JP2008213340A - 積層ストレッチフィルムおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
常温での剛性、生産安定性に優れ、かつ環境負荷の小さい積層ストレッチフィルムおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】
塩化ビニル系樹脂組成物からなる(A)層を最外層に配し、中間層としてポリ乳酸系樹脂組成物からなる(B)層を配してなる積層ストレッチフィルムであって、(A)層を構成する塩化ビニル系樹脂組成物が、塩化ビニル系樹脂100質量部に、可塑剤1〜70質量部を配合してなるとともに、(B)層を構成するポリ乳酸系樹脂組成物が、ポリ乳酸系樹脂100質量部に、可塑剤1〜50質量部を配合してなることを特徴とする積層ストレッチフィルム。
【選択図】 なし
Description
このような小巻ラップフィルムは、カッター刃を具備した紙箱の中に筒に巻かれた状態で収納されており、包装する際は、フィルムを紙箱から引き出して食品を覆うように被せフィルムを紙箱に具備されたカッター刃に押し当て、このカッター刃でフィルムにミシン目状の孔を開けてフィルムを引きちぎることにより引き裂きを幅方向に伝播させるようにしてフィルムをカットし、そしてフィルムの端部を容器に密着させて包装するのが一般的である。このカット工程においてフィルムが柔らかすぎると、フィルムが幅方向にうまく裂けずに伸びてしまったり、或いは斜め方向に引き裂けてしまう。このため、小巻ラップフィルムには、透明性のほか、容器への密着性、紙箱からスムースにフィルムを引き出すことができる引き出し性、引き出したフィルムをカットする際のカット適性などの諸条件が必要とされる。
しかしながら、PVCに可塑剤を含有させることによりPVCが軟質化し、常温での剛性が低下し易いという問題がある。そのために、特に家庭用ラップ等の小巻用途においては切断用刃でのカット性不良等を引き起こし易い。これをPVCに配合する可塑剤の配合量や種類を調整する方法では、剛性低下を改良できても逆に被包装物への密着性の低下が免れない。
PVC以外の樹脂ではPVDCなどが用いられるが、構造上PVCよりも脱塩素を起こしやすく環境負荷が大きいことや、生産性が劣る等の問題がある(特許文献1、2参照)。
しかし、PLAは、剛性が高いため、上記のような軟質フィルム、中でも食品包装用ラップフィルム、その中でも特に小巻ラップフィルムとして適した軟質フィルムとすることは簡単なことではなかった。そこで、PLAに特定の可塑剤を含有させることで軟質化させたフィルムが提案されている(特許文献3、4、5参照)。これらは小巻ラップフィルムに作り込むことができる上、可塑剤のブリードアウトを抑制することが可能である。しかし、製膜したフィルムを巻いた状態で保管しておくと、PLAの分子量が経時的に低下したり、フィルムがブロッキングを起こしてフィルム同士がくっついて引き出し性が低下するなどの課題を抱えていた。さらにPLAに可塑剤を配合してなる組成物は高温成形時における溶融弾性が低下するため、インフレーション法による押出し成形時のバブル不安定性(バブルが内圧に耐えられずに破れる)や、Tダイ法による押出し成形時のキャスト不安定性(ロールにシートが貼りつく)などの成形加工性に劣るという問題が生じ易い。
すなわち、本発明は、
塩化ビニル系樹脂組成物からなる(A)層を最外層に配し、中間層としてポリ乳酸系樹脂組成物からなる(B)層を配してなる積層ストレッチフィルムであって、(A)層を構成する塩化ビニル系樹脂組成物が、塩化ビニル系樹脂100質量部に、可塑剤1〜70質量部を配合してなるとともに、(B)層を構成するポリ乳酸系樹脂組成物が、ポリ乳酸系樹脂100質量部に、可塑剤1〜50質量部を配合してなることを特徴とする積層ストレッチフィルムにある。
なお、本発明における数値範囲の上限値および下限値は、本発明が特定する数値範囲内から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の均等範囲に包含する。
<(A)層>
[塩化ビニル系樹脂組成物]
