JP2008203373A - ハーフトーンブランクス及びハーフトーンブランクスの製造方法 - Google Patents

ハーフトーンブランクス及びハーフトーンブランクスの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 波長に対して依存性の無いハーフトーン特性を有するハーフトーンマスクを容易に製造することが可能なハーフトーンブランクスを提供する。
【解決手段】 透明基板1上に、半透過膜2、エッチングストッパー膜3、遮光膜4が順次形成されている。エッチングストッパー膜3は、遮光膜4をエッチングする際にエッチングが半透過膜2まで進行しないようにする。遮光膜4及び半透過膜2はクロムより成る膜である。半透過膜2は、ハーフトーン露光を行うための所定の半透過特性が得られるよう遮光膜4より薄い厚さで形成されている。半透過膜2は、アルゴン50%、炭酸ガス50%の混合ガス雰囲気中でクロム製のターゲットをスパッタすることにより作成されている。
【選択図】 図1

Description

本願の発明は、フォトマスクを製造するための基板であるマスクブランクスに関するものであり、特に、ハーフトーン露光に使用される多階調マスクを製造するためのマスクブランクス(ハーフトーンブランクス)の製造方法に関するものである。
LSI等の半導体デバイスやLCDのようなディスプレイデバイスの製造では、フォトリソグラフィにより微細パターン形成が行われる。フォトリソグラフィは、フォトマスク(以下、単にマスク)を通して基板(半導体ウエハやディスプレイ用のガラス基板等。以下、区別するため、デバイス基板と呼ぶ。)を露光し、フォトマスクに形成された微細パターン(マスクパターン)をデバイス基板に転写する技術である。
フォトマスク自体も、一種のフォトリソグラフィ技術により製造される。フォトマスクは、マスクブランクスと呼ばれる基板に対し、レジストを塗布し、電子線描画機又はレーザー描画機によって所定のパターンでレーザーを照射して露光し、その後現像してマスクパターンを得ることで製造される。
フォトマスクが有するマスクパターンは、遮光部と透光部とから成るパターンである。マスクブランクスは、未露光のフィルムともいうべきもので、遮光部となるべき遮光膜が透明なガラス基板上に形成されたものである。
フォトリソグラフィ技術では、露光量が二値的に変化する二階調の露光ではなく、多階調の露光を行うことが従来より研究されている。特に、大型のLCDの製造においては、多階調露光を行うことで露光回数や使用するフォトマスクの枚数を減らす試みがなされている。大型のLCD用のマスクは、1m角を越えるサイズのものが多くなっており、露光回数低減やマスク枚数の低減により生産性を向上させたりコストを削減したりすることが特に重要になってきている。
多階調露光を可能にする方法としては、特開平8−250446号に開示されているように、フォトマスクが搭載される露光装置の露光光学系の分解能以下の細かさで微細パターン(ハーフトーンパターン)をフォトマスクに設ける技術が知られている。しかしながら、露光光学系の分解能以上の細かさで且つ必要な精度でハーフトーンパターンを形成することは、非常に難しく、パターン欠陥検出においても困難性を伴う。また、ハーフトーンパターン形成のためのデータ量が膨大になり、描画機の能力を超えてしまう恐れもある。
このような問題を考慮し、遮光膜の厚さを制御することで遮光部、半透過部及び透光部を形成することが検討されている。例えば、特開平7−49410号公報は、遮光膜として採用されているクロム膜では元々膜厚が薄いためにハーフエッチングにより中間の膜厚を形成することが困難であることを指摘し、酸化クロムを遮光膜の材料として採用し、膜厚を薄くすることで半透過膜とする提案をしている。
特開平8−250446号公報 特開平7−49410号公報
上述した従来の技術において、遮光膜としてのクロムは、波長に対してほぼ依存性がなく、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)などについてほぼ同等の遮光性を有する。しかしながら、酸化クロムは波長に対して依存性があり、g線、h線、i線等について異なる透過率を持つ。即ち、例えば酸化クロム(CrO、Cr等)の膜を、i線で30%程度の透過率を持つ厚さで作成すると、h線では34%になり、G線では37%になる。
