以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるポリカーボネート共重合体は、芳香族ジオール類とホスゲン等の共重合分子中でカーボネート部位を形成する化合物(以下、カーボネート形成化合物と称する)を縮重合することにより製造されるものであって、共重合体を形成する芳香族ジオール構造単位として下記一般式(1)で表される少なくとも2種の構造単位を含んでいる。
又は単結合を示し、R1 及びR2 は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は、ハロゲン化アルキル基を示し、Zは4〜20の置換又は非置換の炭素環を示し、Y1 ないしY8 は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は、ハロゲン化アルキル基を示す。)
共重合体中の芳香族ジオール構造単位のうち最も多い構造単位(構造単位Bと定義する)は、芳香族ジオール構造単位中50重量%以上90重量%以下の範囲で含まれている。また、構造単位B以外の構造単位であって、一般式(1)で表されるもの(構造単位Aと定義する)は芳香族ジオール構造単位中10重量%以上50重量%以下の範囲で含まれている。そして、構造単位A同志のカーボネート結合に由来する13C−NMRのピーク強度(ψ)の、構造単位Aと構造単位Bとのカーボネート結合に由来する13C−NMRのピーク強度(Φ)に対する比(ψ/Φ)が1.0以下であることが一つの特徴である。13C−NMRの測定に用いられる溶媒としては、ポリカーボネート共重合体が溶解し、上記の各カーボネート結合に由来するピークが分離可能であれば特に制限はないが、好ましくは重テトラヒドロフランが用いられる。
芳香族ジオール構造単位が2種であり、いずれも50重量%含まれている場合は、構造単位Aと構造単位Bが交換可能となるが、いずれの構造単位を構造単位Aとした場合でも上記の13C−NMRのピーク強度に関する条件は満足する。また、芳香族ジオール構造単位が3種以上の場合は、構造単位Aが複数となる場合があるが、この場合、いずれの構造単位Aについても上記の13C−NMRのピーク強度に関する条件は満足する。構造単位A及び構造単位Bとしては、好ましくは下記一般式(2)で表されるものである。
(一般式(2)中、Xは酸素原子、炭素数5〜10のシクロアルキリデン基、又は、−CR1 R2 −であり、R1 及びR2 は、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、又は、フェニル基であり、Y1 ないしY8 は、水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、又は、フェニル基である。)
構造単位A及び構造単位Bとして更に好ましいものえお具体的に示すと、例えば以下に示す[1−1]〜[1−12]等の構造単位が挙げられる。本発明のポリカーボネート共重合体は、特に[1−1]、[1−2]、[1−3]、[1−4]、[1−5]から選ばれる2種以上の構造単位を有するものが好ましく、更には[1−1]〜[1−5]から選ばれる構造単位を2種以上有するものが好ましい。特に好ましい構造単位は、[1−1]、[1−2]及び[1−4] 、[1−5]である。
共重合体の芳香族ジオール構造単位中、構造単位Aは20重量%以上50重量%以下が好ましく、構造単位Bは50重量%以上80重量%以下が好ましい。構造単位Aが10重量%未満では機械特性、電気特性への効果は不十分であり、構造単位Bが50重量%未満では目標とする特定シーケンスを有する共重合体は得られにくく、その結果、安定した電気特性は得られ難く好ましくない。
また、ポリカーボネート共重合体において、構造単位A同志のカーボネート結合に由来する13C−NMRのピーク強度(ψ)の、構造単位Aと構造単位Bとのカーボネート結合に由来する13C−NMRのピーク強度(Φ)に対する比(ψ/Φ)が1.0を越えると、電子写真感光体に用いた場合に、電気特性特に感度(VL)及び残留電位(Vr)に問題が生じることがある。
また、本発明のポリカーボネート重合体は、好ましくは粘度平均分子量が5,000〜100,000以下であるが、さらに好ましくは10,000〜100,000以下であり、特に20,000〜50,000以下が好ましい。粘度平均分子量が5,000未満であると樹脂の機械的強度が著しく低下し、成型材料として実用に耐えない。また50,000以上であると射出成型時の流動性が高すぎて成型困難となることがあり、100,000以上であると、キャストフィルムを適当な膜厚に塗布して作製することが困難となることがある。
本発明のポリカーボネート共重合体は、実質的に特性を変えない範囲で、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリケトン、ポリビニル重合体、ポリシロキサン等の他の構造単位を導入させても良い。他の構造単位を導入させる場合は、上記一般式(1)で表されるポリカーボネート構造単位が全構造単位の70%以上であることが好ましく、80%以上であることが更に好ましい。他の構造単位としては、例えば下記[2−1] 〜[2−4] で表される構造単位が挙げられる。
本発明のポリカーボネートの原料として使用される芳香族ジオール類は、分子内に2つのフェノール性水酸基を有する化合物であって、カーボネート形成化合物と縮重合することにより上述の構造単位を形成しうるものであり、具体的には、下記一般式(3)で表されるものである。
又は単結合を示し、R1 及びR2 は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は、ハロゲン化アルキル基を示し、Zは4〜20の置換又は非置換の炭素環を示し、Y1 ないしY8 は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は、ハロゲン化アルキル基を示す。)
本発明においては一般式(3)で表される芳香族ジオール類の2種以上が併用される。一般式(3)において、Xは好ましくは酸素原子、炭素数5〜10のシクロアルキリデン基、又は、−CR1 R2 −である。R1 及びR2 は、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、又は、フェニル基であり、更に好ましくは、水素原子又はメチル基である。Y1 ないしY8 は、好ましくは水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、又は、フェニル基であり、更に好ましくはメチル基又はフェニル基である。
