JP2008216297A - 像担持体、それを用いた画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジ - Google Patents

像担持体、それを用いた画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジ Download PDF

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Abstract

【課題】高耐久性で長期間にわたり高画質の画像形成が可能な長寿命で高性能な像担持体と、それを用いた画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供する。
【解決手段】導電性支持体(31)上に、電荷発生層(35)と電荷輸送層(37)[表面層を兼ねる]を設けるか、又は電荷発生層(35)、電荷輸送層(37)、37の表面部に表面層(34)を順次設け、各表面層を、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物と電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物と、オキシムエステル化合物とを含む塗工液を用いて塗布膜形成後に光エネルギー照射により硬化樹脂層として像担持体とする。この像担持体を用いて画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジを構成する。
【選択図】図2

Description

本発明は、高耐久性で長期間にわたり高画質化を実現することのできる像担持体に関し、さらに、その像担持体を用いた画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用のプロセスカートリッジに関する。
近年、有機感光体(OPC)は良好な性能に加えて様々な利点を有することから、無機感光体に代り、複写機、ファクシミリ、レーザープリンタ及びこれらの複合機に多く用いられている。有機感光体が用いられる理由としては、例えば、(1)光吸収波長域の広さ及び吸収量の大きさ等の光学特性、(2)高感度、安定した帯電特性等の電気的特性、(3)材料の選択範囲の広さ、(4)製造の容易さ、(5)低コスト、(6)無毒性等が挙げられる。
一方、最近画像形成装置の小型化から感光体の小径化が進み、機械の高速化やメンテナンスフリーの動きも加わり感光体の高耐久化が切望されるようになってきた。この観点からみると、有機感光体は、表面層が低分子電荷輸送材料と不活性高分子を主成分としているため一般に柔らかく、電子写真プロセスにおいて繰り返し使用された場合、現像システムやクリーニングシステムによる機械的な負荷により摩耗が発生しやすいという欠点を有している。加えて、高画質化の要求からトナー粒子の小粒径化に伴いクリーニング性を向上させる目的でクリーニングブレードのゴム硬度の上昇と当接圧力の増加が余儀なくされ、このことも感光体の摩耗を促進する要因となっている。
このような感光体の摩耗は、感度の劣化、帯電性の低下などの電気的特性を劣化させ、画像濃度低下、地肌汚れ等の異常画像の原因となる。また摩耗が局所的に発生した傷は、クリーニング不良によるスジ状汚れ画像をもたらす。現状では感光体の寿命はこの摩耗や傷が律速となり、交換に至っている。
したがって、有機感光体の高耐久化においては前述の摩耗量を低減することが不可欠であり、これが当分野で最も解決が迫られている課題である。
感光層の耐摩耗性を改良する技術としては、(1)表面層に硬化性バインダーを用いたもの(例えば、特許文献1参照)、(2)高分子型電荷輸送物質を用いたもの(例えば、特許文献2参照)、(3)表面層に無機フィラーを分散させたもの(例えば、特許文献3参照)等が提案されている。
上記技術のうち、(1)の硬化性バインダーを用いたものは、電荷輸送物質との相溶性が悪いためや重合開始剤、未反応残基などの不純物により残留電位が上昇し画像濃度低下が発生し易い傾向がある。
また、(2)の高分子型電荷輸送物質を用いたものは、ある程度の耐摩耗性向上が可能であるものの、有機感光体に求められている耐久性を十二分に満足させるまでには至っていない。また、高分子型電荷輸送物質は材料の重合、精製が難しく高純度なものが得にくいため材料間の電気的特性が安定しにくい。更に塗工液が高粘度となる等の製造上の問題を起こす場合もある。
(3)の無機フィラーを分散させたものは、通常の低分子電荷輸送物質を不活性高分子に分散させた感光体に比べ高い耐摩耗性が発揮されるが、無機フィラー表面に存在するトラップにより残留電位が上昇し、画像濃度低下が発生し易い傾向にある。また、感光体表面の無機フィラーとバインター樹脂の凹凸が大きい場合には、クリーニング不良が発生し、トナーフィルミングや画像流れの原因となることがある。
従って、上記(1)、(2)、(3)の技術では、有機感光体に求められる電気的な耐久性、機械的な耐久性をも含めた総合的な耐久性を十二分に満足するには至っていない。
これらの電気的特性、耐摩耗性及び表面平滑性の改良を目的とした感光体として、電荷輸送性構造を重合結合中に取り込んだ硬化樹脂を用いる技術が知られている。この例としては、炭素−炭素二重結合を有するモノマーと、炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送剤及びバインダー樹脂からなる塗工液を用いて形成した電荷輸送層(例えば、特許文献4参照)、あるいは、同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を硬化した化合物を含有する感光層(例えば、特許文献5参照)が挙げられる。
前者では、バインダー樹脂を多量に有すること及び具体的に用いられている炭素−炭素二重結合を有するモノマーが2官能であることから電荷輸送層中の架橋密度を高めることができず、飛躍的な耐摩耗性を有するものではなかった。
また後者では、2官能のアクリロイルオキシ基を有する正孔輸送性化合物と3官能のアクリルモノマーを用い電子線硬化した電荷輸送層の例が記載されているが、これにより架橋密度の向上は望めるものの、嵩高い正孔輸送性化合物が複数の結合で架橋結合中に固定されるため歪みが大きく、表面層の凹凸やクラック、膜剥がれが発生しやすいという問題があった。これらの問題を回避するためには組成材料、その割合及び硬化条件などの細かな制御が必要であり、このため材料や条件の自由度が制限されるばかりでなく、同一の品質を有する感光体を安定して製造することが困難であった。
また、光硬化保護層感光体に関し、滑り性、耐摩耗性及び耐傷性を向上させる技術として、モルフォリノ基、ジアルキルアミノ基を有する光重合開始剤を用いる技術が提案されている(例えば、特許文献6参照)。これらの光重合開始剤により平滑な硬化膜が得られるが、これらの光重合開始剤では、いまだ十分な機械的耐久性を満足していない。
さらに、電子写真感光体に関し、硬化性樹脂を電子線照射により硬化した保護層を有する感光体(例えば、特許文献7参照)や、針状微粒子(酸化チタン)を含有する保護層を有する感光体(例えば、特許文献8参照)、あるいは結着樹脂中に磁性材料を含む微粒子を分散配向させた保護層を有する感光体(例えば、特許文献9参照)などが提案されている。しかし、いずれも耐久性を十二分に満足させるには至っていない。
前記において、光硬化保護層感光体は、光エネルギー照射量が多くなるほど、架橋密度が高くなり、耐摩耗性が向上する。しかし光エネルギー照射量が多くなるほど、膜中の電荷輸送機能を有する結合部が、酸化および分解などの化学反応を引き起こしやすく、残留電位上昇、帯電性低下、長期的な使用時に発生する画像流れなどの副作用が大きくなる。
このようなことから、今後さらに硬化樹脂の架橋密度を高くし、耐摩耗性を向上するばかりでなく、光エネルギー照射量を少なくし、効率的な架橋反応が可能な重合開始剤が望まれている。
特開昭56−48637号公報 特開昭64−1728号公報 特開平4−281461号公報 特開第3194392号公報 特開2000−66425号公報 特開第3126889号明細書 特開2001−166518号公報 特開第3123733号明細書 特開平10−20536号公報
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、耐摩耗性が高く、電気的特性が良好で且つ球形トナーのクリーニング性にも優れ、高耐久性で長期間にわたり高画質の画像形成が可能な感光層を有する像担持体を提供すると共に、この長寿命で高性能な像担持体を用いた画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用のプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、像担持体の感光層それ自体かもしくはその表面部に、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物と、光重合開始能を有するオキシムエステル化合物とを用いて、光エネルギー照射により形成された架橋構造からなる硬化樹脂層(表面層)を備えることにより、前記目的が達成できることを発見して本発明を成すに至った。具体的には以下の(1)〜(15)に記載する発明によって上記課題が解決される。以下、本発明について説明する。
(1):上記課題は、導電性支持体上に少なくとも感光層を有する像担持体において、
前記感光層は、表面層を備え、該表面層は、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物と電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物と、光重合開始能を有するオキシムエステル化合物とから光エネルギー照射により形成された架橋構造からなる硬化樹脂層であることを特徴とする像担持体により解決する。
(2):上記(1)に記載の像担持体において、前記光重合開始能を有するオキシムエステル化合物のほかにさらにチオキサントン化合物を混合して用いたことを特徴とする。
(3):上記(1)に記載の像担持体において、前記光重合開始能を有するオキシムエステル化合物のほかにさらにアセトフェノン化合物を混合して用いたことを特徴とする。
上記(2)及び(3)の光重合開始剤構成とすれば、オキシムエステル化合物単独におけるわずかな露光部電位上昇傾向を抑制、低減することができ、耐摩耗性の向上と共に更に電気特性の優れた像担持体が提供できる。
(4):上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の像担持体において、前記オキシムエステル化合物が、下記構造式(1)で示されるものであることを特徴とする。
Figure 2008216297
(5):上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の像担持体において、前記オキシムエステル化合物が、下記構造式(2)で示されるものであることを特徴とする。
Figure 2008216297
上記(4)及び(5)のオキシムエステル化合物によれば、光エネルギー照射量を少なくしても効率的な架橋反応が可能であり、架橋密度が高く、耐摩耗性の向上した表面層(架橋層)が形成できる。
(6):上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の像担持体において、前記電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物の官能基数が、1官能であることを特徴とする。
1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を用いることにより、架橋結合により形成される硬化樹脂の剥離摩耗やクラック発生が防止され、感度や残留電位などの電気的特性が良好に持続される。
(7):上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の像担持体において、前記電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物の官能基が、アクリロイルオキシ基及び/又はメタクリロイルオキシ基であることを特徴とする。
上記(7)によれば、光エネルギーの照射で容易に架橋結合して硬化樹脂となり、高速、繰り返し使用においても高耐久性を保持すると共に、高画質が得られる表面層が形成される。
(8):上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の像担持体において、前記電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物が、分子中にトリアリールアミン構造を含むことを特徴とする。
分子中にトリアリールアミン構造を含むラジカル重合性化合物を用いれば、電荷輸送効果の高い表面層が形成される。
(9):上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の像担持体において、前記トリアリールアミン構造を含む電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物が、下記一般式(3)又は(4)で示される一種以上のラジカル重合性化合物であることを特徴とする。
Figure 2008216297
Figure 2008216297
