JP5532731B2 - 電子写真感光体、並びに画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジ - Google Patents

電子写真感光体、並びに画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジ Download PDF

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本発明は、耐摩耗性が高く、かつ耐オゾン性、耐NOx性が高く、電気的特性が良好で、長期間にわたり高画質化を実現できる電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジに関する。
近年、有機感光体(OPC)は、良好な性能を有し、様々な利点から、無機感光体に換わり複写機、ファクシミリ、レーザープリンタ及びこれらの複合機に多く用いられている。その理由としては、例えば(1)光吸収波長域の広さ及び吸収量の大きさ等の光学特性、(2)高感度、安定な帯電特性等の電気的特性、(3)材料の選択範囲の広さ、(4)製造の容易さ、(5)低コスト、(6)無毒性、などが挙げられる。
一方、最近、画像形成装置の小型化から感光体の小径化が進み、機械の高速化やメンテナンスフリーの動きも加わり、感光体の高耐久化が切望されるようになってきた。この観点からみると、有機感光体は、表面層が低分子電荷輸送物質と不活性高分子を主成分としているため一般に柔らかく、電子写真プロセスにおいて繰り返し使用された場合、現像システムやクリーニングシステムによる機械的な負荷により摩耗が発生しやすいという欠点を有している。加えて高画質化の要求からトナー粒子の小粒径化に伴いクリーニング性を挙げる目的でクリーニングブレードのゴム硬度の上昇と当接圧力の上昇が余儀なくされ、このことも感光体の摩耗を促進する要因となっている。このような感光体の摩耗は、感度の劣化、帯電性の低下などの電気的特性を劣化させ、画像濃度の低下、地肌汚れ等の異常画像の原因となる。また、摩耗が局所的に発生した傷は、クリーニング不良によるスジ状汚れ画像をもたらす。現状では、感光体の寿命はこの摩耗や傷が律速となり、交換に至っている。
したがって、有機感光体の高耐久化においては前述の摩耗量を低減することが不可欠であり、これが当該技術分野でもっとも解決が迫られている課題である。
このような感光層の耐摩耗性を改良する技術としては、(1)表面層に硬化性バインダーを用いたもの(特許文献1参照)、(2)高分子型電荷輸送物質を用いたもの(特許文献2参照)、(3)表面層に無機フィラーを分散させたもの(特許文献3参照)、などが挙げられる。これらの技術のうち、前記(1)の硬化性バインダーを用いたものは、電荷輸送物質との相溶性が悪いため、重合開始剤、未反応残基などの不純物により残留電位が上昇し、画像濃度低下が発生し易い傾向がある。また、前記(2)の高分子型電荷輸送物質を用いたものは、ある程度の耐摩耗性向上が可能であるものの、有機感光体に求められている耐久性を十二分に満足させるまでには至っていない。また、高分子型電荷輸送物質は材料の重合、精製が難しく高純度なものが得にくいため、材料間の電気的特性が安定しにくい。更に、塗工液が高粘度となる等の製造上の問題を起こす場合もある。前記(3)の無機フィラーを分散させたものは、通常の低分子電荷輸送物質を不活性高分子に分散させた感光体に比べて高い耐摩耗性が発揮されるが、無機フィラー表面に存在するトラップにより残留電位が上昇し、画像濃度低下が発生し易い傾向にある。また、感光体表面の無機フィラーとバインター樹脂の凹凸が大きい場合には、クリーニング不良が発生し、トナーフィルミングや画像流れの原因となることがある。これら(1)、(2)、(3)の技術では、有機感光体に求められる電気的な耐久性、機械的な耐久性をも含めた総合的な耐久性を十二分に満足するには至っていない。
更に、前記(1)の耐摩耗性と耐傷性を改良するために多官能のアクリレートモノマー硬化物を含有させた感光体も知られている(特許文献4参照)。しかし、前記感光体においては、感光層上に設けた保護層に前記多官能のアクリレートモノマー硬化物を含有させる旨の記載があるものの、前記保護層においては電荷輸送物質を含有してもよいことが記載されているのみで具体的な記載はなく、しかも、単に表面層に低分子電荷輸送物質を含有させた場合には、前記硬化物との相溶性の問題がある。これにより、低分子電荷輸送物質が析出し、白濁現象が起こり、機械強度も低下してしまうことがある。
更に、前記感光体は、具体的には、高分子バインダーを含有した状態でモノマーを反応させるため、硬化が充分に進行しないこと、硬化物とバインダー樹脂との相溶性の問題があり、硬化時に相分離による表面凹凸が生じてクリーニング不良を引き起こす傾向が見られた。
これらに代わる感光層の耐摩耗技術として、炭素−炭素二重結合を有するモノマーと、炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質、及びバインダー樹脂からなる塗工液を用いて形成した電荷輸送層を設けた感光体が提案されている(特許文献5参照)。前記バインダー樹脂には、炭素−炭素二重結合を有し、前記電荷輸送物質に対して反応性を有するものと、前記二重結合を有さず反応性を有しないものが含まれる。前記感光体は、耐摩耗性と良好な電気的特性を両立しており注目されるが、バインダー樹脂として反応性を有しないものを使用した場合には、前記バインダー樹脂と、前記モノマーと、前記電荷輸送物質との反応により生成した硬化物との相溶性が悪く、相分離から架橋時に表面凹凸が生じ、クリーニング不良を引き起こす傾向が見られた。また、上述したように、前記バインダー樹脂がモノマーの硬化を妨げる他、この感光体において使用される前記モノマーとして具体的に記載されているものは2官能性のものであり、このような2官能性モノマーでは官能基数が少なく充分な架橋密度が得られず、これらのことから耐摩耗性の点では未だ満足するには至らなかった。また、反応性を有するバインダーを使用した場合においても、前記モノマー及び前記バインダー樹脂に含有される官能基数の低さから、前記電荷輸送物質の結合量と架橋密度との両立は難しく、電気特性及び耐摩耗性についても充分とは言えないものであった。
また、同一分子内に2つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を硬化した硬化物を含有する感光層を有する感光体についても提案されている(特許文献6参照)。しかし、前記感光層は、嵩高い正孔輸送性化合物が2つ以上の連鎖重合性官能基を有するため、硬化物中に歪みが発生し内部応力が高くなり、表面層の荒れや経時におけるクラックが発生しやすい場合がある。
更に、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと、電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物とを硬化させてなる架橋型電荷輸送層を有する感光体が提案されている(特許文献7、特許文献8及び特許文献9参照)。これらの提案は、電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物を用い、表面層を硬化することで、機械的及び電気的な耐久性と同時に感光層のクラックを抑制している。
一方、有機感光体(OPC)では、化学的安定性に関わる課題もある。そのため、電子写真感光体に要求されるすべての特性を充分に満足するものが得られていないのが現状である。即ち、繰り返し使用による帯電電位の低下、残留電位の上昇、感度変化等により、画像品質の劣化が引き起こされる。この劣化の原因について全てが解明されているわけではないが、要因の一つとしてコロナ放電帯電器より放出されるオゾン、NOx等の酸化性ガスあるいは大気中に存在するオゾン、NOx等の酸化性ガスが感光層に著しいダメージを与えることが分っている。これらの酸化性ガスは、感光体中の材料と化学変化を起こしたり、あるいは感光層表面に吸着物を形成することで種々の特性変化をもたらす。例えば帯電電位の低下、残留電位の上昇、表面抵抗の低下による解像力の低下などが見られる。その結果、著しく画質を低下させ、感光体の寿命を短くしている。
これらの対策として感光層に酸化防止剤や安定剤を添加し、劣化を防ぐ提案がなされている。例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤(特許文献10参照)、アミン誘導体(特許文献11、特許文献12、特許文献13及び特許文献14参照)などが挙げられ、これらはそれなりの効果を有していた。
また近年、複写機あるいはプリンターの高速化、小型化の要求から感光体には高耐久かつ高応答性への要求が高まった。高応答性に対応するためには、分子量の大きい、あるいはイオン化ポテンシャル(Ip)値の低い電荷輸送物質の使用が必要になる。これらの電荷輸送物質は、オゾン、NOxに対する耐久性が弱く、従来の酸化防止剤等の添加では不十分である。また、高耐久化への要求のため、架橋型電荷輸送層を用いた電子写真感光体では、機械的耐久性が高いため長寿命となるが、その分、感光体が酸化性ガスにさらされる頻度が増し、更に大きなダメージが加わるため、従来の酸化防止剤等では今後要求される長寿命化に対して、満足することが困難となっているのが現状である。
本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、耐摩耗性が高く、かつ耐オゾン性、耐NOx性が高く、電気的特性が良好で、長期間にわたり高画質化を実現できる電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 支持体と、該支持体上に感光層及び表面層を有する電子写真感光体において、
前記表面層が、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物とを硬化させた硬化物を含有し、
前記感光層が、下記一般式(I)で表される電荷輸送物質と、下記一般式(II)で表されるアミン化合物を含有し、前記電荷輸送物質と前記アミン化合物の質量比(電荷輸送物質:アミン化合物)が1:0.01〜1:0.3であることを特徴とする電子写真感光体である。
ただし、前記一般式(I)中、R及びRは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、及び置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルコキシル基のいずれかを表す。
ただし、前記一般式(II)中、A及びBは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、−CHX、及び−CHCHY(ただし、X及びYは、いずれも置換基を有していてもよい芳香族残基を表す)のいずれかを表す。
<2> 電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物における電荷輸送性構造が、トリアリールアミン構造である前記<1>に記載の電子写真感光体である。
<3> 電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物におけるラジカル重合性化合物が、アクリロイルオキシ基及びメタクリルイルオキシ基から選択される官能基を有する前記<1>から<2>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<4> 3官能以上のラジカル重合性モノマーが、アクリロイルオキシ基及びメタクリルイルオキシ基から選ばれる官能基を3つ以上有する前記<1>から<3>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<5> 電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、
前記電子写真感光体が、前記<1>から<4>のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置である。
<6> 電子写真感光体表面を帯電させる帯電工程と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程とを少なくとも含む画像形成方法であって、
前記電子写真感光体が、前記<1>から<4>のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成方法である。
<7> 帯電手段、露光手段、現像手段、クリーニング手段、及び転写手段から選択される少なくとも1つの手段と、前記<1>から<4>のいずれかに記載の電子写真感光体とを有することを特徴とするプロセスカートリッジである。
本発明の電子写真感光体における最表面層である表面層は、電荷輸送構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーを含有する。これにより、三次元網目構造が発達し、架橋度が非常に高い高硬度表面層が得られ、高い耐摩耗性が達成される。これに対し、1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーのみを用いた場合は、表面層中の架橋結合が希薄となり飛躍的な耐摩耗性向上が達成されない。表面層に高分子材料が含有されている場合、三次元網目構造の発達が阻害され架橋度の低下が起こり、本発明に比べて充分な耐摩耗性が得られない。更に、含有される高分子材料とラジカル重合性組成物(ラジカル重合性モノマーや電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物)の反応より生じた硬化物との相溶性が悪く、相分離から局部的な摩耗が生じ、表面の傷となって現れる。
また、本発明の電子写真感光体における最表面層である表面層は、前記電荷輸送構造を有しない3官能性ラジカル重合性モノマーに加え、更に1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を含有しており、これが前記3官能以上のラジカル重合性モノマー硬化時に架橋結合中に取り込まれる。これに対し、官能基を有しない低分子電荷輸送物質を表面層中に含有させた場合、その相溶性の低さから低分子電荷輸送物質の析出や白濁現象が起こり、表面層の機械的強度も低下する。一方、2官能以上の電荷輸送性化合物を主成分として用いた場合は複数の結合で架橋構造中に固定されるが、電荷輸送性構造が非常に嵩高いため、硬化物中に歪みが発生し表面層の内部応力が高くなり、キャリア付着等でクラックや傷の発生が頻発する。
更に、本発明の電子写真感光体は、良好な電気的特性を有し、このため長期間にわたり高画質化が実現される。これは1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を用い、架橋結合間にペンダント状に固定化したことに起因する。前記のように官能基を有しない電荷輸送物質は析出し、白濁現象が起こり、感度の低下、残留電位の上昇等繰り返し使用における劣化が著しい。2官能以上の電荷輸送性化合物を主成分として用いた場合は複数の結合で架橋構造中に固定されるため、電荷輸送時の中間体構造(カチオンラジカル)が安定して保てず、電荷のトラップによる感度の低下、残留電位の上昇が起こる。これらの電気的特性の劣化は、画像濃度低下、文字の細り等の画像として現れる。