特に好適な芳香族ジオール類には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、及び1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが含まれる。
本発明のポリカーボネートの原料として使用されるカーボネート形成性化合物としては、芳香族ジオール類と反応してカーボネート結合を生じるものであれば特に制限はなく、ホスゲン、ジメチルカーボネート等各種のものが採用できる。好ましくは、下記一般式(4)で表される化合物であり、更に好ましくはホスゲンである。
(一般式(4)中、R3 、R4 は各々独立して塩素原子、炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。)
また本発明においては、任意の分岐剤もポリカーボネートの原料とすることができる。使用される分岐剤は、3個またはそれ以上の官能基を有する種々の化合物から選ぶことができる。適当な分岐剤としては、3個またはそれ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物が挙げられ、例えば、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン及び1,4−ビス(4,4′−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼンが挙げられる。また、3個の官能基を有する化合物である、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌルも使用しうる。中でも、3個またはそれ以上のフェノール性ヒドロキシ基を持つものが好適である。分岐剤の使用量は、目的とする分岐度によっても異なるが、通常、芳香族ジオール類に対し、0.05〜2モル%の量で使用される。
本発明において、分子量調節剤として使用されるモノフェノール類には種々のフェノール類、例えば、通常のフェノールのほか、p−t−ブチルフェノール及びp−クレゾールのような炭素数1〜20のアルキルフェノール、並びにp−クロロフェノール及び2,4,6−トリブロモフェノールのようなハロゲン化フェノールが含まれる。なかでもフェノール、及びp−イソプロピルフェノール、p−ドデシルフェノール、p−t−ブチルフェノール等のパラ位に炭素数1〜20のアルキル基が置換したフェノール類が、更に好適である。モノフェノール類の使用量は、目的とする縮合体の分子量によっても異なるが、通常、原料芳香族ジオール類に対して、0.5〜10重量%の量で使用される。
本発明のポリカーボネート共重合体の製造方法は、通常、1)カーボネート形成化合物としてのホスゲンと芳香族ジオール類とを界面重縮合条件下もしくは溶液重合条件下で反応させる方法、または、2)ホスゲンとフェノールを反応させる等の方法によりジフェニルカーボネートを製造し、これと芳香族ジオール類とを溶融縮合条件下で反応させる方法で製造することができるが、特に、上記1)の方法、就中、芳香族ジオール類の金属塩水溶液とホスゲンとを有機溶媒の存在下、乳化状態で反応させてカーボネートオリゴマーを得る方法が代表的であり好ましい。
以下、上記1)の方法について詳細に説明する。
上記方法において、芳香族ジオール類は水及び水溶性の金属水酸化物と共に水相を形成する。金属水酸化物としては、通常水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が用いられる。水相中で芳香族ジオール類は、上記水酸化物と反応して水溶性の金属塩を生じる。この場合、水相中の芳香族ジオール類とアルカリ金属水酸化物のモル比は、1:1.8〜1:3.5が好ましく、更に1:2.0〜1:3.2が好ましい。水相には、ハイドロサルファイト等の還元剤を少量添加してもよい。
使用する有機溶媒としては、反応温度及び反応圧力において、ホスゲン及びカーボネートオリゴマー、ポリカーボネート等の反応生成物は溶解するが、水を溶解しない(水と溶液をつくらないという意味で)任意の不活性有機溶媒を含む。
代表的な不活性有機溶媒には、ヘキサン及びn−ヘプタンのような脂肪族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン及び1,2−ジクロロエチレンのような塩素化脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン及びキシレンのような芳香族炭化水素、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン及びクロロトルエンのような塩素化芳香族炭化水素、その他ニトロベンゼン及びアセトフェノンのような置換芳香族炭化水素が含まれる。
中でも、塩素化された炭化水素、例えば塩化メチレンまたはクロロベンゼンが好適に使用される。これらの不活性有機溶媒は、単独であるいは他の溶媒との混合物として使用することができる。
ホスゲンは、液状またはガス状で使用される。温度管理の観点からはホスゲンは液状であることが好ましく、反応温度において液状を保ち得る反応圧力が選択される。ホスゲンの好ましい使用量は、反応条件、特に反応温度及び水相中の芳香族ジオール金属塩の濃度によっても影響は受けるが、芳香族ジオール類の1モルに対するホスゲンのモル数で、通常1〜2、好ましくは1〜1.5である。この比が大きすぎるとホスゲンの損失が多くなり、かつ、停止剤同志の縮合物の生成が認められるようになり好ましくない。一方、小さすぎると、CO基が不足し、適切な分子量伸長が行われなくなり好ましくない。
本発明においては二相界面縮合法を採用した場合、ホスゲンとの接触に先立って有機相と水相とを接触させ、乳濁液を形成させるのが特に好ましい。乳濁液を形成させるためには、通常の撹拌翼を有する撹拌機の外、ホモジナイザ、ホモミキサ、コロイドミル、フロージェットミキサ、超音波乳化機等の動的ミキサや、静的ミキサ等の混合機を使用するのが好ましい。乳濁液は通常、0.01から10μmの液滴径を有し、乳化安定性を有する。