このように、半透過膜の光透過率に波長依存性があると、必要な光学特性を有するハーフトーンマスクを製造する観点や露光の再現性を確保する観点等において不都合が生ずる。即ち、例えばg線、h線、i線などの異なる波長の光を色収差補正しながら使用する露光光学系の場合、ハーフトーン部の光透過率が波長によって大きく異なってしまうと、色収差補正のための光学系の設計が難しくなる。また、露光光源の発光スペクトル分布が経時的に変化してしまうなど、マスクに照射される光のスペクトル分布が何らかの原因で変化することがある。このような場合、半透過膜の光透過率に波長依存性があると、光の透過量が変化し、必要なハーフトーン性能が得られなくなってしまう恐れがある。さらに、フォトリソグラフィ技術の研究開発等では、露光波長を色々と変えて露光する場合があるが、半透過膜の透過特性に波長依存性があると、必要となる光学特性(ハーフトーン特性)は変わらないにも関わらず、それぞれの波長毎にフォトマスクを用意する必要が生ずる。即ち、各波長毎にハーフトンブランクスを用意してフォトマスクを製造する必要が生ずる。
一方、遮光膜の材料として使用されているクロムは、膜厚を薄くして半透過膜とした場合でも、波長に対して依存性は殆ど無く、上記のような問題はない。しかしながら、前述したように、クロムは、半透過膜として機能させるにはかなり薄くしなければならず、且つ、半透過膜として機能する膜厚の範囲が非常に狭いために、製造上の問題が大きい。
本願の発明は、係る課題を解決するためになされたものであり、多階調露光を可能にするハーフトーンマスクの製造に使用されるハーフトーンブランクスであって、波長に対して依存性の無いハーフトーン特性を有するハーフトーンマスクを容易に製造することが可能なハーフトーンブランクスを提供する技術的意義がある。
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、透明基板上に、半透過膜、エッチングストッパー膜、遮光膜を順次形成した構造のハーフトーンブランクスであって、
エッチングストッパー膜は、遮光膜をエッチングする際に当該エッチングが半透過膜まで進行しないようにするものであり、
半透過膜は、クロムより成る膜であってハーフトーン露光を行うための所定の半透過特性が得られる厚さで形成されているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記半透過膜は、アルゴンガスと炭酸ガスの混合ガス雰囲気中でクロム製のターゲットをスパッタすることにより形成された膜であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、前記請求項2の構成において、前記混合ガス雰囲気は、混合ガスの全量に対して炭酸ガスが20%以上70%以下の雰囲気であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項4載の発明は、前記請求項2の構成において、前記混合ガス雰囲気は、混合ガスの全量に対して炭酸ガスが40%以上60%以下の雰囲気であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項5記載の発明は、前記請求項1乃至4いずれかの構成において、前記遮光膜は、必要な遮光特性が得られるよう前記半透過膜よりも厚い厚さで形成されたクロム膜であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項6記載の発明は、ハーフトーンマスクを製造するためのハーフトーンブランクスを製造するハーフトーンブランクスの製造方法であって、
透明基板上に半透過膜を形成する半透過膜形成工程を含んでおり、
半透過膜形成工程は、クロムより成る膜をハーフトーン露光を行うための所定の半透過特性が得られる厚さで形成して半透過膜とする工程であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項7記載の発明は、前記請求項6の構成において、前記半透過膜形成工程は、アルゴンガスと炭酸ガスの混合ガス雰囲気中でクロム製のターゲットをスパッタすることにより、前記クロムより成る膜を形成する工程であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項8記載の発明は、前記請求項7の構成において、前記混合ガス雰囲気は、混合ガスの全量に対して炭酸ガスが20%以上70%以下の雰囲気であという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項9記載の発明は、前記請求項7の構成において、前記混合ガス雰囲気は、混合ガスの全量に対して炭酸ガスが40%以上60%以下の雰囲気であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項10記載の発明は、前記請求項7乃至9いずれかの構成において、前記透明基板上に遮光膜を形成する遮光膜形成工程を含んでおり、遮光膜形成工程では、必要な遮光特性が得られるよう前記半透過膜よりも厚い厚さでクロム膜を形成する工程であるという構成を有する。
