JP4688718B2 - 電子写真感光体とその製造方法、画像形成装置、プロセスカートリッジ - Google Patents

電子写真感光体とその製造方法、画像形成装置、プロセスカートリッジ Download PDF

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Description

本発明は、高耐久性を有し、長期間にわたって高品質の画像形成が可能な電子写真感光体とその製造方法、およびその長寿命、高性能感光体を使用した画像形成方法、画像形成装置および画像形成用プロセスカートリッジに関する。
近年、電子写真方式を用いた情報処理システム機の発達はめざましく、特に情報をデジタル信号に変換して光によって情報記録を行うレーザープリンタやデジタル複写機は、そのプリント品質、信頼性において向上が著しい。急速に普及しているこれらのレーザープリンタやデジタル複写機は、今後高画質化と同時にさらなる高速化あるいは小型化が要求されている。さらに、最近ではフルカラープリントが可能なフルカラーレーザープリンタやフルカラーデジタル複写機の需要も急激に高くなっている。
フルカラープリントを行う場合には少なくとも4色のトナー画像を重ね合わせる必要があることから、特に装置の高速化並びに小型化がより一層重要な課題とされている。装置の高速化および小型化を実現するためには、それらに用いられる電子写真感光体の感度を向上させるとともに感光体の小径化が必要となる。特に、フルカラー化と高速化を両立させる上で有効なタンデム方式の場合には、少なくとも4本の感光体が装置に内包されるため、感光体の小径化の要求度は非常に高い。
しかし、感光体の小径化が進むに従い、感光体はより過酷な状況で使用されることになるため、従来の感光体ではその交換速度が大幅に早まることになり、特に高速機においてはより一層深刻な問題となる。従って、装置の高速化並びに小型化を実現するためには、同時に用いられる感光体の高感度化だけでなく、大幅な高耐久化が必要不可欠である。
高速で動作させる画像形成装置においては、転写手段として感光体上に形成されたトナー像を記録媒体に直接転写する方式が採用されることが多い。この方式は、記録媒体をベルトで搬送し、感光体表面に接触、もしくは近接位置まで持って行き、記録媒体の裏側より十分なバイアスを印加することにより、感光体表面よりトナー像を記録媒体に移行させる。
高速で動作させる画像形成装置ではマシン設計上、高線速にならざるを得ず、転写効率を上げるため転写バイアスは非常に大きくなる。その結果、トナーが現像された部分とそうでない部分に対応する感光体にかかるハザードが記録媒体を介した場合においても大きく作用して異常画像が発生する。転写バイアスの極性が感光体帯電極性と逆の極性の場合、転写バイアスによって感光体帯電極性と逆の極性にまで帯電すると、光除電ではこの電位をキャンセルすることができず、1回前の静電潜像の履歴が残ってしまいネガ残像が発生する。
一方、装置の高速化に対応するために必要な感光体の高感度化に対しては、量子効率の大きな電荷発生材料が必要不可欠である。有機系高感度感光体としては、電荷発生材料にXRD(CuKα線(波長1.542Å)におけるブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)が少なくとも27.2に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニンが広く用いられており、非常に有効である。
感光体の高耐久化に対しては、画像品質の安定性を高め、特に地汚れの発生を抑制させる必要がある。地汚れ発生のメカニズムとしては、感光体に帯電を施した際に、導電性支持体側に誘起されるそれとは逆極性の電荷が局所的にリークし、感光層さらには感光体の表面へ注入され、その部分が現像されやすくなることに起因すると考えられる。
感光体の繰り返し使用において画像品質に影響を与える二大要因としては、感光体の静電疲労と感光体の摩耗が挙げられる。
前者は、画像形成において帯電や露光が繰り返し行われることにより感光体の疲労が進行し、それによって引き起こされる帯電電位の低下もしくは露光部電位の上昇が画像品質の低下を引き起こす。特に、帯電電位の低下は導電性支持体からの電荷のリークによる影響をさらに増大し、地汚れを顕在化しやすくさせる。
後者においては、感光体の表面層がクリーニング部材などの擦察により摩耗され、それにより感光体表面層の膜厚が減少すると、電界強度の上昇や感光体表面の傷の増加等により画像品質の低下を引き起こす。特に、膜厚減少によって電界強度が上昇すると地汚れの発生を顕著に増加させる。
そのため、感光体の最表面に形成される電荷輸送層あるいは保護層は、耐摩耗性を高める工夫がされてきた。感光層の耐摩耗性を改良する技術としては、(i)架橋型電荷輸送層に硬化性バインダーを用いたもの(例えば、特許文献1参照)、(ii)高分子型電荷輸送物質を用いたもの(例えば、特許文献2参照)、等が挙げられる。また、本出願人は先に、(iii)架橋型電荷輸送層に無機フィラーを分散させたもの(例えば、特許文献3参照)を提案した。
このように、感光体の耐摩耗性を高めることによって電界強度の経時変動を少なくできることから、地汚れの抑制に対しては高い効果が得られる。
しかし、これらの技術の中で、(i)の硬化性バインダーを用いたものは、電荷輸送物質との相溶性が悪いためや重合開始剤、未反応残基などの不純物により残留電位が上昇して画像濃度低下が発生しやすい傾向がある。また、(ii)の高分子型電荷輸送物質を用いたものは、ある程度の耐摩耗性向上が可能であるものの、有機感光体に求められている耐久性を十分に満足させるまでには至っていない。また、高分子型電荷輸送物質は材料の重合、精製が難しく高純度なものが得にくいために材料間の電気的特性が安定しにくい。さらに塗工液が高粘度となる等の製造上の問題を引き起こす場合もある。
(iii)の無機フィラーを分散させたものは、通常の低分子電荷輸送物質を不活性高分子に分散させた感光体に比べて高い耐摩耗性が発揮されるが、無機フィラー表面に存在する電荷トラップにより残留電位が上昇し、画像濃度低下が発生しやすい傾向にある。また、感光体表面の無機フィラーとバインダー樹脂の凹凸が大きい場合には、クリーニング不良が発生し、トナーフィルミングや画像流れの原因となることがある。
したがって、上記(i)、(ii)、(iii)の技術では、地汚れ抑制に有効な場合があっても、残留電位やクリーニング性等に不具合があり、それによって生じる画像欠陥の影響から、耐久性を十分に満足するには至っていない。
さらに、(i)の耐摩耗性と耐傷性を改良するために多官能のアクリレートモノマー硬化物を含有させた感光体も知られている(特許文献4参照)。
しかし、この感光体においては、感光層上に設けた保護層にこの多官能のアクリレートモノマー硬化物を含有させる旨の記載があるものの、この保護層においては電荷輸送物質を含有せしめてもよいことが記載されているのみで具体的な記載はなく、しかも、単に架橋型電荷輸送層に低分子の電荷輸送物質を含有させた場合には、上記硬化物との相溶性の問題があり、これにより、低分子電荷輸送物質の析出、白濁現象が起こり、露光部電位の上昇により画像濃度が低下するばかりでなく機械強度も低下してしまうことがあった。さらに、この感光体は、具体的には高分子バインダーを含有した状態でモノマーを反応させるため、3次元網目構造の形成が十分に進行せず、架橋結合密度が希薄となるために飛躍的な耐摩耗性を発揮するまでには至っていない。
かた、感光層の耐摩耗技術として、本出願人は先に、炭素−炭素二重結合を有するモノマーと、炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質およびバインダー樹脂からなる塗工液を用いて形成した電荷輸送層を設けることを提案した(例えば、特許文献5参照)。
このバインダー樹脂は電荷発生層と硬化型電荷輸送層の接着性を向上させ、さらに厚膜硬化時の膜の内部応力を緩和させる役割を果たしていると考えられ、炭素−炭素二重結合を有し、上記電荷輸送物質に対して反応性を有するものと、上記二重結合を有さず反応性を持たないものに大別される。この感光体は耐摩耗性と良好な電気的特性を両立しており注目されるが、バインダー樹脂として反応性を有していないものを使用した場合においては、バインダー樹脂と、上記モノマーと電荷輸送物質との反応により生成した硬化物との相溶性が悪く、架橋型電荷輸送層中で層分離が生じ、傷やトナー中の外添剤および紙粉の固着の原因となることがある。また、3次元網目構造が十分に進行せず、架橋結合密度が希薄となるため飛躍的な耐摩耗性を発揮できるまでに至っていない。加えて、この感光体において使用される上記モノマーとして記載されているものは2官能性のものであり、これらの点で耐摩耗性の点では未だ満足するには至らなかった。また、反応性を有するバインダーを使用した場合においても、硬化物の分子量は増大するものの分子間架橋結合数は少なく、上記電荷輸送物質の結合量と架橋密度との両立は難しく、電気特性および耐摩耗性も十分とは言えないものであった。
上記の課題を解決するため、本出願人は、電荷輸送性構造を有していないラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を光エネルギー照射手段によって硬化させた層を保護層として設けることを提案した(例えば、特許文献6、7参照)。
この感光体は保護層中にバインダー樹脂を含有していないため、3次元網目構造が十分に進行し、架橋結合密度が非常に大きくなることから、飛躍的な耐摩耗性を発揮することが可能となる。さらに、電気輸送物質が架橋されるため、耐摩耗性と電気特性の両立が可能となる。
しかしながら、上記架橋膜は通常のバインダー樹脂に電荷輸送材料を分散させた膜と比べて、帯電、露光を繰り返すことで正電荷を保持する能力が極端に低下することがわかっている。その原因はまだ明確になっておらず、架橋膜が何らかの原因により劣化するためではないかと推測している。上述した転写バイアスによって架橋膜を有する感光体が正極性に帯電した場合、正電荷は表面に保持されずに感光層の内部に注入される。その電荷の大部分は感光層の途中でトラップされ、次に負帯電された時に表面に移動して、表面の負電荷を相殺する。その結果、その部分における帯電電位が低下し、露光後ネガ残像となって異常画像を発現する。正電荷保持能力は帯電、露光を繰り返す回数に比例して低下することがわかっている。また架橋膜の劣化は表面層の最表面だけではなく、内部も徐々に劣化していると考えられ、摩耗により内部が露出してきたときには内部の架橋膜もかなり劣化が進んでおりネガ残像はますます悪くなる。
特開昭56−48637号公報 特開昭64−1728号公報 特開平4−281461号公報 特開平8−262779号公報(特許第3262488号明細書) 特許第3194392号公報 特開2004−302450号公報 特開2004−302451号公報
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、高速で繰り返し使用した際にも摩耗などに対して高耐久性を維持し、地汚れなどによる異常画像の発生がなく、安定した状態で画像を出力することが可能な電子写真感光体とその製造方法を提供すると共に、この感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置および画像形成用プロセスカートリッジを提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、以下の(1)〜(19)に記載する発明によって上記課題が解決されることを見出し本発明に至った。以下、本発明について具体的に説明する。
(1):電子写真感光体上に少なくとも静電潜像形成手段、トナーにより可視像を形成する現像手段、前記可視像を感光体に対して正電位を印加して記録媒体に転写する接触方式の転写手段、前記記録媒体に転写された可視像を定着させる定着手段を備えた画像形成装置に配備される、該電子写真感光体であって、
前記感光体は、導電性支持体上に少なくとも感光層と表面層を有し、該表面層が、電荷輸送性構造を持たない3官能以上のラジカル重合性化合物と、1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物との架橋結合により形成された硬化樹脂からなると共に、該硬化樹脂中における架橋結合した電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物の濃度が表面から内部に向けて小さくなることを特徴とする電子写真感光体である。
上記構成とすることにより、高速で繰り返し使用した際にも摩耗などに対して高耐久性を維持し、地汚れなどによる異常画像の発生がなく安定した状態で画像を出力することができる。また、電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物の濃度を膜厚深さ方向で上記のように勾配をつけることにより、繰り返し使用しても感度低下や残留電位上昇などを招くことなく安定して転写することができる。
(2):前記接触方式の転写手段が、電子写真感光体に対して正電位を印加するローラー方式、もしくはベルト方式であることを特徴とする(1)に記載の電子写真感光体である。
転写手段をローラー方式、もしくはベルト方式とすれば、高速での繰り返し使用においても正電位印加により記録媒体に安定して転写することができる。
):前記1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物が、1官能であることを特徴とする(1)または(2)に記載の電子写真感光体である。
1官能の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物を用いることにより、架橋結合により形成される硬化樹脂の剥離摩耗やクラック発生が防止され、感度や残留電位などの電気的特性が良好に持続される。
):前記1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物の官能基が、アクリロイルオキシ基および/またはメタクリロイルオキシ基であることを特徴とする(1)〜()の何れかに記載の電子写真感光体である。
):前記電荷輸送性構造を持たない3官能以上のラジカル重合性化合物の官能基が、アクリロイルオキシ基および/またはメタクリロイルオキシ基であることを特徴とする(1)または(2)に記載の電子写真感光体である。
上記()、()によれば、光エネルギーの照射で容易に架橋結合して硬化樹脂となり、高速、繰り返し使用においても高耐久性を保持すると共に、高画質が得られる表面層が形成される。
):前記1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物が、分子中にトリアリールアミン構造を含むことを特徴とする(1)〜()の何れかに記載の電子写真感光体である。
分子中にトリアリールアミン構造を含む化合物を用いれば、電荷輸送効果の高い表面層が形成される。
):前記トリアリールアミン構造を含む1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物が、下記一般式(1)または(2)で示されることを特徴とする()に記載の電子写真感光体である。
Figure 0004688718
(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR7(R7は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基もしくはCONR89(R8およびR9は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい)を表し、Ar1、Ar2は置換もしくは未置換のアリーレン基を表し、同一であっても異なってもよい。Ar3、Ar4は置換もしくは未置換のアリール基を表し、同一であっても異なってもよい。Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。Zは置換もしくは無置換のアルキレン基またはアラルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、アルキレンオキシカルボニル基を表す。mは0〜3の整数を表す。)
