JP2008179189A - ホイール駆動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】要求される冷却性に応じて適切なオイルポンプの駆動を行うことができるホイール駆動装置を提供する。
【解決手段】懸架装置130を介して車両に取付けられたケース3と、ケース3内に設けられてステータ21及びロータ22を含むトラクションモータ20と、ロータ22が固設されたロータ軸25と、ケース3内に注入されたオイル11と、オイル11を冷却するオイルクーラーと、オイルクーラーで冷却されたオイル11をステータ21に供給するオイルポンプ50とを備えたホイール駆動装置1において、ロータ軸25に対して独立回転可能な領域を有するオイルポンプ駆動軸52と、オイルポンプ駆動軸52を駆動するオイルポンプ駆動モータ51と、車両の走行状態に応じてオイルポンプ駆動モータ51を回転制御するオイルポンプ制御手段とを備えるように構成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、ステータ及びロータを含むトラクションモータによってホイールを駆動するとともに、オイルポンプを備えたホイール駆動装置に関し、特にオイルポンプの駆動形態に特徴を有するものに関する。
従来、懸架装置を介して車両に取付けられたケースと、上記ケース内に設けられてステータ及びロータを含むトラクションモータと、上記ロータが固設されたロータ軸と、上記ケース内に注入されたオイルと、上記オイルを冷却するオイルクーラーと、上記オイルクーラーで冷却された上記オイルを少なくとも上記ステータに供給するオイルポンプとを備えたホイール駆動装置が知られている。
一般的にトラクションモータの効率は温度によって変化するため、その温度を最も効率の良い温度付近に維持しておくことが望ましい。しかし上記ホイール駆動装置に用いられるトラクションモータは、ステータに設けられたステータコイルに電流が流れることにより発熱するので、温度維持のためには冷却が必要とされる。
通常、トラクションモータの冷却は潤滑油と兼用のオイルによって行われる。オイルクーラーで冷却されたオイルをオイルポンプによってステータに供給することにより、効果的な冷却を図ることができる。
特許文献1には、オイルの循環経路を工夫することによりモータの冷却効率を向上させたホイール駆動装置(インホイールモータ)が開示されている。
このような従来のホイール駆動装置は、トラクションモータのロータ軸とオイルポンプのポンプ駆動軸とが直結され、オイルポンプ回転数が常にトラクションモータ回転数と一致するように構成されている。一般的に、オイルポンプ回転数とオイルポンプの吐出流量とは略比例し、オイルポンプの吐出流量と冷却性とも略比例する。従って従来構造では、トラクションモータ回転数と冷却性とが略比例するものであった。また特許文献1に示されるようなホイール駆動装置では、トラクションモータ回転数と車速とが比例するから、この場合、車速と冷却性とが略比例するとも言える。
特開2005−73364号公報
しかしながら、要求される冷却性は必ずしもトラクションモータ回転数や車速に略比例するものではない。また同じトラクションモータ回転数であってもトラクションモータの負荷をはじめとする走行状態の変化に応じて多様に変化する。従来構造では、この要求される冷却性と実際の冷却性とに大きな乖離が生じることが避けられず、それに伴う様々な問題が生じていた。
例えば従来の構造では、トラクションモータの停止時にはオイルポンプも停止する。従って、トラクションモータの停止時においてもステータの冷却が必要とされる場合に対応することが困難であった。また、比較的低回転領域で高い冷却性が必要とされる場合、その要求に応えるには大型・大容量の冷却系(オイルポンプやオイルクーラー)が必要となる。仮にそのような冷却系を採った場合、高回転領域においては必要以上のオイルポンプ吐出流量となるため、徒にオイルポンプ駆動トルクを増大させてしまう。従ってオイルポンプによる無駄なエネルギー消費が増大し、燃費の低下を招いてしまう。
本発明は、上記のような事情に鑑み、要求される冷却性に応じて適切なオイルポンプの駆動を行うことができるホイール駆動装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための請求項1に係る発明は、懸架装置を介して車両に取付けられたケースと、上記ケース内に設けられてステータ及びロータを含むトラクションモータと、上記ロータが固設されたロータ軸と、上記ケース内に注入されたオイルと、上記オイルを冷却するオイルクーラーと、上記オイルクーラーで冷却された上記オイルを少なくとも上記ステータに供給するオイルポンプとを備え、上記ロータ軸からの出力トルクによりホイールを駆動するホイール駆動装置において、上記ロータ軸に対して独立回転可能な領域を有する、上記オイルポンプを駆動するポンプ駆動軸と、上記ポンプ駆動軸を駆動するオイルポンプ駆動モータと、車両の走行状態に応じて上記オイルポンプ駆動モータを回転制御するオイルポンプ制御手段とを備えることを特徴とする。
なお、ポンプ駆動軸がロータ軸に対して独立回転可能な領域を有するとは、ポンプ駆動軸がロータ軸に対して全回転域で完全に独立回転可能である場合と、部分回転域(例えばトラクションモータ回転数以上の領域)で独立回転可能である場合とを含む。
請求項2に係る発明は、請求項1記載のホイール駆動装置において、上記オイルポンプ制御手段は、車両停止時に上記オイルポンプが作動するように上記オイルポンプ駆動モータを駆動することを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1または2記載のホイール駆動装置において、上記オイルポンプ制御手段は、所定の低車速領域においては、車速が高くなるほどオイルポンプ回転数が高くなるように上記オイルポンプ駆動モータを駆動し、上記低車速領域よりも高車速領域においては、車速に対するオイルポンプ回転数の増加率が上記低車速領域における同増加率よりも低減するように上記オイルポンプ駆動モータを駆動することを特徴とする。
なお、高車速領域において車速に対するオイルポンプ回転数の増加率が低車速領域における同増加率よりも低減するものには、正の増加率の範囲でより緩慢に増加して行くものと、負の増加率に転じて高車速であるほどオイルポンプ回転数が低くなるものとを含む。
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3の何れか1項に記載のホイール駆動装置において、上記トラクションモータの負荷を検知する負荷検知手段を備え、上記オイルポンプ制御手段は、上記負荷が大きいほどオイルポンプ回転数が高くなるように上記オイルポンプ駆動モータを駆動することを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4の何れか1項に記載のホイール駆動装置において、上記トラクションモータは逆駆動時には発電を行うように構成され、上記トラクションモータの逆駆動力を検知する逆駆動力検知手段を備え、上記オイルポンプ制御手段は、上記逆駆動力が大きいほどオイルポンプ回転数が高くなるように上記オイルポンプ駆動モータを駆動することを特徴とする。
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5の何れか1項に記載のホイール駆動装置において、上記トラクションモータの温度を検知するモータ温度検知手段を備え、上記オイルポンプ制御手段は、トラクションモータ温度が高いほどオイルポンプ回転数が高くなるように上記オイルポンプ駆動モータを駆動することを特徴とする。
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6の何れか1項に記載のホイール駆動装置において、上記オイルの温度を検知するオイル温度検知手段を備え、上記オイルポンプ制御手段は、オイル温度が高いほどオイルポンプ回転数が高くなるように上記オイルポンプ駆動モータを駆動することを特徴とする。
請求項8に係る発明は、請求項1乃至7の何れか1項に記載のホイール駆動装置において、外気の温度を検知する外気温度検知手段を備え、上記オイルポンプ制御手段は、外気温度が高いほどオイルポンプ回転数が高くなるように上記オイルポンプ駆動モータを駆動することを特徴とする。
