以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
まず、本発明の定着装置を備える画像形成装置の第1の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施の形態の定着装置を備える画像形成装置の全体の構成を示す説明図であり、図2は、かかる画像形成装置の装置本体の構成を示す部分詳細図である。
本実施の形態において、画像形成装置1Aは、スキャナ等に読み込まれた画像データや外部から伝達された画像データを電子写真方式によって、記録媒体となる所定のシート状の記録用紙(以下、用紙と称する。)にモノクロ画像等として出力形成するものであって、用紙Pを複数枚積載可能な給紙トレイ8と、給紙トレイ8から供給される用紙Pを画像形成部14に搬送する用紙搬送部59とを備え、給紙トレイ8から用紙Pを自動的に供給可能としたものである。そして、かかる画像形成装置1Aの上方において、原稿載置台21の上面を開閉自在にするように、原稿読取装置1A2が設けられている。
画像形成装置1Aは、図1、図2に示すように、主に、露光ユニット1、現像装置2、感光体ドラム3、帯電器4、除電装置41、クリーナユニット5、定着ユニット6、用紙搬送装置7、給紙トレイ8、排紙トレイ9および転写機構10等より構成される装置本体1A1と、自動原稿処理装置1A2とにより構成されている。
装置本体1A1の上面部には、原稿が載置される透明ガラスからなる原稿載置台21が設けられ、この原稿載置台21の上方には、自動原稿処理装置1A2が上方に向かい揺動開放自在に設けられ、一方、この原稿載置台21の下方には、原稿の画像データを読み取る原稿読み取り部であるスキャナ部22が配置されている。
そのスキャナ部22の下方には、露光ユニット1、現像装置2、感光体ドラム3、帯電器4、除電装置41、クリーナユニット5、定着ユニット6、用紙搬送装置7、排紙トレイ9および転写機構10が配設され、さらに、その下方には、用紙Pが収納された給紙トレイ8が配設されている。
露光ユニット1は、図示しない画像処理部から出力された画像データ(印字用画像データ)に応じてレーザ光を帯電器4によって均一に帯電された感光体ドラム3の表面に照射して露光することにより、かかる感光体ドラム3の表面に画像データに応じた静電潜像を書込み形成する機能を有するものである。
露光ユニット1は、スキャナ部22の直下で且つ感光体ドラム3上方に配置され、レーザ照射部11および反射ミラー12を備えたレーザスキャニングユニット(LSU)13a,13bが採用されている。本実施の形態では、高速印字処理を行う為に、複数のレーザ光を利用し、照射タイミングの高速化を低減する手法を採用し、2ビーム手法を採用している。
なお、本実施の形態では、露光ユニット1にレーザスキャニングユニット(LSU)13a、13bを用いているが、発光素子をアレイ状に並べたもの、例えば、ELやLED書込みヘッドを用いるものであっても良い。
感光体ドラム3は、図2に示すように、略円筒状を呈し、露光ユニット1の下方に配設され、図示しない駆動手段と制御手段によって、所定方向(図中の矢印A方向)に回転するように制御されている。この感光体ドラム3の外周面に沿って、画像転写終了後の位置を基準として、感光体ドラム3の回転方向下流側に向かい用紙剥離爪31、クリーナユニット5、電界発生部としての帯電器4、現像装置2、除電装置41の順に配置されている。
用紙剥離爪31は、ソレノイド32により感光体ドラム3の外周面に接離可能に配置されている。この用紙剥離爪31は、感光体ドラム3の外周面に当接した状態で、感光体ドラム3上の未定着トナー像を用紙Pに転写する際に、その感光体ドラム3の表面に張り付いた用紙Pを剥離するものである。なお、用紙剥離爪31の駆動手段として、ソレノイド32の代わりに駆動用モータ等を採用しても良く、その他の駆動手段の選択も可能である。
現像装置2は、感光体ドラム3上に形成された静電潜像を黒トナーで顕像化するものであって、感光体ドラム3の回転方向(図中の矢印A方向)で帯電器4より下流側で感光体ドラム3の側方で略水平(図中で右側)に配置されている。この現像装置2の下方には、記録媒体搬送方向の上流側にレジストローラ15が配置されている。
トナー供給装置30は、トナーが充填されたトナー容器300から排出されるトナーを一時的に中間ホッパ部33に貯留してから現像装置2に供給するものであって、現像装置2に隣接するようにして配置されている。
レジストローラ15は、給紙トレイ8から供給された用紙Pの先端と感光体ドラム3上のトナー像とを整合して感光体ドラム3と転写ベルト103との間に搬送するように、図示しない駆動手段と制御手段とのより動作制御されている。
帯電器4は、感光体ドラム3の表面を所定の電位に均一に帯電させるための帯電手段であって、感光体ドラム3の上方でその外周面に近接して配置されている。なお、本実施の形態では、チャージャー型の帯電器4を用いているが、接触型のローラ方式によるものやブラシ方式によるものを用いるものであっても良い。
除電装置41は、感光体ドラム3の表面に形成されたトナー像を用紙Pに転写し易くするために、感光体ドラム3の表面電位を低下させるための転写前除電手段であって、感光体ドラム回転方向で現像装置2より下流側で、且つ感光体ドラム3の下方でその外周面に近接して配置されている。なお、本実施の形態では、除電装置41は、除電電極を用いて構成されているが、除電電極の替わりに除電ランプを用いたり、その他の方式により除電するようにしたものであっても良い。
クリーナユニット5は、現像・画像転写後における感光体ドラム3上の表面に残留したトナーを除去・回収するものであって、感光体ドラム3を挟んで現像装置2と略対向する位置で感光体ドラム3の側方で略水平(図中で左側)に配置されている。
上述した様に、感光体ドラム3上で顕像化された静電像は、静電像が有する電荷の逆極性の電界が搬送される用紙P上に転写機構10から印加されることで用紙P上に転写される。例えば、静電像が(−)極性の電荷を有している時は、転写機構10の印加極性は、(+)極性となる。
