体検知装置(センサユニット26,28,30,32,34)を用いた風向制御と静電霧化装置40,40Aとを組み合わせて、静電ミストをより有効に活用する方法について説明する。先にも述べたように、静電ミストには臭気成分を除去する脱臭効果の他に、肌質改善効果を有する。この肌質改善効果というのは、静電ミストが居住者の肌に到達すれば、個人差はあるものの人の肌にうるおいをもたらすものである。
本実施の形態においては、静電ミストを人が在室しているときに人の肌質改善効果の発揮を主な目的として発生させる制御を肌ケアモードとし、静電ミストを人が在室していない、すなわち不在のときに室内の脱臭効果の発揮を目的に発生させる制御を部屋ケアモードとする。なお、肌ケアモードで発生させた静電ミストが室内の臭気成分と反応した場合には脱臭効果を発揮することになる。
本実施の形態における空気調和機は、人体検知装置(センサユニット26,28,30,32,34)として人の在否を検知する人体検知センサと、静電ミストを発生する静電霧化装置40,40Aとを有する室内機を備え、その制御は、人の在室時に行われる肌ケアモードと人の不在時に行われる部屋ケアモードの二つのモードが設けられている。すなわち、人体検知センサの検知範囲において所定の領域に人がいると判定された場合には、肌ケアモードとしてその所定の領域の方向に風向制御して、検知した人又はその所定の領域に静電ミストを到達させるようにし、人体検知センサの検知範囲内に人がいないと判定された場合には、部屋ケアモードとして上方又は遠方の領域に静電ミストを到達させるようにする。なお、先に説明した風向制御は、暖房時及び冷房時の室内の温度や室内にいる人の体に感じる温度に合わせて制御するものであったが、静電ミストは冷暖房運転に合わせて発生してもよいし、冷凍サイクルを停止した送風運転に合わせて発生してもよい。
このような構成によって、肌ケアモードにおいては静電ミストにより人の肌にうるおいをもたらすことが可能になる。また、部屋ケアモードにおいては、人が不在なので吹き出し気流を人に当てないようにするなどの配慮が必要なく、上方の天井や部屋の周囲全体にわたって、壁及びカーテンなどに付着した臭気成分を脱臭したり、除菌したりすることを効率的かつ効果的に行うことができ、快適な室内環境を実現することが可能となる。
ここからは、人体検知センサによって人が存在する方向や領域を詳細に検知して、きめ細かく制御する方法について説明する。
人の在室時に行われる肌ケアモードにおいては、各領域A〜Iにおける空調設定に応じて、室内ファン8の回転数制御及び上下羽根12と左右羽根13の風向制御を上述した風向制御と同様、暖房時は人がいると判定された領域における人の足元手前に風向きを制御するとともに、冷房時は人がいると判定された領域の上方に吹き出し空気(冷風)を到達させるように風向きを制御する。同時に、静電霧化装置40,40Aを作動させて、温風あるいは冷風とともに静電霧化装置40,40Aが発生した静電ミストを居住者に到達させ肌ケアを行うようにしている。
また、肌ケアモードにおいては、人がいると判定された領域に風向制御するのではなく、人がいる頻度が高い領域(領域特性Iの領域)に静電ミストが到達するように室内ファン8の回転数制御及び上下羽根12と左右羽根13の風向制御を行うこともできる。
一方、人の不在時に行われる部屋ケアモードにおいては、まず壁面やカーテンあるいは床面や天井の付着臭を除去するために、室内ファン8及び静電霧化装置40,40Aを作動させ、図16及び図19に示されるように冷房時に行われる天井気流で領域A,B,C,F,G,H,Iの順で静電ミストが当該領域に所定の時間到達するように上下羽根12及び左右羽根13を制御する。
領域A,B,C,F,G,H,Iは、分割した9領域のうち外側に位置する領域で室内機からは遠方であり、これらの領域に壁やカーテンが存在していると想定されるからである。また、上方に吹き出す天井気流を採用することで、煙草等の臭いが付着していることが予想される天井にも静電ミストを到達させることができるとともに、天井気流により天井に沿って流れる静電ミストは壁面に衝突して下方に流れるので、床面の脱臭や除菌も行うことができる。