Figure 0004688718
(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR7(R7は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基もしくはCONR89(R8およびR9は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい)を表し、Ar2は置換もしくは未置換のアリーレン基を表し、同一であっても異なってもよい。Ar3、Ar4は置換もしくは未置換のアリール基を表し、同一であっても異なってもよい。Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。Zは置換もしくは無置換のアルキレン基またはアラルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、アルキレンオキシカルボニル基を表す。nは0〜3の整数を表す。)
):前記トリアリールアミン構造を含む1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物が、下記一般式(3)で示されることを特徴とする()に記載の電子写真感光体である。
Figure 0004688718
(式中、o、p、qはそれぞれ0または1の整数、Raは水素原子またはメチル基を表し、Rb、Rcは水素原子以外の置換基で炭素数1〜6のアルキル基を表し、複数の場合は異なっても良い。s、tは0〜3の整数を表す。Zaは単結合、メチレン基、エチレン基、あるいは次式(a)、(b)、(c):
Figure 0004688718
で示される2価基を表す。)
):前記硬化樹脂における架橋結合が、光エネルギーの照射により形成されたものであることを特徴とする(1)〜()の何れかに記載の電子写真感光体である。
前記電荷輸送性構造を持たない3官能以上のラジカル重合性化合物、および1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物はいずれも、ラジカル重合性を有することから、光エネルギーの照射で容易に架橋結合して硬化樹脂を形成することができる。なお、光エネルギーの照射は、ラジカル重合可能な波長領域の光を照射できる光エネルギー照射手段を用いて行うことができる。
上記()、()、()、()によれば、耐摩耗性と電気特性がバランス良く両立し、長期の繰り返し使用においても感度低下や残留電位上昇などがなく、電気特性が良好に持続する。
10):前記感光層中に電荷発生物質としてチタニルフタロシアニンを含有することを特徴とする(1)〜()の何れかに記載の電子写真感光体である。
11):前記チタニルフタロシアニンが、Cu−Kα線に対するX線回折スペクトルにおいてブラッグ角2θの主要ピークが少なくとも9.6°±0.2°、24.0°±0.2°および27.2°±0.2°にある結晶型を有するものであることを特徴とする(10)に記載の電子写真感光体である。
上記(10)、(11)のチタニルフタロシアニンを電荷発生物質として用いれば、高感度化が図れる。
12):電子写真感光体上に少なくとも静電潜像形成手段、トナーにより可視像を形成する現像手段、前記可視像を感光体に対して正電位を印加して記録媒体に転写する接触方式の転写手段、前記記録媒体に転写された可視像を定着させる定着手段を備えた画像形成装置に配備される、該電子写真感光体の製造方法であって、
導電性支持体上に少なくとも感光層と表面層とを順次形成することよりなり、該表面層の形成時に、電荷輸送性構造を持たない3官能以上のラジカル重合性化合物と、1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物を含有し、該電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物の濃度が異なる少なくとも2種類以上の塗工液を用い、溶液塗工法により塗工液の種類を変えて順次塗布することで、該1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物の濃度が、表面から内部に向けて小さくなる表面層を形成することを特徴とする電子写真感光体の製造方法である。
上記(12)に記載の製造方法により、電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物の濃度を膜厚深さ方向で勾配(表面から内部に向けて小さくなるような濃度勾配)をつけた表面層が形成できる。このような方法で製造された電子写真感光体は、高速繰り返し使用においても前述のように優れた高耐久性や静電特性を発揮する。
13):前記溶液塗工法が、スプレー塗工であることを特徴とする(12)に記載の電子写真感光体の製造方法である。
14):前記塗工液中の電荷輸送性構造を持たない3官能以上のラジカル重合性化合物と、1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物の含有濃度の異なる塗工液を用いて順次スプレー塗布を複数回行い表面層を形成することを特徴とする(12)または(13)に記載の電子写真感光体の製造方法である。
上記(13)、(14)に記載のスプレー塗工により、良好かつ容易に、電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物の濃度を膜厚深さ方向で勾配(表面から内部に向けて小さくなるような濃度勾配)をつけた表面層が形成できる。
15):(1)〜(11)の何れかに記載の電子写真感光体を少なくとも備えたことを特徴とする画像形成装置である。
上記画像形成方法によれば、耐摩耗性と静電特性の優れた電子写真感光体を備えているため、高速においても長期間にわたって安定した画像形成を行うことができる。
16):前記電子写真感光体の線速が300mm/sec以上であることを特徴とする(15)に記載の画像形成装置である。
本発明の電子写真感光体を備えているので、300mm/sec以上の線速においても、長期にわたって高品質で安定した画像が形成できる。
17):(1)〜(11)の何れかに記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段の少なくとも一つを具備し、画像形成装置本体と着脱自在に構成されたことを特徴とするプロセスカートリッジである。
各プロセス手段と電子写真感光体が一体となり、相対的な位置精度が高い構成とされるために画像品質の向上が図れ、しかも電子写真感光体やその他プロセス手段の交換を短時間で容易に行うことができる。
18):(17)に記載の前記プロセスカートリッジを搭載したことを特徴とする画像形成装置である。
上記プロセスカートリッジを搭載すれば、交換を短時間で容易に行うことができるので、メンテナンス性が向上すると共に、コストダウンにつながる。
19):(1)〜(11)の何れかに記載の電子写真感光体を用い、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写を行うことを特徴とする画像形成方法である。
上記画像形成方法によれば、耐摩耗性と静電特性の優れた電子写真感光体を備えているため、高速においても長期間にわたって安定した画像形成を行うことができる。
本発明の電子写真感光体によれば、感光体に対して正電位を印加し、記録媒体に転写する接触方式(ローラー方式もしくはベルト方式)の転写手段を配備した画像形成装置により、高速で繰り返し使用した際にも摩耗などに対して高耐久性を維持し、地汚れなどによる異常画像の発生がなく、安定で解像度の高い画像を出力できる。特に、電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物の濃度が、表面から内部に向けて小さくなるように勾配をつけることにより、繰り返し使用においても、感度低下や残留電位上昇などを招くことがない。この長寿命、高性能感光体を配備すれば、高速化(高線速)への対応は元より、感光体の小径化などの要求に対応することができる。
本発明の電子写真感光体の製造方法によれば、例えば、電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物の濃度が、表面層の膜厚深さ方向における表面から内部に向けて小さくなるように勾配をつけることが容易となり、製造された電子写真感光体は上記機能を発揮することができる。
本発明の画像形成装置および画像形成方法によれば、摩耗や静電疲労などに対して優れた電子写真感光体を備えているため、高線速、高転写バイアスなどへの対応が可能であり、長期間にわたって安定した高品質の画像形成を行うことができる。
また、本発明の画像形成用プロセスカートリッジは、相対的な位置精度が高い構成であり、画像品質の向上、短時間の交換(メンテナンス性向上)が可能で、画像形成装置に搭載すれば、メンテナンス性向上、コストダウンなどを図ることができる。
前述のように本発明における電子写真感光体は、電子写真感光体上に少なくとも静電潜像形成手段、トナーにより可視像を形成する現像手段、前記可視像を感光体に対して正電位を印加して記録媒体に転写する接触方式の転写手段、前記記録媒体に転写された可視像を定着させる定着手段を備えた画像形成装置に配備される、該電子写真感光体であって、
前記感光体は、導電性支持体上に少なくとも感光層と表面層を有し、該表面層が、電荷輸送性構造を持たない3官能以上のラジカル重合性化合物と、1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物との架橋結合により形成された硬化樹脂からなると共に、該硬化樹脂中における架橋結合した電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物の濃度が表面層の膜厚深さ方向で異なることを特徴とするものである。
すなわち、電荷輸送性構造を持たない3官能以上のラジカル重合性化合物と、1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物との架橋結合により形成された硬化樹脂からなる表面層で、且つ、電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物の濃度が表面層の膜厚深さ方向で異なるように構成することで、帯電、画像露光、現像、転写(感光体に対して正電位を印加する接触方式の転写、)を繰り返し行っても、ネガ残像を抑制することが可能となり、特に、1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物の濃度を表面層の膜厚深さ方向における表面から内部に向けて小さくすることにより、表面層が徐々に摩耗する系においてネガ残像の劣化が著しく抑制されることを見出した。ここで、接触方式の転写は、正電位を印加する転写ローラー方式もしくは転写ベルト方式により好適に行われる。
先ず、本発明における電子写真感光体について説明する。
〔電子写真感光体〕
本発明における電子写真感光体は、その材質、形状、構造、大きさ等について特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、導電性支持体(支持体)と、支持体上に少なくとも感光層と表面層をこの順に積層してなる構造を有すると共に、表面層が、電荷輸送性構造を持たない3官能以上のラジカル重合性化合物と、1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物との架橋結合により形成された硬化樹脂からなり、該硬化樹脂中における架橋結合した電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物の濃度が表面層の膜厚深さ方向で異なるように構成されている。
なお、硬化樹脂とする場合の架橋結合は、光エネルギーの照射により形成することができる。そして、光エネルギーの照射は、ラジカル重合可能な波長領域の光を照射できる光源(例えば、メタルハライドランンプなど)を有する光エネルギー照射手段であれば何れの装置でも使用できる。
上記電子写真感光体の感光層が単層構造の場合には、電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する感光層が設けられる。一方感光層が積層構造の場合には、電荷発生機能を有する電荷発生層と、電荷輸送物機能を有する電荷輸送層とが順次積層された感光層が設けられる。なお電子写真感光体の各層構成の詳細については後述する。
上記表面層に用いられる電荷輸送性を持たない3官能以上のラジカル重合性化合物(以下「「ラジカル重合性モノマー」あるいは「モノマー」と表現することがある。)とは、例えば、トリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を持つ電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を持たず、かつラジカル重合性官能基を3個以上持つモノマーを指す。このラジカル重合性官能基としては、炭素−炭素2重結合を有し、ラジカル重合可能な基であれば何れでもよい。これらラジカル重合性官能基としては、例えば、下記に示す1−置換エチレン官能基、1,1−置換エチレン官能基が挙げられる。
(1)1−置換エチレン官能基としては、例えば、下記一般式(d)で表される官能基が挙げられる。
Figure 0004688718
(ただし、式中、X1は、置換基を有していてもよいアリーレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、−CO−基、−COO−基、−CON(R10)−基(R10は、水素、アルキル基、アラルキル基、アリール基を表す。)、または−S−基を表す。)
上記置換基を有していてもよいアリーレン基の具体例としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、また、R10におけるアルキル基の具体例としてはメチル基、エチル基等が、アラルキル基としてはベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等が、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
上記一般式(d)で表される官能基を具体的に例示すると、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミノ基、ビニルチオエーテル基等が挙げられる。
(2)1,1−置換エチレン官能基としては、例えば、下記一般式(e)で表される官能基が挙げられる。
Figure 0004688718
(ただし、式中、Yは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR11基(R11は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、または−CONR1213(R12およびR13は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、または置換基を有していてもよいアリール基を表し、互いに同一または異なっていてもよい。)、また、X2は前記一般式(d)のX1と同一の置換基および単結合、アルキレン基を表す。ただし、Y,X2の少なくとも何れか一方がオキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基、および芳香族環である。)
上記Yにおける置換基を有していてもよいアリール基の具体例としてはフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、また、R11における置換基を有していてもよいアルキル基の具体例としてはメチル基、エチル基等が、置換基を有していてもよいアラルキル基としてはベンジル、フェネチル基等が、置換基を有していてもよいアリール基としてはフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、さらにR12およびR13における置換基を有していてもよいアルキル基の具体例としてはメチル基、エチル基等が、置換基を有していてもよいアラルキル基としてはベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等が、置換基を有していてもよいアリール基としてはフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