転写機構10は、図2に示すように、駆動ローラ101、従動ローラ102および他のローラで架橋されると共に、所定の抵抗値( 本実施の形態では、1×109〜1×1013Ω・cmの範囲 )を有する転写ベルト103が配置された転写ベルト式ユニットで構成され、感光体ドラム3の下方で転写ベルト103の表面が感光体ドラム3の外周面の一部と接触するように配置されている。この転写ベルト103により、用紙Pを感光体ドラム3に押圧しながら搬送するようになっている。
感光体ドラム3と転写ベルト103の接触部104には、駆動ローラ101および従動ローラ102とは、異なる導電性で転写電界を印加可能な弾性導電性ローラ105が配置されている。
弾性導電性ローラ105は、弾性ゴム、発泡性樹脂等の軟質材料により構成されている。この弾性導電性ローラ105が弾性を有することで、感光体ドラム3と転写ベルト103とが線接触でなく、所定の幅(転写ニップと呼ばれる。)を有する面接触となるので、搬送される用紙Pへの転写効率の向上を図ることができる。
さらに、転写ベルト103の転写領域の用紙搬送方向下流側には、搬送される用紙Pが転写領域で印加された電界を除電し、次工程への搬送をスムーズに行う為の除電ローラ106が転写ベルト103の背面側に配置されている。
また、転写機構10には、転写ベルト103の残留トナーによる汚れを取るクリーニングユニット107と、転写ベルト103の除電を行う複数の除電機構108が配置されている。この除電機構108に用いられる除電を行うための手法として、装置を介して接地する手法、若しくは積極的に転写電界の極性とは逆極性を印加する手法がある。
転写機構10で用紙P上に転写された静電像(未定着トナー)は、定着ユニット6に搬送されて加圧・加熱されることで未定着トナーが溶融されて用紙P上に定着される。
定着ユニット6は、図2に示すように、加熱ローラ6a、加圧ローラ6bを備え、この加熱ローラ6aと加圧ローラ6bによって用紙Pを挟持した状態で加熱ローラ6aを回転させ、加熱ローラ6aと加圧ローラ6bとの間を通過させることにより、用紙P上に転写されたトナー像を溶融して定着させる定着装置としての機能を有するものである。定着ユニット6の用紙搬送方向の下流側には、用紙Pを搬送する搬送ローラ16が設けられている。
加熱ローラ6aは、その外周部には、用紙剥離爪611、当該加熱ローラ6aの表面温度検出手段となるサーミスター612、加熱ローラ6aの表面に付着した汚れを清掃すると同時に当該表面にシリコンオイル等の離型剤を塗布するクリーニング機構となるウェブクリーニングユニット650が配置され、加熱ローラ6aの内部には、加熱ローラ6aの外周面を所定温度( 定着設定温度:概ね160〜200℃ )とする熱源となる加熱ヒータ614が設けられている。なお、本実施の形態におけるウェブクリーニングユニット650の構成等の詳細については、後述する。
加圧ローラ6bは、当該ローラ6bの両端部で加熱ローラ6aに対して所定圧量で加圧ローラ6bが圧接することの可能な加圧部材621が配置され、さらに、加圧ローラ6bの外周には、加熱ローラ6aの外周と同様に、用紙剥離爪622、ローラ表面クリーニング部材623が配置されている。また、本実施の形態では、加熱ローラ6aと同様に、外周面を所定温度に加熱するための熱源となる加熱ヒータ624が設けられている。
この定着ユニット6は、図2に示すように、加熱ローラ6aと加圧ローラ6bとの圧接部N6(いわゆる定着ニップ部と呼ばれる。)において、搬送される用紙P上の未定着トナーを加熱ローラ6aにより加熱して溶融し、かかる加熱ローラ6aと加圧ローラ6bとの圧接力による用紙P上への投鋲作用で、未定着トナーを用紙P上に定着するようになっている。
給紙トレイ8は、画像データが出力(印字)されるシート(用紙)を複数枚蓄積しておくためのものであり、露光ユニット1、現像装置2、感光体ドラム3、帯電器4、除電装置41、クリーナユニット5、定着ユニット6等で構成される画像形成部14の下側に構成されている。この給紙トレイ8の排紙側上部には、用紙ピックアップローラ8aが配置されている。
この用紙ピックアップローラ8aは、給紙トレイ8内に積載収容された用紙Pを最上層から1枚ずつピックアップし、下流側に向かって(便宜上の用紙Pの流れ出し側(カセット側)を上流、排紙側を下流とする。)用紙搬送装置7を構成する用紙搬送路7a上のレジストローラ15(「アイドルローラ」とも称する。)側に搬送するようになっている。
本実施の形態に係る画像形成装置1Aでは、高速印字処理を行うことを目的とする為、画像形成部14の下方に定型サイズの用紙Pを各々のトレイに500〜1500枚収納可能な複数の給紙トレイ8が配置され、一方、装置側面には、複数の用紙種類を多量に収納可能な大容量給紙カセット81が配置されると共に、かかる大容量給紙カセット81の上方に、主に不定型サイズの印字等に対応する手差しトレイ82が設けられている。
排紙トレイ9は、手差しトレイ82とは、反対側の装置側面に配置されている。また、排紙トレイ9に変わって、排紙用紙の後処理装置(ステープル、パンチ処理等を行う装置)や複数段排紙トレイ等をオプションとして配置することも可能な構成となっている。
用紙搬送装置7は、前述した感光体ドラム3と給紙トレイ8との間に構成され、用紙搬送装置7に備わる用紙搬送路7aを経由させて、給紙トレイ8から供給される用紙Pを一枚ずつ転写機構10に搬送し、転写機構10において、感光体ドラム3からトナー像が転写された用紙を定着ユニット6に搬送し、定着ユニット6において、未定着トナー像を用紙に定着した後に、指定された排紙処理モードに応じて形成された用紙搬送路や分岐爪によって用紙を搬送するように構成されている。
ここで、画像形成装置1Aにおける用紙搬送装置7による処理モードに対応した用紙搬送工程について説明する。
印字要求に合致する用紙Pは、図2に示すように、複数の給紙トレイ8の中から選択され、用紙搬送路7a中の搬送ローラによってレジストローラ15まで搬送される。
