JP5032278B2 - 画像形成装置用像担持体、画像形成装置、及びプロセスカートリッジ - Google Patents

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本発明は耐摩耗性が高く、且つ安定な電気特性を維持し、高品質の画像形成を長期間にわたり実現した画像形成装置用像担持体、及びこの像担持体を用いた画像形成装置に関する。
近年、有機感光体(OPC)は良好な性能、様々な利点から、無機感光体に代わり複写機、ファクシミリ、レーザープリンタ及びこれらの複合機に多く用いられている。この理由としては、例えば(1)光吸収波長域の広さ及び吸収量の大きさ等の光学特性、(2)高感度、安定な帯電特性等の電気的特性、(3)材料の選択範囲の広さ、(4)製造の容易さ、(5)低コスト、(6)無毒性、等が挙げられる。
一方、最近画像形成装置の小型化から感光体の小径化が進み、機械の高速化やメンテナンスフリーの動きも加わり感光体の高耐久化が切望されるようになってきた。この観点からみると、有機感光体は、表面層が低分子電荷輸送材料と不活性高分子を主成分としているため一般に柔らかく、電子写真プロセスにおいて繰り返し使用された場合、現像システムやクリーニングシステムによる機械的な負荷により摩耗しやすいという欠点を有している。加えて高画質化の要求からトナー粒子の小粒径化に伴いクリーニング性を上げる目的でクリーニングブレードのゴム硬度の上昇と当接圧力の上昇が余儀なくされ、このことも感光体の摩耗を促進する要因となっている。このような感光体の摩耗は、感度の劣化、帯電性の低下などの電気的特性を劣化させ、画像濃度低下、地肌汚れ等の異常画像の原因となる。また摩耗が局所的に発生した傷は、クリーニング不良によるスジ状汚れ画像をもたらす。現状では感光体の寿命はこの摩耗や傷が律則となり、交換に至っている。
したがって、有機感光体の高耐久化においては前述の摩耗量を低減することが不可欠であり、当分野で最も解決が迫られている課題である。
感光層の耐摩耗性を改良する技術としては、(1)表面層に硬化性バインダーを用いたもの(特許文献1)、(2)高分子型電荷輸送物質を用いたもの(特許文献2)、(3)表面層に無機フィラーを分散させたもの(特許文献3)等が挙げられる。これらの技術の内、(1)の硬化性バインダーを用いたものは、電荷輸送物質との相溶性が悪いためや重合開始剤、未反応残基などの不純物により残留電位が上昇し画像濃度低下が発生し易い傾向がある。また、(2)の高分子型電荷輸送物質を用いたもの、及び(3)の無機フィラーを分散させたものは、ある程度の耐摩耗性向上が可能であるものの、有機感光体に求められている耐久性を十二分に満足させるまでには至っていない。さらに(3)の無機フィラーを分散させたものは、無機フィラー表面に存在するトラップにより残留電位が上昇し、画像濃度低下が発生し易い傾向にある。これら(1)、(2)、(3)の技術では、有機感光体に求められる電気的な耐久性、機械的な耐久性をも含めた総合的な耐久性を十二分に満足するには至っていない。
さらに、上記(1)の技術に関連し、耐摩耗性と耐傷性を改良するために多官能の硬化型アクリレートモノマーを含有させた感光体も知られている(特許文献4)。しかし、この感光体においては、感光層上に設けた保護層にこの多官能の硬化型アクリレートモノマーを含有させる旨の記載があるものの、この保護層においては電荷輸送物質を含有せしめてもよいことが記載されているのみで具体的な記載はなく、しかも、単に表面層に低分子の電荷輸送物質を含有させた場合には、上記硬化物との相溶性の問題があり、これにより、低分子電荷輸送物質の析出、クラックの発生が起こり、機械強度も低下してしまうことがあった。また相溶性向上のためにポリカーボネート樹脂を含有させる旨の記載もあるが、硬化型アクリルモノマー含有量が減少し、結果的には充分な耐摩耗性を達成できていない。また表面層に電荷輸送物質を含まない感光体については、露光部電位低下のために表面層を薄膜とする旨の記載があるが、膜厚が薄いと、感光体の寿命が短く、また露光部電位についても充分な値を維持するには至っていないのが現状である。
これらに代わる感光層の耐摩耗技術として、炭素−炭素二重結合を有するモノマーと、炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質及びバインダー樹脂からなる塗工液を用いて形成した電荷輸送層を設けることが知られており(特許文献5)、このバインダー樹脂には、炭素−炭素二重結合を有し、上記電荷輸送物質に対して反応性を有するものと、上記二重結合を有せず反応性を有しないものが含まれる。この感光体は耐摩耗性と良好な電気的特性を両立しており注目されるが、バインダー樹脂として反応性を有しないものを使用した場合においては、バインダー樹脂と、上記モノマーと電荷輸送物質との反応により生成した硬化物との相溶性が悪く、相分離から架橋時に表面凹凸が生じ、クリーニング不良を引き起こす傾向が見られた。また、上記のように、この場合バインダー樹脂がモノマーの硬化を妨げるほか、この感光体において使用される上記モノマーとして具体的に記載されているものは2官能性のものであり、この2官能性モノマーでは官能基数が少なく充分な架橋密度が得られず、耐摩耗性の点では未だ満足するには至らなかった。また、反応性を有するバインダーを使用した場合においても、上記モノマーおよび上記バインダー樹脂に含有される官能基数の低さから、上記電荷輸送物質の結合量と架橋密度との両立は難しく、電気特性及び耐摩耗性も充分とは言えないものであった。
また、同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を硬化した化合物を含有する感光層も知られている(特許文献6)。しかし、この感光層は嵩高い正孔輸送性化合物が二つ以上の連鎖重合性官能基を有するため硬化物中に歪みが発生し内部応力が高くなり、表面層の荒れや経時におけるクラックが発生しやすい場合があり、充分な耐久性を有していない。
更に前記の耐摩耗性、電気特性、表面性、及びクラックに対する課題を解決する方法として、電荷輸送層上に1〜10μmの架橋型電荷輸送層を有し、架橋型電荷輸送層が電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を硬化することにより形成される感光体が開示されている(特許文献7)。前記発明においては、特定の架橋型電荷輸送層を設けることにより、大幅に感光体の耐久性を向上することを可能にしており、特許文献1〜6に比べ優れた耐磨耗性と安定した電気特性を維持することができる感光体を得ることが可能となった。しかしながら近年、情報処理端末の処理速度の増加に伴って、大量の情報を短時間で扱う技術が日々進歩しており、同時に画像形成装置の出力速度の増加と、より一層、少なくとも100万枚以上の繰り返し通紙の使用に耐えうる耐久性を求められるようになってきており、前記特許文献7の感光体においても100万枚以上の長期に渡る繰り返し通紙の使用の際には、電気特性の悪化により、異常画像が発生する問題を有していた。
この長期に渡る繰り返し通紙時の主な異常画像としては、トナー像を転写部材に転写する際の逆極性の電荷が起因して残像を発生させるものであり、特に直接転写方式の画像形成装置において、顕著に異常画像の発生が見られるものである。この直接転写方式における異常画像を解決する方法としては、電子写真感光体が導電性支持体上に電荷ブロッキング層、モアレ防止層、感光層、保護層を順に積層してなるものであり、該保護層は前述の特許文献7と同様に、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を硬化することにより形成される感光体が開示されている(特許文献8)。
しかしながら、前記開示技術においても、特許文献7に比べ優れた耐久性を得られることが可能となったものの、100万枚以上の繰り返し通紙の使用においては、前記残像の発生が確認されており、機械的耐久性、安定な電気特性を維持し、良好な画像形成を長期間にわたり実現した像担持体としては、まだ不十分なものであった。
特開昭56−48637号公報 特開昭64−1728号公報 特開平4−281461号公報 特許第3262488号公報 特許第3194392号公報 特開2000−66425号公報 特開2004−302451号公報 特開2006−227496号公報
本発明の課題は耐摩耗性が高く、且つ安定な電気特性及び高品質の画像形成を長期間にわたり実現した画像形成装置用像担持体を提供することであり、また、それらの像担持体を使用した画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジを提供することである。
本発明者らは導電性支持体上に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層、架橋表面保護層を有する画像形成装置用像担持体において、該電荷輸送層が少なくとも前記一般式()で示される化合物を含有し、該架橋表面保護層が少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物とを硬化することにより形成され、かつ電荷輸送層に対する架橋表面保護層の膜厚比率が0.7〜1.3である画像形成装置用像担持体により、前記課題が達成できることを見いだして本発明を成すに至った。
すなわち、上記課題は、本発明の(1)「導電性支持体上に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層、架橋表面保護層を有する画像形成装置用像担持体において、該電荷輸送層が少なくとも下記一般式()で示されるジスチリルベンゼン誘導体を含有し、該架橋表面保護層が少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物とを硬化することにより形成され、かつ電荷輸送層に対する架橋表面保護層の膜厚比率が0.7〜1.3であることを特徴とする画像形成装置用像担持体」
Figure 0005032278
〔一般式(A)中、R 8 〜R 33 は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、置換もしくは無置換のフェニル基を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。〕
(2)「導電性支持体上に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層、架橋表面保護層を有する画像形成装置用像担持体において、該電荷輸送層が少なくとも前記一般式(I)で示される化合物と下記一般式(II)で示される化合物を含有し、該架橋表面保護層が少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物とを硬化することにより形成され、かつ電荷輸送層に対する架橋表面保護層の膜厚比率が0.7〜1.3であることを特徴とする前記(1)記載の画像形成装置用像担持体」、
Figure 0005032278
(一般式(II)中、Ar1およびAr2は置換または未置換のアリール基、置換または未置換の複素環基を表し、R1、R2およびR3は水素原子、置換または未置換のアルキル基、置換または未置換のアルコキシ基、置換または未置換のアリール基、置換または未置換の複素環基を表すが、R2、R3は互いに結合して環を形成してもよく、Ar3は置換または未置換のアリーレン基を表し、nは0または1を表す。)
)「前記電荷発生層が少なくともチタニルフタロシアニン顔料を含有することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の画像形成装置用像担持体」、
)「前記電荷発生層が少なくともチタニルフタロシアニンとジスアゾ顔料を含有することを特徴とする前記(1)乃至()のいずれかに記載の画像形成装置用像担持体」、
)「前記電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物は、その有する官能基として、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有するものであることを特徴とする前記(1)乃至()のいずれかに記載の画像形成装置用像担持体」、
)「前記電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物は電荷輸送性構造として、トリアリールアミン構造を有するものであることを特徴とする前記(1)乃至()のいずれかに記載の画像形成装置用像担持体」、