本発明における塩化ビニル系樹脂には、塩化ビニル単独重合体のほか、塩化ビニルと共重合可能な単量体との共重合体(以下、塩化ビニル系共重合体とする)、この塩化ビニル系共重合体以外の重合体に塩化ビニルをグラフト共重合させたグラフト共重合体などが含まれる。
これらの共重合体は、共重合体中の塩化ビニル単位以外の構成単位含有量が多くなると機械的特性が低下するので、塩化ビニル単位を60質量%以上含有するものが好ましく、より好ましくは80質量%以上含有するものである。前記の塩化ビニルと共重合可能な単量体としては、分子中に反応性二重結合を有するものであればよく、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのα−オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸類;アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸フェニルなどのアクリル酸またはメタクリル酸のエステル類;スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのN−置換マレイミド類;などが挙げられ、これらは1種単独または2種以上の組み合わせで用いられる。
塩化ビニル系樹脂組成物に用いられる塩化ビニル系樹脂の好ましい平均重合度(分子量)の範囲は、目的とする成形品の必要特性によってさまざまであり、また後述する添加剤の種類および量により異なるが、平均重合度が600以上であればよく、フィルムのロール巻き取り/巻き出しなどの工程時や、包装用途などに用いられる際の包装工程時での引張強度や引張伸度などの機械強度が良好で、フィルムが破断するなどの不具合が生じることがなく好適であり、さらに700以上であればより好ましく、800以上であればさらに好ましい。また、平均重合度が1400以下であれば加工性が著しく低下するなどの不具合を生じることがなく好適であり、1300以下であればさらに好ましく、1200以下であればより好ましい。また、異なる平均重合度の塩化ビニル系樹脂を混合することも可能であり、この場合、それぞれの塩化ビニル系樹脂の混合比率に応じた平均重合度の平均値を、その混合物の平均重合度として評価する。
(A)層を構成する塩化ビニル樹脂組成物には、ストレッチ特性を付与する目的と、成形加工性を改良する目的から、可塑剤を配合することを要する。
可塑剤としては、種々のアルキル鎖長や分岐構造を持ったアルキル鎖を有するフタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、リン酸エステル、アジピン酸系ポリエステル等のエステル類化合物が例示できる。可塑剤の耐溶剤溶出性や可塑化効率、成形性改良効果は分子量や炭素数によってそれぞれ異なるため、最適な可塑剤を選択する必要がある。
炭素数10以下のアルキル基を有する脂肪族アルコール2種以上とアジピン酸との反応物からなる可塑剤が好ましく、このようなものとしては、例えばC8.10アジペート(炭素数8、10のアルキル基を有するアルコールの混合エステル)、C7.9アジペート(炭素数7、9の同上のもの)、C6.8.10アジペート(炭素数6、8、10の同上のもの)などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、C6.8.10アジペートおよびC7.9アジペートが、それぞれストレッチフィルムの押出成形性およびストレッチ性を付与しやすく好適である。
(A)層において、可塑剤の配合量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して1〜70質量部であることを要する。この可塑剤の配合量は、好ましくは10質量部以上であり、より好ましくは20質量部以上であり、さらに好ましくは30質量部以上である。また、この可塑剤の配合量は、好ましくは60質量部以下であり、より好ましくは50質量部以下である。可塑剤の配合量がこの範囲であれば、ストレッチ特性の付与や成形加工性の改良が達成され、配合効果と経済性のバランスが良好となる。
上述の可塑剤の他に、製造時の熱安定性を改良する目的やストレッチフィルムの滑り性や防曇性を改良する目的で、種々の添加物(熱安定剤/滑剤/防曇剤)を添加することが好ましい。下記に好適に用いられる添加剤の例を示す。