レジストローラ15に到達して一旦停止した用紙Pは、用紙Pの先端と感光体ドラム3上の画像データを合致させるタイミングでレジストローラが再び回転することによって、転写機構10に搬送され、用紙P上に感光体ドラム3から未定着トナー像(画像データ)が転写された後、定着ユニット6で用紙P上にトナー像が固着されて、排紙トレイ9に排出される。
この用紙搬送路7a内の搬送経路において、画像形成装置1Aが有する処理モード(コピアモード、プリンタモード、FAXモード)、および印字処理手法(片面印字、両面印字)によって定着ユニット6以降から排紙トレイ9までの搬送方法が異なる。
通常、コピアモードでは、ユーザが画像形成装置1Aの近傍で操作を行うことから“フェースアップ排出”と呼ばれる印字面が上側になって排出される手法が多く用いられる。
一方、プリンタ、FAX等の各モードでは、ユーザが画像形成装置1Aの近傍にいないことから、排出された用紙Pのページ順を揃える“フェースダウン排出”手法が多く用いられている。
従って、画像形成装置1Aでは、定着ユニット6を通過した用紙Pを排紙トレイ9に排出するまでの間に、複数の搬送路を経由して、上記目的に合致する用紙排出を行うようになっている。
ここで、用紙搬送装置7に備わる用紙搬送路7aについて、図面を参照して詳細に説明する。図3は、本実施の形態における画像形成装置の用紙搬送路の構成を示す説明図であり、図4は、当該用紙搬送路を構成する分岐された用紙搬送路とそれらを連通させる分岐爪の構成を示す部分詳細図である。
用紙搬送路7aは、図3、4に示すように、主に、給紙トレイ8からレジストローラ15に到る第1用紙搬送路7a1、レジストローラ15から転写機構10を介して定着ユニット6を通過して下流側の搬送ローラ16に到る第2用紙搬送路7a2、搬送ローラ16から排紙トレイ9に排紙するための排紙ローラ17に到る第3用紙搬送路7a3、搬送ローラ16から用紙Pを反転させる第4用紙搬送路7a4、第4用紙搬送路7a4と連通して再びレジストローラ15に用紙Pを搬送する反転搬送ローラ18に到る第5用紙搬送路7a5、排紙ローラ17から反転して用紙Pを搬送する第6用紙搬送路7a6、第6用紙搬送路と連通して第5用紙搬送路7a5を回避する第7用紙搬送路7a7、および第7用紙搬送路7a7と連通してスイッチバックローラ19に到る第8用紙搬送路7a8とにより構成されている。
そして、用紙搬送路7a内には、処理モードに応じて複数枚の用紙Pが配置されるようになっている。本実施の形態では、図3に示すように、用紙搬送路7内に(1)〜(8)(図中の丸付き数字に示す)の8枚の用紙Pが配置するようになっているが、用紙搬送路内に許容可能な用紙Pの枚数は、用紙搬送路7aの構成によって変更できる。また、用紙搬送路7a内には、選択された処理モードに応じて用紙搬送路7aを選択して、用紙Pの搬送経路を変更する複数の分岐爪20が用紙搬送路7aの分岐点に設けられている。
図4に示すように、搬送ローラ16の下流側付近には、第3用紙搬送路7a3または第4用紙搬送路7a4と連通させる分岐爪20aが揺動変位可能に設けられている。この分岐爪20aは、図示しないソレノイドによって動作するようになっている。
第4用紙搬送路7a4の下流側には、第4用紙搬送路7a4と第5用紙搬送路7a5、または第5用紙搬送路7a5と第6用紙搬送路7a6とを連通させる分岐爪20bが揺動変位可能に設けられている。この分岐爪20bは、図示しないばね部材と用紙Pの弾性力によって動作するようになっている。
第6用紙搬送路7a6の下流側には、第5用紙搬送路7a5または第7用紙搬送路7a7と連通させる分岐爪20cが揺動変位可能に設けられている。この分岐爪20cは、図示しないソレノイドによって動作するようになっている。
第7用紙搬送路7a7の下流側には、第7用紙搬送路7a7と第8用紙搬送路7a8、または第5用紙搬送路7a5と第8用紙搬送路7a8とを連通させる分岐爪20dが揺動変位可能に設けられている。この分岐爪20dは、図示しないソレノイドによって動作するようになっている。
第5用紙搬送路7a5の上流側には、第4用紙搬送路7a4および第8用紙搬送路7a8と当該第5用紙搬送路7a5とを連通させて、円滑に用紙搬送を実行するための分岐爪20eが設けられている。
以上のように構成された用紙搬送装置7に備わる用紙搬送路7aにより、要求された処理モードに応じて分岐爪20a〜20dを動作させて、処理モードに対応した用紙Pの搬送経路を選択可能としている。
次に、本実施の形態における画像形成装置に備わる定着装置の構成の詳細について、図面を使用しながら説明する。図5は、本実施の形態の定着装置となる定着ユニットの概略構成図を示す図であり、図6は、本実施の形態の定着装置に備わる加熱ローラの詳細な構成を部分断面図で示す正面図である。
定着ユニット6では、画像形成装置1Aの画像形成部14で用紙上に画像情報を転写された未定着トナーを定着ローラとなる加熱ローラ6aと加圧ローラ6bの圧接部(定着ニップ部N6)で加熱ローラ6a、加圧ローラ6bから熱の授受を受けて、搬送用紙P上に転写されたトナー像を溶融して定着させる定着工程が実行される。
定着ユニット6は、図5に示すように、加熱ローラ6a、加圧ローラ6bを備えている。加熱ローラ6aは、その外周部に、用紙剥離爪611、ウェブクリーニングユニット650、およびサーミスター612が設けられ、加熱ローラ6aの内部には、加熱ヒータ614が設けられている。一方、加圧ローラ6bは、その外周部に、用紙剥離爪622、ローラ表面クリーニング部材623(図2参照)が設けられている。
加熱ローラ6aの外周面を所定温度に加熱するために、本実施の形態では、加熱ローラ6aの内部に加熱ヒータ614が備わる。加熱ローラ6aの外周面(表面)が必要とする所定温度とは、搬送される用紙上の未定着トナーを定着ニップN6で溶融、固着するために必要な温度であり、画像形成装置1Aで用いられるトナーの溶融温度と幾分の差異があるものの、概ねトナーの溶融温度に30〜40℃を加えた大きさの温度とされている。このため、一般的には、加熱ローラ6aの表面温度は、160〜200℃に制御されている。