請求項9に係る発明は、請求項1乃至8の何れか1項に記載のホイール駆動装置において、上記ロータ軸と上記ポンプ駆動軸との間に介設され、上記ロータ軸から上記ポンプ駆動軸への一方向にトルクを伝達可能なワンウェイクラッチを備えることを特徴とする。
請求項1の発明によると、以下説明するように、要求される冷却性に応じて適切なオイルポンプの駆動を行うことができる。
本発明のホイール駆動装置は、ポンプ駆動軸を駆動するオイルポンプ駆動モータを有する。つまりこのオイルポンプは、電動オイルポンプとして機能する。またポンプ駆動軸がロータ軸に対して独立回転可能であるから、トラクションモータ回転数や車速から独立して高い自由度でオイルポンプ回転数を設定することができる。
そして、オイルポンプ制御手段が車両の走行状態に応じてオイルポンプ駆動モータを回転制御するので、要求される冷却性に応じたオイルポンプ回転数を柔軟に設定することができる。例えば低車速領域で高い冷却性が求められるような場合であっても、オイルポンプ回転数を(トラクションモータ回転数よりも)高回転で駆動することにより要求に応じた高い冷却性を得ることができる。
従って徒に大型・大容量の冷却系を採用する必要がなく、それに伴って高車速域においてオイルポンプによる無駄なエネルギー消費が増大し、燃費の低下を招くという事態も回避することができる。
なお本発明では、ポンプ駆動軸がロータ軸に対して全回転域で完全に独立回転可能である場合と部分回転域で独立回転可能である場合とを含む。部分回転域で独立回転可能とする場合には、本発明の効果を可及的に多く享受できるようにその部分回転域を設定するのが望ましい。
請求項2の発明によると、車両停止時、つまりトラクションモータの停止時においてもオイルポンプを作動させ、冷却性を高めることができる。従って従来構造における、トラクションモータの停止時にオイルポンプも停止してしまうという問題が効果的に解消され、車両停止時においても柔軟に必要な冷却性を確保することができる。
請求項3の発明によると、以下説明するように、実際に要求される冷却性に応じたオイルポンプ回転数を設定することができる。
一般に、トラクションモータの最大負荷時の出力は、比較的低車速域ではトラクションモータ回転数に比例し、所定値以上の高車速域では一定値(最高出力)となるように設定される。従ってトラクションモータの発熱量(要求される冷却性)もその出力特性に略沿った特性を示す。すなわち比較的低車速域ではトラクションモータ回転数に略比例して比較的大きな増加率で増大し、出力設定値が一定となる車速付近(特性の折れ曲がりポイント付近)から増加率が低下し、緩やかに増大する。本発明によれば、この要求冷却性に沿ったオイルポンプ回転数とすることにより、要求に応じた適切な冷却性を得ることができる。
なお、トラクションモータが逆駆動されるときに発電機となるもの(エネルギー回生を行うもの)についても同様に、トラクションモータへの最大逆駆動力時の入力は、比較的低車速域ではトラクションモータ回転数に比例し、所定値以上の高車速域では一定値(最高入力)となるように設定される。従って駆動時と同様に、トラクションモータの発熱量は、比較的低車速域ではトラクションモータ回転数に略比例して比較的大きな増加率で増大し、入力設定値が一定となる車速付近(特性の折れ曲がりポイント付近)から増加率が低下し、緩やかに増大する。本発明によれば、この要求冷却性に沿ったオイルポンプ回転数とすることにより、要求に応じた適切な冷却性を得ることができる。
また、一般的なオイルクーラーは走行風との熱交換によってオイルを冷却するので、車速が高くなるほど冷却能力が高くなる。つまり一定の冷却性を得るために必要なクーラー流量(オイルポンプ吐出流量)が低減する。その分を考慮すると、駆動側、逆駆動側ともに、高車速域では車速が高くなるに従って要求冷却性を達成するために必要なオイルポンプ回転数が低くなるという場合もあり得る。本発明によれば、そのようなオイルポンプ回転数の特性とし、可及的にオイルポンプの消費エネルギーを低減させることもできる。
請求項4及び5の発明によると、要求される冷却性に応じたオイルポンプ回転数を適切に設定することができる。要求される冷却性は、トラクションモータの負荷が高いほど(請求項4)、逆駆動力が大きい(発電量が多い)ほど(請求項5)、大きくなる。そこで、負荷または逆駆動力が大きいほどオイルポンプ回転数を増大させ、吐出量を増大させることにより、オイルポンプの無駄な消費エネルギーを抑制しつつ、要求される冷却性を確保することができる。
請求項6〜8の発明によると、より精度良く適切なオイルポンプ回転数を設定することができる。
要求される冷却性は、トラクションモータの温度が高いほど(請求項6)、オイル温度が高いほど(請求項7)、外気温度が高いほど(請求項8)、それぞれ増大する。そこで、それらの各温度が高いほどオイルポンプ回転数を増大させることにより、適切なオイルポンプ回転数の設定精度を高めることができる。
請求項9の発明によると、以下説明するように、高い自由度でオイルポンプ回転数を設定することができることによる上記各効果を得つつ、オイルポンプ駆動モータにフェイル(故障)が発生したときのオイルポンプの動作確実性を確保することができる。
本発明によれば、ロータ軸からポンプ駆動軸へは、ワンウェイクラッチの作用(例えばロック)によりトルクの伝達が可能である。そのトルク伝達時は、従来構造と同様にポンプ駆動軸の回転数がポンプ駆動軸の回転数と一致する。すなわちオイルポンプ回転数=トラクションモータ回転数となる。一方、ポンプ駆動軸からロータ軸へは、ワンウェイクラッチの作用、例えばオーバーラン(空転ともいう)によりトルクの伝達がなされない。従ってオイルポンプの動作(回転)はトラクションモータの動作(回転)に影響を及ぼさない。そのため、オイルポンプ回転数を、トラクションモータ回転数以上の範囲で独立して変化させることができる。
結局、本発明によれば、ポンプ駆動軸がロータ軸に対してトラクションモータ回転数以上という部分回転域で独立回転可能となる。従ってこの部分回転域でオイルポンプ回転数を柔軟に設定することができる。
一方、オイルポンプ駆動モータの停止時、或いはその回転数がトラクションモータ回転数より低くなろうとする時には、従来構造と同様にオイルポンプがロータ軸によって駆動される。従って、例えば断線や供給電力の低下等、何らかの原因によってオイルポンプ駆動モータの出力が低下するというフェイルが発生しても、トラクションモータ回転数でのオイルポンプの作動が確保される。すなわちフェイル時においても一定以上の吐出流量(冷却性)を確保することができ、大幅な冷却性低下を抑制することができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の一実施形態に係るホイール駆動装置1の縦断面図である。また図2は図1の右側面図である。図1、図2においては図の上方が車両の上方を示し、図2においては図の右側が車両の前方を示す。なお図1、図2は左前輪を示すものであるが、同様の構成が全ての駆動輪に設けられている。
ホイール駆動装置1は、懸架装置130(図1に示す上方のストラットアッセンブリ131および下方のロアアーム132)を介して車両に取付けられたケース3と、ケース3内に設けられてステータ21及びロータ22を含むトラクションモータ20と、ロータ22に固設されてこれを支持するロータ軸25と、ケース3内に注入されたオイル11と、オイル11を冷却するオイルクーラー63(図2に示す)と、オイルクーラー63で冷却されたオイル11をステータ21を含む各部に供給するオイルポンプ50とを備え、ロータ軸25からの出力トルクによりホイール120を駆動するように構成されている。
さらにホイール駆動装置1は、オイルポンプ50を駆動するポンプ駆動軸52と、これを駆動するオイルポンプ駆動モータ51とを備える。ロータ軸25とポンプ駆動軸52との間にはワンウェイクラッチ(以下OWCと略称する)70が介設されている。OWC70は、後に詳述するように、ロータ軸25からポンプ駆動軸52への一方向にのみトルクの伝達が可能であるように構成されている。またOWC70の作用により、ポンプ駆動軸52はロータ軸25に対してトラクションモータ回転数以上という部分回転域で独立回転可能となっている。
またホイール駆動装置1は、ケース3内に回転自在に設けられた出力軸80を備える。出力軸80はプラネタリギヤ30(減速機)を介してロータ軸25からの出力をホイール120に伝達する。