[式(3)、(4)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR7(R7は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基もしくはCONR89(R8及びR9は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい)を表し、Ar1、Ar2は置換もしくは未置換のアリーレン基を表し、同一であっても異なってもよい。Ar3、Ar4は置換もしくは未置換のアリール基を表し、同一であっても異なってもよい。Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。Zは置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、アルキレンオキシカルボニル基を表す。m、nは0〜3の整数を表す。]
(10):上記(8)又は(9)に記載の像担持体において、前記トリアリールアミン構造を含む電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物が、下記一般式(5)で示される一種以上のラジカル重合性化合物であることを特徴とする。
Figure 2008216297
[式(5)中、o、p、qはそれぞれ0又は1の整数、Raは水素原子又はメチル基を表し、Rb、Rcは水素原子以外の置換基で炭素数1〜6のアルキル基を表し、複数の場合は異なってもよい。s、tは0〜3の整数を表す。Zaは単結合、メチレン基、エチレン基、あるいは下記式(6)、(7)、(8)で示される2価基を表す。]
Figure 2008216297
上記(9)、(10)によれば、耐摩耗性と電気特性がバランス良く両立し、長期の繰り返し使用においても感度低下や残留電位上昇などがなく、電気特性が良好に持続する。
(11):上記(1)乃至(10)のいずれかに記載の像担持体において、前記電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物の官能基が、アクリロイルオキシ基及び/又はメタクリロイルオキシ基であることを特徴とする。
上記(11)によれば、光エネルギーの照射で容易に架橋結合して硬化樹脂となり、高速、繰り返し使用においても高耐久性を保持すると共に、高画質が得られる表面層が形成される。
(12):上記課題は、前記(1)乃至(11)のいずれかに記載の像担持体を用いて、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写を繰り返し行なうことを特徴とする画像形成方法により解決する。
(13):上記課題は、前記(1)乃至(11)のいずれかに記載の像担持体を少なくとも備えたことを特徴とする画像形成装置により解決する。
(14):上記課題は、前記(1)乃至(11)のいずれかに記載の像担持体と、帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び除電手段よりなる群から選ばれた少なくとも一つの手段を具備し、画像形成装置本体と着脱自在に構成されたことを特徴とするプロセスカートリッジにより解決する。
(15):上記課題は、前記(14)に記載のプロセスカートリッジを搭載したことを特徴とする画像形成装置により解決する。
本発明の像担持体によれば、重合開始剤としてオキシムエステル化合物を用いることにより、光エネルギー照射量を少なくし、ラジカル重合性化合物、特に電荷輸送機能を有する結合部の化学反応(酸化や、分解など)を引き起こすことなく効率的に架橋反応させて架橋密度が高く、耐摩耗性が向上した硬化樹脂からなる表面層とすることができる。このような表面層を備えることにより像担持体は、表面平滑性及び電気特性に優れ、高耐久、長寿命で長期間にわたり高画質化を実現することができる。
本発明の画像形成方法によれば、耐摩耗性と静電特性の優れた電子写真感光体を備えているため、高速においても長期間にわたって安定した画像形成を行うことができる。
本発明の画像形成装置によれば、耐摩耗性と静電特性の優れた像担持体を備えているため、高速においても長期間にわたって安定した画像形成(例えば、高速で繰り返し使用した際にも摩耗などに対して高耐久性を維持し、地汚れなどによる異常画像の発生がなく、安定した状態で画像を出力)することができる。また、装置の小型化が図れるため、例えば、フルカラープリントが可能なフルカラーレーザープリンタやフルカラーデジタル複写機等に適用することができる。
本発明のプロセスカートリッジによれば、各プロセス手段と像担持体が一体となり、相対的な位置精度が高い構成とされるために画像品質の向上が図れ、しかも電子写真感光体やその他プロセス手段の交換を短時間で容易に行うことができる。
本発明のプロセスカートリッジを搭載した画像形成装置によれば、交換を短時間で容易に行うことができるので、メンテナンス性が向上すると共に、コストダウンにつながる。
以下、本発明について詳細に説明する。
前述のように本発明における像担持体は、導電性支持体上に少なくとも感光層を有する像担持体において、 前記感光層は、表面層を備え、該表面層は、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物と電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物と、光重合開始能を有するオキシムエステル化合物とから光エネルギー照射により形成された架橋構造からなる硬化樹脂層であることを特徴とするものである。
なお、後述するように、本発明における表面層は、単層構造または積層構造の感光層の上に設けられる。以降、「表面層」を「架橋表面層」と表現することがある。
すなわち、感光層に備えられる表面層は、反応性の高い上記組成により、従来に比べて短時間の光エネルギー照射で架橋密度の高い硬化樹脂層として形成されるため、感光層の電気特性を損なうことなく、耐摩耗性が高く、電気的特性が良好で且つ球形トナーのクリーニング性にも優れる。従って、高耐久性で長期間にわたり高画質化を実現することができる像担持体が提供される。
本発明の効果は以下のような原理に基づくものと考えられる。
本発明における表面層の形成においては、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物(以降、「電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー」と表現することがある。)を組成分の一つとして用いるものであり、これによって光エネルギー照射した際に3次元の網目構造が発達し、架橋度が非常に高い硬化樹脂層、いわゆる高硬度の表面層が得られ、高い耐摩耗性が達成される。
上記電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーを用いるのに対し、例えば、1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーのみを用いた場合は、架橋構造を持つ樹脂硬化層(架橋表面層)中の架橋結合が希薄となり飛躍的な耐摩耗性向上が達成されない。架橋表面層に多量の高分子材料が含有されている場合、1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーでは3次元網目構造の発達が阻害され、架橋結合が希薄となり、本発明に比べ充分な耐摩耗性が得られない。
更に、含有される高分子材料とラジカル重合性組成物(ラジカル重合性モノマーやラジカル重合性官能基を有する電荷輸送性化合物)の反応より生じた硬化物との相溶性が悪く、相分離を生じて表面平滑性の低下や局部的な摩耗、傷が発生しやすくなる。
また、本発明における表面層の形成においては、上記電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーに加え、組成分の一つとして更に電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物を含有しており、これが上記3官能以上のラジカル重合性モノマーの硬化時に架橋結合中に取り込まれる。
これに対し、官能基を有しない低分子電荷輸送物質を架橋表面層中に含有させた場合、その相溶性の低さから低分子電荷輸送物質の析出や白濁現象が起こり、これにより架橋表面層の機械的強度が低下する。
また、本発明における表面層の形成の際、上記電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物を光硬化するのに当り、重合開始剤としてオキシムエステル化合物を用いることにより、表面平滑性が向上し、架橋速度及び架橋密度も大きくなり、耐摩耗性が向上する。
この理由としては、以下のように考えられる。
上記架橋表面層の形成に当り、構成組成分として電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物を含有するため、この電荷輸送性構造部位による光エネルギー吸収により、通常の光重合開始剤を用いた場合には光重合開始剤で吸収される光量が極端に低下し、ラジカル発生量が少なくなる。このため、表面層を光エネルギー照射により形成する際に、長時間または高強度の光照射が必要となり、これが原因で電荷輸送構造の分解、特性劣化を引き起こす。また、ラジカル発生量を増加させるためには光重合開始剤の含有量を増加する方法も可能であるが、この場合には架橋表面層のラジカル重合性モノマーや電荷輸送性化合物の含有量が実質的に減少し、耐摩耗性の低下、残留電位の上昇を招く原因となる。
これに対して、本発明において用いるオキシムエステル化合物は350nm以上に吸収を有するため、ラジカル重合性官能基を有する電荷輸送性化合物を透過した光を効率よく吸収してラジカルを発生する。また、オキシムエステル化合物は分解によりそれ自身の光吸収がなくなる光ブリーチング効果を有するために内部の硬化性に優れている。このため、形成される表面層(膜)の面方向の光照射ムラ、膜内部における光の透過ムラの影響をほとんど受けず、膜表面方向、膜厚方向で均一な硬化が瞬時に進行する。従って、硬化部と未硬化部の硬度や体積収縮の違いに起因する凹凸が発生せず、平滑性の優れた架橋表面層が得られる。また反応性も高く、従来の重合開始剤に比べて短時間での光エネルギー照射でも、架橋密度が大きくなり、耐摩耗性が向上する。
本発明における感光層に備えられる表面層は、後述するように、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物と、光重合開始能を有するオキシムエステル化合物を溶媒中に含む塗工液を用いて塗布し、これに光エネルギーを照射することにより形成することができる。
なお、光エネルギーの照射は、ラジカル重合可能な波長領域の光を照射できる光源(例えば、メタルハライドランンプなど)を有する光エネルギー照射手段であれば何れの装置でも使用できる。
以下に、本発明の表面層塗工液の構成材料について説明する。
[電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー]
本発明に用いられる電荷輸送性を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーとは、例えば、トリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しておらず、且つラジカル重合性官能基を3個以上有するモノマーを指す。このラジカル重合性官能基とは、炭素−炭素2重結合を有し、ラジカル重合可能な基であれば何れでもよい。これらラジカル重合性官能基としては、例えば、下記に示す1−置換エチレン官能基、1,1−置換エチレン官能基等が挙げられる。
(a)1−置換エチレン官能基としては、例えば、下記一般式(9)で表される官能基が挙げられる。
Figure 2008216297
[ただし、式中、X1は、置換基を有していてもよいアリーレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、−CO−基、−COO−基、−CON(R10)−基(R10は、水素、アルキル基、アラルキル基、アリール基を表す。)、または−S−基を表す。]
上記置換基を有していてもよいアリーレン基の具体例としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、また、R10におけるアルキル基の具体例としてはメチル基、エチル基等が、アラルキル基としてはベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等が、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
上記一般式(9)で表される官能基を具体的に例示すると、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミノ基、ビニルチオエーテル基等が挙げられる。
(b)1,1−置換エチレン官能基としては、例えば、下記一般式(10)で表される官能基が挙げられる。
Figure 2008216297
(ただし、式中、Yは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR11基(R11は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、または−CONR1213(R12およびR13は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、または置換基を有していてもよいアリール基を表し、互いに同一または異なっていてもよい。)、また、X2は前記一般式(9)のX1と同一の置換基および単結合、アルキレン基を表す。ただし、Y、X2の少なくとも何れか一方がオキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基、および芳香族環である。)