以下に説明する通り、本願各請求項記載の発明によれば、多階調露光を可能にするハーフトーンマスクの製造に使用されるハーフトーンブランクスであって、波長に対して依存性の無いハーフトーン特性を有するハーフトーンマスクを容易に製造することが可能となる。
次に、本願発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態)について説明する。
図1は、本願発明の実施形態に係るハーフトーンブランクスの断面概略図である。図1に示すハーフトーンブランクスは、透明基板1上に、半透過膜2、エッチングストッパー膜3、遮光膜4を順次形成した構造を有する。
透明基板1は、石英のような十分な光透過性を有する材料で形成されている。その上に作成される薄膜の付着性が良いことも、透明基板1の重要な要素である。
本実施形態の大きな特徴点は、遮光膜4がクロムで形成されており、半透過膜2も遮光膜4と同じクロムで形成されている点である。クロム膜の遮光性ないし光透過性は厚さによって異なるが、遮光膜4は十分な遮光性が得られる厚さであり、半透過膜2は、これより薄い、ハーフトーン露光を行うための所定の半透過特性が得られる厚さである。例えば、遮光膜4のクロムの厚さは例えば50〜80nm程度であり、半透過膜2のクロムの厚さは例えば4〜20nm程度となっている。
エッチングストッパー膜3は、遮光膜をエッチングする際に当該エッチングが半透過膜まで進行しないようにするものである。エッチングストッパー膜3は、遮光膜4のクロムをどのようにエッチングするかによって異なるが、例えばセリウム系のエッチング液を使用したウェットエッチングによる場合、酸化シリコン膜やSOG(Spin On Glass)膜とされる。また、エッチングストッパー膜をアルミニウム系の材料で形成しておくと、苛性ソーダ水溶液のような取り扱いの容易なエッチング液を使用してウェットエッチングできるので、好適である。アルミニウム系とは、アルミニウム100%の場合もあるし、耐エッチング性の向上のためシリコン又はチタンを1〜3%程度添加する場合もある。
遮光膜4の上には、本実施形態では、反射防止膜5が形成されている。反射防止膜5は、このハーフトーンブランクスから製造されるハーフトーンマスクを使用して露光を行う際、光がマスク上で反射するのを防止するものである。反射防止膜5としては、酸化クロム系の薄膜が作成される。膜厚は、300nm程度で良い。
反射防止膜5の上には、レジスト6が形成されている。レジスト6は、このハーフトーンブランクスからハーフトーンマスクを製造する際のエッチング用である。レジスト6は、マスクパターンの形状での描画を行うレーザーや電子線に対して感光する材料である。
次に、上記構成に係るハーフトーンブランクスの製造方法について説明する。以下の説明は、ハーフトーンブランクスの製造方法の発明の実施形態の説明でもある。
上述した構造を有するハーフトーンブランクスにおいて、半透過膜2、エッチングストッパー膜3、遮光膜4及び反射防止膜5は、スパッタリングにより作成される。各スパッタリングにおいて、ターゲットの材料が、上述した各膜の材料とされる。レジスト6は、スピンコーティングのような周知の方法を使用し、所定の厚さで形成される。
遮光膜4以外は、従来周知の方法で作成できる。遮光膜4の作成は、以下の方法で行われる。図2は、本願発明のハーフトーンブランクスの製造方法の実施形態の主要部の概略図を示した図である。図2には、スパッタリング装置を用いて遮光膜4を作成する状態が描かれている。