トラクションモータ20は、主にステータ21とロータ22とからなる。ステータ21は、略円筒状のステータコアにコイルが巻回されたもので、ケース3に固設されている。ロータ22は、そのステータ21の内周側に設けられた略円筒状の部材である。ロータ軸25は、ケース3に回転自在に支持されるとともに、ロータ22の内周側に挿通されてこれに連結されている。ロータ軸25の軸心部には軸方向に貫通するロータ軸油路27が形成されている。ステータ21のコイルに所定の電流を流すことにより、電磁力によってロータ22が回転し、その駆動力がロータ軸25から出力されるように構成されている。
またトラクションモータ20は、逆駆動時(出力軸80側からロータ軸25が駆動されるとき)には発電機として作用する。すなわちエネルギー回生機能を有する。発電した電気は高圧用バッテリ91や低圧用バッテリ93(図4、図5参照)に蓄電しておくことができる。
オイルポンプ50は、ケース3に貯溜されたオイル11をオイル溜り10から吸い上げ、昇圧して潤滑・冷却用の油路に吐出する(詳細は後述する)。オイルポンプ50を駆動するポンプ駆動軸52は、上述のようにロータ軸25と同軸に、その車幅方向内側に配設されている。ポンプ駆動軸52の、ロータ軸25に対向する位置にロータ軸25の端部を内包する凹部52aが形成されている。そしてロータ軸25の端部外周面と凹部52aの内周面との間にOWC70が介設されている。
図3は、図1のIII−III線断面図のうち、特にOWC70の近傍を示す図であって、(a)はOWC70のロック状態、(b)はOWC70のオーバーラン状態をそれぞれ示す。
図3において、矢印A1は車両前進時のロータ軸25の回転方向を示す。当実施形態のOWC70は一般にローラタイプと呼ばれるものであり、主に外輪71、ローラ72、スプリング73及び保持器74からなる。外輪71は略環状の部材であって、外周面はポンプ駆動軸52の凹部52aの内周側に嵌入されている(スプライン嵌合等としても良い)。従って外輪71はポンプ駆動軸52と一体回転する。外輪71の内周面には所定のカム面が形成されている。ロータ軸25の外周面と外輪71の内周面(カム面)との間には環状の隙間が設けられ、そこにローラ72とスプリング73とのセットが複数配設されている(当実施形態では6セット)。またこれらが保持器74に保持されている。各スプリング73は、各ローラ72を周方向一方側(矢印A1と同方向)に付勢する。
このような構造により、図3(a)に示すように、ポンプ駆動軸52がロータ軸25に対して矢印A1方向と反対側に相対回転しようとするとき(矢印A2で示す)、つまりロータ軸25より低速で回転しようとしたり、停止しようとしたり、逆方向に回転しようとしたりするときにはロック状態(単にロックともいう)になる。ロック時には、ローラ72がスプリング73の付勢方向に移動し、ロータ軸25の外周面と外輪71の内周面(カム面)との間に噛み込んでその相対回転を阻止する(×印で示す)。従ってそのようなポンプ駆動軸52の回転が禁止され、ポンプ駆動軸52はロータ軸25と一体回転する。そのときロータ軸25からポンプ駆動軸52にトルクの伝達が可能となる。
一方、図3(b)に示すように、ポンプ駆動軸52がロータ軸25に対して矢印A1と同じ方向に相対回転しようとするとき(矢印A3で示す)、つまりロータ軸25より高速で回転しようとするときには、オーバーラン状態(単にオーバーランともいう)となる。オーバーラン時には、外輪71のカム面とローラ72との間に僅かな隙間が生じてローラ72の上記噛み込みが解除され、ローラ72が滑らかに転動する。従ってそのようなポンプ駆動軸52の回転が許容される(○印で示す)。そのときポンプ駆動軸52からロータ軸25にトルクの伝達はなされない。
結局、OWC70は、ロック状態となることにより、ポンプ駆動軸52がロータ軸25よりも低速で回転すること(停止や逆回転を含む)を禁止し、オーバーラン状態となることにより、ポンプ駆動軸52がロータ軸25よりも高速で独立回転することを許容する。またロック状態ではロータ軸25からポンプ駆動軸52へのトルク伝達が可能となり、オーバーラン状態ではポンプ駆動軸52からロータ軸25にトルクの伝達がなされない。
図1に戻って説明を続ける。オイルポンプ50を挟んでトラクションモータ20と反対側(車幅方向内側)に、オイルポンプ駆動モータ51が設けられている。オイルポンプ駆動モータ51はトラクションモータ20と類似の構造を有する電動モータであり、そのロータ53はポンプ駆動軸52に固設されている。従ってポンプ駆動軸52はオイルポンプ駆動モータ51の出力軸に直結されている。オイルポンプ駆動モータ51は、その作動時、車両前進時のロータ軸25の回転方向と同方向(図3(b)の矢印A3方向)にポンプ駆動軸52を駆動する。
出力軸80は、ロータ軸25と同軸上に、これを挟んでポンプ駆動軸52の反対側(車幅方向外側)に設けられている。出力軸80の一端側(車幅方向外側)はホイールハブ85及びブレーキロータディスク87を介してホイール120に連絡されており、他端(車幅方向内側)はプラネタリギヤ30(減速機)を介してロータ軸25と連絡されている。出力軸80のロータ軸25側の端部は拡径され、その端面にはロータ軸25側に開口する凹部80aが形成されている。そしてその凹部80aにロータ軸25の先端が入り込み、凹部80aの内周側にロータ軸油路27の出口が位置するように配置されている。
出力軸80の先端側(車幅方向外側)はケース3から突出してホイール120と連結されている。詳しくは、出力軸80の先端側は、フランジ部を有する略円筒状のホイールハブ85に挿嵌され、ナット81で固定されている。ホイールハブ85のフランジ部には略円板状のブレーキロータディスク87と共にホイールディスク121がボルト・ナット103によって固定されている。ホイールディスク121の外周は、タイヤ122の内周面に嵌挿されている。ホイールディスク121とタイヤ122とが一体となってホイール120を構成している。以上の構成によって、出力軸80、ホイールハブ85、ブレーキロータディスク87およびホイール120は一体回転する。
プラネタリギヤ30は、ロータ軸25の回転を減速して出力軸80に伝達する減速機であって、トラクションモータ20を挟んでオイルポンプ50やオイルポンプ駆動モータ51の反対側に設けられている。プラネタリギヤ30の主な構成は、中心に設けられたサンギヤ31と、このサンギヤ31に噛合し、サンギヤ31から放射状等距離の複数位置に配設されたピニオンギヤ32と、サンギヤ31と同軸のリング状部材の内周面で各ピニオンギヤ32と噛合するリングギヤ33と、各ピニオンギヤ32を、互いの相対位置を維持させつつ支持するキャリヤ34とからなる。
サンギヤ31はロータ軸25と連結されている。またキャリヤ34は出力軸80と連結されている。そしてリングギヤ33はケース3に固定されている。
図4は、ホイール駆動装置1の動力伝達系のブロック図である。当該車両には、トラクションモータ20を駆動する高圧用バッテリ91と、オイルポンプ駆動モータ51を駆動する低圧用バッテリ93とが搭載されている。高圧用バッテリ91とトラクションモータ20とが第1インバータ・コンバータ92を介して接続されている。また低圧用バッテリ93とオイルポンプ駆動モータ51とが第2インバータ・コンバータ94を介して接続されている。また高圧用バッテリ91と低圧用バッテリ93とが接続されており、必要に応じて高圧用バッテリ91から低圧用バッテリ93への電力供給が可能となっている。
次にホイール駆動装置1の潤滑、冷却系について図1、図2を参照して説明する。オイルポンプ50の吸入口58には、ケース3内で下方に延びる油路57が接続されており、油路57の下端にはオイル溜り10の底部付近に開口するオイルストレーナ55が取付けられている。
図2に示すように、オイルポンプ50の吐出口61には、ケース3の外部に導出される油路62(パイプ)の一端が接続され、油路62の他端にはオイルクーラー63の導入口63aが接続されている。オイルクーラー63はオイル11を熱交換によって冷却する装置であって、オイル11の導入口63aから導出口63bまでの間に細管が配設されている。オイル11がその細管内を通る間に細管壁面においてオイル11と外気との熱交換が行われる。オイルクーラー63は、その熱交換が効果的に促進されるように、車両前進時の走行風Wdが当たり易いケース3の前方に配設されている。
