JP2008209267A - 温度センサ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】温度によって電気的特性が変化する感温素子2と、感温素子2の一対の電極21にそれぞれ接続された一対の信号線31を先端側に露出させた状態で内蔵するシースピン3と、感温素子2を覆うように先端部に配設されたカバー4と、感温素子2とカバー4との間に充填され感温素子2を保持固定するための充填材5とを有し、充填材5は、硬化温度が使用環境温度以上である温度センサ1。
【選択図】図1
Description
これによって、上記感温素子をカバー内において固定することができるため、内燃機関の振動が温度センサに伝わっても、感温素子がカバーに対して振動することを防ぐことができる。そして、感温素子がカバーに衝突して破損したり、感温素子の電極が断線したりすることを防ぐことができる。
この隙間が生じると、充填材による感温素子の保持固定機能が発揮され難くなり、感温素子の振動を防ぐことが困難となる。その結果、振動によって充填材が崩壊して感温素子に損傷を与えるおそれがあると共に、感温素子の電極の断線を招くおそれがある。
該感温素子の一対の電極にそれぞれ接続された一対の信号線を先端側に露出させた状態で内蔵するシースピンと、
上記感温素子を覆うように先端部に配設されたカバーと、
上記感温素子と上記カバーとの間に充填され上記感温素子を保持固定するための充填材とを有し、
該充填材は、硬化温度が使用環境温度以上であることを特徴とする温度センサにある(請求項1)。
上記温度センサにおいては、上記充填材の硬化温度が、温度センサの使用環境温度以上である。そのため、温度センサを使用している際に、充填材とカバーとの間に隙間が生じることを防ぐことができる。
これにより、感温素子を保持する充填材がカバーに密着した状態にあるため、内燃機関等の振動が温度センサに伝わっても、感温素子がカバーに対して振動することを防ぐことができる。その結果、感温素子に損傷を与えることを防ぐことができると共に、感温素子の電極が断線することを防ぐことができる。
上記充填材を上記感温素子と上記カバーとの間に充填するに当っては、上記充填材の原料を上記カバーの内側に注入すると共に上記感温素子を埋設し、上記温度センサの使用環境温度以上の温度で熱処理を施すことにより、上記充填材を硬化させることを特徴とする温度センサの製造方法にある(請求項5)。
上記温度センサの製造方法においては、上記充填材を硬化させる際の硬化温度を、温度センサの使用環境温度以上としている。それ故、得られる温度センサにおいては、使用環境下において充填材とカバーとの間に隙間が生じることを防ぐことができる。その結果、感温素子がカバーに対して振動することを防ぎ、感温素子に損傷を与えることを防ぐと共に、感温素子の電極の断線を防ぐことができる。
そして、本明細書においては、上記温度センサを排気管等に挿入する側、即ち、感温素子を配設した側を先端側、その反対側を後端側として、説明する。
また、上記カバーは、例えばステンレス鋼等の金属材料からなり、上記充填材よりも熱膨張率が高い。
この場合には、電極の優れた耐食性を確保することができる。
上記白金系材料としては、白金(Pt)の他、Pt−Rh、Pt−Ir、Pt−Ni、Pt−W等の白金合金がある。
この場合には、上記温度センサの使用環境温度が600℃以上であるときに、充填材とカバーとの間に隙間が形成されることを防ぐことができる。使用環境温度が600℃以上となると、白金系材料からなる電極の強度が低下するため、特に600℃以上の環境下において感温素子の振動を防ぐ必要性がある。そこで、充填材の硬化温度を600℃以上とすることにより、温度センサの使用環境温度が600℃以上の場合に、充填材とカバーとの間に隙間が生じないようにすることができる。
その結果、効果的に感温素子の損傷や電極の断線を防ぐことができる。
この場合には、感温素子と充填材との熱膨張率の差を小さくすることができると共に、充填材の熱伝導率を高くすることができる。これにより、使用時において充填材と感温素子との間に応力が働くことを抑制すると共に、カバーの外側の熱を感温素子に即座に伝えることができる。その結果、感温素子の耐久性の向上と、温度センサの応答性の向上とを図ることができる。
上記感温素子の電極の耐食性を確保することができると共に、電極の断線を効果的に防ぐことができる。
この場合には、上記充填材を硬化させる際の熱処理時において充填材が収縮することを防ぐと共に、充填材の強度を確保することができる。これにより、強度の高い充填材をカバー内に隙間なく充填することができる。
上記平均粒径が1μm未満の場合には、上記充填材が熱処理時に収縮して、充填材とカバーとの間に隙間が生じるおそれがある。一方、上記平均粒径が4μmを超える場合には、上記充填材の強度を充分に得ることが困難となるおそれがある。
また、上記平均粒径は、例えば粒度分布計によって測定したり、電子顕微鏡等によって観測して測定したりすることができる。また、上記平均粒径は、例えば、粒度分布計によって測定する場合には、上記原料となる粒子の直径を同体積の球の直径に換算した上で求められる。また、上記原料の主成分を篩いにかけることによって粒径を調整することもできる。