エポキシ化植物油は、樹脂組成物の押出成形性、特に押出成形時における熱安定性を向上させる効果を有している。このエポキシ化植物油としては、例えばエポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
これらの中では、上記した効果の点からエポキシ化大豆油が好適に使用される。
エポキシ化植物油の配合量は、前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、通常5質量部以上であり、好ましくは7質量部以上であり、より好ましくは10質量部以上である。また、この配合量は、前記ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、通常25質量部以下、好ましくは22質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。エポキシ化植物油の配合量が前記の範囲内であれば、添加効果が発揮されずフィルムの着色が抑制されない、配合量が多すぎて溶出量が多くなりすぎるなどの不具合を生じ難く、好適である。
滑剤のエステルの配合量は、前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.05質量部以上が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上であり、さらに好ましくは0.3質量部以上である。また、この配合量は、3質量部以下が好ましく、より好ましくは2質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下である。滑剤の配合量が前記の範囲内であれば、フィルム表面にべたつきが発生する、滑り性が過剰になりハンドリングしづらくなる、長期保管時にせり出し現象が起こるなどの不具合が生じ難く、好適である。
上記の中では、特にグリセリンモノラウレート、グリセリンモノオレート、グリセリンモノリノレート、ポリグリセリンラウレート、ポリグリセリンオレート、ポリグリセリンリノレート、ソルビタンラウレート、ソルビタンオレート、ソルビタンリノレートおよびポリオキシエチレンラウリルエーテルが好ましい。
これらの防曇剤の配合量は、前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であり、さらに好ましくは0.5質量部以上である。また、この配合量は、5質量部以下が好ましく、より好ましくは3質量部以下であり、さらに好ましくは1質量部以下である。防曇剤の配合量が前記の範囲内であれば、フィルム表面にべたつきが発生する、長期保管時にせり出し現象が起こるなどの不具合が生じ難く、好適である。
なお、前記の安定剤に対して、酸化防止剤を兼ねたものとして、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ジプロピレングリコール、合成イソパラフィン石油炭化水素、トリデシルアルコール、デヒドロ酢酸などを併用してもよい。これらの配合量は、それぞれ前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上であり、さらに好ましくは0.3質量部以上である。また、これらの配合量は、それぞれ前記ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、5質量部以下が好ましく、より好ましくは3質量部以下であり、さらに好ましくは1質量部以下である。これらの配合量が前記の範囲内であれば、安定化効果が不十分でヤケを生じる、金属塩由来の着色を生じるなどの不具合を生じ難く、好適である。