オイルクーラー63の導出口63bには、油路64(パイプ)の一端が接続され、油路64の他端はケース3に接続されている。そして油路はケース3内で分岐する。分岐した油路の一方は油路65(パイプ)を経てケース3の上部の油路66に接続される。図1に示すように油路66は、ケース3の内部にあってステータ21の上方で軸方向に延びている。そしてケース3に、一端が油路66に開口し、他端がケース3の内部に開口する油穴67,68が形成されている。油穴67は油路66とステータ21のステータコアの上方とを連通させ、油穴68は油路66とステータ21のコイルの上方とを連通させる。オイルポンプ50の吐出口61からステータ21に至る油路62−オイルクーラー63−油路64−油路65,66−油穴67,68は、全体としてステータ冷却用油路69を形成する。ステータ冷却用油路69は、ステータ21を優先的に冷却するオイル供給油路である。
一方、油路64の下流で分岐した油路の他方はケース3の油路78に接続される。図1に示すように、油路78はロータ軸25の軸心部に設けられたロータ軸油路27に接続されている。ロータ軸油路27の先端側(下流側)は、出力軸80の凹部80a付近に開口している。オイルポンプ50の吐出口61から出力軸80の凹部80a付近に至る油路62−オイルクーラー63−油路64−油路78−ロータ軸油路27は、全体として出力軸冷却用油路79を形成する。出力軸冷却用油路79は、出力軸80を優先的に冷却するオイル供給油路である。出力軸冷却用油路79のうち、オイルポンプ50の吐出口61から油路64までの経路はステータ冷却用油路69と共有である。
次に、ホイール駆動装置1の制御系について説明する。図5は、ホイール駆動装置1の制御ブロック図である。ホイール駆動装置1は、第1,第2インバータ・コンバータ92,94を介してトラクションモータ20及びオイルポンプ駆動モータ51を制御するための制御手段としてコントロールユニット100を備える。コントロールユニット100には、走行状態や運転状態を検知するための各種センサ、具体的には車速センサ110、トラクションモータ回転数センサ111、オイルポンプ回転数センサ112、スロットル開度センサ113、ブレーキ油圧センサ114、モータ温度センサ115、油温センサ116及び外気温センサ117からの各検知信号が入力される。
車速センサ110は、ホイール120の回転数等から車速Vを検知する。トラクションモータ回転数センサ111は、トラクションモータ20のロータ22の回転数からトラクションモータ回転数Nmを検知する。オイルポンプ回転数センサ112は、オイルポンプ駆動モータ51のロータ53の回転数からオイルポンプ回転数Npを検知する。
スロットル開度センサ113はスロットル開度(アクセル開度)を検知する。スロットル開度が大きいほどトラクションモータ20の負荷が大きくなるので、スロットル開度センサ113は負荷検知手段として機能する。
ブレーキ油圧センサ114はブレーキ油圧を検知する。運転者がブレーキを踏んで車両が減速するとトラクションモータ20はホイール120を介して出力軸80側から駆動される。つまり逆駆動力が作用する。逆駆動力は減速度が大きいほど大きくなる。また運転者がブレーキを強く踏むほど減速度が大きくなる。従ってブレーキ油圧が大きいほど大きな逆駆動力が作用する。このようにブレーキ油圧センサ114は逆駆動力センサとして機能する。
モータ温度センサ115はトラクションモータ20の温度(ステータ21の温度)を検知するモータ温度検知手段である。油温センサ116はオイル11の温度を検知するオイル温度検知手段である。外気温センサ117は外気の温度を検知する外気温度検知手段である。
コントロールユニット100は、CPU(中央演算処理部)やROM(記憶部)等を備えた制御装置であり、第1インバータ・コンバータ92を介してトラクションモータ20を制御するトラクションモータ制御部105(トラクションモータ制御手段)と、第2インバータ・コンバータ94を介してオイルポンプ駆動モータ51を制御するオイルポンプ制御部107(オイルポンプ制御手段)とを機能的に含む。
トラクションモータ制御部105は、車速センサ110、スロットル開度センサ113等からの検知信号に基いてトラクションモータ回転数Nmとトラクションモータ出力Wの各目標値を設定する。そしてその目標値となるようにトラクションモータ20への供給電流(逆駆動時にはトラクションモータ20の発電量)を決定し、制御信号を第1インバータ・コンバータ92に送信する。
第1インバータ・コンバータ92は、トラクションモータ制御部105からの制御信号に基いてその目標値となるように、駆動時には高圧用バッテリ91からトラクションモータ20に電力を供給する。また逆駆動時にはトラクションモータ20で発電された電気を高圧用バッテリ91に充電する。
オイルポンプ制御部107は、走行状態に応じたオイルポンプ回転数Npを設定し、その制御信号を第2インバータ・コンバータ94に送信される。その設定方法は後に詳述するが、まずトラクションモータ制御部105で設定されたトラクションモータ回転数Nm及びトラクションモータ出力Wの各目標値に基いて標準設定値を設定し、それに各部の温度(モータ温度センサ115によって検知されるトラクションモータ20の温度、油温センサ116によって検知されるオイル11の温度および外気温センサ117によって検知される外気の温度)を考慮した補正を加え、最終設定値を設定する。
第2インバータ・コンバータ94は、オイルポンプ制御部107からの制御信号に基いてその目標値となるように、低圧用バッテリ93からオイルポンプ駆動モータ51に電力を供給する。なお低圧用バッテリ93には必要に応じて高圧用バッテリ91から電力が供給される。
図6はトラクションモータ20の出力特性(設定値)を示す図である。横軸にトラクションモータ回転数Nm(rpm)、縦軸にトラクションモータ出力W(kW)を示す。トラクションモータ出力W>0の領域は駆動側であって、トラクションモータ20に負荷がかかっていることを示す。一方トラクションモータ出力W<0の領域は逆駆動側であって、トラクションモータ20が逆駆動されて発電機となっていることを示す。トラクションモータ出力Wの絶対値は、駆動側においては負荷が大きいほど、逆駆動側においては逆駆動力が大きいほど、大きくなるように設定されている。
トラクションモータ出力割合Wrは、あるトラクションモータ回転数Nmでのあるトラクションモータ出力Wが、その回転数Nmにおける最大負荷時のトラクションモータ出力Wの何%であるかを示す値である。図6にはトラクションモータ出力割合Wr=0%,±25%,±50%,±75%,±100%の各特性を示す。トラクションモータ出力割合Wr<0のとき、トラクションモータ20には逆駆動がかかっており、エネルギーが入力されていることを示す。
まず図6において太線で示すトラクションモータ出力割合Wr=100%の特性について説明する。これは、最大負荷時のトラクションモータ出力Wの設定値を示す特性である。このときのトラクションモータ出力Wは、所定の低速域(トラクションモータ回転数Nm≦Nm7)ではトラクションモータ回転数Nmに比例するように設定されている。そしてトラクションモータ回転数Nm=Nm7となったときにトラクションモータ出力Wが最高出力に達し、それ以上の高速域(トラクションモータ回転数Nm>Nm7)でもその最高出力が継続するように設定されている。
トラクションモータ出力割合Wr=0%,±25%,±50%,±75%,−100%の各特性は、トラクションモータ出力割合Wr=100%の特性に各割合を乗じた特性となる。
なお図6には、参考特性として、トラクションモータ出力割合Wr=±100%のときの出力トルクTqmの特性を破線で示す。この特性に関しては縦軸にトルク(N・m)を示すものとする。駆動側では出力トルクTqm>0、逆駆動側では出力トルクTqm<0となっている。出力トルクTqmが負の値であるということはトルクが入力されていることを意味する。
トラクションモータ出力Wがトラクションモータ回転数Nmに比例する低車速域(トラクションモータ回転数Nm≦Nm7)では出力トルクTqmの絶対値は一定の最大値をとり、それよりも高車速域(トラクションモータ回転数Nm>Nm7)では出力トルクTqmはトラクションモータ回転数Nmに反比例する。車両の円滑な運転を図るには、発進時を含む低車速域ではホイール120に大きな駆動トルクが供給され、車速の増大に伴ってその駆動トルクが減じてゆくのが望ましい。図6に示す出力特性とすることにより、そのホイール120の望ましい駆動トルク特性に沿ったトラクションモータ20の出力トルク特性を得ることができる。
