JP2008192328A - 固体高分子形燃料電池およびその製造方法 - Google Patents

固体高分子形燃料電池およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2008192328A
JP2008192328A JP2007022404A JP2007022404A JP2008192328A JP 2008192328 A JP2008192328 A JP 2008192328A JP 2007022404 A JP2007022404 A JP 2007022404A JP 2007022404 A JP2007022404 A JP 2007022404A JP 2008192328 A JP2008192328 A JP 2008192328A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
catalyst layer
polymer electrolyte
ion exchange
electrolyte membrane
cathode
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2007022404A
Other languages
English (en)
Inventor
Shinji Kinoshita
伸二 木下
Satoru Motomura
了 本村
Hiroshi Shimoda
博司 下田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
AGC Inc
Original Assignee
Asahi Glass Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Asahi Glass Co Ltd filed Critical Asahi Glass Co Ltd
Priority to JP2007022404A priority Critical patent/JP2008192328A/ja
Priority to PCT/JP2008/051557 priority patent/WO2008093795A1/ja
Publication of JP2008192328A publication Critical patent/JP2008192328A/ja
Priority to US12/533,667 priority patent/US7838170B2/en
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/30Hydrogen technology
    • Y02E60/50Fuel cells
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P70/00Climate change mitigation technologies in the production process for final industrial or consumer products
    • Y02P70/50Manufacturing or production processes characterised by the final manufactured product

Landscapes

  • Inert Electrodes (AREA)
  • Fuel Cell (AREA)

Abstract

【課題】高温から低温の広い温度範囲でかつ高加湿から低加湿に渡る環境下において、高い発電性能を安定に発現できる固体高分子形燃料電池およびその製造方法を提供する。
【解決手段】触媒層22を有するアノード20および触媒層12を有するカソード10との間に固体高分子電解質膜30が配置された膜電極接合体5と、カソード10の表面に沿って酸素を含むガスを流す流路82aとを備えた固体高分子形燃料電池1であり、流路82aの入口に接するカソード10の触媒層12に含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量が、流路82aの出口に接するカソード10の触媒層12に含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量よりも高く、かつアノード20およびカソード10の少なくとも一方と、固体高分子電解質膜30との界面の90°剥離強度が0.1N/cm以上であることを特徴とする固体高分子形燃料電池1。
【選択図】図1