したがって、本発明によれば、表面層が電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を硬化させた硬化物を含有し、感光層中に特定の電荷輸送物質と特定のアミン化合物を含有させることにより、機械的耐久性を著しく向上させると共に、更にコロナ放電帯電器より放出されるオゾン、NOxなどの酸化性ガス、あるいは大気中のオゾン、NOxなどの酸化性ガスによる感光層へのダメージが著しく低下し、感光体の低抵抗化による解像度低下を防ぎ、電気特性も安定し、感光体の寿命は著しく向上することができる。このような感光体を用いることにより、良好な画像を長期にわたり提供できる、高性能であり、かつ信頼性の高い画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジが提供できる。
本発明によると、従来における問題を解決することができ、耐摩耗性が高く、かつ耐オゾン性、耐NOx性が高く、電気的特性が良好で、長期間にわたり高画質化を実現できる電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することができる。
図1Aは、本発明の電子写真感光体の層構成の一例を示す概略断面図である。 図1Bは、本発明の電子写真感光体の層構成の他の一例を示す概略断面図である。 図2は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。 図3は、本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
(電子写真感光体)
本発明の電子写真感光体は、支持体と、該支持体上に感光層及び表面層を有し、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
−層構成−
前記電子写真感光体は、その層構成について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、第一の形態では、支持体上に単一の層構成である感光層(以下、「単層型感光層」と称することもある)と、表面層とをこの順に有し、必要に応じてその他の層を有してなる。
また、第二の形態では、支持体と、該支持体上に電荷発生層と、電荷輸送層とを積層した構成の感光層(以下、「積層型感光層」と称することもある)と、表面層とをこの順に有し、更に必要に応じてその他の層を有してなる。なお、前記第二形態では、電荷発生層、及び電荷輸送層は逆に積層しても構わない。これらの中でも、積層型感光層を有する電子写真感光体が特に好ましい。
ここで、前記電子写真感光体について、図面に基づいて説明する。図1Aは、本発明の電子写真感光体の一例を示す概略断面図であり、支持体31上に、電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する単層型感光層32と、表面層33とをこの順に有している。
また、図1Bは、支持体31上に、電荷発生機能を有する電荷発生層34と、電荷輸送機能を有する電荷輸送層35と、表面層33とをこの順に有している。この場合、電荷発生層34と電荷輸送層35とにより積層型感光層が形成される。なお、図1A及び図1B中では、図示を省略しているが、支持体と感光層又は電荷発生層との間には下引き層を設けても構わない。
<表面層>
前記表面層は、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(A)と、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(B)とを硬化させた硬化物を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
−電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(A)−
前記電荷輸構送造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(A)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、(i)トリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾール等の正孔輸送性構造、或いは(ii)縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環等の電子輸送構造を有しておらず、かつラジカル重合性官能基を3つ以上有するモノマーなどが挙げられる。
前記ラジカル重合性官能基としては、炭素−炭素2重結合を有し、ラジカル重合可能な基であればいずれでもよい。前記ラジカル重合性官能基としては、例えば、下記に示す1−置換エチレン官能基、1,1−置換エチレン官能基等が挙げられる。
前記1−置換エチレン官能基としては、例えば、下記一般式(1)で表される官能基が好適に挙げられる。
ただし、前記一般式(1)中、X1は、置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、−CO−基、−COO−基、−CON(R30)−基(ただし、R30は、水素原子、メチル基、エチル基等のアルキル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を表す。)、又は−S−基を表す。
これらの置換基としては、具体的には、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基、ビニルチオエーテル基などが挙げられる。
前記1,1−置換エチレン官能基としては、例えば、下記一般式(2)で表される官能基が好適に挙げられる。
ただし、前記一般式(2)中、Yは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基あるいはエトキシ基等のアルコキシ基、−COOR31基(ただし、R31は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル、フェネチル基等のアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、)又は−CONR3233(ただし、R32及びR33は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、ナフチルメチル基、あるいはフェネチル基等のアラルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基を表し、互いに同一又は異なっていてもよい。)、また、Xは、前記一般式(1)のXと同一の置換基、単結合、又はアルキレン基を表す。
ただし、Y、X2の少なくともいずれか一方がオキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基、及び芳香族環である。
これらの置換基としては、例えばα−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基、などが挙げられる。
なお、これらX1、X2、Yについての置換基に更に置換される置換基としては、例えばハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、などが挙げられる。
これらのラジカル重合性官能基の中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が特に好ましい。
前記3つ以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物は、例えば、水酸基がその分子中に3つ以上ある化合物とアクリル酸(塩)、アクリル酸ハライド、アクリル酸エステルを用い、エステル反応あるいはエステル交換反応させることにより得ることができる。また、3つ以上のメタクリロイルオキシ基を有する化合物も同様にして得ることができる。なお、ラジカル重合性官能基を3つ以上有する単量体中のラジカル重合性官能基は、同一でも異なってもよい。
前記電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(A)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、HPA変性(アルキレン変性)トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性(エチレンオキシ変性)トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性(プロピレンオキシ変性)トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、ECH変性(エピクロロヒドリン変性)グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、2,2,5,5,−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられる。なお、前記変性を行った理由はモノマーの粘度を下げ、扱いやすくするためである。
前記電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(A)は、表面層中に緻密な架橋結合を形成するために、該モノマー中の官能基数に対する分子量の割合(分子量/官能基数)は250以下が好ましい。前記割合(分子量/官能基数)が、250を超えると、表面層は柔らかく耐摩耗性が幾分低下するため、前記例示したモノマー等中、HPA、EO、PO等の変性基を有するモノマーにおいては、極端に長い変性基を有するものを単独で使用することは好ましくない。
前記電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(A)の成分割合は、前記表面層全量に対し20質量%〜80質量%が好ましく、30質量%〜70質量%がより好ましい。前記モノマー成分が20質量%未満であると、表面層の3次元架橋結合密度が少なく、従来の熱可塑性バインダー樹脂を用いた場合に比べ飛躍的な耐摩耗性向上が達成されない。前記モノマー成分が、80質量%を超えると、電荷輸送性化合物の含有量が低下し、電気的特性の劣化が生じる。使用されるプロセスによって要求される耐摩耗性や電気特性が異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30質量%〜70質量%の範囲が最も好ましい。
−電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(B)−
前記電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(B)は、例えばトリアリールアミン構造、ヒドラゾン構造、ピラゾリン構造、カルバゾール構造等の正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環等の電子輸送構造を有しており、かつラジカル重合性官能基を有する化合物を指す。このラジカル重合性官能基としては、先にラジカル重合性モノマーで示したものが挙げられ、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用である。また、電荷輸送性構造としては、トリアリールアミン構造が、効果が高い点で好ましい。
これらの中でも、下記一般式(3)又は(4)の構造で示される化合物を用いた場合、感度、残留電位等の電気的特性が良好に持続される。
前記一般式(3)及び(4)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR(Rは、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基若しくはCONR(R及びRは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい)を表す。
Ar1、Ar2は、置換もしくは未置換のアリーレン基を表し、同一であっても異なってもよい。
Ar、Ar4は、置換もしくは未置換のアリール基を表し、同一であっても異なってもよい。
Xは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。
Zは、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、アルキレンオキシカルボニル基を表す。
mとnは、0〜3の整数を表す。
前記一般式(3)及び(4)において、Rにおける、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。これらは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等により置換されていてもよい。R1のうち、水素原子、メチル基が特に好ましい。
Ar3、Ar4は、置換もしくは未置換のアリール基を表す。該アリール基としては、縮合多環式炭化水素基、非縮合環式炭化水素基、複素環基などが挙げられる。
前記縮合多環式炭化水素基としては、好ましくは環を形成する炭素数が18個以下のもの、例えば、ペンタニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、as−インダセニル基、s−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基などが挙げられる。
前記非縮合環式炭化水素基としては、例えばベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル及びジフェニルスルホン等の単環式炭化水素化合物の1価基、あるいはビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン、ポリフェニルアルケン等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基、あるいは9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の1価基が挙げられる。
前記複素環基としては、例えばカルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、チアジアゾール等の1価基などが挙げられる。
Ar3、Ar4で表されるアリール基は、例えば以下に示すような置換基を有してもよい。
(1)ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
(2)アルキル基が挙げられる。