)「前記電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物が、下記一般式(1)又は(2)の一種以上であることを特徴とする前記(1)乃至()のいずれかに記載の画像形成装置用像担持体、
Figure 0005032278
Figure 0005032278
(一般式(1)および(2)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR7(R7は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基若しくは置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基又はCONR89(R8及びR9は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基若しくは置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい)を表わし、Ar1、Ar2は置換又は未置換のアリーレン基を表わし、同一であっても異なってもよい。Ar3、Ar4は置換又は未置換のアリール基を表わし、同一であっても異なってもよい。Xは単結合、置換又は無置換のアルキレン基、置換又は無置換のシクロアルキレン基、置換又は無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わす。Zは置換又は無置換のアルキレン基、置換又は無置換のアルキレンエーテル基、アルキレンオキシカルボニル基を表わす。m、nは0〜3の整数を表わす。)」、
)「前記電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物が、下記一般式(3)の一種以上であることを特徴とする前記(1)乃至()のいずれかに記載の画像形成装置用像担持体
Figure 0005032278
(一般式(3)中、o、p、qはそれぞれ0又は1の整数、Raは水素原子、メチル基を表わし、Rb、Rcは炭素数1〜6のアルキル基を表わし、複数の場合は異なっても良い。s、tは0〜3の整数を表わす。Zaは単結合、メチレン基、エチレン基、
Figure 0005032278
を表わす。)」、
)「前記架橋表面保護層を硬化する硬化手段が加熱又は光エネルギー照射手段であることを特徴とする前記(1)乃至()のいずれかに記載の画像形成装置用像担持体」、
10)「少なくとも前記(1)乃至()のいずれかに記載の画像形成装置用像担持体と、帯電、露光、現像、転写部材を有する画像形成装置において、線速500mm/s以上で動作する像担持体上に現像されたトナー像を被転写体に直接転写し、かつ被転写体にトナー像を転写した後の像担持体の表面電位極性が帯電時の極性と逆極性となることを特徴とする画像形成装置」、
11)「前記(1)乃至()のいずれかに記載の画像形成装置用像担持体と、帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び除電手段よりなる群から選ばれた少なくとも一つの手段とを有する画像形成装置用プロセスカートリッジであって、画像形成装置本体に着脱可能であることを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ」
により達成される。
本発明において、導電性支持体上に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層、架橋表面保護層を有する画像形成装置用像担持体において、電荷輸送層が少なくとも前記一般式(I)で示される化合物を含有し、架橋表面保護層は少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物とを硬化することにより形成され、電荷輸送層に対する架橋表面保護層の膜厚比率が0.7〜1.3であることで、耐摩耗性が高く、且つ良好な電気特性を有し、特に100万枚以上の繰り返し使用の際の残像のような異常画像のない高品質の画像形成を長期間にわたり得ることが可能な画像形成装置用像担持体を実現することができる。
また、電荷発生層に用いる電荷発生材料や架橋表面保護層に用いる電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物に特定の材料を用いることにより、より優れた寿命と安定性を有する画像形成装置用像担持体を得ることができる。
更に線速500mm/s以上で動作する前記像担持体上に現像されたトナー像を被転写体に直接転写し、かつ被転写体にトナー像を転写した後の像担持体の表面電位極性が帯電時の極性と逆極性となる画像形成装置により高画質な画像を長期にわたり提供できる信頼性の高い画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジが提供できるという極めて優れた効果が発揮される。
本発明の画像形成装置用像担持体の、架橋表面保護層は少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物とを硬化することにより形成され、これにより、3次元の網目構造が発達し、耐摩耗性と安定した電気特性を有する架橋表面保護層を得られるものである。
また、本発明者らの検討により、電荷輸送層に、前記一般式(I)に示される化合物を含有させ、電荷輸送層に対する架橋表面保護層の膜厚比率を0.7〜1.3とすることにより、従来100万枚以上の長期に渡る繰り返し通紙の際に電気的な劣化が生じ、特に転写時の逆極性の電荷が残像として異常画像を生じる現象を回避することが可能となった。
また、特に電荷発生層に用いる電荷発生材料としてチタニルフタロシアニン顔料、又はチタニルフタロシアニン顔料とジスアゾ顔料の混合物を用いた際、特に長期の繰り返し通紙の際の異常画像を回避することが可能となった。
本発明による効果の詳細については不明であるが、電荷輸送層に特定の化合物を含有することにより転写時の逆極性の電荷が電荷輸送層内にトラップとして残存しにくくなったものと推定され、また電荷輸送層と電荷輸送機能を有する架橋表面保護層の膜厚比を特定の範囲にすることにより、各層の電気的劣化を最小限に抑制することが可能になり、異常画像を回避することが可能になったものと思われる。また、特に電荷発生層に用いる電荷発生材料としてチタニルフタロシアニン顔料、又はチタニルフタロシアニン顔料とジスアゾ顔料の混合物を用いた場合、転写時の逆極性電荷が電荷発生層に注入された際にトラップとして残存しにくくなったものと推定される。
以下本発明について詳細に記載する。
まず、本発明で用いられる架橋表面保護層について説明する。
本発明で使用される像担持体(以下感光体、電子写真感光体とも称す)には、感光体の繰り返し使用によって起こる摩耗の影響を軽減し、電気的な経時安定性を高めることを目的として、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物と1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物とを硬化することにより形成される保護層が感光層の上に設けられる。
この保護層は、感光体の耐摩耗性を高めることを主目的とするが、これにより繰り返し使用による電界強度の増加を抑制することが可能となり、地汚れの抑制に有効となる。また、残留電位上昇が少なく、感光体表面の耐傷性も高く、フィルミング等も発生しにくいことから画像欠陥の発生を低減させる効果も有しており、高耐久化を実現する上で有効かつ有用である。
感光体表面に形成される傷や表面に付着する異物(トナー、トナーの外添剤、キャリア、紙粉等)は、感光体のクリーニング性を低下させ、画質安定性を顕著に低下させる。したがって、感光体の高耐久化を実現させるためには、耐摩耗性を高めるだけでなく、感光体表面の傷やフィルミングの影響を最小限にすることが重要であり、そのためには高硬度、高弾性でかつ平滑な表面層を形成させることが好ましい。
本発明に使用される保護層は、3官能以上のラジカル重合性化合物を硬化した架橋構造を有するため3次元の網目構造が発達し、架橋密度が非常に高い高硬度且つ高弾性な表面層が得られ、かつ均一で平滑性も高く、高い耐摩耗性、耐傷性が達成される。
さらに、本発明の保護層の形成においては、3官能以上のラジカル重合性化合物に加え、さらに1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を含有しており、これが上記3官能以上のラジカル重合性化合物硬化時に架橋結合中に取り込まれる。これに対し、官能基を有しない低分子電荷輸送物質を保護層中に含有させた場合、その相溶性の低さから低分子電荷輸送物質の析出や白濁現象が起こり、保護層の機械的強度も低下する。一方、2官能以上の電荷輸送性化合物を主成分として用いた場合は複数の結合で架橋構造中に固定され架橋密度はより高まるが、電荷輸送性構造が非常に嵩高いため硬化樹脂構造の歪みが非常に大きくなり、保護層の内部応力が高まり、クラックが発生する原因となる。
更に、本発明で使用される感光体は良好な電気的特性を有し、このため繰り返し安定性に優れており高耐久化並びに高安定化が実現される。これは保護層の構成材料として1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を用い、架橋結合間にペンダント状に固定化したことに起因する。なお官能基を有しない電荷輸送物質においては析出、白濁現象が起こり、感度の低下、残留電位の上昇等繰り返し使用における電気的特性の劣化が著しい。2官能以上の電荷輸送性化合物を主成分として用いた場合は複数の結合で架橋構造中に固定されるため、電荷輸送時の中間体構造(カチオンラジカル)が安定して保てず、電荷のトラップによる感度の低下、残留電位の上昇が起こりやすく、これらの電気的特性の劣化は、画像濃度低下、文字細り等の画像として現れる。
以上のように、本発明の表面保護層は優れた耐磨耗性と電気的安定性を有していることから、広い範囲の膜厚に製膜した場合も、良好な特性を得られるものであるが、長期に渡る安定性を得るためには、電荷輸送層の膜厚とのバランスを考慮することが必要であることから膜厚は8〜24μm、より好ましくは10〜20μmであることが望ましい。
次に、本発明の表面保護層塗布液の構成材料について説明する。
本発明に用いられる電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物とは、例えばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しておらず、且つラジカル重合性官能基を3個以上有する化合物を指す。このラジカル重合性官能基とは、炭素−炭素2重結合を有し、ラジカル重合可能な基であれば何れでもよい。これらラジカル重合性官能基としては、例えば、下記に示す1−置換エチレン官能基、1,1−置換エチレン官能基等が挙げられる。
(1)1−置換エチレン官能基としては、例えば以下の式で表される官能基が挙げられる。
CH2=CH−X1−・・・・式10
(ただし、式10中、X1は、置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、−CO−基、−COO−基、−CON(R10)−基(R10は、水素、メチル基、エチル基等のアルキル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を表す。)、または−S−基を表す。)
これらの官能基を具体的に例示すると、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基、ビニルチオエーテル基等が挙げられる。
(2)1,1−置換エチレン官能基としては、例えば以下の式で表される官能基が挙げられる。
CH2=C(Y)−X2−・・・・式11