上記一般式(e)で表される官能基を具体的に例示すると、α−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基等が挙げられる。
これらのラジカル重合性官能基の中では、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用であり、3個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物は、例えば、水酸基がその分子中に3個以上ある化合物とアクリル酸(塩)、アクリル酸ハライド、アクリル酸エステルを用い、エステル反応あるいはエステル交換反応させることにより得ることができる。また、3個以上のメタクリロイルオキシ基を有する化合物も同様にして得ることができる。また、ラジカル重合性官能基を3個以上有する単量体中のラジカル重合性官能基は、同一でも異なってもよい。
電荷輸送性構造を持たない3官能以上の具体的なラジカル重合性モノマーとしては、以下のものが例示されるが、これらの化合物に限定されるものではない。
すなわち、本発明において使用する上記ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ変性(以後EO変性)トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシ変性(以後PO変性)トリアクリレート、トリメチロールプロパンカプロラクトン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、グリセロールエピクロロヒドリン変性(以後ECH変性)トリアクリレート、グリセロールEO変性トリアクリレート、グリセロールPO変性トリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、リン酸EO変性トリアクリレート、2,2,5,5,−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられ、これらは単独または2種類以上を併用しても差し支えない。
また、本発明に用いられる電荷輸送性構造を持たない3官能以上のラジカル重合性モノマーとしては、架橋表面層中に緻密な架橋結合を形成するために、1官能基当りの分子量(分子量/官能基数)[「官能基割合」と呼ぶ]が250以下が望ましい。
官能基割合が250より大きい場合、架橋表面層は柔らかく、耐摩耗性が幾分低下するため、上記例示したモノマー等中、EO、PO、カプロラクトン等の変性基を持つモノマーにおいては、極端に長い変性基を持つものを単独で使用することは好ましくはない。
また、表面層(以下、「架橋表面層」と表現することがある。)に用いられる電荷輸送性構造を持たない3官能以上のラジカル重合性モノマーの成分割合は、架橋表面層全量に対し20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%であり、実質的には塗工液固形分中の3官能以上のラジカル重合性モノマーの割合に依存する。モノマー成分が20重量%未満では架橋表面層の3次元架橋結合密度が少なく、従来の熱可塑性バインダー樹脂を用いた場合に比べ飛躍的な耐摩耗性向上が達成されない。また、80重量%を超えると電荷輸送性構造を持つ化合物の含有量が相対的に低下し、電気的特性の劣化が生じる。使用されるプロセスによって要求される耐摩耗性や電気特性が異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70重量%の範囲が最も好ましい。
次に、本発明に用いられる1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物について説明する。
本発明に用いられる1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物とは、例えばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を持つ電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しており、且つラジカル重合性官能基を有する化合物を指す。このラジカル重合性官能基としては、前述のラジカル重合性モノマーで示したものが挙げられ、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用である。
また、電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物は、官能基が、2官能以上の多官能のものを使用することができるが、膜質および静電特性的に、1官能であるものが好ましい。
つまり、2官能以上の電荷輸送性化合物を用いた場合は複数の結合により架橋構造中に固定され、その際に電荷輸送性構造が非常に嵩高いため、硬化樹脂中に歪みが発生して架橋表面層の内部応力が高くなり、剥離摩耗を引き起こしやすくする。
また、静電的特性においても、2官能以上の電荷輸送性化合物を用いた場合は複数の結合によって架橋構造中に固定されるため、電荷輸送時の中間体構造(カチオンラジカル)が安定して保てず、電荷のトラップによる感度の低下、残留電位の上昇が起りやすくなる。これらの電気的特性の劣化は、画像濃度低下、文字の細り等の画像として現れる。このようなことから、電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物としては、1官能の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物を用いて架橋結合間にペンダント状に固定化することが好ましい。これにより、クラックや傷の発生の防止、および静電的特性の安定化を図りやすくする。また、電荷輸送性構造としてはトリアリールアミン構造の効果が高い。さらには下記一般式(1)または(2)の分子構造で示される化合物を用いた場合、感度、残留電位等の電気的特性が良好に持続される。
Figure 0004688718
(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR7(R7は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基もしくはCONR89(R8およびR9は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい)を表し、Ar1、Ar2は置換もしくは未置換のアリーレン基を表し、同一であっても異なってもよい。Ar3、Ar4は置換もしくは未置換のアリール基を表し、同一であっても異なってもよい。Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。Zは置換もしくは無置換のアルキレン基またはアラルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、アルキレンオキシカルボニル基を表す。mは0〜3の整数を表す。)
Figure 0004688718
(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR7(R7は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基もしくはCONR89(R8およびR9は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい)を表し、Ar2は置換もしくは未置換のアリーレン基を表し、同一であっても異なってもよい。Ar3、Ar4は置換もしくは未置換のアリール基を表し、同一であっても異なってもよい。Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。Zは置換もしくは無置換のアルキレン基またはアラルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、アルキレンオキシカルボニル基を表す。nは0〜3の整数を表す。)
以下に、一般式(1)、(2)の具体例を示す。
前記一般式(1)、(2)において、R1の置換基中、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基が、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等がそれぞれ挙げられ、これらは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等により置換されていてもよい。R1の置換基のうち、特に好ましいものは水素原子、メチル基である。
置換もしくは未置換のAr3、Ar4はアリール基であり、アリール基としては縮合多環式炭化水素基、非縮合環式炭化水素基および複素環基が挙げられる。
縮合多環式炭化水素基としては、好ましくは環を形成する炭素数が18個以下のもの、例えば、ペンタニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、as−インダセニル基、s−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基、およびナフタセニル基等が挙げられる。
上記非縮合環式炭化水素基としては、ベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテルおよびジフェニルスルホン等の単環式炭化水素化合物の1価基、あるいはビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン、およびポリフェニルアルケン等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基、あるいは9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の1価基が挙げられる。
複素環基としては、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、およびチアジアゾール等の1価基が挙げられる。
また、前記Ar3、Ar4で表されるアリール基は、例えば、以下に示すような置換基を有してもよい。
(1)ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
(2)アルキル基、好ましくは、C〜C12とりわけC〜C、さらに好ましくはC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基にはさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C〜Cのアルコキシ基、フェニル基またはハロゲン原子、C〜Cのアルキル基もしくはC〜Cのアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n−ブチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−プロピル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキエチル基、2−エトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−フェニルベンジル基等が挙げられる。
(3)アルコキシ基(−OR)であり、Rは(2)で定義したアルキル基を表す。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
(4)アリールオキシ基であり、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これは、C〜Cのアルコキシ基、C〜Cのアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有してもよい。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基等が挙げられる。
(5)アルキルメルカプト基またはアリールメルカプト基であり、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。
(6)下記式(f)
Figure 0004688718
(式中、R3およびR4は各々独立に水素原子、前記一般式(2)で定義したアルキル基、またはアリール基を表す。)基等が挙げられる。
アリール基としては、例えばフェニル基、ビフェニル基またはナフチル基が挙げられ、これらはC1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4アルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有してもよい。R3およびR4は共同で環を形成してもよい。
具体的には、アミノ基、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(トリール)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリジノ基等が挙げられる。
(7)メチレンジオキシ基、またはメチレンジチオ基等のアルキレンジオキシ基またはアルキレンジチオ基等が挙げられる。
(8)置換または無置換のスチリル基、置換または無置換のβ−フェニルスチリル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジトリルアミノフェニル基等。
一般式(1)、(2)において、Ar1、Ar2で表されるアリーレン基としては、前記Ar3、Ar4で表されるアリール基から誘導される2価基が挙げられる。
一般式(1)、(2)において、Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。
前記置換もしくは無置換のアルキレン基としては、C1〜C12、好ましくはC1〜C8、さらに好ましくはC1〜C4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、これらのアルキレン基にはさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基またはハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。
具体的には、メチレン基、エチレン基、n−ブチレン基、i−プロピレン基、t−ブチレン基、s−ブチレン基、n−プロピレン基、トリフルオロメチレン基、2−ヒドロキエチレン基、2−エトキシエチレン基、2−シアノエチレン基、2−メトキシエチレン基、ベンジリデン基、フェニルエチレン基、4−クロロフェニルエチレン基、4−メチルフェニルエチレン基、4−ビフェニルエチレン基等が挙げられる。
前記置換もしくは無置換のシクロアルキレン基としては、C5〜C7の環状アルキレン基であり、これらの環状アルキレン基にはフッ素原子、水酸基、C1〜C4のアルキル基、C1〜C4のアルコキシ基を有していてもよい。具体的には、シクロヘキシリデン基、シクロへキシレン基、3,3−ジメチルシクロヘキシリデン基等が挙げられる。
前記置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基としては、エチレンオキシ、プロピレンオキシ、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールを表し、アルキレンエーテル基アルキレン基はヒドロキシル基、メチル基、エチル基等の置換基を有してもよい。
前記ビニレン基としては、下記一般式(g)または一般式(h)で示される基等が挙げられる。
Figure 0004688718
Figure 0004688718
[式中、R5は水素、アルキル基〔前記一般式(2)で定義されるアルキル基と同じ〕、アリール基〔前記一般式(1)、(2)で定義されるAr3、Ar4で定義されるアリール基と同じ〕を表し、aは1または2を、bは1〜3の整数を表す。]