乳化の状態は通常ウェーバー数或いはP/q(単位容積当たりの付加動力値)で表現できる。ウェーバー数としては、好ましくは10,000以上、さらに好ましくは20,000以上、最も好ましくは35,000以上である。また、上限としては1,000,000以下程度で十分である。また、P/qとしては、好ましくは200kg・m/リットル以上、さらに好ましくは500kg・m/リットル以上、最も好ましくは1,000kg・m/リットル以上である。
乳濁液とホスゲンとの接触は、前記乳化条件よりも弱い混合条件下で行うのがホスゲンの有機相への溶解を抑制する意味で好ましく、ウェーバー数として10,000未満、好ましくは5,000未満、さらに好ましくは2,000未満である。また、P/qとしては、200kg・m/リットル未満、好ましくは100kg・m/リットル未満、さらに好ましくは50kg・m/リットル未満である。ホスゲンとの接触は、管型反応器や槽型反応器にホスゲンを導入することによって達成することができる。
ポリカーボネート共重合体の分子量は、モノフェノール等の分子量調節剤の添加量で決定される。ただし、分子量制御性の点からその添加時期はカーボネート形成性化合物の消費が終了した直後から、分子量伸長が始まる前での間が好ましい。カーボネート形成性化合物の共存下でモノフェノール類を添加するとモノフェノール類同士の縮合物(炭酸ジフェニル類)が多く生成し、目標とする分子量のポリカーボネート樹脂が得られにくく、電子写真感光体のバインダー樹脂として使用する場合電気特性が悪化し好ましくない。また、一方、モノフェノール類の添加を極端に遅らせた場合、分子量制御が困難となるばかりか分子量分布の低分子側に特異な肩を持った製品となり、成型時にはな垂れを生じたりするような弊害が多くあまり好ましくない。
本発明のポリカーボネート共重合体の製造方法として、好ましい実施態様は、芳香族ジオール化合物、カーボネート形成化合物、フェノール類から、一旦粘度平均分子量500〜10,000のカーボネートオリゴマーを製造し、これをさらに重縮合して、ポリカーボネート共重合体を得るものである。
ポリカーボネート共重合体中に、少なくとも2種の芳香族ジオール構造単位を導入するには、1)として、カーボネートオリゴマーを製造する段階で2種以上の芳香族ジオールを原料として用いる方法、即ち、上記一般式(3)で表される芳香族ジオール類から選ばれる少なくとも2種の芳香族ジオール類、カーボネート形成化合物、及びモノフェノール類を反応させて得られるカーボネートオリゴマーであって、OH基濃度に対する末端クロロホーメート基濃度の割合が1.1〜10であるカーボネートオリゴマーを、15℃以下の温度条件でアルカリ存在下、縮重合を行うことによって、ポリカーボネート共重合体を製造する方法がある。
また、2)として、異なる芳香族ジオールを用いて2種以上のカーボネートオリゴマーを製造し、これらのカーボネートオリゴマーを重縮合させる方法、即ち、a)上記一般式(3)で表される芳香族ジオール類から選ばれる少なくとも1種の芳香族ジオール類、カーボネート形成化合物、及びモノフェノール類を反応させて得られるカーボネートオリゴマーであって、OH基濃度に対する末端クロロホーメート基濃度の割合が1.1〜10であるカーボネートオリゴマーと、b)a)で使用の芳香族ジオール類と異なり、かつ、上記一般式(3)で表される芳香族ジオール類から選ばれる少なくとも1種の芳香族ジオール類、カーボネート形成化合物、及びモノフェノール類を反応させて得られるカーボネートオリゴマーであって、OH基濃度に対する末端クロロホーメート基濃度の割合が1.1〜10であるカーボネートオリゴマー、の2種のオリゴマーを、15℃以下の温度条件でアルカリ存在下、縮重合を行うことによってポリカーボネート共重合体を製造する方法とがある。
本発明のポリカーボネート共重合体、即ち前記ψ/Φが1.0以下である該ポリカーボネート共重合体を安定的に得るには、上述1)のカーバネートオリゴマーを得る段階で2種以上の芳香族ジオールを原料として用いる方法がより好ましい。
オリゴマー化反応においては縮合触媒の存在下で行うことができる。添加は、ホスゲンを消費した後に行う方がよく、縮合触媒としては、二相界面縮合法に使用されている多くの縮重合触媒の中から、任意に選択することができる。中でも、トリアルキルアミン、N−エチルピロリドン、N−エチルピペリジン、N−エチルモルホリン、N−イソプロピルピペリジン及びN−イソプロピルモルホリンが適しており、特にトリエチルアミン及びN−エチルピペリジンが特に適している。
オリゴマーを得る時の反応温度は、80℃以下、好ましくは60℃以下、さらに好ましくは10℃〜50℃の範囲にあることが好ましく、また反応時間は反応温度によっても左右されるが通常0.5分〜10時間、好ましくは1分〜2時間である。反応温度が高すぎると、副反応の制御ができず、ホスゲン原単位が悪化する。一方、低すぎると、反応制御上は好ましい状況ではあるが、冷凍負荷が増大して、その分コストアップとなり好ましくない。
有機相中のオリゴマー濃度は、得られるオリゴマーが可溶な範囲であればよく、具体的には、10〜40重量%程度である。有機相の割合は芳香族ジオールのアルカリ金属水酸化物水溶液、即ち水相に対して0.2〜1.0の容積比であることが好ましい。このような縮合条件下で得られるオリゴマーの粘度平均分子量は通常500〜10,000程度、好ましくは1,000〜5,000である。
このようにして得られたカーボネートオリゴマーは、常法に従い、重縮合条件下で高分子のポリカーボネート共重合体とする。好ましい実施態様においては、このオリゴマーの溶存する有機相を水相から分離し、必要に応じ前述の不活性有機溶媒を追加し、該オリゴマーの濃度を調整する。すなわち、重縮合によって得られる有機相中のポリカーボネートの濃度が5〜30重量%となるように溶媒の量が調整される。しかる後、新たに水及びアルカリ金属水酸化物を含む水相を加え、さらに重縮合条件を整えるために好ましくは縮合触媒を添加して界面重縮合法に従い、所期の重縮合を完結させる。重縮合時の有機相と水相の割合は容積比で有機相:水相=1:0.2〜1程度が好ましい。
カーボネートオリゴマーの重縮合反応に於いて、重縮合開始時のオリゴマーのOH基濃度に対する末端クロロホーメート基濃度の割合(以下CF/OHと記す)は1.1〜10が好ましく、1.5〜5がより好ましい。CF/OHが1.1より小さくなると重縮合が不完全となりクロロホーメートが多く残存するようになり目標分子量に到達しない。一方、CF/OHが10以上では目標分子量には到達するものの分子鎖中に取り込まれる窒素量が多くなり電子写真感光体として使用した場合電気特性が悪化し好ましくない。