上記Yにおける置換基を有していてもよいアリール基の具体例としてはフェニル基、ナフチル基等が、アルコキシ基としては、メトキシ基あるいはエトキシ基等が挙げられ、また、R11における置換基を有していてもよいアルキル基の具体例としてはメチル基、エチル基等が、置換基を有していてもよいアラルキル基としてはベンジル、フェネチル基等が、置換基を有していてもよいアリール基としてはフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、さらにR12およびR13における置換基を有していてもよいアルキル基の具体例としてはメチル基、エチル基等が、置換基を有していてもよいアラルキル基としてはベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等が、置換基を有していてもよいアリール基としてはフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
上記の官能基を具体的に例示すると、α−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基等が挙げられる。
なお、これらX1、X、Yについての置換基に更に置換される置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
これらのラジカル重合性官能基の中では、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用であり、3個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物は、例えば、水酸基がその分子中に3個以上ある化合物とアクリル酸(塩)、アクリル酸ハライド、アクリル酸エステルを用い、エステル反応あるいはエステル交換反応させることにより得ることができる。また、3個以上のメタクリロイルオキシ基を有する化合物も同様にして得ることができる。また、ラジカル重合性官能基を3個以上有する単量体中のラジカル重合性官能基は、同一でも異なってもよい。
電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物の官能基が、アクリロイルオキシ基及び/又はメタクリロイルオキシ基であれば、光エネルギーの照射で容易に架橋結合して架橋構造からなる硬化樹脂層を形成し、高速で繰り返し使用した場合でも高耐久性を保持することができる。
電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーとしては、以下のものが例示されるが、これらの化合物に限定されるものではない。
すなわち、本発明において使用する上記ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリアクリレート、EO(エチレンオキシ)変性トリメチロールプロパントリアクリレート、PO(プロピレンオキシ)変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、ECH(エピクロロヒドリン)変性グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、2,2,5,5,−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられ、これらは、単独又は2種類以上を併用しても差し支えない。
また、本発明に用いられる電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーとしては、表面層(架橋表面層)中に緻密な架橋結合を形成するために、該モノマー中の官能基数に対する分子量の割合、すなわち1官能基当りの分子量(分子量/官能基数)[「官能基割合」と呼ぶ]は250以下が望ましい。
官能基割合が250より大きい場合、架橋表面層は柔らかく耐摩耗性が幾分低下するため、上記例示したモノマー等中、HPA(アルキルレン)、EO(エチレンオキシ)、PO(プロピレンオキシ)等の変性基を有するモノマーにおいては、極端に長い変性基を有するものを単独で使用することは好ましくない。
また、架橋表面層に用いられる電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーの成分割合は、架橋表面層全量に対し20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%である。モノマー成分が20重量%未満では架橋表面層の3次元架橋結合密度が少なく、従来の熱可塑性バインダー樹脂を用いた場合に比べ飛躍的な耐摩耗性向上が達成されない。また、80重量%を超えると電荷輸送性化合物の含有量が相対的に低下し、電気的特性の劣化が生じる。使用されるプロセスによって要求される耐摩耗性や電気特性が異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70重量%の範囲が最も好ましい。
次に、本発明に用いられる電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物について説明する。
[電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物]
本発明に用いられる電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物、とは、例えば、トリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しており、且つラジカル重合性官能基を有する化合物を指す。このラジカル重合性官能基としては、先のラジカル重合性モノマーで示したものが挙げられ、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用である。
電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物の官能基が、アクリロイルオキシ基及び/又はメタクリロイルオキシ基であれば、光エネルギーの照射で容易に反応し、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物と架橋結合して架橋構造からなる硬化樹脂層が形成され、高速、繰り返し使用においても高耐久性を保持し、高画質の画像形成が達成される。
前記電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物が、分子中にトリアリールアミン構造を含むことが好ましい。すなわち、電荷輸送性構造としてはトリアリールアミン構造の効果が高い。下記一般式(3)又は(4)で示される一種以上のラジカル重合性化合物を用いた場合、感度、残留電位等の電気的特性が良好に持続される。
Figure 2008216297
Figure 2008216297
[式(3)、(4)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR7(R7は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基若しくはCONR89(R8及びR9は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい)を表し、Ar1、Ar2は置換もしくは未置換のアリーレン基を表し、同一であっても異なってもよい。Ar3、Ar4は置換もしくは未置換のアリール基を表し、同一であっても異なってもよい。Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。Zは置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、アルキレンオキシカルボニル基を表す。m、nは0〜3の整数を表す。]
以下に、一般式(3)、(4)の具体例を示す。
前記一般式(3)、(4)において、R1の置換基中、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基が、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等がそれぞれ挙げられ、これらは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等により置換されていてもよい。R1の置換基のうち、特に好ましいものは水素原子、メチル基である。
置換もしくは未置換のAr3、Ar4はアリール基であり、アリール基としては縮合多環式炭化水素基、非縮合環式炭化水素基および複素環基が挙げられる。
縮合多環式炭化水素基としては、好ましくは環を形成する炭素数が18個以下のもの、例えば、ペンタニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、as−インダセニル基、s−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基、及びナフタセニル基等が挙げられる。
上記非縮合環式炭化水素基としては、ベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル及びジフェニルスルホン等の単環式炭化水素化合物の1価基、あるいはビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン、及びポリフェニルアルケン等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基、あるいは9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の1価基が挙げられる。
複素環基としては、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、及びチアジアゾール等の1価基が挙げられる。
また、前記Ar3、Ar4で表されるアリール基は、例えば、以下に示すような置換基を有してもよい。
(1):ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
(2):アルキル基、好ましくは、C1〜C12とりわけC1〜C8、さらに好ましくはC1〜C4の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基にはさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基またはハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n−ブチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−プロピル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキエチル基、2−エトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−フェニルベンジル基等が挙げられる。
(3):アルコキシ基(−OR2)であり、R2は前記(2)で定義したアルキル基を表す。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
(4):アリールオキシ基であり、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これは、C1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有してもよい。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基等が挙げられる。
(5):アルキルメルカプト基またはアリールメルカプト基であり、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。
(6):下記一般式(11):
Figure 2008216297
(式中、R3及びR4は各々独立に水素原子、前記(2)で定義したアルキル基、またはアリール基を表す。R3およびR4は共同で環を形成してもよい。)が挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基又はナフチル基が挙げられ、これらはC1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4アルキル基又はハロゲン原子を置換基として含有してもよい。
具体的には、アミノ基、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(トリール)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリジノ基等が挙げられる。
(7):メチレンジオキシ基、又はメチレンジチオ基等のアルキレンジオキシ基又はアルキレンジチオ基等が挙げられる。