一般式(1)、(2)において、Zは置換もしくは未置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基、アルキレンオキシカルボニル2価基を表す。
置換もしくは未置換のアルキレン基としは、前記Xのアルキレン基と同様なものが挙げられる。
置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基としては、前記Xのアルキレンエーテル基の2価基が挙げられる。
アルキレンオキシカルボニル2価基としては、カプロラクトン変性2価基が挙げられる。
また、本発明の1官能の電荷輸送構造を持つラジカル重合性化合物として更に好ましくは、下記一般式(3)で示される構造の化合物が挙げられる。
Figure 0004688718
(式中、o、p、qはそれぞれ0または1の整数、Raは水素原子またはメチル基を表し、Rb、Rcは水素原子以外の置換基で炭素数1〜6のアルキル基を表し、複数の場合は異なっても良い。s、tは0〜3の整数を表す。Zaは単結合、メチレン基、エチレン基、あるいは次式(a)、(b)、(c):
Figure 0004688718
で示される2価基を表す。)
上記一般式(3)で表される化合物としては、Rb、Rcの置換基として、特にメチル基、エチル基である化合物が好ましい。
本発明で用いる上記一般式(1)および(2)特に(3)の1官能性の電荷輸送構造を持つラジカル重合性化合物は、炭素−炭素間の二重結合が両側に開放されて連鎖重合するため、末端構造とはならずに連鎖重合体中に組み込まれる。3官能以上のラジカル重合性モノマーとの重合で架橋形成された重合体、すなわち硬化樹脂中では、1官能性の電荷輸送構造を持つラジカル重合性化合物は、高分子の主鎖中に存在し、かつ主鎖−主鎖間の架橋鎖中に存在する。この架橋鎖には1つの高分子と他の高分子間の分子間架橋鎖と、1つの高分子内で折り畳まれた状態の主鎖のある部位と主鎖中でこれから離れた位置に重合したモノマー由来の他の部位とが架橋される分子内架橋鎖とがある。
このように、1官能性の電荷輸送構造を持つラジカル重合性化合物が、主鎖中に存在する場合であってもまた架橋鎖中に存在する場合であっても、主鎖または架橋鎖部分から懸下するトリアリールアミン構造は、窒素原子から放射状方向に配置する少なくとも3つのアリール基を有し、バルキーであるが、主鎖または架橋鎖部分に直接結合していない。したがって、主鎖または架橋鎖部分からカルボニル基等を介して懸下しているため、立体的な位置取りに融通性ある状態で固定されているので、これらトリアリールアミン構造は重合体中で相互に程よく隣接する空間配置が可能である。そのため、分子内の構造的歪みが少なく、また、電子写真感光体の表面層とされた場合に、電荷輸送経路の断絶を比較的免れた分子内構造を採りうるものと推測される。
本発明の1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物の具体例を以下に示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではない。
先ず、本発明における1官能の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物の具体例を下記に示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではない。
Figure 0004688718
Figure 0004688718
Figure 0004688718
Figure 0004688718
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Figure 0004688718
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次に、本発明における2官能の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物の具体例を以下に示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではない。
Figure 0004688718
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Figure 0004688718
Figure 0004688718
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さらに本発明における3官能の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物の具体例を以下に示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではない。
Figure 0004688718
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また、本発明に用いられる電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物は、架橋表面層の電荷輸送性能を付与するために重要で、この成分は架橋表面層全量に対し20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%である。この成分が20重量%未満では架橋表面層の電荷輸送性能が充分に保てず、繰り返しの使用で感度低下、残留電位上昇などの電気特性の劣化が現れる。また、80重量%を超えると電荷輸送構造を持たない3官能モノマーの含有量が低下し、架橋結合密度の低下を招き高い耐摩耗性が発揮されない。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70重量%の範囲が最も好ましい。
本発明の表面層に含有される電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物の膜厚深さ方向における濃度分布は本発明の課題であるネガ残像を改善するために重要である。表面の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物の濃度は内部に向かうに従って小さくなることが好ましく、電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物の成分は表面部分で50〜90重量%、内部で10〜50重量%、好ましくは表面部分で60〜80重量%、内部で20〜40重量%である。表面部分におけるこの成分が50重量%未満の場合、残留電位上昇などの電気特性の劣化が現れる。また表面部分における該成分が90重量%以上の場合は架橋密度の低下を招き高い耐摩耗性が発揮されない。一方、内部におけるこの成分が50重量%以上の場合、繰り返し使用でのネガ残像の劣化を招く、また、内部におけるこの成分が10重量%以下の場合、残留電位などの電気特性の劣化が現れる。またこの成分の表面層の深さ方向における濃度分布は連続的であることが好ましい。
本発明の電子写真感光体は、前述のように導電性支持体上に少なくとも感光層と表面層が順次形成され、該表面層の形成時に、電荷輸送性構造を持たない3官能以上のラジカル重合性化合物と、1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物を含有する塗工液を用い、溶液塗工法により該電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物の濃度が表面層の膜厚深さ方向で異なるように塗布した後、光エネルギーの照射により架橋結合して硬化したものであるが、これ以外に塗工時の粘度調整、架橋表面層の応力緩和、低表面エネルギー化や摩擦係数低減などの機能を付与する目的で他の1官能および2官能のラジカル重合性モノマーおよびラジカル重合性オリゴマーを併用することができる。これらのラジカル重合性モノマー、オリゴマーとしては、公知のものが利用できる。光エネルギーの照射は、例えば、メタルハライドランンプなどラジカル重合可能な光を照射できる光エネルギー照射手段を用いて行うことができる。
上記1官能のラジカルモノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマーなどが挙げられる。
2官能のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビスフェノールA−EO変性ジアクリレート、ビスフェノールF−EO変性ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられる。
上記機能性を付与する別のラジカルモノマーとしては、例えば、オクタフルオロペンチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチルアクリレートなどのフッ素原子を置換したもの、特公平5−60503号公報、特公平6−45770号公報記載のシロキサン繰り返し単位:20〜70のアクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、メタクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、アクリロイルポリジメチルシロキサンプロピル、アクリロイルポリジメチルシロキサンブチル、ジアクリロイルポリジメチルシロキサンジエチルなどのポリシロキサン基を持つビニルモノマー、アクリレートおよびメタクリレートが挙げられる。
上記ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系オリゴマーが挙げられる。
但し、1官能および2官能のラジカル重合性モノマーやラジカル重合性オリゴマーを多量に含有させると架橋表面層の3次元架橋結合密度が実質的に低下し、耐摩耗性の低下を招く。このためこれらのモノマーやオリゴマーの含有量は、3官能以上のラジカル重合性モノマー100重量部に対し50重量部以下、好ましくは30重量部以下に制限される。
また、本発明における表面層は少なくとも電荷輸送構造を持たない3官能以上のラジカル重合性モノマーと1官能以上の電荷輸送構造を持つラジカル重合性化合物を硬化したものであるが、必要に応じてこの架橋反応を効率よく進行させるために重合開始剤を使用してもよい。
光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、などのアセトフェノン系またはケタール系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、などのベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン、などのベンゾフェノン系光重合開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、などのチオキサントン系光重合開始剤、その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物、が挙げられる。
また、光重合促進効果を持つものを単独または上記光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4‘−ジメチルアミノベンゾフェノン、などが挙げられる。
これらの重合開始剤は1種または2種以上を混合して用いてもよい。重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性を持つ総含有物100重量部に対し、0.5〜40重量部、好ましくは1〜20重量部である。
前述のように、本発明の架橋表面層は、少なくとも電荷輸送構造を持たない3官能以上のラジカル重合性モノマーと1官能以上の電荷輸送構造を持つラジカル重合性化合物を含有する塗工液を溶液塗工法により塗布した後、光エネルギーの照射により架橋結合して硬化することにより形成される。塗工液を調製するために溶媒が用いられる。
このとき用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテルなどのエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテートなどのセロソルブ系などが挙げられる。
これらの溶媒は単独または2種以上を混合して用いてもよい。溶媒による希釈率は組成物の溶解性、塗工法、目的とする膜厚により変わり、任意である。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行なうことが可能であるが、その中でもスプレーコート法が良好に使用される。
さらに、本発明における前記塗工液は必要に応じて、各種可塑剤(応力緩和や接着性向上の目的)、レベリング剤、ラジカル反応性を持たない低分子電荷輸送物質などの添加剤が含有できる。
これらの添加剤は公知のものが使用可能であり、可塑剤としてはジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂に使用されているものが利用可能で、その使用量は塗工液の総固形分に対し20重量%以下、好ましくは10%以下に抑えられる。また、レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を持つポリマーあるいはオリゴマーが利用でき、その使用量は塗工液の総固形分に対し3重量%以下が適当である。
本発明における電子写真感光体の製造方法の一例を挙げる。
先ず、アルミシリンダー等の導電性支持体上に、必要により下引き層を設け、下引き層上に感光層〔単層型、もしくは積層型(電荷発生層と電荷輸送層を順次積層)〕を形成し、この感光層上に、予め電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物の溶液濃度を変えて調製した複数の架橋表面層用塗工液を用いて、順次スプレー等で塗布し、その後、光エネルギー照射手段によって、塗布膜中の電荷輸送性構造を持たない3官能以上のラジカル重合性化合物と、1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物を架橋結合させ硬化した架橋表面層を形成する。硬化終了後は、残留溶媒低減のため100〜150℃で10〜30分加熱して、本発明の電子写真感光体を得る。
次に、本発明の電子写真感光体の層構造について図面に基づいて説明する。
図1は、本発明における電子写真感光体の層構造の一例を示す断面図である。
図1の層構造では、導電性支持体(31)上に、下引き層(32)、電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する単層構造の感光層(33)、架橋表面層(34)が設けられている。
図2は、本発明における電子写真感光体の層構造の別例を示す断面図である。
図2の層構造では、導電性支持体(31)上に、下引き層(32)、電荷発生機能を有する電荷発生層(35)と電荷輸送物機能を有する電荷輸送層(37)とが積層された積層構造の感光層(33)、架橋表面層(34)が設けられている。
以下、各構成層について説明する。
<導電性支持体について>
導電性支持体(31)としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理を施した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に記載されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体(31)として用いることができる。
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、本発明の導電性支持体(31)として用いることができる。
この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、また、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。
上記塗工された導電性層は、導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、ポリテトラフロロエチレン系フッ素樹脂などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体(31)として良好に用いることができる。