前記アルキル基としては、好ましくは、C1〜C12、より好ましくはC1〜C8、更に好ましくはC1〜C4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基には、更にフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−ブチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−プロピル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−フェニルベンジル基等が挙げられる。
(3)アルコキシ基(−OR)(Rは前記(2)で定義したアルキル基を表す)などが挙げられる。
前記アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基などが挙げられる。
(4)アリールオキシ基が挙げられる。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。これは、C1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基又はハロゲン原子を置換基として含有してもよい。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基等が挙げられる。
(5)アルキルメルカプト基又はアリールメルカプト基が挙げられる。具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。
(6)下記一般式(α)で示される基が挙げられる。
ただし、前記一般式(α)中、R10及びR11は、各々独立に水素原子、前記(2)で定義したアルキル基、又はアリール基を表す。アリール基としては、例えばフェニル基、ビフェニル基又はナフチル基が挙げられ、これらはC1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基又はハロゲン原子を置換基として含有してもよい。R10及びR11は、共同で環を形成してもよい。
具体的には、アミノ基、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(トリール)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリジノ基等が挙げられる。
(7)メチレンジオキシ基、又はメチレンジチオ基等のアルキレンジオキシ基又はアルキレンジチオ基が挙げられる。
(8)置換又は無置換のスチリル基、置換又は無置換のβ−フェニルスチリル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジトリルアミノフェニル基等が挙げられる。
前記Ar1、Ar2で表されるアリーレン基としては、前記Ar3、Ar4で表されるアリール基から誘導される2価基である。
Xは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。
Xにおけるアルキレン基としては、C1〜C12、好ましくはC1〜C8、更に好ましくはC1〜C4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であり、これらのアルキレン基には、更にフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチレン基、エチレン基、n−ブチレン基、i−プロピレン基、t−ブチレン基、s−ブチレン基、n−プロピレン基、トリフルオロメチレン基、2−ヒドロキシエチレン基、2−エトキシエチレン基、2−シアノエチレン基、2−メトキシエチレン基、ベンジリデン基、フェニルエチレン基、4−クロロフェニルエチレン基、4−メチルフェニルエチレン基、4−ビフェニルエチレン基等が挙げられる。
Xにおけるシクロアルキレン基としては、C5〜C7の環状アルキレン基であり、これらの環状アルキレン基にはフッ素原子、水酸基、C1〜C4のアルキル基、C1〜C4のアルコキシ基等の置換基を有していてもよい。具体的なシクロアルキレン基としては、シクロヘキシリデン基、シクロへキシレン基、3,3−ジメチルシクロヘキシリデン基等が挙げられる。
Xにおけるアルキレンエーテル基としては、エチレンオキシ、プロピレンオキシ、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールを表し、アルキレンエーテル基のアルキレン基はヒドロキシル基、メチル基、エチル基等の置換基を有してもよい。
Xにおけるビニレン基は、下記の2つの一般式で表される。
ただし、R12は水素原子、アルキル基〔前記(2)で定義されるアルキル基と同じ〕、アリール基(前記Ar3、Ar4で表されるアリール基と同じ)、aは1又は2、bは1〜3を表す。
Zは、置換もしくは未置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、アルキレンオキシカルボニル基を表す。置換もしくは未置換のアルキレン基としては、前記Xのアルキレン基と同様なものが挙げられる。置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基としては、前記Xのアルキレンエーテル基が挙げられる。アルキレンオキシカルボニル基としては、カプロラクトン変性基が挙げられる。
前記電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物(B)として、更に好ましくは、下記一般式(5)で表される化合物が挙げられる。
ただし、前記一般式(5)中、p、q、oは、それぞれ0又は1の整数、R5は水素原子、メチル基を表し、R6、R7は、水素原子以外の置換基で炭素数1〜6のアルキル基を表し、複数の場合は異なってもよい。s、tは、0〜3の整数を表す。Z2は、単結合、メチレン基、エチレン基、下記構造式で表される基のいずれかを表す。
前記一般式(5)で表される化合物としては、R6、R7の置換基として、特にメチル基、エチル基である化合物が好ましい。
前記一般式(3)及び(4)、特に一般式(5)で表される電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物(B)は、炭素−炭素間の二重結合が両側に開放されて重合するため、末端構造とはならず、連鎖重合体中に組み込まれ、3官能以上のラジカル重合性モノマーとの重合で架橋形成された重合体中では、高分子の主鎖中に存在し、かつ主鎖−主鎖間の架橋鎖中に存在する(この架橋鎖には1つの高分子と他の高分子間の分子間架橋鎖と、1つの高分子内で折り畳まれた状態の主鎖のある部位と主鎖中でこれから離れた位置に重合したモノマー由来の他の部位とが、架橋される分子内架橋鎖とがある)が、主鎖中に存在する場合であっても、また架橋鎖中に存在する場合であっても、鎖部分から懸下するトリアリールアミン構造は、窒素原子から放射状方向に配置する少なくとも3つのアリール基を有し、バルキーであるが、鎖部分に直接結合しておらず、鎖部分からカルボニル基等を介して懸下しているため、立体的位置取りに融通性ある状態で固定されているので、これらトリアリールアミン構造は重合体中で相互に程よく隣接する空間配置が可能であるため、分子内の構造的歪みが少なく、また電子写真感光体の表面層とされた場合に、電荷輸送経路の断絶を比較的免れた分子内構造をとりうるものと推測される。
また、本発明においては、下記一般式(6)で示した特定のアクリル酸エステル化合物も電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物として良好に用いることができる。
−Ar−CH=CH−Ar−B ・・・一般式(6)
ただし、前記一般式(6)中、Aは、置換基を持つ又は無置換の芳香族炭化水素骨格からなる一価又は二価基を表す。前記芳香族炭化水素骨格としては、例えばベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、ビフェニルなどが挙げられる。置換基としては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、ベンジル基、ハロゲン原子が挙げられる。また、前記アルキル基、アルコキシ基は、更にハロゲン原子、フェニル基を置換基として有していてもよい。
Arは、少なくとも1つの3級アミノ基を有する芳香族炭化水素骨格からなる一価基又は二価基、もしくは少なくとも1つの3級アミノ基を有する複素環式化合物骨格からなる一価基又は二価基を表すが、ここで、3級アミノ基を有する芳香族炭化水素骨格としては、下記一般式(7)で表されるものが好ましい。
ただし、前記一般式(7)中、R13、R14はアシル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。Ar7はアリール基を表す。wは1〜3の整数を表す。
13、R14のアシル基としては、例えばアセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
13、R14の置換もしくは無置換のアルキル基は、Ar5の置換基で述べたアルキル基と同様である。
13、R14の置換もしくは無置換のアリール基は、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ピレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基に加えて下記一般式(8)で表される基が挙げられる。
ただし、前記一般式(8)中、Bは−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、及び以下の二価基から選ばれる。
ここで、R21は、水素原子、Ar5で定義された置換もしくは無置換のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、R13で定義された置換もしくは無置換のアリール基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基を表し、R22は、水素原子、Ar5で定義された置換もしくは無置換のアルキル基、R13で定義された置換もしくは無置換のアリール基を表し、iは1〜12の整数、jは1〜3の整数を表す。
21のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−シアノエトキシ基、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
21のハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
21のアミノ基としては、例えばジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジベンジルアミノ基、4−メチルベンジル基などが挙げられる。
Ar7のアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ピレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、などが挙げられる。
Ar7、R13、R14は、Ar5で定義されたアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を置換基として有していてもよい。
3級アミノ基を有する複素環式化合物骨格としては、例えばピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、ジオキサゾール、インドール、イソインドール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイソキサジン、カルバゾール、フェノキサジン等のアミン構造を有する複素環化合物が挙げられる。これらは、Ar5で定義されたアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を置換基として有していてもよい。
1、B2は、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基又はビニル基を有するアルキル基、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基又はビニル基を有するアルコキシ基を表す。アルキル基、アルコキシ基は、Ar5で述べたものが同様に適用される。これらB1、B2はどちらか一方のみが存在し、両方の存在は除外される。
前記一般式(6)で表されるアクリル酸エステル化合物と同様に、下記一般式(9)で表される化合物も好適に用いることができる。
ただし、前記一般式(9)中、R8、R9は、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子を表し、Ar7、Ar8は、置換もしくは無置換のアリール基又はアリーレン基、置換又は無置換のベンジル基を表す。アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子は前記Ar5で述べたものが同様に適用される。
アリール基は、前記一般式(7)におけるR13、R14で定義されたアリール基と同様である。アリーレン基は、そのアリール基から誘導される二価基である。
1〜B4は、前記一般式(6)におけるB1、B2と同様の基を表し、いずれか1つのみが存在し、2つ以上の存在は除外される。uは0〜5の整数、vは0〜4の整数を表す。
特定のアクリル酸エステル化合物は、次のような特徴を有する。スチルベン型共役構造を有した三級アミン化合物であり、発達した共役系を有している。こういった共役系の発達した電荷輸送性化合物を用いることで、表面層界面部分での電荷注入性が非常に良好となり、更に架橋結合間に固定化された場合でも、分子間相互作用が阻害されにくく、電荷移動度に関しても良好な特性を有する。また、ラジカル重合性の高いアクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を分子中に有しており、ラジカル重合時に速やかにゲル化するとともに過度な架橋歪を生じない。分子中のスチルベン構造部の二重結合が部分的に重合に参加し、しかもアクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基よりも重合性が低いために架橋反応に時間差が生じることで歪みを最大に大きくすることがなく、しかも分子中の二重結合を使用するために分子量当りの架橋反応数を上げることができるために、架橋密度を高めることができ、耐摩耗性のさらなる向上が実現可能となった。また、この二重結合は、架橋条件により重合度を調整することができ、容易に最適架橋膜を作製できる。このようなラジカル重合への架橋参加は、アクリル酸エステル化合物の特異的な特徴であり、前述したようなα−フェニルスチルベン型の構造では起こらない。
