JP2008200739A - 金属溶湯脱ガス装置用回転部材、およびこの部材を用いて構成される金属溶湯脱ガス装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】脱ガス装置の回転体構造を簡素化すると共に、回転シャフトを高速で回転させることなく溶湯中に吐出された処理ガスの気泡を微細、かつ均質に拡散させることが可能であり、ガス吐出部下部における泡溜まりの発生をも抑制することのできる、金属溶湯脱ガス装置用回転部材およびそれを用いた金属溶湯脱ガス装置を提案する。
【解決手段】金属溶湯中に処理ガスを供給するための中空状回転部材であって、この部材本体は、一文字状または十文字状の中空体からなり、かつ開気孔径が5〜100μm、気孔率が10〜50%の多孔質体からなること。
【選択図】図1
【解決手段】金属溶湯中に処理ガスを供給するための中空状回転部材であって、この部材本体は、一文字状または十文字状の中空体からなり、かつ開気孔径が5〜100μm、気孔率が10〜50%の多孔質体からなること。
【選択図】図1
Description
本発明は、アルミニウム等の金属溶湯中の不純物(水素ガス、酸化物、非金属介在物等)を除去するための、金属溶湯脱ガス装置用回転部材およびこの部材を用いて構成される脱ガス装置に関する。
アルミニウム等の金属鋳造に当たっては、その金属(アルミニウム)溶湯中に、大気中の水分が入り込むと、それが、水素ガスや酸化物、非金属介在物等の不純物となって生成し、鋳造後の製品にピンホールや内部欠陥を発生させる原因となる。
そのため、従来より、金属溶湯中に、主にアルゴンガス、窒素ガス、塩素ガス等からなる処理ガスを吹込み、その処理ガスによって不純物を吸着除去する、脱ガス処理が広く行われている。
このような脱ガス処理においては、不純物の吸着除去を向上させるため、この金属溶湯中に吹込む処理ガスを、該溶湯中に均一に拡散させると共に、該溶湯中の処理ガス気泡径を微細にして、気泡の単位あたりの表面積、すなわち気泡の比表面積を大きくすることが重要とされている。とくに、処理ガスの気泡径が微細だと、気泡の浮力による溶湯上面への上昇が遅くなり、溶湯中での滞留時間が長くなって、不純物除去効果を上げることができる。そのため、従来より、溶湯中に吹込まれた処理ガスを均一に拡散させると共に、気泡径を微細化させる様々な技術が提案されている。
例えば、回転シャフトの下端にガス吐出口を設け、処理ガスを溶湯中に吹込んだ後、回転シャフトの回転運動により、ガス吐出口の上部に設けられた羽根等によって処理ガスの気泡を剪断し、気泡を微細化して拡散させる方法(特許文献1〜3)や、ガス流出部をポーラス素材によって形成し、回転体の周面よりガス吐出を行う方法などがある(特許文献4)。
特開2004−143843号公報
特開平2−115323号公報
特開平11−12662号公報
特許第3520286号公報
しかしながら、上記従来技術では、金属溶湯の比重が大きい為に、微細化した気泡の結合が起こりやすく、さらに、処理ガスの吐出部が回転羽根よりも下方にあるため、吐出された処理ガスが、回転羽根による旋回流によってガス流出部下部に押し込まれてしまい、逆円錐状の泡溜りを生じやすいという問題点があった。この泡溜りが生じると、気泡同士が結合して大きな気泡となってしまう。気泡は、ある程度の大きさになると浮力によって溶湯中を上昇し始めるが、比表面積が小さいために効果的に脱ガスを行うことができず、さらに気泡径がφ5mm以上になると、充分な脱ガス効果が得られないうちに大気中に放出されてしまう。
さらに、特許文献1〜3に記載の従来技術では、処理ガスの気泡を微細化させるため、回転シャフトを高速(500rpm程度)で回転させる必要がある。ところが、その回転数が高速になると、溶湯表面が旋回流によって波打ち、溶湯表面と接触している大気が溶湯中に巻き込まれて、却って溶湯の清浄化の妨げとなっていた。そのため、従来より、旋回流による溶湯面の波打ちを抑制する様々な工夫(邪魔板を設けたり、回転方向を正逆反転させるなど)がされているが、いずれも装置が複雑化してしまい、製造コストが増加するという問題点があった。
