JPH0790406A - アルミニウム及びアルミニウム合金溶湯の脱ガス法及びその装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】 アルミニウム又はアルミニウム合金溶湯中に
処理ガスを吹き込んで脱ガスを行う。処理ガスを処理ガ
ス通路を有する回転シャフト下部から溶湯中に吹き込
み、この処理ガス気泡を、２個以上の羽根状回転体を同
一シャフトに組み合わせてなる複合回転体の回転により
微細化する、脱ガス方法とその装置。 【効果】 アルミニウム又はアルミニウム合金溶湯の脱
ガス処理において、ガス気泡を均一微細化して脱ガス効
率を高め、かつ、ローターの回転による溶湯表面のくぼ
みを抑制し、溶湯合金中への不純物、介在物の混入、酸
化物の発生、巻込みを低減し、アルミニウム又はアルミ
ニウム合金鋳塊の高品質化を図る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、アルミニウム及びアル
ミニウム合金溶湯の脱ガス処理方法とそれに用いる好適
な処理装置に関するものである。さらに詳しく言えば、
アルミニウム及びアルミニウム合金溶湯の脱ガス技術を
改良し、鋳塊の内部品質を向上させる方法及びそれに用
いる処理装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】アルミニウム及びアルミニウム合金の鋳
造において、溶湯中に含有される水素ガス及び酸化物等
の介在物、不純物など（以下、単に介在物という）を除
去するために不活性ガスなどを吹き込む溶湯処理が行わ
れている。特に近年要求品質の向上に伴い、従来問題と
されていなかったレベルの含有ガス及び含有介在物の除
去が必要となってきている。かかる溶湯処理には種々の
方法が実用化されているが、処理効率の優れた回転ノズ
ル式インライン溶湯処理装置が多用されつつある。

【０００３】図３にこのインライン脱ガス装置の１例
（アルコア社製Ａ６２２）の模式図を示す。同図におい
て、１はアルミニウム又はアルミニウム合金溶湯、２は
処理ガス気泡、３は仕切り板、４は処理槽、５は回転シ
ャフト、６はシャフトに取り付けたローターを示す。こ
の装置は処理槽４とシャフト５及びその先端に取りつけ
てあるローター６により構成されている。１３は溶湯の
入口、１４は処理溶湯の出口である。従来このシャフト
は図４（Ａ）、（Ｂ）に示すように中空構造で、アルミ
ニウム溶湯中に吹き込まれるＡｒ、Ｃｌ₂ 等の処理ガス
の通り道７を有し、その先端７ａから吐出された処理ガ
スを回転するローター６により破砕するようにする。ア
ルミニウム溶湯中の脱ガスは処理ガスと溶湯との水素分
圧の差により溶湯中の水素が処理ガスに拡散し、その混
合ガスが溶湯中を浮上し大気中に放出されることで達成
される。ところでバブリングパターン（処理ガス気泡の
大きさ、均一性、分散状態）を良くして処理効果を高め
るには、ローターの回転数、形状及び処理ガス量が重要
となる。しかし、ローターの回転数は高回転であればあ
るほど処理ガスは細かくなるが溶湯が処理槽内で回転運
動を起こしやすくなり、その結果溶湯面がすり鉢状にく
ぼみ溶湯表面に浮いている酸化物、その他の介在物を溶
湯中に巻き込むという問題がある。また処理ガス量が多
くなると処理ガス気泡が大きくなり溶湯表面を乱すため
酸化物の発生量が増加する問題もある。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】単体の羽根型タイプの
ローターでバブリングを微細均一にするためにはロータ
ー回転数のアップは避けられない。しかしある一定以上
の回転数になると処理槽内の溶湯も回転運動を起こし、
溶湯面がすり鉢状にへこみ溶湯面上に浮いている酸化物
その他の介在物を溶湯内に巻き込んでしまう。その結果
鋳塊内部に酸化物等の異物が混入し、製品の特性に悪影
響を及ぼす。またさらに下流に設置されているフィルタ
ーにそれら異物が流れ込みフィルターの目詰まりを起こ
しやすくしフィルター寿命を極端に短くする。また、溶
湯の回転運動を防ぐためにユニット内に仕切り板等を設
置した例もあるが（軽金属学会誌１９９０年、第４０
巻、第４号、２９０頁）、実操業ではメンテナンスが大
変であるとともにバブリングの合体も起こりやすく脱ガ
ス効率が悪くなる弊害がある。回転ノズル式インライン
溶湯処理方法として知られるスニフ法は特殊ノズルを利
用し回転子のせん断作用によりバブリングを細かくし溶
湯の摩擦も少なく優れているが、装置が複雑であり、メ
ンテナンスが大変であるとともにバッチ処理ができない
等のデメリットがある。本発明は上記従来技術の欠点を
解消し、しかも簡易にアルミニウム溶湯の脱ガス効率を
向上することができる処理方法と装置を提供することを
目的とするものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の従来
の溶湯の脱ガス処理方法の欠点を克服するため種々検討
を重ねた結果、溶湯を撹拌するローターとして同一シャ
フトに形状の異なる２種以上の羽根状回転体を組み合わ
せた回転体もしくは同一形状の２つ以上の羽根状回転体
を羽根の位置をずらして組み合わせた回転体を取りつけ
たものを用い、これで吹き込みガスの気泡を破砕、微細
均一化することにより、処理槽内の溶湯の回転を抑えて
脱ガス処理効果を顕著に高め得ることを見出し、この知
見に基づき本発明をなすに至った。すなわち本発明は
（１）アルミニウム又はアルミニウム合金溶湯中に処理
ガスを吹き込んで脱ガスを行うに当り、処理ガスを回転
シャフト下部から溶湯中に吹き込み、発生した処理ガス
気泡を２個以上の羽根状回転体を同一シャフトに組み合
わせてなる複合回転体の回転により、微細化することを
特徴とするアルミニウム及びアルミニウム合金溶湯の脱
ガス方法、及び（２）アルミニウム又はアルミニウム合
金溶湯中に処理ガスを吹き込んで脱ガスを行う装置にお
いて、処理ガスを供給する通路を有し、下部に吹き出し
孔を有する回転シャフトに２個以上の羽根状回転体を組
み合わせてなる複合回転体を設けたことを特徴とするア
ルミニウム及びアルミニウム合金溶湯の脱ガス装置を提
供するものである。本発明の脱ガス装置において２個以
上の羽根状回転体は形状及び大きさが互いに同じでも異
なっていてもよい。この羽根状回転体はシャフトの下部
に設けるのが好ましい。