ここで、領域A,Bは室内機の設置面(壁面)の近傍に位置しているため、天井気流ではこの設置面の脱臭・除菌を十分行えない可能性がある。そこで、図19の風向制御に代えて、図49に示されるように上下羽根12及び左右羽根13の角度を設定して風向制御を行うこともできる。
J1: 0°〜25°
J2:25°〜50°
J3:50°〜90°
K1:−5°〜5°
K2: 0°〜15°
K3: 0°〜60°
K4: 5°〜20°
K5:15°〜45°
次に、上述した領域特性I,II,IIIを考慮して室内ファン8と上下羽根12及び左右羽根13の制御を行う。すなわち、領域特性Iの領域は人がいる頻度が高い領域であり、人がいる頻度は領域特性I→II→IIIの順で低下する。そこで、人がいる頻度が高い領域から順に室内ファン8と上下羽根12及び左右羽根13の制御を行って静電ミストを所定の時間領域特性I〜IIIの領域に順次到達させる。また、人がいる頻度が高い領域は、臭いが付着している可能性が高いため、静電ミストを到達させる所定の時間を領域特性III→II→Iの順で増加させるようにしてもよい。このように風向制御を行うことにより、臭いが付着していても除去することができる。
逆に、人がいる頻度が高い領域は、人の在室時に行われる肌ケアモードにおいて、静電ミストが十分供給されていると考えることもできるので、人がいる頻度が低い領域から順に室内ファン8と上下羽根12及び左右羽根13の制御を行って静電ミストを所定の時間領域特性I〜IIIの領域に順次到達させるようにしてもよい。また、人がいる頻度が低い領域は、肌ケアモードにおいて臭いが十分除去されていないと考えることもできるので、静電ミストを到達させる所定の時間を領域特性I→II→IIIの順で増加させることもできる。このように風向制御を行うことにより、充分除去されずに残っていた臭いも除去することができる。
あるいは、肌ケアモードにおいて人がいると判定された時間を積算する手段を設け、この積算手段で積算した時間に応じて静電ミストを到達させる時間を変更するようにしてもよい。すなわち、積算時間が長いほど、臭いが残っていると考えられるので、部屋ケアモードにおいて静電ミストを到達させる所定の時間を長くすることで、脱臭効果あるいは除菌効果をさらに向上させることができる。
さらに、図16の例では、空調時の室内ファン8の最大設定回転数は1200rpmとなっているが、人の不在時には騒音等を考慮する必要が全くないので、室内ファン8の回転数を風向変更手段(上下羽根12及び左右羽根13)の空気抵抗を加味して図50のように設定し、静電ミストの到達性を向上させることもできる。
L1:1200rpm
L2:1300rpm
L3:1400rpm
このとき、さらに換気ファンユニット38を作動させ、室内空気を室外に放出すると、室内空気の浄化が促進される。
なお、肌ケア及び部屋ケア制御の途中で第1乃至第5のセンサ26,28,30,32,34のいずれかにより人の入室を検知した場合には、検知した領域における空調設定に応じて、室内ファン8の回転数制御及び上下羽根12と左右羽根13の風向制御を行う上述した「在室時制御」に復帰する。
また、人が不在になるのは、空気調和機の運転中で一時的な場合と、空気調和機を停止して退出する場合などが考えられる。運転中に一時的に不在になる場合は、不在時間が長引くのに応じて冷暖房運転はそのまま部屋ケアモードを開始するようにしてもよいし、後述する省エネ運転として部屋ケアモードを行うようにしてもよい。退出により不在になる場合は、送風運転で所定時間、部屋ケアモードを行うようにしてもよい。
(不在検知省エネ制御及び切り忘れ防止制御)