加熱ローラ6aは、印字に使用される用紙サイズが種々に渡り、必ずしも加熱ローラ全面を一様に加熱する必要がないため、加熱ローラ6aの内部に複数本の熱源が設けられている。本実施の形態では、加熱ローラ6aの内部には、図6に示すように、加熱ローラ6aの長さ方向の略中央部を加熱するメイン熱源となるメインヒータ614aと、このメインヒータ614aが加熱しない加熱ローラ6aの長さ方向の略両端部を加熱するサブ熱源となるサブヒータ614bが設けられている。すなわち、通紙される用紙サイズが小サイズ紙である時は、メインヒータ614aに通電を行えば良く、大サイズ紙の通紙の時は、メインヒータ614aに加えて、サブヒータ614bへの通電が行われ、搬送される用紙のサイズに応じて、余分な加熱をせずに済むので、画像形成装置1Aとしての省電力化が図られる。
他方、加圧ローラ6bは、搬送用紙Pが定着ユニット6を通過する際の定着ニップ部N6で加熱ローラ6aを介して当該搬送用紙Pを加圧し、この加圧力で用紙上の溶融トナーを搬送用紙Pの構成成分となるセルロース等の繊維分に浸透させ、当該溶融トナーが固化した時に、搬送用紙Pに対して投鋲作用を発揮させる機能を有する。このため、加圧ローラ6bが配置されている関係上、加圧ローラ6bの内部に熱源となる加熱ヒータ624を有する場合と有さない場合がある。
搬送用紙Pに投鋲作用を発揮させる溶融トナーは、搬送用紙Pの温度によって投鋲作用の長さ(搬送用紙Pへの浸透距離)が異なり、用紙温度が高い程、溶融トナーの冷却が少なくなるので、浸透距離が長くなり、用紙上で固着するトナーの付着力が増加して、定着性能の向上が図れる。通常、画像形成装置1Aの印字処理速度(プロセス速度)が低速の場合は、連続印字用紙の用紙間隔が長く、加熱ローラ6aの表面温度が定着ニップ部N6を介して、加圧ローラ6bの表面加熱を行うために、加圧ローラ6bには、加熱ヒータ624を必要としない。
しかし、印字処理速度が高速になると、搬送用紙Pの間隔が短く、加熱ローラ6aの表面温度が定着ニップ部N6を介して加圧ローラ6bへの表面加熱が不足するために、加圧ローラ6bの内部、若しくは外部に熱源となる加熱ヒータ624を必要とする。このような加圧ローラ6bの表面温度は、加熱ローラ6aの表面温度より低く、概ね110〜150℃に制御され、加圧ローラ6bを介して、定着ニップ部N6で搬送用紙Pを暖めることで、投鋲作用が促進されるようになる。
サーミスター612は、加熱ローラ6aの外周面の表面温度を検出する表面温度検出手段としての機能を有する温度検出センサであり、例えば、温度を感知して電気抵抗が変化するセラミックス半導体から構成される。本実施の形態では、図6に示すように、加熱ローラ6aの長さ方向の略中央部に対向するように、中央側温度検出センサ612aが設けられ、加熱ローラ6aの長さ方向の略端部に対向するように、端部側温度検出センサ612bが設けられている。
また、加熱ローラ6aに含まれる各加熱ヒータ614a、614bのON・OFF制御は、これらの温度検出センサ612a、612bで検出している。定着ニップ部N6の略中央部は、全てのサイズの用紙が通過することから、中央側温度検出センサ612aは、用紙上のトナーが溶融状態で加熱ローラ5aの表面に付着した状態で中央側温度検出センサ612aを汚さないようにするために、非接触タイプの温度検出センサが使用される。
一方、端部側温度検出センサ612bが対向する加熱ローラ6aの外周面には、全てのサイズの用紙が通過しない非通紙領域であることより、端部側温度検出センサ612bは、接触タイプの温度検出センサを使用している。このように、端部側温度検出センサ612bとして、接触タイプの温度検出センサを使用することによって、非通紙領域の温度を検出して、加熱ローラ6aの端部温度を推測して、サブヒータ614bの通電制御を行っている。
ウェブクリーニングユニット650は、シリコンオイル等の離型剤を含浸させた不識布、紙、または布等を材料として構成された薄いウェブ状のウェブシート651が圧接ローラ652を介して加熱ローラ6aの表面に当接することによって、加熱ローラ6aの外周面のクリーニング機構として機能して、残留トナーを清掃すると同時に、当該加熱ローラ6aの外周面にシリコンオイル等の離型剤を塗布することによって、加熱ローラ6aの残留トナーによるオフセットを防止する。なお、本実施の形態のウェブクリーニングユニット650の構成等の詳細な説明は、後述するものとする。
このような構成の定着ユニット6によって、搬送用紙上の未定着トナーは、定着ニップ部N6で用紙上に定着されることとなるが、定着される未定着トナーの層厚においては、以下の現象が発生している。
すなわち、定着ニップ部N6に進入した用紙上の未定着トナーは、未定着トナーの表層から順次加熱ローラ6aの表面温度の影響を受けて溶融する。他方、用紙は、用紙中の画像情報のない白部分、および搬送用紙の裏面から加熱ローラ6a、加圧ローラ6bからの熱を受けて暖められる。このような状態の溶融トナーと搬送用紙は、定着ニップ部N6での定着後半工程における投鋲作用によって、溶融トナーが用紙内部に浸透するが、表層の溶融トナーは、加圧ローラ6bの加圧力で加熱ローラ6a側に圧力を加えられた状態となる。
次に、定着ニップ部N6を通過した直後の用紙は、溶融トナーの表面が加熱ローラ6aに付着することによって、用紙全体が加熱ローラ6aに巻付いた状態で搬送される。このとき、加圧ローラ6bの加圧力の解除、および加圧ローラ6bからの熱供給がなくなることによって、用紙が急冷され、用紙近傍の溶融トナーおよび投鋲作用で用紙中に浸透したトナーは、固化していく。
加熱ローラ6aに巻き付いた用紙は、加熱ローラ6aの外周で定着ニップ部N6の下流側直近に設置される用紙剥離爪611によって、強制的に剥離され、用紙は、次工程(片面印字時には、用紙排出部となる排紙トレイ9、両面印字時には、反転搬送路7a4〜7a8)に導出される。この用紙剥離爪611による強制的な用紙剥離時に、加熱ローラ6a側に付着している溶融トナーの大部分は、用紙上に転移するが、少量の溶融トナーは、加熱ローラ6aに付着したままの状態を維持する場合や、強制剥離用の用紙剥離爪611に付着する場合がある。