【０００６】

【実施例】次に、本発明のアルミニウム又はアルミニウ
ム合金の溶湯処理装置（以下、単に処理装置という）の
１実施例を図面に従って説明する。本発明の処理装置は
図３の回転シャフト５及びローター６の部分以外は従来
の処理装置と基本的に同様でよい。図１（Ａ）、（Ｂ）
は本発明に用いられる撹拌体の１例であり、（Ａ）は正
面図及び（Ｂ）は底面図であり、１０は内部にガス通路
１１を有するシャフトである。９はシャフトの下部に設
けた複合回転体である。図１の複合回転体９は同一形状
の羽根状回転体１５を羽根８の位置をずらして組み合わ
せて設け、さらに２つのローター１５及び１５の間にス
ペーサー１７を取りつけた例である。スペーサーは無く
てもよい。１２はガス吹き出し孔である。図２は撹拌体
の他の実施例であり、複合回転体１８は大きさの異なる
２種類の羽根状回転体１５と１６から形成される。さら
に、ローター１５と１６の間にスペーサーをいれてもよ
い。

【０００７】羽根状回転体の材質はアルミニウム及びア
ルミニウム合金溶湯中に耐えることができればどのよう
な材質でもよいがカーボン、炭化珪素及び窒化珪素が好
ましい。特に窒化珪素は厚物の成形が難しく高価なもの
であるので薄物ローターを重ねて使用することは有効で
ある。また回転体の形状、羽根の数及び形状には特に制
限はない。図１及び２の処理装置で複合回転体は２枚の
羽根状ローターからなるが、複合回転体の羽根状回転体
の数はこれに限定されるものではなく、２個以上の任意
の羽根状ローターを用いることができる。処理槽の大き
さは底面積が０．６〜４．０ｍ² 位のものが好ましく、
ローターの回転数は１００〜６００ｒｐｍが好ましい。

【０００８】〔脱ガス処理例〕次に本発明方法による脱
ガス処理の実施例を示す。図３の処理槽を用い、ロータ
ーとして図１（Ａ）、（Ｂ）に示す複合回転体（ロータ
ー直径２５０ｍｍ、厚さ８ｍｍ、スペーサー直径１２０
ｍｍ、厚さ８ｍｍ）を用いた。ローター回転数は２０
０、３００ｒｐｍとし、処理ガスとしてＡｒを２．０、
３．０Nm³/h 吹き込んだ。ローター１本で、処理量は７
５kg/min、処理槽容量はアルミニウム溶湯で８００ｋｇ
のものを使用した。処理するアルミニウム及びアルミニ
ウム合金溶湯は１１００、３００３及び７０７５合金の
３種類とし、比較のために図３に示す従来の装置そのも
の（Ａ６２２インライン脱ガス装置）による処理も行っ
た。処理効果の確認は、処理前後の溶湯中の水素ガス含
有量を測定し、脱ガス効率を出した。また溶湯面の巻き
込みによる酸化物の混入については、製造した鋳塊を１
０ｍｍ厚さまで圧延し水酸化ナトリウム水溶液にてエッ
チングし表面に観察される酸化物の個数を測定した。処
理溶湯１１００、３００３及び７０７５合金についての
実験結果をそれぞれ表１〜表３に示した。