この場合には、充填材をカバー内において隙間を生じることなく容易に充填することができる。
上記水分量の割合が15重量%未満の場合には、上記原料の粘度が高くなり、カバー内への原料の充填が困難となるおそれがある。一方、上記水分量の割合が25重量%を超える場合には、充填材が硬化時に収縮することにより充填材とカバーとの間に隙間が生じるおそれがある。
本発明の実施例にかかる温度センサ及びその製造方法につき、図1〜図4を用いて説明する。
本例の温度センサ1は、図1、図2に示すごとく、温度によって電気的特性が変化する感温素子2と、該感温素子2の一対の電極21にそれぞれ接続された一対の信号線31を先端側に露出させた状態で内蔵するシースピン3と、感温素子2を覆うように先端部に配設されたカバー4とを有する。
感温素子2とカバー4との間には、感温素子2を保持固定するための充填材5が充填されている。充填材5は、硬化温度が使用環境温度以上である。
また、感温素子2はサーミスタ素子からなり、充填材5はアルミナ(Al2O3)を主成分としてなる。また、感温素子2の一対の電極21は、白金(Pt)からなる。また、カバー4はステンレス鋼からなる。
図2に示すごとく、カバー4は、シースピン3に嵌合する大径部43と、感温素子2の外周に配される小径部41と、両者の間に形成される中径部42とを有する3段形状となっている。そして、小径部41の先端部において略球形状に閉塞されている。充填材5は、中径部42と大径部43との境界部付近まで充填されている。
また、充填材5の原料の主成分であるアルミナは、平均粒径が1〜4μmである。
上記温度センサ1においては、充填材5の硬化温度が、温度センサ1の使用環境温度以上である。そのため、温度センサ1を使用している際に、充填材2とカバー4との間に隙間が生じることを防ぐことができる。
これにより、感温素子2を保持する充填材5がカバー4に密着した状態にあるため、内燃機関等の振動が温度センサ1に伝わっても、感温素子2がカバー4に対して振動することを防ぐことができる。その結果、感温素子2に損傷を与えることを防ぐことができると共に、感温素子2の電極21が断線することを防ぐことができる。
図4に示すごとく、カバー4内に充填材5を充填して900℃にて硬化させた時点においては、充填材5の外径とカバー4の内径とは一致している。
このように、温度センサ1の使用時においても、カバー4と充填材5との間には、隙間が生じないようになっている。
また、充填材5の硬化温度が900℃であるため、温度センサ1の使用環境温度が600℃以上である場合にも、充填材5とカバー4との間に隙間が形成されることを防ぐことができる。使用環境温度が600℃以上となると、後述する実施例4(図13)に示すごとく、白金からなる電極21の強度が低下するため、特に600℃以上の環境下において感温素子2の振動を防ぐ必要性がある。そこで、充填材5の硬化温度が900℃であれば、温度センサ1の使用環境温度が600℃以上の場合でも、充填材5とカバー4との間に隙間が生じないようにすることができる。
その結果、効果的に感温素子2の損傷や電極の断線を防ぐことができる。
また、充填材5の原料はスラリー状の原料であって、その水分量の割合は15〜25重量%である。そのため、充填材5をカバー4内において隙間を生じることなく容易に充填することができる。
本例は、図5、図6に示すごとく、硬化温度が150℃のセメントを充填材95として用いた場合の例である。
その他の構成については、実施例1に示した温度センサ1と同様である。
本例の充填材95をカバー4内に充填するに当っては、充填材95の原料をカバー4内に注入すると共に感温素子2を埋設した後、150℃の温度にて充填材95を硬化させる。その後、室温にまで冷却する。また使用時には、充填材95の温度が例えば600〜700℃という高温となる。
図5は、上記実施例1の図4と同様に、充填材95の外径(実線L3)及びカバー4の内径(破線L4)の温度による寸法変化を表したものである。ただし、充填材95とカバー4とが互いに干渉しないとしたときの寸法変化である。
図5に示すごとく、カバー4内に充填材95を充填して150℃にて硬化させた時点においては、充填材95の外径とカバー4の内径とは一致している。
このように、充填材95の硬化温度が温度センサの使用環境温度よりも低いと、温度センサの使用時において、カバー4と充填材95との間に隙間99が生じることとなる。
これに対し、実施例1に示した本発明の温度センサ1によれば、上述のごとく、充填材5とカバー4との間に隙間が生じることがなく、感温素子2の損傷や電極21の断線を防止することができる。
本例は、図7〜図9に示すごとく、充填材5の原料について検討した例である。
まず、充填材5の主成分として適切な材料について検討した。充填材5としては、耐熱性を有するセラミック材料である、アルミナ(Al2O3)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)、ジルコニア(ZrO2)を用いることができる。
なお、サーミスタ素子の熱膨張計数は、8×10−6/℃である。
これにより、使用時において充填材5と感温素子2との間に応力が働くことを抑制すると共に、応答性に優れた温度センサ1を得ることができる。