Description

本発明は、固体高分子形燃料電池およびその製造方法に関する。
固体高分子形燃料電池は、たとえば、固体高分子電解質膜の両面に、電極(カソード(空気極)およびアノード(燃料極))を配置した膜電極接合体を、ガスを流す流路が形成された導電性のセパレータを介して複数スタックして構成される。電極は、固体高分子電解質膜に接する触媒層と、該触媒層の外側に配置された多孔質のガス拡散層とから構成される。
従来から、固体高分子形燃料電池には、高い発電性能が要求されている。そのため、膜電極接合体の固体高分子電解質膜および触媒層に含まれるイオン交換樹脂には、高い導電性を発現する材料が求められている。
イオン交換樹脂の導電性を向上させるためには、イオン交換容量を大きくすればよい。しかし、イオン交換容量を大きくすることにより、イオン交換樹脂の含水率が高くなる。
触媒層に用いるイオン交換樹脂の含水率が高くなりすぎると、イオン交換樹脂が膨潤し、触媒層の空隙を閉塞してしまう、いわゆるフラッディング現象が発生する問題がある。フラッディング現象が発生すると、触媒層へ供給されるガスの拡散性が低下し、固体高分子形燃料電池の発電性能が大きく低下してしまう。
前記問題に対しては、たとえば、カソードの固体高分子電解質膜と接する面と反対側の表面に、該表面と平行に酸素を含むガスが流れており、前記カソードでは、前記流れの上流に接する部分のイオン交換樹脂のイオン交換容量が、前記流れの下流に接する部分のイオン交換樹脂のイオン交換容量より「高く」構成されている固体高分子型燃料電池が提案されている(特許文献1)。
特開2001−196068号公報
しかし、特許文献1に記載の固体高分子型燃料電池では、発電性能をさらに高めるために、イオン交換容量が高い方のイオン交換樹脂のイオン交換容量をさらに大きくしていくと、固体高分子形燃料電池の運転時の加湿変化に伴って、該イオン交換樹脂が膨潤、収縮して変形する問題がある。そのため、電極と固体高分子電解質膜とが剥離しやすくなって、安定に発電できないおそれがある。
本発明は、高温から低温の広い温度範囲でかつ高加湿から低加湿に渡る環境下において、高い発電性能を安定に発現できる固体高分子形燃料電池およびその製造方法を提供する。
本発明の固体高分子形燃料電池は、触媒層を有するアノードおよび触媒層を有するカソードとの間に固体高分子電解質膜が配置された膜電極接合体と、前記カソードの表面に沿って酸素を含むガスを流す流路とを備えた固体高分子形燃料電池であり、前記流路の入口に接するカソードの触媒層に含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量が、前記流路の出口に接するカソードの触媒層に含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量よりも高く、かつ前記アノードと前記固体高分子電解質膜との界面、および前記カソードと前記固体高分子電解質膜との界面の少なくとも一方の90°剥離強度が0.1N/cm以上であることを特徴とする。
また、本発明の固体高分子形燃料電池においては、前記カソードの触媒層に含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量が、前記流路の入口側から前記流路の出口側に向かって連続的にまたは段階的に小さくされていることが好ましい。
さらに、前記カソードの触媒層が、前記流路の入口側の領域(A)と前記流路の出口側の領域(B)の2つの領域からなり、前記領域(A)に含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量が、前記領域(B)に含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量よりも高いことが好ましい。
また、本発明は、前記本発明の固体高分子形燃料電池の製造方法であって、前記固体高分子電解質膜を形成する工程と、該固体高分子電解質膜の少なくとも一方の面に電極触媒とイオン交換樹脂とを含む触媒層用塗布液を塗工してアノードまたはカソードの触媒層を形成する工程とを有することを特徴とする固体高分子形燃料電池の製造方法である。
本発明の固体高分子形燃料電池は、高温から低温の広い温度範囲でかつ高加湿から低加湿に渡る環境下において、高い発電性能を安定に発現できる。
本発明の固体高分子形燃料電池の製造方法によれば、高温から低温の広い温度範囲でかつ高加湿から低加湿に渡る環境下において、高い発電性能を安定に発現する固体高分子形燃料電池が製造できる。
本明細書においては、式(α)で表される基を基(α)と記す。他の式で表される基も同様に記す。また、式(1)で表される化合物を化合物(1)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。
<固体高分子形燃料電池>
図1は、固体高分子形燃料電池(以下、燃料電池と記す。)の一例を示す概略断面図である。
燃料電池1は、膜電極接合体5と、膜電極接合体5の両面に配置されるセパレータ82、84とを具備する。
(セパレータ)
セパレータ82、84の膜電極接合体5側の面には、それぞれカソード10に酸素を含むガスを流す流路82aおよびアノード20に燃料ガスを流す流路84aが形成されている。これにより、燃料電池1においては、酸素を含むガスはカソード10の表面に沿って流路82aを流れ、燃料ガスはアノード20の表面に沿って流路84aを流れる。
なお、セパレータの82、84の膜電極接合体5側とは反対側の面には、通常冷却水流通路溝(図示せず)がそれぞれ形成されている。
セパレータ82には、図1に対応する図4(a)に示すように、酸素を含むガスが供給される入口82iと、排出される出口82oとが設けられ、入口82iおよび出口82oと接続される、セパレータ82の辺82dに対して水平方向にジグザグ状に屈曲した流路82aが形成されている。
セパレータ82としては、金属製セパレータ、カーボン製セパレータ、黒鉛と樹脂を混合した材料からなるセパレータ等、各種導電性材料からなるセパレータが挙げられる。
セパレータ84には、燃料ガスが供給される入口と、燃料ガスが排出される出口が設けられている。該流路の形状および材料は、セパレータ82と同様のものを用いればよい。
(膜電極接合体)
膜電極接合体5は、触媒層12およびガス拡散層14を有するカソード10と、触媒層22およびガス拡散層24を有するアノード20と、カソード10とアノード20との間に、触媒層12および触媒層22に接した状態で配置される固体高分子電解質膜30とを具備する。
膜電極接合体5においては、アノード20と固体高分子電解質膜30との界面、およびカソード10と固体高分子電解質膜30との界面の少なくとも一方の90°剥離強度が0.1N/cm以上であり、0.13N/cm以上であることが好ましい。アノード20と固体高分子電解質膜30との界面、およびカソード10と固体高分子電解質膜30との界面の両方の90°剥離強度が0.1N/cm以上であってもよい。該90°剥離強度が0.1N/cm以上であれば、固体高分子電解質膜30と触媒層12または触媒層22とが燃料電池1の運転中に剥離しにくくなって発電性能が安定に得られる。
上述の90°剥離強度を、膜電極接合体5の製造途中において測定する場合は、膜電極接合体5の製造方法に応じてたとえば以下の2種類の測定方法で測定できる。すなわち、固体高分子電解質膜に触媒層を形成した後、触媒層とガス拡散層とを接合する場合は90°剥離試験(I)を行い、ガス拡散層に触媒層を形成した後、触媒層と固体高分子電解質膜とを接合する場合は90°剥離試験(II)を行う。
以下、図2、3を参照しながら説明する。
90°剥離試験(I):
(手順1)図2(a)に示すように、固体高分子電解質膜30の一方の面に触媒層12(22)を形成し、固体高分子電解質膜30と触媒層12(22)とからなる、幅20mm×長さ150mmの試験片90を作製する。
(手順2)図2(a)に示すように、試験片90の末端90aから長軸方向へ80mm分の触媒層12(22)の表面に、片面粘着テープ98を粘着させる。
なお、片面粘着テープ98としては、固体高分子電解質膜30と触媒層12(22)との剥離強度よりも充分に高い粘着強度を有するものを使用する。
(手順3)図2(b)に示すように、試験片90の触媒層12(22)側とは反対側の全面を、幅25mm×長さ150mm×厚さ3mmのアルミ板94に両面テープ96で貼り付ける。なお、両面テープ96としては、固体高分子電解質膜30と触媒層12(22)との剥離強度よりも充分に高い粘着強度を有するものを使用する。
そして、片面粘着テープ98の末端98bを、直径6mmのステンレス製のローラ92を介して、引張り試験機(図示せず)の試料取り付け部に挟持する。
(手順4)挟持された末端98bを、試験片90に対して垂直(矢印)方向に、速度50mm/分で引っ張り、固体高分子電解質膜30と触媒層12(22)とが剥離するときの強度を測定する。
90°剥離試験(I)は、手順1により作製された3枚の試験片90について行う。
「90°剥離強度」は、固体高分子電解質膜30と触媒層12(22)とが剥離するまでの強度を、ロードセルを介して測定してパソコンに記録し、測定された強度の中で、強度の値が安定している部分、すなわち剥離強度測定の開始時と終了時の値を除いた部分について平均値を求めてそれを剥離強度とし、剥離強度の3回の平均値を算出し、この平均値を、試験片90の幅20mmで除して求められる。
90°剥離試験(II):
(手順1)図3(a)に示すように、ガス拡散層14(24)の表面に触媒層12(22)を形成し、ガス拡散層14(24)と触媒層12(22)とからなるカソード10(アノード20)を作製する。
(手順2)カソード10(アノード20)の末端10a(20a)から長軸方向へ80mm分と、固体高分子電解質膜30の末端30aから長軸方向へ80mm分とを、ガス拡散層14(24)と固体高分子電解質膜30との間に触媒層12(22)が位置するように接合させて、幅20mm×長さ220mmの試験片90を作製する。
(手順3)図3(b)に示すように、固体高分子電解質膜30のカソード10(アノード20)側とは反対側の全面を、幅25mm×長さ150mm×厚さ3mmのアルミ板94に両面テープ96で貼り付け、カソード10(アノード20)の接合されていない方の末端10b(20b)を、直径6mmのステンレス製のローラ92を介して、引張り試験機(図示せず)の試料取り付け部に挟持する。
なお、両面テープ96としては、試験片90のカソード10(アノード20)と固体高分子電解質膜30との剥離強度よりも充分に高い粘着強度を有するものを使用する。
(手順4)挟持された末端10b(20b)を、固体高分子電解質膜30に対して垂直(矢印)方向に、速度50mm/分で引っ張り、カソード10(アノード20)と固体高分子電解質膜30とが剥離するときの強度を測定する。
90°剥離試験(II)は、手順1および手順2により作製された3枚の試験片90について行う。
「90°剥離強度」は、カソード10(アノード20)と固体高分子電解質膜30とが剥離するまでの強度を、ロードセルを介して測定してパソコンに記録し、測定された強度の中で、該強度の値が安定している部分、すなわち剥離強度測定の開始時と終了時の値を除いた部分について平均値を求めてそれを剥離強度とし、剥離強度の3回の平均値を算出し、この平均値を、試験片90の幅20mmで除して求められる。
上述の90°剥離強度を、膜電極接合体5において測定する場合は、たとえば以下の測定方法で測定できる。
まず、膜電極接合体5から幅20mm×長さ200mmのサンプルを切り出し、測定しない側のガス拡散層24(14)を剥がす。そして、ガス拡散層24(14)を剥がした側の面をアルミ板94に両面テープ96で貼り付ける。
なお、用いる両面テープ96は、サンプルのカソード10(アノード20)と固体高分子電解質膜30との剥離強度よりも充分に高い粘着強度を有するものを使用する。
そして、測定する側のカソード10(アノード20)の40mm程度を長軸方向の末端10b(20b)より剥がし、図3(b)に準じて、該末端10b(20b)を引張り試験機の試料取り付け部に挟持する。
なお、40mm程度剥がした部分は、必要に応じて切り取ってもよい。
そして、挟持された末端10b(20b)を、固体高分子電解質膜30に対して垂直(矢印)方向に、速度50mm/分で引っ張り、カソード10(アノード20)と固体高分子電解質膜30とが剥離するときの強度を測定する。
(カソード側の触媒層)
触媒層12は、図1に示すように、2つの領域からなる層である。
図1に対応し、セパレータ82との対応関係を表す図4(b)に示すように、触媒層12は、辺12dに対して垂直方向に、入口82i側の領域(A)12aと、出口82o側の領域(B)12bとに線15によって2つの領域に分けられ、領域(A)12aに含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量が、領域(B)12bに含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量よりも高くされている層である。
領域(A)12aと領域(B)12bの面積は、同じであってもよく、異なっていてもよい。触媒層12全体に対する領域(A)12aの面積の割合は10%以上が好ましく、
20〜70%がより好ましく、30〜50%がさらに好ましい。電極に含まれるイオン交換樹脂は、イオン交換容量が大きいほど含水しやすく、水分を保持しやすい。また、それに伴って、イオン交換樹脂は、導電性およびガスの溶解性が高くなる。そのため、反応ガス中の水蒸気濃度が出口82o近辺に比べて低い入口82iに近い領域(A)12aの面積が10%以上であれば、フラッディング現象の発生がなく、高い発電性能が得られやすくなる。
領域(A)12aに含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量は、1.3〜2.0ミリ当量/g乾燥樹脂であることが好ましく、1.5〜1.8ミリ当量/g乾燥樹脂であることがより好ましい。該イオン交換容量が下限値以上であると、触媒層12の抵抗が低減され、発電性能が向上する。一方、該イオン交換容量が2.0ミリ当量/g乾燥樹脂以下であれば、フラッディング現象の発生が抑制される。該イオン交換容量が2.0ミリ当量/g乾燥樹脂を超えると、反応ガス中の水蒸気濃度が出口82o近辺に比べて低い入口82iに近い領域(A)12aであってもフラッディング現象が発生することがあるため、2.0ミリ当量/g乾燥樹脂以下が好ましい。
領域(B)12bに含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量は、0.9〜1.5ミリ当量/g乾燥樹脂であることが好ましく、1.0〜1.4ミリ当量/g乾燥樹脂であることがより好ましい。該イオン交換容量が下限値以上であると、触媒層12の抵抗が低減され、発電性能が向上する。一方、該イオン交換容量が1.5ミリ当量/g乾燥樹脂以下であれば、フラッディング現象の発生が抑制される。領域(B)12bでは、上流(流路82aの入口82i)からの反応により生成蓄積した酸素中の水分濃度が極めて高くなっているため、該イオン交換容量が1.5ミリ当量/g乾燥樹脂を超えると、カソード10内に保持される水分量が過剰となり、フラッディング現象の発生によって電池性能の低下を招くことがあるため、1.5ミリ当量/g乾燥樹脂以下が好ましい。
