JP2008194026A - 酸性ムコ多糖産生微生物、酸性ムコ多糖の製造法、ならびに酸性ムコ多糖を有効成分として配合した美白剤 - Google Patents
酸性ムコ多糖産生微生物、酸性ムコ多糖の製造法、ならびに酸性ムコ多糖を有効成分として配合した美白剤 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】 コベティア属微生物に適した培養条件での培養にて培養物を得、次いで培養物から酸性ムコ多糖を硫酸多糖の選択的除去をすることなく分離回収可能であるコベティア属微生物。16S rDNA塩基配列がコベティア マリナDSM 4741のそれと99.7%の相同率を有し、かつ100%は一致しない塩基配列を有するコベティア属微生物。コベティア sp. WAK-1A(寄託番号FERM P-21101)であるコベティア属微生物、およびそれを用いた酸性ムコ多糖、特に美白剤用の酸性ムコ多糖の製造法。その製造法で得られたコベティア属微生物由来の酸性ムコ多糖またはそれらの生理学的に許容される塩もしくは誘導体を有効成分として含む美白剤。
【選択図】 図3
Description
しかしこれら化粧料には、種々の問題点が残されており、実用性の面で問題があった。
例えば、美白成分としてのコウジ酸は発ガンの恐れがあること、アルブチンなどのハイドロキノン誘導体は発疹、かぶれなど安全性に問題があった。
また、動植物抽出物配合も知られてはいるが、その効果は満足出来るものではなかった。
(上記の構造式において、GalNAcpはピラノース型N-アセチルガラクトサミン残基を、GlcUApはピラノース型グルクロン酸残基を、DはD型を、LはL型を、Pyrはピルビン酸を、nはゲルろ過クロマトグラフィーで測定した平均分子量がプルランを標準として100万〜150万であることを示す繰り返しの数をそれぞれ表す。)
(1)コベティア属微生物に適した培養条件での培養にて培養物を得、次いで培養物から式(1)の構造式で示される酸性ムコ多糖を硫酸多糖の選択的除去をすることなく分離回収可能であることを特徴とするコベティア属微生物。
(上記の構造式において、GalNAcpはピラノース型N-アセチルガラクトサミン残基を、GlcUApはピラノース型グルクロン酸残基を、DはD型を、LはL型を、Pyrはピルビン酸を、nは繰り返しの数をそれぞれ表す。)
(2)培養が、炭素源、窒素源および鉱物塩を含む培養培地を用いて固形培地、液体静置、振とう(または撹拌)条件で22℃から28℃の範囲で2日から7日間の培養を行うものである、(1)に記載のコベティア属微生物。
(3)以下の菌学的性質を有する上記(1)または(2)に記載のコベティア属微生物。
< 形態 >
細胞の形態:桿菌
運動性:有り
胞子形成:無し
<生育状態>
コロニーの形態:円形
コロニーの色調:クリーム色
コロニーの表面:スムーズ
生育温度:10℃、30℃、37℃および45℃で生育する。
生育pH:5.5〜9.5(至適生育pH:6.5〜7.5)
酸素要求性:好気性
<生理学的性質>
グラム染色性:陰性
カタラーゼ反応:陽性
オキシダーゼ反応:陰性
グルコースからの酸/ガス産生:陰性/陰性
O/Fテスト(酸化/発酵) :陰性/陰性
β−ガラクトシダーゼ活性:陽性
インドール産生:陰性
硝酸塩還元:陰性
でんぷん加水分解:陰性
ゼラチン加水分解:陰性
エスクリン加水分解:陰性
ウレアーゼ:陰性
アルギニンジヒドロラーゼ:陰性
資化性(D-グルコース、ラクトース、サッカロース、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、こはく酸ナトリウム):有り
(L-アラビノース、マルトース、D-マンノース、D-マンニトール、N-アセチル-D-グルコサミン、n-カプリン酸、アジピン酸、dl-リンゴ酸、酢酸フェニル、L-アラニン、L-ヒスチジン、L-セリン):無し
(4)16S rDNA塩基配列がコベティア マリナ(Cobetia marina) DSM4741のそれと99.7%の相同率を有し、かつ100%は一致しない配列番号1の塩基配列を有する上記(1)、(2)または(3)に記載のコベティア属微生物。