室内機にはタイマーが設けられており、このタイマーを使用して省電力運転として不在検知省エネ制御及び切り忘れ防止制御が行われる。この不在検知省エネ制御及び切り忘れ防止制御を部屋ケアモードとして行う方法について以下説明する。
図51は、人が室内に不在時に室内ファン8の風量(回転数)と室外機に設けられた圧縮機の能力を制御することにより省電力運転を達成する例を示している。
すなわち、室内ファン8の風量を増大すると熱交換器6の熱交換効率が向上し、圧縮機の周波数が同じ場合には冷房あるいは暖房能力が増大するので、室内温度を同じ設定温度に保持するためには、圧縮機の周波数を低減することが可能となり、必要な消費電力は減少する。また、不在時に室内ファン8の風量を増大しても気流が強すぎることによる不快感や、室内ファン8の騒音増大による快適性の問題が生じることはない。そして、このとき同時に静電ミストを発生させて吹き出すことにより、部屋の隅々にまで静電ミストを行き渡らせることができ、部屋ケアモードとして脱臭と殺菌を行うことができる。
図51(a)に示されるように、第1乃至第5のセンサ26,28,30,32,34により全ての領域A〜Iに人がいないことが検知(t0)されると、タイマーがカウントを開始し、タイマーによるカウント開始後、時間t1(例えば、10分)において人の不在が確認されると、図51(b)に示されるように、室内ファン8の風量を増大させるとともに、図51(c)に示されるように、圧縮機の周波数を段階的に時間t2(例えば、カウント開始後30分)まで減少させる。時間t1経過後は室内ファン8の風量は一定(限界値)に保持され、時間t2経過後は圧縮機の周波数は一定(限界値)に保持されるが、時間t2、時間t3(例えば、カウント開始後1時間)、時間t4(例えば、カウント開始後2時間)、時間t5(例えば、カウント開始後4時間)において人の不在が継続して確認されると、時間t5において空気調和機の運転を停止して、空気調和機の切り忘れを防止する。
なお、時間t1から時間t5までの間に人の存在が検知されると、時間t1以前の設定風量及び設定周波数に復帰させる。
次に別の省電力運転として、経過時間に応じて室内の設定温度を目標温度にまで変更する方法について、表10及び図52を参照しながら、まず暖房時の制御について説明する。
図52は温度シフトの一例を示しており、ここでは設定温度Tsetを28℃とし、目標温度(限界値)を20℃とした場合について説明する。なお、ΔTは設定温度Tsetと目標温度との差温である。ちなみに、目標温度は、人が不在のときに省エネを目標として暖房能力を低下させるときの限界値としている。
第1乃至第5のセンサ26,28,30,32,34により全ての領域A〜Iに人がいないことが検知されると、タイマーがカウントを開始し、タイマーによるカウント開始後、時間t1(例えば、10分)において人の不在が確認されると、2℃(1/4ΔT)だけ設定温度Tsetを自動的に低減する。さらに、時間t2(例えば、カウント開始後30分)において人の不在が確認されると、2℃(1/4ΔT)だけ設定温度Tsetを自動的にさらに低減する。以下、同様に時間t3(例えば、カウント開始後1時間)及び時間t4(例えば、カウント開始後2時間)において人の不在が確認されると、それぞれ2℃(1/4ΔT)だけ設定温度Tsetを自動的に低減する。このように設定温度Tsetを自動的に低減することにともない、暖房能力を低減するのは、圧縮機の周波数を低下させればよい。例えば、図51(c)のt2までに行う低下を、t5にかけて順次低下させればよい。
時間t4においては、設定温度Tsetより合計8℃低減されて目標温度に等しい20℃になっているので、時間t5(例えば、カウント開始後4時間)までは設定温度Tsetを目標温度のまま維持するが、時間t5においても依然として人の不在が確認されると、空気調和機の運転を停止して、空気調和機の切り忘れを防止する。このようにして、不在検知による省エネ制御を行い、無駄な暖房運転を防いで消費電力を低減することができる。そして、このとき風量を増大させると同時に静電ミストを発生させて吹き出すことにより、部屋の隅々にまで静電ミストを行き渡らせることができ、部屋ケアモードとして脱臭と殺菌を行うことができる。