図2において、透明基板1は、スパッタチャンバー91に設けられたステージ92上に載置される。ステージ91に対向するようにして、スパッタチャンバー91内にはターゲット93が設けられる。ターゲット93の背後には、スパッタ放電のためのカソード94が設けられる。スパッタチャンバー91内は、排気系95によって所定の真空圧力に排気されるとともに、ガス導入系96によってガスが導入される。スパッタ電源97を動作させて負の直流電圧がカソード94に印加されると、スパッタ放電が生じ、ターゲット93がスパッタされ、透明基板1上にターゲット93の材料の薄膜が作成される。本実施形態では、半透過膜はクロム膜であるので、クロム製のターゲット93がスパッタされ、透明基板1上にクロム膜が作成される。
この際、本実施形態では、アルゴンガスと炭酸ガスの混合ガス雰囲気中でスパッタを行うようにしている。即ち、ガス導入系96は、図3に示すように、アルゴンガスと炭酸ガスとを混合して導入するようになっている。アルゴンガスと炭酸ガスのそれぞれの配管には、流量調整器961が設けられ、所定の流量比で導入できるようになっている。
アルゴンガスと炭酸ガスの混合ガス雰囲気中でクロム製ターゲットをスパッタすることにより半透過膜を作成することは、本願の発明者の研究の成果である。発明者の研究によると、アルゴンガスと炭酸ガスの混合ガス雰囲気中でクロム製ターゲットをスパッタすることで作成されたクロム膜は、通常のアルゴン100%の雰囲気で作成されたクロム膜に比べ、膜厚−光透過率の制御性が良好で、且つ光透過率の波長依存性が小さいことが確認された。図3は、この点を確認した実験の結果を示すものである。
図3には、アルゴン−炭酸ガス混合雰囲気中で作成された膜と、アルゴン100%雰囲気で作成された膜について、膜厚と光透過率の関係が示されている。いずれも雰囲気の圧力は5x10−3Torr程度で、アルゴン−炭酸ガス混合雰囲気におけるガスの流量比(導入比)は、ほぼ50%:50%である。
図3に示すように、アルゴン100%のクロム膜の場合、膜厚を500オングストローム程度から少なくしても光透過率の上昇は殆どなく、ゼロに近い。膜厚を300オングストローム程度まで減らすと、光透過率は若干上昇する。そして、200〜100オングストローム程度を境に、光透過率が急に上昇に転ずる。光透過率が50%となる膜厚は、50オングストローム程度であり、ほぼ1/10に膜厚を低減してやっと50%となる。また、図3から解るように、透過率50%の付近では、膜厚の変化に対する光透過率の変化は非常に大きく、わずかに膜厚が変化しただけでも光透過率は大きく異なってしまう。
一方、アルゴン50%+炭酸ガス50%のクロム膜の場合、膜厚の変化に対する光透過率の変化はほぼ一様であり、膜厚が減少すると、ほぼ一様に光透過率が上昇している。50%の光透過率が得られる膜厚は80オングストローム程度であり、この付近でも、膜厚の変化に対する光透過率の変化は、アルゴン100%の場合に比べて緩慢である。
ハーフトーン露光において必要とされる半透過膜の光透過率は、若干幅があるが、実用的には10%〜60%程度である。図3から解るように、この範囲で所定の値の光透過率を得るためには、アルゴン100%の成膜の場合、膜厚をより薄くし、且つその光透過率を得る膜厚にかなり厳しい精度で一致させて成膜しなければならない。一方、アルゴン50%炭酸ガス50%雰囲気で作成したクロム膜は、アルゴン100%雰囲気で作成したクロム膜に比べ、10〜60%程度の範囲において、膜厚は厚くて済み、且つ必要な光透過率を得るための膜厚の誤差は、広く許容される。つまり、例えば光透過率の誤差が例えば±1%の範囲で許容される場合、膜厚の許容誤差は、アルゴン100%の場合に比べてアルゴン50%炭酸ガス50%雰囲気の場合の方が大きい。従って、必要な光透過率を得るための成膜が容易である。
このような効果がなぜ生じるかについては、断定はできないが、次のようなメカニズムが作用しているとも推測できる。即ち、アルゴンと炭酸ガスの混合雰囲気中でスパッタ成膜を行うと、スパッタ放電により形成されたプラズマ中で炭酸ガスの解離が若干生じ、この結果、作成されるクロム膜が一部酸化されたり炭素が混入したりすると推測される。このような一部酸化や炭素混入により、全体として厚い膜厚で半透過特性が得られ、且つ上記のように膜厚の変化に対して光透過率が緩慢に変化する特性が得られるものと推測される。
次に、波長依存性について説明する。
図4は、実施形態の方法で作成したクロム膜の波長否依存性について示した図である。比較のため、特開平7−49410号公報で提案されている酸化クロムの膜について、波長依存性を併せて示す。図4では、異なる光透過率を得るため異なる厚さでクロム膜及び酸化クロム膜を作成した結果が示されている。具体的には、酸化クロム膜については厚さ220オングストロームと440オングストロームの光透過率が、クロム膜については、厚さ60オングストローム、160オングストロームの光透過率がそれぞれに示されている。
