JP2008191043A - ガスセンサ - Google Patents

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Abstract

【課題】被検出ガス中のNOx濃度の検出精度をより高めることができるガスセンサを提供する。
【解決手段】ガスセンサのセンサ素子に使用する固体電解質体として、その温度が300℃のときに0.0003S/cm以上の導電率を示すものを用い、NOx濃度の検出の際に300〜550℃となるように制御した。尿素SCRシステムのフィードバック制御にこのガスセンサを用いた場合、上記温度範囲では排気ガス中に残存するNHの酸化によるNOxの生成を抑制でき、排気ガス中にもとから含まれるNOx濃度の検出精度をより高めることができる。
【選択図】図3

Description

本発明は、尿素SCRシステムを搭載した自動車等の内燃機関から排出される被検出ガスに含まれるNOx濃度を検出するガスセンサに関するものである。
内燃機関等から排出される排気ガスにはCOやHCの他にNOxが含まれており、この有害なNOxを無害なガスに還元してから排出するシステムが提案されている。例えば自動車には、エンジンから排出される排気ガスの排気通路の途中にNOx吸蔵還元触媒を配設し、NOx排出量を低減するシステムが搭載されている。NOx吸蔵還元触媒は、燃焼前の混合気の空燃比がリーンのときに排気ガス中のNOxを吸蔵し、空燃比がリッチとなったときに吸蔵したNOxを還元して放出する特性を有する。このNOx吸蔵還元触媒を利用したシステムでは、リーン運転中に間欠的に空燃比がリッチとなるように排気ガスに対し燃料の噴射を行い、NOx吸蔵還元触媒に吸蔵したNOxを無害なガスに還元して排出する処理が行われる。
また、上記NOx吸蔵還元触媒に代えてNOx選択還元触媒を配設し、還元剤溶液としての尿素水を排気ガスに噴射してからNOx選択還元触媒を通過させることで、NOxを無害なガスに還元して排出する尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムも利用されている。NOx選択還元触媒では、排気ガス中に噴射された尿素から加水分解によりアンモニア(NH)が生成され、そのNHを還元剤としてNOxがHOとNに還元される。その際に余剰となったNHは酸化されてNOを生成し、さらにNOが酸化されることによってNOが生成される。NHから生成されたNOxは再びNHによって還元され、HOとNに分解されて排出される。このように、NOx選択還元触媒ではNOxの還元とNHの酸化とが並行して行われることで、NOxおよびNHの濃度が低減され、排気ガスの浄化が行われるのである。
こうした排気ガスの浄化システムでは、NOxの濃度を検出することができるガスセンサが利用されている。例えば尿素SCRシステムでは尿素水噴射装置の上流側にガスセンサを配設し、排気ガス中に含まれるNOx濃度を検出している。そしてNOx濃度の検出結果に基づき排気ガス中に噴射する尿素水の量やタイミングを調整することで、NOx選択還元触媒にて効率よくNOxを還元させて排気ガス中のNOx濃度を効率よく低減させる制御を行っている。
このようなガスセンサとしては2室限界電流式ガスセンサが開発されており、この2室限界電流式ガスセンサは、例えば、Ip1セル、Ip2セルと呼ばれる2枚以上の板状の固体電解質体(固体電解質層)を積層した構成を有する。内部には、排気ガスが導入される第1検出室(第一の内部空所)と、第1検出室で酸素の汲み出しが行われた排気ガスがさらに導入される第2検出室(第二の内部空所)とが設けられている(例えば、特許文献1参照。)。
上記のように第1検出室に導入された排気ガスは、Ip1セルにより含有する酸素のほとんどが外部に汲み出され、第2検出室に導入された際には、排気ガス中の酸素濃度が非常に低い状態となっている。この第2検出室では、PtやRh等の貴金属からなる電極(内部ポンプ電極)に電圧が印加されており、この電極が触媒となって第2検出室に導入された排気ガス中のNOxが還元される。そして、このとき還元されたNOx由来の酸素(もともとNOxを構成していた酸素)がIp2セルにより汲み出され、酸素イオンに運搬される電子が電流Ip2として検出されることにより、NOx由来の酸素の濃度、すなわちNOx濃度の検出が行われるのである。
ところで、尿素SCRシステムにおいてより効率よくNOx濃度の低減を行うには、NOx選択還元触媒の下流側にガスセンサを配置し、NOx選択還元触媒を通過する排気ガス中に残存するNOxの濃度を検出して、NOx選択還元触媒の上流側で排気ガス中に噴射する尿素水の量やタイミングを調整するフィードバック制御を行うことが望ましい。
特許第2885336号公報
しかしながら尿素SCRシステムにおいて、NHの一部はNOx選択還元触媒において完全に浄化されず排出されてしまうため、NOx選択還元触媒の下流側にてNHが酸化するとNOxが生成されてしまう場合があった。そして、NH由来のNOxが、NOx選択還元触媒によって還元しきれずに排気ガス中に残った残存NOxと混合してしまうと、特許文献1に記載のガスセンサでは両者を区別することができず、NOx濃度検出精度が低下し、尿素SCRシステムにおけるフィードバック制御に影響を及ぼしてしまう虞があった。
なお、NHの酸化は雰囲気温度が400℃を超えるあたりから温度が上昇するに従って促進され、450℃で相対比約20%、550℃で相対比約40%、600℃では相対比約50%、700℃では約80%を超えるNHが酸化されてNOが生成されることが知られている。排気ガスの温度は通常300〜500℃であり、この雰囲気温度ではNH由来のNOxは生成されにくい。そこで、上記のようなNOx選択還元触媒を通過したNHからNOxが生成される過程について発明者等が研究を進めたところ、ガスセンサの検出素子に用いられる固体電解質体を活性化させるために行われる600℃以上の加熱によって、NHの酸化が促進されてしまうことがわかった。