領域(A)12aに含まれるイオン交換樹脂と領域(B)12bに含まれるイオン交換樹脂とのイオン交換容量との差は、0.2ミリ当量/g乾燥樹脂以上であることが好ましく、0.4〜0.8ミリ当量/g乾燥樹脂であることがより好ましい。
該イオン交換容量の差が下限値以上であれば、カソード10内に保持される水分の面内分布がより均一化され、フラッディング現象の発生がなく、高い電池性能を発現できる。
該イオン交換樹脂のイオン交換容量は、下記方法により求めることができる。
イオン交換樹脂を、水およびメタノールを溶媒とする一定濃度の水酸化ナトリウム溶液に浸漬して加水分解し、該溶液を逆滴定することによりイオン交換容量を求める方法である。
触媒層12は、電極触媒およびイオン交換樹脂を含む層である。
電極触媒としては、カーボン担体に、白金または白金合金が担持された担持触媒が好適に挙げられる。
カーボン担体としては、活性炭、カーボンブラック等が挙げられる。
カーボン担体の比表面積は、200m/g以上が好ましい。カーボン担体の比表面積は、BET比表面積装置により、カーボン表面への窒素吸着により測定する。
白金合金としては、白金を除く白金族の金属(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム)、金、銀、クロム、鉄、チタン、マンガン、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、およびスズからなる群から選ばれる1種以上の金属と、白金との合金が好ましい。該白金合金には、白金と合金化される金属と、白金との金属間化合物が含まれていてもよい。
白金または白金合金の担持量は、電極触媒(100質量%)のうち、10〜70質量%が好ましい。
イオン交換樹脂としては、イオン性基を有するフッ素系ポリマー、イオン性基を有する炭化水素系ポリマー等が挙げられ、化学的な耐久性の点から、イオン性基を有するフッ素系ポリマーが好ましい。イオン性基としては、スルホン酸基、スルホンイミド基、スルホンメチド基等が挙げられる。
イオン性基を有するフッ素系ポリマーとしては、化合物(1)に基づく繰り返し単位を有するポリマーを加水分解、酸型化して得られるスルホン酸基を有するポリマー(以下、ポリマーHと記す。)、基(α)を有する繰り返し単位を有するポリマー(以下、ポリマーQと記す。)が好ましく、ポリマーQがより好ましい。ポリマーQは、領域(A)12aに含まれるポリマーとして特に好ましい。
CF=CF(OCFCFX−O−(CF−SOF ・・・(1)。
Figure 2008192328
ただし、式中の記号は下記意味を示す。
式(1)中、Xはフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、mは0〜3の整数であり、nは1〜12の整数であり、pは0または1である。
基(α)中、Qは、エーテル性の酸素原子を有していてもよいパーフルオロアルキレン基であり、Qは、単結合またはエーテル性の酸素原子を有していてもよいパーフルオロアルキレン基であり、Rf1は、エーテル性の酸素原子を有していてもよいパーフルオロアルキル基であり、Xは、酸素原子、窒素原子または炭素原子であり、aは、Xが酸素原子の場合0であり、Xが窒素原子の場合1であり、Xが炭素原子の場合2であり、Yは、フッ素原子または1価のパーフルオロ有機基である。
ポリマーH:
化合物(1)としては、化合物(11)〜(14)が好ましい。
CF=CFO(CFSOF ・・・(11)、
CF=CFOCFCF(CF)O(CFSOF ・・・(12)、
CF=CF(CFSOF ・・・(13)、
CF=CF(OCFCF(CF))O(CFSOF ・・・(14)。
ただし、qは、1〜8の整数であり、rは、1〜8の整数であり、sは、1〜8の整数であり、tは、1〜5の整数である。
ポリマーHは、さらに、後述する他のモノマーに基づく繰り返し単位を有していてもよい。他のモノマーに基づく繰り返し単位のうち、化学的な耐久性の点から、パーフルオロモノマーに基づく繰り返し単位が好ましく、化学的な耐久性および機械的強度の点から、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位がより好ましい。
ポリマーHとしては、化学的な耐久性の点から、パーフルオロカーボンポリマーが好ましい。該パーフルオロカーボンポリマーは、エーテル性の酸素原子を有していてもよい。
ポリマーQ:
基(α)中、Q、Qのパーフルオロアルキレン基がエーテル性の酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、該酸素原子は、パーフルオロアルキレン基の炭素原子−炭素原子結合間に挿入されていてもよく、炭素原子結合末端に挿入されていてもよい。
パーフルオロアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
パーフルオロアルキレン基の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。炭素数が多すぎると、含フッ素モノマーの沸点が高くなり、蒸留精製が難しくなる。また、炭素数が多すぎると、ポリマーQのイオン交換容量が低下する。
は、エーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6のパーフルオロアルキレン基であることが好ましい。Qがエーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6のパーフルオロアルキレン基であれば、Qが単結合である場合に比べ、長期にわたって燃料電池1を運転した際に、出力電圧の安定性に優れる。
、Qの少なくとも一方は、エーテル性の酸素原子を有する炭素数1〜6のパーフルオロアルキレン基であることが好ましい。エーテル性の酸素原子を有する炭素数1〜6のパーフルオロアルキレン基を有する含フッ素モノマーは、フッ素ガスによるフッ素化反応を経ずに合成できるため、収率が良好で、製造が容易である。
−SOX(SOf1 基としては、スルホン酸基(−SO 基)、スルホンイミド基(−SON(SOf1基)、スルホンメチド基(−SOC(SOf1 基)が挙げられる。
f1のパーフルオロアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。Rf1の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。Rf1としては、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基等が好ましい。
スルホンメチド基の場合、2つのRf1は、同じ基であってもよく、異なる基であってもよい。
Yとしては、フッ素原子、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖状のパーフルオロアルキル基が好ましい。
ポリマーQは、さらに、後述する他のモノマーに基づく繰り返し単位を有していてもよい。他のモノマーに基づく繰り返し単位のうち、化学的な耐久性の点から、パーフルオロモノマーに基づく繰り返し単位が好ましく、化学的な耐久性および機械的強度の点から、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位がより好ましい。
ポリマーQとしては、化学的な耐久性の点から、パーフルオロカーボンポリマーが好ましい。該パーフルオロカーボンポリマーは、エーテル性の酸素原子を有していてもよい。
ポリマーQは、たとえば、下記工程を経て製造できる。
(I)基(β)を有するモノマー(以下、化合物(m1)と記す。)および必要に応じて他のモノマーを重合し、−SOF基を有する前駆体ポリマー(以下、ポリマーPと記す。)を得る工程。
Figure 2008192328
(II)必要に応じて、ポリマーPとフッ素ガスとを接触させ、ポリマーPの不安定末端基をフッ素化する工程。
(III)ポリマーPの−SOF基を、スルホン酸基、スルホンイミド基、またはスルホンメチド基に変換し、ポリマーQを得る工程。
(I)工程:
化合物(m1)は、たとえば、後述する例1に示す合成例によって得ることができる。
他のモノマーとしては、たとえば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニル、エチレン、CF=CFORf2、CH=CHRf3、CH=CHCHf3等が挙げられる。ただし、Rf2は、エーテル性の酸素原子を含んでもよい炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基であり、Rf3は、炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基である。
他のモノマーのうち、化学的な耐久性の点から、パーフルオロモノマーが好ましく、テトラフルオロエチレンがより好ましい。
重合法としては、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法が挙げられる。
重合は、ラジカルが生起する条件で行われる。ラジカルを生起させる方法としては、紫外線、γ線、電子線等の放射線を照射する方法、開始剤を添加する方法等が挙げられる。
重合温度は、通常、20〜150℃である。
開始剤としては、ビス(フルオロアシル)パーオキシド類、ビス(クロロフルオロアシル)パーオキシド類、ジアルキルパーオキシジカーボネート類、ジアシルパーオキシド類、パーオキシエステル類、アゾ化合物類、過硫酸塩類等が挙げられ、不安定末端基が少ない前駆体ポリマーPが得られる点から、ビス(フルオロアシル)パーオキシド類等のパーフルオロ化合物が好ましい。
溶液重合法にて用いる溶媒としては、ポリフルオロトリアルキルアミン化合物、パーフルオロアルカン、ハイドロフルオロアルカン、クロロフルオロアルカン、分子鎖末端に二重結合を有しないフルオロオレフィン、ポリフルオロシクロアルカン、ポリフルオロ環状エーテル化合物、ヒドロフルオロエーテル類、フッ素含有低分子量ポリエーテル、tert−ブタノール等が挙げられる。
(II)工程:
不安定末端基とは、連鎖移動反応によって形成される基、ラジカル開始剤に基づく基等であり、具体的には、−COOH基、−CF=CF基、−COF基、−CFH基等である。不安定末端基をフッ素化することにより、ポリマーQの分解が抑えられる。
フッ素ガスは、窒素、ヘリウム、二酸化炭素等の不活性ガスで希釈して用いてもよく、希釈せずにそのまま用いてもよい。
ポリマーPとフッ素ガスとを接触させる際の温度は、室温〜300℃が好ましく、50〜250℃がより好ましく、100〜220℃がさらに好ましく、150〜200℃が特に好ましい。
ポリマーPとフッ素ガスとの接触時間は、1分〜1週間が好ましく、1〜50時間がより好ましい。
(III)工程:
たとえば、−SOF基をスルホン酸基に変換する場合は、(III−1)工程を行い、−SOF基をスルホンイミド基に変換する場合は、(III−2)工程を行う。
(III−1)ポリマーPの−SOF基を加水分解してスルホン酸塩とし、スルホン酸塩を酸型化してスルホン酸基に変換する工程。
(III−2)ポリマーPの−SOF基をスルホンイミド化してスルホンイミド基に変換する工程。
(III−1)工程:
加水分解は、たとえば、溶媒中にてポリマーPと塩基性化合物とを接触させて行う。
塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。溶媒としては、水、水と極性溶媒との混合溶媒等が挙げられる。極性溶媒としては、アルコール類(メタノール、エタノール等。)、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
酸型化は、たとえば、−SOF基が加水分解されたポリマーPを、塩酸、硫酸等の水溶液に接触させて行う。
加水分解および酸型化は、通常、0〜120℃にて行う。
(III−2)工程:
スルホンイミド化としては、米国特許第5463005号明細書に記載の方法、Inorg.Chem.32(23)、5007頁(1993年)に記載の方法等、公知の方法が挙げられる。
炭化水素系ポリマーとしては、スルホン化ポリアリーレン、スルホン化ポリベンゾオキサゾール、スルホン化ポリベンゾチアゾール、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリフェニレンスルホン、スルホン化ポリフェニレンオキシド、スルホン化ポリフェニレンスルホキシド、スルホン化ポリフェニレンサルファイド、スルホン化ポリフェニレンスルフィドスルホン、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルケトンケトン、スルホン化ポリイミド等が挙げられる。
イオン交換樹脂がフッ素系ポリマーの場合、電極触媒とフッ素系ポリマーとの比率(電極触媒/イオン交換樹脂)は、電極の導電性および撥水性の点から、4/6〜9.5/0.5(質量比)が好ましく、6/4〜8/2が特に好ましい。
触媒層に含まれる白金量は、後述する電極反応を効率よく行うための最適な厚みの点から、0.01〜0.5mg/cmが好ましく、0.05〜0.35mg/cmがより好ましい。
触媒層12は、フラッディングの抑制効果が高まる点から、撥水化剤を含んでいてもよい。撥水化剤としては、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。撥水化剤としては、触媒層12を撥水化処理しやすい点から、溶媒に溶解できるフッ素系ポリマーが好ましい。
撥水化剤の量は、触媒層12(100質量%)中、0.01〜30質量%が好ましい。
触媒層12の厚さは、触媒層12中のガス拡散を容易にし、燃料電池1の特性を向上させる点から、20μm以下が好ましく、1〜15μmがより好ましい。また、触媒層12の厚さは、均一であることが好ましい。触媒層12の厚さを薄くすると単位面積あたりに存在する電極触媒量が少なくなって反応活性が低くなるおそれがあるが、該場合は電極触媒として後述の白金または白金合金が高担持率で担持された担持触媒を用いれば、薄くても電極触媒量が不足することなく電極の反応活性を高く維持できる。
(アノード側の触媒層)
触媒層22は、図1に示すように、1つの領域からなる層であってもよく、触媒層12と同様に2つの領域からなる層であってもよい。
電極触媒において、アノード20用の白金合金としては、一酸化炭素を含むガスが供給された場合であっても電極触媒の活性が安定する点から、白金とルテニウムとを含む合金が好ましい。
イオン交換樹脂のイオン交換容量は、導電性およびガス透過性の点から、通常0.5〜2.0ミリ当量/g乾燥樹脂が好ましく、0.8〜1.5ミリ当量/g乾燥樹脂が特に好ましい。
(ガス拡散層)
ガス拡散層14およびガス拡散層24(以下、まとめてガス拡散層とも記す。)は、ガス拡散性基材を有する層である。
ガス拡散性基材は、導電性を有する多孔質基材である。ガス拡散性基材としては、カーボンクロス、カーボンペーパ、カーボンフェルト等が挙げられる。
ガス拡散性基材は、ポリテトラフルオロエチレンやポリテトラフルオロエチレンとカーボンブラックとの混合物等によって撥水処理されていることが好ましい。