<感光層について>
感光層は、図1、図2に示すように単層構造でも積層構造でもよい。
積層構造の場合には、感光層は電荷発生機能を有する電荷発生層と電荷輸送機能を有する電荷輸送層とから構成される。また、単層構造の場合には、感光層は電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層である。以下、積層構造である感光層、および単層構造である感光層のそれぞれについて説明する。
<積層構造である感光層(電荷発生層と電荷輸送層とで構成される)>
(電荷発生層)
電荷発生層(35)は、電荷発生機能を有する電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダー樹脂を併用することもできる。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
無機系材料には、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファス・シリコン等が挙げられる。アモルファス・シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。
一方、有機系材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタンおよびトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノンおよびナフトキノン系顔料、シアニンおよびアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。そのなかで特にフタロシアニン類が有用に用いられ、中でもチタニルフタロシアニン、そのなかでも、少なくともCu−Kα線に対するX線回折スペクトルにおいてブラッグ角2θの主要ピークが少なくとも9.6°±0.2°、24.0°±0.2°および27.2°±0.2°にある結晶型を有するチタニルフタロシアニンは高感度材料として特に有効である。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
電荷発生層(35)に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。これらのバインダー樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。また、電荷発生層のバインダー樹脂として上述のバインダー樹脂の他に、電荷輸送機能を有する高分子電荷輸送物質、例えば、アリールアミン骨格やベンジジン骨格やヒドラゾン骨格やカルバゾール骨格やスチルベン骨格やピラゾリン骨格等を有するポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリシロキサン、アクリル樹脂等の高分子材料(AP)やポリシラン骨格を有する高分子材料(PS)等を用いることができる。
前者(AP)の具体的な例としては、特開平01−001728号公報、特開平01−009964号公報、特開平01−013061号公報、特開平01−019049号公報、特開平01−241559号公報、特開平04−011627号公報、特開平04−175337号公報、特開平04−183719号公報、特開平04−225014号公報、特開平04−230767号公報、特開平04−320420号公報、特開平05−232727号公報、特開平05−310904号公報、特開平06−234836号公報、特開平06−234837号公報、特開平06−234838号公報、特開平06−234839号公報、特開平06−234840号公報、特開平06−234841号公報、特開平06−239049号公報、特開平06−236050号公報、特開平06−236051号公報、特開平06−295077号公報、特開平07−056374号公報、特開平08−176293号公報、特開平08−208820号公報、特開平08−211640号公報、特開平08−253568号公報、特開平08−269183号公報、特開平09−062019号公報、特開平09−043883号公報、特開平09−71642号公報、特開平09−87376号公報、特開平09−104746号公報、特開平09−110974号公報、特開平09−110976号公報、特開平09−157378号公報、特開平09−221544号公報、特開平09−227669号公報、特開平09−235367号公報、特開平09−241369号公報、特開平09−268226号公報、特開平09−272735号公報、特開平09−302084号公報、特開平09−302085号公報、特開平09−328539号公報等に記載の電荷輸送性高分子材料が挙げられる。
また、後者(PS)の具体例としては、例えば特開昭63−285552号公報、特開平05−19497号公報、特開平05−70595号公報、特開平10−73944号公報等に記載のポリシリレン重合体が例示される。
また、電荷発生層(35)には低分子電荷輸送物質を含有させることができる。
電荷発生層(35)に併用できる低分子電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
電子輸送物質としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体などの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
正孔輸送物質としては、以下に示す電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。
正孔輸送物質としては、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、その他公知の材料が挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
電荷発生層(35)を形成する方法には、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが大きく挙げられる。
前者の真空薄膜作製法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられ、上述した無機系材料、有機系材料が良好に形成できる。
また、後述のキャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。また、必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行なうことができる。
以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
(電荷輸送層について)
電荷輸送層(37)は電荷輸送機能を有する層である。電荷輸送層は電荷輸送機能を有する電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散した溶液を電荷発生層(35)上に塗布、乾燥することにより形成する。
電荷輸送物質としては、前記電荷発生層(35)で記載した電子輸送物質、正孔輸送物質および高分子電荷輸送物質を用いることができる。前述したように高分子電荷輸送物質を用いることにより、表面層塗工時の下層の溶解性を低減でき、とりわけ有用である。
上記電荷輸送層の形成に用いられる結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
電荷輸送物質の量は、結着樹脂100重量部に対して20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。但し、高分子電荷輸送物質を用いる場合は、単独でも結着樹脂との併用も可能である。
電荷輸送層の塗工に用いられる溶媒としては前記電荷発生層と同様なものが使用できるが、電荷輸送物質および結着樹脂を良好に溶解するものが適している。これらの溶剤は単独で使用しても2種以上混合して使用してもよい。また、電荷輸送層の形成には電荷発生層(35)と同様な塗工法が可能である。
また、電荷輸送層の塗工液には必要により、可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。電荷輸送層に併用できる可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等、一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂100重量部に対して0〜30重量部程度が適当である。
電荷輸送層に併用できるレベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、結着樹脂100重量部に対して0〜1重量部程度が適当である。電荷輸送層の膜厚は、5〜40μm程度が適当であり、好ましくは10〜30μm程度が適当である。
感光層が積層構造の場合、電荷輸送層上に、電荷輸送性構造を持たない3官能以上のラジカル重合性化合物と、1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物を含有する塗工液(架橋表面層用塗工液)を用い、溶液塗工法により塗布し、必要に応じて乾燥後、光エネルギーの照射により架橋表面層を形成する。架橋表面層の膜厚は、1〜20μm、好ましくは2〜10μmである。1μmより薄いと膜厚ムラによって耐久性のバラツキが生じ、20μm以上だと電気特性が悪くなる。
<単層構造である感光層>
前述のように、単層構造の感光層は、電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層であり、電荷発生機能を有する電荷発生物質と電荷輸送機能を有する電荷輸送物質と結着樹脂を適当な溶媒に溶解ないし分散した塗工液を塗布、乾燥することによって形成できる。
塗工液の塗布は、前記電荷発生層のキャスティング形成方法で記載したのと同様に行うことができる。必要により、塗工液に可塑剤やレベリング剤等を添加することもできる。
電荷発生物質の分散方法、それぞれ電荷発生物質、電荷輸送物質、可塑剤、レベリング剤は前記電荷発生層(35)、電荷輸送層(37)において既に述べたものと同様のものが使用できる。結着樹脂としては、先に電荷輸送層(37)の項で挙げた結着樹脂のほかに、電荷発生層(35)で挙げたバインダー樹脂を混合して用いてもよい。
また、先に挙げた高分子電荷輸送物質も使用可能であり、架橋表面層への下層感光層組成物の混入を低減できる点で有用である。かかる感光層の膜厚は、5〜30μm程度が適当であり、好ましくは10〜25μm程度が適当である。
なお、本発明の電荷輸送性構造を持つ架橋表面層は、電荷発生機能を有する電荷発生物質を含有させることにより、単層構造の感光層としても有用に用いることができる。
単層構造の感光層中に含有される電荷発生物質は感光層全量に対し1〜30重量%が好ましく、感光層の下層部分に含有される結着樹脂は全量の20〜80重量%、電荷輸送物質は10〜70重量部が良好に用いられる。
感光層が単層構造の場合、電荷輸送層上に、電荷輸送性構造を持たない3官能以上のラジカル重合性化合物と、1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物を含有する塗工液(架橋表面層用塗工液)を用い、溶液塗工法により塗布し、必要に応じて乾燥後、光エネルギーの照射により架橋表面層を形成する。架橋表面層の膜厚は、1〜20μm、好ましくは2〜10μmである。1μmより薄いと膜厚ムラによって耐久性のバラツキが生じ、20μm以上だと電気特性が悪くなる。
<下引き層について>
本発明の感光体においては、導電性支持体(31)と感光層との間に下引き層(32)を設けることができる。下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層(33)を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。
このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、下引き層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
下引き層(32)は、前述の感光層の如く適当な溶媒および塗工法を用いて形成することができる。更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、本発明の下引き層には、Al23を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO2、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は0〜5μmが適当である。
<各層への酸化防止剤の添加について>
また、本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、表面架橋層、感光層、電荷発生層、電荷輸送層、下引き層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。本発明に用いることができる酸化防止剤として、下記のものが挙げられる。
(フェノール系化合物):
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類など。
(パラフェニレンジアミン類):
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
(ハイドロキノン類):
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
(有機硫黄化合物類):
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなど。
(有機燐化合物類):
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
上記化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
本発明における酸化防止剤の添加量は、添加する層の総重量に対して0.01〜10重量%である。
本発明の画像形成装置は、上記電子写真感光体上に少なくとも静電潜像形成手段、トナーにより可視像を形成する現像手段、前記可視像を感光体に対して正電位を印加して記録媒体に転写する接触方式の転写手段、前記記録媒体に転写された可視像を定着させる定着手段を備えて構成される。
以下、各手段について説明する。
[静電潜像形成手段]
静電潜像形成手段は、帯電手段と露光手段を含むものであり、静電潜像の形成は、前記電子写真感光体の表面を一様に帯電した後、露光することにより行うことができる。すなわち、静電潜像手段としては、前記感光体の表面を一様に帯電させる帯電器と、前記感光体の表面を露光する露光器とを少なくとも備える。
上記帯電器は、目的に応じて選択することが可能であり、例えば、非接触帯電方式のものとしてはコロトロン、ストコロトロンなどが挙げられる。一方、接触帯電方式のものとしてはローラー、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等が挙げられる。また、近接方式の非接触帯電器による帯電方法も挙げられる。
上記露光は、露光器を用いて感光体の表面を露光することにより行うことができる。前記露光器としては複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系などの各種露光器が挙げられる。露光器の光源としては、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの光源が使用できる。
[現像手段]
前記現像は、前記静電潜像を、トナーを用いて現像し、可視像を形成することで行われる。現像手段としては、トナーを用いて現像することができれば特に制限はなく、公知のものの中から選択することが可能である。例えば、感光体に形成された静電潜像を現像する手段には、カスケード現像法、噴霧(パウダークラウド)現像法、ファーブラシ現像法、磁気ブラシ現像法などの現像法がある。