従来では、加熱ローラ6a上に残留した少量の溶融トナーは、加熱ローラ6aの外周部に設置されるクリーニング部材によって加熱ローラ6aが清掃されると同時に、当該クリーニング部材に溶融トナーが回収されることとなる。他方、用紙剥離爪611に付着する溶融トナーは、用紙剥離爪611に一定量が蓄積すると用紙剥離爪611から離間し、加熱ローラ6aを介してクリーニング部材に到達し、クリーニング部材に回収される。しかし、本実施の形態の画像形成装置1Aのように、高速化対応であって、印字処理枚数が多量になってくると、用紙剥離爪611から離間する溶融トナー量が多量となり、上記のクリーニング部材の間をすり抜けて、加熱ローラ6aの清掃が不完全となって、その上、定着ニップ部N6でクリーニング部材の間をすり抜けてきた溶融トナーが加圧ローラ6bに転移し、次印字処理で搬送される用紙のいわゆる「裏汚れ」の原因となることが問題となっていた。
従って、本実施の形態では、加熱ローラ6aの残留溶融トナーをより確実に除去するために、加熱ローラ6aに付着した残留トナーは、上記のウェブクリーニングユニット650でクリーニングされ、加熱ローラ6aの外周面は、清掃される。
ウェブクリーニングユニット650は、図5に示すように、ウェブシート651、圧接ローラ652、ウェブシート送出し用ローラ653、ウェブシート巻取り用ローラ654、およびテンションローラ655を備える。
ウェブシート651は、シリコンオイル等の離型剤を含浸させた不識布、紙、または布等を材料として構成された薄いウェブ状部材であり、圧接ローラ652を介して加熱ローラ6aの表面に当接することによって、加熱ローラ6aの外周面の残留トナーを清掃すると同時に、シリコンオイル等の離型剤を加熱ローラ6aの外周面に塗布して、加熱ローラ6aの残留トナーによるオフセットを防止する。ウェブシート651は、テンションローラ655と圧接ローラ652を介して、ウェブシート送出し用ローラ653とウェブシート巻取り用ローラ654の間を架橋するように設けられている。
圧接ローラ652は、加熱ローラ6aとの間にウェブシート651を挟み込むようにして加圧力を加熱ローラ6aに対して加える。この圧接ローラ652の加圧作用によって、加熱ローラ6aがウェブシート651と触れる部分であるウェブニップ部N5では、圧接ローラ652から加熱ローラ6aが受ける加圧力、および加熱ローラ6aの回転によりウェブシート651に生じた摩擦力のために、加熱ローラ6a上の残留トナーは、加熱ローラ6aからウェブシート651に転移し、加熱ローラ6aの清掃が実現される。
ウェブシート送出し用ローラ653は、予め一端が接続されているウェブシート651が捲回されており、回転軸653aがモータ等の駆動源(図7参照)によって、一定方向(図5に示すC方向)にウェブシート651を加熱ローラ6aとの当接部となるウェブニップ部N5に送り出す。
ウェブシート巻取り用ローラ654は,ウェブシート651の他端が接続され、回転軸654aがモータ等の駆動源(図7参照)によって、ウェブシート送出し用ローラ653と同様に一定方向(図5に示すC方向)に回転することによって、ウェブシート送出し用ローラ653から送り出されたウェブシート651を巻き取る。
テンションローラ655は、ウェブシート651自身に弛みが発生しないようにするために、ウェブシート送出し用ローラ653と圧接ローラ652との間に設けられ、ウェブシート651を所定の方向にガイドする。当該テンションローラ655によって、ウェブシート651が弛み難くなるので、加熱ローラ6aの円滑なクリーニングが実現されるようになる。
ウェブクリーニングユニット650においては、ウェブシート651による加熱ローラ6a上の残留トナーの清掃能力を良好に維持するために、加熱ローラ6aに圧接するウェブシート651は、残留トナーが付着していない状態、若しくは付着量が少ない残留トナー付着除去可能な状態のものである必要がある。このため、一定期間加熱ローラ6a上の残留トナーをクリーニングして、残留トナーが付着したウェブシート651は、ウェブシート巻取り用ローラ654に巻取られることで一定長さが送られ、その結果、ウェブシート送出し用ローラ653方向から残留トナーの付着していない残留トナー付着除去可能な状態のウェブシート651がウェブニップ部N5に送り出される。このようにして、加熱ローラ6aのウェブニップ部N5には、残留トナー汚損の少ないウェブシート651が常時圧接されるので、加熱ローラ6aの良好な清掃能力が維持されるようになる。特に、ウェブシート巻取り用ローラ654の1回の巻き取り動作におけるウェブシート651の移動長さは、少なくとも、ウェブニップ部N5の長さに比べて、略同一若しくは少ないときに、加熱ローラ6aの良好な清掃能力が維持されるようになる。
例えば、A4サイズ用紙(210×299mm)を横方向搬送時においては、用紙への画像の印字率により多少の差異があるものの、搬送用紙枚数6枚毎に0.5mmのウェブシート送りを行うことで、上記の通り圧接ローラ652、加熱ローラ6aに接するウェブシート651は、残留トナーが付着していない状態、若しくは付着量が少ない残留トナー付着除去可能な状態のものに更新され、加熱ローラ6aのクリーニング性能を良好に保持されるようになる。上記のウェブシート651の移動量0.5mmは、圧接ローラ652と加熱ローラ6aのウェブニップ部N5の幅が概ね5mmであることより、ウェブニップ幅領域のウェブシート651は、移動回数10回程度でウェブニップ部分N5を通過することとなる。
また、ウェブクリーニングユニット650による加熱ローラ6aの良好な清掃能力を維持するために、ウェブシート巻取り用ローラ654の1回の巻き取りにおけるウェブシート651の移動は、画像形成装置1Aへの印字処理要求がなされた時に、使用用紙種類、印字画像濃度を基に算出される所定枚数毎に駆動源が作動されることが好ましい。すなわち、加熱ローラ6aに当接されるウェブシート651に蓄積される現像剤である残留トナー量は、定着ユニット6を通過して定着される用紙上の残留トナー量に略比例するので、用紙サイズ等の種類や印字画像濃度を基に、ウェブシート651の汚れの程度を知る指標とすることができる。このため、当該指標値を積算し、かかる積算値がウェブシート651の清掃限界として予め定める基準値以上になったとき、ウェブシート651を巻き取ることによって、ウェブシート651の清浄な部分を新たに加熱ローラ6aに当接させて清掃能力を回復させられるようになる。