(8):置換又は無置換のスチリル基、置換又は無置換のβ−フェニルスチリル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジトリルアミノフェニル基等が挙げられる。
一般式(3)、(4)において、Ar1、Ar2で表されるアリーレン基としては、前記Ar3、Ar4で表されるアリール基から誘導される2価基が挙げられる。
一般式(3)、(4)において、Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。
前記置換もしくは無置換のアルキレン基としては、C1〜C12、好ましくはC1〜C8
さらに好ましくはC1〜C4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であり、これらのアルキレン基にはさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。
具体的には、メチレン基、エチレン基、n−ブチレン基、i−プロピレン基、t−ブチレン基、s−ブチレン基、n−プロピレン基、トリフルオロメチレン基、2−ヒドロキエチレン基、2−エトキシエチレン基、2−シアノエチレン基、2−メトキシエチレン基、ベンジリデン基、フェニルエチレン基、4−クロロフェニルエチレン基、4−メチルフェニルエチレン基、4−ビフェニルエチレン基等が挙げられる。
前記置換もしくは無置換のシクロアルキレン基としては、C5〜C7の環状アルキレン基であり、これらの環状アルキレン基にはフッ素原子、水酸基、C1〜C4のアルキル基、C1〜C4のアルコキシ基を有していてもよい。具体的には、シクロヘキシリデン基、シクロへキシレン基、3,3−ジメチルシクロヘキシリデン基等が挙げられる。
前記置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基としては、エチレンオキシ、プロピレンオキシ、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールを表し、アルキレンエーテル基アルキレン基はヒドロキシル基、メチル基、エチル基等の置換基を有してもよい。
前記ビニレン基としては、下記一般式(12)または一般式(13)で示される基等が挙げられる。
Figure 2008216297
[式中、R5は水素、アルキル基〔前記(2)で定義されるアルキル基と同じ〕、アリール基〔前記一般式(3)、(4)においてAr3、Ar4で定義されるアリール基と同じ〕を表し、aは1または2を、bは1〜3の整数を表す。]
前記Zは置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、アルキレンオキシカルボニル基を表す。置換もしくは無置換のアルキレン基としは、前記Xのアルキレン基と同様なものが挙げられる。置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基としては、前記Xのアルキレンエーテル基が挙げられる。
また、アルキレンオキシカルボニル基としては、カプロラクトン変性基が挙げられる。
前記本発明における電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物として更に好ましくは、下記一般式(5)の構造を有する化合物が挙げられる。
Figure 2008216297

[式(5)中、o、p、qはそれぞれ0又は1の整数、Raは水素原子又はメチル基を表し、Rb、Rcは水素原子以外の置換基で炭素数1〜6のアルキル基を表し、複数の場合は異なってもよい。s、tは0〜3の整数を表す。Zaは単結合、メチレン基、エチレン基、あるいは下記式(6)、(7)、(8)で示される2価基を表す。]
Figure 2008216297
上記一般式(5)で表される化合物としては、Rb、Rcの置換基として、特にメチル基、エチル基である化合物が好ましい。
本発明で用いる上記一般式(3)及び(4)、特に(5)に示す電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物は、炭素−炭素間の二重結合が両側に開放されて重合するため、末端構造とはならず、連鎖重合体中に組み込まれ、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーとの重合で架橋形成された重合体中では、高分子の主鎖中に存在し、かつ主鎖−主鎖間の架橋鎖中に存在する(この架橋鎖には1つの高分子と他の高分子間の分子間架橋鎖と、1つの高分子内で折り畳まれた状態の主鎖のある部位と主鎖中でこれから離れた位置に重合したモノマー由来の他の部位とが架橋される分子内架橋鎖とがある)。そのため、主鎖中に存在する場合であってもまた架橋鎖中に存在する場合であっても、鎖部分から懸下するトリアリールアミン構造は、窒素原子から放射状方向に配置する少なくとも3つのアリール基を有し、バルキーであるが鎖部分に直接結合しておらず、鎖部分からカルボニル基等を介して懸下しているため、立体的位置取りに融通性ある状態で固定されている。したがって、これらトリアリールアミン構造は重合体中で相互に程よく隣接する空間配置が可能であるため、分子内の構造的歪みが少なく、また、像担持体の表面層とされた場合に、電荷輸送経路の断絶を比較的免れた分子内構造を採りうるものと推測される。
本発明で用いられる電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物は、例えば、特許第3164426号明細書に記載の方法により合成することができる。
電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物の具体例を以下に示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではない。
先ず、本発明における電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物の具体例を下記、No.1〜No.160に示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではない。
Figure 2008216297
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次に、本発明における電荷輸送性構造を有する2官能のラジカル重合性化合物の具体例を下記、No.161〜No.363に示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではない。
Figure 2008216297
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さらに本発明における電荷輸送性構造を有する3官能のラジカル重合性化合物の具体例をNo.364〜No.383に示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではない。
Figure 2008216297
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また、本発明に用いられる電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物は、表面層(架橋表面層)の電荷輸送性能を付与するために重要で、この成分は架橋表面層全量に対し20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%である。この成分が20重量%未満では架橋表面層の電荷輸送性能が充分に保てず、繰り返しの使用で感度低下、残留電位上昇などの電気特性の劣化が現れる。また、80重量%を超えると電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーの含有量が低下し、架橋結合密度の低下を招いて高い耐摩耗性が発揮されない。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70重量%の範囲が最も好ましい。
本発明における表面層は、後述するように感光層の層構成によっても異なるが、例えば、
感光層の表面部(例:図1(B)、図2(B))に、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物と、光重合開始能を有するオキシムエステル化合物とを組成分として含む塗布液を塗工し、光エネルギー照射により硬化して形成することができる。この際、前記組成分以外に塗工時の粘度調整、架橋表面層の応力緩和、低表面エネルギー化や摩擦係数低減などの機能付与の目的で、1官能及び2官能のラジカル重合性モノマー及びラジカル重合性オリゴマーを併用することができる。これらのラジカル重合性モノマー、オリゴマーとしては、公知のものが利用できる。
1官能のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマーなどが挙げられる。
2官能のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、EO変性ビスフェノールFジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられる。
機能性モノマーとしては、例えば、オクタフルオロペンチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチルアクリレートなどのフッ素原子を置換したもの、特公平5−60503号公報、特公平6−45770号公報記載のシロキサン繰り返し単位:20〜70のアクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、メタクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、アクリロイルポリジメチルシロキサンプロピル、アクリロイルポリジメチルシロキサンブチル、ジアクリロイルポリジメチルシロキサンジエチルなどのポリシロキサン基を有するビニルモノマー、アクリレート及びメタクリレートが挙げられる。
ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系オリゴマーが挙げられる。但し、1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーやラジカル重合性オリゴマーを多量に含有させると架橋表面層の3次元架橋結合密度が実質的に低下し、耐摩耗性の低下を招く。このためこれらのモノマーやオリゴマーの含有量は、3官能以上のラジカル重合性モノマー100重量部に対し50重量部以下、好ましくは30重量部以下に制限される。
次に、光重合開始能を有するオキシムエステル化合物について説明する。
すなわち、本発明におけるオキシムエステル化合物は光重合開始能を有しており、ラジカル重合性化合物の反応を促進するものである。
オキシムエステル化合物としては、J.C.S. Perkin II (1979 )1653-1660)、J.C.S.Perkin II (1979)156-162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202-232、特開2000−66385号公報記載の化合物、特開2000−80068号公報等に記載の化合物が挙げられる。例えば、下記No.384〜No.406に示す構造式の化合物等が例示されるが、これら例示のオキシムエステル化合物に限定されるものではなく、それ以外のオキシムエステル化合物でもかまわない。
Figure 2008216297
Figure 2008216297
このオキシムエステル化合物の中で、好ましくはNO.401[前記構造式(1)]、NO.402[前記構造式(2)]が良好である。これらのオキシムエステル化合物は、単独で使用するだけではなく、別の光重合開始剤、熱重合開始剤と混合して使用してもかまわない。好ましくはチオキサントン化合物、アセトフェノン化合物と混合することが良好である。
オキシムエステル化合物は、光エネルギー照射によりラジカル重合性化合物の架橋反応促進性が非常に大きく、短時間で架橋密度が大きくなる。しかし、オキシムエステル化合物で光硬化させた膜を有する像担持体は、露光部電位がわずかに上昇する傾向(副作用)がある。しかし、オキシムエステル化合物にチオキサントン化合物又はアセトフェノン化合物を混合した場合、この露光部電位上昇の副作用が低減され、耐摩耗性が高く、且つ電気特性に優れた像担持体が提供できる。
チオキサントン化合物としては、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、4−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンが挙げられる。
また、アセトフェノン化合物としては、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−[4−モルフォリノフェニル]−ブタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1-ヒドロキシ−シクロヘキシル-フェニル-ケトン等が挙げられる。
さらに、オキシムエステル化合物、チオキサントン化合物、アセトフェノン化合物以外に、他の光重合開始剤を混合使用してもかまわない。