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、被検出ガス中のNOx濃度の検出精度をより高めることができるガスセンサを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明のガスセンサは、固体電解質体およびその固体電解質体上に形成された一対の電極を有し、当該一対の電極のうち被検出ガスに晒される一方の電極にて、当該被検出ガスに含まれるNOxが還元または分解された際に、前記一対の電極間にNOx由来の酸素濃度に応じた電流が流れる酸素ポンプセルと、前記固体電解質体の加熱を行うため、通電により発熱するヒータとを備え、前記電流に基づいて、前記被検出ガスに含まれるNOx濃度の検出を行うガスセンサにおいて、前記固体電解質体は、その温度が300℃であるときの導電率が0.0003S/cm以上となると共に、前記被検出ガス中のNOx濃度の検出が行われる際には、前記固体電解質体の温度が300〜550℃となるように前記ヒータに流す電流の大きさが制御されることを特徴とする。
また、請求項2に係る発明のガスセンサは、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記被検出ガス中のNOx濃度の検出が行われる際には、前記固体電解質体の温度が300℃〜450℃となるように前記ヒータに流す電流の大きさが制御されることを特徴とする。
また、請求項3に係る発明のガスセンサは、請求項1または2に記載の発明の構成に加え、前記固体電解質体は、スカンジア安定化ジルコニア、ガドリニウムドープセリア、およびサマリウムドープセリアのうちのいずれかを主成分とすることを特徴とする。
また、請求項4に係る発明のガスセンサは、固体電解質体およびその固体電解質体上に形成された一対の電極を有し、当該一対の電極のうち被検出ガスに晒される一方の電極にて、当該被検出ガスに含まれるNOxが還元または分解された際に、前記一対の電極間にNOx由来の酸素濃度に応じた電流が流れる酸素ポンプセルと、前記固体電解質体の加熱を行うため、通電により発熱するヒータとを備えるガスセンサにおいて、前記固体電解質体は、その温度が300℃であるときの導電率が0.0003S/cm以上となると共に、前記固体電解質体の温度が300〜550℃の範囲に含まれる第1温度となるように前記ヒータに流す電流の大きさが制御された際に、前記酸素ポンプセルに流れる電流の値である第1電流値と、前記固体電解質体の温度が550℃より高い第2温度となるように前記ヒータに流す電流の大きさが制御された際に、前記酸素ポンプセルに流れる電流の値である第2電流値とに基づいて、アンモニア濃度の検出が行われることを特徴とする。
また、請求項5に係る発明のガスセンサは、第1拡散抵抗部を介して被検出ガスが導入される第1検出室と、第1固体電解質体および当該第1固体電解質体上に形成された一対の第1電極を有し、前記一対の第1電極のうちの一方の電極が前記第1検出室内に配置され、前記第1検出室に導入された前記被検出ガスに対する酸素の汲み出しまたは汲み入れを行う第1酸素ポンプセルと、前記第1検出室において酸素の汲み出しまたは汲み入れが行われた前記被検出ガスが第2拡散抵抗部を介して導入される第2検出室と、第2固体電解質体および当該第2固体電解質体上に形成された一対の第2電極を有し、前記一対の第2電極のうちの一方の電極が前記第2検出室内に配置され、前記第2検出室におけるNOx濃度に応じて電流が流れる第2酸素ポンプセルと、前記第1固体電解質体および前記第2固体電解質体の加熱を行うため、通電により発熱するヒータとを備え、前記第2酸素ポンプセルに流れる電流に基づいて、前記被検出ガスに含まれるNOx濃度の検出を行うガスセンサにおいて、前記第1固体電解質体および前記第2固体電解質体は、その温度が300℃であるときの導電率が0.0003S/cm以上となると共に、前記被検出ガス中のNOx濃度の検出が行われる際には、前記第1固体電解質体および前記第2固体電解質体の温度が300〜550℃となるように前記ヒータに流す電流の大きさが制御されること特徴とする。
また、請求項6に係る発明のガスセンサは、請求項5に記載の発明の構成に加え、第3固体電解質体および当該第3固体電解質体上に形成された一対の第3電極を有し、前記一対の第3電極のうち一方の電極が前記第1検出室内に配置され、前記第1検出室内の酸素濃度に応じて電圧を発生する酸素濃度検知セルをさらに備え、前記第1酸素ポンプセルは、前記第3電極間に発生する出力信号が一定値になるように前記第1検出室における酸素濃度を調整することを特徴とする。
ガスセンサに用いられる固体電解質体は加熱されると導電率が高まり、活性化する性質を有する。請求項1に係る発明のガスセンサに用いられる固体電解質体は、その温度が300℃であるときの導電率が0.0003S/cm以上であり、検出時には、300〜550℃となるように制御されるので、少なくとも0.0003S/cm以上の導電率を得ることができる。つまり、一般的な固体電解質体の活性化に必要な600℃以上の温度よりも低い温度でも、本発明に係る固体電解質体は、活性化できるのである。固体電解質体の加熱によって、被検出ガス中に含まれる他のガス成分が酸化する虞があるが、上記のように、固体電解質体の温度が300〜550℃となるように制御することで、被検出ガス中に含まれる他のガス成分の酸化を抑制することが可能となる。もっとも、固体電解質体の活性化にはより高い温度に加熱することが望ましいが、300℃であるときにすでに導電率が0.0003S/cm以上を示す本発明に係る固体電解質体は、活性化に600℃以上の加熱が必要な一般的な固体電解質体よりも300〜550℃の温度に加熱されたときの感度が高い。従って、こうした固体電解質体を用いたガスセンサを作製すれば、酸化した他のガス成分に起因するNOx濃度の検出精度の低下を抑制しつつ、NOx濃度の検出精度をより高めることができる。
このようなガスセンサを、例えば尿素SCRシステムにおけるフィードバック制御に用いることは好適である。尿素SCRシステムは、被検出ガスとして内燃機関から排出される排気ガスに尿素水を噴射し、その尿素水から生成されるアンモニア(NH)を還元剤としてNOx選択還元触媒内にて排気ガス中に含まれるNOxを還元し排気ガスの浄化を行うものである。フィードバック制御のためにはガスセンサをNOx選択還元触媒の下流側に配置する必要があるが、NOx選択還元触媒を通過した排気ガス中にはNHが含まれる場合がある。NHは雰囲気温度が400℃を超えるあたりから温度が上昇するに従って酸化が促進され、450℃で相対比約20%、550℃で相対比約40%、600℃では相対比約50%が酸化されてNOxを生成するが、請求項1に係る発明のガスセンサでは固体電解質体への加熱が300〜550℃に制御されるため、NHの酸化によるNOxの生成を抑制することができる。つまり、NH由来のNOxが排気ガス中にもとから含まれるNOxと混合されてしまうことを抑制することができるので、NOx濃度の検出精度をより高めることができる。