(ただし、式11中、Yは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基あるいはエトキシ基等のアルコキシ基、−COOR11基(R11は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル、フェネチル基等のアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、または−CONR1213(R12およびR13は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、ナフチルメチル基、あるいはフェネチル基等のアラルキル基、または置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基を表し、互いに同一または異なっていてもよい。)、また、X2は上記式10のX1と同一の置換基及び単結合、アルキレン基を表す。ただし、Y、X2の少なくとも何れか一方がオキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基、及び芳香族環である。)
これらの官能基を具体的に例示すると、α−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基等が挙げられる。
なお、これらX1、X2、Yについての置換基にさらに置換される置換基としては、例えばハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
これらのラジカル重合性官能基の中では、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用であり、3個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物は、例えば水酸基がその分子中に3個以上ある化合物とアクリル酸(塩)、アクリル酸ハライド、アクリル酸エステルを用い、エステル反応あるいはエステル交換反応させることにより得ることができる。また、3個以上のメタクリロイルオキシ基を有する化合物も同様にして得ることができる。また、ラジカル重合性官能基を3個以上有する単量体中のラジカル重合性官能基は、同一でも異なっても良い。
電荷輸送性構造を有しない3官能以上の具体的なラジカル重合性化合物としては、以下のものが例示されるが、これらの化合物に限定されるものではない。
すなわち、本発明において使用する上記ラジカル重合性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ変性(以後EO変性)トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシ変性(以後PO変性)トリアクリレート、トリメチロールプロパンカプロラクトン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、グリセロールエピクロロヒドリン変性(以後ECH変性)トリアクリレート、グリセロールEO変性トリアクリレート、グリセロールPO変性トリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、リン酸EO変性トリアクリレート、2,2,5,5,−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなど、3官能以上のラジカル重合性化合物が挙げられ、これらは、単独又は2種類以上を併用しても差し支えない。
また、本発明に用いられる電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物としては、保護層中に緻密な架橋結合を形成するために、該化合物中の官能基数に対する分子量の割合(分子量/官能基数)は250以下のラジカル重合性化合物が望ましい。また、この割合が250より大きい場合、保護層は柔らかく耐摩耗性が幾分低下する傾向が出てくるため、上記例示した化合物等中、EO、PO、カプロラクトン等の変性基を有する化合物においては、極端に長い変性基を有するものを単独で使用することは好ましくはない。また、保護層に用いられる電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物の成分割合は、保護層全量に対し20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%である。該化合物成分が20重量%未満では保護層の3次元架橋結合密度が少なく、従来の熱可塑性バインダー樹脂を用いた場合に比べ飛躍的な耐摩耗性向上が達成にくくなる傾向がある。また、80重量%を超えると電荷輸送性化合物の含有量が低下し、電気的特性の劣化が生じる傾向がある。
本発明に用いられる電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物とは、例えばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造部分、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造部分を有しており、且つラジカル重合性官能基を有する化合物を指す。このラジカル重合性官能基とは、炭素−炭素2重結合を有し、ラジカル重合可能な基であれば何れでもよい。これらラジカル重合性官能基としては、例えば、前述の電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物に含まれる官能基と同様、1−置換エチレン官能基、1,1−置換エチレン官能基等が挙げられる。
また、電荷輸送性構造としてはトリアリールアミン構造が効果が高い。さらに、下記一般式(1)又は(2)の構造で示される化合物を用いた場合、感度、残留電位等の電気的特性が良好に持続される。
Figure 0005032278
Figure 0005032278
(一般式(1)および(2)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR7(R7は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基若しくは置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基又はCONR89(R8及びR9は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい)を表わし、Ar1、Ar2は置換又は未置換のアリーレン基を表わし、同一であっても異なってもよい。Ar3、Ar4は置換又は未置換のアリール基を表わし、同一であっても異なってもよい。Xは単結合、置換又は無置換のアルキレン基、置換又は無置換のシクロアルキレン基、置換又は無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わす。Zは置換又は無置換のアルキレン基、置換又は無置換のアルキレンエーテル基、アルキレンオキシカルボニル基を表わす。m、nは0〜3の整数を表わす。)
以下に、一般式(1)、(2)の具体例を示す。
前記一般式(1)、(2)において、R1の置換基中、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基が、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘプチロキシ基、ヘキシロキシ基等がそれぞれ挙げられ、これらは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等により置換されていても良い。
1の置換基のうち、特に好ましいものは水素原子、メチル基である。
Ar3、Ar4は置換若しくは未置換のアリール基であり、該アリール基としては、本発明においては縮合多環式炭化水素基、非縮合環式炭化水素基及び複素環基が含まれる。
該縮合多環式炭化水素基としては、好ましくは環を形成する炭素数が18個以下のもの、例えば、ペンタニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、as−インダセニル基、s−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基、及びナフタセニル基等が挙げられる。
該非縮合環式炭化水素基としては、ベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル及びジフェニルスルホン等の単環式炭化水素化合物の1価基、あるいはビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン、及びポリフェニルアルケン等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基、あるいは9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の1価基が挙げられる。
複素環基としては、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、及びチアジアゾール等の1価基が挙げられる。
また、前記Ar3、Ar4で表わされるアリール基は例えば以下に示すような置換基を有してもよい。
(1)ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
(2)アルキル基、好ましくは、C1〜C12とりわけC1〜C8、さらに好ましくはC1〜C4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基にはさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基若しくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n−ブチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−プロピル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−フェニルベンジル基等が挙げられる。
(3)アルコキシ基(−OR2)であり、R2は(2)で定義したアルキル基を表わす。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
(4)アリールオキシ基であり、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これは、C1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基又はハロゲン原子を置換基として含有してもよい。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基等が挙げられる。
(5)アルキルメルカプト基又はアリールメルカプト基であり、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。
(6)
Figure 0005032278
(式中、R3及びR4は各々独立に水素原子、前記(2)で定義したアルキル基、又はアリール基を表わし、アリール基としては、例えばフェニル基、ビフェニル基又はナフチル基が挙げられ、これらはC1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基又はハロゲン原子を置換基として含有してもよい。R3及びR4は共同で環を形成してもよい)で表わされる基が挙げられ、具体的には、アミノ基、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(トリール)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリジノ基等が挙げられる。
(7)メチレンジオキシ基、又はメチレンジチオ基等のアルキレンジオキシ基又はアルキレンジチオ基等が挙げられる。
(8)置換又は無置換のスチリル基、置換又は無置換のβ−フェニルスチリル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジトリルアミノフェニル基等が挙げられる。
前記Ar1、Ar2で表わされるアリーレン基としては、前記Ar3、Ar4で表わされるアリール基から誘導される2価基である。
前記Xは単結合、置換若しくは無置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のシクロアルキレン基、置換若しくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わす。