ガス拡散層の厚さは、100〜400μmがより好ましく、140〜350μmがさらに好ましい。
(固体高分子電解質膜)
固体高分子電解質膜30は、イオン交換樹脂を含む膜である。
固体高分子電解質膜30に含まれるイオン交換樹脂としては、触媒層12のイオン交換樹脂と同様のものが挙げられる。
固体高分子電解質膜30の厚さは、50μm以下が好ましく、3〜40μmがより好ましく、5〜30μmが特に好ましい。固体高分子電解質膜30の厚さを50μm以下とすることにより、固体高分子電解質膜30が乾燥した状態になりやすく、燃料電池1の特性の低下が抑えられる。電解質膜30の厚さを3μm以上とすることにより、短絡が起きることがない。
固体高分子電解質膜30は、補強材を含んでいてもよい。
補強材としては、多孔体、繊維、織布、不織布等が挙げられる。補強材の材料としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられる。
以上説明した燃料電池1は、領域(A)12aに含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量が、領域(B)12bに含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量よりも高い触媒層12を有するため、カソード10内に保持される水分の面内分布がより均一化される。そのため、フラッディング現象の発生がなく、触媒層12の導電性が高くなり、良好な発電性能が得られる。
なお、イオン交換樹脂のイオン交換容量を大きくしていくと含水率が高くなり、燃料電池1の運転に伴ってイオン交換樹脂が膨潤し、触媒層12が変形して固体高分子電解質膜30と剥離しやすくなるが、燃料電池1においては、以下の理由から触媒層12と固体高分子電解質膜30とが剥離しにくい。
燃料電池1において、カソード10およびアノード20の少なくとも一方と固体高分子電解質膜30との界面の90°剥離強度を0.1N/cm以上とすることにより、カソード10またはアノード20と固体高分子電解質膜30とが強固に接合することになる。これにより、固体高分子電解質膜30の変形が抑制され、触媒層12に含まれるイオン交換樹脂が膨潤したとしても、固体高分子電解質膜30によってカソード10の変形が抑制されるため、カソード10と固体高分子電解質膜30との剥離が起こらない。
よって、本発明の燃料電池1によれば、高温から低温の広い温度範囲でかつ高加湿から低加湿に渡る環境下において、高い発電性能を安定に発現できる。
なお、本発明の燃料電池は、図4に示す、セパレータとカソードとの組合せを有するものに限定されず、図5〜7に示す該組合せを有するものでもよい。
図5の組合せ:
セパレータ82には、図5(a)に示すように、入口82iおよび出口82oと接続される、辺82dに対して垂直方向にジグザグ状に屈曲した流路82aが形成されている。
触媒層12は、図5(b)に示すように、辺12dに対して水平方向に、領域(A)12aと領域(B)12bとに線15によって2つの領域に分けられ、領域(A)12aに含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量が、領域(B)12bに含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量よりも高くされている層である。
図6の組合せ:
セパレータ82には、図6(a)に示すように、辺82dと対向する辺82e側に、入口82iと接続される流路82ax(マニホールド)が辺82dに対して水平方向に形成され、辺82d側に、出口82oと接続される流路82az(マニホールド)が辺82dに対して水平方向に形成され、流路82axと流路82azとが、辺82dに対して垂直方向に形成された複数の流路82ayにより接続された流路82aが形成されている。
触媒層12は、図6(b)に示すように、辺12dに対して垂直方向に、領域(A)12aと領域(B)12bとに線15によって2つの領域に分けられ、領域(A)12aに含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量が、領域(B)12bに含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量よりも高くされている層である。
図7の組合せ:
セパレータ82には、図7(a)に示すように、辺82dと直交しかつ入口82iに近い辺82f側に、入口82iと接続される流路82ax(マニホールド)が辺82dに対して垂直方向に形成され、辺82fと対向する辺82g側に、出口82oと接続される流路82az(マニホールド)が辺82dに対して垂直方向に形成され、流路82axと流路82azとが、辺82dに対して水平方向に形成された複数の流路82ayにより接続された流路82aが形成されている。
触媒層12は、図7(b)に示すように、辺12dに対して水平方向に、領域(A)12aと領域(B)12bとに線15によって2つの領域に分けられ、領域(A)12aに含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量が、領域(B)12bに含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量よりも高くされている層である。
また、本発明の燃料電池においては、カソードの触媒層は、領域(A)、領域(B)を有するものに限定されない。
カソードの触媒層は、前記流路の入口に接するカソードの触媒層に含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量が、前記流路の出口に接するカソードの触媒層に含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量よりも高くされていればよい。
たとえば、カソードの触媒層に含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量が、前記流路の入口側から前記流路の出口側に向かって連続的にまたは段階的に小さくされていてもよい。具体的には、図4(b)に示される触媒層12を、領域(A)12aと領域(B)12bとの間に、領域(C)を設けて3つの領域からなる層としてもよい。該場合、各領域に含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量が、領域(A)12a、領域(C)、領域(B)12bの順に段階的に小さくされている。さらに、触媒層12を多数の領域からなる層とし、各領域に含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量を、領域(A)12aから領域(B)に向かって段階的に小さくしてもよい。
また、本発明の燃料電池は、図1に示す燃料電池1に限定されず、図8に示すように、固体高分子電解質膜30が2層以上のものでもよい。
図8に示す燃料電池1においては、固体高分子電解質膜30が、カソード10に接するMa層32と、アノード20に接するMc層36と、Ma層32とMc層36との間に位置するMb層34とを有する膜である。
Ma層32およびMc層36に含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量は、プロトン伝導性が向上することから、Mb層34に含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量よりも高いことが好ましい。
また、本発明の燃料電池においては、ガス拡散層がガス拡散性基材の触媒層側の表面にカーボン層を有していてもよい。カーボン層を配置することにより、触媒層の表面のガス拡散性が向上し、燃料電池の発電性能が大きく向上する。
カーボン層は、カーボンとフッ素系ポリマーとを含む層である。
カーボンとしては、繊維径1〜1000nm、繊維長1000μm以下のカーボンナノファイバーが好ましい。
フッ素系ポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
また、本発明の燃料電池は、セパレータに溝がなく、メッシュや多孔体等のガス分散体を有する構造のものであってもよい。その場合、酸素を含むガスまたは燃料ガスを、前記ガス分散体を通してガス拡散層に供給してもよい。
<固体高分子形燃料電池の製造方法>
燃料電池1は、膜電極接合体5を作製し、該膜電極接合体5の両面に、流路82a、84aが形成されたセパレータ82、84を配置することにより製造できる。
膜電極接合体5の作製方法としては、具体的には以下の方法が挙げられる。
(I)固体高分子電解質膜30を形成する工程と、固体高分子電解質膜30の一方の面に触媒層用塗布液を塗工して触媒層12を形成する工程とを有する方法。
(II)固体高分子電解質膜30を形成する工程と、固体高分子電解質膜30の一方の面に触媒層用塗布液を塗工して触媒層22を形成する工程とを有する方法。
(II)固体高分子電解質膜30を形成する工程と、固体高分子電解質膜30の両面に触媒層用塗布液を塗工して、各面にそれぞれ触媒層12および触媒層22を形成する工程とを有する方法。
[(I)の方法]
(I)の方法としては、たとえば、(I−1)〜(I−4)工程を有する方法が挙げられる。図9を参照しながら説明する。
(I−1)別途用意した基材(以下、「剥離基材」という。)の表面に固体高分子電解質膜30を形成する工程。
(I−2)固体高分子電解質膜30の一方の面に触媒層用塗布液を塗工して、固体高分子電解質膜30および触媒層12からなる第1の中間体50を作製する工程。
(I−3)ガス拡散層24および触媒層22からなる第2の中間体60(すなわち、アノード20)を作製する工程。
(I−4)第1の中間体50から剥離基材を剥離した後、ガス拡散層14と固体高分子電解質膜30との間に触媒層12が位置し、かつガス拡散層24と固体高分子電解質膜30との間に触媒層22が位置するように、ガス拡散層14と第1の中間体50と第2の中間体60とを接合し、膜電極接合体5とする工程。
(I−1)工程:
固体高分子電解質膜30は、以下のようにして形成することができる。
剥離基材の表面に、イオン交換樹脂を含む塗工液(以下、電解質膜用塗工液と記す。)を塗工し、乾燥させることによって固体高分子電解質膜30が形成される。
剥離基材としては、樹脂フィルムが挙げられる。
樹脂フィルムの材料としては、以下の樹脂が挙げられる。
ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド等の非フッ素系樹脂。
ポリテトラフルオロエチレン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素樹脂。
非フッ素系樹脂フィルムは、離型剤で表面処理されていることが好ましい。
電解質膜用塗工液は、イオン交換樹脂を溶媒に溶解または分散させることにより調製される。
イオン交換樹脂がフッ素系ポリマーの場合、溶媒としては、アルコール類または含フッ素溶媒が好ましい。
アルコール類としては、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール等が挙げられ、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールが好ましい。
前記アルコール類は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、イオン交換樹脂の溶解性を上げるために、アルコール類と水との混合溶媒を用いてもよい。
アルコール類の割合は、溶媒(100質量%)のうち、1〜90質量%が好ましく、1〜60質量%がより好ましい。
水の割合は、溶媒(100質量%)のうち、10〜99質量%が好ましく、40〜99質量%がより好ましい。水の割合を増やすことにより、混合溶媒に対するフッ素系ポリマーの分散性を向上できる。
含フッ素溶媒としては、以下のものが挙げられる。
ヒドロフルオロカーボン:2H−パーフルオロプロパン、1H,4H−パーフルオロブタン、2H,3H−パーフルオロペンタン、3H,4H−パーフルオロ(2−メチルペンタン)、2H,5H−パーフルオロヘキサン、3H−パーフルオロ(2−メチルペンタン)等。
フルオロカーボン:パーフルオロ(1,2−ジメチルシクロブタン)、パーフルオロオクタン、パーフルオロヘプタン、パーフルオロヘキサン等。
ヒドロクロロフルオロカーボン:1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン、1,1,1−トリフルオロ−2,2−ジクロロエタン、3,3−ジクロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン等。
フルオロエーテル:1H,4H,4H−パーフルオロ(3−オキサペンタン)、3−メトキシ−1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン等。
含フッ素アルコール:2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール等。
前記含フッ素溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
イオン交換樹脂が炭化水素系ポリマーの場合、溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等が挙げられる。
電解質膜用塗工液の調製方法としては、大気圧下、またはオートクレーブ等で密閉した状態下において、溶媒中のイオン交換樹脂にせん断を加える方法が挙げられる。
調製温度は、0〜250℃が好ましく、20〜150℃がより好ましい。必要に応じて、超音波等のせん断を付与してもよい。
電解質膜用塗工液の固形分濃度は、15〜30質量%が好ましく、20〜30質量%がより好ましい。
塗工液の固形分濃度を該範囲とすることにより、塗工液が適度な粘度となり、均一に塗工でき、かつ形成される塗膜にひび割れを生じることがない。
塗工法としては、バッチ式塗工法または連続式塗工法が挙げられる。
バッチ式塗工法としては、バーコータ法、スピンコータ法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
連続式塗工法としては、後計量法または前計量法が挙げられる。後計量法は、過剰の塗工液を塗工し、後から所定の厚さとなるように塗工液を除去する方法である。前計量法は、所定の厚さを得るのに必要な量の塗工液を塗工する方法である。
後計量法としては、エアドクタコータ法、ブレードコータ法、ロッドコータ法、ナイフコータ法、スクイズコータ法、含浸コータ法、コンマコータ法等が挙げられる。
前計量法としては、ダイコータ法、リバースロールコータ法、トランスファロールコータ法、グラビアコータ法、キスロールコータ法、キャストコータ法、スプレイコータ法、カーテンコータ法、カレンダコータ法、押出コータ法等が挙げられる。
塗工法としては、均一な固体高分子電解質膜30を形成できる点から、スクリーン印刷法またはダイコータ法が好ましく、生産効率の点から、ダイコータ法がより好ましい。
電解質膜用塗工液を塗工した後の乾燥温度は、70〜170℃が好ましい。