(5)コベティア(Cobetia) sp. WAK-1A(寄託番号FERM P-21101)である、上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のコベティア属微生物。
(6)上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のコベティア属微生物を培養して培地中で前記式(1)の構造式で示される酸性ムコ多糖を産生させ培養液を得る工程、および酸性ムコ多糖を培養液から硫酸多糖の選択的除去をすることなく単離する工程を含む酸性ムコ多糖の製造法。
(7)酸性ムコ多糖が美白剤用の酸性ムコ多糖である(6)に記載の酸性ムコ多糖の製造法。
(8)上記(7)に記載の製造法で得られたコベティア属微生物由来の前記式(1)の構造式で示される酸性ムコ多糖またはそれらの生理学的に許容される塩もしくは誘導体を有効成分として含むことを特徴とする美白剤。
(9)上記(8)記載のコベティア属微生物由来の前記式(1)の構造式で示される酸性ムコ多糖またはそれらの生理学的に許容される塩もしくは誘導体を有効成分として含むことを特徴とする美白剤が皮膚外用剤であることを特徴とする外用美白剤。
(10)上記(9)記載のコベティア属微生物由来の前記式(1)の構造式で示される酸性ムコ多糖またはそれらの生理学的に許容される塩もしくは誘導体を有効成分として含むことを特徴とする外用美白剤を含む化粧料。
(9)上記(8)記載のコベティア属微生物由来の前記式(1)の構造式で示される酸性ムコ多糖またはそれらの生理学的に許容される塩もしくは誘導体を有効成分として含むことを特徴とする美白剤が経口的に投与されることを特徴とする経口美白剤。
(12)上記(11)記載のコベティア属微生物由来の前記式(1)の構造式で示される酸性ムコ多糖またはそれらの生理学的に許容される塩もしくは誘導体を有効成分として含むことを特徴とする経口美白剤を含む飲食物。
この微生物を用いることにより本酸性ムコ多糖をジャーファーメンターやタンク内で撹拌を伴って安全に大量生産することができ、本酸性ムコ多糖を容易に簡単な工程で大量、安価に分離精製できることから経済的な工業的生産規模を可能にする。
また、本発明による美白剤の製造方法によれば、メラニン生成抑制作用を有しており、日焼け後の色素沈着・しみ・そばかす・肝斑等の淡色化、美白に優れた効果を有すると共に、安全性にも優れた美白剤を製造することができる。
さらにまた、本発明によれば、メラニン生成抑制作用を有しており、日焼け後の色素沈着・しみ・そばかす・肝斑等の淡色化、美白に優れた効果を有すると共に、安全性にも優れた美白剤を提供することができる。
美白効果は、化粧料のように日常的に使用されるものにより、あるいは飲食物のように日常的に摂取されるものにより、予防が構じられることが望まれており、本発明によれば、副作用もなく、長期連用においても安全性が高く、飲食物や化粧料にも活用できる美白剤を提供することができる。
(上記の構造式において、GalNAcpはピラノース型N-アセチルガラクトサミン残基を、GlcUApはピラノース型グルクロン酸残基を、DはD型を、LはL型を、Pyrはピルビン酸を、nは繰り返しの数をそれぞれ表す。)
本発明の微生物は、コベティア属微生物に適した培養条件での培養にて培養液を得、次いで培養液から酸性ムコ多糖を硫酸多糖の選択的除去をすることなく分離回収可能であることを特徴とするコベティア属微生物である。より詳細には、本発明の微生物は、コベティア マリナ DSM 4741(Cobetia marina DSM 4741) (VALIDATION LIST No 88. Int.J.Syst.Evol.Microbiol., 52, 1915-1916, 2002., D.R.Arahalら:System. Appl. Microbiol., 25, 207-211, 2002)と99.7%の相同な16S rDNA塩基配列(配列番号1)を有し、かつ、100%の相同率は有しない微生物であり、硫酸多糖を同伴産生せずに本酸性ムコ多糖を産生する微生物である。