本発明は、上記従来技術の抱える問題点を解決し、脱ガス装置の回転体構造を簡素化すると共に、回転シャフトを高速で回転する必要がなく、金属溶湯中に吐出された処理ガスの気泡は微細かつ均質に拡散させることが可能であり、しかもガス吐出部下部における泡溜まりの発生をも抑制することのできる、金属溶湯脱ガス装置用回転体およびそれを用いた金属溶湯脱ガス装置を提案するものである。
すなわち、本発明は、金属溶湯中に処理ガスを供給するための中空状回転部材であって、この部材本体は、一文字状または十文字状の中空体からなり、かつ開気孔径が5〜100μm、気孔率が10〜50%の多孔質体からなることを特徴とする金属溶湯脱ガス装置用回転部材を提案するものである。
なお、本発明の回転部材においては、前記部材本体が、窒化珪素質セラミックスからなることが好ましい。
また、本発明は、回転駆動機に接続されるパイプ状回転シャフトと、この回転シャフトの下端部に取り付けられた回転部材とからなる、金属溶湯中の不純物を除去するための脱ガス装置において、前記回転部材は、その部材本体が、一文字状または十文字状の中空体からなり、かつ開気孔径が5〜100μm、気孔率が10〜50%の多孔質体からなるものであることを特徴とする金属溶湯用脱ガス装置を提案するものである。
なお、本発明の金属溶湯用脱ガス装置においては、前記回転部材は、その下面が、開気孔を目封止するセラミックス系充填剤によって被覆されていること、前記回転部材は、窒化珪素質セラミックスからなること、および前記回転シャフト下端部には、前記回転部材中空部に面して、1〜複数のガス供給口が設けられていることが好ましい。
本発明では、中空状の多孔質体を用いて、処理ガスの溶湯中への望ましい供給、剪断および拡散を行う回転部材を提供できることから、従来、ガス流出部と回転羽根とに分かれていた構成部材を一体化させることができる。そのため、脱ガス装置は、回転部材とパイプ状回転シャフトのみから構成することができるようになり、脱ガス装置の構造を簡素化することができる。
さらに、本発明によれば、前記回転部材を多孔質体で形成したことにより、溶湯中に吹込まれた処理ガスの気泡を、φ1mm程度の微細なものとすることができ、脱ガス効率を向上させることができる。従って、パイプ状回転シャフトの回転数を高速にする必要がなく、旋回流による湯面の波打ちを抑制して脱ガス処理を効果的に行うことができる。
さらに、回転部材下面の開気孔を目封止したことにより、回転部材下部に泡溜りが形成されるようなことがなく、微細で均質な気泡が発生され、脱ガス効率を向上させることができる。
さらに、本発明によれば、前記回転部材を多孔質体で形成したことにより、溶湯中に吹込まれた処理ガスの気泡を、φ1mm程度の微細なものとすることができ、脱ガス効率を向上させることができる。従って、パイプ状回転シャフトの回転数を高速にする必要がなく、旋回流による湯面の波打ちを抑制して脱ガス処理を効果的に行うことができる。
さらに、回転部材下面の開気孔を目封止したことにより、回転部材下部に泡溜りが形成されるようなことがなく、微細で均質な気泡が発生され、脱ガス効率を向上させることができる。
本発明にかかる金属溶湯用脱ガス装置は、第1に、従来のガス吐出部および回転羽根の機能、すなわち金属溶湯への処理ガスの供給、剪断および拡散機能を、回転部材に兼用させたところに特徴がある。この構成により、脱ガス装置は、回転部材と回転シャフトのみから構成されることになり、装置が簡素化され、製造コストが低減されると共に、メンテナンスが容易となる。
以下、本発明の金属溶湯用脱ガス装置の実施の態様について説明する。図1は、本発明の金属溶湯用脱ガス装置の一実施例であり、主にアルミニウム等の金属溶湯容器1と、その中に挿入される回転体2、該回転体2を回転させための回転駆動機3、処理ガス供給パイプ4、および回転体2と回転駆動機3とを接続するための接続用フランジ5から構成される。そして、回転体2は、図1に示したように金属溶湯用容器1内の溶湯中に挿入された後、駆動機3によってその全体が回転する。このことにより、この回転体2から溶湯中に吐出された処理ガスは、効率よく剪断されると共に、溶湯中に広く拡散させることができる。