図6に示す出力特性は数値化され、出力割合マップMap1としてオイルポンプ制御部107に記憶されている。オイルポンプ制御部107は、オイルポンプ回転数Npの設定値を求める過程で、トラクションモータ出力割合Wrを利用する。トラクションモータ出力割合Wrは出力割合マップMap1を参照して、次のようにして求められる。例えばある駆動側の走行状態において、トラクションモータ回転数Nm=Nm4、トラクションモータ出力W=W4であったとき、その走行状態は点P1で表される。点P1がWr=75%の特性上にあることから、そのときのトラクションモータ出力割合Wrが75%であることがわかる。同様に例えばある逆駆動側の走行状態において、トラクションモータ回転数Nm=Nm5、トラクションモータ出力W=W5であったとき、その走行状態は点P2で表される。点P2がWr=−50%の特性上にあることから、そのときのトラクションモータ出力割合Wrが−50%であることがわかる。
図7はオイルポンプ回転数特性(設定値)を示す図である。横軸にトラクションモータ回転数Nm(rpm)又はそれに比例する車速V(km/h)、縦軸にオイルポンプ回転数Np(rpm)を示す。
なお、このオイルポンプ回転数特性は、所定の標準状態における標準設定値の特性である。標準状態とは、ホイール駆動装置1の標準的な運転状態であって、当実施形態ではトラクションモータ温度Tm、外気温度Ta、オイル温度Tiが、それぞれ標準モータ温度Tm0、標準外気温度Ta0、標準オイル温度Ti0である状態を指す。これらの値は予め実験等により求められ、設定されている。
図7に示すように、オイルポンプ回転数Npの標準設定値はトラクションモータ回転数Nm又は車速Vと、トラクションモータ出力割合Wrとによって規定される。そして、他の条件が同じであればトラクションモータ出力割合Wrの絶対値が大きいほど大きくなる。すなわち駆動側(トラクションモータ出力割合Wr>0)においては、トラクションモータ20の出力(負荷)が大きいほど、逆駆動側(トラクションモータ出力割合Wr<0)においては、トラクションモータ20への入力(逆駆動力)が大きいほど、高いオイルポンプ回転数Npが設定される。こうすることにより、必要に応じた適切なオイルポンプ吐出量が得られる。すなわちオイルポンプ50の無駄な消費エネルギーを抑制しつつ、要求される冷却性を確保することができる。
このオイルポンプ回転数特性には、この他に次の3点の特徴がある。第1の特徴は、トラクションモータ回転数Nm=0(車速V=0)のときにオイルポンプ回転数Np>0とする、つまり車両停止時であってもオイルポンプ50を作動させるように設定されている点である。これにより、トラクションモータ20の停止時にオイルポンプ50も停止してしまう(ロータ軸25とポンプ駆動軸52とが直結されたような従来構造の問題点)ことがなく、車両停止時においてもオイルポンプ50からオイルクーラー63にオイル11が送られ、必要な冷却性を確保することができる。
第2の特徴は、オイルポンプ回転数Npが、所定の低車速領域(車速V≦Vx)においては、車速が高くなるほど高回転になるように設定され、それよりも高車速領域においては、車速に対するオイルポンプ回転数Npの増加率が低くなり、負の増加率(車速が高くなるほど低回転になる)に転じている点である。例えばトラクションモータ出力割合Wr=±50%のとき、その境界の車速Vx=V1(トラクションモータ回転数Nm=Nm1)に設定されている。
このような設定により、オイルポンプ回転数Npが、実際に要求される冷却性に応じた回転数となっている。図6を参照して説明したように、トラクションモータ出力Wは、比較的低回転域(低車速域)ではトラクションモータ回転数Nmに比例し、所定値以上の高回転域(高車速域)では一定値となるように設定されている。従ってトラクションモータ20の発熱量(要求される冷却性)もその特性に略沿った特性を示す。すなわち比較的低車速域ではトラクションモータ回転数Nmに略比例して比較的大きな増加率で増大し、トラクションモータ出力Wが一定となる車速付近(図6のトラクションモータ回転数Nm=Nm7に相当する車速付近。図7では車速特性Vxで示す)から増加率が低下している。
なお当実施形態で、高車速域においてトラクションモータ出力Wが一定であるにもかかわらずトラクションモータ回転数Nmに対するオイルポンプ回転数Npの増加率が負に転じているのは、走行風Wdの相対速度増大に伴う影響を考慮していることによる。すなわち、走行風Wdの相対速度が増大するとオイルクーラー63の冷却性能も増大し、同じ冷却性を得るのに要するクーラー流量が低減する。当実施形態では、そのようなオイルクーラー63の冷却性能増大を考慮に入れてこのような設定となっている。
但し、トラクションモータ20の発熱量はトラクションモータ出力Wが一定であっても高車速であるほど増大する傾向にある。従って、オイルクーラー63の性能によってはトラクションモータ回転数Nmに対するオイルポンプ回転数Npの増加率を負に転じさせることなく、緩やかな増大傾向が継続するように設定する場合もある。
何れにしても、オイルポンプ50をオイルポンプ駆動モータ51で駆動することにより、このような柔軟な設定が可能となっており、必要なクーラー流量を確保しつつ、可及的にオイルポンプ50の消費エネルギーを削減して燃費の向上を図ることができる。
第3の特徴は、オイルポンプ回転数Npがトラクションモータ回転数Nm以上の範囲(Np≧Nm)で設定されていることである。これは、OWC70によって、常にオイルポンプ回転数Np≧トラクションモータ回転数Nmとなることに対応したものである。すなわち図7に示すNp=Nmのラインより下側の領域は実際には存在しない領域なので、この領域での設定が省略されている。
例えばトラクションモータ出力割合Wr=50%の特性が、トラクションモータ回転数Nm=Nm2のときにNp=Nmのラインと交わっているが、仮にこの特性をトラクションモータ回転数Nm>Nm2の領域にまで延長して設定した(図7中、二点鎖線で示す)としても、実際にはOWC70がロックして、オイルポンプ回転数Np=トラクションモータ回転数Nmとなる。すなわちNp=Nmのラインに沿って右上がりの特性となる。
なお図7に示すように、オイルポンプ回転数Npの設定値には上限(Npmax)が設定されている。これはステータ冷却用油路69および出力軸冷却用油路79のパイプ接続部やシール部を保護するために設けられている。図7に示すオイルポンプ回転数特性ではオイルポンプ回転数Npの標準設定値は全域で上限回転数Npmaxよりも低いので、この範囲において上限回転数Npmaxを超えることはない。しかし当実施形態ではこの標準設定値に補正を加えて最終設定値を求めるように構成されているので、その最終設定値が高くなりすぎないように上限回転数Npmaxが設けられている。
図7のオイルポンプ回転数特性は数値化され、オイルポンプ回転数マップMap2として予めオイルポンプ制御部107に記憶されている。オイルポンプ制御部107は、このオイルポンプ回転数マップMap2を参照してオイルポンプ回転数Np(標準設定値)を設定する。
なお、図7では、各特性がオイルポンプ回転数Np≧トラクションモータ回転数Nmの領域のみで規定されているが、オイルポンプ回転数マップMap2では、これらを若干オイルポンプ回転数Np<トラクションモータ回転数Nmの領域にまで延長して設定しても良い。それは、標準設定値の段階ではオイルポンプ回転数Np<トラクションモータ回転数Nmであっても、後に補正を加えた結果、最終設定値ではオイルポンプ回転数Np>トラクションモータ回転数Nmとなる場合があるからである。このように中間処理段階である標準設定値で一時的にオイルポンプ回転数Np<トラクションモータ回転数Nmとなることを許容することにより、より補正の精度を高めることができる。
次に、ホイール駆動装置1の動作について説明する。まず図5に示すコントロールユニット100のトラクションモータ制御部105がトラクションモータ回転数Nmとトラクションモータ出力Wの各目標値を設定する。そしてその目標値となるようにトラクションモータ20への供給電流(逆駆動時にはトラクションモータ20の発電量)を決定し、制御信号を第1インバータ・コンバータ92に送信する。その制御信号に基いて、第1インバータ・コンバータ92が高圧用バッテリ91からトラクションモータ20に電力を供給する(逆駆動時にはトラクションモータ20で発電された電気を高圧用バッテリ91に充電する)。