なお、Cobetia marina DSM4741株は、Cobetia marinaの標準株として位置付けられている。寄託番号と公の寄託先は下記のとおりである。
1.ATCC253741 (American Type Culture Collection, Manassas, VA, USA)
2.DSM4741 (DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH, Braunschweig, Germany)
3.NCIMB1877 (National Collection of Industrial and Marine Bacteria, Aberdeen, UK)
Cobetia 属も海洋細菌で、海洋資源の開発の進展の中で興味が持たれているものの一つであるが、本酸性ムコ多糖類を産生するものは見当らない。DSM4741株はArahalら(上記文献2)によってはじめて命名され、承認されているものである(上記文献1)。
〈本酸性ムコ多糖産生新規菌株の分離〉
本酸性ムコ多糖を産生する新規菌株を単離するために、ワカメより分離され、ペプトン、酵母エキス、蔗糖から成る海水培地で培養して本酸性ムコ多糖を産生することが確認されている保存中の菌株を用いて硫酸多糖類産生能を欠く菌株のスクリーニングを行った結果、WAK-1A菌株がその目的に適った性質を有することを見つけた。
本酸性ムコ多糖の調製方法としては、各種の方法が知られているが、医薬として使用できる程度に精製されたものであれば、種々の方法で調製されたものを用いることができる。例えば、マツダらの方法(M.Matsudaら:Nippon Suisan Gakkaishi,58, 1735-1741, 1992)に準じて本新規菌株を炭素源として蔗糖、窒素源としてペプトン、酵母エキスを含有する海水および/または人工海水を寒天で固めた培地で培養して多糖類を生産し、採取、精製して得ることができる。より具体的には、例えば寒天平板培養では、炭素源として蔗糖、窒素源としてペプトン、酵母エキスを含有する多糖類産生用海水および/または人工海水培地を寒天で固めた培地において本菌株またはその変異株を培養し、寒天平板上に生じた粘質物中から本酸性ムコ多糖を分離、精製して得ることができる。
(a) 硫酸多糖の産生を伴わないで本酸性ムコ多糖を産生する新規菌株を分離する工程
本酸性ムコ多糖を産生する菌株として保存中の菌株についてこれをペプトン、酵母エキス、蔗糖からなり海水および/または人工海水で調製した培地で振とう培養して得られた培養物から多糖画分をエタノールによる沈殿により分離精製する。これを上記非特許文献1および2に記載の方法に準じてDEAE-celluloseカラムクロマト分析、化学分析、核磁気共鳴分析等により硫酸多糖産生の有無について試験する。
(b) 微生物を培養し多糖類を産生する工程
本酸性ムコ多糖を得るためには微生物としてWAK-1A菌株またはその変異株を用いる。微生物としてWAK-1A菌株またはその変異株を用いることで、本酸性ムコ多糖を効率的に生産することができる。液体培養は静置、振とう(攪拌)培養法、および固形培養には寒天平板法を用いることができる。
(上記の構造式において、GalNAcpはピラノース型N-アセチルガラクトサミン残基を、GlcUApはピラノース型グルクロン酸残基を、DはD型を、LはL型を、Pyrはピルビン酸を、nは繰り返しの数をそれぞれ表す。)
そして、以下に説明する抽出・回収工程を経ることにより高純度の本酸性ムコ多糖を高収率で得ることが可能となる。
上記製造方法で得られた培養物から本酸性ムコ多糖を抽出する方法としては、多糖の分離回収に用いられる従来公知の方法を用いることができる。例えば、培養物をそのまま、あるいは高温で殺菌した後で、遠心分離により菌体を除去し、これをそのまま、あるいは濃縮してから、2〜3倍量のエタノール、イソプロパノール、あるいはアセトン等を加え、沈殿を生じさせる。この沈殿物を再度、水あるいは1〜15重量%塩化ナトリウム溶液に溶解させた後で、アルコール等による沈殿を2〜3回繰り返し、水で透析を行い、噴霧乾燥や凍結乾燥機等を用いて乾燥させることにより、本酸性ムコ多糖を得る。これ以外にも電気透析法や限外濾過法も利用することができる。さらに精製するためには、イオン交換、ゲル濾過等の各種クロマトグラフィーや第4級アンモニウム塩による沈殿や塩析などを用いることができる。