即ち、アルミナを主成分とし、助剤を混合したものを、水によってスラリー化してなる原料を作製した。助材としては、CaCO3,カオリン、タルク、ホウ酸を用いた。
表2に、本例において用いた充填材5の原料における各成分について、固形分全体に対する配合比を示す。
また、原料スラリーにおける水分量は、20重量%とした。
また、各水準のn数は10個である。測定結果を図7に示す。
以上の2つの測定結果から、アルミナの平均粒径、即ち充填材の原料の主成分の平均粒径は、1〜4μmの範囲にあることが好ましいことが分かる。
まず、上記の組成において、水分量の異なる種々の原料スラリーを用意した。
そして、各原料スラリーを、上記と同様に900℃にて10時間熱処理を行い、充填材を硬化させた。このとき、充填材の収縮率を測定した。各水準のn数は10個である。その測定結果を図9に示す。
また、水分量を15重量%未満となると、原料のスラリー化が困難となり、カバー内への充填材の注入作業が困難となるという問題がある。
この結果から、原料スラリーにおける水分量の割合は、15〜25重量%とすることが好ましいことが分かる。
本例は、図10〜図12に示すごとく、実際にカバー4内に充填材5を充填した試料に対して熱を加え、室温から900℃まで昇温したときの様子を、高温顕微鏡を用いて観察した。
試料は、図10に示すごとく、カバー4内に充填材5を充填したものを、カバー4の小径部41の部分において輪切りにして採取したものである。なお、カバー4内には感温素子を入れずに充填材5のみを充填した。
カバー4の小径部41の外径は2.5mm、内径は1.88mmである。なお、充填材5は、上記実施例2において示した組成の原料によって得たものであって、スラリー原料におけるアルミナの平均粒径が1〜4μmを満たし、水分量が15〜25重量%を満たすものである。
図12(A)〜(D)に示すごとく、室温から900℃までの間において、充填材5とカバー4との間に隙間が発生する様子は見られなかった。
本例は、図13に示すごとく、感温素子2の電極21を構成する白金の強度の温度依存性について調べた例である。
即ち、複数の白金線を900℃にて10時間熱処理を行った後、各白金線を種々の温度環境においた状態で引張強度を測定した。なお、引張強度の測定は、島津製作所製の引張試験機AG100kNを用いて行った。
測定結果を図13に示す。
従って、600℃以上の高温環境下においては、白金からなる電極21の強度が低下していると考えられる。それ故、かかる高温環境下において、感温素子2が振動することにより白金の電極21にストレスがかかり、これが繰り返される白金電極21が疲労して強度が更に低下し、断線するおそれが生じる。そこで、600℃以上の環境下においても、カバー4と充填材5との間に隙間が生じないようにすることにより、白金電極21の耐久性を効果的に向上させることができる。
2 感温素子
21 電極
3 シースピン
31 信号線
4 カバー
5 充填材
Claims (8)
- 温度によって電気的特性が変化する感温素子と、
該感温素子の一対の電極にそれぞれ接続された一対の信号線を先端側に露出させた状態で内蔵するシースピンと、
上記感温素子を覆うように先端部に配設されたカバーと、
上記感温素子と上記カバーとの間に充填され上記感温素子を保持固定するための充填材とを有し、
該充填材は、硬化温度が使用環境温度以上であることを特徴とする温度センサ。 - 請求項1において、上記感温素子の一対の電極は、白金系材料からなることを特徴とする温度センサ。
- 請求項2において、上記充填材の硬化温度は600℃以上であることを特徴とする温度センサ。
- 請求項1〜3のいずれか一項において、上記感温素子はサーミスタ素子からなり、上記充填材はアルミナを主成分としてなることを特徴とする温度センサ。
- 温度によって電気的特性が変化する感温素子と、該感温素子の一対の電極にそれぞれ接続された一対の信号線を先端側に露出させた状態で内蔵するシースピンと、上記感温素子を覆うように先端部に配設されたカバーと、上記感温素子と上記カバーとの間に充填され上記感温素子を保持固定するための充填材とを有する温度センサを製造する方法であって、
上記充填材を上記感温素子と上記カバーとの間に充填するに当っては、上記充填材の原料を上記カバーの内側に注入すると共に上記感温素子を埋設し、上記温度センサの使用環境温度以上の温度で熱処理を施すことにより、上記充填材を硬化させることを特徴とする温度センサの製造方法。 - 請求項5において、上記感温素子の一対の電極は白金系材料からなり、上記充填材の硬化温度は600℃以上であることを特徴とする温度センサの製造方法。
- 請求項5又は6において、上記充填材の原料の主成分は、平均粒径が1〜4μmであることを特徴とする温度センサの製造方法。
- 請求項5〜7のいずれか一項において、上記充填材の原料は、固形分に水からなる溶媒を混合したスラリー状の原料であって、該原料のうちの水分量の割合は、15〜25重量%であることを特徴とする温度センサの製造方法。
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