次に、本実施の形態のウェブクリーニングユニット650の駆動部の詳細な構成について、図面を使用しながら説明する。図7は、本実施の形態のウェブクリーニングユニットに備わるウェブシート送出し用ローラおよびウェブシート巻取り用ローラに駆動源から動力を伝達するギヤ群の構成を説明するための概略平面図であり、図8は、本実施の形態のウェブクリーニングユニットに備わるギヤ群を構成する各ギヤの説明図であり、(a)は、本実施の形態のウェブクリーニングユニットに備わるギヤ群を構成する各ギヤの位置関係を示す図であり、(b)は、当該各ギヤのギヤ比(ギヤ歯数、速度比)の関係を説明するための表であり、図9は、本実施の形態のウェブクリーニングユニットに備わるウェブシート送出し用ローラに動力を伝達する送出し用ギヤの詳細説明図であり、(a)は、当該送出し用ギヤの部分断面図であり、(b)は、送出し用ギヤの正面図である。
本実施の形態では、ウェブクリーニングユニット650に備わるウェブシート送出し用ローラ653およびウェブシート巻取り用ローラ654は、図7に示すように、複数のギヤから構成されるギヤ群657を介して、一つのモータ等の駆動源656から動力が伝達される。
ギヤ群657は、図7、図8(a)に示すように、ギヤA657a、第1ギヤB657b1(図8では、B−1で示すギヤ)、第2ギヤB657b2(図8では、B−2で示すギヤ)、第1ギヤC657c1(図8では、C−1で示すギヤ)、第2ギヤC657c2(図8では、C−2で示すギヤ)、ギヤD657d、およびギヤE657eから構成される。
ギヤA657aは、モータ等の駆動源656に連動する駆動源動力伝達用ギヤとなり、第1ギヤB657b1(B−1)と噛合している。このギヤA657aと噛合する第1ギヤB657b1(B−1)は、ギヤ歯数の異なる第2ギヤB657b2(B−2)と同一回転軸を共有するように連結されている。この第2ギヤB657b2(B−2)は、第1ギヤC657c1(C−1)と噛合している。
第1ギヤC657c1(C−1)は、ウェブシート巻取り用ローラ654の回転動作を規制するウェブシート巻取り用ギヤとなるギヤD657dと噛合する一方、ギヤ歯数の異なる第2ギヤC657c2(C−2)と同一回転軸を共有するように連結されている。この第2ギヤC657c2(C−2)がウェブシート送出し用ローラ653の回転動作を規制するウェブシート送出し用ギヤとなるギヤE657eと噛合している。本実施の形態では、このギヤE657eには、ウェブシート送出し用ローラ653の回転軸653aに一定方向にのみ駆動源656からの動力を伝達する回転方向規制部材としてワンウェイクラッチ軸受け658が設けられている。なお、ワンウェイクラッチ軸受658によるウェブシート送出し用ローラ653の回転方向規制動作の詳細については、後述する。
このようにギヤ群657を構成することによって、本実施の形態では、駆動源656が回転駆動すると、駆動源656に連動するギヤA657aは、駆動源656の回転動力方向に回転して、このギヤA657aの回転力がギヤA657aに噛合する第1ギヤB657b1(B−1)に伝達される。そして、第1ギヤB657b1(B−1)は、ギヤA657aの回転方向と逆方向に回転し、第1ギヤB657b1(B−1)の回転力が同一回転軸を共有する第2ギヤB657b2(B−2)に噛合する第1ギヤC657c1(C−1)に伝達される。
第1ギヤC657c1(C−1)は、第2ギヤB657b2の回転方向と逆方向、換言すると、駆動源656の回転動力方向に回転し、第1ギヤC657c1(C−1)の回転力が第1ギヤC657c1(C−1)に噛合するギヤD657dに伝達される。ギヤD657dは、第1ギヤC657c1の回転方向と逆方向、換言すると、駆動源656の回転動力方向と逆方向に回転し、回転中心点でウェブシート巻取り用ローラ654の回転軸654aと連結される当該ギヤD657dの回転駆動に連動するように、ウェブシート巻取り用ローラ654が駆動源656の回転動力方向と逆方向に回転するようになる。
また、第1ギヤC657c1(C−1)は、前述したように、ギヤ歯数の異なる第2ギヤC657c2(C−2)と同一回転軸を共有するように連結されている。このため、第2ギヤC657c2(C−2)は、第1ギヤC657c1(C−1)と同様に、駆動源656の回転動力方向に回転し、第2ギヤC657c2(C−2)の回転力が第2ギヤC657c2(C−2)に噛合するギヤE657eに伝達される。ギヤE657eは、第2ギヤC657c2の回転方向と逆方向、換言すると、駆動源656の回転動力方向と逆方向に回転し、回転中心点でウェブシート送出し用ローラ653の回転軸653aと連結される当該ギヤE657eの回転駆動に連動するように、ウェブシート送出し用ローラ653が回転するようになる。
以上説明したように、本実施の形態では、ギヤ群657を介して1つの駆動源656でウェブシート送出し用ローラ653およびウェブシート巻取り用ローラ654の両ローラを同一の回転方向に回転駆動させる制御が可能となる。このため、ウェブクリーニングユニット650、このウェブクリーニングユニット650を備える定着ユニット6、この定着ユニット6を備える画像形成装置1Aの小型化、ウェブシート送出し用ローラ653およびウェブシート巻取り用ローラ654の駆動制御の簡略化や省電力化が実現されるようになる。
なお、以下では、ウェブシート651がウェブシート送出し用ローラ653方向からウェブシート巻取り用ローラ654方向へ送られるようなウェブシート651の送り方向を順送り方向(図5に示すC方向)、そのときのギヤ群657に含まれる各ギヤ657a〜eの回転を順回転とし、また順回転と逆向きの各ギヤ657a〜eの回転を逆回転と呼ぶことにする。