以上のことから、前記一般式(6)、特に一般式(9)に示したラジカル重合性官能基を有する電荷輸送性化合物を用いることで良好な電気特性を維持しつつ、かつクラック等の発生を起さずに架橋密度の極めて高い膜を形成することができ、それにより感光体の諸特性を満足し、かつシリカ微粒子等が感光体に刺さることを防止し、白斑点等の画像欠陥を減らすことができる。
ラジカル重合性官能基の数については、架橋構造の均一性については官能基数の少ないものが好ましく、耐摩耗性については官能基数の多いものが好ましい。本発明においては、両者のバランスから良好に選択して使用することが可能である。
以下、本発明において用いられる電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(B)の具体例を示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではない。
本発明に用いられる電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(B)は、表面層に電荷輸送性能を付与するために重要であり、この成分は表面層全量に対し20質量%〜80質量%が好ましく、より好ましくは30〜70質量%になるように塗工液成分の含有量を調整する。前記成分の含有量が、20質量%未満であると、表面層の電荷輸送性能が充分に保てず、繰り返しの使用で感度低下、残留電位上昇等の電気特性の劣化が現れることがあり、80質量%を超えると、電荷輸送構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(A)の含有量が低下し、架橋結合密度の低下を招き、高い耐摩耗性が発揮されないことがある。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なるため一概にはいえないが、両特性のバランスを考慮すると30質量%〜70質量%の範囲が最も好ましい。
前記表面層は、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(A)と、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(B)とを硬化したものであるが、これ以外に塗工時の粘度調整、表面層の応力緩和、低表面エネルギー化や摩擦係数低減などの機能付与の目的で1官能及び2官能のラジカル重合性モノマー及びラジカル重合性オリゴマーを併用することができる。これらのラジカル重合性モノマー、ラジカル重合性オリゴマー、機能性モノマーとしては、公知のものが利用できる。
前記1官能のラジカル重合性モノマーとしては、例えば2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマーなどが挙げられる。
前記2官能のラジカル重合性モノマーとしては、例えば1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビスフェノールA−EO変性ジアクリレート、ビスフェノールF−EO変性ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられる。
前記機能性モノマーとしては、例えばオクタフルオロペンチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチルアクリレートなどのフッ素原子を置換したもの、特公平5−60503号公報、特公平6−45770号公報記載のシロキサン繰り返し単位:20〜70のアクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、メタクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、アクリロイルポリジメチルシロキサンプロピル、アクリロイルポリジメチルシロキサンブチル、ジアクリロイルポリジメチルシロキサンジエチルなどのポリシロキサン基を有するビニルモノマー、アクリレート及びメタクリレートが挙げられる。
前記ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系オリゴマーが挙げられる。ただし、1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーやラジカル重合性オリゴマーを多量に含有させると表面層の3次元架橋結合密度が実質的に低下し、耐摩耗性の低下を招くことがある。このため、これらのモノマーやオリゴマーの含有量は、3官能以上のラジカル重合性モノマー100質量部に対し50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
前記表面層は、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(A)と、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(B)を硬化したものであるが、必要に応じてこの架橋反応を効率よく進行させるために重合開始剤を使用してもよい。
前記重合開始剤としては、熱重合開始剤と、光重合開始剤とがある。
前記熱重合開始剤としては、例えば2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルベルオキサイド、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシ)プロパン、t−ブチルヒドロベルオキサイド、クメンヒドロベルオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物系開始剤;アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4′−アゾビス−4−シアノ吉草酸等のアゾ系開始剤が挙げられる。
前記光重合開始剤としては、例えばジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等のアセトフェノン系又はケタール系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、などのベンゾインエーテル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン等のベンゾフェノン系光重合開始剤;2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤;その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物、などが挙げられる。
また、光重合促進効果を有するものを単独又は前記光重合開始剤と併用して用いることもでき、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、などが挙げられる。
これらの重合開始剤は、1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
前記重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性を有する総含有物100質量部に対し、0.5質量部〜40質量部が好ましく、1質量部〜20質量部がより好ましい。
前記表面層塗工液は、必要に応じて各種可塑剤(応力緩和や接着性向上の目的)、レベリング剤、ラジカル反応性を有しない低分子電荷輸送物質などの添加剤が含有できる。これらの添加剤としては公知のものが使用可能であり、可塑剤としてはジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂に使用されているものが利用可能で、その使用量は塗工液の総固形分に対し20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
前記レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが利用でき、その使用量は塗工液の総固形分に対し3質量%以下が好ましい。
本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、表面層に酸化防止剤を添加することができる。本発明に用いることができる酸化防止剤として、フェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、ハイドロキノン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類等が挙げられる。
これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。前記酸化防止剤の添加量は、添加する層の総質量に対して0.01質量%〜10質量%が好ましい。
前記表面層は、少なくとも電荷輸送構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(A)と、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(B)とを含有する表面層塗工液を塗布し、硬化することにより形成される。前記表面層塗工液はラジカル重合性モノマーが液体である場合、これに他の成分を溶解して塗布することも可能であるが、必要に応じて溶媒により希釈して塗布される。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系;テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテル等のエーテル系;ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ系、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記溶媒による希釈率は組成物の溶解性、塗工法、目的とする厚みにより変わり、任意である。
前記塗布は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば浸漬塗工法、スプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行うことができる。
前記表面層塗工液を塗布後、外部からエネルギーを与え硬化させ、表面層を形成するものである。このとき用いられる外部エネルギーとしては熱、光、放射線がある。熱のエネルギーを加える方法としては、空気、窒素などの気体、蒸気、あるいは各種熱媒体、赤外線、電磁波を用い塗工表面側あるいは支持体側から加熱することによって行われる。
加熱温度は100℃以上、170℃以下が好ましい。前記加熱温度が、100℃未満であると、反応速度が遅く、完全に反応が終了しないことがあり、170℃を超えると、反応が不均一に進行し表面層中に大きな歪みが発生することがある。硬化反応を均一に進めるために、100℃未満の比較的低温で加熱後、更に100℃以上に加温し反応を完結させる方法も有効である。光のエネルギーとしては主に紫外光に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプなどのUV照射光源が利用できるが、ラジカル重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。
照射光量は、50mW/cm以上、1000mW/cm以下が好ましく、50mW/cm未満では硬化反応に時間を要する。1000mW/cmより強いと反応の進行が不均一となり、表面層の荒れが激しくなる。放射線のエネルギーとしては電子線を用いるものが挙げられる。これらのエネルギーの中で、反応速度制御の容易さ、装置の簡便さから熱及び光のエネルギーを用いたものが有用である。
光エネルギー又は放射線エネルギーにより表面層を硬化した場合は、硬化後に残留溶媒を除去するため、乾燥を行うことが好ましい。乾燥の温度及び時間は、表面層の塗工液に用いられた溶媒の沸点により任意に選択できるが、概ね100℃〜150℃、10分間〜30分間程度が好ましい。
前記表面層の厚みは、1μm〜8μmが好ましく、2μm〜6μmがより好ましい。前記厚みが、1μm未満であると、作像プロセスでの長期の使用により表面層が剥離する可能性がある。一方、前記厚みが、8μmを超えると、残留電位が増大し、画像濃度低下を引き起こすことがある。
前記表面層塗工液には、2官能以上の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物、あるいはバインダー樹脂を含有させることも感光体表面性、電気特性、あるいは耐久性を損なわない範囲であれば可能である。前記2官能以上の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を含有すると、電荷輸送性構造の嵩高さから硬化反応時に内部応力が発生し表面に凹凸が発生しやすくなる。また、塗工液にバインダー樹脂などの高分子材料を含有させると、ラジカル重合性組成物(ラジカル重合性モノマー及び電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物)の硬化反応より生成した高分子との相溶性の悪さから相分離が生じ、表面層表面の凹凸が激しくなる。したがって、2官能以上の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物、あるいはバインダー樹脂は使用しない方が好ましい。
前記表面層塗工液の希釈溶媒については、下層を容易に溶解する溶媒を多量に用いると下層の樹脂バインダーや低分子電荷輸送物質などの組成物が表面層に混入し、硬化反応の妨げになるばかりでなく、塗工液中に予め非硬化材料を多量に含有させた場合と同様な状態となり架橋表面の乱れの原因となる。逆に、下層を全く溶解しない溶媒を使用した場合、表面層と下層の接着性が低下し、硬化反応時の体積収縮から表面層にクレーター状のはじきが現れ表面粗さが激しくなる。これらの対策としては、混合溶媒を使用し下層の溶解性をコントロールする、液組成や塗工法により表面層に含有される溶媒量を低減する、下層に高分子電荷輸送物質などを用い下層成分の混入を抑える、下層と表面層の間に溶解性の低い中間層や良好な接着性の中間層を設ける、などが挙げられる。
前記表面層においては、電気的特性を維持するため嵩高い電荷輸送性構造を含有させ、かつ高強度化のため架橋結合密度を高める必要がある。このような表面層塗工後の硬化にあたっては、非常に高いエネルギーを外部から加え急激に反応を進めると、硬化が不均一に進行し表面層表面の凹凸が激しくなる。このため、加熱条件、光の照射強度、重合開始剤量により反応速度制御が可能な熱や光の外部エネルギーを用いたものが好ましい。
<感光層>
前記感光層は、下記一般式(I)で表される電荷輸送物質と、下記一般式(II)で表されるアミン化合物を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
ただし、前記一般式(I)中、R及びRは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、及び置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルコキシル基のいずれかを表す。