電解質膜用塗工液を塗工し、乾燥させた後、または乾燥させると同時にアニール処理してもよい。アニール処理の温度は100〜250℃が好ましく、130〜220℃がより好ましい。アニール処理の最適温度は、固体高分子電解質膜30を構成するポリマーによって異なり、ポリマーのガラス転移温度(Tg)よりも高い温度(Tg+100)℃以下の温度にてアニール処理することが好ましい。上記温度範囲でアニール処理した固体高分子電解質膜30の上に触媒層12を形成することにより、高出力の膜電極接合体5が得られる。
アニール処理の時間は5分間〜3時間が好ましく、10分間〜1時間が特に好ましい。アニール処理の時間が5分間以上であれば上述の効果が得られやすくなる。アニール処理の時間が3時間以下であれば生産性が向上する。
また、膜電極接合体5を長時間使用すると、固体高分子電解質膜30の劣化により出力が低下する。これは、過酸化物の生成によると考えられるため、過酸化物の生成を抑制する抑制剤を固体高分子電解質膜30に添加することも好ましい。この抑制剤は、電解質膜用塗工液中に含有させておくことが好ましい。
(I−2)工程:
第1の中間体50は、固体高分子電解質膜30の表面に、領域(A)12a用のカソード触媒層用塗工液を塗工し、乾燥させて領域(A)12aの触媒層となる塗膜を形成する。次に、領域(B)12b用のカソード触媒層用塗工液を塗工し、乾燥させて領域(B)12bの触媒層となる塗膜を形成することによって触媒層12を形成し、作製される。
カソード触媒層用塗布液は、電極触媒を溶媒に分散させ、イオン交換樹脂を溶媒に溶解または分散させることにより調製される。
溶媒としては、前記電解質膜用塗工液における溶媒と同じものが挙げられる。
カソード触媒層用塗布液は、溶媒としてイオン交換樹脂を溶解させる作用を有する溶媒を含むことが好ましい。イオン交換樹脂を溶解させる作用を有する溶媒としては、アルコール、含フッ素溶媒等であり、特にエタノール、n−プロパノール、イソプロパノールが好ましく挙げられる。
カソード触媒層用塗布液(100質量%)中、イオン交換樹脂を溶解させる作用を有する溶媒の割合は、5質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。また、溶媒全てがイオン交換樹脂を溶解させる作用を有する溶媒であってもよい。該溶媒の割合が5質量%以上であると、固体高分子電解質膜30と触媒層12との界面の剥離強度がより高くなる。
固体高分子電解質膜30の表面に前記触媒層用塗布液を塗工する際、該触媒層用塗布液中にイオン交換樹脂を溶解させる作用を有する溶媒を含む場合、該溶媒の作用により、固体高分子電解質膜30表面の一部が溶解して触媒層12中の電解質と結着する。その結果、固体高分子電解質膜30と触媒層12との結着強度が充分に高くなる。
カソード触媒層用塗布液の固形分濃度は、4〜15質量%が好ましく、8〜12質量%がより好ましい。
塗布液の固形分濃度を該範囲とすることにより、塗布液が適度な粘度となり、均一に塗工でき、かつ形成される塗膜にひび割れを生じることがない。
塗工法としては、(I−1)工程と同様の方法が挙げられる。
固体高分子電解質膜30の表面にカソード触媒層用塗布液を塗工した後、乾燥させて触媒層12を形成する。乾燥温度は、70〜150℃が好ましい。
さらに、固体高分子電解質膜30と触媒層12との接合強度の向上と、イオン交換樹脂の安定化のために、乾燥させた後に熱処理を行うことが好ましい。
熱処理の温度は、イオン交換樹脂の種類にもよるが、100〜200℃が好ましく、110〜170℃がより好ましい。熱処理の温度が下限値以上であると、イオン交換樹脂の含水率の増加が抑えられ、触媒層におけるガス拡散性が向上し、また、固体高分子電解質膜30の変形が起きにくくなって発電性能が向上する。また、固体高分子電解質膜30と触媒層12との接合強度も高くなる。熱処理の温度が上限値以下であると、イオン交換樹脂のイオン性基が熱分解されにくくなり、導電性が高まって発電性能が向上する。
ただし、熱処理の温度が170℃を超えると、触媒の種類によっては、カーボン担体が酸化分解するおそれがある。よって、その場合の熱処理は、窒素雰囲気下、減圧下、またはプレス等の圧力で触媒層12中の酸素を減らした環境下で行うことが好ましい。
また、酸化分解を抑制するために、カーボン担体として、熱処理等でグラファイト化したカーボン担体を用いてもよい。
(I−3)工程:
第2の中間体60は、ガス拡散層24の表面にアノード触媒層用塗布液を塗工することによって触媒層22を形成し、作製される。
ガス拡散層24としては、カーボンペーパ、カーボンクロス、カーボンフェルト等のガス拡散性基材をそのまま用いることができる。必要に応じて、ガス拡散性基材を撥水性のフッ素樹脂を含む溶液または分散液を用いて撥水処理してもよい。撥水処理をしていると、触媒層中で発生する水などがガス拡散層に形成されている孔を塞いで、ガスの拡散が抑制されることを回避できる。このとき、撥水性のフッ素樹脂とカーボンブラック等の導電性のカーボンとを含む分散液でガス拡散層表面を処理すると膜電極接合体5の導電性の点でより好ましい。撥水性のフッ素樹脂としては、たとえばポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。なお、ガス拡散層の表面処理された側が、触媒層側に配置される。
アノード触媒層用塗布液は、電極触媒を溶媒に分散させ、イオン交換樹脂を溶媒に溶解または分散させることにより調製される。
溶媒としては、カソード触媒層用塗布液の溶媒と同様のものが挙げられる。
アノード触媒層用塗布液の固形分濃度は、カソード触媒層用塗布液の固形分濃度と同じ範囲が好ましい。
塗工法としては、(I−1)工程と同様の方法が挙げられる。
ガス拡散層24の表面にアノード触媒層用塗布液を塗工した後、乾燥させて触媒層22を形成する。乾燥温度は、70〜170℃が好ましい。
(I−4)工程:
ガス拡散層14は、ガス拡散層24と同様のものを用いればよい。
接合方法としては、熱プレス法、熱ロールプレス、超音波融着等が挙げられ、面内の均一性の点から、熱プレス法が好ましい。
プレス機内のプレス板の温度は、100〜200℃が好ましい。
プレス圧力は、0.5〜4MPaが好ましい。
[(II)の方法]
(II)の方法としては、たとえば、(II−1)〜(II−4)工程を有する方法が挙げられる。図10を参照しながら説明する。
(II−1)剥離基材の表面に固体高分子電解質膜30を形成する工程。
(II−2)固体高分子電解質膜30の一方の面に触媒層用塗布液を塗工して、固体高分子電解質膜30および触媒層22からなる第1の中間体50を作製する工程。
(II−3)ガス拡散層14および触媒層12からなる第2の中間体60(すなわち、カソード10)を作製する工程。
(II−4)第1の中間体50から剥離基材を剥離した後、ガス拡散層24と固体高分子電解質膜30との間に触媒層22が位置し、かつガス拡散層14と固体高分子電解質膜30との間に触媒層12が位置するように、ガス拡散層24と第1の中間体50と第2の中間体60とを接合し、膜電極接合体1とする工程。
(II−1)工程は、(I−1)工程と同様に行えばよい。
(II−2)工程:
第1の中間体50は、固体高分子電解質膜30の表面にアノード触媒層用塗布液を塗工することによって触媒層22を形成し、作製される。
具体的な方法および条件は、(I−2)工程において、カソード触媒層用塗布液をアノード触媒層用塗布液に変更する以外は、(I−2)工程と同様の方法および条件とすればよい。
(II−3)工程:
第2の中間体60は、ガス拡散層14の表面にカソード触媒層用塗布液を塗工することによって触媒層12を形成し、作製される。
具体的な方法および条件は、(I−3)工程において、アノード触媒層用塗布液をカソード触媒層用塗布液に変更する以外は、(I−3)工程と同様の方法および条件とすればよい。
(II−4)工程:
ガス拡散層24の作製、接合方法および条件は、(I−4)工程と同様の方法、条件とすればよい。
[(III)の方法]
(III)の方法としては、たとえば、(III−1)〜(III−4)工程を有する方法が挙げられる。図11を参照しながら説明する。
(III−1)剥離基材の表面に固体高分子電解質膜30を形成する工程。
(III−2)固体高分子電解質膜30の一方の面に触媒層用塗布液を塗工して、固体高分子電解質膜30および触媒層12からなる第1の中間体50を作製する工程。
(III−3)第1の中間体50から剥離基材を剥離し、触媒層12とは反対側の固体高分子電解質膜30の面に触媒層用塗布液を塗工して、触媒層12、固体高分子電解質膜30、および触媒層22からなる第2の中間体60を作製する工程。
(III−4)ガス拡散層14と固体高分子電解質膜30との間に触媒層12が位置し、かつガス拡散層24と固体高分子電解質膜30との間に触媒層22が位置するように、ガス拡散層14と第2の中間体60とガス拡散層24とを接合し、膜電極接合体5とする工程。
(III−1)〜(III−2)工程は、(I−1)〜(I−2)工程と同様に行えばよい。
(III−3)工程:
第2の中間体60は、第1の中間体50から剥離基材を剥離し、固体高分子電解質膜30の表面の全面にアノード触媒層用塗布液を塗工することによって触媒層22を形成し、作製される。
具体的な方法および条件は、(II−2)工程と同様の方法および条件とすればよい。
(III−4)工程:
ガス拡散層14とガス拡散層24の作製、接合方法および条件は、(I−4)工程と同様の方法、条件とすればよい。
なお、(III)の方法においては、最初に固体高分子電解質膜30の一方の面に触媒層22を形成し、その後、触媒層22とは反対側の固体高分子電解質膜30の面に触媒層12を形成してもよい。
以上説明した燃料電池1の製造方法によれば、膜電極接合体5の作製の際に固体高分子電解質膜30の少なくとも一方の面に、2種のカソード触媒層用塗布液またはアノード触媒層用塗布液を直接塗工することによって触媒層を形成しているため、カソード10またはアノード20と、固体高分子電解質膜30とを強固に接合できる。具体的には、カソード10と固体高分子電解質膜30との界面、およびアノード20と固体高分子電解質膜30との界面の少なくとも一方の90°剥離強度を0.1N/cm以上とすることができる。これにより、固体高分子電解質膜30の変形を抑制でき、燃料電池1の運転に伴って、触媒層12に含まれるイオン交換樹脂が膨潤したとしても、固体高分子電解質膜30によって触媒層12の変形が抑制され、固体高分子電解質膜30とカソード10との剥離が起こらなくなり、固体高分子電解質膜30の湾曲によるガス流路への垂れ込みの発生等も起こらなくなる。
このため、本発明の燃料電池の製造方法により製造される燃料電池1は、高温から低温の広い温度範囲でかつ高加湿から低加湿に渡る環境下において、高い発電性能を安定に発現することができる。
なお、カソードの触媒層が3つの領域あるいはそれ以上の領域からなる層を有する燃料電池を製造する場合は、イオン交換容量の異なるイオン交換樹脂を含むカソード触媒層用塗布液を領域の数だけ準備し、各領域に含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量が、流路の入口側から出口側に向かって小さくなるように塗工すればよい。
また、ガス拡散層がガス拡散性基材の触媒層側の表面にカーボン層を有する燃料電池を製造する場合は、ガス拡散層としてガス拡散性基材の表面にカーボン層を形成したものを用いればよい。
図12を参照しながら、燃料電池の運転中に、固体高分子電解質膜と触媒層とが剥離した場合に触媒層と固体高分子電解質膜が変形する様子を説明する。
図12(A)は、膜電極接合体を2つのセパレータで挟み込んだ燃料電池を示す部分的断面図である。
固体高分子電解質膜30が、触媒層12および触媒層22のいずれとも充分に結着していない場合、図12(B)に示すような状態となる。すなわち、膜電極接合体において、セパレータ82、84のリブ101で押さえつけられている部分は固定されているため、固体高分子電解質膜30と触媒層12、22との剥離は起きにくいが、ガスの流路82a、84aと接している部分では、固体高分子電解質膜30と触媒層12、22との剥離が起こる。そして、含水した固体高分子電解質膜30が、触媒層12、22と剥離した部分で大きく変形してしまう。
一方、固体高分子電解質膜30と、少なくともカソード10の触媒層12とが充分に結着している場合、図12(A)の安定した状態を維持することができる。触媒層12も触媒層22も直接固体高分子電解質膜30に塗工せずに、たとえばガス拡散層14、24にそれぞれ塗工して、後からホットプレスなどにより固体高分子電解質膜30と結着させた場合等は、固体高分子電解質膜30と触媒層12、22との結着強度は低くなりやすく、燃料電池の運転中に図12(B)の状態になりやすい。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されない。
例4は実施例であり、例5〜6は比較例である。
下記例において、ガスクロマトグラフィを「GC」と示す。GC純度とは、GC分析におけるピーク面積比から求めた化合物の純度を示す。
(イオン交換容量)
ポリマーのイオン交換容量は、下記方法により求めた。
各ポリマーを、水およびメタノールを溶媒とする一定濃度の水酸化ナトリウム溶液に浸漬して加水分解し、該溶液を逆滴定することによりイオン交換容量を求めた。
(TQ値)
TQ値(単位:℃)は、ポリマーの分子量の指標であり、長さ1mm、内径1mmのノズルを用い、2.94MPaの押出し圧力の条件でポリマーの溶融押出しを行った際の押出し量が100mm/秒となる温度である。
フローテスタCFT−500A(島津製作所社製)を用い、温度を変えてポリマーの押出し量を測定し、押出し量が100mm/秒となるTQ値を求めた。
〔発電試験〕
膜電極接合体5を、ガス流路つきセパレータを備えた発電用セルに組み込み、膜電極接合体5の温度を80℃に維持し、アノード20に水素(利用率50%)、カソード10に空気(利用率50%)を、それぞれ200kPa(絶対圧力)に加圧して供給する。ガスの加湿度を、水素、空気共に相対湿度30%にする場合(低加湿条件)と、水素を相対湿度100%、空気を相対湿度100%にする場合(高加湿条件)とで、電流密度が1.0A/cmのときのセル電圧をそれぞれ記録する。
〔断面観察〕
図4(a)に示すような、辺82dに対して水平方向にジグザグ状に屈曲した、幅1mmの流路82a、84aが1mm間隔で設けられたセパレータ82、84により、膜電極接合体5をそれぞれ挟み込み、温度を75〜80℃に保ちながら、膜電極接合体5とセパレータ82、84とにより囲まれた流路82a、84aに、加湿露点温度80℃の窒素ガス500ccmを1分間供給する。その後、無加湿の窒素ガス(露点温度0℃以下)を1分間供給する。該処理を交互に繰り返し、その時の燃料電池1の挙動(膜電極接合体5の断面状態)をそれぞれ観察し、下記基準にて評価する。
「剥離なし」:図12(A)に示すように、固体高分子電解質膜30と、カソード10またはアノード20とが剥がれることなく、接合している。
「剥離あり」:図12(B)に示すように、固体高分子電解質膜30と、カソード10またはアノード20とが剥がれている。
「垂れ込みなし」:図12(A)に示すように、固体高分子電解質膜30が変形していない。
「垂れ込みあり」:図12(B)に示すように、固体高分子電解質膜30が変形している。