なお、固体電解質体への加熱が300℃未満であると、固体電解質体を十分に活性化させることができない。また、固体電解質体への加熱が550℃を超えると、相対比で約40%より多くのNHが酸化されNOxを生成するため、排気ガス中の残存NOx濃度の検出への影響が大きくなってしまう。
こうしたNH由来のNOxの生成をさらに抑制するにはガスセンサの駆動をより低い温度で行うことが望ましく、請求項2に係る発明のように、固体電解質体への加熱が300〜450℃となるように制御することが好ましい。固体電解質体への加熱が450℃を超えると、相対比で約20%より多くのNHが酸化されNOxを生成する。そこで上記のように、固体電解質体の加熱を300〜450℃とすれば、排気ガス中の残存NOx濃度の検出への影響をより低減することができるのである。
このように、加熱温度をより低くしてもNOx濃度の検出を十分に行うことができる固体電解質体を得るには、請求項3に係る発明のように、その主成分として、スカンジア安定化ジルコニア、ガドリニウムドープセリア、およびサマリウムドープセリアのうちのいずれかを用いるとよい。このような材料を主成分として形成される固体電解質体は、一般に用いられるイットリア安定化ジルコニアを主成分とする固体電解質体よりも上記のように導電率が高いことに加え、より低い温度で同等の相対密度に焼き固めて十分な硬度を得ることができる。このため、焼成の際に酸素ポンピングセルを構成する一対の電極が酸化されにくく、電極自体の抵抗が上がってしまうことを抑制することができるので、酸素ポンピングセルとして完成された際により高い電導性を得ることができるのである。なお、本発明において「主成分」とは、その成分が、含有される全成分のうち最も多くを占める成分であることを示す。
上記のように、ガスセンサの固体電解質体として温度が300℃であるときの導電率が0.0003S/cm以上となるものを用いた場合、その固体電解質体は、NHの酸化が促進されやすい600℃以上の温度よりも低い温度においても活性化することができ、NOx濃度の検知が可能な状態となる。そこで請求項4に係る発明のように、固体電解質体を、その温度が300〜550℃の範囲に含まれる第1温度となるように加熱し、酸素ポンプセルに流れる第1電流値を得る。次に固体電解質体を550℃より高い第2温度となるように加熱し、酸素ポンプセルに流れる第2電流値を得る。この第1電流値に対応したNOx濃度と、第2電流値に対応したNOx濃度との差濃度は、第1温度においてもとから存在したNOx濃度およびNHが酸化して生成されたNOx濃度の合計濃度と、第2温度においてもとから存在したNOx濃度およびNHが酸化して生成されたNOx濃度の合計濃度との差濃度に相当する。もとから存在したNOxの濃度は一定であるため、上記差濃度は、固体電解質体の温度が第1温度から第2温度に昇温されるにあたってNHが酸化し生成されたNOxの濃度といえる。このため、温度と、その温度の上昇に応じて酸化されるNHの濃度および生成されるNOxの濃度との相関関係を求めれば、第1電流値および第2電流値に基づくNHの濃度を求めることができる。
また、温度が300℃であるときの導電率が0.0003S/cm以上であり、一般的な固体電解質体の活性化に必要な600℃以上の温度よりも低い温度でも活性化することが可能な固体電解質体を、請求項5に係る発明のように、2室限界電流式のガスセンサに用いることは好適である。2室限界電流式のガスセンサは、第1検出室内に導入される被検出ガスに対し酸素の汲み出しまたは汲み入れが行われることによって、その被検出ガスが第2検出室内に導入される際には含有される酸素の濃度を調整することができるため、NOx濃度の検出を精度よく行うことができるものである。

このガスセンサによる被検出ガス中のNOx濃度の検出の際に、固体電解質体の温度が300〜550℃となるように制御することで、その加熱によって被検出ガス中に含まれる他のガス成分が酸化する虞は低減する。従って、酸化した他のガス成分に起因するNOx濃度の検出精度の低下を抑制することができ、NOx濃度の検出精度をより高くすることができる。固体電解質体の加熱によって、被検出ガス中に含まれる他のガス成分が酸化する虞があるが、上記のように、固体電解質体の温度が300〜550℃となるように制御することで、被検出ガス中に含まれる他のガス成分の酸化を抑制することが可能となる。もっとも、固体電解質体の活性化にはより高い温度に加熱することが望ましいが、300℃であるときにすでに導電率が0.0003S/cm以上を示す本発明に係る固体電解質体は、活性化に600℃以上の加熱が必要な一般的な固体電解質体よりも300〜550℃の温度に加熱されたときの感度が高い。従って、こうした固体電解質体を、NOx濃度の検出を精度よく行うことができる上記の2室限界電流式のガスセンサに用いれば、酸化した他のガス成分に起因するNOx濃度の検出精度の低下を抑制しつつ、NOx濃度の検出精度をより高めることができる。
このようなガスセンサを、例えば尿素SCRシステムにおけるフィードバック制御に用いることは好適である。尿素SCRシステムは、被検出ガスとして内燃機関から排出される排気ガスに尿素水を噴射し、その尿素水から生成されるアンモニア(NH)を還元剤としてNOx選択還元触媒内にて排気ガス中に含まれるNOxを還元し排気ガスの浄化を行うものである。フィードバック制御のためにはガスセンサをNOx選択還元触媒の下流側に配置する必要があるが、NOx選択還元触媒を通過した排気ガス中にはNHが含まれる場合がある。NHは雰囲気温度が400℃を超えるあたりから温度が上昇するに従って酸化が促進され、600℃では相対比で約50%を超えて酸化されてNOxを生成するが、請求項5に係る発明のガスセンサでは固体電解質体への加熱が300〜550℃に制御されるため、NHの酸化によるNOxの生成を抑制することができる。つまり、NH由来のNOxが排気ガス中にもとから含まれるNOxと混合されてしまうことを抑制することができるので、NOx濃度の検出精度をより高めることができる。