本発明により得られるコベティア(Cobetia) sp. WAK-1A(寄託番号FERM P-21101)の作る酸性ムコ多糖は、メラニン生成を強く抑制すると共に細胞毒性が極めて弱いことを実験的に裏付けることができた。したがって本発明に係る酸性ムコ多糖は美白剤の有効成分として有用である。前記美白剤は、例えば、医薬部外品を含む化粧品、医薬品、食品等種々の広い分野に応用される。
本発明に係る酸性ムコ多糖は、それらの生理学的に許容される塩、ナトリウム塩、カリウム塩等の塩の形もしくは誘導体、例えば脂肪酸によるアシル化物、好ましくはアセチル化物の形で配合してもよい。
本発明に係る酸性ムコ多糖のO-アシル誘導体は、例えば、酸性ムコ多糖を希酸水溶液中、均一系で無水酢酸、あるいは酸塩化物で処理することにより行うことができる。または、ホルムアミド等の有機溶媒に可溶な場合は、ピリジン及び無水酢酸で処理して酸性ムコ多糖のO-アセチル誘導体を得ることができる。その他例えば特開平3―143540号公報に記載の方法、特開平6―9707号公報に記載の方法により調製することもできる。O-アセチル化率は、アシル化の方法によって異なるが、本酸性ムコ多糖類の各繰り返し単位に1個以上、好ましくは3個以上、さらに好ましくは4個以上のO-アセチル基が導入されている。
前記他の成分としては、例えば、油分、界面活性剤、粉末、色剤、水、アルコール類、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保湿剤等が挙げられる。さらに、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等の金属封鎖剤、カフェイン、タンニン、ベラパミル、トラネキサム酸及びその誘導体、甘草抽出物、グラブリジン、カリンの果実の熱水抽出物、各種生薬、酢酸トコフェロール、グリチルリチン酸及びその誘導体またはその塩等の薬剤、ビタミンC、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、3−O−エチルアスコルビン酸、アルブチン、コウジ酸等の美白剤 、グルコース、フルクトース、マンノース、ショ糖、トレハロース等の糖類、レチノイン酸、レチノール、レチノール酢酸、レチノールパルミチン酸等のビタミンA誘導体類なども適宜配合することができる。
さらに、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等の金属封鎖剤、カフェイン、タンニン、ベラパミル、トラネキサム酸及びその誘導体、甘草抽出物、グラブリジン、カリンの果実の熱水抽出物、各種生薬、酢酸トコフェロール、グリチルリチン酸及びその誘導体またはその塩等の薬剤、ビタミンC、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、3−O−エチルアスコルビン酸、アルブチン、コウジ酸等の美白剤 、グルコース、フルクトース、マンノース、ショ糖、トレハロース等の糖類、レチノイン酸、レチノール、レチノール酢酸、レチノールパルミチン酸等のビタミンA誘導体類なども適宜配合することができる。
本酸性ムコ多糖を上述の製剤として使用する場合には、公知の方法によって実施することができる。具体的には、例えば、以下に記載するとおりに実施することができる。