また、重縮合に供するオリゴマーは芳香族ジオール類とカーボネート形成化合物とをモノフェノール類を分子量調節剤として反応させて得られるポリカーボネートオリゴマーであり、該オリゴマーが上記の条件を満たさなくても達成出来る場合がある。例えば、得られたオリゴマーのCF/OHが10以上の場合、重縮合開始時に該オリゴマーの原料である芳香族ジオールを添加して見かけ上のOH値を上げてCF/OHを1.1〜10とした後にアルカリを添加して重縮合しても達成可能であり、この場合を含む。すなわち、重縮合開始時にCF/OHの割合を規定することでカーバメート化反応が抑制され分子鎖中の窒素取り込み量が低減できるようになる。
カーボネートオリゴマーの重縮合反応においては、オリゴマー化反応と同一の縮合触媒の存在下で行うことができる。本発明によれば縮合触媒の使用量は芳香族ジオールに対して0.05〜0.5mol%、好ましくは0.05〜0.2mol%である。0.05mol%未満では重縮合反応が著しく遅くなり、アルカリとの接触時間が増え、未反応芳香族ジオールが増加する。0.5mol%を超えると重縮合反応は速くなるものの洗浄工程での縮合触媒の抽出除去に多大の労力を要し好ましくない。
重縮合完結後は、残存するクロロフォーメート基(CF基)が0.1μeq/g以下になるまで、水酸化ナトリウムのようなアルカリで洗浄処理してもよい。CF基濃度が0.1μeq/gを超えると、例えば電子写真感光体に使用する場合、電気特性が悪化し好ましくない。その後は、電解質が無くなるまで、有機相を洗浄し、最終的には有機相から適宜不活性有機溶媒を除去して、ポリカーボネートを分離する。
上述のようにして得られた本発明に用いられるポリカーボネート共重合体の分子鎖中に取り込まれた窒素量は、通常20ppm以下で且つ末端クロロホーメート基量は0.1μeq/g以下となる。分子鎖中に取り込まれた窒素量や末端クロロホーメート基量が多くなると電子写真感光体等に使用した場合、電気特性が悪化し好ましくない。
本発明者らは分子鎖中に取り込まれる窒素量を20ppm以下、また末端クロロホーメート基量を0.1μeq/g以下に低減する方法を検討した結果、驚くべきことに重縮合時の反応温度を15℃以下、好ましくは0℃〜10℃とすることで大幅にカーバメート化反応を抑制できるようになりウレタン結合し形成された窒素化合物(末端窒素)が低減され、同時に反応速度を落とすことなく縮合反応が進行するため、末端クロロホーメート基量も低減できることを見出した。重縮合時の反応温度が15℃を超えると極端に分子鎖中に取り込まれる窒素量が20ppmを超え好ましくない。
本発明のポリカーボネート共重合体は、例えば、電子写真感光体に用いることが出来る。ポリカーボネートを電子写真感光体に用いる場合には、導電性支持体上に設けた感光層中に含有させる。感光層の具体的な構成としての1つの例としては、導電性支持体上に電荷発生物質を主成分とする電荷発生層、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を主成分とした電荷輸送層をこの順に積層した積層型感光体、2つ目の例としては、導電性支持体上に、電荷輸送物質及びバインダ−樹脂を主成分とした電荷輸送層、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層をこの順に積層した逆二層型感光体、そして、3つ目の例としては、導電性支持体上に電荷輸送物質及びバインダ−樹脂を含有する層中に電荷発生物質を分散させた分散型感光体の様な構成が基本的な形の例として挙げられる。
本発明のポリカーボネート共重合体は、感光層のバインダー樹脂として用いることができるが、主として積層型感光体における電荷輸送層のバインダー樹脂、又は分散型感光体の感光層のバインダー樹脂として好適である。中でも、導電性支持体上に電荷発生層及び電荷輸送層をこの順に積層した積層型感光体における電荷輸送層のバインダー樹脂として最も好適である。
導電性支持体としては、アルミニウム、銅、亜鉛、鉄等の金属、及びこれらの合金、あるいは樹脂に金属を蒸着したもの等が用いられるが、これらの内アルミ又はその合金が好ましく用いられる。
電荷発生層に使用される電荷発生物質としては、例えばセレニウム及びその合金、硫化カドミウム、その他無機系光導電材料、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料などの有機顔料等各種光導電材料が使用でき、特に有機顔料、更にフタロシアニン顔料、アゾ顔料が好ましい。
これらの電荷発生物質は、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテルなどの各種バインダー樹脂で結着した形、又は導電性支持体上に蒸着した形で使用される。
バインダー樹脂を用いる場合の使用比率は、バインダー樹脂100重量部に対して電荷発生物質30〜500重量部の範囲より使用され、その膜厚は通常0.1〜1μm、特には0.15〜0.6μmが好適である。
電荷輸送層の電荷輸送物質としては、例えば2,4,7−トリニトロフルオレノン、テトラシアノキノジメタンなどの電子吸引性物質、カルバゾール、インドール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、オキサジアゾール、ピラゾリン、チアジアゾールなどの複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン化合物、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖もしくは側鎖に有する重合体などの電子供与性物質が挙げられる。
特に、重合体ではない低分子化合物が好ましい。これらの電荷輸送物質とともにバインダー樹脂が配合される。電荷輸送層には、必要に応じて酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。電荷輸送層の膜厚は10〜50μm、好ましくは10〜40μmの厚みで使用されるのがよい。
分散型の場合、バインダー樹脂として本発明の上記ポリカーボネート共重合体が用いられ、樹脂100重量部に対して電荷輸送物質は30〜150重量部の範囲より使用されるのが好ましい。また膜厚は通常5〜50μm、好ましくは10〜30μmが好適である。また必要に応じて酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