なお、上記の2室限界電流式のガスセンサにおいて、請求項6に係る発明のように、酸素濃度検知セルを用い第1検出室における被検出ガス中の酸素濃度の調整を行えば、被検出ガスが第2検出室内に導入される際の酸素濃度をより確実に調整することができるので、NOx濃度の検出をさらに精度よく行うことができる。
以下、本発明を具体化したガスセンサの一実施の形態について、図面を参照して説明する。まず図1を参照し、特定ガスとしてNOxの濃度およびアンモニア(NH)の濃度を検出することができるガスセンサ1を本発明に係るガスセンサの一例として用い、このガスセンサ1が取り付けられる内燃機関100の排気系周りの概略的な構成について説明する。図1は、内燃機関100の排気系周りの概略的な構成を示す図である。
図1に示す内燃機関100は、ピストン21やシリンダ22を有し自動車を駆動するためのエンジン20を備え、このエンジン20には、エンジン20から排出される排気ガスを車外に放出するための排気管30が接続されている。排気管30の経路上には排気ガスの浄化を行うためのNOx選択還元触媒40が設けられており、そのNOx選択還元触媒40の上流側(排気ガスの流路上流側)に、排気管30内を流れる排気ガスに対しタンク70から供給される尿素水を噴射するためのインジェクタ60が配設されている。また、排気管30の経路上でNOx選択還元触媒40の下流側には、NOx選択還元触媒40を通過した排気ガス中に残存するNOxの濃度を検出するためのガスセンサ1が配設されている。ガスセンサ1はセンサ制御装置5と電気的に接続されており、センサ制御装置5の駆動制御によってNOx濃度およびNH濃度の検出を行うものである。このセンサ制御装置5はエンジン制御装置(ECU)90と電気的に接続されており、ガスセンサ1を用いて検出したNOx濃度の検出信号がECU90に入力される。そしてECU90ではNOx濃度の検出結果に基づいてインジェクタ60から尿素水を噴射するタイミングや噴射量を制御するフィードバック制御が行われている。
ここで、NOx選択還元触媒40について簡単に説明する。NOx選択還元触媒40は、排気管30内を流通する排気ガス中の有害ガス成分であるNOxをアンモニア(NH)と反応させて無害なNとHOに還元して排出するための触媒として設けられるものである。還元剤としてのNHは排気ガス中に噴射される尿素水の加水分解によって生成されるように構成されている。NOx選択還元触媒40では、以下の化学反応が行われる。まず、排気ガスに噴射された尿素(水)が加水分解され、NHが生成される。
(NHCO+HO → 2NH+CO
そして生成されたNHを還元剤としてNOxの還元が行われ、NとHOが生成される。
4NO+4NH+O → 4N+6H
2NO+4NH+O → 3N+6H
なお、NOxの還元において余剰となったNHは酸化によってNOを生成し、さらにNOが酸化されるとNOが生成されるが、NOx選択還元触媒40において再びNHによって還元され、NとHOとして排出されることとなる。本実施の形態の内燃機関100には、このような化学反応を用いて排気ガスの浄化を行うため、NOx選択還元触媒40を通過した排気ガス中に残存するNOxの濃度を検出し、NOxの還元に必要とされるNHが適宜生成されるようにフィードバック制御を行う尿素SCRシステムが搭載されている。
次に、図2を参照し、ガスセンサ1の詳細について説明する。図2は、センサ制御装置5に接続されたガスセンサ1の概略的な構成を示す図である。なお、図2において、ガスセンサ1のセンサ素子10は、先端側部分における内部構造を示す断面図をもって図示しており、図中左側がセンサ素子10の先端側となっている。
図2に示す、本実施の形態のガスセンサ1は、細長で長尺な板状体の形状をなすセンサ素子10を、排気管30(図1参照)に取り付けるためのハウジング(図示外)内で保持した構造を有する。ガスセンサ1からは、このセンサ素子10の出力する信号を取り出すための信号線が引き出されており、ガスセンサ1とは離れた位置に取り付けられるセンサ制御装置5(図1参照)に電気的に接続されている。
まず、センサ素子10の構造について説明する。センサ素子10は、3枚の板状の固体電解質体111,121,131を、間にアルミナ等からなる絶縁体140,145をそれぞれ挟んで層状に形成した構造を有する。また、固体電解質体111側の外層には、アルミナを主体とする絶縁層の内部にPtを主体とするヒータパターン162を埋設したヒータ素子161が配設されている。このヒータ素子161と固体電解質体111との間には、排気ガスが出入り自由な間隙を有している。なお、ヒータパターン162に電流を流すことにより発熱を行うヒータ素子161が、本発明における「ヒータ」に相当する。
固体電解質体111,121,131は固体電解質であるジルコニアからなり、酸素イオン電導性を有する。センサ素子10の積層方向において固体電解質体111の両面には、固体電解質体111を挟むように多孔質性の電極112,113がそれぞれ設けられており、そのうちの電極112は、ヒータ素子161と向き合う側の面に形成されている。この電極112,113は、PtまたはPt合金あるいはPtとセラミックスを含むサーメットなどから形成されている。Ptは酸素を吸着すると共に触媒として機能することが知られており、排気ガス中の未燃焼ガスの燃焼(酸化)が促進される。また、電極112,113の表面上にはセラミックスからなる多孔質性の保護層114が設けられており、電極112,113が排気ガスに含まれる被毒性ガス(還元雰囲気)に晒されることによりPtが昇華しないように保護している。なお、固体電解質体131が、本発明の請求項1における「固体電解質体」に相当し、請求項5における「第2固体電解質体」に相当する。また、固体電解質体111,121が、それぞれ、本発明における「第1固体電解質体」,「第3固体電解質体」に相当する。そして、電極112,113が、本発明における「一対の第1電極」に相当する。
固体電解質体111は、両電極112,113間に電圧を印加することで、電極112の接する雰囲気(センサ素子10の外部の雰囲気)と電極113の接する雰囲気(後述する第1検出室150内の雰囲気)との間で酸素の汲み出しおよび汲み入れ(いわゆる酸素ポンピング)を行うことができる。本実施の形態では、固体電解質体111および電極112,113を、Ip1セル110と称することとする。なお、Ip1セルが、本発明における「第1酸素ポンプセル」に相当する。