ペプトン0.5%、 酵母エキス0.1%、蔗糖3%の組成を有し海水および/または人工海水で調製した培地を、温度121℃としたオートクレーブ中で15分間滅菌し、本酸性ムコ多糖産生菌として保存中の保存用斜面培養から、1白金耳を試験管中の上記滅菌培地(10ml)に接種し、25℃の温度で24時間振とう培養を行い、次いでこの前培養液を500ml容の三角フラスコ中に上記組成の培地200ml(121℃、15分間滅菌)に接種し、25℃の温度で3日間の振とう培養を行った。培養後培養液を濾過助剤(ラジオライト#500)を用いて濾過し、菌体を除いた上澄液にエタノールを加えて沈殿する画分を集め、水に溶解後5%第4級アンモニウム塩 (Cetavlon)溶液を加えて沈殿する画分を濾過により集めた。
これを4MNaClに溶解し再度エタノールを加えて沈殿する画分を集め、水に溶解後透析し凍結乾燥により多糖画分を得た。
この多糖画分は、構成成分のモル比がN−アセチル−D−ガラクトサミン:D−グルクロン酸:N−アセチル−L−ガラクトサミン:ピルビン酸が2:1:1:1で、ゲル濾過クロマトグラフィーで測定した平均分子量がプルランを標準として100〜150万であった。具体的には、Asahipak GFA-7M(昭和電工製)をカラムとする高速液体クロマトグラフィー(島津製)を使用し、0.1NNaClを移動相とし、分子量既知のプルラン(Shodex STANDARD KIT P-82、昭和電工製)を標準サンプルとして作成した分子量保持時間標準曲線を使用して測定した。
構成成分の分析には、セルロースアセテート膜電気泳動および高速液体クロマトグラフィーを用いた。この構成成分の分析には、該多糖画分を2Mのトリフルオロ酢酸(TFA)、または4N−HClで100℃、12時間加水分解し、ロータリーエバポレイターでTFAまたはHClを除いたものを検体とし、中性糖、ウロン酸、有機酸、硫酸イオンおよびアミノ糖の分析を行った。特にウロン酸の分析は、多糖のカルボキシル基還元後に加水分解して中性糖を分析することにより行った。有機酸の分析はイオンクロマト分析法で行い、この他に酵素法を用いた。硫酸基の分析は、加水分解後の試料をイオンクロマト分析法により実施した。
本多糖画分の1H核磁気共鳴分析(図1)によりアノメリックプロトンのシグナルδ=4.8 ppmの硫酸多糖のケミカルシフト(M.Matsudaら:Nippon Suisan Gakkaishi, 59, 535-538, 1993)が認められずまたイオンクロマト分析でも硫酸基の認められない菌株を探索した。
新たに単離した硫酸多糖の同伴産生を伴わない本酸性ムコ多糖産生菌株WAK-1A (FERM P-21101)を16S rDNA塩基配列の分析によって同定した。この新たに単離されたWAK-1A菌株の16S rDNAの塩基配列は、Cobetiaの16S rDNA塩基配列と99.7%の相同性を示しコベティア(Cobetia)に属すると決定された。しかし、この菌株は、コベティア属の基準株であるCobetia marina DSM4741とは、以下に記載されるいくつかの培養特性および生化学的特性によって明らかに区別される。
なお、実用的な精製レベルとしては、培養濾過液から分子量5万カットの中空糸UF膜モジュール(Spectrum社製)を備えた膜濾過装置により得られる高分子画分を短時間のうちに濃縮、脱塩回収し、凍結乾燥により粉末化した。膜濾過装置は東洋紡エンジニアリング社製SYLS-SB04型を用いた。
このようにして得られた多糖画分については、セルロースアセテート膜電気泳動法を用いて均一性を確認すると共に、DEAE-セルロースイオン交換カラムクロマト分析、化学分析、核磁気共鳴分析により、公知の本酸性ムコ多糖であることを確認した。またこれらの標品について1HNMR分析およびイオンクロマト分析を行った結果、硫酸多糖類が含まれていないことが確認された。
このようにして得られた多糖画分については、セルロースアセテート膜電気泳動法を用いて均一性を確認すると共に、化学分析、核磁気共鳴分析により公知の本酸性ムコ多糖であることを確認した。またこれらの標品について1HNMR分析およびイオンクロマト分析を行った結果、硫酸多糖類が含まれていないことが確認された。
実施例4で得られた本酸性ムコ多糖を使用して,メラノーマ細胞に対する細胞増殖とメラニン生成抑制効果を調べ試料無添加の場合と比較して試料添加系での細胞増殖率,メラニン生成量を求めた。又陽性対照としてメラニン生成抑制作用を有することが知られている多糖類(Okazakiら:Fragrance Journal, 8, 61-64, 2004)を使用した。