その他の光重合開始剤の例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、などのベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン、などのベンゾフェノン系光重合開始剤、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物、などが挙げられる。
また、光重合促進効果を有するものを単独または上記光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、などが挙げられる。
これらの重合開始剤の含有量は、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー、電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物などラジカル重合性を有する化合物の総含有物100重量部に対し、0.5〜40重量部、好ましくは1〜20重量部である。またオキシムエステル化合物とチオキサントン、もしくはオキシムエステル化合物とアセトフェノン化合物を混合する場合は、それぞれ1/9〜9/1の範囲がよく、さらには3/7〜7/3の範囲が好ましい。
更に、本発明の表面層を塗布形成するために用いる前記塗工液は、応力緩和や接着性向上の目的など必要に応じて、各種可塑剤、塗工時のレベリングのためのシリコーンオイル、ラジカル反応性を有しない低分子電荷輸送物質などの添加剤を含有することができる。これらの添加剤は公知のものが使用可能であり、可塑剤としてはジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂に使用されているものが利用可能で、その使用量は塗工液の総固形分に対し20重量%以下、好ましくは10%以下に抑えられる。
本発明の表面層は、前述のように少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーとラジカル重合性官能基を有する1官能以上の電荷輸送性化合物と光重合開始剤としてオキシムエステル化合物を含有する塗工液を用いて塗布し、光エネルギーを照射することにより形成され、かかる塗工液はラジカル重合性モノマーが液体である場合、これに他の成分を溶解して塗布することも可能であるが、必要に応じて溶媒により希釈して塗布される。
このとき用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテルなどのエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテートなどのセロソルブ系などが挙げられる。
これらの溶媒は単独または2種以上を混合して用いてもよい。溶媒による希釈率は組成物の溶解性、塗工法、目的とする膜厚により変り、任意に選択される。塗布は、前述のように浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行なうことができる。
本発明においては、前記塗工液を塗布後、外部から光エネルギーを与えて硬化させ、表面層(架橋表面層)を形成するものである。光のエネルギーとしては主に紫外光に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプなどのUV照射光源が利用できるが、ラジカル重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせて可視光光源の選択も可能である。
照射光強度及び照射時間は、用いる電荷輸送構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー種、電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物種、オキシムエステル種、チオキサントン種、アセトフェノン種、その他添加剤(重合開始剤、フィラー等)種により、最適値が異なる。
一般的には照射光強度は、300mW/cm2以上、1500mW/cm2以下が好ましく、300mW/cm2未満では十分な硬化が進まず、1500mW/cm2より強いと反応の進行が不均一となり、架橋表面層の荒れが激しくなる。
照射時間は、照射光強度にもよるが、一般的には20秒以上、300秒以内が好ましい。照射時間が短い場合、十分な硬化が進まず、300秒以上では、光照射による感光層膜の劣化反応が問題となり、像担持体の静電特性に対して影響を及ぼす。
また光エネルギー照射時の雰囲気は、光ラジカル重合時に酸素によるラジカルクエンチを低減させるために、酸素濃度2vol%以下であることが好ましい。この場合、光エネルギー照射反応槽内を窒素、ヘリウム、アルゴン等を送り込み、槽内の空気を置換する。
本発明の表面層の膜厚は、表面層が用いられる像担持体の層構造によって異なるため、層構造とともに以降に記載する。
本発明における表面層(架橋表面層)の形成材料を用いた場合において、塗工方法について例示すると、例えば、塗工液として、3個のアクリロイルオキシ基を有するアクリレートモノマーと、一個のアクリロイルオキシ基を有するトリアリールアミン化合物を使用する場合、これらの使用割合は7:3から3:7であり、また、重合開始剤をこれらアクリレート化合物全量に対し3〜20重量%添加し、さらに溶媒を加えて塗工液を調製する。
例えば、架橋表面層の下層となる電荷輸送層において、電荷輸送物質としてトリアリールアミン系ドナー、及びバインダー樹脂として、ポリカーボネートを使用し、架橋表面層をスプレー塗工により形成する場合、上記塗工液の溶媒としては、テトラヒドロフラン、2−ブタノン、酢酸エチル等が好ましく、その使用割合は、アクリレート化合物全量に対し3倍量〜10倍量である。
硬化し、作製された架橋表面層は、有機溶媒に対して、不溶であることが好ましく、硬化が充分でない膜は、有機溶媒に対して、可溶であり、耐摩耗性、耐傷性が低くなる。
本発明における像担持体の製造方法の一例を挙げると、例えば、アルミシリンダー等の支持体上に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を順次積層した後、電荷輸送層上に、上記調製した塗工液をスプレー等により塗布する。その後、比較的低温で短時間乾燥し(25〜80℃、1〜10分間)、光エネルギー照射して硬化させる。光エネルギー照射時にはドラム温度が150℃を超えないように制御することが好ましい。硬化終了後は、残留溶媒低減のため100〜150℃で10分〜30分加熱して、本発明の像担持体を得る。
次に、本発明の像担持体の層構造について図面に基づいて説明する。
<像担持体の層構造について>
図1は、本発明における像担持体の層構造の一例を示す断面図である。
図1(A)は、導電性支持体(31)上に、表面層34が設けられた単層構造である。この場合に表面層34は電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する。
図1(B)は、導電性支持体(31)上に、感光層(33)が設けられ、その感光層(33)の表面部が表面層(34)からなる単層構造である。すなわち、感光層(33)における表面層(34)の下部は、電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層である。
図2は、本発明における像担持体の層構造の別例を示す断面図である。
図2(A)は、導電性支持体(31)上に、電荷発生機能を有する電荷発生層(35)と、表面層34とが積層された積層構造である。この場合に表面層34は電荷輸送の層として機能する。
図2(B)は、導電性支持体(31)上に、電荷発生機能を有する電荷発生層(35)と、電荷輸送物機能を有する電荷輸送層(37)とが積層され、その電荷輸送層(37)の表面部が表面層(34)からなる積層構造である。すなわち、電荷輸送層(37)における表面層(34)の下部は、電荷輸送物機能を有する電荷輸送層である。
<導電性支持体について>
導電性支持体(31)としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理を施した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に記載されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、本発明の導電性支持体として用いることができる。
この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、また、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。
このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体として良好に用いることができる。
<感光層について>
次に感光層(33)について説明する。感光層は、図1(A)、(B)、図2(A)、(B)に示すように単層構造でも積層構造でもよい。
前述のように積層構造の場合には、感光層は電荷発生機能を有する電荷発生層と電荷輸送機能を有する電荷輸送層とから構成される。また、単層構造の場合には、感光層は電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層である。以下、積層構造である感光層、及び単層構造である感光層のそれぞれについて説明する。
<積層構造である感光層(電荷発生層と電荷輸送層とで構成されるもの)>
(電荷発生層)
電荷発生層(35)は、電荷発生機能を有する電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダー樹脂を併用することもできる。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
無機系材料には、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファス・シリコン等が挙げられる。アモルファス・シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。
一方、有機系材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
電荷発生層に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。これらのバインダー樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。また、電荷発生層のバインダー樹脂として上述のバインダー樹脂の他に、電荷輸送機能を有する高分子電荷輸送物質、例えば、アリールアミン骨格やベンジジン骨格やヒドラゾン骨格やカルバゾール骨格やスチルベン骨格やピラゾリン骨格等を有するポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリシロキサン、アクリル樹脂等の高分子材料(AP)やポリシラン骨格を有する高分子材料(PS)等を用いることができる。
前者(AP)の具体的な例としては、特開平01−001728号公報、特開平01−009964号公報、特開平01−013061号公報、特開平01−019049号公報、特開平01−241559号公報、特開平04−011627号公報、特開平04−175337号公報、特開平04−183719号公報、特開平04−225014号公報、特開平04−230767号公報、特開平04−320420号公報、特開平05−232727号公報、特開平05−310904号公報、特開平06−234836号公報、特開平06−234837号公報、特開平06−234838号公報、特開平06−234839号公報、特開平06−234840号公報、特開平06−234841号公報、特開平06−239049号公報、特開平06−236050号公報、特開平06−236051号公報、特開平06−295077号公報、特開平07−056374号公報、特開平08−176293号公報、特開平08−208820号公報、特開平08−211640号公報、特開平08−253568号公報、特開平08−269183号公報、特開平09−062019号公報、特開平09−043883号公報、特開平09−71642号公報、特開平09−87376号公報、特開平09−104746号公報、特開平09−110974号公報、特開平09−110976号公報、特開平09−157378号公報、特開平09−221544号公報、特開平09−227669号公報、特開平09−235367号公報、特開平09−241369号公報、特開平09−268226号公報、特開平09−272735号公報、特開平09−302084号公報、特開平09−302085号公報、特開平09−328539号公報等に記載の電荷輸送性高分子材料が挙げられる。
また、後者(PS)の具体例としては、例えば特開昭63−285552号公報、特開平05−19497号公報、特開平05−70595号公報、特開平10−73944号公報等に記載のポリシリレン重合体が例示される。
また、電荷発生層(35)には低分子電荷輸送物質を含有させることができる。
電荷発生層に併用できる低分子電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
電子輸送物質としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体などの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
正孔輸送物質としては、以下に示す電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。