次に、固体電解質体121は、絶縁体140を挟んで固体電解質体111と向き合うように配置されている。センサ素子10の積層方向における固体電解質体121の両面にも、固体電解質体121を挟むように多孔質性の電極122,123がそれぞれ設けられており、同様に、PtまたはPt合金あるいはPtとセラミックスを含むサーメットなどから形成されている。そのうちの電極122は、固体電解質体111と向き合う側の面に形成されている。なお、電極122,123が、本発明における「一対の第3電極」に相当する。
また、固体電解質体111と固体電解質体121との間には小空間としての第1検出室150が形成されており、固体電解質体111側の電極113と、固体電解質体121側の電極122とが第1検出室150内に配置されている。この第1検出室150は、排気通路内を流通する排気ガスがセンサ素子10内に最初に導入される小空間であり、第1検出室150のセンサ素子10における先端側には、第1検出室150内外の仕切りとして、第1検出室150内への排気ガスの単位時間あたりの流通量を制限する多孔質性の第1拡散抵抗部151が設けられている。同様に、第1検出室150のセンサ素子10における後端側にも、後述する第2検出室160につながる開口部141と第1検出室150との仕切りとして、排気ガスの単位時間あたりの流通量を制限する第2拡散抵抗部152が設けられている。
固体電解質体121および両電極122,123は、主として、固体電解質体121により隔てられた雰囲気(電極122の接する第1検出室150内の雰囲気と、電極123の接する後述する基準酸素室170内の雰囲気)間の酸素分圧差に応じて起電力を発生することができるものであり、本実施の形態ではVsセル120と称することとする。なお、Vsセル120が、本発明における「酸素濃度検知セル」に相当する。
次に、固体電解質体131は、絶縁体145を挟んで固体電解質体121と向き合うように配置されている。固体電解質体131の固体電解質体121側の面にも同様に、PtまたはPt合金あるいはPtとセラミックスを含むサーメットなどから形成された多孔質性の電極132,133がそれぞれ設けられている。なお、電極132,133が、本発明の請求項1における「一対の電極」に相当し、請求項5における「一対の第2電極」に相当する。
電極132が形成された位置には絶縁体145が配置されておらず、独立した小空間としての基準酸素室170が形成されている。この基準酸素室170内には、Vsセル120の電極123が配置されている。なお、図示しないが、基準酸素室170内には、多孔質体が充填されている。また、電極133が形成された位置にも絶縁体145が配置されておらず、基準酸素室170との間に絶縁体145を隔て、独立した小空間としての第2検出室160が形成されている。そして、この第2検出室160に連通するように、固体電解質体121および絶縁体140のそれぞれに開口部125,141が設けられており、前述したように、第1検出室150と開口部141とが、間に第2拡散抵抗部152を挟んで接続されている。
固体電解質体131および両電極132,133は、上記のIp1セル110と同様に、絶縁体145により隔てられた雰囲気(電極132の接する基準酸素室170内の雰囲気と、電極133の接する第2検出室160内の雰囲気)間にて酸素の汲み出しを行うことができるものであり、本実施の形態ではIp2セル130と称することとする。なお、Ip2セルが、本発明の請求項1における「酸素ポンプセル」に相当し、請求項5における「第2酸素ポンプセル」に相当する。
次に、ガスセンサ1のセンサ素子10と電気的に接続されたセンサ制御装置5の構成について説明する。センサ制御装置5は、CPU、ROM、RAM、ECU90や電気回路部58と通信するための信号入出力部等、公知の構成を有するマイクロコンピュータ59を主要部とする装置である。電気回路部58は、基準電圧比較回路51、Ip1ドライブ回路52、Vs検出回路53、Icp供給回路54、Ip2検出回路55、Vp2印加回路56およびヒータ駆動回路57から構成され、マイクロコンピュータ59による制御を受けて、ガスセンサ1のセンサ素子10を用いた排気ガス中のNOx濃度およびNH濃度の検出を行う。
Ip1セル110の第1検出室150側の電極113と、Vsセル120の基準酸素室170側の電極123と、Ip2セル130の第2検出室160側の電極133とは接地されている。Icp供給回路54は、Vsセル120の電極122,123間に電流Icpを供給し、第1検出室150内から基準酸素室170内への酸素の汲み出しを行っている。Vs検出回路53は、電極122,123間の電圧を検出するための回路であり、その検出結果を基準電圧比較回路51に対し出力している。基準電圧比較回路51は、Vs検出回路53に検出されたVsセル120の電極122,123間の電圧を、基準となる基準電圧(例えば425mV)と比較するための回路であり、その比較結果をIp1ドライブ回路52に対し出力している。
Ip1ドライブ回路52は、Ip1セル110の電極112,113間に電流Ip1を供給するための回路である。電流Ip1の大きさや向きは、基準電圧比較回路51によるVsセル120の電極122,123間の電圧の比較結果に基づいてVsセル120の電極122,123間の電圧が基準電圧と略一致するように調整されている。その結果Ip1セル110により、第1検出室150内からセンサ素子10外部への酸素の汲み出し、あるいはセンサ素子10外部から第1検出室150内への酸素の汲み入れが行われる。換言すると、Ip1セル110は、Vsセル120の電極122,123間の電圧が一定値(基準電圧の値)に保たれるように、第1検出室150内における酸素濃度の調整を行っている。
また、Vp2印加回路56は、Ip2セル130の電極132,133間へ電圧Vp2(例えば450mV)を印加するための回路であり、第2検出室160内から基準酸素室170内へ酸素の汲み出しが行われる。Ip2検出回路55は、Ip2セル130の電極133から電極132に流れた電流Ip2の値の検出を行う回路である。