(1)前培養したB16F10細胞を12穴マルチウェルプレートの各ウェルに1.0x104細胞/ウェルの細胞数に播種した。播種48時間後、所定濃度の被験物質を含む0.5mMテオフィリン含有DMEM+10%FBS培地に交換した。被験物質の濃度は、25μg/ml、50μg/ml、100μg/mlに設定した。各試料濃度毎に3ウェルを割り当てアッセイに供した(N=3)。細胞増殖計数用のプレートとメラニン定量用のプレート2枚を1組として各試料のアッセイに使用した。
培地交換後、72時間培養を続けた。
(2)細胞増殖計数用プレートを用いて各ウェル内の細胞数(相対値)をWST-1法を用い450nmの吸光度を測定することにより、細胞の増殖度を測定した。この結果を図3に示す。
B16メラノーマ細胞を培養し、細胞中に産生したメラニンをアルカリで溶解し、吸光度を測定することによりメラニン生成量を求めた。
72時間培養後のメラニン定量用のプレートを用いて各ウェル内の細胞を10%トリクロロ酢酸溶液で処理した後にエタノール/エーテル(1:1(V/V))で処理した。
これに1N NaOH/10%DMSO溶液を加え、メラニンを可溶化した後吸光度475nmを測定した。合成メラニン(Sigma)を1N NaOH/10%DMSO溶液に溶解した溶液を所定の濃度に希釈し標準液として使用し、本標準液と測定溶液の吸光度を比較することにより測定溶液中のメラニン含有量を算出した。
(2)で求めたウェル内細胞数(相対値)と本ウェル内メラニン量からメラニン生成量(相対値)を計算した。
本発明の美白剤は、そのまま、水等で希釈して、或は濃縮して、皮膚外用剤として投与できる。もしくはそのまま、水等で希釈して、濃縮して、或は粉末化又は顆粒化して、公知の医薬用担体と共に製剤化することにより、エアゾール剤、液剤、エキス剤、懸濁剤、乳剤、軟膏剤、パップ剤、リニメント剤、ローション剤の形態として提供できる。或は公知の化粧品、医薬部外品、医薬品に用いられる、水性成分、界面活性剤、油性成分、可溶化剤、保湿剤、粉末成分、アルコール類、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤、増粘剤、色素、顔料、香料などを必要に応じて適宜選択することにより調製される。皮膚外用剤として、ローション状、ゲル状、乳剤、軟膏等の剤形とすることができ、柔軟性化粧水、収斂性化粧水などの化粧水類、エモリエントクリーム、モイスチャアクリーム、マッサージクリーム等のクリーム類、エモリエント乳液、ナリシング乳液、クレンジング乳液等の乳液類、洗顔料、皮膚洗浄剤、ファンデーション、アイカラー、チークカラー、口紅等のメイクアップ化粧料、シャンプー、リンス、ヘアートリートメント剤、ヘアークリーム、整髪剤、ヘアートニック、養毛剤、育毛剤などの毛髪化粧料、バスオイル、バスソルト、フォームバスなどの入浴料等の種々の形態の化粧料として提供することができる。
また、本発明の美白剤は、そのまま、あるいは水等で希釈して、経口的に投与できる。もしくはこれを公知の医薬用担体と共に製剤化することにより調製される。例えば、抽出物をシロップ剤などの経口液状製剤として、または抽出物を、エキス、粉末などに加工して、薬学的に許容される担体と配合し、錠剤、カプセル剤、顆粒剤,散剤などの経口固形製剤として投与できる。薬学的に許容できる担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が用いられ、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、液状製剤における溶剤、賦形剤、懸濁化剤、結合剤などとして配合される。また、必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色料、甘味剤などの製剤添加物を用いることもできる。
Claims (12)