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。
前記炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、などが挙げられる。
前記炭素数1〜6のアルコキシル基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
前記置換基としては、例えばアルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子、シアノ基などが挙げられる。
ただし、前記一般式(II)中、A及びBは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、−CHX、及び−CHCHY(ただし、X及びYは、いずれも置換基を有していてもよい芳香族残基を表す)のいずれかを表す。
前記芳香族残基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、などが挙げられる。
前記置換基としては、例えばアルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子、シアノ基などが挙げられる。
本発明においては、前記一般式(I)で表される電荷輸送物質と前記一般式(II)で表されるアミン化合物の質量比〔一般式(I)の電荷輸送物質:一般式(II)のアミン化合物〕は、1:0.01〜1:0.3であり、1:0.05〜1:0.2が好ましい。
前記アミン化合物の量比が、0.01未満であると、耐オゾン性、耐NOx性が低下し、画像濃度の変化が大きくなるなどの弊害が発生することがあり、0.3を超えると、残留電位が上昇するなど電気特性が悪化することがある。
前記一般式(I)で表される電荷輸送物質は、応答性がよく、明部電位の上昇を抑制できるものである。
前記一般式(I)で表される電荷輸送物質としては、以下に具体的化合物を示すがこれに限定されるものではない。
前記一般式(II)で表されるアミン化合物は、電子写真感光体のオゾン、NOxによる劣化を防ぎ、長寿命化を図れるものである。
前記一般式(II)で表されるアミン化合物としては、以下に具体的化合物を示すがこれに限定されるものではない。
<<積層型感光層>>
前記積層型感光層は、電荷発生層と、電荷輸送層とからなり、前記一般式(I)で表される電荷輸送物質と、前記一般式(II)で表されるアミン化合物は電荷輸送層に含有される。
−電荷発生層−
前記電荷発生層は、電荷発生機能を有する電荷発生物質を主成分とする層であり、必要に応じてバインダー樹脂を併用することもできる。
前記電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
前記無機系材料としては、例えば結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物、アモルファス・シリコンなどが挙げられる。前記アモルファス・シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。
前記有機系材料としては、特に制限はなく、公知の材料を用いることができ、例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系又は多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記電荷発生層に、必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、電荷発生層のバインダー樹脂として上述のバインダー樹脂の他に、電荷輸送機能を有する高分子電荷輸送物質、例えば、アリールアミン骨格やベンジジン骨格やヒドラゾン骨格やカルバゾール骨格やスチルベン骨格やピラゾリン骨格等を有するポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリシロキサン、アクリル樹脂等の高分子材料やポリシラン骨格を有する高分子材料等を用いることができる。
前記電荷発生層には、低分子電荷輸送物質を含有させることができる。前記低分子電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
前記電子輸送物質としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体などの電子受容性物質が挙げられる。ここれらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記正孔輸送物質としては、例えばオキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体、ジスチリル誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記電荷発生層を形成する方法には、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが大きく挙げられる。
前記真空薄膜作製法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられ、上述した無機系材料、有機系材料が良好に形成できる。
前記溶液分散系からのキャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共に、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。また、必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行うことができる。
前記電荷発生層の厚みは、0.01μm〜5μmが好ましく、0.05μm〜2μmがより好ましい。
−電荷輸送層−
前記電荷輸送層は電荷輸送機能を有する層であり、電荷輸送機能を有する電荷輸送物質及び結着樹脂を溶剤に溶解乃至分散し、これを電荷発生層上に塗布し、乾燥することにより形成する。
前記電荷輸送層には、前記一般式(I)で表される電荷輸送物質が含有される。特に既に示した前記構造式(Ia)〜(If)で表される電荷輸送物質により応答性のよい電子写真感光体が提供できる。
前記電荷輸送層中の前記一般式(I)で表される電荷輸送物質の含有量は、結着樹脂1質量部に対し、0.3質量部〜2.0質量部であることが好ましい。前記電荷輸送物質の含有量が、0.3質量部未満であると、残留電位が上昇するなど電気特性が悪化することがあり、3.0質量部を超えると、電荷輸送物質が析出する可能性がある。
更に、前記一般式(I)で表される電荷輸送物質と他の電荷輸送物質とを混合して用いることもできる。この場合、前記一般式(I)で表される電荷輸送物質と他の電荷輸送物質の質量比率(前記一般式(I)で表される電荷輸送物質:他の電荷輸送物質)は、50:50〜95:5が好ましく、70:30〜95:5がより好ましい。
前記他の電荷輸送物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリビニルカルバゾール、ハロゲン化ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリビニルインドロキノキサリン、ポリビニルベンゾチオフェン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルアクリジン、ポリビニルピラゾリン、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリイソチアナフテン、ポリアニリン、ポリジアセチレン、ポリヘプタジイエン、ポリピリジンジイル、ポリキノリン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェロセニレン、ポリペリナフチレン、ポリフタロシアニン等の導電性高分子化合物を用いることができる。
また、低分子化合物として、例えばトリニトロフルオレノン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、キノン、ジフェノキノン、ナフトキノン、アントラキノン又はこれらの誘導体、アントラセン、ピレン、フェナントレン等の多環芳香族化合物、インドール、カルバゾール、イミダゾール等の含窒素複素環化合物、フルオレノン、フルオレン、オキサジアゾール、オキサゾール、ピラゾリン、ヒドラゾン、トリフェニルメタン、トリフェニルアミン、エナミン、スチルベン等を使用することができる。
また、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸等の高分子化合物にLiイオン等の金属イオンをドープした高分子固体電解質等も用いることができる。更に、テトラチアフルバレン−テトラシアノキノジメタンで代表される電子供与性化合物と電子受容性化合物で形成された有機電荷輸送錯体等も用いることができ、これらを1種だけ添加して又は2種以上の化合物を混合して添加して、所望の感光体特性を得ることができる。
また、前記電荷輸送層には、前記一般式(II)で表されるアミン化合物が含有される。特に前記構造式(IIa)〜(IIe)で表されるアミン化合物を含有させることにより、耐オゾン性及び耐NOxが高く、安定した性能を示す電子写真感光体が提供できる。
前記電荷輸送層中の前記一般式(II)で表されるアミン化合物の含有量は、前記電荷輸送物質1.0質量部に対し、0.01質量部〜0.30質量部であることが好ましい。前記アミン化合物の含有量が、0.01質量部未満であると、耐オゾン性、耐NOx性が低下し、画像濃度の変化が大きくなるなどの弊害が発生することがあり、0.30質量部を超えると、残留電位が上昇するなど電気特性が悪化することがある。
前記電荷輸送層を作製するための電荷輸送層塗布液には、特性を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、軟化剤、硬化剤、架橋剤等を添加して、感光体の特性、耐久性、機械特性の向上を図ることができる。特に、前記一般式(II)で表されるアミン化合物と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を合わせて使用することにより、耐久性の向上に更に寄与する。
前記紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3.5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3.5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3.5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3.5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル、サリチル酸−p−tert−ブチルフェニル、サリチル酸−p−オクチルフェニル等のサリチル酸系などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記フェノール系酸化防止剤としては、例えば2.6−ジ−tert−ブチルフェノール、2.6−ジ−tert−4−メトキシフェノール、2−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2.4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2.6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、ブチル化ヒドロキシアニソール、プロピオン酸ステアリル−β−(3.5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)、α−トコフェロール、β−トコフェロール、n−オクタデシル−3−(3’−5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系、2.2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、4.4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4.4’−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1.1.3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1.3.5−トリメチル−2.4.6−トリス(3.5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス〔メチレン−3(3.5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン等のポリフェノール系などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記紫外線吸収剤、酸化防止剤の添加量は、前記電荷輸送物質100質量部に対して3質量部〜20質量部であることが好ましい。
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記電荷輸送物質の含有量は、前記結着樹脂100質量部に対し、20質量部〜300質量部が好ましく、40質量部〜150質量部がより好ましい。ただし、高分子電荷輸送物質を用いる場合は、単独でも結着樹脂との併用も可能である。
前記電荷輸送層の塗工に用いられる溶媒としては、前記電荷発生層と同様なものが使用できるが、電荷輸送物質及び結着樹脂を良好に溶解するものが適している。これらの溶剤は単独で使用しても2種以上混合して使用してもよい。また、電荷輸送層の形成には電荷発生層と同様な塗工法が可能である。
前記電荷輸送層には、必要に応じて可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。
前記可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用できる。前記可塑剤の使用量は、前記結着樹脂100質量部に対して30質量部以下が好ましい。
前記レベリング剤としては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用される。前記レべリング剤の使用量は、前記結着樹脂100質量部に対して1質量部以下が好ましい。
前記電荷輸送層の厚みは、5μm〜40μmが好ましく、10μm〜30μmがより好ましい。
<<単層構造の感光層>>