現像器は、乾式現像方式、湿式現像方式のものであってもよく、例えば、前記トナーを摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラーとを有してなるものなどが好適に挙げられる。
前記現像器内では、例えば、前記トナーと前記キャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦により前記トナーが帯電し、回転するマグネットローラーの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。前記マグネットローラーの表面に形成された前記磁気ブラシを構成する前記トナーの一部は、電気的な吸引力によって前記感光体の表面に移動する。その結果、前記静電潜像が前記トナーにより現像されて感光体の表面にトナーによる可視像が形成される。
前記トナーは、使用するトナーの帯電特性により、正転現像にも逆転現像にも対応可能である。感光体の帯電極性と逆極性のトナーを使用した場合には正転現像が使用され、同極性のトナーを用いた場合には反転現像によって、静電潜像が現像される。
[転写手段]
本発明における転写手段は、前記可視像を感光体に対して正電位を印加して記録媒体に転写する接触方式のものである。
転写手段としては、転写ローラー、もしくは搬送工程も兼ね備えた転写ベルトが好ましく用いられる。また、転写方式としては、感光体上に形成された可視像を転写ローラー、もしくは転写ベルト等により、記録媒体側へ剥離帯電させる接触型が好ましく用いられる。転写ローラー、もしくは転写ベルトに印加される極性は、感光体の帯電極性、トナーの帯電極性、さらにネガポジ現像が主流であることから、転写手段(転写ローラー、転写ベルト)には正電荷が印加される。
[定着手段]
前記定着は、記録媒体に転写された可視像を定着装置を用いて定着され、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
定着手段(定着装置)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。前記加熱加圧手段としては、加熱ローラーと加圧ローラーとの組み合わせ、加熱ローラーと加圧ローラーと無端ベルトとの組み合わせなどが挙げられる。加熱加圧手段における加熱は、通常、80℃〜200℃が好ましい。
[除電手段]
除電手段としては、特に制限はなく、前記感光体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
ここで、本発明における画像形成装置の形態の一つについて、図3を参照して説明する。
図3は、本発明における画像形成装置の構成例を示す概略図である。図3において、感光体(1)は、導電性支持体上に少なくとも感光層と、電荷輸送性構造を持たない3官能以上のラジカル重合性化合物と1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物との架橋結合により形成された硬化樹脂からなると共に、該硬化樹脂中における架橋結合した電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物の濃度が表面層の膜厚深さ方向で異なるように構成された表面層を有するものである。
そして、感光体を所定の電位に均一に帯電させる手段として、帯電チャージャ(3)が用いられる。この帯電手段としては、コロトロンデバイス、スコロトロンデバイス、固体放電素子、針電極デバイス、ローラー帯電デバイス、導電性ブラシデバイス等が用いられ、公知の方式が使用可能である。
特に本発明の構成は、接触帯電方式または非接触近接配置帯電方式のような帯電手段からの近接放電により感光体組成物が分解する様な帯電手段を用いた場合に有効である。ここで言う接触帯電方式とは、感光体に帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電ブレード等が直接接触する帯電方式である。一方の近接帯電方式とは、例えば帯電ローラーが感光体表面と帯電手段との間に200μm以下の空隙を持つように非接触状態で近接配置したタイプのものである。この空隙は、大きすぎた場合には帯電が不安定になりやすく、また、小さすぎた場合には、感光体に残留したトナーが存在する場合に、帯電部材表面が汚染されてしまう可能性がある。したがって、空隙は10〜200μm、好ましくは10〜100μmの範囲が適当である。
次に、均一に帯電された感光体(1)上に静電潜像を形成するために画像露光部(5)が用いられる。この光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
次に、感光体(1)上に形成された静電潜像を可視化するために現像ユニット(6)が用いられる。現像方式としては、乾式トナーを用いた一成分現像法、二成分現像法、湿式トナーを用いた湿式現像法がある。感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
次に、感光体上で可視化されたトナー像を転写体(9)上に転写するために転写ベルト(10)が用いられる。また、転写をより良好に行なうために転写前チャージャ(7)を用いてもよい。静電転写方式としては、前記帯電手段が利用可能である。
次に、転写体(9)を感光体(1)より分離する手段として、分離爪(12)が用いられる。その他分離手段としては、静電吸着誘導分離、側端ベルト分離、先端グリップ搬送、曲率分離等が用いられる。
次に、転写後感光体上に残されたトナーをクリーニングするためにファーブラシ(14)、クリーニングブレード(15)が用いられる。また、クリーニングをより効率的に行なうためにクリーニング前チャージャ(13)を用いてもよい。その他クリーニング手段としては、ウェブ方式、マグネットブラシ方式等があるが、それぞれ単独または複数の方式を一緒に用いてもよい。
次に、必要に応じて感光体上の潜像を取り除く目的で除電手段が用いられる。除電手段としては除電ランプ(2)、除電チャージャが用いられ、それぞれ前記露光光源、帯電手段が利用できる。
その他、感光体に近接していない原稿読み取り、給紙、定着、排紙等のプロセスは公知のものが使用できる。
以上の説明から明らかなように、本発明の電子写真感光体は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンターおよびレーザー製版等の電子写真応用分野にも広く用いることができるものである。
以上のように、画像形成手段として本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置およびこれを用いた画像形成方法とすれば、耐摩耗性と静電特性に優れ、高速においても長期間にわたって安定した画像形成を行うことができる。
本発明の電子写真感光体を用いた前記画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形態でそれら装置内に組み込まれ、着脱自在としたものであってもよい。プロセスカートリッジの一例を図4の概略図に示す。
画像形成装置用プロセスカートリッジとは、感光体(感光体ドラム)(101)を内蔵し、他に帯電手段(102)、現像手段(104)、転写手段(106)、クリーニング手段(クリーニングブレード)(107)、除電手段(図示せず)の少なくとも一つを具備し、画像形成装置本体に着脱可能とした装置(部品)である。
図4に例示する装置を用いた画像形成プロセスについて示す。
すなわち、感光体(101)は、矢印方向に回転しながら、帯電手段(102)による帯電、露光手段(図示せず)による露光(103)により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成され、この静電潜像は、現像手段(104)でトナー現像され、該トナー現像は転写手段(106)により、転写体(105)に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の感光体表面は、クリーニング手段(107)によりクリーニングされ、さらに除電手段(図示せず)により除電されて、再び以上の操作を繰り返すものである。
本発明のプロセスカートリッジは、耐摩耗性と電気特性の優れた電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段の少なくとも一つを具備し、画像形成装置本体に着脱可能に一体とされる。このプロセスカートリッジによれば、各プロセス手段と電子写真感光体が一体となり、相対的な位置精度が高い構成とされる。このため、画像品質の向上が図れ、長期間、安定した画像形成を行うことができる。しかも電子写真感光体やその他プロセス手段の交換を短時間で容易に行うことができる。プロセスカートリッジを搭載した画像形成装置とすれば、メンテナンス性の向上や、コストダウンが図れる。
次に、実施例および比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中において使用する「部」は、すべて重量部を表す。
以降の実施例、および比較例の架橋表面層用塗工液の処方に用いる電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物を以下により合成した。
(合成例1)
<例示化合物No.54の合成>
例示化合物No.54の合成を以下の手順で実施した。
(1)ヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物の合成:
下記構造式(A)で示されるメトキシ基置換トリアリールアミン化合物113.85g(0.3mol)と、ヨウ化ナトリウム138g(0.92mol)にスルホラン240mlを加え、窒素気流中で60℃に加温した。
Figure 0004688718
上記液中にトリメチルクロロシラン99g(0.91mol)を1時間で滴下し、約60℃の温度で4時間半撹拌し反応を終了させた。この反応液にトルエン約1.5Lを加え室温まで冷却し、水と炭酸ナトリウム水溶液で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン:酢酸エチル=20:1)にて精製した。得られた淡黄色オイルにシクロヘキサンを加え、結晶を析出させた。この様にして下記構造式(B)のヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物を得た。
Figure 0004688718
得られた上記構造式(B)のヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物は、88.1g(収率=80.4%)であり、白色結晶で、融点が64.0〜66.0℃であった。元素分析の結果を下記表1に示す。実測値と計算値が良く一致しており目的物であることが確認された。
Figure 0004688718
(2)トリアリールアミノ基置換アクリレート化合物(例示化合物No.54)の合成:
上記(1)で得られたヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物〔構造式(B)〕82.9g(0.227mol)をテトラヒドロフラン400mlに溶解し、窒素気流中で水酸化ナトリウム水溶液(NaOH:12.4g,水:100ml)を滴下した。この溶液を5℃に冷却し、アクリル酸クロライド25.2g(0.272mol)を40分かけて滴下した。その後、5℃で3時間撹拌して反応を終了させた。この反応液を水に注ぎ、トルエンにて抽出した。この抽出液を炭酸水素ナトリウム水溶液と水で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン)にて精製した。得られた無色のオイルにn−ヘキサンを加え、結晶を析出させ、例示化合物No.54の電荷輸送性構造を持つ化合物を得た。
得られた化合物は、80.73g(収率=84.8%)であり、白色結晶で融点が117.5〜119.0℃であった。元素分析の結果を下記表2に示す。実測値と計算値が良く一致しており目的物であることが確認された。
Figure 0004688718
(合成例2)
<例示化合物No.105の合成>
例示化合物No.54の合成における合成手順と同様にして、目的とする分子構造のメトキシ基置換トリアリールアミン化合物からヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物を合成し、これとアクリル酸クロライドを反応させて例示化合物No.105の構造を有するトリアリールアミノ基置換アクリレート化合物を合成した。元素分析の結果等から目的物であることが確認された。
以降の実施例、および比較例の電荷発生層用塗工液の処方に用いるチタニルフタロシアニン顔料を以下により合成した。
(合成例3)
<チタニルフタロシアニン顔料の合成>
1、3−ジイミノイソインドリン292gとスルホラン2000mlを混合し、窒素気流下でチタニウムテトラブトキシド204gを滴下した。滴下終了後、徐々に180℃まで昇温し、反応温度を170℃〜180℃の間に保ちながら5時間撹拌して反応を行った。反応終了後、放冷した後析出物を濾過し、クロロホルムで粉体が青色になるまで洗浄し、次にメタノールで数回洗浄し、さらに80℃の熱水で数回洗浄した後乾燥し、粗チタニルフタロシアニンを得た。粗チタニルフタロシアニンを20倍量の濃硫酸に溶解し、100倍量の氷水に撹拌しながら滴下し、析出した結晶をろ過し、次いで洗浄液が中性になるまで水洗を繰り返し、チタニルフタロシアニン顔料のウェットケーキを得た。このウェットケーキを、イオン交換水で徹底的に洗浄した。
得られたウェットケーキ20gを1,2−ジクロロエタン200gに投入し、4時間撹拌を行なった。これにメタノール1000gを追加して、1時間撹拌を行った後、濾過を行い、乾燥して、チタニルフタロシアニン粉末を得た。
得られたチタニルフタロシアニン顔料についてのX線回折スペクトルを以下に示す条件で測定した。
X線管球:Cu、電圧:40kV、電流:20mA
走査速度:1°/分、走査範囲:3°〜40°、時定数:2秒
上記合成により得られたチタニルフタロシアニン顔料のX線回折スペクトルを第5図に示す。得られたチタニルフタロシアニン顔料はブラッグ角2θの主要ピークが少なくとも9.6°±0.2°、24.0°±0.2°および27.2°±0.2°にある結晶形を有していることが分かる。
(実施例1)
φ100mmのアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を調製して順次、塗布、乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.3μmの電荷発生層、23μmの電荷輸送層をそれぞれ形成した。この電荷輸送層上に下記組成の架橋表面層用塗工液Aと架橋表面層用塗工液Bを続けてスプレー塗工し、メタルハライドランプ:160W/cm、照射距離:120mm、照射強度:500mW/cm2、照射時間:240秒の条件で光照射を行ない、更に130℃で20分乾燥を加え、架橋表面層用塗工液Aによる架橋膜2μm、架橋表面層用塗工液Bによる架橋膜2μmの総膜厚4μmの表面架橋層を設け、本発明の電子写真感光体を得た。
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂
(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業製): 6部
メラミン樹脂
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業製): 4部
酸化チタン: 40部
メチルエチルケトン: 50部
〔電荷発生層用塗工液〕
合成例3で合成したチタニルフタロシアニン粉末: 4部
ポリビニルブチラール(エスレックBM−S、積水化学工業): 2部
メチルエチルケトン: 150部
〔電荷輸送層用塗工液〕
ビスフェノールZ型ポリカーボネート
(パンライトTS−2050、帝人化成製): 10部
下記構造式(D−1)の低分子電荷輸送物質: 7部
テトラヒドロフラン: 100部
1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液
(KF50−100CS、信越化学工業製): 1部