図4に示すように、酸化クロムの場合、波長により光透過率が大きく異なる。例えば波長400nm付近において57%の光を得るためには、図示したように220オングストロームの厚さで成膜しておけば良いが、もし使用波長が450nm程度になると、この厚さでは光透過率は64%程度にまで上昇してしまう。
一方、実施形態の方法で作成したクロム膜の場合、膜厚60オングストローム、160オングストロームのそれぞれについて、波長が変わっても光透過率はほぼ一定である。従って、図3に示す膜厚−光透過率の関係に従って所定の膜厚で作成しておくことで所望の光透過率がほぼ波長に依らず得ることができる。
上記のような波長否依存性も、やはり、作成されるクロム膜の一部酸化や炭素混入により得られると推測できる。酸化クロム膜を作成する場合、実用的には窒素と酸素の混合ガス雰囲気でスパッタを行う場合が多い。図4に示す酸化クロム膜も、この方法による。スパッタ放電が生じると、窒素と酸素のプラズマ中でクロムが酸化され、透明基板上に酸化クロム膜が作成される。膜中には、若干窒素が混入する。このように作成した酸化クロム膜は、酸化が全膜中で生じていて、この点が実施形態の方法による膜と異なると思われる。図4に示すような波長依存性の有無は、このような酸化の度合いの違いに一因があるものと推測される。
また、実施形態の方法によれば、所定の膜厚を得るための成膜時間の制御の点でも好適である。即ち、アルゴンはスパッタ率(一つのガス分子がターゲット表面を叩いた際にスパッタ原子が放出される確率)が非常に高いガスであり、スパッタ用ガスとして最も広く使用されている。これに比べると、炭酸ガスがスパッタ率が劣るガスである。言い換えると、100%アルゴンに代えてアルゴン+炭酸ガス混合雰囲気でスパッタを行うと、全体のスパッタ率は低下し、従って成膜速度は低下する。
上述したように光透過率は膜厚に依存するから、必要な光透過率を得るには膜厚を最適に制御する必要がある。この点、100%アルゴン雰囲気の高い成膜速度で成膜すると、不可避的に発生する膜厚のばらつきが光透過率のばらつきに与える影響が大きくなってしまう。即ち、成膜時間を一定に制御しても膜厚のばらつきが大きくなり易く、結果的に光り透過率のばらつきが限度以上に大きくなり易い。
一方、実施形態の方法のようにアルゴン+炭酸ガス混合雰囲気下の低い成膜速度で成膜すると、成膜速度が適度に低くなるので、膜厚のばらつきが抑えられ、結果的に光透過率のばらつきも限度以下に抑えられる。
上記のような膜厚変化に対する光透過率変化の緩慢化や光透過率の波長否依存性等の効果を得るためには、混合ガスの混合ガスの全量に対して炭酸ガスを20%以上70%以下の量としておくことが好ましく、混合ガスの混合ガスの全量に対して炭酸ガスを40%以上60%以下の量としておくことがより好ましい。このようなガスの混合比の調整は、ガス導入系96に設けた流量調整器961を制御することで行える。
尚、上述したように、実施形態の製造方法によれば、半透過膜2としてクロム膜は一部が酸化し、炭素が混入する。この点は、実施形態の製造方法により形成された半透過膜2が、実施形態の製造方法によらずに通常の方法で形成されたクロムの半透過膜と峻別される点になる。
次に、実施形態のハーフトーンブランクスから製造するハーフトーンブランクス及びその製造工程について、図5及び図6を参照しながら説明する。図5及び図6は、図1に示すハーフトーンブランクスからハーフトーンマスクを製造する工程の概略を示した図である。図7は、図5及び図6に示す工程により製造されたハーフトーンマスクの断面概略図である。
製造されるハーフトーンマスク7は、図3に示すように、遮光部71と、ハーフトーン部72と、透光部73とを有するものであり、これらが、デバイス基板8に転写すべきマスクパターンの形状とされるものである。
まず、遮光部71用の露光及び現像を行い、遮光部71の形状に一致したレジストパターン61を得る(図5(1))。次に、反射防止膜5及び遮光膜4のエッチングを行う。反射防止膜5及び遮光膜4はクロム系であるので、セリウム系のエッチング液を使用したウェットエッチングとすることが好ましい。セリウム系のエッチング液としては、例えば硝酸第二セリウムアンモニア水溶液が使用される。