前記単層構造の感光層は、電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層であり、感光層は電荷発生機能を有する電荷発生物質と電荷輸送機能を有する電荷輸送物質と結着樹脂を適当な溶媒に溶解乃至分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。また、必要により可塑剤、レベリング剤等を添加することもできる。
前記単層構造の感光層には、前記一般式(I)で表される電荷輸送物質、及び前記一般式(II)で表されるアミン化合物が含有される。また、電荷発生物質、電荷輸送物質、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、軟化剤、硬化剤、架橋剤、可塑剤、レベリング剤については前記電荷発生層、電荷輸送層において既に述べたものと同様なものが使用できる。前記結着樹脂としては、先に電荷輸送層の説明で挙げた結着樹脂のほかに、前記電荷発生層で挙げたバインダー樹脂を混合して用いてもよい。
前記単層構造の感光層中に含有される電荷発生物質は、感光層全量に対し1質量%〜30質量%が好ましい。前記単層構造の感光層に含有される結着樹脂は、感光層全量に対し20質量%〜80質量%が好ましい。また、前記一般式(I)で表される電荷輸送物質の含有量は、感光層全量に対し10質量%〜70質量%が好ましい。また、前記一般式(II)で表されるアミン化合物の含有量は、前記電荷輸送物質に対して0.01質量%〜0.30質量%であることが好ましい。
前記単層型感光層の厚みは、5μm〜30μmが好ましく、10μm〜25μmがより好ましい。
<支持体>
前記支持体としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金等の金属;酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物を蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、或いはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板又はそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理を施した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも支持体として用いることができる。また、厚み50μm〜150μmのニッケル箔でもよく、或いは厚み50μm〜150μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面にアルミニウム蒸着等の導電加工を行ったものでもよい。
円筒状の支持体である場合には、直径は60mm以下が好ましく、30mm以下がより好ましい。
これらの中でも、JIS3000系、JIS5000系、JIS6000系等のアルミニウム合金が用いられ、EI(Extrusion Ironing)法、ED(Extrusion Drawing)法、DI(Drawing Ironing)法、II(Impact Ironing)法等一般的な方法により成形を行った導電性支持体が好ましく、更に、前記導電性支持体の表面に、ダイヤモンドバイト等による表面切削加工や研磨、陽極酸化処理等の表面処理、又はこれらの加工、処理を行わない無切削管などいずれのものでもよい。
その他、前記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、支持体として用いることができる。
前記導電性粉体としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、また、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、或いは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルトルエン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。
前記導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
更に、適当な円筒基体上に、例えばポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、導電性支持体として良好に用いることができる。
−下引き層−
前記支持体と前記感光層との間には、必要に応じて、下引き層を設けてもよい。前記下引き層は、接着性を向上する、モアレなどを防止する、上層の塗工性を改良する、残留電位を低減するなどの目的で設けられる。
前記下引き層は、少なくとも樹脂、及び微粉末を含み、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂;共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂;ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の三次元網目構造を形成する硬化型樹脂、などが挙げられる。
前記微粉末としては、例えば酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物、金属硫化物、又は金属窒化物などが挙げられる。
また、前記下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤などを含むものを使用することもできる。更に、前記下引き層として、Alを陽極酸化にて設けたもの、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物、SiO、SnO、TiO、ITO、CeO等の無機物を真空薄膜作製法にて設けたものなども使用できる。
前記下引き層の厚みについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1μm〜50μmが好ましく、0.5μm〜20μmがより好ましい。
本発明の電子写真感光体においては、必要に応じて、単層型感光層、電荷発生層、電荷輸送層、下引き層、表面層等の各層に酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、低分子電荷輸送物質、レベリング剤などを添加することができる。
(画像形成装置及び画像形成方法)
本発明の画像形成装置は、電子写真感光体と、帯電手段と、露光手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、クリーニング手段、除電手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなる。
前記電子写真感光体が、本発明の前記電子写真感光体である。
本発明の画像形成方法は、帯電工程と、露光工程と、現像工程と、転写工程と、定着工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、クリーニング工程、除電工程、リサイクル工程、制御工程等を含んでなる。
本発明の画像形成方法は、本発明の画像形成装置により好適に実施することができ、前記帯電工程は前記帯電手段により行うことができ、前記露光工程は前記露光手段により行うことができ、前記現像工程は前記現像手段により行うことができ、前記転写工程は前記転写手段により行うことができ、前記定着工程は前記定着手段により行うことができ、前記クリーニング工程は前記クリーニング手段により行うことができ、前記その他の工程は前記その他の手段により行うことができる。
−帯電工程及び帯電手段−
前記帯電工程は、電子写真感光体表面を帯電させる工程であり、前記帯電手段により行われる。
前記帯電手段としては、前記電子写真感光体の表面に電圧を印加して一様に帯電させることができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、電子写真感光体と非接触で帯電させる非接触方式の帯電手段が用いられる。
前記非接触の帯電手段としては、例えば、コロナ放電を利用した非接触帯電器及び針電極デバイス、固体放電素子;電子写真感光体に対して微小な間隙をもって配設された導電性又は半導電性の帯電ローラなどが挙げられる。これらの中でも、コロナ放電が特に好ましい。
前記コロナ放電は、空気中のコロナ放電によって発生した正又は負のイオンを電子写真感光体の表面に与える非接触な帯電方法であり、電子写真感光体に一定の電荷量を与える特性を持つコロトン帯電器と、一定の電位を与える特性を持つスコロトロン帯電器とがある。
前記コロトン帯電器は、放電ワイヤの周囲に半空間を占めるケーシング電極とそのほぼ中心に置かれた放電ワイヤとから構成される。
前記スコロトロン帯電器は、前記コロトロン帯電器にグリッド電極を追加したものであり、グリッド電極は電子写真感光体表面から1.0mm〜2.0mm離れた位置に設けられている。
−露光工程及び露光手段−
前記露光は、例えば、前記露光手段を用いて前記電子写真感光体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
前記露光における光学系は、アナログ光学系とデジタル光学系とに大別される。前記アナログ光学系は、原稿を光学系により直接電子写真感光体上に投影する光学系であり、前記デジタル光学系は、画像情報が電気信号として与えられ、これを光信号に変換して電子写真感光体を露光し作像する光学系である。
前記露光手段としては、前記帯電手段により帯電された前記電子写真感光体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系、LED光学系、などの各種露光器が挙げられる。
なお、本発明においては、前記電子写真感光体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
−現像工程及び現像手段−
前記現像工程は、前記静電潜像を、トナー乃至現像剤を用いて現像して可視像を形成する工程である。
前記可視像の形成は、例えば、前記静電潜像を前記トナー乃至前記現像剤を用いて現像することにより行うことができ、前記現像手段により行うことができる。
前記現像手段は、例えば、前記トナー乃至前記現像剤を用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、前記トナー乃至現像剤を収容し、前記静電潜像に該トナー乃至該現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適に挙げられる。
前記現像器は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよく、また、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよく、例えば、前記トナー乃至前記現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有してなるもの、などが好適に挙げられる。
前記現像器内では、例えば、前記トナーと前記キャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦により該トナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。該マグネットローラは、前記電子写真感光体(感光体)近傍に配置されているため、該マグネットローラの表面に形成された前記磁気ブラシを構成する前記トナーの一部は、電気的な吸引力によって該電子写真感光体の表面に移動する。その結果、前記静電潜像が該トナーにより現像されて該電子写真感光体の表面に該トナーによる可視像が形成される。
前記現像器に収容させる現像剤は、前記トナーを含む現像剤であるが、該現像剤としては一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよい。
−転写工程及び転写手段−
前記転写工程は、前記可視像を記録媒体に転写する工程であるが、中間転写体を用い、該中間転写体上に可視像を一次転写した後、該可視像を前記記録媒体上に二次転写する態様が好ましく、前記トナーとして二色以上、好ましくはフルカラートナーを用い、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写工程とを含む態様がより好ましい。
前記転写は、例えば、前記可視像を転写帯電器を用いて前記電子写真感光体を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。前記転写手段としては、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。
なお、前記中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適に挙げられる。
前記転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、前記電子写真感光体上に形成された前記可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。前記転写手段は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。前記転写器としては、例えば、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、などが挙げられる。
なお、記録媒体としては、代表的には普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、OHP用のPETベース等も用いることができる。
−定着工程及び定着手段
前記定着工程は、記録媒体に転写された可視像を定着手段を用いて定着させる工程であり、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
前記定着手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着部材と該定着部材を加熱する熱源とを有するものが用いられる。
前記定着部材としては、例えば、無端状ベルトとローラとの組合せ、ローラとローラとの組合せ、などが挙げられるが、ウォームアップ時間を短縮することができ、省エネルギー化の実現の点で、また、定着可能幅の拡大の点で、熱容量が小さい無端状ベルトとローラとの組合せであるのが好ましい。
前記除電工程は、前記電子写真感光体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、除電手段により好適に行うことができる。
前記除電手段としては、特に制限はなく、前記電子写真感光体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
前記クリーニング工程は、前記電子写真感光体上に残留する前記トナーを除去する工程であり、クリーニング手段により好適に行うことができる。なお、クリーニング手段を用いることなく、摺擦部材で残留トナーの電荷を揃え、現像ローラで回収する方法を採用することもできる。