前進駆動時の場合、トラクションモータ20のロータ軸25は、オイルポンプ駆動モータ51側から見て右回り(図3の矢印A1方向)に回転する。ロータ軸25と連結されたプラネタリギヤ30のサンギヤ31も一体となって右回りに回転する。ピニオンギヤ32はサンギヤ31に噛合しているので軸周りに左回転するが、リングギヤ33がケース3に固定されていることから、その軸位置が右回りに回転する。つまりキャリヤ34が右回りに回転する。このときのキャリヤ34の回転数はロータ軸25の回転数よりも低回転となり、トルクが増幅されている(減速作用)。そしてキャリヤ34と一体の出力軸80およびホイール120も同じく右回りに回転し、車両が前進駆動される。
後退駆動時には、前進駆動時とは逆向きの電流がトラクションモータ20に供給される。これによってロータ軸25が車両前進時とは逆方向(オイルポンプ駆動モータ51側から見て左回り)に回転する。その結果、ホイール120も左回りに回転し、車両が後退駆動される。
また前進走行時において、ブレーキ作動時や下り坂の走行時など、ホイール120側からロータ軸25が駆動される逆駆動時には、トラクションモータ20が発電機として作用する。発電された電気は第1インバータ・コンバータ92で充電用の電圧・電流に変換され、高圧用バッテリ91に蓄電される(エネルギー回生)。図4に、このときのエネルギーの流れを経路C1,C2,C3で示す。
次に、オイルポンプ50及びオイルポンプ駆動モータ51の動作と、それによるオイル11の流れや各部の潤滑・冷却について説明する。前進駆動時、後退駆動時および必要に応じて車両停止時に、図4に示す第2インバータ・コンバータ94が、低圧用バッテリ93からの電力を所定の電圧、電流に変換してオイルポンプ駆動モータ51に供給する。図4に、このときのエネルギーの流れを経路B2,B3(及び必要に応じてB1)で示す。オイルポンプ駆動モータ51の駆動により、ポンプ駆動軸52は車両前進時のロータ軸25の回転方向と同方向(図3(b)に矢印A3で示す方向)に回転する。これによってオイルポンプ50はオイル溜り10からオイル11を吸い上げ、昇圧してステータ冷却用油路69や出力軸冷却用油路79に吐出する。
ステータ冷却用油路69に導かれたオイル11は、ステータ21を冷却した後、プラネタリギヤ30や各軸受部等を潤滑・冷却しつつ落下し、最終的にオイル溜り10に戻る。また出力軸冷却用油路79に導かれたオイル11は、ロータ軸油路27を通ることによってトラクションモータ20を内側から冷却する。またそのオイル11はロータ軸油路27の先端から噴出して出力軸80の凹部80aに当たることによってこれを冷却する。出力軸80は、ホイールハブ85を介してブレーキロータディスク87に連絡されているが、このブレーキロータディスク87はブレーキ時に図外のブレーキパッドとの摩擦によって高温になる。出力軸80を冷却することにより、ブレーキロータディスク87から出力軸80を経由してトラクションモータ20にブレーキ時の熱が伝達されることを効果的に抑制することができる。ロータ軸油路27の先端から噴出して出力軸80を冷却したオイル11は、プラネタリギヤ30や各軸受部等を潤滑・冷却しつつ落下し、最終的にオイル溜り10に戻る。
図7に示すようにオイルポンプ回転数Npはトラクションモータ回転数Nm以上に設定される。特にオイルポンプ回転数Np>トラクションモータ回転数Nmのとき、OWC70がオーバーラン状態となる。このとき、ポンプ駆動軸52からロータ軸25へトルクが伝達されないので、オイルポンプ50の動作(回転)はトラクションモータ20の動作(回転)に影響を及ぼさない。従って要求吐出流量に応じてオイルポンプ回転数Npを高い自由度で設定することができる。
その作用・効果について、図8を参照して説明する。図8は、ホイール駆動装置1の熱収支に関する特性を示す図である。横軸にトラクションモータ回転数Nm(rpm)又は車速V(km/h)、縦軸に熱量Q(発熱量または放熱量)を示す。符号Q3maxは、トラクションモータ20の熱量Qのうち、出力割合Wr=±100%のときの発熱量(最大値)を示す。熱量Qとトラクションモータ出力Wには密接な関係があり、最大発熱量Q3maxは、図6に示すトラクションモータ出力割合Wr=±100%の出力特性の絶対値に略沿った特性を示す。すなわち比較的低速域ではトラクションモータ回転数Nmに略比例して比較的大きな増加率で増大し、最大出力が一定となる回転数付近(トラクションモータ回転数Nm=Nm7となるポイント付近)から増加率が低下し、緩やかに増大する。
トラクションモータ20、特にステータ21の温度上昇を適正に抑制するには、その冷却系による最大放熱量が最大発熱量Q3max以上であることが求められる。
一方、符号Q1は、オイルクーラー63以外による放熱量を示す。例えばケース3等を伝播して外気に発散される熱量がこれに該当する。放熱量Q1は、高車速になるほどケース3に当たる走行風Wdの相対速度が上昇する等の理由で、高車速であるほど増大する。但し全体的にその値は比較的低く、車速Vに対する増加率も小さい。
符号Q2Lは、オイルクーラー63からの放熱量Q2のうち、OWC70をロック状態とした場合、つまりオイルポンプ回転数Np=トラクションモータ回転数Nmとした場合の放熱量を示す。高車速であるほど走行風Wdの相対速度が上昇してオイルクーラー63の冷却能力が高くなることと、オイルポンプ50の吐出流量(オイルクーラー63に供給されるオイル流量)がトラクションモータ回転数Nm(=オイルポンプ回転数Np)に比例して増大することから、放熱量Q2Lは高車速であるほど増大する。放熱量Q2Lは放熱量Q1に対し比較的多く、特に高車速域では全体の放熱量の大部分を占める。
OWC70がロック状態のとき、全体の放熱量は、放熱量Q1+放熱量Q2Lとなる。この場合、最大負荷時には最大発熱量Q3max−(放熱量Q1+放熱量Q2L)、つまり図8において斜線で示す部分の放熱量が不足している。当実施形態では、そのような放熱量不足を、オイルポンプ回転数Np>トラクションモータ回転数Nmとすることにより解消している。上述のようにオイルポンプ回転数Npを増大させるとオイルポンプ50の吐出流量が増大し、冷却性が向上して放熱量Q2を放熱量Q2Lよりも増大させることができるからである。上記放熱量不足を解消するには、具体的には、オイルポンプ回転数Npを、(放熱量Q1+放熱量Q2)=発熱量Q3を満たす放熱量Q2となるような吐出流量が得られる回転数(>トラクションモータ回転数Nm)とすれば良い。
なお、部分負荷時におけるトラクションモータ20の発熱量Q3は最大発熱量Q3maxよりも少ない。図7に示すように当実施形態では、部分負荷時にオイルポンプ回転数Npを最大負荷時よりも低くすることにより、発熱量Q3に応じた最適な放熱量Q2となるように設定されているまた必要以上に放熱量Q2が増大しないように設定されているので、オイルポンプ50による無駄なエネルギー消費を抑制し、燃費を向上することができる。
また、例えば登坂路での停車時のように、トラクションモータ回転数Nm=0rpmであってもトラクションモータ20に負荷がかかっている場合(発熱量Q3>0)や、高負荷高車速走行直後の停車時のように、放熱量Q2の急減によるトラクションモータ20の温度上昇の虞がある場合等では、オイルクーラー63を利用して冷却性を高めたいという要求がある。当実施形態では、図7に示すように車両停止状態(トラクションモータ回転数Nm=0rpm)であってもオイルポンプ50を駆動させる。これにより冷却性要求に応じた放熱量Q2を得ることができる。
さらには、車両後退時であってロータ軸25が前進時に対して逆回転しているような場合でも、オイルポンプ駆動モータ51によってオイルポンプ50を正規の回転方向(車両前進時のロータ軸25の回転方向)に駆動させ、必要な放熱量Q2を得ることができる。
また、低負荷領域であって発熱量Q3が小さい場合等、要求放熱量が放熱量Q1+放熱量Q2Lよりも少ない場合には、オイルポンプ駆動モータ51を停止させても良い。このようにするとOWC70がロック状態となり、従来構造と同様に、オイルポンプ50がロータ軸25によって駆動される。