〔90°剥離試験〕
膜電極接合体5の作製方法に応じて、前記の90°剥離試験(I)を行う。
両面テープ96には、NW−20(商品名:ナイスタック、ニチバン製)を用いる。
片面テープ98には、カプトン粘着テープ(商品名:カプトン粘着テープ No.6564S #25、寺岡製作所製)を用いる。
引張り試験機には、RTE−1210(製品名:万能試験機(テンシロン)、オリエンテック社製)を用いる。
〔例1〕
以下に示す合成ルートにより化合物(m11)を合成した。
Figure 2008192328
(i)化合物(a1)の合成:
特開昭57−176973号公報の実施例2に記載の方法と同様にして、化合物(a1)を合成した。
(ii)化合物(c1)の合成:
ジムロート冷却管、温度計、滴下ロートおよび撹拌翼付きガラス棒を備えた300cmの4口丸底フラスコに、窒素雰囲気下、フッ化カリウム(森田化学社製、商品名:クロキャットF)1.6gおよびジメトキシエタン15.9gを入れた。ついで、丸底フラスコを氷浴で冷却して、滴下ロートより化合物(b1)49.1gを32分かけて、内温10℃以下で滴下した。滴下終了後、滴下ロートより化合物(a1)82.0gを15分かけて滴下した。内温上昇はほとんど観測されなかった。滴下終了後、内温を室温に戻して約90時間撹拌した。分液ロートで下層を回収した。回収量は127.6gであり、GC純度は55%であった。回収液を200cmの4口丸底フラスコに移して、蒸留を実施した。減圧度1.0〜1.1kPa(絶対圧)の留分として化合物(c1)97.7gを得た。GC純度は98%であり、収率は80%であった。
(iii)化合物(d1)の合成:
200cmのステンレス製オートクレーブに、フッ化カリウム(森田化学社製、商品名:クロキャットF)1.1gを入れた。脱気後、減圧下で、オートクレーブにジメトキシエタン5.3g、アセトニトリル5.3gおよび化合物(c1)95.8gを入れた。
ついで、オートクレーブを氷浴で冷却して、内温0〜5℃にて、ヘキサフルオロプロペンオキシド27.2gを27分かけて加えた後、撹拌しながら内温を室温に戻して一晩撹拌した。分液ロートで下層を回収した。回収量は121.9gであり、GC純度は63%であった。回収液の蒸留により沸点80〜84℃/0.67〜0.80kPa(絶対圧)の留分として化合物(d1)72.0gを得た。GC純度は98%であり、収率は56%であった。
(iv)化合物(m11)の合成:
内径1.6cmのステンレス製管を用いて、長さ40cmのU字管を作製した。該U字管の一方にガラスウールを充填し、他方にステンレス製焼結金属を目皿としてガラスビーズを充填し、流動層型反応器を作製した。流動化ガスとして窒素ガスを用い、原料を、定量ポンプを用いて連続的に供給できるようにした。出口ガスはトラップ管を用いて液体窒素で捕集した。
流動層型反応器を塩浴に入れ、反応温度を340℃に保持しながら、化合物(d1)/Nのモル比が1/20となるように、流動層型反応器に化合物(d1)34.6gを1.5時間かけて供給した。反応終了後、液体窒素トラップより27gの液体を得た。GC純度は84%であった。該液体の蒸留により沸点69℃/0.40kPa(絶対圧)の留分として化合物(m11)を得た。GC純度は98%であった。
化合物(m11)の19F−NMR(282.7MHz、溶媒CDCl、基準:CFCl)。
δ(ppm):45.5(1F),45.2(1F),−79.5(2F),−82.4(4F),−84.1(2F),−112.4(2F),−112.6(2F),−112.9(dd,J=82.4Hz,67.1Hz,1F),−121.6(dd,J=112.9Hz,82.4Hz,1F),−136.0(ddt,J=112.9Hz,67.1Hz,6.1Hz,1F),−144.9(1F)。
〔例2〕。
(i)ポリマーP1の合成:
30cmのステンレス製オートクレーブに、化合物(m11)9.84g、溶媒である化合物(3−1)3.09gおよび開始剤である化合物(4−1)1.3gを入れ、液体窒素で冷却して脱気した。
CClFCFCHClF ・・・(3−1)、
(CHC(CN)N=NC(CH(CN) ・・・(4−1)。
内温を70℃に昇温し、オートクレーブにテトラフルオロエチレンを導入し、圧力を1.31MPaG(ゲージ圧)とした。温度、圧力を一定に保持して、5.7時間重合を行った。ついで、オートクレーブ内を冷却して重合を停止し、系内のガスをパージした。反応液を化合物(3−1)で希釈した後、化合物(3−2)を加え、ポリマーを凝集させ、ろ過した。
CHCClF ・・・(3−2)。
化合物(3−1)中でポリマーを撹拌した後、化合物(3−2)を加え、ポリマーを再凝集し、ろ過した。ポリマーを80℃で一晩減圧乾燥し、テトラフルオロエチレンと化合物(m11)との共重合体であるポリマーP1を得た。ポリマーP1の収量は1.2g、イオン交換容量は1.63ミリ当量/g乾燥樹脂、およびTQ値は225℃であった。
(ii)ポリマーQ1のフィルムの製造:
ポリマーP1を下記方法で処理し、酸型のポリマーQ1のフィルムを得た。
まず、ポリマーP1のTQ温度にて、加圧プレス成形によりポリマーP1を厚さ100〜200μmのフィルムに加工した。
ついで、該フィルムを、ジメチルスルホキシドの30質量%および水酸化カリウムの15質量%を含む水溶液に、80℃で16時間浸漬させることにより、該フィルム中の−SOF基が加水分解され、−SOK基に変換された。
ついで、該フィルムを、3モル/L塩酸水溶液に、50℃で2時間浸漬した。塩酸水溶液を交換し、同様の処理をさらに4回繰り返した。該フィルムをイオン交換水で充分に水洗し、該フィルム中の−SOK基がスルホン酸基に変換された、ポリマーQ1のフィルムを得た。
(iii)電解質膜用塗工液S1の調製:
ポリマーQ1に、エタノール、水および1−ブタノールの混合溶媒(エタノール/水/1−ブタノール=35/50/15質量比)を加え、固形分濃度を15質量%に調整し、オートクレーブを用い125℃で8時間、撹拌した。さらに水を加え、固形分濃度を9質量%に調整し、ポリマーQ1が分散媒に分散した電解質膜用塗工液S1を得た。分散媒の組成は、エタノール/水/1−ブタノール=21/70/9(質量比)であった。
〔例3〕。
(i)ポリマーF1の合成:
テトラフルオロエチレンと化合物(2−1)とを共重合し、ポリマーF1を得た。ポリマーF1のイオン交換容量は1.10ミリ当量/g乾燥樹脂、TQ値は230℃であった。
CF=CFOCFCF(CF)O(CFSOF ・・・(2−1)。
(ii)ポリマーH1のフィルムの製造:
ポリマーF1を例2におけるポリマーP1と同様に酸型化処理し、酸型のポリマーH1のフィルムを得た。
(iii)電解質膜用塗工液S2の調製:
ポリマーH1に、エタノールおよび水の混合溶媒(エタノール/水=60/40質量比)を加え、固形分濃度を26質量%に調整し、オートクレーブを用い100℃で8時間、撹拌した。ポリマーH1が分散媒に分散した電解質膜用塗工液S2を得た。
〔例4〕
前記膜電極接合体5の作製方法(I)により膜電極接合体5を作製する。
(I−1)工程
電解質膜用塗工液S2を、エチレンとテトラフルオロエチレンとの共重合体からなるシート(商品名:アフレックス100N、旭硝子社製、厚さ100μm。以下、ETFEシートと記す。)上に、ダイコータにて塗布し、80℃で30分乾燥し、150℃で30分のアニール処理を施し、全体の厚さ25μmの固体高分子電解質膜を形成する。
(I−2)工程:
カーボン担体(比表面積250m/g)に白金・コバルト合金が40%担持された触媒(白金/コバルト=36/4(質量比))35gを蒸留水226.5gに添加し、超音波印加装置を用いて粉砕し、さらにエタノール37.5gを添加し、よく撹拌して分散液(b0)を調製する。
分散液(b0)に、ポリマーQ1をエタノールに分散させた、固形分濃度10質量%の分散液(以下、ポリマーQ1のエタノール分散液と記す。)210gを添加し、よく撹拌し、カソード触媒層用塗布液(b11)とする。
また、分散液(b0)に、ポリマーH1をエタノールに分散させた、固形分濃度10質量%の分散液(以下、ポリマーH1のエタノール分散液と記す。)210gを添加し、よく撹拌し、カソード触媒層用塗布液(b12)とする。
固体高分子電解質膜の表面に、図4(b)に示すような、辺12dに対して垂直方向に、領域(A)12aと領域(B)12bとに線15によって2つの領域に分けられる触媒層12を形成し、第1の中間体50を作製する。すなわち、固体高分子電解質膜30の表面に、カソード触媒層用塗布液(b11)を、白金量が0.2mg/cmとなるようにダイコータを用いて塗工し、90℃の乾燥器内で5分間乾燥し、さらに120℃の乾燥器内で30分間乾燥して領域(A)12aの触媒層となる塗膜を形成する。次いで、カソード触媒層用塗布液(b12)を、白金量が0.2mg/cmとなるようにダイコータを用いて塗工し、90℃の乾燥器内で5分間乾燥し、さらに120℃の乾燥器内で30分間乾燥して領域(B)12bの触媒層となる塗膜を形成し、固体高分子電解質膜の表面に触媒層が形成された第1の中間体を作製する。
(I−3)工程:
表面がカーボンブラック粒子とポリテトラフルオロエチレンとを含む分散液により処理されたカーボンペーパー(商品名:H2315T10AC1、NOK社製)(以下、カーボンペーパー(B)と記す。)からなるアノードのガス拡散層を準備する。
カーボン担体(比表面積800m/g)に白金・ルテニウム合金(白金/ルテニウム=31/22(質量比))が担持された触媒(商品名:TEC61E54、田中貴金属工業社製、白金・ルテニウム合金担持量53質量%。)33gを蒸留水227.5gに添加し、超音波印加装置を用いて粉砕し、さらにエタノール117.5gを添加し、よく撹拌する。これに、ポリマーH1のエタノール分散液122.5gを添加し、よく撹拌し、アノード触媒層用塗布液(a)とする。
ガス拡散層の表面にアノード触媒層用塗布液(a)を、白金量が0.2mg/cmとなるようにダイコータを用いて塗工し、80℃の乾燥器内で15分間乾燥し、ガス拡散層の表面に触媒層が形成されたアノードを作製する。
(I−4)工程:
カーボンペーパー(B)をカソードのガス拡散層として準備する。
第1の中間体からETFEシートを剥離する。
アノード、カソード共にガス拡散層と固体高分子電解質膜との間に触媒層が位置するように、カソードのガス拡散層と第1の中間体とアノードを積み重ねる。これを、プレス温度150℃、プレス時間5分、圧力3MPaの条件にて加熱プレスし、固体高分子電解質膜の両面に触媒層を接合して膜電極接合体を得る。さらに窒素雰囲気下で、膜電極接合体に190℃の熱処理を行い、触媒層中のイオン交換樹脂を安定化させ、電極面積が25cmである膜電極接合体を得る。
該膜電極接合体について、発電試験および断面観察を行うと、表1に示す結果となる。
(試験片の作製)
90°剥離試験(I)の手順1に準じて試験片を作製する。
(I−1)、(I−2)工程で得られる第1の中間体から幅20mm×長さ150mmの試験片を切り出す。
この試験片ついて、90°剥離試験(I)を行うと、表1に示す結果となる。
〔例5〕
例4と同様にしてETFEシート上に、厚さ25μmの固体高分子電解質膜を形成する。
固体高分子電解質膜の表面の全面に、カソード触媒層用塗布液(b12)を、白金量が0.2mg/cmとなるようにダイコータを用いて塗工し、90℃の乾燥器内で5分間乾燥し、さらに120℃の乾燥器内で30分間乾燥し、固体高分子電解質膜の表面にカソードの触媒層が形成された第1の中間体を作製する。
例4の(I−3)工程と同様にしてアノードを作製する。
カーボンペーパー(B)をカソードのガス拡散層として準備する。
第1の中間体50からETFEシートを剥離する。
カソード、アノード共にガス拡散層と固体高分子電解質膜との間に触媒層が位置するように、ガス拡散層と第1の中間体とアノードとを積み重ねる。これを、あらかじめ140℃に加熱したプレス機の中に入れ、1.5MPaのプレス圧で1分間熱プレスし、電極面積が25cmである膜電極接合体を得る。
該膜電極接合体について、発電試験および断面観察を行うと、表1に示す結果となる。
(試験片の作製)
例5と同様にして得られる第1の中間体から幅20mm×長さ150mmの試験片を切り出す。
この試験片について、90°剥離試験(I)を行うと、表1に示す結果となる。
〔例6〕
例4と同様にしてETFEシート上に、厚さ25μmの固体高分子電解質膜を形成する。
固体高分子電解質膜30の表面の全面に、カソード触媒層用塗布液(b11)を、白金量が0.2mg/cmとなるようにダイコータを用いて塗工し、90℃の乾燥器内で5分間乾燥し、さらに120℃の乾燥器内で30分間乾燥し、固体高分子電解質膜の表面にカソードの触媒層が形成された第1の中間体50を作製する。
次いで、例4の(I−3)〜(I−4)工程と同様にして膜電極接合体5を得る。
該膜電極接合体5を用いて、発電試験および断面観察を行うと、表1に示す結果となる。
(試験片の作製)
例6と同様にして得られる第1の中間体から幅20mm×長さ150mmの試験片を切り出す。
この試験片について、90°剥離試験(I)を行うと、表1に示す結果となる。
Figure 2008192328
本発明の燃料電池は、高温から低温の広い温度範囲でかつ高加湿から低加湿に渡る環境下において、高い発電性能を安定に発現できることから、自動車等の移動体用電源、分散発電システム、家庭用コージェネレーションシステム等として用いられる固体高分子形燃料電池にきわめて有用である。
燃料電池の一例を示す概略断面図である。 図2(a)は90°剥離試験(I)に供する試験片を示す略図であり、図2(b)は90°剥離試験(I)の装置を示す略図である。 図3(a)は90°剥離試験(II)に供する試験片を示す略図であり、図3(b)は90°剥離試験(II)の装置を示す略図である。 セパレータとカソードとの組合せの一例を示し、図4(a)はセパレータの平面図であり、図4(b)はカソードの平面図である。 セパレータとカソードとの組合せの他の例を示し、図5(a)はセパレータの平面図であり、図5(b)はカソードの平面図である。 セパレータとカソードとの組合せの他の例を示し、図6(a)はセパレータの平面図であり、図6(b)はカソードの平面図である。 セパレータとカソードとの組合せの他の例を示し、図7(a)はセパレータの平面図であり、図7(b)はカソードの平面図である。 燃料電池の他の例を示す概略断面図である。 膜電極接合体の作製方法の一工程を示す概略断面図である。 膜電極接合体の作製方法の一工程を示す概略断面図である。 膜電極接合体の作製方法の一工程を示す概略断面図である。 図12(A)は膜電極接合体を2つのセパレータで挟み込んだ燃料電池を示す部分的断面図であり、図12(B)は燃料電池の運転中に固体高分子電解質膜と触媒層とが剥離し、触媒層と固体高分子電解質膜が変形する様子を示す断面図である。
符号の説明
1 燃料電池 5 膜電極接合体 10 カソード 12 触媒層 12a 領域(A) 12b 領域(B) 14 ガス拡散層 20 アノード 22 触媒層 24 ガス拡散層 30 固体高分子電解質膜 32 Ma層 34 Mb層 36 Mc層 50 第1の中間体 60 第2の中間体 82 セパレータ 82a 流路 84 セパレータ 84a 流路 90 試験片 92 ローラ 94 アルミ板 101 リブ