- コベティア属微生物に適した培養条件での培養にて培養物を得、次いで培養物から下記式(1)の構造式で示される酸性ムコ多糖を硫酸多糖の選択的除去をすることなく分離回収可能であることを特徴とするコベティア属微生物。
(上記の構造式において、GalNAcpはピラノース型N-アセチルガラクトサミン残基を、GlcUApはピラノース型グルクロン酸残基を、DはD型を、LはL型を、Pyrはピルビン酸を、nは繰り返しの数をそれぞれ表す。) - 培養が、炭素源、窒素源および鉱物塩を含む培養培地を用いて固形培地、液体静置、振とう(または撹拌)条件で22℃から28℃の範囲で2日から7日間の培養を行うものである、請求項1に記載のコベティア属微生物。
- 以下の菌学的性質を有する請求項1または2に記載のコベティア属微生物。
< 形態 >
細胞の形態:桿菌
運動性:有り
胞子形成:無し
<生育状態>
コロニーの形態:円形
コロニーの色調:クリーム色
コロニーの表面:スムーズ
生育温度:10℃、30℃、37℃および45℃で生育する。
生育pH:5.5〜9.5(至適生育pH:6.5〜7.5)
酸素要求性:好気性
<生理学的性質>
グラム染色性:陰性
カタラーゼ反応:陽性
オキシダーゼ反応:陰性
グルコースからの酸/ガス産生:陰性/陰性
O/Fテスト(酸化/発酵) :陰性/陰性
β−ガラクトシダーゼ活性:陽性
インドール産生:陰性
硝酸塩還元:陰性
でんぷん加水分解:陰性
ゼラチン加水分解:陰性
エスクリン加水分解:陰性
ウレアーゼ:陰性
アルギニンジヒドロラーゼ:陰性
資化性(D-グルコース、ラクトース、サッカロース、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、こはく酸ナトリウム):有り
(L-アラビノース、マルトース、D-マンノース、D-マンニトール、N-アセチル-D-グルコサミン、n-カプリン酸、アジピン酸、dl-リンゴ酸、酢酸フェニル、L-アラニン、L-ヒスチジン、L-セリン):無し - 16S rDNA塩基配列がコベティア マリナ(Cobetia marina) DSM 4741のそれと99.7%の相同率を有し、かつ100%は一致しない配列番号1の塩基配列を有する請求項1、2または3に記載のコベティア属微生物。
- コベティア(Cobetia) sp. WAK-1A(寄託番号FERM P-21101)である、請求項1ないし4のいずれかに記載のコベティア属微生物。
- 請求項1ないし5のいずれかに記載のコベティア属微生物を培養して培地中で前記式(1)の構造式で示される酸性ムコ多糖を産生させ培養液を得る工程、および酸性ムコ多糖を培養液から硫酸多糖の選択的除去をすることなく単離する工程を含む酸性ムコ多糖の製造法。
- 酸性ムコ多糖が、美白剤用の酸性ムコ多糖である請求項6に記載の酸性ムコ多糖の製造法。
- 請求項7記載の製造法で得られたコベティア属微生物由来の前記式(1)の構造式で示される酸性ムコ多糖またはそれらの生理学的に許容される塩もしくは誘導体を有効成分として含むことを特徴とする美白剤。
- 請求項8記載のコベティア属微生物由来の前記式(1)の構造式で示される酸性ムコ多糖またはそれらの生理学的に許容される塩もしくは誘導体を有効成分として含むことを特徴とする美白剤が皮膚外用剤であることを特徴とする外用美白剤。
- 請求項9記載のコベティア属微生物由来の前記式(1)の構造式で示される酸性ムコ多糖またはそれらの生理学的に許容される塩もしくは誘導体を有効成分として含むことを特徴とする外用美白剤を含む化粧料。
- 請求項8記載のコベティア属微生物由来の前記式(1)の構造式で示される酸性ムコ多糖またはそれらの生理学的に許容される塩もしくは誘導体を有効成分として含むことを特徴とする美白剤が経口的に投与されることを特徴とする経口美白剤。
- 請求項11記載のコベティア属微生物由来の前記式(1)の構造式で示される酸性ムコ多糖またはそれらの生理学的に許容される塩もしくは誘導体を有効成分として含むことを特徴とする経口美白剤を含む飲食物。
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