前記回転体2は、図2(a)の正面図に示したように、接続用フランジ5、回転シャフト6および回転部材7から構成される。回転シャフト6および回転部材7は、図2(b)に示したように中空状である。回転体2上部の処理ガス供給パイプ4から回転シャフト6内に吹込まれた処理ガスは、回転シャフト6下端部の回転部材7中空部に面した位置に設けられたガス供給口8を通って、回転部材7内に溜められる。なお、回転シャフト6の下端は、止めナット9によって封止され、供給ガスが漏れ出さないようになっている。
本発明の特徴は、上述したように回転部材7の構造にある。その回転部材7は、多孔質体にて構成されていると共に、その多孔質の程度は、開気孔径が5〜100μm、気孔率が10〜50%のものである。回転部材7を、このような多孔質体としたことにより、処理ガスは、回転部材7の各開気孔からφ1mm程度の気泡となって溶湯中へ吐出され、その後、この気泡は、該回転部材7の回転によって剪断作用を受けて細かくなってから、溶湯全体に拡散されていくことになる。なお、この多孔質体の前記開気孔径は、5〜100μmにすることが好ましく、より好ましくは、10〜20μm程度である。また、多孔質体の気孔率は、10〜50%であることが好ましく、より好ましくは10〜20%である。なお、その開気孔径は、多孔体表面の顕微鏡写真から、気孔の大きさと顕微鏡の倍率に基づいて算出したものであり、また、気孔率は、アルキメデス法(JIS R−1634)により算出したものである。
開気孔径を上記範囲としたのは、気孔径が100μm超になると、回転部材7よりφ1mm程度の微細な気泡を放出することが難しくなると共に、金属溶湯が気孔を通って多孔質体内部に浸入するおそれがあり、一方、5μmよりも小さい場合には、気孔から処理ガスが放出しにくくなるため、処理ガスのガス圧やガス流量を増加させる必要が生じてしまうためである。
また、気孔率を10〜50%としたのは、気孔率が50%超になると、多孔質体の強度が低下する為、回転運動による抵抗によって折損する恐れがあり、一方、気孔率が10%よりも小さい場合には、多孔質体表面の気孔数が少なくなる為に充分な脱ガス効果が得られないためである。
このように、本発明では、処理ガスがφ1mm程度の微細な気泡となって吐出するようになるため、従来のように回転体を高速で回転させて気泡を微細化させる必要がない。従って、本発明の部材・装置では、溶湯表面が旋回流によって大きく変動するようなことがない。なお、本発明では、回転体の回転数を50〜200rpm程度まで低速とした場合でも、気泡を剪断、拡散することが可能であり、充分な脱ガス効果が得られる。
なお、回転部材7を形成する多孔質体および中空状の回転シャフト6は、窒化珪素質セラミックスから形成されることが好ましい。これは、金属溶湯に対して優れた耐食性があり、また回転運動による抵抗への強度を保つ為である。
回転部材7の形状は、図2(a)に示したような一文字状形態の他、図3のように2つの中空状の多孔質体を直交させるように上下に重ね合わせた形態のもの、また図4のように中央部に凹部を有する同じ形状の2つの多孔質体を組み合わせてなるものなどにより、十文字状としたものであってもよい。この場合、回転シャフト6下端部には、回転部材7の中空部と面する位置に、1〜複数のガス供給口8を設け、その各ガス供給口8から、回転部材7中空部へ処理ガスが供給されるようにする。
さらに、本発明においては、回転部材7の下面の開気孔が充填剤層10によって被覆され、目封止されたものにすることが特徴である。この充填剤層10を形成する充填剤としては、市販されているようなセラミック系充填剤を用いることができる。この充填剤は、回転部材7下面に0.1〜0.5mm程度の厚さで、吹付けまたは刷毛塗りによって被覆した後、約150℃で乾燥して硬化することにより充填剤層10を形成すると共に、その充填剤を前記多孔質体の開気孔中に浸入させて充填させる。なお、上記充填剤は、回転シャフト6を回転部材7に嵌め入れて接合する際にも使用することができる。
従来技術では、処理ガス吐出部が回転羽根の下方にあるため、処理ガスが、回転羽根の旋回流によって上昇できず、処理ガス吐出部下部に泡溜まりを形成していた。以上説明した構成を有する本発明は、処理ガスの吐出部となる回転部材7が回転羽根を兼用していると共に、回転数が低速であるため旋回流が発生しないこと、さらには該回転部材7の底面からの処理ガスの吐出を封じたことにより、回転部材7下部での泡溜まりの発生が抑制され、気泡が微細なままゆっくりと上昇するようになり、脱ガス効率を向上させることができる。