ここで、本実施の形態におけるウェブクリーニングユニット650の特徴としては、各ギヤ657a〜eに順回転の回転力が作用した場合には、ウェブシート651を順方向に送るが、反対に逆回転の回転力が作用した場合には、ウェブクリーニングユニット650にブレーキ作用が発生して各ギヤ657a〜eの回転動作が規制され、ウェブシート651が順方向と逆方向には、ウェブシート651を送れないギヤ群657からなる回転動力伝達機構となっていることである。すなわち、本実施の形態におけるウェブクリーニングユニット650は、ウェブシート651がウェブシート送出し用ローラ653からウェブシート巻取り用ローラ654に向かう一定方向のみに送出される一定方向送出機構を有する。
次に、本実施の形態のウェブクリーニングユニット650が具備する上記の一定方向送出機構について、図面を使用しながら説明する。図9は、本実施の形態のウェブクリーニングユニットに備わるウェブシート送出し用ローラに動力を伝達するウェブシート送出し用ギヤの詳細説明図であり、(a)は、ウェブシート送出し用ギヤの部分断面図であり、(b)は、ウェブシート送出し用ギヤの正面図である。
本実施の形態では、ウェブクリーニングユニット650に備わるウェブシート送出し用ローラ653は、図9(a)に示すように、ウェブシート送出し用ローラ軸653aを介して、ウェブシート651の送出し用ギヤとなるギヤE657eに連動している。このギヤE657eは、所定の方向の回転力を受けた場合には、回転するが、その逆方向の回転力を受けた場合には、回転しない一定方向のみに回転動作の動力伝達を可能とする軸受であるワンウェイクラッチ軸受658を備えることによって、一定方向、すなわち本実施の形態では、ギヤE657eが逆回転する方向にのみ回転動力を伝達するワンウェイギヤとなっている。このため、図9(b)に示すように、本実施の形態のウェブシート送出し用ローラ653は、ギヤE657eが順回転する方向(図9に示すC方向)の回転力を受けた場合では、ギヤE657eがワンウェイクラッチ軸受658を介して空転することで、ウェブシート送出し用ローラ軸653aには、回転力が伝達されない。一方、ギヤE657eが逆方向の回転力を受けたときには、ギヤE657eは、空転しないために、ウェブシート送出し用ローラ軸653aに回転力が伝達される。
また、本実施の形態のウェブクリーニングユニット650では、ウェブシート送出し用ローラ653とウェブシート巻取り用ローラ654の回転速度比について、ウェブシート巻取り用ローラ654の回転速度がウェブシート送出し用ローラ653の回転速度に比べて十分に小さくなるように設定されている。このような回転速度比を得るために、本実施の形態では、例えば、ギヤ群657に備わる各ギヤ657a〜eのギヤ歯数が図8(b)に示すようなギヤ歯数に設定されている。特に、ギヤE657eに形成されたギヤ歯数が20個であるのに対して、ギヤD657dに形成されたギヤ歯数が42個と、ウェブシート送出し用ギヤとなるギヤE657eのギヤ歯数よりも、ウェブシート巻取り用ギヤとなるギヤD657dのギヤ歯数の方が多くなるように設定することによって、ギヤD657dよりもギヤE657eの回転速度の方が大きくなる。具体的には、各ギヤ657a〜eのギヤ歯数を図8(b)に示すようなギヤ歯数に設定して、駆動源656に連動するギヤA657aに回転力が与えられた場合、このときのギヤA657aの速度を1.000とすると、回転力が伝達された際のギヤD657dの回転速度は、0.417程度に減速される一方、ギヤE657eの回転速度は、2.100に加速されることになる。つまり、ウェブシート巻取り用ローラ654の回転速度は、ウェブシート送出し用ローラ653の回転速度の5分の1程度となる。なお、本実施の形態のウェブクリーニングユニット650が上記の一定方向送出機構として有効に機能するためには、ウェブシート巻取り用ギヤ657dのギヤ歯数がウェブシート送出し用ギヤ657eのギヤ歯数の少なくとも2〜4倍の歯数であることが好ましい。
このように、本実施の形態では、ウェブクリーニングユニット650に備わるギヤ群657が上記2点の特徴を有することから、ウェブシート651がウェブシート送出し用ローラ653からウェブシート巻取り用ローラ方向654への一定方向のみに送出される一定方向送出機構が形成される。このため、ウェブシート651の順方向での巻取り、送出し時に、ワンウェイクラッチ軸受658を備えるギヤE657eによって、ウェブシート送出し用ローラ653がスリップ現象を起こし、ウェブシート巻取り用ローラ654の回転によるウェブシート651の巻取り張力でウェブシート651の送出しが行われるようになるので、ウェブシート送出し用ローラ653とウェブシート巻取り用ローラ654との間に架橋されたウェブシート651に一定張力が発生するので、安定したクリーニング性能が得られるようになる。
例えば、ギヤ群657に順回転の回転力が加わる場合、ウェブシート巻取り用ローラ654は、ウェブシート651を巻取る方向に回転力が伝達される。一方、ギヤE657eが逆回転する方向にのみ回転動力を伝達するワンウェイギヤとなっていることより、ギヤE657eに伝達された順回転の回転力は、ワンウェイクラッチ軸受658によってギヤE657eが空転するために、ウェブシート送出し用ローラ653には、伝達されない。つまり、駆動源656の回転動力によってウェブシート巻取り用ローラ654のみが回転し、その際に、ウェブシート送出し用ローラ653は、ギヤE657eに規制されずに、自由に回転することになる。ゆえに、ウェブシート651は、ウェブシート巻取り用ローラ654の巻取り作用によってのみ順方向に送出されるようになる。
また、このときのウェブシート送出し用ローラ653の回転は、ウェブシート巻取り用ローラ654の巻取り作用によって、ウェブシート651に生じた張力に起因するものである。このため、ウェブシート送り用ローラ653とウェブシート巻取り用ローラ654の間のウェブシート651には、常に張力が働くことになり、弛みが生じないようになる。このウェブシート651に生じる張力の存在によって、圧接ローラ652と加熱ローラ6aの間に有するウェブニップ部N5には、常に適切なウェブニップ幅が生じ、ウェブシート651の良好な清掃能力が維持されることとなる。