Claims (4)

  1. 触媒層を有するアノードおよび触媒層を有するカソードとの間に固体高分子電解質膜が配置された膜電極接合体と、前記カソードの表面に沿って酸素を含むガスを流す流路とを備えた固体高分子形燃料電池であり、
    前記流路の入口に接するカソードの触媒層に含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量が、前記流路の出口に接するカソードの触媒層に含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量よりも高く、
    かつ前記アノードと前記固体高分子電解質膜との界面、および前記カソードと前記固体高分子電解質膜との界面の少なくとも一方の90°剥離強度が0.1N/cm以上であることを特徴とする固体高分子形燃料電池。
  2. 前記カソードの触媒層に含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量が、前記流路の入口側から前記流路の出口側に向かって連続的にまたは段階的に小さくされている請求項1に記載の固体高分子形燃料電池。
  3. 前記カソードの触媒層が、前記流路の入口側の領域(A)と前記流路の出口側の領域(B)の2つの領域からなり、
    前記領域(A)に含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量が、前記領域(B)に含まれるイオン交換樹脂のイオン交換容量よりも高い請求項2に記載の固体高分子形燃料電池。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池の製造方法であって、
    前記固体高分子電解質膜を形成する工程と、該固体高分子電解質膜の少なくとも一方の面に電極触媒とイオン交換樹脂とを含む触媒層用塗布液を塗工してアノードまたはカソードの触媒層を形成する工程とを有することを特徴とする固体高分子形燃料電池の製造方法。
JP2007022404A 2007-01-31 2007-01-31 固体高分子形燃料電池およびその製造方法 Withdrawn JP2008192328A (ja)