分散型感光層の場合には、上記のような配合比のバインダー樹脂と電荷輸送物質からなる電荷輸送媒体中に、前記した電荷発生物質が分散される。その場合の電荷発生物質の粒子径は充分小さいことが必要であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下で使用される。感光層内に分散される電荷発生物質の量は少なすぎると充分な感度が得られず、多すぎると帯電性の低下、感度の低下などの弊害があり、例えば好ましくは0.5〜50重量%の範囲で、より好ましくは1〜20重量%の範囲で使用される。
感光層の膜厚は通常5〜50μm、より好ましくは10〜45μmで使用される。またこの場合にも成膜性、可とう性、機械的強度等を改良するための公知の可塑剤、残留電位を抑制するための添加剤、分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤、界面活性剤、例えばシリコ−ンオイル、フッ素系オイルその他の添加剤が添加されていても良い。
感光層あるいは電荷輸送層を導電性支持体上に設けるには、通常、適当な溶媒に、本発明のポリカーボネート共重合体、及び電荷輸送材料、その他の添加剤を混合して塗布液とし、好ましくは浸漬塗布により支持体上に塗布し、その後乾燥する。
また、これらの感光体は、最表面層として従来公知の例えば熱可塑性或いは熱硬化性ポリマ−を主体とするオ−バ−コ−ト層を設けても良い。これらの感光層はロ−ルコ−ティング、バ−コ−ティング、ディップコ−ティング、スプレ−コティンング、マルチノズルコ−ティング等公知の方法によって導電性支持体上に形成される。感光層を設ける導電性支持体としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル等の金属材料、表面にアルミニウム、銅、パラジウム、酸化スズ、酸化インジウム等の導電性層を設けたポリエステルフィルム、紙、ガラス等の絶縁性支持体が使用される。
導電性支持体と感光層の間には、通常使用されるような公知のバリアー層が設けられていても良い。バリアー層としては、例えば、アルミニウム陽極酸化被膜、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等の無機層、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド、等の有機層が使用される。バリアー層の膜厚は0.1〜20μmの範囲が好ましく、0.1〜10μmの範囲で使用されるのが最も効果的である。各層の形成方法としては、層に含有させる物質を溶剤に溶解又は分散させて得られた塗布液を順次塗布するなどの公知の方法が適用できる。
以下実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例によって限定されるものではない。また、実施例中の各測定値は以下の方法により求めたものである。
(1)粘度平均分子量(Mv)
オリゴマー又はポリマーの0.6g/dl塩化メチレン溶液を用いて20℃で測定したηSPから、以下の式を用いて算出した。
ηSP/C=[η](1+0.28ηSP)
ηSP=1.23×10-4Mv0.83
(2)オリゴマー末端クロロフォーメート基濃度(CF基)
オリゴマー溶液を塩化メチレンで希釈した後、アニリンと純水を添加し、フェノールフタレインを指示薬として規定度のNaOHにて滴定し求めた。
(3)オリゴマー末端フェノール性OH基濃度(OH基)
オリゴマー溶液を塩化メチレンで希釈した後、四塩化チタン、酢酸溶液を加え発色させ分光光度計(日立(株)製 UV−160型)を用い546nmの波長での吸光度を測定した。別に該オリゴマー製造時に使用した芳香族ジオールの塩化メチレン溶液を用い、吸光係数を求め、オリゴマーの末端フェノール性OH基量を定量した。
(4)ポリカーボネートの分子末端クロロホーメート基濃度(微量CF)
ポリカーボネート約1gを精秤し、塩化メチレン20mlを加えて溶解した。これに4−(p−ニトロベンジル)ピリジンの1wt%塩化メチレン溶液2mlを加え発色させ、分光光度計(日立(株)製、330型)を用い440nmの波長での吸光度を測定した。別に、フェニルクロロホーメートの塩化メチレン溶液を用い、吸光係数を求め、サンプル中のクロロホーメート基量を定量した。
(5)ポリカーボネート共重合体のシーケンス(ψ/Φ値)13C−NMR
ポリカーボネート約100mgを重テトラヒドロフラン1mlに溶解した溶液を日本電子(株)社製JEOL、ALPHA−400を用いて13C−NMRで2000回積算測定しそれぞれの構造単位のカーボネート結合に由来するピーク強度からψ/Φ値を算出した。
(6)ポリカーボネート分子鎖中に取り込まれた窒素量
ポリカーボネート約20mgを用い、三菱化学(株)製、全窒素分析計(TN−10)により測定した。
実施例1
2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3メチルフェニル)プロパン(以下「BPC」と記す)4.8kg/時、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下「BPA」と記す)11.2kg/時、水酸化ナトリウム5.59kg/時、及び水101.1kg/時を、ハイドロサルファイト0.018kg/時の存在下に、35℃で溶解した後、25℃まで冷却した水相、並びに5℃に冷却した塩化メチレン60.5kg/時の有機相を、各々内径6mm、外径8mmのステンレス製配管に供給し、同配管内で混合し、さらにホモミキサー(特殊機化株式会社製、製品名T.KホモミックラインフローLF−500型)を用いて、乳化し、乳濁液を調製した。
このようにして得られた、BPA+BPCのナトリウム塩の水溶液(水相)と塩化メチレン(有機相)の乳濁液を、ホモミキサーから分岐する内径6mm、外径8mmの配管で取出し、これに接続する内径6mm、長さ34mのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製パイプリアクターにおいて、ここに別途導入される0℃に冷却したパイプより供給された液化ホスゲン6.98kg/時と接触させた。