正孔輸送物質としては、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、その他公知の材料が挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
電荷発生層(35)を形成する方法としては、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とに大きく分けられる。
前者の真空薄膜作製法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられ、上述した無機系材料、有機系材料が良好に形成できる。
また、後述のキャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。また、必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行なうことができる。
以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
(電荷輸送層について)
電荷輸送層(37)は電荷輸送機能を有する層であり、本発明の電荷輸送性構造を有する表面層(架橋表面層)は、それ自身電荷輸送層として有用に用いられる。
例えば、前記図2(A)で示した構成のように、電荷発生層上に、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物と電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物と、光重合開始能を有するオキシムエステル化合物を含む塗工液を塗布し、必要に応じて乾燥後、外部エネルギーにより硬化反応を行って表面層を形成することができる。
このとき、架橋表面層の膜厚は、10〜30μm、好ましくは10〜25μmである。10μmより薄いと充分な帯電電位が維持できず、30μmより厚いと硬化時の体積収縮により下層との剥離が生じやすくなる。
また、前記図2(B)で示した構成のように、電荷輸送層の表面部が表面層からなる積層構造である場合、先ず表面層の下部である電荷輸送層を、電荷輸送機能を有する電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散した液を電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成し、次いでこの上に、上記本発明の塗工液を塗布し外部エネルギーにより硬化反応を行って架橋表面層を形成することができる。
電荷輸送物質としては、前記電荷発生層で記載した電子輸送物質、正孔輸送物質及び高分子電荷輸送物質を用いることができる。前述したように高分子電荷輸送物質を用いることにより、表面層塗工時の下層の溶解性を低減でき、とりわけ有用である。
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
電荷輸送物質の量は結着樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。但し、高分子電荷輸送物質を用いる場合は、単独でも結着樹脂との併用も可能である。
表面層の下部である電荷輸送層(前記図2(B)で示した構成)の塗工に用いられる溶媒としては前記電荷発生層と同様なものが使用できるが、電荷輸送物質及び結着樹脂を良好に溶解するものが適している。これらの溶剤は単独で使用しても2種以上混合して使用してもよい。また、表面層の下部である電荷輸送層(以下、「電荷輸送層の下層部分」と表現することがある。)の形成には電荷発生層と同様な塗工法が可能である。
また、必要により可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。
電荷輸送層の下層部分に併用できる可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等、一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂100重量部に対して0〜30重量部程度が適当である。
電荷輸送層の下層部分に併用できるレベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、結着樹脂100重量部に対して0〜1重量部程度が適当である。
電荷輸送層の下層部分の膜厚は、5〜40μm程度が適当であり、好ましくは10〜30μm程度が適当である。
表面層が電荷輸送層の表面部である場合(図2(B)、前述の架橋表面層作製方法において記載したように、かかる電荷輸送層の下層部分上に本発明のラジカル重合性組成物を含有する塗工液を塗布、必要に応じて乾燥後、熱や光の外部エネルギーにより硬化反応を開始させ、架橋表面層が形成される。このとき、架橋表面層の膜厚は、1〜20μm、好ましくは5〜15μmである。1μmより薄いと膜厚ムラによって耐久性がバラツキ、20μmより厚いと電荷輸送層全体の膜厚が厚くなり電荷の拡散から画像の再現性が低下する。
<単層構造である感光層>
単層構造の感光層は電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層で、本発明の電荷輸送性構造を有する表面層は電荷発生機能を有する電荷発生物質を含有させることにより、単層構造の感光層として有用に用いられる。
前述のように、導電性支持体上に表面層を兼ねる感光層を設けた構成(図1(A))、あるいは導電性支持体上に、表面部に表面層を有する感光層を設けた構成(図1(B))とすることができる。
例えば、上記の電荷発生層のキャスティング形成方法において記載したように、電荷発生物質をラジカル重合性組成物を含有する塗工液と共に分散し、電荷発生層上に塗布、必要に応じて乾燥後、外部エネルギーにより硬化反応を開始させ、表面層(架橋表面層)が形成される。
なお、電荷発生物質はあらかじめ溶媒と共に分散した液を本架橋表面層用塗工液に加えてもよい。このとき、架橋表面層の膜厚は、10〜30μm、好ましくは10〜25μmである。10μmより薄いと充分な帯電電位が維持できず、30μmより厚いと硬化時の体積収縮により導電性基体または下引き層との剥離が生じやすくなる。
表面層が単層構造の感光層の表面部である場合(図1(B))、表面層の下部である感光層(以下、「感光層の下層部分」と表現することがある。)は、電荷発生機能を有する電荷発生物質と電荷輸送機能を有する電荷輸送物質と結着樹脂を適当な溶媒に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。また、必要により可塑剤やレベリング剤等を添加することもできる。
電荷発生物質の分散方法、それぞれ電荷発生物質、電荷輸送物質、可塑剤、レベリング剤は前記電荷発生層、電荷輸送層において既に述べたものと同様なものが使用できる。結着樹脂としては、先に電荷輸送層の項で挙げた結着樹脂のほかに、電荷発生層で挙げたバインダー樹脂を混合して用いてもよい。また、先に挙げた高分子電荷輸送物質も使用可能で、架橋表面層への下層感光層組成物の混入を低減できる点で有用である。かかる感光層の下層部分の膜厚は、5〜30μm程度が適当であり、好ましくは10〜25μm程度が適当である。
架橋表面層が単層構造の感光層の表面部である場合、前述のようにかかる感光層の下層部分上に本発明のラジカル重合性組成物と電荷発生物質を含有する塗工液を塗布、必要に応じて乾燥後、熱や光の外部エネルギーにより硬化し、架橋表面層を形成する。このとき、架橋表面層の膜厚は、1〜20μm、好ましくは2〜10μmである。1μmより薄いと膜厚ムラによって耐久性のバラツキが生じる。
単層構造の感光層中に含有される電荷発生物質は感光層全量に対し1〜30重量%が好ましく、感光層の下層部分に含有される結着樹脂は全量の20〜80重量%、電荷輸送物質は10〜70重量部が良好に用いられる。
<中間層について>
本発明の像担持体においては、架橋表面層が感光層の表面部分となる場合、架橋表面層への下層成分混入を抑えたり又は下層との接着性を改善する目的で中間層を設けることが可能である。この中間層はラジカル重合性組成物を含有する最表面層中に下部感光層組成物の混入により生ずる、硬化反応の阻害や架橋表面層の凹凸を防止する。また、下層の感光層と架橋表面層の接着性を向上させることも可能である。
中間層には、一般にバインダー樹脂を主成分として用いる。これら樹脂としては、ポリアミド、アルコール可溶性ナイロン、水溶性ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。中間層の形成法としては、前述のごとく一般に用いられる塗工法が採用される。なお、中間層の厚さは0.05〜2μm程度が適当である。
<下引き層について>
本発明の像担持体においては、導電性支持体と感光層との間に下引き層を設けることができる。下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。
このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、下引き層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
これらの下引き層は、前述の感光層の如く適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、本発明の下引き層には、Al23を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO2、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は0〜5μmが適当である。
<各層への酸化防止剤の添加について>
また、本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、架橋表面層、電荷発生層、電荷輸送層、下引き層、中間層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。
本発明に用いることができる酸化防止剤として、下記のものが挙げられる。
(フェノール系化合物)
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類など。
(パラフェニレンジアミン類)
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
(ハイドロキノン類)
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
(有機硫黄化合物類)
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなど。
(有機燐化合物類)
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
上記各化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
本発明における酸化防止剤の添加量は、添加する層の総重量に対して0.01〜10重量%である。
<画像形成方法及び装置について>
次に図面に基づいて本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置を詳しく説明する。
本発明の画像形成方法は、前述の像担持体を用いて、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写を繰り返し行なうことを特徴とするものである。また、本発明の画像形成装置は、前述の像担持体を少なくとも備えたことを特徴とするものである。
すなわち、本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置とは、前記平滑な電荷輸送性架橋表面層を有する像担持体を用い、例えば、少なくとも像担持体に帯電、画像露光、現像の過程を経た後、画像保持体(転写紙)へのトナー画像の転写、定着及び像担持体表面のクリーニングというプロセスからなるものであるが、場合により、静電潜像を直接転写体に転写し現像する画像形成方法等では、像担持体に配した上記プロセスを必ずしも有するものではない。
ここで、本発明における画像形成装置の形態の一つについて、図3を参照して説明する。
図3は、本発明における画像形成装置の構成例を示す概略図である。図3において、像担持体(1)は、導電性支持体上に少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物と電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物と、光重合開始能を有するオキシムエステル化合物とから光エネルギー照射により形成された架橋構造からなる表面層(硬化樹脂層)を有するものである。
そして、像担持体を平均的に帯電させる手段として、帯電チャージャ(3)が用いられる。この帯電手段としては、コロトロンデバイス、スコロトロンデバイス、固体放電素子、針電極デバイス、ローラー帯電デバイス、導電性ブラシデバイス等が用いられ、公知の方式が使用可能である。
次に、均一に帯電された像担持体(1)上に静電潜像を形成するために画像露光部(5)が用いられる。この光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