(A)層の塩化ビニル系樹脂組成物の溶融粘度は、(B)層の溶融粘度よりも小さいこと、すなわち(A)層の溶融粘度の100%未満であることが好ましい。(A)層の溶融粘度は(B)層の溶融粘度の80%以下が好ましく、60%以下がより好ましい。(A)層の溶融粘度が(B)層の溶融粘度の100%未満であれば、最外層の樹脂組成物が(B)層の樹脂組成物に比べ流動性に劣り共押出法における成形加工性が悪化してヤケ等の不良現象を引き起こす等が生じづらく、安定した製造を行うことができ好適である。また、(A)層の溶融粘度は、(B)層の溶融粘度の5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましい。(A)層の溶融粘度が(B)層の溶融粘度の5%以上であれば、各層間の溶融粘度差が大きすぎて安定に加工できない等の不具合を生じづらく好適である。
溶融粘度を前記範囲に調整するための方法としては、可塑剤、滑剤、加工助剤などの種々の添加剤により調整する方法、重合度を調整する方法などがあり、用途によって適宜選択すればよいが、添加剤のブルームが問題になるような用途(食品包装フィルム等)では、添加剤を多量に加えることは望ましくないため、重合度により調整することが望ましい。
[ポリ乳酸系樹脂組成物]
ポリ乳酸系樹脂組成物としては、乳酸の単独重合体(具体的には構造単位がL−乳酸若しくはD−乳酸の単独重合体(すなわち、ポリ(L−乳酸)又はポリ(D−乳酸)))、構造単位がL−乳酸及びD−乳酸の両方を有する共重合体(すなわちポリ(DL−乳酸))や、これらの混合体(以下、これらをまとめて「乳酸系樹脂」という。)を主成分とする樹脂組成物が挙げられる。さらに、ポリ乳酸系樹脂組成物には、L−乳酸やD−乳酸と、乳酸以外のα−ヒドロキシカルボン酸及び/又はジオール成分とジカルボン酸成分との共重合体を主成分とする乳酸系共重合体(以下「乳酸系共重合体」という。)も含まれる。共重合成分における共重合比は特に指定されないが、乳酸系樹脂の機械的特性をそこなわない程度の割合で共重合することが望ましい。上記乳酸系樹脂及び乳酸系共重合体は、単独で用いても混合して用いても構わない。
また、開環重合法(ラクチド法)を用いた場合、乳酸の環状2量体であるラクチドを、必要に応じて重合調節剤等を用いながら、所定の触媒の存在下で開環重合をして任意の組成をもつ乳酸系樹脂を得ることができる。
上記ラクチドとしては、L−乳酸の2量体であるL−ラクチド、D−乳酸の2量体であるD−ラクチド、及びD−乳酸とL−乳酸との2量体であるDL−ラクチドが挙げられる。これらを必要に応じて、混合し、重合することにより、任意の組成や結晶性を有するポリ乳酸を得ることができる。
また、上記乳酸系共重合体の単量体として用いられるジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロへキサンジメタノール等が挙げられる。また、ジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、スべリン酸、セバシン酸及びドデカン二酸等が挙げられる。
可塑剤等のブリードアウトを抑えるという観点からは結晶性が低いほうが好ましく、D−乳酸もしくはL−乳酸のうちの構成割合が少ない成分の構成割合を多くする方向に調整するほうが好ましく、また、耐熱性を発現させるという観点からは結晶性が高いほうが好ましく、D−乳酸もしくはL−乳酸のうちの構成割合が少ない成分の構成割合を少なくする方向に調整するほうが好ましい。
なお、L体とD体との共重合比が異なる乳酸系重合体をブレンドしてもよい。その場合、複数の乳酸系重合体のL体とD体との共重合比の平均値が上記範囲内に入るようにするのが好ましい。
また、上記ポリ乳酸系樹脂組成物は、耐熱性を向上させる等の目的で、少量の他の共重合成分を含有することもできる。そのような共重合成分としては、例えば、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール等が挙げられる。さらにA成分は、分子量を増加させる目的で、少量の鎖延長剤、例えばジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、酸無水物等を含有することもできる。
上記脂肪族ポリエステル樹脂としては、例えば、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを縮合して得られる脂肪族ポリエステル、環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステル、合成系脂肪族ポリエステル等のPLA系樹脂を除く脂肪族ポリエステル樹脂が挙げられる。