Priority Applications (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007022404A JP2008192328A (ja) 2007-01-31 2007-01-31 固体高分子形燃料電池およびその製造方法
PCT/JP2008/051557 WO2008093795A1 (ja) 2007-01-31 2008-01-31 固体高分子形燃料電池用膜電極接合体、固体高分子形燃料電池およびそれらの製造方法
US12/533,667 US7838170B2 (en) 2007-01-31 2009-07-31 Membrane/electrode assembly with multilayered cathode catalyst for polymer electrolyte fuel cells

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007022404A JP2008192328A (ja) 2007-01-31 2007-01-31 固体高分子形燃料電池およびその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2008192328A true JP2008192328A (ja) 2008-08-21

Family

ID=39752245

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007022404A Withdrawn JP2008192328A (ja) 2007-01-31 2007-01-31 固体高分子形燃料電池およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2008192328A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2008153145A1 (ja) * 2007-06-15 2008-12-18 Sumitomo Chemical Company, Limited 膜電極接合体、及びこれを備える膜電極ガス拡散層接合体、固体高分子形燃料電池、並びに膜電極接合体の製造方法
EP2432059A1 (en) * 2009-11-12 2012-03-21 Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha Fuel cell
CN113921829A (zh) * 2021-10-11 2022-01-11 中汽创智科技有限公司 一种阳极催化剂层、膜电极及其制备方法

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001196068A (ja) * 2000-01-11 2001-07-19 Asahi Glass Co Ltd 固体高分子型の燃料電池
JP2002367626A (ja) * 2001-06-12 2002-12-20 Tokuyama Corp ガス拡散電極用イオン伝導性付与剤
JP2005071755A (ja) * 2003-08-22 2005-03-17 Matsushita Electric Ind Co Ltd 燃料電池用膜電極接合体およびその製造方法

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001196068A (ja) * 2000-01-11 2001-07-19 Asahi Glass Co Ltd 固体高分子型の燃料電池
JP2002367626A (ja) * 2001-06-12 2002-12-20 Tokuyama Corp ガス拡散電極用イオン伝導性付与剤
JP2005071755A (ja) * 2003-08-22 2005-03-17 Matsushita Electric Ind Co Ltd 燃料電池用膜電極接合体およびその製造方法

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2008153145A1 (ja) * 2007-06-15 2008-12-18 Sumitomo Chemical Company, Limited 膜電極接合体、及びこれを備える膜電極ガス拡散層接合体、固体高分子形燃料電池、並びに膜電極接合体の製造方法
EP2432059A1 (en) * 2009-11-12 2012-03-21 Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha Fuel cell
EP2432059A4 (en) * 2009-11-12 2014-02-12 Toyota Motor Co Ltd FUEL CELL
CN113921829A (zh) * 2021-10-11 2022-01-11 中汽创智科技有限公司 一种阳极催化剂层、膜电极及其制备方法
CN113921829B (zh) * 2021-10-11 2023-09-15 中汽创智科技有限公司 一种阳极催化剂层、膜电极及其制备方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5333438B2 (ja) 固体高分子形燃料電池用膜電極接合体および固体高分子形燃料電池
JP5277740B2 (ja) 触媒層の形成方法および固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法
JP5286797B2 (ja) ポリマー、固体高分子形燃料電池用固体高分子電解質膜および膜電極接合体
JP5130911B2 (ja) 固体高分子形燃料電池用電解質材料、電解質膜および膜電極接合体
JP5251515B2 (ja) 固体高分子形燃料電池用固体高分子電解質膜および膜電極接合体
JP5499478B2 (ja) ポリマー、固体高分子形燃料電池用固体高分子電解質膜および膜電極接合体
US7838170B2 (en) Membrane/electrode assembly with multilayered cathode catalyst for polymer electrolyte fuel cells
JP5251513B2 (ja) 固体高分子形燃料電池用膜電極接合体
JP5347508B2 (ja) 固体高分子電解質膜および固体高分子形燃料電池用膜電極接合体
JP2009193860A (ja) 固体高分子形燃料電池用膜電極接合体およびその製造方法
JPWO2008066048A1 (ja) 固体高分子形燃料電池用固体高分子電解質膜および膜電極接合体
JP2008192330A (ja) 固体高分子形燃料電池用膜電極接合体およびその製造方法
US7857935B2 (en) Process for producing membrane-electrode assembly for polymer electrolyte fuel cells
JP2008192328A (ja) 固体高分子形燃料電池およびその製造方法
JP5228378B2 (ja) 固体高分子形燃料電池用膜電極接合体およびその製造方法
US7883807B2 (en) Membrane/electrode assembly for polymer electrolyte fuel cells, and method for operating polymer electrolyte fuel cell
JP2012018871A (ja) 固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法
JP2008192329A (ja) 固体高分子形燃料電池用膜電極接合体およびその製造方法
JP2020136214A (ja) 固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法
JP5082470B2 (ja) 固体高分子形燃料電池用膜電極接合体
JP5522239B2 (ja) 固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20090904

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120612

A761 Written withdrawal of application

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761

Effective date: 20120625