Figure 0004688718
〔架橋表面層用塗工液A〕
トリメチロールプロパントリアクリレート(KAYARAD TMPTA、
日本化薬製; 分子量:296、官能基数:3官能、
分子量/官能基数=99)(*): 15部
合成例1で合成したラジカル重合性化合物(例示化合物No.54)(**): 5部
光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン;
イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製): 1部
テトラヒドロフラン: 100部
(*)電荷輸送性構造を持たない3官能のラジカル重合性モノマー。
(**)1官能の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物。
以下、(*)、(**)の説明は同じであるため省略する。
〔架橋表面層用塗工液B〕
トリメチロールプロパントリアクリレート(KAYARAD TMPTA、
日本化薬製; 分子量:296、官能基数:3官能、
分子量/官能基数=99)(*): 5部
合成例1で合成したラジカル重合性化合物(例示化合物No.54)(**):15部
光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン;
イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製): 1部
テトラヒドロフラン: 100部
(実施例2)
実施例1において、架橋表面層用塗工液A、Bを下記組成に変えた以外は実施例1と同様にして電荷輸送層上に表面架橋層を設け、本発明の電子写真感光体を得た。
〔架橋表面層用塗工液A〕
トリメチロールプロパントリアクリレート(KAYARAD TMPTA、
日本化薬製; 分子量:296、官能基数:3官能、
分子量/官能基数=99)(*): 14部
合成例1で合成したラジカル重合性化合物(例示化合物No.54)(**): 6部
光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン;
イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製): 1部
テトラヒドロフラン: 100部
〔架橋表面層用塗工液B〕
トリメチロールプロパントリアクリレート(KAYARAD TMPTA、
日本化薬製; 分子量:296、官能基数:3官能、
分子量/官能基数=99)(*): 6部
合成例1で合成したラジカル重合性化合物(例示化合物No.54)(**):14部
光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン;
イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製): 1部
テトラヒドロフラン: 100部
(実施例3)
実施例1において、架橋表面層用塗工液A、Bを下記組成に変えた以外は実施例1と同様にして電荷輸送層上に表面架橋層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
〔架橋表面層用塗工液A〕
トリメチロールプロパントリアクリレート(KAYARAD TMPTA、
日本化薬製; 分子量:296、官能基数:3官能、
分子量/官能基数=99)(*): 13部
合成例1で合成したラジカル重合性化合物(例示化合物No.54)(**): 7部
光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン;
イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製): 1部
テトラヒドロフラン: 100部
〔架橋表面層用塗工液B〕
トリメチロールプロパントリアクリレート(KAYARAD TMPTA、
日本化薬製; 分子量:296、官能基数:3官能、
分子量/官能基数=99)(*): 7部
合成例1で合成したラジカル重合性化合物(例示化合物No.54)(**):13部
光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン;
イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製): 1部
テトラヒドロフラン: 100部
(実施例4)
実施例1において、架橋表面層用塗工液A、Bを下記組成に変えた以外は実施例1と同様にして電荷輸送層上に表面架橋層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
〔架橋表面層用塗工液A〕
トリメチロールプロパントリアクリレート(KAYARAD TMPTA、
日本化薬製; 分子量:296、官能基数:3官能、
分子量/官能基数=99)(*): 12部
合成例1で合成したラジカル重合性化合物(例示化合物No.54)(**): 8部
光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン;
イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製): 1部
テトラヒドロフラン: 100部
〔架橋表面層用塗工液B〕
トリメチロールプロパントリアクリレート(KAYARAD TMPTA、
日本化薬製; 分子量:296、官能基数:3官能、
分子量/官能基数=99)(*): 8部
合成例1で合成したラジカル重合性化合物(例示化合物No.54)(**):12部
光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン;
イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製): 1部
テトラヒドロフラン: 100部
(比較例1)
実施例1において、架橋表面層用塗工液A、Bを下記組成の架橋表面層用塗工液Cのみとし、これを電荷輸送層上にスプレー塗工し、実施例1と同様に光照射と加熱乾燥を加えて膜厚4μmの表面架橋層を設け、比較例の電子写真感光体を作製した。
〔架橋表面層用塗工液C〕
トリメチロールプロパントリアクリレート(KAYARAD TMPTA、
日本化薬製; 分子量:296、官能基数:3官能、
分子量/官能基数=99)(*): 10部
合成例1で合成したラジカル重合性化合物(例示化合物No.54)(**):10部
光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン;
イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製): 1部
テトラヒドロフラン: 100部
(実機通紙試験)
上記作製した実施例1〜4と比較例1の電子写真感光体を用いて実機通紙試験を行った。
すなわち、リコー製imagio Neo751改造機(感光体線速(プロセス線速):350mm/sec)を用いて、50万枚の実機通紙試験(A4、NBSリコー製MyPaper、スタート時帯電電位−800V)を実施し、摩耗特性、機内電位、画像評価を行った。結果を下記表3、4、5にそれぞれ示す。
摩耗特性、機内電位、画像評価は以下の条件で実施した。
摩耗特性:電子写真感光体の膜厚を測定することで求めた。膜厚測定装置はうず電流式膜厚計(FISHERSCOPE)を用いた。
機内電位:機内電位の暗部電位はグリッド電圧を−900(V)に固定して白ベタ画像を出力したときの表面電位より求めた。表面電位の測定はTREK MODEL344を用いた。露光部電位は暗部電位が−800(V)になるようにグリッド電位を調節して、黒ベタ画像を出力したときの表面電位より求めた。
画像特性:図6の原稿を出力した後、続けてハーフトーン画像を出力して現れるネガ残像(図7)の程度を評価した。画像特性(ネガ残像評価)におけるネガ残像の評価基準は次による。
○→なし、△→わずかに発生、×→はっきり発生
Figure 0004688718
Figure 0004688718
Figure 0004688718
(実施例5)
φ100mmのアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布、乾燥することにより、1.0μmの下引き層、0.3μmの電荷発生層、23μmの電荷輸送層をそれぞれ形成した。この電荷輸送層上に下記組成の架橋表面層用塗工液D、E、Fを続けてスプレー塗工し、メタルハライドランプ:160W/cm、照射距離:120mm、照射強度:500mW/cm2、照射時間:240秒の条件で光照射を行ない、更に130℃で20分乾燥を加え、架橋表面層用塗工液Dによる架橋膜1.4μm、架橋表面層用塗工液Eによる架橋膜1.4μm、架橋表面層用塗工液Fによる架橋膜1.4μmの総膜厚4.2μmの表面架橋層を設け、本発明の電子写真感光体を得た。
〔下引き層用塗工液〕
酸化チタン: 40部
アルコール可溶性ナイロン: 32部
メタノール: 400部
イソプロパノール: 160部
〔電荷発生層塗工液〕
合成例3で合成したチタニルフタロシアニン粉末: 4部
ポリビニルブチラール(エスレックBM−S、積水化学工業): 2部
メチルエチルケトン: 150部
〔電荷輸送層用塗工液〕
ビスフェノールZ型ポリカーボネート
(パンライトTS−2050、帝人化成製): 10部
下記構造式(D−1)の低分子電荷輸送物質: 7部
テトラヒドロフラン: 100部
1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液
(KF50−100CS、信越化学工業製): 1部
Figure 0004688718
〔架橋表面層用塗工液D〕
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPHA、
日本化薬製;分子量:536、官能基数:5.5官能、
分子量/官能基数=97)(***): 15部
合成例2で合成したラジカル重合性化合物(例示化合物No.105)(****): 5部
光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン;
イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製): 1部
テトラヒドロフラン: 100部
(***)電荷輸送性構造を持たない3官能以上のラジカル重合性モノマー。
(****)1官能の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物。
以下、(***)、(****)の説明は同じであるため省略する。
〔架橋表面層用塗工液E〕
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPHA、
日本化薬製;分子量:536、官能基数:5.5官能、
分子量/官能基数=97)(***): 10部
合成例2で合成したラジカル重合性化合物(例示化合物No.105)(****): 10部
光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン;
イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製): 1部
テトラヒドロフラン: 100部
〔架橋表面層用塗工液F〕
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPHA、
日本化薬製;分子量:536、官能基数:5.5官能、
分子量/官能基数=97)(***): 5部
合成例2で合成したラジカル重合性化合物(例示化合物No.105)(****): 15部
光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン;
イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製): 1部
テトラヒドロフラン: 100部
(実施例6)
実施例5において、架橋表面層用塗工液D、E、Fを下記組成に変えた以外は実施例5と同様にして電荷輸送層上に表面架橋層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
〔架橋表面層用塗工液D〕
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPHA、
日本化薬製;分子量:536、官能基数:5.5官能、
分子量/官能基数=97)(***): 14部
合成例2で合成したラジカル重合性化合物(例示化合物No.105)(****): 6部
光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン;
イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製): 1部
テトラヒドロフラン: 100部
〔架橋表面層用塗工液E〕
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPHA、
日本化薬製;分子量:536、官能基数:5.5官能、
分子量/官能基数=97)(***): 10部
合成例2で合成したラジカル重合性化合物(例示化合物No.105)(****): 10部
光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン;
イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製): 1部
テトラヒドロフラン: 100部
〔架橋表面層用塗工液F〕
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPHA、
日本化薬製;分子量:536、官能基数:5.5官能、
分子量/官能基数=97)(***): 6部
合成例2で合成したラジカル重合性化合物(例示化合物No.105)(****): 14部
光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン;
イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製): 1部
テトラヒドロフラン: 100部
(実施例7)
実施例5において、架橋表面層用塗工液D、E、Fを下記組成に変えた以外は実施例5と同様にして電荷輸送層上に表面架橋層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
〔架橋表面層用塗工液D〕
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPHA、
日本化薬製;分子量:536、官能基数:5.5官能、
分子量/官能基数=97)(***): 13部
合成例2で合成したラジカル重合性化合物(例示化合物No.105)(****): 7部
光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン;
イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製): 1部
テトラヒドロフラン: 100部
〔架橋表面層用塗工液E〕
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPHA、
日本化薬製;分子量:536、官能基数:5.5官能、
分子量/官能基数=97)(***): 10部
合成例2で合成したラジカル重合性化合物(例示化合物No.105)(****): 10部
光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン;
イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製): 1部
テトラヒドロフラン: 100部
〔架橋表面層用塗工液F〕
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPHA、
日本化薬製;分子量:536、官能基数:5.5官能、
分子量/官能基数=97)(***): 7部
合成例2で合成したラジカル重合性化合物(例示化合物No.105)(****): 13部