置換若しくは無置換のアルキレン基としては、C1〜C12、好ましくはC1〜C8、さらに好ましくはC1〜C4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であり、これらのアルキレン基にはさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基若しくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチレン基、エチレン基、n−ブチレン基、i−プロピレン基、t−ブチレン基、s−ブチレン基、n−プロピレン基、トリフルオロメチレン基、2−ヒドロキエチレン基、2−エトキシエチレン基、2−シアノエチレン基、2−メトキシエチレン基、ベンジリデン基、フェニルエチレン基、4−クロロフェニルエチレン基、4−メチルフェニルエチレン基、4−ビフェニルエチレン基等が挙げられる。
置換若しくは無置換のシクロアルキレン基としては、C5〜C7の環状アルキレン基であり、これらの環状アルキレン基にはフッ素原子、水酸基、C1〜C4のアルキル基、C1〜C4のアルコキシ基を有していても良い。具体的にはシクロヘキシリデン基、シクロへキシレン基、3,3−ジメチルシクロヘキシリデン基等が挙げられる。
置換若しくは無置換のアルキレンエーテル基としては、エチレンオキシ、プロピレンオキシ、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールを表わし、アルキレンエーテル基のアルキレン基はヒドロキシル基、メチル基、エチル基等の置換基を有してもよい。
ビニレン基は、
Figure 0005032278
で表わされ、R5は水素、アルキル基(前記(2)で定義されるアルキル基と同じ)、アリール基(前記Ar3、Ar4で表わされるアリール基と同じ)、aは1又は2、bは1〜3を表わす。
前記Zは置換若しくは未置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のアルキレンエーテル基、アルキレンオキシカルボニル基を表わす。置換若しくは未置換のアルキレン基としは、前記Xのアルキレン基と同様なものが挙げられる。置換若しくは無置換のアルキレンエーテル基としては、前記Xのアルキレンエーテル基が挙げられる。アルキレンオキシカルボニル基としては、カプロラクトン変性基が挙げられる。
また、本発明の1官能の電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物としてさらに好ましくは、下記一般式(3)の構造の化合物が挙げられる。
Figure 0005032278
(一般式(3)中、o、p、qはそれぞれ0又は1の整数、Raは水素原子、メチル基を表わし、Rb、Rcは炭素数1〜6のアルキル基を表わし、複数の場合は異なっても良く、s、tは0〜3の整数を表わし、Zaは単結合、メチレン基、エチレン基、
Figure 0005032278
を表わす)
上記一般式で表わされる化合物としては、Rb、Rcの置換基として、特にメチル基、エチル基である化合物が好ましい。
本発明で用いる上記一般式(1)及び(2)特に(3)の1官能性の電荷輸送構造を有する1官能のラジカル重合性化合物は、炭素−炭素間の二重結合が両側に開放されて重合するため、末端構造とはならず、連鎖重合体中に組み込まれ、電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性化合物との重合で架橋形成された重合体中では、高分子の主鎖中に存在し、かつ主鎖−主鎖間の架橋鎖中に存在(この架橋鎖には1つの高分子と他の高分子間の分子間架橋鎖と、1つの高分子内で折り畳まれた状態の主鎖の或る部位と主鎖中でこれから離れた位置に重合した電荷輸送構造を有しないラジカル重合性化合物由来の他の部位とが架橋されることにより生じる分子内架橋鎖とがある)するが、主鎖中に存在する場合であってもまた架橋鎖中に存在する場合であっても、鎖部分から懸下するトリアリールアミン構造は、窒素原子から放射状方向に配置する少なくとも3つのアリール基を有し、バルキーであるが、鎖部分に直接結合しておらず鎖部分からカルボニル基等を介して懸下しているため立体的位置取りに融通性ある状態で固定されているので、これらトリアリールアミン構造は重合体中で相互に程よく隣接する空間配置が可能であるため、分子内の構造的歪みが少なく、また、電子写真感光体の表面層とした際に、電荷輸送経路の断絶を免れた分子内構造を採りうるものと推測される。
本発明の電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物の具体例を以下に示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではない。
Figure 0005032278
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Figure 0005032278
Figure 0005032278
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Figure 0005032278
また、本発明に用いられる電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物は、表面保護層の電荷輸送性能を付与するために重要で、この成分は表面保護層全量に対し20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%である。この成分が20重量%未満では表面保護層の電荷輸送性能が充分に保てず、繰り返しの使用で感度低下、残留電位上昇などの電気特性の劣化が現れる。また80重量%を超えると、電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性化合物の含有量が低下し、架橋密度の低下を招き高い耐摩耗性が発揮されない。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70重量%の範囲が最も好ましい。
本発明の表面層は、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物を同時に硬化させた表面保護層であるが、表面層の塗工時の粘度調整、表面保護層の応力緩和、低表面自由エネルギー化や摩擦係数低減などの機能付与の目的で以下に示すような、ラジカル重合性モノマー、機能性モノマー及びラジカル重合性オリゴマーを併用することができる。これらのラジカル重合性モノマー、オリゴマーとしては、公知のものが利用できる。
併用することができる1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーとしては、以下のものが例示されるが、これらの化合物に限定されるものではない。
すなわち、本発明において使用する上記ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマー、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、EO変性ビスフェノールFジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられる。
機能性モノマーとしては、例えば、オクタフルオロペンチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチルアクリレートなどのフッ素原子を置換したものやラジカル重合性官能基を有する反応性添加剤も有効に使用出来る。これらの機能性モノマーとしては1種又は2種以上を混合して用いてもよい。機能性モノマーの含有量は、架橋層を形成する塗工液固形分に対して0.01〜30重量%、好ましくは0.05〜20重量%である。
ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系オリゴマーが挙げられる。但し、1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーやラジカル重合性オリゴマーを多量に含有させると表面保護層の3次元架橋結合密度が実質的に低下し、耐摩耗性の低下を招く。このためこれらの1官能及び2官能のモノマーやオリゴマーの含有量は、前述した電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーの総量100重量部に対し、150重量部以下、好ましくは100重量部以下に制限される。
また、本発明の表面保護層は、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物を同時に硬化させた架橋表面保護層であるが、必要に応じてこの架橋反応を効率よく進行させるために表面保護層中に重合開始剤を使用してもよい。
重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤、及びこれらの混合物等がある。
熱重合開始剤としては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイ
ド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルベルオキサイド、t−ブチルヒドロベルオキサイド、クメンヒドロベルオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどの過酸化物系開始剤、アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸などのアゾ系開始剤が挙げられる。
光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、などのアセトフェノン系又はケタール系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、などのベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン、などのベンゾフェノン系光重合開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、などのチオキサントン系光重合開始剤、その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物、が挙げられる。
また、光重合促進効果を有するものを単独又は上記光重合開始剤と併用して用いることもできる。
例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、などが挙げられる。
これらの重合開始剤は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性を有する総含有物100重量部に対し、0.5〜40重量部、好ましくは1〜20重量部である。
本発明の表面保護層は、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物を同時に硬化させた表面保護層であるが、これ以外に耐摩耗性の向上を目的としてフィラー微粒子を含有させることができる。
フィラーの平均一次粒径は、0.01〜0.5μmであることが表面層の光透過率や耐摩耗性の点から好ましい。フィラーの平均一次粒径が0.01μm未満の場合は、分散性の低下等を引き起こし、耐摩耗性の向上効果が充分に発揮されず、0.5μmを超える場合には、分散液中においてフィラーの沈降性が促進されたり、トナーのフィルミングが発生したりする可能性がある。表面層中のフィラー材料濃度は、高いほど耐摩耗性が高いので良好であるが、高すぎる場合には残留電位の上昇、表面層の書き込み光透過率が低下し、副作用を生じる場合がある。従って、概ね全固形分に対して、50重量%以下、好ましくは30重量%以下程度である。
また、さらに、これらのフィラーは少なくとも一種の表面処理剤で表面処理させることが可能であり、そうすることがフィラーの分散性の面から好ましい。フィラーの分散性の低下は残留電位の上昇だけでなく、塗膜の透明性の低下や塗膜欠陥の発生、さらには耐摩耗性の低下をも引き起こすため、高耐久化あるいは高画質化を妨げる大きな問題に発展する可能性がある。表面処理剤としては、従来用いられている表面処理剤を使用することができるが、フィラーの絶縁性を維持できる表面処理剤が好ましい。
表面処理量については、用いるフィラーの平均一次粒径によって異なるが、フィラー重量に対して3〜30重量%が適しており、5〜20重量%がより好ましい。表面処理量がこれよりも少ないとフィラーの分散効果が得られず、また多すぎると残留電位の著しい上昇を引き起こす。これらフィラー材料は単独若しくは2種類以上混合して用いられる。