なお、時間t1から時間t5までの間に人の存在が検知されると、時間t1以前の設定温度Tsetに復帰させる。
また、温度シフト幅(低減温度)は設定温度Tsetと目標温度との差温ΔTに応じて表10のように設定され、差温ΔTが小さいほど温度シフト幅も小さい。また、設定温度Tsetが目標温度より低い場合は、現状温度に維持されるが、時間t5において人の不在が確認されると、空気調和機の運転を停止するのは図52の例と同じである。
次に、表11及び図53を参照しながら、冷房時の制御について説明する。
図53は温度シフトの一例を示しており、ここでは設定温度Tsetを20℃とし、目標温度(限界値)を28℃とした場合について説明する。なお、ΔTは設定温度Tsetと目標温度との差温である。
第1乃至第5のセンサ26,28,30,32,34により全ての領域A〜Iに人がいないことが検知されると、タイマーがカウントを開始し、タイマーによるカウント開始後、時間t1(例えば、10分)において人の不在が確認されると、2℃(1/4ΔT)だけ設定温度Tsetを自動的に増大する。さらに、時間t2(例えば、カウント開始後30分)において人の不在が確認されると、2℃(1/4ΔT)だけ設定温度Tsetを自動的にさらに増大する。以下、同様に時間t3(例えば、カウント開始後1時間)及び時間t4(例えば、カウント開始後2時間)において人の不在が確認されると、それぞれ2℃(1/4ΔT)だけ設定温度Tsetを自動的に増大する。
時間t4においては、設定温度Tsetより合計8℃増大されて目標温度に等しい28℃になっているので、時間t5(例えば、カウント開始後4時間)までは設定温度Tsetを目標温度のまま維持するが、時間t5においても依然として人の不在が確認されると、空気調和機の運転を停止して、空気調和機の切り忘れを防止する。このようにして、不在検知による省エネ制御を行い、無駄な冷房運転を防いで消費電力を低減することができる。そして、このとき風量を増大させると同時に静電ミストを発生させて吹き出すことにより、部屋の隅々にまで静電ミストを行き渡らせることができ、部屋ケアモードとして脱臭と殺菌を行うことができる。
なお、時間t1から時間t5までの間に人の存在が検知されると、時間t1以前の設定温度Tsetに復帰させる。
また、温度シフト幅(増大温度)は設定温度Tsetと目標温度との差温ΔTに応じて表11のように設定され、差温ΔTが小さいほど温度シフト幅も小さい。また、設定温度Tsetが目標温度より高い場合は、現状温度に維持されるが、時間t5において人の不在が確認されると、空気調和機の運転を停止するのは図53の例と同じである。
また、上述した図51乃至図53の例はいずれも、通常運転中、所定時間人がいない場合には、通常運転時より消費電力が少ない省電力運転を行うものであり、その後さらに所定時間人がいない場合には、空気調和機の運転を停止して省エネを達成している(「通常運転」とは、「使用者が指示した運転」)。
さらに、不在が長時間継続しているにもかかわらず、温度変化を惹起するおそれのあるカーテン等の人以外の外乱を人体検知センサが誤検知した場合、不在(無人)状態で通常運転をいつまでも継続することも考えられるので、時間t5より長い所定時間t6(例えば、24時間)経過すると運転を停止することで確実に切り忘れを防止することができる。また、時間t5あるいは時間t5より長い所定時間t6経過後の運転停止直前には本体やリモコンに音声やLEDランプ等で聴覚的あるいは視覚的に報知したり、画面に文字を表示したりするのが好ましい。さらに、時間t5あるいは時間t5より長い所定時間t6経過後の自動運転停止を行うか否かを選択できる自動停止選択手段をリモコン等に設けると使い勝手が向上する。