前記クリーニング手段としては、特に制限はなく、前記電子写真感光体上に残留する前記電子写真トナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が好適に挙げられる。
前記リサイクル工程は、前記クリーニング工程により除去した前記トナーを前記現像手段にリサイクルさせる工程であり、リサイクル手段により好適に行うことができる。前記リサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
前記制御工程は、前記各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
ここで、図2は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。感光体1を平均的に帯電させる手段として、帯電チャージャ3が用いられる。この帯電手段としては、コロトロンデバイス、スコロトロンデバイス、固体放電素子、針電極デバイス、ローラ帯電デバイス、導電性ブラシデバイス等が用いられ、公知の方式が使用可能である。
本発明の画像形成装置の構成は、接触帯電方式又は非接触近接配置帯電方式のような帯電手段からの近接放電により感光体組成物が分解するような帯電手段を用いた場合に有効である。前記接触帯電方式とは、感光体に帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電ブレード等が直接接触する帯電方式である。前記近接帯電方式とは、例えば帯電ローラが感光体表面と帯電手段との間に200μm以下の空隙を有するように非接触状態で近接配置したタイプのものである。この空隙は、大きすぎた場合には帯電が不安定になりやすく、また、小さすぎた場合には、感光体に残留したトナーが存在する場合に、帯電部材表面が汚染されてしまう可能性がある。したがって、空隙は10μm〜200μmが好ましく、10μm〜100μmがより好ましい。
次に、均一に帯電された感光体1上に静電潜像を形成するために画像露光部5が用いられる。この光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
次に、感光体1上に形成された静電潜像を可視化するために現像ユニット6が用いられる。現像方式としては、乾式トナーを用いた一成分現像法、二成分現像法、湿式トナーを用いた湿式現像法がある。感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行うと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られる。また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
次に、感光体1上で可視化されたトナー像を記録媒体9上に転写するために転写チャージャ10が用いられる。また、転写をより良好に行うために転写前チャージャ7を用いてもよい。これらの転写手段としては、転写チャージャ、バイアスローラを用いる静電転写方式、粘着転写法、圧力転写法等の機械転写方式、磁気転写方式が利用可能である。静電転写方式としては、前記帯電手段が利用可能である。
次に、記録媒体9を感光体1より分離する手段として分離チャージャ11、分離爪12が用いられる。その他分離手段としては、静電吸着誘導分離、側端ベルト分離、先端グリップ搬送、曲率分離等が用いられる。分離チャージャ11としては、前記帯電手段が利用可能である。
次に、転写後感光体上に残されたトナーをクリーニングするためにファーブラシ14、クリーニングブレード15が用いられる。また、クリーニングをより効率的に行うためにクリーニング前チャージャ13を用いてもよい。その他クリーニング手段としては、ウェブ方式、マグネットブラシ方式等があるが、それぞれ単独又は複数の方式を一緒に用いてもよい。
次に、必要に応じて感光体上の潜像を取り除く目的で除電手段が用いられる。除電手段としては除電ラン2、除電チャージャが用いられ、それぞれ前記露光光源、帯電手段が利用できる。
その他、感光体に近接していない原稿読み取り、給紙、定着、排紙等のプロセスは公知のものが使用できる。
(プロセスカートリッジ)
本発明のプロセスカートリッジは、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、及び除電手段から選択される少なくとも1つの手段と、電子写真感光体とを有し、画像形成装置本体に着脱可能なものである。
前記電子写真感光体が、本発明の前記電子写真感光体である。
前記プロセスカートリッジは、感光体101を内蔵し、他に帯電手段102、現像手段104、転写手段106、クリーニング手段107、除電手段(不図示)の少なくとも一つの手段を有し、画像形成装置本体に着脱可能とした装置(部品)である。
ここで、図3に例示されるプロセスカートリッジによる画像形成プロセスについて示すと、感光体101は、矢印方向に回転しながら、帯電手段102による帯電、露光手段による露光103により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成され、この静電潜像は、現像手段104でトナー現像され、該トナー現像は転写手段106により、記録媒体105に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の感光体101表面は、クリーニング手段107によりクリーニングされ、更に除電手段(不図示)により除電されて、再び以上の操作を繰り返すものである。
本発明の画像形成方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジは、本発明の前記電子写真感光体を用いているので、良好な画像を長期にわたり提供できる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
(合成例1)
<1官能の電荷輸送性構造を有する化合物の合成>
1官能の電荷輸送性構造を有する化合物は、例えば特許第3164426号公報記載の方法にて合成される。
(1)ヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物(下記構造式B)の合成
メトキシ基置換トリアリールアミン化合物(下記構造式A)113.85g(0.3mol)と、ヨウ化ナトリウム138g(0.92mol)にスルホラン240mlを加え、窒素気流中で60℃に加温した。この液中にトリメチルクロロシラン99g(0.91mol)を1時間で滴下し、約60℃の温度で4時間半撹拌し反応を終了させた。この反応液にトルエン約1.5Lを加え室温まで冷却し、水と炭酸ナトリウム水溶液で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン:酢酸エチル=20:1)にて精製した。得られた淡黄色オイルにシクロヘキサンを加え、結晶を析出させた。このようにして、下記構造式Bの白色結晶88.1g(収率=80.4%)を得た。融点は64.0〜66.0℃であった。
元素分析値(%)
(2)トリアリールアミノ基置換アクリレート化合物(例示化合物No.54)の合成
合成されたヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物(構造式B)82.9g(0.227mol)をテトラヒドロフラン400mlに溶解し、窒素気流中で水酸化ナトリウム水溶液(NaOH:12.4g,水:100ml)を滴下した。この溶液を5℃に冷却し、アクリル酸クロライド25.2g(0.272mol)を40分かけて滴下した。その後、5℃で3時間撹拌し反応を終了させた。この反応液を水に注ぎ、トルエンにて抽出した。この抽出液を炭酸水素ナトリウム水溶液と水で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン)にて精製した。得られた無色のオイルにn−ヘキサンを加え、結晶を析出させた。このようにして、例示化合物No.54の白色結晶80.73g(収率=84.8%)を得た。融点は117.5〜119.0℃であった。
元素分析値(%)
(実施例1)
<電子写真感光体の作製>
支持体としての直径40mmのアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層塗工液、及び電荷発生層塗工液を順次、塗布し、乾燥することにより、厚み3.5μmの下引き層、及び厚み0.2μmの電荷発生層を形成した。
〔下引き層塗工液〕
・アルキッド樹脂(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・6質量部
・メラミン樹脂(スーパーベッカミンG−821−60、大日本インキ化学工業株式会社製・・・4質量部
・酸化チタン・・・40質量部
・メチルエチルケトン・・・50質量部
〔電荷発生層塗工液〕
・下記構造式(C)で表されるチタニルフタロシアニン顔料・・・1.5質量部
・ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製)・・・1.0質量部
・メチルエチルケトン・・・80質量部
次に、電荷発生層上に電荷輸送層を形成した。電荷輸送層塗工液は下記組成で調製した。なお、電荷輸送層には、下記構造式(Ia)で表される電荷輸送物質と、下記構造式(IIa)で表される化合物を使用した。
電荷発生層を形成した支持体を電荷輸送層塗工液に浸漬塗工し、130℃で20分間乾燥し、厚み23μmの電荷輸送層を形成した。
〔電荷輸送層塗工液〕
・ビスフェノールZポリカーボネート(パンライトTS−2050、帝人化成株式会社製)・・・10質量部
・下記構造式(Ia)で表される電荷輸送物質・・・10質量部
・下記構造式(IIa)で表されるアミン化合物・・・1質量部
・テトラヒドロフラン・・・100質量部
・1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液(KF50−100CS、信越化学工業株式会社製)・・・0.2質量部
次に、電荷輸送層上に表面層を形成した。表面層塗工液は下記組成で調製した。表面層塗工液を電荷輸送層上にスプレー塗工し、紫外線照射装置(Fusion社製、UVランプシステム)を用い、支持体を30rpmで回転させながら紫外線照射を行い、硬化させた。紫外線照射のランプにはVバルブを使用し、紫外線ランプと感光体表面の距離を53mm、照射強度を500mW/cmとし、60秒間の紫外線照射を行い、塗布膜を硬化させた。紫外線照射後は、130℃で20分間の乾燥を加え、厚み5μmの表面層を設けた。以上により、実施例1の電子写真感光体を作製した。
〔表面層塗工液〕
・電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー(トリメチロールプロパントリアクリレート、KAYARAD TMPTA、日本化薬株式会社製、分子量:296、官能基数:3官能、分子量/官能基数=99)・・・10質量部
・1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(例示化合物No.54)・・・10質量部
・光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)・・・2質量部
・テトラヒドロフラン・・・100質量部
(実施例2)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層における前記構造式(IIa)で表されるアミン化合物の添加量を2質量部とした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
(実施例3)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層における前記構造式(IIa)で表されるアミン化合物の添加量を3質量部とした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
(実施例4)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層における前記構造式(IIa)で表されるアミン化合物の添加量を0.1質量部とした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
(実施例5)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層における前記構造式(IIa)で表されるアミン化合物を、下記構造式(IIb)で表されるアミン化合物に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
(実施例6)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層における前記構造式(IIa)で表されるアミン化合物を、下記構造式(IIc)で表されるアミン化合物に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
(実施例7)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層における前記構造式(IIa)で表されるアミン化合物を、下記構造式(IId)で表されるアミン化合物に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
(実施例8)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層における前記構造式(IIa)で表されるアミン化合物を、下記構造式(IIe)で表されるアミン化合物に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
(実施例9)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層における前記構造式(Ia)で表される電荷輸送物質を、下記構造式(Ib)で表される電荷輸送物質に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
(実施例10)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層における前記構造式(Ia)で表される電荷輸送物質を、下記構造式(Ic)で表される電荷輸送物質に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
(実施例11)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層における前記構造式(Ia)で表される電荷輸送物質を、下記構造式(Id)で表される電荷輸送物質に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