さらに、本発明の架橋表面保護層の塗工液は必要に応じて各種可塑剤(応力緩和や接着性向上の目的)、レベリング剤などの添加剤が含有できる。これらの添加剤は公知のものが使用可能であり、可塑剤としてはジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂に使用されているものが利用可能で、その使用量は塗工液の全固形分に対し20重量%以下、好ましくは10重量%以下に抑えられる。また、レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが利用でき、その使用量は塗工液の全固形分に対し3重量%以下が適当である。
表面保護層塗工液に含有される組成物においては、バインダー樹脂を含有させることも感光体表面の平滑性、電気特性、あるいは耐久性を損なわない範囲であれば可能である。しかし塗工液にバインダー樹脂などの高分子材料を含有させると、ラジカル重合性組成物(ラジカル重合性モノマー及び電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物)の硬化反応より生成した高分子物質との相溶性の悪さから相分離が生じ、表面保護層表面の凹凸が激しくなる。したがって、バインダー樹脂は使用しない方が好ましい。
本発明の表面保護層は、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物を含有する塗工液を塗布、硬化することにより形成される。かかる塗工液はラジカル重合性モノマーが液体である場合、これに他の成分を溶解して塗布することも可能であるが、必要に応じて溶媒により希釈して塗布される。このとき用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテルなどのエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテートなどのセロソルブ系などが挙げられる。これらの溶媒は単独又は2種以上を混合して用いてもよい。溶媒による希釈率は組成物の溶解性、塗工法、目的とする膜厚により変わり、任意である。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行なうことができる。
本発明においては、かかる塗工液を塗布後、外部からエネルギーを与え硬化させ、架橋表面保護層を形成するものであるが、このとき用いられる外部エネルギーとしては熱、光、放射線がある。熱のエネルギーを加える方法としては、空気、窒素などの気体、蒸気、あるいは各種熱媒体、赤外線、電磁波を用い塗工表面側あるいは支持体側から加熱することによって行なわれる。加熱温度は100℃以上、170℃以下が好ましく、100℃未満では反応速度が遅く、完全に反応が終了しない。170℃より高温では反応が不均一に進行し表面保護層中に大きな歪みが発生する。硬化反応を均一に進めるために、100℃未満の比較的低温で加熱後、さらに100℃以上に加温し反応を完結させる方法も有効である。光のエネルギーとしては主に紫外光に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプなどのUV(紫外線)照射光源が利用できるが、ラジカル重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。照射光量は50mW/cm2以上、1000mW/cm2以下が好ましく、50mW/cm2未満では硬化反応に時間を要する。1000mW/cm2より強いと反応の進行が不均一となり、表面保護層の荒れが激しくなる。放射線のエネルギーとしては電子線(EB)を用いるものが挙げられる。これらのエネルギーの中で、反応速度制御の容易さ、装置の簡便さから熱及び光のエネルギーを用いたものが有用である。
前述のように、本発明の表面保護層の膜厚は、優れた耐磨耗性と電気的安定性を有していることから、広い範囲の膜厚に製膜した場合も、良好な特性を得られるものであるが、長期に渡る安定性を得るためには、電荷輸送層の膜厚とのバランスを考慮することが必要であることから膜厚は8〜24μm、より好ましくは10〜20μmであることが望ましい。
<像担持体の層構造について>
本発明に用いられる像担持体を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の像担持体を表わす断面図であり、導電性支持体上(31)に、電荷発生機能を有する電荷発生層(35)と、電荷輸送機能を有する電荷輸送層(37)と、架橋表面保護層(39)が積層された積層構造の感光体である。また後述するように、導電性支持体上には必要に応じて、1層、あるいは2層以上の下引き層(33)を設けることも可能である。
<導電性支持体について>
導電性支持体としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状若しくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理を施した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、本発明の導電性支持体として用いることができる。
この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、また、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体として良好に用いることができる。
<電荷発生層について>
電荷発生層は、電荷発生機能を有する電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダー樹脂を併用することもできる。電荷発生層には、公知の電荷発生物質を用いることが可能であり、その代表として、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系又は多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これら電荷発生物質は単独でも、2種以上混合してもかまわない。
更に本発明においては、前記電荷発生材料のなかでも、特に金属フタロシアニン顔料の1種であり、下記(III)式で表されるチタニルフタロシアニン顔料は高感度であり、また長期の繰り返し使用において優れた特性を示すことから、特に望ましい。
Figure 0005032278
(III)式中、X1、X2、X3、X4は各々独立に各種ハロゲン原子を表わし、n、m、l、kは各々独立的に0〜4の数字を表わす。
また、チタニルフタロシアニン顔料のうち、27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、更に26.3゜にピークを有さない結晶型のチタニルフタロシアニン結晶は、特に高感度を示し、また特に長期の繰り返し使用における異常画像の発生がない優れた特性を示すことから、本発明に使用される感光体の電荷発生物質として良好に使用できる。
更に、上述のチタニルフタロシアニン顔料に加え、ビスアゾ顔料を混合することが好ましく、特に下記(IV)式で表わされるアゾ顔料を混合することで、より長期の繰り返し使用における異常画像の発生がない優れた特性を示すことが確認され、本発明に使用される感光体の電荷発生物質として良好に使用できる。
Figure 0005032278
(IV)式中、Cp1、Cp2はカップラー残基を表す。R201、R202はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素鎖数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、シアノ基のいずれかを表し、同一でも異なっていても良い。またCp1、Cp2は下記(V)式で表される。
Figure 0005032278
(V)式中、R203は、水素原子、メチル基、エチル基などのアルキル基、フェニル基
などのアリール基を表す。R204、R205、R206、R207、R208はそれぞれ、水素原子、ニトロ基、シアノ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子、トリフルオロメチル基、メチル基、エチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、ジアルキルアミノ基、水酸基を表し、Zは置換もしくは無置換の芳香族炭素環または置換もしくは無置換の芳香族複素環を構成するのに必要な原子群を表す。
チタニルフタロシアニン顔料にビスアゾ顔料を混合する際、好ましい割合としては、チタニルフタロシアニン顔料に対して0〜70重量%が適しており、10〜60重量%がより好ましい。
電荷発生層に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。これらのバインダー樹脂は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。また、電荷発生層のバインダー樹脂として上述のバインダー樹脂の他に、電荷輸送機能を有する高分子電荷輸送物質、例えば、アリールアミン骨格やベンジジン骨格やヒドラゾン骨格やカルバゾール骨格やスチルベン骨格やピラゾリン骨格等を有するポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリシロキサン、アクリル樹脂等の高分子材料やポリシラン骨格を有する高分子材料等を用いることができる。
前者の高分子電荷輸送材料の具体的な例としては、特開平01−001728号公報、特開平01−009964号公報、特開平01−013061号公報、特開平01−019049号公報、特開平01−241559号公報、特開平04−011627号公報、特開平04−175337号公報、特開平04−183719号公報、特開平04−225014号公報、特開平04−230767号公報、特開平04−320420号公報、特開平05−232727号公報、特開平05−310904号公報、特開平06−234836号公報、特開平06−234837号公報、特開平06−234838号公報、特開平06−234839号公報、特開平06−234840号公報、特開平06−234841号公報、特開平06−239049号公報、特開平06−236050号公報、特開平06−236051号公報、特開平06−295077号公報、特開平07−056374号公報、特開平08−176293号公報、特開平08−208820号公報、特開平08−211640号公報、特開平08−253568号公報、特開平08−269183号公報、特開平09−062019号公報、特開平09−043883号公報、特開平09−71642号公報、特開平09−87376号公報、特開平09−104746号公報、特開平09−110974号公報、特開平09−110976号公報、特開平09−157378号公報、特開平09−221544号公報、特開平09−227669号公報、特開平09−235367号公報、特開平09−241369号公報、特開平09−268226号公報、特開平09−272735号公報、特開平09−302084号公報、特開平09−302085号公報、特開平09−328539号公報等に記載の電荷輸送性高分子材料が挙げられる。
また、後者の具体例としては、例えば特開昭63−285552号公報、特開平05−19497号公報、特開平05−70595号公報、特開平10−73944号公報等に記載のポリシリレン重合体が例示される。
また、電荷発生層には低分子電荷輸送物質を含有させることができる。
電荷発生層に併用できる低分子電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
電子輸送物質としては、たとえばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体などの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
正孔輸送物質としては、以下に表わされる電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。正孔輸送物質としては、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、その他公知の材料が挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