なお、従来構造のようにオイルポンプ50をロータ軸25で駆動する場合(当実施形態においてオイルポンプ駆動モータ51を停止させた場合も同様)、トラクションモータ20の出力の一部を消費してオイルポンプ50を駆動することになる。従って、その分ホイール120に供給される出力が低下する(オイルポンプ駆動ロス)。当実施形態では、オイルポンプ50をオイルポンプ駆動モータ51で駆動することにより、そのオイルポンプ駆動ロスを抑制することができる。特に高負荷時は運転者が高出力を要求している場合なので、そのときにオイルポンプ駆動ロスを抑制し、その分ホイール120への供給出力を増大させることは効果的である。
以上説明したように当実施形態によれば、オイルポンプ駆動モータ51によってオイルポンプ回転数Npを走行状態(要求吐出量或いは要求放熱量)に応じた適正回転数に設定することができる。つまりオイルポンプ回転数の設定自由度が高められている。このことは、オイルポンプ50をロータ軸25で直結駆動する従来構造に対し、冷却系(オイルポンプ50やオイルクーラー63)を小型・小容量化したり、オイルポンプ50による無駄なエネルギー消費を抑制したりする上でも大きく貢献する。例えば、従来構造において最大発熱量Q3max以上の放熱量を得るためには、図8において二点鎖線で示すような放熱量Q1+放熱量Q2’が必要である(放熱量Q2’はオイルクーラー63からの放熱量)。放熱量Q2’は放熱量Q2Lよりもかなり大きく、またトラクションモータ回転数Nmに対する増加率(特性の傾き)も大きい。このような放熱量Q2’を得るためには、大型・大容量の冷却系(オイルポンプ50やオイルクーラー63)が必要である。
また仮にそのような冷却系を採った場合、高車速領域では放熱量Q1+放熱量Q2’が最大発熱量Q3maxを大幅にオーバーしてしまう。これは、徒にオイルポンプ吐出流量が多く、オイルポンプ50を駆動するためのエネルギー消費に大きな無駄が生じていることを意味する。
当実施形態によれば、放熱量Q2Lを放熱量Q2’よりも大幅に削減することにより、冷却系を小型・小容量化し、オイルポンプ50による無駄なエネルギー消費を抑制することができる。
また当実施形態によれば、オイルポンプ50が単にオイルポンプ駆動モータ51のみによって駆動されるような構成に比べ、エネルギー回生時のオイルポンプ駆動効率を高めることができ、燃費向上を図ることができる。この点について図4を参照して説明する。
上述のように、オイルポンプ50をオイルポンプ駆動モータ51で駆動する場合、その駆動エネルギーは経路B1,B2,B3,B4を経由して伝播される。一方、エネルギー回生によって高圧用バッテリ91に蓄電を行う場合、その回生エネルギーは経路C1,C2,C3を経由して伝播される。従ってオイルポンプ50が単にオイルポンプ駆動モータ51のみによって駆動されるような構成の場合、エネルギー回生時にオイルポンプ50を駆動させるためには、これらのエネルギーの伝播(変換)をそれぞれ独立して行う必要がある。
それに対し当実施形態では、エネルギー回生時にオイルポンプ50を駆動させるときにはオイルポンプ駆動モータ51を停止させ、OWC70をロック状態にしてロータ軸25によってオイルポンプ50を駆動させることができる。このときのオイルポンプ50の駆動エネルギーは、経路C1,D1,B4を経由して伝播される。この経路は、ホイール120からの逆駆動という機械的エネルギーを、電気的エネルギーに変換することなく、ポンプ駆動軸52を駆動するための機械的エネルギーとして利用するものであり、一旦電気的エネルギーに変換した後に再度機械的エネルギーとして取り出す上記経路(経路C2,C3,B1,B2,B3)よりもエネルギーロスが小さい。換言すれば、経路C2,C3,B1,B2,B3をバイパスするものである。そのためオイルポンプ駆動効率を高めることができ、燃費向上を図ることができる。
なお、ホイール120からの逆駆動トルクがオイルポンプ50の駆動トルクよりも大きい場合にはその余剰エネルギーを経路C2,C3を経由して高圧用バッテリ91に蓄電すれば良い。逆にホイール120からの逆駆動トルクがオイルポンプ50の駆動トルクよりも小さい場合にはその不足分のエネルギーを経路B1,B2,B3を経由してオイルポンプ駆動モータ51に供給すれば良い。
以上、ホイール駆動装置1が正常に作動しているときの動作について説明したが、フェイル(故障)の一形態として、本来オイルポンプ駆動モータ51によってオイルポンプ50を駆動すべきところ、例えば断線や供給電力の低下等、何らかの原因によってオイルポンプ駆動モータ51の出力が低下するというフェイルを想定し得る。従来構造に比べてそのようなリスクが増大していると考えられるので、それに対処しておくことは重要である。このようなフェイルが発生したとき、仮にオイルポンプ50が単にオイルポンプ駆動モータ51のみによって駆動されるような構造では、最悪の場合オイルポンプ50が停止してしまい、大幅な冷却性(放熱量)の低下を招く虞がある。しかし当実施形態によれば、オイルポンプ駆動モータ51の停止という最悪の事態が発生しても、OWC70がロック状態となることにより、トラクションモータ回転数Nmでのオイルポンプ50の作動が確保される。すなわちこのようなフェイル時においても、放熱量Q1+放熱量Q2L以上の放熱量を確保することができるので、大幅な冷却性低下を抑制することができる。
次にコントロールユニット100による制御について、特にオイルポンプ制御部107によるオイルポンプ50の制御を中心に説明する。図9は、その制御のフローチャートである。コントロールユニット100は、まず各センサからの検知信号により、車速V、トラクションモータ回転数Nm、スロットル開度、ブレーキ油圧など各種データを読込む(ステップS1)。次に所定のプログラムによってトラクションモータ出力Wの目標値を決定する(ステップS2)。オイルポンプ制御部107は、そのトラクションモータ出力Wを参照し、出力割合マップMap1(図6参照)からトラクションモータ出力割合Wrを読込む(ステップS3)。さらにそのトラクションモータ出力割合Wrを参照し、オイルポンプ回転数マップMap2(図7参照)からオイルポンプ回転数Npを読込む(ステップS4)。その値がオイルポンプ回転数Npの標準設定値とされる。そのオイルポンプ回転数Np(標準設定値)に補正が加えられ(ステップS5)、最終設定値が求められる。補正については図10を参照して後述する。
次にオイルポンプ回転数Np(最終設定値)>トラクションモータ回転数Nmであるか否かが判定される(ステップS6)。ステップS6でYESであれば、オイルポンプ駆動モータ51をオイルポンプ回転数Np(最終設定値)で電気駆動する(ステップS7)。これによりOWC70がオーバーラン状態となり、オイルポンプ50がオイルポンプ回転数Np(最終設定値)で駆動される。
一方、ステップS6でNOの場合、オイルポンプ駆動モータ51の電気駆動が停止される(ステップS8)。これによりOWC70がロック状態となり、オイルポンプ50が機械的に駆動される。またそのとき、オイルポンプ回転数Np=トラクションモータ回転数Nmとなる。
図10は図9のステップS5に相当するサブルーチンであり、オイルポンプ回転数Npの標準設定値に補正を加えて最終設定値を求めるものである。トラクションモータ20に要求される冷却性は、トラクションモータ温度Tmが高いほど、外気温度Taが高いほど、オイル温度Tiが高いほど、大きくなる。そこでこのサブルーチンでは、標準状態に対してトラクションモータ温度Tmが高いほど、外気温度Taが高いほど、オイル温度Tiが高いほど、オイルポンプ回転数Npの設定値が高くなるように補正を行う。こうすることにより、より精度良く適切なオイルポンプ回転数Npを設定することができる。
このサブルーチンでは、まずオイルポンプ制御部107が、各センサからの検知信号により、トラクションモータ温度Tm、外気温度Ta、オイル温度Tiを読込む(ステップS11)。
そして次の(式1)から、第1補正値ΔN1を演算する(ステップS12)。
ΔN1=(Tm−Tm0)×C1 ・・・(式1)
Tm:トラクションモータ温度
Tm0:標準モータ温度
C1:第1補正係数:予め実験等により求められ、設定されている。C1>0。
さらに次の(式2)から、第2補正値ΔN2を演算する(ステップS13)。
ΔN2=(Ta−Ta0)×C2 ・・・(式2)
Ta:外気温度
Ta0:標準外気温度
C2:第2補正係数:予め実験等により求められ、設定されている。C2>0。