表1の本発明にかかる脱ガス装置(実施例)と、従来のカーボン製ローターを用いた脱ガス装置(比較例)とを用いて脱ガス処理を行い、その際の気泡および液面の状態を水中試験により観察した。
まず、内径28cm×28cm×高さ59cmの水槽に、高さ40cmまで水を入れ(約31L)、その中に本発明と比較例の回転体を水深30cmまで浸水させた。次に、回転シャフトの上端より3L/minの空気を送気すると共に、可変式のスタラーを用いて回転体を、一定の回転数(50rpm、100rpm、200rpm、300rpm)で回転させ、水中での気泡の状態と液面の状態を目視により観察した。その結果を表2および図5、6に示す。なお、本実験では、金属溶湯の代わりに水を用いると共に、処理ガスとして空気を用いたが、実際にAl等の金属溶湯中に、N2ガスやArガスなどの処理ガスを吐出した場合にも同様な結果が得られるものである。
表2および図5から分かるように、本発明では、静止状態においてもφ0.5〜1mmの微細な気孔が、多孔質体からなる回転部材より発生するのが確認された。また、100〜200rpmの低速回転を与えた場合には、液面がわずかに変動するものの、微細な気泡の放出と拡散が行われ、低速回転でも充分な攪拌効果が得られることがわかった。
一方、比較例では、表2および図6に示したように、200rpm以上の回転数を与えることによって始めて気泡の剪断効果が現われたが、気泡径はφ2〜4mm程度までしか微細化できなかった。
上記の通り、比較例では微細な気泡を放出させるため、ローターをさらに高速で回転させる必要があるが、本発明では、静止状態においてもφ1mm程度の気泡を発生させることができると共に、100〜200rpmの低速回転を与えることにより、さらに微細な気泡を放出、拡散させることができるようになる。したがって、本発明によれば、気泡の比表面積を大きくすることが可能となり、充分な脱ガス効果が期待できる。
本発明は、アルミニウム等の金属鋳造において、金属溶湯中に含まれる不純物を、アルゴンガス、窒素ガス、塩素ガス等の処理ガスを吹込むことにより吸着・除去するものである。
1 金属溶湯容器
2 回転体
3 駆動機
4 処理ガス供給パイプ
5 接続用フランジ
6 回転シャフト
7 回転部材
8 ガス供給口
9 止めナット
10 充填剤層
2 回転体
3 駆動機
4 処理ガス供給パイプ
5 接続用フランジ
6 回転シャフト
7 回転部材
8 ガス供給口
9 止めナット
10 充填剤層
Claims (6)
- 金属溶湯中に処理ガスを供給するための中空状回転部材であって、この部材本体は、一文字状または十文字状の中空体からなり、かつ開気孔径が5〜100μm、気孔率が10〜50%の多孔質体からなることを特徴とする金属溶湯脱ガス装置用回転部材。
- 前記部材本体が、窒化珪素質セラミックスからなることを特徴とする請求項1に記載の金属溶湯脱ガス装置用回転部材。
- 回転駆動機に接続されるパイプ状回転シャフトと、この回転シャフトの下端部に取り付けられた回転部材とからなる、金属溶湯中の不純物を除去するための脱ガス装置において、前記回転部材は、その部材本体が、一文字状または十文字状の中空体からなり、かつ開気孔径が5〜100μm、気孔率が10〜50%の多孔質体からなるものであることを特徴とする金属溶湯用脱ガス装置。
- 前記回転部材は、その下面が、開気孔を目封止するセラミックス系充填剤によって被覆されていることを特徴とする請求項3に記載の金属溶湯用脱ガス装置。
- 前記回転部材は、窒化珪素質セラミックスからなることを特徴とする請求項3または4に記載の金属溶湯用脱ガス装置。
- 前記回転シャフト下端部には、前記回転部材中空部に面して、1〜複数のガス供給口が設けられていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の金属溶湯用脱ガス装置。
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2007
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