上記乳濁液はホスゲンとパイプリアクター内を1.7m/秒の線速にて20秒間流通する間に、ホスゲン化、オリゴマー化反応を行った。この時、反応温度は、それぞれ60℃になるように調整し、いずれも次のオリゴマー化槽に入る前に35℃まで外部冷却を行った。このようにしてパイプリアクターより得られるオリゴマー化された乳濁液を、さらに内容積50リットルの撹拌機付き反応槽に導き、窒素ガス雰囲気下30℃で撹拌し、オリゴマー化することで、水相中に存在する未反応の芳香族ジオールのNa塩を完全に消費させた後、水相と有機相を静置分離し、オリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。オリゴマー化に際し、トリエチルアミンの2重量%水溶液を0.28kg/時、及び、p−t−ブチルフェノールの24重量%の塩化メチレン溶液を1.02kg/時で各々、オリゴマー化槽に添加した。この時のオリゴマーの粘度平均分子量(Mv)は2800、末端クロロフォーメート基濃度は0.44規定、末端フェノール性OH基濃度は0.27規定であった。
上記オリゴマーの塩化メチレン溶液のうち50kgを、内容積150リットルのファウドラー翼付き反応槽に仕込み、これに希釈用塩化メチレン25kgを追加し、さらに25重量%水酸化ナトリウム水溶液4.37kg、水6kg、及びトリエチルアミン2.2gを加え、窒素ガス雰囲気下10℃で撹拌し、120分間重縮合反応を行って、ポリカーボネート共重合体を得た。この反応液に、塩化メチレン30kg及び水7kgを加え、20分間撹拌した後、撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。分離した有機相に、0.1N塩酸20kgを加え15分間撹拌し、トリエチルアミン及び小量残存するアルカリ成分を抽出した後、撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。さらに、分離した有機相に、純水20kgを加え、15分間撹拌した後、撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。この操作を抽出排水中の塩素イオンが検出されなくなるまで(3回)繰り返した。
得られた精製ポリカーボネート溶液を温水中にフェードしポリマー粉粒体を取得し、通風乾燥機で窒素雰囲気下120℃、48Hr乾燥した。得られたポリカーボネート共重合体(以下、「C−1」と記す)の粘度平均分子量(Mv)は30,000であり、13C−NMRで求めたψ/Φ値は0.17、分子鎖中に取り込まれた窒素量は4.1ppm、分子末端クロロホーメート基濃度は0.001μeq/gであった。
実施例2
BPC8.0kg/時、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)1−フェニルエタン(以下「BPP」と記す)8.0kg/時、水酸化ナトリウム5.18kg/時、及び水101.1kg/時を、ハイドロサルファイト0.018kg/時の存在下に、35℃で溶解した後、25℃まで冷却した水相、並びに5℃に冷却した塩化メチレン60.5kg/時の有機相を、各々内径6mm、外径8mmのステンレス製配管に供給し、同配管内で混合し、さらにホモミキサー(特殊機化株式会社製、製品名T.KホモミックラインフローLF−500型)を用いて、乳化し、乳濁液を調製した。
このようにして得られた、BPC+BPPのナトリウム塩の水溶液(水相)と塩化メチレン(有機相)の乳濁液を、ホモミキサーから分岐する内径6mm、外径8mmの配管で取出し、これに接続する内径6mm、長さ34mのPTFE製パイプリアクターにおいて、ここに別途導入される0℃に冷却したパイプより供給された液化ホスゲン6.01kg/時と接触させた。
上記乳濁液はホスゲンとパイプリアクター内を1.7m/秒の線速にて20秒間流通する間に、ホスゲン化、オリゴマー化反応を行った。この時、反応温度は、それぞれ60℃になるように調整し、いずれも次のオリゴマー化槽に入る前に35℃まで外部冷却を行った。このようにしてパイプリアクターより得られるオリゴマー化された乳濁液を、さらに内容積50リットルの撹拌機付き反応槽に導き、窒素ガス雰囲気下30℃で撹拌し、オリゴマー化することで、水相中に存在する未反応のBPC+BPPのNa塩を完全に消費させた後、水相と有機相を静置分離し、オリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。オリゴマー化に際し、トリエチルアミンの2重量%水溶液を0.28kg/時、及び、p−t−ブチルフェノールの24重量%の塩化メチレン溶液を0.88kg/時で各々、オリゴマー化槽に添加した。この時のオリゴマーの粘度平均分子量(Mv)は2500、末端クロロフォーメート基濃度は0.41規定、末端フェノール性OH基濃度は0.12規定であった。
上記オリゴマーの塩化メチレン溶液のうち50kgを、内容積150リットルのファウドラー翼付き反応槽に仕込み、これに希釈用塩化メチレン25kgを追加し、さらに25重量%水酸化ナトリウム水溶液4.88kg、水6kg、及びトリエチルアミン2.2gを加え、窒素ガス雰囲気下10℃で撹拌し、120分間重縮合反応を行って、ポリカーボネート共重合体を得た。この反応液に、塩化メチレン30kg及び水7kgを加え、20分間撹拌した後、撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。分離した有機相に、0.1N塩酸20kgを加え15分間撹拌し、トリエチルアミン及び小量残存するアルカリ成分を抽出した後、撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。さらに、分離した有機相に、純水20kgを加え、15分間撹拌した後、撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。この操作を抽出排水中の塩素イオンが検出されなくなるまで(3回)繰り返した。
得られた精製ポリカーボネート溶液を温水中にフェードしポリマー粉粒体を取得し、通風乾燥機で窒素雰囲気下120℃、48Hr乾燥した。得られたポリカーボネート共重合体(以下「C−2」と記す)の粘度平均分子量(Mv)は30,300であり、13C−NMRで求めたψ/Φ値は0.43(図−1参照)、分子鎖中に取り込まれた窒素量は4.7ppm、分子末端クロロホーメート基濃度は0.001μeq/gであった。
実施例3