電荷発生層を形成する方法には、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが大きく挙げられる。前者の方法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられ、上述した無機系材料、有機系材料が良好に形成できる。
また、後述のキャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した無機系若しくは有機系電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。また、必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行なうことができる。
以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
<電荷輸送層について>
電荷輸送層は電荷輸送機能を有する層で、本発明においては、電荷発生層と架橋表面保護層の間に設ける層として用いられる。
本発明においては、電荷輸送層は、電荷輸送物質として、前述のように下記に示す化合物(I)を含有する。
Figure 0005032278
〔一般式(I)中、R1〜R4は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基を表し、フェニル基は炭素数1〜4のアルキル基や炭素数1〜4のアルコキシ基等の置換基を有していても良い。
Aは、置換もしくは無置換のアリーレン基、または
Figure 0005032278
(R5、R6及びR7は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基を表し、フェニル基の場合は炭素数1〜4のアルキル基や炭素数1〜4のアルコキシ基等の置換基を有していても良い。)を表す。
1及びB2は、置換もしくは無置換のアリール基、または
Figure 0005032278
(Ar1はアリーレン基を表わし、置換基を有していても良い。置換基を有する場合には、炭素数1〜4のアルキル基及びアルコキシ基が挙げられる。また、Ar2及びAr3はアリール基を表し、置換基を有していても良い。置換基を有する場合には、炭素数1〜4のアルキル基及びアルコキシ基が挙げられる。)を表す。〕
これらの化合物の中でも、下記一般式(A)で示されるジスチリルベンゼン誘導体は、特に転写時の逆極性の電荷が残像として異常画像を生じる現象を回避することが可能となった。
Figure 0005032278
〔一般式(A)中、R8〜R33は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、置換もしくは無置換のフェニル基を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。〕
本発明において電荷輸送物質として用いられるこれらの化合物の具体例を以下に示す。但し、これらは一例であって、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
Figure 0005032278
Figure 0005032278
Figure 0005032278
Figure 0005032278
Figure 0005032278
Figure 0005032278
更に、本発明においては、電荷輸送層中に上記一般式(I)の化合物に加え、下記一般式(II)の化合物を含有することによって、長期における繰り返し使用の際の異常画像の抑制に対し、より優れた効果を発揮するものである。
Figure 0005032278
(一般式(II)中、Ar1およびAr2は置換または未置換のアリール基、置換または未置換の複素環基を表し、R1、R2およびR3は水素原子、置換または未置換のアルキル基、置換または未置換のアルコキシ基、置換または未置換のアリール基、置換または未置換の複素環基を表すが、R2、R3は互いに結合して環を形成してもよく、Ar3は置換または未置換のアリーレン基を表し、nは0または1を表す。)
一般式(II)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。n=0の具体例を以下に示す。
Figure 0005032278
Figure 0005032278
Figure 0005032278
Figure 0005032278
Figure 0005032278
Figure 0005032278
Figure 0005032278
Figure 0005032278
n=1の具体例を以下に示す。
Figure 0005032278
なお、前記一般式(I)又は(I)と(II)の混合物からなる電荷輸送物質以外にも、前記電荷発生層の説明の箇所で記載した電子輸送物質、正孔輸送物質及び高分子電荷輸送物質を用いることができる。特に高分子電荷輸送物質を用いることは、表面層塗工時の下層の溶解性の低減効果を示し、とりわけ有用である。また、前記一般式(I)に一般式(II)を混合する際、好ましい割合としては、一般式(I)に対して0〜50重量%が適しており、10〜40重量%がより好ましい。
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。
電荷輸送物質の量は結着樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。
電荷輸送層に用いられる溶媒としては前記電荷発生層と同様なものが使用できるが、電荷輸送物質及び結着樹脂を良好に溶解するものが適している。これらの溶剤は単独で使用しても2種以上混合して使用しても良い。また、電荷輸送層の形成には電荷発生層と同様な塗工法が可能である。
また、必要により可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。
電荷輸送層に併用できる可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂100重量部に対して0〜30重量部程度が適当である。
電荷輸送層に併用できるレベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、結着樹脂100重量部に対して0〜1重量部程度が適当である。
本発明における電荷輸送層の膜厚は、前述のように、長期に渡る安定性を得るため、表面保護層の膜厚とのバランスを考慮することが必要であることから膜厚は8〜24μm、より好ましくは10〜20μmであることが望ましい。
<下引き層について>
本発明の感光体においては、導電性支持体と感光層との間に下引き層を設けることができる。下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、下引き層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
これらの下引き層は、前述の感光層の如く適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。さらに本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、本発明の下引き層には、Al23を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO2、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は0〜5μmが適当である。
<各層への酸化防止剤の添加について>
また、本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、表面保護層、電荷発生層、電荷輸送層、下引き層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。
本発明に用いることができる酸化防止剤として、下記のものが挙げられる。
(フェノール系化合物)
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−
4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類など。
(パラフェニレンジアミン類)
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
(ハイドロキノン類)
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
(有機硫黄化合物類)
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオープロピオネート)など。
(有機燐化合物類)
トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリ(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2―エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、トリス(2,4、ジーt−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,ジーt―ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジーt−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(2,4−ジーt−ブチルフェニル)4,4‘−ビフェニレンージーホスホナイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジフェニルハイドロゲンホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールホスファイトポリマーなど。
これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
本発明における酸化防止剤の添加量は、添加する層の総重量に対して0.01〜10重量%であることが好ましい。
<画像形成装置について>
次に図面に基づいて本発明の画像形成装置を詳しく説明する。
本発明の画像形成装置とは、本発明の像担持体を用い、像担持体に、帯電、画像露光、現像の過程を経た後、画像保持体(転写紙)へのトナー画像の転写、定着及び像担持体表面のクリーニングというプロセスよりなる(又は手段を有する)画像形成装置である。
図2は、画像形成装置の一例を示す概略図である。像担持体を平均的に帯電させる手段として、帯電チャージャ(3)が用いられる。この帯電手段としては、コロトロンデバイス、スコロトロンデバイス、固体放電素子、針電極デバイス、ローラ帯電デバイス、導電性ブラシデバイス等が用いられ、公知の方式が使用可能である。
次に、均一に帯電された像担持体(1)上に静電潜像を形成するために画像露光部(5)が用いられる。この光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
次に、像担持体(1)上に形成された静電潜像を可視化するために現像ユニット(6)が用いられる。現像方式としては、乾式トナーを用いた一成分現像法、二成分現像法、湿式トナーを用いた湿式現像法がある。像担持体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、像担持体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
次に、像担持体上で可視化されたトナー像を転写体(9)上に転写するために転写チャージャ(10)が用いられる。また、転写をより良好に行なうために転写前チャージャ(7)を用いてもよい。これらの転写手段としては、転写チャージャ以外にも、転写ローラ、転写ベルト等が利用可能である。
また本発明においては、線速500mm/s以上で動作する像担持体上に現像されたトナー像を被転写体に直接転写し、かつ被転写体にトナー像を転写した後の像担持体の表面電位極性が帯電時の極性と逆極性となる画像形成装置であることが望ましい。これによって、高速で動作する像担持体上の現像トナーを効率よく被転写体に移動することができ、更に本発明の像担持体の表面保護層が、逆極性の電荷に対し電荷輸送層や電荷発生層等の内部への電荷の流れ込みを防止することから、長期に渡る繰り返し通紙の使用においても残像が発生せず、良好な画像を提供できるものである。