ヒータ駆動回路57は、ヒータ素子161のヒータパターン162へ所定の大きさの電流を流し、固体電解質体111,121,131の加熱を行うと共に、固体電解質体111,121,131の温度を所定の温度に保たせるための回路である。ヒータパターン162はヒータ素子161内で繋がる一本の電極パターンであり、一方の端部が接地され、他方の端部がヒータ駆動回路57に接続されている。ヒータパターン162を流れる電流の大きさと固体電解質体111,121,131の温度との関係は予め実験等により求められており、固体電解質体111,121,131の狙いの温度にあわせた大きさの電流がヒータ駆動回路57よりヒータパターン162に流されるように構成されている。
このような構成のセンサ制御装置5によって、ガスセンサ1のセンサ素子10を用いた排気ガス中のNOx濃度およびNH濃度の検出が行われる。まず、ガスセンサ1を用いたNOx濃度の検出の際の動作について説明する。
図2に示す、ガスセンサ1のセンサ素子10を構成する固体電解質体111,121,131は、ヒータ駆動回路57から所定の大きさの駆動電流が流されたヒータパターン162の昇温に伴い加熱され、活性化する。これにより、Ip1セル110,Vsセル120およびIp2セル130が動作するようになる。
排気通路(図示外)内を流通する排気ガスは、第1拡散抵抗部151による流通量の制限を受けつつ第1検出室150内に導入される。ここで、Icp供給回路54によりVsセル120には電極123側から電極122側へ微弱な電流Icpが流されている。このため排気ガス中の酸素は、負極側となる第1検出室150内の電極122から電子を受け取ることができ、酸素イオンとなって固体電解質体121内を流れ、基準酸素室170内に移動する。つまり、電極122,123間で電流Icpが流されることによって、第1検出室150内の酸素が基準酸素室170内に送り込まれている。
Vs検出回路53では電極122,123間の電圧が検出されており、基準電圧比較回路51により基準電圧(425mV)と比較されて、その比較結果がIp1ドライブ回路52に対し出力されている。ここで、電極122,123間の電位差が425mV付近で一定となるように、第1検出室150内の酸素濃度を調整すれば、第1検出室150内の排気ガス中の酸素濃度は所定値(10−8〜10−9atm)に近づくこととなる。
そこで、Ip1ドライブ回路52では、第1検出室150内に導入された排気ガスの酸素濃度が所定値より薄い場合、電極112側が負極となるようにIp1セル110に電流Ip1を流し、センサ素子10外部から第1検出室150内へ酸素の汲み入れを行う。一方、第1検出室150内に導入された排気ガスの酸素濃度が所定値より濃い場合、Ip1ドライブ回路52は、電極113側が負極となるようにIp1セル110に電流Ip1を流し、第1検出室150内からセンサ素子10外部へ酸素の汲み出しを行う。このとき、Ip1セル110により第1検出室150内からセンサ素子10外部へ酸素を汲み出すために流れた電流Ip1の値が、酸素濃度の所定値(10−8〜10−9atm)に対し余剰となる酸素の量に比例することとなる。センサ制御装置5では、Ip1セル110に流した電流Ip1の値と向きから、排気ガス中の酸素濃度の検出を行うことができる。
このように、第1検出室150において酸素濃度が調整された排気ガスは、第2拡散抵抗部152を介し、第2検出室160内に導入される。第2検出室160内で電極133と接触した排気ガス中のNOxは、電極133を触媒としてNとOに分解(還元)される。そして単離された酸素は、電極133から電子を受け取り、酸素イオンとなって固体電解質体131内を流れ、基準酸素室170内に移動する。このとき、第1検出室で汲み残された残留酸素も同様に、Ip2セル130によって基準酸素室170内に移動する。また、電極132,133間に印加されている電圧Vp2は450mV程度と小さいため、NOx以外の燃焼ガス(COやHOなど)は還元されず、酸素が単離されない。このため、Ip2セル130を流れる電流は、NOx由来の電流および残留酸素由来の電流となる。ここで、第1検出室で汲み残された残留酸素の濃度は上記のように所定値に調整されているため、その残留酸素由来の電流は略一定とみなすことができ、NOx由来の電流の変動に対し影響は小さく、Ip2セル130を流れる電流はNOx濃度に比例することとなる。センサ制御装置5では、Ip2検出回路55によりIp2セル130を流れる電流Ip2を検出し、その電流値から、公知の残留酸素由来のオフセット電流の補正計算処理を行い、排気ガス中のNOx濃度の検出を行うのである。
ところで前述したように、尿素水から生成されたNHがNOx選択還元触媒40を通過して排気ガスと共にガスセンサ1の第1検出室150内に進入すると、ヒータ素子161による加熱環境下において、電極113,122のPt成分の触媒作用を受けて酸化し、NOxが生成される。このNH由来のNOxが排気ガス中の残存NOxと混合することによって、残存NOx濃度の検出精度の低下を防止するため、本実施の形態のガスセンサ1では、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)、ガドリニウムドープセリア(GDC)、およびサマリウムドープセリア(SDC)のうちのいずれかを主成分として固体電解質体111,121,131を作製している。一般的な固体電解質体はその主成分としてイットリア安定化ジルコニア(YSZ)が用いられるが、ScSZ、GDC、またはSDCを主成分として作製される本実施の形態の固体電解質体は、YSZを主成分とする固体電解質体と比べ、より低温で活性化させることができる。このことは、具体的には図3のグラフに示される。図3は、固体電解質体が晒される雰囲気の温度とその固体電解質体の導電率との関係を示す片対数グラフである。
図3に示すように、YSZを主成分とする固体電解質体は、雰囲気温度が400℃ではほとんど電導性を示さず導電率が0に近い値であるが、400℃を超えると電導性(導電率)が高まり、対数的に直線に近い上昇を示し、800℃では約0.05S/cmを示す。一方、ScSZやGDCを主成分とする固体電解質体は、雰囲気温度が300℃のときにすでに0.0003S/cm以上の導電率を示し、400℃では約0.002S/cmの導電率を示す。そして温度の上昇と共に導電率も対数的に直線に近い上昇を示し、800℃では、約0.2S/cmの導電率を示す。これより、ScSZやGDCを主成分とする固体電解質体は、YSZを主成分とする固体電解質体と比べ、より低い雰囲気温度でより高い電導性を示すこと、すなわちより低い雰囲気温度で活性化することがわかる。図示しないが、SDCを主成分とする固体電解質体も、ScSZやGDCを主成分とする固体電解質体と同等の雰囲気温度に対する電導性(導電率)を示すことが知られている。