反対に、ギヤ群657に逆方向の回転力が加わる場合、通常稼動時には、このような逆方向の回転力が加わることはないものの、もし、万が一ギヤ群657にこのような逆方向の回転力が加わった場合には、ワンウェイギヤとして機能するギヤE657eは、空転しない方向の回転力を受けることになる。このため、ギヤ群657を介して、駆動源656の回転動力がウェブシート送出し用ローラ653およびウェブシート巻取り用ローラ654の両ローラに逆回転の回転力が伝達され、ウェブシート送り用ローラ653には、ウェブシート651を巻取る方向に回転しようとする回転力が生じる。
しかしながら、この場合に、ウェブシート651を送出する側となるウェブシート巻取り用ローラ654のギヤD657dとウェブシート651を巻取る側となるウェブシート巻取り用ローラ654のギヤE657eの回転速度比は、前述したように、ウェブシート651を送出する作用を示すギヤD657dの方が十分に小さくなるように設定されている。このため、ウェブシート送出し用ローラ653が巻取ろうとするウェブシート651の長さの方がウェブシート巻取り用ローラ654の送出するウェブシート651の長さよりも十分に大きくなる。従って、ウェブシート651には、ウェブシート巻取り用ローラ654からの張力が働くことでブレーキ力が発生して、ウェブシート651は、逆方向へ送出されることを未然に防止できるようになる。なお、このときのギヤ群657は、ウェブシート651の張力のために、各ギヤ657a〜eの回転作用に規制を受けている状態となっている。
さらに、本実施の形態のウェブクリーニングユニット650に、上述の一定方向送出機構を備えることで、万が一何らかの原因でウェブシート651に弛みが生じた場合においても、適切な弛みの回復が実現できる。なお、ここで、本実施の形態のウェブクリーニングユニット650では、一定方向送出機構により、生じるウェブシート651の弛みは、ウェブシート送出し用ローラ653側から送られた使用前のウェブシート651であることを留意しておく。
例えば、ウェブシート651に生じた弛みをウェブシート651の順送り方向に回復する場合には、ウェブシート651が弛んだ状態では、ウェブシート651に張力がないために、ウェブシート送出し用ローラ653は、駆動せずに、ウェブシート巻取り用ローラ654のみが駆動して、ウェブシート651の弛み部分が順方向に巻取られて、当該弛みは、消失する。その際に、ウェブシート651には、張力も回復しており、また加熱ローラ6aと圧接ローラ652のウェブニップ部N5には、順方向に弛んでいた使用前のウェブシート651が送出されるため、良好なクリーニング性が保持されるようになる。
反対に、逆方向にウェブシート651の弛みを回復しようとする場合には、ウェブシート651の弛みが生じているときは、ウェブシート651上にウェブシート巻取り用ローラ654側からの張力は、存在しないため、ウェブシート送出し用ローラ653は、ウェブシート651を巻取る方向に回転することができる。そして、使用前のウェブシート651の弛みは、ウェブシート送出し用ローラ653に巻取られることで、当該弛みは、消失し、その時点でウェブシート651には、ウェブシート巻取り用ローラ654側からの張力が働くこととなり、ウェブシート送出し用ローラ653およびギヤ群657は、非作動なロック状態となるので、ウェブシート651の逆流は、起こらないようになる。
以上説明したように、本実施の形態のウェブクリーニングユニット650は、ウェブシート送出し用ローラ653に連動するウェブシート送出し用ギヤ657eにワンウェイクラッチ軸受658を設けて、駆動源656からの回転駆動をギヤ群657を介して、ウェブシート送出し用ローラ653およびウェブシート巻取り用ローラ654の両ローラに伝達することで、1つのワンウェイクラッチ軸受658でウェブシート送出し用ローラ653およびウェブシート巻取り用ローラ654の両ローラの逆回転防止が可能となる。このため、JAM処理時等の加熱ローラ6aの回転方向に関係なく、ウェブシート651に弛みが発生せず、一定の張力で常にウェブシート651をウェブシート送出し用ローラ653とウェブシート巻取り用ローラ654の間に架橋されるようになるので、ウェブクリーニングユニット650のクリーニング性能の安定化が実現され、ウェブシート651のシワ発生や蛇行発生等による不具合が解消される。
また、一つの駆動源656でギヤ群657を介して、ウェブシート巻取り用ローラ654、ウェブシート送出し用ローラ653の回転駆動が可能であること、並びに駆動源656からの駆動伝達先の最終ギヤとなるウェブシート巻取り用ローラ654の回転動作を規制するウェブシート巻取り用ギヤとなるギヤD657dのギヤ歯数がウェブシート送出し用ローラ653の回転動作を規制するウェブシート送出し用ギヤとなるギヤE657eのギヤ歯数と比較して、周速度比は約5倍とするために、極端に多く形成されていることから、ウェブシート651が未使用状態、既使用状態でも、ウェブシート651の巻取り、送出し制御がウェブシート巻取り用ローラ654の回転駆動で制御されるようになる。このため、従来のように、ウェブシート送出し用ローラ用駆動制御、ウェブシート巻取り用ローラ用駆動制御の別個の設定が不要となり、ウェブクリーニングユニット650の制御手法の簡略化が可能となるので、装置の小型化や省電力化が実現されるようになる。
さらに、本実施の形態のウェブクリーニングユニット650が上述したように、ウェブシート送出し用ローラ653からウェブシート巻取り用ローラ654に向かう一定方向のみにウェブシート651を送出する一定方向送出機構を具備することによって、ウェブクリーニングユニット650が安定したクリーニング性能を有するようになる。このため、定着ローラとなる加熱ローラ6aの残留溶融トナーがより確実に除去されるようになるので、次印字処理で搬送される用紙のいわゆる「裏汚れ」等による印字処理原稿の品質劣化を事前に抑制できるようになる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記第1の実施の形態では、一つのトナー容器を設置するモノクロ用の画像形成装置に設置される現像装置に本発明が適用されているが、複数のトナー容器を設置するカラー用の画像形成装置に備わる定着装置に本発明のクリーニング機構を適用することも可能である。