【０００９】

【表１】

【００１０】

【表２】

【００１１】

【表３】

【００１２】次に、同じように図３の処理槽を用い図２
（Ａ）、（Ｂ）に示す複合ローター（上部ローター直径
２５０ｍｍ、厚さ１６ｍｍ、下部ローター直径２００ｍ
ｍ、厚さ１６ｍｍ）を用いて実験を行った。ローター回
転数を２００、３００ｒｐｍとし、処理ガスとしてＡｒ
を２．０、３．０Nm³/h 吹き込んだ。ローター１本で、
処理量は７５kg/min、処理槽容量はアルミニウム溶湯で
８００ｋｇのものを使用した。処理するアルミニウム合
金溶湯は３００３合金とし、前記と同様に従来の装置に
よる処理と比較した。処理効果も同じように処理前後の
溶湯中の水素ガス含量を測定し、脱ガス効率を出した。
また溶湯面の巻き込みによる酸化物巻き込みについても
同様に鋳塊を１０ｍｍ厚さまで圧延して水酸化ナトリウ
ム水溶液にてエッチングし表面に観察される酸化物の個
数を測定した。その実験結果を表４に示す。

【００１３】

【表４】

【００１４】表１ないし４の結果より、いずれの合金に
おいても比較例に対し、本発明方法によれば、脱ガス効
率が高いのでローター回転数を下げることにより溶湯面
のへこみを小さくできるので介在物の巻き込みがなく、
酸化物巻き込みが著しく小さいことが分かる。

【００１５】

【作用】本発明によれば処理ガスと溶湯との接触面積を
大きくし、溶湯から処理ガス中への水素の拡散をより効
率的に行うことができる。それには溶湯中を浮上する処
理ガスを２枚以上の羽根状回転体によってより微細なも
のとし、単位体積の処理ガスから得られる溶湯との接触
面積をより大きくする。本発明により脱ガス効率のよい
複合回転体であるので、その回転数を下げることで溶湯
の回転運動が減り、溶湯面上に浮遊する酸化物、その他
の介在物の巻き込みを防ぐことができる。

【００１６】

【発明の効果】本発明方法によれば、アルミニウム又は
アルミニウム合金溶湯の脱ガス処理において、ガス気泡
をより均一微細化して脱ガス効率を高めるとともに、ロ
ーターの回転による溶湯表面のくぼみを抑制し、溶湯合
金中への介在物の混入、酸化物の発生を低減し、アルミ
ニウム又はアルミニウム合金鋳塊の高品質化を図ること
ができる。本発明の脱ガス装置は上記のように複合回転
体を有し、上記脱ガス方法を実施するのに好適である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の１実施例に用いられる改良型複合タイ
プローター（同一形状の２つの羽根状ローターの間にス
ペーサーを挟み２つのローターの羽根の位置をずらして
組み合わせたローター）であり、（Ａ）は正面図、
（Ｂ）は底面図である。

【図２】複合タイプローターの他の例で、異なる形状の
羽根状ローターを２つ組み合わせたローターである。
（Ａ）は正面図、（Ｂ）は底面図である。

【図３】一般的な脱ガス装置の全体を示す断面図であ
る。

【図４】従来の単体羽根タイプローターの概略図であ
り、（Ａ）は正面図、（Ｂ）は底面図である。

【符号の説明】

１ アルミニウム又はアルミニウム合金溶湯 ２ 処理ガス気泡 ３ 仕切り板 ４ 処理槽 ５ シャフト ６ 単体回転ローター ７ 処理ガス通路 ７ａ 処理ガス吹き出し口 ８ ローターの羽根部 ９ 複合回転ローター １０ シャフト １１ 処理ガス通路 １２ 処理ガス吹き出し口 １３ 溶湯入口 １４ 溶湯出口 １５ 羽根型ローター １６ 羽根型ローター １７ スペーサー １８ 複合回転ローター

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 アルミニウム又はアルミニウム合金溶湯
   中に処理ガスを吹き込んで脱ガスを行うに当り、処理ガ
   スを回転シャフト下部から溶湯中に吹き込み、発生した
   処理ガス気泡を２個以上の羽根状回転体を同一シャフト
   に組み合わせてなる複合回転体の回転により、微細化す
   ることを特徴とするアルミニウム及びアルミニウム合金
   溶湯の脱ガス方法。
2. 【請求項２】 アルミニウム又はアルミニウム合金溶湯
   中に処理ガスを吹き込んで脱ガスを行う装置において、
   処理ガスを供給する通路を有し、下部に吹き出し孔を有
   する回転シャフトに２個以上の羽根状回転体を組み合わ
   せてなる複合回転体を設けたことを特徴とするアルミニ
   ウム及びアルミニウム合金溶湯の脱ガス装置。