このエッチングにより、遮光部71を構成する遮光膜4のパターンが得られる(図5(2))。このエッチングの際、エッチングストッパー膜3が存在しているので、エッチングは、エッチングストッパー膜3及びその下の膜までは進行せず、上側の反射防止膜5及び遮光膜4のみがエッチングされる。
次に、エッチングストッパー膜3のエッチングを行う。実施形態に係るハーフトーンブランクスでは、エッチングストッパー膜3はアルミ系であるので、苛性ソーダ水溶液によるウェットエッチングとすることが好ましい。例えば、10〜15%程度の苛性ソーダ水溶液が用いられる。このエッチングにより、遮光部71に相当する部分を残してエッチングストッパー膜3が除去される(図5(3))。その後、レジスト61が除去される。レジスト除去は、有機アルカリ液を使用するか、ドライ処理(酸素プラズマアッシング)により行われる。
その後、洗浄工程を経てレジスト62の塗布が再び行われる。レジスト62は、図5(4)に示すように、全面に塗布される(図5(4))。
そして、透光部73用の露光、現像が行われる。これにより、透光部73の形状に一致した開口部を有するレジストパターン62が得られる(図6(1))。
次に、半透過膜2のエッチングが行われる。半透過膜2は上述したようにクロム系の膜であるので、同様にセリウム系エッチング液によるウェットエッチングが好適に採用できる。このエッチングにより、透光部73のパターンで半透過膜2が除去されて透明基板1の表面が露出し、透光部73が形成される(図6(2))。
その後、レジスト62を除去すると、遮光部71及びハーフトーン部72が出現し、ハーフトーンマスク6が出来上がる(図6(3))。
図3には、上記工程により製造したハーフトーンマスク7を使用した露光について模式的に示されている。図3に示すように、露光光源からの光L1がハーフトーンマスク6を透過し、透過した光L2がデバイス基板8に結像し、デバイス基板8が露光される。この際、透光部73を透過した光L2はほぼ100%の光量でデバイス基板8上で結像し、ハーフトーン部72を透過した光L2は、100%より少ない所定の光量でデバイス基板8上に結像する。遮光部71においては光の透過はほぼ0%であり、この部分の像はデバイス基板8上で実質的に結像しない。図6中に、光量を矢印の幅で示す。このように、このハーフトーンマスクによれば、三階調の露光が可能となる。ハーフトーン部72における光の透過率は、適宜設定し得るが、例えば10〜60%の範囲で適宜選定し得る。
上述した製造方法によれば、エッチングストッパー膜3が半透過膜2のエッチングを防止するので、遮光膜4のエッチングの際には半透過膜2は何らエッチングされず、“膜減り”は生じない。従って、半透過膜2は、ハーフトーンブランクスを製作した際の状態のまま高い膜厚均一性を保つ。
尚、エッチングストッパー膜3は、製造されたハーフトーンマスクにおいて残留した状態となるが、図6に示すように、本実施形態では、エッチングストッパー膜3は、遮光部71のパターンにエッチングされた状態で残留するのみであるので、マスク性能には特に影響を与えない。従って、光学的にはエッチングストッパー膜3はどのような材料であっても良い(所定の屈折率を持つことは必要ではない)。
また、ハーフトーン部72を、いわゆる位相シフト部として構成し、ハーフトーンマスクをハーフトーン位相シフトマスクとすることも可能である。位相シフトマスクは、露光の解像度を向上させるための技術の一種であり、半透過位相シフト部を透過する光の位相が、透光部を透過する光に対して180度異なる(反転する)ようにするものである。透光部と半透過位相シフト部との境界部分での光強度はほぼゼロとなるので、光強度分布の広がりが抑えられ、解像度の高い露光を行うことが可能となる。
位相シフト部として構成する場合、半透過膜2の厚さを所定の値にする必要がある。位相を反転させるのに必要な半透過膜2の厚さtは、t=λ/{2(n−n)}で与えられる。λは露光波長、nは半透過膜2の屈折率、nは空気の屈折率である。使用する露光波長及び半透過膜2の屈折率に応じて、この式を満たす厚さで半透過膜2を形成しておく。
尚、ハーフトーンマスクは、事後的に半透過膜を形成することで製造する場合もあるが、これに比べると、実施形態のハーフトーンブランクスによれば半透過膜の形成は不要であり、フォトマスクの生産設備において成膜装置を備えたり、また外部に成膜を依託することは必要がない。従って、製造コストがかさむことはなく、移動の問題も生じない。