上記脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを縮合して得られる脂肪族ポリエステルの具体例を挙げると、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族ジオール又はこれらの無水物や誘導体と、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、又はこれらの無水物や誘導体の中からそれぞれ1種類以上選んで縮合重合することにより得られたものが挙げられる。この際、必要に応じてイソシアネート化合物等でジャンプアップすることにより、所望のポリマーを得ることができる。
商業的に入手可能な上記脂肪族ポリエステルの具体例としては、例えば「ビオノーレ」(昭和高分子社製)などを例示できる。
商業的に入手可能な上記脂肪族−芳香族ポリエステル樹脂又は芳香族ポリエステル樹脂の例としては、商品名「イースターバイオ」(イーストマンケミカルズ社製)や、商品名「エコフレックス」(BASF社製)等が挙げられる。
商業的に入手可能な例としては、商品名「セルグリーン」(ダイセル化学社製)や、商品名「トーンポリマー」(ユニオンカーバイト日本社製)が挙げられる。
(B)層を構成するポリ乳酸系樹脂組成物には可塑剤を配合することができ、この可塑剤としては、(A)層と同様の可塑剤を使用することができる。(B)層に配合する可塑剤は、成形加工性を改良する観点から、平均分子量が1000未満であることが望ましい。
(B)層において、可塑剤の配合量は、ポリ乳酸系樹脂100質量部に対して1〜50質量部であることが好ましい。この可塑剤の配合量は、好ましくは5質量部以上であり、より好ましくは15質量部以上であり、さらに好ましくは30質量部以上である。また、この可塑剤の配合量は、好ましくは47質量部以下であり、より好ましくは45質量部以下である。可塑剤の配合量がこの範囲内であれば、ストレッチ特性の付与や成形加工性の改良が達成され、配合効果と経済性のバランスが良好となる。
(B)層を構成するポリ乳酸系樹脂組成物にも、(A)層と同様の添加剤を加えることができる。また、最外層であるため、表面機能を向上させるような添加剤がより効果的に機能する。ここで表面機能とは、防曇性、防滴性、耐侯性、意匠性、印刷適性、滑り性等の成型品として用いられる場合の機能の他に、押出加工時における流動性、熱安定性、金属剥離性等の機能も含む。表面機能に関連する添加剤の例は、滑剤、加工助剤、無機粒子、防曇剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤などが例示される。
これら添加剤の含有量についても(A)層の場合と同様にそれぞれ好適な配合比率で配合することが好ましい。
(B)層のポリ乳酸系樹脂組成物の溶融粘度は、高化式フローテスターを用いた測定方法による剪断速度100(1/sec)における溶融粘度が100(Pa・s)以上であることが好ましく、500(Pa・s)以上であることがより好ましい。また、この溶融粘度は、5000(Pa・s)以下であることが好ましく、2500(Pa・s)以下であることがより好ましい。溶融粘度が前記の範囲内であれば押出製造時に加工し難くなる、機械的強度に劣る等の不具合を生じることがなく好適である。
溶融粘度を前記範囲に調整するための方法としては、可塑剤、滑剤、加工助剤などの種々の添加剤により調整する方法、重合度を調整する方法などがあり、用途によって適宜選択すればよいが、添加剤のブルームが問題になるような用途(食品包装フィルム等)では、添加剤を多量に加えることは望ましくないため、重合度(分子量)により調整することが望ましい。
本発明の積層ストレッチフィルムにおける層構成については、上述した内容の(A)層と(B)層であって、中間層と両側をはさむ最外層があればその間に何層あっても良い。
例示すると、(A)/(B)/(A)でも、(A)/(機能層)/(B)/(A)でも、(A)/(機能層)/(B)/(機能層)/(A)でもかまわない。