さらに次の(式3)から、第3補正値ΔN3を演算する(ステップS14)。
ΔN3=(Ti−Ti0)×C3 ・・・(式3)
Ti:オイル温度
Ti0:標準オイル温度
C3:第3補正係数:予め実験等により求められ、設定されている。C3>0。
次に、上記第1,第2,第3補正値ΔN1,ΔN2,ΔN3を合計し、合計補正値ΣΔNiを演算する(ステップS15)。なお、第1補正係数C1>0、第2補正係数C2>0、第3補正係数C3>0であるから、合計補正値ΣΔNiは、トラクションモータ温度Tmが高いほど、外気温度Taが高いほど、オイル温度Tiが高いほど、大きくなる。
そしてオイルポンプ回転数Np(標準設定値)に合計補正値ΣΔNiを加えた値がオイルポンプ回転数Npの上限値Npmaxより大であるか否かの判定がなされる(ステップS16)。ステップS16でNOの場合、そのオイルポンプ回転数Np(標準設定値)に合計補正値ΣΔNiを加えた値を補正後の最終設定値とし(ステップS17)、リターンする。一方、ステップSでYESの場合、オイルポンプ回転数Npが上限値Npmaxを超えないように、その上限値Npmaxを最終設定値とし(ステップS18)、リターンする。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定するものではなく、特許請求の範囲内で適宜変更が可能である。
例えば上記実施形態では、OWC70を用いることにより、ポンプ駆動軸52がロータ軸25に対して部分回転域(オイルポンプ回転数Np>トラクションモータ回転数Nmの範囲)で独立回転可能となっている。しかし必ずしもそのようにする必要はなく、OWC70を用いずに、全回転域で完全に独立回転可能であるようにしても良い。そのようにすると、例えば図7において二点鎖線で示すような設定も可能であり、特に低負荷高車速領域においてオイルポンプ50の消費エネルギーを削減することができる。
またOWC70を用いる場合、上記実施形態ではOWC70をローラタイプとしたが、これを他のタイプのワンウェイクラッチとしても良い。例えば略瓢箪形のスプラグを用いるスプラグタイプと呼ばれるワンウェイクラッチを用いても良い。
上記実施形態では、トラクションモータ温度Tmが高いほど、外気温度Taが高いほど、オイル温度Tiが高いほど、オイルポンプ回転数Npの設定値が高くなるような補正を行ったが、必ずしもこのような補正を行わなくても良い。また補正を行う場合、これらの補正要素の一部を用いても良く、他の補正要素を追加しても良い。補正値を求める式は、(式1)〜(式3)の型に限定するものではない。
また上記実施形態では、ステータ冷却用油路69と出力軸冷却用油路79とが、油路64の下流で分岐するように構成しているが、この分岐点に切替弁等を設け、適宜流量配分を行うようにしても良い。
また上記実施形態では別体型のオイルクーラー63を設けたが、必ずしもそれに限定するものではない。例えばケース3のオイル溜り10とケース壁面との間で走行風Wdによって冷却されるような簡易的オイルクーラーであっても良い。
本発明の一実施形態に係るホイール駆動装置の縦断面図である。 図1の右側面図である。 図1のIII−III線断面図のうち、特にワンウェイクラッチの近傍を示す図であって、(a)はワンウェイクラッチのロック状態、(b)はワンウェイクラッチのオーバーラン状態をそれぞれ示す。 上記ホイール駆動装置の動力伝達系のブロック図である。 上記ホイール駆動装置の制御ブロック図である。 トラクションモータの出力特性を示す図である。 オイルポンプ回転数特性を示す図である。 上記ホイール駆動装置の熱収支に関する特性を示す図である。 オイルポンプ制御手段によるオイルポンプの制御を示すフローチャートである。 図9のフローチャートにおけるステップ5に相当するサブルーチンである。
符号の説明
1 ホイール駆動装置
3 ケース
11 オイル
20 トラクションモータ
21 (トラクションモータの)ステータ
22 (トラクションモータの)ロータ
25 ロータ軸
50 オイルポンプ
51 オイルポンプ駆動モータ
52 ポンプ駆動軸
63 オイルクーラー
70 ワンウェイクラッチ
107 オイルポンプ制御部(オイルポンプ制御手段)
113 スロットル開度センサ(負荷検知手段)
114 ブレーキ油圧センサ(逆駆動力検知手段)
115 モータ温度センサ(モータ温度検知手段)
116 油温センサ(オイル温度検知手段)
117 外気温センサ(外気温度検知手段)
120 ホイール
130 懸架装置

Claims (9)

  1. 懸架装置を介して車両に取付けられたケースと、
    上記ケース内に設けられてステータ及びロータを含むトラクションモータと、
    上記ロータが固設されたロータ軸と、
    上記ケース内に注入されたオイルと、
    上記オイルを冷却するオイルクーラーと、
    上記オイルクーラーで冷却された上記オイルを少なくとも上記ステータに供給するオイルポンプとを備え、
    上記ロータ軸からの出力トルクによりホイールを駆動するホイール駆動装置において、
    上記ロータ軸に対して独立回転可能な領域を有する、上記オイルポンプを駆動するポンプ駆動軸と、
    上記ポンプ駆動軸を駆動するオイルポンプ駆動モータと、
    車両の走行状態に応じて上記オイルポンプ駆動モータを回転制御するオイルポンプ制御手段とを備えることを特徴とするホイール駆動装置。
  2. 上記オイルポンプ制御手段は、車両停止時に上記オイルポンプが作動するように上記オイルポンプ駆動モータを駆動することを特徴とする請求項1記載のホイール駆動装置。
  3. 上記オイルポンプ制御手段は、所定の低車速領域においては、車速が高くなるほどオイルポンプ回転数が高くなるように上記オイルポンプ駆動モータを駆動し、
    上記低車速領域よりも高車速領域においては、車速に対するオイルポンプ回転数の増加率が上記低車速領域における同増加率よりも低減するように上記オイルポンプ駆動モータを駆動することを特徴とする請求項1または2記載のホイール駆動装置。
  4. 上記トラクションモータの負荷を検知する負荷検知手段を備え、
    上記オイルポンプ制御手段は、上記負荷が大きいほどオイルポンプ回転数が高くなるように上記オイルポンプ駆動モータを駆動することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のホイール駆動装置。
  5. 上記トラクションモータは逆駆動時には発電を行うように構成され、
    上記トラクションモータの逆駆動力を検知する逆駆動力検知手段を備え、
    上記オイルポンプ制御手段は、上記逆駆動力が大きいほどオイルポンプ回転数が高くなるように上記オイルポンプ駆動モータを駆動することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のホイール駆動装置。
  6. 上記トラクションモータの温度を検知するモータ温度検知手段を備え、
    上記オイルポンプ制御手段は、トラクションモータ温度が高いほどオイルポンプ回転数が高くなるように上記オイルポンプ駆動モータを駆動することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のホイール駆動装置。
  7. 上記オイルの温度を検知するオイル温度検知手段を備え、
    上記オイルポンプ制御手段は、オイル温度が高いほどオイルポンプ回転数が高くなるように上記オイルポンプ駆動モータを駆動することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のホイール駆動装置。
  8. 外気の温度を検知する外気温度検知手段を備え、
    上記オイルポンプ制御手段は、外気温度が高いほどオイルポンプ回転数が高くなるように上記オイルポンプ駆動モータを駆動することを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載のホイール駆動装置。
  9. 上記ロータ軸と上記ポンプ駆動軸との間に介設され、上記ロータ軸から上記ポンプ駆動軸への一方向にトルクを伝達可能なワンウェイクラッチを備えることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のホイール駆動装置。
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