(実施例12)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層における前記構造式(Ia)で表される電荷輸送物質を、下記構造式(Ie)で表される電荷輸送物質に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
(実施例13)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層における前記構造式(Ia)で表される電荷輸送物質を、下記構造式(If)で表される電荷輸送物質に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
(実施例14)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、表面層における電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーを、下記の化合物に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
・ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート(KAYARAD DPCA−120、日本化薬株式会社製、分子量:1947、官能基数:6官能)
(実施例15)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、表面層における光重合開始剤を下記の熱重合開始剤に変え、塗工後は紫外線照射を行わずに130℃で30分間の乾燥を行って、表面層を設けた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
・熱重合開始剤(2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシ)プロパン、パーカドックス 12−EB20、化薬アクゾ株式会社製)・・・1質量部
(比較例1)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層における前記構造式(IIa)で表されるアミン化合物の添加量を4質量部とした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
(比較例2)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層における前記構造式(IIa)で表されるアミン化合物の添加量を0.05質量部とした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
(比較例3)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層における前記構造式(IIa)で表されるアミン化合物の添加量を0質量部とした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
(比較例4)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層における前記構造式(IIa)で表されるアミン化合物1質量部を、下記構造式で表される化合物1質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
(比較例5)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層における前記構造式(IIa)で表されるアミン化合物1質量部を、下記構造式で表される化合物1質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
(比較例6)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層における前記構造式(IIa)で表されるアミン化合物1質量部を、下記構造式で表される化合物1質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
(比較例7)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層における前記構造式(Ia)で表される電荷輸送物質を、下記構造式で表される電荷輸送物質に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
(比較例8)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層における前記構造式(Ia)で表される電荷輸送物質を、下記構造式で表される電荷輸送物質に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
(比較例9)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、表面層を設けず、電荷輸送層の厚みを28μmとした以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
(比較例10)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、表面層における1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を、下記構造式で表される2官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーに代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
(比較例11)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、表面層における1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を添加せず、下記構造式で表される電荷輸送物質を10質量部添加して、厚み5μmの表面層を設けた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
次に、作製した実施例1〜15及び比較例1〜11の各電子写真感光体について、以下のようにして、オゾン暴露試験及びNOx暴露試験を行った。結果を表1に示す。
<オゾン暴露試験>
各電子写真感光体をオゾン暴露試験装置(ダイレック社製)でオゾン濃度5ppm、暴露時間5日間暴露した。感光体にはカプトンテープ(住友3M株式会社製)を貼り、未暴露部を設けた。オゾン暴露後、すぐに株式会社リコー製imagioMPC4500に感光体を搭載して、温度23℃、湿度50%RHの常温環境下でハーフトーン画像(2by2)を出力し、暴露部と未暴露部の画像濃度差(ΔID=未暴露部ID−暴露部ID)をマクベス濃度計で測定した。また、出力したハーフトーン画像をマイクロスコープ(カールツァイス社製、StemiDV4)で観察し、ドット形状を下記基準で評価した。
〔ドット形状の評価基準〕
◎:ドットが明瞭に形成されている
○:ドットがやや拡散しているが、画質には影響なし
△:ドットがぼやけており、解像度が低下している
×:ドットが形成されておらず、解像していない
<NOx暴露試験>
オゾン暴露試験を行った各電子写真感光体をNOx暴露試験装置(ダイレック社製)に入れ、NO濃度40ppm、NO濃度10ppmで4日間暴露した。NOx暴露後はすぐにオゾン暴露試験後と同様の画像出力を行い、同様に画像濃度測定、及びドット形状評価を行った。
次に、実施例1〜15及び比較例1〜11のオゾン暴露試験及びNOx暴露試験を行った各電子写真感光体について、該感光体を株式会社リコー製imagioMPC4500改造機に搭載し、帯電電位を−700Vに設定し、A4サイズ用紙10,000枚の通紙を行った。以下のようにして、通紙前後での表面電位の測定、画像評価、及び感光体の摩耗量を測定した。結果を表2に示す。
<表面電位の測定>
通紙前後での暗部表面電位と明部表面電位の測定を行った。表面電位の測定は、プロセスカートリッジの現像部に表面電位計(TREK社製、Model344)を設置して測定を行った。
<画像評価>
通紙前後で画像出力を行い、画像評価を行い、下記基準で評価した。なお、初期から画像不良が著しい感光体は通紙試験を中止した。
〔画像評価〕
○:問題なし
×:問題あり
<感光体の摩耗量>
通紙後の感光体の摩耗量を測定した。摩耗量は、渦電流式厚み計(フィッシャースコープMMS、フィッシャー社製)を用い、軸方向に10mm間隔で30点を測定し、それらの平均値を厚みとし、前後の厚み差から摩耗量を求めた。
表1及び表2の結果から、実施例1〜15は、オゾン暴露試験及びNOx暴露試験後も濃度低下はなく、またドットが明確であり、解像度低下は見られなかった。更に10,000枚の通紙試験後も暗部電位の著しい低下や明部電位の著し上昇はなく、画像評価は良好であり、また、耐摩耗性にも優れていることが確認された。
これに対し、前記一般式(II)で表されるアミン化合物の添加量が多い比較例1は、通紙試験において明部電位の上昇が見られた。
また、添加量の少ないもしくは無添加の比較例2、3は、オゾン暴露試験、NOx暴露試験においてドット形状がぼやけており、解像度が低下していた。
また、本発明と異なるアミン化合物を添加した比較例4、5は、暴露試験後に解像度低下が見られた。
また、比較例6は、暴露試験では問題ないレベルであったが、通紙試験により明部電位の上昇や解像度低下が見られた。
また、本発明と異なる電荷輸送物質を添加した比較例7、8は、通紙試験において濃度低下が確認された。
また、表面層を設けなかった比較例9は、暴露試験では良好であったが、10,000枚の通紙後、摩耗量が多く、また、解像度低下が見られた。
また、本発明と異なる表面層を設けた比較例10、11は、通紙試験において明部電位の上昇、濃度低下が確認された。
したがって、本発明の支持体上に感光層及び表面層を積層してなる電子写真感光体において、前記表面層が、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を硬化させた硬化物を含有し、かつ前記感光層が一般式(I)で表される電荷輸送物質と、一般式(II)で表されるアミン化合物を含有し、前記電荷輸送物質と前記アミン化合物の質量比が電荷輸送物質1質量部に対し0.01質量部〜0.30質量部とすることにより、オゾンやNOxなどの酸化性ガスに強く、かつ電気特性が良好で、機械的耐久性も高く、良好な画像を長期間維持できる長寿命であり、かつ高性能な感光体を提供できることが分かった。また併せて、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジが高性能、高信頼性を有していることが判明した。
本発明の電子写真感光体は、電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンター及びレーザー製版等の電子写真応用分野にも広く用いることができるものである。
1 感光体
2 除電ランプ
3 帯電チャージャ
4 イレーサ
5 画像露光部
6 現像ユニット
7 転写前チャージャ
8 レジストローラ
9 転写紙
10 転写チャージャ
11 分離チャージャ
12 分離爪
13 クリーニング前チャージャ
14 ファーブラシ
15 クリーニングブレード
31 支持体
33 感光層
35 電荷発生層
37 電荷輸送層
101 感光ドラム
102 帯電装置
103 露光
104 現像装置
105 転写体
106 転写装置
107 クリーニングブレード
特開昭56−48637号公報 特開昭64−1728号公報 特開平4−281461号公報 特許第3262488号公報 特許第3194392号公報 特開2000−66425号公報 特開2004−302450号公報 特開2004−302451号公報 特開2004−302452号公報 特開平01−230055号公報 特開平03−172852号公報 特開2002−333731号公報 特開平04−56866号公報 特開2009−42564号公報

Claims (7)

  1. 支持体と、該支持体上に感光層及び表面層を有する電子写真感光体において、
    前記表面層が、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物とを硬化させた硬化物を含有し、
    前記感光層が、下記一般式(I)で表される電荷輸送物質と、下記一般式(II)で表されるアミン化合物を含有し、前記電荷輸送物質と前記アミン化合物の質量比(電荷輸送物質:アミン化合物)が1:0.01〜1:0.3であることを特徴とする電子写真感光体。
    ただし、前記一般式(I)中、R及びRは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、及び置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルコキシル基のいずれかを表す。
    ただし、前記一般式(II)中、A及びBは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、−CHX、及び−CHCHY(ただし、X及びYは、いずれも置換基を有していてもよい芳香族残基を表す)のいずれかを表す。
  2. 電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物における電荷輸送性構造が、トリアリールアミン構造である請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物におけるラジカル重合性化合物が、アクリロイルオキシ基及びメタクリルイルオキシ基から選択される官能基を有する請求項1から2のいずれかに記載の電子写真感光体。
  4. 3官能以上のラジカル重合性モノマーが、アクリロイルオキシ基及びメタクリルイルオキシ基から選ばれる官能基を3つ以上有する請求項1から3のいずれかに記載の電子写真感光体。
  5. 電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、
    前記電子写真感光体が、請求項1から4のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
  6. 電子写真感光体表面を帯電させる帯電工程と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程とを少なくとも含む画像形成方法であって、
    前記電子写真感光体が、請求項1から4のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成方法。
  7. 帯電手段、露光手段、現像手段、クリーニング手段、及び転写手段から選択される少なくとも1つの手段と、請求項1から4のいずれかに記載の電子写真感光体とを有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
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