また、前記のように両最外層として(A)層を形成するように共押出した後、さらに後工程として公知の積層方法により遮光層、帯電防止層などの機能層等を追加しても良い。例示すると、最終的な層構成が(機能層)/(A)/(B)/(A)でも、(機能層)/(A)/(B)/(A)/(機能層)でもかまわない。
また、本発明の積層ストレッチフィルムの厚みは、用途により異なるが、通常30μm以下である。この厚さが30μm以下であれば、ストレッチフィルムとしての用途に好適なものとなる。また、この積層ストレッチフィルムの厚みの下限は特に規定されないが、機械強度やハンドリングの許す範囲であれば薄いほうが樹脂使用量を削減できるため好ましく、通常5μm程度である。
本発明の積層ストレッチフィルムの製造方法は、前記(A)層を構成する塩化ビニル系樹脂組成物、および前記(B)層を構成するポリ乳酸系樹脂組成物を、共押出法により積層形成することを特徴とする。
すなわち、高い溶融弾性率を持ったPVC系樹脂組成物を最外層に配置して共押出しすることによって、より溶融弾性率が低いPLA系樹脂組成物を単体のみで押出しする際よりも製膜不安定性を抑制することが可能であり、単層では短時間で破膜、厚み不良、ロールへの貼り付き等を生じて加工困難であるような樹脂組成物を良好に加工することが可能になる。
具体的な製造方法として、各層の組成物の混合は、V型ブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサーなどの混合機により混合する方法、または押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、ニーダなどの混練機により混練する方法、あるいは混合機と混練機を組み合わせる方法や、あらかじめ混合せずに直接原料を押出機に投入して混練と押出を同時におこなう方法が挙げられる。押出方法は、スクリュ押出機、プランジャ押出機等の公知な押出方法を挙げられる。
共押出法での積層方法は、フィードブロック方式、マルチマニフォールド方式、スタックプレート方式等の公知な方法を取ることができる。この中で、特に層間の厚み精度が要求される用途においてはマルチマニフォールド方式が好ましい。
溶融押出された樹脂組成物は、用途に応じてフラットダイやサーキュラーダイ、異型ダイ等の押出ダイにより賦形され、冷却ロール、水、空気等で冷却固化される。さらに、用途に応じて後工程として引取、サイジング、プレス、延伸等の工程をおこなうことも可能である。
また本発明の効果を阻害しない範囲であれば、共押出法により得られた積層体に、ドライラミネーション、溶剤ラミネーション、プレス、押出ラミネーション等の公知の手段により、さらに他の層を追加することも出来る。
また、生産性及び/または経済性を重視する場合には、環状ダイから材料樹脂を溶融押出してインフレーション成形するのが好ましい。また、その際の冷却方法としては、チューブの外面から冷却する方法、チューブの外、内面の両面から冷却する方法のどちらでも良い。
このようにして得られたフィルムは、熱収縮率や自然収縮率の軽減、幅収縮の発生の抑制等の目的に応じて、必要に応じて加熱ロール間での縦延伸、各種の熱固定、エージング等の熱処理を行うようにしてもよい。
また、防曇性、帯電防止性、粘着性等を付与、促進させる目的で、コロナ処理や熟成等の処理、更には、印刷、コーティング等の表面処理や表面加工を行ってもよい。
[動的粘弾性]
本積層ストレッチフィルムは、動的粘弾性測定により、周波数10Hz、温度20℃で測定した貯蔵弾性率(E’)が0.1GPa以上2GPa以下であり、損失正接(tanδ)が0.2以上の範囲になるように調製することでき、このような条件を満足するように調製されてなるフィルムであることを要する。
また、tanδ(損失正接)の20℃における値が0.2以上であれば、フィルムの変形に対する復元挙動が瞬間的に起こることがないため、フィルムを容器に包装する際、僅かな間にフィルムが復元することがなく容器への密着性が良好となるため好ましい。また、tanδ(損失正接)の値が1.0以下であれば、塑性的な変形を示すことがないため、通常の使用方法では問題となることがないため好ましい。