また、NHの酸化は雰囲気温度が400℃を超えるあたりから温度が上昇するに従って促進され、450℃で相対比約20%、550℃で相対比約40%、600℃では相対比約50%、700℃では約80%を超えるNHが酸化されてNOが生成されることが知られている。上記のScSZ、GDC、SDC等を主成分として用いた固体電解質体であれば、その温度を300〜550℃、より望ましくは300〜450℃に保っても十分に活性化させることができるので、加熱によるNH由来のNOxの生成を抑制することができるのである。
次に、センサ制御装置5による排気ガス中のNH濃度の検出の際の動作について、図2,図4,図5を参照して説明する。図4は、NHを投入してその濃度を100ppmとした排気ガスの温度と、排気ガス中に含まれるNH、そのNHから生成されるNO、NOの濃度との関係を示すグラフである。図5は、NH濃度検出プログラムのフローチャートである。
まず、NHの濃度を検出する原理について簡単に説明する。前述したように、NHは400℃を超えるあたりから酸化が促進されNOが生成される。そこでNHの濃度を100ppmとした雰囲気を加熱し、温度と、酸化によって減少したNHの濃度や生成されたNOおよびNOの濃度を元のNHの濃度(100ppm)に対して比較した相対比との関係を予め求める。なお、ここでいう相対比とは、NH由来のNOxが存在しないときのNHの濃度を100%としたときのNHおよびNH由来のNOx(NO,NO)の各分解比をいう。図4のグラフはその結果を示したものであるが、NHの加熱によって生成されるNOの濃度は400℃では約10%であるのに対し、500℃では約30%、550℃では約40%となって徐々に増えていく。そして600℃では約50%、700℃では約80%のNOが、NHの酸化によって生成される。また、NOがさらに酸化されてNOも若干生成される。そして生成されたNOxの相対比が増えるに従って、NHの相対比は減少していく。
そこで、NHの酸化が比較的少ない300〜550℃に含まれる所定の第1温度においてNOx濃度(第1濃度)を求め、NHの酸化が比較的多い550℃より高い所定の第2温度において同様にNOx濃度(第2濃度)を求める。雰囲気中にもとから含まれるNOx濃度は一定であるため、第2濃度と第1濃度との差濃度を求めれば、温度上昇により増加したNOx濃度が求まる。これを図4のグラフと照らし合わせれば、差濃度分のNOxを生成するのにあたって酸化したNHの濃度が求まるのである。
本実施の形態のセンサ制御装置5のマイクロコンピュータ59のROMの所定の記憶エリアには、上記原理に基づいて、ガスセンサ1によるNOx濃度の検出結果を用い排気ガス中に含まれるNHの濃度を検出するためのNH濃度検出プログラム(図5参照)が記憶されている。
マイクロコンピュータ59のCPUにより、図5に示す、NH濃度検出プログラムが実行されると、まず、電気回路部58のヒータ駆動回路57から予め値の定められた電流がヒータパターン162に流され、ヒータ素子161の発熱によって固体電解質体111,121,131の温度が300〜550℃の範囲で設定された第1温度になるように加熱される(S10)。そして固体電解質体111,121,131の温度が第1温度となるのに十分な昇温時間が経過するまで待機が行われる(S11:NO)。昇温時間が経過すると(S11:YES)、Ip2検出回路55によってIp2セル130の両電極132,133を流れる電流Ip2の値が第1電流値として取得される(S12)。さらに第1電流値から、上記したように公知の残留酸素由来のオフセット電流の補正計算処理を行い、補正された第1電流値に応じた排気ガス中のNOx濃度の検出が行われる(S14)。第1電流値に対応するNOx濃度を求めるには、予め実験によって得られた換算式を用いてもよいし、あるいは両者を対応させたテーブル等を用いて求めてもよい。得られたNOx濃度は、第1濃度として、マイクロコンピュータ59のRAMの所定の記憶エリアに記憶される。
次に、ヒータ駆動回路57から予め値の定められた電流がヒータパターン162に流され、固体電解質体111,121,131の温度が550℃より高く設定された第2温度となるようにさらに加熱される(S15)。そして固体電解質体111,121,131の温度が第2温度となるのに十分な昇温時間が経過するまで待機が行われ(S16:NO)、昇温時間が経過すると(S16:YES)、上記同様、電流Ip2の値が第2電流値として取得される(S18)。さらに上記同様に、第2電流値に応じた排気ガス中のNOx濃度の検出が行われる(S19)。得られたNOx濃度は、第2濃度として、マイクロコンピュータ59のRAMの所定の記憶エリアに記憶される。
次いで、第2濃度と第1濃度との差分(差濃度)が算出される(S20)。排気ガス中にもとから含まれるNOx濃度は一定であり、この差濃度は、第1温度において排気ガス中に含まれるNHが酸化することにより生成された分のNOxの濃度と、第2温度においてさらにNHが酸化することにより生成された分のNOxの濃度との差分に相当する。
そこで、算出されたNOxの差濃度から、図4に示されるグラフから得られる以下の換算式を用いてNHの濃度の計算が行われる(S22)。
NHの濃度=NOxの差濃度/{(第1温度におけるNHの相対比−第2温度におけるNHの相対比)/100}
得られたNHの濃度の情報はECU90に送信され、インジェクタ60から噴射される尿素水の噴射量やタイミングなどを調整するフィードバック制御に用いられる。
このように、温度条件によってNHが酸化され生成されるNOxの相対比が異なることを利用すれば、排気ガス中に含まれるNHの濃度を検出することができる。
以上、本発明に係るガスセンサの一例としてガスセンサ1について説明したが、本発明は上記実施の形態に限らず、各種の変形が可能である。例えば、本実施の形態では、ガスセンサとして、第1検出室150を介して酸素濃度を調整した排気ガスを第2検出室160へ導入してNOx濃度の検出を行う2室限界電流式のガスセンサ1を例に挙げたが、第1検出室150の無い構成や第1検出室内に電極133が配置された構成であってもよい。また、基準酸素室170が小部屋として構成されていなくともよく、電極123,132が、それぞれ固体電解質体121,131と絶縁体145との間に挟まれた構成であってもよい。