次に、像担持体(1)上に形成された静電潜像を可視化するために現像ユニット(6)が用いられる。現像方式としては、乾式トナーを用いた一成分現像法、二成分現像法、湿式トナーを用いた湿式現像法がある。像担持体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、像担持体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
次に、像担持体上で可視化されたトナー像を転写体(9)上に転写するために転写チャージャ(10)が用いられる。また、転写をより良好に行なうために転写前チャージャ(7)を用いてもよい。これらの転写手段としては、転写チャージャ、バイアスローラーを用いる静電転写方式、粘着転写法、圧力転写法等の機械転写方式、磁気転写方式が利用可能である。静電転写方式としては、前記帯電手段が利用可能である。
次に、転写体(9)を像担持体(1)より分離する手段として分離チャージャ(11)、分離爪(12)が用いられる。その他分離手段としては、静電吸着誘導分離、側端ベルト分離、先端グリップ搬送、曲率分離等が用いられる。分離チャージャ(11)としては、前記帯電手段が利用可能である。
次に、転写後像担持体上に残されたトナーをクリーニングするためにファーブラシ(14)、クリーニングブレード(15)が用いられる。また、クリーニングをより効率的に行なうためにクリーニング前チャージャ(13)を用いてもよい。その他クリーニング手段としては、ウェブ方式、マグネットブラシ方式等があるが、それぞれ単独又は複数の方式を一緒に用いてもよい。
次に、必要に応じて像担持体上の潜像を取り除く目的で除電手段が用いられる。除電手段としては除電ランプ(2)、除電チャージャが用いられ、それぞれ前記露光光源、帯電手段が利用できる。その他、像担持体に近接していない原稿読み取り、給紙、定着、排紙等のプロセスは公知のものが使用できる。なお、図3において、符号4はイレーサ、符号8はレジストローラ、符号12は分離爪を示す。
本発明は、このような画像形成手段に本発明に係る像担持体を用いる画像形成方法及び画像形成装置である。この画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形態でそれら装置内に組み込まれ、着脱自在としたものであってもよい。本発明における画像形成装置用のプロセスカートリッジの一例を図4の概略図に示す。
画像形成装置用プロセスカートリッジとは、像担持体(101)を内蔵し、他に帯電手段(102)、現像手段(104)、転写手段(106)、クリーニング手段(107)、除電手段(図示せず)の少なくとも一つを具備し、画像形成装置本体に着脱可能とした装置(部品)である。
図4に例示される装置による画像形成プロセスについて示すと、像担持体(101)は、矢印方向に回転しながら、帯電手段(102)による帯電、露光手段(103)による露光により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成され、この静電潜像は、現像手段(104)でトナー現像され、該トナー現像は転写手段(106)により、転写体(105)に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の像担持体表面は、クリーニング手段(107)によりクリーニングされ、さらに除電手段(図示せず)により除電されて、再び以上の操作を繰り返すものである。
本発明は、本架橋表面層を有した像担持体と帯電、現像、転写、クリーニング、除電手段の少なくとも一つを一体化した画像形成装置用プロセスカートリッジを提供するものである。
以上の説明から明らかなように、本発明の像担持体は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンター及びレーザー製版等の電子写真応用分野にも広く用いることができるものである。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により制約を受けるものではない。なお、「部」はすべて重量部である。
以降の実施例、および比較例の架橋表面層用塗工液の処方に用いる電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物を以下により合成した。
(合成例1)
<1官能の電荷輸送性構造を有する化合物の合成例;例示化合物No.54の合成>
例示化合物No.54の合成を以下の手順で実施した。
(1)ヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物の合成:
下記構造式(A)で示されるメトキシ基置換トリアリールアミン化合物113.85g(0.3mol)と、ヨウ化ナトリウム138g(0.92mol)にスルホラン240mlを加え、窒素気流中で60℃に加温した。
Figure 2008216297
上記液中にトリメチルクロロシラン99g(0.91mol)を1時間で滴下し、約60℃の温度で4時間半撹拌し反応を終了させた。この反応液にトルエン約1.5Lを加え室温まで冷却し、水と炭酸ナトリウム水溶液で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン:酢酸エチル=20:1)にて精製した。得られた淡黄色オイルにシクロヘキサンを加え、結晶を析出させた。この様にして下記構造式(B)のヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物を得た。
Figure 2008216297
得られた上記構造式(B)のヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物は、88.1g(収率=80.4%)であり、白色結晶で、融点が64.0〜66.0℃であった。元素分析の結果を下記表1に示す。実測値と計算値が良く一致しており目的物であることが確認された。
Figure 2008216297
(2)トリアリールアミノ基置換アクリレート化合物 (例示化合物No.54)の合成:
上記(1)で得られたヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物〔構造式(B)〕82.9g(0.227mol)をテトラヒドロフラン400mlに溶解し、窒素気流中で水酸化ナトリウム水溶液(NaOH:12.4g,水:100ml)を滴下した。この溶液を5℃に冷却し、アクリル酸クロライド25.2g(0.272mol)を40分かけて滴下した。その後、5℃で3時間撹拌して反応を終了させた。この反応液を水に注ぎ、トルエンにて抽出した。この抽出液を炭酸水素ナトリウム水溶液と水で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン)にて精製した。得られた無色のオイルにn−ヘキサンを加え、結晶を析出させ、例示化合物No.54の電荷輸送性構造を持つ化合物を得た。
得られた化合物は、80.73g(収率=84.8%)であり、白色結晶で融点が117.5〜119.0℃であった。元素分析の結果を下記表2に示す。実測値と計算値が良く一致しており目的物であることが確認された。
Figure 2008216297
(実施例1)
Al製支持体(外径30mmφ)に、下引き層用塗工液を用いて乾燥後の膜厚が3.6μmになるように浸漬法で塗工し、下引き層を形成した。
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂
(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業製): 6部
メラミン樹脂
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業製): 4部
酸化チタン(CR−EL:石原産業): 40部
メチルエチルケトン: 50部
この下引き層上に下記組成のビスアゾ顔料を含む電荷発生層塗工液に浸漬塗工し、加熱乾燥させ、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造式(C)のビスアゾ顔料: 2.5部
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC製): 0.5部
シクロヘキサノン: 200部
メチルエチルケトン: 80部
Figure 2008216297
この電荷発生層上に下記組成の電荷輸送層用塗工液を用いて、浸積塗工し、加熱乾燥させ、膜厚22μmの電荷輸送層とした。
〔電荷輸送層用塗工液〕
ビスフェノールZ型ポリカーボネート: 10部
下記構造式(D)の低分子電荷輸送物質: 10部
テトラヒドロフラン: 80部
1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液
(KF50、信越化学工業製): 0.2部
Figure 2008216297
電荷輸送層上に下記組成の架橋表面層塗工液を用いて、スプレー塗工し、メタルハライドランプ、照射光強度:700mW/cm2、照射時間:240秒、酸素濃度0.5〜1.5vol%(窒素置換)の条件で光照射を行ない、更に130℃で30分乾燥を加え9.0μmの架橋表面層を設け、本発明の像担持体を得た。
〔架橋表面層塗工液〕
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー[
トリメチロールプロパントリアクリレート(KAYARAD TMPTA、
日本化薬製): 9部
電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物[合成例1で
合成したラジカル重合性化合物(例示化合物No.54) ]: 9部
光重合開始剤[1−フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(0-エトキシ
カルボニル)オキシム〔Quantacure PDO、ACETO製〕]:2部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン;
テトラヒドロフラン: 80部
(実施例2)
実施例1において、架橋表面層塗工液中の光重合開始剤を下記構造式(E)のオキシムエステル化合物(PAI−101、みどり化学社製)とすること以外はすべて実施例1と同じにして電荷輸送層上に表面層を設け、本発明の像担持体を作製した。
Figure 2008216297
(実施例3)
実施例1において、架橋表面層塗工液中の光重合開始剤を下記構造式(1)のオキシムエステル化合物(OXE01、チバスペシャルケミカルズ製)とすること以外はすべて実施例1と同じにして電荷輸送層上に表面層を設け、本発明の像担持体を作製した。
Figure 2008216297
(実施例4)
実施例1において、架橋表面層塗工液中の光重合開始剤を下記構造式(2)のオキシムエステル化合物(OXE02、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)とすること以外はすべて実施例1と同じにして電荷輸送層上に表面層を設け、本発明の像担持体を作製した。
Figure 2008216297
(実施例5)
実施例1において、架橋表面層塗工液中の光重合開始剤を、実施例3で用いたオキシムエステル化合物 (OXE01、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)と下記構造式(F)のチオキサントン化合物(東京化成製)とを混合比(重量):1/1で混合して使用すること以外はすべて実施例1と同じにして電荷輸送層上に表面層を設け、本発明の像担持体を作製した。
Figure 2008216297
(実施例6)
実施例1において、架橋表面層塗工液中の光重合開始剤を、実施例4で用いたオキシムエステル化合物 (OXE02、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)と実施例5で用いたチオキサントン化合物(東京化成製)とを混合比(重量):1/1で混合して使用すること以外はすべて実施例1と同じにして電荷輸送層上に表面層を設け、本発明の像担持体を作製した。
(実施例7)
実施例1において、架橋表面層塗工液中の光重合開始剤を、実施例3で用いたオキシムエステル化合物 (OXE01、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)と下記構造式(G)のアセトフェノン化合物(I−184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)とを混合比(重量):1/1で混合して使用すること以外はすべて実施例1と同じにして電荷輸送層上に表面層を設け、本発明の像担持体を作製した。
Figure 2008216297
(実施例8)
実施例1において、架橋表面層塗工液中の光重合開始剤を、実施例4で用いたオキシムエステル化合物 (OXE02、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)と実施例7で用いたアセトフェノン化合物(I−184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)とを混合比(重量):1/1で混合して使用すること以外はすべて実施例1と同じにして電荷輸送層上に表面層を設け、本発明の像担持体を作製した。
(実施例9)
実施例1において、架橋表面層塗工液中の電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物を例示化合物NO.182とすること以外はすべて実施例1と同じにして電荷輸送層上に表面層を設け、本発明の像担持体を作製した。