なお、tanδ(損失正接)とは、貯蔵弾性率(E’)に対する損失弾性率(E”)の比、すなわち損失正接(tanδ=E”/E’)であり、この値が高い温度領域では、材料の損失弾性率(E”)、すなわち粘弾性特性のうち粘性の寄与率が大きいことを意味している。このtanδ(損失正接)の値及び高い値を示す温度領域を評価することにより、包装時の容器への密着性や包装工程におけるフィルムの応力緩和挙動などを判断する大きな目安となる。
成形樹脂の溶融粘度が低く、また高温での弾性率が不足するような場合には、Tダイ成形法においてはキャストロールへの融着・ダイ出口からの著しいネッキングなどの不安定現象が、またインフレ成形法においてはバブルの不安定化などの製膜不良現象が発生する。
これらを改良するためには架橋剤添加、分子量や可塑剤量の調整により溶融粘度を向上させる方法のほか、成形性のいい組成物と積層する方法がある。
製造時、または使用時の層間剥離による不具合を抑制するため、各層間においては適度の接着性が必要となる。
層間接着性を向上するためには積層時の合流時間を長くする、つまりフィードブロック式の合流方法を選択すること、各層間において親和性のいい組成を配置すること、各層の厚みを薄くすること、接着層を導入することなどの方法がとられる。
本発明のフィルムは、製造したフィルムをロール上に巻き取り、必要に応じて巻き換えや裁断される。また、ロール状態で長期間保管されることがある。この際にフィルム同士の融着(ブロッキング現象)がおこるとロールからフィルムを引き出すことができなくなるなどの不具合がある。これらを改良するためには、常温での高い弾性率を有する層を表面に配置することが有効である。
本発明の積層ストレッチフィルムは、塩化ビニル系樹脂組成物が有する良好な成形加工性と、常温での剛性が高いポリ乳酸系樹脂組成物の有する良好な機械特性とを互いに損なうことなく、優れた成形加工性と機械強度の両特性を有しており、各種用途全般に好適であるが、特に透明フィルム、シート類(食品包装用フィルム、容器包装用フィルム等)等の用途に好適に用いることができる。
なお、各例で使用した原料および添加剤は、下記のとおりである。
[塩化ビニル系樹脂]
・PVC1:平均重合度800(ヴィテック社製「PVC800」)
・PVC2:平均重合度1030(ヴィテック社製「PVC1100」)
[ポリ乳酸系樹脂]
・PLA1:L/D比率=99.5/0.5 (ネイチャーワークス社製「NW4032」)
・PLA2:L/D比率=85/15 (ネイチャーワークス社製「NW4060」)
[ポリ酢酸ビニル系樹脂]
・EVA:酢酸ビニル含量=15wt% (日本ポリプロ社製「ノバテックEVALV430」)
[可塑剤]
・可塑剤1:混合アジピン酸系エステル可塑剤;平均分子量350(ジェイプラス社製「C−388」)
・可塑剤2:ジイソノニルアジピン酸可塑剤;平均分子量400(田岡化学社製「DINA」)
・可塑剤3:ポリエステル系可塑剤;平均分子量2300(大日本インキ社製「W−360EL」)
・可塑剤4:グリセリン系可塑剤;「PL019」
[添加剤]
・エポキシ化大豆油(旭電化工業社製「O−130P」)
・Ca/Zn系安定剤(旭電化工業社製「アデカスタブ593」)
・防曇剤(丸菱油化製「PA6950」)
(実施例1乃至4、比較例3乃至4)
PVC系樹脂組成物(実施例1,2の(A)層、比較例1の(A)層、および比較例3,4の(B)層)については、表1に記載の比率で計量された原料をヘンシェルミキサーに投入し、130℃にて5分間攪拌を行うことで、均一な粉体の樹脂組成物を調製した。また、PLA系樹脂組成物(実施例1,2の(B)層、比較例3の(A)層)については乳酸系重合体を十分に乾燥して水分を除去した後、三菱重工製40mmφ 小型同方向二軸押出機を用いて設定温度180℃で溶融混練しながら、所定の割合の可塑剤をベント口より注入し、180℃で溶融混練し、ストランド形状に押出してペレットを作成した。
得られた(A)層、(B)層用の樹脂組成物をそれぞれφ40mm単軸押出機(L/D=20)、φ32mm単軸押出機(L/D=22)に投入し、140〜220℃の設定温度にて溶融混錬したのち、フィードブロックにて合流させ、幅300mm、リップギャップ0.7mmのフィッシュテール口金から共押出したのち、30〜40℃に温調されたキャストロールにて巻き取り、両端部をカットして厚さ10μm、幅200mmの各積層フィルムを作製した。