パイプリアクターに供給する液化ホスゲンの量を8.51kg/時とした以外は実施例2と同様の操作を行った。この結果得られたオリゴマーの粘度平均分子量(Mv)は1400、末端クロロホーメート基濃度は0.65規定、末端フェノール性OH基濃度は0.05規定であった。上記オリゴマーの塩化メチレン溶液のうち50kgを、内容積150リットルのファウドラー翼付き反応槽に仕込み、これにBPC713gとBPP808gを投入して溶解させたところオリゴマーのOH基濃度が0.30規定となった。これに希釈用塩化メチレン25kgを追加し、さらに25重量%水酸化ナトリウム水溶液4.88kg、水6kg、及びトリエチルアミン2.2gを加え窒素ガス雰囲気下10℃で撹拌し、120分間重縮合反応を行って、ポリカーボネート共重合体を得た。
この反応液に、塩化メチレン30kg及び水7kgを加え、20分間撹拌した後、撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。分離した有機相に、0.1N塩酸20kgを加え15分間撹拌し、トリエチルアミン及び小量残存するアルカリ成分を抽出した後、撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。さらに、分離した有機相に、純水20kgを加え、15分間撹拌した後、撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。この操作を抽出排水中の塩素イオンが検出されなくなるまで(3回)繰り返した。得られた精製ポリカーボネート溶液を温水中にフェードしポリマー粉粒体を取得し、通風乾燥機で窒素雰囲気下120℃、48Hr乾燥した。得られたポリカーボネート共重合体(以下「C−3」と記す)の粘度平均分子量(Mv)は31,800であり13C−NMRで求めたψ/Φ値は0.53、分子鎖中に取り込まれた窒素量は5.2ppm、分子末端クロロホーメート基濃度は0.001μeq/gであった。
比較例1
BPC16.0kg/時、水酸化ナトリウム5.15kg/時、及び水101.1kg/時を、ハイドロサルファイト0.018kg/時の存在下に、35℃で溶解した後、25℃まで冷却した水相、並びに5℃に冷却した塩化メチレン60.5kg/時の有機相を、各々内径6mm、外径8mmのステンレス製配管に供給し、同配管内で混合し、さらにホモミキサー(特殊機化株式会社製、製品名T.KホモミックラインフローLF−500型)を用いて、乳化し、乳濁液を調製した。
このようにして得られた、BPCのナトリウム塩の水溶液(水相)と塩化メチレン(有機相)の乳濁液を、ホモミキサーから分岐する内径6mm、外径8mmの配管で取出し、これに接続する内径6mm、長さ34mのPTFE製パイプリアクターにおいて、ここに別途導入される0℃に冷却したパイプより供給された液化ホスゲン7.05kg/時と接触させた。
上記乳濁液はホスゲンとパイプリアクター内を1.7m/秒の線速にて20秒間流通する間に、ホスゲン化、オリゴマー化反応を行った。この時、反応温度は、それぞれ60℃になるように調整しいずれも次のオリゴマー化槽に入る前に35℃まで外部冷却を行った。このようにしてパイプリアクターより得られるオリゴマー化された乳濁液を、さらに内容積50リットルの撹拌機付き反応槽に導き、窒素ガス雰囲気下30℃で撹拌し、オリゴマー化することで、水相中に存在する未反応のBPCのNa塩を完全に消費させた後、水相と有機相を静置分離し、オリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。オリゴマー化に際し、トリエチルアミンの2重量%水溶液を0.28kg/時、及び、p−t−ブチルフェノールの24重量%の塩化メチレン溶液を0.94kg/時で各々、オリゴマー化槽に添加した。この時のオリゴマー(以下「BPCオリゴマー」と記す)の粘度平均分子量(Mv)は1800、末端クロロフォーメート基濃度は0.54規定、末端フェノール性OH基濃度は0.36規定であった。
別途、同装置にてBPCの代わりにBPP16.0kg/時、水酸化ナトリウム4.86kg/時、及び、水101.1kg/時を、ハイドロサルファイト0.018kg/時の存在下に、35℃で溶解した後、25℃まで冷却した水相、並びに5℃に冷却した塩化メチレン60.5kg/時の有機相を、各々内径6mm、外径8mmのステンレス製配管に供給し、同配管内で混合し、さらにホモミキサー(特殊機化株式会社製、製品名T.KホモミックラインフローLF−500型)を用いて、乳化し、乳濁液を調製した。
このようにして得られた、BPPのナトリウム塩の水溶液(水相)と塩化メチレン(有機相)の乳濁液を、ホモミキサーから分岐する内径6mm、外径8mmの配管で取出し、これに接続する内径6mm、長さ34mのPTFE製パイプリアクターにおいて、ここに別途導入される0℃に冷却したパイプより供給された液化ホスゲン5.63kg/時と接触させた。
上記乳濁液はホスゲンとパイプリアクター内を1.7m/秒の線速にて20秒間流通する間に、ホスゲン化、オリゴマー化反応を行った。この時、反応温度は、それぞれ60℃になるように調整し、いずれも次のオリゴマー化槽に入る前に35℃まで外部冷却を行った。このようにしてパイプリアクターより得られるオリゴマー化された乳濁液を、さらに内容積50リットルの撹拌機付き反応槽に導き、窒素ガス雰囲気下30℃で撹拌し、オリゴマー化することで、水相中に存在する未反応のBPPのNa塩を完全に消費させた後、水相と有機相を静置分離し、オリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。オリゴマー化に際し、トリエチルアミンの2重量%水溶液を0.28kg/時、及び、p−t−ブチルフェノールの24重量%の塩化メチレン溶液を0.83kg/時で各々、オリゴマー化槽に添加した。この時のオリゴマー(以下「BPPオリゴマー」と記す)の粘度平均分子量(Mv)は2600、末端クロロフォーメート基濃度は0.42規定、末端フェノール性OH基濃度は0.05規定であった。
このようにして得られたBPCオリゴマーの塩化メチレン溶液25.6kgとBPPオリゴマー24.4kgとを混合し、内容積150リットルのファウドラー翼付き反応槽に仕込み、これに希釈用塩化メチレン25kgを追加し、さらに25重量%水酸化ナトリウム水溶液5.36kg、水6kg、及びトリエチルアミン2.2gを加え、窒素ガス雰囲気下30℃で撹拌し、120分間重縮合反応を行って、ポリカーボネート共重合体を得た。