また、本実施形態では、遮光膜4についても半透明膜2同様にクロム膜としているので、半透過膜2のエッチング装置を兼用して遮光膜4のエッチングを行うことができる。この点でも設備の簡略化ができる。
また、上記説明において、遮光膜4、エッチングストッパー膜3及び半透過膜2のエッチングはウェットエッチングであると説明したが、ドライエッチングを行うことも可能である。遮光膜4と半透過膜2が同じクロム系であるために同じエッチング液を使用して同時にエッチングできるメリットを説明したが、このメリットは、ガスの種類等を適宜選定することで、ドライエッチングの場合でも同様に得られる。
また、上記実施形態のハーフトーンブランクスは、三階調のハーフトーンマスクを製造するためのものであったが、本願発明のハーフトーンブランクスは、四階調やそれ以上の多階調のハーフトーンマスクを得ることを排除するものではない。四階調以上のハーフトーンマスクにおいても、三階調の露光量変化の達成していることには変わりがない。
本願発明の第一の実施形態に係るハーフトーンブランクスの断面概略図である。 本願発明のハーフトーンブランクスの製造方法の実施形態の主要部の概略図を示した図である。 実施形態のハーフトーンブランクスの効果を確認した実験の結果を示す図である。 実施形態の方法で作成したクロム膜の波長否依存性について示した図である。 図1に示すハーフトーンブランクスからハーフトーンマスクを製造する工程の概略を示した図である。 図1に示すハーフトーンブランクスからハーフトーンマスクを製造する工程の概略を示した図である。 図5及び図6に示す工程により製造されたハーフトーンマスクの断面概略図である。
符号の説明
1 透明基板
2 半透過膜
3 エッチングストッパー膜
4 遮光膜
5 反射防止膜

Claims (10)

  1. 透明基板上に、半透過膜、エッチングストッパー膜、遮光膜を順次形成した構造のハーフトーンブランクスであって、
    エッチングストッパー膜は、遮光膜をエッチングする際に当該エッチングが半透過膜まで進行しないようにするものであり、
    半透過膜は、クロムより成る膜であってハーフトーン露光を行うための所定の半透過特性が得られる厚さで形成されていることを特徴とするハーフトーンブランクス。
  2. 前記半透過膜は、アルゴンガスと炭酸ガスの混合ガス雰囲気中でクロム製のターゲットをスパッタすることにより形成された膜であることを特徴とする請求項1記載のハーフトーンブランクス。
  3. 前記混合ガス雰囲気は、混合ガスの全量に対して炭酸ガスが20%以上70%以下の雰囲気であることを特徴とする請求項2記載のハーフトーンブランクス。
  4. 前記混合ガス雰囲気は、混合ガスの全量に対して炭酸ガスが40%以上60%以下の雰囲気であることを特徴とする請求項2記載のハーフトーンブランクス。
  5. 前記遮光膜は、必要な遮光特性が得られるよう前記半透過膜よりも厚い厚さで形成されたクロム膜であることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のハーフトーンブランクス。
  6. ハーフトーンマスクを製造するためのハーフトーンブランクスを製造するハーフトーンブランクスの製造方法であって、
    透明基板上に半透過膜を形成する半透過膜形成工程を含んでおり、
    半透過膜形成工程は、クロムより成る膜をハーフトーン露光を行うための所定の半透過特性が得られる厚さで形成して半透過膜とする工程であることを特徴とするハーフトーンブランクスの製造方法。
  7. 前記半透過膜形成工程は、アルゴンガスと炭酸ガスの混合ガス雰囲気中でクロム製のターゲットをスパッタすることにより、前記クロムより成る膜を形成する工程であることを特徴とする請求項6記載のハーフトーンブランクスの製造方法。
  8. 前記混合ガス雰囲気は、混合ガスの全量に対して炭酸ガスが20%以上70%以下の雰囲気であることを特徴とする請求項7記載のハーフトーンブランクス。
  9. 前記混合ガス雰囲気は、混合ガスの全量に対して炭酸ガスが40%以上60%以下の雰囲気であることを特徴とする請求項7記載のハーフトーンブランクス。
  10. 前記透明基板上に遮光膜を形成する遮光膜形成工程を含んでおり、遮光膜形成工程では、必要な遮光特性が得られるよう前記半透過膜よりも厚い厚さでクロム膜を形成する工程であることを特徴とする請求項7乃至9いずれかに記載のハーフトーンブランクスの製造方法。
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