次に、転写体(9)を像担持体(1)より分離する手段として分離チャージャ(11)、分離爪(12)が用いられる。その他分離手段としては、静電吸着誘導分離、側端ベルト分離、先端グリップ搬送、曲率分離等が用いられる。分離チャージャ(11)としては、前記帯電手段が利用可能である。
次に、転写後像担持体上に残されたトナーをクリーニングするためにファーブラシ(14)、クリーニングブレード(15)が用いられる。また、クリーニングをより効率的に行なうためにクリーニング前チャージャ(13)を用いてもよい。その他クリーニング手段としては、ウェブ方式、マグネットブラシ方式等があるが、それぞれ単独又は複数の方式を一緒に用いてもよい。
次に、必要に応じて像担持体上の潜像を取り除く目的で除電手段が用いられる。除電手段としては除電ランプ(2)、除電チャージャが用いられ、それぞれ前記露光光源、帯電手段が利用できる。
その他、像担持体に近接していない原稿読み取り、給紙、定着、排紙等のプロセスは公知のものが使用できる。
本発明は、このような画像形成手段に本発明に係る像担持体を用いる画像形成装置である。
この画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形態でそれら装置内に組み込まれ、着脱自在としたものであってもよい。プロセスカートリッジの一例を図4に示す。
画像形成装置用プロセスカートリッジとは、像担持体(101)を内蔵し、他に帯電手段(102)、現像手段(104)、転写手段(106)、クリーニング手段(107)、除電手段(図示せず)の少なくとも一つを具備し、画像形成装置本体に着脱可能とした装置(部品)である。
図3に例示される装置による画像形成プロセスについて示すと、ドラム状の像担持体(101)は、矢印方向に回転しながら、帯電手段(102)による帯電、露光手段(103)による露光により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成され、この静電潜像は、現像手段(104)でトナー現像され、該トナー現像は転写手段(106)により、転写体(105)に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の像担持体表面は、クリーニング手段(107)によりクリーニングされ、さらに除電手段(図示せず)により除電されて、再び以上の操作を繰り返すものである。
本発明は、本発明に係る像担持体と帯電、現像、転写、クリーニング、除電手段の少なくとも一つを一体化した画像形成装置用プロセスカートリッジを提供するものである。
以上の説明から明らかなように、本発明の本発明に係る像担持体をは電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンタ、CRTプリンタ、LEDプリンタ、液晶プリンタ及びレーザー製版等の電子写真応用分野にも広く用いることができるものである。
<電荷輸送性構造を有する化合物の合成例>
本発明における電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物は、例えば特許第3164426号公報記載の方法にて合成される。また、下記にこの一例を示す。
(1)ヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物(下記構造式B)の合成
メトキシ基置換トリアリールアミン化合物(下記構造式A)113.85g(0.3mol)と、ヨウ化ナトリウム138g(0.92mol)にスルホラン240mlを加え、窒素気流中で60℃に加温した。この液中にトリメチルクロロシラン99g(0.91mol)を1時間で滴下し、約60℃の温度で4時間半撹拌し反応を終了させた。この反応液にトルエン約1.5リットルを加え室温まで冷却し、水と炭酸ナトリウム水溶液で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン:酢酸エチル=20:1)にて精製した。得られた淡黄色オイルにシクロヘキサンを加え、結晶を析出させた。このようにして下記構造式Bの白色結晶88.1g(収率=80.4%)を得た。融点は64.0〜66.0℃である。
表5に元素分析値を示す(単位は%)。
Figure 0005032278
Figure 0005032278
Figure 0005032278
(2)トリアリールアミノ基置換アクリレート化合物(表1中の例示化合物No.54)
上記(1)で得られたヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物(構造式B)82.9g(0.227mol)をテトラヒドロフラン400mlに溶解し、窒素気流中で水酸化ナトリウム水溶液(NaOH:12.4g,水:100ml)を滴下した。この溶液を5℃に冷却し、アクリル酸クロライド25.2g(0.272mol)を40分かけて滴下した。その後、5℃で3時間撹拌し反応を終了させた。この反応液を水に注ぎ、トルエンにて抽出した。この抽出液を炭酸水素ナトリウム水溶液と水で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン)にて精製した。得られた無色のオイルにn−ヘキサンを加え、結晶を析出させた。このようにして例示化合物No.54の白色結晶80.73g(収率=84.8%)を得た。融点は117.5〜119.0℃である。
表6に元素分析値を示す(単位は%)。
Figure 0005032278
(チタニルフタロシアニン合成例)
特開2001−19871号公報に準じて、顔料を作製した。まず、1,3−ジイミノイソインドリン29.2g、及びスルホラン200mlを混合し、窒素気流下、チタニウムテトラブトキシド20.4gを滴下した。滴下終了後、徐々に180℃まで昇温し、反応温度を170〜180℃の間に保ちながら5時間撹拌して反応を行った。反応終了後、放冷した後析出物を濾過し、クロロホルムで粉体が青色になるまで洗浄した。次に、メタノールで数回洗浄し、80℃の熱水で数回洗浄した後乾燥し、粗チタニルフタロシアニンを得た。得られた粗チタニルフタロシアニンを20倍量の濃硫酸に溶解し、100倍量の氷水に撹拌しながら滴下し、析出した結晶をろ過し、次いで、洗浄液が中性になるまで水洗いを繰り返し(洗浄後のイオン交換水のpH値は6.8であった)、チタニルフタロシアニン顔料のウェットケーキ(水ペースト)を得た。得られたウェットケーキ(水ペースト)40gをテトラヒドロフラン200gに投入し、4時間攪拌を行った後、濾過を行い、乾燥して、チタニルフタロシアニン粉末を作製した。
得られたチタニルフタロシアニン粉末をX線回折スペクトル測定し、Cu−Kαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θが27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、更に26.3゜にピークを有さない結晶型を有するチタニルフタロシアニン粉末であった。
次に、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中において使用する「部」は、すべて重量部を表わす。
実施例1
アルミニウムシリンダー上に下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、および電荷輸送層塗工液を、浸漬塗工によって順次塗布、乾燥し、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、15μmの電荷輸送層を形成した。
◎下引き層塗工液
・アルキッド樹脂:
(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業製) 6部
・メラミン樹脂:
(スーパーベッカミンG−821−60、大日本インキ化学工業製) 4部
・酸化チタン: 40部
・メチルエチルケトン: 50部
◎電荷発生層塗工液
・上記合成例のチタニルフタロシアニン顔料: 1.5部
・ポリビニルアセタール:(BM−S、積水化学社製) 0.5部
・メチルエチルケトン: 70部
◎電荷輸送層塗工液
・ビスフェノールZ型ポリカーボネート:
(パンライトTS−2050、帝人化成製): 10部
・下記電荷輸送層化合物(No.12): 10部
Figure 0005032278
・テトラヒドロフラン: 100部
・1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液:
(KF50−100CS、信越化学工業製) 1部
電荷輸送層上にさらに、下記構成の表面保護層塗工液を用いて、スプレー塗工し、メタルハライドランプ、照射強度:500mW/cm2、照射時間:240秒の条件で光照射を行ない、さらに130℃で30分乾燥を加え15μmの表面保護層を設け、電子写真感光体を作成した。
◎表面保護層塗工液
・電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物
(1)トリメチロールプロパントリアクリレート:
(TMPTA、東京化成製) 55部
Figure 0005032278
(2)アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート:
(KAYARADD−310、日本化薬製) 40部
Figure 0005032278
(式中、Rはブチル基を示す。)
・電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物: 95部
例示化合物No.54
・光重合開始剤
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン:
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製) 10部
・テトラヒドロフラン: 1200部
実施例2
実施例1において表面保護層の膜厚を19μmに変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
実施例3
実施例1において表面保護層の膜厚を11μmに変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
実施例4
実施例1において電荷輸送層の膜厚を20μmに変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
実施例5
実施例1において電荷輸送層の膜厚を12μmに変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
実施例6
実施例1において電荷輸送層に含有する電荷輸送層化合物を、下記のように変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
・下記電荷輸送層化合物(No.14): 10部
Figure 0005032278
実施例7
実施例1において電荷輸送層に含有する電荷輸送層化合物を、下記のように変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
・下記電荷輸送層化合物(No.7): 10部
Figure 0005032278
実施例8
実施例1において電荷輸送層に含有する電荷輸送層化合物を、下記のように変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
・下記電荷輸送層化合物(No.12): 7部
Figure 0005032278
・前記電荷輸送層化合物II―6: 3部
実施例9
実施例1において表面保護層の膜厚を19μmに変更し、電荷輸送層に含有する電荷輸送層化合物を、下記のように変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
・下記電荷輸送層化合物(No.12): 7部
Figure 0005032278
・前記電荷輸送層化合物II―6: 3部
実施例10
実施例1において表面保護層の膜厚を11μmに変更し、電荷輸送層に含有する電荷輸送層化合物を、下記のように変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
・下記電荷輸送層化合物(No.12): 7部
Figure 0005032278
・前記電荷輸送層化合物II―6: 3部