また、本実施の形態では、ガスセンサ1がNOx濃度の検出に加えNH濃度の検出を行えるものとしたが、必ずしもNH濃度を検出可能である必要はなく、単なるNOxセンサであってもよい。なお、前述したが、ガスセンサ1では、Ip1ドライブ回路52に流す電流の大きさや向きから排気ガス中の酸素濃度を検出することが可能であり、ひいては排気ガスの空燃比の検出も可能である。
なお、ヒータパターン162を流れる電流の大きさは、ガスセンサ1を構成するIp1セル110、Vsセル120、Ip2セル130のいずれかに所定の大きさの電流ないし電圧を定期的に供給し、そのときにセルを介して得られるセンサ抵抗信号に基づき、制御することもできる。なお、このセンサ抵抗信号は、公知の手法(回路構成)によって取得することができるものであるため、説明は省略するが、具体的には、Vsセル120に対し定期的に所定の大きさの電流を流し、そのときにVsセル120を介して得られる出力をサンプルホールドし、このサンプルホールドした出力をセンサ抵抗信号としてCPUに出力するものである。
内燃機関100の排気系周りの概略的な構成を示す図である。 センサ制御装置5に接続されたガスセンサ1の概略的な構成を示す図である。 固体電解質体が晒される雰囲気の温度とその固体電解質体の導電率との関係を示す片対数グラフである。 NHを投入してその濃度を100ppmとした排気ガスの温度と、排気ガス中に含まれるNH、そのNHから生成されるNO、NOの濃度との関係を示すグラフである。 NH濃度検出プログラムのフローチャートである。
符号の説明
1 ガスセンサ
110 Ip1セル
111,121,131 固体電解質体
112,113,122,123,132,133 電極
120 Vsセル
130 Ip2セル
150 第1検出室
151 第1拡散抵抗部
152 第2拡散抵抗部
160 第2検出室
161 ヒータ素子

Claims (6)

  1. 固体電解質体およびその固体電解質体上に形成された一対の電極を有し、当該一対の電極のうち被検出ガスに晒される一方の電極にて、当該被検出ガスに含まれるNOxが還元または分解された際に、前記一対の電極間にNOx由来の酸素濃度に応じた電流が流れる酸素ポンプセルと、
    前記固体電解質体の加熱を行うため、通電により発熱するヒータと
    を備え、
    前記電流に基づいて、前記被検出ガスに含まれるNOx濃度の検出を行うガスセンサにおいて、
    前記固体電解質体は、その温度が300℃であるときの導電率が0.0003S/cm以上となると共に、
    前記被検出ガス中のNOx濃度の検出が行われる際には、前記固体電解質体の温度が300〜550℃となるように前記ヒータに流す電流の大きさが制御されることを特徴とするガスセンサ。
  2. 前記被検出ガス中のNOx濃度の検出が行われる際には、前記固体電解質体の温度が300℃〜450℃となるように前記ヒータに流す電流の大きさが制御されることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
  3. 前記固体電解質体は、スカンジア安定化ジルコニア、ガドリニウムドープセリア、およびサマリウムドープセリアのうちのいずれかを主成分とすることを特徴とする請求項1または2に記載のガスセンサ。
  4. 固体電解質体およびその固体電解質体上に形成された一対の電極を有し、当該一対の電極のうち被検出ガスに晒される一方の電極にて、当該被検出ガスに含まれるNOxが還元または分解された際に、前記一対の電極間にNOx由来の酸素濃度に応じた電流が流れる酸素ポンプセルと、
    前記固体電解質体の加熱を行うため、通電により発熱するヒータと
    を備えるガスセンサにおいて、
    前記固体電解質体は、その温度が300℃であるときの導電率が0.0003S/cm以上となると共に、
    前記固体電解質体の温度が300〜550℃の範囲に含まれる第1温度となるように前記ヒータに流す電流の大きさが制御された際に、前記酸素ポンプセルに流れる電流の値である第1電流値と、
    前記固体電解質体の温度が550℃より高い第2温度となるように前記ヒータに流す電流の大きさが制御された際に、前記酸素ポンプセルに流れる電流の値である第2電流値とに基づいて、アンモニア濃度の検出が行われることを特徴とするガスセンサ。
  5. 第1拡散抵抗部を介して被検出ガスが導入される第1検出室と、
    第1固体電解質体および当該第1固体電解質体上に形成された一対の第1電極を有し、前記一対の第1電極のうちの一方の電極が前記第1検出室内に配置され、前記第1検出室に導入された前記被検出ガスに対する酸素の汲み出しまたは汲み入れを行う第1酸素ポンプセルと、
    前記第1検出室において酸素の汲み出しまたは汲み入れが行われた前記被検出ガスが第2拡散抵抗部を介して導入される第2検出室と、
    第2固体電解質体および当該第2固体電解質体上に形成された一対の第2電極を有し、前記一対の第2電極のうちの一方の電極が前記第2検出室内に配置され、前記第2検出室におけるNOx濃度に応じて電流が流れる第2酸素ポンプセルと、
    前記第1固体電解質体および前記第2固体電解質体の加熱を行うため、通電により発熱するヒータと
    を備え、
    前記第2酸素ポンプセルに流れる電流に基づいて、前記被検出ガスに含まれるNOx濃度の検出を行うガスセンサにおいて、
    前記第1固体電解質体および前記第2固体電解質体は、その温度が300℃であるときの導電率が0.0003S/cm以上となると共に、
    前記被検出ガス中のNOx濃度の検出が行われる際には、前記第1固体電解質体および前記第2固体電解質体の温度が300〜550℃となるように前記ヒータに流す電流の大きさが制御されること特徴とするガスセンサ。
  6. 第3固体電解質体および当該第3固体電解質体上に形成された一対の第3電極を有し、前記一対の第3電極のうち一方の電極が前記第1検出室内に配置され、前記第1検出室内の酸素濃度に応じて電圧を発生する酸素濃度検知セルをさらに備え、
    前記第1酸素ポンプセルは、前記第3電極間に発生する出力信号が一定値になるように前記第1検出室における酸素濃度を調整することを特徴とする請求項5に記載のガスセンサ。
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