この反応液に、塩化メチレン30kg及び水7kgを加え、20分間撹拌した後、撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。分離した有機相に、0.1N塩酸20kgを加え15分間撹拌し、トリエチルアミン及び小量残存するアルカリ成分を抽出した後、撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。さらに、分離した有機相に、純水20kgを加え、15分間撹拌した後、撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。この操作を抽出排水中の塩素イオンが検出されなくなるまで(3回)繰り返した。
得られた精製ポリカーボネート溶液を温水中にフェードしポリマー粉粒体を取得し、通風乾燥機で窒素雰囲気下120℃、48Hr乾燥した。得られたポリカーボネート共重合体(以下「C−4」と記す)の粘度平均分子量(Mv)は30,100であり、13C−NMRで求めたψ/Φ値は4.56(図−2参照)、分子鎖中に取り込まれた窒素量は28.5ppm、分子末端クロロホーメート基濃度は0.002μeq/gであった。
比較例2
実施例3で重縮合時にBPCとBPPを添加しない以外は同様の操作を行った。得られたポリカーボネート共重合体(以下「C−5」と記す)の粘度平均分子量(Mv)は30,600であり、13C−NMRで求めたψ/Φ値は0.55、分子鎖中に取り込まれた窒素量は37.2ppm、分子末端クロロホーメート基濃度は0.001μeq/gであった。
比較例3
BPA15.6kg/時、水酸化ナトリウム5.63kg/時、及び水101.1kg/時を、ハイドロサルファイト0.018kg/時の存在下に、35℃で溶解した後、25℃まで冷却した水相、並びに5℃に冷却した塩化メチレン60.5kg/時の有機相を、各々内径6mm、外径8mmのステンレス製配管に供給し、同配管内で混合し、さらにホモミキサー(特殊機化株式会社製、製品名T.KホモミックラインフローLF−500型)を用いて、乳化し、乳濁液を調製した。
このようにして得られた、BPAのナトリウム塩の水溶液(水相)と塩化メチレン(有機相)の乳濁液を、ホモミキサーから分岐する内径6mm、外径8mmの配管で取出し、これに接続する内径6mm、長さ34mのPTFE製パイプリアクターにおいて、ここに別途導入される0℃に冷却したパイプより供給された液化ホスゲン6.98kg/時と接触させた。
上記乳濁液はホスゲンとパイプリアクター内を1.7m/秒の線速にて20秒間流通する間に、ホスゲン化、オリゴマー化反応を行った。この時、反応温度は、それぞれ60℃になるように調整し、いずれも次のオリゴマー化槽に入る前に35℃まで外部冷却を行った。このようにしてパイプリアクターより得られるオリゴマー化された乳濁液を、さらに内容積50リットルの撹拌機付き反応槽に導き、窒素ガス雰囲気下30℃で撹拌し、オリゴマー化することで、水相中に存在する未反応の芳香族ジオールのNa塩を完全に消費させた後、水相と有機相を静置分離し、オリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。オリゴマー化に際し、トリエチルアミンの2重量%水溶液を0.28kg/時、及び、p−t−ブチルフェノールの24重量%の塩化メチレン溶液を1.03kg/時で各々、オリゴマー化槽に添加した。この時のオリゴマーの粘度平均分子量(Mv)は3800、末端クロロフォーメート基濃度は0.36規定、末端フェノール性OH基濃度は0.20規定であった。
上記オリゴマーの塩化メチレン溶液のうち50kgを、内容積150リットルのファウドラー翼付き反応槽に仕込み、これに希釈用塩化メチレン25kgを追加し、さらに25重量%水酸化ナトリウム水溶液3.85kg、水6kg、及びトリエチルアミン2.2gを加え、窒素ガス雰囲気下30℃で撹拌し、120分間重縮合反応を行って、ポリカーボネートを得た。この反応液に、塩化メチレン30kg及び水7kgを加え、20分間撹拌した後、撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。分離した有機相に、0.1N塩酸20kgを加え15分間撹拌し、トリエチルアミン及び小量残存するアルカリ成分を抽出した後、撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。さらに、分離した有機相に、純水20kgを加え、15分間撹拌した後、撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。この操作を抽出排水中の塩素イオンが検出されなくなるまで(3回)繰り返した。
得られた精製ポリカーボネート溶液を温水中にフェードし、ポリマー粉粒体を取得し、通風乾燥機で窒素雰囲気下120℃、48Hr乾燥した。得られたポリカーボネート単体(以下、「C−6」と記す)の粘度平均分子量(Mv)は30,000であり、分子鎖中に取り込まれた窒素量は23.7ppm、分子末端クロロホーメート基濃度は0.001μeq/gであった。
電子写真感光体製造例
下記(A)で表わされるビスアゾ化合物10重量部を、150重量部の4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2に加え、サンドグラインドミルにて粉砕分散処理を行なった。ここで得られた顔料分散液をポリビニルブチラール(積水化学工業(株)製、商品名BH−3)の5%ジメトキシエタン溶液に加え、最終的に固形分濃度4.0%の分散液を作製した。
この様にして得られた分散液に、表面が鏡面仕上げされた外径80mm、長さ340mm、肉厚2.0mmのアルミシリンダーを浸漬塗布し、その乾燥膜厚が約0.4μmとなるように電荷発生層を設けた。次にこのアルミシリンダーを、下記(B)で表わされるヒドラゾン化合物90重量部と実施例1〜3及び比較例2により得られたポリカーボネート樹脂100重量部を、ジオキサン900重量部に溶解させて得た塗布液に浸漬塗布し、乾燥後の膜厚が20μmとなるように電荷移動層を形成し感光体を作成した。
この様に作製した感光体をコピー機、プリンターを模した評価機に装着し10万枚のコピーテストを行いその時の最も安定した電気特性を測定した。この結果を表1に示した。ここで、各々の電位の測定法を簡単に説明する。複写機の現像槽を取除き、その部分に電位計センサーをとり付けた。次に複写機の原稿台上に真白な原稿と真黒な原稿を半々に置き、この原稿を複写した際の黒地部の電位を帯電電位(Vo )、白地部の電位を感度(VL )として測定した。除電後に残った電位を残留電位(Vr )として測定した。
実施例及び比較例にて製造されたポリカーボネート(「C−1」〜「C−6」)を用いた評価結果を表1に示す。