実施例11
実施例1において電荷発生層塗工液を、下記のように変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
◎電荷発生層塗工液
・上記合成例のチタニルフタロシアニン顔料: 1.0部
・下記構造式のジスアゾ顔料: 1.0部
・ポリビニルアセタール:(BM−S、積水化学社製) 0.8部
・メチルエチルケトン: 30部
・シクロヘキサノン: 40部
Figure 0005032278
実施例12
実施例1において電荷発生層塗工液を、下記のように変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
◎電荷発生層塗工液
・ガリウムフタロシアニン顔料: 1.5部
・ポリビニルアセタール:(BM−S、積水化学社製) 0.5部
・メチルエチルケトン: 70部
比較例1
実施例1において表面保護層の膜厚を22μmに変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
比較例2
実施例1において表面保護層の膜厚を8μmに変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
比較例3
実施例1において電荷輸送層の膜厚を25μmに変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
比較例4
実施例1において電荷輸送層の膜厚を10μmに変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
比較例5
実施例1において電荷輸送層に含有する電荷輸送層化合物を、下記のように変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
・前記電荷輸送層化合物II―6: 10部
比較例6
実施例1において電荷輸送層に含有する電荷輸送層化合物を、下記のように変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
・下記構造式の電荷輸送層化合物: 10部
Figure 0005032278
比較例7
実施例11において表面保護層の膜厚を22μmに変更した以外は全て実施例11と同様にして電子写真感光体を作成した。
比較例8
実施例11において表面保護層の膜厚を8μmに変更した以外は全て実施例11と同様にして電子写真感光体を作成した。
以上のように作製した電子写真感光体を、電子写真プロセス用カートリッジに装着し、リコー製imagio Neo 1050Proにて連続してトータル100万枚の実機通紙耐久試験を行なったのち、出力画像について目視による評価を行なった。結果を表7に示す。
◎実機試験条件
感光体線速 500mm/s
帯電条件 感光体帯電電位800(−V)設定
転写条件 転写電流 110(μA)設定
Figure 0005032278
表7の結果から明らかなように、実施例に示す本発明の電子写真感光体おいてはいずれも100万枚通紙後においても、高画質画像出力の維持が達成されていることがわかる。
実施例13〜17
次に、感光体上に現像されたトナー像を紙に直接転写する方式からなる画像形成装置リコー製imagio Neo 1050Proを改造し、線速、転写電流を変更可能なようにした。更に、帯電直後とトナー像を紙に転写した後の感光体の表面電位測定が行えるように、帯電器の下流側とクリーニングブレードの下流側に表面電位計を取り付けた。
続いて、実施例1の感光体を、電子写真プロセス用カートリッジに装着し、上記のように改造したリコー製imagio Neo 1050Proを用いて、各種線速及び転写電流条件において、連続してPPC用紙(A4ヨコ)トータル100万枚の実機通紙耐久試験を行ったのち、感光体表面電位測定、及び出力画像について目視による評価を行なった。結果を表8に示す。
Figure 0005032278
表8の結果から明らかなように、線速500mm/s以上で動作する本発明の電子写真感光体上に現像されたトナー像を紙に直接転写し、かつ紙にトナー像を転写した後の感光体の表面電位極性が帯電時の極性と逆極性からなる画像形成装置は、いずれも100万枚通紙後においても、高画質画像出力の維持が達成されていることがわかる。
本発明の像担持体の断面図の一例である。 本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。 本発明の画像形成装置用プロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
符号の説明
1 像担持体
2 除電ランプ
3 帯電チャージャ
4 イレーサ
5 画像露光部
6 現像ユニット
7 転写前チャージャ
8 レジストローラ
9 転写紙
10 転写チャージャ
11 分離チャージャ
12 分離爪
13 クリーニング前チャージャ
14 ファーブラシ
15 クリーニングブレード
31 導電性支持体
33 下引き層
35 電荷発生層
37 電荷輸送層
39 架橋表面保護層
101 像担持体
102 帯電装置
103 露光
104 現像装置
105 転写体
106 転写装置
107 クリーニングブレード

Claims (11)

  1. 導電性支持体上に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層、架橋表面保護層を有する画像形成装置用像担持体において、該電荷輸送層が少なくとも下記一般式()で示されるジスチリルベンゼン誘導体を含有し、該架橋表面保護層が少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物とを硬化することにより形成され、かつ電荷輸送層に対する架橋表面保護層の膜厚比率が0.7〜1.3であることを特徴とする画像形成装置用像担持体。
    Figure 0005032278
    〔一般式(A)中、R 8 〜R 33 は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、置換もしくは無置換のフェニル基を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。〕
  2. 導電性支持体上に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層、架橋表面保護層を有する画像形成装置用像担持体において、該電荷輸送層が少なくとも前記一般式()で示される化合物と下記一般式(II)で示される化合物を含有し、該架橋表面保護層が少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物とを硬化することにより形成され、かつ電荷輸送層に対する架橋表面保護層の膜厚比率が0.7〜1.3であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置用像担持体。
    Figure 0005032278
    (一般式(II)中、Ar1およびAr2は置換または未置換のアリール基、置換または未置換の複素環基を表し、R1、R2およびR3は水素原子、置換または未置換のアルキル基、置換または未置換のアルコキシ基、置換または未置換のアリール基、置換または未置換の複素環基を表すが、R2、R3は互いに結合して環を形成してもよく、Ar3は置換または未置換のアリーレン基を表し、nは0または1を表す。)
  3. 前記電荷発生層が少なくともチタニルフタロシアニン顔料を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置用像担持体。
  4. 前記電荷発生層が少なくともチタニルフタロシアニン顔料とジスアゾ顔料を含有することを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の画像形成装置用像担持体。
  5. 前記電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物は、その有する官能基として、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有するものであることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の画像形成装置用像担持体。
  6. 前記電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物は電荷輸送性構造として、トリアリールアミン構造を有するものであることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の画像形成装置用像担持体。
  7. 前記電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物が、下記一般式(1)又は(2)の一種以上であることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の画像形成装置用像担持体。
    Figure 0005032278
    Figure 0005032278
    (一般式(1)および(2)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR7(R7は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基若しくは置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基又はCONR89(R8及びR9は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基若しくは置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい)を表わし、Ar1、Ar2は置換又は未置換のアリーレン基を表わし、同一であっても異なってもよい。Ar3、Ar4は置換又は未置換のアリール基を表わし、同一であっても異なってもよい。Xは単結合、置換又は無置換のアルキレン基、置換又は無置換のシクロアルキレン基、置換又は無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わす。Zは置換又は無置換のアルキレン基、置換又は無置換のアルキレンエーテル基、アルキレンオキシカルボニル基を表わす。m、nは0〜3の整数を表わす。)
  8. 前記電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物が、下記一般式(3)の一種以上であることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の画像形成装置用像担持体。
    Figure 0005032278
    (一般式(3)中、o、p、qはそれぞれ0又は1の整数、Raは水素原子、メチル基を表わし、Rb、Rcは炭素数1〜6のアルキル基を表わし、複数の場合は異なっても良い。s、tは0〜3の整数を表わす。Zaは単結合、メチレン基、エチレン基、
    Figure 0005032278
    を表わす。)
  9. 前記架橋表面保護層を硬化する硬化手段が加熱又は光エネルギー照射手段であることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の画像形成装置用像担持体。
  10. 少なくとも請求項1乃至のいずれかに記載の画像形成装置用像担持体と、帯電、露光、現像、転写部材を有する画像形成装置において、線速500mm/s以上で動作する像担持体上に現像されたトナー像を被転写体に直接転写し、かつ被転写体にトナー像を転写した後の像担持体の表面電位極性が帯電時の極性と逆極性となることを特徴とする画像形成装置。
  11. 請求項1乃至のいずれかに記載の画像形成装置用像担持体と、帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び除電手段よりなる群から選ばれた少なくとも一つの手段とを有する画像形成装置用プロセスカートリッジであって、画像形成装置本体に着脱可能であることを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。
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