(実施例10)
実施例1において、架橋表面層塗工液中の電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物を例示化合物NO.364とすること以外はすべて実施例1と同じにして電荷輸送層上に表面層を設け、本発明の像担持体を作製した。
(実施例11)
実施例2の架橋表面層塗工液を用い、スプレー塗工し、光照射時間を30秒とすること以外はすべて実施例1と同じにして電荷輸送層上に表面層を設け、本発明の像担持体を作製した。
(実施例12)
実施例2の架橋表面層塗工液を用い、スプレー塗工し、光照射時間を60秒とすること以外はすべて実施例1と同じにして電荷輸送層上に表面層を設け、本発明の像担持体を作製した。
(実施例13)
実施例2の架橋表面層塗工液を用い、スプレー塗工し、光照射時間を120秒とすること以外はすべて実施例1と同じにして電荷輸送層上に表面層を設け、本発明の像担持体を作製した。
(実施例14)
実施例3の架橋表面層塗工液を用い、スプレー塗工し、光照射時間を30秒とすること以外はすべて実施例1と同じにして電荷輸送層上に表面層を設け、本発明の像担持体を作製した。
(実施例15)
実施例3の架橋表面層塗工液を用い、スプレー塗工し、光照射時間を60秒とすること以外はすべて実施例1と同じにして電荷輸送層上に表面層を設け、本発明の像担持体を作製した。
(実施例16)
実施例3の架橋表面層塗工液を用い、スプレー塗工し、光照射時間を120秒とすること以外はすべて実施例1と同じにして電荷輸送層上に表面層を設け、本発明の像担持体を作製した。
(実施例17)
実施例4の架橋表面層塗工液を用い、スプレー塗工し、光照射時間を30秒とすること以外はすべて実施例1と同じにして電荷輸送層上に表面層を設け、本発明の像担持体を作製した。
(実施例18)
実施例4の架橋表面層塗工液を用い、スプレー塗工し、光照射時間を60秒とすること以外はすべて実施例1と同じにして電荷輸送層上に表面層を設け、本発明の像担持体を作製した。
(実施例19)
実施例4の架橋表面層塗工液を用い、スプレー塗工し、光照射時間を120秒とすること以外はすべて実施例1と同じにして電荷輸送層上に表面層を設け、本発明の像担持体を作製した。
(比較例1)
実施例1において、架橋表面層塗工液中の光重合開始剤を、実施例5で用いたチオキサントン化合物とすること以外はすべて実施例1と同じにして電荷輸送層上に表面層を設け、像担持体を作製した。
(比較例2)
実施例1において、架橋表面層塗工液中の光重合開始剤を、実施例7で用いたアセトフェノン化合物とすること以外はすべて実施例1と同じにして電荷輸送層上に表面層を設け、像担持体を作製した。
(比較例3)
実施例1において、架橋表面層塗工液中の光重合開始剤を、下記構造式(H)のミヒラーズケトン化合物(4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン:東京化成製)とすること以外はすべて実施例1と同じにして電荷輸送層上に表面層を設け、像担持体を作製した。
Figure 2008216297
(比較例4)
実施例1において、架橋表面層塗工液中の光重合開始剤を、下記構造式(I)のヒドロキシケトン化合物(I−127:チバ・スペショリティ・ケミカルズ製)とすること以外はすべて実施例1と同じにして電荷輸送層上に表面層を設け、像担持体を作製した。
Figure 2008216297
(比較例5)
比較例2の架橋表面層塗工液を用い、スプレー塗工し、光照射時間を30秒とすること以外はすべて実施例1と同じにして電荷輸送層上に表面層を設け、像担持体を作製した。
(比較例6)
比較例2の架橋表面層塗工液を用い、スプレー塗工し、光照射時間を60秒とすること以外はすべて実施例1と同じにして電荷輸送層上に表面層を設け、像担持体を作製した。
(比較例7)
比較例2の架橋表面層塗工液を用い、スプレー塗工し、光照射時間を120秒とすること以外はすべて実施例1と同じにして電荷輸送層上に表面層を設け、像担持体を作製した。
(比較例8)
実施例1の架橋表面層を設けずに、電荷輸送層膜厚を31μmとすること以外はすべて実施例1と同じにして像担持体を作製した。
(実機通紙試験)
上記作製した実施例1〜19と比較例1〜8の像担持体を用いて実機通紙試験を行った。
すなわち、作製した像担持体を、リコー製imagio Neo270改造機(画像露光光源として655nmの半導体レーザー)を用いて、温度22℃、湿度55%環境で画像面積1%のA4横チャート30万枚の実機通紙試験(A4、NBSリコー製MyPaper、スタート時帯電電位-700V)を実施し、摩耗特性、機内電位、画像評価を行った。
摩耗特性、機内電位、画像評価は以下の条件で実施した。
<摩耗特性>
摩耗量評価は、渦電流式膜厚計(FischerScpoe MMS膜厚計)を用いて、初期からの膜厚減少量を示す。比較例5、比較例6、比較例8は、摩耗量が大きかったため、通紙試験途中で評価を中止した。摩耗特性において各種重合開始剤の光エネルギー照射時間依存性を図5に示す。
<機内電位>
表面電位計(Trek MODEL344)を実機内に組み込み、評価を行った。
<画像評価>
像担持体及び複写機を温度30℃、相対湿度90%の環境に移し、ハーフトーン画像出力を行い初期画像との比較を実施した。すなわち、画像評価は、ハーフトーン画像を出力し、目視にて評価を行った。評価基準は以下による。
良好:○ 、局所的にムラが発生:△、全体的にムラが発生:×
磨耗特性結果を下記表3に、機内電位測定結果を下記表4に、画像評価結果を下記表5にそれぞれ示す。
Figure 2008216297
Figure 2008216297
Figure 2008216297
上記評価結果からわかるように、本発明の像担持体を用いた場合には、いずれも30万枚の実機通紙試験において、摩耗特性、機内電位及び画像評価で優れた結果が得られた。
以上から明らかなように、本発明の像担持体によれば、耐摩耗性が高く、電気的特性も良好であるため、高速で繰り返し使用した場合でも、長期にわたって高耐久性を維持し、感度低下や残留電位上昇などを招くことがなく、地汚れなどによる異常画像の発生もなく、解像度の高い画像を出力することができる。
したがって、本発明の像担持体を画像形成方法、画像形成装置、画像形成装置用のプロセスカートリッジに用いれば、高線速への対応や小径化などの要求に応えることができ、フルカラー化と高速化を両立することが可能である。
本発明における像担持体の層構造の一例(A)、(B)を示す断面図である。 本発明における像担持体の層構造の別例(A)、(B)を示す断面図である。 本発明における画像形成装置の構成例を示す概略図である。 本発明における画像形成装置用のプロセスカートリッジの一例を示す概略図である。 本発明の実施例の摩耗特性評価におけ各種重合開始剤の光エネルギー照射時間依存性を示す図である。
符号の説明
1 像担持体
2 除電ランプ
3 帯電チャージャ
4 イレーサ
5 画像露光部
6 現像ユニット
7 転写前チャージャ
8 レジストローラ
9 転写体(転写紙)
10 転写チャージャ
11 分離チャージャ
12 分離爪
13 クリーニング前チャージャ
14 ファーブラシ
15 クリーニングブレード
31 導電性支持体
33 感光層
34 表面層
35 電荷発生層
37 電荷輸送層
101 像担持体
102 帯電手段
103 露光手段
104 現像手段
105 転写体
106 転写手段
107 クリーニング手段

Claims (15)

  1. 導電性支持体上に少なくとも感光層を有する像担持体において、
    前記感光層は、表面層を備え、該表面層は、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物と電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物と、光重合開始能を有するオキシムエステル化合物とから光エネルギー照射により形成された架橋構造からなる硬化樹脂層であることを特徴とする像担持体。
  2. 前記光重合開始能を有するオキシムエステル化合物のほかにさらにチオキサントン化合物を混合して用いたことを特徴とする請求項1に記載の像担持体。
  3. 前記光重合開始能を有するオキシムエステル化合物のほかにさらにアセトフェノン化合物を混合して用いたことを特徴とする請求項1に記載の像担持体。
  4. 前記オキシムエステル化合物が、下記構造式(1)で示されるものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の像担持体。
    Figure 2008216297
  5. 前記オキシムエステル化合物が、下記構造式(2)で示されるものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の像担持体。
    Figure 2008216297
  6. 前記電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物の官能基数が、1官能であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の像担持体。
  7. 前記電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物の官能基が、アクリロイルオキシ基及び/又はメタクリロイルオキシ基であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の像担持体。
  8. 前記電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物が、分子中にトリアリールアミン構造を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の像担持体。
  9. 前記トリアリールアミン構造を含む電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物が、下記一般式(3)又は(4)で示される一種以上のラジカル重合性化合物であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の像担持体。
    Figure 2008216297

    Figure 2008216297

    [式(3)、(4)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR7(R7は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基もしくはCONR89(R8及びR9は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい)を表し、Ar1、Ar2は置換もしくは未置換のアリーレン基を表し、同一であっても異なってもよい。Ar3、Ar4は置換もしくは未置換のアリール基を表し、同一であっても異なってもよい。Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。Zは置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、アルキレンオキシカルボニル基を表す。m、nは0〜3の整数を表す。]
  10. 前記トリアリールアミン構造を含む電荷輸送性構造を有する1官能以上のラジカル重合性化合物が、下記一般式(5)で示される一種以上のラジカル重合性化合物であることを特徴とする請求項8又は9に記載の像担持体。
    Figure 2008216297

    [式(5)中、o、p、qはそれぞれ0又は1の整数、Raは水素原子又はメチル基を表し、Rb、Rcは水素原子以外の置換基で炭素数1〜6のアルキル基を表し、複数の場合は異なってもよい。s、tは0〜3の整数を表す。Zaは単結合、メチレン基、エチレン基、あるいは下記式(6)、(7)、(8)で示される2価基を表す。]
    Figure 2008216297
  11. 前記電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物の官能基が、アクリロイルオキシ基及び/又はメタクリロイルオキシ基であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の像担持体。
  12. 請求項1乃至11のいずれかに記載の像担持体を用いて、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写を繰り返し行なうことを特徴とする画像形成方法。
  13. 請求項1乃至11のいずれかに記載の像担持体を少なくとも備えたことを特徴とする画像形成装置。
  14. 請求項1乃至11のいずれかに記載の像担持体と、帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び除電手段よりなる群から選ばれた少なくとも一つの手段を具備し、画像形成装置本体と着脱自在に構成されたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
  15. 請求項14に記載のプロセスカートリッジを搭載したことを特徴とする画像形成装置。
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