前述の通り製造されたPVC系樹脂組成物乃至PLA系樹脂組成物をφ40mm単軸押出機(L/D=20)に投入し、フィードブロックを用いずに幅300mm、リップギャップ0.7mmのフィッシュテール口金から押出した以外は前記と同様に、厚さ10μm、幅200mmの単層フィルムを作製した。
各例での製造方法における成形加工性、ならびに各例で得られた積層乃至単層フィルムの物性を、以下に示す方法に従って求めた。その結果を表2に示す。なお、本明細書中に表示されるフィルムについての種々の測定値および評価は次のようにして行った。ここで、フィルムの押出機からの流れ方向を縦方向(以下「MD」と記載する場合がある)、その直角方向を横方向(以下「TD」と略する場合がある)と称する。
JIS K−7198 A法に記載の動的粘弾性測定法により、アイティー計測制御(株)製の動的粘弾性測定装置「DVA−200」を用い、フィルムの横方向(TD)について、振動周波数10Hz、歪み0.1%にて、昇温速度1℃/分で−50℃から150℃まで測定し、得られたデータから温度20℃での貯蔵弾性率(E’)、並びに、損失正接(tanδ)のピーク温度及びそのピーク値を求めた。
Tダイ成形法によりフィルムを成形した際、キャスティングの安定性およびロールへの貼り付き度合いを観察し、以下の基準で評価した。
◎:極めて安定している
○:安定している
△:やや不安定であるが、実生産上可能であるレベル
×:不安定であり、実生産上問題となるレベル
得られたフィルムの巻き物を、温度43℃、相対湿度40%の条件の恒温室内に5日間保管し、その後の表面状態と巻物からの剥離の難易を以下の基準で評価した。
◎:フィルム同士のブロッキングが全くない
○:フィルム同士のブロッキングが少しあるが実用上問題とならないレベル
△:フィルム同士のブロッキングにより剥離がやや重く実用上問題となるレベル
×:フィルム同士のブロッキングにより剥離が出来ない
製膜したフィルムを23℃、50%RH環境下で、T型剥離法にてTDに試験速度200mm/分で剥離させたときの強度を以下の基準で評価した。
◎:150g/15mm幅以上
○:75g/15mm幅以上150g/15mm幅未満
△:50g/15mm幅以上75g/15mm幅未満
×:50g/15mm幅未満
製膜したフィルムを用いて直径10cm、深さ5cmの茶碗状の陶磁器製の容器を包装したときの容器への密着性を、以下の基準で評価した。
◎:容器形状に追随して密着包装できる
○:少し容器形状から広がるが実用上問題ないレベル
×:フィルムが容器に沿わず広がってしまい実用上問題となる
Claims (4)
- 塩化ビニル系樹脂組成物からなる(A)層を最外層に配し、中間層としてポリ乳酸系樹脂組成物からなる(B)層を配してなる積層ストレッチフィルムであって、(A)層を構成する塩化ビニル系樹脂組成物が、塩化ビニル系樹脂100質量部に、可塑剤1〜70質量部を配合してなるとともに、(B)層を構成するポリ乳酸系樹脂組成物が、ポリ乳酸系樹脂100質量部に、可塑剤1〜50質量部を配合してなることを特徴とする積層ストレッチフィルム。
- JIS K 7198 A法に記載の動的粘弾性測定法により、振動周波数10Hz、歪0.1%において測定した20℃における貯蔵弾性率(E’)の値が0.1MPa以上2GPa以下であり、20℃における損失正接(tanδ)の値が0.2以上1.0以下であることを特徴とする請求項1記載の積層ストレッチフィルム。
- 全層に対する(B)層の厚み比が5〜80%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層ストレッチフィルム。
- (A)層を構成する塩化ビニル系樹脂組成物、および(B)層を構成するポリ乳酸系樹脂組成物を使用し、共押出法により積層することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の積層ストレッチフィルムの製造方法。
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