光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン;
イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製): 1部
テトラヒドロフラン: 100部
(実施例8)
実施例5において、架橋表面層用塗工液D、E、Fを下記組成に変えた以外は実施例5と同様にして電荷輸送層上に表面架橋層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
〔架橋表面層用塗工液D〕
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPHA、
日本化薬製;分子量:536、官能基数:5.5官能、
分子量/官能基数=97)(***): 12部
合成例2で合成したラジカル重合性化合物(例示化合物No.105)(****): 8部
光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン;
イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製): 1部
テトラヒドロフラン: 100部
〔架橋表面層用塗工液E〕
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPHA、
日本化薬製;分子量:536、官能基数:5.5官能、
分子量/官能基数=97)(***): 10部
合成例2で合成したラジカル重合性化合物(例示化合物No.105)(****): 10部
光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン;
イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製): 1部
テトラヒドロフラン: 100部
〔架橋表面層用塗工液F〕
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPHA、
日本化薬製;分子量:536、官能基数:5.5官能、
分子量/官能基数=97)(***): 8部
合成例2で合成したラジカル重合性化合物(例示化合物No.105)(****): 12部
光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン;
イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製): 1部
テトラヒドロフラン: 100部
(比較例2)
実施例5において、架橋表面層用塗工液D、E、Fを下記組成の架橋表面層用塗工液Gのみとし、これを電荷輸送層上にスプレー塗工し、実施例5と同様に光照射と加熱乾燥を加えて膜厚4.2μmの表面架橋層を設け、比較例の電子写真感光体を作製した。
〔架橋表面層用塗工液G〕
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPHA、
日本化薬製;分子量:536、官能基数:5.5官能、
分子量/官能基数=97)(***): 10部
合成例2で合成したラジカル重合性化合物(例示化合物No.105)(****): 10部
光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン;
イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製): 1部
テトラヒドロフラン: 100部
(実機通紙試験)
上記作製した実施例5〜8と比較例2の電子写真感光体を用いて実機通紙試験を行った。
すなわち、リコー製imagio Neo1050Pro改造機(感光体線速(プロセス線速):500mm/sec)を用いて、100万枚の実機通紙試験(A4、NBSリコー製MyPaper、スタート時帯電電位−800V)を実施し、摩耗特性、機内電位、画像評価を行った。結果を下記表6、7、8に示す。
摩耗特性、機内電位、画像評価は以下の条件で実施した。
摩耗特性:電子写真感光体の膜厚を測定することで求めた。膜厚測定装置はうず電流式膜厚計(FISHERSCOPE)を用いた。
機内電位:機内電位の暗部電位はグリッド電圧を−900(V)に固定して白ベタ画像を出力したときの表面電位より求めた。表面電位の測定はTREK MODEL344を用いた。露光部電位は暗部電位が−800(V)になるようにグリッド電位を調節して、黒ベタ画像を出力したときの表面電位より求めた。
画像特性:画像特性は図6の原稿を出力したあと、続けてハーフトーン画像を出力して現れるネガ残像(図7)の程度を評価した。画像特性(ネガ残像評価)におけるネガ残像の評価基準は次による。
○→なし、△→わずかに発生、×→はっきり発生
Figure 0004688718
Figure 0004688718
Figure 0004688718
以上の評価結果から、電荷輸送性構造を持たない3官能以上のラジカル重合性化合物と1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物とが架橋結合され、硬化樹脂中における電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物の濃度が膜厚深さ方向の表面から内部に向けて小さくなるように構成した表面層を、感光層上に形成することにより、摩耗などに対して高耐久性を維持し、ネガ残像などもなく高速で繰り返し使用した際にも異常画像の発生がなく安定した状態で画像を出力することができる。すなわち、表面層中の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物の濃度が表面と内部で異なることでネガ残像が大幅に改善され、それによる副作用が最小限に抑えられる。したがって、本発明の電子写真感光体を配備した画像形成装置および画像形成装置用プロセスカートリッジとすれば、長期間にわたって安定した高品質の画像形成を行うことが可能である。
本発明における電子写真感光体の層構造の一例を示す断面図である。 本発明における電子写真感光体の層構造の別例を示す断面図である。 本発明における画像形成装置の構成例を示す概略図である。 本発明におけるプロセスカートリッジの一例を示す概略図である。 実施例の合成例3により得られたチタニルフタロシアニン顔料のX線回折スペクトルを示す図である。 実施例の画像評価において原稿の出力を説明するための模式図である。 実施例の画像評価において原稿の出力に続きハーフトーン画像を出力して現れるネガ残像を説明するための模式図である。
符号の説明
1 感光体
2 除電ランプ
3 帯電チャージャ
4 イレーサ
5 画像露光部
6 現像ユニット
7 転写前チャージャ
8 レジストローラ
9 転写紙
10 転写チャージャ
12 分離爪
13 クリーニング前チャージャ
14 ファーブラシ
15 クリーニングブレード
31 導電性支持体
32 下引き層
33 感光層
34 架橋表面層
35 電荷発生層
37 電荷輸送層
101 感光体(感光ドラム)
102 帯電手段
103 露光
104 現像手段
105 転写体
106 転写手段
107 クリーニング手段(クリーニングブレード)

Claims (19)

  1. 電子写真感光体上に少なくとも静電潜像形成手段、トナーにより可視像を形成する現像手段、前記可視像を感光体に対して正電位を印加して記録媒体に転写する接触方式の転写手段、前記記録媒体に転写された可視像を定着させる定着手段を備えた画像形成装置に配備される、該電子写真感光体であって、
    前記感光体は、導電性支持体上に少なくとも感光層と表面層を有し、該表面層が、電荷輸送性構造を持たない3官能以上のラジカル重合性化合物と、1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物との架橋結合により形成された硬化樹脂からなると共に、該硬化樹脂中における架橋結合した電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物の濃度が表面から内部に向けて小さくなることを特徴とする電子写真感光体。
  2. 前記接触方式の転写手段が、電子写真感光体に対して正電位を印加するローラー方式、もしくはベルト方式であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 前記1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物が、1官能であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体。
  4. 前記1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物の官能基が、アクリロイルオキシ基および/またはメタクリロイルオキシ基であることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の電子写真感光体。
  5. 前記電荷輸送性構造を持たない3官能以上のラジカル重合性化合物の官能基が、アクリロイルオキシ基および/またはメタクリロイルオキシ基であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体。
  6. 前記1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物が、分子中にトリアリールアミン構造を含むことを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の電子写真感光体。
  7. 前記トリアリールアミン構造を含む1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物が、下記一般式(1)または(2)で示されることを特徴とする請求項に記載の電子写真感光体。
    Figure 0004688718

    (式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR7(R7は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基もしくはCONR89(R8およびR9は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい)を表し、Ar1、Ar2は置換もしくは未置換のアリーレン基を表し、同一であっても異なってもよい。Ar3、Ar4は置換もしくは未置換のアリール基を表し、同一であっても異なってもよい。Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。Zは置換もしくは無置換のアルキレン基またはアラルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、アルキレンオキシカルボニル基を表す。mは0〜3の整数を表す。)
    Figure 0004688718

    (式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR7(R7は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基もしくはCONR89(R8およびR9は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい)を表し、Ar2は置換もしくは未置換のアリーレン基を表し、同一であっても異なってもよい。Ar3、Ar4は置換もしくは未置換のアリール基を表し、同一であっても異なってもよい。Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。Zは置換もしくは無置換のアルキレン基またはアラルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、アルキレンオキシカルボニル基を表す。nは0〜3の整数を表す。)
  8. 前記トリアリールアミン構造を含む1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物が、下記一般式(3)で示されることを特徴とする請求項に記載の電子写真感光体。
    Figure 0004688718

    (式中、o、p、qはそれぞれ0または1の整数、Raは水素原子またはメチル基を表し、Rb、Rcは水素原子以外の置換基で炭素数1〜6のアルキル基を表し、複数の場合は異なっても良い。s、tは0〜3の整数を表す。Zaは単結合、メチレン基、エチレン基、あるいは次式(a)、(b)、(c):
    Figure 0004688718

    で示される2価基を表す。)
  9. 前記硬化樹脂における架橋結合が、光エネルギーの照射により形成されたものであることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の電子写真感光体。
  10. 前記感光層中に電荷発生物質としてチタニルフタロシアニンを含有することを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の電子写真感光体。
  11. 前記チタニルフタロシアニンが、Cu−Kα線に対するX線回折スペクトルにおいてブラッグ角2θの主要ピークが少なくとも9.6°±0.2°、24.0°±0.2°および27.2°±0.2°にある結晶型を有するものであることを特徴とする請求項10に記載の電子写真感光体。
  12. 電子写真感光体上に少なくとも静電潜像形成手段、トナーにより可視像を形成する現像手段、前記可視像を感光体に対して正電位を印加して記録媒体に転写する接触方式の転写手段、前記記録媒体に転写された可視像を定着させる定着手段を備えた画像形成装置に配備される、該電子写真感光体の製造方法であって、
    導電性支持体上に少なくとも感光層と表面層とを順次形成することよりなり、該表面層の形成時に、電荷輸送性構造を持たない3官能以上のラジカル重合性化合物と、1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物を含有し、該電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物の濃度が異なる少なくとも2種類以上の塗工液を用い、溶液塗工法により塗工液の種類を変えて順次塗布することで、該1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物の濃度が、表面から内部に向けて小さくなる表面層を形成することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
  13. 前記溶液塗工法が、スプレー塗工であることを特徴とする請求項12に記載の電子写真感光体の製造方法。
  14. 前記塗工液中の電荷輸送性構造を持たない3官能以上のラジカル重合性化合物と、1官能以上の電荷輸送性構造を持つラジカル重合性化合物の含有濃度の異なる塗工液を用いて順次スプレー塗布を複数回行い表面層を形成することを特徴とする請求項12または13に記載の電子写真感光体の製造方法。
  15. 請求項1〜11の何れかに記載の電子写真感光体を少なくとも備えたことを特徴とする画像形成装置。
  16. 前記電子写真感光体の線速が300mm/sec以上であることを特徴とする請求項15に記載の画像形成装置。
  17. 請求項1〜11の何れかに記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段の少なくとも一つを具備し、画像形成装置本体と着脱自在に構成されたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
  18. 請求項17に記載の前記プロセスカートリッジを搭載したことを特徴とする画像形成装置。
  19. 請求項1〜11の何れかに記載の電子写真感光体を用い、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写を行うことを特徴とする画像形成方法。
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